目 次 【論文】 閾値確率基準マルコフ決定過程とポジティブ DP ………………………………………………………………船 木 洋 一 1 田 憲 隆 11 永 俊 21 内 健 志 31 ………………………………………………………………村 田 輝 夫 47 ………………………………………………………………浜 田 照 久 61 城 国 臣 69 軍備部方式の破綻と海軍軍拡計画の再編─ 1883 ― 86 年─(下) ………………………………………………………………池 若年労働市場における解雇費用の影響 ………………………………………………………………李 「近代憲法」と「憲法」概念の多義性、そして「実質的意味の憲法」 -「憲法」概念と憲法学(その一) ………………………………………………………………堀 租税過誤納金返還問題における民事責任論 -不当利得ないし国家賠償の成否を中心に- 【研究ノート】 経営福祉の一視点 Harrod Model の不安定性について ………………………………………………………………赤 目次.indd 1 04/03/05, 9:16 閾値確率基準マルコフ決定過程とポジティブ DP 船 Ⅰ 木 洋 一 はじめに 閾値確率基準マルコフ決定過程をポジティブ DP として定式化し、その定常な最適政策の存在を 述べる。 無限期間の逐次決定問題を考える。システムの可能な状態空間を S とする。システムの状態が i である時の可能な行動空間を A i とする。時点 t でシステムの状態が i ∈ S のとき行動 a ∈ A i を 選択すると、その期に直接報酬 ri が得られ、次の期に推移確率 pij で状態 j になる。時点 t で行動 a a を選択する規則を関数 d t で表す。決定時点が t = 0, 1, …と番号付けられているものとする。各時 点でのこの行動の選択規則の列 π≡ { d0, d1, …, dn,… } を政策と呼ぶ。t 時点における状態を st、行動を at とするとき ( s0, a0, s1, a1, …, at-1, st ) を時点 t における履歴と呼ぶ。時点 t で行動を選択する規則が、履歴を考慮して行うか、考慮しな いで行うか、 ランダムな選択を許すか、 許さないかによって、 政策を以下のように呼ぶことにしよう。 政策:履歴に依存しランダムな選択を許す、もっとも一般的な政策。 マルコフ政策:現在の状態にのみ依存しランダムな選択を許す政策。 定常政策:マルコフ政策でランダムな選択を許さず、各時点の決定規則が同じ政策。 害害害害害害害害害害害 割引率( discount factor ) をβ ( 0<β<1 ) として、時点 t における直接報酬を Rt であらわすと、 ΣβR であらわされる。これは確率変数であり、値は初期状態 i 無限期間の割引総報酬 V は V= t t t と選択した政策πに依存して決まる。それを強調したいときには V i と書く。その期待値を E[ i V] π π であらわす。すべての i に対して、この期待値を最大にする政策を割引最適政策と呼ぼう。本稿を 通して次の仮定を置く。 仮定1 (1) 状態集合 S={1, 2, …}は可算、 (2) Aiは各 i ∈ S に対して完備可分距離空間のコンパクトな部分集合、 a < ria < G )は各状態 i ∈ S に対して a に関して連続、 (3) 直接報酬 r( i 0- - a (4) 推移確率 pij は各状態 i ∈ S と j ∈ S に対して a に関して連続。 1 船木1.indd 1 04/03/05, 9:32 この仮定1が成立する時、定常政策の中に割引最適政策が存在することが知られている。 Ⅱ 閾値確率基準 ここで割引総報酬が一定の値を超える確率 P [ i V> -C ]を考えよう。これは政策πを用い、初期 π 状態 i から出発したときの割引総報酬が C 以上となる確率をあらわす。この確率を最大にする政 策を求めたい。sup P[ を与える政策である。この基準を閾値確率基準と呼ぶことにしよう。 i V> -C ] π π a 初期時点で状態 i にあり、目標は V > -C とする。状態 i で行動 a を選択して、報酬 rij を得て、 a 次の時点で状態 j に推移したとする。そうすると、次の時点での目標は、Vj > (C-rij ) /βとなる。(た - a だし Vj は次の時点以後の割引総報酬である。)なぜならば V = rij +βVj > -C となるからである。 この章以降、現時点で得られる直接報酬を次の時点の状態 j にも依存するとする。この場合、前 Σr 章での直接報酬は ria= j a ij a < pija として考える。( rija は 0 < - rij -G であり、各状態 i, j∈ S に対して a に関して連続であると仮定する。) [状態空間の拡張] 閾値確率基準では、最適政策を求めるときに、マルコフ政策のみを考えたのでは十分ではない。 拡張した状態空間の上でのマルコフ政策を考えなければならない。この点を説明しよう。今、従来 の政策の意味でπ= { d0, d1, … } を考える。q( で d( =a となる確率を表す。本稿を通して度数 0 i) i a) 分布の形でのみ証明する。すると =Σq(a) Piπ[ V > i -C ] Σpija Pπj [' V >- C' ]…………………………………(1) a j となる。ここで C' = (C-r βであり、π' ={ d0' , d1' , … }は政策πを一つずらした政策である。 a / ij ) = dt+1 ( ht+1 ) で定義される。ただし t > d( t' ht' ) - 0 に対して ht+1 =( i, a, s0' , a0' , …, at-1' , st' ) のとき ht' =( s0' , a0' , …, at-1' , st' ) である。 上式(1)の両辺で政策πに関して sup をとると 兼 π Σq(a)Σp 験 supP[ V > =sup献 -C ] i π π a i j a ij 券 ' Pπj[ 献 V> -C' ] 鹸 兼 券 ' a)Σpija sup V> C' ]) =sup献Σq( Pπj[ ( 献 - i d π' j 験a 鹸 0 ' となる。sup Pπ の値は C' により影響を受ける。ここで C' = (C-rija) /βであるから、右辺 j[V> -C' ] π' を最大にする d0 は C の値にも依存する。すなわち最適政策も C に依存する。したがって、この目 2 船木1.indd 2 04/03/05, 9:32 的関数を持つ、マルコフ決定モデルでは、最適政策は、その時点までのシステムの状態と行動ば かりでなく、基準となる値 C にも依存する。 それで、システムの状態 S と実数直線 R との直積 S×R を考えて、これを拡張された状態空間 と呼ぶことにしよう。この拡張された状態空間は非可算の集合となる。また、S×R の要素を拡張 された状態と呼び i ∈ S、C ∈ R として ( i, C ) で表そう。また一つの文字でこの拡張された状態を 表すときには x を用いることにしよう。すなわち x ∈ S×R である。行動空間は拡張された状態の 1番目の要素のみに依存して、拡張前と同様である。 x ∈( i, C )のとき、A x≡A iと定義しよう。 [履歴の拡張] 状態空間の拡張に伴い、履歴も拡張する必要がある。履歴を ( x0, a0, x1, a1, …, xt-1, at-1, xt ) xk =( ik , ck )∈S×R, k =0, 1, …, t; ak ∈Ai , k = 0, 1, …, t-1 k であらわし、今後この拡張された履歴を htで表すことにしよう。 [決定関数の新しい履歴への依存] また t 時点で履歴 ht のときの行動 a∈Ait をとる確率が qh( t a ) Σq( a )=1, 0 <- q( a )<- 1 a ht ht であるランダムな決定関数を d( であらわし、 この決定関数からなる政策{ d0, d1, … }を考える。 t ht ) 今後も記号 qh( に対応する確率を表すことにする。 a )でランダムな決定関数 d( t ht ) t [政策の再定義] 今後システムの状態といったら拡張された状態 x ∈ S×Rを指し、 政策といったら新しい拡張さ れた履歴に依存する政策を指すことにする。 マルコフ政策、 定常政策の場合についてもそれらの依存 する状態は x ∈ S×Rである。 [目的関数の書き換え] 確率は初期状態 x と政策πに依存する。すべての状態 i とすべての実数 C に対して π =sup Pr[ Vi > Pr[ Viπ* > -C ] -C ] π となるπ* が閾値確率基準での最適政策である。システムの状態が拡張されたモデルに対しても、 確率が初期状態 x と政策πに依存していることを表すために Pxπ[・]≡Pr[・] ( i, C )のとき、 と書くことにしよう。x= π =Pr[Vi > Pxπ[V> -C] -C ] 3 船木1.indd 3 04/03/05, 9:32 である。 定理1 拡張された状態( i, C ) から拡張された状態 ( j,C' )に 1 度で推移するとする。そのとき (1)C = rija(1- / β) ならば C>r C<r C' = C、 β) ならば C' > C、 a / ij(1- β) ならば C' < C。 a / ij(1- また逆も成り立つ。 (2)ru ≡ sup rija,rl ≡ inf rija とおくと i,j,a i,j,a / / C> ru(1- β) ならば C' > β)、 - ru(1- - C < rl(1- / β) ならば C' < rl(1- / β)。 (3)J ≡ C' - C は C の単調増加関数である。 (証明) 簡単な式の変形により (1)C > rija(1- / β)ならば(C-rija)/β> C。C'=(C-rija)/βより C' > C。他も同様。 (2) (1)より明らか。 (3)J = C' - C = {(1-β)C-rija}/βであり、1-β>0 であることより J は C の単調増加関数。 ( 証明終わり ) (3)のイメージは数直線上で C が大きければ大きいほど C' は C より右方により大きく離れ、C が小さければ小さいほど C' は C より左方により大きく離れるということである。 仮定2 割引総報酬 V の確率分布は連続と仮定する。 すなわち任意の i と対象とする政策πに対して Vπ i が特定の値 C をとる確率が 0 と仮定する。 │ ( i, C ) ∈S×R,C > / U ={( i, C ) β)}, -ru(1- │ ( i, C ) ∈S×R,C <rl(1- / L ={( i, C ) β)} と二つの集合を定義する。定理1(2)から、いったん C> / / β)や C<rl(1- β)になると、そ -ru(1- れ以降もそうであることがわかる。 任意の政策πに対して =0、 x ∈ U ならば、常に目標 C は達成できないので、Pxπ[V > -C ] =1 x ∈ L ならば、常に目標 C は達成できるので、Pxπ[V > -C ] である。 割引率β<1,直接報酬 rija < - G なので総報酬の実現値 v v = r0 +βr1 +β2r2 +…+βtrt +… は確定して v < / β)である。ただし rt は t 時点の直接報酬の実現値とする。 - G(1- 4 船木1.indd 4 04/03/05, 9:32 任意の閾値 C( rll(1- / / β)< C < ru(1- β))に対して必ず C < - v あるいは v < Cのいずれか が成立する。 定理2 各 x ∈ S×R に対してε> 0 と T <∞が存在して Pπ x[ XT ∈U∪L]>εが成立する。 (証明) / rl(1- β)< C < v のとき ① k 2 (v) k≡r0 +βr1 +β r2 +…+β rk T-1 T と定義する。そのとき(v) / / β)< β)> C となるT がある。 T-2 +β rl(1- T-1 +β rl(1- - C で(v) C1 ≡(C-r0)/β, C2 ≡(C1-r1)/β, … Ck ≡(Ck-1-rk-1)/β, … と定義すると / / CT-1 > β)で CT < rl(1- β)となり、T 時点までには集合 L にはいる。 - rl(1- / ru(1- β)> C > v のとき ② 同様にして(v)T-2+βT-1ru(1- / / β)> C で(v)T-1+βTru(1- β)< - C となる T がある。 / / CT-1<ru(1- ru(1- β)で CT > β)となり、T 時点までには集合 U にはいる。 - (証明終わり) 割引総報酬の確率分布が連続であると仮定している (仮定2) ので、①②からシステムの状態は確 率 1 で集合 U あるいは L にはいる。 [C の離散化] 基準値 C のとりうる値の集合は非可算である。計算と簡単化のため C を離散近似しよう。ここ で C を離散近似することはそれほど不自然ではない。仮に C を金額であるとすると、我々は円未 満を考慮しない。あるいはもっと大きな金額が最小の単位の場合もある。 以下で inf、sup はすべての i, j, a に対しての下限や上限である。c を任意の実数とする。 (1- / m ≡ inf{rija} β), c- ≡ inf{( c - rija )/β}, (1- / M ≡sup{rija} β), c+ ≡ sup{( c - rija )/β}, と定義する。 m と M の間を n 等分する。 c1 ≡ m, cn+1 ≡ M として、両端を含めて小さい方から c1, c2, …, cn+1 5 船木1.indd 5 04/03/05, 9:32 とする。 半開区間 [ci, ci+1)の点を左端の点 ci で近似する。さらに [(m-)-, m-) ∪[m-, c1) を m-で(これを c0 とおく)、 [ M , M +] を M で、すなわち cn+1 で近似する。 K ≡{ c0, c1, c2, …, cn+1 }, K+≡{ c1, c2, …, cn+1 } と定義する。 状態空間はS×Kとする。 この状態空間は可算の集合となる。 今後、 状態はすべてこの近似された状 態で考える。 また、 この近似により、 正確には近似式であるところも等式で表わすことにする。 次の定理により、任意の政策に対して、時点 t の状態と行動に対して同じ確率分布を与えるとい う意味で、同等のマルコフ政策が存在する。証明は Puterman[3]134p 参照。分布 q( がより一 h a) 般的な場合は Strauch [6] 参照。 定理3 πを政策とする、そのとき各 x ∈ S×K に対してマルコフ政策π' が存在して π Pπ' x[ Xt=y, Bt=a ]= Px[ Xt=y, Bt=a ] t = 0, 1, …. ここで Xt は時点 t における状態、Bt は時点 t において選択される行動である。 このマルコフ政策は初期状態 x に依存して決まる(Strauch [6] , random semi-Markov policy)。 定理3は、状態を近似していない場合に対してもいえる。この定理3によってマルコフ政策のみを 考えて良いことが保証される。 [再帰関係式] πをマルコフ政策とすると、次の再帰関係式が成立する。 =Σqh( C' ] W(i,C)≡Pr[Viπ > a) Σpija Pr[Vπj ' > -C] 0 - π a j Σq (a)Σp W = a h0 j π' a ij ( j,C'') a π' はπを1期ずらした政策で、C'=(C-rij )/βである。可能な C を離散近似しているので、等号 は近似での等号である。 次の記号を定義する 6 船木1.indd 6 04/03/05, 9:32 { a Δ(i,C i,C) (i,C) ( ( )j, D)≡ a if D=(C-rij )/ 1 a 0 if D≠ (C-rij )/ . 上の再帰関係式から、決定関数 d( が現在の状態にのみ依存するときには、行動 a を t, t=0, 1,…) 用いたときの状態( i, C )から状態( j, D )への推移確率が pija・Δ(ai,C) ( j,D)で与えられるマルコフ過程を 考えることができる。 x =( i,C ), y=( j,C' ), C'=(C-rija)/βとする。 { { a 1 if C' > -M 0 if C' < M , Ux,y ≡ a 1 if C' < m 0 if C' > m - L x,y ≡ を定義する。 a U x,y は次期に、システムの状態が U に入るか入らないかの指標で、入ったら1、入らなかった a ら 0 である。同様に L x,y は次期に、システムの状態が L に入るか入らないかの指標で、入ったら1、 入らなかったら 0 である。 定理4 ≡Pr [Viπ>C] ={マルコフ政策πによって( i,C ) から出発して初めて L に達する確率 } W(iπ , C) - である。 (証明) x =( i, C ), y =( j, D )とする。ここでは qh( a)を簡単のため q(a)と書くことにする。π' はπ 0 を1期間シフトさせた政策である。 a π' Wxπ =Σq(a) (j,D)Wy ) ΣΣpija・Δ(i,C) a j D Σq(a)ΣΣp ・Δ = a j a ij D a ・ U x,y・Wyπ' a (i,C) (j,D) Σq(a)ΣΣp ・Δ a ・L x,y・Wyπ' Σq(a)ΣΣp ・Δ a ・ (1-U x,y) ・ (1-L x,y) ・Wyπ' + + a j a j D D a ij a ij (i,C) (j,D) (i,C) (j,D) a a a である。y ∈ U ならば Wyπ' = 0 より最右辺第 1 項は 0 である。また y ∈ L ならば Wyπ' = 1 である。 したがって Wxπ=Σq(a) ΣΣpija・ Δ(ai,C)(j,D)・L x,y a a j D 7 船木1.indd 7 04/03/05, 9:32 Σq(a)ΣΣp ・Δ + a j a ij D a a ・ (1-U x,y) ・ (1-L x,y) ・Wyπ' a (i,C) ( j,D) である。 R(i,C)≡Σ Σpija・Δ(i,C)( j,D)・L(i,C)(, j,D), a a j a D ……………………………(2) a a ≡ pij・Δ(i,C) ・ (1-U(i,C) ) ・ (1-L(i,C) ……………(3) Q(i,C) ( j,D) ( j,D) ( , j,D) ( , j,D)) a a a と定義する。R xa は行動 a のもとで次期に状態 L に入る確率である。 また Q axy は行動 a の下で次期に状態 y ∈ S×R-U-L となる確率である。 y∈ / S×R-U-L に対しては Q axy = 0 である。 a Wxπ=Σq(a)Rx a Σq(a)ΣQ + a y a xy Wyπ' である。右辺の Wyπ' を同じように再帰的に展開していくことにより定理の証明が得られる。定理 2より右辺の和は定まる。 (証明おわり) 定理4は、一部、和が積分になるが、状態を近似していない場合に対しても同様に証明できる。 定常政策を f ∞ ≡{ f, f, …, f, … } と表すことにする。また状態に1つの行動を対応させる決定関数 f に対して f( x ) = a の時に Rxf ≡ Rxa, Q xyf ≡ Q axy と表すことにする。 定常政策 f ∞のときには再帰関係式が Wx f = Rxf+ΣQ fxyWyf ∞ …………………………………………………(4) ∞ y となる。 [推移確率と直接報酬] 式(2) から a a a ( R(i,C) ) ・L(ai,C)(, j,D) …………………………………(5) ( j,D) ( j,D)≡ pij・Δ(i,C) と書くことにする。はじめのモデルのデータから拡張されたモデルのデータを作成しよう。 式(3) (5)から以下のように計算される。 現在の状態 x = ( i, C ) で行動 a をとったとき y = ( j, C' ) とする。 ① C = c0, c1 のとき 8 船木1.indd 8 04/03/05, 9:32 ⅰ)C' = c0 の y に対して ⅱ)その他の y に対して ( Rxa )= ) pija, Q axy = 0, y ( Rxa )= ) 0, Q axy = 0. y ② C = cn+1 のとき、すべての y に対して ( R xa )= ) 0, Q axy = 0. y ③ C ≠ c1,C ≠ cn+1 のとき ⅰ)C' = c0 かつ( C-rija ) /β<c1 なる y に対して ( Rxa )= ) pija, Q axy = 0, y ⅱ)k ≠ 0, n+1 として < ( C-riji a )/β< ck+1 なる y に対して C' = ck かつ ck - ⅲ)その他の y に対して a a 0, Q axy ( Rxa )= ) y x = pij , 0, Q axy ( Rxa )= ) y x = 0. a ( Rx ) R x =Σ y である。 y 以上から 状態空間:S×K, 行動空間: {Ax:x∈S×K} ( x= ( i, c ) のとき Ax=Ai ), a 直接報酬: {R x :x∈S×K,a∈Ax}, ΣQ 推移確率: {Q axy x :x∈S×K,a∈Ax}( y a x xy <1) - である、マルコフ決定過程を考えることができる。 < 1。 1.すべての x とπに対して Pxπ[V > -C ] - a 2.各 x = ( i, c )に対して R x > (本稿の場合、 - 0 である少なくとも一つの a∈Ax が存在する。 a すべての a∈Ax に対して R x > ) - 0 である。 1, 2からこのモデルはポジティブ DP(Blackwell [1] ,Puterman [3]284p)である。 定理5 状態空間 S × K は可算であり、またすべての x ∈ S × K とすべての a ∈ Ax に対して R xa > -0 であるから、最適政策が存在するならば、定常な最適政策が存在する。 証明は Puterman[3]294p 参照。 したがって、閾値確率基準最適政策を求めるためには、拡張された状態の下での定常政策のみを 考えれば良いことになる。また定理 2 から再帰関係式 (4) の解が求まる (Kushner[2]120p,Theorem8 参照) 。定常最適政策を求める計算が可能である。状態が(・, c0 )になるとそこでパスがなくなる。 c0 < m であるので、はじめから閾値 C = c0 は考える必要がないので、状態空間を S×K+として よい。 9 船木1.indd 9 04/03/05, 9:32 Ⅲ 終わりに White[7]は元のシステムが有限状態空間、 有限行動空間で、 閾値確率基準のモデルを考えている。 また最適定常政策の存在を閾値 C を離散にせず証明している。本稿では、可能な閾値 C を離散化 することにより、閾値確率基準マルコフ決定過程を、状態が可算無限のポジティブ DP に帰着させ ている。閾値の離散化は White[7]でも、計算上必要になるということで、最後に簡単に触れて いる。連続無限な状態からみると、本稿ではε-最適定常政策を考えていることになる。船木も[8] 第Ⅵ章で、元の状態空間も行動空間も共に有限な閾値確率基準のモデルを述べた。そこでは本稿の 定理2に相当する仮定をおいた。本稿の動機はその仮定をなくすことであった。 参考文献 [1]D. Blackwell, Positive dynamic programming, in Proceedings of the 5th Berkeley Symposium on Mathematical Statistics and Probability, Vol. 1 (University of California Press, Berkeley) pp. 415-418 (1967). [2]H. Kushner, Introduction to Stochastic Control Theory (Holt, Rinehart and Winston, New York, 1971). [3]M. L. Puterman, Markov Decision Processes, (John Wiley & Sons, New York, 1994). [4]Linn, I. Sennott, Stochastic Dynamic Programming and the Control of Queueing Systems, John Wiley & Sons, New York, 1999). [5]M. Sobel, The variance of discounted Markov decisions processes, J. Appl. Probab. 19, 794-802 (1982). [6]R. Strauch, Negative dynamic programming, Ann. Math. Stat. 37, 871-890 (1966). [7]D. J. White, Minimizing a Threshold Probability in Discounted Markov Decision Processes, J. Math. Anal. Appl. 173, 634-646 (1993). [8]船木洋一 割引基準マルコフ決定理論(東北大学博士論文)(1981). 10 船木1.indd 10 04/03/05, 9:32 軍備部方式の破綻と海軍軍拡計画の再編(下) ── 1883―86 年── 池 田 憲 隆 0.序論 1.軍備部方式の破綻 1) 「83 年軍拡実行プラン」の概要 2) 「83 年軍拡実行プラン」の遂行状況 3)軍拡財源(増税分)の推移 4)軍備部収支の検討(以上、前々号) 2.艦船整備の展開過程 1)艦船整備計画の大枠 2)整備案(外国発注)の変遷 3)整備の実施過程 4)小括(以上、前号) 3.海軍公債の発行と海軍軍拡計画の変容(以下、本号) 1)海軍軍拡構想の展開 2)再編軍拡計画と海軍公債の発行 3)小括 4.結論 3.海軍公債の発行と海軍軍拡計画の変容 増税に財源を求める軍備部方式の破綻が、財政当局だけでなく政府内全般に周知のことになった のは、おそらく 1885(明治 18)年初めのことであったであろう。当時の歳入出決算は2ヶ年をもっ て完結しており1)、 「明治十六年度歳計決算報告書例言」2)が「会計年度経過後八ヶ月即チ明治十八 年二月ヲ限リ其出納ヲ閉鎖」と述べているように、83 年(明治 16)度歳入出決算が確定したのは 85 年2月のことであった。この時点で、83 年度の軍備部繰入そのものにかなりの無理があったと いう事実3)が政府内で開示されていたかどうかは定かではないが、増税収入が予算額に遠く及ば 11 池田.indd 11 04/03/05, 11:13 なかったことは周知の事実であったであろうし、そこから軍備部破綻は容易に推測しえたものと思 われる。 他方で、82 年度から始まった各庁経費据置方針は3年間という予定であったが、86 年度から会 計年度を変更すること(従来の<7月→6月>を<4月→3月>としたため 85 年度は9ヶ月とい う変則的な会計年度となった)が決定されたことを理由として、1年延長されて 85 年度まで続い ていた。このため、86 年度予算をめぐっては新規要求が噴出した。このことは、軍備部破綻とも 密接な関連を有していた。つまり、予定財源不足により軍拡計画の再編は必至となり、既定の軍拡 計画を継続するためには新たな財源を確保する必要があった。それを前提にして陸海軍は新たな要 求を準備していたし、その他省庁も4ヶ年にわたって経費を抑えられていたため、当然ながら大い なる不満をもっていたからである。こうして、86 年度予算をめぐって政府内における抗争が展開 されることとなった。 以上のように軍備部破綻が明らかになったことを契機として、政府内において財政問題がクロー ズアップされてきた。ここでは、この点に関係の深い海軍内部における軍拡構想の展開(1884 年 以降)をまず概観し、次にそれに対して政府内部の調整のなかで策定された軍拡計画の特徴につい て検討してみたい。 1)海軍軍拡構想の展開 すでにみたように、83 年度に始まった海軍軍拡は予算を獲得していたにもかかわらず、その実 施は大幅に遅延していた。1884(明治 17)年5月、主船局長であった赤松則良は海軍卿に造艦計 画案を提出し、早期策定を促した4)。それによると、艦船整備総数は 49 艦であり、83 年度までに 発注ないしは起工したものを除いて 40 艦(41 艦?)を建造するというプランであった。そのなか には甲鉄戦艦5艦が含まれており、しかも建造総数はさきに閣議で承認されていた軍拡当初プラン に基づく 32 艦建造案(表5を参照)を大きく上回るものであった。その点でこの案が軍拡予算残 高の範囲内に収まるかどうかが疑問視されるもの5)であるが、同じく赤松から翌年再度提出され た上申書6)の文面からすると、既定予算に副うものであったと思われる。 それに対して、軍事部長であった仁礼景範は同年 10 月に、前述の赤松案を「其主義退守ヲ専ト シ進戦ハ其期スル所ニ在ラサルモノ」と批判し、1等戦艦4艦を中心とした艦船整備案(総額約 1860 万円)を提示した7)。その概要は表8にまとめられている。それによると、建造すべき艦船 は 10 艦であり、赤松案に比べて極めて少なくなっているが、これは1等戦艦=甲鉄艦に予算の大 半を割いたためである。赤松案の想定していた甲鉄戦艦は 5000 トン程度の艦であったと考えられ るが、仁礼案の甲鉄戦艦は最新鋭艦を予定していた8)。既定の軍拡予算 2664 万円のうち、すでに 支出済または支出が決定されたものが 1061 万円ほどとみられていたから、それを差引いた残高は 1603 万円程度であった。この仁礼案は予算残高を 257 万円ほど超過するものであり、これについ ては別途請求するとしていた。 12 池田.indd 12 04/03/05, 11:13 表8 艦 種 1884 年仁礼造艦計画案(1884 年 10 月 31 日) 整備艦船総数 発注艦船数 1等甲鉄戦艦 4 4 1 等 巡 洋 艦 4 0 3 等 巡 洋 艦 8 0 1 等 砲 艦 4 2 等 砲 艦 4 水 雷 合 艦 計 単 価 (単位:千円) 発注金額 4,000 16,000 3 400 1,200 1 200 200 2 2 600 26 10 1,200 18,600 (出典)史料[6]1884 年 10 月 31 日付海軍卿宛軍事部長意見より作成。 表9 艦 種 1885 年赤松造艦計画案(1885 年2月 21 日) 整備艦船総数 1 等 巡 洋 艦 発注艦船数 単 価 (単位:千円) 発注金額 4 0 2 等 巡 洋 艦 2 2 1,000 2,000 3 等 巡 洋 艦 12 3 800 2,400 砲 艦 18 14 300 4,200 水雷艇運送船 3 3 600 1,800 2 等 水 雷 艦 24 24 31 749 装 甲 水 雷 船 18 18 175 3,150 81 64 2,906 14,299 小 そ 計 の 他 1,297 総 計 (出典)史料[15]pp.46 ― 47 より作成 (注)その他は、魚形水雷・水雷発射管・諸雑費の合計である。 15,596 こうして、海軍内において軍拡構想に関する路線対立が次第に明確になっていき、同年 12 月に 朝鮮で起きた甲申事変を経て、対外戦略と密接に関連してその対立はより深化していった9)。前述 の仁礼案に対して、 翌 1885 (明治 18) 年2月には赤松主船局長が海軍卿宛に修正した案 (表9を参照) を再度提出した 10)。これは、前年の案と同様に既定予算に副うという点で予算総額は変わらなかっ たが、その内容は前案にあった甲鉄戦艦をすべて省き、水雷艇を中心とした整備案へと大きく様変 わりしたものであった。その理由は「水雷船ノ製造著シク進歩シ仏国ニ於テハ他国ニ先チ製造中ナ ル者ハ勿論已ニ存在セル甲鉄艦ヲモ全廃セントスルノ論アルニ至リ最早三ヶ年前ノ見識ヲ以テ満足 スヘキニ非スト」という状況判断によるものであった。 しかし、赤松自身も「右計画ハ全ク巡洋戦艦ト水雷船ヨリ成立スルモノニシテ或ハ巨大ノ甲鉄艦 数艘ヲ希望スル衆論ニ合期致サヽル義ト被存候」と述べているように、海軍内においては仁礼=甲 鉄戦艦路線の方が優勢であったと思われる。これは、海軍にとって「天佑」とも思えた壬午事変を 契機とした軍拡予算獲得の再来を、甲申事変後の政治状況に期待する中堅層の台頭があったためで もあろう。 