レポート 「介護離職ゼロ」をめざして 内匠 功 【 要 生活設計研究部 主任研究員 旨 】 介護離職者(介護が主たる理由で離職した人)は毎年約 10 万人発生している。内訳は男性 2割・女性8割であり、年齢的には 50 歳代から 60 歳代前半が多い。正規職員の介護離職は 男女とも少なく、パートタイマー等の非正規職員が多い。 介護離職の要因としては、「自分以外に介護をする人がいなかったこと」・「仕事と介護の両 立が精神的・体力的に限界になったこと」 ・ 「職場で仕事と介護の両立を支援する環境が形成 されていなかったこと」・「特別養護老人ホームなどの介護施設の整備が不十分だったこと」 などが挙げられる。一方、「自分で親の介護をしたい」という自発的な離職者もいる。 介護有業者(介護をしながら仕事を継続している人)は約 300 万人。40 歳以降増加し、50 歳代後半では就業者の約1割が介護を行なっている。介護有業者のうち、男性の約2割・女 性の約4割は平日の介護時間が2時間以上であり、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積してい る可能性が高い。このような介護離職予備軍は約 100 万人と推計される。 介護無業者(介護が主たる理由で仕事をしていない人)は約 110 万人。50 歳代後半から 60 歳代前半の女性に限定すれば人口に占める割合は4%前後。男性よりも女性の方が労働市場 から引退する時期が早いが、その要因の一つが親・義親等の介護である。 介護離職ゼロをめざすためには以下の施策を推進することが必要と考える。 ①仕事と介護を円滑に両立できるようにするため、働き方改革を徹底的に推進し、労働時間 の縮減や業務の柔軟性確保に努め、休暇の取得やフレックスタイム制度等を利用しやすい 職場環境を構築する。互いに理解し協力しあえる雰囲気を醸成することが重要。 ②要介護度の上昇や介護期間の長期化による介護負荷の増大によって在宅介護が困難化す るケースに対処するため、今後は特別養護老人ホームなど介護施設の整備によりいっそう 注力する。 ③介護休業の分割取得回数(2017 年1月から3回まで可能)のさらなる引き上げや経済的 に困窮している要介護者に対する介護サービス利用料の助成を全国的に拡充する。また、 介護保険制度や介護サービス等に関する早期の知識普及などにも努める。 はじめに 2015 年9月、安倍首相はアベノミクス第二弾として「新・三本の矢」を打ち出し、 その目標の一つとして「介護離職ゼロ」をめざすことを表明した。総務省「就業構造基 本調査(2012 年)」によると、毎年約 10 万人の介護離職が発生しているが、その実態 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 48 についてはまだよくわからない面が多い。 本稿では、同調査の分析に加え、2014 年に公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団と 当研究所が共同で実施した調査の結果も活用し、介護離職の実態究明に努める。 Ⅰ 男女別・年齢階級別の就業状況 1.就業者数の推移 わが国の生産年齢人口(15~64 歳人口)は 1995 年をピークに減少傾向(1995 年:8,726 万人→2015 年:7,708 万人)が続いているものの、就業者数はほぼ横ばい(1995 年:6,457 万人→2015 年:6,376 万人)を維持している(図表1)。 図表1 生産年齢人口と就業者数の推移 生産年齢人口(15~64歳人口) (万人) 9,000 8,656 8,500 8,702 8,614 8,685 8,726 8,703 8,704 8,716 8,676 8,692 8,614 8,638 8,540 就業者数 8,442 8,302 8,571 8,149 8,508 8,134 8,373 8,000 7,901 8,230 8,174 7,708 8,018 7,785 7,500 7,000 6,500 6,369 6,450 6,436 6,000 6,249 6,457 6,453 6,557 6,486 6,462 6,514 6,412 6,446 6,316 6,330 6,356 6,329 6,427 6,389 6,314 6,409 6,289 6,298 6,311 6,270 6,376 6,351 5,500 5,000 (年) 出所:総務省「人口推計」、総務省「労働力調査」より作成 男性の就業者数は減少(1995 年:3,843 万人→2015 年:3,622 万人)しているが、女 性の就業者数は増加(1995 年:2,614 万人→2015 年:2,754 万人)しており、また、男 女とも 60 歳以上の就業者数が大幅に増加(男性 1995 年:520 万人→2015 年:759 万人、 女性 1995 年:315 万人→2015 年:504 万人)している(図表2)。 男女とも 70 歳以上の就業率はやや低下(男性 1995 年:25.9%→2015 年:20.1%、 女性 1995 年:10.3%→2015 年:9.3%)しているが、60 歳代前半の就業率が大幅に上 昇(男性 1995 年:69.3%→2015 年:75.5%、女性 1995 年:38.7%→2015 年:49.4%) している。