2016 年第 4 四半期見通し 2016 年 10 月 債券市場レビュー 市場見通し 今回のプルデンシャル・フィクスト・インカム(以下、PFIM)四 半期見通しでは、チーフ・インベストメント・ストラテジストの ロバート・ティップ(Robert Tipp)が、各国の金融政策が変化 するなかで、第 3 四半期のプラス・リターンと上半期のプラス・ リターンがどのように異なっているかについて考察します(4 ペ ージ)。 チーフ・エコノミストでグローバル・マクロエコノミック・リ サーチの責任者であるユルゲン・オデニウス(Jürgen Odenius) が、エマージング諸国の経済成長が最近加速しているのとは対 照的に、先進国経済が減速しつつあることに対する洞察を提供 します(6 ページ)。 セクター別展望 投資適格社債( 11 ページ) 投資適格社債市場では、欧州の社 債に対する米国の社債のオーバーウェイトを維持しています。 これは米国の社債の方がスプレッドが大きく、米国経済が安定 的に成長しているためです。量的緩和が引き続き需給環境を支 える重要な要因となっています。米国のマネー・センター・バ ンクを引き続き選好しています。 グローバル・レバレッジド・ファイナンス(12 ページ)ハイ イールド債市場に対して強気の見方を維持し、米国では、デュ レーションが比較的長く、BB 格、かつコモディティ関連以外 のクレジットを選好しています。これはコモディティ関連以外 のデフォルト(債務不履行)は短期的にみて低水準にとどまる と予想されるためです。欧州では、比較的シクリカルな銘柄で はなく、長期的に成長が見込まれる銘柄を選好しています。 エマージング債券(13 ページ) エマージング債券に対する PFIM の強気の見方は、堅調に推移した第 3 四半期の後も維持 されています。これはエマージング諸国のファンダメンタルズ が改善しつつあるとみられるため、ハードカレンシー建て債券 のスプレッドの縮小が見込まれ、エマージング通貨が支えられ ると予想されるためです。経済環境が安定している国について は、利下げが予想されるため、現地通貨建て債券は魅力的な投 資対象とみられます。 地方債(15 ページ)第 4 四半期初めには需給環境が力強さに 欠けることが免税地方債の価格を圧迫する可能性があります が、年末までには需給環境が好転する可能性があることが、当 社のやや強気なスタンスの支えとなっています。 グローバル金利(16 ページ)PFIM のグローバル金利に対する 強気の見方は、日本国債のイールドカーブ上の 20 年部分、米 国のデュレーションの長い債券や、スワップ・スプレッド拡大 (ワイドナー)、ドイツ国債のイールドカーブ上の 10 年から 15 年部分などの特定の市場分野に対する見方に基づいていま す。 モーゲージ債(16 ページ)PFIM は、他のスプレッド・セクタ ーに対するモーゲージ債セクターのアンダーウェイトという見 方を維持しています。 証券化商品(17 ページ)PFIM では最優先トランシェの債券に 対して非常に強気の見方を維持しています。投資家は高格付け の債券でより高い利回りを求めるとみられるため、AAA 格 CMBS と CLO のスプレッドは縮小する可能性があります。GSE クレジ ット・リスク・メザニン・キャッシュフローに対して強気の見 方を維持しています。一方、CMBS や CLO のメザニン・トラン シェに対してネガティブです。 Page 2 債券市場見通し 配慮を!」)という表題の詳細レポ ートで考察しています。 スポットライト:政治リスク 英国国民投票における欧州連合(EU)離脱(Brexit)支持派の勝 利と、英国がどのように EU を離脱するかに関する不確実性がな かなか解消しないことが、政治リスクの明確な上昇を物語ってい ます。市場が政治的変化に、より敏感に反応するようになってい るため、第 4 四半期およびその後に予想される政治上の注目イベ ントのいくつかについての PFIM の見解を示します(9 ペー ジ)。 現地報告 PFIM の専門家がブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ロシアを 最近訪問したため、それぞれの国が直面しているさまざまな政治 的、マクロ経済上の問題の概要を示します(14 ページ)。 最近のレポートとビデオ PrudentialFixedIncome.com.では、PFIM の投資専門家による 市場の見方をレポートやビデオでご覧いただけます。 グローバル・マクロの責任者でマネ ージング・ディレクターであるアー ヴィンド・ラジャン(Arvind Rajan, PhD)は、詳細レポート Key Fault Lines in the Global Earthquake Zone (「グローバル市場の「激震地帯」 に潜む重大な断層」)で、先進国市 場の経済における 2 つの主要分野、 つまりマクロ経済と政策での失敗が どのようにして 3 番目の断層、つま り政治リスクを生み出したかを検証 しています。それぞれの断層が金融 市場にボラティリティをもたらす可 能性がありますが、3 つの働きが重な った場合の方が、はるかに影響が大 きくなる傾向があります。 ここ 1 年間にわたる市場の激しい変 動を、中国経済の減速やコモディテ ィ価格の下落、より最近では英国の 欧州連合(EU)離脱に帰する向きも ありますが、チーフ・インベストメ ント・ストラテジストでマネージン グ・ディレクターであるロバート・ ティップ(Robert Tipp, CFA)は、こ れがあまりにも過度な金融政策に起 因するものかどうかについて Central Banks of the World: Yield to the Markets!(「世界の中央銀行:市場に Page 3 シニア・インベストメント・オフィ サーでマネージング・ディレクター であるマイケル・コリンズ(Michael Collins, CFA)は、現在のクレジッ ト・サイクルがどのように過去のク レジット・サイクルと「韻を踏んで いる(同じような動きを繰り返して いる)」のかについて考察する一 方、明確なニュアンスの違いがいく つかあることを The Global Credit Cycle: What Inning Are We In (Or, What Game Are We Even Playing)? (「グローバル・クレジット・サイ クル、今は何イニング目なのか(ま た、どのようなゲームが展開されて いるのか)?」)という表題の詳細 レポートで示しています。 債券市場見通し 亀(動意が乏しい)なのか 熊(下げ相場)なのか? 第 3 四半期にはイベントが乏しく、中央銀行による債券買い入れ 「マジック」により世界の債券市場は底堅い動きを続けました。こ れはやや単純化しすぎた見方かもしれませんが、極端な単純化では ありません。この点はデータを見れば自明です。つまり、第 2 四半 期末時点ですでに、債券市場の多くのセクターの絶対、超過(相対) リターンが、ともに年初来の累計で堅調な推移を示しており、第 3 四半期にも、期初の利回りが低位だったにもかかわらず、堅調さを 維持しました(下の表を参照)。 セクター別のパフォーマンス 米国ハイイールド債 欧州ハイイールド債 ハードカレンシー建 てエマージング債 米国レバレッジド・ ローン 投資適格長期社債 欧州レバレッジド・ ローン 欧州投資適格社債 エマージング通貨 米国投資適格社債 現地通貨建てエマー ジング債(ヘッジあ り) グローバル総合 モーゲージ担保証券 (エージェンシー 債) CMBS 米国総合 米国債 地方債 トータル・リターン(%) 2016 年 2016 年 第3四 2015 年 2014 年 2013 年 2012 年 年初来 半期 5.49 15.32 -4.6 2.5 7.4 15.6 4.21 8.38 1.3 5.1 9.1 24.8 4.04 7.4 -5.3 (ECB)による社債買い入れプログラムが四半期中のスプレッドの縮 小に寄与したもう 1 つの強い力となりました(「投資適格社債」の セクションを参照)。全般的に、第 3 四半期中には金利は狭いレン ジ内での動きとなり、米国と日本の長期債金利の期末の水準は期初 の水準をやや上回りました。為替市場では、米連邦準備制度理事会 (FRB)が今後の金利引き上げ経路の予想を徐々に引き下げ続けてき ことが、年初来および第 3 四半期中にドル以外の通貨を平均的にみ て対ドルで上昇させるのに十分な効果を発揮しました。 背景:ファンダメンタルズにほとんど変化はないが、政 策は進化を続けている 第 3 四半期には経済的背景にほとんど変化のない状態(精彩を欠き、 困難な状態、詳細については「世界経済見通し」を参照)が続きま したが、政策立案者は活動を続けました。FRB はこの四半期を通し て 12 月の利上げのための地ならしを進める一方、将来の利上げ経路 の見通しを低下させ続けました。ECB は、現在の金融緩和政策が期 限を迎える 2017 年 3 月以降も緩和政策を続けることを決定した場合 に、どのように延長するかを決定する委員会を設置しました。 金利を低水準に維持し、その結果、金融緩和を続ける一方、利回り が付いている資産購入に依存している市場参加者に対する打撃を軽 減するため、日銀は従来の金融政策の枠組みを変更しました(「世 界経済見通し」のセクション参照)。 これまでのところ日本国債の イールドカーブは低位にとどまっていますが、それでも従来よりも 傾斜が急になっています。これはおそらく投資家にとってはより好 ましい状況ですが、この新たな金融政策によって逆効果が生じるお それがあります。これは、マネタリーペースの増加率の低下と、よ りスティープな(つまり、より魅力的な)イールドカーブの組み合 わせが円高につながるようなことがあれば、経済成長を鈍化させ、 経済をデフレ状態に逆戻りさせる可能性もあるためです。 14.77 1.2 17.4 3.07 7.43 -0.4 2.1 6.2 9.4 2.56 16.84 -4.61 15.73 -5.68 12.41 2.50 4.55 3.6 2.1 9.0 10.8 1.84 1.50 1.41 6.00 7.40 9.20 -0.6 -7.61 -0.7 8.4 -7.03 7.5 2.4 -2.04 -1.5 13.6 7.45 9.8 1.20 7.29 -2.2 3.2 -4.2 8.9 0.82 9.85 -3.15 0.59 -2.60 4.32 続く「花火の打ち上げ」:金融政策と政治 0.60 3.72 1.5 6.2 -1.50 2.6 0.59 0.46 -0.28 -0.30 6.55 5.80 5.07 4.01 1.0 0.6 0.8 3.3 3.9 6.0 5.1 9.1 0.2 -2.0 -2.8 -2.6 9.7 4.2 2.0 6.8 第 4 四半期以降に目を向けると、利回りは低下し、スプレッドは縮 小し、イベント・リスクは比較的高いとみられます。FRB は経済成 長見通しを悪化させることなく利上げを実施できると考えています。 世界市場に巨額の流動性を供給している日銀は、従来とは異なる政 策を新たに導入し始めました。 出所:ブルームバーグ・バークレイズ。ただし、エマージング債は JP モルガ ン、ハイイールド債はメリルリンチ、担保付きシニア・ローンはクレディ・ スイス。パフォーマンスは 2016 年 9 月 30 日現在のものです。インデックス の名称については後述のインデックスの記載をご覧ください。過去の運用実 績は将来の運用成果を保証するものではなく、信頼できる指標となるもので もありません。インデックスに直接投資することはできません。 また日銀同様、ECB も金融緩和政策を継続することを決定した際に、 債券買い入れの詳細な条件をどのように調整するかや、どのように 延長の準備を進めるかを検討しています。