議事録 - NIRA総合研究開発機構

議事録 詳細版
NIRA フォーラム
「次世代企業トレジャリーマネジメントへの展望」
−GE のグローバル・キャッシュマネジメントに学ぶ−
平成 18 年 1 月 24 日(火) 16:00−18:30 開催
◆ 会 場 ◆ ホテル ルポール麹町(3F マーブル)
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-4-3
◆ 主 催 ◆ 総合研究開発機構(NIRA)
◆ 協 力 ◆ 企業財務協議会・日本資本市場協議会・GE・スイフトジャパン
NTTデータ・スタンダードチャータードバンク
進行次第
16:00
開会のごあいさつ
塩谷
16:05
英 総合研究開発機構 理事長
問題提起: 「わが国企業キャッシュ・マネジメントの課題」
犬飼 重仁 総合研究開発機構 主席研究員
16:20
ケース・スタディ: 「GE のグローバル・キャッシュマネジメント戦略」
Paul Burstein GE 財務本部マネージング・ディレクター
17:00
Q&A
17:20
スピーチ: 「企業トレジャリーマネジメントと標準的メッセージツールの趨勢」
吉見 亨 スイフト ジャパン Vise President, Commercial Division
17:40
スピーチ: 「グローバリゼーションとIT経営」
ビジネスプロセスとキャッシュの流れを可視化するIT経営のトレンド
村上 雅春 NTTDATA 決済ソリューション事業本部 eB ビジネスユニット eB 商品企画担当 部長
18:00
パネルディスカッション:
「クロスボーダー・トレジャリーマネジメントが日本企業ではなぜうまくいかないか?」
伊藤(GE)・小森(スタンダードチャータードバンク)・村上(NTTD)・大山(三井住友銀行)・吉見(SWIFT)・犬飼
18:30
全体 Q&A
18:40
閉会のごあいさつ
江崎 芳雄 総合研究開発機構 理事
開会のごあいさつ
犬飼 本日は、ご多用中のところ、皆様お運びを頂きまして誠にありがとうございます。
私は、本日の進行役を務めさせて頂きます NIRA 主席研究員の犬飼重仁と申します。
どうぞよろしくお願い致します。
本日は、「次世代企業トレジャリーマネジメントへの展望」と題して、2 時間強にわたり
フォーラムを行わせて頂きます。それでは最初に NIRA の理事長の塩谷 英(しおや
たかふさ)よりご挨拶を申し上げます。
塩谷理事長 本日は NIRA フォーラムにご参加頂きまして、誠にありがとうございます。
主催者の NIRA を代表致しまして、一言ご挨拶を申し上げます。
NIRA では、企業財務協議会および日本資本市場協議会と協同致しまて、「東アジ
ア地域金融市場の一体性確立に向けての戦略ビジョン」の研究を行っておりますが、
その分科会として、アジア域内の企業グループの競争力のある財務・金融活動のた
めの「クロスボーダー・キャッシュマネジメント研究」を実施致しております。このたびは、
その研究の一環と致しまして、米国のジェネラルエレクトリック社ほかの協力を得まし
て、公開 NIRA フォーラムを開催させて頂くことと致しております。
NIRA では、公共のシンクタンクと致しまして、知恵の交流の場をつくるべく、専門家、
実務者などいろいろな方に集まっていただいて、それぞれ時宜を得たテーマでフォ
ーラムを実施しておりますが、今回は特に優れた企業戦略、あるいは企業財務活動
の手本と致しまして常に注目を集めております GE のご専門の方々より、じっくりとお
話をお聞きできますことは、大変大きな喜びでございます。
また、本日は 5 人のパネリストをお招きしておりますが、それぞれ企業や金融機関
などの現場で実際にクロスボーダーのトレジャリーマネジメントの開発に携わってこら
れた方や、海外などで最先端の取り組みをされてこられた方など、ご経験豊富な第一
線の専門家、実務家の方々ばかりでございます。将来に向けまして、皆様がそれぞ
れ携わっておられる企業・団体の財務管理業務のあり方やデザインを考えていかれ
る上で、本日の議論がお役に立てば誠に幸いと考えているところでございます。
また、本日ご登壇頂く方々は、全員がボランティアでご参加いただいておりますほ
か、GE とスイフト ジャパンの両社からは、本日のフォーラムの運営費の一部を援助
頂きましたことを申し添えさせて頂きます。どうもありがとうございました。
犬飼 ありがとうございました。 それでは、引き続きまして、私 犬飼のほうから簡単に
