EU法体系

最新 WEEE/RoHS・ELV(含むUSA、国内)の動向と今後の対応
日本電子(株)
松浦
徹也
EU の廃電気電子機器(WEEE)指令及び特定物質使用禁止(RoHS)指令が、2003 年
1 月 27 に制定され、2003 年 2 月 13 日に Official Journal of the European Union(官報)
で公布され発効した。
WEEE 指令によるリサイクル
WEEE&RoHSのスケジュール
義務発生は、2005 年 8 月 13 日以
降、RoHS 指令による有害物質規
制は 2006 年 7 月 1 日以降上市す
る製品に適用されることになった。
EU 加盟諸国は、これを受けて、
国内法を 18 ヶ月以内の 2004 年 8
月 13 日までに整備する作業に入
っている。
RoHS 指令対応として、国内大
¯調停委員会協議合意
2002年10月10日
¯理事会採択
2002年12月16日
¯議会採択
2002年12月18日
¯Official Journal of the European Union(公布)
2003年2月13日
¯EU各国国内法整備
2004年8月13日
18ヶ月以内
¯RoHS 有害物質規制発効
2006年7月1日
¯リサイクル目標会議
2006年12月31日
手電気電子機器メーカーを中心に、資材調達基準が公表された。公表された基準には、例
えばカドミウム 5ppm 以下など、従来にない厳しい規準があり、電子部品業界やプラスチ
ック材料業界などの多くの関連業界に衝撃を与えた。
指令は公布されたが、国内法整備の段階での詳細事項や RoHS の指定有害物質の閾値な
どは、TAC(Technical Adaptation Committee)で審議が続いている。
WEEE&RoHS 指令の概要、TAC の審議状況並びにアメリカの動向を併せて解説する。
1.EU の法体系
EU は連邦国家や合衆国ではなく、日本と異なった法体系になっている。WEEE と RoHS
は Directive(指令)であり、新
しい国内法の制定、現行の国内
法の改正、廃止の手続き後に拘
束力が発揮される。指令では、
「Member
States
shall・・・」
EU法体系
• Regulation:規則
– 全ての加盟国に直接適用され国内法と同じ拘束力を有する
• Directive:指令
と記述され、規制内容は加盟国
– 新しい国内法の制定、現行の国内法の改正、廃止の手続き
後に拘束力が発揮される。(Member States shall・・・)
の達成するべき結果を示して、
– Official Journal(官報)掲載後3年以内に対応
加盟国を拘束するが形式方法は
国内法に委ねるものである。
EU 指令は制定後の拘束力が
2通りある。
①条約第 95 条(理事会の調和
措置)
• 達成されるべき結果を加盟国を拘束、形式方法は国内法
• Decision:決定
– 対象範囲を特定(加盟国、企業、個人等)して、具体的な行為
の実施あるいは廃止等を直接的に拘束する
• Recommendation:勧告
– 加盟国、企業、個人等に一定の行為の実施を期待することを
欧州委員会が表明するもので拘束力はない
• Opinion:意見
– 特定のテーマについて欧州委員会の意思を表明したもので拘
束力はない
主な目的が単一市場の達成
(条約第 14 条(域内市場完成の措置))目的とする場合に選択される。
1
共同決定手続きにより理事会の特定多
EC条約 95条と175条
数決が必要となる。条約第 95 条が選択
• 95条と175条で制定後の扱いが異なる
• 95条 RoHS
された場合は、EU 指令より厳しい国内
法は制定できない。
– 主な目的が単一市場の達成にある場合
– 共同決定手続きにより理事会の特定多数決
– 指令より厳しい国内法は制定できない(拘束力)
RoHS は条約第 95 条が選択されてい
る。
• 175条 WEEE
– 環境保全そのものに目的がある場合
– 共同決定手続きにより議会諮問後理事会の特定多数決
– 指令より厳しい国内法が制定できる
(最少限要求事項)
②条約第 175 条(活動内容)
条約第 174 条(環境)の環境保全その
ものに目的がある場合に選択され、共同
決定手続きにより議会へ諮問後に理事会
の特定多数決される。条約第 175 条が選択された場合は、指令より厳しい国内法が制定で
きる。WEEE 指令は条約第 175 条が選択されている。
2.WEEE 指令及び RoHS 指令の制定背景
WEEE指令、RoHS指令制定の背景
子供へ
の異常
20Kg/年・1人
急増
環境ホルモン
シーアコルボーン
健康被害
WEEE
適正処分
食物連鎖・濃縮
生態系異常
日本:化審法改正 2003.5
経時変化
土壌・水・大気汚染
不
法
投
棄
不適切処分
90%は前処理なし
有害物蓄積
水銀 36トン/年 カドミウム 16トン/年
埋立地の鉛の40%、焼却施設の鉛の50%はWEEEに起因
日本:土壌汚染対策法 2002.5
WEEE 指令と RoHS 指令は、EU 域内で廃電気電子機器(WEEE)が一人平均年 20kg
発生し、それも増加してきている。また、鉛、カドミウム、水銀汚染などが、WEEE が原
因となっている。これら汚染が食物連鎖などで濃縮され「ヒト」それも次世代の「ヒト」
に影響することが懸念されている。レイチェル・カーソンの「沈黙の春」やシーヤコルボ
ーン等の「奪われし未来」の悪の連鎖を断ち切る取組みである。
この潮流は日本でも起きている。2003 年 5 月 28 日に化学物質の審査及び製造等の規制
に関する法律(化審法)が公布された。改正の主旨は、環境中の動植物への影響に着目し
た点である。また、2002 年 5 月 29 日に土壌汚染対策法が公布されている。
規制緩和の潮流がある一方で、環境関連は規制強化が強まりつつある。
2
3.WEEE 指令の概要
EU では、WEEE の増加状況から、WEEE の適正処理(WEEE 指令)及び電気電子機
器への有害物質の使用制限(RoHS 指令)をすることが必要となってきている。
WEEEとRoHSの条項の関連
4条 製品設計
設計・生産
使用
10条 情報提供
廃棄
2条 WEEE
上市制限
RoHS
5条 分別回収
分別
一般ゴミ
RoHS 4条
選別
処理
6条
処理
ANNEXⅡ
特別処理
11条 処理施設への情報提供
再生
7条
WEEE 指令は前文と全 19 条からなっている。