13 池田.indd 13 04/03/05, 11:13 表 10 艦 種 整備艦船総数 1885 年川村提議(1885 年) 発注艦船数 (単位:千円) 単 価 発注金額 1等甲鉄戦艦 8 8 5,500 44,000 1 等 巡 洋 艦 16 12 1,200 14,400 2 等 巡 洋 艦 12 5 1,000 5,000 砲 艦 24 19 400 7,600 水 雷 運 送 船 4 4 500 2,000 1 等 水 雷 艦 12 12 156 1,872 2 等 水 雷 艦 32 32 20 640 合 計 108 92 75,512 (出典)史料[16]pp.20 ― 21 より作成。 (注)本史料には、総額のみで単価等の記載がないため、表8・9の出典等から推定した。 この路線対立は、1886 年度予算編成において一気に表面化した。同年7月と推定される時期に、 川村海軍卿は太政大臣に対して既定軍拡計画の再編案を提議した 11)。これは、同年6月、松方大 蔵卿が閣議に対して今後の財政方針を決定することを求めたことへの海軍側の対応であったであ ろう。この案は「十六年度以降八箇年計画軍艦三十二隻新造ノ予定ヲ以テ進行中ノ処造船技術ノ進 歩ト兵器製式ノ改良トニ伴ヒ茲ニ其計画ヲ改定スル要アリ」として、残り5ヶ年間で甲鉄戦艦8艦 を含む 92 艦を建造するという膨大な計画であった(表 10 を参照)。それによると、この計画が総 額約 7550 万円(1年当り約 1510 万円)であるのに対して、1885 年末時点での軍拡予算残高は約 1560 万円であり、約 5990 万円が不足するため、これを新たに要求するというものであった。 とはいえ、この川村提議は「今後ノ造艦ヲ既定ノ軍艦製造費額ニ限ルトセハ甲鉄艦ノ製造ヲ止メ 巡洋艦砲艦等二十二隻、水雷艇二十四隻、装甲水雷船十八隻ヲ新造セントス」という留保も付け加 えており、結果として閣議に対して2つの案を併記した奇妙なものとなっている 12)。後者の案は 85 年2月赤松案と同一であり、これによって海軍内部の軍拡構想の不統一がはからずも露呈され た形となったのであった。 2)再編軍拡計画と海軍公債の発行 前述のように、海軍は 1886 年度以降の軍拡計画再編案として、まず 6000 万円に近い巨額の予算 案を提示した。他省庁も新規要求をおこなっており、陸軍省による砲台建築費と村田銃・弾薬製造 費の繰上げ支出と、内務省による地方費一部国庫負担の拡大要求増額を加えると、総額で 7000 万 円を超えるものであった。こうした動きに対して、政治・外交路線において共通理解をもち、経費 節減を推進しようとする井上馨-伊藤博文-松方正義らを中心とした緊縮派がその後の政局を動か していった、ということはすでに先行研究によって明らかにされている。緊縮派の基本方針は、海 軍については巨額の新規要求を問題外とし、既定軍拡予算の執行のみを認めることであり、陸軍に ついては新規要求に止まらず既定予算の一部をも削減するというものであった 13)。 14 池田.indd 14 04/03/05, 11:13 このように、軍備部破綻後における軍拡費の処理こそが緊縮派の最も大きな課題であったが、陸 軍軍拡費の主たる部分が兵員増加費であったのに対して、 海軍は軍艦製造費であったこともあって、 陸軍と海軍とではその対処の仕方が異なっていた。陸軍に対しては、中堅層の抵抗によって当初 目論んだ削減額は達成できなかったが、既定軍拡計画を繰り延べし 14)、1886 年度予算においては 200 万円程度の削減に成功する 15)。しかし、海軍軍拡については緊縮派も一定の理解を示していた ために、既計画予算額を保証すべく一般財源と切り離した形で、新たな財源を公債発行によって確 保することに決定したのである。 ところが、この新財源が示されるより前の 1885(明治 18)年 12 月に、川村海軍卿は甲鉄艦1艦 を含む新たな建造計画の承認を閣議に求めている 16)。この計画は、フランスのフォルヂ・エー・シャ ンチェー社に発注する1等甲鉄艦の予算総額約 387 万円(ただし正貨)のうち 40 万円について契 約金として支払うことなど、85 年度軍艦製造費予算に約 82 万円を追加要求するというものであっ た。これを、内閣の緊縮派や海軍内の水雷派に対する海軍の中堅層=甲鉄戦艦派の抵抗という見方 17) もあるが、新たな財源を要求するのではなく、84 年度軍艦製造費の未消化分を充当することを求 めており、陸軍のような既定予算の削減に対してむしろ防御線を張る戦術であったのではないだろ うか。この案は翌 86 年1月 27 日に閣議で認められた模様 18)であるが、結果として実現までには 至らなかった。海軍公債という新財源が確実になるとともに、新たに招聘された海軍省顧問エミー ル・ベルタン 19)による艦隊構想提案が採用されて、甲鉄戦艦発注はあっさりと撤回されたしまっ た 20)のである。 ベルタン構想の中核には、まず沿岸警備を主眼として「此ノ目的ニ適当スル艦船ノ形式ハ一露 砲々塔内ニ一門ノ六十五噸砲ヲ具有シ且ツ常ニ水雷艇ノ一群ヲ引率セル一隻ノ海防艦ニシテ其ノ吃 水量大約四千噸ノ者ナリトス」21)という考え方があった。つまり、建造優先順位の最も高いもの が 4000 トンクラスの海防艦であり、これをまず4艦建造し、次に 50 - 60 トンクラスの1等水雷 艇を 16 艦、25 - 30 トンクラスの2等水雷艇を 12 艦建造するというものである。この海防艦の設 計は、基本的には防御的立場に立ちながらも、32 サンチ砲というこのクラスの艦には不釣合いな 巨砲を搭載することによって、清の主力戦艦に一応対抗しうるというものでもあった。つまり「水 雷学派の理論を基礎に財政・軍事戦略・外交論の整合性を保持しつつ、強硬派から一程の妥協を引 き出し得る様に砲力にも考慮」22)した構想とみてよいであろう。 海軍公債の発行について、閣議が事実上承認したのは同年3月 23 日のことであったらしい 23)が、 正式に提議され、海軍公債条例として公布されたのは新会計年度に入って6月のこと 24)であった。 83 年度から8年計画で始まった海軍軍拡計画は、すでにみたように軍備部方式が破綻したために 再編を余儀なくされていた。旧計画の軍艦製造費予算総額は 2664 万円であったが、85 年度までに 約 990 万円を支出したため、その残額は 1670 万円余であった。そのため、86 ~ 88 年度の3年間 に総額 1700 万円の公債を発行して、海軍軍拡費残額の財源に充当するというプランが企画された のである。 15 池田.indd 15 04/03/05, 11:13 表 11 海軍軍拡再編案(1886-88 年度) 1886 年度 1887 年度 (単位:千円) 1888 年度 計 新 計 画 軍 艦 製 造 費 1,651 4,035 旧計画注文済軍艦製造費 2,185 440 費 724 844 844 2,412 費 240 480 480 1,200 褐色火薬製造場設立費 110 128 鎮 海 守 防 府 設 水 立 雷 長浦横須賀間掘割費 合 計 50 50 4,960 5,977 4,475 総 10,162 2,625 238 100 5,800 16,737 (出典)史料[19](29 ― 10)より作成。 こうして海軍公債発行によって、海軍軍拡は新たに再編されて存続した。表 11 は、その財源に 基づいた海軍軍拡計画再編案の概要である。この再編案の特徴は、①総額において追加を認めない ことが確認されたこと、②残り計画期間が5年から3年に短縮されたこと、③旧計画にはなかった 鎮守府・造船所等の施設設備費や建築費が盛り込まれたこと、などであった。 これについて、海軍の追加要求を拒否し、軍拡計画のなかに施設設備費等が含まれることになっ て建艦費総額が縮減された点などを、緊縮方針の基本的貫徹として高く評価する見解 25)があるが、 そこでは期間の短縮と軍艦維持費の経常費化という2点が無視されている。 前者についてみると、施設設備費等の算入によって、軍艦製造費は 1280 万円程度に抑えられる ことになった。旧計画の残額(約 1670 万円)はすべて軍艦製造費であったので、それは確かに減 額されている。ところが、1年当りの軍艦製造費でみると、約 334 万円→約 426 万円と増額されて いるのである。当然のことながら、5年間の計画が3年に短縮されたためである。 後者については、旧計画では軍艦維持費等が別途計上されていたが、新計画ではそれらが含まれ ておらず、海軍省費内に包摂されている 26)。旧計画の時期にも、決算においては軍艦維持費の款 項が立てられておらず事実上包摂されていたが、計画レベルでは独自の費目として計上されていた のである(表1と表2を参照のこと) 。ということは、艦船整備とともに増加しつづける軍艦維持 費予算がいかに計上されているかについては、再編軍拡費(特別費)以外の海軍省費予算の推移か らしか推測することができない。 そこで、 84 年度予算と 86 年度予算を比較したものが、 表 12 である(85 年度は9ヶ月決算のため、 除外した) 。これによると、 海軍省費予算は約 206 万円増加している。この年度も緊縮の予算であっ たから、この増加分はほぼ軍艦維持費予算分と想定してよいと思われる。旧計画のそれ(表1を参 照)が約 80 万円であったのに比べて、倍増しているといえる。既に述べたように、旧計画では海 軍全体の予算が抑制されたかのような印象を与えるために、軍艦維持費が実際よりも過少に計上さ れていたのであり、この増加はある意味では当然であったであろう。このように、軍艦維持費が経 常費に繰り入れられることによって、海軍省費は増大したのである。 16 池田.indd 16 04/03/05, 11:13 3)小括 表 12 海軍予算比較(1884/1886 年度) (単位:千円) 軍備部方式の破綻を繕うために、公 1884 年度 1886 年度 増 減 債を発行することによって財源を確保 海 軍 省 費 して、海軍軍拡計画は継続されることと 興 費 99 5 - 94 なった。この点では、一般会計とは区別 軍艦製造費 4,388 3,226 - 1,162 鎮守府設立費 697 697 海防水雷費 197 197 67 67 9,476 1,764 された軍拡費という形式が守られること によって、軍拡費拡大の直接的影響から 一般経費を隔離するという方針は維持さ れた。また、これを契機に陸軍の軍拡費 そ 業 の 合 3,226 他 計 7,712 5,285 2,059 (出典)史料[3]および史料[20]より作成。 を抑制することもできた。 しかしながら、海軍軍拡費は抑制されたとはいえず、計画期間が3年に短縮されたことによって、 事実上の増額がなされたといってよいのである。緊縮派内閣といえども海軍については例外的とい えるほどの優遇した予算を与えた、ということができるのである。しかも、それは3年後の新たな 軍拡計画の登場を予期せざるをえないものであった。 4.結論 最後に、簡単に結論をまとめておく。軍備部方式の破綻は経費の増加ではなく、デフレーショ ンの進行による予定財源の不足を原因としていた。松方がわざわざ「毎年度要スル所ノ費額ハ予定 外ニ出」たと述べているのは、1886 年度予算の策定に当たって緊縮財政方針をできるだけ貫徹さ せようとしていたことから、海軍軍拡費の大幅増額だけは避けたいという意図からなされた発言で あったと思われる。しかし、そもそも緊縮財政方針が崩れたのは、83 年度以降の軍拡費決定過程 において陸海軍の追加予算要求を松方が受け入れたからであった。 海軍が強硬な繰上げ要求で予算を獲得したにもかかわらず、83 年度から 85 年度にかけて実際に は支出できなかった原因は、主として外国発注の遅れにあった。それは対外情勢が追い風となって 突如巨額の予算を手にしたため、艦隊構想が実行可能な形で整理されておらず、しかも外国に艦船 を発注する経験が不足していたためであった。さらに、この過程において海軍内部により巨額の予 算を要求する勢力が台頭し、軍備構想の決定はますます混迷の度を深めていったのである。 軍備部方式に基づく軍拡計画の破綻が明らかになった後、政府主流(緊縮)派は陸軍の軍拡を抑 制することに成功したが、海軍については巨額の新規要求を認めなかったものの、計画期間を短縮 することによって、事実上の増額を認めた。しかも、それはその後の軍拡可能性を予感させるもの でもあった。 こうして、内外情勢の変動のなかで現実化した海軍の軍備拡張は、艦船整備の予算消化を順調に こなせなかったにもかかわらず、紆余曲折を経ながらも徐々に肥大化し、この過程において既得権 17 池田.indd 17 04/03/05, 11:13 を得るまでに至ったと評価しうるのである。 【注】 1)深谷[1995]p.124。 2)史料[3]p. 5。 3)本稿(上)では、83 年度決算において増税による軍拡財源は約 382 万円であるのに対して、軍拡費決算額 は約 450 万円であったことから、軍備部繰入は実際にはおこなわれなかったと推定した(pp.104-105)が、 その論拠となった表3の数値が原資料の誤植であることが判明した(この点は、すでに林[1965]p. 283 に指摘されていた)ので、ここで訂正しておきたい。83 年度造石税決算は 11, 302 千円ではなく、12,302 千円であった。それゆえ、軍拡財源は約 482 万円となり、30 万円程度の繰入は可能となる。とはいえ、軍 備部繰入決算額は約 157 万円であり、そこには大きな差がある。しかも、 本来の財源見積額は 750 万円であっ た。これらの点からみても、軍備部方式は発足当初から破綻が目にみえていたという評価を変更する必要 は認められないのである。 4)史料[15]1884 年5月 19 日付海軍卿宛主船局長上申(pp.44-45) 。 5)先行文書(主船六〇二)が不明のため、本案における建造予定艦船の予算が判明しない。 6)史料[15]1885 年2月 21 日付「艦船製造ノ義ニ付意見重テ上申」 (pp.45-47) 。 7)史料[6]1884 年 10 月 31 日付海軍卿宛軍事部長意見。 8)ただし、この予算額ではやや無理があるのではないかと思われる。この応酬にみられるように、 「甲鉄艦」 はこの時期にキーワードとなった感があるが、これは必ずしも厳密に定義づけられたものではなかったの である。 9)これらの点については、大澤[2001]第2章第3節を参照。 10)史料[15]1885 年2月 21 日付「艦船製造ノ義ニ付意見重テ上申」 (pp.45-47) 。 11)史料[16]pp.20-21。この提議は月日不詳であるが、7月頃と推定される。この点は高橋[1995]p.205 を参照。 12)これについて、高橋[1995]は「海軍本来の要求は前者であり、後者はそれが実現できないときの次善の 策と位置付けられていたと見るべきだろう。海軍の中心的潮流は甲鉄艦導入論だったのである」 (p. 213) と述べている。前者が優勢であったことはたしかであろうが、総額において両案はあまりにもかけ離れす ぎており、前者は願望であっても現実的プランとはいえないであろう。大澤[2001]が「川村海軍卿自身 は既定軍拡予算残高内で水雷学派の海軍編成構想に与していた」 (p.61)と述べているように、当時の財政 状況を全く無視して海軍卿が前者の主張をおこなうとは考えがたいので、この2案併記は川村が海軍内を まとめきれなかったことを意味するように思われる。 13)以上の点は、高橋[1995]第1編第2章2節および大澤[2001]第3章を参照。 14)大澤[2001]p.94。 15)高橋[1995]p.224。 16)史料[17]1885 年 12 月3日付「十八年度軍艦製造費増額ノ義上請」および史料[15]1885 年 12 月4日付、 太政大臣宛海軍卿文書(p.47)。 17)高橋[1995]pp.216-217。そうした立場からすれば、この要求はいかにも中途半端なものであった。というのは、 83・84 年度の未消化予算は約 137 万円もあったのであるから、艦隊編成上からいっても2艦要求してしか るべきであったのである。 18)史料[17]1886 年1月 13 日付「海軍省禀申十八年度軍艦製造費増額ノ件」に対する指令案。 19)ベルタンについては、篠原[1988]pp.188-192、および海軍歴史保存会[1995]pp.266-281 を参照のこと。 20)これについては、とりあえず大澤[2001]pp.114-121 を参照のこと。ただし、この経緯には不明な点が多い。 21)史料[18]1886 年2月 20 日付「艦隊組織ノ計画」 。 22)大澤[2001]p.118。 23)高橋[1995]p.218。 24)史料[4]pp.22-23。 25)高橋[1995]は「海軍の膨大な追加建艦要求を否定するとともに、財政当局も必要と見ていた鎮守府の新 18 池田.indd 18 04/03/05, 11:13 設など新規事業を海軍側の自己負担の形でおこなわせたものであり、財政当局よりすれば、その緊縮方針 を海軍についてつらぬきえた」(p.220)と述べている。 26)この点は、佐藤[1964]p.16 においても指摘されている。 【参考文献】 大澤博明『近代日本の東アジア政策と軍事』成文堂、2001 年 海軍歴史保存会『日本海軍史』第1巻、1995 年 佐藤昌一郎「企業勃興期における軍拡財政の展開」 『歴史学研究』295 号、1964 年 篠原宏『日本海軍お雇い外人』中央公論社、1988 年 高橋秀直『日清戦争への道』東京創元社、1995 年 林健久『日本における租税国家の成立』東京大学出版会、1965 年 深谷徳次郎『明治政府財政基盤の確立』お茶の水書房、1995 年 【史料】 [1]伊藤博文編『秘書類纂 財政資料』中巻、原書房復刻版、1970 年[原本は 1936 年] [2]伊藤博文編『秘書類纂 兵政関係資料』、原書房復刻版、1970 年[原本は 1935 年] [3]『歳入歳出決算報告書』明治十六・十七・十八年度(大蔵省編『明治前期財政経済史料集成』第六巻、明 治文献資料刊行会版、1963 年) [4]大東文化大学東洋研究所編『松方正義関係文書』三、1981 年 [5]伊藤博文編『秘書類纂 財政資料』下巻、原書房復刻版、1970 年[原本は 1936 年] [6]海軍省編『川村伯爵ヨリ還納書類』五(防衛庁防衛研究所戦史部図書館、所蔵) [7]斎藤實文書「巡洋艦畝傍号始末等調査報告」 (国会図書館憲政資料室、所蔵) [8]海軍省編『公文備考別輯』<新艦製造部エスメラルダ号購入>(防衛庁防衛研究所戦史部図書館、所蔵) [9]大山梓編『山縣有朋意見書』原書房、1966 年 [10]海軍省編『公文備考別輯』<新艦製造部浪速艦、上>(防衛庁防衛研究所戦史部図書館、所蔵) [11]外務省編『外務省記録』<各国へ軍艦建造並購入方交渉雑件 英国ノ一>(外務省外交史料館、所蔵) [12]海軍参謀本部『英国及各国海軍』、刊行年不詳。なお、海軍参謀本部が存在した時期は 1888 年5月 12 日 から 89 年3月7日までである。 [13]海軍省編『公文備考別輯』<新艦製造部畝傍艦、上>(防衛庁防衛研究所戦史部図書館、所蔵) [14]横須賀海軍工廠『横須賀海軍船廠史』第二巻、原書房復刻版、1973 年[原本は 1915 年] [15]海軍省編『海軍制度沿革』巻八、原書房復刻版、1971 年[原本は 1941 年] [16]海軍大臣官房編『海軍軍備沿革』巌南堂書店復刻板、1970 年[原本は 1934 年] [17]『公文雑纂』<明治十九年大蔵省1-11 >(国立公文書館、所蔵) [18]海軍省編『川村伯爵ヨリ還納書類』三(防衛庁防衛研究所戦史部図書館、所蔵) [19]『松方家文書』「臨時予算書」(国会図書館憲政資料室、所蔵) [20]『歳入歳出総決算報告書』明治十九年度(国会図書館、所蔵) [付記:本稿は、財団法人福武学術文化振興財団平成 13 年度研究助成金に基づく研究成果の一部であります。 前稿等において 14 年度と記したのは 13 年度の誤りでした。この場を借りて、関係者各位にお詫び申し上げます。 ] 19 池田.indd 19 04/03/05, 11:13 若年労働市場における解雇費用の影響 李 永 俊* 本論文の目的は、非効率的な解雇費用の存在が中高年労働者と若年労働者の雇 用環境にどのような影響を与えるのかを理論的に分析することにある。主な結 果は2つある。1つは、非効率的に高い解雇費用の存在によって , 中高年労働者 の雇用維持による若年労働者の雇用抑制という置換効果が生じているというこ とである。もう1つの重要な結果は、長期にわたる経済成長率の低下が企業の 新規採用に対する期待収益を低下させ、中高年の雇用保蔵と若年の新規採用枠 の低下をもたらしているということである。このような結果は、若年労働者の 失業率急上昇に関する一連の実証分析の結果と一致するものである。 1 はじめに 1990年代後半以降、若年失業率は大きく上昇し、1999年から2000年にかけて、25歳未満男性の失 業率は数ヶ月連続して10%前半で推移した。日米で逆転した失業率も、20歳代では特に大きく日本 が米国を上回っている。にもかかわらず、日本の若年労働者に対する雇用環境の悪化は、中高年の 状況に比べてこれまであまり社会問題化してこなかった。その背景には、たとえば「若いうちの失 業は天職探しのための投資である」 、 「扶養義務を負っていない若年労働者の失業は深刻度が低い」、 「未熟練の若年労働者の失業は社会的コストが比較的小さい」などという見解が流布していたから である。 しかしながら、若年失業者やフリーターの増加は、本人の将来のみならず、社会全体の将来にとっ ても大きな損失となる。まず、本人の将来については三谷(2001)が明らかにしたように、学卒後 直ちに正社員になった者とそうでない者を比較すれば、 賃金や雇用の安定性が両者で異なっており、 その挽回には長い時間が必要となる。また、社会全体にとって太田(2003)が示したように次のよ うな問題が生じる。 第一の問題は、国全体で技術や技能レベルの向上が阻害され、潜在的な成長力が低下することで ある。技能習得にもっとも適した若年期の失業は OJT(on-the-job training)の機会を失うことに なり、職業能力の形成が困難になる。よって、若年失業者の上昇は将来の技能・技術水準の低迷を もたらし、潜在的な成長力にマイナスの影響を及ぼすことになる。第二の問題は、若年期に失業を 経験した人は、再就職後も長い期間にわたり雇用不安にさらされ続けることにある。そればかりで *弘前大学人文学部 E-mail Address: [email protected] 21 李永俊.indd 21 04/03/05, 11:16 はない。イギリスでは、若年失業者の子供は平均的に読み書きの点数が低く、学卒後も不安定な雇 用に甘んじる傾向が強いことが判明している。つまり、若年失業は「再生産」されて行くことにな る。したがって、人々の間の経済格差が拡大し、社会が「階層化」する恐れが生じる。第三の問題 は、大竹・岡村(2000)が指摘しているように、若年失業率の増加が犯罪発生率を上昇させ、社会 不安に結びつきやすいことにある。また、第四の問題は少子化が進行することである。若年者を取 り巻く雇用環境の悪化は、子供を生み育てるための余力を低下させるために、出生率の低下につな がる。このように若年失業率の上昇は、 多くの社会問題を誘発する原因となっている。したがって、 中高年の雇用問題に劣らず深刻に捉えなければならない問題である。 若年失業率の急上昇の背景にはなにがあるのだろうか。その理由に関してはいくつかの要因が指 摘されてきた。その内容は大きく分けて労働供給側の要因と労働需要側の要因に分けて整理するこ とができる。労働供給側の要因を強調したものとしては、山田(1999)の「パラサイト・シングル 説」がある。山田氏は若年失業率の急上昇が日本に1000万人存在していると言われている「パラサ イト・シングル1」に深く関係していると論じる。彼らは豊かな親と同居することで生活を支えて もらうことができるため、 「切実に」 「生活のために」仕事を探さそうとせず、 「自分に合った職」「プ ライドの保てる職」にこだわるために、なかなか就職しないだけでなく、就職したとしても自分に 向かないと感じると簡単にやめてしまう。彼らは豊かな親に依存することで、経済的な安定を確保 し、労働を趣味化して離転職を繰り返している。つまり、山田(1999)は家族環境の変化による若 年労働者の就業意識の変化が若年失業率の上昇の一因であるという2。 他方、労働需要側から若年失業問題を把握しているものには、太田(2002、2003)や玄田(2000、 2001)などがある。玄田(2000)は、失業者の増大は若年と60才以上に集中しており中高年全体の 雇用状況は報道されているほど深刻ではないという。彼は従業員500人以上の民営事業所を対象と した実証分析を通して、大企業では45才以上の社員比率が高まるほど新卒採用を強く抑制する傾向 があることを示した。つまり、若年層に対する労働需要の低迷には、中高年の雇用維持の代償とい う側面があると主張する。また、太田(2003)は愛知県雇用開発協会のアンケート調査結果を用い た分析で、中高年の雇用維持は、若年に対する求人を減少させることを通じて、若年失業を高めて いるという。さらに、組合が組織されている企業で「置換効果」の程度が大きいことがそのような 見解を支持するものであると主張する。この他にも、労働需要側の要因に注目したものには黒澤・ 玄田(2001)や太田(1999)などがある。彼らは、不況下における若年の不本意な就業が、若年の 頻繁な離職を誘発し、摩擦的な失業を増加させているという3。 このように、若年層の失業増加要因については様々な見解が共存しており、必ずしも合意が形成 されているわけではない。また、上記に述べた多くの研究結果は、異なる雇用データを用いた実証 1山田氏の造語で、親と同居する20才から34才までの未婚者を指す。 2このような若年者の就業意識の変化による失業を山田氏は「ぜいたく失業」という。 3このような観点は「七・五・三」転職や世代効果として知られている。 22 李永俊.indd 22 04/03/05, 11:16 分析によるものであり、必ずしも若年層の失業急上昇のメカニズムを総合的に捉えているとは言え ない。従って、本稿では若年者と中高年者が同時に存在する経済モデルを通して、昨今の若年失業 問題と中高年雇用問題との関係を総合的に捉え、その背後にある経済エッセンスを模索することを 目的とする4。 より具体的には、中高年に対する手厚い雇用維持策を解雇費用の存在と捉え、非効率的に高い解 雇費用の存在が若年層に対する新規採用枠にどのような影響を与えるのかを分析する。さらに、そ のような解雇費用が存在する場合に、景気変動がどのように各世代の雇用環境に影響するのかを分 析対象とする。 本稿の構成は以下の通りである。第2節では分析の基本となるモデルを展開し、それに基づく比 較静学分析を提示する。第3節では結論とその含意を述べる。 2 モデル 考察の対象としている企業には2つの異質な仕事がある。仕事1は、新たに入社した若年労働者 によって担当される仕事で、その遂行に必要とされる技能は誰でも簡単にできる一般技能である。 仕事2は、一定の内部昇進ルールに従って昇進した前期採用の労働者によって担当される仕事で、 その遂行に必要とする技能は OJT(on-the-job training)によって継承される企業特殊技能である。 企業の生産活動においては、2つの仕事を担当している労働者が共に参加するものと仮定する。 2. 1 労働者行動 各労働者は2期間市場に参加し、全ての労働者は能力において同質であると仮定する。したがっ て、外部市場における留保賃金は全ての労働者が同じ水準の w0である。労働者は企業と2期間の 雇用契約を結ぶ。また、1期目に採用されなかった労働者は失業者となる。本稿では単純化のため に、第2期目に失業プールから新たに雇用される確率はゼロとする。したがって、市場参加の第1 期目に採用されなかった場合は、失業者として一生を送ることとなる。 市場参加の第1期目に雇用された場合は、若年労働者として生産活動に参加すると同時に訓練投 資を行い、第2期目のはじめに一定のルールにしたがって昇進されると考える。各労働者の効用は 各期の賃金と訓練投資に費やした努力に依存していると考える。単純化のために効用関数の形状は 賃金に対してリニアな関数を仮定する。 4本稿でいう「中高年」とは、厚生労働省の雇用安定事業で「中高年」としてよく扱われている40歳代後半か ら50歳代後半までの年齢層を指す。より具体的には、離職失業者数が非常に少ない45 ~ 55歳層をモデルで 扱う中高年者層とする。 23 李永俊.indd 23 04/03/05, 11:16 U =U(w,e)=w-c(e), c =0, (e*) c (0) >0, c' >0, (1) c" >0 ここで、w は賃金、c (e) は訓練投資費用、e は訓練投資に費やした努力水準を表す。またダッシュ は当該説明変数で微分したことを示す。微分に関する仮定から明らかなように、努力の上昇は不効 用やコストを累進的に増大させるものとなっている。以下では単純化のために、e は訓練投資が行 われた場合は e*、訓練投資が行われなかった場合は0であると仮定する。e* は訓練投資に必要な最 小限の努力水準である。 2. 2 雇用制約 雇用契約は各労働者に採用された第1期目に生産活動以外に訓練投資を行うことを前提に結ばれ る。第1期目に行われる各労働者の訓練投資に関して、事前的には完全なモニタリングが不可能な ものと考える。また、当該労働者と企業以外の第三者によるモニタリングは不可能なものとする。 昇進ルールは以下のようになる。まず、第1期目に訓練投資を行った労働者は、第2期目にθt の 確率で仕事2に昇進し、高賃金 w2 を受け取る。第2期目の終わりには市場から退出するため、そ れ以上の訓練投資は行わない。また、昇進できなかった労働者は当該企業から解雇され、失業者と なり w0の失業手当をもらう。本稿では、モデルの単純化と本稿の目的を明確にするために、一度 失業プールに入った者の再就職は不可能なものと仮定する。 各企業は期首に観測された商品価格に応じて生産規模を決定し、 それに従い昇進者比率を決める。 したがって、θt は期首に観測された商品価格 Pt の関数となる。また、企業側が決定する昇進者比 率θt は労働者にとっては昇進確率となる。以降では用語の混乱を避けるために、θt を昇進確率と 定義し、企業側と労働者側の両側面において統一して用いることとする。 ここで、各企業にとっての最適な雇用契約を考える。各企業は新規採用の労働者に仕事2に必要 とされる訓練投資をしてもらう必要がある。そのためには、①各労働者に対して、失業プールにい た場合に保障される生涯効用と同等の生涯効用を保障しなければならない(参加制約)。②訓練投 資を行った労働者に対しては、訓練をサボった労働者の生涯効用と等しいかあるいはそれ以上の生 涯効用を保障しなければならない(インセンティブ制約)。 ここで、単純化のために労働者が直面している割引率と各企業が直面している割引率が等しいと 仮定し、上記の2つの制約を定式化すると次のようになる。 w1-c (e*)+ρE[θ (1-θ -θt+1)w0] > t θt+1w2+ -(1+ρ)w0 (2) w1-c (e*)+ρE[θ (1-θ -θt+1)w0] > t θt+1w2+ -w1+ρw0 (3) ここで、w1、w2 はそれぞれ仕事1と仕事2に従事したときの賃金を示し、ρは割引率を示す。(2) 24 李永俊.indd 24 04/03/05, 11:16 式は①の参加制約に対応する制約式であり、(3)式は②のインセンティブ制約に対応する制約式で ある。ここで、各企業が労働者を採用し、なおかつ第1期目に訓練投資をしてもらうためには(3) と(4)の両制約式を同時に満たさなければならない。企業が自由に操作可能な変数は w1のみである ため、各企業は w0= w1であるように w1を設定する。また、各企業は人的費用を節約するために、 必ず次式が成立するように w2を決定する。 c e*) ( (e w2=―――――――+w0 ρE[ t θt+1] 2. 3 (4) 企業の利潤最大化問題 各企業は同質の1つの商品のみを生産し、その生産量は経済全体においては無視されるほど非常 に小さいものと仮定する。各企業は2種類の仕事で構成されているとする。仕事1は新規採用の若 年労働者によって行われ、比較的単純な技能のみで遂行可能である。他方、仕事2は前期採用の労 働者の内、一定の昇進ルールにしたがって昇進された中高年労働者によって行われ、その遂行には 企業特殊訓練の蓄積が必要である。各労働投入量は効率単位で計られたものである。以上から t 期 における企業の生産量 Yt は以下のように定式化される。 Yt=F(L ( t,θt Lt-1) ここで、Lt と Lt-1 はそれぞれ t 期と t -1期に採用された労働者数を示す。生産関数については、 厳密な凹関数であることを仮定する。また、本稿では単純化のために新規の労働者採用数 Lt と前 期採用者の今期の昇進確率θt は必ずゼロにはならないことを仮定する。 