塗装設計施工基準 - 広島高速道路公社

塗装設計施工基準
平成 20 年 12 月
ま
え
が
き
広島高速道路公社の「塗装設計施工基準」は、「鋼道路橋塗装便覧(平成2
年6月)」を基に、旧道路三公団並びに名古屋及び福岡北九州高速道路公社の
基準を参考に、広島の地勢や交通状況等を考慮して、平成14年3月に制定
された。その後、「鋼道路橋塗装便覧(平成2年6月)」が改訂され、新たに
「鋼道路橋塗装・防食便覧(平成17年12月)」として取りまとめられたこ
とから、平成19年8月に「塗装設計施工基準」を改定し、必要な見直しを
行った。
今回の改定は、本公社の事業進ちょくに伴い、新たに基準化を検討したも
ののうち、外面の低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗の採用、鋼製橋脚柱基部のコ
ンクリート接触面及び根巻部の防食対策、溶融亜鉛めっき面及び硬質塩化ビ
ニール管用塗装について、その取扱いを定めたものである。
なお、改定基準の適用は、原則として新設橋梁の新規発注工事を対象とし
ており、既発注工事や塗替え塗装については、事前に技術管理課と協議され
たい。
(主な改定内容)
①外面の低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗の採用
②鋼製橋脚柱基部の中埋・充填コンクリート接触面(以下「鋼脚中埋・充
填部」という。)の塗装系の変更
(旧)無塗装 → (新)H-32
③鋼製橋脚柱基部の根巻コンクリート接触面(以下「鋼脚根巻部」とい
う。)の塗装系の変更
(旧)無塗装 → (新)H-31(※水中部は H -31-2)
④鋼製橋脚柱基部の根巻コンクリートの高さが3mを超える部分(以下
「根巻コンクリート高3m超部」という。)の塗装系の追加
(新)H-30
⑤鋼製橋脚柱基部の塗装系に対応した継手部塗装系の追加
(新)F-32 【H-32塗装系に対応】
(新)F-31 【H-31塗装系に対応】(※水中部は H -31-2)
(新)F-30 【H-30塗装系に対応】
⑥溶融亜鉛めっき面用塗装の塗装系の追加 (新)S-40
⑦硬質塩化ビニール管用塗装の塗装系の追加 (新)S-41
⑧鋼製橋脚柱基部の塗装系に対応したタッチアップ塗装の追加
(今回改定を保留した主な項目)
①塗替え塗装系の見直し
②環境に配慮した塗装系の採用
※
今回改定で変更・追加した部分は、赤字で表示している。
目
次
第
1
章
適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第
2
章
塗装要領書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第
3
章
塗装工事の管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
第
4
章
塗装品質と塗色 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第
5
章
希釈剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第
6
章
塗料の保管 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
第
7
章
素地調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第
8
7.1
素地調整の種別と施工法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
7.2
一次素地調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
7.3
二次素地調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
7.4
新設亜鉛めっき面塗装時の素地調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
章
塗装系の塗膜厚及び適用部位 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
8.1
塗装系一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
8.2
鋼桁・鋼脚外面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
8.3
将来の塗替えが困難な場所の塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
8.4
鋼桁・鋼脚内面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
8.5
特殊部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
8.6
鋼床版上面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
8.7
添接板と母材接触面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
8.8
現場溶接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
8.9
高力ボルト添接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
8.10
鋼床版上面の現場溶接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
8.11
鋼製橋脚柱基部コンクリート接触面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
8.11.1
鋼脚中埋・充填部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
8.11.2
鋼脚根巻部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
8.12
第
9
鋼製橋脚柱基部コンクリート接触面の現場溶接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
8.12.1
鋼脚中埋・充填部の現場溶接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
8.12.2
鋼脚根巻部の現場溶接部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
8.13
溶融亜鉛めっき面用塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
8.14
硬質塩化ビニール管用塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
章
塗装作業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
9.1
塗装作業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
9.2
工場塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
9.3
現場塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
9.4
タッチアップ塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
9.5
塗装作業禁止の条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
i
第
10
第
11
第
12
第
13
章
作業用仮設備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
10.1
作業足場の安全性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
10.2
仮設足場 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
10.3
防護設備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
章
管理及び記録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
11.1
施工記録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
11.2
塗膜外観 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
11.3
塗膜厚検査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
11.4
塗装記録表示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
章
維持管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
12.1
一般 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
12.2
塗膜の点検 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
12.3
塗替え計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
章
塗替え塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
13.1
一般部塗装系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
13.2
内面部及び特殊部の塗装系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
13.3
塗装系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
13.4
素地調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
13.4.1
素地調整の種別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
13.4.2
水洗い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
13.5
塗装作業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
13.5.1
施工一般 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
13.5.2
現場塗装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
13.5.3
作業用仮設備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
13.6
膜厚検査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
様式集
Ⅰ
塗装工事記録表(様式‑1)
ii
第1章
適用範囲
(1) 本基準は、広島高速道路公社における鋼構造物の塗装に適用する。
(2) 本基準に示されていない事項については、次の仕様書・便覧等によるものとする。
土木工事共通仕様書
鋼道路橋塗装・防食便覧
平成17年
8月
平成17年12月
広島高速道路公社
(社)日本道路協会
〔解説〕
1.
鋼構造物塗装とは、鋼構造物又は附属物等の新設塗装及び塗替え塗装をいう。
2.
塗装の設計に当たっては、各章の〔解説〕に記述した事項を十分理解するとともに
橋梁の実状、その他の条件に応じて、適切な塗装系及び材料を選定しなければならな
い。また、条文の記述内容と異なる条件の塗装系を採用する場合は、十分に検討した
上、不合理な設計施工とならないよう努めなければならない。
3.
技術進歩の動向により、十分検討された結果、適当と判断される場合は、新技術を
採用できるものとする。
4.
本基準の改定前において、各種基準、仕様書、便覧、示方書及び諸通達等が改定さ
れた場合は、本基準の規定を読み代えるものとする。
-1-
第2章
塗装要領書
(1) 請負者は塗装工事の着手に先立ち、監督員に塗装要領書を提出しなければならない。
塗装要領書には原則として以下に示す事項を記載するものとする。
1) 工事概要
2) 塗装工程表
3) 使用塗料名及び製造会社名
4) 素地調整の方法
5) 塗装方法
6) 施工管理
7) 塗装作業者一覧表
8) 足場支保工(現場塗装)
9) 保管方法
10) その他特記事項
〔解説〕
1.
塗装工程表は、関連工事の工程を考慮したバーチャート又はネットワーク方式で書
くものとする。
2.
施工管理には、塗装を良好に仕上げるために必要な各施工段階における管理方法を
記載するものとする。
3.
塗装作業者一覧表には、塗装作業者の経歴を記載するものとする。
-2-
第3章
塗装工事の管理
(1) 請負者は、塗装要領書に従って管理を行い、その結果を塗装工事記録表に記載しなけ
ればならない。
なお、塗装工事記録表は監督員の請求があった場合は、遅滞なく提示するとともに検
査時に提出しなければならない。
〔解説〕
1.
塗装工事記録表は、構造物単位ごと(橋脚の場合は1基ごと、桁の場合は1径間ご
と)に作成する。
2.
塗装工事記録表は、(様式‑1)に従い作成する。
-3-
第4章
塗装品質と塗色
(1) 塗料は、JIS 規格に従うものとし、また、鋼道路橋塗装用塗料標準に適合するもので
なければならない。
(2) 桁本体、鋼製橋脚及び鋼製高欄などの指定色は、特記仕様書に明示するものとする。
(3) 同一箇所の塗装に使用する塗料は下、中、上塗り一貫して、同一塗料メーカー製品で
あることを原則とする。
(4) 請負者は、使用塗料について、塗料の種類ごと、かつ製造ロットごとに塗料製造会社
による塗料規格試験を行い、品質規格証明書により監督員の確認を得なければならな
い。ただし、監督員が必要と認めた時は、公的機関で品質試験を行わなければならない。
〔解説〕
1.
塗料の品質保証の証左となるべき品質規格証明書は、塗料メーカーで JIS 規格(又
は鋼道路橋塗装用塗料標準)に基づく試験を行った上、その成績書をもって、これに
代えるものとし、その様式は、各塗料メーカーのものとする。
なお、品質規格証明書には試験成績以外に次項を記載する。
・塗料銘柄と規格名称
・ロット番号とその数量
・製造年月日と試験年月日
・試験責任者の署名または捺印
2.
塗色の決定は(社)日本塗料工業会発行の塗料用標準見本帳で表示する。
(社)日本塗料工業会発行の塗料用標準見本帳は 2 年ごとに更新されるので最新のも
のを使用する。
3.
工事着手前に、塗り板見本を提出し監督員の確認を得なければならない。
塗り板見本は約 200×70×0.8 ㎜の鋼板に各工程が確認できるように塗装したもの
とする。
4.
塗料は、総合塗膜で性能を期待するものであり、塗料品質の責任問題を明確にする
意味で、新設時の場合は、原則として下・中・上塗りを同一メーカーの製品を使用す
るものとする。
-4-
第5章
希釈剤
(1) 希釈剤は塗料と同一メーカーの製品を使用しなければならない。
〔解説〕
1.
塗料の粘度(粘性)は種類により異なり、また、塗料の粘度が作業性におよぼす影
響は塗装方法によっても大きな違いがある。一般的には粘度が高いほど作業性は低下
し、塗装膜は凹凸になりやすく均等な塗装膜厚を得難くなる。逆に、粘度が低すぎる
と塗膜に「だれ」が生じやすく、塗膜も薄くなる傾向がある。
上記問題の防止と作業性を向上させるためには、適切な希釈が必要である。希釈率
については、気温、風速、塗装方法、被塗面の形状・状態などを考慮して決めるべき
である。下表に標準的な希釈剤・希釈率を表記した。詳細は塗料のメーカーの製品説
明書・仕様書に従う。
表‑5.1 希釈剤および希釈率(気温 20℃の場合)
希釈率(重量%)
塗
料
名
希
釈
剤
ハケ塗り
スプレー
塗り
−
10 以下
−
10 以下
有機ジンクリッチペイント
無機ジンクリッチ
プライマー用シンナー
無機ジンクリッチ
プライマー用シンナー
エポキシ樹脂塗料用シンナー
5 以下
10 以下
※エポキシ樹脂塗料下塗
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
タールエポキシ樹脂塗料
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
変性エポキシ樹脂塗料内面用
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
変性エポキシ樹脂塗料下塗
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
ふっ素樹脂塗料用中塗
ふっ素樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
ふっ素樹脂塗料上塗
ふっ素樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
超厚膜形エポキシ樹脂塗料
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
無溶剤形タールエポキシ樹脂塗料
−
−
−
無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料
−
−
−
亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗
エポキシ樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗
ふっ素樹脂塗料用シンナー
10 以下
20 以下
無機ジンクリッチプライマー
無機ジンクリッチペイント
※ミストコートに使用する塗料の希釈率は 30〜60%程度(重量比)とする。ただし、厚膜
形塗料の場合の希釈率は 30%程度(重量比)とする。
-5-
第6章
塗料の保管
(1) 請負者は、塗料を直射日光の受けない場所に保管し、消防法、労働安全衛生法等の関
連法規を遵守して取扱わなければならない。
(2) 保管に当たっては、出納簿を整理して搬入量、使用量を明確にしておかなければなら
ない。
(3) 塗料は有効期限内に使用しなければならない。
〔解説〕
1.