主要要求事項を概説する。
第1条
目的
WEEE 目次
前文
第10条
ユーザーへの情報提供
ANEEXⅣ(マーク)
WEEE の予防と廃棄物の処分
第1条
目的
第11条
処理施設への情報提供
を減らすためのリサイクルと他の
第2条
範囲 ANNEXⅠ
第12条
情報と報告
方法による再生である。
第3条
定義
第13条
科学・技術的進歩への適応
第4条
製品設計
第14条
委員会
第5条
分別回収
第15条
罰則
第6条
処理 ANEEXⅡ(セレクト)
ANEEXⅢ(技術基準)
第16条
執行 草案で追加
第7条
再生
第17条
国内法への転換
第8条
一般家庭からのWEEE
に対するファイナンス
一般家庭以外からのWEEEに対
するファイナンス
第18条
発効
第19条
宛先(対象)
ライフサイクル全般に係わる生
産者・ディストリビュータ、消費
者及び WEEE の処理担当者の環
境パフォーマンスの改善である。
第2条
範囲
第9条
適用電気電子機器は ANNEX
ⅠA/ⅠB で示される 10 製品群である。
明確に軍事目的を意図した安全保障、武器、軍事物資および戦争機材に不可欠な利益の
保護に関連する機器は、除外される。
TAC では製品群の区分けが大きな議題になっている。WEEE の ANNEX の分類が RoHS
3
でも適用されるので、RoHS が条約 95 条で採択され
グレー製品
ていることから全加盟国一律であることが必要とす
る意見と、WEEE は条約 175 条で採択されているの
で各国が自由に決めてよいとの意見が出されている。
どちらにしても、共通的な基準は必要との認識は一
致しているようである。
•
•
•
•
建物に据えつけたエアコン
後装着のカーステレオ・ナビゲータ
ソーラパネルは?
メディカルデバイス
– 血液中鉛測定機と土壌鉛測定機は同じ製品
TAC で、住宅やビルに組み込まれていりエアコン、
購入後にユーザーが組み込んだカーステレオあるい
• 加盟国共通ガイドライン検討
– 国内法制定での共通性
は医用分析でも一般分析でも利用できる鉛分析装置
などのグレー製品が話題となっている。
第3条
用語の定義
「電気電子機器(Electrical
属し、交流 1,000V
and
Electoronic
Equipment)」とは、ANNEXⅠA に
直流 1,500V を超えない定格電圧で使用する設計された電気電子機器
である。
「生産者(producer)」とは、上記の電気電子機器製品を市場に出荷した EU 域内の製造
業者、販売業者、再販業者、輸入業者及び輸出業者である(EU 官報 L144
1997.6.4、p.19)。
その他、
「廃電気電子機器(WEEE)」、
「予防(prevention)」、
「再使用(re-use)」、
「リサイ
クル(recycling)」、
「再生(recovery)」、
「処分(disposal)」、
「処理(treatment)」などの用語が
定義されているが、これらの定義は他の EU 指令と同じ定義となっている。
第4条
製品設計
WEEE、その構成部品ならびに材料の除去および再生、特に再利用とリサイクルを考慮
し、かつ容易にする電気電子機器の設計ならびに生産の奨励が規定されている。
また、環境及び/または安全に関する要求事項の保護に関して、特定の設計上の特徴ま
たは製造過程が最優先利益を供与しない場合には、加盟国は、生産者がかかる特定の設計
上の特徴または製造過程を通じて WEEE の再使用を妨げないような適切な処置を講じる
ことも規定されている。
第 4 条は議会と理事会の調停会議(2002 年 10 月)で追加された条項である。製品の源
流である設計段階で対応を求めるもので、追加されて意味は深いものがある。産業総局で
検討している「EEE:DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE
COUNCIL
on the impact on the environment of electrical and electronic equipment」
指令案(2001.2
草案)では、「電気電子機器がそのライフサイクル中に環境に与える全
体的な影響を最少にするために、その機器の設計及び製造に対する条項を規定」している。
この指令案は WEEE&RoHS の進展の中で、埋没していたが息を吹き返すことが懸念さ
れている。
第5条
分別回収
2005 年 8 月 13 日までに、一般家庭から WEEE を分別回収すること、最終所有者、デ
ィストリビュータが無償で WEEE を返却できるシステムを構築することや、ディストリ
ビュータが新製品販売時に旧製品を無償で引き取ることなどが要求されている。
4
生産者が個別及び/または共同による
自社 WEEE を引取システムの構築運営
分別回収
を認めている。返却される WEEE に「基
本的構成部品がない」、
「WEEE 以外の廃
• 2006年12月31日までに、一般家庭からのWEEEは
少なくとも一人平均4Kg分別回収する
棄物を含んでいる」あるいは「使用中に
例:ドイツ
– Input:年間新規EEEは200万t
– 回収:4Kg × 82百万人 =32万t
放射性及び細菌性汚染されている」場合
は、特別な取決めをすることができる。
16%回収
• 回収量は順次上げていく政策
分別回収目標は、2006 年 12 月 31 日
– 欧州議会は6Kg提案していた
– 英国はすでに達成済みと公表
– 2008年12月31日までに新目標設定
まで一般家庭からの WEEE は少なくと
も一人平均 4Kg 回収することである。目
標値は、2008 年 12 月 31 日までに見直
されることになっている。
UK では既に 6Kg 回収の実績あると言われていますし、年間 WEEE 発生量 20Kg に比
較して大きな値ではなく、今後目標値はアップされると思われる。また、WEEE は 175
条で制定されているので、国より目標値はアップされることもあると思われる。
第6条
処理
加盟国は、生産者の委託に基づき個別及
処理
び/または共同により WEEE 処理システム
• 加盟国は、生産者の委託に基づき個別及び/又は共同
によりWEEE処理システム構築しなければならない
を構築しなければならない。
– 生産者が個別または共同で設立できる
処理施設または請け負い業者の技術要求
• 処理施設または請け負い業者の技術要求事項は
ANNEXⅢによる
