子どもたちの身近な遊び場を考える

八洲学園大学紀要
第8号(2012)
、p.51〜p.60
子どもたちの身近な遊び場を考える
―保護者を対象とした質問紙調査から―
森
川
みゆき
A Study on Children’s Play Space
−Based on Data Collected on Guardian by Questionnaire−
MORIKAWA, Miyuki
キーワード:遊び場、外遊び、好きな遊び、プレイパーク
1.はじめに
昨年度の同テーマ(子どもたちの身近な遊び場を考える―プレイパークの現状―)では、強制的な
カリキュラムの中では味わうことが難しい達成感が味わえる場所のひとつとして、子どもの欲求に基
づいて安心して遊びに夢中になれる「プレイパーク」の存在意義を見出した1)。日常生活圏内に自発
的に遊べる場所があることは、子どもが心も体ものびのびと成長していくうえで欠くことができな
い2)。
現代の公園では、様々な年齢の子どもたちが群れて遊ぶ姿を見かけることも少なくなり、子どもの
身近な遊び場として「公園」という空間を提供するだけでは子どもの外遊び経験を増やすことに必ず
しもつながらない。
今後のプレイパークのさらなる普及が待たれるところであるが、子どもたちにとっ
て魅力ある遊び場にはどのような要素が求められるのかをふまえたうえで空間を用意する必要がある
と考えられた。
そこで本研究では、幼児の日常生活において遊ぶ時間(いつ、どのくらい)、場所(どこで)、内容
(どんなことをして遊んでいるのか)の実態を調査し、また、保護者がどのような遊びを望ましいと
考えているのかを明らかにすることで、子どもの日常生活における遊びをより一層満足させるための
環境条件の方向性を見出そうとするものである。
2.方法
(1)調査対象:埼玉県内の保育園に子どもを預けている保護者200名
(2)調査期間:平成23年9月上旬〜下旬
(3)調査方法:保育園へ訪問し質問紙調査を依頼、保育園が保護者への配布・回収を実施し、質問
紙をとりまとめて郵送することにより回答。
(4)調査項目:外遊びの嗜好、日常生活の中の遊びの時間、子どもの遊ぶ内容の嗜好、保護者が子
どもにどのような遊びをさせたいか
など
0%、有効回答率99.
5%)
(5)回 収 率:回答数186通、有効回答数185通(回収率93.
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3.結果及び考察
(1)回答者の属性
!年齢及び性別
30歳代が最も多く135人(73.
0%)
、40歳代が続いて31人(16.
8%)であった(図1)。
図1
回答者の年齢
性別は女性が多く124人(67.
0%)
、30歳代の女性が90人で全体の48.
6%と大きな割合を占めた
(図2)。
図2
回答者の性別
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子どもたちの身近な遊び場を考える
!子どもの人数
(49.
2%)
で、次いで1人が59人(31.
9%)であった。3人以上が31人(16.
8%)
2人が最も多く91人
いた(図3)
。
図3
回答者の子どもの数
(2)どんな遊びが好きですか
「室外での遊び」と答えたのは69人(37.
3%)、「室内での遊び」と答えたのは8人(4.
3%)、「室
8%)であった(図4)。
内外どちらとも言えない」と答えたのは107人(57.