各企業が直面している商品価格は外生的に与えられる。外生的な商品価格は非負の確率変数 Pt であり、異なる期間の価格は独立で等しい分布をもつ。確率変数 Pt は、h(P (P) を確率密度関数とし、 [0, – h P)の平均は P で、分散は一定であると ∞]の範囲で分布すると仮定する。また、確率密度関数 (P ( Pt は事前的には確率変数であるが事後的には期首に観測されるパラメーターである。 仮定する5。P 各企業は各期に直面している商品価格をにらみながら、利潤を最大にするような新規労働者の採 用数 Lt、昇進確率θt を (4)式の下で決定する。このような企業の利潤最大化行動は、今期 t を基準 としたダイナミック・プログラミングを用いて定式化すると以下のようになる。 V(L ( t-1, Pt) = Pt F(L Max {P ( t,θtLt-1)-w0 Lt L ,θ t t ( ,P ∫ V(L f Lt-1+ρ - (C+θt w0+(1-θt)f) ∞ 0 t h P)dP} ( (P t+1) - Pt の平均 P を明示し、分散を一定であると仮定したのは、確率密度関数 h(P (P ) の平行シフトの効果を得るためである。また、一般性を失うことなく、確率密度関数の形状は、平均値と分 散のみによって十分に表現できるとする。「平行シフト」に関する詳細な分析は酒井(1982)を参照されたい。 5ここで、 確率変数である商品価格 25 李永俊.indd 25 04/03/05, 11:16 subject to θt<1 - c *) ここで、f は解雇コスト、C は (e /ρを表し、L0 は外生的に与えられるものとする。割引と確 率変数を含んだ無限期間の動的計画法(Dynamic Programming)にしたがって、6 を非負のラグ ランジュ乗数と定義し、利潤最大化のための必要条件を求める。 Pt F1-w0+ρE VL(L Pt+1) [V ( ] =0 t,P t (5) Lt-1 (Pt F2-w0+f (P +ff) ) -6=0 (6) =0 6(1-θt) (7) 上記の三つの式から、強い意味でθt が1以下になる条件は次の式で与えられる。 Pt F1+ρE V L t] Pt F2 [V -f=P - (8) この式の左辺は中高年労働者を解雇し、新たに新規採用を行った場合の期待収益である。また、 右辺は現在の中高年労働者の雇用を維持した場合の限界価値生産性である。この両者が等式で成立 した場合、企業は労働者を流動的に入れ替えることが可能になる。 ここで、本稿では前期採用者の今期における昇進確率θt が厳密に1より小さいものと仮定する6。 したがって、 (6) 式は次のように書き換えることができる。 Pt F2-w0+f + =0 (9) - f Pt 、P は外生変数であるが、これらの変数の変化が Lt とθt の決定に対しど 個別企業にとって f、 のような影響を与えるかを、 (5) (9) 、 式の比較静学分析によって知ることができる。 結果1: (邸) 解雇費用の上昇は、仕事1と2が互いに代替的であれば新規採用数に負の影響を、補 完的であれば正の影響を与える。 また、 (鄭) 解雇に伴う費用の増加は、 代替的か補完的かに関係なく、 前期採用社員の昇進確率を増加させる。 (証明) (5) (9) 、 式を Lt、θt と f に関して微分し、整理すると次が得られる。 [ Pt F11+ρEV +ρEVLtLt Pt F12 Lt-1 t-1Pt F12 Lt-1Pt F22 dLt //df df 0 ][ dθ/df/df ]=[ -1 ] t この体系をクラメールの公式を用いて解くと、次の結果が得られる。 dLt 1 ――=―― {Lt-1 -1Pt F12} df |D| dθt 1 ――=-―― {Pt F11+ρEVLt Lt} >0 df |D| 6昇進確率が厳密に1より小さいとする仮定は、全ての労働者が昇進可能であることを労働者が知ることによ り、訓練投資をサボる可能性があるため、非現実的なものではない。また、現実には個々の労動者の昇進確 率は1より小さく、その水準は経済環境の変化に影響されている。 26 李永俊.indd 26 04/03/05, 11:16 EVLt Lt は利潤最大 ここで、|D|は係数行列を表し、それが正であることは容易にわかる。また、EV 化のための2階の条件から負である。仕事1と2が互いに代替的であれば F12 が負であるために、 dLt 0となる。また、仕事が互いに補完的である場合はその逆となる。 ――< df (証明おわり) 結果1から仕事1と2が代替的である企業において、中高年の雇用維持の代償が若年層の労働需 要を低下させていることがわかる。このような結果は玄田(2000)及び太田(2003)の実証結果と 一致するものである。また、組合が組織されている企業で「置き換え」の程度が大きいとする太田 (2003)の結果は、組合が組織されている企業の解雇費用が非組織企業のそれより大きいと考えら れることから、結果1を支持するものである。 結果2: (邸) 仕事1と2が補完的であれば、新規採用の社員数は景気変動に対して循環的に変動す る。また、その関係が代替的であれば今期限りの商品価格の変化は各仕事の限界生産性の比率に依 存し、一義的には定まらない。また、 (鄭)前期雇用社員の昇進確率は仕事1と2が補完的であれ ば景気変動に対して循環的に変動するが、その関係が代替的であれば一義的には定まらない。 Pt の効果は次のように計算できる。 (証明)結果1の証明と同様にして、P dLt 1 F2 F12} ――=―― {Pt Lt-1 (-F1 F22+F dPt |D| dθt 1 F(P Pt F1 F12} ――=-―― {-F(P ( +P 2 Pt F11+ρEVLt Lt) dPt |D| dθt 0 dLt 0 F12が正であるために、――< ここで、仕事1と2の関係が補完的であれば、F と――< であるが、 dPt dPt その関係が代替的であれば、一義的には今期限りの商品価格の影響は定まらない。 (証明おわり) 今期限りの商品価格の変化が若年労働者の労働需要と中高年層に与える影響は、各企業の仕事間 の関係に大きく依存しているために、一義的に言えないということが結果2から伺える。したがっ て、短期的な景気変動が若年労働市場にどのような影響を与えるかは明確でない。 結果3: (邸) 将来における商品価格の平均の上昇は、新規採用枠を上昇させる。他方 (鄭) 前期採用 社員の今期における昇進確率は、仕事1と2が代替的であれば低迷する。また、補完的であればそ の逆である。 - (証明)同じ方法で将来の商品価格の平均 P に関して次のような結果が得られる。 dLt 1 ――=―― { Pt Lt-1 F22 EVLt P-} >0 - dP d P |D| ρ 27 李永俊.indd 27 04/03/05, 11:16 dθt 1 ――=-―― { Pt F12 EVLt P-} - dP d P |D| ρ dθt dθ 0 EVLt P- は正となる7。また、仕事が互いに代替的であれば F12が負であるために、――< ここで、EV ddpp - となる。また、その関係が補完的である場合はその逆となる。 (証明おわり) 将来の景気見通しが明るい場合は、新規採用に伴う期待収益が上昇するために、中高年労働者を 新規の若年労働者に置き換えようとする傾向があることを上記の結果が示している。その一方、成 長率が低迷している場合には、中高年の雇用者を雇用保蔵することになり、若年労働者の雇用環境 は厳しくなる。このような結果は、90年代前半のバブル崩壊後、継続する景気低迷と低成長傾向が 若年労働市場をより一層厳しくする原因になっていることを暗示している。 3 結 語 本稿では、非効率的な解雇費用の存在が中高年労働者と若年労働者の雇用環境にどのような影響 を与えるのかを理論的に分析した。モデルから導出された結果は大きく2つある。1つは、非効率 的に高い解雇費用の存在が雇用面における中高年労働者と若年労働者間の世代間対立の原因になっ ているということである。高い解雇費用の存在は、中高年労働者の雇用維持による若年労働者雇用 抑制という置換効果(ディスプレイスメント効果)を一層強固なものとし、若年層の失業増の原因 となっている。このような結果は玄田(2001)の実証分析の結果と一致している。 もう1つの重要な結果は、長期にわたる経済成長率の低下が企業の新規採用に対する期待収益を 低下させ、中高年の雇用保蔵と若年の新規採用枠の低下をもたらしていることである。日本におい て90年代後半になって、中高年の雇用調整の硬直化が若年層の雇用機会を減退させている傾向が一 層強くなったのは、将来の経済成長率に対する見通しが一層悪化したことが原因となっていること をこの結果から伺える。 以上の結果から経済成長率の低下と、日本の雇用システムに存在する非効率的な解雇費用が昨今 の日本における若年労働者層の失業率上昇やフリーター化の一因になっていると言える。超高齢化 社会での若年と中高年のベストミックスのために本当に必要なのは、高賃金や安定雇用が保障され ていた中高年労働者に対して、賃金及び雇用調整を無理なく受け入れられるようにするための雇用 システムの再構築が必要であると言える。 7この証明に関しては酒井(1982)及び李(2001)を参照されたい。 28 李永俊.indd 28 04/03/05, 11:16 参考文献 李永俊(2001)、「企業内労働市場の二重構造と内部昇進」 『経済科学』第 49 巻第3号、59 ~ 69 ページ。 太田聰一(1999)、「景気循環と転職行動― 1965 ~ 94」中村二朗・中村恵偏『日本経済の構造調整と労働市場』 日本評論者、13 ~ 42 ページ。 太田聰一(2002)、「若年失業の再検討:その経済的背景」玄田有史・中田喜文『リストラと転職のメカニズム』 東洋経済新報社、249 ~ 275 ページ . 太田聰一(2003)、 「正社員になりたくてもなれない若者たち」 『エコノミスト 2003. 3』 東洋経済新報社、96 ~ 99 ペー ジ。 大竹文雄・岡村和明(2000)、「少年犯罪と労働市場-時系列および都道府県別パネル分析」 『日本経済研究』第 40 号、40 ~ 65 ページ。 黒澤昌子・玄田有史(2001)、「学校から職場へ―「七・五・三」転職の背景」 『日本労働研究雑誌』第 490 号、 4~ 18 ページ。 玄田有史(2000)、「「パラサイト・シングル」は本当なのか?」 『エコノミックス 2000. 2』東洋経済新報社、86 ~ 94 ページ . 玄田有史(2001)、 「結局、若者の仕事がなくなった―高齢社会の若年雇用」橘木俊詔・デービッド・ワイズ偏『 〔日 米比較〕企業行動と労働市場』日本経済新聞社、173 ~ 202 ページ . 酒井泰弘(1982)、『不確実性の経済学』有斐閣。 三谷直紀(2001)、「若年労働市場の構造変化と雇用政策」 『日本労働研究雑誌』第 490 号、19 - 32 ページ。 山田昌弘(1999)、『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書。 29 李永俊.indd 29 04/03/05, 11:16 「近代憲法」と「憲法」概念の多義性、そして「実質的意味の憲法」 -「憲法」概念と憲法学(その一) 堀 1 内 健 志 序、 「近代憲法」の普遍性 2 「憲法」概念の多義性 3 「近代憲法」と人権保障規定の位置 4 「実質的意味の憲法」と<組織法・行態法> 5 残された問題点-結びにかえて 1 序、 「近代憲法」の普遍性 概念の問題はしょせんはある種の循環論ではないかということを「国家」概念の究明において、 我々は教えられている。①あの二人のキュッヘンホフによる『一般国家学』での「国家」概念の措 定作業のなかですでに論者によりあらかじめこれがある時代における「国家」なのであるとの選択 が入り混んでいてこれらを通じてそこでイメイジされたもののトータルはやはり結局はそうした時 代時代における「国家」なるものの論者のイメイジに支配されたそのものの総体でしかあり得ない のではないか、ということであった。けれども、「国家」という言葉なしには、「憲法」学は語れな いのもまた事実である。② 「憲法」概念については、こんにち、おそらくほとんどの憲法書においてその冒頭箇所で、言及 されているのが一般的である。その著しい例は、ドイツのC・シュミットの『憲法理論』に見られ ③ る。一二〇頁余りにも及ぶ第一部を全部その説明に当てているのであるから。 が、このC・シュミットの『憲法理論』は大変に難解なものなのであってわが国の多くの研究者 がこれにてこずっているのであり、ここでいまは立ち入らず、別の場所に後回しにしたい。④、⑤ そこで、ここではまず、わが国の代表的論者の説明に目を向けてみよう。 芦部信喜教授の通説的「憲法」概念見解は、なによりも教授の『憲法学』の基本姿勢と密接不可 分の関係で結ばれているものである。 教授のいわゆる「実質的憲法論」の立場から、「憲法」も導かれるのである。憲法の本質につい 31 堀内.indd 31 04/03/05, 9:55 てつぎのごとく言う。⑥ 「憲法の本質が、内容は立憲的、形式は成文、性質は硬性であることを、歴史的、思想的なパー スペクティブをもって統一的に理解することから、学習のスタートを切るべき」である。 また、 「実質的憲法論」について曰く。 「私が本書で説くような実質的憲法論(…)の考え方には、 批判的な見解も少なからずある。また、 現代の政治哲学・道徳哲学の成果を汲み取り、実質的憲法論に新しい裏づけを与えることも必要で あると思う。しかし、学業半ばにして軍務に服し、戦後新しい憲法とともに歩んできた私のような 大正時代には、憲法の原点への熱い思いがある。…」 ここで、芦部教授の「統一的に理解」すべき憲法の本質は、立憲的成文硬性憲法にある。ここに、 出発点を見るのである。近代憲法の普遍性を前提とするごとくである。 また、教授の「実質的憲法論」とはこのような内容を有するという意味であろう。したがって、 例えば、R・アレクシーなどに見られる現代法・社会哲学的な「実質的基本権論」によるものなど を直接には意味していないようである。⑦ この教授の「近代憲法の普遍性」は、 「憲法」概念についてのつぎのごとき言明にも、顕著に現 れている。 「憲法学の対象が『憲法』である以上、その意味を明らかにすることから出発しなければならな いのは当然であるが、憲法の概念・種別を類型化してその相違を説くにとどまるものが多く、その 相互の関係を歴史的に明らかにしようとする試みは意外に少ない。しかしそれでは、憲法概念を論 ずる意味も半減するであろう。私は、近代憲法は一つの普遍的な政治思想に貫かれていると考え、 一八世紀から現代にわたって多くの思想家や学者が分類した憲法の概念ないし種別をその原理との 関係で位置づけ、その意義を明らかにすることが、憲法学の出発点だという立場をとる。」⑧ 「近代憲法」が「普遍性」を有するものであるかという問題は、ひとり「憲法学」における問題 のみに留まるものではなく、より広範な哲学、思想史上の一大問題である。⑨二一世紀への転換の 時代にここにわかにこれまでの伝統的法思考・理論が現実の諸問題の解決にそのままではとうて い適用できないという事態があらゆる場面で生じているように見受けられる。そこでは、伝統的知 識の認識ではなく、どのように対処すべきかという政策論が前面に出てきているのである。先が読 めない時代を迎えているのである。但し、かといって「近代憲法」の諸理論がここで直ちにそれが 一九世紀の特殊西欧社会にのみ通用した時代遅れの、歴史的遺物だとして、捨て去って良いという ことではないであろう。 かような意味において、芦部教授の「近代憲法」の「普遍性」の主張は、それじしんは、貴重な 立場であり、特に個人の自由・平等が、永年にわたる人間の獲得に向けたる努力の成果、人間の英 知なのであって、たとえ、それが現代の開かれたる討議を前提とした競争社会であると言ってもこ れらをやすやすと捨て去って良いということにはにわかに賛同し難いものがある。弱者への配慮に 欠けるところがあってはなるまい。 32 堀内.indd 32 04/03/05, 9:55 けれども、他方においては「近代憲法」の諸々の法規範が今日の社会的現実に適切に有効性を維 持しているのかとなると、先にも触れたごとく決してそうとは言えないのであり、新たな政策的処 方箋を求めている所謂である。かかる事態をいかに把握すべきかは、一大研究テーマ足りうるもの であるし、少なくとも「近代憲法」以前の憲法史研究もまたそれを考えるための基礎作業であると 言ってよいであろう。 佐藤幸治教授は、 『憲法』の第一版はしがきにおいて「本書を貫く基本的なトーンがあるとすれば、 それは筆者の…立憲主義へのアフェクションであろう。本書が、『裁判所と憲法訴訟』を独立の編 として、かなりの頁数をさいたのも、そのあらわれである」と述べられている。ここでの法の存在 理由は、 「人間実存の多様性と無秩序を愛しみつつ、それに一定の秩序を付与し、『無秩序』と『秩 序』との間に均衡と適正な緊張関係を保持することにあるのではないか、新しい展望も交差光線に 照らさなければ間違ったものになる危険があ」るといった捉え方への共感に根ざすもののようであ る。そして、かかる「立憲主義へのアフェクション」はその後の、新版はしがきにおいて、「ます ます強くしている」 。そして、第三版⑩はしがきでは「困難な時代環境の中にあって、立憲主義の 考え方をいかに維持実現して行くかという課題がますます微妙かつ重要になってきていることを痛 感し」つつ、 「立憲主義へのアフェクション」に基づく「本書の基本的骨格は…少しも変っていない」 と言われる。 ここで、 「立憲主義へのアフェクション」は、芦部教授に見られる「近代憲法の普遍性」とまで は行かないものの、さような原理の重要性を強調したものと見られ、かかる基本原理のもとで憲法 解釈論が展開されるのである。 我々は、本稿で「憲法」概念そのものを扱おうとするものではあるが、その際にも「近代憲法」 の位置づけに意を用いなくてはならないのである。 樋口陽一教授は近著『憲法Ⅰ』において、その歴史的制約性に言及されている。 まず、 「国家」概念について言う。卯 「 『国家』という言葉で普通にひとが想定するものも、実は、それ自体、近代的なものである。『古 代都市国家』 『中世国家』という言葉の使い方があることはたしかであるが、領域・人民・集権的 権力という三要素から成り立つとして説明される国家は、けっして、超歴史的な存在ではない。今 日、 『国家』を表わすヨーロッパ語系の言葉 Status(英)、Staat(独)、Etat(仏)は、ラテン語 の Status を語源とするが 、この系統の諸国家の用法のうち最初に登場したのは、一六世紀イタ リアの Stato であり、マキャヴェリの『君主論』の冒頭でこの言葉が使われた。慣用化するのは 一六四八年ウェストファリア条約以降だとされる。」 「国家」概念じしん近代の産物だというのである。そして、この「近代憲法」が、まさにその構 造的危機に直面しているようである。鵜 「近代憲法・憲法学は、そのような国家によって権力が原則的に独占されている社会のありよう を前提にして、成立してきた。 」そして、「主権」も「人権」もその集権的国家と個人を前提として 33 堀内.indd 33 04/03/05, 9:55 いたのである。 それに対して、 「いま、国家の枠組の内側と外側とで、国家の権力と並存・競合する権力が、ひ とびとに強く意識されるようになってきている。」「いま、憲法・憲法学は、近代の枠組を基本的に 維持し、国家=政治権力と国民との間の関係を中心にすえながらも、一方では、国際法との接点に 次第に大きな関心を払い(たとえば人権の国際的保障)、他方では、社会的権力のあり方を多かれ 少なかれ問題にしなければならなくなっている(たとえば、権利論の領域で、憲法上の権利の私人 間効力による、社会的権力へのコントロールの問題であり、統治機構論の領域で、権力分立の担い 手としての社会的権力に対する期待、など)。…」 もちろん、 樋口教授にあっても、 「立憲主義」は「何より権力に対する抑制のシンボルであるから、 デモクラシーの高揚期には、出番がな」く、また、「たとえば社会主義への期待が知的環境のなか で有力であるような」 「学説・思想」のうえで「進歩」への「期待がそれへの懐疑より優勢である ような時期」にも、 「表舞台にはあらわれてこない」のであり、教授の最初の著書を『近代立憲主 義と現代国家』と標題をつけたのは、 一九六〇年代の知的環境の反映ではなくて、 「現代」批判の「引 照基準」として「近代」を援用するという「異論提起」の意図があったと告白されている。窺 さて、 「近代憲法」 を普遍的なものとしてみるか、 時代制約的なものとしてみるか、 いずれにしても、 今日の通説的憲法書は、これを中心的な位置において展開していることにはさほどの違いは見られ ない。かのC・シュミットの『憲法理論』ですらその中心的な部分は、ヴァイマール共和国憲法の 「近代憲法」を分析・展開したものであるのだから。 では、そこで「憲法」概念はどのように説明されるのであろうか。それを具体的に見ていくこと にしたい。 2 「憲法」概念の多義性 多義性と言うとき、この日本語である「憲法」なる言葉の意味の多義性とこの語源とされるいく つかの欧語の用法の多義性ということがありうるが、一般には、この区別をしないで両者がリンク されて同様の問題として議論される。 「憲法」 の語義について、 もっとも論理的に緻密な説明をしているのは、 小嶋和司教授の 『憲法概説』 丑 であろう。 教授によれば、まことに多義的なこの「憲法」の語は、なかんずく、1「現在、法学の対象とさ れる『憲法』は、 英仏語の constitution(ドイツ語の Verfassung)の訳語としてのそれであ」り、 「複 数素材からする組成ということで、構造・構成・組織」と訳すべきもので、特に国家のそれにつき 「constitution の語じしん多義的にもちいられるため、その訳語としての『憲法』の語も、原語の 多義性を継承することとなった」として、まず、つぎの三つの用法を挙げる。ア「constitution の 語義さながらに、国家または政府の構造・組織の秩序」を指す。「国家あるところ、憲法あり」と 34 堀内.indd 34 04/03/05, 9:55 いう場合の「憲法」 。 「古代アテネの憲法」「古代ローマの憲法」というふうに用い、これを「本来 的意味の憲法」 「実質的意味の憲法」と言う。イ、アの意味の「憲法」のうちとくに「立憲主義を 内容とするもの」を指す。 「英国は憲法の母国である」という場合がこれであり、「立憲的意味の憲 法」と呼ぶ。ウ「国家構造・政府組織を規定する、ある種の制定法」の意。これはさらに次の三基 準によって判別されるが、 いずれかの意味で「形式的意味の憲法」と呼ばれる。a制定法の「表題」 が「憲法」となっているもの。 「日本国憲法」はこれである。b制定法の内容が、「本来的意味の憲 法」の概要を叙述するもの。 「ドイツ連邦共和国基本法」はこれである。c制定法がもつ「法的権威」 に着目するもの。第三共和制フランスの複数の憲法的法律がこれである。 2「法以外のもの、 すなわち国家または政府の組織の実態・事実的決定要因など」を指す。C・シュ ミット の「政治的統一体の形式および様式の総体決定」、 W・バ ジョットの国政の実態のあり方、 F・ ラサールの「 事実的権力関係」のなかにこのような要因が認められるごとく、註引がある。 憲法学の対象となる「憲法」は、うえの1、2およびその前提となるべき「国の基本法」である と言う。 以上のごとき小嶋教授の「憲法」語義の説明に関しては、次の点が注目されうる。まず第一に、 全体的に見て、実質的憲法、立憲的憲法、形式的憲法という三分法は今日ほとんどの教科書におい て採用されているお決まりのものである。 が、たとえば芦部教授のように近代立憲主義的憲法の普遍性という視点からのまとめ方は、小嶋 教授には見られない。 第二に、 「憲法」 を英仏語の constitution、 ドイツ語の Verfassung の訳語とすることも、 芦部、 佐藤、 樋口の各教授の指摘することと事実の認識は違わない。 が、たとえば芦部教授によれば、確かに「ギリシャ、ローマの時代から中世の時代にも、今日の constitution に当たる言葉(constitutio,constitutiones)があ」ったが、その意味は必ずしも同じ ではなかったと言う。constitutio は、 「本来は制定法 を意味する言葉で、二世紀以降用いられた複 数形の constitutiones は主権者の制定した法規集の意であ」り、時代により国により、あるいは観 点の相違により、種々の意味に用いられてきた。」碓 また、さきの樋口教授の「国家」じしんが近代的なものとすれば、「古代アテネの憲法」などと 言うような「本来的意味の憲法」 「実質的意味の憲法」というのは、 余り大きな意味を成さなくなる。 はたして、しかし、初宿教授の言うごとく「憲法より前に国家はなく、憲法を越えて国家はない」臼 とまで断言する「憲法」論で十分であるかはなお吟味しなくてはならないであろう。 第三に、学説は、一様に「憲法」が、constitution,Verfassung の訳語であると認 めているが、 ではこの両者の関係はどういうものであるのかについて、ほとんど言及がない。両者は全く同一語 と言うのであろうか。 芦部教授は「ドイツではこれ(constitution)を Verfassung と言いかえた」と述べるが、その 意味はどういうことなのか。 35 堀内.indd 35 04/03/05, 9:55 芦部教授がこの訳語は「明治六年頃から使われ出したと言われている」と述べ、小嶋教授は「明 治七年の大久保利通日記、林正明訳『英国憲法』『合衆国憲法』、箕作麟祥訳『仏蘭西法律書・憲法』 にこの訳語の先蹤がある」とし、また、他方で国会制定法のことを紹介して慶応四年刊の加藤弘之 『立憲政体略』がこれを「憲法」と呼んでいると言う。 しかし、ここでいったい「憲法」がどのような意味のものとして、訳語が当てられたのか、必ず しもはっきりしていないようにみえる。 佐藤幸治教授は次のように述べている。渦「憲法」の語は、 「明治維新後、 英語の constitution(仏 語も同じ)の訳語として」 「国家の基本にかかわる根本法」という意味で「新しく登場したもので ある(例、林正明訳・合衆国憲法) 。 」ここでは、「国家の基本法」の意味で「憲法」の訳語が当てら れている。 ところが、 他方では「徳川末期に constitution に接して以来、 それにあたる言葉として『国憲』、 『政 規』 、 『国制』 、 『政体』など様々のものが案出されたが(明治維新直後に公布された『政体書』は constitution に相当するもの) 、明治一五年の頃より公定用語として『憲法』の語が使用されるよ うになり(伊藤博文を『憲法取調』べのため欧州に派遣するにあたっての勅語の中に、『憲法ニ就 キ其淵源ヲ兼ネ其沿革ヲ考ヘ其現行ノ実況ヲ視…」とある)、明治二二年に『大日本帝国憲法』が 公布されるに及んで、constitution に相当するものとしての『憲法』の用語が決定的なものとなっ た」と言う。 ここでは、前半は「国家の基本法」という意味で constitution が念頭に置かれているが、後半 では「憲法典」の意としての constitution の訳語が公定したということが述べられている。 が、さらにはつぎのようにも述べられる。「constitution はラテン語の constitutio に由来するが (constitutio は、皇帝の制定法とか、後には教会の規則などを意味した)、当初は国家の法一般の 意味で用いられたようである。しかし、 国家の全法秩序の中には、 より基礎的な根本法 (fundamental law)があるという観念がイギリスにおいて成立し、それとロックに代表される自由主義的な近代 自然法思想における社会契約の観念とが結合して、ここに国家の根本法としての近代的な憲法観念 が成立し、そのような姿において constitution が徳川末期にわが国に入ってきたのである。」 ここで述べられている constitution は、まさしく「近代憲法」に他ならない。こうなると徳川 末期にわが国に入ってきた「憲法」は、近代的、constitutional な「憲法」という形容詞つきの、 または形容詞化された内容物ということになるのではなかろうか。 第四に、うえのどの論者にあっても、小嶋教授の分類法の1のアの「実質的意味の憲法」と2の 実態・事実的決定としての「憲法」とを区別している。が、この点はそのように判然としているの だろうか。 樋口教授によれば、 「ヨーロッパ語系での Constitution ないし Verfassung は、その辞書的意義 である『構造』という語が示唆するように、もともと、基本的な統治制度の総体を、または、統治 制度の構造と作用について定めた法規範の総体を指しており、前者に対応する日本語としては『国 36 堀内.indd 36 04/03/05, 9:55 制』が使われ、 『憲法』というときは、後者すなわち法規範を指すのが普通の用法である。」「その ような文脈で『憲法』という言葉が使われるとき、『実質的意味の憲法』と呼ばれる。」嘘 が、 「基本的な統治制度の総体」というのは、それじしん無秩序ではあり得ず、「制定」されたも のでなくとも一定の秩序に基づいて統治されている状態を言うのではなかろうか。この状態と「法 規範の総体」とは、どのようにして判別しうるのであろうか。「形式的憲法」との関連で「在る法」 から「創られる法」へという転換について自覚的に言及されているが、唄そうすると、教授の言わ れる「国制」は、およそ「国家あるところ憲法あり」という「実質的意味の憲法」ですらない、で は何なのであろうか。 この点は、佐藤教授においても同じことが言える。教授も「…実質憲法とは、…成文形式で存在 するか否かを問わず、およそ国家の構造・組織および作用の基本に関する規範一般を指す」として、 「規範」に限定している。そして、 この意味で「およそ国家あるところすべてに存在する」 という。欝 しかし、第五に、うえの constitution、Verfassung に含意されている「国制」或は「事実状態 としての憲法」について、たとえば佐藤教授のごとく、ラサールやシュミットを引きつつ、「これ らの所説は、政治的激動期において主張されたものであり、憲法が『政治』と深いかかわり合いを もつことを鋭く指摘したものといえる。しかしながら、憲法の本質をそのようなものとしてのみ捉 えることは、憲法が『政治』にのみつくされ、憲法学を『政治』の侍女たらしめる危険を内包して いる点は看過できない。日本語としての『憲法』は法規範のみを示唆し、constitution を必ずしも 正確に表現しているとはいい難いが…安易に事実と混同することがあってはならない…」としてい 蔚 るところは、 「憲法」における規範と事実との関係に絡んで様々の問題を孕んでいるように見える。 いまここで、深入りできないが、私見によると、Sollen といえども Sein des Sollens という実態・ 事実的決定要因は、実定法であるかぎり、つねに不可欠ではないだろうか。これが、はたして両者 分断可能な関係と断定して良いのだろうか。 「憲法」概念について、たいていの憲法書で、その冒頭で惰性的に扱われているにもかかわらず、 そのことが実に多くの問題を孕んでいるということに注意を喚起したいというのが、稿者の意図す るところである。上に述べたことは、その一部分に過ぎない。さらに節を改めて、そこに潜む問題 点を検討することにしよう。 3 「近代憲法」と人権保障規定の位置 芦部教授のごとく「近代憲法」の普遍性の立場からは、「憲法」にとり、「国家の構造・組織の基 本秩序」よりも、これを制約する「国民の自由を保障する政治秩序」がより重要であった。この点 がはっきりしないところに「一つの検討を要する問題がある」ことになる。鰻そして、これを「固 有の意味の憲法」と関連づけて次のように述べている。 「…統治機構という各国・各時代にほぼ普遍的に存在する特性が権利保障要素から分離され、実 37 堀内.indd 37 04/03/05, 9:55 質的憲法概念の中心に置かれることになった。それは、いかなる統治機構も constitution になる、 という考え方である。したがって、権利保障を中心とする本来の constitution 概念は、『すべての 0 0 0 0 0 国に憲法は存する』という場合の憲法(固有の意味の憲法)を中心とする普遍的概念の従たる地位 0 0 0 0 0 0 としてしか認識されず、 『近代市民革命とともに特定の権利保障の意味で用いるのが慣例になった』、 0 0 0 0 という趣旨で説明されるにすぎなくなった。それは、『すべての国に憲法は存する。しかし、その うちのある国が立憲的(constitutional)である』、という憲法論にほかならない。そこに従来の憲 法概念の捉え方の大きな問題点があるように思われる。」