• WEEEの輸送は理事会規則EEC/259/93に従う条件で
あれば加盟各国、共同体域外で処理してよい
• 処理施設または請け負い業者はEMSの取得を奨励
• 分離処理(Selective Treatment)
事項は ANNEXⅢで処理前の WEEE の保
管基準、WEEE の処理場基準が明確にされ
ている。
WEEE の輸送はバーゼル条約の規制を
– 処理は全ての液体とANNEX ⅡはWEEEから取り出して
WEEEとは別の処理をする
受けるが、理事会規則 EEC/259/93 に従う
条件であれば加盟各国、共
同体域外で処理してよいこ
とになっている。
処理は、全ての液体と
ANNEXⅡに示すものは、
WEEE から取り出して分
離処理(Selective
Treatment)をしなくては
ならない。
電池やトナーカートリ
ッジなどは容易に分離処理
できるが、水銀を含有する
スイッチ、臭素系難燃剤を
ANNEXⅡ 分離処理(Selective Treatment)
●ポリ塩化ビフェニル(PCB) を含むコンデンサー。PCB類ならびにPCTの処理に関する
指令96/59/ECに準拠すること
●水銀を含むコンポーネント。スイッチやバックライト用ランプなど
●電池
●携帯電話のプリント基板及び表面積が10平方cmを超えるプリント基板
●トナー・カートリッジ。液状か粘着粉末かを問わず、カラー・トナーも含む
●臭素系難燃剤を含むプラスチック
●石綿(アスベスト)廃棄物及び石綿含有物
●陰極線管:蛍光コーティング除去
●クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ヒドロフルオ
ロカーボン(HFC)、ヒドロカーボン(HC):EU規則による適切な処理
●ガス放電型ランプ:水銀の除去
●液晶ディスプレイ(必要であればそのケーシングも含む)のうち、表面積が100cmを超
えるもの、ならびにガス放電ランプをバックライトとして使用しているものすべて
●外部電線
●指令97/69の定める耐火性セラミック・ファイバーを含むコンポーネント
●放射性物質を含むコンポーネント。ただし、BSS指令(96/29/EC、第3条ならびに付記I)
に定める例外規準未満のものを除く
●電解コンデンサー(25mm × 25mm以上)
含有するプラスチックなど、
5
設計段階から情報の整理が必要な事項が多いことに注目する必要がある。
第7条
再生
生産者は回収した WEEE を再生するためのシステムを個別又は共同で構築しなければ
ならなく、製品群(カテゴリー)別に再生率とリサイクル率の目標が定められた。
カテゴリー1&10
再生率
80 重量%
リサイクル
75 重量%
カテゴリー2,5,6,7&9
再生率
70 重量%
リサイクル
50 重量%
などが定められている。
再生率やリサイクル率などは
前文で用語の定義されている。
概要は図に示すように日本の
用語とは多少異なる。
第8条
定義
予防Prevention
処理
再使用(Re(Treatment)
Use)
汚染除去、解体、
破砕、再生または 再生
リサイクル
処分の準備のた (Recovery) (Recycling)
めに施設に引渡し
後のすべての活
動及びWEEEの再
エネルギー回
生及び処分のオ
収(Energy
ペレーション
Recovery)
処分
(Disposal)
説明
材料と物質の量と
有害性の低減
当初と同じ目的で
再度使用
当初又は他の目
料を生産工程で再
加工すること
熱の再生を伴う直
接的焼却によるエ
ネルギー回収
単純な焼却、埋め
立て
一般家庭からの WEEE に対するファイナンシング
加盟国は 2005 年 8 月 13 日までに、回収・処理・再生・処分に関わるファイナンス(費
用負担)を、個別及び/又は共同システムで準備しなければならない。
発効前に上市した製品(Historical
Waste)はコスト発生時に存在する全ての生産者が
シェアに従って共同負担する。
生産者責任として無償引取りが要求され、その費用を別額として表示してならない規定
もある。再生費用の内部コスト化が要求されている。また新たに 2005 年 8 月 13 日以降販
売した場合は、マークの表示などが 11 条に基づき規定されている。
第9条
一般家庭以外からの WEEE に対するファイナンシング
第 8 条一般家庭からの WEEE に対するファイナンシングと同様規定である。B2B 製品
など生産者とユーザー間で費用契約を結ぶことができる。
例えば、ANNEXⅠで示される第 6 カテゴリー(電動工具製品群)では、大型産業用工
具が除外されている。これの解釈で、B2B 製品については全面的に除外する意見もある。
第 10 条
ユーザーへの情報
一般家庭の電気電子機器ユーザーへ、電気電子機器に
含まれる環境と人の健康に影響を与える危険有害物質の
情報、ANNEX Ⅳのマークの意味などの情報提供が義務
付けられた。
後記の RoHS 指令では、有害物質は 6 物質が特定され
ているが、WEEE 第 10 条の危険有害物質はこの6物質
だけでなく、幅広く規定される見込みである。
対象となる物質は現在 EU で審議されている新たな化
6
学品規制案(REACH:Registration, Evaluation, and Authorizaiton of Chemicals)など
と整合が図られると思われる。
REACH は検討中の指令であるが、その他の留意する指令は次である。
①危険物質の分類、包装、表示に関する法律、規則、行政規定の近似化に係る理事会指令
(67/548/EEC)
②危険物質および調剤の上市と使用の制限に関する指令(76/769/EEC)
第 11 条
処理施設への情報
生産者は処理施設の必要とされ
る電気電子機器に含まれる危険物
処理施設への情報
質・危険調剤の場所・構成部品と材
料など情報提供を上市後1年以内し
なければならない。
電気電子機器は構成部品が多く
• WEEEのリユース、保守、Upgrade、リサイクルを
含めて、適正処理するための情報を提供しなけ
ればならない。
– 上市後1年以内に提供
– リユースセンター・処理施設・リサイクル施設で必要と
する
また複雑な構造を持っている。危険
物質の種類はともかく、その場所の
• 電気電子機器に含まれる危険物質
• 電気電子機器に含まれる危険調剤の場所
• 電気電子機器の構成部品と材料
表示は大きな問題になってくると思
われる。電子部品個々にまでになる