図4
好きな遊び
好きな遊びの具体的な記述によると、
「室外での遊び」を好むと答えた69人では、砂場、遊具、
自転車、川や海、ボール、公園、鬼ごっこ、しゃぼん玉、鉄棒、砂遊び、走り回る、レンジャーごっ
こ、ブランコ、木登り(自由記述、記載のまま)などがあげられ、広い場所を必要とする遊び、公
園にお気に入りの固定遊具があるなどの特徴がみられた。それはこれまでに創設されたプレイパー
クにおいて、いずれも遊びたい欲求が満たされる内容の遊びであり、やってもいい遊びか禁止事項
を確認しながら遊ぶ都市公園と比較すると、自由度が高く、子どもが好きな遊びに思う存分夢中で
取り組める場所として有効であることがわかる3)。
また、
「室内での遊び」を好むと答えた8人では、お絵かき、塗り絵(4歳女児、0歳弟あり)、
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ブロック、テレビゲーム、人形遊び(3歳男児、一人っ子)
、姉とのごっこ遊び、ままごと(4歳
女児、9歳と7歳の姉あり)
、ごっこ遊び、はさみやのりで何かを作る(4歳男児、0歳弟あり)、
おままごと、お絵かき
(6歳女児、8歳兄あり)、本を読む、おもちゃ遊び(4歳男児、一人っ子)、
ブロック、ぬいぐるみ、ゲーム(5歳男児、一人っ子)
、お人形でごっこ遊びをお姉ちゃんと(4
歳女児、8歳姉あり)があげられ(自由記述、記載のまま)
、姉妹で遊ぶことができたり、0歳の
弟がいるなどで外出が難しいなど本人の遊びの嗜好だけではなく、まわりの環境によるところもあ
ると考えられる。
「室内外どちらとも言えない」と答えた107人の具体的な記述を見ると、室外の遊びの例としてす
べり台、ヒーローごっこ、公園遊具、三輪車、なわとび、自転車、走りっこ、電車見学、氷おに、
鉄棒、虫取り、砂遊び、公園、ボール、散歩、水遊び、一輪車、野球、畑の手伝い、サッカーなど
があげられ、室内の遊びの例としておままごと、ゲーム、間違いさがし、お人形遊び、パズル、お
家ごっこ、テレビゲーム、ブロック、お絵かき、絵本、ぬいぐるみ、トランプ、ボードゲーム、電
車のおもちゃ、DVD 鑑賞、折り紙、ビデオ鑑賞、ミニカー遊びなどがあげられた(自由記述、記
載のまま)
。室内外ともにさまざまな遊びが列挙されており、遊びたいと思った時の条件(天気、
一緒に遊ぶ人など)に合わせて、遊びたい気持ちを満足させられる遊びを楽しんでいるように感じ
られた。
(3)外遊びが好きですか
0%を占めた。一方、「いいえ」とは一人も答えず、「ど
「はい」と答えたのは172人で、全体の93.
9%)であった(図5)。
ちらとも言えない」が11人(5.
図5
外遊びが好きか
「どちらとも言えない」と回答した人の中には、外遊びは好きだがどちらかというと室内遊びを
1%)が外遊びを好んでいると
好むため、との記述もあり(2人)
、それらも合わせると174人(94.
いう結果になった。
「いいえ」という回答がなかったことは、子どもたちが日常生活の中で外遊び
に魅力を感じ、夢中になった経験を持っており、見守る保護者にとっても好意的な経験であるとと
らえられているようである。
「はい」と答えた人からあげられた、子どもの好きな外遊びの具体例をカテゴライズすると以下
の通りとなった(自由記述、記載のまま)
。どちらにも属せると推測される遊びについては、より
強い要素を持つと思われる項目に括弧を付して分類した。
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!特別な場所や用具がなくてもできる遊び
走り回る、
(虫取り)
、散歩して草木を見たり枝を折ったり、走ること、かけっこ、
(鬼ごっこ)、
(かくれんぼ)
、体を動かすこと、
(ごっこ遊び)
、
(どろんこ遊び)おいかけっこ、
(石遊び)
、テ
レビのヒロインごっこ、大はしゃぎ、
(虫さがし)、走ったり踊ったり、(手つなぎ鬼)、(近所の)
子と遊ぶ)
など。
"場所や用具がないと成り立たない遊び
公園に行く、プール、自転車、一輪車、鉄棒、なわとび、砂場、すべり台、シーソー、ボール
遊び、野球、サッカー、バドミントン、しゃぼん玉、コンビカー、キックボード、
(水遊び)、ロー