一方、米国では政治的不 確実性が拡大しています(「世界経済見通し」に続く、「政治リス クの見通し」のページ参照)。 堅調なリターンが実現した経緯と理由 債券は勝てるか? 今年上半期中のリターンは主に国債利回りの低下に支えられたもの でしたが、第 3 四半期のリターンは国債対比のスプレッドが期中縮 小したことが大きく寄与しました。スプレッド・セクターでのスプ レッドの「キャッチアップ(巻き返し)」取引は、エネルギー価格 の安定に加えて、今年上半期中のソブリン債利回りの大幅な下落に 続いた自然な流れとして、高い利回りの商品を求める投資家の全般 的な動きがあったという追い風を受けたものでした。欧州中央銀行 全般的にみて、PFIM は債券市場、特にハイイールド・セクターに対 して引き続き強気です。利回りとスプレッドはやや低めですが、さ えない経済環境と極めて緩和的な中央銀行のスタンスのために、国 債利回りと国債以外の債券のスプレッドに対する妥当な投資戦略の テーマは、引き続き「低く、より低く」であるとみられます。しか し、過去数四半期にみられたように、低成長、低インフレ率、低金 利が高いレバレッジと組み合わさった世界では、断続的に市場ボラ Page 4 債券市場見通し ティリティが上昇することがあります。このボラティリティ上昇の 原因が、米国の選挙、FRB、日銀の新政策、イタリアで 12 月に予定 されている国民投票、エネルギー価格の値動きの変化、中国経済の 悪化、あるいは、現時点では予見できない何らかの要因になるのか を、確実に予想することはできません。しかし最終的には、投資家 は利回り追求の動きを再び始めるようになり、債券、とりわけハイ イールド・セクターの債券が全般的にキャッシュをアウトパフォー ムするようになるとみられます。一方、FRB による利上げ経路予想 は引き続き穏やかものにとどまっているため、ドルはアンダーパフ ォームする可能性が高いとみられます。 要点:短期的なリスクは残っているものの、債券の中長期 的見通し、とりわけハイイールド・セクターの見通しにつ いては引き続き強気です。さらに、市場のボラティリティ により、アクティブ運用にとって通常よりも多い投資機会 が提供されるとみられます。 Page 5 世界経済見通し マイナス金利の国債の構成比 並外れた金融緩和策にもかか わらず、冴えない経済成長 100% 80% 第 3 四半期の展開には、これまで PFIM が提示してきた主要テ ーマの多くが包含されていました。第 3 四半期の大半において は、Brexit に始まり中国経済の減速懸念に至る懸念の高まりへ の対応に追われて市場は小康状態となり、金融政策の有効性に 対する市場の懸念が高まった 9 月に入って初めて市場は目を覚 まし、ボラティリティが高まりました。同様に、コンセンサス 予想を下回る PFIM による世界経済の見通しが引き続き妥当で あることが確認されました。ただし、これは先進国市場の経済 成長が予想を下回り、エマージング諸国の経済成長率が予想を 上回った結果です。今後については、これらのトレンドはおお むね継続するとみられますが、米国の選挙がもう 1 つの不確定 要因になると見込まれます。 60% 40% 20% 0% -20% ユーロ圏 Euro Area Japan 日本 出所:ブルームバーグ 第 3 四半期にも金融政策による支援がありましたが、金融政策 の有効性に対する懸念が高まってきたため、再度金融市場でボ ラティリティが高まることが見込まれます。国民投票で Brexit が支持されたことに対するイングランド銀行の迅速な政策対応 と、他の中央銀行も早急に行動を起こしたことが投資家心理を 落ち着かせ、リスクテイクの動きがさらに促進されました。し かし、ジャクソンホール・シンポジウムでの主要中央銀行関係 者の発言にみられるように、金利が非常に低水準にあることに 対する否定的とみられる見方が金融政策立案者の間で共通認識 になり、また ECB と日銀の追加金融緩和への限界に対する懸念 が再浮上したため、ボラティリティがかなり上昇しました。金 融政策をさらに緩和して効果があるかどうかに関して、またマ イナス金利の債券の占める比率の上昇にみられる不均衡の拡大 に対して、PFIM はこれまで懐疑的でした。そのため今後、とり わけ、現時点では可能性は低いとみられますが、インフレ率が 本格的に上昇するようなことがあった場合には、ボラティリテ ィが上昇すると予想しています(PFIM の見解に関するより詳細 な情報、については“Are Central Banks Losing Their Mojo?” (「世界の中央銀行は神通力を失ったのか」)を参照)。 世界経済の経済成長トレンドについては、コンセンサス予想を 下回る PFIM による世界経済の見通しに変化はありませんが、 これは予想を下回る先進国市場の経済成長により、予想を上回 るエマージング諸国の経済成長が相殺されてきたためです。先 進国市場の経済成長率の下方修正は、米国経済の下方修正に伴 うもので、近年は第 1 四半期の成長率は低くなる傾向があるこ とがよく知られていますが、今年はこれに続く第 2 四半期の成 長率が予想外に低くなりました。第 3 四半期にはある程度の回 復が見込まれますが、生産性の低さに対する基調的な懸念のた めに、PFIM では成長率予想を引き下げました。エマージング諸 国では、悪名の高いデカップリング論(新興国が米国経済との 関係が切り離される形で成長を続けるという見方)に戻るので はなく、全般的な改革の穏やかなペースが(例えば、インドネ シアやインドで)ある程度上昇しているという傾向がみられま す。最も重要な点は、PFIM の予想に反して中国が、再度大規模 な景気刺激策を実施した点でした。この刺激策によって成長見 通しが押し上げられましたが、これは一時的なものにすぎず、 マクロ経済の不安定化を招くというリスクを伴うものです。 米国では、景気がサイクル上で一段と先の段階に進んだことを 示す兆候が増えています。特に、原油価格低下とドル高の投資 に対する悪影響は弱まっていますが、産業活動は減速し、投資 活動は抑制された状態にとどまっています。雇用者数の伸びは 堅調を維持してきましたが、その半面、単位労働コストの上昇 に示されているように、生産性は低下してきました(PFIM によ る生産性の長期的な推移に対する見解の詳細については、 “Prospects for the U.S. Economy Over the Long Run” (「米国経済長期展望」)を参照)。このため、これらの展開 は必ずしも全般的なインフレの落ち着きに対する過度に楽観的 な見方と整合性があるわけではありません。実際、インフレ率 は上昇トレンドにあり、下のチャートに示されているように、 サービス価格のインフレ率は 3%前後で推移しています。とはい え、賃金インフレの兆候は、少なくとも今回の景気サイクルの 後半では、依然としてほとんど見られません。こうした状況下 で、FRB は 9 月にも、さらにもう一度引き締めを先送りしまし Page 6 世界経済見通し たが、景気見通しが好調な状態にとどまっている限り、近い将 来に引き締める準備が整っていることを示唆し続けています。 中央銀行のインフレ指標推移 (前年比、T はそれぞれの量的緩 和プログラムの開始時点) 米国のインフレ指標(前年比、%) 6% 5% 4% 4% 3% 3% 2% 2% 1% 0% 1% -1% -2% 0% -3% t2 -1% t1 t t+ 1 t+ 2 t+ 3 日本(T=2010 年 10 月) Japan (t=10/2010) Euro Area (t=01/2015) ユーロ圏(T=2015 年 1 月) CPI CPI コアPCE PCE Core コアCPI CPI Core 粘着価格 Sticky CPI CPI t+ 4 t+ 5 t+ 6 t+ 7 U.S. (t=12/2008) 米国(T=2008 年 12 月) 出所: Haver Analytics 出所: Haver Analytics ユーロ圏では、回復は引き続き顕著ですが、モメンタムを失い つつあるようです。並外れた規模の景気刺激策は 2014-15 年に、 ユーロ安、原油価格の急落、利回りが過去最低近くにまで低下 したことから導入されましたが、現在ではその効果は薄れつつ あるようです。こうした減速は、原油価格下落による消費刺激 効果が薄れ、賃金上昇率が低下したため、消費支出のモメンタ ムが失われたことが一因となっています。一方、ヘッドライン インフレ率のこれまでの上昇ペースはゆっくりとしたものです が、今後はコアインフレ率と同等の 1%程度に向けて着実に上 昇すると PFIM では予想しています。この景気減速に加え、イ ンフレ率を 2%にまで引き上げるという目標達成がさらに難し くなったことから、12 月に予定されている ECB によるマクロ経 済予測、特にインフレ率の予想は下方修正される可能性がある とみられます。その時点で、ECB は現在 2017 年 3 月となってい る資産買い入れプログラムの期限を、6 カ月から 9 カ月延長す ることも PFIM では予想しています。また、テーパリング(買い 入れ額縮小)の可能性は否定できないものの、資産買い入れのペ ースは月間 800 億ユーロに据え置かれると予想しています。 インフレ率を高めることが引き続き困難であることを受けて、 日銀は金融政策の枠組みを変更しました。インフレ率を、目標 とする 2%に向けて高めるのが困難な状況が続いていますが、 この原因となっているのは日本の大きな対外純資産です。対外 純資産額が大きいため、為替レートがインフレ圧力を高めるき っかけとなる余地が事実上限定されています。当局は名目賃金 を押し上げようと努めてきましたが、賃金上昇率はこれまでの ところ需要やインフレ率を大幅に増大させるには小さすぎるこ とが明らかとなりました。最低賃金引き上げの実施を求める (例えば、IMF による)呼びかけはこれまでのところ無視され ているようです。日銀が自らのインフレ目標を超過するまでマ ネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コ ミットメント」が、現在実施中のインフレ目標よりもインフレ 期待を高める効果が大きいかどうか PFIM では疑問視していま す。さらに大きな問題は、長期債利回りを対象にした「イール ドカーブ・コントロール」を実施する一方、年間約 80 兆円とい うマネタリーベースの拡大ペースを維持するという日銀の新た な金融政策の枠組みは、特に米国債の利回りが予想外に大きく 上昇するようなことがあった場合には、その効果を試されるこ とになる可能性が高いとみられます。 中国経済に関する懸念は第 3 四半期には比較的沈静化していま したが、今後再浮上する可能性が高いとみられます。レバレッ ジ解消の努力は長続きせず、中国は負債を急拡大する政策に逆 戻りし、信用供与の年間増加ペースは GDP の 30%程度に達して います。この拡大ペースは、信用の年間増加額が絶対額ベース でイタリア経済の規模を上回り、GDP に対する総与信比率の長 期トレンドからの乖離を示す対 GDP での総与信ギャップ (credit-to-GDP gap)は 30%程度という驚くべき水準に達し ています。これらの展開が続けば、経済全体のレバレッジが 2017 年半ばまでに 300%を上回ることになります。さらに、大 規模な財政的または準財政的な景気刺激策のための資金を供給 Page 7 世界経済見通し しているこの与信拡大の影響は、経済活動の安定化に寄与して きましたが、成長率の観点から見れば、追加された与信額に対 する景気拡大効果は減少を続けていて、そのためこの政策の限 界が大きく注目されるようになっています。