と大変な負担になる。TAC あるいは
国内法の状況の把握が重要になって
いる。
第 13 条
科学的・技術的進歩への適応
科学的・技術的進歩により生産者・リサイクラー・処理業者・環境団体・消費者団体と
協議して ANNEX の内容を修正する。
第 14 条以降解説略
7
4.RoHS 指令の概要
RoHS Directiveの要求概要
Restriction of the use of certain hazardous substances
in electrical and electronic equipment
電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限
に関する指令
2002/95/EC
RoHS 指令は前文と全 11 条からな
っている。主要要求事項を概説する。
RoHS 目次
前文は 14 項で構成されているが、
その内容が RoHS 制定の背景を明確に
表している。RoHS 指令を理解するた
めには、本文とともに前文を理解する
必要がある。前文第4項では、カドミ
ウムによる環境汚染に対する使用制限
と代替研究戦略について、第 5 項では、
分別回収、リサイクルしても、WEEE
前文
第6条
レビュー
第1条 目的
第7条
委員会
第2条 範囲
第8条
罰則
第3条 定義
第9条
国内法への転換
第4条 予防
第10条 発効
第5条 科学・技術的進歩への 第11条 対象
適応
に含まれる水銀、カドミウム、鉛、六
価クロム、PBB 及び PBDE の健康、
環境へのリスクについて言及している。
第1条
目的
電気電子機器に含まれる有害物質の使用制限が目的である。
同時に、人の健康保護及び WEEE の環境に健全な再生と処理に寄与することを狙って
いる。
第2条
範囲
WEEE
ANNEX ⅠA の中の 1,2,3,4,5,6,7 及び 10 製品群に適用される。
8 医療用機器及び 9 監視及び制御機器は徐外されているが、WEEE で適用除外とされて
いる電球及び家庭用照明器具は適用される。
しかし、軍事目的の製品も除外されていない。
他の安全、健康に関する指令(Directive)や共同体廃棄物管理法を侵さないとしており、
8
カーオーディオやナビゲータなどの車
載 WEEE は廃自動車令(ELV 指令)、
除外対象の論点
電池は廃電池指令(改正予定)により
規制を受ける。
• 軍事用は除外すべき要求がある
なお、2006 年 7 月1日以前に上市
– 軍事用と民生用の両用製品の扱いが問題に!
• 明らかな軍事用に生産されたものが軍事用に指定
されることになっているが、グレー製品が存在する
した電気電子機器のリユース及び補修
用スペアパーツなどは適用徐外になる。
• リストが明確でない
TAC 等でこの適用範囲、除外内容に
– 車載電気電子機器と一般電気電子機器
– 加盟国による差異が出る可能性
– WEEE ANNEXⅠは95条?175条?
ついて意見が多く出ているようである。
WEEE は条約 175 条で制定されてい
るので国内法で詳細化ができる。しか
し、条約 95 条で統一基準とする RoHS
の範囲が WEEE と同じでは矛盾を生じるとの意見も出ている。
第4条
予防
遅くとも 2006 年 7 月 1 日以降上市
する電子電気機器に対して次項の物資
を非含有としなければならない。
ANNEX
• 要求事項が徐外される
鉛・水銀・カドミウム・六価クロムの用途
①鉛
– 小型蛍光灯でランプ1本あたり5mgを越えない水銀
– 鉛
②水銀
•
•
•
•
•
③カドミウム
④六価クロム
⑤PBB
⑥PBDE
(部分記述)
– カドミウム
(ポリ臭素化ビフェニル)
• 76/769/EECの制限外の表面処理
(ポリ臭化ジフェニルエ
ーテル)
但し、小型蛍光ランプ中の水銀など
鋼材の0.35wt%までの鉛
アルミ材の0.4wt%までの鉛
銅材の4wt%までの鉛
高融点ハンダの鉛(鉛85%以上)
電子セラミック部品中の鉛
– 六価クロム
• 吸収型冷蔵庫のカーボンスティール冷却システムの防錆処理
•
Deca BDE等
– 第7条2項の手続きのなかでリスク評価する
ANNEX に掲げる用途は除外される。
上市の解釈も論議を呼んでいる。お
上市(put on the market)
馴染みの CE マーキングは通関した時
点が上市日になる。自動車(ELV)で
• 店頭に並べたとき
(CEマーキングは通関日基準)
– Phase out dateの意味
– 2006年7月1日以降は、店頭で売られている製品には
有害物質を含んではいけない
は登録日が上市日になる。
電気電子機器は域内の場合は工場出
荷日、店頭に並んだ日、輸入品の場合
は通関日などが論議されている。消費
者の立場からは 2006 年 7 月1日以降
に新たに購入した場合は、6 物質が非
含有であることが当然に期待される。
物流在庫の問題と通関日とした場合
• ELVでは、登録時点で判断する。
– 規制発効前の自動車でも発効後(2003.7)に販売登録
する場合は適用になっている
• 自動車と電気電子機器はかなり違うが、消費者は6月30
日に店頭に置いたものを7月1日に購入したのか、7月1
日に店頭においたものを7月1日に購入したのかは判断
できない。
– 裁判ではメーカーが負ける?
• この解釈では流通在庫が大きな問題になる
に域内で複数の国をまたがって流通さ
せる時、最初の通関日なのか最後の通関日なのかも問題となる。2006 年 7 月 1 日適用と
いっても、解釈もめぐる問題は多い。
9
第5条
科学的・技術的進歩の採用
次項の目的のため、ANNEX は第 7 条 2 項により科学的・技術的進歩の採用し修正する。
①電気電子機器の材料及び構成部品の許容濃度の設定
②電気電子機の使用が材料及び構成部品の科学的・技術的に不可避な場合の4条適用徐外
③電気電子機器での代替物質使用による負の影響より環境及び/又は健康の便益が上回る
場合の4条適用徐外(4年毎の見直し)
ANNEX に要求事項が徐外される鉛・水銀・カドミウム・六価クロムの用途例が示されて
いる。
ANNEX で Deca
BDE や特殊用途の直管蛍光灯に含まれる水銀などは今後のリスク評
価対象となった。
第6条以降
5
略
RoHS 特定有害物質の閾値
RoHS の閾値は第 5 条で設定すること
が決まっている。しかし、非含有とする
閾値は未だ確定していない。他の指令で
RoHSの閾値は?