問題提起をさせて頂きますが、その前に、お手元の資料の確認をお願い致します。
まず、一枚紙で、フォーラムの次第と、裏側にパネルディスカッション参加者のプロ
フィール紹介がございます。
(http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/170/172/siryo/01.pdf)
続いて、GE のご説明用のパワーポイントを印刷したペーパーです。その最後のペ
ージには用語解説をつけております。この用語解説は、スイフト ジャパンの吉見様の
ご好意でお作り頂いたものです。
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(http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/170/172/siryo/02.pdf)
次に、欧州証券決済制度調査ミッションの「議事録(GE」というものが付けてござい
ます。これは 5 年ほど前(2000 年 12 月)に、企業財務協議会が欧州調査ミッションで、
フランス訪問を致しまして、その折にパリの GE フランスの方からお話をお聞きしたそ
のメモでございます。これは後程ゆっくりご覧を頂きますと、今日のお話と関連がござ
いますので、ご興味を持って頂けるのではないかと思います。
(http://www.enkt.org/katudou/02_02_08.html)
その下が、スイフト ジャパンの吉見さんのご講演のパワーポイントの印刷ペーパー
です。
(http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/170/172/siryo/03.pdf)
その下が NTT データの村上さんのパワーポイントの印刷ペーパーです。
(http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/170/172/siryo/04.pdf)
最後に、少し分厚い参考論文集のペーパーですが、本日の参考資料として、4 本
ほど論文をつけさせて頂いた内容のものがございます。
(http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/170/172/siryo/05.pdf)
そして最後に、ピンク色の紙のアンケート用紙です。これはフォーラムの最後にお
書きいただければ幸いです。
(アンケート集計結果を本議事録の最後に添付)
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問題提起:「わが国企業キャッシュ・マネジメントの課題」
犬飼 重仁 総合研究開発機構 主席研究員
犬飼 それでは、問題提起に移らせて頂きます。私のペーパーは、特にパワーポイン
トを使っておりません。今お話し申し上げました、お手元の参考論文集の最初のペー
パーである、私の論文(クロスボーダーを含むわが国企業キャッシュ・マネジメントの
課題と展望)に従いまして、問題提起を行わせて頂きたいと思います。
まず一番重要なポイント(論文 2 ページ目参照)ですが、米国、欧州では、大手企業
のトレジャリーセンター、これはインハウスバンクというふうに言ってもいいと思います
が、これが本物の銀行の持つ機能とほぼ同等の水準のサービスを、グループの企業
に提供・供給することが可能になりつつあるということです。こういう、銀行と同等の機
能を、日本の一般の企業も自ら持ちたいというのが最近の大手の企業の財務の願望
ということになっています。
しかし、日本と東アジアでは、インハウスバンクの機能の理解は非常に表面的なも
のではないかと一般的に思われます。日本とアジア各国の政策も、それを理解し、支
持するというところまではまだ行っておりません。
欧州統合がもたらした副産物の価値というのは非常に大きいのではないか。ヨーロ
ッパでは、企業がイノベーションを発揮しやすい制度として、企業の取り組みを後押し
する、そういう体制ができつつあるのではないかと思っております。
たとえば、クロスボーダーのキャッシュ・マネジメントのネックとなっています親子間の
ローンにかかわるウィズホールディングタックス(源泉徴収税)の撤廃を可能にするよう
な 2 国間租税条約がない。他地域に比べて劣後する日本と東アジアの企業財務にか
