726 感染 症 学 雑 誌 Talampicillin hydrochloride 第2報 (TAPC)の 第49巻 第11号 毒性 学 的 研 究 ラ ッ トに お け る 経 口投 与7週 間毒性 試験 山之内製薬株式会社中央研究所 小 谷 吉 春 三 川 木 寿 Key words: 易 吸 収 性 のampicillin esterと 開 発 さ れ たtalampicillin TAPCと 略 記 す る)を 村 雄 Talampicillin, して 当研 究 所 で hydrochloride(以 下 ラ ッ トに7週 間 に わ た り経 進 佐 吉 渡 田 卓 朗 Subacute-tox, Rat mg/kg)を,毎 残 りの1群 俊 日1回,7週 に は,滅 夫 間 強 制 経 口投 与 し た 。 菌 精 製 水 を 同様 に投 与 して 対 照 と し た 。 投 与 液 量 は1,000mg/kg投 口投 与 した と き の 亜 急 性 毒 性 を 検 討 し た の で 報 告 10ml/kg,対 す る 。 な お,本 した 。 な お,TAPClmgはampicillin 47年12月27日 実 験 は 昭 和47年3月28日 か ら昭 和 の 間 に 実 施 した 。 与 群 のみ 照 群 を 含 め た 他 の 投 与 群 は5ml/kgと 0.675mgに 相 当す る。 実 験 期 間 中 は 毎 日一 般 症 状 を 観 察 す る と と も 実 験 材 料 お よ び 実 験 方 法 I に,週1回 実 験 動 物 日 本 ク レ ア 株 式 会 社 か ら4週 Sprague-Dawley/JCLラ 育 後,実 齢 で 購 入 した ッ ト を4週 間 の 予備飼 験 に 供 した 。 実 験 開 始 時 の 体 重 は 雄 が 240-294g,雌 が174-230gで 度23±1℃,湿 barriersystemの : CA-1)と II 度55±5%に 調 節 した 飼 育 室 内 で 金 属製 の ケ ー ジ に個 別 に 収 容 し,滅 菌 し た 市 販 固 型 飼 料(日 本 ク レア 滅 菌 水 を 自 由に摂 取 させ た。 濃 度 では 溶 解 後 間 も な く極 め て 粘 稠 と な る の で,投 与 可 能 な最 判 断 した 。 合 計100匹(雄50匹+雌50匹)の (雄10匹+雌10匹)ず つ5群 ラ ッ トを20匹 に 分 け,4群 菌 精 製 水 で 用 時 溶 解 し たTAPCを30mg/kg 価20mg/kg), 100mg/kg (力 価202mg/kg)あ し,主 (力 価67mg/kg)) る い は1,000mg/kg 殺 要 臓 器 に つ い て 肉眼 的 に 異 常 の有 無 を 観 察 凝 固 を 防 ぎ 血 液 学 的 検 査 に,残 パ リンを 加 えて りの血 液 は 血 清 を 分 離 して臨 床 化 学 的 検 査 に供 した。 血 液 学 的 検 査 は 次 の項 目に つ い て 実施 した 。 赤 血 球 数 お よ び 白 血 球 数(レ ーア ミ クロセ ル ヘ マ ト ク リ ッ ト(内 径1.1-1.2mmの 水 に 可 溶 で あ る が,高 高 濃 度 は10%(W/V)と 存 ラ ッ トの 全 例 を エ ー カ ウ ン タ ー) 実 験 方 法 TAPCは 7週 間 の 投 与 終 了 後,生 テ ル 麻 酔 下 で 開 腹 し 下 大 静 脈 か ら 採 血 後,屠 した 。 採 取 し た 血 液 の 一 部 は,ヘ あ った 。 これ ら の 動 物 は 予 備 飼 育 お よ び 薬 物 投 与 期 間 と も,温 の割 合 で体 重 お よび週 間 飼 料 摂 取 量 を 測 定 した 。 に は滅 (力 300mg/kg (力 価675 用 い,12,000r.p.m.5分 毛細管 を 間 遠 沈) ヘ モ グ ロ ビ ン(シ ア ン メ トヘ モ グ ロ ビ ン法) 網 状 赤 血 球 数(超 生 体 染 色Brecker法) 白 血 球 百 分 率(May-Grunwald Giemsa 染 臨 床 化 学 的 検 査 は オ ー トア ナ ラ イ ザ ー(テ クニ 色) コ ン 社 製)に よ り次 の 項 目に つ い て 測 定 し た 。 グ ル コ ー ス(Hoffman法) 昭 和50年11月20日 727 尿 素 窒 素 (diacetyl 総 蛋 白 (Biuret monoxime ア ル ブ ミ ン (HABCA GOT・GPT 法) な い,有 意 水 準5%以 法) 色 素 結 合 法) (Reitman-Frankel 実 法) ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ (King-Armstrong I 法) 脳 ・心 臓 ・ 肺 ・肝 臓 ・腎 臓 ・脾 臓 お よ び 精 巣 は 湿 中 で 固 定 し,甲 ン酸 緩 衡 10%ホ 状 腺 ・胸 腺 ・副 腎 ・卵 巣 お よ び 下 垂 体 は ホ ル マ リ ン液 中 で 固 定 後,湿 た 。 前 記 臓 器 に 加 え て,胃 ル マ リ ン液 中 で 固 定 後,常 PAS染 腿 骨,腰 椎)も ホ 法 に従 っ て パ ラフ ィ ン イ ル レ ッ ド-O染 各 測 定 値 の 推 計 学 的 処 理 は,分 Body weight Talampicillin weeks changes 期 間 を通 じ て軟 便 が 認 め られ た 以 外,い ず れ の投 与 群 に も外 観 ・行 動 に異 常 は み られ な か った 。 