塗料及び希釈剤は、引火の危険性がある可燃性物質であり、また、有害物質が含ま
れているため、爆発や中毒をおこさないように運搬、保管、塗装に際しては関連法規
を遵守し、安全管理に十分配慮しなければならない。
なお、消防法により塗料は第 4 類危険物として、現場での保管数量が表‑6.1 のよう
に指定されている。
2.
入荷時には、塗料が指定品であることの確認と、所定数量の確認の必要がある。
3.
塗料の有効期限は 12 か月であり、製造後 12 か月以上経過したものは使用してはな
らない。
ただし、ジンクリッチペイント(無機及び有機)の有効期限は 6 か月であり、製造
後 6 か月以上経過したものは使用してならない。
表‑6.1 塗料の保管数量
塗
料
名
危険物品名
指定数量
(水溶性以外)
無機ジンクリッチプライマー
第 2 石油類
1,000L
無機ジンクリッチペイント
第 2 石油類
1,000L
有機ジンクリッチペイント
第 1 石油類
200L
エポキシ樹脂塗料下塗
第 1 石油類
200L
タールエポキシ樹脂塗料
第 1 石油類
200L
変性エポキシ樹脂塗料内面用
第 1 石油類
200L
変性エポキシ樹脂塗料下塗
第 1 石油類
200L
ふっ素樹脂塗料用中塗
第 1 石油類
200L
ふっ素樹脂塗料上塗
第 1 石油類
200L
超厚膜形エポキシ樹脂塗料
第 2 石油類
1,000L
無溶剤形タールエポキシ樹脂塗料
指定可燃物
2,000L
無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料
指定可燃物
2,000L
亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗
第 1 石油類
200L
低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗
第 1 石油類
200L
-6-
第7章
素地調整
7.1 素地調整の種別と施工法
被塗面は、塗装前に第 8 章に示す素地調整を行わなければならない。
素地調整の種別と施工法は、表‑7.1 による。
表‑7.1
処理方法
調
整
素地調整の種別
の
程
度
適
用
黒皮、さびを十分に除去し清浄な金属 ジンクリッチプライマーを用
いる場合に適用する。
面とする。
ISO‑Sa2.5、SPSS‑Sd2、Sh2
製品ブラストにより一次プライマーを 下塗り第 1 層に無機ジンクリ
ッチペイントを用いる場合に
製品ブラスト
除去する。
適用する。
ISO‑Sa2.5、SPSS‑Sd2、Sh2
異物の付着がなく、亜鉛めっき面の白 新設亜鉛めっき面に塗装を行
う場合に適用する。
スイープブラスト さびを除去する。
ISO‑Sa1、SPSS‑Ss
工具を用いてさび、劣化塗膜を除去し、 一次プライマーの損傷部と発
鉄面を露出させる。劣化していない一 錆部に適用する。ただし、下
新
次プライマーは残す。ただし、全面を 塗り第 1 層に無機ジンクリッ
設
チペイントを用いる場合は、
清浄にする。
適用できない。
ISO‑St3、SPSS‑Pt3
動力工具
工具を用いてさび、劣化または損傷し 劣化または、損傷した塗膜・
亜鉛めっきの発錆部に適用す
た塗膜・亜鉛めっきを除去し、鉄面を
塗
る。
露出させる。劣化していない塗膜・亜
替
鉛めっきは残す。ただし、全面を清浄
え
にする。
ISO‑St3、SPSS‑Pt3
手工具は力棒、ハンマー、ワイヤブラ 一次プライマーの損傷部と発
シなどを用いて手作業により行う素地 錆部に適用する。ただし、さ
びを完全に除去することがで
調整である。
きない。また、硬化が進んだ
薄い赤さびなどを除去する。
手工具
また、動力工具の補助手段として併用 塗膜やジンクリッチ塗膜など
も除去できない。
されることがある。
ISO‑St2
高圧水などにより塗面に付着している 塩分など付着物除去する場合
水洗い
塩 分 な ど の 付 着 物 を 除 去 し 乾 燥 さ せ に適合する。
る。
注)ISO :International Standard
ISO 8501‑1:1988(Svcnsk Standard SISO5‑5900‑1967)
SPSS :日本造船研究協会(1984)
塗装前鋼材表面処理基準
SPSS では、ブラストに用いる研掃材の種類に応じて表面処理規格を定めている。
(サンドブラストでは Sd、ショットブラストでは Sh)。
原板ブラスト
-7-
〔解説〕
1.
塗料の防錆効果は、塗膜が鋼材面に密着していることによって発揮されるものであ
り、鋼材面と塗膜の間に、さび、黒皮、劣化塗膜、空気、水、塩分、その他の異物が
介在している場合は、塗料の防錆効果は期待できないばかりか逆に発錆が促進される。
鋼材がさびると体積が増加して塗膜を持ち上げるが、これらの介在物も塗膜を透過
してくる水分や空気により膨張して塗膜を持ち上げるものが多い。塗膜が持ち上げら
れると、ふくれ、われ、はがれなどの塗膜損傷が生じ水や空気の塗膜内への浸透が容
易になり、発錆や塗膜劣化がいっそう促進され拡大していく。このように、鋼材面と
塗膜の間に異物が介在すると塗料の防錆効果は著しく減少するので、鋼材面を清浄に
してから塗料を塗布することが必要である。また、塗料は一般に平滑な面よりも適度
な粗面に塗布した方が、接触面積が大きく物理的な付着効果が大きいのでよく密着す
る。
塗料を塗布する場合は、鋼材面を清浄にし適度な粗面にする作業が不可欠である。
この作業を素地調整という。
2.
表面粗さについては、実際にブラストされた構造物の表面粗さを測定することは困
難であり、表面粗さの規定値を決めても直接表面粗さそのものを管理することは難し
い。
したがって、ブラストによる素地調整を行う場合は、試験によりブラスト条件と素
地調整程度及び表面粗さの関係を明らかにしておき、定められたブラスト条件を確保
できるように作業管理を行うことが必要である。
7.2 一次素地調整
(1) 鋼材は加工前に表‑7.2 に示す一次表面処理を行うことを原則とする。
表‑7.2
処理方法
原板ブラスト
除
錆
度
ISO‑Sa2.5
SPSS‑Sd2,Sh2
適用箇所
鋼材全面
(2) 一次素地調整後は、本基準第 8 章に示す一次プライマーを塗装しなければならない。
〔解説〕
1.
一次素地調整とはミルメーカーやファブリケーター(製作工場)で鋼材原板に行う
素地調整のことである。原板ブラスト処理に相当する。
2.
一次素地調整の表面粗さは、JIS B 0601 表面粗さの十点平均粗さ表示法による 80
μmRz 以下の粗さに処置することが望ましい。
-8-
7.3 二次素地調整
(1) 部材製作後は、塗装前に表‑7.3 に示す二次素地調整を行なわなければならない。
表‑7.3
処理方法
製品ブラスト
除
錆
度
適用箇所
ISO‑Sa2.5
下塗り第1層に無
SPSS‑Sd2,Sh2
機ジンクリッチペイントを
塗装する面
動力工具
ISO‑St3
一次プライマーの
SPSS‑Pt3
損傷部と発錆部
(2) 製品ブラスト後、下塗り塗装までの塗装間隔は原則として 4 時間以内とする。
〔解説〕
1.
二次素地調整とは、一次プライマーが塗装された状態で製作された構造部材に対す
る防錆塗装前の素地調整である。動力工具処理や製品ブラスト処理がある。
2.
ブラストされた面には微粒粉が付着しているので、ブラスト後は圧縮空気を用いて
鋼材面を清掃しなければならない。また、ブラスト時の相対湿度が高く、鋼材温度が
気温に対して低いと露点に達し、鋼材表面に赤錆が出てくる(これをターニングとい
う)可能性があるため、被塗面が結露していない状態にしておく必要がある。
3.
製品ブラストによる二次素地調整後の表面粗さは、JIS B 0601 表面粗さの十点平均
粗さ表示法による 80μmRz 以下の粗さに処置することが望ましい。
7.4 新設亜鉛めっき面塗装時の素地調整
(1) 新設亜鉛めっき面に塗装を行う場合は、塗装前に表‑7.4 に示す素地調整を行なわなけ
ればならない。
表‑7.4
処理方法
スイープブラスト
除
錆
度
適用箇所
ISO‑Sa1
新設亜鉛め っき面に
SPSS‑Ss
塗装を行う箇所
(2) 拡大鏡なしで、表面に見える油、グリース、泥土、弱く付着した白さび及び異物がな
いように清浄にする。
〔解説〕
1.
スイープブラスト処理は、表面に付着したものを研磨処理よりもより高度に除去す
るとともに表面粗度を確保することで経年後の塗膜の内部応力の上昇をふさぎ、長期
の安定した密着性を確保するのに有効な方法である。
スイープブラスト処理は通常、ISO Sal 程度の研掃密度で軽く仕上げる方法をいう。
ブラスト処理を行う場合は、亜鉛めっきが剥離しないように、また研掃し過ぎには気
をつける必要がある。
-9-
第8章
塗装系の塗膜厚及び適用部位
8.1 塗装系一覧
(1)
塗装系の一覧を表‑8.1 に示す
表‑8.1 塗装系一覧
記号
適
用
部
位
C‑5
鋼桁・鋼脚外面(旧 C‑4)
C‑6
将来の塗替が困難な場所(旧 C‑5)
D‑5
箱桁・鋼脚内面
D‑6
特殊部(伸縮装置、排水桝内面、床版型枠
適
用
C‑5 塗装系に対応
埋殺し部など)(旧 D‑3)
E
鋼床版上面
T
添接板・母材接触面
F‑13
現場溶接(旧 F‑4)
C‑5 塗装系に対応
F‑18
現場溶接(旧 F‑5)
D‑6 塗装系に対応
F‑14
現場溶接(旧 F‑6)
D‑5 塗装系に対応
F‑20
現場溶接
C‑6 塗装系に対応
F‑11
高力ボルト添接部(旧 F‑8)
C‑5 塗装系に対応
F‑19
高力ボルト添接部(旧 F‑9)
D‑6 塗装系に対応
F‑12
高力ボルト添接部(旧 F‑10)
D‑5 塗装系に対応
F‑21
高力ボルト添接部
C‑6 塗装系に対応
F‑17
鋼床版上面の現場溶接部(旧 F‑11)
E 塗装系に対応
H‑32
鋼脚中埋・充填部
H‑31
鋼脚根巻部
H‑31‑2
鋼脚根巻部(水中)
H‑30
根巻コンクリート高3m超部
F‑32
鋼脚中埋・充填部の現場溶接部
H‑32 塗装系に対応
F‑31
鋼脚根巻部の現場溶接部
H‑31 塗装系に対応
F‑31‑2
鋼脚根巻部(水中)の現場溶接部
H‑31‑2 塗装系に対応
F‑30
根巻コンクリート高3m超部の現場溶接部
H‑30 塗装系に対応
S‑40
溶融亜鉛めっき面用塗装
S‑41
硬質塩化ビニール管用塗装
- 10 -
8.2 鋼材・鋼脚外面
(1) 鋼桁・鋼脚外面の塗装系は 表‑8.2 による。
表‑8.2
塗
装
系
適用
工
前
処
理
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
塗
鋼桁・鋼脚外面の塗装系
料
名
原板ブラスト
無機ジンクリッチプラ
イマー
標 準
使用量
(g/
㎡)
塗装方法
‑
‑
160
スプレー
‑
5
般
外
面
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
‑
(15)
〜6 カ月
製品ブラスト
‑
‑
−
4 時間以内
一
C
塗装間隔
下塗り
無機ジンクリッチペイ
ント
600
スプレー
ミストコート
ミストコート
160
スプレー
工
場
75
2 日〜10 日
‑
1 日〜10 日
塗
下塗り
エポキシ樹脂塗料下塗
540
スプレー
装
120
1 日〜10 日
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
170
スプレー
上塗り
低汚染形ふっ素樹脂塗
料上塗
140
スプレー
30
1 日〜10 日
25
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. ミストコートはエポキシ樹脂塗料下塗の塗料を希釈して用いる。
3. 添接板に接する母材部分は工場塗装の無機ジンクリッチペイントまで塗装する。
4. ( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1.