この傾向は 2005 年頃からとりわけ顕著であり、特別支給の老齢厚生年金の 49 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 支給開始年齢が段階的に引き上げられていることや 2006 年4月から継続雇用制度が導 入されたことなどが要因として考えられる。 また、女性については、ほとんどの年齢階級で就業率が上昇しており、とりわけ 20 歳代後半から 30 歳代の就業率上昇が大きい(「2.労働市場からの引退時期」参照)。 生産年齢人口の減少にもかかわらず、これまで就業者数が横ばいを維持できた要因は、 女性および 60 歳代前半の男性の就業率が上昇した結果と言える。 図表2 男女別・年齢階級別就業者数の推移 男性(15~59歳) (万人) 3,500 3,000 3,308 3,277 3,339 3,329 3,321 3,330 女性(15~59歳) 3,346 3,329 3,284 3,312 3,240 男性(60歳以上) 3,163 3,142 女性(60歳以上) 3,133 2,983 3,276 3,186 3,156 3,144 2,920 2,943 2,500 2,298 2,258 2,303 2,314 2,297 2,305 2,337 2,307 2,299 2,322 2,297 2,297 2,257 2,259 2,000 2,278 2,263 2,876 2,864 3,081 2,288 2,297 2,229 2,265 2,889 2,195 2,212 2,876 2,226 2,188 2,250 2,242 1,500 1,000 500 759 696 716 726 735 746 628 664 680 580 579 569 502 510 520 529 547 547 547 543 544 550 554 436 466 489 504 444 459 466 476 488 378 401 419 278 295 305 305 309 315 318 330 335 333 332 332 334 339 353 356 357 0 (年) 出所:総務省「労働力調査」より作成 2.労働市場からの引退時期 男女別・年齢階級別就業率(2015 年)を見ると、20 歳代後半から 30 歳代後半の女性 の就業率が 1995 年と比較して大幅に上昇し、いわゆる「M 字カーブ」 (注1)は緩やか になりつつある(図表3)。共働き世帯の増加に加え、晩婚化・非婚化も影響している。 中高年の女性の就業率も上昇しているが、依然として男性よりも労働市場からの引退 時期が早い。男性の就業率が大幅に低下するのは 60 歳代前半以降であるが、女性は 50 歳代後半から就業率の低下が始まる。就業率の男女差(男性の就業率-女性の就業率) は 40 歳代後半に 18.0 ポイントにまで縮小した後、50 歳代前半には 18.2 ポイント、50 歳代後半には 22.7 ポイント、60 歳代前半には 26.1 ポイントへと拡大している。 男性よりも女性の引退時期が早い要因の一つとして、親・義親などの介護が影響して いる可能性がある。 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 50 (注1) 女性の就業率が結婚・出産期にいったん低下し、育児が落ち着いた頃に再び上昇すること をいう。かつては女性の年齢階級別就業率をグラフ化すると、30 歳代前半を谷とするM字型を 示していた。 図表3 男女別・年齢階級別就業率(2015 年) 男性(2015年) 100% 91.7% 93.0% 女性(2015年) 93.5% 93.2% 92.4% 75.2% 74.2% 87.8% 90% 76.5% 80% 69.8% 70% 68.4% 69.4% 64.7% 64.9% 60% 72.7% 【参考】女性(1995年) 90.2% 75.5% 67.5% 67.9% 69.8% 63.0% 58.7% 65.8% 56.0% 50% 49.4% 52.2% 51.1% 40% 38.7% 31.6% 30% 20.1% 20% 15.0% 10% 26.9% 16.1% 14.8% 10.3% 9.3% 0% 出所:総務省「労働力調査」より作成 Ⅱ 介護離職の実態 1.介護離職者数の推移 総務省「就業構造基本調査(2007 年・2012 年)」(注2)によれば、2012 年(2011 年 10 月から 2012 年9月。以下同じ。)に介護が主な理由で離職(以下、「介護離職」) した人は 10.1 万人(男性:2.0 万人・女性:8.1 万人)であった(図表4)。2008 年以 降、毎年 10 万人前後の介護離職者が発生している。 (注2) 就業構造基本調査は5年ごとの調査であり、直近は 2012 年に実施された(次回は 2017 年 の予定)。過去5年間の離職時期や離職理由について調査票で質問している。 