投 与4日 目に100mg/kgの 雌 の1例 が 投 与 直 後 に, 口か ら泡 を 出 し呼 吸 困難 を きた して 死 亡 した 。 こ 色 を 施 して 鏡検 した 。 肝 臓 につ い ては 別 1. 1,000mg/kgで ,投 与 初 期 か ら投 与 全 の例 は解 剖 の結 果,投 与 過 誤 に よ る こ とが 明 らか 色を行な っ て脂 肪 滴 の出 現 の 有 無 を 調 べ た 。 Fig. 果 ・十 二 指 腸 ・空 腸 ・膵 マ トキ シ リ ン ・エ オ ジ ン染 色,一 部 に 凍 結 切 片 を 作 り,オ 結 重量 を測 定 し 臓 ・膀 胱 ・子 宮 お よ び 骨 髄(大 切 片 を 作 り,ヘ ル マ リ ン液 験 一 般 症 状 300mg/kg, 重 量 を 測 定 し た 後,リ 下 を も って有 意差 が あ る と した 。 in hydrochloride 豆 体 重 推 移 お よび 飼 料 摂 取 量 各 群 の 平 均 体 重推 移 をFig. 量 を,Table 1 ,2に,飼 料摂取 1,2に 示 した 。 体 重推 移 は,雄 雌 の各 投 与 群 と も順 調 な成 長 を 散 分 析 に よ り行 male とな った ので 本 実 験 か らは 除 外 した 。この1例 を 除 くと1,000 mg/kgま で 死亡 例 は な か った 。 rats orally given for 示 した。 最 初 の1週 間 の飼 料 摂 取 量 が雄 で は100 Fig 2. Body weight 7 given orally changes Talampicillin for 7 weeks in female hydrochloride rats 728 感 染 症 学 雑誌 Table Values ** Food represent consumption Values 2. standard different from Food consumption represent , ** mean •} : Significantly mg/kgで,雌 of mean •} : Significantly Table * 1. male error で は100mg/kgお from at female standard p<0 rats error given at p<0. 軽 の測 定 か らは orally for 7 weeks Talampicillin hydrochloride orally for 7 weeks 05, p<0. 01 た 。GOT, GPT, アル カ リフ ォ ス フ ァ ター ゼ な ど を含 め て,他 の 測 定 項 目に は 差 が 認 め られ な か っ た。 V III 血 液 学 的 所 見 各 群 の 結 果 をTable3,4に 血 球 数,白 hydrochloride .01 差 が み ら れ な くな っ た 。 と も,赤 Talampicillin (g/week/rat) control よ び1,000mg/kgで 度 な が ら抑 制 され た 。 しか し,2週 given 第11号 (g/week/rat) control of different rats 第49巻 示 した 。 各投 与 群 血 球 数,ヘ マ トク リ ッ ト値, 解 剖 時 肉眼 所 見 お よび 臓 器 湿 重 量 解 剖 時 の 肉眼 的 観 察 で は,300mg/kgと 1,000mg/ kgの 投 与 群 で盲 腸 が大 き くな って い た が粘 膜,筋 ヘ モ グ ロ ビ ン 量 な ど い ず れ の 項 目に も 対 照 群 と差 層 に 異 常 は な か った 。 これ らの ラッ ト に お い て は 認 め られ な か った 。 も,脳 ・胸 腹 部 臓器 な どに 異 常 は 観 察 され な か っ た 。100mg/kg以 下 で は い ず れ の 臓器 に も肉 眼 的 な IV 臨 床 化学 的 所 見 各 群 の 結 果 をTable5, 100mg/kg, 300mg/kgお し,雌 300mg/kgお 6に よ び1,000mg/kgの で は,100mg/kg, 示 した。 雄 で は よ び1,000mg/kgの アル ブ ミンが上 昇 300mg/kgお kgの 総 蛋 白 が 減 少 し た が,そ 総蛋 白 と よ び 1,000mg/ の程 度 は 軽 度 で あ っ 異 常 は観 察 され な か った 。 臓 器 湿 重 量 はTable7, 8に 示 した 。 