PFIM では、負債拡 大ペースを鈍化させるための努力が再度傾けられるようになる と引き続き予想していますが、これはまた GDP 成長率の実績を 低下させる可能性があります。PFIM のこれまでの見解どおり、 今年前半の人民元レートの下落は、主として、輸出企業の利益 率の向上に寄与し、海外市場での中国製品の値下げにはつなが りませんでした。これによって国有企業は赤字縮小が可能にな り、世界経済に再度デフレ圧力をもたらすことを回避する効果 が生じました(人民元レート切り下げに関するより詳細な議論 については、“China’s Constructive Devaluation Step” (「中国の建設的な通貨切り下げ措置」)参照)。 今後については、先進国市場では例外的な金融緩和環境が短中 期的に続くと PFIM では予想しています。世界の経済情勢は、 政策立案者が安心して本格的な金融引き締めサイクルに移行で きるほど堅調な状態になる可能性は低いとみられます。しかし、 金融政策がこれまで以上に成長率を高める効果を持つようにな る可能性は低いとみられます。そのため追加的な財政刺激策を 求める声が高まる可能性があるとみられます。しかし、アベノ ミクスだけでなく、中国の財政・金融政策を組み合わせた景気 刺激策は、景気刺激策に対する警戒感をもたらす結果となって います。さらに、公的債務がすでに過大となっている国がいく つかあり、追加的な財政刺激策は、投資家マインドを悪化させ るリスクを伴うことになります。金融緩和環境は、政策立案者 が困難を伴う構造改革政策を回避することを可能にしてきたと いう面があります。これは、ECB が一貫して指摘してきた問題 です。とはいえ、構造改革を実施するための政治環境がこれま でより容易に実現する可能性は低く、特に今後選挙が実施され る予定であるため、改革にはかなりの政治リスクが伴うことに なります(次ページの「政治リスク」に関するコラムを参照)。 しかし、構造改革なしでは低い成長率がさらに低下する可能性 があります。 中国の GDP に対する総与信ギャップ 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% -5% -10% -15% China Credit-to-GDP Gap 中国の GDP に対する総与信ギャップ 出所: Haver Analytics Page 8 世界経済見通し 政治リスクの見通し 英国国民投票における Brexit(英国の EU 離脱)支持派勝利とその後の不確実性を受け、市場は政治リスクにより敏感に反応するよ うになっています。以下は、短期的に注目される政治イベントに対する PFIM の見解であり、これらイベントは今後数カ月以内に米 国と欧州で浮上する可能性があります。 米国:トランプ氏が大統領に選出される可能性を市場は過小評価している可能性があります。予想される米国の政策変更の観点から みると、トランプ氏が大統領に就任した場合には貿易政策と外交政策に不確実性が生じる可能性があるとみられます。貿易面では、 既存貿易協定の再交渉が迫られたり、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や米国と欧州の間の交渉などの貿易交渉が中断された り、通貨操作を行っている国として中国と日本がやり玉に挙げられる可能性があります。外交政策面では、NATO(北大西洋条約機 構)の役割が疑問視されたり、米国の対露関係が見直されたり、全般的にこれまでより孤立主義的な政策が支持されるようになる可 能性があります。とはいえ、トランプ氏が大統領に選出された場合には、政治要綱の内容を後退または軟化させる可能性がある一 方、クリントン氏が選出された場合にも、同氏もこれまで TPP に対して反対の意思を表明していたため、政策変更の可能性がありま す。財政的には、トランプ氏がこれまで提案してきた政策、つまり大幅な減税と歳出の拡大は拡張的財政政策となる可能性がある一 方、クリントン氏の政策は財政的には中立からやや拡張的となる可能性があります。トランプ氏の大統領就任による地政学的な影響 は依然としてはっきりしないものの、同氏の政治要綱で強調されている孤立主義的な政治スタンスは、もし実行された場合には、大 きな新たなリスクをもたらす可能性があります。 欧州:中期的にみると、欧州は域内の問題と域外との関係の両方で複数の危機に直面する可能性があります。域内の問題として は、ポピュリスト(大衆主義者)と反体制派政党の復活があります。これら政党が、グローバル化とその結果生じた社会的不平等、 雇用の不安定化、所得の低迷に焦点を合わせ、中道的な政治勢力に対して引き続き挑戦的スタンスを取り、経済政策および政治日程 に影響を与えたり、これらを決定づけようとさえするようになるとみられます。中道的な政治勢力がポピュリスト勢力の要求に妥協 しているため、選挙の際の極右または極左勢力への得票数のシフトは続くとみられ、これが政策決定プロセスをさらに複雑なものに するとみられます。以前は中道的な政治によってもたらされていた安定が、現在では政治的な競争の激化に道を譲りました。選挙の 際に票が割れることによって、政党間の連立が難しくなり、追加的な改革を推進することがさらに困難になるとみられます。これ は、域内で例えばポルトガルについて、財政的な救済措置が再度必要となるケースが起こった場合の、政治的解決プロセスを複雑化 する可能性もあります。一方、今後のことを考えると、欧州主要国の一部で新たな一連の選挙が始まろうとしていて、政策の麻痺や 非効率性が政治情勢を特色付けることになる可能性があります。 経済政策と改革における南北の分裂、移民問題、国民のアイデンティティー、治安、国防における東西の分裂は、今後数カ月は続く 可能性があるとみられます。一方、オランダ、ドイツ、フランスで予定されている選挙だけでなく、イタリアでの憲法改正を問う国 民投票は、各国政府に新たな政策的な取り組みに反対して、よりポピュリスト的な課題を追求するよう圧力をかける可能性があると みられます(政治的リスクや、投資家にとってのその他の不確実性の詳細に関しては、Key Fault Lines in the Global Earthquake Zone(「グローバル市場の「激震地帯」に潜む重大な断層」)を参照)。メルケル首相の政治生命の今後が、ここ数カ月に欧州が直 面するもう一つの重要なリスクです。メルケル氏が次期連邦議会(下院)選挙に出馬しないと決断した場合には、欧州はますます厳 しくなりつつある域内および域外の政治・経済環境の中で、強力なリーダーのいない状態になるとみられます。最後に欧州における 不確定要因をもたらすその他の要因としては、スペインでの政治的ノイズ、ポルトガルの銀行および財政に関する懸念、さらに、ギ リシャ救済プログラムの次回の見直しに関する再協議があります。 域外との関係では、欧州は引き続き Brexit とロシアに関係する困難に直面するとみられます。EU 基本条約(リスボン条約)第 50 条による離脱手続を 2017 年 3 月までに開始するという英国の発表が実行された場合には、各国政府と EU の複数の機関の両方が態度 を硬化させる可能性があります。その場合、結果的に英国と欧州の両方に深刻な財政、経済、貿易面での影響を伴う「ハード」 Brexit の可能性が高まることも考えられます。一方、ロシアは、移民問題、シリア、中東における混乱、トルコの政治危機、長年 にわたるウクライナ国内での紛争から生じるリスクを軽減するための欧州の努力を妨げることによって、引き続き欧州の出方を探る ことになるとみられます。 Page 9 2016 年第 4 四半期セクター見通し 注目すべき今後の政治イベント 国 投票 日付 注目点 米国 大統領、上院議員、下院議員 の選挙 2016 年 11 月 8 日 共和党の指名候補であるドナルド・トランプ氏は、自らを共和党、民主党の政治 的既存勢力に代わる政治家であると位置付けました。 イタリア 経済改革に関する国民投票 2016 年 12 月 4 日 レンツィ首相の経済改革および憲法改正の提案が国民投票で否決された場合に は、選挙の時期が早まり、反欧州の政党、五つ星運動に勢力を拡大する機会がも たらされる可能性があります。 オーストリ ア 大統領選挙 2016 年 12 月 4 日 政治的スペクトラム上では極右と考えられている自由党が、やり直し選挙前の世 論調査では善戦してきました。 ドイツ メルケル首相の選挙運動に関 する決断 2016 年 12 月 メルケル首相が率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)が地方議会選挙で「ドイ ツのための選択肢」(AfD)に敗れた後、メルケル首相はもう 1 期務めるかどう かを、2017 年秋に予定されている連邦議会選挙前に決断するとみられます。 オランダ 第二院議員の選挙 2017 年 3 月 自由党(PVV)は政治的スペクトラム上では極右と位置付けられていて、議会選 挙前の世論調査で善戦しています。 フランス 大統領と国民議会議員の選挙 2017 年 4 月およ び6月 極右政党の国民戦線党首のマリーヌ・ルペン氏も大統領選挙への立候補を表明し ています。同党は議会選挙でも波乱要因となるでしょう。 投票日の出所: ElectionGuide.org Page 10 2016 年第 4 四半期セクター見通し 米国および欧州の投資適格社債 米国の投資適格社債の第 3 四半期のトータルリターンは 1.41%とな り、米国債に対して 173bps の超過リターンとなりました。米国の投 資適格社債は順調なラリーとなり、償還期限が同時期の米国債との スプレッド(OAS)は同四半期中に 17bps 縮小し 138bps になりまし た。穏やかながらも勢いを増す景気モメンタムと、欧州と日本のマ イナス金利や ECB の債券買い入れプログラムを含む中央銀行の積極 的緩和政策を背景に利回りを求める世界の投資家からの強い需要が、 米国の投資適格社債の追い風となりました。 欧州の投資適格社債のリターンも、Brexit 国民投票後の急落からの 反発に加え、ECB の社債買い入れが着実なペースで進んでいること からプラスとなりました。スプレッドは同四半期中に 22bps 縮小し 114bps となりました。 トータル・ リターン スプレッドの変化 OAS います。コモディティとエネルギー・セクターのクレジット指標は 安定してきており、発行企業はバランスシート強化の動きを進めて います。 第 3 四半期は引き続き、米国を中心に事業を展開する自動車、化学、 医療保険関連、紙、および医薬品の一部を含む消費関連産業セクタ ーを選好しました。PFIM は、スティープなイールドカーブと発行 体による投資適格格付け維持の努力を背景に、残存期間の長い BBB 格の社債をオーバーウェイトしています。同様に、A 格以上の資本 財セクターを、イベントリスクの増加とスプレッドレベルの縮小を 理由にアンダーウェイトしています。また、魅力的なスプレッド水 準にあり、高い自己資本比率規制を満たし、イベントリスクへの抵 抗力が比較的高い米国マネーセンター・バンクの優先債を継続して 選好します。低金利が収益を圧迫し続ける生命保険会社には、あま り強気ではありません。エネルギーと金属/鉱業セクターでは選別 された投資機会を探し続けており、レベニュー債(歳入担保の地方 債、課税対象)もイベントリスクに対する感度が低いことから選好 しています。 