51 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 図表4 介護離職者数の推移 (万人) 16 14.5 14 12 10 9.3 10.4 10.4 9.9 6 7.8 女性 8.3 8.3 8.4 8.2 11.9 8 10.1 9.9 8.9 8.5 8.1 7.8 7.2 6.6 6.6 4 男性 2 0 1.5 1.6 2.0 1.9 2.6 2003 2004 2005 2006 2007 1.7 1.6 2.1 1.8 2.0 2008 2009 2010 2011 2012 (年) (注)各年の実績値は前年 10 月から当年9月まで。 出所:総務省「就業構造基本調査(2007 年・2012 年)」より作成 2.介護離職者の属性 2012 年の介護離職者を年齢階級別に見ると、50 歳代から 60 歳代前半が多く、ピーク の 50 歳代後半で 2.2 万人(男性:0.4 万人・女性:1.8 万人)である(図表5)。男性は 60 歳代前半が 0.7 万人で最も多く、女性は 50 歳代後半が最も多い。 図表5 年齢階級別 介護離職者数(2012 年) (万人) 2.5 2.2 1.9 2.0 1.6 1.5 1.5 1.3 1.2 1.8 女性 0.9 1.0 1.3 1.2 0.7 1.1 男性 0.8 0.5 0.7 0.7 0.02 0.3 0.0 15~39歳 40~44歳 0.1 45~49歳 0.3 0.4 50~54歳 55~59歳 0.2 60~64歳 65歳以上 出所:総務省「就業構造基本調査(2012 年)」より作成 2012 年に介護離職した女性(8.1 万人)の7割強(5.8 万人)が非正規職員で、うち パート・アルバイトが 5.0 万人であり、介護離職者の約半数は「中高年の女性パートタ イマー」である(図表6)。女性の正規職員の離職者は 1.8 万人、男性の正規職員は 1.2 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 52 万人となっている。 図表6 就業状況別 介護離職者数(2012 年) 0 自営業者 (家族従業者含む) 1 3 4 5 6 (万人) 0.1 0.5 1.2 正規職員 (会社役員等含む) パート・アルバイト 2 男性 1.8 0.3 女性 5.0 その他の非正規職員 (派遣社員、契約社 員、嘱託等) 0.4 0.9 出所:総務省「就業構造基本調査(2012 年)」より作成 2012 年に介護離職した 10.1 万人のうち、転職者は 1.8 万人で2割弱に過ぎず、職に 就いていない介護専念者が 8.3 万人と8割強を占めている(注3)。40 歳未満は男女と も転職者の割合が4割強と比較的高いものの、年齢とともに介護専念者の割合が上昇し、 65 歳以上では男女とも9割以上が介護専念者となっている。 (注3) 2012 年(2011 年 10 月~2012 年9月)に介護離職した人のうち、調査時点(2012 年 10 月 1日)において、すでに職に就いている人を「転職者」、職に就いていない人を「介護専念者」 とした。 3.介護離職の理由 公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団と当研究所が 2014 年に共同で実施した「仕事 と介護の両立と介護離職に関する調査」 (注4)によると、介護離職の理由(複数回答) としては、男女とも「自分以外に介護をする人がいなかった」が約6割で最も多く、次 いで「仕事と介護の両立に精神的・体力的限界を感じた」が続いた(図表7)。 「自分で 親の介護をしたかった」 ・ 「会社を辞めても経済的に可能な見通しがたった」 ・ 「早期退職 優遇制度等を利用できるようになった」など自発的な理由を挙げる回答も見られた。 一方、「これ以上会社にいると迷惑がかかると思った」や「職場で両立の理解が得ら れなかった」など、職場で仕事と介護の両立を支援する環境が形成されていないことを 示す回答もあった。「職場で両立の理解が得られなかった」との回答は、介護専念者よ りも転職者に多く、仕事と介護の両立が難しい職場だったため、やむなく転職した人が いることを示している。 また、「親を入居させる施設の空きがなかった」との回答も約2割あり、特別養護老 53 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 人ホームなどの整備が不十分なことが介護離職に至った面もある。 「精神的・体力的な限界を感じた」との回答は男性よりも女性が多く、介護の負担が 女性に重くのしかかっていることを示している。「早期退職優遇制度等を利用できるよ うになった」との回答は女性よりも男性が多かった。 (注4) 親の介護を経験(介護中も含む)したことがある 40 歳以上の男女のうち、介護前の働き 方が「正規職員」だった人を対象(2,268 人)に調査。介護中の働き方については以下の4類 型に分類している。 ●継続就労…働き方に変化なし(同じ勤務先で同じ働き方) ●働き方変更…同じ勤務先で働き方を変更(総合職から一般職や地域限定職、フルタイムか らパートタイム等) ●転職…勤務先を辞めて転職 ●介護専念…勤務先を辞めて介護に専念 図表7 介護離職した理由(複数回答) 【女性】 【男性】 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 自分以外に介護をする人 がいなかった 52.7% 64.1% 37.6% 43.9% 転職者 (N=412) 23.1% 28.4% 親を入居させる施設の空き がなかった 68.4% 32.9% 49.0% 22.6% 23.9% 26.5% 親が施設に入ることを拒んだ 32.9% 40.6% 会社を辞めても経済的に可能 な見通しがたった 34.2% 43.9% 38.8% 45.6% 21.8% 17.5% 13.6% 15.3% 介護専念者 (N=155) 16.1% 36.8% 仕事と介護の両立に体力的 限界を感じた 52.9% 53.5% 仕事と介護の両立に精神的 限界を感じた 55.5% 51.6% 職場で両立の理解が得られ なかった 23.9% 18.1% これ以上会社にいると迷惑が かかると思った 32.8% 36.7% 転職者 (N=155) 14.8% 要介護度が重くなり、仕事と 両立できなくなった 33.5% 介護専念者 39.3% (N=412) 26.5% 38.8% 早期退職優遇制度等を利用 できるようになった 70% 50.3% 自分で親の介護をしたかった 20.6% 21.1% 60% 40.0% 35.5% 4.5% 9.0% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 4.介護離職者の経済状況 総務省「就業構造基本調査(2012 年)」では、介護離職している人はパート・アルバ イト等の非正規職員が多く、正規職員は少なかった(図表6)。正規職員の中では、男 女とも相対的に低所得者に介護離職(転職+介護専念)している人が多く、男性の高所 得者は継続就労している人が多い(図表8)。高所得者は離職による機会損失が大きい 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 54 ことに加え、親が介護サービスを十分に利用する(本人が必要に応じて親を経済的に支 援する)余裕もあるため、介護離職が抑制されていると考えられる。 図表8 介護開始前の年収 200万円未満 200~400万円未満 0% 継続就労 (N=515) 男 【男性】 10.5% 9.0% 介護専念 (N=412) 8.7% 働き方変更 転職 (N=155) 介護専念 (N=155) 30% 40% 22.9% 50% 800~1,000万円未満 60% 70% 26.4% 17.0% 転職 (N=412) 【女性】 (N=155) 20% 600~800万円未満 1,000万円以上 80% 90% 100% 1.7% 働き方変更 2.9% (N=206) 継続就労 (N=258) 女 10% 400~600万円未満 34.5% 23.8% 25.2% 25.7% 19.7% 20.6% 49.6% 11.6% 49.0% 12.9% 12.6% 13.3% 12.0% 23.9% 18.7% 16.1% 20.0% 40.6% 7.5% 12.4% 25.6% 41.3% 10.7% 11.2% 20.1% 25.0% 6.6% 18.8% 19.6% 26.5% 3.5% 2.7% 4.5% 2.6% 8.4% 8.4% 0.6% 3.2% 9.0% 2.6% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 介護専念者のうち生計の維持に苦労していると回答した人は、男性の場合は 40 歳代 では5割に達し、年齢とともに低下するが、総じて3割程度は生計の維持に苦労してい る実態がうかがわれる(図表9)。40 歳代では経済的な準備ができないまま離職する人 が多いのに対し、50 歳代では早期退職優遇制度の利用、60 歳代では退職金の活用など によって、生計を維持できる見通しが立ってから離職する人が多いと推測される。 図表9 介護専念者のうち生計の維持に苦労していると回答した人の割合 男性 0% 女性 【男性】 【女性】 10% 20% 40~49歳 (N=74) 50~59歳 (N=173) 60歳以上 (N=165) 40~49歳 (N=47) 50~59歳 (N=53) 60歳以上 (N=55) 30% 40% 50% 60% 50.0% 37.6% 27.9% 34.0% 30.2% 27.3% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 5.介護離職者の配偶状況 男性の場合、継続就労者が「主たる介護者」 (以下、 「主介護者」) (注5)である割合 は 15.0%に過ぎず、配偶者が主介護者になっている割合が 31.8%と高い(図表 10)。一 方、介護専念者は自分が主介護者である割合が 54.1%と高く、配偶者が主介護者となっ ている割合は 12.1%と低い。主介護者は一般に介護時間が長く、肉体的にも精神的にも 55 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 負担が重いため、離職を誘発する要因となっている。 女性の場合も、継続就労者が主介護者である割合は 38.4%であるのに対し、介護専念 者が主介護者になっている割合は 66.5%と高い。配偶者が主介護者となっている割合は いずれも低いが、継続就労者は親の配偶者が主介護者である割合が 31.0%と、介護専念 者の 11.6%よりも大幅に高くなっている。 男性の場合、継続就労者の 85.8%に配偶者がいるが、介護専念者は 50.0%にとどま っている(図表 11)。