ラースケート、三輪車、うんてい
など。
走りっこ、鬼ごっこ、かくれんぼなどは特別な用具を必要とせず、最低でも2人いれば成立する
遊びである。幼年期においては、外に一緒に行く親や兄弟など身近な家族と遊ぶことが多くなると
推定される。学童期に近づくにつれ、一緒に遊ぶ人数がふえてくると、それに伴ってより広い場所
が必要になり、思い切り遊ぶための広い場所が必要になると考えられる。
どろんこ遊びや虫さがしなどは身近に豊かな自然環境があれば特別な場所も用具も必要としない
が、都市公園においては穴を掘る行為は禁止されていることが多く、砂場に水を入れて遊ぶ場合、
どろんこ遊びに夢中になるには周りで遊んでいる他の子どもと折り合わないと難しい。虫取りなど
も、芝生への立ち入りを禁じている都市公園もあり、捕まえられるまでどこまでも追いかけ続ける
ことができないのが現状である。また、樹木や花苗の美観を保つなどを目的に殺虫剤の散布が行わ
れるなど、見つかる虫の種類も限られてしまう。
一方、特別な場所や用具を必要とする外遊びも多くあげられた。そのほとんどは公園に設置され
ている固定遊具(鉄棒、すべり台、シーソー、うんてい)を利用した遊びである。乗り物(一輪車、
自転車、三輪車、コンビカー、キックボード)も多くの種類があげられた。都市圏の公道は自由に
乗ることが難しい道路事情であるため、広場や公園などで遊んでいると考えられる。ただし、公園
の中には乗り物を禁止しているところもあり、場所を選ぶことが必要になる。こうした都市公園で
は経験できないような豊かな自然との触れ合いを身近な場所で体験し、安全に遊ぶことができたり、
乗り物に乗ったり、大勢の仲間が集まり、一緒に遊びに夢中になれる場所が必要とされており、プ
レイパークの意義と合致していると思われる3)。
また、スポーツの種目(野球、サッカー、バドミントン)も好きな外遊びとしてあげられた。幼
児期に仲間同士で集まって試合形式を楽しむのは難しいので、その種目のスクールに入っているの
か、キャッチボールやパス練習、シャトルの打ち合いなど少人数でも楽しめる方法を取り入れてい
ることも推測される。
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(4)普段どのくらいの時間遊ぶか
子どもがいつ頃、どのくらい遊んでいるのか、保育園がある日とない日のそれぞれについて次の
ような回答が得られた(図6)
。
図6
遊ぶ時間
!保育園から帰ってから
降園後から就寝までの間で、食事の前後の時間やお風呂などの時間を除いた時間を答える人が
8%)、次いで「2〜3時間」が45
多数を占め、遊ぶ時間は「1〜2時間」が最も多く68人(36.
人(24.
3%)
、「0.
5〜1時間」が20名(10.
8%)で、遊び時間が3時間未満の子どもが全体の8
9%)であり、降園してから就寝までの時間が
割近くにのぼった。また、
「30分未満」が11名(5.
少ないなど、保護者の就労状況により家庭での遊び時間が短くなると考えられる。
しかし、お迎えまで保育園で遊んでいることを考えると、一日の中の遊び時間には大きな個人
1%)が「室内遊び」と回答し
差は出ないと言えるであろう。遊びの内容も降園後は176人(95.
た。保護者が終業後にお迎えに行っていることを考えると、
「室外での遊び」をしたくても暗く
て外に出られないことなどが想定される。また、降園後では一緒に遊べる時間が少なくなるから
という理由で、
「登園前の時間に親子で遊ぶ時間を作る工夫をしている」という記述もあり(降
、降園後に保護者が食事の支度をする間、ひとりで遊ん
園後の遊ぶ時間は「30分未満」と回答)
でいることが想定される一方で、少しでも一緒に遊べる時間を持とうとしている努力も垣間見る
ことができた。
"保育園に行かない日
保育園に行かない日にどのくらいの時間遊んでいるかという問いについて、
「一日中」と77人
7%)が回答した。
「生活のすべてが遊びだから」という記述が多くみられるように、とりた
(41.
てて
ここからここまでが遊びの時間
と意識するものではない、という認識であることが伺え
4%)が回答し、睡眠、食事、入浴等基本的生活習慣にか
る。次いで「6時間以上」と32人(17.