3Q 年初来 3Q 年初来 2016 年 9 月 30 日 米国投資適格社債 1.41% 9.20% -17bps -27bps 138bps 欧州投資適格社債 欧州投資適格社債 1.84% 6.00% -22bps -19bps 114bps 第 3 四半期の欧州の投資適格社債は、Brexit 国民投票後の急落から の英国社債の反発と、ECB とイングランド銀行による大規模な下支 え政策により後押しされた市場環境を好感し、力強いサマーラリー となりました。ECB の社債買い入れプログラムは継続しており、ま たイングランド銀行は 9 月後半にポンド建て社債市場に参入しまし た。 ブルームバーグ・バークレイズ米国社債インデックスおよびブルームバ ーグ・バークレイズ欧州社債インデックスのデータを示しています(ヘ ッジなし)。出所:ブルームバーグ・バークレイズ、2016 年 9 月 30 日現 在。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではなく、信頼で きる指標となるものでもありません。インデックスに直接投資すること はできません。 米国投資適格社債 米国の投資適格社債の第 3 四半期の新規発行は極めて活発で、年初 来の社債発行額は過去最高だった昨年と同等の水準で推移していま す。9 月だけでも、1,250 億ドルを超える社債が最低水準のコンセッ ション(ディスカウント)あるいはコンセッションなしで発行され ました。多くの発行企業が超低金利の社債発行を確定しようとする ことに加え、デット・ファイナンスによる M&A や自社株買い、差し 迫ったマネー・マーケット改革とその結果として LIBOR が上昇する 前の短期債発行の増加が、供給の増加に寄与しました。需要は活発 で、米国および米国以外の投資家がともにより魅力的な利回りの米 国社債に注目した結果、ほとんどの新規発行が 3 倍の応募超過とな りました。特にマイナス金利を背景にした欧州および日本の投資家 からの需要が強くなりました。米国以外の投資家の多くは現在、追 加的な利回り追求のために社債イールドカーブ上をより長期ゾーン にシフトしています。 産業および公益セクターの社債は、超低金利と FRB の金利引き上げ への消極性が懸念材料の金融セクターを第 3 四半期はアウトパフォ ームしました。大半の米国消費関連セクターのファンダメンタルズ は全般的に堅調を維持しており、ほとんど全産業が配当および自社 株買い前でポジティブ・キャッシュフローを生み出しています。売 上と利益成長のための努力が続けられていますが、資本財セクター の高格付け(A から AAA 格)発行企業のファンダメンタルズは、M&A 資金調達によるレバレッジ増加と自社株買いのために悪化してきて 中央銀行の社債買い入れによる需給環境面の追い風に加え、強固な クレジット・ファンダメンタルズ、バランスシート強化に焦点を当 てる概して保守的な企業経営、欧州経済の底打ちなどの他の明るい 材料があります。2016 年は 1%超の経済成長が予想されており、過 去数年と比べ大幅な改善が見込まれます。エネルギー価格の低下と 通貨安は、ECB とイングランド銀行が経済成長の順調な進展のため に継続を図る金融緩和と同様に、経済の下支え要因です。 欧州社債の新規発行は第 3 四半期も記録的なペースを続け、リバー ス・ヤンキー債の発行企業(主に米国企業)は低金利の英国と欧州市 場で大量の新規発行を行いました。投資家の新規発行への需要も同 様に強く、ECB の社債買い入れは需給環境面の好材料を提供しまし た。しかし、当四半期の終了時点で、魅力的なディスカウント(コ ンセッション)で発行される新規発行銘柄がほとんどなくなり、ブ ックオーダーの減少、極めて限定的な追加購入と合わせ、市場は一 定の取引レンジを見出したようです。流通市場の取引も低調に転じ、 流動性は低下しました。 欧州のスプレッドが今年急激に縮小したことから、欧州の産業セク ターの価格は適正水準にあり、中央銀行の社債買い入れに支えられ 現在のレベル近辺で推移すると PFIM は考えます。M&A は穏やかに 増加していますが、引き続き米国の水準を大きく下回っています。 PFIM は短期ゾーンのスプレッドを注視しています。これは、マイナ ス金利によるスプレッドのワイド化とクレジットカーブのフラット 化によるワイド化圧力を受ける可能性があるからです。 Page 11 2016 年第 4 四半期セクター見通し このような環境下で、PFIM は欧州のスプレッド・リスクのオーバー ウェイトを引き下げ、欧州以外の発行体へのより強気な判断を維持 します。スプレッドが知名度不足を補って余りある水準にあり、本 国での米ドル建て債に比べディスカウントで取引されているリバー ス・ヤンキー債に引き続き注目しています。欧州金融セクターのアン ダーウェイトを続け、その中ではユーロ周辺国より北欧の銘柄を選 好しています。ユーロ圏の産業セクターでは、送配電事業や空港運 営会社などの健全なバランスシートを持つ規制対象企業を選好して います。ハイブリッド証券については、高格付けで安定した業態の 公益企業が発行する特定の銘柄群に魅力があると考えますが、通信 業界などにみられる格付け引き上げのために発行されたハイブリッ ド証券は避けています。 グローバル社債ポートフォリオでは、欧州のスプレッド・リスクの オーバーウェイトを引き下げ、米国のスプレッド商品やリバース・ヤ ンキー債発行企業を含むその他の投資機会を選好します。金融セク ターでは、米国マネーセンター・バンクのオーバーウェイトと、欧 州銀行のアンダーウェイトを維持します。米国ポートフォリオと同 じく、BBB 格の社債と米国のレベニュー債(歳入担保の地方債、課 税対象)を引き続き選好します。また、同一企業または類似の信用 格付け企業が発行する米国社債と欧州社債に関しては、両債券間の 価格のずれと利回り格差に投資収益獲得のために着目しています。 全体的に、米国と非ユーロ圏のスプレッドは引き続き魅力的で縮小 の余地がありますが、ユーロ圏のスプレッドはすでに適正水準にあ ると考えています。主要なリスクとしては、短期的には米国大統領 選挙と FRB の金融政策、長期的には中国の増大するレバレッジと Brexit が英国および欧州全体に与える長期的影響に関しての不透明 感が挙げられます。 トータル・ リターン 3Q 年初来 スプレッドの変化 3Q 年初来 OAS 2016 年 9 月 30 日 米国ハイイールド債 5.49% 15.32% -124bps -198bps 497bps 欧州ハイイールド債 4.21% 8.38% -72bps -92bps 428bps 米国レバレッジド・ ローン 3.07% 7.43% -57bps -103bps 486bps 欧州レバレッジド・ ローン 2.50% 4.55% -35bps -17bps 480bps 出所:バンクオブアメリカ・メリル・リンチ、クレディ・スイス、2016 年 9 月 30 日現在。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものでは なく、信頼できる指標となるものでもありません。直接インデックスに 投資することはできません。欧州のリターンはユーロをヘッジ。 米国のハイイールド債およびレバレッジド・ローン Brexit 国民投票の後にリスクオン取引が全面的に活況になり、CCC 格セグメントが再び市場をアウトパフォームし、BB 格と B 格セグメ ントをそれぞれ 440bps と 256bps 上回りました。CCC 格およびそれ 以下のセグメントは年初来 28.81%上昇しており、ハイイールド債 市場の高格付けセグメントの 2 倍以上のリターンを計上しています。 第 2 四半期のトーンを引き継ぎ、コモディティ(特に金属・鉱業)、 化学、エネルギーの各セクターが第 3 四半期も市場全体をアウトパ フォームし、年初来パフォーマンスの上位 3 セクターの地位を維持 しています。これらのセクターの高いパフォーマンスにもかかわら ず、エネルギーおよび金属・鉱業関連銘柄が市場全体の今年のデフ ォルト(債務不履行)の 3 分の 2 以上を占める状況が続いています。 (ディストレスト債務交換を含む)市場全体の今年のデフォルト率 は長期的平均値(3.5%~4.0%)に近い数字が予想されていますが、 J.P.モルガンによれば、コモディティ・セクターを除くデフォルト 率は極端に低下します。加えて、ハイイールド・エネルギー・セク ターのスプレッドに織り込まれたデフォルト率は、市場がこれらの セクターのクレジット下方リスクを正しく織り込んでいないことを 示唆しています(ハイイールド・エネルギーをアンダーウェイトす る理論的根拠の詳細はこちらをクリック)。 見通し:ワイドなスプレッドレベルと米国経済の着実な成 長を考慮し、米国社債を欧州社債に対してオーバーウェイ トします。量的緩和は引き続き需給環境を支える重要な要 因になっています。引き続き米国のマネーセンター・バン クを選好します。 グローバル・レバレッジド・フ ァイナンス 英国の Brexit 国民投票に続き、市場の期待が高かった日銀と FRB の 会合が終わったことでレバレッジド・ファイナンス市場が落ち着き を取り戻すなか、世界の投資家の利回り追求は第 3 四半期も継続し ました。米国市場は、コモディティ・セクターの復活の継続と低格 付けクレジットのアウトパフォーマンスに牽引され、第 3 四半期も 再び好調なパフォーマンスとなりました。欧州のハイイールド債市 場は、ECB による買い入れにより、当四半期末時点で多くの銘柄が 逆イールドで取引されている投資適格社債市場のトリクルダウン効 果の継続的な恩恵を受けています。 第 3 四半期のハイイールド債への資金フローは、日銀と FRB の会合 に先立って同四半期後半に大幅な資金流出がありましたが、資金流 入超で終わりました。日銀は金融政策の見直しを行い政策の微調整 を決定し、FRB は(非常に緩やかなペースではありますが)12 月に 金利引き上げに踏み切る見込みです。しかし、全般的に緩和的な金 融政策と投資家のリスク選好の相乗効果からハイイールド債への需 要は引き続き強く、資金フローは流入超となりました。一方、ハイ イールド債の新規純発行額は、M&A 関連の発行減少と低金利を背景 とするリファイナンス目的の新規発行増加から、小幅な減少となり ました。 米国ハイイールド債は、強い需要と限定的な供給からさらなるスプ レッド縮小の可能性があります。しかし、現在のスプレッド水準が すでに過去 20 年間の平均にあるため、クーポン収入がリターンに占 める比率が高まる投資環境になる可能性があります。 Page 12 2016 年第 4 四半期セクター見通し 米国ハイイールド債の利回りは適正からやや割安な水準にあると見 られ、コモディティ関連以外のデフォルト率は引き続き管理可能と 考えられます。PFIM は今後のスプレッド水準に大きな変化はなく、 第 4 四半期末は現在と同様な水準で終わることを予想しています。 魅力的なスプレッドと価格水準にあるデュレーションが長く、高格 付けのハイイールド債に上値余地があると考えます。これらのスプ レッドは、クレジットリスクとのトレードオフに関して最も魅力的 です。このセグメントは、中央銀行のハト派的金融政策の恩恵を享 受するだけではなく、グローバルな経済成長鈍化による影響が小さ く、間近に迫った米国大統領選挙の不透明な政治的展開による悪影 響も相対的に大きくありません。PFIM はまた、市場がハイイール ド・コモディティのクレジットの下方リスクを過小評価していると 考えています。 くのクロスオーバー・バイヤーの存在は、グローバルな金融政策に 関する投資家心理のわずかな変化が、リスク資産の大幅なリプライ シングにつながる可能性を示唆しています。それにもかかわらず、 欧州のハイイールド債市場は、割高感のないスプレッド水準とコモ ディティとエネルギー・セクターへのエクスポージャーの小ささに 支えられ引き続き魅力的です。