このことから、妻が自分の代わりに主介護者になってくれている おかげで、就労を継続できている人が多いと推測される。 女性の場合、配偶者の有無と就労継続の間に大きな差異は見られないが、これは夫が 主介護者となっている割合が元々低いことに起因している。むしろ、親の配偶者が主介 護者になってくれるかどうか(親の配偶者が健在であるかどうか)が、就労を継続でき るかどうかで重要な要素となっている。 (注5) 「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」では、「主たる介護者」を要介護者の身体 介助(車イスへの移乗、食事・入浴・排泄等の介助)を主体となって行なう人と定義している。 図表10 主たる介護者の構成比 自分 0% 男 継続就労 (N=515) 【男性】 10% 配偶者 20% 15.0% 女 兄弟姉妹 50% 60% 12.1% 5.0% 38.4% 17.0% 8.5% 31.0% 17.1% 5.8% 23.9% 57.4% 10.2% 16.0% 7.3% 9.5% 100% 7.8% 6.8% 21.6% 54.1% 90% 17.5% 13.6% 14.1% 働き方変更 (N=155) 80% 13.4% 23.8% 41.5% その他 70% 22.3% 44.7% 転職 (N=412) 継続就労 (N=258) 11.0% 1.9% 転職 (N=155) 52.3% 20.0% 3.2% 介護専念 (N=155) 図表11 40% 31.8% 働き方変更 (N=206) 介護専念 (N=412) 【女性】 親の配偶者 30% 21.3% 3.2% 11.6% 66.5% 5.8% 14.8% 1.3% 配偶者の有無 配偶者有り 0% 10% 配偶者無し(未婚) 20% 30% 40% 男 継続就労 (N=515) 【男性】 70% 転職 (N=412) 36.7% 50.0% 41.0% 56.6% 働き方変更 (N=155) 27.5% 50.3% 転職 (N=155) 36.8% 46.5% 40.0% 54.8% 32.9% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 通巻 92 号 July 2016 90% 100% 1.7% 25.2% 53.6% 介護専念 (N=155) 生活福祉研究 80% 12.4% 68.9% 継続就労 (N=258) 女 配偶者無し(死別・離別) 60% 85.8% 働き方変更 (N=206) 介護専念 (N=412) 【女性】 50% 56 5.8% 9.7% 9.0% 15.9% 12.9% 13.5% 12.3% 6.介護離職者の職場環境 介護開始時の職場環境を見ると、男女とも介護離職者(転職者+介護専念者)は「仕 事の進め方やスケジュールを自分で決められる」・「普段から残業や休日出勤が少な い」・「年次有給休暇、育児休暇、介護休暇など、休暇をとりやすい」に「あてはまる」 (「まああてはまる」を含む)との回答が継続就労者や働き方変更者よりも顕著に低い (図表 12)。 介護期間中は、デイサービスの送迎の見送り・出迎え、外出の手助け、ケアマネジャ ー等との打合せ・相談、各種手続きなどが必要になり、休暇取得や遅刻・早退・中抜け をせざるをえなくなることが多い。このようなことから、自分の裁量で仕事を進めるこ とができ、残業や休日出勤が普段から少なく、休暇を取得しやすい職場ほど、介護離職 が少なく、仕事と介護を両立しやすいと言える。 図表12 介護開始時の職場環境 (1)「仕事の進め方やスケジュールを自分で決められる」 あてはまる 0% 男 継続就労 (N=515) 【男性】 女 【女性】 まああてはまる 10% 20% どちらともいえない 30% 40% 25.0% 働き方変更 (N=206) 18.9% 継続就労 (N=258) 18.2% 働き方変更 (N=155) 転職 (N=155) 14.3% 16.8% 34.8% 25.0% 16.3% 15.9% 16.8% 15.5% 24.5% 27.1% 18.1% 18.1% 21.3% 15.5% 16.3% 24.5% 13.5% 20.0% 12.1% 10.7% 14.6% 15.5% 100% 12.4% 18.0% 15.8% 35.3% 90% 11.7% 17.0% 26.0% 17.4% 介護専念 (N=155) 80% 13.6% 24.5% 16.1% あてはまらない 70% 36.9% 25.5% 介護専念 (N=412) 60% 37.3% 23.3% 転職 (N=412) あまりあてはまらない 50% (2)「普段から残業や休日出勤が少ない」 あてはまる 0% 男 継続就労 (N=515) 【男性】 19.4% 転職 (N=412) 20.4% 女 【女性】 15.8% 40% 60% 18.8% 30.1% 17.0% 70% 20.0% 12.9% 13.5% 57 17.0% 25.0% 35.2% 11.2% 20.6% 14.2% 100% 14.8% 13.6% 27.5% 28.4% 90% 16.5% 18.7% 28.4% あてはまらない 80% 18.3% 15.8% 17.5% 23.9% 