K R I ア ウト ル ッ ク vol.61 県内宿泊業界の動向 アクティブシ ニ ア に 活 躍 の 場 を 2 015 年、沖 縄 県 へ の 入 域 観 光 客 数は 7 7 6 万 3 , 0 0 0 人で 過 去 最 高 を 記 録 。 好 調な観光客増を受け、県内の宿泊産業も順調に拡大している。宿泊に関する さまざまなデータを用い、 宿泊産業におけるこれまでと今後の推移を概観する。 図表 2:宿泊施設数規模別増減率 県内宿泊施設のこれまで 宿泊施設種類 県内の宿泊施設数について近年の推移をみると、軒数は 2014年軒数 04→14 年 客室数増減率 大規模ホテル 57 81 142 . 1 % 中規模ホテル 87 114 13 1 . 0 % およそ2倍に増加している。客室数も28,303 室から43,623 室 小規模ホテル 152 161 10 5 . 9 % となっており、およそ 1.5 倍の増加となっている。 民宿 481 1,149 23 8 . 9 % 45 36 80.0% 2004 年時点で822 軒だったものが 2014 年には1,541 軒と、 施 設 軒 数の増 加 割 合に比 べて客 室 数の増 加 割 合 が 小さいことから、比較的小規模で客室数の少ない宿泊施 団体経営・ユースホステル (出 所)沖縄 県「宿泊施 設 統 計」を基 に 作 成 設が増加していると推察される。 好調な客室稼働率推移 図表 1:県内宿泊施設数の推移(施設軒数および客室数) 客室稼働率は 2010 年以降、概ね順調に上昇しており、 室) 50,000 1,541軒 45,000 宿泊施設軒数 40,000 計38,905 団体経営施設 389 ・ユースホテル 35,000 7,577 民宿等 30,000 小規模ホテル 25,000 中規模ホテル 3,366 9,681 20,000 15,000 10,000 大規模ホテル 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 軒) 1,600 1,400 1,200 2014 年 度ではリゾートホテル、 シティホテル、 ビジネスホテ ルともおよそ 8 割となっている。 ビジネスホテルの稼働率推 移に特徴があり、2010 年以前では他の業態より低かった が、現在ではその差がほとんどなくなっている。 ここ数年は 1,000 LCC の拡充などもあり、廉価なビジネスホテルにも一定の 800 需要が集まっているとみられる。ちなみにビジネスホテルと 600 は、営 業メニューから料 飲やブライダル部 門などを取り除 400 いた宿泊特化型ホテルを指す。 200 図表 3:ホテルタイプ別の稼働率推移 19,230 5,000 14 0 (出所) 沖縄県「宿泊施設統計」 を基に作成 % 85 75 図表 2の通りである。特に増加率が顕著なのは「民宿」で、 70 このほか増加している宿泊施設としては 「大規模ホテル (定員300人以上) 」 ( 42.1%増)、 「中規模ホテル (定員100 ∼ 299人) 」 (31.0%増) が挙げられる。 vol.134 2016 年 5 月号 シティホテル 80 宿 泊 施 設 種 類別の2004 ∼ 2014 年の軒数の増 減 率は 10年間で 2 倍以上に増加している。 04 2004 年軒数 リゾートホテル 65 ビジネスホテル 60 55 50 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 (出所) 沖縄振興開発金融公庫「県内主要ホテルの動向分析」 を基に作成 13 14 (年度) 新規開発の動向 と2015年のデータを比較した。推計は、入域国内客および 好調な稼働率を背景に、県内宿泊業界の動きも活発化 算出したものである。 なお、海路客は多くが宿泊施設での宿 している。新聞報道をみると、新規宿泊施設展開に関する 泊を伴わないため推計から除外している。 案件が多くみられる。沖 縄 本 島 内だけでも、11 軒の新 規 推計の結果、全体の延べ宿泊日数は 2011年の1,477 万 ホテルが計画されており、客室数は 1,400 室以上に上る。 人泊から、2015年には 2,168 万人泊まで増加しており、 5 年間 特に、那 覇 市 内においては新 規 計 画が多く、2018 年まで でおよそ46.8%の伸びとなった。 