かわる制度的制約、こういうものの改善・解消に向けて、日本とアジアの官民を挙げて
取り組むべき時期が、今来ているというふうに考えています。
また、それと同時に、民間企業のほうでも、あるいは金融機関のほうでも、日本とア
ジアの企業・金融機関は、GE など、先進的な企業グループの取り組みに学びながら、
高度な企業グループのクロスボーダー・キャッシュマネジメントが実現できるように、取
り組みを本格化させていかなければならないのではないかと思っています。
そのためには、企業にとって、グループ内の明確な目標設定、あるいは関連システ
ムを含むグループ内の体制整備が不可欠です。こういうものがなかなかまだできてい
ないというのが現状です。
次に(論文の 3 ページの上参照)指摘したいのは、キャッシュ・マネジメントの目的と
いうのは一体何だろうということです。一言で言うと、「会社のお金の部分均衡から全
体最適への転換」です。Treasury Management とか Liquidity Management という言葉
が出てまいりますが、その意味においてほぼ同意ではないかと考えています。分かり
やすい言葉で言うならば、「お金をこき使う、そしてこき使える環境をつくる」ということ
に尽きるのではないかと思います。
非常に大きく捉えて言いますと、企業グループ全体の運転資金(Working Capital=
アイドルマネーを含む)を、流動性リスクを上昇させずに最小化する。それによって資
本コストとリスクを最小化する。これがキャッシュ・マネジメントの極意というか、核心と
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いうことではないかと思います。
続いて(論文の 3 ページの下から 4 ページの上参照)申し上げたいことは、企業のキ
ャッシュ・マネジメントの現状は、多くの企業というのは、国内については邦銀依存で
あるということです。しかし限界的で、依然プリミティブな段階ではないか。クロスボー
ダー・マルチカレンシーのキャッシュ・マネジメントは、ごく一部、先進的な大手企業の
例外を除いては、わが国ではほとんど手つかずの状態にある。
ここで問題になるのは、財務部門だけではキャッシュ・マネジメントはやりにくいとい
うことです。企業内力学の問題がある。やはり多くの会社では、まだトップマネジメント
に報告できる段階にない。そのキャッシュ・マネジメントにかかわる問題をトップが承知
していない。あるいは、一部の企業の例外を除きまして、トップダウンでそれを推進す
るような段階には、なかなかない。やはり現在のように金利が低い状況では、キャッシ
ュ・マネジメントをやってもあまりメリットがない。コスト削減に直接結びつきにくいという
のが、現状ではないかと思います。ただ、金利も今後上がってまいりますし、いつまで
もそういう状況が続くわけではない。
それと、「連結決算あってもなお、連結経営への道遠し」と書かせていただいていま
すが、連結経営推進のためのグループ内の統一的・実践的な対応方針がなかなか
分かりにくい。個々の子会社・関係会社のガバナンスのあり方が不明確ということもあ
ります。
日本では、最近、司法制度改革の目玉として、たとえば商法から会社法への大幅な
見直しが行われていますが、依然として単体基準が前提で、連結グループ単位の思
考が行いにくい。実際、企業集団としての法制化への取り組みはこれからの課題では
ないかと思います。海外のグループ会社のこととなるとなおさら難しいという問題があ
ります。それと、先進的なシステムというものがあまり知られていないということもあろう
かと思います。
なお、ここで言っているキャッシュ・マネジメントについては、営利企業にとっての問
題というだけではなくて、実は本日の話題ではありませんが、公的なセクター、中央省
庁、地方自治体、それらの関連の公営企業等々、そういう公益的な団体等も、民間企
業と同等か、それ以上のキャッシュ・マネジメントと財務リスクマネジメントの問題を実
は抱えているのではないかと思われます。
さて、続いて(論文 6 ページ参照)、日本企業のキャッシュ・マネジメントの発展段階
ということですが、国内は、金融子会社によるグループ企業との資金の貸借、プリミテ
ィブな資金集中と相互融通という段階にある。そして、ドル建てのグループ CMS(Cash
Management System)は外銀を基本的に利用していますが、依然として限界的な段階
にあるということです。