16.8% あまりあてはまらない 50% 26.4% 34.9% 転職 (N=155) 介護専念 (N=155) どちらともいえない 30% 25.2% 12.9% 継続就労 (N=258) 働き方変更 (N=155) 20% 21.7% 働き方変更 (N=206) 介護専念 (N=412) まああてはまる 10% 13.6% 12.8% 13.5% 18.1% 19.4% 13.5% 26.5% 30.3% 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 (3)「年次有給休暇、育児休暇、介護休暇など、休暇をとりやすい」 あてはまる 0% 男 継続就労 (N=515) 【男性】 働き方変更 (N=206) 転職 (N=412) 介護専念 (N=412) 女 【女性】 20% どちらともいえない 30% 40% 19.4% あまりあてはまらない 50% 60% 70% 34.0% 20.9% 18.0% 14.8% 8.7% 24.0% 20.4% 14.8% 転職 (N=155) 12.3% 16.8% 介護専念 (N=155) 11.6% 18.7% 29.4% 14.0% 14.3% 16.8% 25.8% 20.0% 21.3% 14.1% 25.7% 22.1% 26.5% 20.6% 100% 8.9% 18.0% 18.0% 27.9% 90% 11.8% 17.5% 23.5% 21.7% あてはまらない 80% 22.7% 37.1% 13.1% 継続就労 (N=258) 働き方変更 (N=155) まああてはまる 10% 16.1% 29.7% 20.6% 28.4% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 Ⅲ 介護をしている有業者の状況 1.介護有業者の状況 総務省「就業構造基本調査(2012 年)」によれば、介護をしている有業者(以下、 「介 護有業者」)は 291 万人(男性:131 万人・女性:160 万人)であり、年齢は 50 歳代か ら 60 歳代前半が多い(図表 13)。40 歳未満では有業者に占める割合は男女とも1%台 に過ぎないが、年齢とともに急上昇し、50 歳代後半では男性有業者の 7.9%・女性有業 者の 13.4%が介護を行なっている。 図表13 年齢階級別 介護有業者数(2012 年) (万人) 70 16% 62.0 60 13.4% 14% 54.7 女性【左軸】 51.6 50 12% 11.5% 11.1% 34.4 32.5 32.0 30 31.8 7.9% 6.4% 17.7 20 10 10% 26.9 40 20.9 19.3 7.7% 37.4 17.6 6% 5.1% 3.8% 14.3 1.6% 1.1% 27.6 27.8 19.9 19.7 1.9% 8.5 13.2 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 出所:総務省「就業構造基本調査(2012 年)」より作成 生活福祉研究 2% 0% 0 15~39歳 通巻 92 号 July 2016 有業者に占め る割合(女性) 【右軸】 4% 3.5% 12.4 8% 7.0% 5.6% 男性【左軸】 58 65歳以上 有業者に占め る割合(男性) 【右軸】 2.介護有業者の平日の介護時間 男性の介護有業者の 48.2%、女性の介護有業者の 33.7%は、平日(仕事のある日) の介護時間が1時間未満にとどまっているが、男性の 23.5%、女性の 42.2%は、平日 の介護時間が2時間以上である(図表 14)。これらの人は肉体的にも精神的にも疲労が 蓄積している可能性が高いが、経済的な事情等で離職することが困難な人も少なからず 含まれていると推測される。 「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」によると、平日の介護時間が2時間以 上になると介護離職が増える傾向がある。大雑把な推計しかできないが、男性の介護有 業者(131 万人)の 24%、女性の介護有業者(160 万人)の 42%は「仕事と介護の両立」 が次第に困難になりつつあると仮定すると、介護離職予備軍は 98 万人(男性:31 万人・ 女性:67 万人)と試算される。毎年の介護離職者数は約 10 万人であるが、その 10 倍 の約 100 万人の介護離職予備軍が存在すると考えることもできる。 図表14 継続就労者の平日(仕事のある日)の介護時間 1時間未満 0% 10% 1~2時間 20% 男性 (N=515) 女性 (N=258) 30% 2~3時間 40% 50% 48.2% 33.7% 3~4時間 4~5時間 60% 70% 5時間以上 80% 28.3% 90% 12.6% 24.0% 20.5% 8.5% 4.7% 4.3% 100% 2.7% 3.5% 8.9% 出所:「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」より作成 Ⅳ 介護をしている無業者の状況 1.介護無業者の状況 総務省「就業構造基本調査(2012 年)」によれば、介護をしている無業者は 266 万人 (男性:70 万人・女性:197 万人)で、そのうち介護が主たる理由で無業の者(以下、 「介護無業者」)は 107 万人(男性:20 万人・女性:87 万人)である(図表 15)。