PFIM は B 格のクレジットのオーバー ウェイトを維持し、BB 格への投資配分の増加も検討しています。ポ ンド建てクレジットはユーロ建てクレジットに比べ広いスプレッド でトレードされる状態が続いていますが、PFIM はポンド建てとユー ロ建て債券の間のレラティブバリュー投資機会を追求していきます。 米国レバレッジド・ローンは、第 3 四半期に 3.3%の堅調なリター ンを計上しました。管理可能な新規純発行、資金流入の継続、CLO (ローン担保証券)の発行増がその原因でした。ハイイールド債の 場合と同様に、CCC 格ローンが B 格および BB 格をアウトパフォーム しました。最近のラリーの結果、J.P.モルガンによれば、現在半数 以上のレバレッジド・ローンがオーバー・パーで取引されています。 この状態ではローンのリプライシング懸念が生じる可能性がある一 方、リプライシング後のローンも高値で取引される傾向にあります。 第 3 四半期の欧州のレバレッジド・ローンのトータルリターンは、 プラスではありましたがハイイールド債を下回りました。PFIM はこ のアンダーパフォーマンスが継続するとは考えていません。ローン 市場のテクニカル要因が債券市場よりも強力であるため、短期的に はレバレッジド・ローンがハイイールド債をアウトパフォームする と予想します。 見通し:強気。米国のハイイールド債では、長期のデュレ ーショ ン、BB格、かつコモディティ関連以外のクレジッ トを選好します。コモディティ関連以外のデフォルトは短 期的に低水準を維持すると予想します。米国のレバレッジ ド・ローンは、個人投資家の需要が再び増加しており、タ イトなスプレッドが続くと思われます。欧州のハイイール ド債ではシングルB格のセグメントを引き続き選好し、欧 州のレバレッジド・ローンは強い需要に支えられハイイー 欧州ハイイールド債およびレバレッジド・ローン 第 3 四半期の汎欧州ハイイールド・インデックスは、B 格のクレジ ットが BB 格および CCC 格のセグメントをアウトパフォームする中、 好調だった米国市場をわずかながら下回るパフォーマンスとなりま した。この背景には、英国の政治的状況がイングランド銀行による 債券買い入れプログラムの詳細発表とともに迅速に安定化したこと でリスク資産への強い需要の支えがありました。 資金フローは、中央銀行の政策決定に先立つ連続的で着実な資金流 出から転じ、第 3 四半期に年初来の資金流入超になりました。ECB とイングランド銀行の量的緩和プログラムがハイイールド市場の需 要に好影響を与え、資金流入が継続すると PFIM は予想しています。 第 3 四半期の新規発行は低水準でした。この時期は年間を通じ典型 的に新規発行が少ないのですが、Brexit を巡るボラティリティが発 行企業の新規発行意欲を一段と弱めました。当四半期後半になり新 規発行は増加しましたが、新規発行額は昨年の発行額合計を下回る トレンドで推移しています。これは今後の市場にとって需給環境面 での支援的背景になると考えられます。 ルド債よりも魅力的です。 エマージング債券 ハードカレンシー建てエマージング債券は第 3 四半期すべての地域 でスプレッドが縮小しました。現地通貨建てエマージング債券とエ マージング通貨は、Brexit 国民投票直後の市場への悪影響が払拭さ れたため、それぞれ小幅なポジティブ・リターンを計上しました。 トータル・ リターン ムーディーズによると、欧州ハイイールド債のデフォルト率は 2.4%で安定していますが、2016 年末までに 1.7%に低下すると見込 まれています。欧州経済が今後着実に前進を続けるであろうこと、 発行企業が周囲の状況を見ながら有利な市場条件を生かして債務の リファイナンスを行っていること、今後の満期償還の利ファイナン スも容易に吸収されるであろうことから、今後 12 カ月間のデフォル トは全般的に低水準で推移すると考えられます。 第 4 四半期における欧州のハイイールド債市場の方向性は、新規発 行 BB 格債券の金利感応度が高いこと、ハイイールド債運用マネジャ ーがデュレーション・ヘッジを行っていないことから、国債市場の 動向に大きく依存しています。欧州ハイイールド債市場における多 利回り/スプレッド OAS/利回り の変化 2016 年 3Q 年初来 9 月 30 日 3Q 年初来 4.04% 14.77% -52bps -79bps 336bps 1.20% 7.29% -14bps -95bps 6.183% エマージング通貨 1.50% 7.40% -39bps -152bps 3.48% エマージング社債 3.07% 11.11% -49bps -82bps 346bps エマージング・ハ ードカレンシー建 て債券 エマージング・現 地通貨建て(ヘッ ジあり) 出所: J . P. モ ル ガ ン、2 0 1 6 年 9 月 3 0 日現在 。過去の運用実績は将 来の運用成果を保証するものではなく、信頼できる指標となるものでも ありません。直接インデックスに投資することはできません。 Page 13 2016 年第 4 四半期セクター見通し ハードカレンシー建て債券では、アフリカが最高の地域パフォーマ ンスとなりスプレッドは 92bps 縮小し、一方アジアではスプレッド の縮小幅が最低の 38bps となりました。前四半期と同じテーマが継 続し、コモディティ生産国の債券が、原油価格の期中の不安定な動 きにもかかわらずアウトパフォームを続けました。パフォーマンス 上位の国には、ザンビア(+14.18%)、コートジボワール (+7.65%)、ガーナ(+8.48%)、イラク(+8.30%)、チュニジア (+9.15%)が含まれますが、ラトビア(+2.11%)やフィリピン (+0.86%)などのディフェンシブな石油輸入国はアンダーパフォー ムしました。ベネズエラ(+28.36%)のパフォーマンスが際立って いるように、今後の負債管理スワップについての投資家の楽観的見 方が価格に織り込まれました。世界のエマージング債発行市場での 第 3 四半期の動きは活発で、ソブリン債、エマージング社債の新規 発行額は 1,320 億ドルを超えました。 現地通貨建て債券では、インドネシア(+3.33%)、コロンビア (+2.48%)、ルーマニア(+2.48%)がトップパフォーマーでした。 いくつかの例外を除きエマージング投資対象各国のインフレは落ち 着いており、アジアや東欧の多くの国々では中央銀行のターゲット バンドを大幅に下回る水準にあります。ラテン・アメリカ諸国の状 況はまちまちで、ブラジルとコロンビアのインフレは低下傾向です が中央銀行の目標よりは引き続き高い水準にあります。来年には、 ロシア、ブラジル、インドネシア、インドで中央銀行による金融緩 和が、メキシコ、韓国、ルーマニアで利上げがあることを PFIM は予 想しています。 エマージング通貨では、南アフリカ・ランド(+8.65%)、ハンガ リー・フォリント(+3.46%)、アルゼンチン・ペソ(+3.35%)が 最大のトータル・リターンを計上しました。南アフリカは、交易条 件へのポジティブなショックと第 2 四半期の経常収支の実質的な改 善が好感されました。ハンガリーは、経常黒字が拡大し第 2 四半期 は 6.4%増加したことと中央銀行が5月末に緩和サイクルに終止符 を打ったとみられることから、通貨が強くなりました。アルゼンチ ン通貨は安定しており、25%の高利回りが高いトータル・リターン を生みました。メキシコ・ペソ(-3.71%)が極端にアンダーパフ ォームしたのは、メキシコ経済に悪影響を与える北米自由貿易協定 (NAFTA)の見直し政策を掲げるドナルド・トランプ氏への投票予 想が上昇したことが原因でした。ほとんどのエマージング通貨が年 初来で上昇していますが、実質実効為替レートは引き続き割安で、 特にラテン・アメリカ、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、およびア ジアの一部の国々の割安感が顕著です。エマージング経済の成長、 多くの国々での大幅な対外収支の改善、魅力的な名目および実質利 回り、先進国市場と同様な金融緩和政策、および低利回りにより、 エマージング通貨は中期的に一段と高いパフォーマンスを上げる可 能性があります。 現地報告 ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ロシアへの最近の訪問により、 それぞれの国が直面する異なった政治的およびマクロ経済的課題が 浮き彫りになりました。ブラジル(+25.94%)、アルゼンチン (+21.84%)は共に、第 3 四半期を通じハードカレンシー建て債券 市場のインデックス・リターンである 14.77%を大幅にアウトパフ ォームしました。どちらの場合も、ポジティブな政治力学が高いリ ターンに寄与しました。 ブラジルでは、ジルマ・ルセフ元大統領の弾劾を受けてミシェル・ テメル大統領率いる新政府へ権限が移行したことでセンチメントが 改善しました。高い評価を受ける経済チームによる政府支出を制限 するための提案が議会の承認を得られる可能性と、ディスインフレ 傾向が進み中央銀行が今年中にも金利引き下げサイクルを開始する 可能性があることに PFIM は安心感を持ちました。しかし、これらは 必要条件ではありますが、債券市場のダイナミクスを安定させる十 分条件ではありません。社会保障とその他の構造的ないしミクロ改 革に関する積極的取り組みについて承認を得て実行するテメル大統 領とチームの強い政治的意思の表示が、投資環境の改善には必要で す。また、民間投資家のための投資条件の改善により、必要度が極 めて高いインフラプロジェクトへの投資を誘致する顕著な試みがあ ります。ペトロブラスの業績見通しの劇的な改善は、市場に優しく 透明度の高い政策が資産のリプライシングにいかに寄与するかの一 例です。テメル大統領とチームにとっての鍵は本格的回復のための 準備を確実にすることで、2018 年の大統領選挙の後に、ブラジル国 内債券市場のダイナミクスの安定化にとって最重要なより伝統的な 課題を手がけることが可能となります。このシナリオへのリスクに は、追加的な汚職調査、極めて高い失業率、景気回復が進まない場 合の民衆の不満拡大などがあります。PFIM の投資判断は、ソブリン 債と比べて依然大幅に広いスプレッドで取引されている準ソブリン 債と一部の外貨建てソブリン債に、引き続き上昇余地があるという ものです。ブラジルの対外流動性と強固なソルベンシーは、リスク 環境が悪化した場合、価格下落を制限する役割があります。大幅な 金利引き下げサイクル(潜在的には 400bps 近くまで)の可能性は、 現地通貨建て固定利付債の魅力を高めています。 アルゼンチンでは、投資と消費の増加を背景にする 2017 年の大幅な 経済成長回復の可能性に強い印象を受けました。この面では、マウ リシオ・マクリ大統領とチームがグローバルな投資コミュニティに 対して継続して行っている、前政権時代に過小投資で苦しんでいた セクターを開放し正常化する広範なスキームで海外直接投資とポー トフォリオ投資を呼び込む働きかけを評価します。租税恩赦の資金 流入は極めて大きくなる可能性があり、政府の資金調達ニーズの補 助に役立つと思われます。政府は、統治力を強化し1年以内に行わ れる中間選挙に先立ってその評価を高めることを念頭に、漸進的な 財政再建を実施することを選択しました。その判断は政治的に理に かなっていると考えます。経済成長の回復(基本ケースは+3.5%) により、債務のダイナミクスを安定化させるための時間が政府に与 えられるとみられます。中央銀行にとっては、極めて高いインフレ 率を目標の 17%に近い水準に引き下げることが重要課題となります。 