CMS・LMS(Liquidity Management System)をめぐる外部環境(7 ページ)ですが、こ
れまでは、外部環境は追い風ではなかった。CMS への関心自体は、一般的な関心と
しては高いのですが、それの高度化のための優先順位というのは、なかなか高くなら
ないということです。
制度的制約(論文の 8 ページ、9ページ参照)ということでいくつかお示ししておりま
すが、特にクロスボーダーを前提にしますと、各種の税制や規制の存在があり、クロス
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ボーダーのキャッシュ・マネジメント推進へのチャレンジを大変に困難なものにしてい
ます。特にアジアでそれが大きいということです。
租税条約上の問題、付加価値税、過小資本税制、印紙税、子会社の低税率問題、
移転価格税制、外為法、中央銀行規制等々、いろいろなものが存在する。クロスボー
ダーについては、日本から見ると、アジア各国の子会社・関連会社を、グループ内の
キャッシュ・マネジメントの対象に加えるということは、非常に困難な状況にあると思わ
れます。
それに対し、EU(ヨーロッパ)の状況(論文の9ページ参照)を見ますと、今申し上げ
たようなアジア、日本の状況に対比すると、まったく異なる状況にあります。これは日
本とアジアにとって非常に大きな問題ではないかと思います。そういう問題自体が今
まであまり議論されてこなかったということが問題ではないか。ヨーロッパでは、地域の
市場と企業の競争力を高めるために、障害となる制約をどんどん取り払っているので
はないかという印象を、私自身は持っています。
次に、CMS=キャッシュ・マネジメントの種類(10 ページ)ということですが、簡単に言
ってしまうと、キャッシュマネジメントサービスの種類は、(1)資金が実際に動く Cash
Concentration、そして(2)資金は実際に動きませんが、ひとつの銀行を起用して、そ
の銀行の中で資金の「余剰と不足(凸凹)」を調整する Notional Pooling、こういうもの
に大別できるかと思います。この後、これについての詳しいお話が出てまいりますの
で、詳しくは申し上げません。
いずれにしても、日本ないしアジアの状況の下では、欧米系の銀行が開発したテク
ニックというものも使いにくい状況にあります。欧米を中心に、欧米系の銀行の先進的
なシステム、対応というのは進んでいるのではないかと思われます。
その後ずっと飛ばさせて頂きまして、ヨーロッパの参考例ということで若干触れさせ
て頂きます。
Trema というパッケージソフトについて、言及(論文の 16 ページ参照)したいと思い
ます。スウェーデン生まれのパッケージで、セルサイドとバイサイドの両方、全世界の
金融業界が利用して、同時に企業財務向けにも使う、そういう高度な統合的な金融
ERP である Trema という製品が存在する。Trema の宣伝をしているわけではないので
すが、その Trema のキットは、通常のパッケージとして個社に導入されるだけでなくて、
欧州のある銀行は ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)として、比較的小
規模の銀行など金融機関に対して、さらに簡便で迅速で低コストのソリューションを
Web ベースで提供しているという状況もありまして、日本の現状との対比において、ヨ
ーロッパの金融財務関連 IT インフラの充実ぶりというのは大変すごいものがあるなと
感じます。日本ではなかなか知られておりませんが、そういう状況もあります。
冒頭述べましたように、一般の企業が、基本的に銀行と同じレベルか、あるいはそ
れ以上の密度でお金のマネジメントをしていく、そういうものが可能になる制度と IT の
インフラを持つ、そういうことができる状況が欧米にはあるということで、非常に画期的
なことではないかと思います。
論文をご覧頂きますと、CMS・LMS 導入前のイメージ(論文 17 ページ参照)というこ
とで絵を描いております。日本企業グループは、グループのキャッシュ・マネジメント
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を行う場合にも、バラバラになっていて、インテグレーションがないという状況です。
CMS・LMS 導入前のイメージ
次に、「T+0」の電子コマーシャルペーパーを、キャッシュ・マネジメントにどう使うか
