Revised5Report on the Algorithmic Language Scheme

Revised5 Report on the Algorithmic Language
Scheme
RICHARD
H. ABELSON
N. I. ADAMS IV
D. H. BARTLEY
G. BROOKS
KELSEY, WILLIAM CLINGER, AND JONATHAN REES (Editors)
R. K. DYBVIG
C. T. HAYNES
G. J. ROZAS
D. P. FRIEDMAN
E. KOHLBECKER
G. L. STEELE JR.
R. HALSTEAD
D. OXLEY
G. J. SUSSMAN
C. HANSON
K. M. PITMAN
M. WAND
Dedicated to the Memory of Robert Hieb
日本語訳 (revision α1) 大岩 寛 ([email protected])
1998/02/20
概要
このレポートはプログラム言語 Scheme の定義と解説を与え
る。Scheme は、静的なスコープと正確な末尾再帰を持つ Lisp
の一種であり、Guy Lewes Steele Jr. と Gerald Jay Sussman
によってつくり出された。類を見ないほど明解で単純でセマ
ンティクスを持ち、式の書き方がほとんど一意になるように
設計されている。命令型、関数型、Message Passing Style
を含む広範囲なプログラムのパラダイムに Scheme は便利
であろう。
序論では Scheme 言語とこのレポートについて簡単な歴史
を示す。
最初の 3 章は、基本的な言語の考え方を与え、言語の説明と
プログラムの記述に用いている記述の凡例を示す。
4 章および 5 章では、式、プログラム、定義についての構
文とセマンティクスを示す。
6 章では、Scheme のデータ操作と入出力のプリミティブの
全てを含む、組み込み手続きについて説明する。
7 章では拡張 BNF を用いて正式な Scheme の文法を、正式
な表示的意味論とともにしめす。
最後には参考文献の一覧とアルファベット順の索引がある。
CONTENTS
序論 . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1 Scheme の概略 . . . . . . . . . . .
1.1 意味論 . . . . . . . . . . . .
1.2 構文 . . . . . . . . . . . . .
1.3 表記と用語 . . . . . . . . . .
2 構文の規約 . . . . . . . . . . . . .
2.1 識別子 . . . . . . . . . . . .
2.2 空白とコメント . . . . . . .
2.3 その他の表記 . . . . . . . . .
3 基本的なコンセプト . . . . . . . .
3.1 変数、構文キーワード、領域 .
3.2 型の独立性 . . . . . . . . . .
3.3 外部表現 . . . . . . . . . . .
3.4 記憶モデル . . . . . . . . . .
3.5 正確な末尾再帰 . . . . . . .
4 式 . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4.1 基本式 . . . . . . . . . . . .
4.2 派生式 . . . . . . . . . . . .
4.3 マクロ . . . . . . . . . . . .
5 プログラムの構造 . . . . . . . . . .
5.1 プログラム . . . . . . . . . .
5.2 定義 . . . . . . . . . . . . .
5.3 構文定義 . . . . . . . . . . .
6 標準手続き . . . . . . . . . . . . .
6.1 等価述語 . . . . . . . . . . .
6.2 数 . . . . . . . . . . . . . .
6.3 その他のデータ型 . . . . . .
6.4 制御機能 . . . . . . . . . . .
6.5 Eval . . . . . . . . . . . . .
6.6 入出力 . . . . . . . . . . . .
7 形式的な文法と意味論 . . . . . . .
7.1 形式的文法 . . . . . . . . . .
7.2 正式な意味論 . . . . . . . . .
7.3 派生式 . . . . . . . . . . . .
注釈 . . . . . . . . . . . . . . . . . .
追加資料 . . . . . . . . . . . . . . . .
例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
参考文献 . . . . . . . . . . . . . . . .
概念の定義、キーワード、手続きの索引
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
2
3
3
3
3
4
5
5
5
5
5
6
6
6
7
8
8
9
12
14
14
14
15
15
16
17
22
29
32
32
35
35
37
40
42
42
42
43
45
2
Revised5 Scheme
序論
プログラム言語は機能を次から次へと積み重ねるのではな
く、機能の追加が要求される原因である弱点と制限事項を取
り除いていくことで設計されるべきである。Scheme は、今
日用いられるプログラムパラダイムのほとんどと共に用い
るのに十分な柔軟性をもち、実用的で効率の良いプログラム
言語を構成するのには、組み合わせ方に制限のない非常に少
ない式構成のルールで十分であることを示している。
Scheme は、ファースト・クラス・プロシージャをλ計算の形
で取り込み、それによって動的型付け言語におけるブロック
構造と静的スコープルールの有用性を証明した最初のプログ
ラム言語の一つである。Scheme は、全ての変数に単一の構
文的環境を用い、また手続き呼び出しのオペレータ部分を引
数部分と同じように評価するために、プロシージャをシンボ
ルやλ式と区別した最初の主要な Lisp 方言である。繰り返
しの表現を完全に手続き呼び出しに頼ることから、Scheme
は末尾再帰手続き呼び出しは意味的に引数を渡す goto であ
ることを強調している。Scheme は広く使われている言語の
中で、これまで知られる制御構造の全てを合成可能なファー
スト・クラス脱出手続きを取り込んだ最初の言語である。そ
の後のバージョンの Scheme は Common Lisp の一般化演
算の拡張である正確・非正確な数の概念を導入した。より
最近では、Scheme はブロック構造言語の構文を一貫した信
頼できる方法で拡張することのできる hygienic macro をサ
ポートする最初のプログラム言語となった。
背景
最初の Scheme の記述は 1975 年 [28] に書かれた。最初の
改訂レポート [25] は 1978 年に出され、MIT の実装が革新
的なコンパイラをサポートするよう改良された時に、その言
語の発展を記述した。3 つの独立なプロジェクトが、Scheme
の変種を MIT、イェール、インディアナの各大学の授業で
使うために 1981 年から 1982 年に始まった [21, 17, 10]。
Scheme を使った入門的なコンピュータ科学の教科書が 1984
年に出版された [1]。
Scheme が広まっていくにつれ、ローカルな方言が広がり始
め、時には学生や研究者が他のサイトで書かれたコードを
理解するのを困難と感じるようになった。そのため、主要な
Scheme の実装の代表 15 人が 1984 年 10 月に集まり、より
良くより広く受け入れられる Scheme の実装を目指すこと
になった。彼らのレポート [4] は MIT とインディアナ大学
で 1985 年夏に発表された。さらなる改良が 1986 年春 [23]
と 1988 年春 [6] に行なわれた。この現在のレポートは 1992
年 6 月に Xerox PARC で行なわれた会合で合意されたさら
なる改良に基づいている。
このレポートは Scheme のコミュニティー全体に属するも
のと意図されている。したがってこの全体あるいは一部を
対価無しに複写することを認める。特に、Scheme の実装者
がこのレポートをマニュアルその他の文書の開始点として、
必要に応じて改変しつつ用いることを勧める。
謝辞
以下の方々の援助に感謝する: Alan Bawden, Michael Blair,
George Carrette, Andy Cromarty, Pavel Curtis, Jeff Dalton, Olivier Danvy, Ken Dickey, Bruce Duba, Marc Feeley, Andy Freeman, Richard Gabriel, Yekta Gürsel, Ken
Haase, Robert Hieb, Paul Hudak, Morry Katz, Chris Lindblad, Mark Meyer, Jim Miller, Jim Philbin, John Ramsdell, Mike Shaff, Jonathan Shapiro, Julie Sussman, Perry
Wagle, Daniel Weise, Henry Wu, and Ozan Yigit. Carol
Fessenden と Daniel Friedman と Christopher Haynes に、
“Scheme 311 version 4 reference manual” からの引用許可
に感謝する。Texas Instruments, Inc. に、TI Scheme Language Reference Manual[30] からの引用許可に感謝する。
MIT Scheme[17], T[22], Scheme 84[11],Common Lisp[27],
そして Algol 60[18] の各マニュアルに影響を受けたことに
感謝する。
また、Betty Dexter のこのマニュアルを TEX で組版した多
大な努力に、そして彼女の苦労の種となったプログラムをデ
ザインした Donald Knuth に感謝する。
マサチューセッツ工科大学人工知能研究室、インディアナ
大学のコンピュータ科学科、オレゴン大学のコンピュータ
情報科学科、NEC 研究所がこのレポートの準備を支援し
た。MIT の作業の一部の支援は、Office of Naval Research
contract N00014-80-C-0505 の元で、 Advanced Research
Projects Agency of the Department of Defense によってな
された。インディアナ大学の作業の支援は NSF grants NCS
83-04567 and NCS 83-03325 によってなされた。
1. Scheme の概略
3
言語の解説
1.
Scheme の概略
1.1. 意味論
この節では Scheme の意味論の概略を与える。非正式な意
味論の概略は、3 章から 6 章で与える。参照の目的には、
7.2 章で正式な Scheme の意味論を示す。
Algol 同様、Scheme は静的スコープを持つプログラム言語
である。変数の使用はそれぞれがその変数の構文的に明らか
な束縛に関連付けられる。
Scheme は型を決定することに関しては latent である。型は
変数にではなく値(オブジェクトとも呼ばれる)に関連付け
られる。(latent な型を持つ言語を弱く型付けされた、ある
いは動的に型付けされた言語と呼ぶ著者もいる。)Latent な
型を持つ言語には他に APL, Snobol, 他の Lisp 方言がある。
決定された型を持つ言語(強く型付けされた、あるいは静的
に型付けされた言語とも呼ばれる)は Algol 60、Pascal、C
言語などが含まれる。
関数や継続(continuation)を含む、Scheme の計算過程で
作られたオブジェクトは無限の寿命を持つ。Scheme の実装
が(大抵!)記憶を使い果たさないのは、あるオブジェクト
がその後の計算に影響を及ぼす可能性がない時に、そのオブ
ジェクトの占める記憶領域を回収することが許されているか
らである。オブジェクトが無限の寿命を持つような言語は他
に、APL や他の Lisp の方言がある。
Scheme の実装は正確に末尾再帰することが可能であること
が求められている。これにより、たとえ繰り返し計算が構文
的に再帰手続きとして書かれている場合であっても一定の領
域で計算することができる。よって、このような実装では繰
り返しは通常の関数呼びだしの手順で表現でき、特別な繰り
返しの構文はシンタックスシュガーとしてのみ有用である。
3.5 節を参照されたい。
Scheme の関数はれっきとしたオブジェクトである。関数は
動的に作ることができ、データ構造に格納でき、関数の帰
り値にしたりもできる。このような特徴を持つ言語は他に
Common Lisp や ML が含まれる。
Scheme の特徴的な機能の一つは、他の言語では実行の舞台
裏でのみ扱われる継続も「ファーストクラス」であることで
ある。継続は大域脱出、バックトラック、コルーチンといっ
たものを含む、いろいろな複雑な制御構造に用いることがで
きる。6.4 節を参照されたい。
Scheme の関数への引数は常に値で渡される。すなわち、実
際の引数の式は関数がその値を必要とするかしないかに関
わらず、関数が制御を得る前に評価される。ML、C 言語、
APL などは同じく常に引数が値渡しされる言語である。こ
れは Haskell の遅延評価方式や Algol 60 の名前渡し方式の
ように、関数がその値を必要とするまで式を評価しない方式
とは異なる。
Scheme の算術演算のモデルは、コンピュータの中での値の
表現方法の違いに依存しないように設計されている。Scheme
においては、全ての整数は有理数であり、全ての有理数は
実数であり、全ての実数は複素数である。よって、他の多
くの言語で重要であるような、整数と実数の演算の区別は
Scheme には存在しない。その代わりに存在するのは、数学
的に一意な数に対応する正確な数の演算と、近似に対応する
非正確な数の演算である。Common Lisp 同様、正確な数の
演算は整数に限定されない。
1.2. 構文
ほとんどの Lisp の方言同様、Scheme は完全に括弧付けさ
れた前置表記をプログラムと(その他の)データに用いる。
したがって、Scheme の文法は、データに用いられる言語の
部分言語を生成する。この単純で一様な表現の重要な帰着
は、Scheme のプログラムとデータが同様に他の Scheme の
プログラムから扱える感受性である。例えば、eval 関数は
データとして表現された Scheme のプログラムを評価する。
read 関数は構文的にも統語的にも読んだデータを分解す
る。read 関数はその入力をプログラムとしてではなくデー
タ(7.1.2 節)として分解する。
正式な Scheme の文法は 7.1 章で説明する。
1.3. 表記と用語
1.3.1. 基本、ライブラリ、任意の機能
Scheme の実装は任意と記されていない全ての機能をサポー
トする必要がある。実装は任意の機能を省くことができ、ま
たこのレポートの言語と干渉しない範囲で拡張することが
できる。特に、実装者は移植可能なコードをサポートするた
め、このレポートの構文的な規約を邪魔することのない構文
モードを提供しなければならない。
Scheme の実装や理解を助けるため、一部の機能はライブラ
リと記されている。これらは他の基本的な機能を用いて容易
に実装することができる。それらは厳密な語法でいえば冗
長であるが、良く使われる使用パターンを捉えており、よっ
て便利な短縮語法として用意されている。
1.3.2. エラーと未定義動作
このレポートでエラーの状況について触れるとき、「エラー
が報告される」というフレーズは実装がエラーを検出し報
告しなければならないことを意味する。そのような単語が
エラーの記述中にない場合、実装はエラーを検出し報告す
ることが推奨されるが、必ずしもそれは必要ではない。実装
が検出しなくてもよいエラーは大抵単純に「エラーである」
とされる。
例えば、関数にその関数が扱うと明示的に記されていない引
数を渡すことは、そのような値域エラーはこのレポート中
で時折触れられているが、エラーである。実装は関数の値域
4
Revised5 Scheme
の定義に、そのような引数値を含むよう拡張することがで
きる。
このレポートは「実装上の制約の違反を報告できる」とい
うフレーズで、実装により導入された制限によって正しいプ
ログラムの実行を続けられないことを報告することが許さ
れることを示す。実装上の制約はもちろん推奨されないが、
実装制約の違反を報告することは推奨される。
関数に取り扱うとされていない引数を渡すことはエラーで
ある。簡単のために、引数の名前が 3.2 節に示された型の
名前でもある時には、その変数はその型でなければならない
ことを示す。例えば、vector-ref の見出しは上の規約によ
れば vector-ref の第 1 引数がベクトルでなければならな
いことを示す。また、次の表記規約も型制約を暗に示すこと
とする。
例えば、実装はプログラムの実行に十分な記憶容量を持たな
い時、実装上の制約の違反を報告することができる。
obj
list, list1 , . . . listj , . . .
z, z1 , . . . zj , . . .
x, x1 , . . . xj , . . .
y, y1 , . . . yj , . . .
q, q1 , . . . qj , . . .
n, n1 , . . . nj , . . .
k, k1 , . . . kj , . . .
もし、式の値が「未定義である」とされているならば、式は
エラーを報告することなく何らかのオブジェクトに評価さ
れなければならないが、その値は実装に依存し、このレポー
トはその値について明示的に何も触れていないことを意味
する。
任意のオブジェクト
リスト (6.3.2 節を見よ)
複素数
実数
実数
有理数
整数
正確な非負整数
1.3.3. 項目の書式
4 章と 6 章は項目の集まりになっている。それぞれの項目
は言語の機能の一つか、関連する機能の集合かについて触れ
ており、それぞれの機能はプログラムの構文の構造か組み込
み関数である。それぞれの項目は 1 行あるいはそれ以上の
見出しで始まっており、必須、基本の機能に関しては
テンプレート
種類
のような、あるいはライブラリ、任意の機能に関しては修飾
子をそれぞれ 1.3.1 節に示した「ライブラリ」・「任意」と
して
テンプレート
修飾子 種類
のような形式で示す。
種類が “構文” であるとき、項目は式の種類を説明し、テンプ
レートがその式の構文を示す。式の構成要素は h式i、h変数i
のように角括弧を用いた構文変数によって示される。構文変
数はプログラムの一部を示すものである。例えば h式i は構
文的に正しい式であるようなあらゆる文字列を示す。
hもの1 i . . .
hもの1 i hもの2 i . . .
は 1 つ以上の hものi を示す。
種類 が “関数” であるとき、項目は関数を説明しており、見
出しの行は関数呼び出しのテンプレートを示す。テンプレー
ト中の変数の名前は italic になっている。よって次のような
見出し
(* 5 8)
=⇒
40
は式 (* 5 8) を評価するとオブジェクト 40 になることを示
す。あるいは、もっと細かくいえば、
「文字の列 “(* 5 8)”
で与えられる式が初期環境で評価されると、“40” という文
字の列で外部表現することのできるオブジェクトに評価され
る」ということである。3.3 節でオブジェクトの外部表現に
ついて論じる。
1.3.5. 名前の慣例
慣例として、常に論理値を返す関数の名前は大抵 “?” で終
る。それらは述語と呼ばれる。
また、ある型のオブジェクトを引数にとり別の型の類似のオ
ブジェクトを返す関数では、名前の途中に “->” がある。例
えば、list->vector はリストをとり、リストの要素と同じ
要素を持つベクトルを返す。
関数
は、組み込み関数 vector-ref がベクトル vector と正確な
非負整数 k (下を見よ)をとることを示している。次の見
出し
(make-vector k )
(make-vector k fill )
プログラム例中の記号 “=⇒” は “…は…に評価される” と
読まれる。例えば、
また、値を既に確保されたロケーション (3.4 節を見よ) に
格納する関数の名前は大抵 “!” で終る。それらは mutation
procedures と呼ばれる。慣例的には、mutation procedure
からの返り値は未定義である。
は 0 個以上の hものi を、
(vector-ref vector k )
1.3.4. 評価例
関数
関数
は、関数 make-vector は 1 つまたは 2 つの引数をとるよう
に定義されていることを示す。
2.
構文の規約
この節では非正式な形で Scheme のプログラムを書くのに
使われる構文の規約の一部について触れる。正式な Scheme
の構文については、7.1 節を見よ。
大文字と小文字は、文字定数と文字列定数の中を除いては
一切区別されない。例えば、Foo は FOO と同じ識別子であ
り、#x1AB は #x1ab と同じ数である。
3. 基本的なコンセプト
2.1. 識別子
2.3. その他の表記
他のプログラム言語で許されるほとんどの識別子は Scheme
でも許される。正確な識別子を構成するルールは Scheme の
実装によって異なるが、全ての実装においてアルファベット、
数字、そして「拡張アルファベット文字」の列で、数を始め
ることのできない文字で始まるものは識別子である。加え
て、+, -, ... は識別子である。識別子の例を挙げる。
数の表記法についての説明は、6.2 節を見よ。
lambda
q
list->vector
soup
+
V17a
<=?
a34kTMNs
the-word-recursion-has-many-meanings
拡張アルファベット文字は識別子の中でアルファベットと同
様に用いることができる。次のものが拡張アルファベット文
字である。
5
. + - これらは数の中で使われ、また、識別子の最初の文
字を除くあらゆる場所で用いることができる。単独の
+ や - も識別子である。
(数や識別子の中でない)区切
られたピリオドはペアの表記(6.3.2 節)の中で用いら
れ、また式の仮引数リスト(4.1.4 節)中で残りの引数
を示すために用いられる。区切られた 3 つのピリオド
の連続 “...” も識別子である。
( ) 括弧はグルーピングとリストの表記(6.3.2 節)に用い
られる。
’ シングルクオート文字はリテラルデータの表記に用いら
れる(4.1.2 節)。
` バッククオート文字はほとんど定数であるデータの表記
に用いられる(4.2.6 節)。
! $ % & * + - . / : < = > ? @ ^ _ ~
正式な識別子の構文は 7.1.1 を見よ。
, ,@ コンマ文字とコンマ–アットマークはバッククオート
と共に用いられる(4.2.6 節)。
識別子は Scheme プログラム中では次の 2 つの用法がある。
" ダブルクオートは文字列を区切るのに使われる(6.3.5 節)。
• あらゆる識別子は変数または構文キーワードとして用
いることができる。(3.1 節と 4.3 節を見よ).
\ バックスラッシュは文字定数(6.3.4 節)の構文で用いら
れると同時に、文字列定数(6.3.5 節)中でのエスケー
プ文字として用いられる。
• 識別子がリテラルとして、あるいはリテラル中で現れ
た場合(4.1.2 節を見よ)、シンボル(6.3.3 節を見よ)
を表すものとして用いられる。
2.2. 空白とコメント
[ ] { } | 大括弧と中括弧と縦棒は将来の拡張のために予
約されている。
# シャープは直後の文字に依存していろいろな目的に用い
られる。
#t #f これらは論理定数である(6.3.1 節)。
#\ これは文字定数を導入する(6.3.4 節)。
空白文字はスペースと改行である。
(実装は大抵タブや改ペー
ジといった空白文字を追加している。)空白は可読性の向上
と、識別子や数といった分割不可能な構文単位であるトーク
ン同士を分割する必要のために使われるが、それ以外には無
意味である。空白は 2 つのトークンの間におくことができ
るが、トークン内には置くことができない。空白はまた文字
列の中にも置くことができ、この場合は意味がある。
セミコロン (;) はコメントの開始を示す。 コメントはセミ
コロンが出現した行の行末まで続く。コメントは Scheme か
らは見えないが、改行は空白として見える。これはコメント
が識別子や数の途中に現れることを防いでいる。
;;; The FACT procedure computes the factorial
;;; of a non-negative integer.
(define fact
(lambda (n)
(if (= n 0)
1
;Base case: return 1
(* n (fact (- n 1))))))
#( これはベクトル定数を導入する(6.3.6 節)。ベクトル定
数は ) で終了する。
#e #i #b #o #d #x これらは数の表記で用いられる(6.2.4
節)。
3.
基本的なコンセプト
3.1. 変数、構文キーワード、領域
識別子は構文の種類か値を格納できる場所を名付けることが
できる。構文の種類を名付けるような識別子は構文キーワー
ドと呼ばれ、その構文に束縛されているという。ロケーショ
ンを名付ける識別子は変数と呼ばれ、そのロケーションに束
縛されているという。プログラムのある場所で有効な全ての
可視な束縛の集合は、その場所で有効な環境といわれる。あ
る変数の束縛されているロケーションに格納されている値は
その変数の値と呼ばれる。言葉の濫用であるが、変数は時に
6
Revised5 Scheme
は値の名前とか値に束縛されるといわれることがある。これ
は適切でないが、これにより混乱を招くことは稀である。
現は文字の列 “32” であり、2 つの整数 8, 13 からなるリス
トの外部表現は文字の列 “(8 13)” である。
ある種の式の種類は新たな構文を作り構文キーワードをそ
の構文に束縛し、またある別の種類の式は新しいロケーショ
ンを作り変数をそれに束縛する。これらの式の種類は束縛
を作る構文という。構文キーワードを束縛する構文は 4.3
節に列挙されている。最も基本的な変数を束縛する構文は
lambda 式である。何故なら全ての他の変数を束縛する構文
は lambda 式を用いて表現することができるからである。他
の変数を束縛する構文は let, let*, letrec, do 式である。
(4.1.4 節, 4.2.2 節, 4.2.4 節を見よ。)
オブジェクトの外部表現はただ 1 つである必要はない。整数
28 は “#e28.000” や “#x1c” といった表現を、また前のリ
ストは “( 08 13 )” や “(8 . (13 . ())))” (6.3.2 節を
見よ)といった表現を持つ。
多くのオブジェクトは標準の外部表現を持つが、手続きのよ
うに、標準の表現を持たないものもある(一部の実装はそれ
らの外部表現を持つかも知れない)。
外部表現は対応するオブジェクトを得るためにプログラム中
に書くことができる(4.1.2 節の quote を見よ)。
Algol や Pascal のように、そして Common Lisp を除くほ
外部表現はまた入出力にも使うことができる。手続き read
とんどの Lisp の方言と異なり、Scheme はブロック構造と
静的スコープを持つ言語である。プログラム中の変数が束 (6.6.2 節)は外部表現を解読し、手続き write(6.6.3 節)
は外部表現を生成する。両方とも簡潔で強力な入出力機能を
縛されている場所それぞれに、その束縛が有効であるプロ
提供する。
グラムの領域を関連付けることができる。領域は束縛を作
るそれぞれの束縛構文で判別できる。例えば束縛が lambda
文字の列 “(+ 2 6)” は、整数 8 に評価される式であるにも
式で作られたなら、その領域はその lambda 式全体である。 関わらず、整数 8 の外部表現でないことに注意すべきであ
全ての識別子の使用は、その識別子の束縛のうちその使用を
る。その代わりに、これはシンボル + と 2 と 6 の 3 要素か
含む最も内側の領域を形成するものを参照する。識別子の束
らなるリストの外部表現である。Scheme の構文は、式とな
縛で領域が使用を含むものがない場合、もしトップレベルの
る文字の列は必ずあるオブジェクトの外部表現になっている
環境にその識別子の束縛があるならそれを参照する(6 章及
という特徴がある。これは、与えられた文字の列がデータと
び 4 章)。もしその識別子の束縛がなければ、それは束縛さ
プログラムのどちらを表すか文脈から判読しにくいので混
れていないという。
乱の種となるが、同時に、インタプリタやコンパイラのよう
にプログラムをデータとして(そしてその逆も)扱うような
プログラムにとっては便利なものとなる。
3.2. 型の独立性
どのオブジェクトも次の述語のうち 2 つ以上を真にするこ
とはない。
boolean?
symbol?
char?
vector?
procedure?
pair?
number?
string?
port?