ける時間を除いた時間とおおよそ一致することから、前出の「一日中」と「6時間以上」を合わ
せると、全体の6割以上の子どもたちの生活は、睡眠と食事以外はほとんどが「遊び」であり、
「遊び」が「生活」そのものであると言えよう。遊びを通して人間として生きる力や、どう生き
ていけばよいかを学んだり、そうした力を身につけていく場であるとの認識に立ち、何か特別な
ことをしようとしなくてもありのままを受け入れ、子どもの成長を願う保護者の姿がそこにはあ
ると考えられた。
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子どもたちの身近な遊び場を考える
一方、遊ぶ時間が3時間に満たないと20人(10.
7%)が回答しており、「習い事があるから」
「家
族で買い物にでかける」
(自由記述、記載のまま)など、普段できないことを休日にしようとす
ると、なかなか子どもの自由な意思を尊重できない現実があると考えられた。
(5)子どもにどんな遊びをさせたいか
室外での遊びと室内遊びに分けて自由記述を求めたところ、以下のような回答が得られた(無回
答8人)
。
!室外での遊び
アスレチック、ボール、体を動かして体力がつくような遊び、ボール遊び、たんけんごっこ、
体を動かすことなら何でもよい、友達と一緒に遊べることなら何でもよい、サッカーなどスポー
ツ、公園、児童センター、集団遊び(鬼ごっこなど)
、親子のコミュニケーションがはかれるも
の、体を思い切り動かす、鉄棒・テニス・バドミントンなど練習して伸びるもの、体が疲れる遊
び、自転車、かけっこ、体全体を使った遊び、自然とかかわれる遊び、キャッチボール、なわと
び、自然の中で遊ぶ、木登り、ごっこ遊び、体を使っておともだちと遊ぶ、体をいっぱい動かせ
る遊び、アスレチックのようなところで体をよく動かす遊び、野球、体を動かす遊び、友達と一
緒に楽しめるような遊びならなんでも、ドッヂボール、ルールのある遊び、野原遊び、畑いじり、
友達と一緒の外遊び、走り回ってほしい、自然の中で思いっきり遊ぶ、うんてい、ボールけり、
体操、水泳、お友達と家の周りで遊ぶ、川・山遊び、ゴムとび、自然と触れ合う遊び、川とか動
物と遊ぶ、どろんこ遊び、砂場、泥んこになってもいいから元気に、広いところで鬼ごっこやは
ないちもんめなど、ルールをまじえ体を使った遊び、エネルギーをたくさん使う遊び、たくさん
の友達とやる遊び、一輪車、体を使って元気に遊んでほしい、スポーツ、全身を使う遊び、かく
れんぼ、自然の中で雪遊び・川遊び、団体競技(サッカー、バスケットボールなど)
、石けり、
遊具を使って足腰を鍛える、苦手な固定遊具(鉄棒・すべり台)
、遊具がなくても遊びを見つけ
る、身体を目いっぱい使う、できればお友達と一緒にしてくれる遊び、草花遊び、知らないお友
達ともルールを守って遊ぶ、ジャングルジム、ネットラップ、ブランコ
さまざまな種類の遊びがあげられたが、体全体を使った遊び、複数人での遊び、自然とふれあう
遊び、固定遊具を使う遊び、スポーツ各種に大きく分類できると考えられる。また、室外での遊び
を通して多くの活動量を期待する意見が多く、閉鎖された室内と比較して無限に広がる可能性が外
遊びに期待されていると考えられる。
"室内遊び
本を読む、ねんど、ままごと、テレビゲーム・ポケットゲーム以外の遊び、親と一緒に遊ぶ、
頭を使った遊び、絵本を読む、人形遊び、パズル、ブロック、お絵かき、ひらがなの学習など知
育を楽しみながら、スケッチ、知育遊び、ごっこ遊び、感性を豊かにする遊び、頭を使う遊び、
図画工作、トランプ、指先を使い創造力を伸ばせる遊び、知育系、お料理、工作、手を使って組
み立てるような遊び、ベーゴマ、手先を動かす遊び、室内を荒らさないようなことなら何でも、
音楽(ピアノを弾く、CD 鑑賞)
、親子で一緒に料理、積木、今
夢中になっている遊び、クイ
ズ、字の練習、おもちゃ、リズム体操、歌、ひらがなの練習、みんなで手遊び、言葉のゲーム、
ミニカー、物を作る遊び、ダンス、育脳ゲーム、静かに座ってできる遊び、折り紙、かるた、DVD