本塗装系は、下塗として防錆力に優れるジンクリッチペイントを厚塗りした上に、
塗膜耐久性及び密着性に優れ、同時に亜鉛の消耗抑制効果が大きいエポキシ樹脂塗料
下塗を塗り重ね、耐候性に優れ、汚れにくい低汚染形ふっ素樹脂塗料を上塗として用
いた塗装系である。
この塗装系は長期防錆塗装系であり、塗替え周期を長くすることが出来る。
2.
無機ジンクリッチペイントは多孔質であり、次層の塗装時の発砲を防止するために
ミストコート(希釈率 30〜60%程度、厚膜塗料の場合は希釈率 30%程度)を行う。
3.
鋼床版桁裏面の塗装ではグースアスファルト舗装時の熱の影響により、塗膜にふく
れが生じることがある。これはグースアスファルトの温度が 230〜270℃であることか
ら、塗膜面に 100〜150℃程度の温度がかかるため、塗膜から分解ガスが発生し塗膜を
持ち上げて発生するものである。したがって、本塗装系では耐熱性に問題のない塗料
の組合せとした。
- 11 -
8.3 将来の塗替えが困難な場所の塗装
(1) 床版端部補強板などの将来塗替えが困難な部位の塗装系は表‑8.3 による。
表‑8.3
塗
装
系
適用
工
前
処
理
‑
‑
6
一般部C 5塗装系の場合
将来塗替えが困難な部位
C
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
工
将来の塗替えが困難な場所の塗装系
塗
料
名
原板ブラスト
無機ジンクリッチプ
ライマー
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
160
スプレー
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
‑
(15)
〜6 カ月
製品ブラスト
‑
‑
−
4 時間以内
下塗り
無機ジンクリッチペ
イント
600
スプレー
ミストコ‑ト
ミストコート
160
スプレー
75
2 日〜10 日
‑
1 日〜10 日
場
下塗り
エポキシ樹脂塗料下塗
240
スプレー
下塗り
エポキシ樹脂塗料下塗
540
スプレー
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中
塗
塗
装
塗装間隔
60
1 日〜10 日
120
1 日〜10 日
170
スプレー
30
1 日〜10 日
上塗り
低汚染形ふっ素樹脂
塗料上塗
140
スプレー
25
注) 1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. ミストコートはエポキシ樹脂塗料下塗の塗料を希釈して用いる。
3.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. これらの部位(将来の塗替えが困難な場所)は従来内面用塗装系で施工してい たが、
主桁外面の塗装系を防錆耐久性、耐水性、耐候性の優れた塗装系に変更したこと、外観
色の統一が図れること、主桁部の塗装系と同一にすることで塗装作業が煩雑にならない
ことなどから、主桁外面塗装系に準じた塗装系とした。
2.
この部分は、将来塗替え時に、下地処理及び塗装作業が困難なため、下塗を1回増し
塗りすることとした。
3.
将来の塗替えが困難な場所の例を次図に示すが、詳細は監督員と協議し決定する。
- 12 -
①
床版端部補強版
②
落橋防止装置連結板内面
③
桁端部(PC 桁との取合部などの狭隘箇所)
④
橋脚・壁高欄との近接部
⑤
切り欠きのある支点部
⑥
落橋防止装置用ブラケット部
- 13 -
8.4 鋼桁・鋼脚内面
(1) 鋼桁・鋼脚内面の塗装系は 表‑8.4 による。
表‑8.4
塗
装
系
適用
鋼脚内面
箱桁内面
‑
D
5
工
前
処
理
程
一次素地
調整
プライマー
鋼桁・鋼脚内面の塗装系
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
原板ブラスト
−
−
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
塗
料
名
塗装間隔
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
−
(15)
〜6 カ月
工
場
塗
装
二次素地
調整
動力工具
−
−
第1層
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
410
スプレー
第2層
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
410
スプレー
−
4 時間以内
120
1 日〜10 日
120
注) 1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. この塗装系は、箱桁内面、鋼脚内面部に適用する。
変性エポキシ樹脂塗料は耐水性、耐薬品性が優れているエポキシ樹脂に変性樹脂を
配合して耐久性を持たせたもので、密着性がよく、腐食物質の透過性が小さい塗膜防
食を目的としたものである。
2.
この部分は従来タールエポキシ樹脂塗料を塗装していたが、変性エポキシ樹脂塗料
はタールエポキシ樹脂塗料と異なり、着色が可能である。よって、管理上、内面の安
全確保のため、明色化を目的として、白系、クリーム系とする。
3.
鋼床版桁でグースアスファルト舗装を行う場合、裏面の塗膜の耐熱性が劣る時は、
その熱で塗膜にふくれが生じる。これはグース自身の温度が 230〜270℃であり、塗膜
面には 100〜150℃程度の温度がかかるため、塗膜の熱分解ガスが発生し、このガスが
抜け切れずに塗膜を持ち上げて、ふくれに至るものである。
本塗装系ではプライマーに耐熱性が最も優れ、耐食性のよい無機ジンクリッチプラ
イマーを用いる。また、第 1 層、第 2 層には耐熱性がよく、タールエポキシ樹脂塗料
と同等の防食性を有する変性エポキシ樹脂塗料を用いることとした。
- 14 -
8.5 特殊部(伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部など)
(1) 特殊部(伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部など)の塗装系は表‑8.5 による。
表‑8.5
塗
装
系
適用
工
前
処
理
‑
特殊部
D
6
特殊部(伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部など)の塗装系
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
工
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
原板ブラスト
−
−
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
製品ブラスト
−
塗
料
名
装
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
−
(15)
〜6 カ月
−
−
4 時間以内
下塗り
無機ジンクリッチペ
イント
ミストコ‑ト
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
160
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
410
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
410
600
スプレー
75
2 日〜10 日
場
塗
塗装間隔
下塗り
下塗り
スプレー
−
1 日〜10 日
スプレー
120
1 日〜10 日
スプレー
120
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す.気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1.
この塗装系は、特殊部(伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部など)に適用す
る。変性エポキシ樹脂塗料は、耐水性、耐薬品性が優れているエポキシ樹脂に変性樹
脂を配合して耐久性を持たせたもので、密着性がよく、腐食物質の透過性が小さい塗
膜防食を目的としたものである。
2.
この部分は、従来からタールエポキシ樹脂塗料を塗装していたが、防食下地には耐
食性に優れたジンクリッチペイントを、下塗りにはタールエポキシ樹脂塗料と同等の
防食性を有する変性エポキシ樹脂を用いることにした。
3.
特殊部の主な部位例を下図に示す。
- 15 -
(D − 6 塗 装 )
8.6 鋼床版上面
(1) 鋼床版上面の塗装系は表‑8.6 による。
表‑8.6
塗
装
系
工
前
処
理
程
一次素地
調整
プライマー
塗
料
名
原板ブラスト
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
塗装間隔
標準
膜厚
(μm)
‑
4 時間以内
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
(15)
〜6 カ月
工場塗装
鋼床版上面
E
適用
鋼床版上面の塗装系
二次素地
調整
製品ブラスト
‑
‑
−
4 時間以内
第1層
無機ジンクリッチペ
イント
300
スプレー
30
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. 鋼床版上面の塗装系は、グースアスファルト舗装までの期間の防錆耐久性を有する
もので、舗装との密着に問題のないジンクリッチペイントとした。
2.
鋼床版上面添接部の塗装を下図に示す。
- 16 -
‑5
※
○はT塗装系、×はE塗装系、△はD‑5塗装系を示す。
- 17 -
8.7 添接板と母材接触面
(1) 添接板と母材接触面の塗装系は表‑8.7 による。
表‑8.7
塗
装
系
適用
前
処
理
工場塗装
添接板と母材添接面
T
工
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
第1層
塗
添接板と母材接触面の塗装系
料
名
原板ブラスト
無機ジンクリッチプ
ライマー
製品プラスト
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
160
スプレー
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
‑
(15)
〜6 カ月
‑
無機ジンクリッチペ
イント
塗装間隔
‑
−
4 時間以内
600
スプレー
75
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
3. 鋼床版上面の接触面は E 塗装系とする。
〔解説〕
1. 本 体 の 塗 装 系 を 無 機 ジ ン ク リ ッ チ ペ イ ン ト を 用 い た 高 耐 久 性 塗 装 系 を 採 用 し た こ
とに合わせて、高力ボルト接合部の耐久性のレベルを合わせるために、無機ジンクリ
ッチペイントを塗装することとした。
無機ジンクリッチペイントは、防錆力に優れると同時に摩擦接合部に塗装しても適
用可能な摩擦係数が得られる。本塗装系を接合部に塗装することにより、現地素地調
整が容易になると同時に本体と同レベルの防錆力が期待できる。
2.
一般添接部の塗装を下図に示す。
‑5
‑5
※
○はT塗装系、□はC‑5塗装系、△はD‑5塗装系を示す。
- 18 -
8.8 現場溶接部
(1) 現場溶接部の塗装系は表‑8.8 による。
表‑8.8
本体塗装系
塗
装
系
工
程
素地調整
下塗り
下塗り
‑
F
C‑5
13
現
場
下塗り
下塗り
中塗り
上塗り
素地調整
下塗り
下塗り
‑
F
D‑6
18
現
場
下塗り
下塗り
下塗り
素地調整
下塗り
‑
F
D‑5
14
現
場
下塗り
下塗り
下塗り
素地調整
下塗り
下塗り
下塗り
‑
F
20
C‑6
現
場
下塗り
下塗り
中塗り
上塗り
塗
料
現場溶接部の塗装系
名
動力工具
有機ジンクリッチペ
イント
有機ジンクリッチペ
イント
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
ふっ素樹脂塗料用中
塗
低汚染形ふっ素樹脂
塗料上塗
動力工具
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
300
はけ
300
はけ
200
はけ
‑
75
60
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
140
はけ
30
1 日〜10 日
120
はけ
‑
‑
200
はけ
25
4 時間以内
‑
60
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
200
はけ
200
はけ
‑
‑
300
はけ
300
はけ
500
はけ
500
はけ
‑
‑
300
はけ
300
はけ
200
はけ
- 19 -
標準
膜厚
(μm)
1 日〜10 日
200
超厚膜形エポキシ樹
脂塗料
超厚膜形エポキシ樹
脂塗料
動力工具
有機ジンクリッチペ
イント
有機ジンクリッチペ
イント
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
ふっ素樹脂塗料用中
塗
低汚染形ふっ素樹脂
塗料上塗
4 時間以内
1 日〜10 日
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
変性エポキシ樹脂塗
料内面用
動力工具
有機ジンクリッチペ
イント
有機ジンクリッチペ
イント
塗装間隔
はけ
60
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
60
4 時間以内
1 日〜10 日
‑
75
1 日〜10 日
1 日〜10 日
4 時間以内
1 日〜10 日
300
‑
75
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
140
はけ
30
1 日〜10 日
120
はけ
25
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
〔解説〕
1.