問題は、おそらく来年の賃金交渉と、歪みを正常化するための継続 的な関税や補助金の修正の過程で顕在化すると思われます。政治的 には、野党内のより市場にとって好ましいグループがマクリ大統領 の政策を支持するであろうとみられます。200 億ドルの外貨建て債 務の発行は好意的に受け止められており、ソブリン・グローバル債 は現在適正な価格水準にあります。州債と地方債は、一部のユーロ 建て債とともに魅力的です。継続的な利下げ期待と強い為替を考慮 すると、高利回り通貨のエクスポージャーも魅力的です。 ブラジルとアルゼンチンとは対照的に、メキシコではマクロ経済の 背景がより強固である一方、政治力学が国にとって逆風になってい Page 14 2016 年第 4 四半期セクター見通し るようです。ペーニャ・ニエト大統領の人気は低く、彼の体制はレ イムダック政府と見られています。汚職と治安が 2018 年の選挙での 主要テーマとなると考えられています。より短期的な課題としては、 ペメックスの弱いファンダメンタルズ、原油価格見通しの不透明感、 米国の大統領選挙、FRB の金融政策に影響を受けた潜在的不安定感 などがあります。これらの要因が、メキシコの債券の今年のアンダ ーパフォーマンスの背景にあります。極めて堅実なしっかりと連動 する政策の枠組みが、これらのリスクを軽減します。来年に入ると、 経済活動の穏やかな上昇の中、マクロ経済のファンダメンタルズは わずかながら改善することが見込まれます。財政再建が優先政策で すが、いくつかのリスクを考慮して手綱が緩められる可能性があり ます。メキシコの強固な投資適格格付け「財政内容」は、政策立案 者にある程度の柔軟性を与えています。ペメックスの見通しは厳し いのですが、同社は必要な変更を実施しており、必要に応じて政府 による援助もあると PFIM は考えています。ペメックスのスプレッド、 メキシコペソ、現地通貨建て債券はすでに下振れリスクのほとんど を織り込んだ水準にあり、米国大統領選挙後には反発する可能性が あります。 ロシア訪問の主要な収穫は、現在の原油価格環境に直面したマクロ 経済的調整が、安定した財政および金融政策によって支えられ継続 していることを確認したことです。欠けているのは、競争力のある 経済と一層本格的な、特に中期的な成長刺激のための条件を設定す る強いコミットメントです。プーチン大統領の立場は極めて強固で、 2018 年春の大統領選挙で彼の権威に対していかなる挑戦も現出する 可能性は低いでしょう。クレジットのリプライシングが続くなか、 ソブリン債と準ソブリン債にはバリューが残っており、ロシアは時 機を見ながら新発債発行を行うと PFIM は予想しています。格付け機 関による最近の BB +格見通しの上方修正は、ロシアが投資適格国で あるという PFIM の長年の見解を確認するものです。 とそれぞれプラスになりました。長期物の課税対象地方債の第 3 四 半期のリターンは+0.66%、年初来では+13.09%となりましたが、と もに長期社債インデックスのリターンを下回りました。 米自治領プエルトリコは 7 月 1 日以降、一般財源保証債(GO)と一般 財源による返済が保証されている債務の元利払いで合計 8 億 700 万 ドル近くがデフォルト(債務不履行)となりましたが、さまざまな プエルトリコ債が第 3 四半期には上昇しました。これは同自治領の 財政収支に関して連邦政府による広範な監視を行う監視委員会の 7 人の委員を民主・共和両党から大統領が指名したことを発表したた めでした。 シカゴ市議会は、同市最大の年金制度への拠出金の財源確保のため の上下水道利用税の導入を承認しました。この税金は今後 5 年間に わたって段階的に導入される予定となっています。その後第 3 四半 期にシカゴ市の GO 債は上昇しましたが、これは同市が問題解決の ために行動を起こす意欲を示したためでした。イリノイ州では、州 政府の通常予算が議会で成立していないことが財政状況を引き続き 圧迫しているため、同州では手詰まり状態が続いていています。ム ーディーズでは、未払いの請求書の金額合計は 2016 会計年度末 (2016 年 6 月末)で 80 億ドル、2017 年度末では 140 億ドル以上にな ると推定しています。 需給環境は年末には改善するとみられますが、第 4 四半期初めには やや悪化しているため、ボラティリティが上昇するとみられます。 この資産クラスへの資金流入が好調だったことが過去 1 年間の投資 環境を支える要因となりましたが、第 4 四半期に予想される金利の 反転によってこのトレンドに変化が生じる可能性があるとみられま す。課税債相当利回りが魅力的であることから、免税債が値下りす るようなことがあれば、いずれも魅力的な投資機会になるとみられ ます。 投資家はプエルトリコの財政管理委員会の課題とスケジュールの進 展状況に関する声明と実績に注目することになるとみられます。さ らに、(同じくプエルトリコ監視・管理・経済安定化法(略称 PROMESA)の下で設立された)プエルトリコにおける経済成長に関す る議会のタスクフォースは、同自治区における経済成長を加速させ るための方法を示す報告書を年末までに提出することを求められて います。 見通し:強気。エマージング経済のファンダメンタルズは 改善を続けているとみられ、ハードカレンシー建て債券の スプレッド縮小とエマージング通貨の強さを支えていま す。経済状況が安定してきている国々では金利の引き下げ が予想され、現地通貨建て債券への強気な見通しをサポー トしています。 地方債 AAA 格の地方債は、残存期間が 10 年以上の銘柄が米国債をアンダ ーパフォームしました。30 年物の米国債に対する地方債の利回りレ シオは第 3 四半期初めの 87.4%から期末には 99.1%に上昇しました。 ミューチュアル・ファンドからの高水準の資金流入(第 3 四半期に ほぼ+170 億ドル、年初来では+500 億ドル)が続き、債券供給が対処 可能な水準(第 3 四半期に 1,100 億ドル、年初来で 3,340 億ドル) にとどまったにもかかわらず、市場金利の上昇によって第 3 四半期 の投資適格地方債のリターンはマイナス(-0.30%)になりました。ハ イイールド地方債のパフォーマンスは好調(第 3 四半期のリターン は+1.29%)でしたが、これはさまざまなプエルトリコ債が上昇を続 けた(同+6.75%)ためです。年初来リターンは投資適格地方債で +4.01%、ハイイールド債で+9.37%、プエルトリコ債では+15.68% PFIM では年金積立不足額に対する注目が高まると予想しています。 これは投資収益率が年金の予定運用利率をはるかに下回っているた めです。米国の大統領選挙の結果は税制改革のリスクを高める可能 性があるとみられます。課税対象地方債のパフォーマンスは投資適 格社債のパフォーマンス程度になると予想していますが、企業買収 の動きが続く場合にはアウトパフォームする可能性もあるとみられ ます。 Page 15 見通し:やや強気のスタンス。第4四半期初めには需給環 境が力強さに欠けることから、免税地方債の価格が圧迫さ れる可能性がありますが、どんな売り圧力によってでも、 価格が下落するようなことがあれば、魅力的な投資機会に なるとみられます。これは年末までには需給環境が好転す るとみられるためです。 2016 年第 4 四半期セクター見通し グローバル金利 レークイーブン・インフレ率は第 3 四半期末に 1.61%となり、期初 の水準を 14bps 上回りました。 グローバル金利の投資家は、第 3 四半期の大半の期間において中央 銀行のガイダンス発表を切望していたため、先進国の金利は比較的 狭い範囲内で推移しました。(9 月 20、21 日に)日銀の金融政策決 定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)が同時に開催され、日銀に よる金融操作の重点の変更が日本国債のイールドカーブのベア・ス ティープニング(弱気市場でのスティーブ化)につながる一方、FRB がドット・プロット(金利予想分布図)上の予想経路を引き下げた ことが米国債のイールドカーブのフラットニング化につながり、投 資家が待ち望んでいたボラティリティが生じました。 ECB は第 3 四半期中には主要な政策変更は行いませんでしたが、現 在 2017 年 3 月となっている資産買い入れプログラムの期限を延長 することを 12 月の政策理事会で決定すると PFIM では予想していま す。ドイツ国債は今四半期にも一定のレンジ内の動きにとどまって いますが、供給が全般的に少なく、イールドカーブの傾斜が比較的 大きいため、買い入れ期限が延長された場合には利回りには低下圧 力がかかるとみられます。投資家による利回り追求は続くとみられ、 ドイツ国債についてもイールドカーブの 10 年、15 年部分に低下圧 力が加わると PFIM では予想しています。 日銀が「総括的な検証」により金融政策の重点をイールドカーブの 傾斜にシフトする見込みであることがきっかけとなり、日本国債の イールドカーブは 9 月の最初の 2 週間で 20bps ベア・スティープニ ングしました。 このスティーブ化はその後月内に解消され、カーブ 上のインプライド・ボラティリティは積極的に売られました。日銀 はイールドカーブの最短期側から 10 年までの部分を管理しようと試 み、長期債については市場が中立的水準を決めることを容認すると 市場は考えています。これはイールドカーブをスティープ化しつつ インフレを誘発しようとする、日銀によるこれまでになく積極的な 試みです。 英国国債の利回りは現時点では高い印象ですが、PFIM では英国国債 は今後 G4(米国、ユーロ圏、英国、日本)諸国の国債市場の中で全 般にアンダーパフォームすると考えています。 日本国債の利回りがひとたび落ち着けば、20 年債がキャリー・ロー ルダウン戦略(金利を受け取ると同時に残存期間短縮による値上が り益も追求できる戦略)の最善の投資機会になると考えられます。 「長期国債の買い入れ」による資金供給オペレーションでの買い入 れ対象が 10 年債にまで拡大されことが、おそらく各銀行にイールド カーブ上の 20 年セグメントの買い入れ拡大も促すことになる可能性 があります。 米国債とドイツ国債のイールドカーブも 9 月最初の 2 週間にそれぞ れ 30bps と 23bps スティープ化しました。日銀金融政策決定会合と FOMC の後のフラット化の動きに伴い、米国のイールドカーブは先進 国市場では唯一期初よりも期末の方がフラット化しました。 今後についてみれば、FRB はフェデラル・ファンドレートの目標水 準を 12 月に引き上げると PFIM では予想していますが、他の条件に 変化がなければ、イールドカーブのリスクプレミアムが高いことか ら、米国でデュレーションを拡大する戦略に対して強気のスタンス を維持しています。米国債のリターンは第 4 四半期にはプラスにな ると PFIM では予想しています。 中期物のスワップ・スプレッドは第 3 四半期末には期初比横ばいと なりましたが、スワップ・スプレッド拡大(ワイドナー、対 LIBOR とのスワップではなく、対 OIS(翌日物金利スワップ))はキャリ ー獲得機会が魅力的であるため、引き続き PFIM が選好するポジショ ンの1つとなっています。 インフレ連動国債(TIPS)に対しては、ブレークイーブン・インフ レ率が期末にわずかに上昇したにもかかわらず、インフレ見通しは 引き続き落ち着いているため、PFIM では中立的な見方をしています。 5 年物のブレークイーブン・インフレ率は期末には 1.49%となり、 2016 年 7 月 1 日の 1.45%からわずかに上昇しました。10 年債のブ 見通し: 強気。