脳 ・肺 ・肝 臓 ・腎臓 ・脾臓 ・精 巣 ・胸 腺 の 実重 量 あ るい は体 重 比 重 量 で軽 度 に増 減 を示 す 群 が あ った が,実 重 量 お よび体 重比 重 量 の両 方 で差 が あ 昭和50年11月20日 729 730 感 染 症 学 雑誌 Table 5. Values * biochemical represent , ** Table standard different 6. Serum biochemical ** values mean •} : Significantly Values *, Serum represent from values mean •} : Significantly っ た の は 雄1,000mg/kgの mg/kgと1,000mg/kgの standard different from in male rats given hydrochloride orally for 第11号 7 weeks error control at p<0. in female rats 05, p<0. given 01 Talampicillin hydrochloride orally for 7 weeks error control at p<0. 腎 臓 重 量 の 増 加,雌100 肝 臓 重 量 お よ び 雌 300mg/kg の 胸 腺 重 量 の 減 少 で あ った 。 VI Talampicillin 第49巻 05, p<0. 01 所 見 に 異 常 が 認 め られ な い こ と が 鈴 木 ら2)に よ っ て 報 告 され て い る 。 今 回 行 な っ た ラ ッ トの7週 性 で は,一 病理組織学的所見 い ず れ の 投 与 群 に お い て も 対 照 と差 の あ る 変 化 は 認 め られ な か っ た 。 間 経 口投 与 亜 急 性 毒 般 症 状 と し て300mg/kgと1,000mg/kgで 実 験 期 間 を 通 し て 軟 便 が 認 め ら れ,ま た剖 検 時 の 肉 眼 所 見 で 盲 腸 が 大 き くな っ て い た が,こ れは通 常 抗 生 物 質 を 大 量 投 与 し た 場 合 に 認 め られ る 変 化 考 TAPCを 察 に 一 致 す る も の で あ っ た3)4)5)。 マ ウ ス ・ラ ッ ト ・ヒ ト な ど に 経 口投 与 す る と血 中 に 高 濃 度 のampicillinが 検 出 され る1)。 雌 の1週 雄,100mg/kgと で 変 化 し た が,一 1,000 過性の 抑制 で 程 度 も軽 く成 長 に 影 響 を 与 え る 程 の も の で は な か ビ ー グ ル 犬 にTAPCを 性 で は,高 飼 料 摂 取 量 は100mg/kgの mg/kgの 経 口投与 した亜 急 性 毒 投 与 量 で 初 期 に 嘔 吐 が み ら れ る が,血 液 学 的 所 見,臨 床 化 学 的 所 見 お よび 病理 組 織学 的 った 。 血 液 学 的 所 見 に は 異 常 が み られ な か っ た が,臨 床 化 学 的 所 見 で は,雄 は100mg/kg以 上 で 総 蛋白 昭 和50年11月20日 731 732 感 染 症 学雑 誌 第49巻 第11号 は 副 検 時 に盲 腸 が 大 き くな って い た 。 雌 の1週 で れ 飼 料 摂 取 量 が 軽 度 に 抑 制 され た が,成 長 に は 影 ず れ も ラ ッ トで 通 常 響 が な か った 。血 清 臨 床 化 学 的 所 見 で 雄 の総 蛋 認 め られ る 変 動 範 囲 を 越 え る も の で は な か つ た 。 白 と アル ブ ミンが 上 昇 し,雌 の総 蛋 白は 減 少 し 病 理 組 織 検 索 で も い ず れ の 臓 器 組 織 に も異 常 所 見 た が,増 減 の 程 度 は 軽 度 で あ った 。 臓 器 重 量 で は 認 め られ て い な い 。 は,腎 臓 重 量 が 雄 で 増 加 し,雌 で 肝 臓 重 量 が 減 が,300mg/kg以 100mg/kg以 上 で ア ル ブ ミ ン が 上 昇 し,雌 上 で 総 蛋 白 が 減 少 した 。 しか し,こ ら の 増 減 の 程 度 は 軽 度 で,い 臓 器 実 重 量 お よ び 体 重 比 重 量 が 雄 で は1,000mg/ kgの 腎 臓 で 増 加 し,雌 mg/kgの で は100㎎/kgの 胸 腺,1,000mg/kgの 示 し た 。 し か し,そ 肝 臓, 300 肝 臓 で と もに 減 少 を の 増 減 の 程 度 は 軽 度 で,肉 少 した が,い ず れ も軽 度 な 変 化 であ った 。 V 病 理 組 織 学 的 所 見 を 含 め て,他 の項 目に は, 異 常 が な か った 。 眼 文 的 に も 病 理 組 織 所 見 に も異 常 所 見 は み られ て い な い。 1) 結 論 Shiobara, Y., Watanabe, T. を 水 溶 液 に し て7週 hydrochloride 間 経 口投 与 し,亜 (TAPC) 30mg/kgで は,薬 I 100mg/kgで 2) 物 投 与 の 影響 を認 め なか っ は,1週 の 飼 料 摂 取量 が雄 雌 と も 長 に 影響 は み られ な か で は 軽 度 に 減 少 した 。 臓器 重量 4) 剖 検 時 に盲 腸 の大 き くな っ てい る のが 観 察 され た。 血 清 臨 床 化 学 的 所 見 で総 蛋 白 と アル ブ ミン が 雄 で 上 昇 し,雌 で は 総 蛋 白 が 減 少 し た が,増 減 の程 度 は いず れ も軽 度 であ った 。 臓 器 重 量 で は雌 の胸 腺 重 量 が軽 度 に減 少 した 。 1,000mg/kgで 弘, も投 与 期 間 中 に 軟 便 が み られ, 55 : 間 毒 性 試 験. 