はどのようになっているかをから類推し
他指令の基準から推測
てみる。
WEEE&RoHS に類似した指令に ELV
((End-of
Life
2000/53/EC
Vehicles)
2000/10/21 発効)がある。
ELV は車両・ELV・構成部品・材料・補
修部品・交換部品を対象にリサイクルを
目的に制定された。WEEE と同様の生産者による無償引取が規定されている。RoHS 同様
に次の物質が有害物質として使
用制限されている。
①鉛
ELV使用制限物質
②水銀
③カドミウム
④6価クロム
タイヤのバランスウェイトな
ど例外も認められているが、
2003 年 7 月以降は使用禁止と
なった。
閾値は WEEE&RoHS 同様に
TAC で審議され決定した。結果
•
•
•
•
鉛
水銀
カドミウム
6価クロム
2003年7月以降の販売車は原則使用禁止
例外
例:鉛/電池・振動ダンパー・タイヤのバランス
ウエイト
は 2002 年 6 月に Decision とし
て官報で告示された。
閾値は
鉛・水銀・6 価クロム
1,000ppm(0.1%)
10
カドミウム
100ppm(0.01%)
となっている。
自動車が対象のために、アルミ
材や銅材中の鉛濃度は 4,000ppm
ELVの閾値
(0.4%)に規制されている。
TAC では ELV と同様な規制を
主張する意見が強いが、一方で、
ELV の閾値は「homogeneous
material 」「not intentionally
introduced 」という条件がついて
いることに難色を示す向きもある。
脚注で「意図的混入」とは、
「 最
終製品に特定の特長、外見もしく
2002/525/EC 2002/06/27
• Notes:
• ・a maximum concentration value up to 0,1 % by weight
and per homogeneous material, for lead, hexavalent
chromium and mercury and up to 0,01 % by weight per
homogeneous material for cadmium shall be
tolerated,provided these substances are not
intentionally introduced (1),
• ・a maximum concentration value up to 0,4 % by weight
of lead in aluminium shall also be tolerated provided it is
not
• ・a maximum concentration value up to 0,4 % by weight
of lead in copper intended for friction materials in brake
は質を提供するために、継続して
使われるのが望ましい材料や部品
の処方の中に、故意に利用された
ことを意味する。新製品製造の
論争!
供給材料としてリサイクルされた
材料を使用することは、規制され
る金属をいくらか含むかも知れな
いが、意図的に導入されたとは考
えられない。」と説明をしている。
意図的非意図的の解釈が曖昧で
あること、規制当局により主観的
に判断されることを懸念している。
また、均一物質の範囲の解釈も難
しい。電気電子機器の構成は細か
• RoHSとELVの閾値を一致させる時の問題点
– TACでRoHSとELVは一致させるべきとの提案が出されている
• homogeneous material
– 装置全体では無理、部品レベルまで持っていくか?
• ICの中のPb量を測定するのか?
– 理想は総量規制と例外(セラミック部品のPb)は別勘定
• 自動車のPbは 60g/台
• intentionally introduced
– 意図的とは?
• ELVの欧州決定には、「意図的というのは、(有害物質)を恣意的に混入させる
ことで、特別な特性、見栄え、品質などを最終製品に与えることを目的として材
料や部品の生成過程で使用することを指す」
• 意図的かどうかは当局が判断する
くすれば部品以下になる。
自動車と電気電子機器の構成内
容と販売数の差異による運用上の
Annex I of Directive 76/769/EEC
2003年2月15日発効
問題を含めて、論議がされている。
なお、ELV では、1台あたり 6
価クロムの防食コーティングは 2
g、鉛は 60gという総量も決めて
いる。
危険物質および調剤の上市と使
用の制限に関する指令
(76/769/EEC)の修正の形で、
2003 年 2 月 15 日に PBDE の閾値
PBDEの閾値
• pentabromodiphenyl ether,C12H5Br5O
• octabromodiphenyl ether,C12H2Br8O
1. May not be placed on the market or used as a substance
or as a constituent of substances or of preparations in
concentrations higher than 0,1 % by mass.
2. Articles may not be placed on the market if they, or
flame-retarded parts thereof, contain this substance in
concentrations higher than 0,1 % by mass.’
が決定された。
pentabromodiphenyl ether 及
11
び octabromodiphenyl ether ともに、1,000ppm を超えるものは上市できないことになっ
た。
RoHS の閾値は TAC 及び TAC
の下部に設置されたワーキンググ
測定法をめぐる論点
ループで具体的に論議されている
と思われるが、ELV 指令や上市制
限指令の閾値が目安になると思わ
• 破壊検査でなく非破壊検査できること
– 費用の問題
– 測定期間の問題
– 全数検査はできない
れる。
第 3 回 TAC は 2003 年 9 月末か
ら 10 月初旬頃に開催が予定され
ている。第 3 回 TAC で決定をみ
• 閾値は非破壊検査に合致した値にすること
– 天然存在濃度か超えているかの閾値
– 非破壊検査装置の感度に合わせる
るかどうかは微妙としても状況は
具体化すると見込んでいる。
閾値と並んで論議されているの
が、測定方法である。プラスチッ
ク中のカドミウム濃度の測定法は EN1122 が公定法としてある。EN1122 は湿式分解しフ
レーム原子吸光光度計で測定する方式で、破壊検査となる。
通関時や店頭商品の立入り検査
などは破壊検査では都合が悪く、
非破壊検査が望まれるところであ
EPA Screening Strategy
る。閾値が概ね方向性が見えてく
ると、測定法が浮上してくる。
Level Ⅴ Non-standard method in off-site lab
USA の EPA では公定法とオン
サイト分析に関する位置付けを図
5
のように明確にしている。スクリ
4
ーング検査に対する一つの考え方
3
Level Ⅳ Contract Laboratory Program (CLP)
Level Ⅲ Off-site analytical lab
-EPA procedures without CLP
documentation and validation
Level Ⅱ Field analysis with more sophisticated
であり注目に値するものである。
破壊検査は最後の手段として、
事前に例えば蛍光 x 線分析装置な
portable analytical instruments.