介護 無業者の約6割が 60 歳以上であり、60 歳未満の介護無業者(男性:5万人、女性:40 万人)では女性が多い。 15 歳以上人口に占める介護無業者の割合は 1.0%(男性:0.4%・女性:1.5%)であ るが、各年齢階級別人口に占める割合は、女性は 40 歳以降徐々に上昇しピークの 60 歳代前半では 4.3%に達するのに対し、男性は 50 歳代後半から上昇するがピークの 60 歳代前半でも 1.1%と女性よりも大幅に低くなっている。 59 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 図表15 年齢階級別 介護無業者数(2012 年) (万人) 40 4.3% 3.9% 34.6 35 30 4.5% 女性【左軸】 3.5% 28.0 2.9% 25.0 25 4.0% 3.0% 男性【左軸】 2.5% 20 17.5 2.0% 22.5 15 1.5% 10 5 0.8% 3.9 0 15.7 6.8 6.2 0.1% 3.9 0.1% 0.2% 0.9 0.6 0.05% 0.4 15~39歳 40~44歳 45~49歳 0.5% 0.2% 1.5% 1.1% 0.7% 11.1 4.3 3.1 1.4% 12.0 9.6 1.0% 0.5% 5.5 0.9 1.9 50~54歳 55~59歳 各年齢階級別 人口に占める 割合(女性) 【右軸】 各年齢階級別 人口に占める 割合(男性) 【右軸】 0.0% 60~64歳 65歳以上 出所:総務省「就業構造基本調査(2012 年)」より作成 2.中高年女性の無業率 女性は男性よりも引退時期が早く、50 歳代後半から無業率が急速に上昇(50 歳代前 半:26.8% → 50 歳代後半:35.0% → 60 歳代前半:52.7%)する(図表 16)。介護を 理由とした無業率(50 歳代前半:2.9% → 50 歳代後半:3.9% → 60 歳代前半:4.3%) よりも、 「(自分の)病気・けがのため」を理由とした無業率の方が高い(50 歳代前半: 4.0% → 50 歳代後半:5.4% → 60 歳代前半:7.3%)。その他の理由には、「家事のた め」 ・ 「高齢のため」 ・ 「仕事をする自信がない」 ・ 「希望する仕事がない」 ・ 「急いで仕事に 就く必要がない」 ・ 「特に理由はない」などの回答が多く、これらの人の大半は仕事を行 なうことができる状況にありながら、自発的に無業を選択している可能性が高い。 総務省「家計調査(2015 年)」によれば、住宅ローン返済のピーク(月平均 5.3 万円) は世帯主が 40 歳代後半、教育関係費の負担のピーク(同 5.5 万円)は 50 歳代前半であ る(図表 17)。50 歳代後半以降は、これらの負担、特に教育関係費の負担が急速に減少 する。子どもの教育費の負担終了や住宅ローンの完済等によって、これまでパートタイ マー等で働いていた女性が専業主婦に戻っている可能性がある。厚生労働省「パートタ イム労働者総合実態調査(2011 年)」によれば、40 歳代後半の女性がパートタイマーと 「 子供の教育費や仕送りの足しにするため」 ( 48.9%) して働いている理由(複数回答)は、 や「住宅ローンの返済の足しにするため」(23.8%)との回答が多く、このことを裏付 ける結果となっている。 以上のことから、中高年の女性が男性よりも労働市場から引退する時期が早い理由と して、親・義親等の介護や(自分の)病気・けがも要因となっているが、50 歳代後半 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 60 以降、教育費や住宅ローン返済の負担が軽くなる世帯が多いことが大きな要因である。 図表16 中高年男女の無業率とその理由(2012 年) 60% 52.7% 50% 40% 35.0% 37.5% 30% 27.3% 26.8% 25.4% その他 21.3% 求職中 20% 15.3% 14.9% 13.8% 10.3% 10% 0% 6.8% 7.2% 6.6% 1.8% 2.9% 2.3% 1.6% 2.8% 3.4% 2.2% 1.5% 0.1% 男性 女性 男性 45~49歳 0.2% 5.0% 2.9% 4.0% 3.6% 2.9% 3.3% 0.5% 男性 女性 50~54歳 病気・けがのため 3.7% 4.3% 4.9% 7.3% 5.4% 6.0% 4.3% 3.9% 1.1% 男性 女性 55~59歳 介護をするため 女性 60~64歳 (注)各率の分母は、男女別・年齢階級別人口 出所:総務省「就業構造基本調査(2012 年)」より作成 図表17 世帯主の年齢階級別 教育関係費と住宅ローン返済額(勤労者世帯、2015 年月平均) 教育関係費 (万円) 住宅ローン返済額 6 5.3 5 4.7 4.6 5.5 4.9 4.2 4 3.4 3.0 3 2 2.9 2.1 2.0 1 0.7 0 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 出所:総務省「家計調査(2015 年)」より作成 61 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 Ⅴ 介護離職ゼロをめざして 介護をしながら就業を継続している人(介護有業者)が約 300 万人もおり、その中に は介護に伴う肉体的・精神的な疲労が蓄積している人も多く、臨界点を超えると介護離 職に至る。