「TOYOTA HackCars 2014 Days in Tel Aviv」 開催レポート イスラエル

イスラエル・テルアビブでのハッカソン
「TOYOTA HackCars 2014 Days in Tel Aviv」 開催レポート
(レポーター:河野 進 / トヨタ IT 開発センター 開発・調査部)

イベント名:TOYOTA HackCars 2014 Days in Tel Aviv

開催日:2014 年 10 月 23~24 日
主催:トヨタ IT 開発センター(主管:開発・調査部)




運営協力:サムライインキュベート、ジャパンイノベーションセンター
会場:イスラエル・テルアビブ lool venture HQ ビル 3 階セミナールーム
参加者:40 名(7チーム)
■イスラエル・テルアビブでのハッカソン
イスラエルでのハッカソン「Toyota HackCars Days 2014in Tel Aviv」を開催した。
イスラエルの IT 系のエンジニア、デザイナー、プランナー40 名(7チーム)が集まり、
日系企業として初めてのイスラエルでのハッカソンを 10 月 23~24 日に開催した。
この記念すべき、第一回大会の優勝チームは、信号機の点灯状況を可視化するアプ
リ「Traffilight」を作ったチームとなった。 日本のハッカソン以上に参加者のレベルが
高く、ビジネスに向けた熱意や真剣さが非常に感じられた2日間の大会であった。
来賓としてお招きした在イスラエル日本大使館の原田参事官からは、ハッカソンに終
わらず、 Ford や GM に続くトヨタグループの R&D 拠点の設立につながることを熱望す
る旨のスピーチがあった。 また、今回のハッカソンの運営には、現地のトヨタ自動車
の総販売代理会社である Union Motors に支援していただいた。
この模様は「Globes」、「Telecom News」など、多数の現地メディアに掲載された他、
NHK テレビ放送でも取り上げられ、高く評価された。
■作成アプリと審査結果
審査員: 長田祐 (トヨタ IT 開発センター)
榊原健太郎 (サムライインキュベート CEO)
Oded Gutentag (BNC systems CEO)
作成アプリと審査結果
チーム名
アプリ名or
審査結果
アイデア名
team carpocalypse T-Net
1 <面白賞>
種類
アイデア・アプリ概要
安全運転への貢献
運転記録
運転履歴を記録したり、ゲーミフィングに活用す
る。システムは保険会社の運転評価に使った
り、運転手の運転を振り返りながら安全運転に
つなげることができる。
若いドライバーの行動パターンをモニターし、急
加速や急ハンドルなどの行為で減点、安定走
行、エコ運転に対して加点。得点に応じて、若い
ドライバーに対する報奨として、保険業者や両親
などの様々なスポンサーから、提供され、広告と
結びつけることもできる。
車の挙動データからや渋滞情報によって、道路
の安全性や事故につながる恐れのある情報を
生成して、通知する
これから15–45分後に通行するであろう地域を
予測して、それらの地域の天気予報を通知す
る。
(2位)
SafePrize
安全運転への貢献
運転連動広告
BitCAR
Enjoy your
safe car
運転上の危険回避
Nooly
Micro
Weather
行先連動天気予報
Social
Awareness
安全運転への貢献
My Car
Car Rating
安全運転への貢献
Trafilight
Traffic Light 信号機状態の可視
prediction
化
2
3
4 <起業応援賞>
(3位)
safe&share
5
6
<優秀賞>
(1位)
7
他の利用 利用パラメータ
API
位置, 速度, 加速
度, 残燃料, 消費燃
料, ブレーキ, 駐車
ブレーキ
位置, 速度, 加速
度, 残燃料, ヨー
レート, 消費燃料,
ブレーキ, 操舵角,
駐車ブレーキ
Google
Map API
位置, ブレーキ, 加
速度…
Nooly
Micro
Weather
API
運転における危険、緊急性のある情報を車両の Google
挙動データを収集することによって把握し、その MAP API
情報を他のクルマとの間で共有する
位置, 駐車ブレー
キ,外気温, ワイ
パー
車両挙動データから車とドライバーを評価して、
ランキングします。
複数台の車両の位置と速度のデータを(1秒間 Google
隔)で取得して、そのデータによって、車が流れ MAP API
ている交差点付近の進行方向の信号を青と判
断。それらが一定時間経過後に滞留(速度0)と
なれば、赤と判断。それによって、各信号の変
動(赤⇔青)の周期も把握し、進行方向の次の