これらの述語はそれぞれ論理値 (boolean)、ペア (pair)、シ
ンボル (symbol)、数 (number )、文字 (char あるいは character )、文字列 (string)、ベクトル (vector)、ポート (port)、
手続き (procedure 、関数) を定義する。空リストはそれ独自
の型を持つ特別なオブジェクトであり、上に挙げた述語のど
れも真にしない。
独立した論理型というものが存在するにも関わらず、Scheme
のあらゆる値は条件テストにおいては論理値として使うこ
とができる。6.3.1 節に示すとおり、#f を除く全ての値は真
と判断される。
このレポートにおいて、「真」という言葉は #f を除くあら
ゆる Scheme の値を、「偽」という値は #f を示す。
3.3. 外部表現
Scheme(と Lisp)の重要なコンセプトは文字の列としての
オブジェクトの外部表現である。例えば、整数 28 の外部表
いろいろな種類のオブジェクトの外部表現は、6 章の各節で、
それらのオブジェクトを扱うプリミティブと共に述べる。
3.4. 記憶モデル
変数とペア、ベクトル、文字列といったオブジェクトは暗黙
のうちにロケーションあるいはロケーションの列を表現す
る。例えば文字列は文字列中に存在する文字数だけのロケー
ションを持つ(ロケーションは必ずしもマシンワード全体に
対応する必要はない)。新しい値はそれらのロケーションの
一つに手続き string-set! を用いて格納できるが、文字列
は前と同じロケーションを指し続ける。
変数参照か car, vector-ref, string-ref といった手続き
でロケーションから取得したオブジェクトは、そのロケー
ションに取得以前の最後に格納したオブジェクトと eqv? の
意味で等価である。
全てのロケーションは現在使用中であるかどうかを記録さ
れる。どの変数もどのオブジェクトもそのロケーションを参
照していないならばそれは未使用である。このレポートで
格納領域が変数かオブジェクトに確保されるというという
表現が出てきた時、それは適切な数のロケーションが未使用
のロケーションの集合の中から選ばれ、それらのロケーショ
ンは実際にオブジェクトや変数がそれらを指し示す前に使用
中であると記録されることを意味している。
多くのシステムで定数(リテラル式の値)は読みだし専用メ
モリにおかれることが望ましい。これを表現するためには、
3. 基本的なコンセプト
全てのロケーションを示すオブジェクトに、オブジェクトが
変更可能か変更不可能であるかを示すようなフラグがつい
ていると想像すると便利である。そのようなシステムではリ
テラル定数と symbol->string で返される文字列は変更不
可能なオブジェクトであり、その場合でもこのレポートの他
の手続きで作られるオブジェクトは変更可能である。変更不
可能なオブジェクトで示されるロケーションに新しい値を格
納しようとすることはエラーである。
3.5. 正確な末尾再帰
Scheme の実装は正確に末尾再帰することが求められてい
る。次に定義する構文の文脈で起こる手続き呼び出しは ‘末
尾呼びだし’ である。Scheme の実装において実行中の末尾
呼び出しの個数に制限がない時、その実装は正確に末尾再帰
している。呼び出しが実行中であるとは呼び出された手続き
がまだ値を返す可能性があることである。これは現在の継続
が値を返すことや前に call-with-current-continuation
で捕捉された継続が後から呼び出されて値を返すことを含
むことに注意しなければならない。捕捉された継続がなけ
れば、呼び出しは多くても 1 回しか値を返さず、実行中の呼
び出しはまだ値を返してない呼び出しに一致する。正確な “
正確な末尾再帰” の定義は [8] にある。
Rationale:
直観的には、末尾呼び出しで使われる継続はそれを含む手続きに
渡された継続と同じ意味を持つために、実行中の末尾呼び出しに
は容量を必要としない。不適切な実装はこの呼び出しに新しい継
続を使うかも知れないが、この新しい継続へ戻ると、直後にこの
呼出元手続きに渡された継続に戻ることになる。正確に末尾再帰
する実装はその継続に直接戻る。
正確な末尾再帰は Steele と Sussman のオリジナルバージョンの
Scheme の中心的アイディアの 1 つである。彼らの最初の Scheme
インタプリタは関数と作用子を実装していた。制御の流れは作用
子で表現され、これは値を呼出元に返す代わりに別の作用子に渡
すという点で関数と異なっていた。この節の語法に従えば、それぞ
れの作用子は別の作用子への末尾呼び出しで終っていた。
Steele と Sussman は後に彼らのインタプリタの作用子を扱うコー
ドは関数を扱うコードと同等であることを発見し、そのため両方
を言語に含むことは必要なくなった。
末尾呼び出しは末尾文脈で起こる手続き呼び出しである。末
尾文脈は導出的に定義されている。末尾文脈は常に特定のλ
式に着目して決定されることに注意されたい。
• 下で h末尾式i として示されているλ式本体の最後の式
は末尾文脈である。
(lambda hformalsi
h定義i* h式i* h末尾式i)
• 末尾文脈に以下の式がある時、h末尾式i で示される部
分式は末尾文脈にある。これらは 7 にある文法から、
h式i の一部を h末尾式i で置き換えることで得られた。
末尾文脈を含む規則のみがここに示されている。
7
(if h式i h末尾式i h末尾式i)
(if h式i h末尾式i)
(cond hcond 節i+ )
(cond hcond 節i* (else h末尾式列i))
(case h式i
hcase 節i+ )
(case h式i
hcase 節i*
(else h末尾式列i))
(and h式i* h末尾式i)
(or h式i* h末尾式i)
(let (h束縛記述i*) h末尾本体i)
(let h変数i (h束縛記述i*) h末尾本体i)
(let* (h束縛記述i*) h末尾本体i)
(letrec (h束縛記述i*) h末尾本体i)
(let-syntax (h文法記述i*) h末尾本体i)
(letrec-syntax (h文法記述i*) h末尾本体i)
(begin h末尾式列i)
(do (h繰り返し記述i*)
(hテストi h末尾式列i)
h式i*)
ここで
hcond 節i −→ (hテストi h末尾式列i)
hcase 節i −→ ((hデータi*) h末尾式列i)
h末尾本体i −→ h定義i* h末尾式列i
h末尾式列i −→ h式i* h末尾式i
• cond 式が末尾文脈にあり、(h式1 i => h式2 i) の形の節
を持つ時、h式2 i の評価結果の手続きの暗示された呼び
出しは末尾文脈にある。h式2 i 自体は末尾文脈にはない。
一部の組み込み手続きは末尾呼び出しをするように要求され
ている。apply と call-with-current-continuation へ
の第 1 引数、そして call-with-values の第 2 引数は末尾
呼び出しとして呼ばれなければならない。また、eval はそ
の引数を、eval 手続きの中で末尾の位置にあるように評価
しなければならない。
次の例で、末尾呼び出しは f への呼び出しだけである。g
や h の呼び出しは末尾呼び出しでない。x の参照は末尾文
脈にあるが、これは呼び出しではないので末尾呼び出しで
ない。
(lambda ()
(if (g)
(let ((x (h)))
8
Revised5 Scheme
x)
(and (g) (f))))
Note: 実装は上 h の呼び出しのような、末尾呼び出しのように
して評価可能な末尾でない呼び出しを認識することを許されるが、
要求はされない。上の例では、let 式は h への末尾呼び出しとし
てコンパイルすることができる。(h が期待しない数の値を返す可
能性は無視できる。何故ならそのような場合 let の効果は未定義
で実装依存である。)
式は基本と派生の 2 種類に分類される。基本式は変数と手
続き呼び出しを含む。派生式は意味論的には基本的でなく、
マクロとして定義することが可能である。マクロ定義が複雑
な quasiquote は例外として、派生式はライブラリ機能に
分類される。適切な定義は 7.3 節にある。
h変数i
構文
変数(3.1 節)からなる式は変数参照である。変数参照の値
は変数が束縛されているロケーションに格納されている値で
ある。束縛されていない変数を参照するのはエラーである。
=⇒
=⇒
7
12
手続き呼び出しは任意の個数の値を返すことができる(6.4 節
の values を見よ)。values を例外とすると、初期環境に
存在する手続きは 1 つの値か、手続き apply のようにそれ
らの引数の 1 つである関数の返り値をそのまま返す。
手続き呼び出しは combination とも呼ばれる。
=⇒
28
Note: 他の Lisp 方言と対照的に、評価の順序は未定義であり、
またオペレータ式とオペランド式は常に同じルールの元で評価さ
れる。
4.1.2. 定数式
(quote hデータi)
’hデータi
h定数i
構文
構文
構文
(quote hデータi) は hデータi に評価される。hデータi は
あらゆる Scheme のオブジェクトの外部表現である(3.3 節
を見よ)。この表記はリテラル定数を Scheme のコードの中
に含めるのに使われる。
=⇒
=⇒
=⇒
a
#(a b c)
(+ 1 2)
(quote hデータi) は ’hデータi と短縮できる。この 2 つの
表記は全ての面において等価である。
’a
’#(a b c)
’()
’(+ 1 2)
’(quote a)
’’a
(hオペレータi hオペランド1 i . . . )
構文
手続き呼び出しは単純に呼び出される手続きの式とそれら
に渡される引数を括弧で括ることで書かれる。オペレータと
オペランドの式は(未定の順序で)評価され、評価結果の手
続きに、評価結果の引数が渡される。
多数の手続きは変数の値として初期環境で利用可能である。
例えば、上の例の加算手続きや乗算手続きは変数 + と変数
* の値である。新たな手続きは lambda 式 によって作るこ
とができる(4.1.4 節を見よ)。
4.1.1. 変数参照
(quote a)
(quote #(a b c))
(quote (+ 1 2))
"abc"
"abc"
145932
145932
#t
#t
3.4 節で触れた通り、定数(リテラル式の値)を set-car!
や string-set! といった mutation procedure で変更する
のはエラーである。
(+ 3 4)
((if #f + *) 3 4)
4.1. 基本式
(define x 28)
x
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
4.1.3. 手続き呼びだし
式
4.
’"abc"
"abc"
’145932
145932
’#t
#t
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
a
#(a b c)
()
(+ 1 2)
(quote a)
(quote a)
数定数、文字列定数、文字定数、論理定数は “自分自身に”
評価される。よってそれらを quote する必要はない。
Note: 評価の順序は他に何も示されていないが、オペレータ・オ
ペランド式の並行する評価の結果はある順次実行の順序に一致し
ている必要がある。その評価順は手続き呼び出しごとに毎回違う
ものが選ばれてもよい。
Note: 多くの Lisp の方言では、空の combination () は正当な式
である。Scheme においては combination は少なくとも 1 つの部
分式を持つ必要があり、() は従って文法的に正しくない式である。
4.1.4. 手続き
(lambda h仮引数リストi h本体i)
構文
構文: h仮引数リストi は以下に述べる仮引数のリストでな
ければならず、h本体i は 1 つ以上の式の列でなければなら
ない。
意味: lambda 式は手続きに評価される。lambda 式が評価
される時に有効な環境は手続きの一部として記憶される。後
に手続きが実引数と共に呼び出された時、lambda 式が呼び
出された時の環境は、引数リスト中の変数を新しいロケー
ションに束縛することで拡張され、対応する実引数の値はそ
れらのロケーションに格納され、そして lambda 式本体の式
は拡張された環境で順に評価される。本体の最後の式の結果
が手続き呼び出しの結果として返される。
4. 式
(lambda (x) (+ x x))
((lambda (x) (+ x x)) 4)
=⇒
=⇒
4.1.6. 代入
手続き
8
(set! h変数i h式i)
(define reverse-subtract
(lambda (x y) (- y x)))
(reverse-subtract 7 10)
=⇒
3
(define add4
(let ((x 4))
(lambda (y) (+ x y))))
(add4 6)
=⇒
10
9
構文
h式i が評価され、その値が h変数i の束縛されたロケーショ
ンに格納される。h変数i は set! 式を含む何らかの領域か
トップレベルで束縛されてなければならない。set! 式の返
り値は未定義である。
h仮引数リストi は次の形式の 1 つでなければならない。
(define x 2)
(+ x 1)
(set! x 4)
(+ x 1)
=⇒
=⇒
=⇒
3
未定義
5
• (h変数1 i . . . ): この手続きは一定の数の引数をとる。手
続きが呼び出されると、引数は対応する変数の束縛先
に格納される。
4.2. 派生式
• h変数i: この手続きは任意の数の引数をとる。手続きが
呼び出されると、実引数の列は新たに確保されたリス
トに変換され、そのリストが h変数i の束縛先に格納さ
れる。
4.3 節で述べられる通り、このセクションの構文は hygenic
である。参照の目的に、7.3 節にはこの節で述べられている
ほとんどの構文を前の節で述べた基本構文に変換するマク
ロ定義が書かれている。
• (h変数1 i . . . h変数n i . h変数n+1 i): 最後の変数の前
にスペースで区切られたピリオドがある場合、手続き
はピリオドの前の仮引数の数を n (少なくとも 1 つは
なければならない)として、n 個以上の引数をとる。最
後の変数の束縛先には、他の仮引数に対応する実引数
の後に残った実引数の、新たに確保されたリストが格
納される。
h仮引数リストi 中に h変数i が 2 度以上現れるのはエラーで
ある。
((lambda x x) 3 4 5 6)
((lambda (x y . z) z)
3 4 5 6)
=⇒
(3 4 5 6)
=⇒
(5 6)
4.1.5. 条件分岐
構文
構文
構文: hテストi、h真の式i、h偽の式i は任意の式である。
意味: if 式は次のように評価される。最初に hテストi が評
価される。もしそれが真(6.3.1 節)に評価されるなら、つ
いで h真の式i が評価されその値が返される。そうでなけれ
ば h偽の式i が評価されその値が返される。もし hテストi が
偽に評価され h偽の式i がなければ、式の返り値は未定義で
ある。
(if (> 3 2) ’yes ’no)
(if (> 2 3) ’yes ’no)
(if (> 3 2)
(- 3 2)
(+ 3 2))
=⇒
=⇒
yes
no
=⇒
1
(cond h節1 i h節2 i . . . )
ライブラリ構文
構文: それぞれの h節i は、hテストi を任意の式として、
(hテストi h式1 i . . . )
の形である。あるいは、h節i は
(hテストi => h式i)
の形式でも良い。最後の h節i は 次の形式の “else 節” であっ
ても良い。
eqv? や ev? が手続きについても働くよう(6.1 節を見よ)、
lambda 式の評価結果の手続きは(概念的に)ロケーション
に対応付けされる。
(if hテストi h真の式i h偽の式i)
(if hテストi h真の式i)
4.2.1. 条件分岐
(else h式1 i h式2 i . . . ).
意味: cond 式の評価は、連続する h節i の中の hテストi を、
どれか一つが真(6.3.1 節を見よ)に評価されるまで順に評価
する。もしある hテストi が真に評価されたなら、その h節i
の残りの h式i は順に評価され、最後の h式i の値が cond 式
の返り値となる。もし選ばれた節が hテストi だけからなり
h式i がないなら、hテストi の評価結果が返り値となる。もし
選ばれた h節i が => の形式であるなら、まずその中の h式i
が評価される。その値は 1 引数をとることのできる手続き
でなければならない。その手続きが hテストi の値を引数と
して呼び出され、その返り値が cond 式の返り値となる。全
ての hテストi が偽に評価されたとき、else 節がなければ、
cond 式の返り値は未定義である。else 節がある時は、その
節の h式i が順に評価され、最後の h式i の値が返される。
(cond ((> 3 2) ’greater)
((< 3 2) ’less))
=⇒ greater
(cond ((> 3 3) ’greater)
((< 3 3) ’less)
(else ’equal))
=⇒ equal
(cond ((assv ’b ’((a 1) (b 2))) => cadr)
(else #f))
=⇒ 2
10 Revised5 Scheme
(case hキーi h節1 i h節2 i . . . )
ライブラリ構文
構文: hキーi は任意の式である。それぞれの h節i は、
((hデータ1 i . . . ) h式1 i h式2 i . . . )
の形式である。ここで hデータi はオブジェクトの外部表現
である。全てのデータはことなる必要がある。最後の節は次
の形式の “else 節” であってもよい。
(else h式1 i h式2 i . . . ).
意味: case 式は次のように評価される。まず hキーi が評
価され、その値がそれぞれの hデータi と比較される。もし
hキーi の評価結果がある hデータi と等価(eqv? の意味で。
6.1 節を見よ。)であるなら、対応する h節i の h式i が左から
右へ順に評価され、最後の h式i の結果が返される。hキーi
の評価結果がどの hデータi とも一致しないならば、else 節
がある時はその中の h式i が順に評価され、最後の h式i の
結果が返される。else 節がない時の case 式の結果は未定義
である。
(case (* 2 3)
((2 3 5 7) ’prime)
((1 4 6 8 9) ’composite)) =⇒
(case (car ’(c d))
((a) ’a)
((b) ’b))
=⇒
(case (car ’(c d))
((a e i o u) ’vowel)
((w y) ’semivowel)
(else ’consonant))
=⇒
composite
未定義
consonant
(and hテスト1 i . . . )
ライブラリ構文
hテストi の式が左から右へ評価され、最初に偽に評価され
た式の値(6.3.1 節を見よ)が返される。残りの式は評価さ
れない。全ての式が真に評価された時は、最後の式の値が返
される。式がない時は #t が返される。
(and (= 2 2) (> 2 1))
(and (= 2 2) (< 2 1))
(and 1 2 ’c ’(f g))
(and)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#f
(f g)
#t
(or hテスト1 i . . . )
ライブラリ構文
hテストi の式が左から右へ評価され、最初に真に評価され
た式の値(6.3.1 節を見よ)が返される。残りの式は評価さ
れない。全ての式が偽に評価された時は、最後の式の値が返
される。式がない時は #f が返される。
(or
(or
(or
(or
(= 2 2) (> 2 1))
(= 2 2) (< 2 1))
#f #f #f)
(memq ’b ’(a b c))
(/ 3 0))
4.2.2. 束縛構文
3 つの束縛構文 let, let*, letrec は Scheme に Algol 60
のようなブロック構造をもたらす。3 つの構文の文法は同じ
であるが、それぞれの作る変数の束縛の領域が異なってい
る。let 式では初期値はどの変数も新しく束縛されないうち
に計算される。let* 式では束縛と評価は順に実行される。
そして letrec 式では、束縛は他の初期値を計算する時点
で有効であり、したがって相互再帰の定義をすることがで
きる。
(let h束縛リストi h本体i)
ライブラリ構文
構文: h束縛リストi は次の形式を持つ。
((h変数1 i h初期化子1 i) . . . )
ここで h初期化子i は式であり、h本体i は 1 つ以上の式の列
である。束縛される変数のリスト中に h変数i が 2 度以上現
れるのはエラーである。
意味: h初期化子i は現在の環境で(ある未定義順序で)評
価され、h変数i はその結果を持つ新しいロケーションに束
縛される。h本体i は拡張された環境で評価され、最後の式
の結果が返される。それぞれの h変数i の束縛の持つ領域は
hbodyi である。
(let ((x 2) (y 3))
(* x y))
=⇒
6
(let ((x 2) (y 3))
(let ((x 7)
(z (+ x y)))
(* z x)))
=⇒
35
4.2.4 節の名前つき let も見よ。
(let* h束縛リストi h本体i)
ライブラリ構文
構文: h束縛リストi は次の形式
((h変数1 i h初期化子1 i) . . . )
を持ち、h本体i は 1 つ以上の式の列である。
意味: let* は let に似ているが、束縛は左から右に順に行
なわれ、(h変数i h初期化子i) で与えられる束縛の領域はそ
の束縛の直後からの let* 式の部分である。したがって 2 番
目の束縛は 1 つ目の束縛の有効な環境で行なわれ、3 番目以
降も同様である。
(let ((x 2) (y 3))
(let* ((x 7)
(z (+ x y)))
(* z x)))
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#t
#f
(letrec h束縛リストi h本体i)
=⇒
(b c)
構文: h束縛リストi は次の形式を持ち。
((h変数1 i h初期化子1 i) . . . )
70
ライブラリ構文
4. 式
11
h本体i は 1 つ以上の式の列である。束縛される変数のリス
ト中に h変数i が 2 度以上現れるのはエラーである。
しでどのように更新されるかを指定する。終了条件が満たさ
れた時、h式i を評価してループから抜ける。
意味: h変数i は最初に未定義値を持つ新しいロケーション
に束縛され、h初期化子i はその束縛後の環境で(未定義の
順序で)評価される。それぞれの h変数i に h初期化子i の評
価結果が代入され、h本体i がその環境で評価される。h本体i
の最後の式の評価結果が返される。それぞれの h変数i の束
縛は letrec 式全体を領域として持つので、相互再帰手続き
を定義することができる。
do 式は次のように評価される。まず h初期化子i が(未定義
順序で)評価される。h変数i が新しいロケーションに束縛さ
れ、h初期化子i の評価結果が代入され、繰り返しが始まる。
(letrec ((even?
(lambda (n)
(if (zero? n)
#t
(odd? (- n 1)))))
(odd?
(lambda (n)
(if (zero? n)
#f
(even? (- n 1))))))
(even? 88))
=⇒ #t
hテストi が真に評価されたときは、h式i が左から右に評価
され、最後の式の結果が返される。h式i が存在しない時は、
do 式の返り値は未定義である。
h変数i の束縛の領域は、h初期化子i を除く do 式全体であ
る。h変数i が do の変数に 2 度以上現れるのはエラーである。
h更新値i は省略可能で、その場合は (h変数ih初期化子i) の
代わりに (h変数i h初期化子i h変数i) と書くのと同等であ
る。
次の letrec についての制限事項は重要である。それぞれの
h初期化子i の値はどの h変数i の値も参照したりそれに代入
することなく評価できなければならない。もしこの制限に違
反するなら、それはエラーである。この制限は Scheme が
引数を名前でなく値で渡すため必要である。通常の letrec
の用法では、h初期化子i は全て lambda 式であり、この制
限は自動的に満たされる。
4.2.3. 順次実行
(begin h式1 i h式2 i . . . )
ライブラリ構文
h式i は左から右に順に評価され、最後の h式i の評価結果が
返される。この構文は入出力のような副作用を順序付けるの
に使われる。
(define x 0)
(begin (set! x 5)
(+ x 1))
=⇒
6
(begin (display "4 plus 1 equals ")
(display (+ 4 1)))
=⇒ 未定義
そして 4 plus 1 equals 5 を出力する
4.2.4. 繰り返し
(do ((h変数1 i h初期化子1 i h更新値1 i)
...)