塗装方法は、原則としてスプレー・はけとする。ただし、広い平滑面をはけ塗りす
る場合には、ローラーを併用してもよいが、ローラーの選定や施工に当たっては事前
に監督員の承諾を得ること。
2.
橋の連結部は、一般部に比べて発錆が早い。このため、現場接合部の後の塗装には、
長期耐久性に必要な膜厚確保のため超厚膜形エポキシ樹脂塗料を塗装する。
なお、防食下地の有機ジンクリッチペイントや下塗の超厚膜形エポキシ樹脂塗料は、
はけ塗りやローラー塗りでは、必要膜厚が1回では得られないので2回塗りとした。
3.
鋼橋脚、鋼床版などで現場溶接する部分は、原則として溶接線から 100 ㎜以内の部
分は塗装しないものとするが、溶接方法又は非破壊検査方法などにより無塗装範囲を
別途考慮する必要がある場合は、監督員と協議すること。ただし、錆が生じるおそれ
のある部分は発錆防止のため開先面用塗料を塗布しても良い。
*
①
鋼脚の場合の無塗装範囲
②
鋼床版の場合の無塗装範囲
開先面以外の無塗装範囲は、一次プライマー又は無機ジンクリッチプライマーまで
塗装する。(無塗装範囲とは開先面以外をいう。)
- 20 -
8.9 高力ボルト添接部
(1) 高力ボルト添接部の塗装系は表‑8.9 による。
表‑8.9
本体塗装系
塗
装
系
工
前
処
理
工
場
塗
装
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
下塗り
素地調整
F
‑
程
C‑5
11
ミストコート
現
場
塗
装
下塗り
下塗り
中塗り
上塗り
前
処
理
工
場
塗
装
プライマー
二次素地
調整
下塗り
素地調整
F
‑
一次素地
調整
D‑6
ミストコート
19
現
場
塗
装
下塗り
塗
料
高力ボルト添接部
名
原板ブラスト
無機ジンクリッ
チプライマー
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
160
スプレー
‑
‑
塗装間隔
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
‑
(15)
〜6 カ月
製品ブラスト
無機ジンクリッ
チペイント
動力工具
600
超厚膜形エポキ
シ樹脂塗料
超厚膜形エポキ
シ樹脂塗料
スプレー
‑
130
はけ
500
はけ
ふっ素樹脂塗料
用中塗
140
はけ
低汚染形ふっ素
樹脂塗料上塗
120
はけ
‑
‑
160
スプレー
製品ブラスト
1 日〜10 日
動力工具
25
4 時間以内
‑
(15)
〜6 カ月
‑
‑
4 時間以内
600
スプレー
75
2 日〜6 カ月
‑
‑
4 時間以内
130
はけ
‑
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
下塗り
変性エポキシ樹
脂塗料内面用
200
はけ
下塗り
変性エポキシ樹
脂塗料内面用
200
はけ
下塗り
変性エポキシ樹
脂塗料内面用
200
はけ
- 21 -
30
1 日〜10 日
‑
変性エポキシ樹
脂塗料内面用
変性エポキシ樹
脂塗料内面用
300
1 日〜10 日
‑
無機ジンクリッ
チペイント
‑
1 日〜10 日
はけ
無機ジンクリッ
チプライマー
‑
4 時間以内
500
原板ブラスト
75
2 日〜6 カ月
‑
変性エポキシ樹
脂塗料下塗
‑
4 時間以内
60
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
60
本体塗装系
塗
装
系
工
前
処
理
F
‑
D‑5
工
場
塗
装
12
程
一次素地調整
プライマー
二次素地調整
下塗り
素地調整
現
場
塗
装
ミストコート
下塗り
下塗り
前
処
理
工
場
塗
装
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
下塗り
素地調整
F
ミストコート
‑
C‑6
21
現
場
塗
装
下塗り
下塗り
下塗り
中塗り
上塗り
塗
料
名
原板ブラスト
無機ジンクリッチ
プライマー
製品ブラスト
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
160
スプレー
動力工具
原板ブラスト
無機ジンクリッチ
プライマー
製品ブラスト
600
動力工具
‑
‑
スプレー
75
‑
‑
4 時間以内
130
はけ
‑
1 日〜10 日
500
はけ
500
はけ
‑
‑
160
スプレー
1 日〜10 日
4 時間以内
300
‑
(15)
〜6 カ月
‑
‑
4 時間以内
600
スプレー
75
2 日〜6 カ月
‑
変性エポキシ樹脂
塗料下塗
変性エポキシ樹脂
塗料下塗
超厚膜形エポキシ
樹脂塗料
超厚膜形エポキシ
樹脂塗料
ふっ素樹脂塗料用
中塗
低汚染形ふっ素樹
脂塗料上塗
(15)
2 日〜6 カ月
‑
無機ジンクリッチ
ペイント
‑
4 時間以内
‑
変性エポキシ樹脂
塗料下塗
超厚膜形エポキシ
樹脂塗料
超厚膜形エポキシ
樹脂塗料
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
〜6 カ月
‑
無機ジンクリッチ
ペイント
塗装間隔
‑
‑
4 時間以内
130
はけ
‑
1 日〜10 日
200
はけ
60
1 日〜10 日
500
はけ
500
はけ
140
はけ
1 日〜10 日
300
1 日〜10 日
30
1 日〜10 日
120
はけ
25
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. 高力ボルト自身の塗装については表‑8.9 の現場塗装から行うこと。
3. (
)内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. ボルト頭は塗り残しが生じやすいので、特に入念な塗装が必要である。
2.
ボルト及びナットは潤滑油の付着が考えられるので、塗装前に十分な脱脂が必要で
ある。
- 22 -
3.
現場の高力ボルト接合部及び溶接部の表面は凹凸が多く、高度の素地調整は期待し
がたい。また、塗装厚のバラツキも大きくなりやすい。これらの防錆性能の低下要因
を補い、本体一般部との防錆耐久性レベルを合わせるため、高力ボルト接合部の添接
板および母材添接面は工場で無機ジンクリッチペイントを塗装することとした。
8.10
鋼床版上面の現場溶接部
鋼床版上面の現場溶接部の塗装系は表‑8.10 による。
表‑8.10
装
系
本体塗装系
塗
標
工
程
‑
現場塗装
17
E
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
塗装間隔
(g/㎡)
素地調整
F
鋼床版上面の現場溶接部の塗装系
第1層
動力工具
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
(μm)
‑
‑
300
はけ
イント
第2層
膜厚
4 時間以内
‑
30
1 日〜10 日
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
イント
300
はけ
30
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
- 23 -
8.11
鋼製橋脚柱基部コンクリート接触面
8.11.1
鋼脚中埋・充填部
(1) 鋼脚中埋・充填部の塗装系は表‑8.11.1 による。
表‑8.11.1
‑
工
前
処
理
程
塗
一次素地
調整
プライマー
料
名
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
−
−
原板ブラスト
塗装間隔
標準
膜厚
(μm)
−
4 時間以内
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
(15)
〜6 カ月
工場塗装
32
鋼脚中埋 充填部
H
適用
・
塗
装
系
鋼脚中埋・充填部の塗装系
二次素地
調整
製品ブラスト
−
−
−
4 時間以内
第1層
無機ジンクリッチペ
イント
300
スプレー
30
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. 鋼脚中埋・充填部の塗装系は、中埋・充填コンクリート打設までの期間の防錆耐久性
を有し、コンクリートとの密着に問題のない無機ジンクリッチペイントとした。
2. 鋼脚中埋・充填部の塗装範囲を図‑8.11.1 に示す。
3. コンクリート打設時の出来形誤差を考慮し、鋼脚中埋・充填部は、内面塗装の D‑5 塗
装系を図‑8.11.1 に示すように中埋・充填コンクリート天端から 100 ㎜の範囲で塗装し、
(D - 5 塗装系)
内面塗装範囲
100mm
100mm
(C - 5 塗装系)
外面塗装範囲
無機ジンクリッチペイント塗装範囲が露出しないようにする。
中埋・充填コンクリート
図‑8.11.1
H - 32
H - 31
根巻きコンクリート
鋼脚中埋・充填部及び鋼脚根巻部の塗装範囲
- 24 -
8.11.2
鋼脚根巻部
(1) 鋼脚根巻部の塗装系は表‑8.11.2 による。
表‑8.11.2
塗
装
系
‑
工
前
処
理
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
‑
‑
前
処
理
名
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
−
−
原板ブラスト
塗装間隔
標準
膜厚
(μm)
−
4 時間以内
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
(15)
製品ブラスト
−
−
−
一次素地
調整
プライマー
無機ジンクリッチペ
イント
300
スプレー
原板ブラスト
−
−
30
−
4 時間以内
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
(15)
〜6 カ月
工場塗装
2
鋼脚根巻部︵水中︶
31
料
4 時間以内
第1層
H
塗
〜6 カ月
工場塗装
31
鋼脚根巻部
H
適用
鋼脚根巻部の塗装系
二次素地
調整
製品ブラスト
−
−
−
4 時間以内
第1層
無機ジンクリッチペ
イント
600
スプレー
75
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
〔解説〕
1. 鋼脚根巻部の塗装系は、根巻コンクリート打設までの期間の防錆耐久性を有し、コ
ンクリートとの密着に問題のない無機ジンクリッチペイントとした。
2. 鋼脚根巻部が水中となる場合は、防食下地として耐食性に優れた無機ジンクリッチ
ペイントを 75μm塗布することにした。
3. 鋼脚根巻部の塗装範囲を図‑8.11.1 に示す。
4. コンクリート打設時の出来形誤差を考慮し、鋼脚根巻部については、外面塗装系で
ある C‑5 塗装系を図‑8.11.1 に示すように根巻コンクリート天端から 100 ㎜の範囲で
塗装し、無機ジンクリッチペイント塗装範囲が露出しないようにする。
- 25 -
(2) 根巻コンクリート高3m超部の塗装系は表‑8.11.3 による。
表‑8.11.3
根巻コンクリート高3m超部
‑
工
用
30
適
塗装系
H
根巻コンクリート高3m超部の塗装系
前
処
理
程
一次素地
調整
プライマー
二次素地
調整
工
標 準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
原板ブラスト
−
−
無機ジンクリッチプ
ライマー
160
スプレー
製品ブラスト
−
塗
料
名
装
4 時間以内
標準
膜厚
(μm)
−
(15)
〜6 カ月