交差点はいつからいつまで青になるかを予測
し、そのタイミングに合わせて過度にスピードを
出すことなく、運転させることを狙っている。この
サービスは世界の信号機ライブ地図や、信号変
動周期データベース化にもつなげていける。
残燃料, 速度, エン
ジン, 速度
位置, 残燃料, 速
度, エンジン
表 1:各チームのアプリと審査結果
速度,位置,操舵角,
ヨーレート, ブレー
キ
優秀賞
Traffilight
面白賞
起業応援賞
T-Net
Micro Weather
行先連動天気予報
優秀賞
信号機状態の可視化
複数車両の位置と速度から、
車が流れている付近の信号を
青、速度0付近を赤と判断。
青になるタイミングを予測し、
適度なスピードで運転させる。
世界の信号機ライブ地図化、
信号変動周期DB化を図り、広
範囲なエコ運転促進を目指し
ていることが評価された。
安全運転への貢献、
運転記録
運転履歴を記録し、ゲ
ーム感覚で自分の運
転を振り返りながら安
全運転につなげる。
保険会社の運転評価
に使ったり、運転履歴
に連動した広告に使
うビジネスモデルも評
価された。
これから15~45分後
に通行するであろう地
域を車両データを使っ
て予測して、それらの
地域の天気予報を通
知(地図表示)。
米・西海岸で
は商用版アプ
リを提供し、
好評を得てい
る。日本での
提供を期待。
図 1:入賞チームのアプリ概要
「安全運転促進」や「危険運転回避」に関するアイデアが多かった
-
既にアプリビジネスを起業している参加者がほとんどで、ビジネス性が重視された
日本でT-Connectアプリの開発に関わりたいという希望者もいた
既に作られているアプリをベースとして、拡張させたアイデアも散見された
アジアに比べて、ゲームアプリを考える人が少ない
■会場の様子
審査風景
アプリ “Be Safe”
アプリ”Bit Car”
アプリ"My Car"
現地トヨタ販売会社(Union Motors)
スピーチする在イスラエル日本
社長(左から 2 番目)と運営スタッフ
大使館・原田参事官(左)
技術サポートの模様
ハッカソン恒例の集合写真
アプリ “Traffic light”
図 2:会場の様子
■メディアでの紹介状況
■現地メディア
「Globes」 2014.10.24 朝刊&Web
■NHK BS-1
「国際報道2014」 2014.10.29 放送
"Forget about Sosita,
the Japanese giants
are looking for Israeli
Technology. Toyota
might even open here
R&D center.
■現地メディア
「Telecom News」 2014.10.25 Web
For the first time, a
Japanese giant had a
automotive oriented
hackathon – Big Data
Management in Israel.
■所感
「トヨタの T-Connect サービスのグローバル展開スケジュールは未定であり、イスラエ
ルで提供される可能性は不透明である。」という事実がある。 イスラエルへの出発前
に、もし参加者から、T-Connect サービスのイスラエル展開について質問があったら、
どう答えるのか考えておかないといけないと関係者から示唆された。参加者のモチベ
ーションを損ねることがないような、前向きな回答をしようと思い、 現地へ向かった。
しかし、今回のイスラエル・ハッカソンで参加者にこちらから尋ねてみると、「イスラエ
ルでトヨタのサービスが提供されることには、 あまり期待していない。」と言う。なぜなら、
「人口の少ないイスラエルをアプリのビジネス市場とは考えておらず、いつか、 日本向
けのアプリやサービス提供に関われることを目指している」とし、彼らの視点はイスラエ
ル国内ではなく、海外であり、 日本市場に期待を寄せていることが感じられた。
残念なことに、イスラエルの大手銀行が主催する賞金 300 万円のハッカソンが同じ日
程でテルアビブ市内で開催されていた。 トヨタ IT 開発センターのハッカソンには 40 名
ほどの参加者であり、当初期待した人数には届かなかった。
好条件のハッカソンを蹴ってまでも我々のハッカソンに参加してくれた参加者たちは、
「日本向けにクルマ関連のアプリを提供したい」 という強い意志を持っている。そんな
素晴らしい参加者のアプリ開発を支援できたことに加えて、 開発者たちのグローバル
な視野に出会えたことが今回の成果でもあった。
ハッカソンの開催自体は、TV やメディアによる取材や露出が増え、評判も良さそう
であるが、 具体的にクルマに採用されたアプリや開発者がアプリ提供から収益を上
げたなどの話をまだ聞くことができない。
以上