(hテストi h式i . . . )
hコマンドi . . . )
毎回の繰り返しの最初にまず hテストi が評価される。もし
この結果が偽である(6.3.1 節を見よ)なら、hコマンドi の
式が順番に実行され、h変分i 式が未定義順序で評価され、
h変数i が新しいロケーションに束縛されて、h更新値i の評
価結果が代入されて、次の繰り返しにはいる。
(do ((vec (make-vector 5))
(i 0 (+ i 1)))
((= i 5) vec)
(vector-set! vec i i))
(let ((x ’(1 3 5
(do ((x x (cdr
(sum 0 (+
((null? x)
=⇒
7 9)))
x))
sum (car x))))
sum)))
=⇒
#(0 1 2 3 4)
25
(let h変数i h束縛リストi h本体i)
ライブラリ構文
“名前つき let” は do よりもより一般的なループ構文をもた
らし、再帰の表現もできる let の構文の変種である。h変数i
が h本体i 内で、仮引数が束縛された変数で本体が h本体i で
あるような手続きに束縛される他は、通常の let と同じ意
味・構文を持つ。よって h本体i の実行は h変数i で名付けら
れた手続きの呼び出しで繰り返すことができる。
(let loop ((numbers ’(3 -2 1 6 -5))
(nonneg ’())
(neg ’()))
(cond ((null? numbers) (list nonneg neg))
((>= (car numbers) 0)
(loop (cdr numbers)
(cons (car numbers) nonneg)
neg))
((< (car numbers) 0)
(loop (cdr numbers)
nonneg
(cons (car numbers) neg)))))
=⇒ ((6 1 3) (-5 -2))
ライブラリ構文
do は繰り返しの構文である。これは束縛される変数の集合
と、どのように最初に初期化されるか、そして毎回の繰り返
4.2.5. 遅延評価
(delay h式i)
ライブラリ構文
delay 構文は手続き force と共に、lazy evaluation や call
by need を実装するのに用いられる。(delay h式i) は将来
12 Revised5 Scheme
のある点で(手続き force によって)評価を要求でき、そ
の結果をもたらすような promise と呼ばれるオブジェクト
を返す。h式i が複数の値を返す時の効果は未定義である。
quasiquote, unquote, unquote-splicing が上で述べた場
所以外の hqq テンプレートi 内で現れた場合の動作は予測不
可能である。
より完全な delay の解説は、6.4 節の force の解説を見よ。
4.3. マクロ
4.2.6. Quasi クオート
(quasiquote hqq テンプレートi)
`hqq テンプレートi
構文
構文
“バッククオート” あるいは “quasi クオート” 式は、全て
ではないがほとんどの要素が既知のリストやベクトルの
構造を作るのに有用である。コンマが hqq テンプレートi
の中に現れない時は、`hqq テンプレートi の評価結果は
’hqq テンプレートi の評価結果と同じである。しかし、コ
ンマ が hqq テンプレートi に現れた時は、コンマに続く式
は評価(アンクオート)され、その結果はコンマとその式の
代わりに元の構造に挿入される。コンマが直後にアットマー
ク(@)を伴って現れた時は、それに続く式はリストに評価
されなければならない。リストの開き括弧と閉じ括弧は “引
き剥され” リストの要素はコンマ–アットマーク–式の列の代
わりに挿入される。コンマ–アットマークはリストやベクト
ルの hqq テンプレートi の中でのみ許される。
`(list ,(+ 1 2) 4)
=⇒ (list 3 4)
(let ((name ’a)) `(list ,name ’,name))
=⇒ (list a (quote a))
`(a ,(+ 1 2) ,@(map abs ’(4 -5 6)) b)
=⇒ (a 3 4 5 6 b)
`(( foo ,(- 10 3)) ,@(cdr ’(c)) . ,(car ’(cons)))
=⇒ ((foo 7) . cons)
`#(10 5 ,(sqrt 4) ,@(map sqrt ’(16 9)) 8)
=⇒ #(10 5 2 4 3 8)
quasi クオートはネストできる。置き換えは最も外側のバッ
ククオートと同じネストレベルのアンクオート要素でのみ起
こる。ネストレベルはそれぞれの quasi クオートの内側で 1
つずつ増え、それぞれのアンクオートの中で 1 つずつ減る。
`(a `(b ,(+ 1 2) ,(foo ,(+ 1 3) d) e) f)
=⇒ (a `(b ,(+ 1 2) ,(foo 4 d) e) f)
(let ((name1 ’x)
(name2 ’y))
`(a `(b ,,name1 ,’,name2 d) e))
=⇒ (a `(b ,x ,’y d) e)
`hqq テンプレートi と (quasiquote hqq テンプレートi)
という 2 つの表記は全ての面で同一である。また、,h式i は
(unquote h式i) と同等で、,@h式i は (unquote-splicing
h式i) と同等である。リストの car 要素がこれらのシンボ
ルであるリストから write で生成される外部表現は実装に
よって異なる。
(quasiquote (list (unquote (+ 1 2)) 4))
=⇒ (list 3 4)
’(quasiquote (list (unquote (+ 1 2)) 4))
=⇒ `(list ,(+ 1 2) 4)
i.e., (quasiquote (list (unquote (+ 1 2)) 4))
Scheme のプログラムはマクロと呼ばれる新たな式の種類を
定義して使うことができる。プログラムで定義された式の
形は
(hキーワードi hデータi ...)
という構文を持つ。ここで hキーワードi はユニークに式の
種類を決定する識別子である。この識別子をマクロの 構文
キーワードあるいは単にキーワードと呼ぶ。hデータi の個
数とその構文は式の形による。
それぞれのマクロの出現をマクロの使用と呼ぶ。マクロがよ
り基本的な構文にどのように変換されるかを示す規則の集
合をマクロの変換子と呼ぶ。
マクロ定義の機能は 2 つの部分からなる。
• 特定の識別子をマクロキーワードとし、それらをマク
ロの変換子と対応づけ、そのマクロの定義のスコープ
を制御する式
• マクロ変換子を定義するパターン言語
マクロの構文キーワードは変数の束縛を隠すことができ、ま
たローカル変数の束縛はキーワードの束縛を隠すことがで
きる。パターン言語を使ったマクロの定義は “hygienic” で
“参照等価性を持つ” ので、Scheme の構文スコープを保つ
ことができる [14, 15, 2, 7, 9]。
• マクロ変換子が識別子(変数またはキーワード)の束縛
を挿入する時は、その識別子は機能的にはそのスコー
プ中ずっとリネームされ、他の識別子との衝突を防ぐ。
トップレベルの define は束縛を導入することもある
ししないこともあることに注意せよ。5.2 節を見よ。
マクロ変換子が識別子への自由な参照を導入する時は、
その参照はマクロの使用の周囲のどんなローカル束縛
にもよらず、変換子が定義された場所での束縛を参照
する。
4.3.1. 構文キーワードの束縛構文
let-syntax と letrec-syntax は let と letrec と類似
であるが、変数を値を持つロケーションに束縛する代わり
に、キーワードをマクロ変換子に束縛する。構文キーワード
はまたトップレベルにも束縛できる。5.3 節を見よ。
(let-syntax h束縛リストi h本体i)
構文: h束縛リストiは次の形式を持つ。
((hキーワードi h変換子表現i) . . . )
構文
4. 式
それぞれの hキーワードi は識別子であり、h変換子表現i は
syntax-rules のインスタンスであり、h本体i は 1 つ以上
の式の列である。hキーワードi が束縛されるキーワードの
リスト中に 2 回以上出現するのはエラーである。
意味: h本体i は、let-syntax 式の構文環境を、キーワード
が hキーワードi であり、それぞれが指定された変換子に束
縛されているようなマクロで拡張して得られる構文環境で
展開される。それぞれの hキーワードi の束縛は h本体i を
その領域とする。
(let-syntax ((when (syntax-rules ()
((when test stmt1 stmt2 ...)
(if test
(begin stmt1
stmt2 ...))))))
(let ((if #t))
(when if (set! if ’now))
if))
=⇒ now
(let ((x ’outer))
(let-syntax ((m (syntax-rules () ((m) x))))
(let ((x ’inner))
(m))))
=⇒ outer
(letrec-syntax h束縛リストi h本体i)
構文
構文: let-syntax と同じである。
意味: h本体i は、letrec-syntax 式の構文環境を、キーワー
ドが hキーワードi であり、それぞれが指定された変換子に
束縛されているようなマクロで拡張して得られる構文環境で
展開される。それぞれの hキーワードi の束縛は h本体i だ
けでなくh束縛リストi をもその領域に持つので、変換子は
式を、letrec-syntax 式自身によって導入されるマクロの
使用に変換することができる。
(letrec-syntax
((my-or (syntax-rules ()
((my-or) #f)
((my-or e) e)
((my-or e1 e2 ...)
(let ((temp e1))
(if temp
temp
(my-or e2 ...)))))))
(let ((x #f)
(y 7)
(temp 8)
(let odd?)
(if even?))
(my-or x
(let temp)
(if y)
y)))
=⇒ 7
4.3.2. パターン言語
h変換子指定i は次の形式を持つ。
13
(syntax-rules hリテラル集合i h構文規則i . . . )
構文: hリテラル集合i は識別子のリストであり、それぞれの
h構文規則iは次のような形式である。
(hパターンi hテンプレートi)
h構文規則i のなかの hパターンi はマクロのキーワードから
始まる hパターンi のリストである。
hパターンi は識別子、定数、あるいは次のうちのいずれか
である。
(hパターンi ...)
(hパターンi hパターンi ... . hパターンi)
(hパターンi ... hパターンi h省略記号i)
#(hパターンi ...)
#(hパターンi ... hパターンi h省略記号i)
テンプレートは識別子か定数かあるいは次のうちのいずれ
かである。
(h要素i ...)
(h要素i h要素i ... . hテンプレートi)
#(h要素i ...)
h要素i は hテンプレートi あるいはそれに h省略記号i が続い
たものであり、h省略記号i は識別子 “...” である。(“...”
はテンプレートとパターンの中で識別子として使うことは
できない。)
意味: syntax-rules のインスタンスは hygienic な書き換
え規則の列を与えて新しいマクロ変換子を作る。キーワード
が syntax-rules によって変換子と関連付けられているマ
クロの使用は、h構文規則i に含まれるパターンと最も左の
h構文規則i から順に照合される。マッチが見つかると、マ
クロの使用は hygenical にテンプレートにしたがって書き換
えられる。
h構文規則i のパターンに出現する識別子は、パターンの始
めのキーワードである場合、hリテラル集合i に含まれる場
合、“...” である場合を除いてはパターン変数である。パ
ターン変数は特定の入力の要素とマッチし、テンプレート中
で入力の要素を参照するのに用いられる。hパターンi の中
に同じパターン変数が 2 度以上現れるのはエラーである。
h構文規則i 中でパターンを開始するキーワードはマッチン
グでは考慮されず、パターン変数でもリテラル識別子でも
ない。
Rationale: キーワードのスコープはそれをマクロ変換子に束縛す
る式または構文定義によって決定される。キーワードがパターン
変数かリテラル変数であったならば、そのパターンに続くテンプ
レートはキーワードが let-syntax と letrec-syntax のどちら
で束縛されるかに関わらずそのスコープに入るであろう。
hリテラル集合i に現れる識別子は対応する入力の一部分と
対応付けされるリテラル識別子として解釈される。入力の部
分式がリテラル識別子と対応するのは、それが識別子であ
り、そのマクロ式中とマクロ定義中での出現が同じ構文的束
縛を持つか、同じ識別子で両方とも構文的束縛を持たない場
合のみである。
パターンの一部で ... が後に続くものは、0 個以上の入力
の要素と対応する。hリテラル集合i 中に ... が出現すれば、
14 Revised5 Scheme
それはエラーである。パターンの中では、識別子 ... は部
分パターンの空でない列の最後に続かなければならない。
より正式には、入力の形式 F はパターン P と次の場合の
み対応する。
• P がリテラル識別子でない識別子である。
(let ((=> #f))
(cond (#t => ’ok)))
cond のマクロ変換子は => をローカル変数として、したがっ
て式として認識し、マクロ変換子が構文キーワードと認識
するトップレベルの識別子 => とは認識しない。よってこの
例は
(let ((=> #f))
(if #t (begin => ’ok)))
• P がリテラル識別子で F が同じ束縛を持つ識別子で
ある。
• P がリスト (P1 . . . Pn ) であり F が n 要素のリスト
で、各要素が P1 から Pn とそれぞれ対応する。
• P が不完全なリスト (P1 P2 . . . Pn . Pn+1 ) であり、
F が n 要素以上の不完全なリストであって、最初の n
要素が P1 から Pn とそれぞれ対応し、n 番めの “cdr”
が Pn+1 と対応する
• P が (P1 . . . Pn Pn+1 h省略記号i) の形式(ただし
h省略記号i は識別子 ...)であり、F が少なくとも n
要素ある完全なリストであって、最初の n 要素が P1
から Pn とそれぞれ対応し、残りの要素がすべて Pn+1
と対応する。
• P が #(P1 . . . Pn ) の形をしたベクトルであり、F が
n 要素のベクトルで各要素が P1 から Pn に対応する。
• P が #(P1 . . . Pn Pn+1 h省略記号i) の形式(ただし
h省略記号i は識別子 ...)であり、F が n 要素以上の
ベクトルであって最初の n 要素が P1 から Pn とそれ
ぞれ対応し、残りの各要素が Pn+1 と対応する。
• P がデータであり、F が P と手続き equal? の意味で
等しい。
マクロキーワードをその束縛のスコープ内で、どのパターン
ともマッチしない式で使用するのはエラーである。
マクロの使用が対応する h構文規則i のテンプレートにした
がって変換される時、テンプレート中のパターン変数は入
力中の対応した部分で置き換えられる。部分パターン中で
1 つ以上の識別子 ... を後に伴って現れたパターン変数は、
同じ数の ... が後に続く部分テンプレートでのみ許される。
それらは出力で、入力のマッチする部分全てに、示された通
りに分配されて置き換えられる。示された通りに出力を構成
することができないならばそれはエラーである。
テンプレートに現れるもののパターン変数でも ... でもな
い識別子は、出力にリテラル識別子として出力される。識別
子が出力に自由変数として出力される時は、それはその識別
子の、syntax-rules が現れた場所での束縛先を参照する。
リテラル識別子が束縛変数として挿入された時は、それは不
用意な自由変数の捕捉を避けるため、改名されたのと同様の
効果を持つ。
例えば、let と cond が 7.3 節の様に定義されたならば、そ
れらは(要求される通り)hygenic であり、次のはエラーと
ならない。
=⇒ ok
と展開され、不正な手続き呼び出しとなる
(let ((=> #f))
(let ((temp #t))
(if temp (’ok temp))))
とはならない。
5.
プログラムの構造
5.1. プログラム
Scheme のプログラムは式、定義、構文定義の列からなる。式
は 4 章で解説した。定義と構文定義がこの章の対象である。
プログラムは典型的にはファイルに格納されるかあるいは対
話的に実行中の Scheme にシステムに入力されるかである
が、他の方法も考えられる。ユーザーインタフェースの問題
はこのレポートの対象外である。(実際、Scheme は実際の
実装無しであっても、計算方法の表現のための記述法として
も有用である。)
プログラムのトップレベルでの定義と構文定義の出現は宣言
的に解釈できる。それらはトップレベルの環境に束縛を作る
か、あるいは既に存在するトップレベルの束縛の値を変更す
る。トップレベルに現れる式は命令的に解釈される。それら
はプログラムが起動された時あるいは読み込まれた時に順
次実行され、たいていはある種の初期化を行なう。
プログラムのトップレベルでは (begin h文1 i . . . ) は begin
の本体を構成する式、定義、構文定義の列と等価である。
5.2. 定義
定義は式が許される場所の一部で許されるが全ての場所で
許されるわけではない。それらは hプログラムi のトップレ
ベルか h本体i の先頭でのみ許される。
定義は次の形式の 1 つをとる。
• (define h変数i h式i)
• (define (h変数i h仮引数リストi) h本体i)
h仮引数リストi は 0 個以上の変数の列か、1 つ以上の
変数にスペースで区切られたピリオドと 1 つの変数で
ある(lambda 式と同じ)。この形式は
(define h変数i
(lambda (h仮引数リストi) h本体i)).
6. 標準手続き
と同等である。
15
に等価である。
• (define (h変数i . h仮引数i) h本体i)
h仮引数i は 1 つの変数である。この形式は
(define h変数i
(lambda h仮引数i h本体i)).
と同等である。
等価な letrec 式と同様に、h本体i 中でのそれぞれの内部
定義の h式i は、定義される h変数i のどの値も参照せず、ま
たどれにも代入することなく評価できなければならない。
内部定義が行なわれうる場所では (begin h定義1 i . . . ) は
begin の本体を構成する定義の列に等価である。
5.3. 構文定義
5.2.1. トップレベルの定義
構文定義は hプログラムi のトップレベルでのみ許される。
それらは次の形式を持つ。
プログラムのトップレベルでは、定義
(define-syntax hキーワードi h変換子指定i)
(define h変数i h式i)
は、h変数i が束縛されているなら効果的には代入文
(set! h変数i h式i)
と同じ効果を持つ。しかしながら h変数i が束縛されていな
い時は、この定義は代入する前に、h変数i を新しいロケー
ションに束縛する。これは束縛されていない変数に set! で
代入するとエラーとなるのとはことなる。
(define add3
(lambda (x) (+ x 3)))
(add3 3)
(define first car)
(first ’(1 2))
=⇒
6
=⇒
1
hキーワードi は識別子で、h変換子指定i は syntax-rules
のインスタンスでなければならない。トップレベルの構文環
境は hキーワードi を与えられた変換子に束縛することで拡
張される。
define-syntax 類似の内部定義の構文はない。
マクロは文脈的に許される限りは定義や構文定義に展開で
きるが、しかし構文キーワードのうちで、隠す定義中の文の
列中のある文が実際に定義や構文定義であるかであるかを
決定するのに必要であったり、グループとその後に続く式の
境目を定めるのに必要であるようなものを、隠すような形で
定義や構文定義をすることはエラーである。例えば、次のも
のはどれもエラーである。
(define define 3)
初期の環境に、ほとんどの変数を未定義値としたまま、全て
の使われる可能性のある変数をロケーションに束縛してある
Scheme の実装もある。このような実装ではトップレベルの
定義は完全に代入と同等である。
(begin (define begin list))
(let-syntax
((foo (syntax-rules ()
((foo (proc args ...) body ...)
(define proc
(lambda (args ...)
body ...))))))
(let ((x 3))
(foo (plus x y) (+ x y))
(define foo x)
(plus foo x)))
5.2.2. 内部定義
定義は h本体i(lambda, let, let*, letrec, let-syntax,
letrec-syntax および適当な形式の定義の本体)の先頭で
も行なうことができる。そのような定義は前に述べたトップ
レベル定義と対照して内部定義と呼ばれる。内部定義で定義
された変数は h本体i にローカルである。すなわち、h変数i
は代入ではなく束縛され、その束縛の範囲は h本体i 全体で
ある。
(let ((x 5))
(define foo (lambda (y) (bar x y)))
(define bar (lambda (a b) (+ (* a b) a)))
(foo (+ x 3)))
=⇒ 45
内部定義を含む h本体i は、常に完全に等価な letrec 式に
変換できる。例えば、上の let 式の例は
(let ((x 5))
(letrec ((foo (lambda (y) (bar x y)))
(bar (lambda (a b) (+ (* a b) a))))
(foo (+ x 3))))
6.
標準手続き
この章は Scheme の組み込み手続きについて述べる。Scheme
の初期環境(あるいはトップレベルの環境)には最初に、主
としてデータを扱う組み込み手続きなどの有意義な値を持っ
たロケーションに束縛されたいくつもの変数が存在する。例
えば、変数 abs は 1 引数をとり数の絶対値を計算する手続
き(が最初に格納されているロケーション)に束縛されてお
り、また変数 + は和を計算する手続きに束縛されている。組
み込み手続きのうちで他の組み込み手続きを用いて用意に
書くことのできるものは「ライブラリ手続き」としてある。
プログラムはトップレベル宣言を用いてあらゆる変数を束
縛できる。さらに、そのような束縛を代入(4.1.6 節を見よ)
16 Revised5 Scheme
を用いて変更できる。これらの操作は Scheme の組み込み
手続きの動作に影響しない。定義で導入されていないトップ
レベル束縛の変更は組み込み手続きの動作に未定義の効果
を与える。
6.1. 等価述語
手続き
eqv? はオブジェクトの有用な同値関係を定義する。簡単に
は、obj1 と obj2 が通常同じオブジェクト考えられる時に #t
を返す。この関係はわずかに解釈の余地があるが、次の部分
的な定義は全ての Scheme 実装の eqv? が満たす。
手続き eqv? は次の場合 #t を返す。
• obj1 と obj2 が共に #t あるいは共に #f である。
• obj1 と obj2 は共にシンボルで
(string=? (symbol->string obj1)
(symbol->string obj2))
=⇒ #t
Note: これは obj1 と obj2 がどちらも 6.3.3 節で触れた
“uninterned symbol” でないことを仮定している。このレ
ポートは実装依存の拡張における eqv? の動作を推測はし
ない。
• obj1 と obj2 は共に数であり、数として等しく(6.2 節
の = を見よ)、共に正確な数であるかあるいは共に非正
確な数である。
• obj1 と obj2 は共に文字であり、手続き char=? の意味
で同じ文字である。
• obj1 と obj2 はともに空リストである。
• obj1 と obj2 は記憶中(3.4 節)で同じロケーションを
持つペア・ベクトル・文字である。
• obj1 と obj2 はロケーションタグが等しい(4.1.4 節)手
続きである。
eqv? 手続きは次の場合 #f を返す。
• obj1 と obj2 は違う型である(3.2 節)。
obj1 と obj2 の一方は #t であるが他方は #f である。
• obj1 と obj2 はシンボルであるが
• obj1 と obj2 の一方は正確な数であり他方は非正確な数
である。
• obj1 と obj2 は手続き = が #f を返す数である。
述語は常に論理値(#t と #f)を返す手続きである。等価述
語は数学の同値関係(対称的で反射的で推移的なもの)の
計算上の類似物である。この節で述べる等価述語の中では、
eq? が最も細かく識別性があり、equal? はもっとも粗い。
eqv? はわずかに eq? より粗い。
(eqv? obj1 obj2 )
(string=? (symbol->string obj1 )
(symbol->string obj2 ))
=⇒ #f
• obj1 と obj2 は手続き char=? が #f を返す文字である。
• obj1 と obj2 は一方が空リストであるが他方は異なる。
• obj1 と obj2 は異なるロケーションを指し示すペア、ベ
クトル、文字列である。
• obj1 と obj2 は手続きであり、ある引数に関して(返り
値が異なるかあるいは副作用が異なるという)異なった
振舞いをする。
’a ’a)
=⇒
’a ’b)
=⇒
2 2)
=⇒
’() ’())
=⇒
100000000 100000000) =⇒
(cons 1 2) (cons 1 2))=⇒
(lambda () 1)
(lambda () 2))
=⇒
(eqv? #f ’nil)
=⇒
(let ((p (lambda (x) x)))
(eqv? p p))
=⇒
(eqv?
(eqv?
(eqv?
(eqv?
(eqv?
(eqv?
(eqv?