−
−
4 時間以内
下塗り
無機ジンクリッチペ
イント
ミストコ‑ト
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
160
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
410
変性エポキシ樹脂塗
料下塗
410
600
スプレー
75
2 日〜10 日
場
塗
塗装間隔
下塗り
下塗り
スプレー
−
1 日〜10 日
スプレー
120
1 日〜10 日
スプレー
120
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調
べ、硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2.( )内膜厚は総合膜厚に加えない。
3. 発泡スチロール及びシール材は、プライマーを用いて接着させること。
〔解説〕
1. 根巻コンクリート高3m超部の塗装系は、根巻コンクリートの高さが3mを超える場
合、地震時に根巻コンクリートのひび割れ発生が懸念されるため、根巻コンクリート
の高さが3mを超える部分について、変性エポキシ樹脂塗料を塗布することにした。
2. 根巻コンクリート高3m超部の塗装範囲を図‑8.11.2 に示す。
3. コンクリート打設時の出来形誤差を考慮し、根巻コンクリート高3m超部については、
外面塗装系である C‑5 塗装系を図‑8.11.2 に示すように根巻コンクリート天端から 100
㎜の範囲で塗装する。
また、鋼脚根巻部については、図‑8.11.2 に示すように発泡スチロール充填部下端か
ら 100 ㎜の範囲で塗装し、無機ジンクリッチペイント塗装範囲が露出しないようにす
る。
- 26 -
100mm
(C - 5 塗装系)
300mm
300mm
外面塗装範囲
30mm
シール材
H - 30
100mm
30mm
プライマー(接着剤)
根
巻
コ
ン
ク
リ
(接着剤)
図‑8.11.2
8.12
3000mm
ト
H - 31
ー
発泡スチロール(厚さ30mm)
根巻コンクリート高3m超部の塗装範囲
鋼製橋脚柱基部コンクリート接触面の現場溶接部
8.12.1
鋼脚中埋・充填部の現場溶接部
(1) 鋼脚中埋・充填部の現場溶接部の塗装系は表‑8.12.1 による。
表‑8.12.1
本体塗装系
塗装系
‑
‑
F
32
標
工
程
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
塗装間隔
(g/㎡)
現場塗装
H
鋼脚中埋・充填部の現場溶接部の塗装系
素地調整
第1層
動力工具
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
イント
膜厚
(μm)
−
−
300
はけ
4 時間以内
−
30
32
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。
〔解説〕
1. 鋼脚中埋・充填部の現場溶接部の塗装系は、中埋・充填コンクリート打設までの期間
の防錆耐久性を有し、また、本体塗装系との防錆耐久性を合わせるため、有機ジンク
リッチペイントを塗装することにした。
2. 現場溶接する部分は原則として溶接線から 100 ㎜以内の部分は塗装しないものとす
るが、溶接方法又は非破壊検査方法などにより無塗装範囲を別途考慮する必要がある
場合は、監督員と協議すること。ただし、錆が生じるおそれのある部分は発錆防止の
ため開先面用塗料を塗布してもよい。
- 27 -
8.12.2
鋼脚根巻部の現場溶接部
(1) 鋼脚根巻部の現場溶接部の塗装系は表‑8.12.2 による。
表‑8.12.2
本体塗装系
塗装系
‑
‑
F
31
標
工
程
32
素地調整
第1層
素地調整
‑
‑
31
31
‑
‑
H
2
2
現場塗装
F
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
塗装間隔
(g/㎡)
現場塗装
H
鋼脚根巻部の現場溶接部の塗装系
第1層
動力工具
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
イント
動力工具
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
(μm)
−
−
300
はけ
−
−
300
はけ
イント
第2層
4 時間以内
イント
300
−
30
4 時間以内
1 日〜10 日
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
膜厚
−
75
はけ
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
〔解説〕
1. 鋼脚根巻部の現場溶接部の塗装系は、根巻コンクリート打設までの期間の防錆耐久
性を有し、また、本体塗装系との防錆耐久性を合わせるため、有機ジンクリッチペイ
ントを塗装することにした。
2. 現場溶接する部分は原則として溶接線より 100 ㎜以内の部分は塗装しないものとす
るが、溶接方法又は非破壊検査方法などにより無塗装範囲を別途考慮する必要がある
場合は、監督員と協議すること。ただし、錆が生じるおそれのある部分は発錆防止の
ため開先面用塗料を塗布してもよい。
- 28 -
(2) 根巻コンクリート高3m超部の現場溶接部の塗装系は表‑8.11.3 による。
表‑8.11.3
根巻コンクリート高3m超部の現場溶接部の塗装系
本体塗装系
塗装系
標
工
程
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
(g/㎡)
素地調整
第1層
動力工具
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
−
−
300
はけ
第2層
‑
‑
H
30
30
現
場
下塗り
下塗り
下塗り
4 時間以内
1 日〜10 日
有機 ジ ン ク リ ッ チ ペ
イント
300
膜厚
(μm)
イント
F
塗装間隔
−
75
はけ
1 日〜10 日
変性 エ ポ キ シ 樹 脂 塗
200
料下塗
はけ
60
1 日〜10 日
変性 エ ポ キ シ 樹 脂 塗
200
料下塗
はけ
60
1 日〜10 日
変性 エ ポ キ シ 樹 脂 塗
料下塗
200
はけ
60
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
〔解説〕
1. 根巻コンクリート高3m超部の現場溶接部の塗装系は、本体塗装系(H−30)と
耐久性を合わせるため、変性エポキシ樹脂塗料を塗布することにした。
2. 現場溶接する部分は原則として溶接線から 100 ㎜以内の部分は塗装しないものとす
るが、溶接方法又は非破壊検査方法などにより無塗装範囲を別途考慮する必要がある
場合は、監督員と協議すること。ただし、錆が生じるおそれのある部分は発錆防止の
ため開先面用塗料を塗布してもよい。
- 29 -
8.13
溶融亜鉛めっき面用塗装
(1) 溶融亜鉛めっき面用塗装の塗装系は表‑8.13 による。
表‑8.13
溶融亜鉛めっき面用塗装の塗装系
適
工
用
塗装系
標
程
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
塗装間隔
(g/㎡)
‑
工場塗装
40
溶融亜鉛めっき面
S
素地調整
第1層
動力工具
亜鉛 め っ き 面 用 エ ポ
第2層
ふっ素樹脂塗料上塗
(μm)
−
−
250
スプレー
キシ樹脂塗料下塗
膜厚
3 時間以内
−
50
1 日〜10 日
140
スプレー
25
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. 素地調整は、ワイヤーブラシ、スチールタワシ、サンドペーパー、ケレンタワシな
どを用いて、白錆やフラックス残渣、油脂類などの付着物や異物及び汚れを除去す
る。
〔解説〕
1. 溶融亜鉛めっき面用塗装の塗装系は、主に美観性を高めたり、景観的な違和感をな
くしたりすることが求められる場合に、溶融亜鉛めっき面に塗装を行う仕様を定めた
ものである。
2. 海岸地帯のように飛来塩分の多い厳しい腐食環境で、早期に亜鉛が消耗するなど耐
久性が確保できない場合は、別途、技術管理課と協議すること。
3. 本塗装系は、適切な前処理と亜鉛めっき用エポキシ樹脂塗料下塗を組合せることで、
剥離が生じにくい塗装とした。
4. 本塗装系は、主に美観を目的としているため、ふっ素樹脂塗料用中塗を省略した。
5. 溶融亜鉛めっき面用塗装の塗装範囲を図‑8.13 に示す。
図‑8.13
溶融亜鉛めっき面用塗装及び硬質塩化ビニール管用塗装の塗装範囲
- 30 -
8.14
硬質塩化ビニール管用塗装
(1) 硬質塩化ビニール管用塗装の塗装系は表‑8.14 による。
表‑8.14
硬質塩化ビニール管用塗装の塗装系
適
工
用
塗装系
標
程
塗
料
名
準
使用量
標準
塗装方法
塗装間隔
(g/㎡)
‑
現場塗装
41
硬 質 塩 化
ビニール管
S
素地調整
第1層
第2層
動力工具
ふっ 素 樹 脂 塗 料 用 中
塗
膜厚
(μm)
−
−
140
はけ
4 時間以内
−
30
1 日〜10 日
ふっ素樹脂塗料上塗
120
はけ
25
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. 素地調整は、表面に付着しているのろ、土砂及びその他の汚れを工具などを用いて
除去するとともに、サンドペーパー掛けによって全面目荒しを行う。また、油分な
どの付着物はシンナーやウエスなどを用いて除去する。
〔解説〕
1. 硬質塩化ビニール管用塗装の塗装系は、主に美観性を高めたり、景観的な違和感を
なくしたりすることが求められる場合に、硬質塩化ビニール管に塗装を行う仕様を定
めたものである。
2. 硬質塩化ビニール管用塗装の塗装範囲を図‑8.13 に示す。
- 31 -
第9章
9.1
塗装作業
塗装作業
(1) 塗装は鋼材表面および前工程塗装面の汚れ、油類、水分、その他の付着物を除去清掃
し、清浄な表面状態で施工しなければならない。
(2) 塗装は容器の底部に顔料が沈殿しないように十分攪拌して使用しなければならない。
(3) 通気不良部の塗装に当たっては換気を十分にして安全な施工をしなければならない。
(4) 塗料の塗り重ねは、原則として、第 8 章塗装系の塗膜厚及び適用部位に規定する塗装
間隔の範囲で行うものとする。やむを得ず、この範囲を超える場合は、監督員と協議し、
必要に応じて適切な処置を講じなければならない。
〔解説〕
1.
塗装系に表示されている塗装間隔は標準的な気温の場合を示しているものであっ
て、気温の低い場合は長くなり、気温の高い場合は短くなるので、硬化乾燥状態であ
ることを確認しなければならない。
また、塗装間隔の上限を越えると層間付着が悪くなるので注意する。塗装間隔上限
を越えた場合で塗膜に、割れ、剥がれ、剥離及び錆がない場合は清掃と軽い面あらし
を行う。塗膜に、割れ、剥がれ、剥離及び錆がある部分は除錆して鋼材面を露出し補
修塗装方法で塗装する。塗装間隔の下限は塗り重ねても支障が生じない期間を示した
もので、これ以下の間隔で塗り重ねると、にじみや縮みなどの塗膜欠陥となることが
ある。
なお、塗膜乾燥状態の判定は下表により行われる。
表‑9.1
乾燥順序
(呼び方)
1.
指触乾燥
2.
半硬化乾燥
乾
塗装乾燥状態表
燥
状
態
塗面に指先をそっと触れてみて、指先が汚れない状態
塗膜を指先で静かにそっとすってみて、塗面に擦りあ
とがつかない状態
塗り重ねの
可否
不可
不可
塗面を指で強く圧したとき、指紋によるへこみがつか
3.