(論文の 20 ページ)というところが、将来の日本企業にとってのひとつの核になるとこ
ろですが、たとえば欧州における GE は、フランスのフレンチ CP を利用して、キャッシ
ュ・マネジメントの高度化に役立てているということがあります。先程申し上げた GE パ
リ訪問の議事録(http://www.enkt.org/katudou/02_02_08.html)も別途ご参照頂きた
いのですが、実は 2003 年から、日本においても、フレンチ CP や USCP と同じように、
ペーパーレスの CP システムが可能になりまして、基本的には電子 CP をキャッシュ・
マネジメントの高度化に使うことが可能になったということが言えます。
ここで、以下の2つの図(論文の 21 ページ参照)は、企業財務トータル・ソリューショ
ンを導入した後のイメージは、このような感じになるのではないかということを示してお
ります。
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企業財務トータル・ソリューション/日々の資金繰りへの電子 CP 活用
先程申し上げた Liquidity Management、Treasury Management、Risk Management、
Cash Management、そういうものが一体的に行われるということです。そして、それに
はコマーシャルペーパー、すなわち、「T+0」の電子 CP が非常に重要な役割を果た
すということです。
最後に、一応トータル・ソリューションとしての LMS が完成したイメージ(論文 24 ペー
ジ参照)ということで、次のような絵を、描かせて頂きました。
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トータル・ソリューションとしての LMS
トータル・ソリューションができるようになった場合にはどんな感じになるかというと、こ
れからお話を頂く GE モデルのようなものを想定したらいいのではないかと思います。
この後のお話が大変楽しみですが、われわれ日系の企業グループも、「本社財務
ないしは金融子会社などが In-House Bank として、銀行そのものの機能と同程度の高
度な機能を子会社、関連会社を含めた連結グループに対して、クロスボーダーを含
めて供給できる体制」、そういうものを目指しているし、また近い将来そういう体制に移
っていくのではないかと考えられます。日本でも電子 CP もできるようになりましたし、
欧米で進んだ実例がたくさん出てきていますので、そういうことも考え合わせますと、
日本でもアジアでも、われわれ日本とアジアの関係者は、市場間競争に負けないよう
に、まさにこれからわれわれ企業グループはトレジャリーオペレーションを高度化し、
日系とアジアの金融機関はそのための高度なシステムやサービスを供給するという、
そういう勝負の時が来ているのではないかというふうに思います。
はなはだ簡単ですが、これをもちまして、私のほうからの問題提起ということにさせて
頂きます。
犬飼 続きまして、GE 財務本部マネージング・ディレクターであられます Paul
Burstein さんからのお話を頂くことに致します。Paul さん、宜しくお願い致します。
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ケース・スタディ:「GE のグローバル・キャッシュマネジメント戦略」
Paul Burstein GE 財務本部マネージング・ディレクター
Burstein こんにちは。本日はお邪魔できて大変光栄に思っております。
(スライド 1)
それでは GE のキャッシュ・マネジメント、そして支払い決済戦略についてお話をし
たいと思います。私ども GE は大変多様化された会社です。巨大な製造業であり、ま
た、資本サービスの会社(GE キャピタル)もありました。そして大きなメディア会社 NBC
ユニバーサルにも出資しているのです。こうなりますと、GE としては特別なチャレンジ
に直面することになります。というのは、3 つの異なるビジネスモデルを抱えているから
です。
私どものビジネスは、グローバル・トレジャリーです。そして、世界各地の地元の支払
いシステム、決済システムにつなげなければなりません。対象は国内も国外ふくまれ
ます。
過去、GE トレジャリーは、デスクトップのアプリケーションとバックエンド EDI プラット
