確定税額が見込納付額を下回った場合の還付加算金について

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そ う
だ ん
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し つ
相談室
質
確定税額が見込納付額を下回った場合
の還付加算金について
問
事業年度を4月1日から3月31日とする法人Aが、
会計監査人による監査を受けるため、法人税法の確
の市町村長に提出し、納付しなければならないと規
定されています(法第321条の8第1項及び同条第4
項)
。
定申告書の提出期限である5月31日を1箇月間延長
2.確定申告書の提出期限の延長の特例について
する特例を受けました。
その後、法人Aは、5月31日に納付すべきと見込
法人税法においては、会計監査人の監査を受けな
まれる法人住民税相当額(以下「見込納付額」とい
ければならないこと、その他これに類する理由によ
う。
)をB市役所へ納付しましたが、6月30日にB市
り決算が確定しないことによって、確定申告書をそ
役所に提出した法人住民税の申告書に係る確定税額
の提出期限までに提出できない状況にあると認めら
は見込納付額を下回ることになりました。
れる場合には、その法人の申請に基づき、各事業年
この場合、見込納付額との差額については、還付
度の確定申告書の提出期限を1箇月延長することが
加算金を加算して還付することになりますが、還付
できると規定されています(法人税法第75条の2第
加算金はいつから計算すればいいでしょうか。
1項)
。
この場合、法人住民税の申告書の提出期限は、法
人税の確定申告書の提出期限とされているので、法
回
答
法人AからB市役所へ「法人住民税の申告書が提
出されたことにより税額が確定した日(6月30日)」
の翌日から起算して1箇月を経過する日の翌日(8
人税において確定申告の提出期限の延長の特例の適
用がある法人は、法人住民税においても自動的に申
告書の提出期限が延長されることになります。
しかし、申告書の提出期限の延長を必要としない
法人との均衡を図るため、事業年度終了の日の翌日
月1日)から計算します。
以後2箇月を経過した日から延長された提出期限ま
での日数に応じ、原則として年7.3%の割合(又は特
解
説
1.確定申告
法人税のように、事業年度を単位として課税され
例基準割合のいずれか低い方の割合)を乗じて計算
した金額に相当する延滞金を加算して納付しなけれ
ばなりません(法第327条)。
る租税において「確定申告」とは、事業年度の終了
このことから、確定申告書の提出期限の延長の特
に伴い、その事業年度中の課税標準や税額を確定し
例の適用を受ける法人については、確定税額と見込
たものとして税務署長に申告することをいいます。
まれる額を事前に納付する、いわゆる見込納付が通
そして、地方税法(以下「法」という。
)において
例となっています。
は、法人税法の規定によって確定申告書を提出する
義務のある法人は、確定申告書の提出期限(※ 内国
法人は、各事業年度終了の日の翌日から2箇月以内)
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3.地方税の予納について
見込納付とは、法第17条の3第1項第2号に規定
までに、法人税額又は個別帰属法人税額を課税標準
する「最近において納付すべき額の確定が確実であ
とした法人税割額、均等割額その他必要な事項を記
ると認められる地方団体の徴収金」の予納であって、
載した申告書を事務所、事業所または寮等の所在地
確定前の納付であるとされています。
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地方税の予納(以下「予納」という。
)とは、地方
法律又は条例の改正によって、直ちに納付又は納入
団体の徴収金についてあらかじめ納付又は納入する
の義務が変更される場合のほか、その法律又は条例
ことをいいます。
の改正に基づく納税者又は特別徴収義務者の申告、
地方団体の徴収金は、原則として、納付又は納入
する金額が確定し、納期が到来してから納付又は納
申請又は地方団体の長の処分により、その全部又は
一部の納税額が減額される場合をいいます。
入されるものであることから、その確定前又は納期
また、②の「その他の理由によりその納付又は納
前の納付又は納入は、誤納金となります。しかし、
入の必要がないこととなったとき」とは、例えば、
納税者又は特別徴収義務者が期限前に納付又は納入
3の①によって予納された地方団体の徴収金につい
する旨を申出し、次に掲げる①又は②のいずれかに
て、減額の更正、課税の取消し、課税免除等がなさ
該当する場合には、適法な納付又は納入として取り
れたときや、3の②によって予納された地方団体の
扱うこととされています。ただし、原則として、予
徴収金について、予納した額より少ない額の申告又
納した者はその還付を請求することができません
は賦課決定がなされたようなときをいいます。
(法第17条の3第1項)
。
① 納付し、又は納入すべき額が確定しているが、
その納期が到来していない地方団体の徴収金
(同項第1号)
5.還付加算金について
地方団体の徴収金に関して過誤納金が発生したと
きには、地方団体の長は、それを還付又は充当しな
② 最近において納付し、又は納入すべき額の確
ければなりません(法第17条、17条の2)
。また、そ
定が確実であると認められる地方団体の徴収金
の場合において、還付し又は充当する金額には還付
(同項第2号)
加算金が加算されます(法第17条の4)
。
なお、①において、
「納期が到来していない地方団
還付加算金の額は、計算期間に応じ、原則として
体の徴収金」とは、具体的に確定した地方団体の徴
過誤納金の額に年7.3%の割合又は特例基準割合のい
収金で、その履行期が到来していないものをいい、
ずれか低い方を乗じて計算されますが、その計算期
また、②の「最近において」とは、予納の申出があ
間の始期については、法第17条の4第1項各号に定
った日から概ね6箇月以内をいうとされており、
「確
められる区分に応じて定められています。
実であると認められる」とは、賦課決定、申告、更