硬化乾燥
ず、塗膜の動きが感じられず、また塗面を指先で急速
に繰り返してこすってみて塗面に擦りあとがない状態
- 32 -
可
9.2 工場塗装
(1) 工場塗装は、エアレススプレーを用いて行うことを原則とし、塗り残し、気泡むらの
ないよう全面を均一の厚さになるよう入念に塗り上げなければならない。
ただし、部材の突縁部、間隙部、ボルト、ナット類などスプレー塗りでは所定の膜厚
が得られにくい箇所の先行塗装及び局部的な補修塗装は、はけ塗りとすることができる。
(2) 鋼材のガス切断、溶接、歪み取りなどで焼けた部分、発錆のみられた部分は錆落とし
を行い、十分清掃してから塗料を塗布しなければならない。
(3) 塗装部の塗装は次表に示した水素放出時間を経てから行うものとする。
表‑9.2 溶接部の水素放出時間
自 然 放 出 の 場 合
溶 接 棒 の 種 類
加熱による放出の場合
油性以外の塗装系
油性塗装系
(ビード面の加熱)
低水素系(含自動溶接)
70 時間以上
20 時間以上
300℃で 15 分
イ ル ミ ナ イ ト 系
200 時間以上
100 時間以上
300℃で 30 分
注)1. 旧本州四国連絡橋公団の「鋼橋等塗装基準(昭和 55 年 3 月)」では、溶接部の水素放
出時間を上表のように定めている。
(4) 塗装禁止部分は原則として次表によるものとする。
表‑9.3 塗装禁止の部分
区
分
対
塗料があってはならない部分
象
部
分
支承、ピン、ローラーなどの機械仕上げ面
鋼材とコンクリートとの接触面
一次プライマーは残っていてもよい部分
現場溶接継手から両側 100 ㎜以内の部分
(5) 塗装中、次に示す異状が生じた場合は、速やかに塗り直しを行わなければならない。
1) 塗装した塗膜をとおして下地の色が著しく露見するとき。
2) 塗膜にはなはだしいだれ、縮み、はじきを生じたとき。
3) 結露などにより、塗膜に著しいむらを生じたとき。
4) 塗膜にあわ、膨れ、剥がれを生じたとき。
(6) 工場塗装後、塗膜に欠陥を生じないように保管しなければならない。
〔解説〕
1.
エアレススプレーは、塗料自体に高い圧力を加えて吹付ける方法で、高粘度の塗料
を一度に厚塗りでき、作業効率もよいので、広く用いられるようになった。
しかし、塗料の飛散による環境汚染の問題があり、工場塗装の場合でもそのための
防護対策が必要である。
また、橋げたなどの構造が複雑又は狭隘な部分には均一な塗膜が十分付けられない
ので、はけによる先行塗装が望ましい。
- 33 -
2.
溶接後、直ちに溶接部を無処理で塗装すると、溶接部に吸蔵された水素の影響で、
塗膜に膨れが発生することがある。これらの影響防止するため、塗装は上表に示す水
素放出時間を経てから行うようにしなければならない。
3.
溶接部のアルカリ膨れ防止については、溶接部をりん酸水溶液(5〜10 容量%)で
中和処理し乾燥させた後、所定の素地調整を行う。
なお、次の場合は中和処理を行わなくても良い。
1)
ビード部分全面に赤錆が発生している場合
赤錆が発生していることはPH値が中性付近にあることを示しているので中
和処理は必要ない。なお、塗装は赤錆を除去してから行う。
2)
製品ブラスト処理を施工する箇所
製品ブラスト処理を行った場合、大部分のアルカリ性物質は除去されるため中
和処理を行わなくて良い。
3)
サブマージアーク溶接、ガスシールドアーク溶接の場合
上記の溶接を行った場合には、アルカリ成分の発生が極めて少ないので中和処
理を行わなくても良い。
9.3 現場塗装
(1) 請負者は、現場施工に先立ち、下塗り塗膜の状態を調査した結果、だれ、縮み、泡、
膨れ、剥がれ、浮き錆、黒変などがあり、塗装を重ねると悪影響を与えるおそれがある
場合は、直ちに監督員と協議し適切な処置を講じなければならない。
(2) 塗装は、はけを用いて行うことを原則とする。
(3) 塗装を塗り重ねる場合は、前工程塗膜が十分乾燥しており、清掃していなければ次の
塗装を施工してはならない。
9.4 タッチアップ塗装
(1) 塗膜に損傷を生じた場合は、第 7 章 7.1 素地調整の種別と施工法による処置を行い、
補修は原則として各塗装系の正常部分に復するように塗装しなければならない。
〔解説〕
1.
塗膜の局部的な損傷部は表‑9.4 に示す規定に従って補修塗装しなければならない。
ただし、塗装の品質や施工法など基本的条件の欠陥のため生じた不良部分や何らかの
事故による広範囲にわたる塗膜損傷部に対しては別途監督員と協議を行わなければな
らない。
- 34 -
表‑9.4 タッチアップ塗装方法
工場塗装または現場塗装完了後
本
体
※(横取、輸送、架設などの扱いによる損傷)
塗装系
C‑5
※(F‑13)
※(F‑11)
C‑6
D‑6
損傷が素地まで達して発錆している
動力工具、手工具
傷によって露出して
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗 4 回塗
いる塗膜から、損傷
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
部とその周辺の塗膜
上塗り
低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗
面にサンドペーパー
素地調整
動力工具、手工具
がけなどの処理をし
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗 5 回塗
て段差を少なくし
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
て、本体塗装系に従
上塗り
低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗
って仕上げる。
素地調整
動力工具、手工具
変性エポキシ樹脂塗料内面用 5 回塗
※(F‑19)
素地調整
※(F‑14)
動力工具、手工具
変性エポキシ樹脂塗料 4 回塗
※(F‑12)
H‑30
※(F‑30)
E
※(F‑17)
とまっている
素地調整
※(F‑18)
D‑5
損傷が塗膜の中間で
素地調整
動力工具、手工具
有機ジンクリッチペイント 2 回
H‑31
H‑31‑2
H‑32
※(F‑31)
※(F‑31‑2)
※(F‑32)
- 35 -
9.5 塗装作業禁止の条件
(1) 塗料の種類別に塗装作業時の気温、湿度の制限値を設ける。下記制限値の範囲で塗装
してはならない。
表‑9.5 塗装時の気温、湿度の制限
塗
気温(℃)
湿度(RH%)
無機ジンクリッチプライマー
0 以下
50 以下
無機ジンクリッチペイント
0 以下
50 以下
有機ジンクリッチペイント
10 以下
85 以上
エポキシ樹脂塗料下塗A
10 以下
85 以上
エポキシ樹脂塗料下塗B
5 以下、20 以上
85 以上
タールエポキシ樹脂塗料A
10 以下
85 以上
タールエポキシ樹脂塗料B
5 以下、20 以上
85 以上
変性エポキシ樹脂塗料内面用A
10 以下
85 以上
変性エポキシ樹脂塗料内面用B
5 以下、20 以上
85 以上
変性エポキシ樹脂塗料下塗A
10 以下
85 以上
変性エポキシ樹脂塗料下塗B
5 以下、20 以上
85 以上
ふっ素樹脂塗料用中塗
5 以下
85 以上
ふっ素樹脂塗料上塗
0 以下
85 以上
無溶剤形タールエポキシ樹脂塗料A
10 以下、30 以上
85 以上
無溶剤形タールエポキシ樹脂塗料B
5 以下、20 以上
85 以上
無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料A
10 以下、30 以上
85 以上
無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料B
5 以下、20 以上
85 以上
超厚膜形エポキシ樹脂塗料
5 以下
85 以上
亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗
5 以下
80 以上
低汚染形ふっ素樹脂塗料上塗
0 以下
85 以上
注)1.
料
名
Aは一般用、Bは低温用を示す。
(2) 屋外塗装で降雨、降雪、降霜及び強風の時、あるいはその恐れがあるとき。
(3) 塗膜乾燥中に異物の付着が予想される場合。
(4) 被塗面が結露などで濡れているとき及び引き続きその状態が持続されると予想される
とき。
(5) 規定された塗装間隔以外の期間に塗装するとき。
(6) 規定された素地調整がなされていないとき。
(7) 被塗面に泥、汚物、油脂類等の異物が付着しているとき。
(8) 使用塗料が規定された可使時間を超過しているとき。
- 36 -
(9) 定められた希釈、混合および攪拌が行われず、塗料に異常が認められるとき。
(10) 炎天下で鋼材表面の温度が高く、塗膜に泡を生じる恐れがあるとき。
(11) その他監督員が不適当と認めたとき。
- 37 -
第 10 章
作業用仮設備
10.1 作業足場の安全性
(1) 塗装用の作業足場は、作業者が安全に作業を行えるとともに、塗装面にできるだけ接
触しないことが必要である。
(2) 作業用足場は、労働安全衛生法、建設工事公衆災害防止対策要綱に準拠して架設しな
ければならない。
〔解説〕
1.
作業足場は、突風や振動によって作業姿勢が崩れないように足もとの安定には特に
注意して作る必要がある。
2.
橋の形状によっては、道路の建築限界を確保するため、必ずしも塗装作業に適した
形状に足場を設置することができないこともある。また、交通を確保するために設 置
時間や設置方法が大きく制約されることもある。いずれの場合においても、作業員が
安全に作業を行えることを確認することが重要である。
10.2 仮設足場
(1) 仮設足場には次のような種類のものがある。
1)
吊り足場:トラスの下弦材、縦桁、横桁、桁橋などに設置する。
2)
本足場:トラスの弦材の両側に足場が組める場合に設置する。橋脚の場合はその周
辺に設置する。
3)
張出し足場(朝顔):足場上からの作業員や工具類の落下を防止したり、塗料飛散防
止用シートを取り付けるために、吊り足場などから張出して設置する。
4)
枠組足場:橋脚などの背の高い構造物の塗装を行う場合に規格化された部材を組立
てて設置する。
5)
脚立足場、うま足場、ローリングタワー足場:塗装面までの高さが比較的低い平坦
な場所に設置する。
6)
機械足場:一時的な足場として使用する。他の足場を解体した後の塗り残し部分の
塗布作業などに用いる。
〔解説〕
1.
吊り足場において、桁の下側全面に設置する主体足場の種類としては、「パイプ吊
り場」、「ワイヤブラシ転用足場」、「パネル足場」などがある。吊り材は、チェーンや
ワイヤロープを使用し、吊り元としては、高欄、横構、対傾構などの構造部材を利用
できるが、鋼桁で支保工受け金具のある場合はこれも利用する。腹板高が 1.5m以上
の場合は必要に応じて二段吊り足場とするのがよい。
- 38 -
10.3 防護設備
(1) 防護設備には、次のような種類のものがある。
1)
シート防護:塗料の飛散や落下を防止する場合は足場下面にシートを設置する。
2)
キャッチングネット:工具類の落下に対してシート防護では不十分の場合に設置す
る。
3)
板張り防護:工具類の落下やブラスト工法の素地調整に用いる研掃材の落下を防止
する場合に設置する。
4)
安全ネット:吊り足場の下面や作業床の端部などに設置する。
〔解説〕
1.
シートは、落下物に対して充分な強度を有するものとし、隙間をつくらずに張る。
また、雨水の溜まりを防ぐよう考慮し、足場に緊結して風にとばされないような処置
をする。。
2.
キャッチングネット(グリーンネット)は、網目の不揃い、破れ、織りはずれ、腐
食などの欠陥がないものを用いる。
3.
一般の塗替えでは、素地調整により発生するダストは比較的軽量であり、その飛散
防止はシート防護で十分であるが、ブラスト工法で使用するけい砂などの重量が大き
いものに対しては板張り防護を用いる必要がある。
4.