第3四半期の大半で懸念材料となっていた 金融政策の不確実性がある程度解消されたため、先進国の 国債市場の特定の分野が魅力的とみられます。具体的に は、残存期間が20年程度の日本国債、米国では長期国債と スワップ・スプレッド拡大(ワイドナー)、ドイツ国債の イールドカーブの10年から15年部分などが魅力的とみてい ます。 モーゲージ債 エージェンシー・モーゲージ担保証券(MBS)は第 3 四半期に米国債 をアウトパフォームして、スワップ・レートに対するスプレッドも 堅調に縮小しました。同期間中のモーゲージ債のトータルリターン は 0.60%と、残存期間が同程度の米国債のトータルリターンを +64bps 上回りました。年初来のモーゲージ債のトータルリターンは 3.72%となりました。 モーゲージ債のパフォーマンスは、主として銀行や米国外の投資家 による並外れた規模の購入を含む力強い需要に支えられたもので、 そのため、スプレッドは縮小して 2015 年末の水準に戻りました。第 2 四半期末近くに住宅ローン金利が低下したことを受けて予想され ていたようにモーゲージ債のプリペイメント(期限前返済)が第 3 四半期中に増加しました。同様に FRB は保有するモーゲージ債のプ リペイメントが増加したため、モーゲージ債に対する再投資を増加 させました。第 3 四半期末時点で、住宅購入者に貸し付ける際の住 宅ローン金利が最近の水準から大幅に下落するようなことがない限 り、プリペイメント速度のピークは過ぎたと PFIM では考えています。 住宅ローン借り換え促進プログラム(Home Affordable Refinance Program)の適用期限が、ローン・トゥ・バリュー(LTV)の高い借り 手のために新たに導入される借り換えプログラムに接続するために、 2017 年 10 月まで延長されましたが、この延長がプリペイメントの 動向に大きく影響することはないとみられます。 モーゲージ債は現在のボラティリティの低い市場環境から引き続き 恩恵を受ける可能性もありますが、実際には第 4 四半期にはボラテ ィリティが上昇する可能性があります。これは FRB が利上げを実施 Page 16 2016 年第 4 四半期セクター見通し する可能性があり、住宅ローン金利の上昇にもかかわらずモーゲー ジ債の純供給量が高水準であり、秋から冬にかけての季節性による 変動が見込まれるためです。しかし、仮に金利が上昇した場合には、 利回りに基づいて投資している投資家からの追加的な買いが入る可 能性があります。 ポートフォリオの内訳では、FHLMC(フレディマック、連邦住宅金融 抵当公庫の発行した債券)と GNMA2(ジニーメイ 2、政府抵当金庫の 発行する債券のうち複数の発行体のモーゲージ・プールから組成し たパススルー証券)から FNMA(ファニーメイ、連邦住宅抵当公庫が 発行した債券)に戦術的に乗り換えることを選好します。PFIM では 中期債よりも 30 年物の新発債を選好し、取引形態では、モーゲー ジ・プールを指定した債券と比較して、TBA(売買の際に、受渡しの 対象となるモーゲージ・プールは指定せずに行う取引形態)取引は 減らしました。 見通し: PFIMは他のスプレッド・セクターに対してモー ゲージ債セクターをアンダーウェイトするべきという見方 をしています。 証券化商品 さらに、債券評価にとっての不確実性の原因となってきた表明・保 証(レブワラ)問題についての合意に関しては、支払いが行われる または少なくとも、問題が最終的に解決される見通しとなっていま す。これはスプレッドにとってはプラスになるとみられます。例え ば、カントリーワイドの場合は第 2 四半期に和解金が支払われたた め、スプレッドは大幅に縮小しました。 PFIM では現在のスプレッドの水準は、好調な需給環境と依然として 改善を続けているファンダメンタルズに支えられているため、維持 可能と考えています。しかし、相対価値の視点からみると、非エー ジェンシー住宅モーゲージは、CLO(ローン担保証券)やエソテリッ ク ABS(あまり証券化が一般化していない対象資産から組成した資 産担保証券)などの他の証券化商品と比較するとますます魅力が低 下しているようにみられます。米国以外では、英国の RMBS は第 3 四 半期に大幅に上昇しました。これは RMBS の供給が限られていること、 イングランド銀行の量的緩和、Aire Valley UK RMBS 信託(ブラッ ドフォードおよびビングリー)が残高 30 億ポンドの全額を最近償還 したことが原因です。Brexit やそれに伴う英国の住宅市場の減速の 影響は当面は抑制されているようですが、これまでに見られたのは、 長引く可能性の高い交渉の序章にすぎません。それにもかかわらず、 英国の RMBS の相対価値はかなり高いとみられます。ただし、問題は 流動性と入手可能性が低いことです。 ABS:米国の消費者および関連資産のクレジット・ファンダメンタル 証券化商品は第 3 四半期にも、第 2 四半期に始まったトレンドを維 持しました。スプレッドは、年内は一定レンジ内で推移するか縮小 すると予想しています。これは先進国市場では全般的に利回りが低 いか、マイナスにさえなっているため、米国のスプレッド商品が引 き続き魅力的と考えられるためです。 ズに対して PFIM は引き続き強気です。例えば、クレジットカードの デフォルト率は過去 10 年間で最低の水準にあります。このセクター で PFIM が推奨するポジションはワンメインのようにキャッシュフロ ー信用保険引受に重点的に取り組んでいる定評のある貸手企業から 発行された債券です。 こうした需給環境は引き続きスプレッドの安定には追い風となり、 特に高格付けの中期物証券化商品、とりわけ AAA 格の CMBS(商業用 不動産モーゲージ証券)と CLO(ローン担保証券)のスプレッドは 縮小する可能性があると予想しています。証券化商品セクター全般 の供給が低水準であることもスプレッドの安定に寄与してきました。 非エージェンシー住宅モーゲージ:住宅市場は引き続き非常に好調 で、中古住宅販売戸数は金融危機後の最高水準となっています。在 庫は極めてタイトで、住宅取得能力は過去の推移と比較すると依然 として高水準です。住宅ローンのアベイラビリティ(利用可能性) は、金融危機前の基準と比較すると依然として限定的ですが、貸出 基準は十分に効果的な緩和策が実施される余地があります。金融危 機後に組成されたモーゲージ債は、質の高い借り主への債権から組 成されているため、住宅市況軟化に伴う投げ売りの可能性は抑制さ れています。 また AAA 格のレンタカーABS はスワップ(s)+135bps で投資価値が あるとみています。この ABS はレンタカー会社が倒産した場合に、 悪影響を受けないための強い構造的なリスク回避機能を備えていま す。マーケットプレイス貸出或いはフィンテック(Fintech)につい ては、新聞などで盛んに報道されていますが、依然として分析・検 討中です。これは過去の実績のデータが限定的で、事業戦略も変化 が大きいため、担保資産のパフォーマンスの前提を計算することが 困難なためです。 CMBS: CMBS(商業用不動産モーゲージ証券)のスプレッドは第 3 四 半期初めには+125bps でしたが、その後+100bps まで縮小し、現在は +115bps となっています。PFIM では、他のデュレーションの長い代 替投資対象に比べて、AAA 格 CMBS 債の投資価値は高いと引き続き考 えており、これらの AAA 格という格付けは今後も安定的であると予 想しています。 スプレッドは第 3 四半期に縮小し、現在では金融危機後の最小水準 にあります(2006/2007 年に発行されたシニア・レガシー債で LIBOR +200–275 bps)。需給環境を支配しているのは、この資産クラスで は毎年残高の 10-15%が部分償還されていることです。さらに、こ の資産クラスはロング・ポジションのみに投資する通常(ロング・ オンリー)の運用会社からの需要が強く、証券化商品市場の他の部 分ではリスク要因になっていると PFIM ではみているヘッジファンド 業界からの圧力からはあまり悪影響を受けないと言えます。 コンデュイットの 2016 年の発行額は 450 億ドルと予想していますが、 これは 2015 年の発行額を 35%から 40%下回っています。供給が減 少したことがスプレッドにはプラスに働いています。概して、商業 用不動産ローンのファンダメンタルズは安定的で、デット・サービ ス・カバレッジ・レシオ(元利金返済前キャッシュフローの、元利 金支払い所要額に対する倍率)とキャップレートのプレミアムは過 去の基準と比較して依然として、妥当または大きい状態にあります。 PFIM ではホスピタリティ業界(ホテル、娯楽施設などで、景気減速 に比較的敏感であるという特徴があります)の比率が高まっている Page 17 2016 年第 4 四半期セクター見通し ことと、小売業界の変化(例えば、メーシーズ百貨店の閉店の動き など)を懸念しています。とはいえ、これらの問題は特定の単一資 産/借り手(SASB)の案件または CMBS のローン・プールのうちのメザ ニン部分にとって特に懸念材料となるものであると考えられます。 メザニン債は第 3 四半期に反発しましたが、これらは依然としてヘ ッジファンド業界の不振の悪影響を受けやすく、特定の不動産種類 の値下がりや特定分野でのローンのデフォルトの影響を受けるため ファンダメンタルズが不透明な点を考慮すると、メザニン債のリス クとリターンの関係は有利とは言えないと考えています。 CLO: PFIM では AAA 格 CLO(LIBOR(L)+140-160bps)は引き続き 債券セクターの中で最も魅力的な投資対象であるという見解を再確 認します。 AAA 格 CLO には、35%以上の信用補完があり、セクター分散も効い ているため、最近のエネルギー、コモディティ、小売りセクターに 関する信用上の懸念に対する強力な保護となっています。 第 3 四半期中に AAA 格のスプレッドは約 10bps 縮小しました。米国 の CLO の発行額は 420 億ドルと、前年同期比で約 50%減少しました。 一方、欧州の CLO の新規発行額は 101 億ユーロとなり前年同期に近 い水準でした。 一流の管理会社に管理されている CLO に対する日米の銀行、保険会 社、資産運用会社などからの需要は今後も堅調を維持すると PFIM で は考えています。さらに 3 カ月 LIBOR が上昇したため、現在の利回 りはブルームバーグ・バークレイズ米国総合インデックスや一部の 投資適格社債指数の一部を上回っているため、従来型の「利回り」 志向の投資家も購入を開始しました。一流の管理会社に管理されて いる AAA 格の利回りは L+130-145bps で推移し、市場は引き続き一定 のレンジ内での変動になると PFIM では予想しています。 ファンダメンタルズ面では、銀行貸し出し市場の基調的な信用状況 は比較的安定していて、コモディティ関連以外のセクターでのデフ ォルト率が急上昇することはないとみています。 リスク・リテンション規制が 12 月 24 日から導入される予定ですが、 この規制によって管理会社の統合が徐々に進み、資本力があり、担 保マネジャーとしての能力がある管理会社のみが残ることになると PFIM では予想しています。というのは、これまでにリスク・リテン ションのために調達された資本は管理会社固有のものであるためで す。リスク・リテンションが発行の阻害要因になることはないと予 想しています。 見通し: PFIMでは最優先トランシェの債券に対して非常に 強気の見方を維持しています。日本と欧州で金利がマイナ スになっていることによって、投資家が高格付け債でより 高い利回りを求めているため、AAA格CMBSとCLOのスプレッ ドは縮小する可能性があります。