#t
#f
#t
#t
#t
#f
#f
#f
#t
次の例は上の規則が eqv? の動作を完全には定義しない例で
ある。このような場合、唯一確実なのは eqv? は必ず論理値
を返すということである。
(eqv? "" "")
(eqv? ’#() ’#())
(eqv? (lambda (x)
(lambda (x)
(eqv? (lambda (x)
(lambda (y)
x)
x))
x)
y))
=⇒
=⇒
未定義
未定義
=⇒
未定義
=⇒
未定義
次の例はローカルな状態を持つ手続きに対する eqv? の使
用である。gen-counter は内部に固有のカウンタを持つの
で、毎回区別可能な手続きを返す必要がある。しかしながら
gen-loser は内部状態が値にも副作用にも影響しないので、
毎回等価な手続きを返す。
(define gen-counter
(lambda ()
(let ((n 0))
(lambda () (set! n (+ n 1)) n))))
(let ((g (gen-counter)))
(eqv? g g))
=⇒ #t
(eqv? (gen-counter) (gen-counter))
=⇒ #f
(define gen-loser
(lambda ()
(let ((n 0))
(lambda () (set! n (+ n 1)) 27))))
(let ((g (gen-loser)))
6. 標準手続き
(eqv? g g))
=⇒
(eqv? (gen-loser) (gen-loser))
=⇒
#t
未定義
(letrec ((f (lambda () (if (eqv? f g) ’both ’f)))
(g (lambda () (if (eqv? f g) ’both ’g))))
(eqv? f g))
=⇒ 未定義
(letrec ((f (lambda () (if (eqv? f g) ’f ’both)))
(g (lambda () (if (eqv? f g) ’g ’both))))
(eqv? f g))
=⇒ #f
定数オブジェクト(リテラル式の結果)を変更することはエ
ラーであるので、実装は可能な場合定数間で構造を共有す
ることが許されるが、強制はしない。よって定数に対する
eqv? の値は時に実装依存となる。
(eqv? ’(a) ’(a))
(eqv? "a" "a")
(eqv? ’(b) (cdr ’(a b)))
(let ((x ’(a)))
(eqv? x x))
=⇒
=⇒
=⇒
未定義
未定義
未定義
=⇒
#t
Rationale: 上の eqv? の定義は手続きやリテラルの扱いに関して
実装に自由度を与えている。実装は 2 つのリテラルや手続きが等
価であることを検出してもしなくてもよいし、また等価なオブジェ
クトに同じポインタやビットパターンを用いて表現を統合しても
しなくてもよい。
(eq? obj1 obj2 )
手続き
eq? はいくつかの場合で eqv? よりも細かく区別をできる可
能性がある他は eqv? に類似している。
eq? と eqv? はシンボル、論理値、空リスト、ペア、手続
き、空でない文字列とベクトルに関しては同じ振舞いをす
る。eq? の数と文字に対する振舞いは実装依存であるが、必
ず真偽値を返し、真を返すのは eqv? も真を返す場合に限ら
れる。eq? はまた空ベクトルや空文字列に対し eqv? と違う
動作をしても良い。
(eq? ’a ’a)
(eq? ’(a) ’(a))
(eq? (list ’a) (list ’a))
(eq? "a" "a")
(eq? "" "")
(eq? ’() ’())
(eq? 2 2)
(eq? #\A #\A)
(eq? car car)
(let ((n (+ 2 3)))
(eq? n n))
(let ((x ’(a)))
(eq? x x))
(let ((x ’#()))
(eq? x x))
(let ((p (lambda (x) x)))
(eq? p p))
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
未定義
#f
未定義
未定義
#t
未定義
未定義
#t
=⇒
未定義
=⇒
#t
=⇒
#t
=⇒
#t
17
Rationale: 大抵、eq? は eqv? よりもより効率的に実装すること
ができる。例えば単純なポインタ比較でよく、複雑な動作をしな
くても済む。一つの理由は 2 数の比較は eqv? では定数時間でで
きないかも知れないが、ポインタ比較で実装された eq? は定数時
間で終る。eq? は、手続きに関して eqv? と同じ規則に従うので、
手続きを状態を持つオブジェクトの実装に使うようなアプリケー
ションでは eqv? と同様に用いることができる。
(equal? obj1 obj2 )
ライブラリ手続き
equal? は数やシンボルに対して eqv? を適用しながら、ペ
ア、ベクトル、文字列に対し再帰的に比較をする。一つの簡
単なルールは同じように出力されるものならば大抵 equal?
である。equal? は引数が循環するデータ構造の時は終了し
ないことがある。
(equal? ’a ’a)
(equal? ’(a) ’(a))
(equal? ’(a (b) c)
’(a (b) c))
(equal? "abc" "abc")
(equal? 2 2)
(equal? (make-vector 5 ’a)
(make-vector 5 ’a))
(equal? (lambda (x) x)
(lambda (y) y))
=⇒
=⇒
#t
#t
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#t
#t
=⇒
#t
=⇒
未定義
6.2. 数
数値計算は Lisp の世界では歴史的に軽視されてきた。Common Lisp が登場するまで、MacLisp システム [20] がわず
かに数値計算を効率的に行なう努力をしてきた他は、数値
計算を構成する方法についての深い考察はなかった。このレ
ポートは Common Lisp の委員会のすぐれた作業を認識し、
彼らの推奨の多くを受け入れる。いくつかの場面ではこのレ
ポートは Scheme の目的に沿うように彼らの推奨を単純化
あるいは一般化している。
Scheme の数がモデル化しようとしている数学的な数、
Scheme の数を実装するのに用いられる数の計算機表現、そ
して数を書くのに用いられる表記法の 3 者を区別するのは重
要である。このレポートは 数、複素数、実数、有理数、整
数といった型を数学的な数と Scheme の数の双方に対して
用いる。固定小数点や浮動小数点といった計算機表現は浮動
小数点数や浮動小数点数として参照する。
6.2.1. 数の型
数学的には数はあるレベルがその上のレベルの部分集合と
なるような部分型のタワーに分類することができる。
数
複素数
実数
有理数
整数
18 Revised5 Scheme
例えば 3 は整数である。よって 3 は有理数であり、実数で
あり、複素数である。これは 3 をモデルする Scheme の数
にも当てはまる。Scheme の数においては、これらの型は
number?, complex?, real?, rational?, integer? といっ
た述語で定義される。
数の型と計算機の中での表現の間には単純な関係はない。ほ
とんどの Scheme の実装者は少なくとも 2 つの異なった表
現を 3 に対して提供するが、その異なる表現は同じ整数を
指し示す。
Scheme の算術操作は数をできる限り実装表現とは独立に、
抽象的なデータとして取り扱う。Scheme の実装は浮動小数
点数や固定小数点数、そしてまた違った数の表現を使うかも
知れないが、それらはシンプル名なプログラムを書くプログ
ラマには見えてはならない。
しかしながら、正確に表現された数とそうでない数とのあ
いだの区別は重要である。例えば、データ構造のインデック
スや数式処理システムの係数などは正確でなければならな
いが、一方でたとえば計測結果などはもともと非正確だし、
無理数は有理数で近似されうるのでその場合非正確な数で
の近似となる。非正確な数の使用を正確な数を必要とする場
所での使用で検出するため、Scheme は明示的に正確な数を
非正確な数から区別する。この区別は型の次元とは直交して
いる。
6.2.2. 正確さ
Scheme の数は正確であるか非正確である。もし数が、正確
な定数で書かれるか、あるいは正確な数から正確な演算のみ
で得られたならば、その数は正確である。数は、非正確な定
数で書かれるか、非正確な要素を含む演算から得られたか、
非正確な演算から得られたならば非正確である。つまり非正
確な性質は数の伝染性の性質である。
もし 2 つの実装が正確な結果を、非正確な中間結果を用いず
に得たのであれば、その最終結果は数学的に等価であろう。
一方で不正確な数の演算では、浮動小数点演算といった近似
法が使われ得るので、必ずしも当てはまらない。しかし数学
的に正しい結果にできるだけ正しい結果を得ることは実装
の責任である。
+ のような有理演算は正確な引数を渡された時は常に正確な
結果を返すべきである。もし演算が正確な結果をつくり出す
ことができないのであれば、実装の制約の違反を報告する
か、あるいは暗黙のうちに結果を非正確な値に変換すること
ができる。6.2.3 節を見よ。
inexact->exact を例外として、この節で述べられる演算は
一つでも非正確な数を渡された時には非正確な数で結果を
返すべきである。しかし演算は、結果が引数の非正確さに影
響されないことを示すことができる時は、正確な結果を返す
ことができる。例えば、正確な 0 とあらゆる数との乗算で
は、他方の引数が非正確であっても正確な 0 を返すことがで
きる。
6.2.3. 実装の制約
Scheme の実装は必ずしも 6.2.1 の節に挙げた部分型の集合
の全てを実装する必要はない。しかし、Scheme 言語の思想
と実装の目的の双方に適合する一貫した部分集合を実装し
なければならない。例えば、全ての数は実数であるような実
装も十分有用である。
実装は全ての型について、この節の要求を満たす範囲内でサ
ポートする数の範囲を限定することが許される。どんな型
の正確な数の範囲も同じ型の非正確な数の範囲と異なって
良い。例えば、全ての非正確な実数を浮動小数点数で表現す
る実装が、非正確な実数の範囲(よって非正確な整数や有理
数の範囲)を浮動小数点数の表現範囲に限定した場合であっ
ても、実質的に無限精度の整数や有理数を実装して良い。さ
らに、そのような実装ではこの範囲の限界に近付いた時に、
表現可能な不正確な整数や有理数の間隔は非常に大きくな
ることが多い。
Scheme の実装は、リスト・ベクトル・文字列のインデック
スや、それらの長さの計算から返される値の範囲全体で正
確な整数をサポートしなければならない。手続き length,
vector-length, string-length は必ず正確な整数を返さ
なければならず、正確な整数以外をインデックスに使うこと
はエラーである。さらに、インデックスの範囲の任意の整数
定数は、正確な整数定数の形式で表現されている時には、こ
の範囲外でのどんな実装上の制約にもよらず、正確な整数と
して読み込まれなければならない。最後に、次に挙げた手続
きに正確な整数を引数として渡した場合で、数学的な答が実
装の正確な整数の範囲で表現可能である時には、必ず正確な
数を答として返さなければならない。
+
quotient
max
numerator
lcm
truncate
expt
remainder
min
denominator
floor
round
*
modulo
abs
gcd
ceiling
rationalize
実装は必ずしも要求はされないが、実質的に無限のサイズと
精度を持った正確な整数及び有理数をサポートし、上記の手
続きと手続き / に正確な引数を渡した時には常に正確な数
を返すことが推奨される。これらの手続きが正確な引数を渡
されて正確な結果を返すことができない時は、実装の制約の
違反を報告するか、あるいは暗黙のうちに結果を非正確な数
に変換することができる。そのような変換はのちにエラーを
引き起こす可能性もある。
実装は非正確な数の実装に、浮動小数点や他の近似表現を
用いて良い。このレポートは IEEE の 32 ビット及び 64 ビッ
トの浮動小数点数の表現を、浮動小数点数表現を用いる実装
が用いることを推奨するが強制はしない。他の表現を使う実
装はこれらの標準表現を用いた場合と同等かあるいはそれ
以上の精度を得るべきである [12]。
特に、浮動小数点数表現を用いる実装は次の規則に従わなけ
ればならない: 浮動小数点数の結果は少なくとも引数のどの
非正確な数の表現に使われた精度よりも同等以上の精度で表
6. 標準手続き
現されなければならない。sqrt のように非正確な可能性の
ある演算が正確な数に適用された場合、可能な限り正確な結
果を返すことが望ましい(が要求しない)。
(例えば正確な 4
の平方根は正確な 2 であるべきである。)しかしながら、正
確な数に対する演算が非正確な結果を生み出す場合(例えば
sqrt)、結果が浮動小数点数で表現されるならば、存在する
もっとも精度の高い浮動小数点数の形式を使わなければなら
ない。但し最高精度の浮動小数点数の形式と同等あるいはそ
れ以上の精度の他の表現ができる場合はその限りでない。
Scheme は多くの種類の数の表記を許すが、実装はその一部
の表記しかサポートしなくても良い。例えば、全ての数が実
数であるような実装においては、直交形式及び極形式の複素
数の表現はサポートする必要がない。実装が、読み込んだ正
確な数定数を正確な数で表現できない時は、実装の制約の違
反を報告しても良いし、暗黙のうちに定数を非正確な数で表
現しても良い。
6.2.4. 数定数の書式
数の表記表現の書式は正式には 7.1.1 節で触れる。大文字小
文字も区別は数定数の中ではなされない。
数は基数接頭語を使うことで 2 進、8 進、10 進、あるいは
16 進数で表記することができる。基数接頭語は #b (2 進)、
#o (8 進)、#d (10 進)、#x (16 進) である。基数接頭語がな
い場合、数は 10 進数で表現されているとみなされる。
数定数は接頭語を使うことで正確あるいは非正確であると
指定できる。#e が正確な数の、#i が非正確な数の接頭語で
ある。正確性の接頭語はどの基数接頭語の前後にもつけるこ
とができる。もし数の表記表現に正確性接頭語がついていな
い場合は、定数の正確性は正確あるいは非正確どちらもあり
える。表現が小数点を含む場合、あるいは “#” が数字の場
所にある場合は非正確であり、そうでなければ正確である。
非正確な数に複数の精度があるシステムでは定数の精度を
指示するのは有用である。そのために、数定数は非正確な
数表現の希望する精度を示す指数記号を用いて書くことが
できる。文字 s, f, d, l がそれぞれ short, single, double,
long の各精度の使用を示す。(4 種類の精度が存在しない場
合、4 種の精度指示はそれらの使用可能な精度の上に対応付
けられる。例えば、2 種類の内部表現がある実装では例えば
short と single を同じものに、long と double を同じものに
それぞれ対応付けることができる。)それに加えて、指数記
号 e は実装の標準の精度を指示する。標準の精度は少なく
とも double と同等の精度を持つが、実装はその標準をユー
ザが選択することを認めても良い。
3.14159265358979F0
single に丸める — 3.141593
0.6L0
long に拡張する — .600000000000000
6.2.5. 数値演算
読者は以下の数値演算の引数の型制約について、 1.3.3 節の
規約を参照されたい。また、この節で用いた例では、正確な
19
数表記で書かれた数定数は実際に正確な数で表現されている
と仮定している。また、一部の例は非正確な数表記で書かれ
た数定数が値の正確さを失うことなく表現できると仮定し
ている。非正確な数の表現に浮動小数点を用いる処理系で、
できるだけ結果が一致するように例中の非正確な定数は選
ばれている。
(number? obj )
(complex? obj )
(real? obj )
(rational? obj )
(integer? obj )
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
これら数の型の述語は数でないものを含むあらゆる引数に
適用できる。オブジェクトがそれぞれの名前の型である時に
#t を返し、そうでなければ #f を返す。一般的に、ある数
に型述語が真を返すならば、それより上位の型の述語は全て
真を返す。同様に、ある数に型述語が偽を返すならば、それ
より下位の型の述語は全て偽を返す。
もし z が非正確な複素数であるなら、(real? z) は (zero?
(imag-part z)) が真であるときその時のみ真になる。x が
非正確な実数であるなら、 (integer? x) は (= x (round
x)) が真である時その時のみ真となる。
(complex? 3+4i)
(complex? 3)
(real? 3)
(real? -2.5+0.0i)
(real? #e1e10)
(rational? 6/10)
(rational? 6/3)
(integer? 3+0i)
(integer? 3.0)
(integer? 8/4)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#t
#t
#t
#t
#t
#t
#t
#t
#t
Note: 非正確な数に対するこれらの型述語の振舞いは、不正確さ
が結果に影響を及ぼす可能性があるので信頼できない。
Note: 多くの実装では、手続き rational? は real? と同値であ
り、また complex? は number? と同じであるが、普通でない実装
では一部の無理数を正確に表すことができるかも知れないし、数
体系を複素数でない数をサポートするように拡張しているかも知
れない。
(exact? z)
(inexact? z)
手続き
手続き
これらの数値述語は値の正確性を調べる方法を与える。どん
な Scheme の数についても、この 2 つのどちらか 1 つが真
となる。
(= z1 z2 z3 . . . )
(< x1 x2 x3 . . . )
(> x1 x2 x3 . . . )
手続き
手続き
手続き
20 Revised5 Scheme
(<= x1 x2 x3 . . . )
(>= x1 x2 x3 . . . )
手続き
手続き
これらの手続きはそれぞれ引数が等しい、単調増加である、
単調減少である、広義単調増加である、広義単調減少である
ときに真となる。
これらの手続きは推移的でなければならない。
Note: これらの述語の Lisp 風の言語での伝統的な実装は推移的
ではない。
Note: 非正確な数をこれらの述語で比較することはエラーではな
いが、小さな不正確さが結果に影響するので結果は信用できない。
特に = と zero? についてはそれが言える。疑問があれば、数値解
析の専門家に相談されたい。
(zero? z)
(positive? x)
(negative? x)
(odd? n)
(even? n)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの数値述語は値のある性質について調べ、#t か #f
を返す。上の Note を参照されたい。
((((/
(/
3 4)
3 4 5)
3)
3 4 5)
3)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
-1
-6
-3
3/20
1/3
(abs x )
abs は引数の絶対値を返す。
(abs -7)
ライブラリ手続き
=⇒
7
(quotient n1 n2 )
手続き
(remainder n1 n2 )
手続き
(modulo n1 n2 )
手続き
これらの手続きは数値理論的な(整数)除算を実装する。n2
は 0 であってはならない。この 3 つの手続きは全て整数を
返す。もし n1 /n2 が整数であるなら、
(quotient n1 n2 )
(remainder n1 n2 )
(modulo n1 n2 )
=⇒ n1 /n2
=⇒ 0
=⇒ 0
である。もし n1 /n2 が整数でなければ、
(max x1 x2 . . . )
(min x1 x2 . . . )
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは引数の最大および最少を返す。
(max 3 4)
(max 3.9 4)
=⇒
=⇒
4
4.0
; 正確
; 不正確
(quotient n1 n2 )
(remainder n1 n2 )
(modulo n1 n2 )
=⇒ nq
=⇒ nr
=⇒ nm
である。ここでnq は n1 /n2 を 0 に向かって丸めたもので、
0 < |nr | < |n2 |, 0 < |nm | < |n2 | であり、nr と nm は n1
と n2 の整数倍だけ異なり、nr は n1 と同じ符号を、nm は
n2 と同じ符号をとる。
Note: もし引数の 1 つでも非正確であるならば、結果は非正確数
となる(手続きがそれらの非正確さが結果に影響しないことを示
すことができる場合はその限りでないが、それは特殊な実装での
み可能である)。min や max が正確・非正確の混ざった数値を比較
する場合で、答が非正確数として情報の損失なしに表現できない
場合、手続きは実装の制約の違反を報告して良い。
よってこれより、整数 n1 と 0 でない整数 n2 について、全
ての関係する数値は正確な数であるとして、
(+ z1 . . . )
(* z1 . . . )
が成り立つ。
手続き
手続き
これらの手続きは引数の和及び積を返す。
(+ 3 4)
(+ 3)
(+)
(* 4)
(*)
((((/
(/
(/
z1
z)
z1
z1
z)
z1
z2 )
z2 . . . )
z2 )
z2 . . . )
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
7
3
0
4
1
手続き
手続き
任意手続き
手続き
手続き
任意手続き
2 引数以上で呼ばれた場合、これらの手続きは引数の左結合
での差および商を返す。1 引数の場合は、引数の加算的ある
いは乗算的な逆元を返す。
(= n1 (+ (* n2 (quotient n1 n2 ))
(remainder n1 n2 )))
=⇒ #t
(modulo 13 4)
(remainder 13 4)
=⇒
=⇒
1
1
(modulo -13 4)
(remainder -13 4)
=⇒
=⇒
3
-1
(modulo 13 -4)
(remainder 13 -4)
=⇒
=⇒
-3
1
(modulo -13 -4)
(remainder -13 -4)
=⇒
=⇒
-1
-1
(remainder -13 -4.0)
=⇒
-1.0
(gcd n1 . . . )
(lcm n1 . . . )
; 非正確
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは引数の最大公約数および最小公倍数を返
す。返り値は常に非負である。
6. 標準手続き
(gcd 32 -36)
(gcd)
(lcm 32 -36)
(lcm 32.0 -36)
(lcm)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
4
0
288
288.0
1
(numerator q)
(denominator q)
; 非正確
手続き
手続き
これらの手続きは引数の分子と分母を返す。結果は引数が最
も簡単な分数で表現されたかのように計算される。分母は常
に正であり、0 の分母は 1 と定義されている。
(numerator (/ 6 4))
=⇒ 3
(denominator (/ 6 4))
=⇒ 2
(denominator
(exact->inexact (/ 6 4))) =⇒ 2.0
(floor x )
(ceiling x )
(truncate x )
(round x )
手続き
手続き
手続き
手続き
これらの手続きは整数を返す。floor は x を越えない最大
の整数を返す。ceiling は x を下回らない最小の整数を返
す。truncate は絶対値が x の絶対値を越えない最も x に
近い整数を返す。round は x に最も近い整数を返し、ちょ
うど 2 整数の中間に x が存在する時には偶数に丸める。
Rationale: IEEE 浮動小数点標準の標準の丸めモードと一貫し
て、round は偶数に丸める。
Note:
これらの手続きへの引数が非正確な数であるなら、結
果も非正確な数となる。正確な数が必要ならば、結果を手続き
inexact->exact に渡す必要がある。
(floor -4.3)
(ceiling -4.3)
(truncate -4.3)
(round -4.3)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
-5.0
-4.0
-4.0
-4.0
(floor 3.5)
(ceiling 3.5)
(truncate 3.5)
(round 3.5)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
3.0
4.0
3.0
4.0
(round 7/2)
(round 7)
=⇒
=⇒
4
7
この順序づけで全ての有理数が比較可能ではないが、(2/7
と 3/5 を比較せよ)全ての区間にはその区間内の他の有理
数と比べても単純であるような有理数が存在する(より単純
な 2/5 が 2/7 と 3/5 の間にある)。0 = 0/1 は最も単純な
有理数である。
(rationalize
(inexact->exact .3) 1/10) =⇒ 1/3
(rationalize .3 1/10)
=⇒ #i1/3
; 正確
; 非正確
(exp z)
(log z)
(sin z)
(cos z)
(tan z)
(asin z)
(acos z)
(atan z)
(atan y x)
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
これらの手続きは一般的な実数をサポートする全ての実装に
含まれ、これらは常用される超越関数を計算する。log は z
の自然対数(常用対数ではない)を、asin, acos, atan は
それぞれ逆正弦 (sin−1 )、逆余弦 (cos−1 )、逆正接 (tan−1 )
を計算する。2 引数の atan は、複素数をサポートしない実
装でも (angle (make-rectangular x y))(後述)を計算
する。
一般には、数学的な対数・逆三角関数は多価関数である。log z
の値は虚数部の値が −π を越え π 以下の範囲にあると定義
する。log 0 は定義されない。log をこのように定義すると、
逆三角関数の値は次の式で定義できる。
p
sin−1 z = −i log(iz + 1 − z 2 )
cos−1 z = π/2 − sin−1 z
tan−1 z = (log(1 + iz) − log(1 − iz))/(2i)
以上の定義は [27] にしたがっており、これは [19] を引用し
ている。枝切り、境界条件、これらの関数の実装については
これらの文献を参照されたい。可能な限りこれらの手続きは
実数引数からは実数の結果を返す。
(sqrt z)
; 非正確
; 正確
手続き
z の平方根の主値を返す。結果は正の実数部を持つか、実数
部が 0 である場合は非負の虚数部を持つ。
(expt z1 z2 )
(rationalize x y)
21
ライブラリ手続き
手続き
z1 を z2 乗した結果を返す。z1 6= 0 であるなら
z1 z2 = ez2 log z1
rationalize は x から y 以上離れていない最も単純な有理
数を返す。2 つの有理数を r1 = p1 /q1 、r2 = p2 /q2(既約分
数とする)としたとき、 |p1 | ≤ |p2 | かつ |q1 | ≤ |q2 | である
ならば、有理数 r1 は有理数 r2 より単純であるという。よっ
て 3/5 は 4/7 より単純である。
である。0z は z = 0 のとき 1 でありそれ以外は 0 である。
(make-rectangular x1 x2 )
(make-polar x3 x4 )
手続き
手続き
22 Revised5 Scheme
(real-part z)
(imag-part z)
(magnitude z)
(angle z)
手続き
手続き
手続き
手続き
これらの手続きは一般の複素数をサポートする全ての実装
に含まれる。x1 , x2 , x3 , and x4 を実数とし、z を
z = x1 + x2 i = x3 · eix4
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
もし z が非正確で、基数が 10 であり、小数点を含む表現で
上の式を満たすことができるならば、返り値は小数点を含み
上の式を満たすことのできる最小の桁数で(桁合わせ及び末
尾の 0 を除いて)表現される。そうでなければ返り値の形式
は未定義である。
number->string で返される値は明示的な基数接頭語を含
まない。
を満たす複素数とすると、
(make-rectangular x1 x2 )
(make-polar x3 x4 )
(real-part z)
(imag-part z)
(magnitude z)
(angle z)
を満たすように返す。この式を満たすような値が存在しない
場合はエラーである。
z
z
x1
x2
|x3 |
xangle
Note: エラーは唯一、 z が複素数でないか、無理数の実部あるい
は虚部を持つ複素数であるばあいのみ起こる。
Rationale: z が浮動小数点で表現された非正確な数で、基数が 10
であるなら、上の式は小数点を含む結果で通常満たされる。未定
義のケースは無限大、NaN、浮動小数点でない表現などを許す。
である。ただし xangle は−π < xangle ≤ π でかつある整数
n について xangle = x4 + 2πn となる実数である。
(string->number string)
(string->number string radix )