墜落防止安全ネットは、取付け位置や張り方によってはその効果が減少するので、
取付けに際しては、「墜落災害による危険を防止するためのネットの構造などの安 全
基準に関する技術上の指針」(昭和 51 年 8 月 6 日付技術上の指針公示第 8 号)を遵守
しなければならない。
- 39 -
第 11 章
管理および記録
11.1 施工記録
(1) 請負者は、塗装工程における管理状況を塗装工事記録表(様式‑1)に記録し、これを
監督員に提出しなければならない。
(2) 請負者は、各施工段階において、カラー写真を撮影し、監督員に提出しなければなら
ない。
(3) 塗料使用量の確認のため、充缶及び空缶の数量をカラー写真で記録し、確認できるよ
うにしておかなけばならない。
11.2 塗膜外観
(1) 目視により塗膜の欠陥の有無を調査し、欠陥が見られる場合は施工記録などを参考に
原因を究明し対策を講ずるとともに、以降の塗装については防止策を講じて施工するこ
とが必要である。一般的な塗装欠陥について、塗膜状態、原因、防止策を表‑11.1 に示
す。
(2) 塗膜に著しい欠陥のある場合は塗り直しを行わなければならない。この場合、欠陥の
種類に応じて適切な方法で塗り直さなければならない。
表‑11.1 塗膜欠陥とその原因および対策
欠陥の呼名
は け 目
現
象
原
因
防止策
はけのあとが線状に残
塗料の流動性が不足し
粘度を下げる。
っている。
ている。
はけをかえてみる。
はけが不適当。
な が れ
(だ
塗料が流れ落ちてい
希釈しすぎか厚塗りす
希釈を少なくする。
る。
ぎる。
厚塗りせず 2 層に
塗料粘度が不適当。
する。厚塗り性のよ
れ)
い塗料に代える。
し
わ
(縮
み)
白
化
(ブラッシング)
塗膜にしわができる。
下塗りが未乾燥か、厚塗
下塗りがよく乾い
りで表面が先に乾いた
てから塗る。
場合。
厚塗りをやめる。
表面が荒れて、光沢が
塗膜の溶剤が急に揮発
リターダシンナー
なく、白っぽくなって
したり、乾燥しないうち
注) 1.を用いる。
いる。
に結露した場合。
結露しないように
工夫する。
は じ き
被塗面に塗料がなじま
被塗面に油脂や水分が
被塗面をよく清掃
ないで部分的に凹み、
付着している。
する。
すけがある。
塗り重ねのとき、下塗
下塗り塗膜を上塗り溶
にじまない顔料を
に じ み
りが上塗りに浸透して
剤が浸し、顔料を溶か
使う。下塗りがよく
(ブリード)
色相が変わっている。
す。
乾燥してから塗る。
- 40 -
欠陥の呼名
む
ら
現
象
原
因
防止策
色や光沢がむらになっ
顔料がよく混合されて
調合のときよく攪
ている。
いない。下塗りへの溶剤
拌する。
浸透が不均一。
剥
離
塗膜が下地(または下
素地調整が不具合か、塗
素地調整をよく行
塗り塗膜)から剥離し
り重ねの適正が悪い。
う。
ている。
塗装系を適切にす
る。
色が変わる。
硫化水素による顔料の
変色しにくい顔料
変
色
(黒変)
変質。
の塗料を使う。
褪
色
色が薄れる。
顔料の質が適していな
耐久性のよい顔料
い。
を使う。
塗膜が押し上げられて
塗膜下に水分が入り、膨
水分や錆を十分除
膨れている。
張して膨れる。
去して塗る。湿度が
膨
れ
高いときは塗らな
い。
白亜化
(チョーキング)
割
れ
表面が風化して粉状に
熱、紫外線、風雨のため
耐チョ―キング性
なっている。
の展色剤が風化し粉化
のよい塗料を使う。
する。
表面に割れが出てい
しわができる原因とほ
下塗りがよく乾い
る。
とんど同じ。
てから塗る。塗膜の
かたさの差のない
ものを使う。
塗膜に針あとのように
スプレーで厚塗りする
低温時塗装を避け
細い穴があいている。
とき空気を巻き込み乾
る。圧力比をあげ
燥途中で放出するため
る。チップを変え
気孔をつくる。
る。塗料の粘度を下
ピンホール
げる。
す
け
上塗りを通して下塗り
上塗りのとき希釈しす
希釈しすぎない。厚
の色がすけて見える。
ぎている。上塗りが薄す
めに塗る。色の差を
ぎる。
少なくする。
注) 1.リターダシンナーは高温度のときに用いる。
2.タールエポキシ樹脂塗料の乾燥塗膜が水に濡れて少し変色することがあるが、表面
だけの変化であり塗膜欠陥にはならない。
- 41 -
11.3 塗膜厚検査
(1) 工場塗装終了後及び現場塗装終了後に以下に示す要領により塗膜厚を測定し、塗膜厚
測定記録を作成し監督員に提出しなければならない。
1) 測定時期: 膜厚測定は、無機ジンクリッチペイント塗装後、下塗り終了時及び上
塗り終了時に行う。ただし、ふっ素樹脂塗装系(本体塗装がC系)につ
いては、中塗り終了時も行うこと。
膜厚測定時の塗膜の乾燥状態は硬化乾燥状態以上とする。
2) 測定箇所: 塗膜厚の測定個所数は、同一工事、同一塗装系及び同一塗装方法によ
り塗装された 500 ㎡単位ごとに 25 箇所(1 箇所当たり 5 回測定)以上を
標準とする。ただし、監督員との協議により、工事数量の規模に応じて
検査ロットの大きさを増減できるものとする。
塗膜厚の測定は、塗装系別、塗装方法別、部材の種類別、作業姿勢別
に測定位置を定め平均して測定できるように配慮しなければならない。
3) 測定器具: 膜厚測定器は 2 点調整式電磁膜厚計とする。
4) 合否判定: 塗膜厚の判定は次のとおりとする。
a
塗膜厚測定値(5 回平均)の平均値は、目標塗膜厚(合計値)の 90%
以上でなければならない。
b
塗膜厚測定値(5 回平均)の最小値は、目標塗膜厚(合計値)の 70%
以上でなければならない。
c
塗膜厚測定値(5 回平均)の分布の標準偏差は、目標塗膜厚(合計
値)の 20%を越えてはならない。ただし、平均値が目標膜厚値以上の
場合は合格とする。
d
平均値、最小値、標準偏差のそれぞれ 3 条件のうち 1 つで不合格の
場合は、2 倍の測定を行い、基準値を満足すれば合格とし、不合格の
場合は、塗増し再検査するものとする。
※
目標塗膜厚(合計値)には 1 次プライマーの膜厚は算入しない。
〔解説〕
1.
2 点調整式電磁膜厚計は、ゼロ点と測定する膜厚の目標膜厚の 2 点で目盛調整を行
ってから測定を行う。ゼロ点の調整は、厚さ 6 ㎜以上、表面のあらさ 6μmRz 以下、
測定面と同質の鋼板上で行い、目標膜厚に対する調整は、ゼロ点調整に用いた鋼板上
に、目標膜厚と近似の厚み調整板(非磁性材料)を置いて行う。
- 42 -
11.4 塗装記録表示
請負者は、最終塗装の完了後、橋体起点側(左)又は終点側(右)外桁腹板にペイント
又は塩ビ系粘着シートにより図‑11.1 のとおり記録しなければならない。
図‑11.1
塗装記録表
- 43 -
第 12 章
維持管理
12.1 一般
(1) 塗膜の防錆効果をできるだけ有利に保持するために、塗膜の点検を定期的に行い、劣
化状態を的確に把握して塗替え計画を合理的に策定し、塗膜の維持管理を行うものとす
る。
12.2 塗膜の点検
(1) 塗膜の点検は、日常点検、定期点検、詳細点検及び臨時点検とする。
〔解説〕
1.
日常点検は、街路上または高架下から徒歩により、塗膜劣化状態を目視で点検する。
2.
定期点検は、点検計画により塗膜の劣化状態を把握し、塗替え計画を策定するため
の情報を得ることを目的とする。
なお、定期点検結果を有効に活用するためには、塗膜劣化の有無にかかわらず管理
する全橋梁を点検することが望ましい。
3.
詳細点検は、日常点検や定期点検時に塗膜の早期劣化が発見された場合、その劣化
原因を明らかにするとともに、塗替え塗装系及び素地調整方法を検討するために行う。
4.
臨時点検は、災害時その他必要に応じて随時詳細に行う点検である。
12.3 塗替え計画
(1) 塗膜の点検により、その劣化程度を評価して塗替え計画を適切に策定するものとする。
〔解説〕
1.
塗替え計画は、塗膜の点検結果による錆と剥がれの評価に基づき、塗装後の経過年
数や橋梁の架設環境などを考慮して策定する。
- 44 -
第 13 章
塗替え塗装
13.1 一般塗装系
(1) 一般部の塗替え塗装系は、表‑13.1 による。
表‑13.1
塗
装 適用
系
工
程
素地調整
2種ケレン
c 3 1
一般部
下塗り
塗
料
一般部塗装系
名
2 種ケレン
有機ジンクリッチペイント
標準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
300
はけ
塗装間隔
‑
参考
膜厚
(μm)
‑
30
1 日〜10 日
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
200
はけ
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
200
はけ
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
140
はけ
60
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
30
‑
‑
1 日〜10 日
上塗り
素地調整
ふっ素樹脂塗料上塗
3 種ケレン
120
はけ
‑
‑
一般部
3種ケレン
c 3 2
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
(鋼材面露出部のみ)
200
はけ
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
200
はけ
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
200
はけ
25
‑
‑
60
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
60
1 日〜10 日
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
140
はけ
30
‑
‑
1 日〜10 日
上塗り
一般部
4種ケレン
c 3 3
‑
‑
注)1.
素地調整
ふっ素樹脂塗料上塗
4 種ケレン
120
はけ
‑
‑
下塗り
変性エポキシ樹脂塗料下塗
200
はけ
中塗り
ふっ素樹脂塗料用中塗
140
はけ
上塗り
ふっ素樹脂塗料上塗
120
はけ
25
‑
‑
60
1 日〜10 日
30
1 日〜10 日
25
塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、硬
化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
- 45 -
13.2
内面部および、特殊部の塗装系
(1)箱桁内面部の塗替え塗装系は、表‑13.2 による。
表‑13.2
塗
装 適用
系
工
程
箱桁内面
d 2
素地調整
第1層
塗
料
内面塗装系
名
3 種ケレン
無溶剤形変性エポキシ
樹脂塗料
標準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
300
はけ
塗装間隔
‑
参考
膜厚
(μm)
‑
120
2 日〜10 日
‑
無溶剤形変性エポキシ
300
はけ
120
樹脂塗料
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
第2層
(2)特殊部の塗替え塗装系は、表‑13.3 による。
表‑13.3
塗
装 適用
系
工
程
特殊部
d 1
素地調整
第1層
塗
料
特殊部塗装系
名
3 種ケレン
無溶剤形タールエポキ
シ樹脂塗料
標準
使用量
(g/㎡)
塗装方法
‑
‑
300
はけ
塗装間隔
‑
参考
膜厚
(μm)
‑
120
2 日〜10 日
‑
無溶剤形タールエポキ
300
はけ
120
シ樹脂塗料
注)1. 塗装間隔の下限は 20℃の場合を示す。気温が低い場合には塗料の乾燥状態を調べ、
硬化乾燥していることを確認し塗り重ねを行う。
2. 特殊部:伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部などを示す。
第2層
- 46 -
13.3 塗装系
(1) 塗替え塗装系は、表‑13.4 より選定するのを標準とする。
表‑13.4
新設時の塗装系と塗替え塗装系一覧表
旧塗装系
適用種別
鋼道路橋塗料便覧
平成 2 年度
A‑1、A‑2
鋼道路橋塗料便覧
昭和 54 年度
塗替え塗装系
A‑1、A‑2
A‑3、a
A‑3、A‑4
B‑1
外面用
B‑1、B‑2
c‑3
b‑1、b‑2
g‑1、g‑2
C‑1、C‑2
C‑2
C‑1、C‑3
内面用
内面用
D‑1、D‑3
D、d
D‑2、D‑4
E(耐熱用)
D‑1、D‑3
D、d
d‑2
d‑1
(特殊部)
注)1. 特殊部:伸縮装置、排水桝内面、床版型枠埋殺し部などを示す。
〔解説〕
1.