今後も高齢者(とりわけ後期高齢者)の増加によって、要介護者のいっそう の増加が見込まれることから、介護有業者が増加することはほぼ確実である。 毎年約 10 万人の介護離職が発生しているが、この中には「自分で親の介護をしたい」 という自発的な離職者が含まれているため、現実には「仕事と介護の両立」をめざして いる人の「介護離職ゼロ」を実現することが政策目標となろう。 「介護離職ゼロ」をめざすためには以下の施策を積極的に推進することが必要と考え る。 (1)職場環境の改善 介護有業者が仕事と介護を円滑に両立することができるようにするためには、働き方 改革を徹底的に推進し、労働時間の縮減や業務の柔軟性確保に努め、休暇の取得やフレ ックスタイム制度(遅刻・早退・中抜け)、短時間勤務制度、在宅勤務制度等を利用し やすい職場環境を構築することが何よりも必要である。わが国の場合、このような制度 が存在しても、現実には「休暇を取得しづらい」や「なかなか早く帰りにくい」といっ た声が多い。今後は、経営者、管理職および従業員が互いに理解し協力しあえる雰囲気 を職場に醸成することが重要である。これらは「仕事と介護の両立」だけではなく、 「仕 事と育児の両立」や「仕事と病気治療の両立」等にもあてはまる。 2016 年3月改正育児・介護休業法が成立し、2017 年1月から介護休業(上限 93 日) を3回まで分割して取得できるようになった。これまでは介護休業は分割取得できなか ったが、介護休暇(年に5日まで取得可能)とあわせ、今回の法改正によって使い勝手 がよくなると期待される。介護期間は平均約5年で 10 年以上続くことも少なくないこ とを踏まえると、介護休業は、実際に介護をすることのみならず、各種手続きやケアマ ネジャーとの打合せなどを行ない、介護の態勢を整えることに利用されることが想定さ れている。今後は、介護休業の分割回数をさらに引き上げるなど、さらに使いやすくす ることを検討すべきだろう。 (2)介護施設の整備・人手不足対策 親の介護を全面的に行ないながら就業を継続することは困難であるため、仕事と介護 を両立させるためには、通所介護(デイサービス)、訪問介護(ホームヘルプ)および 短期入所生活介護(ショートステイ)等の介護サービスを有効に利用することが不可欠 である。しかし、要介護度が上昇し夜間も排泄のケアなどが必要な状態となった場合、 あるいは介護期間が長期化した場合等、在宅介護の負荷が大幅に増大するときには施設 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016 62 への入居が重要な選択肢となってくる。建設用地や建設資金の確保等の課題は残るもの の、今後は、特別養護老人ホームなど介護施設の整備によりいっそう注力すべきであり、 実際、厚生労働省も 2020 年代初頭までに約 50 万人分(サービス付き高齢者向け住宅等 を含む)を整備し、特養待機者の解消をめざしている。 また、介護職員の人手不足も深刻であるため、職員の待遇改善を進めることも喫緊の 課題である(当研究所調査報「生活福祉研究」2014 年 10 月号「介護職員の人手不足問 題」参照)。 (3)利用者負担の助成措置 親(要介護者)が経済的に困窮(1割の自己負担分の支出も困難)し、本人(介護者) も親を経済的に支援する余裕がない場合、親が十分な介護サービスを利用できず、本人 が仕事と介護の両立に苦労していることもある。このような人は、「親が十分な介護サ ービスを利用できない→本人の介護負担が増大→精神的・肉体的に疲労が蓄積して離職 →本人もさらに経済的に困窮」という悪循環に陥る懸念が強い。地方自治体の中には、 低所得で生計維持が困難な要介護者に対して利用者負担(1割の自己負担や食費負担な ど)の一部を助成し、介護サービスの利用を促進しているところもある。親の経済的困 窮が本人の介護離職を招かないようにするため、財政面の制約は残るものの、低所得で 生計維持が困難な要介護者に対する利用者負担の助成措置を全国的に拡充することも 検討すべきだろう。 2016 年8月から介護休業給付金が 40%から 67%に引き上げられる。介護休業期間中 の本人(介護者)の経済的負担が軽減されることは「仕事と介護の両立」に寄与すると 期待される。 (4)早期の知識普及 仕事と介護を円滑に両立させるためには、親族との相談など介護に直面する前からの 準備も重要である。介護保険制度、介護サービスの概略や介護に直面した場合の対応策 等について、行政も企業も就業者に対して早期の知識普及に努めるべきだろう。 介護無業者が約 110 万人存在しており、介護離職予備軍が約 100 万人いると推計され る。今後も生産年齢人口の減少が進むなか、貴重な労働力を確保するために「仕事と介 護の両立」を支援することは国民経済的観点からもきわめて重要である。 63 生活福祉研究 通巻 92 号 July 2016
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