鑑賞、リズム系、電車のおもちゃ、親子で遊ぶ、字に興味をもってほしい、ゲームの時間はでき
るだけ少なく、テレビ以外だったら何でも、自分で考え何かを作ったり行動する遊び、集中でき
―57―
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川
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る遊び、お友達と仲良く遊ぶ、お菓子作り(時間がかかるのでなかなかできないがやってあげる
ととても喜ぶ)
思い切り体を動かすことを外遊びに期待する一方で、室内遊びの種類も同じくらいの記述量がみ
られた。保護者は、外遊びも室内での遊びもどちらも大切であると認識しているからであろう。記
述内容は大きく工作、知育(字の練習を含む)
、指先を使う遊び(折り紙、料理、積木、手遊びな
ど)
、体操・ダンス、楽器に分けられる。外遊びで体全体を使い、室内遊びでは遊びを通して感性
が育まれることが期待されていると考えられる。
特に遊びの種類を特定せず、今でじゅうぶん、危険なこと以外はすべて、自分で考えて自分で遊
んでほしい、親が子の遊びに口を出すのは違うと思う(自主性を養う)
、特に決めることはない、
子どもの好きにすればよい、本人がやってみたいと思うこと、危なくなければ何でも、興味があっ
て危険でなければなんでも、好きなこと、特になく本人が遊びたいようにしてくれれば、興味があ
るもの、今のままでいい、その時に応じての遊び方でいい、本人に任せたい、自由に何でもよい、
好きなことをやらせたい、親がこんな遊びをしてほしい…というものではない、好きなようにのび
のびと遊んでくれればよい、などの記述もみられた。遊びは子どもが自分から積極的に能動的に、
創造的に取り組むからこそ楽しいのであり、夢中になれる活動であるということを保護者がよく理
解し、それを干渉しすぎずに見守ろうとする姿が想像できる。
一方で「わからない」と9人が答えたが、回答したいずれの保護者も子どもの好む遊びに関する
自由記述では多くの種類の遊びがあげられていることから、今の子どもにどのような遊びがふさわ
しいのか選択することが難しかったのではないかと考えられた。
子どもが好む遊びと保護者の遊ばせたい内容が合致したのは遊びの種類を回答した166人のうち
わずか1人であった。このことから、実際の子どもの姿に今後の発育・発達を重ね合わせ、このよ
うな子どもに育ってほしい、という願いから現在夢中になっている遊び以外の遊びを回答したので
はなかろうか。また、
「苦手なことにチャレンジしてほしい」という記述もみられ、様々な能力を
吸収できる今だからこそ、好きなことはそのまま伸ばし、遊びを通じて苦手を克服できると期待し
ていると考えられた。
4.まとめ
今回の調査から、日常における幼児の遊びの実態と保護者が子どもの遊びに対してどのような考え
をもっているかが明らかになった。これらをふまえ、日常生活のなかで子どもたちの遊びへの欲求が
より満たされる環境の条件として、
(1)自然の中で思い切り体を動かせる場所
豊かな自然の中で、それらの資源を使って自由な発想に基づいて遊べる場所は、日常とは異なる
環境であるため、開放感を味わうことができたり、自然現象の美しさや豊かさに心を動かすことで
感性を育てることができる。
(2)禁止事項のない場所
禁止事項がない場所で楽しく遊び続けるには、ある程度の決まりを守ることが大切だということ
に自ら気づくことができる。
「やってみたい」ことを「やってみる」中、子どもは安全に楽しく遊
ぶために自制心が必要になることを自然に身につけることができる。
また、困難に出会ったり危険と対峙することがあったとしても、自らが考え、判断した結果であ
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れば、人のせいにしたりせず自分で責任を持つことができるようになる。
(3)多くの人と出会える場所
多くの人との出会いを通じて、他者とのコミュニケーションがはかられ、社会性を身につけるこ