Tentative ID-GC/AA/XRF
2
Level 1
Level Ⅰ Field screening / portable instruments
Total organic/inorganic vapor detection
どで、非破壊で測定する。測定結
果が明らかに閾値以内あるいは以
上はその測定結果とし、閾値近傍のグレーゾーンのみ測定に手間暇のかかる公定法(破壊
検査)で確定するのが現実的な運用に思われる。
12
6.EU の環境政策の概要
EU の環境政策は先進的であり、日
米の政策に大きな影響を与えている。
第6次環境行動計画
特に企業活動のグローバル化により、
(2001年〜2010年)
対 EU 製品、対米製品などに区分けし
• 人の健康と環境を守るための問題防止と予防原則
– 持続可能な開発
て生産できないので、一番厳しい規制
– 天然資源の慎重な利用と地球生態系の保護
– 環境及び人間の健康の高レベルでの保全
– 環境と生活の質の全般的な改善
にあわせざるをえないのが現状である。
EU の環境政策の基本は、2001 年〜
– 大気中のGHGを550ppmで固定
2010 年を期間とした第 6 次環境行動
2008年〜12年
•
•
•
•
•
計画にある。この中で、次の化学物質
管理の新しい考え方が示された。
①化学物質の使用に起因する潜在的な
90年比 8%削減
再生可能エネルギーの利用率を12%に増加
経済成長と資源利用の分離
廃棄物の減量、リサイクル、再利用を優先
製品にはLCAを適用した評価をする
EMASの推奨
負の影響に関する知識を深める必要
があり、知識提供の責任は生産者、
輸入業者及び川下ユーザーが負うべ
化学物質管理の新しい考え方
きである。
②危険な化学物質は、人と環境に対す
る危険を軽減することを目的とし、
より安全な化学物質あるいは化学物
質の使用を必要としないより安全な
代替技術に換えるべきである。
• 化学物質の使用に起因する潜在的な負の影響に関する
知識を深める必要があり、知識提供の責任は生産者、
輸入業者及び川下ユーザーが負うべきである。
• 危険な化学物質は、人と環境に対する危険を軽減する
ことを目的とし、より安全な化学物質あるいは化学物質
の使用を必要としないより安全な代替技術に換えるべき
である。
③2020 年までに、化学物質が健康と環
境に著しい負の影響を及ぼさない形
でのみ生産・利用できるようにする。
– 2020年までに、化学物質が健康と環境に著しい負の影響を及
ぼさない形でのみ生産・利用できるようにする。
– 新しい化学物質及び既存の化学物質に関する実験、リスクア
セスメント、リスクマネジメントについて、少量使用を除き段階
的アプローチに基づく一貫システムを開発する。
④新しい化学物質及び既存の化学物質
に関する実験、リスクアセスメント、リスクマネジメントについて、少量使用を除き段
階的アプローチに基づく一貫システムを開発する。
EU では IPPC 指令や PHS 指定などの規制が行われてきている。
IPPC指令
優先有害物質(PHS)
Priority Hazardous Substances
Directive 96/61/EC concerning Integrated Pollution
Prevention and Control
•
•
•
•
• 統合的汚染防止・管理に関する指令
• 産業設備からの排出される空気・水・土壌汚染の防止または最
少化を目的
• 特に汚染度の高い産業活動(化学産業・廃棄物管理など)を対
象と設備の許可制
• 対象施設は利用可能な最善の手法(BAT Best Available
Techniques)を適用し汚染防止を図る
• BATは欧州委員会作成の業種別参照文書(BREF:BAT
Reference Document)を基に作成する。
• 外部からは詳細は分かりにくい
•
•
•
•
•
•
•
•
•
13
Water Framework Directive 2000/60/ECによる
水系への排出中止提案 20年以内
特定済みPHSは次の11種類
臭素化ジフェニルエーテル(ペンタブロモジフェニールエーテルのみ)
(Brominated Diphenylethers)
カドミウム(Cadmium)
クロロアルカン類(Choroalkanes C10-C13)
ヘキサクロロベンゼン(Hexzchlorobenzene)
ヘキサクロルシクロヘキサン(Hexachlorocyclohexane)
水銀(Mercury)
ノニルフェノール類(Nonylphenols)
多環式芳香族炭化水素類(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons)
ペンタクロロベンゼン(Pentachlorobenzene)
トリブチルティン化合物(Tributyltin Coumpounds)
新たな化学物質管理として、
REACH 規制が検討されている。
REACH では疑わしいものは禁止
REACHシステム
などの予防を原則とした有害化学
Registration , Evaluation and Authorisation of CHemicals
物質の登録、評価、認可制度であ
• 予防原則
– 疑わしいものは禁止
– 企業はリスクを評価し、明らかになったリスクを管理する
– 登録内容は生産量・ヒト・環境への暴露可能による
– 発がん性・突然変異誘発性・生殖毒性・難分解性・生体蓄積性
などは認可制
– 環境ホルモンは認可制
– 暴露リスクが低い場合は登録が免除
– 約40種の各種規制令の統合
• 1000トンを超える物質:2009年頃?
• 100トンを超える物質:2012年頃?
• 1トンを超える物質:2017年頃?