Rationale: Magnitude は実引数については abs と等価であるが、
abs は全ての実装に必要なのに対し、 Magnitude は一般の複素数
をサポートする実装でのみ必要とされる。
string で表現されるもっとも精度の高い表現の数値を返す。
radix は正確な整数 2, 8, 10, 16 でなければならない。指定
された時は、radix は標準の基数となるが、string 中の明示
的な基数接頭語が優先する(例えば "#o177" )
。もし radix
が指定されなければ、標準の基数は 10 である。string が構
文的に正しい数値の表記でなければ、string->integer は
#f を返す。
(exact->inexact z)
(inexact->exact z)
手続き
手続き
exact->inexact は z の非正確な数の表現を返す。返り値
は数値的に引数にもっとも近い非正確な数である。正確な数
の引数が適切に近い非正確な数を持たない場合は、実装の制
約の違反を報告して良い。
inexact->exact は z の正確な数の表現を返す。返り値は
数値的に引数にもっとも近い正確な数である。非正確な数の
引数が適切に近い正確な数を持たない場合は、実装の制約の
違反を報告して良い。
これらの手続きは実装依存の範囲の整数について、正確な数
と非正確な数の間の自明な 1 対 1 の対応を作る。6.2.3 節を
見よ。
6.2.6. 数値入出力
(number->string z )
(number->string z radix )
手続き
手続き
radix は正確な整数 2, 8, 10, 16 のどれかでなければならな
い。省略された場合は 10 とみなされる。手続き number->
string は数値 z と基数 radix をとり、与えられた数の与
えられた基数での外部表現の文字列を、
(let ((number number)
(radix radix))
(eqv? number
(string->number (number->string number
radix)
radix)))
(string->number
(string->number
(string->number
(string->number
"100")
"100" 16)
"1e2")
"15##")
手続き
手続き
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
100
256
100.0
1500.0
Note: string->number の定義域は実装によって次のように制限
できる。string->number は string が明示的な基数接頭語を持っ
ている場合は #f を返しても良い。もし実装のサポートする数の範
囲が実数であるならば、string->number は直交座標および極座
標を用いた複素数の表記に対して #f を返しても良い。もし全ての
数が整数であるならば、string->number は分数表記が使われて
いる場合に #f を返しても良い。また、全ての数が正確な数であ
るならば、string->number は指数記号か明示的な正確性接頭語
が用いられている場合、または # が数字の位置に現れている場合
に #f を返しても良い。もし全ての非正確な数が整数であるなら
ば、string->number は小数点が使われている場合に #f を返して
良い。
6.3. その他のデータ型
この節では数値以外の Scheme のデータ型、すなわち論理
型、ペア、リスト、シンボル、文字、文字列、ベクトルにつ
いての演算を説明する。
6.3.1. 論理値
標準の論理値のオブジェクトは真偽それぞれ #t と #f とか
かれる。しかし、実際に問題となるのは Scheme の条件式
(if, cond, and, or, do)がオブジェクトを真偽どちらとし
6. 標準手続き
て扱うかである。“真の値” (あるいは単純に “真”) といっ
た場合は条件式で真とみなされるあらゆるオブジェクトを、
“偽の値”(あるいは “偽”)といった場合は条件式が偽とみ
なすあらゆるオブジェクトを指す。
全ての標準の Scheme の値の中で、#f だけが条件式で偽と
扱われる。#t, ペア、空リスト、シンボル、数、文字列、ベ
クトル、手続きなど、#f 以外の全ての値が真と扱われる。
Note: 他の Lisp の方言に慣れたプログラマは、Scheme は空リ
ストと #f を、どちらもシンボル nil と区別することに注意すべ
きである。
=⇒
=⇒
=⇒
(not obj )
リストの連続するペアの car フィールドに含まれるオブジェ
クトがリストの要素である。例えば、2 要素のリストは car
がリストの第 1 要素で、cdr が「car がリストの第 2 要素で
cdr が空リストであるペア」であるペアである。リストの長
さは要素の数であり、ペアの数に一致する。
空リストはそれ独自の型を持つ特別なオブジェクトである
(ペアではない)。空リストは要素を持たず長さは 0 である。
Note: 以上の定義は全てのリストは有限の長さを持ち空リストで
終ることを暗に示している。
#t
#f
#f
Scheme のペアのもっとも一般的な表記(外部表現)は「ドッ
ト対」表現 (c1 . c2 ) であり、ここで c1 は car フィール
ドの値、c2 は cdr フィールドの値である。例えば (4 . 5)
は car が 4 で cdr が 5 であるペアである。(4 . 5) はペア
の外部表現であり、ペアに評価される式ではないことに注意
せよ。
ライブラリ手続き
リストはより直線的な表記をすることもできる。リストの要
素を単純に括弧で括り空白で区切れば良い。空リストは ()
と書かれる。例えば、
論理定数は自分自身に評価されるので、プログラム中でク
オートする必要はない。
#t
#f
’#f
not は obj が偽の時に #t を、それ以外は#f を返す。
(not
(not
(not
(not
(not
(not
(not
#t)
3)
(list 3))
#f)
’())
(list))
’nil)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
(boolean? obj )
#f
#f
#f
#t
#f
#f
#f
(a b c d e)
と
(a . (b . (c . (d . (e . ())))))
はシンボルのリストの等価な表記である。
空リストで終らないペアの連続は不完全リストと呼ばれる。
不完全リストはリストではない。リストとドット対の表記は
不完全リストを表現するために併用することができる。
ライブラリ手続き
boolean? は obj が #t か#f の時に #t を、それ以外は #f
を返す。
(boolean? #f)
(boolean? 0)
(boolean? ’())
=⇒
=⇒
=⇒
23
#t
#f
#f
6.3.2. ペアとリスト
ペア(ドット対とも呼ばれる)は car および cdr と(歴史的
事情により)呼ばれる 2 つのフィールドからなるレコード構
造である。ペアは手続き cons によって作られる。car, cdr
の各フィールドは手続き car および cdr でアクセスできる。
それぞれのフィールドは手続き set-car! と set-cdr! を
用いて代入できる。
ペアは主にリストを表現するために用いられる。リストは再
帰的に、空リストか cdr がリストであるペアとして定義さ
れる。より厳密には、リストの集合は次の条件を満たす最小
の集合 X として定義される。
• 空リストは X に含まれる。
• list が X に含まれるならば、cdr フィールドに list を
持つあらゆるペアも X に含まれる。
(a b c . d)
と
(a . (b . (c . d)))
は等価である。
あるペアがリストであるかどうかは cdr に何が格納されて
いるかによる。set-cdr! を用いると、ある時にはリストで
あったオブジェクトが次の時にはリストでなくなっているこ
ともあり得る。
(define x (list ’a ’b ’c))
(define y x)
y
(list? y)
(set-cdr! x 4)
x
(eqv? x y)
y
(list? y)
(set-cdr! x x)
(list? x)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
(a b c)
#t
未定義
(a . 4)
#t
(a . 4)
#f
未定義
#f
リテラル式と手続き read で読み込まれるオブジェクトの表
現においては、’hデータi, `hデータi, ,hデータi, ,@hデータi
はそれぞれ、第 1 要素がシンボル quote, quasiquote,
unquote, unquote-splicing であるような 2 要素のリス
24 Revised5 Scheme
トを意味する。この場合の第 2 要素は hデータi である。こ
の規約はあらゆる Scheme のプログラムがリストとして表
現できるようにサポートされている。つまり、Scheme の文
法に従えば、全ての h式i は hデータi である(7.1.2 節を見
よ)。他の機能と並び、この機能は手続き read を用いて
Scheme のプログラムを解釈することを可能とする。3.3 節
を参照せよ。
(set-cdr! pair obj )
(caar pair)
(cadr pair)
.
.
.
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
..
.
(pair? obj )
(cdddar pair)
(cddddr pair)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
手続き
pair? は obj がペアであるなら #t を、そうでなければ #f
を返す。
(pair?
(pair?
(pair?
(pair?
’(a . b))
’(a b c))
’())
’#(a b))
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#t
#f
#f
(cons obj1 obj2 )
’a ’())
’(a) ’(b c d))
"a" ’(b c))
’a 3)
’(a b) ’c)
(a)
((a) b c d)
("a" b c)
(a . 3)
((a b) . c)
(car pair)
手続き
pair の car フィールドの内容を返す。空リストの car をと
ることはエラーである。
(car
(car
(car
(car
’(a b c))
’((a) b c d))
’(1 . 2))
’())
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
a
(a)
1
エラー
(cdr pair)
(list? obj )
ライブラリ手続き
obj がリストである時に #t を、そうでない時に #f を返す。
定義により、全てのリストは有限の長さを持ち空リストで
終る。
(list? ’(a b c))
=⇒
(list? ’())
=⇒
(list? ’(a . b))
=⇒
(let ((x (list ’a)))
(set-cdr! x x)
(list? x))
=⇒
(list ’a (+ 3 4) ’c)
(list)
#t
#t
#f
#f
ライブラリ手続き
=⇒
=⇒
(length list)
(length ’(a b c))
(length ’(a (b) (c d e)))
(length ’())
(a 7 c)
()
ライブラリ手続き
=⇒
=⇒
=⇒
3
3
0
手続き
obj を pair の car フィールドに格納する。set-car! の返
り値は未定義である。
(define (f) (list ’not-a-constant-list))
(define (g) ’(constant-list))
(set-car! (f) 3)
=⇒ 未定義
(set-car! (g) 3)
=⇒ エラー
obj が空リストであるときに #t を、それ以外は #f を返す。
list の長さを返す。
(b c d)
2
エラー
(set-car! pair obj )
ライブラリ手続き
与えられた引数を要素とする新たに確保されたリストを返す。
手続き
=⇒
=⇒
=⇒
(null? obj )
(list obj . . . )
pair の cdr フィールドの内容を返す。空リストの cdr をと
ることはエラーである。
(cdr ’((a) b c d))
(cdr ’(1 . 2))
(cdr ’())
これらの手続きは car と cdr の合成であり、例えば caddr
は次のように定義できる。
4 段までの全ての合成が定義されている。全部でこれらの手
続きは 28 個になる。
手続き
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
obj を pair の cdr フィールドに格納する。set-car! の返
り値は未定義である。
(define caddr (lambda (x) (car (cdr (cdr x))))).
car が obj1 で cdr が obj2 であるような新しく確保されたペ
アを返す。ペアは既存のどのオブジェクトとも(eqv? の意
味で)異なることが保証される。
(cons
(cons
(cons
(cons
(cons
手続き
(append list . . . )
ライブラリ手続き
最初の list の要素の後に 残りの list の要素を順に繋げたリ
ストを返す。
(append ’(x) ’(y))
(append ’(a) ’(b c d))
(append ’(a (b)) ’((c)))
=⇒
=⇒
=⇒
(x y)
(a b c d)
(a (b) (c))
6. 標準手続き
返り値のリストは最後の list の構造を共有する他は新しく
確保される。最後の引数は実際は何のオブジェクトでも良
い。最後の要素がリストでない時は不完全リストが返る。
(append ’(a b) ’(c . d))
(append ’() ’a)
=⇒
=⇒
(reverse list)
(a b c . d)
a
ライブラリ手続き
list の要素を逆順に並べた新しく確保されたリストを返す。
(reverse ’(a b c))
=⇒ (c b a)
(reverse ’(a (b c) d (e (f))))
=⇒ ((e (f)) d (b c) a)
(list-tail list k)
ライブラリ手続き
list から最初の k 要素を取り除いた部分リストを返す。list が
k 未満しか要素を持たない場合はエラーである。list-tail
は次のように定義できる。
(define list-tail
(lambda (x k)
(if (zero? k)
x
(list-tail (cdr x) (- k 1)))))
(list-ref list k)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
alist(関係リスト association list)はペアのリストでなけれ
ばならない。これらの手続きは alist のなかのペアで、car
フィールドが obj であるような最初のペアを返す。alist の
中に obj を car として持つペアがなければ、#f(空リスト
ではない)が返される。assq は eq? を obj とペアの car と
の比較に用い、同様に assv は eqv? を、assoc は equal?
を用いる。
(define e ’((a 1) (b 2) (c 3)))
(assq ’a e)
=⇒ (a 1)
(assq ’b e)
=⇒ (b 2)
(assq ’d e)
=⇒ #f
(assq (list ’a) ’(((a)) ((b)) ((c))))
=⇒ #f
(assoc (list ’a) ’(((a)) ((b)) ((c))))
=⇒ ((a))
(assq 5 ’((2 3) (5 7) (11 13)))
=⇒ 未定義
(assv 5 ’((2 3) (5 7) (11 13)))
=⇒ (5 7)
Rationale: これらの手続きは大抵は述語として用いられるにも関
わらず、memq, memv, member, assq, assv, assoc は名前の最後に
? を持たない。これはこれらの手続きが #t や #f だけでなく有用
な値を返すからである。
ライブラリ手続き
list の k 番めの要素を返す(これは (list-tail list k) の
car に等しい)。list が k 未満しか要素を持たない場合はエ
ラーである。
(list-ref ’(a b c d) 2)
=⇒ c
(list-ref ’(a b c d)
(inexact->exact (round 1.8)))
=⇒ c
(memq obj list)
(memv obj list)
(member obj list)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは、list の長さより小さいある整数 k を用
いて (list-tail list k ) で得られるような空でないリスト
のうちで、car フィールドが obj に等しい最初のものを返
す。obj が list 中にない時は #f(空リストではない)が返
される。memq uses eq? を obj と list の要素との比較に用
い、同様に memv は eqv? を、member は equal? を用いる。
(memq ’a ’(a b c))
(memq ’b ’(a b c))
(memq ’a ’(b c d))
(memq (list ’a) ’(b (a) c))
(member (list ’a)
’(b (a) c))
(memq 101 ’(100 101 102))
(memv 101 ’(100 101 102))
(assq obj alist)
(assv obj alist)
(assoc obj alist)
25
6.3.3. シンボル
シンボルは同じ綴をもつ時その時のみ等しい(eqv? の意味
で)という性質から有用なオブジェクトである。これはプロ
グラム中で識別子が持つ必要のある性質と同一であるので、
ほとんどの Scheme の実装は内部的にこの目的でシンボル
を使っている。シンボルは他のアプリケーションにも有用で
ある。例えば、 Pascal での列挙値のような方法で使うこと
ができる。
シンボルを書く規則は完全に識別子の規則と同一である。
2.1 節および 7.1.1 節を見よ。
リテラル式や手続き read での読み込みで得られたシンボル
を、write で書き出した時は、再び(eqv? の意味で)同じ
シンボルとして読み込まれることが保証される。しかしなが
ら、手続き string->symbol は読み書きの不変性が保証さ
れないシンボルを作ることができる。これは作られたシンボ
ルの名前が大文字小文字の通常使われない方のアルファベッ
トや特殊な文字を含むことができるからである。
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
(a b c)
(b c)
#f
#f
Note: 一部の実装は読み書きの不変性を全てのシンボルに保証す
るために、“slashification” と呼ばれる機能をサポートしている。
しかしこの機能は歴史的には文字列型がなかったことを補うため
の目的が主であった。
=⇒
=⇒
=⇒
((a) c)
未定義
(101 102)
一部の実装はまた、slashification をサポートする処理系でも読み
書きの不変性を壊す “intern されないシンボル” を持つ。これはま
た名前が同じシンボルが等しいという規則にも例外を作る。
26 Revised5 Scheme
(symbol? obj )
手続き
obj がシンボルである時に #t を、そうでない時に #f を
返す。
(symbol?
(symbol?
(symbol?
(symbol?
(symbol?
(symbol?
’foo)
(car ’(a b)))
"bar")
’nil)
’())
#f)
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
=⇒
#t
#t
#f
#t
#f
#f
(symbol->string symbol)
手続き
次の例は実装の標準文字種が小文字であると仮定している。
(string->symbol string)
文字はアルファベットや数字といった印刷される文字を表現
するものである。文字は #\h文字i あるいは #\h文字名i と
いう表記法で書かれる。
#\a
#\A
#\(
#\
#\space
#\newline
symbol の名前を文字列として返す。シンボルがリテラル式
(4.1.2 節)の結果の一部であったとき、あるいは手続き read
の結果として得られた時に、名前がアルファベットを含んで
いたならば、返される文字列は実装の優先する文字種で返
される。大文字を返す実装も小文字を返す実装もある。シン
ボルが string->symbol の結果として得られたものならば、
返される文字列の文字種はもともと string->symbol に渡
された文字列と同じである。この手続きに返り値の文字列
に string-set! などの mutation procedure を適用するの
はエラーである。
(symbol->string ’flying-fish)
=⇒
(symbol->string ’Martin)
=⇒
(symbol->string
(string->symbol "Malvina"))
=⇒
6.3.4. 文字
;
;
;
;
;
;
小文字
大文字
左括弧
スペース
スペースの望ましい書き方
改行
大文字小文字は #\h文字i では区別されるが、#\h文字名i で
は区別されない。#\h文字i 中の h文字i がアルファベットで
あるならば、h文字i の直後の文字はスペースか括弧などの
区切り文字でなければならない。この規則は、例えば文字
列 “#\space” がスペース文字の表現かあるいは文字の表現
“#\s” にシンボルの表現 “pace” が続いたものかというよう
な曖昧さを解決する。
#\ 表記で書かれた文字は自分自身に評価される。すなわち
プログラム中でクオートする必要はない。
一部の文字を扱う手続きは大文字と小文字を区別しない。そ
のような手続きは “-ci” を名前に持つ。
"flying-fish"
"martin"
(char? obj )
"Malvina"
(char=? char1 char2 )
(char<? char1 char2 )
(char>? char1 char2 )
(char<=? char1 char2 )
(char>=? char1 char2 )
手続き
名前が string であるようなシンボルを返す。この手続きは
特殊文字や非標準の文字種を含むシンボルを作ることがで
きるが、そのようなシンボルを作ることは、実装によっては
それらをそのまま読むことができないので良い考えでない。
symbol->string を参照せよ。
次の例は実装の標準文字種が小文字であると仮定している。
(eq? ’mISSISSIppi ’mississippi)
=⇒ #t
(string->symbol "mISSISSIppi")
=⇒ "mISSISSIppi" という名前のシンボル
(eq? ’bitBlt (string->symbol "bitBlt"))
=⇒ #f
(eq? ’JollyWog
(string->symbol
(symbol->string ’JollyWog)))
=⇒ #t
(string=? "K. Harper, M.D."
(symbol->string
(string->symbol "K. Harper, M.D.")))
=⇒ #t
手続き
obj が文字でなければ #t を、そうでなければ #f を返す。
手続き
手続き
手続き
手続き
手続き
これらの手続きは文字に全順序を導入する。この順序関係で
は次のことが保証される。
• 大文字は順番にならんでいる。例えば、(char<? #\A
#\B) は #t を返す。
• 小文字は順番にならんでいる。例えば、(char<? #\a
#\b) は #t を返す。
• 数字は順番にならんでいる。例えば、(char<? #\0
#\9) は #t を返す。
• 全ての数字はあらゆる大文字の前にあるか、あるいは
逆である。
• 全ての数字はあらゆる小文字の前にあるか、あるいは
逆である。
一部の実装はこれらの手続きを、対応する数述語のように 3
つ以上の引数をとるように拡張している。
6. 標準手続き
(char-ci=? char1 char2 )
(char-ci<? char1 char2 )
(char-ci>? char1 char2 )
(char-ci<=? char1 char2 )
(char-ci>=? char1 char2 )
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは char=? などに類似しているが、大文字と
小文字を同一とみなす。例えば、(char-ci=? #\A #\a) は
#t を返す。一部の実装はこれらの手続きを、対応する数述
語のように 3 つ以上の引数をとるように拡張している。
(char-alphabetic? char)
(char-numeric? char)
(char-whitespace? char)
(char-upper-case? letter )
(char-lower-case? letter )
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは、それぞれ引数がアルファベットである、
数字である、空白である、大文字である、小文字である時
に #t を、そうでない時に #f を返す。次の ASCII 文字セッ
トにおける注釈は参考のためだけである。アルファベットは
52 文字の大文字・小文字である。数字は 10 個の 10 進数字
である。空白はスペース、タブ、改行、改ページ、復帰文字
である。
27
6.3.5. 文字列
文字列は文字の並びである。文字はダブルクオート(")で
囲われた文字の並びとして書かれる。ダブルクオートは文字
列の中では、バックスラッシュ(\)でエスケープすること
でのみ次のように書くことができる。
"The word \"recursion\" has many meanings."
バックスラッシュは文字列中ではもう一つのバックスラッシュ
でエスケープして書くことができる。文字列中の、ダブルク
オートやバックスラッシュの続かないバックスラッシュの効
果は Scheme は定義しない。
文字列定数はある行から次の行へと続くことができるが、そ
のような文字列の実際の内容は未定義である。
文字列の長さはそれの含む文字の数である。この数は正確な
非負整数で、文字列が作られた時に固定される。文字列の正
しいインデックスとは文字列の長さより小さい正確な非負整
数である。文字列の最初の文字はインデックス 0 を持ち、2
文字目はインデックス 1 を持ち、以下同様に続く。
“文字列のインデックス start からインデックス end までの
文字” というような文脈では、start の文字を含み end の文
字を含まないという意味である。よって start と end が同
じ時は空な部分文字列を参照し、start が 0 で end が文字列
の長さと等しい時は、文字列の全体が参照される。
文字列を扱う手続きには大文字小文字の差を無視するもの
がある。それらの手続きは名前に “-ci” を持つ。
(char->integer char)
(integer->char n)
手続き
手続き
char->integer は、文字を受けとりその文字の正確な整数
での表現を返す。integer->char は、char->integer での
ある文字の対応先となる正確な整数を受けとり、その文字を
返す。これらの手続きは、char<=? で順序付けされた文字
の集合と、<= で順序付けされた整数の部分集合との間に、
順序同型の関係を作る。つまり、
(char<=? a b) =⇒ #t
かつ
(<= x y) =⇒ #t
であり、x と y が integer->char の定義域内であるなら、
次が成り立つ。
(<= (char->integer a)
(char->integer b))
=⇒
(char<=? (integer->char x)
(integer->char y)) =⇒
#t
(string? obj )
obj が文字列である時 #t を、そうでない時 #f を返す。
(make-string k)
(make-string k char)
手続き
手続き
make-string は長さ k の新しく確保された文字列を返す。
char が与えられた時は、文字列の全ての要素は char に初
期化され、そうでない場合の string の内容は未定義である。
(string char . . . )
ライブラリ手続き
引数の連接したものを内容とする新しく確保された文字列
を返す。
(string-length string)
手続き
string の文字数を返す。
#t
(string-ref string k)
(char-upcase char)
(char-downcase char)
手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは、(char-ci=? char char2 ) であるような
文字 char2 を返す。さらに、char がアルファベットであるな
ら、char-upcase の返り値は大文字であり、char-downcase
の返り値は小文字である。
手続き
k は string の正しいインデックスでなければならない。
string-ref は string の、0 から始まるインデックスで k
番目の文字を返す。
(string-set! string k char)
手続き
k は string の正しいインデックスでなければならない。
string-set! は string のインデックス k の要素に char
を格納し未定義値を返す。
28 Revised5 Scheme
(define (f) (make-string 3 #\*))
(define (g) "***")
(string-set! (f) 0 #\?)
