テキスト映像化技術 T2V のゲームエンジン Unity への実装 林 正樹† 中嶋 正之† スティーブン・バチェルダー† 濁川 武郷‡ †ゴットランド大学ゲームデザイン学科 Cramérgatan 3, 621 57 Visby, スウェーデン ‡(株)プログマインド 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町 22-6 Laxrass 渋谷桜丘 203 E-mail: {hayashi.masaki, masayuki.nakajima, steven.bachelder}@hgo.se†, [email protected]‡ あらまし われわれは、テキストを映像化する T2V (Text-To-Vision)技術の研究開発を進め、T2V Player と名づけ たソフトウェアを開発し、フリーウェアで公開してきた。本アプリケーションは Windows PC 上で動き、ユーザー がワープロで書くように台本を書くだけで CG と音声合成を使ったテレビ番組的アニメーションをその場で作れる。 今回、世界的にポピュラーな 3DCG ゲームエンジン Unity 上に T2V Player をゼロから構築し、プロトタイプを完成 した。これにより、Unity で使えるキャラクタなどのリソースを T2V で流用することができるなど、T2V 利用およ びコンテンツ開発の自由度が格段に向上した。 キーワード T2V,TVML,コンピュータグラフィックス,映像制作 Implementation of T2V -Text-To-Visio on Game Engine UNITY- Masaki HAYASHI† Masayuki NAKAJIMA† Steven BACHELDER†and Takesato NIGORIKAWA‡ †Department of Game Design, Gotland University Cramérgatan 3, 621 57 Visby, Sweden ‡ProgMind Inc. 22-6-203 Sakuragaoka-chou, Shibuya-ku, Tokyo, 150-0031 Japan E-mail: {hayashi.masaki, masayuki.nakajima, steven.bachelder}@hgo.se†, [email protected]‡ Abstract We have been developing T2V (Text-To-Vision) technology which enables to produce CG animation from given script. We have developed the application called 'T2V Player' and have been distributed it as freeware for years. The application works on Windows PC to produce TV-program-like animation from user input text using real-time CG and voice synthesizing technique, etc. In this paper, we introduce the prototype of 'T2V on UNITY' which has been developed from scratch on the UNITY game engine. We succeeded to enhance its function owing to the UNITY, such as multi-platform, availability of CG character data circulated on UNITY community, capability of applying T2V method to game development and more. Keyword T2V,TVML,Computer graphics,Video production 1. は じ め に インターネットの世界で主にブログから始まった UGC (User-Generated-Content)は 現 在 、 ユ ー ザ ー に よ る 動 画 制 作 に ま で 拡 大 し 、 YouTube や ニ コ ニ コ 動 画 で は UGC 動 画 が 多 数 ア ッ プ ロ ー ド さ れ て い る 。 そ の 中 で 、 我々はいわゆるテレビ番組の動画形式に着目し、テレ ビ番組を制作するスキルのないユーザーでも簡単にテ レビ番組的なアニメーションが作れる技術の研究を 続 けてきた。 以上の背景のもと、我々は、テレビ番組の台本を書 く だ け で こ れ を コ ン ピ ュ ー タ が 自 動 的 に CG ア ニ メ ー シ ョ ン に 変 換 す る T2V (Text-To-Vision) 技 術 の 研 究 を 進 め 、T2V プ レ イ ヤ ー と 呼 ば れ る Windows ア プ リ ケ ー ションを開発し、これをフリーウェアで公開してきた [1]。今 回 、こ の T2V プ レ イ ヤ ー を 、3DCG ゲ ー ム エ ン ジ ン と し て 名 高 い UNITY[2]に ス ク ラ ッ チ で 移 植 し 、プ ロトタイプを完成した。これにより、従来よりはるか 図 1. 現 行 の T2V プ レ イ ヤ ー 図 2. T2V プ レ イ ヤ ー の 構 成 に自由度が高く、多方面への応用が可能な技術に発展 したので紹介する。 2. T2V プ レ イ ヤ ー T2V の 基 本 コ ン セ プ ト は 、CG 技 術 な ど を 使 っ て「 テ キストをアニメーションに自動変換する」というもの で、かなり広い意味を持っている。