感 染 症 学 雑 誌, 1975 H.: tract 佐渡卓朗 : の ビー グ ル犬 に Morphological of effects on rats. Exp. the of the gastrointes- Animals, 20 : 139•\ 1971. H. on with 肇, 武, : Inhibitory the : 187•\190, 横谷 口 三 木 寿 雄, administration Murakami, 20 of Antibiotics, hydrochloride administered 5) metabolism J. 吉 田 俊 夫, Murakami, molysant 与 期 間 中 に 軟 便 が み ら れ, (PC- ampicillinester. and ampicillin. : 746―759, 144, H., D-ƒ¿- 1974. 鈴木 tinal Sasaki, Phthalidyl active excretion and penicillin では 雌 の肝 臓 重 量 が 軽 度 に 減 少 した 。 IV orally Absorption, 49 った 。 血 清 臨 床 化 学 的 所 見 で 総 蛋 白 が雄 で は軽 は,投 T.: hydrochloride new Talampicillin 3) 度 に 上 昇 し,雌 A., Sado, お け る 経 口 投 与5週 軽 度 に 抑 制 さ れ た が,成 III 300mg/kgで a 665•\673, た。 II , PC-183 急性毒性を 検 討 した 。 以 下 に結 果 を要 約 す る。 I & aminobenzylpenicillinate 183) ラ ッ トにtalampicillin 献 Tachibana, cecal effect of enlargement penicillin. a spas- of Exp. rats Animals, 1971. 臼 居 敏 仁, 丹 田 勝, 萩 原 重 男, 織 田 茂, 彊:6-(1-Aminocyclohexane penicillanic 1970. 中 梶 原 carboxamido) acid (Aminocyclohexyl-penicillin) の 急 性 お よ び 亜 急 性 毒 性 実 験. 29 : 117―123, 野 村 正 治, 荒 蒔 義 知, 武 田 研 究 所 報, 733 昭 和50年11月20日 Toxicological Part Studies II. Yoshiharu Subacute administered toxicity Study in Rats Toshio YOSHIDA, Hisao MIKI and Takuro SADO Laboratories, Pharmaceutical Yamanouchi In male rats effect on the growth dosed with slightly the first during slightly was observed of kidney increased creased in females given 300 mg/kg parameters given as well as that remained within in any dose group. but this soft feces was noted during At 100 mg/kg slightly That of liver in females normal limits The increase In organ of thymus given and no administra- of the dose. 1000 mg/kg. food had and over, serum in females. over 300 mg/kg in males of the drug, of administration at autopsy. in males given the weight other 100 and 1000 mg/kg in males and decreased weight, were not observed was studied week At 300 and 1000 mg/kg, of caecum was observed increased albumin and in females rate. tion and enlargement hydrochloride Co., Ltd. The drug was decreased anomalies (TAPC) in rats. 100 mg/kg mg/kg. All the Oral Toxicity Susumu KAWAMURA, of talampicillin consumption of serum Hydrochloride orally for 7 weeks at doses of 30, 100, 300 and 1000 mg/kg. dosed with total protein Seven-Week KOTANI, Central Research of Talampicillin de- 100 and 1000 histopathological
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