=⇒ 未定義
(string-set! (g) 0 #\?)
=⇒ エラー
(string-set! (symbol->string ’immutable)
0
#\?)
=⇒ エラー
(string=? string1 string2 )
(string-ci=? string1 string2 )
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
2 つの文字列が同じ長さで、同じ位置に同じ文字がある時に
#t を、そうでない時には #f を返す。string-ci=? は大文
字と小文字を区別しないが、string=? は区別する。
(string<? string1 string2 )
(string>? string1 string2 )
(string<=? string1 string2 )
(string>=? string1 string2 )
(string-ci<? string1 string2 )
(string-ci>? string1 string2 )
(string-ci<=? string1 string2 )
(string-ci>=? string1 string2 )
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
これらの手続きは文字の順序の、文字列への辞書順拡張であ
る。例えば、string<? は char<? の順番による辞書順の順
序づけである。2 つの文字列の長さが異なり、短い方の長さ
までの部分が一致するならば、短い文字列は辞書順で長い文
字列より前にあると判断される。
実装は、対応する数述語のように、これらの手続きを 3 引数
以上受けとることができるように拡張することができる。
(substring string start end )
ライブラリ手続き
(string-copy string)
ライブラリ手続き
新たに確保された string のコピーを返す。
(string-fill! string char)
ライブラリ手続き
string の全ての要素に char を格納し、未定義値を返す。
6.3.6. ベクトル
ベクトルは整数でインデックス付けされた異成分からなる構
造体である。ベクトルは普通同じ長さのリストより少ない領
域しか必要とせず、ランダムに選ばれた要素をアクセスする
のに必要な時間は普通リストよりベクトルの方が短い。
ベクトルの長さはベクトルの含む要素の数である。この数は
非負整数で、ベクトルが作られる時に固定される。ベクトル
の正しいインデックスはベクトルの長さより小さい正確な
非負整数である。ベクトルの最初の要素のインデックスは 0
であり、最後の要素はベクトルの長さから 1 を引いたもので
ある。
ベクトルは #(obj . . . ) のような表記で書かれる。例えば、
長さ 3 のベクトルで要素 0 に数 0 を、要素 1 にリスト (2 2
2 2) を、要素 2 に文字列"Anna"を持つものは
#(0 (2 2 2 2) "Anna")
のように書かれる。これはベクトルの外部表現であって、ベ
クトルに評価される式ではない。リスト定数と同様、ベクト
ル定数はクオートされなければならない。
’#(0 (2 2 2 2) "Anna")
=⇒ #(0 (2 2 2 2) "Anna")
(vector? obj )
手続き
obj がベクトルである時 #t を、そうでない時 #f を返す。
string は文字列で、start と end は
0 ≤ start ≤ end ≤ (string-length string).
を満たす正確な整数でなければならない。substring は、
string のインデックス start (その文字を含む)からイン
デックス end (その文字は含まない)までの部分文字列を新
たに確保して返す。
(make-vector k )
(make-vector k fill )
手続き
手続き
k 要素からなる新しく確保されたベクトルを返す。第 2 引数
が渡された時は、それぞれの要素は fill で初期化される。そ
うでない時は各要素の初期値は不定である。
(vector obj . . . )
(string-append string . . . )
ライブラリ手続き
与えられた文字列の文字を繋げて得られる文字列を新たに
確保して返す。
(string->list string)
(list->string list)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
string->list は、与えられた文字列を構成する文字のリス
トを新たに確保して返す。list->string は、文字のリスト
list に含まれる文字からなる文字列を新たに確保して返す。
string->list と list->string は equal? の意味で互い
に逆関数になっている。
ライブラリ手続き
与えられた引数を要素とする新しく確保されたベクトルを
返す。list と類似している。
(vector ’a ’b ’c)
(vector-length vector )
=⇒
#(a b c)
手続き
ベクトル vector の要素数を正確な整数として返す。
(vector-ref vector k )
手続き
k はベクトル vector の正しいインデックスでなければなら
ない。vector-ref は vector の要素 k を返す。
6. 標準手続き
(vector-ref ’#(1 1 2 3 5 8 13 21)
5)
=⇒ 8
(vector-ref ’#(1 1 2 3 5 8 13 21)
(let ((i (round (* 2 (acos -1)))))
(if (inexact? i)
(inexact->exact i)
i)))
=⇒ 13
(vector-set! vector k obj )
手続き
k はベクトル vector の正しいインデックスでなければなら
ない。vector-set! は obj を vector の要素 k に格納する。
vector-set! の返り値は定義されない。
(let ((vec (vector 0 ’(2 2 2 2) "Anna")))
(vector-set! vec 1 ’("Sue" "Sue"))
vec)
=⇒ #(0 ("Sue" "Sue") "Anna")
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
vector->list はベクトル vector に要素として含まれて
いたオブジェクトからなる新しく確保されたリストを返す。
list->vector はリスト list の要素で初期化された新しく
確保されたベクトルを返す。
(vector->list ’#(dah dah didah))
=⇒ (dah dah didah)
(list->vector ’(dididit dah))
=⇒ #(dididit dah)
(vector-fill! vector fill )
手続き
proc は手続きで、args はリストでなければならない。リス
ト (append (list arg1 . . . ) args) の要素を実際の引数と
して、 proc を呼び出す。
(apply + (list 3 4))
=⇒
7
=⇒
30
(define compose
(lambda (f g)
(lambda args
(f (apply g args)))))
((compose sqrt *) 12 75)
(map proc list1 list2 . . . )
ライブラリ手続き
list は全てリストであり、proc はそのリストの数と同じ数
の引数をとることができ、1 つの値を返す手続きでなければ
ならない。2 つ以上のリストが渡された時には、それらはす
べて同じ長さでなければならない。map は list の要素に 1
要素ずつ proc を適用し、結果のリストを返す。list の要素
に proc を適用する順序は未定義である。
(vector-set! ’#(0 1 2) 1 "doe")
=⇒ エラー ; 定数ベクトル
(vector->list vector )
(list->vector list)
(apply proc arg1 . . . args)
29
(map cadr ’((a b) (d e) (g h)))
=⇒ (b e h)
(map (lambda (n) (expt n n))
’(1 2 3 4 5))
=⇒ (1 4 27 256 3125)
(map + ’(1 2 3) ’(4 5 6))
=⇒
(5 7 9)
(let ((count 0))
(map (lambda (ignored)
(set! count (+ count 1))
count)
’(a b)))
=⇒ (1 2) か (2 1)
ライブラリ手続き
ベクトル vector の全要素に fill を格納する。vector-fill!
の返り値は未定義である。
6.4. 制御機能
この章では、プログラムの実行の流れを特別な方法で制御す
る組み込み手続きについて述べる。述語 procedure? につ
いでもここで述べる。
(procedure? obj )
手続き
obj が手続きである時 #t を、そうでない時 #f を返す。
(procedure? car)
=⇒ #t
(procedure? ’car)
=⇒ #f
(procedure? (lambda (x) (* x x)))
=⇒ #t
(procedure? ’(lambda (x) (* x x)))
=⇒ #f
(call-with-current-continuation procedure?)
=⇒ #t
(for-each proc list1 list2 . . . )
ライブラリ手続き
for-each の引数は map と同様であるが、for-each は proc
を、値ではなく副作用を目的として呼び出す。map と異な
り、for-each は proc を list の各要素に先頭要素から最後
の要素へと順番に適用することが保証される。for-each の
返り値は未定義である。
(let ((v (make-vector 5)))
(for-each (lambda (i)
(vector-set! v i (* i i)))
’(0 1 2 3 4))
v)
=⇒ #(0 1 4 9 16)
(force promise)
ライブラリ手続き
引数 promise の値を force する(4.2.5 節の delay を見よ)。
promise に対して値が計算されていない場合は値を計算し
てそれを返す。promise の値はキャッシュされ(記憶され)
それ以降に再び force された場合は前に計算された値が返さ
れる。
30 Revised5 Scheme
(force (delay (+ 1 2)))
=⇒
(let ((p (delay (+ 1 2))))
(list (force p) (force p)))
=⇒
3
(3 3)
(define a-stream
(letrec ((next
(lambda (n)
(cons n (delay (next (+ n 1)))))))
(next 0)))
(define head car)
(define tail
(lambda (stream) (force (cdr stream))))
(head (tail (tail a-stream)))
=⇒
2
force と delay は主に関数型スタイルで書かれたプログラ
ムを意図している。次の例は良いプログラミングスタイル
を示していると考えてはならないが、何回 force されても 1
つの値しか計算されないという性質を表している。
(define count 0)
(define p
(delay (begin (set! count (+ count 1))
(if (> count x)
count
(force p)))))
(define x 5)
p
=⇒ a promise
(force p)
=⇒ 6
p
=⇒ 相変わらず promise
(begin (set! x 10)
(force p))
=⇒ 6
ここには delay と force の実装の例を示す。promise はこ
こでは引数を持たない手続きとして実装され、force は単
純にその引数を呼び出している。
(define make-promise
(lambda (proc)
(let ((result-ready? #f)
(result #f))
(lambda ()
(if result-ready?
result
(let ((x (proc)))
(if result-ready?
result
(begin (set! result-ready? #t)
(set! result x)
result))))))))
Rationale: promise は、先の例の一番最後のように、自分自身の
値を参照することができる。そのような promise を force すると、
promise の 1 回目の値が計算されるより先に 2 度目の force が起
こる。このことが make-promise の実装を複雑にしている。
delay と force の方法に対する次のような拡張が一部の実
装でサポートされている。
• force を promise でないオブジェクトを引数にして呼
び出すと単純にそのオブジェクトを返す。
• promise とその force された値を操作的に区別する必要
がない場合がある。つまり、次のような式は実装に依存
して #t と #f のどちらを返す場合もありえる。
(eqv? (delay 1) 1)
(pair? (delay (cons 1 2)))
=⇒
=⇒
• cdr や + といった組み込み手続きが引数の promise を
force する “暗黙の force” を持つ実装もある。
(+ (delay (* 3 7)) 13)
=⇒
(call-with-current-continuation proc)
(define force
(lambda (object)
(object)))
式
(delay h式i)
は次の手続き呼びだし
(make-promise (lambda () h式i))
と同じ意味を持つように、次のように実装される。
(define-syntax delay
(syntax-rules ()
((delay expression)
(make-promise (lambda () expression))))),
ここで make-promise は次のように定義する。
未定義
未定義
34
手続き
proc は 1 引数の手続きでなければならない。call-withcurrent-continuation は現在の継続(後述の rationale を
見よ)を “脱出手続き” としてパッケージして、proc に引数
として渡す。脱出手続きは、後に呼び出された時に、その時
点での有効な継続を全て破棄して、脱出手続きが作られた時
の継続をその代わりに使うという効果を持つ Scheme の手
続きである。脱出手続きの呼び出しは dynamic-wind を用
いて導入された thunk before および after の実行を引き起
こすことがある。
脱出手続きは call-with-current-continuation のもと
もとの呼び出しの継続と同じ数の引数を受け付ける。callwith-values によって作られた継続を除いては、全ての継
続はちょうど 1 つの値をとる。call-with-values によって
作られたのでない継続に 0 あるいは 2 以上の値を渡した時
の効果は未定義である。
proc に渡された脱出手続きは Scheme の他の手続きと同様、
無限の寿命を持つ。それを変数やデータ構造に格納すること
もでき、また必要なだけ何度でも呼び出すことができる。
6. 標準手続き
次の例は call-with-current-continuation の最も良く
使われる用法のみを示す。もし全ての使用目的が次の例
のように単純な場合だけであれば、call-with-currentcontinuation のような強力な手続きは必要ない。
(call-with-current-continuation
(lambda (exit)
(for-each (lambda (x)
(if (negative? x)
(exit x)))
’(54 0 37 -3 245 19))
#t))
=⇒ -3
(define list-length
(lambda (obj)
(call-with-current-continuation
(lambda (return)
(letrec ((r
(lambda (obj)
(cond ((null? obj) 0)
((pair? obj)
(+ (r (cdr obj)) 1))
(else (return #f))))))
(r obj))))))
(list-length ’(1 2 3 4))
=⇒
4
(list-length ’(a b . c))
=⇒
#f
31
れた。この名前は意味を良く表しているが、このような長い名前
の善し悪しは意見がわかれるところであり、かわりに call/cc と
いう名前を使う人もいる。
(values obj . . .)
手続き
引数を全て自身の継続に渡す。手続き call-with-values
で作られた 継続を除き、全ての継続は 1 つの値しかとらな
い。values は次のように定義できる。
(define (values . things)
(call-with-current-continuation
(lambda (cont) (apply cont things))))
(call-with-values producer consumer )
手続き
producer を引数なしで、渡された値を引数として consumer
を呼び出す継続と共に呼び出す。consumer の呼び出しの継
続は call-with-values の呼び出しの継続である。
(call-with-values (lambda () (values 4 5))
(lambda (a b) b))
=⇒ 5
(call-with-values * -)
=⇒
-1
Rationale:
call-with-current-continuation の最も一般的な用法はループ
や手続き本体からの構造化された非ローカルな脱出であるが、実
際には call-with-current-continuation は広範な高度な制御
構造の実装に非常に有用である。
Scheme の式が評価される時にはいつでも、その結果を要求する継
続 (continuation) が存在する。継続は計算の(なにも特別なこと
がない場合の)将来のゆくえ全体を示す。例えば、式がトップレ
ベルで評価される時には、継続は結果を受けとり、画面にそれを
表示し、次の入力を待ち、それを評価し……と永久に続く。例え
ば、「結果を受けとってそれにローカル変数に格納された値をかけ
算し、7 を足して、結果を表示するトップレベルの継続にそれを渡
す」という継続のように、ほとんどの場合において継続はユーザの
プログラムで示された動作を含む。大抵の場合はこれらの遍在す
る継続は舞台裏に隠されていてプログラマはそれらをあまり意識
することがない。しかし、たまにプログラマはそれらの継続を明
示的に取り扱う必要がある。call-with-current-continuation
により、 Scheme のプログラマはそれを、ちょうど現在の継続と
同じような動作をする手続きを作ることで実現することができる。
ほとんどのプログラム言語は、exit、return、あるいは goto と
さえいうような名前を持つ、1 つかそれ以上の特殊目的の脱出構
文を持つ。しかし、1965 年に Peter Landin [16] は J オペレー
タという汎用の脱出オペレータを考案した。John Reynolds [24]
は 1972 年に、同様の能力を持つより簡潔な構造について述べて
いる。1975 年の Scheme のレポートで Sussman と Steele が述
べた catch 特殊構文は、名前こそ汎用性の低い MacLisp の構
文からとっているものの、Reynolds の構文と全く同じであった。
複数の Scheme の実装者が、catch の構文の全ての能力は特殊
な構文要素でなくとも関数として実現可能であることに気付き、
call-with-current-continuation という名前は 1982 年に作ら
(dynamic-wind before thunk after)
手続き
thunk を引数無しで呼び出し、その返り値を返す。before
と after は、次の規則で必要な場合に引数無しで呼ばれる
(call-with-current-continuation で捕捉された継続の
呼び出しがない場合には、この 3 つの引数はそれぞれ 1 回
ずつ順に呼び出される)。before は thunk の呼び出しの動的
有効範囲に実行が入る時は常に、また after は動的有効範囲
から実行が出る時に常に呼び出される。手続き呼び出しの
動的有効範囲とは、呼び出しが始まってから値が戻されるま
での間である。Scheme においては、call-with-currentcontinuation が存在するため、呼び出しの動的有効範囲は
1 つの繋がった時間の範囲とはならない。動的有効範囲は次
のように定義される。
• 呼び出された手続きの本体の実行が始まる時は、実行
が動的有効範囲に入る。
• 実行が動的有効範囲に入っておらず、前に動的実行範
囲の中で(call-with-current-continuation によっ
て)捕捉された継続が呼び出された時にも、動的有効
範囲に実行が入る。
• 呼び出された手続きが値を返す時には、実行が動的有
効範囲から出る。
• 実行が動的有効範囲に入っていて、動的有効範囲の外
で捕捉された 継続が呼び出された時にも実行が動的有
効範囲から出る。
32 Revised5 Scheme
thunk の実行中に別の dynamic-wind の呼び出しが起こり、
その後、その 2 回の dynamic-wind の after が両方とも呼
び出されるような形で継続の呼び出しが起こった場合、2 回
目の(内側の)dynamic-wind に関係した after の方が先に
呼び出される。
thunk の実行中に別の dynamic-wind の呼び出しが起こり、
その後、その 2 回の dynamic-wind の before が両方とも
呼び出されるような形で継続の呼び出しが起こった場合、1
回目の(外側の)dynamic-wind に関係した before の方が
先に呼び出される。
継続の呼び出しが、ある dynamic-wind の呼び出しの際の
before と別の際の after の両方の呼び出しを必要とする場
合、after の方が先に呼び出される。
捕捉された継続を使って before や after の呼び出しの動的
有効範囲に出入りした場合の効果は定義されない。
(let ((path ’())
(c #f))
(let ((add (lambda (s)
(set! path (cons s path)))))
(dynamic-wind
(lambda () (add ’connect))
(lambda ()
(add (call-with-current-continuation
(lambda (c0)
(set! c c0)
’talk1))))
(lambda () (add ’disconnect)))
(if (< (length path) 4)
(c ’talk2)
(reverse path))))
=⇒ (connect talk1 disconnect
connect talk2 disconnect)
(null-environment 5))))
(f + 10))
=⇒
20
(scheme-report-environment version)
(null-environment version)
手続き
手続き
version は正確な整数 5 でなければならず、この Scheme レ
ポートのリビジョン(the Revised5 Report on Scheme)を
表す。scheme-report-environment はこのレポートで定義
された束縛で、必須とされるものと、任意であるとされる
うちでその実装でサポートされるものを含みそれ以外は空
であるような環境を表す指示子を返す。null-environment
はこのレポートで定義され、必須であるか、あるいは任意で
ありその実装でサポートされているような構文キーワードの
(構文)束縛を除き空であるような環境を表す指示子を返す。
version のその他の値は、このレポートの前のリビジョンに
対応する環境を示すために用いることができるが、そのサ
ポートは要求されない。実装は version が 5 でなく、実装
がサポートする他の値でもない場合、エラーを報告する。
scheme-report-environment の中で束縛されている変数
(例えば car)に(eval を使って)値を代入した場合の効果は
定義されない。したがって、scheme-report-environment
で指示される環境は変更不可能であっても良い。
(interaction-environment)
任意手続き
この手続きは実装で定義された束縛、一般的にはこのレポー
トでリストされたものの上位集合、からなる環境の指示子を
返す。この手続きはユーザが動的に入力した式を実装が評価
できるような環境を返すことを意図している。
6.6. 入出力
6.5. Eval
6.6.1. ポート
(eval expression environment-specifier)
ポートは入出力装置を表現する。Scheme にとって、入力ポー
トはコマンドを通じて文字を届けることのできる Scheme の
オブジェクトであり、出力ポートは文字を受けとることので
きる Scheme のオブジェクトである。
手続き
eval は、expression を environment-specifier で指定され
た環境で評価し、その値を返す。引数のうち expression は
データとして表現された Scheme の正しい式でなければなら
ず、environment-specifier はこの後に述べる 3 つの手続きの
返り値のどれかでなければならない。実装は eval を、式で
ないプログラム(定義)を第 1 引数にとり、あるいはここで
指定された以外の値を第 2 引数にとるように拡張することが
できるが、eval は null-environment や scheme-reportenvironment と関係付けられた環境に新しい束縛を作って
はならないという制約がある。
(eval ’(* 7 3) (scheme-report-environment 5))
=⇒ 21
(let ((f (eval ’(lambda (f x) (f x x))
(call-with-input-file string proc) ライブラリ手続き
(call-with-output-file string proc)
ライブラリ手続き
string はファイル名の文字列であり、proc は 1 引数をとる
手続きでなければならない。call-with-input-file では、
引数に指定されたファイルは既に存在しなければならず、
call-with-output-file では、そのファイルが既に存在す
る時の効果は未定義である。これらの手続きは proc を 1 引
数で呼び出す。引数は指定されたファイルを入力あるいは出
力用に開いて得られたポートである。ファイルが開けなかっ
た場合、エラーが報告される。proc から戻ると、ポートは
6. 標準手続き
自動的に閉じられ proc の返り値が返される。proc から戻ら
ない場合、ポートが今後の読み書きで使われることがないこ
とが証明できる場合を除き、ポートが自動的に閉じられるこ
とはない。
Rationale:
Scheme の脱出手続きが無限の寿命を持つため、
現在の継続から一旦脱出し、再び中に戻ることが可能である。
実装が現在の実装からのあらゆる脱出でポートを閉じること
を許されているならば、call-with-current-continuation と
call-with-input-file あるいは call-with-output-file を同
時に使って移植可能なプログラムを書くことはできないであろう。
(input-port? obj )
(output-port? obj )
手続き
手続き
obj がそれぞれ入力ポートあるいは出力ポートであるなら
#t を、そうでなければ #f を返す。
(current-input-port)
(current-output-port)
手続き
手続き
現在の標準の入力ポートあるいは出力ポートを返す。
(with-input-from-file string thunk )
(with-output-to-file string thunk )
33
6.6.2. 入力
(read)
(read port)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
read は Scheme のオブジェクトの外部表現をそのオブジェク
トに変換する。つまり、これは端末以外の hデータi(7.1.2 節
および 6.3.2 節を見よ)のパーサである。read は与えられ
た入力ポート port から解析可能な次のオブジェクトを返し、
port の状態をオブジェクトの外部表現の終端の次の文字を
指すようにする。
オブジェクトの表現を始めることのできる文字を見つける
より先にファイルの終端に到達した場合、ファイル終端オブ
ジェクトが返される。ポートは引続き開かれたままであり、
その後の読みだしはまたファイル終端オブジェクトを返す。
もしオブジェクトの外部表現が始まってからファイル終端に
到達し、その表現が不完全で解析不可能であるならば、エ
ラーが報告される。
port は省略可能であり、その場合は current-input-port
から返される標準のポートが用いられる。既に閉じられた
ポートからの読み出しはエラーである。
任意手続き
任意手続き
(read-char)
手続き
string はファイル名の文字列であり、thunk は引数のない手 (read-char port)
手続き
続きでなければならない。with-input-from-file ではファ
入力ポート port から読み出すことのできる次の文字を
イルは既に存在しなければならず、with-output-to-file
返し、port の状態をその文字の次を指し示すように更新
ではファイルが既に存在する場合の効果は未定義である。ファ
する。もう文字が得られない場合は、ファイル終端オブジ
イルは入力あるいは出力用に開かれ、それらに接続するポー
ェクトが返される。port は省略可能であり、その場合は
トを current-input-port や current-output-port で返
current-input-port から返される標準のポートが用いら
される(そして (read) 、(write obj ) などで用いられる)標
れる。
準のポートとしてから、thunk を引数なしで呼び出す。thunk
から戻ると、ポートは閉じられ、標準ポートは元に戻され
る。with-input-from-file と with-output-to-file は、 (peek-char)
手続き
thunk の返り値を返す。これらの手続きの継続から脱出手続 (peek-char port)
手続き
きで脱出した場合、動作は実装依存である。
入力ポート port から読み出すことのできる次の文字を返
すが、port の状態はその文字の次を指し示すように更新
(open-input-file filename)
手続き
しない。もう文字が得られない場合は、ファイル終端オブ
既に存在するファイル名の文字列を引数にとり、それらの
ジェクトが返される。port は省略可能であり、その場合は
文字列から文字を読みとることのできる入力ポートを返す。 current-input-port から返される標準のポートが用いら
ファイルが開けない時は、エラーが報告される。
れる。
(open-output-file filename)
手続き
新たに作成される出力ファイル名の文字列を引数にとり、そ
のファイルに書き出すことのできる出力ポートを返す。ファ
イルが開けない時は、エラーが報告される。指定された名前
のファイルが既に存在する時の効果は未定義である。
(close-input-port port)
(close-output-port port)
手続き
手続き
port と関連付けられたファイルを閉じ、それらのポートが
文字を書き出したり読み込んだりできないことを示す。これ
らの手続きは、ファイルが既に閉じられている時にはなにも
動作をしない。返り値は未定義である。
Note: peek-char への呼び出しから返される値は同じ port へ
の read-char から返されるであろう値と同じである。唯一の違
いは直後の同じ port への read-char あるいは peek-char への
呼び出しがその前の peek-char への呼び出しで返される値と同
じであることである。具体的には、対話環境へ繋がるポートへの
read-char の呼び出しが、入力を待ってブロックするような状況
では、peek-char の呼び出しも同じようにブロックする。
(eof-object? obj )
手続き
obj がファイル終端オブジェクトである時は #t を、そうで
ない時は #f を返す。正確なファイル終端オブジェクトの集
合は実装によって異なるが、どのような場合でもファイル終
34 Revised5 Scheme
端オブジェクトは、read によって読みとることのできるオ
ブジェクトではない。
(char-ready?)