姥 芦部教授は、このような憲法観を克服することが、第二次大戦後の憲法学に課された最大の課題 であるとして、本稿冒頭のごとき立憲的・成文・硬性憲法を constitution の本質として措定され たのである。 この結論についてここで、取り立てて問題にするのではない。しかし、このなかに伏在する構成 上の疑問点として、 「実質的意味の憲法」である「国家の構成・組織の基本秩序」をただちに「立 憲的意味の憲法」の二大構成要素である「権利保障の政治秩序」と「統治機構」のうちの後者、つ まり「組織法規範」と同一視、ないし結合して立論し、そのような意味での「実質的意味の憲法」 じしんを批判していることが挙げられ得よう。 立憲主義憲法のもとでは、それが憲法典に規定されるかどうかは別として、「権利保障」が確保 されるべきことは、まぎれもなく重要不可欠の「国家の構成・組織の基本秩序」でなくてはならず、 これが、普遍的概念の従たる地位としてしか取り上げられないということではあるまい。 事実、かかる憲法学においては、樋口教授の言う「国民と国家権力の関係に関する規範」厩 は、 いわゆる「基本的人権」論として憲法学の一大支柱を成しているのである。さらには、その現代国 家的変容として違憲審査制度が導入されることにより、いまや「いわゆる基本権または自由権の」 カタログは、その違憲審査制とともに憲法学の前面に登場しているのである。 4 「実質的意味の憲法」と<組織法・行態法> 実は、しかし、このような「実質的意味の憲法」たる「国家の構成・組織の基本法」と「立憲主 義的意味の憲法」上の「組織法規範」との結合論は、一人芦部教授にのみその責任を問うことは出 来ないように見られる学界の状況が存するごとくである。 たとえば、 「憲法と憲法典」に関する一連の研究を遺された小嶋教授に次のような言明がある。 「憲法典が本来的規制事項とするのは『統治組織』のありかたであ」り、たとえば「国民の基本 的権利の保障」のごとき「統治作用の内容」はそうではない。浦 ここで、教授が他方で「国家の構造・組織の基本秩序」を憲法典の本来的規制事項となすことか ら、 「近代憲法」の二大要素のなかの「統治組織」のみがその「国家の構造・組織の基本秩序」に 該当するのだというふうに考えられていないだろうか。 38 堀内.indd 38 04/03/05, 9:55 ここで、さきの樋口教授の説明でもはや不要かもしれないが、さらに、稿者がしばしば思い起こ す、G・イエリネクの「実質的意味の憲法」の意と解せられる「国家の憲法」の定義を引いておこう。 それは、 「たいてい、国家の最高機関を示し、それらの創設方式、それらの相互関係、それらの権限、 さらにはその国家権力に対する個人の基本的地位を確定する法命題を含む」というものである。瓜 ここで、国民の権利保障に当たる「国家権力に対 する個人の基本的地位を確定する」法規範が(も ちろん、そこですべて法制度上の国民による請求権が認められていたということではなく、その意 味では組織法的側面が強かったことは当然であるが)確かな位置を占めているのである。 したがって、芦部教授に見られるごとく「近代憲法」上最重要な国民の自由・権利保障が含まれ ていないと言って「実質的意味の憲法」を非難することも、 また、 「実質的意味の憲法」の立場から「近 代憲法」上の「統治組織」のみがその必須の要素であるとする見解も、何れも正当ではないという ことになろう。いくつかの憲法概念を分類の基準を正しく維持したうえで理解をすることの意味は ここにもあることを指摘しておきたい。 但し、ここで、さらに次の点はとくに看過してはならないであろう。 第一に、 「近代憲法」にとり、確かに「国民の権利保障」と「統治組織」とが二大構成要素であ るけれども、近代のヨーロッパでは、 「立法権」が制定する「法律」が国民の一般意思を具現する ものとしてその両者を結合する役割を果たしていたのである。それ故に、この「国民の権利保障」 はなによりもまず「法律」によって定められるべきものとされた。そこでは、「憲法典」はそのた めの「統治組織」 、なかんずく「立法手続」を定めることが要請されたのである。このことが「近 代立憲主義の合理形式」と考えられたのであった。 たとえば、C・シュミットによれば、 「議会制立法国家の成文憲法は、原則的に、組織的・手続 法的規律に限定されねばならない。 」というのは、ここで成文憲法が、唯一の実質的法創設者たる 立法者の先回りをし、この役を演ずることがあってはならないためであり、かつ、そのことがリベ ラルで、機能的なる制度の中立性に適合的なのである。閏 また、H・ケルゼンを引きつつ、 「組織規範」 を「狭義の憲法」、 「いわゆる基本権または自由権の目録」 を「広義の憲法」とする噂樋口教授も、次のように述べていた。 「近代立憲主義確立期における憲法の本質的任務は、法律の内容を指示することにあったのでは なく、その定立の手続を定めて立法権を議会に留保するところにあったのであり、そのような手続 上の憲法的保障のもとで、そして、内容的には憲法による拘束から自由なものとして、議会によっ てつくられる法律が、権利保障のにない手としての役割をはたしたのであった。」「法律による人権 保障にかわって、法律を内容的に規律する硬性憲法による人権保障、実効性を確保するための装置 としての違憲審査制の問題が前面にあらわれてくるのは、学説のうえでも実定憲法のうえでも、近 代立憲主義の現代的変容期に入ってのことである。」云 この種の引例には事欠かないのである。そして、芦部教授じしん、このことは十分に承知のとこ ろである。いわく、 「ただフランスでは、『法は一般意思の表明である』(一七八九年人権宣言六条) 39 堀内.indd 39 04/03/05, 9:55 という思想が強かったので、憲法と立法権の作品である法律との質的区別(すなわち憲法の最高法 規性)が必ずしも徹底していなかったことが、アメリカの憲法思想と異なる大きな特色である。」運 また、そうであればこそ、芦部教授は、初めに述べたごとき、立憲的・成文・硬性憲法を、あえて 「近代憲法の特質」として、確立せんとされたのであろう。 第二に、 「近代憲法」と直接関連させないで、「国家の組織法」が「憲法典」上、実定憲法解釈に 際して、より基本的なものであり、重要視されることがある。 小嶋教授によれば、まず一つは「憲法典の保障する集会・結社・表現等の諸自由や団体行動権の 行使」よりも「国家の存立」がヨリ基本的な価値とされる。雲 二つには、いわゆる「旧憲法下の法令の効力」の問題に関連して、「憲法典のあたらしい制定は 組織規範の改変にすぎないから、そのことが当然に従来の法令を無効化するものではない。」荏「憲 法典が民法の世界の法的効力を基礎づけたり、法的権威づけをなすものではない」餌と述べられて いる。 個別わが実定憲法の解釈論上の問題に対して、ある種の国家・憲法典の認識論的なはっきりした 言明が与えられていることには、驚嘆せざるを得ないものがある。 但し、それらが、どのような思考経緯を経てもたらされたものであるのかについては多くを明示 されているわけではないので、 ただかかる言明が結果的に現実妥当的であることを認めるほかない。 しかし、後学の一研究者としては、それらを自らに課されたる課題として、その筋道を科学的に自 らの方法で辿っていくしかないのである。実は、このようなコンテクストに立って、究明を試みた のが、稿者のW・ブルクハルト研究及び<組織法・行態法>研究のねらいの一つでもあったわけで ある。叡それについてつぎに少しく確認しておくことにしたい。 公法学で、例えば行政法学上、行政組織法と行政作用法といった区別が一般に行われている。憲 法学でもうえの論述においてすでに見たごとく国家統治組織と国民の権利保障といった対置がなさ れる。ここでは、つまるところ国家・行政機関の権限を定める法と国民・国家間における国民の地 位を定め、権利を保障する法とがあるということを前提としている。このような法の区別は、もち ろん公法学においてのみ見られるのではなくて、私法においても用いられ、また法哲学上も研究の 対象とされてきたものである。社会が複雑に多様化するに連れてこれらの区別が一層複合的・多種 的になっていくのである。 公法学においては、従来とくにW・ブルクハルトの業績が顕著であるので、彼のものが念頭に置 かれて議論されているのである。 W・ブルクハルトは、これを<組織法・行態法>という対置で検討している。詳しい説明はここ では省くとして、本稿との関連で、なかんずく「組織法の行態法に対する先行性」を主張し、そし て「憲法」の語について「形式的意味の憲法」「近代立憲的意味の憲法」という用法もあるが、「以 下において、 我々は」 「国家組織を形成する諸規範」の意味で「憲法・憲法法の語を解する」となし、 次のように述べているのが、注目される。営 40 堀内.indd 40 04/03/05, 9:55 一方では、 「憲法典」は「国家の最高官庁の組織」を内容としても、「組織法」のすべてを網羅 することは不可能であり、下級行政官庁の組織は行政法へ委ねられる。最小限、立法者さえ組織さ れれば、 「基本法により未完のままにされている国家組織を完全なものにするのは、…立法者の義 務である。 」他方では、国家の基本法たる「憲法」に与えらるべき、権威と通用力(Die Autorit寒t und die Geltungskraft)に 関与させ、立法者の裁量から遠ざけるために、「憲法典」中に、たとえ ば、信教の自由、私有財産の保障…など、 「組織法」以外の諸規定もくみ込まれることになった。「こ のすべてのものが、そのとき、憲法と同様の通用性を享受する。しかし、それは、憲法の本来の対 象に…属しない。 」 こうした認識を、 「憲法」と「法律」の規制・所管事項の憲法問題を意識して、言い換えると、 「権 利命題(Rechtssatz)を立法者が定立する。憲法は、すべての行態規定(組織のそれとの対比に おいて)を立法者に委ねうる。 」嬰「…憲法から、その性格をうばうことなしに、すべての非組織法 をとり去ることはできる。が、逆に、すべての組織法をそうすることはできない。 〝憲法〟 がもはや 国家の組織原則を含まぬとしたら、それはもはや憲法ではないであろうし、また、我々がそれに認 めてきた基本法の通用力を享受しないであろう」影という帰結になる。 このようなW・ブルクハルトの所説を、どのように受けとめるべきであろうか。一般法理論とし てこれを普遍化しうるのか。かかる問いに対して、稿者はノーと解答した。ただ、「立憲理論」上 映と の一つの「持続的構造連関」 (die bleibenden Strukturzusammenhaenge der Rechtsordnung) してなお有用であると考えたのである。 その理由をごく簡単に要約して述べておきたい。まず第一に、W・ブルクハルトじしんこの<組 織法・行態法>の区別は、私的自由が存する社会においてのみ意義を有し、完全に社会化された国 家においては、もはやその自由、つまり「権利命題」を法律で規定することの意義は失われると考 えているのである。すべての社会的活動が国家化されるなら、「一は組織規範、他は実質規範であ るような二種の異なる規範間をもはや区別しないであろう」曳と述べている。 第二に、<組織法・行態法>はともに「法規範」である以上究極的に、aはXをすべし、という ごとく、ある人間の行態を規律するものである。そのなかをさらに区別する基準はA・ロスも言う ごとく、厳格には普遍妥当的なものはなく、所与の法体制との関係で相対的なものである。栄 機関の権限規定も最終的には機関たる者の人間の行態を内容とするものであり、また市民の行為 や権利・自由の保障も決して生物学上の人間ではなく法的人格に対する規定であってこれも最終的 には人間の行態を内容とするものであり、それらの辿る法規範群の複合性に径庭が存するにすぎな い。永 第三に、けれども、W・ブルクハルトは、この<組織法・行態法>の区別を単に純理論的に認識 することを目的にするのではなく、 先に見たごとくこの「組織法」を「憲法典」の所管事項となし、 行態法のなかの特に「権利命題」を立法者の所管としているのであり、かかる構成はまさしく「近 41 堀内.indd 41 04/03/05, 9:55 代立憲的意味の憲法」の内容そのものである。泳 「権利命題」は、 「組織法」に比べれば、ヨリ直接に市民の権利・自由に係わる。相対的な区別で はあってもそこに「近代憲法」は前者を国民の代表である立法者になる「法律」の排他的所管事項 となしたのである。 第四に、このようにして、W・ブルクハルトの所説を「立憲理論の合理的形式」だと考えた場合 に、次に、それではこの所説からもたらされるそのほかの諸帰結と、小嶋教授の言明とはどのよう な関係になるのであろうか、ということである。これについては、さらに、次に改めて検討する。 小嶋教授は、前述したごとく、たとえば、「憲法典上の国民の権利保障」よりも「国家の存立」 がヨリ基本的な価値である、とされた。 実は、W・ブルクハルトにおいても、これに近似する発言が認められる。いわく、「…国家じし んをまもる規範は他のそれに優越すること。」ここで、平穏、秩序に関する規定と出版の自由に関 する規定が異なる価値序列を成していることが意味づけられている。そして、「国家が存しないな ら、他のものの擁護も無に帰するのであり、国家は権利の番人なのであるから。そして、このこと は、組織法が行態法に先行するという主張を確認することになるのである。」洩 結論的には、小嶋教授のものと同様である。が、W・ブルクハルトはこれを「組織法の行態法に 対する先行性」の確認として位置づけている。 もう一つ。 「旧憲法下の法令の効力」 について、 小嶋教授は 「憲法典」 が「組織規範の改変にすぎない」 から「民法の世界の法的効力を基礎づけたり、権威づけをなすものではない」としていた。 この点については、W・ブルクハルトに次のように述べるところがある。 「国家の組織は、実質法が改変しても、非常にしばしば変わらずに存続することがある。しかし、 憲法が変わるときには、つねに実質法も問題とされる。 実際には、これとは反対に、実質法がつねに変革されるわけではない。実質法はしばしば、これ がそのもとで成立したところの憲法よりも長く通用する。すなわち、憲法は改革し、実質法は変わ らずに存続するのである。このことは、フランスの民法や行政法のことを考えてみさえすればわか るのである。しかし、実質法が、新しい憲法に抵触するときは、さらに継続して通用する法名義を 有しない。 」瑛 ここで、 「実際には」以下の箇所は、小嶋教授の結論と違いはない。が、その前の箇所は、W・ ブルクハルトの、実質法の通用には、その前提として憲法が必要である、という彼の「組織法の行 態法に対する先行性」の立場の帰結であるから、「実際には」以降の説明は、<憲法典・法律>間 における、いわば「現実機能的な実定的規制・所管関係」を述べたものと解しうる。 もし、このように理解することが出来るとするならば、ひるがえって、小嶋教授が「国家の存立」 を語り、 「国家の構造・組織の基本秩序」を憲法典の本来的規制事項であると言われる、その議論 のレヴェルも、 「国家学」的な認識としてではなく、実定憲法論上の説明として、そのような言い 42 堀内.indd 42 04/03/05, 9:55 方が現実妥当的でかつ説得力があるはずだという、ある種の修辞学的性格を持つものではないかと いう推測が働く。 しかも、<憲法典・法律>に係わる諸問題において、「国家」、「憲法」が用いられる場合、それ は決して古代ローマや中世の国家のことではなくて、やはり「近代立憲主義国家」の憲法史の展開 を視野においてのものと見て良いのではなかろうか。 うえのごとき、 いくつかの憲法問題を考えてきて、 稿者がかねて「立憲理論」に通ずるいわば「持 続的構造連関」と称してきたものは、大略以上のような思考経緯を経たものであった。盈 したがって、国民の権利・自由の規定、それ故に「権利命題」の定めは、「憲法典」の優位・制 限を受けつつ基本的には「法律」の所管と考えるべきであるし、旧憲法時代の国民の権利義務を定 めた法律は、たとえ新憲法におけるヨリ民主的な立法手続によって制定されたものでなくとも、そ の法内容が抵触しないかぎり新憲法典のもと、経過措置の法理のもと、見直すまでの間はなお有効 と考えうるものである。これが「立憲国家」の進展に適合する現実機能的な解釈・合理的形式だと 言いうるのである( 「憲法」は「組織法」なのだという言い方も、このレヴェルでも現実機能的な 実定法論的表現ということになるだろう。 「行態法」 を含み得ないとは断言できない穎)。ここでの 「国 家」はこうした憲法問題を考えるための一つの前提ないしフレームであると言ってよいものではあ るまいか。頴 5 残された問題-結びにかえて このような問題関心こそ、本稿において、ではさらに広く「憲法」概念(史)の議論が、こうし たいきさつに対していかに、またどのように関連づけられ得るものかという方向へ稿者をして向か わしめるもとになった事柄である。 無論、本稿で論じ足りない問題も多く残されている。その一つには、「実質的憲法」と「国制」 との関連がある。この両者は同時存在的なものか、或いは二者択一的な方法論的なものに帰するの かというようなことである。また、さらには「近代憲法」が主としては権限抑制的な原理であるの に対して、 ではその抑制原理を成り立たしめている権力形成的な「国家」の基本秩序というものは、 「憲法」概念論上どのように位置づけられ得るものなのかというような問題が残されている。これ らについては、別稿において「憲法」概念成立史の検討を通じて考察を続けることにしたい。英 注 ①簡単には、堀内『憲法(改訂新版)』(信山社、2000 年)29 頁。Vgl. E. und G. Kuechenhoff, Allgemeine Staatslehre 4. Aufl. 1960. かかる「国家」概念の問題については、以前故小 嶋和司教授の「国法学」講義 で学ぶ機会があった。この講義ノートを稿者が預かってはいるものの残念ながら今ではこのまま公表し得 43 堀内.indd 43 04/03/05, 9:55 る状態にはない。 ②平成 13 年度の日本公法学会は「国家のゆらぎ」を統一テーマに掲げて報告が行われた。国際化、情報化そ して地域主義・地方分権等などの近代主権国家がさまざまの方向から挑戦を受けていることを共通理解と してのものである。が、それによっても「国家」 、 「憲法」といったものが研究される意義を決して低める ことになるものではないであろう。 ③とりあえず、Carl Schmitt, Verfassungslehre, 1928 尾吹善人訳『憲法理論』 (創文社、1972 年)参照。 ④その様子について、菅野喜八郎『論争憲法-法哲学』 (木鐸社、1994 年)の 193 頁 以下の「C・シュミットの憲法概念について」の箇所を参照されたい。なお、最近の研究論稿としては、 樺島博志「法における決定と秩序」(上)、 (中) 、 (下)自治研究 75 巻6、8、11 号(1999 年)などがある。 ⑤「憲法」概念に関する文献として一般の教科書のほか、堀内『立憲理論の主要問題』 (多賀出版、1987 年 )314 頁 引 用 の も の を 参 照。 さ ら に、 近 年 の も の と し て、Heinz Mohnhaupt und Dieter Grimm, Verfassung-Zur Geschichte des Begriffs von der Antike bis zur Gegenwart 1995, H. Vorlaender, Die Verfassung 1999, Peter Unruh, Der Verfassungsbegriff des Grundgesetzes 2002, Creifelds Rechtswoerterbuch 16. Aufl. 2001"Verfassung" などがある。このうち、第一者については後で別の所で詳 しく検討する。第三者でペーター・ウンルーは、基本法の憲法概念がアメリカ、フランス革命にまで遡る 人間の自律の一般的観念、自己決定、自由、平等から由来するものとなす。憲法概念の要素として憲法の 妥当根拠、妥当様式、形式に関する構造要素と具体的内容的確立を含む実質的概念要素とを挙げるが、憲 法理論的及び方法論的問題と並んで、とりわけその憲法概念の歴史がこの巻の前面に立っている。 最後者のクライフェルツ法学辞典では、憲法の「国家の基本秩序」という実質的概念と近代的憲法及び 成文憲法という本稿でとくに自覚的に展開する枠組みが明示的に用いられているのである。 ⑥芦部信喜『憲法学Ⅰ憲法総論』(有斐閣、1992 年)はしがきⅰ-ⅲ頁。 ⑦このR・アレクシーの「実質的基本権論」については、堀内訳「R・アレクシー 『理性法体系の観念と構 造』」弘前大学『人文社会論叢社会科学篇』創刊号(1999 年)65 頁以下、堀内「人権の法理論的分析」 『公 法の思想と制度』(信山社・菅野喜八郎教授古稀記念論集、1999 年)3頁以下、堀内訳「R・アレクシー『法 実証主義批判』」『人文社会論叢社会科学篇』 (1999 年)3号 13 頁以下など。 ⑧芦部・前掲書1頁。ちなみに、菅野教授によれば、憲法制定権力論との関連でではあるが、C・シュミッ トの立場がいわば絶対民主主義的自然法論であるに対して、芦部教授のそれは個人主義的自然法論である との評価を下しているが(菅野・前掲書第7章「憲法制定権力論と根本規範論」の 226 -8頁など) 、これは、 本文における上の芦部教授じしんの言明からも裏づけられうるように見える。 ⑨この点で、ハンス・ブルーメンベルク著斎藤義彦訳『近代の正当性Ⅰ』 (法政大学出版局、1998 年)は有益 であろうが、法学研究者にとってはかなり難解である。 ⑩佐藤幸治『憲法〔第三版〕』(青林書院、1995 年)はしがき。 卯樋口陽一『憲法Ⅰ』(青林書院、1998 年)9- 10 頁。 鵜「…近代立憲主義は、…『人類普遍の原理』として自己規定してきた。同時にまた、しかし、それに対しては、 特定段階の西欧近代社会が産み出した特定の歴史的産物にすぎないという面を強調した批判も、さまざま のかたちをとって主張されてきた。これまで、それに対するいちばん大がかりな挑戦が、単なる思想や実 践的主張の域をこえて、実定法という形態をとったのは、ソヴィエト社会主義(1917 - 91 年)とナチス体 制(1933 - 45 年)であった。第二次大戦の終結(1945 年) 、ついで冷戦の終 結(1989 - 91 年)によって、 これらの挑戦は壮大な失敗に終わったが、その反面、 『 南』から『北』にむけて第三世界の側から、文化の 相対性の主張のかたちをとって近代立憲主義批判がむけられ、 『西』=『北』の内側でも、 『近代』の問い直し、 ないし『ポストモダン』の潮流が表面化してきている(…) 」 (前掲書 18 頁) 。 窺前掲書 22 頁。 丑小嶋和司『憲法概説』(良書普及会、1987 年)1頁以下。 碓芦部・前掲書2、10 頁。 臼初宿正典「政治的統合としての憲法」佐藤・初宿・大石編『憲法五十年の展望Ⅰ』 (有斐閣、 1998 年)所収 58 頁。 渦佐藤・前掲書3頁。 嘘樋口・前掲書 13 頁。 44 堀内.indd 44 04/03/05, 9:55 唄前掲書 19 頁。 欝佐藤・前掲書 15 -6頁。 蔚前掲書 16 -7頁。これは、別の箇所で詳述するが、ラサールの「事実的権力関係」論は、カールシュミッ トのそれとは異なり、政治的安定期のこの関係とその後の新たな制定憲法との関係を年頭にして説かれた ものであった。 鰻芦部・前掲書 10 頁。宮沢俊義『憲法(改訂五版) 』 (有斐閣、1973 年)を引用して批判している。 姥芦部・前掲書 19 頁。 厩樋口・前掲書 13 頁。 浦小嶋『憲法概観〔新版〕』(有斐閣、1975 年)11 - 12 頁。 瓜 G.Jellinek,Allgemeine Staatslehre 3.Aufl.1960 S.505. 閏 C.Schmitt,Legalit寒t und Legitimit寒t 2.Aufl.1968 S.29. 噂樋口・前掲書 13 頁。 云樋口『近代立憲主義と現代国家』(勁草書房、1973 年)176 頁。 運芦部・前掲書 38 頁。小嶋教授にも、「…立憲主義憲法典は立法手続をその不可欠の規制事項と」すると述 べるところがある(「憲法と憲法典」『憲法の争点』ジュリスト増刊(有斐閣、1978 年)7頁) 。 雲小嶋「法源としての憲法典の価値についてー憲法解釈の基本問題を機縁としてー」田中二郎先生古稀記念 『公法の理論下Ⅰ』(有斐閣、1977 年)1470 頁( 『小嶋和司憲法論集三憲法解釈の諸問題』 (木鐸社、1989 年) 所収 504 頁)。 荏小嶋・憲法概観〔新版〕前掲書 42 - 43 頁。 餌小嶋註雲引用文献 1470 -1頁(『憲法論集三』512 頁) 。 叡直接には、堀内『立憲理論の主要問題』 (多賀出版、1987 年)の第三編第二章「公法学上の『組織法(規範) 』 に関する基本的考察」139 頁以下や第四編第一章「憲法と法律・命令論-栄典法制をめぐって-」241 頁以 下などを参照願いたい。 営 Walther Burckhardt, Einf翰hrung in die Rechtswissenschaft 2. Aufl. 1948 (1. Aufl. 1939) S. 145 - S. 147. 嬰 W. Burckhardt, Die Organisation der Rechtsgemeinschaft 2. Aufl. 1944(1. Aufl. 1927)S. 203. 影 W. Burckhardt, Einf翰hrung, S. 147. 映 W. Burckhardt, Die Organisation S. 11. 曳 W. Burckhardt, Methode und System des Rechtes 1936 S. 162f. 栄 Alf Ross,Theorie der Rechtsquellen 1929 S. 350. 永この点については、H. Kelsen, Allgemeine Staatslehre S. 63.H・ケルゼンの Rechtssatz の<帰属>ない し<転属>の変遷について新正幸『純粋法学と憲法理論』 (勁草書房、1992 年)が詳しい(特に 46、66 頁) 。 堀内・立憲理論の主要問題前掲書 172 -4頁も参照。 泳このような視点に立って、稿者は、従来「憲法における形式法と実体法」という場合の「形式法」は「立 法手続法」を指示するものであったのに対して、所管事項のほうからは「組織法」こそが「実質的憲法」 ということになると述べたのである(堀内『続・立憲理論の主要問題』 (信山社、1997 年)第一編第一章 22 頁)。 洩 W.Burckhardt,Methode S.168 Anm.62. 瑛 a.a.O.S.135. 盈この言葉は、随所で用いているが、たとえば、堀内・続・立憲理論の主要問題前掲書の第二編第三章第六 節 261 頁以下など。 穎堀内・立憲理論の主要問題前掲書第三編第二章 197 頁。 頴この「国家」を用いることの、討議理論の視点からの意味については、堀内「公法学方法論・その後」 (未刊) で扱う。また、憲法典に優位する不文法源たる「国家」の承認に対して、 「実体法」と「手続法」との「架橋」 の論理として一定の評価を与えながら、しかし、そのイデオロギー性を指摘するものとして、山崎友也「憲 法の最高法規性」(二・完)-「実体法」と「手続法」の狭間で-」北大法学論集 50 巻3号(1999 年)594 頁以下も参照のこと。 英本稿のように伝統的憲法学がことさらに「実質的憲法」などに目を向けてきたことに対しては、個人の「人 45 堀内.indd 45 04/03/05, 9:55 格的自律」に基点を置く憲法論から次のような批判が浴びせられている。 「『憲法は国家の根本法である』とは、憲法のほとんどの教科書・概説書等で見られる定義である。…こ うした定義や捉え方は、それ自体としては、もちろん決して誤りではない。しかし、憲法は国家法である と性格規定されるとき、ともすると、憲法は国民の日常的生活とは何か次元を異にする法であるとの印象 を生みがちである」(佐藤幸治『憲法とその“物語”性』 (有斐閣、2003 年)77 頁) 。 「戦後日本の憲法学が議論の出発点として『個人』を想定しながら、実際には、出来上がった国家を前提に、 その国家からの人権保障に関心を集中させ、どのようにして社会秩序の形成ないし具体的な国家意思形成 を不断に図っていくかという問題への取組みに不十分ないし不徹底のところがあった…」 (31 頁) 。 「今話題の脳死や臓器移植の一例を取り出してみても、憲法と決して無関係ではない。憲法は、われわれ の日常的な”生”と”死”の問題とも深くかかわっている。今われわれに求められているのは、こうした 憲法と日常の具体的生活との深いかかわり合いを自覚せしめる”物語” (narrative)を構築し、 ”善き社会” の形成に向けて努力するための道筋をを提供する基盤とすることではないか、と痛切に思う」 (11 頁) 。 国家を所与のものとしてそこから憲法論を始めるのではなく、国家を形成する国民個人、人間の具体的 日常生活と関連づけて考察すべきであるとの指摘は、かかる側面が従来の憲法学において必ずしも充分に 自覚されてこなかったことに鑑み、まさに正鵠を得た批判であるといわなくてはなるまい。 稿者のそのような視点からの考察としては、未刊であるが堀内「公法学方法論・その後」前掲があり、 そこでは「討議理論」との関連で伝統学説を再点検しようとする際に、 「国家」を固定的にではなく動態的 に理解すべきことを不十分ではあるが指摘している。今後さらにうえの佐藤教授の伝統学説批判を真剣に 考えてみなくてはならない。 が、本稿はそのような国家と個人の関連という重要な課題を負いながらも、国家の基本秩序を「実質的 憲法」と捉えたうえで展開される「憲法」概念をめぐる従来の代表的学説のなかにも、まだ論じ尽くされず、 整理されなくてはならない問題も残されているということを明らかにせんとするものである。 46 堀内.indd 46 04/03/05, 9:55 租税過誤納金返還問題における民事責任論 -不当利得ないし国家賠償の成否を中心に- 村 目 田 輝 夫 次 1.問題の所在 2.不当利得による返還 3.国家賠償による返還 4.寄付・補助による返還 5.結語 1.問題の所在 租税の徴収にあたり不当な課税がなされた場合には、通常は、国税または地方税など当該法律の 規定に基づいて還付請求など所定の手続き行えば納税者は納めすぎた税金の還付請求を行うことが できる(国税通則法56条以下、地方税法17条以下等)。そして、過誤納に伴う還付加算金の請求も 行うことができる。しかし、過誤納金の還付請求権は、例えば地方税法であれば、請求をできる 日から5年を経過したときは時効により消滅するという規定がおかれている(地方税法18条の3)。 そうすると、5年を超える過誤納付については税法上は救済措置がとれないことになり、行政の側 のミスによる課税処分などのケースでは、納税者側には咎めるべき事情もない(申告納税は別)か ら、納税者が一方的に被害を被っているにもかかわらず、救済されない結論となる。この結論の不 当であることは一見自明であるが、では、どのような法的根拠に基づいて行政側が納税者に過誤納 金の返還を行う必要があるのかと考えるとそれほど容易ではない(1)。 このような事案は近年増えており(2)、申告納税における紛争(所得税、法人税等。件数はこちら の方がずっと多い。 )を除くと、特に、固定資産税・都市計画税の誤徴収事件が目立つ。申告納税 ではなく賦課課税によるものだけに納材者が誤徴収に気づかないことも多い。各地の自治体が、固 定資産税の納税通知書に、納税者の便宜のために、法律上義務づけられているわけではない課税資 産の内訳明細書を添付し始めたことで、誤徴収の実態が表面化したともいわれる。 47 村田.indd 47 04/03/05, 18:21 青森県内だけでも、青森市、八戸市、十和田市、三沢市、むつ市、五所川原市、黒石市で固定資 産税・都市計画税の誤徴収事件が生じている(3)。これらの事件は、地方税法上非課税対象であっ た協同組合等に対し10年以上に渡り固定資産税・都市計画税の誤徴収を行っていたものである。 弘前市においても、平成14年2月に納税者から固定資産税(都市計画税を含む。)の課税誤りで はないかとの指摘を受けて調査した結果、合計5件の誤徴収が判明した。いずれも地方税法第348 条第4項の「中小企業等協同組合法による組合が所有し、かつ使用する事務所、倉庫」に対する非 課税規定の適用を誤ったことによるものであった。誤徴収額は10年間に7, 200万円にも達するもの であった。最も古い誤徴収のケースは17年前まで遡るが、固定資産税課税台帳は10年分しか保管さ れていないため、正確には分からないという。納税者の立場からすれば杜撰極まりないという印象 を持たれてもやむを得ない事態であった。 弘前市としては、この誤納金のうち、地方税法の規定に基づき還付できる5年分については平成 14年第3回市議会定例会で補正予算措置をし、10月上旬にこれらの団体に返還した。