る。生産量の多い物質から順次
2017 年頃までかけて評価する取
組みで今後日本にも影響が出てく
ると思われる。
REACH は最近になり経済産業
省のホームページに情報が出るな
ど注目されるようになったが、相
参考http://europa.eu.int/chemicals/whitepaper.htm
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/EUI_REACH_translation.htm
当前から論議はされていた。
1,000 トンを超える物質の規制は当初 2005 年とも言われていた。しかし、2004 年 5 月
に EU が 10 カ国追加され、一気に同一の政策を要求するのは過酷であるとの配慮や 2004
年秋に選挙があることなどから、遅れるとの観測が出てきている。
その他、鉛フリー、クロムフリー、フタル酸フリーやハロゲンフリーも急速に展開して
いる。PBDE や PBB だけでなく臭素系難燃材は全て禁止する動きもある。
難燃剤禁止の北欧では、アメリカに比較して 100 倍近くの TV セットの火災が起きてい
るとの報告もある。アメリカは火災を恐れ、EU は子孫への影響を恐れる、という価値観
の相違がある。禁止物質の考え方は一筋縄ではいかないようである。
7.USA の環境規制
USA はブッシュ政権になってから
環境より経済優先などと言われている
が、スーパーファンド法などに代表さ
れるように、EU とは違った環境規制
USAの環境規制
の厳しさがある。
7.1 法体系
USA の法体系は、連邦法と州法があ
り、連邦法でも全州に強制適用するも
の、州法に運用を委ねるものに分かれ
る。EPA(Environmental
Protection
Agency:環境省)が強制力を有する法
律もあり、EU の法体系に近い感じがする。
連邦環境関連法規集は、Code of Federal Regulations(CFR)Title40 にあり、
http://www.epa.gov/epahome/cfr40.htm で情報が入手できる。留意点は、法規制内容がオ
ーバーラップしていることがあり、その場合はそれら規制の中で最も厳しい内容が選択さ
れる点である。
14
7.2 容器包装規制
容器包装の重金属規制
東部のコネチカット州やメイン州の州
コネチカット州・メイン州等
法で「容器包装の重金属規制」がある。
対象重金属は、EU 指令と同じの
•
•
•
•
鉛
カドミウム
水銀
6 価クロム
鉛
カドミウム
水銀
6価クロム
容器包装に含有する重金属は、トータルで
100ppm(重量比)以下とする
である。オランダ国内法と同様に、上記
規制対象物質の濃度の合計が 100ppm を
閾値にしている。
州法であるので、対象はその州だけに効力があるが、USA は物流が発達しているので、
特定州対象とはいっても事実上連邦法と同様な効力を持っている。
7.3.水銀規制
水銀は思いのほか多用されている。例
えば、スイッチ(1g)、蛍光灯(10mg)、
水銀規制
体温計(0.5g)など一つひとつは少ない
が、数多く使用されて総量は多量になっ
ている。
メイン州
• Prevent Mercury Emissions when Recycling and Disposing of
Motor Vehicles 2002年7月25日発効
• 水銀の用途
– 配線機器・スイッチ
自動車のスイッチに 1 台水銀 0.5g 使用
1~2g/1個
• 自動車のトランク・ボンネットの電灯スイッチ 冷蔵庫の照明灯のスイッチ
– 蛍光灯 120cmの蛍光灯で11mg
– 体温計 0.5〜1g 気圧計 500g ボタン電池 5〜25mg
としても、USA は自動車王国で、州単位
でみても 1,000 万台を超え使用数となり、
• メイン州には1,300万台の自動車が走行している
総量は 5t となる。これらが廃車スクラッ
• メイン州保険局:妊婦及び8歳以下の子供は淡水魚を食べること
を規制する勧告を出している
プでの大気への放散が懸念される。この
– 計算すると700kgあり、 廃車スクラップでの大気への放散が懸念
– 土壌汚染⇒水汚染⇒魚汚染
食物連鎖の防止
ような状況から、例えば、メイン州保険
局は妊婦及び8歳以下の子供は淡水魚を食べることを規制する勧告を出していると聞いて
いる。これは、土壌汚染⇒水汚染⇒魚汚染の食物物連鎖の防止を考えたものである。
水銀規制法は、2002 年 7 月 25 日に Prevent Mercury Emissions when Recycling and
Disposing of Motor Vehicles が発効して
いる。
鉛規制
7.4 鉛規制
鉛規制はペイント規制が有名だが、電
気機器も規制されている。平均的なパソ
• 埋立地の廃棄された鉛の40%がCRT
• 2004年までに3億台のPCが廃棄
コンのプリント基板には 5~10g の鉛が
含まれている。ディスプレーは液晶に変
– バーゼル条約非批准国で海外に移動できる
モニター900g
ってきているが、従来の CRT では 1kg
プリント基板 5~10g
近くの鉛が入っている。TV も大型の
CRT が使われ数 kg の鉛が含まれている。
周辺機器 3g
USA の埋立地に廃棄された鉛の 40%は
15
CRT であるとの調査結果もある。
連邦法で EU の WEEE 指令に相当するものはないが、このような背景で、廃電気電子
機器のメーカーによる引取の義務化について、環境団体と業界、政府で論争している。
はんだの鉛フリー化は日本が先行しているようである。鉛もリサイクルが基本的になっ
ている。カルフォニア州では、州法 SB1523、SB1619 で規制をしている。
全体的に、リサイクル関連は、連邦法での規制は厳しくなくても、州法で厳しく規制す
る傾向がある。
なお、USA はバーゼル条約を批准してなく、不要となったパソコンの解体作業を低賃金
と過酷な労働条件で開発途上国で行わせているとして市民運動で糾弾する動きもある。
7.5.電池規制
コードレス機器の普及により電池
電池規制
の使用が増加している。電池は大き
く分けて、
「使い捨て電池」と「充電
• Primary(使い捨て)電池
式電池」に分けられる。使い捨て電
– 無鉛化されているので普通ごみと同じ扱い
– 微量のHgを含んでいるが回収運搬の公害の方が大
池は、無鉛化されていて、微量の水
• Rechargeable(充電式)電池
銀を含んでいるが、リサイクル技術
–
–
–
–
がないことと、回収運搬による公害
影響の方が大きいとして普通ごみと
同じ扱いで焼却、埋立処理されてい
Ni-Cd電池
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池
小型鉛蓄電池
リサイクル対象
• 連邦法
– Mercury-Containing and Rechargeable Battery Management
Act
る。
充電式電池は、有害重金属のカド
ミウムを含まないニッケル水素電池などの開発が進んでいるが、性能的な面で Ni-Cd 電池
が多用されている。
法規制は、
「 Mercury-Containing
及び「Rechargeable
Battery
and
Recycling
Rechargeable
Battery
Management