なお、計算期間の終期については、上記の区分に
正、決定等による賦課をすることが確実であると地
関わらず地方団体の長が過誤納金の還付について、
方団体の長が認める場合をいいます。
支出を決定した日又は充当した日(同日前に充当す
るに適することとなった日があるときは、その日)
4.予納額が過誤納金となる場合
とされています(法第17条の4第1項)
。
3で述べたように、予納額は、その還付を請求で
きないことになっています。しかし、その予納に係
る地方団体の徴収金の全部又は一部につき、①法律
6.質問事例の検討
以上、確定申告から還付加算金等について述べて
又は条例の改正、あるいは②その他の理由により、
きたところですが、質問の還付加算金の計算始期に
その納付又は納入の必要がないこととなったときは、
ついて、3つの項目に分けて検討します。
その事由が生じた時に過誤納金が納められたものと
みなし、予納額を過誤納金として法第17条又は1
(1)質問における見込納付の法律上の根拠について
7条の2の規定を適用し、還付又は充当することと
質問における見込納付が3の①又は②のいずれ
されています(法第17条の3第2項)。
に該当するか検討すると、質問の見込納付は申告
例えば、①の「法律又は条例の改正によりその納
書の提出がなされておらず、税額が確定していな
付又は納入の必要がないこととなったとき」とは、
いので、①の「納付し、又は納入すべき額が確定
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しているが、その納期が到来していない地方団体
が確定した地方税(当該地方税に係る延滞金を
の徴収金」には該当しませんが、6箇月以内に申
含む。
)に係る過納金でその納付し又は納入すべ
告による賦課が確実であるため、②の「最近にお
き額を減少させる更正(更正の請求に基づくも
いて納付し、又は納入すべき額の確定が確実と認
のを除く。)により生じたもの
められる地方団体の徴収金」に該当することにな
⇒その更正があった日(地方税法施行令
ります。
(以下「令」という。
)6条の15第1項第
1号)
(2)予納額を過納金として扱うことの可否について
Ⅱ
Ⅰに掲げる過納金以外のもの
予納額については原則として還付することがで
⇒その納付又は納入があった日(令6条の
きませんが、これを還付する場合は、その予納額
15第1項第2号)
が過誤納金とみなされる必要があります。
質問の予納額が過誤納金であるとみなされるに
は、4の①又は②に該当する必要があります。
さらに4号のⅠとⅡのどちらに該当するかです
が、質問の予納は、Ⅰの「申告書の提出により確
質問では法令等については何ら改正等されてい
定した税額について、地方団体が更正の請求に基
ませんので、①の「法律又は条例の改正によりそ
づかないで自主的に行った減額の更正により生じ
の納付又は納入の必要がないこととなったとき」
た過納金」ではありませんので、必然的にⅡの
には該当しませんが、②の例示にもあるとおり
「Ⅰに掲げる過納金以外のもの」に該当することに
「3の②(法第17条の3第1項第2号)によって予
なります。よって、還付加算金の計算始期につい
納された地方団体の徴収金について、予納した額
ては、法第17条の4第1項第4号及び令6条の15
より少ない額の申告又は賦課決定がなされたよう
第1項第2号の規定により還付加算金を加算する
なとき」に該当するといえます。よって、質問の
ので、
「納付又は納入があった日」の翌日から起算
確定税額と見込納付額の差額については、過納金
して1箇月を経過する日の翌日となります。
とみなされ、法第17条の3第2項の規定に従って、
ただし、予納に係る過誤納金の「納付又は納入
法第17条又は17条の2の規定が適用され、還付又
があった日」については、法第17条の3第2項に、
は充当することになります。
「その納付又は納入の必要がないこととなったとき
は、その時において過誤納金が納付され、又は納
(3)過納金に係る還付加算金の計算始期について
入されたものとみなして、前2条の規定を適用す
質問の本題である還付加算金の計算始期につい
る。」とあり、「納付又は納入の必要がないことと
ては、質問の予納に係る過納金が、還付加算金を
なったとき」を「納付又は納入があった日」とみ
加算する根拠となる法第17条の4第1項各号の規
なして「前2条」の法第17条及び17条の2の規定
定のいずれに該当するかを検討する必要がありま
を適用することが明記されています。
す。
しかし、還付加算金について定められている法
質問の事例は、更正、決定、賦課決定又は更正
第17条の4の規定への適用について明記がないた
の請求がなされた訳ではないので、1号から3号
め、予納に係る過誤納金の場合においても、法第
までには、いずれにも該当しません。したがって、
17条及び17条の2と同様に、「納付又は納入があ
4号の規定(※)に該当することになります。
った日」を「納付又は納入の必要がないこととな
ったとき」とみなしていいかどうかが問題になり
※ 次に掲げる区分に応じて、その区分に対応する
日の翌日から起算して1月を経過する日の翌日
Ⅰ
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申告書の提出により納付し又は納入すべき額
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ます。
この点について定めた明文規定はありませんが、
法第17条の傍流である法第17条の4について、地
方税法第17条の3第2項の規定の趣旨を無視する
ことは適当ではないので、予納に係る「納付又は
納入があった日」とは、法第17条の3第2項の
「納付又は納入の必要がないこととなったとき」と
みなされることになります。
以上のことから、令6条の15第1項第2号の
「納付又は納入があった日」は、「申告書が提出さ
れたことにより税額が確定した日(6月30日)
」と
なり、還付加算金の計算始期は、その翌日から起
算して1箇月を経過する日の翌日(8月1日)と
なります。
(大阪府総務部市町村課税政グループ)
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