しかし、地方 税法の規定で時効となるそれ以前の還付不能分が残され、弘前市としてもどのように誤徴収分を返 還すればよいか対応を迫られた(4)。 筆者はそのときに組織された「弘前市固定資産税等過誤納金問題研究会」の座長として他の委員 (弁護士、公認会計士、税理士)とともにこの問題を検討する機会があり、短期間に集中して検討 を行い、同年11月13日には「弘前市固定資産税等過誤納金問題報告書」をまとめ、弘前市長宛提出 した。右研究会においては、固定資産税等の課税誤りに関する裁判例や横浜市、神戸市、八潮市の 同様の研究会報告を参照して検討がなされた(5)。右研究会の検討の際には、市議会の会期の問題 など納税者への返還を可能な限り早くするという前提があったので、理論的な問題については必ず しも結論を出す際にこだわらなかった経緯がある。さらに、議会の議決を必要とするため、納税者 側の財産状態について詳細な点が公開されることへの市当局側の配慮も働いたであろう。 右研究会の結論は、非課税規定の適用誤りによる不利益を補填することは、地方自治法第232条 の2に規定する「公益上必要な場合」該当するものという解釈を採用し、 議会で予算の議決を得て、 還付不能分相当額を補填金として返還するというものであった(後述)。 本稿では、本件のような固定資産税等の過誤納金を返還する法的根拠(納税者側からみれば過誤 納金の返還請求権)について、主に、不当利得、国家賠償という民事責任からの検討を行うことを 中心とし、 関連して、 地方自治法の規定を利用した「寄付・補助」による返還にもふれることとする。 検討すべき事項は多岐に渡るが、紙数の関係上、固定資産税等の過誤納金に対象を限定し、不当 利得を理由とする返還、国家賠償を理由とする返還、及び、寄付・補助による返還について、判例・ 学説を検討し、一応の理論的な結論を得るとともに今後の課題を探ることとしたい。 48 村田.indd 48 04/03/05, 18:21 2.不当利得による返還 公法上の不当利得ないし行政法上の不当利得(6)をめぐる学説 敢 一般に、行政上の法律関係に基づいて個人と国または公共団体との間に財産的利益の移転があっ た場合に「不当利得」となるかについては問題とされてきた(7)。民事上の不当利得と異なる点が あるからである(8)。 この点に関しては、 現在、 「公法上の不当利得」と「行政法上の不当利得」の観念が見られるという。 前者は、田中二郎説に典型的に見られるように、公法と私法の二元的対立関係を基礎として、「① 行政権の認定を一応正当として是認し、これを覆すためには一定の手続・制限に服さねばならない 点に制度的対立の合理的解釈上の共通的特殊性が認められる公法上の不当利得が、民法上の不当利 得に関する規定によりえないとされる理由、 ②公法上の不当利得を正当づけるだけの特殊性の存否、 ③一般的規定の存しない場合における具体的な公法上の不当利得に関する救済方法を検討しようと するものである」とされる(9)。これに対して後者を代表する今村成和説は、 「行政法上の不当利得」 を、行政裁判所廃止により裁判制度が一元化された現行憲法において、公法と私法の区別は相対化 され、法の一般原理を含むものとしては私法が一般法の地位を占めるに至ったという前提に立って、 行政主体としての国または公共団体になんらかの特殊な地位が認められる場合の不当利得の内容を 吟味しようとするものである(10)。いずれにしても、行政上の法律関係に基づいて個人と国または 公共団体との間に財産的利益の移転があった場合には、民事上の不当利得の場合とは異なった何ら かの特殊事情が存在し、それがなんらかの制度的措置(固定資産税等の過誤納金の例で言えば、 「還 付請求」の制度)を伴っているときには、不当利得の一般理論をそのまま適用はできないことにな る。裏返せば、何らかの特殊事情の存在が法的に意味を持たない場合には、不当利得の理論が適用 可能であることになる。 ところで、不当利得が生じるのは行政側だけとは限らない。個人の側に生じることもありうる。 行政行為に基づく個人に対する給付が、当該行政行為が違法とされたときに、国または公共団体は 当然にその個人を相手として違法な給付の返還を請求出来るのではなく、当該行為を違法として職 権で取り消した後に、はじめて返還請求をなすことが出来る。この場合には、行政行為の職権取消 制限の法理が働くから、個人の側に責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、処分庁の過誤に基 づく違法を理由として当該処分を取消し、個人に生じた利得の返還を請求することは出来ないとさ れる(11)。とりわけ社会法分野に於ける年金給付等が念頭にあり、法律上も、受給権者に不正行為 があった場合に限って、交付決定が取り消されたり、受給した金員の返還を命じられる場合がある (健康保険法67条の2、生活保護法78条等)。 なお、過誤納金とは法律上の原因がないにもかかわらず納付済みとなっている租税金での総称で ある。理論上は、これを区別することができるとされる。「過納金」とは、納付の際には適法であっ たにもかかわらず、後に、免除、減額更正、課税処分の取消し等の事情が生じたため、超過納付となっ 49 村田.indd 49 04/03/05, 18:21 た金額をいう。身近には、給与所得者の給与取得に係る源泉徴収税額が年末調整の結果過納であっ た場合に発生する (所得税法191条) 。また、 「誤納金」 とは、 法定の予納の要件を具備する場合を除き、 国税債務がないにもかかわらず納付された金額をいう。両者は、 還付加算金の起算日を異にする (国 税通則法58条他) 。 不当利得との関係では、 「過納金」は、過大申告または課税処分等の税額確定行為もしくは違法 な徴収処分に基づき発生した場合には、違法なものであっても、当該行為が取り消されて公定力が 排除されるまでは、有効な納付・徴収であって、法律上の原因を欠くことにはならない(判例・通 説)ので、不当利得に基づく返還請求権は成立しない。 他方、 「誤納金」は、その納付・徴収の時点において、実体法的にも手続法的にも法律上の原因 を欠くものであるから、所定の還付申告手続を経て、直ちにその還付を請求することが出来る(12)。 不当利得の成否をめぐる裁判例の動向 柑 次に、租税の過誤納金返還をめぐる訴訟における裁判例の動向を概観することにする。戦前は、 行政裁判所が存在したため、行政訴訟の位置づけが現代とは異なるけれども、戦前から、違法な課 税処分による過誤納金が不当利得に当たるかが争点になっており(13)、戦後の一時期までは、行政 上の手続きに不備があったため、やむを得ず裁判所は不当利得の法理を用いて返還請求を認容して いたと思われる。一種の裁判による「法の創造」であり、他の分野に目を転じれば、不動産賃借権 に関わるいわゆる「信頼関係理論」なども戦後の混乱期に判例法が形成され、今日に至っている。 したがって、違法な課税処分による誤徴収を返還する制度が準備されるようになると、その制度に よる救済( 「還付請求」制度など)が図られればそれを不当利得として私法上の請求権として構成 するメリットは減少する。 しかし、その制度的救済には往々にして「期間制限」が設けられている。例えば、地方税法18条 の3は還付金の消滅時効を規定するが、 「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対す る請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権」は、「その請求をする ことができる日から5年経過したときは、時効により消滅する」と規定しており、民事の債権に対 する消滅時効期間10年と比べると、期間も半分であるし、時効の起算点も「その請求をすることが できる日」であり、客観的に過誤納となった時点から時効が進行するから、過誤納をしてしまった 納税者の保護に欠けるきらいがあるといえる。5年より以前の地方税法上還付請求をもなしえない 期間については、税法上やむを得ない制約と考えるのか、それとも、不当利得や国家賠償による私 法上の救済を図るのかという問題に直面する。この間の裁判例は、制度的救済が整備されるに従っ て不当利得の成立を認めなくなってきているように思われる。 ここでは、戦前から戦後・現代にかけて特徴的な裁判例を中心にその動向を概観する。 (a) 戦前の裁判例 大判大昭5・7・8民集9巻719頁は、「其ノ賦課処分ノ取消アラサル限リ其ノ徴収シタル金額ハ 50 村田.indd 50 04/03/05, 18:21 法律上ノ原因即租税ノ賦課処分ニ基キ取得シタルモノニ外ナラサルヲ以テ之ヲ不当利得ト做ス余地 ナキモノトス従テ本件被上告人ノ請求ハ之ヲ棄却スヘキモノトス然ルニ原審ハ右租税ノ賦課処分ノ 違法ナルノ故ヲ以テ其ノ徴収シタル金額ニ付不当利得アルモノト為シテ被上告人ノ請求ヲ認容シタ ルハ不当利得ニ関スル法則ノ適用ヲ誤リタル不法」ありとして不当利得の成立を認めた原判決を破 棄し、自判をおこなった。不当利得返還請求として主張されていても、実質的に、租税賦課処分の 違法を主張するものに他ならないから、違法な処分であろうとその効力は裁判所を拘束するため、 抗告訴訟等の一定の手続を経て租税賦課処分を取り消した上で、民事訴訟において不当利得返還請 求をなすべきものという理解は当時の学説の立場と同一といえよう(14)。 さらに、行政裁判所のあった時代であるから、違法な租税賦課処分の取り消しを求めるべきとこ ろ、不当利得返還請求を行ったため、過誤納金返還を求める訴えを不適法とし却下したものも存在 する(15)。 これに対し、大阪地判昭11・3・30新聞3994号5頁は、「行政行為の重大なる瑕疵が客観的に明 白なる場合に於ては当該行政行為は取消を要せずして当然無効なりと認むるを相当とす然らば当 然無効の行政行為に基く被告の金員取得は法律上の原因を缺き(中略)不当に利得したるものなれ ば被告は原告に対し之が返還すべき義務あること勿論なり」と判示した。同旨の裁判例もあり(16)、 行政行為が無効と認められる場合には、その取消を抗告訴訟等において主張するまでもなく、不当 利得返還請求をなすことができることを判例も認めていたのである。もっとも、戦前では行政裁判 所による救済が不備であり、それを補完するものとして不当利得返還請求がなされたという背景が あるという指摘(17)は十分留意すべきであろう。 (b) 戦後の裁判例 前述のように、行政行為の重大なる瑕疵が客観的に明白と認められる場合には、その取消を抗告 訴訟等において主張するまでもなく、不当利得返還請求をなすことができることを戦前の裁判例も 認めていたが、戦後に至っても、租税課税処分が違法であり無効と認められる場合にも同様の判断 がなされている。特に、戦後税制などの制度変更等がなされ、違法な行政行為に対する救済が不備 であった時代には、不当利得返還請求を認める判例の立場は立法の不備を補うものとして、一般に、 学説の承認を得ていたものとされる(18)。 その適例が、課税後に貸倒れが生じたため、右金銭債権が回収不能になった場合の納税者の救済 のために不当利得の法理が適用できるかが争われた事件である。原審が貸倒れのケースに不当利得 返還請求を認めたのに対し、貸倒れの場合における調整は租税政策の問題であり、立法により解決 すべきこと、 行政行為の公定力が認められる場合には民法上の不当利得の規定がそのまま妥当せず、 原因行為の無効または取消を前提とすべきことを主張した上告がなされたが、最高裁は次のように 判示して、右上告を棄却した(19)。 「所得税法は、具体的な租税債権及びその数額が法規の定める課税要件の充足と税額計算方法に よつて自動的に確定するものとはしないで、課税所得及び税額の決定ないし是正を課税庁の認定判 51 村田.indd 51 04/03/05, 18:21 断にかからしめているのであるから、かような制度のもとでは、債権の後発的貸倒れの場合にも、 貸倒れの存否及び数額についてまず課税庁が判断し、その債権確定時の属する年度における実所 得が貸倒れにより回収不能となつた額だけ存在しなかつたものとして改めて課税所得及び税額を算 定し、それに応じて先の課税処分の全部又は一部を取り消したうえ、既に徴税後であればその部分 の税額相当額を納税者に返還するという措置をとることが最も事理に即した是正の方法というべく (中略) 、課税庁としては、貸倒れの事実が判明した以上、かかる是正措置をとるべきことが法律上 期待され、かつ、要請されているものといわなければならない。」 「しかしながら、旧所得税法には、課税庁が右のごとき是正措置をとらない場合に納税者にその 是正措置を請求する権利を認めた規定がなかつたこと、また、所得税法が前記のように課税所得と 税額の決定を課税庁の認定判断にかからしめた理由が専ら徴税の技術性や複雑性にあることにかん がみるときは、貸倒れの発生とその数額が格別の認定判断をまつまでもなく客観的に明白で、課税 庁に前記の認定判断権を留保する合理的必要性が認められないような場合にまで、課税庁自身によ る前記の是正措置が講ぜられないかぎり納税者が先の課税処分に基づく租税の収納を甘受しなけれ ばならないとすることは、著しく不当であつて、正義公平の原則にもとるものというべきである。 それゆえ、このような場合には、課税庁による是正措置がなくても、課税庁又は国は、納税者に対し、 その貸倒れにかかる金額の限度においてもはや当該課税処分の効力を主張することができないもの となり、したがつて、右課税処分に基づいて租税を徴収しえないことはもちろん、既に徴収したも のは、法律上の原因を欠く利得としてこれを納税者に返還すべきものと解するのが相当である。」 右事件にかんしては、その後、昭和37年に所得税法の改正が行われ、更正の請求の手続きを取る ことが認められるようになったために、問題は立法的に解決されている。 なお、近年の裁判例で固定資産税の賦課処分を違法とし、不当利得返還請求を否定しなかった事 案として大阪高判平成3年5月31日(20)がある。本事案は、現況が畑である土地を雑種地と認定し て固定資産税を賦課した違法な処分であった。判旨は、このような場合には重大・明白な瑕疵があ ることを理由とする民法上の不当利得の返還請求は許されること、及び、固定資産課税台帳の登録 事項に関する不服について、地方税法上、特別の不服申立手続が用意されているからといって、市 町村長の認定に重大かつ明白な誤りがあり課税処分自体が無効であると認められる場合には、一般 の正義公平の原則に基づき、一般法たる民法の不当利得として返還を求めることができるという判 断を示した(一般論に留まる) 。事案の処理としては、「本訴請求の当否にかかる先決問題として、 本件課税処分に控訴人ら主張のような無効原因が存在するかどうかを審理、判断すべきであったと ころ」 、 「固定資産課税台帳の登録事項に関する不服について、地方税法上、前示のような特別の不 服申立手続が用意されていることを理由として、一般法たる(民法の)不当利得に関する規定の適 用は排除されているとの見解の下に、本件課税処分の控訴人ら主張のような無効原因が存在するか どうかについて何ら判断することなく本訴請求を排斥した原判決は、不当というべきである。」と して、原判決を取消差戻した(事件は確定)。不当利得の成否に関する理由は次の通りである。 52 村田.indd 52 04/03/05, 18:21 「前記地方税法の一連の規定は、前示のとおり、固定資産課税台帳の登録事項について、固定資 産税の賦課処分に至る前段階において、課税処分に対するそれとは別に、これに関する独立した争 訟手続を設け、右登録事項についての不服については、課税処分に対する争訟手続によらずに、専 ら右の独立した争訟手続中において解決することを意図したものである点において、独自の制度的 意義を有することはいうまでもないが、右の趣旨に鑑みても、また、その規定の仕方ないしは文言 に照らしても、右にみた違法な課税処分にかかる納税者の権利救済に関する現行法の一般的な制度 的枠組みの下において、右の一連の規定が、固定資産課税台帳の登録事項に関する市町村長の認定 に重大かつ明白な誤りがあり、ひいてはその認定に基因する固定資産税の賦課処分自体が無効であ ると認められるような場合においても、納税者が、右無効な課税処分により徴収された税額(過誤 納金)について、一般の正義公平の原則に基づき、これを不当利得としてその返還を求めることを も許さないとした趣旨のものと解することが合理的であるとする理由はこれを見出し得ないという ほかはないからである。 」 検 桓 討 地方税法第18条の3による「地方団体の徴収金の過誤納付により生ずる地方団体に対する請求権 及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権」とは、法律上の原因なくして地 方団体が不当に利得している金員を納税者に返還することを内容とするものであり、納税者側から みれば、民法上の不当利得返還請求権に該当する。過誤納金の性質が一種の不当利得であることは 間違いがないが、民法上の不当利得返還請求権が成立するためには、単なる違法な課税処分である だけでは足りず、右処分に重大・明白な瑕疵が必要であると思われる。 固定資産税等の課税誤りについては、還付請求の制度が整備されており、この制度を利用するこ とで目的を達することが出来る場合には、 公法関係において早期に紛争を決着することが望ましい。 その意味では、 「国税通則法の過誤納金に関する規定は、納付された国税に関し民法の不当利得の 特則を定めたもので、過誤納金について民法の不当利得の規定を排除する趣旨であると解するのが 妥当である(21)。 」というのが、判例・通説の立場であり、おおむね妥当であると思われる。 しかし、それでは、不当利得返還請求権の成立はすべて排除されると考えるのは行き過ぎであろ う。前述の大阪高判平成3年5月31日が正当に指摘しているように、課税処分に重大・明白な瑕疵 があった場合には、課税処分自体は有効な公定力のあるものとして一度は成立している場合と異な り、課税処分自体が無効であり、還付請求権も生じない。その場合には、一般法である不当利得が 成立しその返還請求権が納税者に認められるべきである。 したがって、課税誤りの態様が「重大かつ明白な誤り」を伴い、課税処分自体が無効であると認 められる場合には、一般の正義公平の原則に基づき、一般法たる民法の不当利得として返還を求め る余地を残すべきであろうと思われる。 なお、行政行為により一方的に負担を課した場合は、仮に不当利得の成立を認めるとして、その 53 村田.indd 53 04/03/05, 18:21 返還範囲は「現存利益」に限られるか。国または公共団体には、法律上根拠のない金額を受領する 権限を有していないから受けた利益の全額を返還すべきものと解される(22)。行政行為によらずに 不当利得が生じた場合も同様に解してよいであろう。もっとも、法令は、そのような場合には、納 期を繰り上げて納付したものとして処理する途を開いている(国税通則法57条他)。 3.国家賠償による返還 国家賠償責任の成否 敢 国家賠償法第1条第1項は、 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行う について、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠 償する責に任ずる。 」と規定している。固定資産税等過誤納金の返還を納税者が請求する場合に、 国家賠償法第1条の規定は適用されるか。もし、適用可能であれば、還付不能分相当額の返還が可 能になる。 まず、国家賠償法上の請求権行使にあたっては、以下の要件が充足される必要がある。 ①国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員の行為であること。 ②その行為が「職務を行うについて」なされたこと。 ③公務員に故意または過失があること。 ④違法な加害行為があること。 ⑤加害行為により損害が生じたこと。 課税誤りの場合、①、②及び④の要件充足は問題がないと考えられる。問題は加害公務員に「故 意・過失」があったのかということと、損害が生じているかということである。 「故意・過失」についてはどうか。弘前市のケースでは、地方税法348条第4項の非課税対象とな る協同組合の建物について、固定資産税を課することができない物件から固定資産税等を徴収して いた事案であり、実定法の執行を誠実に行うべき責務を有している市当局としては厳に戒められる べき行為である。重大な過失と評価できるかどうかは今後検討を要するが、少なくとも過失はあっ たものと考えざるを得ないであろう。ただ、弘前市の場合、複数件の課税誤りを起こしており、そ れぞれが全く同一の条件で起こったわけではないから一律の認定が出来るかどうかは問題がある。 ⑤の要件はどうか。取消訴訟出訴期間の経過後に、実体法上過大な金額を損害として国家賠償を 認めることは、実質的に取消訴訟制度の趣旨を没却させることにもつながるから許されないと解す る余地がないわけではない。 しかし、国家賠償法上の請求権は私法上のものであり、公法上の過誤納金還付請求権との相互関 係が問題になるが、裁判例によれば、国家賠償法に基づく損害賠償請求権は、私法上の請求権であ り、公法上の過誤納金還付請求権とは別個独立に行使することができるとされている(23)。 したがって、⑤の要件に関しても、過誤納金相当額をもって損害額であると解する余地が十分に 54 村田.indd 54 04/03/05, 18:21 ある。 これらを勘案すると、課税誤りという違法行為により、国家賠償法第1条第1項に規定する賠償 責任の要件は充足されると考えられる。 国家賠償責任に関わる裁判例の検討 柑 固定資産税の賦課課税にかかる訴訟として浦和地方裁判所平成4年2月24日判決(24)がある。こ の事件は、地方税法に基づく減税特例制度(昭和48年新設)に関して、条例で住宅用地の所有者に 対し申告を義務付けた八潮市において、申告があったものについては減税特例を適用したが、申告 がなかったものについては、改めて申告を促す等の措置をとらなかったために、要件を具備してい ながら減税特例が適用されないものが多数生じる結果となった。こうして、10年以上を経過した昭 和61年になって、埼玉県の調査を契機に減税特例未適用物件が多数(約3,000件)発見され、被告 八潮市は、昭和58年以降の分については、減税特例を適用すれば過納となる税額に相当する金員を それぞれの納税者に支払ったが、それ以前の分については、地方税法第17条の5(更正、決定等の 期間制限) 、第18条の3(還付金の消滅時効)の各規定との関係で支払の法的根拠を見出しがたく、 支払をしなかったという事案である。 右判決は、まず被告の過失につき以下のように判示した。 「被告の市長が原告らに対してした固定資産税の賦課決定は、減税特例を適用するのに必要な要 件を具備しているのに、これを適用しなかったという点で、地方税法第349条の3の2第1項又は 第2項に違反し瑕疵のあるものではあるが、その瑕疵は、課税手続上、特例措置の適用を看過した というものであって、課税要件の根幹にかかわる事由に関するものではないから、重大なものとは いえず、右固定資産税の賦課決定を当然に無効と解することはできない。」として、まず、賦課課 税自体の効力は有効とした。 「しかしながら、固定資産税の賦課決定は、市町村長の納税義務者に 対する納税通知書の交付によってされるのであって(地方税法第364条)、納税義務者からの申告に よるものではないのであり、同法第384条第1項本文が、市町村長は、住宅用地の所有者に対して、 当該市町村の条例の定めるところに従い、土地の所在及び面積等、固定資産税の賦課に関し必要な 事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課 税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、 右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものでないことは課税の 当局者にとっては見易い道理である。それにもかかわらず、被告の市長が右申告をしなかった原告 らを含む納税義務者に対して、ほかに調査のための何らの手段を講ずることもなく、減税特例を適 用しないで固定資産税の賦課決定をしたのは甚だ軽率というほかなく、市長が右固定資産税の賦課 決定をしたことには過失があり、これが租税法規に違反してされた点で違法性を有するものである ことは多言を要しない。 」として、被告には過失があると判示した。 また、課税誤りは「専ら行政不服審査上の異議申立て又は審査請求、及びこれに続く取消訴訟の 55 村田.indd 55 04/03/05, 18:21 提起等によって是正されるべきである」との被告の主張に対し、「これは専ら租税の賦課処分の効 力を争うものであるのに対して、租税の賦課処分が違法であることを理由とする国家賠償請求は租 税の賦課処分の効力を問うのとは別に、違法な租税の賦課処分によって被った損害の回復を図ろう とするものであって、両者はその制度の趣旨・目的を異にし、租税の賦課処分に関することだから といって、その要件を具備する限り国家賠償請求が許されないと解すべき理由はない。」と判示し て国家賠償請求を容認した。 さらに、 「特に、本件においては、原告らは、昭和63年2月14日の新聞報道によってはじめて被 告の市長が原告らに対してした固定資産税の賦課決定が違法であることを知ったものであることは 弁論の全趣旨に照らして明らかであり、この時点においては、申立期間の経過等のため右前者の手 段に訴える途は閉ざされていたわけであるから、なおさらのことである。」と判示した。 また、損害の発生については、 「原告らは、被告の市長がした固定資産税の賦課決定により法定 の納税義務の限度を超えた納税をし、その超過部分に相当する損害を被ったわけであるから、被告 は原告らに対しこれを賠償すべきである(なお、右損害が発生したことについては、前述したとお り、原告らにも所定の申告をしなかった点で一半の責任があることは否定できないが、固定資産税 については賦課課税方式がとられていることや右申告が課税当局の便宜のために設けられた手続で あることなど、諸般の事情に照らすと、原告らの右申告義務の懈怠を損害額を算定するうえで斟酌 するのは相当でない。 ) 。 」と判示し、基本的に賦課課税である以上、原告に申告義務の懈怠があっ たとしても影響がないと判断した。 なお、このほかにも、登記官の過誤と固定資産課税に当たる県職員の過誤が競合した事案につい て、不自然な通知を受けた市の課税担当者が、その過誤を看過して誤った地積を土地課税台帳に記 載したことは違法であるとして、市に対し、固定資産税及び都市計画税の過大徴収による損害の賠 償を命じた事例(25)がある。 検討 桓 課税誤りという違法行為によって、国家賠償法第1条第1項に規定する賠償責任の要件が充足さ れると考えた場合には、 国家賠償請求権の消滅時効は、 同法第4条により民法第724条が準用される。 同条は, 「不法行為による損害賠償の請求権は被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知り たる時より3年間これを行わざるときは時効によりて消滅す。不法行為の時より20年を経過したる とき亦同じ。 」と規定する。 従って、国家賠償請求権の消滅時効の始期は「損害及び加害者を知りたる時」である。特に「損 害を知りたる時」との点に関する有力説は、「法律生活一般において要求される広い意味での注意 義務に関する規範」に基づき、 「通常人の予知しうる限りにおいて当該の被害者も知るべきはず」 の時点であるという(26)。 「弘前市固定資産税等過誤納金問題研究会」の議論においては、この消滅時効の問題では委員に 56 村田.indd 56 04/03/05, 18:21 見解の相違が見られた。それは次のような問題である。 すなわち、徴税権者である弘前市自身、長年にわたって地方税法第348条第4項の規定を没却し て固定資産税を課することができない物件を所有する団体から徴収していたのであるから、当該団 体もまた、損害発生を平成14年6月に課税誤りが確定するまで知らなかったことを理由にして、課 税誤り確定までは消滅時効が進行しないと考えるというのが一つの立場である。 他方、 「徴収権者が固定資産税を課することができないとして明記されている物件を所有する団 体から固定資産税を徴収することは、法律生活一般において要求される広い意味での注意義務に違 反する。 」と考えられるのと同様、 「各種組合法に基づいて設立された組合は、自らがどのような権 利義務を有しているかについて的確に把握すべき義務があり、これらの組合が固定資産税を課せら れないということの権利を認識することは当該組合に要求される広い意味での注意義務に関する規 範」であると考えることもまた可能でないかという意見も出された。この見解は、「固定資産税を 課せられないという特別の権利を侵害されたにもかかわらず、そのことに気がつかないまま3年間 を経過した場合、国家賠償請求権の消滅時効が完成する」という考えである。 この問題に関しては、研究会としては明確な結論を下すことが出来なかった。確かに、請求権者 である各組合における「損害を知りたる時」をどのように確定するかによって理論上は消滅時効が 完成する余地がないとはいえないものである。しかし、この点に関しては、当該各組合の事情を個 別に検討する必要があり、時間の制約等からその個別的な検討はなしえなかったが、筆者としては 上記を総合的に判断すると、本件は還付不能分相当額について国家賠償法第1条に基づく損害賠償 請求権が成立し、かつ、当該各組合の事情によっては課税誤り確定までは消滅時効が進行しないた め、弘前市が当該組合に対して、同条に基づく損害賠償責任を免れないと判断される可能性も否定 できないと考える。 4.寄付・補助による返還 各地の固定資産税等過誤納金の紛争事案において一つの方法として採用されているものが地方自 治法の「寄付・補助」の規定を借用する方法である。地方自治法第232条の2には、「普通地方公共 団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定して おり、 「寄附」とは「贈与契約による金銭の支出、財産権の移転」のことであり、例示を行えば、 災害救助法の適用にならない小規模災害の被害者に対して見舞金を支出する場合などがこれに当た る。 「補助」とは、 「私人等に対しその活動を育成・助長する目的で交付する金銭的給付」をいうも のであるとされている。 地方自治法第232条の2の規定により還付不能分相当額の返還は可能か。「弘前市固定資産税等過 誤納金問題研究会報告」によれば、 「補助金としての支出は、特定の事業、研究を育成・助長する ためであることから本件の課税誤りの場合にはなじまない」として、まず「補助」は採用しないこ 57 村田.indd 57 04/03/05, 18:21 ととした。もう一つの可能性である「寄附金」として市が支出できるか。「寄附金」としての支出 が認められるためには、当該支出が「公益上必要がある場合」に該当しなければならない。 「公益上必要かどうか」の判断は一応長及び議会がこれを行うものとされているが、全くの自由 裁量行為ではないから、 「客観的にも公益上必要であると認められなければならない」とされてい る(27)。 また、公益上の必要については、裁判例では「地方自治法第232条の2は、地方公共団体は、そ の公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる旨定めているが、その内容 を具体的に定めていないから、地方公共団体が同条の規定の趣旨に従って、右交付処分が住民にも たらすであろう利益、程度等諸般の事情を勘案して判断すべきことになるが、その判断につき著し い不公正もしくは法令違背が伴わない限り、これを尊重することが地方自治の精神に合致する所以 (28)」と判示している。 というべきである。 「弘前市固定資産税等過誤納金問題研究会報告」では、次の3点から「公益上の必要」の要件を 満たすと結論づけている。 まず第一に、 「地方税法第18条の3の還付請求権の消滅時効の規定により還付しないことは、納 税者に不利益を与えるものであり、同時に市民の弘前市政、税務行政に対する信頼を損なう」と指 摘して、 「これをこのまま放置することは、行政に対する信頼確保の観点から不適切であり、この 不利益を補填し、信頼の回復を図ることは、『公益上の必要』に合致する」ことである。 第二に、 「本件の適用誤りをした非課税規定は、協同組合等の発達の促進、協同組合等が行う事 業発達の確保、協同組合等に参入する人々の経済的社会的地位の向上を図ることを目的としている ものである。この適用誤りにより被った不利益を補填することは、言い換えれば、公益上必要なた めに設けた非課税規定の適用誤りを正すことであり、『公益上の必要』に該当する」ことである。 