におよそ 1,000 室の客室増加が見込まれる。離島において 特筆すべきは外国客の伸びだ。宿泊数はこの 5 年で 58 万 も大 規 模な開 発 が 予 定されており、宮 古 島 市 では 最 大 人泊から 401万人泊へ、 およそ 7 倍に増加している。全体を 2,800 室のホテル開業が予定されている。 みれば依然として国内客比率が大きいが、外国客の動向は 外国客数にそれぞれの平均宿泊数を乗じ、延べ宿泊日数を 引き続き注視する必要がある。今後、外国客のさらなる増加 図表 4:新規ホテルの開発動向 開業予定時期 2016 年 地域および客室 ・那 覇 市(牧志) 15 9 室 ・那 覇 市(松尾) 19 8 室 ・那 覇 市(泉崎) 50 室 ・読 谷 村 14 8 室 ・北 谷 町(美浜) 16 6 室 ・竹 富 町 2017 年 という市場の変化が十分考えられ、 そのような状況に対応で きることが重要だ。 図表 5:観光客における宿泊実績の推計 2011 年 国内客 空 路 年 間 入 域 数(a) 510.0万人 ・石 垣 市(新川) 10 0 室 ・那 覇 市(牧志) 218 室 平 均 泊 数(b) 2.78泊 年 間 延 べ 泊 数(a) × (b) 1,419万人泊 2015 年 外国客 国内客 外国客 16.3万人 622.0万人 107.7万人 3.57泊 2.84泊 3.72泊 58万人泊 1,767万人泊 401万人泊 ・那 覇 市(牧志) 9 4 室 ※ 増 築 ・宮 古 島 市 最 大 2 8 0 0 室 2018 年 ・那 覇 市(松尾) 2 5 0 室 ・糸 満 市(名城) 2 0 2 0 年以降 国内客 58万人泊 230 室 ・那 覇 市 ・恩 納 村 ※ 2 0 1 5 年 発 表 分 の 記 事 のみの 整 理 ※ 既にオ ー プンした 案 件も含 む ( 出 所 )沖 縄タイムス の 報 道 記 事 を 基 に 作 成 新規開発だけでなくホテルの増築、 ホテル用地の譲渡や、 運営企業、経営企業、 ブランド名の変更などに関する報道も 多く、業界の動きが活発化していることがうかがえる。 この 2 011 年 2 015 年 1,419 万人泊 1,767 万人泊 外国客 計 1,477万人泊 401万人泊 計 2,168 万人泊 ※ 2 0 15 年の平 均 泊 数 が 未 発 表 のため、2 014 年 の 平 均 泊 数 で 代 用 ※海路客を除く ( 出 所 )沖 縄 県 入 域 観 光 客 概 況 、観 光 統 計 実 態 調 査 、外国人観光客実態調査を基に作 成 ような動きは、那覇空港における第 二 滑走 路の建設とその まとめ 誘客効果等を見越した動きであると思われる。 宿 泊 業 界は好 況で、今 後は市 場 拡 大が予 想されるが、 また、上記はあくまで新聞で報道されるレベルの案件で 過当競争が進む恐れもある。市場では、外国客の存在感が あり、水面下ではさらに多くの、民宿や民泊などのスモール 増しており、現況をみる限り今後も増え続けるとみられる。 こ ビジネスが動き始めていると推察される。 のほか、近年ではLCC拡充などにより廉価な旅行、 ニーズが 宿泊実績の推計 多彩な個人旅行が増えるなど、環境も変化を続けている。 このような状 況からも、今後はさまざまなタイプの宿泊施 ニーズや、多様性から生じる新たなニーズをターゲットとして 設の拡充が進むと見込まれる。 これに伴い客 室も増 加し、 いくことになる。それぞれのターゲットを受け入れるための 激しい競争が繰り広げられることが想定される。 プロモーションやチャネル構築もニーズに併せて多様化が進む 業界で勝ち残っていくためには、事業者は自身のターゲッ と思われ、市場の拡大によりこの傾向はさらに顕著になることが トがどこにあるのかを見極めていく必要がある。 そこで、県内 考えられる。 この混沌とした状況にはチャンスも多く、新たな の宿泊市場の動きに目を向ける。 ブルーオーシャンが作り出される可能性も大きいのではないか。 ここでは来沖観光客を対象に、宿泊実績を推計し、2011年 各宿泊施設では、市場環境の変化を考慮しながら、既存の (海邦総研地域経済調査部/瀬川孫秀) vol.134 2016 年 5 月号 05
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