通貨統合の理論 国際金融論 1 単一共通通貨ユーロの導入 1999年1月1日より経済通貨同盟(EMU: Economic and Monetary Union)の第3段階に入る。EU(発足当時11か国、現在、15か国) が金融取引においてユーロを導入。 2002年1月1日よりユーロ紙幣・硬貨が流通。 ユーロ導入国: ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、オーストリ ア、フィランド、ポルトガル、アイルランド、ルクセンブルグ、ギリシ ア、スロベニア、 キプロス、マルタ、スロバキア (参考)ECB, Convergence Report, May 2008 http://www.ecb.int/pub/pdf/conrep/cr200805en.pdf 【未参加:イギリス、スウェーデン、デンマーク、新EU8か国[ポーランド、 チェコ、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、 ブルガリア]は未参加。 その内、ERMⅡ国は、デンマーク、エストニア、リトアニア、ラトビア】 国際金融論 2 ユーロとその導入国 2009年1月1日 スロバキア、ユーロ導入 2007年1月1日 スロベニア、ユーロ導入 2008年1月1日 マルタ、ユーロ導入 国際金融論 2008年1月1日 キプロス、ユーロ導入 3 最適通貨圏 最適通貨圏とは、通貨同盟に参加して、 共通通貨を利用することが適している地 域。 各国間で非対称的ショックが発生したとき に、通貨統合後は、為替相場以外の手段 で非対称的ショックによって生じる各国経 済間の不均衡を調整する必要がある。 国際金融論 4 最適通貨圏の基準 ショックの対称性 労働の移動性 貿易面における経済の開放度 財政移転 国際金融論 5 ショックの対称性 非対称的な供給ショック 為替相場以外の調整が必要となる。 非対称的な需要ショック 自然失業率仮説から言えば、長期的な非 対称的な需要ショックは消失する。 国際金融論 6 労働の移動性 非対称的な供給ショックに対して、労働の 移動性によって対応可能。 国際金融論 7 生産ショックに対する反応(1) 経済全体の生産関数(コブ-ダグラス型) α y = AL K 1−α 利潤最大化の条件 α −1 α AL K 1−α α =w (1 − α ) AL K −α 国際金融論 =r 8 生産ショックに対する反応(2) 労働は国際的に移動しない。 資本は国際的に移動する。 r=r * 国際金融論 9 生産ショックに対する反応(2) 生産性ショック(技術係数Aの低下)に対 する反応 資本は、 K 0 − K 2 だけ外国に流出する。 労働は、外国に流出・吸収されない。 もし賃金が伸縮的であれば、完全雇用では あるが、雇用量が L0 − L2 だけ減少する。 もし賃金が硬直的であれば、失業が発生。 国際金融論 10 図6 -4 a w D LS L0 LD1 A⇓ D L2 K⇓ L2 L1 L L0 図6 -4 b r K0D K1D D K2 A⇓ L⇓ r=r K K2 K1 K0 国際金融論 * 11 貿易面における経済の開放度 需要増大ショック←輸入増で対応 需要減少ショック←輸出増で対応 貿易面において経済が開放されていない と、需要ショックを国内で吸収。GDPや物 価水準が変動。 国際金融論 12 図6 -5 p AD0 AS AD1 A B p0 p= p * C p1 y y1 y2 y0 国際金融論 13 財政移転 好況の国で得られた租税を不況の国に補 助金として支払う。 国際的な財政移転が可能となるためには、 財政政策における国際政策協調や各国 の財政主権の統合が必要。 国際金融論 14 通貨統合の便益・費用 通貨統合(通貨同盟やドル化)と固定為替 相場制度の区別 ①通貨統合は恒久的固定相場。制度の信認 が高い。(固定為替相場制度は固定相場 の調整の可能性がある) ②通貨統合は各国の中央銀行(の裁量)は 事実上存在しない。 国際金融論 15 通貨統合の費用 最適通貨圏の条件を満たさない場合にお えける非対称的供給ショックの影響 通貨主権の放棄、金融政策の独立性の 放棄、「最後の貸し手」の不在。 財政収入源の1つである通貨発行利益 (seignorage)の放棄。 国際金融論 16 通貨統合の便益 通貨交換に関わる取引費用の節約。 交換手段としての機能(ネットワーク外部 性) 価値尺度としての機能 外国為替リスクの除去。 国内金利のリスク・プレミアムの軽減 ペソ問題の解消 国際金融論 17
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