(char-ready? port)
手続き
手続き
文字が入力ポート port に準備できている時は #t を、そう
でない時は #f を返す。char-ready? が #t を返す時は、そ
の port への次の read-char の呼び出しはブロックしない
ことが保証される。port がファイルの終端を指している場
合、char-ready? は #t を返す。port は省略可能であり、そ
の場合は current-input-port から返される標準のポート
が用いられる。
Rationale: char-ready? はプログラムが対話ポートから入力待ち
で詰まることなくデータを受けとることができるようにするために存
在する。そのようなポートに繋がる入力編集機構は、 char-ready?
で存在が確認された文字が削除できないことを保証しなければな
らない。char-ready? がファイルの終端で #f を返していたなら
ば、ファイル終端のポートはまだ準備できた文字のない対話ポー
トと区別することができないであろう。
6.6.3. 出力
(write obj )
(write obj port)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
obj の出力表現を port に与えられたポートに出力する。出
力表記に現れる文字列はダブルクオートで括られ、その文
字列中のバックスラッシュとダブルクオートはバックスラッ
シュ文字でエスケープされる。文字オブジェクトは #\ 表記
で書き出される。write の返り値は未定義である。port は
省略可能であり、その場合は current-output-port から
返される標準のポートが用いられる。
(display obj )
(display obj port)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
obj の出力表現を port に与えられたポートに出力する。出力
表記に現れる文字列はダブルクオートで括られることはなく、
文字列中のどの文字もエスケープされない。文字オブジェク
トは write でなく write-char で書き出したのと同様の表
現で書き出される。display の返り値は未定義である。port
は省略可能であり、その場合は current-output-port か
ら返される標準のポートが用いられる。
Rationale:
write は機械が読みとることのできるな出力を、
display は人間が読みとることのできる出力を生成することを
意図している。シンボルの “slashification” を認めるような実装
では write はシンボル中の普通でない文字を slashify するよう、
display はしないようにするであろう。
(newline)
(newline port)
ライブラリ手続き
ライブラリ手続き
行末を port に書き出す。実際に何が行なわれるかはオペレー
ティングシステムによってことなる。返り値は未定義である。
port は省略可能であり、その場合は current-output-port
から返される標準のポートが用いられる。
(write-char char)
(write-char char port)
手続き
手続き
文字 char (文字の外部表現ではない)を port に書き出す。
返り値は未定義である。port は省略可能であり、その場合
は current-output-port から返される標準のポートが用
いられる。
6.6.4. システムとのインタフェース
システムとのインタフェースの問題はこのレポートの対象範
囲外である。しかし、次の操作はここで述べるに十分な重要
性を持つ。
(load filename)
任意手続き
filename は Scheme のソースコードを内容とする既存のファ
イル名の文字列である。手続き load は式と定義をファイル
から読み込み順に評価する。式の値が表示されるかされない
かは未定義である。手続き load は current-input-port
および current-output-port からの返り値には影響しな
い。laod の返り値は未定義である。Rationale: 移植性のた
め、load はソースファイルに対して動作しなければならない。そ
の他のファイルに対しての動作は必然的に実装によって異なる。
(transcript-on filename)
(transcript-off)
任意手続き
任意手続き
filename は作成される出力ファイルの名前の文字列でなけれ
ばならない。transcript-on は指示された名前のファイルを
出力用に開き、それに続くユーザと Scheme システムの対話
の写しをファイルに書き込む効果を持つ。transcript-off
はその記録ファイルを閉じ、写しの記録を終了させる。同時
には 1 つの記録しかとることができないが、実装によっては
この制限を緩めることができる。これらの手続きの返り値は
未定義である。
7. 形式的な文法と意味論
7.
形式的な文法と意味論
この章ではこのレポートでこれまでに非形式的に述べられ
た事項の形式的な解説を与える。
7.1. 形式的文法
この節では Scheme の形式的文法をを拡張 BNF で与える。
文法中の全ての空白は読みやすさのためである。大文字小
文字は区別されない。例えば #x1A と #X1a は同等である。
h空i は空文字列を意味する。
次の BNF の拡張は記述をより簡潔にするものである。
hthingi* は 0 個以上の hthingi の出現を表す。hthingi+ は
1 つ以上の hthingi を表す。
7.1.1. 構文的構造
この節では、個々のトークン(識別子、数など)を文字の並
びから構成する方法について述べる。次の節では式とプログ
ラムをトークンの列から構成する方法について述べる。
hトークン間スペースi はあらゆるトークンに隣接するどち
らの側にも現れることができるが、トークン内には現れるこ
とができない。
トークンのうち暗黙の終了を要求するもの(識別子、数字、
文字、ドット)は h区切り文字i で終了できるが、その他の
ものは必ずしもそうしなくてよい。
5 つの文字 [ ] { } | は将来の言語の拡張のために予約さ
れている。
hトークンi −→ h識別子i | h論理値i | h数字i
| h文字i | h文字列i
| ( | ) | #( | ’ | ` | , | ,@ | .
h区切り文字i −→ h空白i | ( | ) | " | ;
h空白i −→ h空白文字 または 改行i
hコメントi −→ ; h 改行までの
あらゆる文字の連続 i
h空間i −→ h空白i | hコメントi
hトークン間スペースi −→ h空間i*
h変数i −→ h開始文字i h残りの文字i*
| h特別な識別子i
h開始文字i −→ h英文字i | h特別開始文字i
h英文字i −→ a | b | c | ... | z
h特別開始文字i −→ ! | $ | % | & | * | / | : | < | =
| > | ? | ^ | _ | ~
h残りの文字i −→ h開始文字i | h数字i
| h特別な残りの文字i
h数字i −→ 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9
h特別な残りの文字i −→ + | - | . | @
h特別な識別子i −→ + | - | ...
h構文キーワードi −→ h式キーワードi
| else | => | define
35
| unquote | unquote-splicing
h式キーワードi −→ quote | lambda | if
| set! | begin | cond | and | or | case
| let | let* | letrec | do | delay
| quasiquote
h変数i −→ h h構文キーワードi でない
あらゆる h識別子i i
h論理値i −→ #t | #f
h文字i −→ #\ h任意の文字i
| #\ h文字名i
h文字名i −→ space | newline
h文字列i −→ " h文字列の要素i* "
h文字列の要素i −→ h"、\ 以外の文字i
| \" | \\
h数i −→ h2 進数i| h8 進数i
| h10 進数i| h16 進数i
hR 進数i、hR 進複素数i、hR 進実数i、hR 進符号無し実数i、
hR 進符号無し整数i、hR 進接頭語iは R = 2, 8, 10, 16 につ
いてそれぞれ写される。h2 進小数i、h8 進小数i、h16 進小数i
は存在しないが、これは小数点あるいは指数表記を含む数は
10 進で書かれなければならないことを示す。
hR 進数i −→ hR 進接頭語i hR 進複素数i
hR 進複素数i −→ hR 進実数i
| hR 進実数i @ hR 進実数i
| hR 進実数i + hR 進符号無し実数i i
| hR 進実数i - hR 進符号無し実数i i
| hR 進実数i + i | hR 進実数i - i
| + hR 進符号無し実数i i
| - hR 進符号無し実数i i
| + i | - i
hR 進実数i −→ h符号i hR 進符号無し実数i
hR 進符号無し実数i −→ hR 進符号無し整数i
| hR 進符号無し整数i / hR 進符号無し整数i
| hR 進小数i
h10 進小数i −→ h10 進符号無し整数i h接尾語i
| . h10 進数字i+ #* h接尾語i
| h10 進数字i+ . h10 進数字i* #* h接尾語i
| h10 進数字i+ #+ . #* h接尾語i
hR 進符号無し整数i −→ hR 進数字i+ #*
hR 進接頭語i −→ hR 進基数記号i h正確さ記号i
| h正確さ記号i hR 進基数記号i
h接尾語i −→ h空i
| h指数記号i h符号i h10 進数字i+
h指数記号i −→ e | s | f | d | l
h符号i −→ h空i | + | h正確さ記号i −→ h空i | #i | #e
h2 進基数記号i −→ #b
h8 進基数記号i −→ #o
36 Revised5 Scheme
h10 進基数記号i −→ h空i | #d
h16 進基数記号i −→ #x
h2 進数字i −→ 0 | 1
h8 進数字i −→ 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7
h10 進数字i −→ h数字i
h16 進数字i −→ h10 進数字i | a | b | c | d | e | f
7.1.2. 外部表現
hデータi は関数 read(6.6.2 節)が正常に解析できるもの
である。h式i として解析できる文字列は必ず hデータi とし
て解析できることに注意せよ。
hデータi −→ h単純データi | h複合データi
h単純データi −→ h論理値i | h数i
| h文字i | h文字列i | hシンボルi
hシンボルi −→ h識別子i
h複合データi −→ hリストi | hベクトルi
hリストi −→ (hデータi*) | (hデータi+ . hデータi)
| h省略記法i
h省略記法i −→ h省略接頭語i hデータi
h省略接頭語i −→ ’ | ` | , | ,@
hベクトルi −→ #(hデータi*)
7.1.3. Expressions
h式i −→ h変数i
| hリテラルi
| h関数呼びだしi
| hλ式i
| h条件分岐i
| h代入i
| h派生式i
| hマクロ使用i
| hマクロブロックi
hリテラルi −→ hクオートi | h自己評価i
h自己評価i −→ h論理値i | h数i
| h文字i | h文字列i
hクオートi −→ ’hデータi | (quote hデータi)
h関数呼び出しi −→ (hオペレータi hオペランドi*)
hオペレータi −→ h式i
hオペランドi −→ h式i
hλ式i −→ (lambda h仮引数リストi h本体i)
h仮引数リストi −→ (h変数i*) | h変数i
| (h変数i+ . h変数i)
h本体i −→ h定義i* h式列i
h式列i −→ hコマンドi* h式i
hコマンドi −→ h式i
h条件分岐i −→ (if hテストi h真の式i h偽の式i)
hテストi −→ h式i
h真の式i −→ h式i
h偽の式i −→ h式i | h空i
h代入i −→ (set! h変数i h式i)
h派生式i −→
(cond hcond 節i+ )
| (cond hcond 節i* (else h式列i))
| (case h式i
hcase 節i+ )
| (case h式i
hcase 節i*
(else h式列i))
| (and hテストi*)
| (or hテストi*)
| (let (h束縛リストi*) h本体i)
| (let h変数i (h束縛リストi*) h本体i)
| (let* (h束縛リストi*) h本体i)
| (letrec (h束縛リストi*) h本体i)
| (begin h式列i)
| (do (h繰り返し指定i*)
(hテストi hdo の結果i)
hコマンドi*)
| (delay h式i)
| hquasi クオートi
hcond 節i −→ (hテストi h式列i)
| (hテストi)
| (hテストi => h受け取り先i)
h受け取り先i −→ h式i
hcase 節i −→ ((hデータi*) h式列i)
h束縛リストi −→ (h変数i h式i)
h繰り返し指定i −→ (h変数i h初期化子i h更新値i)
| (h変数i h初期化子i)
h初期化子i −→ h式i
h更新値i −→ h式i
hdo の結果i −→ h式列i | h空i
hマクロ使用i −→ (hキーワードi hデータi*)
hキーワードi −→ h識別子i
hマクロブロックi −→
(let-syntax (h構文指定i*) h本体i)
| (letrec-syntax (h構文指定i*) h本体i)
h構文指定i −→ (hキーワードi h変換子表現i)
7.1.4. quasi クオート
次の quasi クオート式に対する文法は文脈自由でない。これ
は無限の生成規則を生成する処方として書かれている。次の
ルールを D = 1, 2, 3, . . . について展開したものを考えられ
たい。D はネストレベルを記憶する。
hquasi クオートi −→ hquasi クオート 1i
hqq テンプレート 0i −→ h式i
7. 形式的な文法と意味論
hquasi クオート Di −→ `hqq テンプレート Di
| (quasiquote hqq テンプレート Di)
hqq テンプレート Di −→ h単純データi
| hリスト qq テンプレート Di
| hベクトル qq テンプレート Di
| hアンクオート Di
hリスト qq テンプレート Di −→
(hqq テンプレートまたは接合 Di*)
| (hqq テンプレートまたは接合 Di+ .
hqq テンプレート Di)
| ’hqq テンプレート Di
| hquasi クオート D + 1i
hベクトル qq テンプレート Di −→
#(hqq テンプレートまたは接合 Di*)
hアンクオート Di −→ ,hqq テンプレート D − 1i
| (unquote hqq テンプレート D − 1i)
hqq テンプレートまたは接合 Di −→
hqq テンプレート Di
| h接合アンクオート Di
h接合アンクオート Di −→ ,@hqq テンプレート D − 1i
| (unquote-splicing hqq テンプレート D − 1i)
hquasi クオートi の中では、hリスト qq テンプレート Di は
hアンクオート Di および h接合アンクオート Di と混同
されることがある。この場合、hアンクオート Di および
h接合アンクオート Di を優先して解析される。
7.1.5. 変換指定子
h変換子表現i −→
(syntax-rules (h識別子i*) h構文規則i*)
h構文規則i −→ (hパターンi hテンプレートi)
hパターンi −→ hパターン識別子i
| (hパターンi*)
| (hパターンi+ . hパターンi)
| (hパターンi* hパターンi h省略記号i)
| #(hパターンi*)
| #(hパターンi* hパターンi h省略記号i)
| hパターンデータi
hパターンデータi −→ h文字列i
| h文字i
| h論理値i
| h数i
hテンプレートi −→ hパターン識別子i
| (hテンプレート要素i*)
| (hテンプレート要素i+ . hテンプレートi)
| #(hテンプレート要素i*)
| hテンプレートデータi
hテンプレート要素i −→ hテンプレートi
| hテンプレートi h省略記号i
hテンプレートデータi −→ hパターンデータi
hパターン識別子i −→ h... 以外の識別子i
h省略記号i −→ h識別子 ...i
37
7.1.6. プログラムと定義
hプログラムi −→ hコマンドまたは定義i*
hコマンドまたは定義i −→ hコマンドi
| h定義i
| h構文定義i
| (begin hコマンドまたは定義i+ )
h定義i −→ (define h変数i h式i)
| (define (h変数i hdef 仮引数i) h本体i)
| (begin h定義i*)
hdef 仮引数i −→ h変数i*
| h変数i* . h変数i
h構文定義i −→
(define-syntax hキーワードi h変換子表現i)
7.2. 正式な意味論
この節では Scheme の基本式といくつかの組み込み手続き
に関しての正式な表示的意味論を示す。ここで用いられる概
念と表記については [29] に述べられている。表記を次にま
とめる。
h...i
s↓k
#s
s§t
s†k
t → a, b
ρ[x/i]
x in D
x|D
列の構成
列 s の k 番目の要素(1 から始まる)
列 s の長さ
列 s と t の連接
s から最初の k 要素を落す
McCarthy の条件分岐 “if t then a else b”
置換 “ρ with x for i”
injection of x into domain D
x の領域 D への射影
式の継続が 1 つの値でなく値の列をとるのは、手続き呼び
出しと複数の返り値の正式な扱いを単純化するためである。
ペア・ベクトル・文字列に付けられている論理値のフラグは
変更可能な時に真、変更不可能な時に偽となる。
呼び出しの時の評価順は未定義である。これを模擬するため
に、互いに逆関数となる任意の並び変え permute と unpermute を引数とそれの評価結果にそれぞれ適用している。こ
れは正確には正しくない。なぜなら、これは評価順がどんな
引数の数にたいしてもプログラム中で固定されているとい
うことを誤って意味してしまうが、これは意図する意味論を
左から右へと評価されるものよりは正確に表現している。
記憶割当子 new は実装依存であるが、つぎの公理を満たさ
なければならない。new σ ∈ L, であるならσ (new σ | L) ↓ 2 =
false.
K の定義は省略した。それは適切な K の定義は意味なく意
味論を複雑にするからである。
P が全ての変数を参照あるいは代入の前に定義するような
プログラムであるならば、P の意味は
E[[((lambda (I*) P’) hundefinedi . . . )]]
38 Revised5 Scheme
となる。ここで I* は P で定義された変数の列、P0 は全ての
P 中の定義を代入で置き換えて得られる式の列、hundefinedi
は undefined に評価される式、E は式に意味を割り当てる意
味関数である。
E[[I]] = λρκ . hold (lookup ρ I)
(single(λ² . ² = undefined →
wrong “未定義の変数”,
send ² κ))
7.2.1. 抽象的な構文
E[[(E0 E*)]] =
λρκ . E*(permute(hE0 i § E*))
ρ
(λ²* . ((λ²* . applicate (²* ↓ 1) (²* † 1) κ)
(unpermute ²*)))
K
I
E
Γ
∈
∈
∈
∈
Con
Ide
Exp
Com = Exp
Exp −→
|
|
|
|
|
クオートを含む定数
識別子(変数)
式
コマンド
K | I | (E0 E*)
(lambda (I*) Γ* E0 )
(lambda (I* . I) Γ* E0 )
(lambda I Γ* E0 )
(if E0 E1 E2 ) | (if E0 E1 )
(set! I E)
7.2.2. 領域の一覧
α
ν
∈
∈
φ
²
∈
σ
ρ
θ
κ
∈
∈
∈
∈
∈
L
N
T
Q
H
R
Ep
Ev
Es
M
=
=
=
=
=
F =
E =
S
U
C
K
A
X
=
=
=
=
ロケーション
自然数
{false, true}
論理値
シンボル
文字
数
L×L×T
ペア
L* × T
ベクトル
L* × T
文字列
{false, true, null, undefined, unspecified}
雑
L × (E* → K → C) 手続きの値
Q + H + R + Ep + Ev + Es + M + F
式の値
L → (E × T)
格納
Ide → L
環境
S→A
コマンドの継続
E* → C
式の継続
答
エラー
7.2.3. 意味論関数
K:
E:
E* :
C:
Con → E
Exp → U → K → C
Exp* → U → K → C
Com* → U → C → C
E[[(lambda (I*) Γ* E0 )]] =
λρκ . λσ .
new σ ∈ L →
send (hnew σ | L,
λ²*κ0 . #²* = #I* →
tievals(λα* . (λρ0 . C[[Γ*]]ρ0 (E[[E0 ]]ρ0 κ0 ))
(extends ρ I* α*))
²*,
wrong “引数の数が不正”i
in E)
κ
(update (new σ | L) unspecified σ),
wrong “メモリ不足” σ
E[[(lambda (I* . I) Γ* E0 )]] =
λρκ . λσ .