我々はこのコンセ プ ト に 基 づ き T2V プ レ イ ヤ ー と 呼 ば れ る ア プ リ ケ ー シ ョ ン を 作 成 し た ( 図 1)。 T2V プ レ イ ヤ ー は 1996 年 に NHK 放 送 技 術 研 究 所 で 提 案 さ れ た TVML (TV program Making Language) [3]技 術 を ベ ー ス に 構 築 さ れ ている。図 2 に示すように、ユーザーが入力した台本 は い っ た ん 中 間 言 語 の TVML に 変 換 さ れ 、 こ れ を TVML エ ン ジ ン に よ り 、 リ ア ル タ イ ム CG、 音 声 合 成 などの技術を使って映像化する。 現 状 の T2V プ レ イ ヤ ー は Windows ア プ リ ケ ー シ ョ ンとしてコーディングされており以下の問題点がある。 ・ Windows の み で し か 動 作 し な い ・ CG キ ャ ラ ク タ の イ ン ポ ー ト が 容 易 で な い ・ 機能拡張が容易でない T2V プ レ イ ヤ ー は Microsoft Visual C++の 上 で ネ イ テ ィブコードとして実装されているため、以上の問題点 を解消するためには大きな開発コストが発生し、それ がその活動範囲を広げられない理由の一つであった。 3. T2V on UNITY 我々は、前章で述べた問題点を解消するために、昨 今 、 全 世 界 的 に 使 わ れ て い る 3DCG ゲ ー ム エ ン ジ ン 「 UNITY」に 注 目 し 、T2V プ レ イ ヤ ー の す べ て の 機 能 を UNITY 上 に ス ク ラ ッ チ で 移 植 す る 開 発 を 行 っ た 。 こ れ に よ り 、 前 節 で 述 べ た 問 題 点 は UNITY の マ ル チ プラットフォーム機能、モデルインポート機能および UNITY Editor を 利 用 す る こ と で ほ ぼ 自 動 的 に 解 消 さ れ る 。ま た 、UNITY は 全 世 界 に 広 が る コ ミ ュ ニ テ ィ を 持 っているので、そこにリーチすることで活動範囲を 自 然に広げることができる。 図 3 に UNITY 上 に 実 装 し た T2V Player を 示 す 。 現 在 、基 本 機 能 は Windows 版 と 同 様 だ が 、前 述 し た よ う に利用の自由度がはるかに向上している。開発は Windows 上 で 行 っ て い る が 、 す で に Android で の 基 本 動 作 を 確 認 し て い る ほ か 、UNITY Asset Store に 多 数 あ る CG キ ャ ラ ク タ を 簡 単 に T2V に イ ン ポ ー ト す る こ と も可能になっている。 4. 今 後 の 開 発 予 定 現 在 、現 行 T2V プ レ イ ヤ ー の 基 本 機 能 を 実 装 し た 段 階であり、見た目と機能はほぼ同等である。今後の予 定を以下にまとめておく。 ・ 新 T2V Player と し て 近 日 中 に リ リ ー ス す る ・ Android、 Mac、 iPhone な ど へ エ ク ス ポ ー ト す る ・ デ ィ ベ ロ ッ パ ー 向 き に UNITY の Project と し て 配 布 し 、 T2V お よ び TVML 機 能 を 利 用 し ゲ ー ム ア プ リ ケーションを作れる環境を提供する ・ UNITY4 か ら サ ポ ー ト さ れ る Mecanim[2]を 導 入 し キャラクタアニメーションを強化する ・ Web ペ ー ジ の HTML を 取 得 し 、こ れ を タ グ 解 析 し 、 T2V の 台 本 に 自 動 変 換 し て 映 像 化 す る 自 動 番 組 制 作 ア プ リ を UNITY 上 で 構 築 す る 5. お わ り に 台 本 を 書 く だ け で 誰 で も CG キ ャ ラ ク タ が し ゃ べ る テ レ ビ 番 組 的 ア ニ メ ー シ ョ ン が 作 れ る T2V プ レ イ ヤ ー を 、3DCG ゲ ー ム エ ン ジ ン と し て 有 名 な UNITY 上 に スクラッチで移植する開発について紹介した。これに よ り 、 マ ル チ プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 、 CG キ ャ ラ ク タ モ デ ル導入の容易化、ゲームアプリ開発の応用などへの道 を開くことができる。また、当面の開発計画について も述べた。 最 近 、 CG キ ャ ラ ク タ が 出 て き て 合 成 音 で し ゃ べ る アニメーションを制作できるツールが急に増え始め、 おそらく今後かなり速いピッチでユーザー制作キャラ クタアニメーションの制作環境が整備されて行くもの と考えられる。テレビ番組のコンテンツ形態は、実は キャラクタアニメーションの究極の形式のひとつであ り 、本 T2V は そ こ を ね ら っ て い る 。今 後 、こ の T2V on UNITY を 使 っ て 日 本 の み な ら ず 世 界 に 向 け て 新 し い コンテンツ世界を開発し提供して行きたい。 文 図 3. T2V Player on UNITY 献 [1] T2V ホ ー ム ペ ー ジ : http://t2vlab.jp/ [2] UNITY Home Page: http://unity3d.com/ [3] 林 :「 テ キ ス ト 台 本 か ら の 自 動 番 組 制 作 ~ TVML の 提 案 」 1996 年 テ レ ビ ジ ョ ン 学 会 年 次 大 会 S4-3 pp.589 - 592 (1996)
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