Act」
Act」で、Ni-Cd 電池、ニッケル水素電池、
リチウムイオン電池、小型鉛蓄電池などの充電式電池のリサイクルと水銀削減が促進され
るようになり、ボタン電池は、水銀含有量 25mg 以上が販売禁止になっている。
7.6.有害化学物質規制
州法で、カルフォニア州の
Proposition 65(1986)
Proposition 65(1986)が有害化学物
質管理法として有名になっている。現
在約 800 種類の危険物質指定されてい
カルフォニア州
• 約800種類の危険物質指定
– 詳細なリスク評価を行っている
る。毎年詳細な発ガン性・生殖障害な
• 発ガン性・生殖障害
どのリスク評価を行いリストの見直を
– 毎年見直しを実施
• 最新版 2003年3月14日
している。
– 従業員の知る権利法(Worker Right-to-Know)
同時に従業員の知る権利法(Worker
– 水源汚染有害物質規制
Right-to-Know)により、従業員への
有害性の告知が義務付けられ、違反を
すると罰則が設けられている。
16
8.日本の新法
規制緩和の中で、環境関連法規だけ
は例外で規制強化、行政指導強化がさ
土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)
れている。
土壌汚染対策法は平成 14 年 5 月 29
• 平成14年5月29日公布 第1条(目的) この法律は、土壌の特
定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚
染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること
等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護
することを目的とする。
• 第2条 (定義)この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒素、
トリクロロエチレンその他の物質(放射性物ひ質を除く。)であって、
それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生
ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
• 対象は重金属とVOCなど25物質
• 基本:予防法ではなく対策法である。今に、RoHSの日本版
が???
日に公布され、平成 15 年 2 月 15 日施
行された。
同法は予防法ではなく過去の汚染対
策を目的にしたもので、WEEE あるい
は RoHS 指令とは多少違っている。
WEEE は家電リサイクル法に例え
ることがあるが、対象製品の大幅な違
いや回収費用負担などに明らかな違い
がある。企業活動のグローバル化の中
で将来は WEEE、RoHS の思想が入っ
てくることも考えられる。
平成 15 年 5 月 28 日に化学物質の審
査及び製造等の規制に関する法律(化
審法)が公布され1年以内に施行され
ることになった。
化審法は OECD の勧告もあり改正
されたものであるが、従来の「ヒト」
対象から動植物を含めた生態系全般を
土壌汚染対策法 特定有害物質
カドミウム及びその化合物
六価クロム化合物
シマジン
シアン化合物
チオベンカルブ
四塩化炭素
1・2ジクロロエタン
1・1ジクロロエチレン
シス1・2ジクロロエチレン
1・3ジクロロプロペン
ジクロロメタン
水銀及びその化合物
セレン及びその化合物
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
テトラクロロエチレン
チウラム
1/1/1トリクロロエタン
1・1・2トリクロロエタン
トリクロロエチレン
鉛及びその化合物
砒素及びその化合物
ふっ素及びその化合物
ベンゼン
ほう素及びその化合物
PCB
有機りん化合物
– パラチオン・メチルパラチオン等4種
対象にしたものである。いわゆる環境
ホルモンも対象になってくる。
また、学校などで話題となっている
シックハウスについても、建築基準法
の改正や測定法(JIS A 1901 小型チャ
ンバー法)が決まるなど規制は強化さ
れてきている。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
平成15年5月28日 公布 1年以内に施行
• 環境中の動植物への影響に着目した審査・規制制度の導入
– OECDの勧告によりヒトだけでなく生態系保全の観点の措置
• 難分解性・高蓄積性の既存化学物質に関する規制の導入
– 未然防止の観点で毒性の有無が不明の時点で、事業者に製造量・輸
入実績量の届け出と開放系使用の削減勧告
• 環境中への放出可能性に着目した審査制度の導入
9.おわりに
日米欧の環境政策は、ともに化学物
質規制を強化してきているといえよう。
この潮流の根源は「成長の限界」
「アジ
– OECDの勧告により全量が他の物質に変化する中間物、閉鎖系工程
でのみ仕様される物質は事前審査から状況の事前確認と事後監視
– 高蓄積性なく製造量が少ない物質は事前確認事後監視することで毒
性試験は免除
• 事業者が入手した有害性情報の報告の義務付け
– 事業者は国に有害性情報を入手した時点で報告する
ェンダ21」であり、一過性のもので
はない。REACH 規制案のように、川
下ユーザーの化学物質無知は、許されなりつつある。
自社製品に使用する材料・部品等に含まれる化学物質の安全関する信頼性が問われてき
ている。情報入手窓口は広くして、早めの対応が迫られているといえる。
17
参考文献
WEEE 指令及び RoHS 指令原文
http://164.36.164.20/sustainability/weee/index.htm
http://europa.eu.int/eur-lex/en/search/search_oj.html
WEEE 指令及び RoHS 指令の訳文
WEEE
Handbook Ⅴ
environment
Update 増刊号
2003.3
日本機械輸出組合
USA 規制
世界主要国における製品関連化学物質規制の解説
2002.3
日本機械輸出組合
REACH 規制
http://europa.eu.int/chemicals/whitepaper.htm
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/EUI_REACH_translation.htm
18
ファイル名 :
欧米環境規制動向.doc
フォルダ :
E:¥作業用¥08_14
テンプレート :
C:¥WINNT¥Profiles¥Administrator¥Application
Data¥Microsoft¥Templates¥Normal.dot
表題 :
1
副題 :
作成者 :
松浦 徹也
キーワード :
説明 :
作成日時 :
03/08/14 午後 2:20
変更回数 :
6
最終保存日時 :
03/08/14 午後 2:22
最終保存者 :
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2 分
最終印刷日時 :
03/08/14 午後 2:23
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