第三に、 「市の無効な賦課処分により、本来徴収すべきでない誤納金を時効の規定があるからと いって納税者に返還しないことは、広く社会的・道義的観点からも許されない」ことである。 地方自治法第232条の2の規定に関わる「公益上の必要」という要件は、場合によっては、地方 公共団体から特定の団体への寄附または補助を行う場合に利用されたという事実がある(29)。本来 は不当利得なり国家賠償なりという明確な処理を行うべき固定資産税の課税誤りにこれを利用する ことは、特定団体への補助を行う場合に比べれば問題は少ないとも考えられるが、理論的には望ま しい解決でないことは明らかであろう。 5.結 語 過誤納金返還の法的根拠を種々検討した結果、可能性があるのは、民法703条の不当利得返還請 求権、国家賠償法第1条の規定による賠償金と地方自治法第232条の2の規定による寄付金である。 そこで、これらの比較検討を行うこととする。 58 村田.indd 58 04/03/05, 18:21 まず、不当利得返還請求権については、課税誤りの態様が「重大かつ明白な誤り」を伴い、課税 処分自体が無効であると認められる場合には、一般の正義公平の原則に基づき、一般法たる民法の 不当利得として返還を求める余地がある。協同組合等への固定資産税等非課税部分に対する課税は 無効であるが、 「重大かつ明白」な瑕疵を伴うかどうかについては単純に結論が下せない。課税対 象の建物に課税部分と非課税部分が混在し、実地調査を毎年行うことが実際には困難であるという 事情があるからである。さらに、課税処分自体を無効として不当利得の返還請求を認めるならば、 還付請求権も当然発生しないし、その結果遅延損害金の性質を有する還付加算金(7.3%)の請求も 出来ない。還付の範囲が5年以内であれば、還付金を利用した方が納税者も有利である。時効によ る還付不能分については、別途方策を講じた方が現実的でもある。また、不当利得返還請求と還付 請求権について判例・通説が、還付請求権を優先適用しているという重みもある。これらを勘案す れば、今回のようなケースに限っては、過誤納金の返還については不当利得構成を採用しえない。 そうすると、国家賠償法による賠償金と地方自治法第232条の2の規定による寄付金が候補に残 る。そこで、この二つを比較検討してみることとする。国家賠償法による返還の方法をとったとき の問題は、5件の課税誤りの個々の事例ごとに過失認定や消滅時効完成の有無を検討する必要があ ること、及び、 課税台帳等帳簿類のない年度(最長で7年分が不明)の損害額の算定が困難であると いう問題がある。10年以上も前の納税記録を納税者が保管しているとは限らない。さらに、個々の 事案について市議会の議決を要するため、納税者個々の名称や金額が公表されるなどプライバシー の問題もある。また、基本的に訴訟を起こしてもらう(30)など返還事務の煩雑さに加え即応性にかけ る難点がある。 一方、地方自治法による返還については、納税者及び市民の税務行政に対する信頼の早期回復を 図るための支出であり、納税者個々のプライバシーも保護され返還手続きの即応性に長じている。 本件の場合、非課税規定の適用誤りによる不利益を補填することは、地方自治法第232条の2に 規定する「公益上必要な場合」にまさに該当するものである。 以上のことを考慮すると、議会で予算の議決を得て、地方自治法第232条の2の規定に基づき還 付不能分相当額を補填金として返還することが良策であり、誤納付された固定資産税等の返還にあ たり地方税法上還付不能となる部分の取扱いについては、弘前市独自の「取扱要綱」を制定し、今 後の事例に対処すべきであろう。 註 (1) 阿部泰隆『政策法務からの提言』(日本評論社、1997年)194頁。 (2) なお、事案は全く異にしているが、東京都が銀行に対して外形標準課税を行った事案では、銀行税条例 の無効確認の訴えは不適法であるとしながら、原告らの請求のうち、誤納金返還請求および損害賠償の請 求のみ理由があるとして被告都に対して支払いを命じた事件は記憶に新しい。東京高判平成15・1・30『判 例時報』1814号44頁。 59 村田.indd 59 04/03/05, 18:21 (3) 青森市については東奥日報2002年9月12日付参照。八戸市については東奥日報2002年9月19日付参照。十 和田市については東奥日報2002年9月20日付参照。 (4) 県内各市の過誤納金の取り扱い方法は必ずしも統一されていない。返還年数と返還の根拠は以下の通り となっている。 ・青 森 市 年数:10年(資料提出があれば10年前でも対象とする) 根拠: 「青森市固定資産税過誤納 金補填金支払要綱」 ・八 戸 市 年数:10年 根拠:「地方税法の規定に基づき還付することが出来ない誤課税による固定資 産税の取扱方針」 ・十 和 田 市 年数:10年(資料提出があれば10年前でも対象とする) 根拠: 「十和田市固定資産税等過 誤納金補填支払要綱」「十和田市固定資産税等過誤納金補填支払事務要領」 ・三 沢 市 年数:5年 根拠:地方税法 ・む つ 市 年数:5年 根拠:地方税法 ・五所川原市 年数:5年 根拠:地方税法 ・黒 石 市 年数:5年 根拠:地方税法 (5) 横浜市固定資産税等過誤納金問題研究会報告(平成2年12月) 、神戸市固定資産税等過誤納金問題研究会 報告(平成2年11月)、八潮市定資産税等過誤納金問題研究会報告(平成5年3月) 。 (6) 以下の記述は、小高剛『新版・注釈民法18巻』 (有斐閣、平成3年)513頁に多くを負っている。 (7) 四宮和夫『事務管理・不当利得・不法行為上巻』 (青林書院新社、昭和56年)101頁。 (8) 今村成和「行政法上の不当利得」『現代の行政と行政法の理論』 (有斐閣、昭和47年)34頁。 (9) 田中二郎「公法上の不当利得に就いて」 『公法と私法』 (昭和30年)45頁。小高剛『新版・注釈民法18巻』 (有 斐閣、平成3年)513頁。 (10) 今村成和・前掲35頁。 (11) 今村・前掲44頁。 (12) 金子宏『租税法(第3版)』(弘文堂、平2年)444頁。 (13) 谷口知平「訴訟・行政処分と不当利得」 『民商法雑誌』21巻11・12号12頁。 (14) このほかに、同旨のものとして、大判明38・6・10『民録』11巻931頁、大判大5年3月15日『民録』22巻 467頁等がある。 (15) 行判大11・7・4『行録』33巻793頁、行判大14・9・16『行録』36巻861頁等。 (16) 大判明43・2・25民録16巻153頁、大判明43・6・30民録16巻492頁。 (17) 今村成和・前掲36頁。 (18) 小高剛『新版・注釈民法18巻』(有斐閣、平成3年)521頁。 (19) 最判昭49・3・8民集28巻2号286頁。 (20)『判例時報』1400号15頁。本判決の評釈としては、碓井光明『判例評論』401号165頁、山村恒年『判例地 方自治』98号93頁、森義之『平成4年度主要民事判例解説(判例タイムズ821) 』270頁などがある。 (21) 東京地判昭49・7・1『訟務月報』20巻11号178頁。 (22) 今村・前掲43頁。 (23) 那覇地判昭50・7・16『訟務月報』21巻9号1807頁。 (24) 江原勲『税』47巻7号62頁 、山代義雄『判例地方自治』100号109頁、伴義聖、大塚康男『判例地方自治』 103号13頁、森義之『平成4年度主要民事判例解説(判例タイムズ821) 』270頁(1993年) 。 (25) 広島地判平成6・2・17『判例地方自治』128号23頁。 (26) 末川博 「 不法行為による損害賠償請求権の時効 」『民法論集』 (評論社、1959年)290頁。 (27) 昭和28年6月29日自行行発第186号・資料29頁。 (28) 熊本地判昭51・3・29『行政事件裁判例集』27巻3号416頁。 (29) 神戸地判昭62・9・28『判例タイムズ』665号119頁等。 (30) 阿部泰隆『政策法務からの提言』(日本評論社、1997年)202頁では、国家賠償請求訴訟を納税者から提 起してもらい、一括して和解に持ち込むことを提案されている。 60 村田.indd 60 04/03/05, 18:21 【研究ノート】 経営福祉の一視点 人文学部 目 1 浜 田 照 久 次 1 序 2 バーナード理論からの考察 3 間教授の経営福祉 4 結 序 高齢化社会の進展にともなって、国による福祉政策が切り詰められる状況にあり、経営組織とし てはそれに対して何らかの対応がせまられている。つまり、 国による福祉政策の切り詰めに対して、 経営組織自体が国にかわって福祉政策をおこなう必要にせまられている。そこで経営組織自体がお こなう福祉政策、つまり経営福祉はどのような観点から考えたらよいか、これを考察するのが本稿 の目的である。 2 バーナード理論からの考察 経営組織がおこなう経営福祉の問題を考えるにあたって、経営組織の基礎理論であるバーナード 理論にそれを求めることにする。 バーナードは、 管理者の職能は組織の諸要素コミュニケーショ ン・システム、 貢献意欲、 共通目的に対応しているとして、 次のものを指摘している。それらは「第 一にコミュニケーション・システムを提供すること、第二になくてはならない努力の確保を促進す ること、そして第三に目的を公式化し、規定すること(1)」である。管理者のこれらの職能は、単な る有機的全体の要素であって、これら諸々の要素が生命あるシステムに結合されることそれが 組織を形成しているが必要である。この結合は、活動への二つの反対の刺激を含んでいる(2)。 第一に管理者の職能の具体的相互作用及び相互適応は、一部は組織環境全体としての特定の協 働システムとその環境の諸要因によって決定される。これは論理的分析過程と戦略的要因の識 61 浜田.indd 61 04/03/05, 18:23 別を含んでいる。つまり前述の管理者の諸々の職能は、それぞれ離れて具体的に存在するのではな くて、全体としての組織過程の部分あるいは側面であって、管理者には全体としての組織とそれに 関連する組織環境を感得することが必要とされるのである。第二にこの結合は、活動の生命力 努力する意思の維持に等しく依存する。これは道徳的側面、モラールの要素、協働の究極の理 由である。 ところでバーナードは、上述の管理過程の本質的側面、全体としての組織環境を感得するという ことは、 「単なる知的方法の能力、そして情況の諸要因を識別する技術を越えるものである。それ に該当する用語は、 “感覚” “判断” “センス”“調和”“バランス”“適切さ”である。それは科学よ りもむしろ芸術の問題であり、論理的であるよりもむしろ審美的である(3)」と指摘する。そしてこ のような管理過程において考慮されなければならない要因が、組織の有効性と組織の能率なのであ る。この組織の有効性と組織の能率の両者が確保されているとき組織は存続するわけであり、管理 者には組織の有効性と組織の能率を確保することが要請されている。 組織の有効性 組織の有効性とは、 「環境情況に対して、その目的が適切であること(4)」、最終目的が与えられて いるとすると、 「最終目的の達成のために、全体としての情況のもとで選択された手段の適切さに (5) 専ら関係している。 」したがって有効性の程度は、目的の達成の程度であって、行われた行為及 びそれによって得られた客観的結果が、個人的動機を満たすのに必要な諸力や物を協働システムの ために十分確保したかどうかである。 さらにバーナードは次のように指摘する。「組織の生命力は、協働システムに諸力を貢献しよう とする個人の意欲に依存している。この意欲には、目的が達成できるという信念が必要である。事 実、目的達成の過程においてうまくいかないと思われれば、この信念は消失してしまう。かくして (6) 有効性がなくなると貢献意欲は消滅する。 」このように有効性には、目的が達成されるという信 念が必要とされ、この信念は管理者が貢献者に与えるものと解されよう。管理者は有効性を確保す るために、目的を設定し、信念を与えて貢献意欲を確保することが必要であり、前述のように管理 者の諸機能は、管理過程の側面であって、有効性の確保には管理者の機能の総てが結合しているの である。 またバーナードは、次のようにも指摘する。「組織の継続は、その目的を遂行する組織の能力に 依存する。このことは明らかにその活動の適切さと、 環境の諸条件の両方に依存する。換言すれば、 (7) 有効性は主として技術的過程の事柄である。 」「各々の技術的過程は、同じ協働システム内で用い られている総ての他の技術に依存する。一般目的を細部目的に分割することが、 これを示している。 (8) 細部目的の正確な形は、一般目的とその部分の達成可能な過程とによって形成されている。 」こ のように有効性は技術の問題であり、協働システム全体の有効性にとっては、これらの技術が統合 されていることが必要である。この技術的統合は、協働システムの規模ないし範囲に影響を与える という点で非常に重要であり、多くの組織が失敗するのは、この技術的統合を考慮しないからとい 62 浜田.indd 62 04/03/05, 18:23 えよう。 以上見て来たように、管理過程を組織の有効性の側面に限っても、それは全体の統合の過程であ り、 「局所的な考慮と広範な考慮との間、一般的な要求と特殊的な要求との間に、効果的なバラン (9) スを発見する過程である。 」ところが全体という観点が常に支配的であるのは、能率最後の 分析においては、有効性を含むとの関連においてであると、バーナードは指摘する。「現代の 大規模な産業の統合の多くは、経済的考慮は別にして、効果的目的達成の手段としての技術の全連 鎖を統制する必要にあると考えられる。逆に、この問題を回避することが困難である故に、しばし ば非経済的な操業に陥ることになる。つまり余り規模が大きくなりすぎれば、伸縮性と適応性が減 (10) 少し、非能率が強いられる。 」つまり、経済的、技術的、科学的等の特殊的側面からによる統制 が支配的であるために、能率が確保されず、組織が存続しえなくなることがある。このように総て の要素を調和的に処理しないために組織の存続が危うくなるとすれば、全体を感得する技量のある 管理者が、修正行動をとらねばならない。かくして管理者には、常に全体を感得する技量、センス といったものが必要とされ、能率との関連において有効性は考えられるべきものなのである。 組織の能率 組織の能率とは、 「そのシステムの均衡を維持するのに十分な程、有効な誘因を提供する組織の 能力である。組織の生命力を維持するのは、この意味における能率であって、物質的生産性の能率 (11) ではない。 」すなわち、提供しうる物質的利益や社会的利益は一般に限られていると考えられ、 そこで生産的観点からの能率も、単に何がどれだけ生産されているかということだけでなくて、個 人の貢献に対して何がどれだけ与えられているかに依存するのである。 物質的利益や社会的利益がもし不当に配分されれば、ある人には不足することになる。それゆえ 能率は、一部は協働システムにおける配分過程に依存しているといえる。さらに協働システムが能 率的であるためには、満足の余剰を創り出さねばならない。なんなれば、もし貢献者が自分の投入 するものを取り戻すだけならなんら刺激はないわけで、その貢献者にとって協働は、なんの純満足 ももたらさぬこととなる。個人にとって能率とは満足のいく交換であるので、かくして協働の過程 には、満足のいく交換の過程も含まれる。このように能率は一方においては、協働が獲得し生産す るものに依存するとともに、他方においては、それらをいかに配分し、動機をいかに変えるかに依 存するのである。究極のところ、組織の能率とは組織と個人との間の相互交換の問題であり、組織 活動を引き出すに十分な程個人の動機を満足させて、組織活動の均衡を維持することであって、 「組 織の生命は、その目的を遂行するに必要なエネルギーの個人的貢献(物質ないし貨幣等価物の支配 の移転をも含めて)を確保し、維持する能力にかかっている(12)」のである。 ところでこのような組織の能率について、バーナードは組織自体の維持という観点に立って、組 織自体の経済である組織経済の均衡という側面から分析されうることを示唆している。バーナード は組織をその機能効用の創造、効用の変形、効用の交換の側面から見ると、組織を中核と した物的システム、人的システム、社会的システムによって構成されている協働システムには、組 63 浜田.indd 63 04/03/05, 18:23 織経済、物的経済、社会的経済、個人的経済の各種の経済があると指摘する。これらの各経済は、 組織経済を中核としたバランスの上に成り立っているのである。組織経済は、 組織が統制する物財、 組織が統制する社会関係、組織が調整する個人的活動に対して、その組織が与える効用のプールで あり、したがって組織の効用は、個人の評価ではなく、組織に独自なものとしての組織の調整行為 に基づいた評価であって、物的所有、社会関係、そして個人の貢献で何をすることができるかとい うことを基礎にして、 組織が自ら評価したものである。それゆえバーナードは次のように指摘する。 「組織経済の均衡は種々の効用を十分に支配することそして交換することそれによって組織を構成 している個人的貢献力を支配し、交換しうるようにすることを必要とする。組織はこれらの貢献力 を使用することによって、効用の適切な供給を確保し、その効用を貢献者に配分することによって、 貢献者から効用の適切な貢献の継続を得る。これらの貢献者が、自らの交換における余剰、すなわ ち純誘因を要求する限り、組織は自らの経済において、交換、変形そして創造によって効用の余剰 (13) を確保するときのみ、存続することができる。 」 以上の考察から、組織の能率は次の二つの統制から生じるといえる。「交換点、つまり組織の周 辺でのアウトプットとインプットの統制、そして組織に内的であり、生産要因である調整である。 (14) 交換は配分要因であり、調整は創造要因である。 」前述したように、組織は確保した効用を貢献 者に配分することによって、貢献者から効用の適切な貢献を継続して受け取ることができるのであ るから、組織の能率は、一つは貢献者との配分に関係するものである。しかしながら、バーナード は次のように指摘する。 「配分的要因においてどんなに能率が得られても、大抵の場合、協力しな いで個々に得ることが可能な満足の総計よりもより大きい総計は得られないだろう。生存するため には、協働はそれ自体余剰を創造せねばならない。配分における保守主義の必要は、協働からの余 剰がほとんど成功している組織においても小さく、 浪費を許すほど十分でなく、 こうした事実によっ (15) て組織が崩壊する可能性に原因がある。 」したがって貢献者が純誘因を要求する限り、組織は自 らの経済において効用の余剰を確保するときのみ存続することができるといえるわけで、多くの事 情のもとで、第二の要因である調整の質が、組織の存続における決定的要因となるのである。 そしてバーナードは、配分の統制は高度に発達した技術の問題となっているが、創造の能率は結 果的には技術の発明を含むが、性格としてはもともと非技術的であると述べ、次のように指摘する。 「必要なことは、全体として物事を見るセンス、全体に対する部分の永続的従属、すべての諸要因 他の管理職能、技術、説得、誘因、コミュニケーション配分の能率からの、もっとも広範 な観点に立った、戦略的要因の識別である。物的、生物的、経済的、社会的、個人的そして精神的 効用を計る共通の尺度はありえないので、創造的協働の戦略的要因の決定は、センスの問題であ (16) り、釣合い感の問題であり、全体に対する異質的な諸部分の重要な関係の問題である。 」このよ うに全般的管理の過程は、その重要な側面において知的なものでなく、それは審美的、道徳的なも のであるといわれ、この管理過程の遂行には、適合性のセンス、適切性のセンスそして責任といっ た能力が必要とされるわけである。この点に関しては、管理責任の最高の表現として、管理者によ 64 浜田.indd 64 04/03/05, 18:23 る道徳準則の創造が主張せられていることは、以前に指摘してきたところであり、それは信念を創 造することによって協働的な個人的意思決定を鼓舞するというリーダーシップの問題であった。し たがって、組織の存続にとってリーダーシップが重要な鍵となり、バーナードは、「組織の存続は、 リーダーシップの質に依存する。そしてその質はその基礎にある道徳性の幅から生じる」、「組織の 存続は、組織を支配している道徳性の幅に比例する。このことは、見通し、長期目的、高い理念が 協働の持続性にとっての基本であるということである(17)」と指摘する。 それゆえ、組織への貢献者が、その協働的努力を提供する際の満足と犠牲の主観的な評価は、短 期における評価だけではなくて、長期、未来にわたっての評価であることが注意されねばならない。 管理者は貢献者の動機に積極的に働きかけるわけであるが、この際必要とされるのが信念を創り出 すというリーダーシップなのである。貢献者間にこの信念があればこそ、長期的観点に立って貢献 者は満足と犠牲を評価することができるわけであり、それに基づいて、継続的努力を提供するので ある。 以上述べてきたように、管理過程においては、組織の有効性と組織の能率の確保が考慮されなけ ればならず、これは管理者の行為基準であるといえる。組織の均衡をその機能的側面から見ると、 組織経済における組織の能率有効性を含むの確保の問題として把握される。それは個人の 動機を満足させて、組織活動の均衡を維持することであり、いかなる組織においても、必要な貢献 を確保し維持していくためには、誘因と説得がともに必要である。経営福祉はこのような誘因の一 つとしてそして重要な説得の機能を果たすものと考えられる。すなわち、社会福祉が次第に削られ ていく時代にあって経営福祉は組織貢献者の貢献意欲を獲得する大きな誘因として機能するのであ る。 ところでこの貢献意欲が生じるのは、 「まず、協働の機会が個人が一人で行為するのと比較して、 何らかの利益を与えるかどうか、そしてもしそうであるなら、その利益は、他の協働の機会から得 られる利益よりも多いか少ないかということ(18)」、すなわち、個人が協働することによってこうむ る犠牲と比較して、そして他の協働から得られる誘因と比較して、満足が大きいと考える場合、つ まり、純満足(純誘因)を得られると判断する場合に生じると考えられる。このように貢献意欲が 生じるのは、協働にともなう犠牲と満足との比較考量に基づいた判断の結果であり、これはまった く、個人的、主観的基準に基づくものである。つまり、まず協働に参加するかの意思決定をおこな う。このとき、この協働に加わることによってこうむる犠牲と得られる満足とを主観的に比較考慮 する。さらに他の協働から得られる満足の機会をも比較検討し、この協働に参加したほうが純満足 を得られると主観的に判断したとき、はじめてこの協働に参加する。次に、貢献行為を提供し続け るかどうかの意思決定をおこなう。協働の目的に貢献すること (犠牲) と、 協働から得られる誘因 (満 足)との主観的比較考慮をおこない、純誘因(純満足)を得ることができると判断したとき、協働 の目的の達成のために貢献行為を提供する。ところが逆に犠牲のほうが満足より多いと判断したと きは、貢献意欲は生じない。この場合は貢献行為をさしひかえるか、あるいは協働関係から去って 65 浜田.indd 65 04/03/05, 18:23 いくと考えられる。 以上見てきたように、個人の貢献意欲が生じるのは、犠牲と満足との主観的比較考量において、 個人が純満足を得ることができると判断した場合である。ただここで注意を要するのは、この犠牲 と満足との比較考量は、 前述したように、 現時点のみに限られるものではなくて、 長期、 未来にわたっ たものであるということである。積極的な貢献意欲は、将来に対する期待、信念に基づいた犠牲と 満足との比較考量から生じるのである。このような貢献意欲の獲得こそが経営組織の存続にとって 重要な要素であり、それを獲得するのが管理者の重要な役割であり、経営福祉はこれからの経営組 織にとって重要な誘因となるであろう。 こうした経営福祉について、間教授は『経営福祉主義の進め(19)』において、その重要性を指摘 している。次にその主張を概観していこう。 3 間教授の経営福祉 間教授の主張を見ると、次の通りである。企業は全体社会を構成する部分であるから、経営福祉 も社会福祉の一部と考えられる。福祉は究極的には、一人ひとりの主観的な判断の問題である。こ のように経営福祉は社会福祉の一部であり、それを判断する、個人、個人の主観的側面を重視して いる。そして国土が狭く、資源に乏しい国で国民全体が幸福になろうとすれば、福祉国家の方向を 選ばざるを得ない。この場合に、企業は社会の一部分として、社会の構成員である従業員の福祉に 対して責任を負わされることになる。従業員の福祉の向上は、いわば企業にとっての社会的責任で あり、社会福祉の一環としての立場が守られなければならないとしている。こうした社会福祉の一 環としての経営福祉という認識を明確に持つ必要性を強調し、それを「開放的経営福祉主義」と呼 んでいる。したがってそれは社会福祉の諸施策と密接に関係しており、積極的にその調和をはかっ ていく必要性をといており、その方向こそが今後の企業経営の進むべき道としている。間教授の主 張は、以上簡単に見てきたように、社会福祉と経営福祉の調和をはかり、従来の法定外福利が主で 法定福利が従の考え方を逆転させる方向を示唆している。すなわち、経営福祉は経営組織にとって は法定福利費の増大となって現れるが、総論賛成、各論反対の姿勢でのぞむのではなく、経営福祉 と社会福祉との調和をはかっていくことが日本企業の進むべき方向であると主張している。 4 結 間教授が指摘した日本企業の進むべき道として、経営福祉と社会福祉との調和をはかることこそ 重要な道と思われるが、それには多くの困難が予想される。しかしバーナード理論から考えると、 経営福祉はこれからの社会において貢献意欲を獲得する重要な誘因となりうるし、管理者にとって は経営福祉の主観的効用をうったえて経営組織の存続をはかっていくことが必要である。間教授も 66 浜田.indd 66 04/03/05, 18:23 指摘しているように、福祉の問題は主観の問題であり、バーナード理論からは、経営福祉という誘 因にたいして主観的比較考量が貢献の基礎になり、それを獲得するのが管理者の役割であり、経営 組織を存続させていく道である。経営福祉の発達は、これからの日本の経営組織に求められている 方向といえよう。 注 (1) C.I.Barnard,The Functions of the Executive,1968,p.217 (2) ibid.,p.235 (3) ibid.,p.83 (4) ibid.,p.236 (5) ibid.,p.82 (6) ibid.,p.91 (7) ibid.,p.237 (8) ibid.,p.238 (9) ibid.,p.238 (10)ibid.,p.93 (11)ibid.,p.92 (12)ibid.,pp.244 - 245 (13)ibid.,p.254 (14)ibid.,p.256 (15)ibid.,pp.256 - 257 (16)ibid.,p.282 (17)ibid.,p.282 (18)ibid.,p.85 (19)間 宏著『経営福祉主義のすすめ』東洋経済新報社 昭和 54 年 67 浜田.indd 67 04/03/05, 18:23 【研究ノート】 Harrod Model の不安定性について 赤 城 国 臣 1.はじめに 「現実成長率 G が保証成長率 Gw から一度でも乖離すると、G は Gw から上または下に益々乖離 していく」という Roy F. Harrod(1948, 1973)の命題は、Harrod の不安定性原理として余りにも 有名である。多くの著者は、その原理の成立を当然のこととして受け止め、Harrod model におけ る不安定さの原因を、model における係数の固定性に求めてきた。こうした理解に立ち、係数の 可変性を容認し、新古典派などは、保証成長率 Gw と自然成長率Gnとが等しくなることを証明し てきた。しかしながら、以上の文脈で考えるなら、Harrod が問題にしたのは、Gw とGnではなく、 G と Gw との乖離であろう。 G と Gw の乖離について、福岡正夫(1967)は、二つの解釈が成り立ち得ることを示している。 一つは、Sidney S. Alexander(1950)のように、成長率が変化していくと考える解釈の仕方である。 この場合には、不安定性原理が成り立つと考えられる。これに対して、Dale W. Jorgenson(1960) のように「所望の投資量と現実の投資量との大小に応じて、成長率ではなく資本財の需要量そのも のを増減すると考える」 (福岡、50)なら、不安定性原理の成立は、投資関数の調整係数や資本係 数に依存してくることになる。 福岡の整理は、明快であるが、その説明は、ペダンティックで難解である。Alexander 等の説 明をより簡単に示す方法がないのだろうか?更に言えば、福岡らの論文では、Harrod が 1973 年 に発表した成長論に関する最後の著書が扱われていない。それは、両者に時間的なズレがあるため である。従って、Harrod 自身がこの問題をどのように考えたのかを、問う必要もある。 そこで、このノートでは、まず不安定性原理の成立を簡単に説明する道を探りたいと思う。そこ で、次節では、Harrod 成長論の諸仮定と成長率概念を示す。その上で3節では、短期における不 安定性原理が成り立つかどうかを検討する。そこでは、Harrod 自身がどのように考えていたのか を見ておきたい。最後に、G と Gw との乖離に含まれている一つの問題を示したい。 69 赤城.indd 69 04/03/05, 18:26 2.仮定ならびに成長率の諸概念 以下の議論では、Harrod と同じように、次のように仮定する。 ①生産要素は、労働と資本ストックだけで、それぞれの量を N と K で表すことにする。 ②労働の成長率は、外生的に決定され、一定である。 ③資本係数は、一定である。 ④平均貯蓄性向は、一定である。 この小論では、G と Gw との乖離を議論する。それゆえ、これまでに出てきた Harrod の成長率 概念の中で、保証成長率と現実成長率を定義しておこう。 ①保証(適正)成長率(Gw)warranted rate of growth Harrod 成長論の中心をなすのは、保証(適正)成長率である。この概念は、資本の完全利 用の下で実現される成長率と定義される。パラフレーズすれば、投資によって増産可能になっ た生産物が需要されて、その投資が適正であったことを企業家に保証する成長率と言われる。 資本の完全利用の下で、国民所得 Y を一単位生産するのに必要な資本量 K を、Harrod は、 必要資本係数 Cr と呼ぶ。従って、 K= Cr・Y (1) なる関係が成り立つので、Cr が固定係数なら、投資を I とすれば、 I=⊿ K = Cr ⊿Y (2) となる。ここで、⊿は増分を表わす。 ところで、平均貯蓄性向をsとすると、貯蓄 S は、 S= sY (3) となるから、 (2) 、 (3)及び短期均衡の条件S=Iから、保証成長率は、 (4) と求められる。 ②現実成長率(G)actual rate of growth この成長率は、 実際のデータから計算される。現実資本係数 C は、 I/ΔYで求められるので、 会計学的恒等式S=Iを念頭に、 (5) が成立する。 70 赤城.indd 70 04/03/05, 18:26 3.不安定性原理は成立するか? 今、現実成長率Gが保証成長率 Gw を超えたとしよう。このことは、現実資本係数Cが必要資本 係数 Cr 以下になっていることを意味する。こうした状態は、国民所得を1単位生産するのために、 企業家が必要だと考える投資量より、実際の投資量が低いことを表わしている。このようにして、 投資が増大するというところまでは、研究者に共通する理解である。意見が分かれるのは、投資の 成長率が加速されると理解するのか、 単に投資の大きさが前期より増大すると理解するのかである。 ここで注目すべきは、会計学的恒等式 S = I と平均貯蓄性向が一定であることから、 I= sY (6) が成り立つことである。それゆえ、 (7) が言える。すなわち、Harrod が「G が Gw から乖離する」という場合、投資の成長率も国民所得 の成長率と同じ率で離れている。それゆえ、Harrod の不安定性原理が成立するとするなら、 それは、 投資の成長率自体が前期以上にまたは以下に変化していかなくてはならないのである。 Harrod(1973:34)自身の著書にも、次のような記述が見える。 if C<Cr, it is obvious that there will be an increase of orders. Fixed capital or stocks in hand being insufficient for needs, the rate of ordering for more will be stepped up. この引用文で、Harrod は、発注率(the rate of ordering)が増大すると記している。