new σ ∈ L →
send (hnew σ | L,
λ²*κ0 . #²* ≥ #I* →
tievalsrest
(λα* . (λρ0 . C[[Γ*]]ρ0 (E[[E0 ]]ρ0 κ0 ))
(extends ρ (I* § hIi) α*))
²*
(#I*),
wrong “引数が不足”i in E)
κ
(update (new σ | L) unspecified σ),
wrong “メモリ不足” σ
E[[(lambda I Γ* E0 )]] = E[[(lambda (. I) Γ* E0 )]]
E[[(if E0 E1 E2 )]] =
λρκ . E[[E0 ]] ρ (single (λ² . truish ² → E[[E1 ]]ρκ,
E[[E2 ]]ρκ))
E[[(if E0 E1 )]] =
λρκ . E[[E0 ]] ρ (single (λ² . truish ² → E[[E1 ]]ρκ,
send unspecified κ))
ここおよび他の場所で、 undefined を除くあらゆる式の値を unspecified の位置で用いることができる。
E[[(set! I E)]] =
λρκ . E[[E]] ρ (single(λ² . assign (lookup ρ I)
²
(send unspecified κ)))
E*[[ ]] = λρκ . κh i
E*[[E0 E*]] =
λρκ . E[[E0 ]] ρ (single(λ²0 . E *[[E*]] ρ (λ²* . κ (h²0 i § ²*))))
K の定義は敢えて省いている。
C[[ ]] = λρθ . θ
E[[K]] = λρκ . send (K[[K]]) κ
C[[Γ0 Γ*]] = λρθ . E[[Γ0 ]] ρ (λ²* . C[[Γ*]]ρθ)
7. 形式的な文法と意味論
7.2.4. 補助関数
list : E* → K → C
list =
λ²*κ . #²* = 0 → send null κ,
list (²* † 1)(single(λ² . consh²* ↓ 1, ²iκ))
lookup : U → Ide → L
lookup = λρI . ρI
extends : U → Ide* → L* → U
extends =
λρI*α* . #I* = 0 → ρ,
extends (ρ[(α* ↓ 1)/(I* ↓ 1)]) (I* † 1) (α* † 1)
wrong : X → C
[実装依存]
send : E → K → C
send = λ²κ . κh²i
single : (E → C) → K
single =
λψ²* . #²* = 1 → ψ(²* ↓ 1),
wrong “返り値の数が不正”
new : S → (L + {error})
[実装依存]
hold : L → K → C
hold = λακσ . send (σα ↓ 1)κσ
assign : L → E → C → C
assign = λα²θσ . θ(update α²σ)
update : L → E → S → S
update = λα²σ . σ[h², truei/α]
tievals : (L* → C) → E* → C
tievals =
λψ²*σ . #²* = 0 → ψh iσ,
new σ ∈ L → tievals (λα* . ψ(hnew σ | Li § α*))
(²* † 1)
(update(new σ | L)(²* ↓ 1)σ),
wrong “メモリ不足”σ
tievalsrest : (L* → C) → E* → N → C
tievalsrest =
λψ²*ν . list (dropfirst ²*ν)
(single(λ² . tievals ψ ((takefirst ²*ν) § h²i)))
dropfirst = λln . n = 0 → l, dropfirst (l † 1)(n − 1)
takefirst = λln . n = 0 → h i, hl ↓ 1i § (takefirst (l † 1)(n − 1))
truish : E → T
truish = λ² . ² = false → false, true
permute : Exp* → Exp*
unpermute : E* → E*
39
[実装依存]
[permute の逆関数]
applicate : E → E* → K → C
applicate =
λ²²*κ . ² ∈ F → (² | F ↓ 2)²*κ, wrong “不適当な手続き”
onearg : (E → K → C) → (E* → K → C)
onearg =
λζ²*κ . #²* = 1 → ζ(²* ↓ 1)κ,
wrong “引数の数が不正”
twoarg : (E → E → K → C) → (E* → K → C)
twoarg =
λζ²*κ . #²* = 2 → ζ(²* ↓ 1)(²* ↓ 2)κ,
wrong “引数の数が不正”
cons : E* → K → C
cons =
twoarg (λ²1 ²2 κσ . new σ ∈ L →
(λσ 0 . new σ 0 ∈ L →
send (hnew σ | L, new σ 0 | L, truei
in E)
κ
(update(new σ 0 | L)²2 σ 0 ),
wrong “メモリ不足”σ 0 )
(update(new σ | L)²1 σ),
wrong “メモリ不足”σ)
less : E* → K → C
less =
twoarg (λ²1 ²2 κ . (²1 ∈ R ∧ ²2 ∈ R) →
send (²1 | R < ²2 | R → true, false)κ,
wrong “< への数でない引数”)
add : E* → K → C
add =
twoarg (λ²1 ²2 κ . (²1 ∈ R ∧ ²2 ∈ R) →
send ((²1 | R + ²2 | R) in E)κ,
wrong “+ への数でない引数”)
car : E* → K → C
car =
onearg (λ²κ . ² ∈ Ep → hold (² | Ep ↓ 1)κ,
wrong “car へのペアでない引数”)
cdr : E* → K → C
[similar to car]
[car に類似]
setcar : E* → K → C
setcar =
twoarg (λ²1 ²2 κ . ²1 ∈ Ep →
(²1 | Ep ↓ 3) → assign (²1 | Ep ↓ 1)
²2
(send unspecified κ),
wrong “set-car! への変更不可能な引数”,
wrong “set-car! へのペアでない引数”)
eqv : E* → K → C
eqv =
twoarg (λ²1 ²2 κ . (²1 ∈ M ∧ ²2 ∈ M) →
send (²1 | M = ²2 | M → true, false)κ,
(²1 ∈ Q ∧ ²2 ∈ Q) →
send (²1 | Q = ²2 | Q → true, false)κ,
(²1 ∈ H ∧ ²2 ∈ H) →
send (²1 | H = ²2 | H → true, false)κ,
(²1 ∈ R ∧ ²2 ∈ R) →
send (²1 | R = ²2 | R → true, false)κ,
(²1 ∈ Ep ∧ ²2 ∈ Ep ) →
send ((λp1 p2 . ((p1 ↓ 1) = (p2 ↓ 1)∧
(p1 ↓ 2) = (p2 ↓ 2)) → true,
false)
(²1 | Ep )
(²2 | Ep ))
κ,
40 Revised5 Scheme
(²1 ∈ Ev ∧ ²2 ∈ Ev ) → . . . ,
(²1 ∈ Es ∧ ²2 ∈ Es ) → . . . ,
(²1 ∈ F ∧ ²2 ∈ F) →
send ((²1 | F ↓ 1) = (²2 | F ↓ 1) → true, false)
κ,
send false κ)
apply : E* → K → C
apply =
twoarg (λ²1 ²2 κ . ²1 ∈ F → valueslist h²2 i(λ²* . applicate ²1 ²*κ),
wrong “apply への手続き引数が不適切”)
valueslist : E* → K → C
valueslist =
onearg (λ²κ . ² ∈ Ep →
cdrh²i
(λ²* . valueslist
²*
(λ²* . carh²i(single(λ² . κ(h²i § ²*))))),
² = null → κh i,
wrong “values-list へのリストでない引数”)
cwcc : E* → K → C
[call-with-current-continuation]
cwcc =
onearg (λ²κ . ² ∈ F →
(λσ . new σ ∈ L →
applicate ²
hhnew σ | L, λ²*κ0 . κ²*i in Ei
κ
(update (new σ | L)
unspecified
σ),
wrong “メモリ不足” σ),
wrong “手続き引数が不適当”)
values : E* → K → C
values = λ²*κ . κ²*
cwv : E* → K → C
[call-with-values]
cwv =
twoarg (λ²1 ²2 κ . applicate ²1 h i(λ²* . applicate ²2 ²*))
7.3. 派生式
この節では派生式の基本式(リテラル、変数、手続き呼び出
し、lambda 、if、set!)を用いたマクロ定義を示す。delay
の定義の例は 6.4 節を参照せよ。
(define-syntax cond
(syntax-rules (else =>)
((cond (else result1 result2 ...))
(begin result1 result2 ...))
((cond (test => result))
(let ((temp test))
(if temp (result temp))))
((cond (test => result) clause1 clause2 ...)
(let ((temp test))
(if temp
(result temp)
(cond clause1 clause2 ...))))
((cond (test)) test)
((cond (test) clause1 clause2 ...)
(let ((temp test))
(if temp
temp
(cond clause1 clause2 ...))))
((cond (test result1 result2 ...))
(if test (begin result1 result2 ...)))
((cond (test result1 result2 ...)
clause1 clause2 ...)
(if test
(begin result1 result2 ...)
(cond clause1 clause2 ...)))))
(define-syntax case
(syntax-rules (else)
((case (key ...)
clauses ...)
(let ((atom-key (key ...)))
(case atom-key clauses ...)))
((case key
(else result1 result2 ...))
(begin result1 result2 ...))
((case key
((atoms ...) result1 result2 ...))
(if (memv key ’(atoms ...))
(begin result1 result2 ...)))
((case key
((atoms ...) result1 result2 ...)
clause clauses ...)
(if (memv key ’(atoms ...))
(begin result1 result2 ...)
(case key clause clauses ...)))))
(define-syntax and
(syntax-rules ()
((and) #t)
((and test) test)
((and test1 test2 ...)
(if test1 (and test2 ...) #f))))
(define-syntax or
(syntax-rules ()
((or) #f)
((or test) test)
((or test1 test2 ...)
(let ((x test1))
(if x x (or test2 ...))))))
(define-syntax let
(syntax-rules ()
((let ((name val) ...) body1 body2 ...)
((lambda (name ...) body1 body2 ...)
val ...))
((let tag ((name val) ...) body1 body2 ...)
((letrec ((tag (lambda (name ...)
body1 body2 ...)))
tag)
val ...))))
7. 形式的な文法と意味論
(define-syntax let*
(syntax-rules ()
((let* () body1 body2 ...)
(let () body1 body2 ...))
((let* ((name1 val1) (name2 val2) ...)
body1 body2 ...)
(let ((name1 val1))
(let* ((name2 val2) ...)
body1 body2 ...)))))
次の letrec マクロはシンボル <undefined> を、ある場所
にその値を格納するとその場所に格納された値を読みだす
ことをエラーとするような値(そのような値は Scheme で
は定義されていない)の場所で用いている。値を評価する順
番を指示することを防ぐために必要な仮の名前を作るのに
トリックを用いている。これは補助マクロを用いることでも
実現できる。
(define-syntax letrec
(syntax-rules ()
((letrec ((var1 init1) ...) body ...)
(letrec "generate temp names"
(var1 ...)
()
((var1 init1) ...)
body ...))
((letrec "generate temp names"
()
(temp1 ...)
((var1 init1) ...)
body ...)
(let ((var1 <undefined>) ...)
(let ((temp1 init1) ...)
(set! var1 temp1)
...
body ...)))
((letrec "generate temp names"
(x y ...)
(temp ...)
((var1 init1) ...)
body ...)
(letrec "generate temp names"
(y ...)
(newtemp temp ...)
((var1 init1) ...)
body ...))))
(define-syntax begin
(syntax-rules ()
((begin exp ...)
((lambda () exp ...)))))
begin に対する次の定義はλ式の本体に複数の式を書くこ
とのできるという機能を用いていない。どちらにしても、こ
れらの規則は begin の本体に定義を含まない時にのみ適用
できることに注意せよ。
41
(define-syntax begin
(syntax-rules ()
((begin exp)
exp)
((begin exp1 exp2 ...)
(let ((x exp1))
(begin exp2 ...)))))
次の do の定義は変数の節を展開するのにトリックを用いて
いる。上の letrec 同様、補助マクロを用いても良い。式
(if #f #f) を未定義値を得るのに用いている。
(define-syntax do
(syntax-rules ()
((do ((var init step ...) ...)
(test expr ...)
command ...)
(letrec
((loop
(lambda (var ...)
(if test
(begin
(if #f #f)
expr ...)
(begin
command
...
(loop (do "step" var step ...)
...))))))
(loop init ...)))
((do "step" x)
x)
((do "step" x y)
y)))
42 Revised5 Scheme
注釈
例
integrate-system は微分方程式の系
言語の変更点
yk0 = fk (y1 , y2 , . . . , yn ), k = 1, . . . , n
4
この節では “Revised report” [6] が発行されて以降の変更
点を挙げる。
• このレポートは今では Scheme に関する IEEE 標準 [13]
の上位セットとなっている。すなわちこのレポートに合
致する実装は IEEE 標準にも合致する。そのために次
の変更を必要とした。
– 空リストは「真」の論理値として扱われることが
要求されるようになった。
– 機能の essential, inessential の分類は撤廃された。
これらは組み込み手続きの 3 つの分類、すなわ
ち必須 primitive、ライブラリ library、任意 optional の区別となった。任意に分類される手続き
は load, with-input-from-file, with-outputto-file, transcript-on, transcript-off, そ
して interaction-environment と、3 引数以上
の - および / である。これらはいずれも IEEE 標
準にはない。
– プログラムは組み込み手続きを再定義しても良く
なった。これをしても他の組み込み手続きの動作
には影響を与えない。
• ポートは独立な型のリストに追加された。
• マクロに関する付録は削除された。高レベルマクロは
レポートの本体の一部となった。派生式の書き換えルー
ルはマクロ定義で置き換えられた。予約された識別子
は存在しない。
• syntax-rules はベクトルパターンを認めるようにな
った。
• 複数の返り値、eval、dynamic-wind が追加された。
• 正確な末尾再帰の方法で実装されることが必要とされ
る呼び出しを明確に定義した。
• ‘@’ は識別子中で用いることができる。‘|’ は将来の拡
張のために予約されている。
追加資料
http://www.cs.indiana.edu/scheme-repository/
の Internet Scheme Repository には、論文、プログラム、
実装、その他の Scheme 関連の資料といった広範な Scheme
の参考資料がある。
を Runge-Kutta 法を用いて積分する。
引数 system-derivative は系の状態(状態変数 y1 , . . . , yn の
値のベクトル)をとって系の微分係数(y10 , . . . , yn0 の値)を
返す関数である。引数 initial-state は系の初期状態を、
h は積分間隔の初期推測値を与える。
integrate-system の返り値は系の状態の無限ストリーム
である。
(define integrate-system
(lambda (system-derivative initial-state h)
(let ((next (runge-kutta-4 system-derivative h)))
(letrec ((states
(cons initial-state
(delay (map-streams next
states)))))
states))))
runge-kutta-4 は系の状態から系の状態の微分係数をつく
り出す関数 f を引数にとる。runge-kutta-4 は系の状態を
とり新しい系の状態を返す関数を返す。
(define runge-kutta-4
(lambda (f h)
(let ((*h (scale-vector h))
(*2 (scale-vector 2))
(*1/2 (scale-vector (/ 1 2)))
(*1/6 (scale-vector (/ 1 6))))
(lambda (y)
;; y is a system state
(let* ((k0 (*h (f y)))
(k1 (*h (f (add-vectors y (*1/2 k0)))))
(k2 (*h (f (add-vectors y (*1/2 k1)))))
(k3 (*h (f (add-vectors y k2)))))
(add-vectors y
(*1/6 (add-vectors k0
(*2 k1)
(*2 k2)
k3))))))))
(define elementwise
(lambda (f)
(lambda vectors
(generate-vector
(vector-length (car vectors))
(lambda (i)
(apply f
(map (lambda (v) (vector-ref
vectors)))))))
(define generate-vector
(lambda (size proc)
(let ((ans (make-vector size)))
(letrec ((loop
(lambda (i)
v i))
参考文献
(cond ((= i size) ans)
(else
(vector-set! ans i (proc i))
(loop (+ i 1)))))))
(loop 0)))))
43
参考文献
(define add-vectors (elementwise +))
[1] Harold Abelson and Gerald Jay Sussman with Julie
Sussman. Structure and Interpretation of Computer
Programs, second edition. MIT Press, Cambridge,
1996.
(define scale-vector
(lambda (s)
(elementwise (lambda (x) (* x s)))))
[2] Alan Bawden and Jonathan Rees. Syntactic closures.
In Proceedings of the 1988 ACM Symposium on Lisp
and Functional Programming, pages 86–95.
map-streams は map に類似している。第 1 引数(手続き)
を第 2 引数(ストリーム)の全ての要素に適用する。
[3] Robert G. Burger and R. Kent Dybvig. Printing
floating-point numbers quickly and accurately. In
Proceedings of the ACM SIGPLAN ’96 Conference
on Programming Language Design and Implementation, pages 108–116.
(define map-streams
(lambda (f s)
(cons (f (head s))
(delay (map-streams f (tail s))))))
無限ストリームは、car にストリームの第 1 要素を、そして
第 2 引数に残りのストリームの promise を持つペアとして
実装されている。
(define head car)
(define tail
(lambda (stream) (force (cdr stream))))
減衰オシレータの系
C
dvC
vC
= −iL −
dt
R
diL
= vC
dt
の積分に integrate-system を用いた例を次に示す。
L
(define damped-oscillator
(lambda (R L C)
(lambda (state)
(let ((Vc (vector-ref state 0))
(Il (vector-ref state 1)))
(vector (- 0 (+ (/ Vc (* R C)) (/ Il C)))
(/ Vc L))))))
(define the-states
(integrate-system
(damped-oscillator 10000 1000 .001)
’#(1 0)
.01))
[4] William Clinger, editor. The revised revised report
on Scheme, or an uncommon Lisp. MIT Artificial
Intelligence Memo 848, August 1985. Also published
as Computer Science Department Technical Report
174, Indiana University, June 1985.
[5] William Clinger. How to read floating point numbers
accurately. In Proceedings of the ACM SIGPLAN
’90 Conference on Programming Language Design
and Implementation, pages 92–101. Proceedings published as SIGPLAN Notices 25(6), June 1990.
[6] William Clinger and Jonathan Rees, editors. The
revised4 report on the algorithmic language Scheme.
In ACM Lisp Pointers 4(3), pages 1–55, 1991.
[7] William Clinger and Jonathan Rees. Macros that
work. In Proceedings of the 1991 ACM Conference
on Principles of Programming Languages, pages 155–
162.
[8] William Clinger. Proper Tail Recursion and Space
Efficiency. To appear in Proceedings of the 1998 ACM
Conference on Programming Language Design and
Implementation, June 1998.
[9] R. Kent Dybvig, Robert Hieb, and Carl Bruggeman.
Syntactic abstraction in Scheme. Lisp and Symbolic
Computation 5(4):295–326, 1993.
[10] Carol Fessenden, William Clinger, Daniel P. Friedman, and Christopher Haynes. Scheme 311 version 4
reference manual. Indiana University Computer Science Technical Report 137, February 1983. Superseded by [11].
[11] D. Friedman, C. Haynes, E. Kohlbecker, and
M. Wand. Scheme 84 interim reference manual. Indiana University Computer Science Technical Report
153, January 1985.
44 Revised5 Scheme
[12] IEEE Standard 754-1985. IEEE Standard for Binary
Floating-Point Arithmetic. IEEE, New York, 1985.
[13] IEEE Standard 1178-1990. IEEE Standard for the
Scheme Programming Language. IEEE, New York,
1991.
[14] Eugene E. Kohlbecker Jr. Syntactic Extensions in
the Programming Language Lisp. PhD thesis, Indiana University, August 1986.
[15] Eugene E. Kohlbecker Jr., Daniel P. Friedman,
Matthias Felleisen, and Bruce Duba. Hygienic macro
expansion. In Proceedings of the 1986 ACM Conference on Lisp and Functional Programming, pages
151–161.
[16] Peter Landin. A correspondence between Algol 60
and Church’s lambda notation: Part I. Communications of the ACM 8(2):89–101, February 1965.
[17] MIT Department of Electrical Engineering and Computer Science. Scheme manual, seventh edition.
September 1984.
[18] Peter Naur et al. Revised report on the algorithmic language Algol 60. Communications of the ACM
6(1):1–17, January 1963.
[19] Paul Penfield, Jr. Principal values and branch cuts
in complex APL. In APL ’81 Conference Proceedings, pages 248–256. ACM SIGAPL, San Francisco, September 1981. Proceedings published as
APL Quote Quad 12(1), ACM, September 1981.
[20] Kent M. Pitman. The revised MacLisp manual (Saturday evening edition). MIT Laboratory for Computer Science Technical Report 295, May 1983.
[21] Jonathan A. Rees and Norman I. Adams IV. T: A
dialect of Lisp or, lambda: The ultimate software
tool. In Conference Record of the 1982 ACM Symposium on Lisp and Functional Programming, pages
114–122.
[22] Jonathan A. Rees, Norman I. Adams IV, and James
R. Meehan. The T manual, fourth edition. Yale
University Computer Science Department, January
1984.
[23] Jonathan Rees and William Clinger, editors. The
revised3 report on the algorithmic language Scheme.
In ACM SIGPLAN Notices 21(12), pages 37–79, December 1986.
[24] John Reynolds. Definitional interpreters for higher
order programming languages. In ACM Conference
Proceedings, pages 717–740. ACM, 1972.
[25] Guy Lewis Steele Jr. and Gerald Jay Sussman. The
revised report on Scheme, a dialect of Lisp. MIT Artificial Intelligence Memo 452, January 1978.
[26] Guy Lewis Steele Jr. Rabbit: a compiler for Scheme.
MIT Artificial Intelligence Laboratory Technical Report 474, May 1978.
[27] Guy Lewis Steele Jr. Common Lisp: The Language,
second edition. Digital Press, Burlington MA, 1990.
[28] Gerald Jay Sussman and Guy Lewis Steele Jr.
Scheme: an interpreter for extended lambda calculus. MIT Artificial Intelligence Memo 349, December
1975.
[29] Joseph E. Stoy. Denotational Semantics: The ScottStrachey Approach to Programming Language Theory. MIT Press, Cambridge, 1977.
[30] Texas Instruments, Inc. TI Scheme Language Reference Manual. Preliminary version 1.0, November
1985.
Index
概念の定義、キーワード、手続きの索引
それぞれの単語、関数、キーワードの最も主となる項目は
各項の最初に、別の項目とはセミコロンで区切って示されて
いる。
! 4
’ 8; 23
* 20
+ 20; 5, 39
, 12; 23
,@ 12
- 20; 5
-> 4
... 5; 13
/ 20
; 5
< 19; 39
<= 20
= 19; 20
=> 9
> 19
>= 20
? 4
‘ 12
abs 20; 22
acos 21
and 10; 40
angle 22
append 24
apply 29; 7, 40
asin 21
assoc 25
assq 25
assv 25
atan 21
#b 19; 35
begin 11; 14, 15, 41
boolean? 23; 6
caar 24
cadr 24
call by need 11
call-with-current-continuation 30; 7, 31, 40
call-with-input-file 32
call-with-output-file 32
call-with-values 31; 7, 40
call/cc 31
car 24; 39
case 10; 40
catch 31
cdddar 24
cddddr 24
cdr 24
ceiling 21
char->integer 27
char-alphabetic? 27
char-ci<=? 27
char-ci<? 27
char-ci=? 27
char-ci>=? 27
char-ci>? 27
char-downcase 27
char-lower-case? 27
char-numeric? 27
char-ready? 34
char-upcase 27
char-upper-case? 27
char-whitespace? 27
char<=? 26; 27
char<? 26
char=? 26
char>=? 26
char>? 26
char? 26; 6
close-input-port 33
close-output-port 33
combination 8
complex? 19; 18
cond 9; 14, 40
cons 24
cos 21
current-input-port 33
current-output-port 33
#d 19
define 14; 12
define-syntax 15
delay 11; 29
denominator 21
display 34
do 11; 41
dynamic-wind 31; 30
#e 19; 35
else 9; 10
eof-object? 33
eq? 17
equal? 17
eqv? 16; 6, 9, 39
ev? 9
eval 32; 7
even? 20
exact->inexact 22
exact? 19
exp 21
45
46 Revised5 Scheme
expt 21
#f 22
floor 21
for-each 29
force 29; 11
gcd 20
hygienic 12
#i 19; 35
if 9; 38
imag-part 22
inexact->exact 22; 18
inexact? 19
input-port? 33
integer->char 27
integer? 19; 18
interaction-environment 32
lambda 8; 15, 38
lazy evaluation 11
lcm 20
length 24; 18
let 10; 11, 14, 15, 40
let* 10; 15, 41
let-syntax 12; 15
letrec 10; 15, 41
letrec-syntax 13; 15
list 24
list->string 28
list->vector 29
list-ref 25
list-tail 25
list? 24
load 34
log 21
magnitude 22
make-polar 21
make-rectangular 21
make-string 27
make-vector 28
map 29
max 20
member 25
memq 25
memv 25
min 20
modulo 20
negative? 20
newline 34
nil 23
not 23
null-environment 32
null? 24
number->string 22
number? 19; 6, 18
numerator 21
#o 19; 35
odd? 20
open-input-file 33
open-output-file 33
or 10; 40
output-port? 33
pair? 24; 6
peek-char 33
port? 6
positive? 20
procedure? 29; 6
promise 12; 29
quasiquote 12; 23
quote 8; 23
quotient 20
rational? 19; 18
rationalize 21
read 33; 23, 36
read-char 33
real-part 22
real? 19; 18
remainder 20
reverse 25
round 21
scheme-report-environment 32
set! 9; 15, 38
set-car! 24; 39
set-cdr! 24; 23
sin 21
sqrt 21
string 27
string->list 28
string->number 22
string->symbol 26
string-append 28
string-ci<=? 28
string-ci<? 28
string-ci=? 28
string-ci>=? 28
string-ci>? 28
string-copy 28
string-fill! 28
string-length 27; 18
string-ref 27
string-set! 27; 26
string<=? 28
string<? 28
Index
string=? 28
string>=? 28
string>? 28
string? 27; 6
substring 28
symbol->string 26; 7
symbol? 26; 6
syntax-rules 13; 15
#t 22
tan 21
transcript-off 34
transcript-on 34
truncate 21
unquote 12; 23
unquote-splicing 12; 23
values 31; 8
vector 28
vector->list 29
vector-fill! 29
vector-length 28; 18
vector-ref 28
vector-set! 29
vector? 28; 6
with-input-from-file 33
with-output-to-file 33
write 34; 12
write-char 34
#x 19; 36
zero? 20
エラー 3
オブジェクト 3
型 6
偽 6; 22, 23
キーワード 12; 35
空白 5
空リスト 23; 6, 24
継続 31
構文キーワード 5; 12, 35
構文定義 15
コメント 5; 35
コンマ 12
参照透過性 12
識別子 5; 25, 35
実装の制約 4; 18
述語 16
初期環境 15
真 6; 9, 22, 23
数 17
数の型 17
正確 16
正確さ 18
正確な末尾再帰 7
束縛 5; 6
束縛を作る構文 6
束縛されていない 6; 8, 15
正しいインデックス 27; 28
脱出手続き 30
定義 14
定数 6
手続き呼び出し 8
等価述語 16
トークン 35
ドット対 23
トップレベル環境 15; 6
内部定義 15
任意 3
バッククオート 12
非正確 16
不完全リスト 23
ペア 23
変更可能 7
変更不可能 7
変数 5; 8, 35
ポート 32
マクロ 12
マクロの使用 12
マクロキーワード 12
マクロ変換子 12
末尾呼び出し 7
未定義 4
最も単純な有理数 21
呼び出し 8
ライブラリ 3
ライブラリ手続き 15
領域 6; 9, 10, 11
ロケーション 6
47