塗替え塗装においては、旧塗膜はフタル酸樹脂塗料、塩化ゴム樹脂系塗料、ポリウ
レタン樹脂系塗料など各種がある。
塗替え塗装系のエポキシ樹脂系塗料は、塗料中溶剤の溶解力が強く、旧塗膜系に塩
化ゴム系塗料が塗装されている場合、塗り重ねる変性エポキシ樹脂塗料下塗りの 1 回
塗りの膜厚が厚い場合(規定膜厚の 2 倍以上)、塗料中の溶剤の蒸発が不十分になり、
縮みなどを起こすことがあるので注意を要する。
- 47 -
13.4 素地調整(ケレン)
13.4.1 素地調整の種別
(1) 塗り替え時の素地調整(ケレン)は、表‑13.5 に示す。
表‑13.5
種
別
1
種
2
種
作
業
素地調整の種別と内容
内
容
作
錆、塗膜を除去し、清浄な鋼材面とす
業
ブラスト法
る。
錆、塗膜を除去し、鋼材面を露出させ
ディスクサンダー、ワイヤホイルな
る。ただし、凹み部分や狭隘部分には
どの動力工具と手工具の併用
錆や塗膜が残存する。
錆、劣化塗膜を除去し、鋼材面を露出
3
種
させる。ただし劣化していない塗膜(活
同
上
同
上
膜)は残す。
4
種
粉化物及び付着物を落とし、活膜を残
す。
(2) 塗膜の劣化程度と素地調整の種別は、表‑13.6 に示す。
表‑13.6
素地調整種類の適用区分
塗膜の劣化程度
素地調整の種別
発錆がはなはだしく塗膜の割れ、膨れ、剥
がれについてもほぼ全面に発生している状
1 種、2 種
態
部分的に点錆、塗膜の割れ、膨れ、剥がれ
が発生しているが活膜も多くある状態
錆の発生がほとんどなく塗膜が変色、白亜
化した状態
- 48 -
3種
4種
(3) 塗膜の劣化面積と素地調整の種別は、表‑13.7 に示す。
表‑13.7
塗膜の劣化面積と素地調整の種別
1) 錆が発生している場合
素地調整
さびの状態
種別
発錆面積
点錆が進行し、板状錆に近
2種
い状態や、こぶ状錆となっ
素地調整内容
(%)
旧塗膜、錆を除去し、鋼材面を露出さ
30 以上
せる。
ている。
3種A
3種B
3種C
点錆がかなり点在してい
る。
点錆が少し点在している。
点錆がほんの少し点在して
いる。
15〜30
活膜は残すが、それ以外の不良部
(錆・割れ・膨れ)は除去する。
5〜15
同
上
5 以下
同
上
2) 錆がなく割れ・膨れ・剥がれ・白亜化・変退色などの塗膜異常がある場合
素地調整
錆の状態
種別
塗膜異常
面積(%)
素地調整内容
発錆はないが、割れ・膨れ・
3種C
剥がれの発生が多く認めら
5 以上
活膜は残すが、不良部は除去する。
れる。
発錆はないが、割れ・膨れ・
剥がれの発生が少し認めら
4種
5 以下
同
上
れる場合。
白亜化・変退色の著しい場
粉化物・汚れなどを除去する。
合。
- 49 -
13.4.2 水洗い
(1) 塗膜面に塩分が多量に付着している場合は、塩分を除去した後に塗装をすることが
必要である。
〔解説〕
1.
付着塩分は、海塩粒子の飛来、農薬散布、凍結防止剤の散布などに起因し、海岸か
らの距離が遠い状況でも付着している場合があるので、塗膜の劣化状態から塩分付着
の疑いがある場合は付着量を調査して判断をする。
2.
付着塩分量は、海岸からの距離、橋梁周辺の遮へい物の有無、地形、風向き、風速、
さらに鋼橋の部位によっても異なる。
3.
付着塩分量の測定を行う場合は、塗膜面に付着している塩分を精製水で湿潤したガ
ーゼで拭き取り、ガーゼをビーカーに入れて精製水を添加し、精製水中に溶解した塩
分を塩素イオン検知管によって測定し、測定値を NaCl mg/㎡に換算する方法が多く
とられている。
4.
塗装に対する許容付着塩分量は、NaCl 100mg/㎡以下とする。
5.
付着塩分量の除去方法は高圧水による洗浄がもっとも効果的である。
6.
水洗が不可能な場所では、効果は落ちるが動力工具やウエス拭きにより除去する方
法でも良い。
表‑13.7
水
付着塩分量
(NaCl mg/㎡)
処理後の
付着塩分量
(NaCl mg/㎡)
90
注)1. 付着塩分量は、22 か所の平均値
- 50 -
付着塩分量
(NaCl mg/㎡)
110
49
)
20
処理後の
)
)
218
拭き併用
除 去 率 %(
(NaCl mg/㎡)
処理後の
動力工具とウエス
動力工具
除 去 率 %(
付着塩分量
洗
除 去 率 %(
水洗い前の
処理方法別付着塩分除去効果
52
76
13.5 塗装作業
13.5.1 施工一般
(1) 塗装作業者は、鋼橋などの塗装工事に十分な経験を有するものとする。
13.5.2 現場塗装
(1) 塗装は、はけを用いて行うことを原則とする。
(2) 塗装は、鋼板表面及び前回塗装面の汚れ、油脂、水分、その他の付着物を除去清掃し、
十分な乾燥状態のときに施工すること。
(3) 塗装は容器の底部に顔料の沈殿などがないように十分攪拌してから使用すること。
(4) 空気の流通の悪い箇所での塗装作業は、作業員に防毒マスクを着用させ安全を確保す
ること。また、送風機や排風機を用いて強制換気を行い、作業環境の安全衛生向上に務
めるとともに、清浄な塗膜乾燥が行えるよう溶剤蒸気がこもりやすい箇所には送風を行
う。
〔解説〕
1.
現場塗装は、はけ塗りを原則とするが、エアレススプレーによる塗装を行う場合は、
塗料の飛散による環境汚染の問題があるが、十分な防護対策を行えば適用可能である。
2.
はけ塗りでは、1 回塗りの塗装膜厚が 2 倍以上になり難いのに対し、スプレー塗装
では、1 回当たりの塗膜が規定の 2 倍以上になる恐れがあるので注意を要する。
3.
表9‑5の塗装時の気温、湿度の制限で 5℃以下で作業可能なものについて、5℃以
下の場合は、乾燥速度が極端に遅くなり、0℃付近ではほとんど乾燥が進まない。 そ
のため、低温時には乾燥状態をその都度指触により、塗り重ね可能な乾燥塗膜になっ
ていることを確認する必要がある。
4.
一般部の塗替え塗装系に採用した塗料は、いずれも 1 回塗りの膜厚が厚い場合(規
定値の 2 倍以上)、塗料中の溶剤の蒸発が不十分になり、乾燥速度が遅くなったり、
乾燥後縮みなどの現象を生じたりすることがある。
5.
塗装された表面の空気の流通が全く無い場合、塗膜からの溶剤蒸発が著しく阻害さ
れることにより、乾燥速度が遅くなったり、塗り重ねた塗料との密着力が低下したり
することがある。特に冬季において、この影響が著しくなるので注意をする。
6.
作業員の安全衛生上、「有機溶剤中毒防止規則」を遵守すること。
- 51 -
13.5.3 作業用仮設備
(1) 素地調整作業によって生じる粉塵や塗料の飛散を防止し、工具の落下や作業員の墜落
を防ぐため、シート、安全ネット、板張りなどで防護するものとする。
(2) 照明設備を設ける場合は、防爆型照明やゴム被覆キャップタイヤコードなどを用いて、
引火爆発や漏電の災害を防止する必要がある。
(3) 閉断面部材の内部は空気の流通が悪く、塗膜の乾燥が遅くなるだけでなく、塗料によ
っては有機溶剤による作業員のガス中毒や引火性ガスの爆発の危険がある。
作業員に防毒マスクを着用させるとともに、ガス濃度を低くするために送、排風機を
用いて強制換気を行い、ガス濃度を測定することが必要である。
- 52 -
13.6 膜厚検査
(1) 塗膜厚の測定箇所は、素地調整程度により区分すること。
1)
2 種ケレンの場合は、鋼材面を露出させた面を測定。
2)
2 種・3 種ケレンの複合する場合は、劣化した塗膜を除去し、鋼材面を露出させた
面及び旧塗膜の残った部分は塗装前に旧塗膜を測定し、その平均値を算出しておいた
面とすること。
3)
3 種・4 種ケレンの場合は、劣化した塗膜を除去し、旧塗膜の残った部分は塗装前
に旧塗膜を測定し、その平均値を算出しておいた面とすること。
(2) 測定時期は、下塗最終工程終了時、および上塗終了時に測定する。なお、測定時の乾
燥状態は硬化乾燥以降とすること。
(3) 膜厚データは、監督員へ提出すること。
表‑13.8
1 種ケレンの場合
平均膜厚
塗替え塗装の場合の評価方法
2 種、3 種C、
3 種A、
4 種ケレンの場合
3 種Bケレンの場合
1 ロットの塗膜厚平均
1 ロットの塗膜厚平均値
値は目標塗膜厚合計値
は目標塗膜厚合計値の
の 90%以上
90%以上
2 種ケレンでは、塗膜厚
平均値を目標塗膜厚合計
値の 100%以上
最低膜厚
測定値の最小値は目標
測定値の最小値は目標塗
測定値の最小値は目標塗
塗膜厚合計値の 70%以
膜厚合計値の 70%以上
膜厚合計値の 80%以上
上
標準偏差
測定値の分布の標準偏
差は、目標塗膜厚合計
の 20 % を 超 え な い こ
と。ただし、測定値の
平均値が目標塗膜厚合
計値より大きい場合は
この限りではない。
- 53 -
様
式
集
Ⅰ.塗装工事記録表
(様式‑1)
塗装工事記録表
塗装系
工事名
対象部材
工程
2 次素地調整
第1 層
第2 層
第3 層
第4 層
第5 層
第6 層
%
%
%
%
%
%
項目
塗料規格
塗 色
塗装年月日
作業開始時間
天候・気温(℃)
湿度(%)
除錆度
SPSS Sh2
塗料の調合
シンナーの割合
塗装方法
塗装前の塗膜状態
塗装面積(m2)
塗料使用量(kg)
塗料使用量(g/m2)
施 工 場 所
塗装施工径間
特 記 事 項
記録者
印