ここから判 断する限り、Harrod 自身も、不安定性原理の成立を、単に投資が変化することではなく、投資の 成長率の変化に求めていたと考えられる。 しかしながら、このようにして G と Gw とが乖離する場合、そこには、ある種の非対称性が存 在するのではないのか、という疑いがある。なるほど投資の成長率は、正の値で無限大に増大して いくことが可能である。しかしながら、負の率で減少していくと、やがてある期の投資がゼロにな ると、その期以降、国民所得と投資の成長率は、ゼロ以下にはなり得ないからである。そこに生じ るのは、成長率ゼロの単純再生産の世界であり、経済が無限に奈落の底に突き進んでいくわけでは ないのである。 4.おわりに G と Gw とが乖離する場合、投資の成長率が加速されるなら、不安定性原理が論理的に成立する 可能性は、これを否定することはできないであろう。しかしながら、その成立が現実的かどうかと なると、問題であろう。なぜなら、現実成長率Gが適正成長率 Gw を超え、資本不足だとして、企 71 赤城.indd 71 04/03/05, 18:26 業が投資の成長率を一層増加させるような行動を採るかどうかには、疑問がある。資本過剰に転換 することを恐れる企業は、投資の成長率ではなく、単に投資を増大させるだけなのではないだろう か?その場合には、Jorgenson が指摘しているように、不安定性が生じることは、必ずしもあり得 ないのである。 更に言えば、不安定性原理は、非対称性を有しているのではないのだろうか?なぜなら、投資の 成長率は、正の値で無限大に増大していくことが可能である。しかしながら、負の率で減少してい くと、やがてある期の投資がゼロになると、その期以降、国民所得と投資の成長率は、ゼロ以下に はなり得ないからである。 <参考文献> Alexander, Sidney S.,"Mr. Harrod' s Dynamic Model", Economic Journal , Dec. 1950, 724 - 39. Harrod, R. F. Towards a Dynamic Economics(London:MacMillan, 1948). Harrod, R. F. Economic Dynamics(London:MacMillan, 1973). Jorgenson, Dale W. ,"On Stability in the Sense of Harrod", Economica, Aug. 1960、243 - 48. 福岡正夫「経済成長論の発展」安井琢磨編『ケインズ以後の経済学』 (日本経済新聞社、1967). 72 赤城.indd 72 04/03/05, 18:26 研究活動報告 (2002年12月1日~ 2003年11月末日) 凡 例 (1)目下の研究テーマ (2) 「著書」 「論文」 「その他」 (3) 「研究発表」 「講演」 (4) 「集中講義」 (5) 「海外出張・研修」「その他」 (6) 「文部科学省科学研究費補助金」「委任経理金」「産学連携等研究費」 (7) 「共同研究」 (8) 「学会」 「研究会」 73 活動報告.indd 73 04/03/06, 10:53 ○文化財論講座 藤 沼 邦 彦 (1) 煙北日本に於ける縄文文化の研究(亀ケ岡遺跡を中心に) そのために①2002年8月に調査した青森県平舘村今津遺跡の出土品の調査・整理、②東北地方各地の遺跡や博物館・埋 蔵文化センター等の所蔵品を調査した。なお、今年度中に実測図を中心とした考古学資料集を刊行する予定。 (2) 著書: 煙(共編著)『青森県史資料篇 考古4』青森県、2003年3月 論文: 煙「柄鏡の鏡背文様の意義」『考古学ジャーナル』507号、15 ~ 18頁、2003年2月 その他: 煙「大型土偶(岩手県盛岡市萪内遺跡)」『国華』1293号、45頁、2003年7月 (3) 煙弘前学院大学「土偶の祈り」2003年10月14日 煙石巻文化センター「毛利コレクションと博物館」 (シンポジウム)2003年11月24日 煙八戸市教育委員会「縄文時代の南部と津軽-是川遺跡と亀ケ岡遺跡をめぐって」 (弘前大学公開講座) 、2003年8月4日 諸 岡 道比古 (1) 煙ドイツ観念論思想における「宗教」論の研究 須 藤 弘 敏 (1)目下の研究テーマ 煙東アジア仏教絵画史 煙東北の美術 煙地域文化政策 (2)論文その他 煙「美術工芸」『新編弘前市史 通史編3・近世編2』弘前市、2003年3月、pp.638 ~ 647 煙「金色堂に秘められた清衡の願い」『週刊日本遺産』27号、朝日新聞社、2003年4月、pp.12 ~ 13 (3)講演 煙「地域・文化・文化財」弘前大学公開講座、岩木町公民館、2003年11月21日 (8)共同研究 煙青森県下寺院文化財悉皆調査(15年度はむつ市・八戸市・三戸郡) 、青森県環境生活部 杉 山 祐 子 (1) 煙アフリカ中南部ミオンボ林帯に住む焼畑農耕民社会の生態人類学的研究 煙母系社会 煙在来農法と農民による在来農法の「近代化」および商品経済への対応 (3) 講演: 公開レクチャー「はだか」 煙弘前大学人文学部文化財論講座 学会発表: 煙日本村落研究学会「津軽地域の社会変容─岩木町B集落における機能集団の流動性」2003年10月 (5) 現地調査: 煙タンザニア共和国(2003年8月) (6) 74 活動報告.indd 74 04/03/06, 10:53 文部科学省科学研究費補助金: 煙基盤研究(B)「周縁地域における近代との出会い─地域による近代化の翻訳と馴化の人類学・社会学的研究―」 (研究 代表者:杉山祐子) 煙特定領域研究「資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築」 (研究代表者:内堀基光 東京外国語大学) 煙基盤研究(B)「急速高齢化地域に関する学際的共同研究」 (研究代表者:丹野正) (7) 煙「ポストコロニアル・アフリカ:その動態と展開」 、国立民族学博物館 煙「土地・自然資源をめぐる認識・実践・表象過程」 、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 煙「津軽の近代化と人々の成長」(弘前大学) 宮 坂 朋 (1) 煙ローマ時代の地中海交流(モノと図像) (3) 煙愛知県埋蔵文化財センター「イタリア・中東地域における発掘調査記録の方法」考古学フォーラム定例会 no.46 「考古 学デジタル情報を考える」2003年6月7日 煙文化財論講座レクチャーシリーズ「ヌードの図像学」 、弘前大学人文学部、11月1日 (5) 煙発掘調査:イタリア ? タルクィニア、2003年8-9月 関 根 達 レバノン、ティール、2003年9月 人 (1) 煙本州アイヌの考古学的研究、供養塔からみた飢饉の研究 (2) 煙関根達人「アイヌ墓の副葬品」『物質文化』76、38 ~ 54頁、2003年11月 煙関根達人「鍋被り葬考」『人文社会論叢』(人文科学篇)9、23 ~ 47頁、2003年2月 煙関根達人・柴正敏「蝦夷錦の品質と年代」『青森県史研究』8、95 ~ 113、2003年12月 煙藤沼邦彦・工藤清泰・佐々木浩一・関根達人編『青森県史』資料編(考古4) 、2003年3月 煙関根達人編『津軽十三湊湊迎寺過去帳の研究』 、弘前大学人文学部文化財論ゼミナール調査報告Ⅰ、2003年3月 (3) 煙日本大学・「アイヌ墓の副葬品に関する考古学的検討」 、日本考古学協会第69回総会研究発表、2003年5月25日 煙青森市市民文化センター「副葬品から見たアイヌの歴史と文化」 、平成15年度地方史研究発表会講演、2003年11月24日 (6) 煙文部省科学研究費補助金(基盤研究C)「津軽氏城跡の発展過程に関する文献資史料と遺物史料による研究」 (研究代表 者:弘前大学長谷川成一)研究分担者 (7) 煙国立歴史民俗博物館事業「考古資料の情報集成的研究-経塚データベース-」調査委員 足 達 薫 (1) 煙16世紀イタリアにおける「イメージ作りの論理」の考察 (2) 煙足達薫「アレッサンドロ・コンティ著『修復の鑑 交差する美学と歴史と思想』岡田温司、喜多村明里、水野千依、金 井直、松原知生訳、ありな書房」(書評)、『図書新聞』 、第2614号、2003年1月18日(土曜日) 、第四面。 煙足達薫「ジュリオ・カミッロ『劇場のイデア』 :翻訳と註釈(3) 」 、弘前大学人文学部編『人文社会論叢(人文科学篇) 』 、 第9号、2003年2月28日、pp. 1-22. 煙足達薫「ジュリオ・カミッロ『劇場のイデア』 :翻訳と註釈(4) 」 、弘前大学人文学部編『人文社会論叢(人文科学篇) 』 、 第10号、2003年8月31日、pp. 1-18 (6) 煙日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究B「古典主義」美術の理論的研究(研究分担) 75 活動報告.indd 75 04/03/06, 10:53 山 田 厳 子 (1) 煙生命観をめぐる〈口承〉史の研究 煙仏教唱導における口承文藝の研究 (2) 煙山田厳子「福神としての猩々-沼島の『酒手畑』伝承考-」西郊民俗談話会編『西郊民俗』181号、2002年12月15日、 42 ~ 48頁 煙山田厳子「湊迎寺の『十王画軸』」関根達人編『津軽十三湊湊迎寺過去帳の研究』 、弘前大学人文学部文化財論ゼミナー ル調査報告1、2003年3月5日、54 ~ 58頁 煙山田厳子「見世物としてのケッカイ」弘前大学国語国文学会編『弘前大学国語国文学』24号、2003年3月20日、1-37 頁 煙山田厳子「第一編 空間の民俗 第五章 世間-村落を越えた民俗-」 『山梨県史 民俗編』2003年3月31日、356- 406頁 煙山田厳子「第二編 時間の民俗 第五章 歴史-世代を超えた時間- 第四節 信玄伝説」 『山梨県史 民俗編』 2003 年3月31日、747-767頁 煙山田厳子「ことわざの伝承と働き-ことわざの『伝承性』とは何か-」福田晃ほか編『講座日本の伝承文学 第9巻 口頭伝承〈トナエ・ウタ・コトワザ〉の世界』三弥井書店、2003年7月25日、370-387頁 煙 (共編)『一四巻本地蔵菩薩霊験記』(下)、三弥井書店、2003年8月 (3) 煙慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス、山田厳子「蚕の〈神話〉と〈伝承〉 」鶴岡市主催、シルクサミット2003「シルク 文化論Ⅱ」、2003年3月15日 煙 キャンパスプラザ京都、山田厳子「単身者の民俗-新しい『福子』論にむけて-」2003年度説話伝承学会秋季例会、 2003年9月13日 煙弘前大学人文学部、山田厳子「祭礼としての裸詣り・裸祭」弘前大学文化財論講座レクチャーシリーズ第5回「はだか」 、 2003年11月1日 (6) 煙平成15年度文部省科学研究費補助金(萌芽研究) 「青森県における仏教唱導空間の基礎的研究-図像・音声・身体-」 (研 究代表者:山田厳子) 煙平成15年度文部省科学研究費補助金(基盤研究C) 「半島空間における民俗宗教の動態に関する調査研究」 (研究代表者: 諸岡道比古)研究分担者 ○思想文芸講座 佐 藤 憲 和 (1) 煙T・ハーディの詩と詩劇 (2) 論文: 煙 「T・ハーディの詩的ビジョン」『人文社会論叢』第9号、2003年2月 五十嵐 靖 彦 (1) 煙生命倫理学 医学哲学 (2) 論文: 煙 「人間の尊厳と医療」、セミナー医療と社会『セミナー医療と社会』第23号、H15. 6、pp.12-19 煙 「現代社会の倫理的諸問題とその評価」、弘前大学人文学部医療化社会研究会『医療化社会の思想と行動』第2号、 H15. 8、 pp. 3-13 その他: 76 活動報告.indd 76 04/03/06, 10:53 煙 (翻訳分担)ノルデンフェルト、L.著 石渡・森下監訳『健康の本質』 (時空出版) 、H15. 8、pp.96-126 煙 (書評)ライダ-島崎玲子・大石杉乃編著『戦後日本の看護改革』 (日本看護協会出版会) 、日本看護協会出版会『看 護』12月号、H15.12、p.96 (3) 研究発表: 煙国立弘前病院地域医療研修センター、「人間の尊厳と医療」 、セミナー医療と社会第42回例会 、H15.3.8 講演: 煙青森県立保健大学大学院保健科学研究科、「看護の哲学」 、看護教育学研究会、H15.8.7 (6) 煙弘前大学重点研究助成金 (7) 煙弘前大学臨床倫理研究会、弘前大学人文学部・医学部 (8) 煙弘前大学哲学会第38回大会、H.15.9.27, 弘前大学人文学部 408視聴覚室 煙弘前大学哲学会・セミナー医療と社会・弘前大学臨床倫理研究会共催 公開学術講演会、H15. 11. 17、弘前大学創立50 周年記念会館 村 田 俊 一 (1) 煙T・S・エリオットに見られる文学と思想-ヨーロッパ精神史を背景にして- (2) 煙村田俊一、「ケンブリッジ・プラトニスとしてのT・S・エリオット」 、弘前大学人文学部『人文社会論叢』 (人文科学篇) 第9号、2003年2月28日、79頁~ 96頁 (3) みこころ 煙成蹊大学「T・S・エリオットとG・ハーバート-『聖意はすなわちわれらの平和』-」 (日本英文学会、 2003年5月25日) 煙駒沢大学、シンポジウム「T・S・エリオットのヨーロッパ文学思想史-クラーク・レクチャーズを中心に-」 、 『ダン テへの回帰』」(日本T・S・エリオット協会、2003年11月8日) (8) 煙 「東北英文学会」9月27日、28日 植 木 久 行 (1) 煙『杜牧詩選』の訳注に専念 (2) 論文: 煙植木久行「『和漢朗詠集』所収唐詩注釈補訂(14) 」 『中国詩文論叢』第21集、2002年12月、294 ~ 310頁 煙植木久行「『千載佳句』所収白居易詩逸句考(下) 」 『白居易研究年報』第4号、2003年9月、164 ~ 183頁 その他: 煙植木久行「杭州-西湖をめぐる詩心の交響-」 『月刊しにか』第10号、2003年10月、26 ~ 31頁 煙植木久行「哲人往矣、存者奈何-松浦友久先生を懐う-」 『東方宗教』 (日本道教学会)第102号、102 ~ 106頁 田 中 岩 男 (1) 煙ゲーテ『ファウスト』研究 (6) 煙文科省科学研究費補助金基盤研究(C)(2)「西欧近代の成立と〈ファウスト文学〉に現れた時間意識の変容に関する 研究 77 活動報告.indd 77 04/03/06, 10:53 李 梁 (1) 煙中国思想における科学の諸問題:明末から二十世紀前半まで 煙現代新儒学と京都学派の哲学との比較研究 (2) その他: 煙論文翻訳「戦時遺産及其二重性」(山之内靖「戦時期の遺産とその両義性」 ) 『学術思想評論』 (中国・遼寧大学出版社) 近刊予定の「後冷戦時期日本的思想課題特集」に出稿済み。 煙 (書評)「道とロゴス」『人文社会論叢』第11号掲載予定 (3) 講演: 煙中国ハルビン師範大学(中国文学系大学院主催) 、 「作為技術体系的近代-近代中国思想史研究的方法論試論」 ( 「技術シ ステムとしての近代―中国近代思想史研究における方法論試論」 ) 、2003年9月26日。 煙中国ハルビン師範大学(日本言語文学系・政治法律学院連合主催) 「見無形之形、聴無声之声―関於京都学派的哲学」 、 (形 なき形を見、声なき声を聞く―京都学派の哲学について) 、2003年9月29日 (4) 煙 「近代中国的科学思想問題―以科学与人生観論争為中心」 (近代中国における科学思想の問題―科学と人生観との論争 を中心に―)中国ハルビン師範大学中文系、2003年9月19-9月23日 (5) 煙中国(北京中国社科院近代史所・上海華東師範大学・南京大学など) 、2003年2月24日~3月18日 煙中国(ハルビン師範大学)2003年9月17日~ 10月10日 (7) 煙 (陳独秀研究・東京大学大学院総合文化研究科科学史科学哲学研究室) 今 井 正 浩 (1) 煙ギリシア哲学・ギリシア思想史(とくに医学思想)に関する研究 煙医学・医療に関する倫理思想史的研究 煙疾病観および身体観をめぐる比較思想史的・社会文化史的研究 (2) 論文: 煙今井正浩「ギリシアの医学思想と人間-ヒポクラテス『医師の誓い』における人間観-」弘前大学人文学部医療化社会 研究会編『医療化社会の思想と行動(Ⅱ)』〔平成14年度共同研究論集〕 (2003年8月30日発行)pp.41-55. 哲学小論: 煙今井正浩「サナトロジーから生の哲学へ-古代ギリシア人の死生観-」 『PSIKO』2003年3月号(2003年3月10日発行) 、 冬樹社、pp.52-55. (3) 研究発表: 煙今井正浩「ギリシアの医学思想と人間」セミナー医療と社会 第42回例会、2003年3月8日、国立弘前病院地域医療研 修センター 煙今井正浩「ギリシアの医学思想における「自然」概念」日本科学史学会 第50回年会、2003年6月8日、神戸大学国際 文化学部 (4) 煙京都大学文学部・京都大学大学院文学研究科 西洋哲学史特殊講義、2003年9月22日~9月26日 (6) 煙平成15年度弘前大学重点研究(医の倫理) 研究課題「患者主体の医療構築のための倫理的諸課題をめぐる調査研究プロジェクト」 (7) 煙第7回ギリシア哲学セミナー、学習院大学、2003年9月13日~ 14日 78 活動報告.indd 78 04/03/06, 10:53 (8) 煙弘前大学臨床倫理研究会(平成15年度弘前大学重点研究) 泉 谷 安 規 (1) 煙シュルレアリスムについて、および19世紀20世紀フランス文学に表象される「催眠術」について (2) 煙泉谷安規、「19世紀フランス文学のなかに現れるメスメリズム的人物の変遷-バルザック、ゴーティエ、フローベール、 モーパッサンを例にとって」、『医療化社会の思想と行動(2) 』 、平成15年8月30日、pp.57-81 煙 (共訳)ジャン=ピエール・デュピュイ『犠牲と羨望-自由主義社会における正義の問題』 、法政大学出版局、 2003年10月22日 (4) 煙フランス語入門、放送大学青森学習センター、平成15年6月21日22日 木 村 純 二 (1) 煙日本近世倫理思想史における「鬼神」の観念について (2) 煙木村純二「生命の根拠をめぐる一考察 ~「愛」は「生命」の根拠か~」 『季刊日本思想史 No. 62 特集 生命と倫理』 (ぺりかん社)2002年12月発行、3~ 12頁 煙木村純二「伊藤仁斎における「恕」の意義」『国士舘哲学 第7号』 (国士舘哲学会)2003年3月発行、149 ~ 168頁 煙近代日本思想研究会『天皇論を読む』(講談社現代新書)2003年10月発行、木村執筆担当分10 ~ 93頁 及び 206 ~ 224頁 (3) 煙弘前大学「宿世の思想」弘前大学哲学会(2003年9月27日) ○コミュニケーション講座 伊 藤 守 幸 (1) 煙平安文学の研究、及び国内外の日本文学研究の比較 (2) 煙 「物語を求める心の軌跡-『更級日記』の構造が示すもの」 『< 新しい作品論 へ>、< 新しい教材論へ>(古典編2) 』右 文書院 2003年1月 pp.100-117 煙 「平安文学の内と外-紫式部の漢文的教養の位置付けを中心に-」 (英訳併記) 『人文社会論叢』第9号 2003年2月 pp.113-128 (5) 海外出張: 煙 カナダ8月 (6) 煙「文部科学省科学研究費補助金」 煙 「学術国際振興基金」 (7) 煙 「『更級日記』の英訳と英語による注釈、解説の作成」トロント大学ソーニ ャ・アンツェン教授(カナダ) (8) 煙「日本文学国際シンポジウム 文化の翻訳は可能か-古典の再解釈と翻訳-」 (企画及び司会担当)2003年9月26日 79 活動報告.indd 79 04/03/06, 10:53 木 村 宣 美 (1) 煙数量表現の構造的依存関係に関する理論的・実証的研究 (2) 煙 「遊離数量詞の構成素性について」『人文社会論叢(人文科学篇) 』第9号、平成15(2003)年2月、129-144、弘前大 学人文学部 煙 「遊離数量詞の構成素性と等位接続」『日本言語学会第126回大会予稿集』平成15(2003)年6月、124-129、日本言語 学会 煙 「関係詞節の外置構文としてのso…that 構文」 『英語青年』 (12月号)第149巻第9号、平成15(2003)年11月、46-47(566 -567)、研究社 (3) 煙 「語順と情報構造-構文選択のプロセスを中心に-」弘前大学人文学部公開講座『人文科学はおもしろい-言語研究か ら人文科学の魅力を語る-』八戸サテライト(ユートリー4階) 2月 煙「遊離数量詞の構成素性と等位接続」日本言語学会第126回大会 煙模擬講義「言語構造 I」青森県立五所川原高等学校 煙模擬講義「言語構造 I」青森県立八戸高等学校 青山学院大学 6月 8月 10月 (6) 煙平成15年度文部科学省科学研究費補助金 [ 基盤研究(C) (2)] 研究題目 : 数量表現の構造的依存関係に関する理論的・ 実証的研究(課題番号15520302) (8) 煙東北英文学会第58回大会開催校委員9月 山 本 秀 樹 (1) 煙世界諸言語における語順の地理的・系統的研究 (2) 煙山本秀樹「言語にとって冠詞とは何か」『言語』 (大修館書店) 、2003年10月号、28-34頁 煙山本秀樹(4者共訳)『ヨーロッパ言語事典』(東洋書林) 、2003年8月 (3) 煙八戸サテライト公開講座、「言語研究から人文科学の魅力を語る」 、2003年2月23日 煙北海道函館東高等学校出張講義、「言語学の概要および世界の言語について」 、2003年5月20日 煙公開講座「世界の言語」(於青森市文化会館)、2003年9月4日 (6) 煙科学研究費補助金(研究成果公開促進費)学術図書(2003年12月刊行) 原 田 悦 雄 (1) 煙中世ドイツ語・ドイツ文学、ドイツの言語政策 (8) 煙弘前大学人文学部フォーラムディスカッション「日本の言語外交」第二部パネルディスカッション「日本の言語外交の 未来」パネラー、平成15年11月 上 松 一 (1) 煙Learner Development: Learner Autonomy (3) 煙青森県立田名部高等学校、出張講義、2003年10月21日 煙'English Communication'「第53次教育研究青森県集会」第2分科会「外国語教育」2003年11月8日、9日 (8) 80 活動報告.indd 80 04/03/06, 10:53 煙 「第53次教育研究青森県集会」第2分科会「外国語教育」研究協力者 熊 野 2003年11月8日、9日 真規子 (1) 煙映像とコミュニケーション(映画の中の「場所」 ) 煙フランス現代演劇と能 煙ヌーヴォー・ロマン作家と映画 田 中 一 隆 (1) 煙観客論的視点から見たイギリス・ルネサンス演劇のマルティプル・プロット構造の研究 (2) 煙田中一隆、 (報告書)『観客論的視点から見た英国ルネサンス演劇のマルティプル・プロット構造の研究』 (平成13[2001] 年度~平成14[2002]年度文部科学省科学研究費補助金報告書[基盤研究(C) (2) ] 、 研究代表者:田中一隆) 、2003(平 成15)年5月、全7章111頁、単著. (3) 煙成蹊大学、 成蹊大学、「Macbeth のequivocationとShakespeareの作劇・ 術」 、日本英文学会第75会全国大会、2003(平成15)年5 月25日. 煙財団法人八戸地域地場産業振興センター(ユートリー) 、 「弘前大学人文学部八戸サテライト公開講座『人文科学はおも しろい―文学研究から人文科学の魅力を語る』 」 、2003(平成15)年2月22日. 煙秋田県立横手高等学校、「出張講義」、2003(平成15)年9月3日. 煙弘前大学、「大学祭企画シンポジウム:魅力ある弘大人文を目指して」 、2003(平成15)年11月3日. (5) 煙連合王国、2003(平成15)年9月8日~ 2003(平成15)年10月7日. (6) 煙 「学術国際振興基金」. (8) 煙土曜文学談話会、2003(平成15)年6月21日 小野寺 進 (1) 煙19世紀イギリス小説研究、物語理論に関する研究、ジャーナリズム研究 (2) 進「物語行為としての翻訳-物語論と翻訳の関係-」 『人文社会論 叢』 (人文科学篇)第10号、2003年8月 煙小野寺 pp.19-29. 進、 「Dickensの読者と読者 Howitt -『幽霊屋敷』をめぐる論争-」 『ディケンズ・フェロウシップ日本支部年報』 煙小野寺 第26号 2003年11月 pp.13-22. (8) 煙平成15年ディケンズ・フェロウシップ日本支部春季大会、2003.6.7. (弘前大学) 煙東北英文学会第58回大会、2003.9.27-28. (弘前大学) ○国際社会講座 長谷川 成 一 (1) 煙日本近世史の研究 (2) 監修・編著: 煙 『新青森市史 資料編3 近世(1)』(編共著)青森市 2003年2月 pp1 ~ 765 81 活動報告.indd 81 04/03/06, 10:53 煙 『本荘の歴史 普及版』(共著)本荘市 煙 『新編弘前市史 2003年3月 pp1 ~ 256 通史編3(近世2)』(編共著)弘前市 煙 『ドキュメント災害史1703―2003 2003年6月 pp1 ~ 767 ~地震・噴火・津波、そして復興~ 』 (共著)国立歴史民俗博物館 2003年7月 pp1 ~ 167 論文: 煙 「本城満茂と城下町本荘」(『鶴舞』第86号)本荘市文化財保護協会 pp 1~ 19 その他: 煙 「開館20周年記念展示『ドキュメント災害史一七〇三―二〇〇三~地震・噴火・津波、そして復興~』によせて 」 ( 『聖 教新聞』2003年4月17日) (3) 講演: 煙藤崎町 「弘前藩四代藩主津軽信政の政治について」 2003年1月23日 煙青森市 「近世青森湊の成立」青森市史刊行記念フォーラム 2003年4月27日 煙本荘市 「本城満茂と城下町本荘」本城満茂入部400 年記念講演会 2003年8月10日 煙佐倉市 「歴史が伝える災害像/科学が開く防災力」国立歴史民俗博物館講演会 煙弘前市 「国絵図等の資料に見る江戸時代の白神山地」弘前大学白神研究会 煙青森市 「地域学としての北東北学の可能性」北東北学フオーラム 2003年9月14日 2003年9月24日 2003年11月1日 (4) 煙 「近世鉱山史の研究」筑波大学大学院 (7) 煙文科省科学研究費補助金 今井正晴 煙文科省科学研究費補助金 長谷川成一 基盤研究 B「奥羽地方における宗教勢力の展開過程の研究」 (分担) (平成15年度) 基盤研究 C「津軽氏城跡の発展過程に関する文献資史料と遺物資料による研究」 (代表)(平成15年度) (8) 学会: 煙弘前大学国史研究会平成15年度大会 斎 藤 義 弘前大学国史研究会 2003年9月27・28日 彦 (1) 欧米関係の動向 煙欧州連合とドイツ (2) 論文: 煙齋藤義彦「2002年ドイツ総選挙の意味するもの」 、 『人文社会論叢』 (人文科学編)第 9号、2003年2月、 145 ~ 157頁 煙同上「近代国民国家の岐路 国際刑事裁判所問題とイラク危機を巡って」 、 『ドイツ研究』第36号、2003年5月、1~ 14頁 (3) 研究発表: 煙学習院大学・9.11テロ事件後の日本とドイツの安全保障政策の比較、日本ドイツ学会、2003年6月14日 林 明 (1) 煙マハートマ・ガンディーの思想、サルヴォダヤ運動、スリランカの民族問題 (2) NHKテレビ取材協力: 煙 「その時歴史が動いた ガンジー 暴力の連鎖を断ちきれ!~自由への行進400キロ~」 、2003年11月26日放送(NHK 総合テレビ) (3) 研究発表: 煙神戸大学、「スリランカの民族紛争の特徴と国際社会との関係」 、 「予防外交の総合的研究」科研研究会、2003年7月26 日 82 活動報告.indd 82 04/03/06, 10:53 学会発表: 煙つくば国際会議場、「スリランカの民族紛争の特徴と国際社会との関係」 、日本国際政治学会、2003年10月18日 (5) 海外研修: 煙インド、2003年8月21日~9月14日 (6) 煙文部科学省科学研究費補助金(基盤研究A):「中世インドの学際的研究」 、2002年4月~ 2005年3月 (7) 煙 「情報の越境によるアジアの新しい文化的アイデンティティーの創出についての研究-映像、音楽、消費、食文化、ファッ ション、エンタテインメントなどの視点から-」 、サントリー財団助成国際共同研究、2002年8月~ 2003年7月 澤 田 真 一 (1) 煙ピューリタニズムと文学 煙ニュージーランド文学におけるマオリ文化と白人文化の相克 (2) 論文: 煙澤田真一、「サージソンとピューリタニズム -I Saw in My Dreamを中心に-」 、南半球評論、vol.18、平成14年12 月26日、pp.37 ~ 49. 翻訳: 煙澤田真一、『クジラの島の少女』、ウィティ・イヒマエラ原作、角川書店、平成15年7月30日、サワダ・ハンナ・ジョイ と共訳 (3) 研究発表: 煙同志社大学、「クジラの島の少女における両義性について」 、オーストラリア・ニュージーランド文学会関西地区研究会、 平成15年11月8日 (5) 煙ニュージーランド、オークランド大学、平成15年3月 煙ニュージーランド、オタゴ大学、平成15年11月 フールト・フォルカー (1) 煙平和研究、平和論、平和教育、戦争責任、平和運動 (3) 煙東京大学・ 「Vergangenheitsbewaeltigung und Kriegsschulddiskussion in Japan」 、第8回DESK現代史フォーラム、 2003年4月3日 煙東京大学・「外圧に基づく戦後処理の問題点」、比較史・比較歴史教育研究会、2003年4月4日) 煙学習院大学(東京)・「日本とドイツの安全保障政策に関する問題提起」 、日本ドイツ学会第19回総会フォーラム3、 2003年6月14日 城 本 る み (1) 煙現代中国の高齢者福祉と社会保障制度改革に関する研究 (5) 煙中華人民共和国 2003. 9. 4~9.18. (6) 煙文部科学省科学研究費補助金(基盤研究C)「現代中国の高齢者福祉と社会保障制度に関する研究」 (研究代表者 : 城 本るみ) 83 活動報告.indd 83 04/03/06, 10:53 荷 見 守 義 (1) 煙明代中朝関係史研究 煙13 ~ 17世紀の東アジア国際秩序史研究 (2) 煙荷見守義「世祖靖難と女直調査‐一四五五年四月の人名記録に見る中朝関係‐」 『明代史研究会創立三十五年記念論集』 汲古書院 2003年7月 107 ~ 128頁 煙荷見守義「女直授官と朝鮮王朝‐端宗三年の事例を通して‐」中央大学『人文研紀要』48号 2003年10月 25 ~ 52頁 (6) 煙平成14 ~ 16年度文部科学省科学研究費補助金 川越泰博 基盤研究C2「近世中国の接壌地帯における物流・人口往来・ 言語問題」(分担) (7) 煙中央大学共同研究「近世中国の接壌地帯における物流・人口往来・言語問題」平成14 ~ 16年度 煙中央大学人文科学研究所共同研究チーム「情報の歴史学」平成13 ~ 17年度 松 井 太 (1) 煙古代トルコ語・モンゴル語出土文献の解読研究に基づく内陸アジア史の再構成 (2) 論文: 煙松井太「ヤリン文書──14世紀初頭のウイグル文供出命令文書6件」 『人文社会論叢』人文科学篇10, 弘前大学人文学部、 2003. 8, pp.51-72. 煙松井太「金代のキタイ系武将とその軍団──蕭恭の事跡を中心に──」岡洋樹・高倉浩樹・上野稔弘(編) 『東北アジ アにおける民族と政治』東北大学東北アジア研究センター、2003. 11,pp.120-142. 煙松井太「モンゴル時代の度量衡」『東方学』107、東方学会、2004. 1(印刷中) その他: 煙松井太「第39回野尻湖クリルタイ」『東洋学報』85-1, 東洋文庫、2003. 6, pp.91-97. 煙松井太・山部能宜「国際学会『トゥルファン再訪 ─シルクロード美術・文化研究の第一世紀』 」 『東方学』106, 東方学会、 2003.7, pp. 168-177. (3) 煙東北大学「金代のキタイ系武将とその軍団」東北大学東北アジア研究センター・東北アジア研究会合同シンポジウム「東 北アジアにおける民族と政治」2003年3月16日 煙大阪大学「ロシア所蔵文書からみたウイグル仏教教団」中央アジア学フォーラム、2003年7月26日 煙 龍 谷 大 学 "Uigur Peasants and Buddhist Monasteries during the Mongol Period. Re-examination of the Uigur Document U 5330(USp 77)." The Way of Buddha. Cultures of the Silk Road and Modern Science(Symposium in the 100th Anniversary of Otani Mission) , 2003年9月10日 (6) 煙代表:「中央アジア出土古代ウイグル語社会経済文書の基礎的整理と歴史学的研究」 (若手研究(B) ) 煙分担:「東トルキスタン出土「胡漢文書」の総合調査」 (基盤研究(B) ) 煙分担:「中央アジア出土文物によるシルクロード貿易と文化交流の諸相」 (基盤研究(B) (1) ) ○情報行動講座 船 木 洋 一 (1) 煙マルコフ決定過程 (4) 煙経営工学・石巻専修大学 84 活動報告.indd 84 04/03/06, 10:53 煙オペレーションズリサーチⅠ・石巻専修大学 清 水 明 (1) 煙デカルト、メルロポンティなど近・現代のフランス哲学 煙情報思想 (2) 論文: 煙清水 明「鏡を見る私-ホミノイドにおける自己意識の生成と構造についての試論-」 『人文社会論叢』人文学科篇第 10号、2003年8月、pp31-49 その他: 煙清水 明『哲学者シミシミの気になるハイテク語』水星舎 2003年3月 (4) 「思想と文化(A)」 岩手大学 香 取 薫 (1) 煙 遠隔教育 煙高セキュリティ無線通信システム 煙地域情報政策 (2) 煙K.Katori, 「A study of high security systems using a chaos theory」 ,『International Journal of Applied Mathematics 』 , 2003. 