とができる。ひとりで遊ぶことができるテレビやコンピューターゲームなどの普及により、友達と
遊ぼうとしない子ども、友達関係がうまく結べない子ども、友達とどう遊んだらいいかわからない
子どもが増えている。家族間の閉じた人間関係だけでなく、老若男女を問わない多くの人と出会い、
遊びを通じて交流をもつことで自分とは異なる存在を意識し、自己主張や葛藤、挫折体験を繰り返
して人の中で生きる力を養っていける。地域の人々が気軽に立ち寄って子どもの遊び場の一角でお
茶を飲んで行くなど、子どもと地域社会を結ぶ場所が遊び場にあることは、子どもが安心して遊び
に夢中になれ、地域全体で子どもの成長を見守ることにもつながっていく。
(4)固定遊具のある場所
固定遊具での遊びは、
「走る」
「登る」「転がる」「つかむ」「投げる」「ぶらさがる」「くぐる」「滑
り降りる」などの要素を含む人為的環境として考え出されたものである。こうした刺激を全身で感
じとり、様々な運動能力を身につけることができる4)。
また、決められた遊び方にこだわらず、自由な発想で遊び方を見つけ、友達同士でルールを作り
ながら楽しく遊ぶ経験ができる。生き生きと体全体を使って遊ぶうちに、よりバランスよく、より
リズミカルに滑らかに体を動かすことができるようになる。そうして多彩な動きができれば遊びの
幅も広がり、奥行きも深まっていくと考えられる。
様々な運動能力の発達が期待できる幼児期は、楽しく遊ぶことによりその後生涯にわたってより健
康的で人間的な生活を送るための基盤をつくるうえで特に大切な時期である。育つ環境を自ら選べな
い幼児期において、その環境をどのように整えていくのか保護者をはじめまわりの大人たちの責任は
大きい。母親に代表される特定の人からの愛情と、様々な人々との関わり合いの中から築かれるあた
たかい人間関係は、豊かな心を育んでいく。
子どもたちが集い、人間としてたくましく心豊かに育ちあう場所として、こうした条件を実現でき
る可能性を
「プレイパーク」
は大いに秘めており、
子どもの成長過程におけるその存在意義は大きい3)。
今後は、
「プレイパーク」がますます普及するためにどのような条件が必要になるのか、事例から
研究を進めていくこととしたい。
【参考文献】
:子どもたちの身近な遊び場を考える―プレイパークの現状― 八洲学園大学紀要第7
1)森川みゆき(2011)
号
:自然とあそぼ.パッケージゲーム 園庭・地面で遊ぼう 明治図書
2)水野豊二(1997)
:自分の責任で自由に遊ぶ 遊び場づくりハンドブック ぎょうせい
3)大村璋子(2000)
:新版.幼児健康学 黎明書房
4)原田碩三(1997)
:子どもの安全を考える 事故・災害の予防から危機管理まで フレーベル館
5)齋藤歖能(2004)
:体育あそびアラカルト 朱鷺書房
6)桝岡義明,西村誠 編(2003)
:運動の苦手な子どものための体育あそび あそぶことからはじめよう! 3〜5歳児編
7)斉藤道雄(2008)
かしわ出版
:保育の中の運動あそび 萌文書林
8)石井美晴,菊池秀範 編(1994)
:公園は今 (社)日本公園緑地協会
9)都市公園機能実態共同調査実行委員会編(2003)
10)波多野ミキ(2005)
:認めて・ほめて・励まして!がんばる「力」のもてる子に PHP 研究所
11)高野進,赤羽綾子(2007)
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12)菅原道彦(1990)
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13)平井タカネ,村岡眞澄 編(1996)
:幼児教育法 領域「健康」 子どもの健康―心とからだ―(実技編)
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森
川
みゆき
三晃書房
14)白石豊(2005)
:スポーツが得意な子に育つ親子遊び
PHP 研究所
(受理日:2011年12月13日)
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