GSEクレジット・リスク・ メザニン・キャッシュフローに対して強気の見方を維持し ています。一方、CMBSやCLOのメザニン・トランシェに対し てネガティブです。 Page 18 2016 年第 4 四半期セクター見通し 留意事項 1(原本の Notice を翻訳) データの出所(注記のある場合を除く):プルデンシャル・フィクスト・インカム 2016 年 10 月現在 プルデンシャル・フィクスト・インカムは、1940 年投資顧問法に基づき米国で登録している関連投資顧問会社であるPGIM インクおよびプルデンシャ ル・ファイナンシャル・インクを通して事業を行っています。欧州および一部のアジアの国においては、プルデンシャル・フィクスト・インカムは PGIM フィクスト・インカムとして事業を行っています。プルデンシャル・フィクスト・インカムはニュージャージー州ニューアークを本社とし、次の 事業も含みます。(i) ロンドンのPGIM リミテッドにおけるパブリック債券部門、(ii) 東京のプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジ ャパン株式会社(PIMJ)、(iii) シンガポールのPGIM(シンガポール)プライベート・リミテッド。プルデンシャル・ファイナンシャル・インクは、 英国を本拠地とするプルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 本資料は、経済状況、資産クラス、有価証券、発行体または金融商品に関する資料作成者の見解、意見及び推奨を示したものです。本資料を当初の配 布先以外の方(当初の配布先の投資アドバイザーを含む)に配布することは認められておりません。またプルデンシャル・フィクスト・インカムの事 前の同意なく、本資料の一部または全部を複製することや記載内容を開示することを禁止いたします。本資料に記載されている情報は、現時点でプル デンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報の正確性、完全性、および情報が変更されない ことを保証するものではありません。本資料に記載した情報は、現時点(または本資料に記載したそれ以前の日付)における最新の情報ですが、予告 なく変更されることがあります。プルデンシャル・フィクスト・インカムは情報の一部または全部を更新する義務を負うものではありません。また、 情報の完全性または正確性について明示黙示を問わず何ら保証または表明するものでなく、誤謬についての責任を負うものでもありません。本資料は 特定の証券、その他の金融商品、または資産運用サービスの勧誘を目的としたものではなく、投資に関する判断材料として用いるべきではありません。 どのようなリスク管理技術も、いかなる市場環境においてもリスクを最小化または解消できることを保証することはできません。過去のパフォーマン スは将来の運用成績を保証するものではなく、また信頼できる指標となるものでもありません。投資は損失となることがあります。本資料に記載され ている情報や本資料から導出した情報を利用したことにより(直接的、間接的、または派生的に)被り得るいかなる損失ついても、一切責任を負いま せん。プルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関係会社は、それぞれの自己勘定を含め、本資料で示した推奨や見解と矛盾する投資判断を 下す可能性があります。 本資料はそれぞれのお客様の置かれている状況、投資目的、あるいはニーズを考慮しておりません。また、特定のお客様もしくは見込み客に対して特 定の証券、金融商品、または投資戦略を推奨するものでもありません。いかなる証券、金融商品、または投資戦略についても、これらが特定のお客様 もしくは見込み客にとって適切であるかどうかに関する決定は下しておりません。本資料に記載された証券または金融商品についてのご判断はご自身 で行ってください。 利益相反: プルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社が、本資料で言及した有価証券の発行体との間で、投資顧問契約や他の取引関 係を結ぶ可能性があります。時にはプルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社や役職員が、本資料で言及した有価証券や金融商品を ロングもしくはショートするポジションを保有する可能性、およびそれらの有価証券や金融商品を売買する可能性があります。プルデンシャル・フィ クスト・インカムの関連会社が、本資料に記載する推奨とは無関係の異なる調査資料を作成して発行することがあります。営業、マーケティング、ト レーディングの担当者など、本資料作成者以外のプルデンシャル・フィクスト・インカムの従業員が、本資料に表示する見解とは異なる市場に関する コメントもしくは意見を、口頭もしくは書面でプルデンシャル・フィクスト・インカムのお客様もしくは見込み客に提示する可能性があります。利益 相反もしくはそのおそれについて、詳しくはプルデンシャル・フィクスト・インカムのフォーム ADV第2A 部をご覧ください。 情報提供については、英国では、PGIM インクの間接子会社である PGIM リミテッドが担当しています。PGIM リミテッドは英国金融行動監督機構(FCA) の認可を受けており、FCA の規制が適用される他(登録番号 193418)、欧州経済領域(EEA)内の様々な法域でも正式に認可を受けています。本資料 は PGIM リミテッドが FCA の金融行為規制ソースブックに基づき、機関投資家や適格機関投資家向けに作成したものです。一部のアジア諸国では、シ ンガポール金融管理庁(MAS)に登録し、その認可を受けた同国の投資運用会社である PGIM(シンガポール)プライベート・リミテッドが担当してい ます。日本では、国内の登録投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社が担当しています。香港では 香港証券先物取引委員会に登録しているプラメリカ・ファンド・マネジメント・リミテッドが証券先物条例スケジュール 1 パート 1 で定義された機関 投資家を対象に提供を行っています。PGIM、Prudential 、PGIM のロゴ、およびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクお よびその関係会社のサービスマークであり、多数の国・地域で登録されています。 © 2016 Prudential Financial, Inc. and its related entities. 各セクターのパフォーマンスは下記インデックスを参照しています: 米国投資適格社債:ブルームバーグ・バークレイズ米国社債インデックス 欧州投資適格社債:ブルームバーグ・バークレイズ欧州社債インデックス(ヘッジなし) 米国ハイイールド債:BofA メリルリンチ米国ハイ・イールド・インデックス 欧州ハイイールド債:メリルリンチ欧州通貨建てハイ・イールド・インデックス 米国優先担保付きローン:クレディ・スイス・レバレッジド・ローン・インデックス 欧州優先担保付きローン:クレディ・スイス・ウエスタン・ヨーロピアン・レバレッジド・ローン・インデックス:(全ての通貨に対するヘッジ なし) 米ドル建てエマージング・ソブリン債:JP モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル・ディバーシファイド 現地通貨建てエマージング債(ヘッジなし): JP モルガン国債インデックス - エマージング・マーケット・グローバル・ディバーシファイド・ インデックス Page 19 2016 年第 4 四半期セクター見通し エマージング社債:JP モルガン社債エマージング・ボンド・インデックス・ブロード・ディバーシファイド エマージング市場通貨:JP モルガン・エマージング・ローカル・マーケット・インデックス・プラス 地方債:ブルームバーグ・バークレイズ米国地方債インデックス 米国国債:ブルームバーグ・バークレイズ米国国債インデックス MBS:ブルームバーグ・バークレイズ米国 MBS – エージェンシー固定金利インデックス CMBS:ブルームバーグ・バークレイズ CMBS: ERISA 適格インデックス 米国総合インデックス:ブルームバーグ・バークレイズ米国総合インデックス インデックスの出所:ブルームバーグ・バークレイズ・インデックス ブルームバーグ(BLOOMBERG)は、ブルームバーグ・ファイナンス・エル・ピー (Bloomberg Finance L.P.)の商標およびサービスマークです。バークレイズ(BARCLAYS)は、ライセンスに基づき使用されているバークレイズ・バ ンク・ピーエルシー(Barclays Bank Plc)の商標およびサービスマークです。ブルームバーグ・ファイナンス・エル・ピーおよびその関係会社(以下 「ブルームバーグ」と総称します。)またはブルームバーグのライセンサーは、ブルームバーグ・バークレイズ・インデックス(BLOOMBERG BARCLAYS INDICES)に対する一切の独占的権利を有しています。 2016-3012 Page 20 2016 年第 4 四半期セクター見通し 留意事項 2 本資料はプルデンシャル・フィクスト・インカムが作成した"4th Quarter Outlook"をプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株 式会社が翻訳したものです。 本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。 本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日時点でのプルデンシャル・フィクスト・インカムの見解であり、事前の通知なしに 変更されることがあります。 本資料は、プルデンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した各種情報源から入手した情報に基づき作成していますが、情報の正確性を 保証するものではありません。プルデンシャル・フィクスト・インカムは、米国 SEC 登録投資顧問会社である PGIM インクのパブリック債券運用部門で す。 原文(英語版)と本資料の間に差異がある場合には、原文(英語版)の内容が優先します。詳細は原文(英語版)をご参照ください。 “Prudential”、“PGIM”、プルデンシャル ロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサー ビスマークであり、多数の国・地域で登録されています。プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社は、世界最大級の金 融サービス機関プルデンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 392 号 加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、 一般社団法人 投資信託協会 PIMJ201610260794 原文(英語版)につきましてはウェブサイト http://www3.prudential.com/fi/pdf/prudential-fixed-income-market-outlook-4Q16.pdf をご参照ください。 Page 21
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