9. 23accepted 煙香取、「市町村合併と情報政策」、『弘前市調査研究報告書』 、2003. 3. 31 煙香取、「IDC 実施可能性調査」、『調査研究報告書』 、2003. 3. 31 (3) 煙青森市・パーソナルセキュリティの姿、電子自治体フォーラム、2003. 7. 15 煙東京都・地域に於ける遠隔教育の意義、E -ラ-ニングワ-ルド、2003. 7. 31 煙東京都・大学発ベンチャーについて、ビジネスモデル研究会、2003. 11. 15 煙青森市・IT 活用は本当に会社のためになるのか?、21青森セミナー、2003. 11. 28 (4) 煙経営学特殊講義 II・青森公立大学、経営システム科学・青森中央学院大学 (5) 煙米国、2003. 1. 9 ~ 2003. 1. 14 煙韓国、2003. 11. 9 ~ 2003. 11. 12 (6) 煙委任経理金 「国際交流振興基金」、「プロジェクト推進」 煙産学連携等研究費 「学長裁量経費一般分」、「学長裁量経費特別分」 、 「共同研究経費合計4件」 (7)「共同研究」 煙地域ハイブリッドコンテンツの開発2件・(有)ビズコムモバイル 煙高性能無線システムの研究・(株)東洋情報システム(TIS) 、 (株)GM 2 (8) 煙情報文化学会全国大会、2003. 10. 18 奥 野 浩 子 (1) 煙動詞の意味構造と統語構造の対応関係 (2) 論文: 煙奥野浩子「結果構文に対する「被動者制約」と構文融合」 『人文社会論叢』 (人文科学篇)第9号、2003年2月、159-170ページ 85 活動報告.indd 85 04/03/06, 10:53 作 道 信 介 (2) 論文: 煙 「病気対処としての「語り」─1992年、乳幼児「アトピー」への母親の対処行動を考えるために─」 、弘前大学保健管理概要、 2003、24、pp20-47. 煙 「北西ケニア・トゥルカナにおける新しい病気カテゴリー「糞肛門」Ewosinangacinの出現─社会変動と病気」 、医療 化社会の思想と行動(Ⅱ)、2003. 8、pp17-37. 煙 「在宅介護の日常化に関する研究─娘・嫁介護者による相手理解の仕方について」 、木立るり子(first)と共著、家族介護、 1巻2号、pp134-143. その他: 煙 「フィールド系社会心理学」、『アエラムック、新版心理学がわかる』2003、89、pp26-27 (3) 煙 「津軽地域の社会変容─3集落を事例として、平賀町 B 集落における出稼ぎの変遷」 、日本村落研究学会第51回大会、 於北海道栗山町、10月10日(発表同日) 煙 「新聞記事にみる「アトピー」表象の構成─ storyとしての「現代病」に着目して」 、東北心理学会第57回大会、於東 北学院大学、9月26日-27日(発表26日) 煙 「北西ケニア・トゥルカナにおける占い場面の展開─関連性理論を手がかりに」 、日本社会心理学会第44回大会、於東 洋大学、9月16日-18日(発表18日)発表論文集 pp278-279. 煙 「北西ケニア・トゥルカナ・カクマ周辺地域の「ジョック病」ngijyokioについて」 、日本心理学会第67回大会、於東京 大学、9月13日-15日(発表14日)発表論文集 p145. 煙 「北西ケニア・トゥルカナにおける新しい病気「糞肛門病」について」 、日本アフリカ学会第40回学術大会、於島根大学、 5月31日-6月1日(発表31日)研究発表要旨集、p61. (4) 煙 「医療人類学特論」於北海道医療大学、10月3日 (5) その他活動: 煙弘前大学人文学部出張講義「アイデンティティ入門─ SF 映画を手がかりに」 、於秋田県立角館高校、11月19日 煙日本心理学会ワークショップ「実証的な宗教心理学的研究の展開─その歴史と現状」 、指定討論者、9月15日 (6) 煙科研費「急速高齢化地域に関する学際的共同研究」 (代表丹野正:平成13年-16年)分担者 煙平成15年度弘前大学重点研究 「津軽地域におけるライフステージの変容」代表者 (8) 煙 「出稼ぎ・過疎・高齢化研究会(でっこの会)」 、於弘前大学、2月28日 曽 我 亨 (1) 煙エチオピアの「大民族」境界領域における少数民族のアイデンティティ選択に関する研究 (2) 煙曽我亨「牧畜民は家畜を看護するか?」『Animal Nursing』Vol.8, No. 1、日本動物看護学会、2003年11月、pp. 7- 14. 煙曽我亨「ラクダ牧畜民ガブラにおける所有と信託」 『研究彙報』第2号、東京大学東洋文化研究所、2003年8月、 pp.8-17. (3) 煙仙台市戦災復興記念館「ヒトは<制度>をどのように生きているのか」第19回日本霊長類学会大会公開シンポジウム、 2003年6月29日 煙東京外国語大学 AA 研「東アフリカ遊牧社会の変容と時間知識の活用」特定領域資源人類学研究会、2003年7月5日 煙 ハ ン ブ ル グ 大 学「To be Oromo or To be Somali? : The Selection of the Ethnic Identity by the Gabra Miigo, Pastoralist in Southern Ethiopia. 」第15回国際エチオピア学会、2003年7月24日 (5) 86 活動報告.indd 86 04/03/06, 10:53 煙ドイツ(2003年7月19日-7月27日) (6) 文部科学省科学研究費補助金: 煙基盤研究(C) 「エチオピアの「大民族」境界領域における少数民族のアイデンティティ選択に関する研究」 (代表:曽我亨) 煙特定領域研究「資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築」 (代表:内堀基光 東京外国語大学) 煙基盤研究(B)「急速高齢化地域に関する学際的共同研究」 (代表:丹野正) 弘前大学重点研究: 煙 「津軽の近代化と人々の成長」(代表:作道信介) (7) 煙 「資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築」 (東京外国語大学) 煙 「青森県の急速高齢化に関する学際的研究」(弘前大学) 煙 「津軽の近代化と人々の成長」(弘前大学) (8) 煙 「自然資源の認知と加工」研究会(「資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築」にかかる分科会) 、2003年5 月10日 後 藤 寛 (1) 煙3次元地理情報システムの開発 煙地理情報システムの歴史地理学への応用 煙地理情報システムを用いたエリアマーケティングシステムの構築 煙大型総合小売業の地域展開と共存関係を中心とした流通地理学 (2) 煙後藤寛・山崎利夫・増山篤・岡野京子・金子忠明・岡部篤行、大都市生活者の日常生活行動の一側面 -通勤行動とフィッ トネスクラブの利用から-、地理情報システム学会講演論文集、Vol.12、pp. - .(2003) 煙山崎利夫・後藤寛・増山篤・岡野京子・金子忠明・岡部篤行、フィットネスクラブ会員の施設利用に関する時空間行動 の基礎分析 -ターミナル駅前立地型施設を対象として-、地理情報システム学会講演論文集、Vol.12、pp. - .2003) 煙上平好弘・後藤寛、地籍管理GIS開発の展望と課題、地理情報システム学会講演論文集、Vol.12、pp. - .(2003) 煙マーク コーバー・マット カールソン・歌代和男・後藤寛、ストリーミング技術を用いた3次元webGIS開発の 意義と課題、地理情報システム学会講演論文集、Vol.12、pp. - .(2003) 煙加藤博・アリ エルシャズリ、岩崎えり奈、後藤寛、世帯調査とGIS接合の試み -大カイロへのマイグレーション -、地理情報システム学会講演論文集、Vol.12、pp. - .(2003) (6) 煙文科省科学研究費補助金 基盤B(1)14390004「アジア地域における歴史地理GISの構築」 (7) 煙地籍調査データを利用した地理情報システムの研究・株式会社興和 煙3次元webGISに適した航空写真補正およびシステム構築の自動化に関する研究・アルケメディア株式会社 (8) 煙地域空間情報システム普及研究会「産官学民連携で拓く地域空間情報システム(GIS) 」 (15. 1. 31)経済地理学会・ 北東支部弘前例会(15. 11. 29) 大 橋 忠 宏 (1) 煙交通ネットワークと地域の空間構造 煙交通政策の効果計測手法の開発 煙弘前都市圏を対象とした公共交通と道路計画のあり方 (2) 煙大橋忠宏、鷲見雄哉(2003)、「弘前市の道路計画が都市空間構造に与える可能性」 、 『人文社会論叢 社会科学編』 (弘 前大学人文学部紀要)、第10号 , pp.11-26 煙大橋忠宏、宅間文夫、土谷和之、山口勝弘、 「日本における国内航空政策の効果計測に関する実証分析」 、 『応用地域学研究』 、 87 活動報告.indd 87 04/03/06, 10:53 No.8(2)、forthcoming. (3) 煙大橋忠宏、宅間文夫、土谷和之、山口勝弘、堀健一(2003) 、 「交通施設整備効果の空間分布計測手法の現状 CGEへの 適用範囲拡張の可能性:国内航空旅客輸送を対象として」 、土木計画学研究第27回発表大会(春大会) (於:東京大学) 『土 木計画学研究・講演集』Vol.27、CD - ROM. (6) 煙 「津軽地方での観光周遊行動調査に基づく観光交通政策のあり方」 、平成15年度学術国際振興基金(学術の活性化推進 事業) 羽 渕 一 代 (1) 煙現代的親密性の諸相をめぐる研究 煙都市の若者文化とメディア利用に関する研究 煙津軽地域の若者がもつ価値観・行動・意識の探究 (2) 報告書: 煙 「携帯電話の電話としての利用」/「携帯電話の社会的イメージ」/「メディアの利用適齢期」 『ネットヘビー社会韓 国の実像』pp.49-58第Ⅱ部3章/ pp.93-99第Ⅱ部7章/ pp.129-138第Ⅳ部1章(モバイルコミュニケーショ研究会) 2003年4月 翻訳: 煙 「ノルウェーの携帯電話を利用したハイパー・コーディネーション」/「携帯とノルウェーの10代の若者たち:アイデ ンティティ、ジェンダー、階級」富田英典監訳『絶え間なき交信の時代-ケータイ文化の誕生』pp.179-219/pp.334- 355(NTT 出版)2003年6月 (3) 煙 「メディアをめぐる人間関係」黒石市未来塾「女・男・輝かせて」2003年7月23日 煙 「ネットワークする津軽―家族関係の現在―」弘前市青年プロジェクト塾公開セミナー 煙 「現代における(男)と(女)―弘前市民への意識調査から―」弘前大学公開講座 2003年7月27日 2003年11月25日 煙 「夫婦の対等感-弘前市におけるスノーボールサンプリングによる量的調査から-」日本家族社会学会 2003年9月6 日 (5) 煙 「携帯電話の利用の深化とその社会的影響に関する国際比較に関する研究」のため台湾、10月 (6) 煙文部科学研究費補助金「携帯電話利用の深化とその社会的影響に関する国際比較」 (代表:吉井博明) 煙文部科学研究費補助金「都市的ライフスタイルの浸透と青年文化に関する社会学的分析」 (代表:高橋勇悦) 煙文部科学研究費補助金「離婚急増化社会における夫婦関係」 (代表:山田昌弘) 煙文部科学研究費補助金「周縁地域における近代との出会い―地域による近代化の翻訳と馴化の人類学・社会学的研究―」 (代表:杉山祐子) 石 黒 格 (1) 煙争点に対する関与と知識による、パーソナル・ネットワークの文脈効果の変動 煙パーソナル・ネットワークにおける情緒的サポートの認知的効果と実体的効果の検討 (3) 研究発表: 煙東洋大学、「社会的文脈に埋め込まれた謙遜:ダイアド・データを用いた分析」 、日本社会心理学会、2003年9月16日 講演: 煙東京大学、「ネットワークの文脈効果とその帰結:認知変数を分離しての試み」 、2003年11月5日 (6) 煙科学研究費補助金「態度・行動におよぼすネットワーク効果における認知・構造の効果の分離」 (若手研究A) 88 活動報告.indd 88 04/03/06, 10:53 ○ビジネスマネジメント講座 藤 田 正 一 (1) 煙公益事業のステータスと範囲 四 宮 俊 之 (1) 煙日本におけるビジネス理念の地域性および国際性の交差に関する研究 煙東北パルプの経営史研究 煙企業経営における顧客志向の変容 (2) 著書: 煙四宮俊之「大川平三郎と藤原銀次郎」(佐々木聡編『日本の企業家群像Ⅱ』書籍版、丸善、2003年3月、39-67頁所収) 論文: 煙四宮俊之「日本における近代からのビジネスの理念や目的、戦略などの大略的変遷」 『経営論集』明治大学、 第50巻第4号、 145-165頁 その他: 煙四宮俊之『大企業と中小企業の競争と併存に関する戦後日本の紙・パルプ産業の経営史的研究』 (平成12 ~ 14年度科学 研究費補助金研究成果報告書、2003年3月、総頁数82) 煙四宮俊之「紹介・拙著『近代日本製紙業の競争と協調』 」 『日本史文献事典』弘文堂、2003年11月、所収) (3) 研究発表: 煙四宮俊之「日本におけるビジネスの理念、目的、戦略の歴史的累層化」社会経済史学会東北部会、2003年6月28日、東 北大学 講演: 煙四宮俊之「大川平三郎~製紙王としての歩み~」坂戸市立中央図書館主催、同市勝呂公民館、2003年3月23日 煙四宮俊之「経営史における地域性の問題」弘前大学青森サテライト教室開設記念講演、青森県産業物産館アスパム、 2003年4月10日 (6) 煙平成14年度文部省科学研究費補助金・基盤研究(C) (2) 星 野 優 太 (1) 煙企業の業績評価と報酬システムの国際比較 煙不良債権の経済分析と会計処理 煙知的資産会計の新展開 (2) 煙 『日本企業の業績評価と報酬システム-理論と実証-』 (白桃書房)2003年2月26日、1-272頁。 煙 「企業の戦略・組織構造と会計情報システム」『弘前大学経済研究』 (弘前大学経済学会)第26号、2003年11月30日、52 -65頁 煙 「知的資産会計の新展開-戦略と評価と開示に向けて-」 『會計』 (日本会計研究学会)第165巻第3号、2004月3月1日、 1-14頁 (3) 煙 「不良債権の経済分析と会計の制度的問題」(第6回青森会計研究会 AAW) 、青森公立大学、2004年3月13日 (7) 煙 「企業における会計ディスクロージャー実務の日韓比較」 (韓国南ソウル大学校 Lee Jung - ki 教授と) 、2002年10月- 2004年9月。 89 活動報告.indd 89 04/03/06, 10:53 煙 「日韓企業における組織文化に関する実証的研究」 」 (韓国南ソウル大学校 Lee Jung - ki 教授およびAn Byeong - Geol 助教授と)、2002年10月-2004年9月 (8) 煙第4回青森会計研究会(AAW)(於弘前大学創立50周年記念会館) 、準備および司会、2003年7月12日 煙東北経営・会計研究会(於東北福祉大学)、司会、2003年11月10日 煙日本管理会計学会学会誌、レフリー(査読)、2003年4月20日 濱 田 照 久 (1) 煙経営福祉 新 井 一 夫 (1) 煙行動会計 煙活動基準原価計算 (8) 煙青森会計研究会 3月15日「行動会計における組織社会学派の展開」 (口頭発表)5月31日、7月12日、11月29日 煙東北経営会計研究会(日本会計研究学会東北部会とジョイント)11月10日~ 11日 保 田 宗 良 (1) 煙一般用医薬品の流通システムの研究 煙製薬会社のマーケティング戦略の研究 (2) 論文: 煙 「一般用医薬品の流通に関する諸問題について」 、 『日本消費経済学会年報第24集』 、3月、pp.237-245 その他: 煙 「製薬会社のマーケティング戦略研究のための資料ノート」 「弘前大学経済研究第26号」11月、pp.75-81 煙 「未承認医薬品、健康食品について考える」『融合 No.16』1月、pp.35-37 (3) 煙岡山商科大学、ドラッグストアの顧客満足戦略の検討課題、日本消費経済学会全国大会、6月8日 煙北星学園大学、製薬会社のマーケティング戦略研究のための予備考察、日本消費経済学会東日本大会、9月13日 (4) 煙Bコース特別講義・秋田経済法科大学経済学部 (6) 煙平成15年度 学術国際振興基金 地域ハイブリッドコンテンツの開発と商品化 (7) 煙 「夢と感動」掘り起こし産業・弘前商工会議所等 (8) 煙日本消費者教育学会東北支部研究会、3月29日、9月20日 森 樹 男 (1) 煙海外現地法人の経営に関する研究 (2) 著書: 煙森樹男『日本企業の地域戦略と組織-地域統括本社制についての理論的・実証的研究-』文眞堂、2003年9月 論文 煙森樹男「日産自動車とソニー 欧州地域統括本社」 、吉原英樹、板垣博、諸上茂登編『ケースブック 国際経営』有斐閣、 2003年4月、pp.185-197. 90 活動報告.indd 90 04/03/06, 10:53 煙Tatsuo Mori,"The Role and Function of European Regional Headquarters in Japanese MNCs" 『弘前大学経済研究』 第26号、2003年11月、pp.35-51。 (3) 煙The Role of European Regional Headquarters in Japanese MNCs、28th Annual Conference of the European International Business Academy, Athens, Greece, December 9, 2002, 出張講義: 煙 「さあ大変、日本の常識が通用しない!―日本企業の海外進出にみる国際化の中身―」青森県立弘前南高校 2003年10 月2日 (5) 2002年12月 煙ギリシア、ベルギー (6) 煙科学研究費補助金「日系多国籍企業において欧州の知を活用するための海外現地法人経営に関する研究」平成15年度若 手研究 B 煙組織学会 2004 年度リサーチ・ワークショップ「国際経営論の学史的再検討- 1980 年代中盤以降の研究を中心に-」 (代 表研究者 出口竜也、共同研究者 山口隆史) (8) 2003年7月12-13日 煙多国籍企業研究会 煙国際ビジネス研究学会 嶋 恵 2003年10月25-26日 一 (1) 煙断続的・不連続な設備投資活動に関する理論の形成、並びにその実証研究 (5) 煙アメリカ合衆国、ミシガン大学経済学部.2002年10月1日より2003年9月29日まで ○経済システム講座 中 澤 勝 三 (1) 煙オランダ反乱期のアントウェルペン市場 (8) 煙弘前大学経済学会、平成15年11月2日 赤 城 国 臣 (1) 煙anarchyの理論 (4) 煙 「マクロ経済学」青森公立大学 (8) 煙数量経済学研会 鈴 木 和 '14/12/26 '15/ 4/25 5/22 6/26 9/25 10/30 雄 (1) 煙資本蓄積論 , 労働過程論 (2) 論文: 煙鈴木和雄「接客労働の統制構造──初期デパ-トにおける労働統制の諸問題──(下) 」 『弘前大学経済研究』 (弘前大 学経済学会)第26号,2003年11月30日,18-34頁 その他: 91 活動報告.indd 91 04/03/06, 10:53 煙鈴木和雄「鈴木和雄著『労働過程論の展開』(2001年)の書評にたいするリプライ」 『経済理論学会年報』第40集,青木 書店,2003年9月25日,195-196頁。 (4) 煙特殊講義(労使関係論) ,新潟大学経済学部 , 2003年9月16日-19日。 (8) 煙弘前大学経済学会第28回大会,2003年11月2日 池 田 憲 隆 (1) 煙近代日本における官営工業の実証的研究 (2) 論文: 煙池田憲隆「軍備部方式の破綻と海軍軍拡計画の再編-1883-86年-(上) 」 『人文社会論叢』 (社会科学篇)第9号、 2003年2月、99-106頁 煙池田憲隆「軍備部方式の破綻と海軍軍拡計画の再編 -1883-86年-(中) 」 『人文社会論叢』 (社会科学篇)第10号、 2003年8月、1-10頁 (3) 研究発表: 煙九州国際大学、シンポジウム「官営八幡製鐵所創立期像の再構成」 (担当部分「海軍製鋼事業と製鐵所」 ) 、政治経済学・ 経済史学会(旧土地制度史学会)秋期学術大会、2003年10月18日 (7)製鐵所文書研究会「官営製鐵所の成立過程」 細 矢 浩 志 (1) 煙EU 統合下の欧州自動車産業の変容 煙戦後フランス自動車産業の発達に関する実証研究 (2) 煙細矢浩志「EU 市場統合期における欧州自動車産業分析の視座-『単一市場レビュー』を手がかりにして-」 『人文社 会論集(社会科学編)』(弘前大学)第9号、2003年2月、117-134頁 (3) 煙一橋大学経済研究所、「EU 主要自動車メーカーの戦略と中・東欧展開」 、EU ラウンドテーブル「21世紀のEU:現状と 展望」、2003年3月26日 煙秋保温泉(岩沼屋)、「EU 東方拡大と中・東欧自動車産業の展開動向」 、第8回現代産業研究会、2003年7月26日 (5) 煙ドイツ(ハンブルグ世界経済研究所)、ベルギー(EU 主催シンポジウム) 、ポーランド(JETRO ポーランド事務所) 、 ハンガリー(JETRO ハンガリー事務所)、チェコ(JETRO チェコ事務所) 、2003年11月11-23日 (6) 煙日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(B) (1) 「中東欧諸国のEU 加盟とユーロの地域的国際通貨への転化に関 する総合的研究」 黄 孝 春 (1) 煙総合商社の経営、中国の国有企業改革 (2) 煙黄 孝春 [ 戦後における繊維流通と「取引所問題」 『先物取引研究』第7巻第1号 No.11、173-188ページ、2002年12 月 煙島田克美・黄孝春・田中彰『総合商社』ミネルヴァ書房、1-300ページ、2003年1月、第3章(53-80ページ)と第6 章(203-232ページ)担当 煙黄孝春・神田健策、カーペンター『国際化・自由化段階における青森県りんご産業の活性化に関する研究』2003年6月、 1-85ページ 92 活動報告.indd 92 04/03/06, 10:53 (5)海外出張 煙中華人民共和国、2003年9月4日-10月5日 (6) 煙文部科学省科学研究費補助金基盤研究(C)2一般「中国における新興国有大企業の経営者支配に関する研究」 山 本 康 裕 (1) 煙技術進歩と企業の資本構成 煙銀行行動とマクロ経済変動 (5) 2003年4月-7月 煙青森サテライト教室 福 田 進 マクロ経済学特論開講 治 (1) 煙リカードの経済理論の研究 (2) 煙福田進治「リカードとケインズ-セイ法則の問題構成をめぐって-」 『弘前大学経済研究』第26号、2003年11月、 66- 74頁 (3) 煙東北学院大学、リカードとケインズ、経済学史学会東北部会第24回大会、 2003年4月26日 (8) 煙第28回弘前大学経済学会大会、2003年11月2日 小谷田 文 彦 (1) 煙企業の研究開発、多角化についての実証分析 (2) 研究ノート: 煙 『製造業の研究開発支出:会社四季報アンケートデータと有価証券報告データとの比較分析』ノート、弘前大学人文学 部『人文社会論叢』(社会科学篇)第10号、2003年8月、27-39頁 .(嶋恵一氏と共著) 飯 島 裕 胤 (1) 煙情報が不完全な下での企業買収.その法制度との関連 (2) 論文: 煙飯島裕胤、家田崇「証券取引法制が会社支配の取得および取得後の行動に与える影響」科学研究費補助金・研究成果報 告書 2003年 煙飯島裕胤、家田崇「日本における強制公開買付制度の利点と欠点:対称情報下・非対称情報下での分析」景気循環研究 会コンファランス報告論文 2003年9月 (3) 研究発表: 煙於:景気循環研究会コンファランス 論題「日本における強制公開買付制度の利点と欠点」 2003年9月7日 (6) 煙科学研究費補助金 基盤研究(C)(平成13、14年度) 93 活動報告.indd 93 04/03/06, 10:53 李 永 俊 (1) 煙労働市場における世代間対立 (2) 論文: 煙李永俊「二重労働市場における部門間労働移動と失業」 『経済科学』 (名古屋大学) 、2003年9月、pp37-47. 煙李永俊「「日本型」長期雇用システムの変容」『経済科学』 (名古屋大学) 、2003年12月、p29-46. ○公共政策講座 堀 内 健 志 (1) とくに「統治」・「執行権」 煙権力分立 煙 「憲法」概念 (2) 煙堀内健志「憲法学上の『立法』をめぐる最近事情について」 『比較憲法学研究』 (比較憲法学会・学会誌、2003年) 15号113-140頁 煙堀内健志「議場外の個人的行為と懲罰事由」『地方自治判例百選〔第三版〕 』 (有斐閣・別冊ジュリスト、2003年)118- 119頁 (4) 煙行政法総論(秋田桂城短期大学) 煙行政法各論(秋田桂城短期大学) 煙行政法(八戸大学) 煙法学(弘前福祉短期大学) (8) 平成14年9月15日 煙青森法学会 煙比較憲法学会 村 松 惠 平成14年10月13日 二 (1) 煙カトリック政治思想とファシズム 煙いわゆる「極右」思想の構造的分析――新自由主義、社会ダーウィニズム、人種論 春 日 修 (1) 煙アメリカと日本の行政手続、情報公開の比較研究、政策決定過程の情報をどの程度公開すべきかということについて (2) 煙春日修「議院内閣制―総理大臣と大統領はどう違う」山本順一編『憲法 問題点を解説する』 (2003年4月)所収、128 ~ 153頁 煙春日修「県境不法投棄事件における青森県の行政責任」 『青森法政論叢』4号(2003年8月)所収、24 ~ 45頁 児 山 正 史 (1) 煙公共サービスにおける市場、政策実施 (3) 煙九州大学、「準市場の枠組と事例―公共サービスにおける利用者の選択―」 、日本行政学会、2003年5月18日 94 活動報告.indd 94 04/03/06, 10:53 紺 屋 博 昭 (1) 煙労働市場法制の構造解明、解雇ルールの実体研究 (2) 論文: 煙紺屋博昭「外国人を通じてみたサンクション、雇用ルール、そして労働法-行政制裁とそのエンフォースメントを手掛 かりに」(1)『北大法学論集』第53巻第5号(2003年1月)pp. 1-87 煙同(2)『北大法学論集』第54巻第3号(2003年8月)pp. 41-94 煙同(3)『北大法学論集』第54巻第4号(2003年10月)pp. 51-104 煙紺屋博昭「Hoffman Plastic Compounds, Inc. v. NLRB, 535 U. S. 137, 122 SCt.1275(2002)-不法就労を偽って就業し、 組合結成行為を支持した外国人労働者に対するレイオフは不当労働行為となるが、NLRBのバックペイ支払命令は連邦 移民法の目的に反し、救済裁量の範囲を逸脱するとされた事例」 『アメリカ法』2003年第1号(2003年7月)pp.27-32 その他: 煙紺屋博昭「キラリ燦く職場を実感する-日本電気株式会社人事部を訪問して」 『青森県工業会会報』第18号(2003年7月) p23 (3) 講演: 煙青森県工業会主催、新・キラリ燦く職場作り研究会「企業における賃金処遇体系改善の必要性」 (2003年7月23日) 煙同「成果主義的処遇を確認する」(2003年9月24日) 煙同「成果主義的処遇の功罪」(2003年11月19日) 煙青森県社会保険労務士会、北海道・東北地域協議会(北部3県)主催「解雇に関するトラブルを防止するために」 (2003 年10月20日) 煙かさい社会保険労務士事務所主催「就業規則の重要性-法化社会化、あるいは契約社会化に備え職場ルールを維持する ために-」(2003年11月13日) 出張講義: 煙秋田県立大館鳳鳴高等学校「バイトの給料がもらえない、さあどうする?」 (2003年2月12日) (6) 煙文部省科学研究費補助金、紺屋博昭「労働市場法制/雇用政策法制の統制手法に関する構造解明」 (H15-若手A) (7) 煙 「企業のネットワーク化と労働法」(日本労働法学会第107回大会ミニシンポ準備研究会、早稲田大学大学院法学研究科 H15COE プログラム「企業社会の変容と法システムの創造」 ) 煙 「成果主義型賃金体系の導入を通じて従業員の新たな処遇を考える」 (青森県工業会主催、雇用・能力開発機構青森セ ンター後援) 煙 「労働法による紛争解決と当事者ケア」(青森雇用・社会問題研究所主催) (8) 煙紺屋博昭「派遣スタッフの引き抜きと不法行為-フレックスジャパン事件」 (北海道大学労働判例研究会、2003年6月 21日) 煙紺屋博昭「企業の秘密管理再考-労働者の企業秘密漏洩問題を手掛かりに-」 (北海道大学労働判例研究会クールセミ ナー、2003年8月4日) 煙紺屋博昭「アメリカ雇用法における使用者概念試論」 (日本労働法学会第107回大会ミニシンポ準備研究会第1回(早稲 田大学)、2003年9月29日) 煙紺屋博昭「企業のネットワーク化と団体交渉」 (日本労働法学会第107回大会ミニシンポ準備研究会第2回(大阪市立大 文化交流センター)、2003年11月4日) 山 口 恵 子 (1) 煙都市下層に関する社会学的研究 煙都市の社会地区分析 (2) 95 活動報告.indd 95 04/03/06, 10:53 煙山口恵子「廃品回収業に生きる人々――グローバル都市と野宿者――」 『部落解放研究』2003年12月、57-76頁 (3) 煙サンパウロ大学(ブラジル)、「The Faces of the Homeless in Tokyo」Project Conference about Homelessness in 4 Global Cities; Los Angeles,Paris, Sao Paulo, Tokyo」 、2003年8月23日 (4) 煙地域社会論、いわき明星大学 (5) 煙サンパウロ(ブラジル)、2003年8月21日~8月30日 (6) 煙文部省科学研究費補助金「現代日本の建設産業における飯場型労働の構造と再編に関する社会学的研究」 (研究代表) 煙文部省科学研究費補助金「現代日本における都市下層の動態に関する実証的研究」 (研究分担) 煙文部省科学研究費補助金「周縁地域における近代との出会い」 (研究分担) 煙 (財)第一住宅建設協会助成金「地方都市におけるファミリーコースの変遷と都市空間の再編・変容」 (研究分担) (7) 煙 「首都圏の社会地区」SA 研究会 煙 「出稼ぎ・過疎・高齢化調査」弘前大学人文学部内フィールド系教官 煙都市下層研究会 96 活動報告.indd 96 04/03/06, 10:53 執筆者紹介(講座順) 船 木 洋 一(統計学・OR 浜 田 照 久(組織行動 赤 城 国 臣(理論経済学 池 田 憲 隆(近現代日本経済史 永 俊(労働経済学 李 堀 内 健 志(憲法学 村 田 輝 夫(民法 情報行動講座) ビジネスマネジメント講座) 経済システム講座) 経済システム講座) 経済システム講座) 公共政策講座) 公共政策講座) 編 集 後 記 『人文社会論叢』第 11 号をお届けいたします。独立法人化という未曾有の改 革を来年度に控え、激務の中を本誌の作成にご協力いただきありがとうござい ました。 巻末には、例年通り、各教官の研究活動報告が掲載されております。併せて ご参照下さい。 編集委員(五十音順) 人文社会論叢 (社会科学篇) ◎五十嵐 石 奥付.indd 靖 彦 黒 格 小野寺 進 小谷田 文 彦 澤 田 真 一 保 田 宗 良 山 口 恵 子 山 田 嚴 子 1 第 11 号 2004 年2月 27 日 編 集 総務委員会 発 行 弘前大学人文学部 036-8560 弘前市文京町一番地 http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/ 印 刷 小 野 印 刷 036-8173 弘前市富田町 52 電話 (32)7 4 7 1 04/03/05, 19:57
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