フォームを組み合わせることで決済を行ってきました。このプラットフォームでパートナ
ー銀行へもアクセスすることができました。でも課題があったのです。というのは、テク
ノロジーが古く特に銀行とのつながりの部分が古かったので、SWIFT MaCUG に移行
したわけです。
そこで、今日は GE のグローバル・キャッシュマネジメント戦略について、そして決済
戦略についてお話をしたいと思っております。よろしくお願い致します。
(スライド 2 GE Cash Management and SWIFT MaCUG s)
さて、それでは簡単に GE のトレジャリー、そしてキャッシュ・マネジメントについてご
紹介し、私どもの主なオペレーション・プラットフォーム、キャッシュ・マネジメントで使
っているプラットフォームをご紹介します。そして、実際に私どもの事業ニーズに応え
るための様々な要件ということでお話し致します。
私ども社内の企業財務というのは、私どもがちゃんとしなければ事業部門もちゃんと
機能することはできません。次に決済システムについて過去と現在についてご紹介し
ます。そして SWIFT MaCUG というイニシアティブについてご紹介し、今後の話もした
いと思っています。
(スライド 3 GE Treasury and Cash Management Strong centralized treasury)
まず私どもは、しっかりとした集約化された企業財務の重要性を強く意識しています。
これは古い GE キャピタルの伝統と言えるものかもしれません。私どものトレジャリーの
ほとんどは GE キャピタルから由来しているものです。3 年半前、GE キャピタルは GE
と合併しました。GE キャピタルは実は非常に大きな組織だったのです。従って非常に
ユニークな状況に置かれていました。多くの資本サービスの会社と同じような状況に
置かれていたのです。すなわち、まず資本というものをもって、そしてそれは特別な才
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能と組み合わせて資本調達をしていたのです。従ってリースであろうと、ローンであろ
うと、レンタルであろうと、またリボルビングのクレジットであろうと、クレジットカード・ビ
ジネスであろうと、私どもの GE キャピタルでは、ファンド、キャッシュ、そして流動性と
いうものを、まず私どもの商品、サービスの武器であると考えたのです。
従ってトレジャリー・モデル、企業財務モデルというものをしっかりと持っていました。
そして様々な機能を果たすことになります。
ここに、大体どのような機能を果たしているかをご紹介しています。私がかかわって
いる様々な部門があるのですが、この中で最も重要だと思っているのは、実際に資金
の振替、そしてバンキング業務のソフトが大変重要だと思っています。
さて、実際に私どもにとって非常に重要な原則というものがあります。まずキャッシュ
をプーリングをするということです。Cash Pooling について、なじみがない方に対して
ご紹介しますと、企業のゼロバランスということを考えているものですが、これは何を意
味するかといえば、たとえばディスバースメント(対外支払い)用の口座がある。そして、
様々なファンドを、たとえば送金など、そしてチェックを通して、その他メカニズムで支
払いを行います。そして営業日の終わった段階で社内のソフトを回す。そしてメインア
カウントから支払いをするわけです。それと同時に、回収アカウントというものを持って
います。従って、預金されたものもすべてそこに集められるわけです。
従ってキャッシュ・マネジメントの視点からいえば、まずポジションというものをちゃん
と予測しなければならない。そしてバンキング部門としては、口座間の移動というもの
をやるわけです。それによって、キャッシュの最適化に向けた活用をすることができま
す。
そこで、ひとつの理念というものがあります。これもやはりファイナンシャル・サービス
から出てきたひとつの考え方だと思いますが、キャッシュは事業ではなく、コーポレー
トに所属するということです。
まず主なツールとしては、ZBS(ゼロバランス・ストラクチャー)のストラクチャーです。こ
れは、私どもは非常にやりやすいストラクチャーなのです。しかしながら、アカウントの
ファンディング(資金調達)については、ZBA のストラクチャーの対象でない場合にも
ファンディングをするわけです。つまり、すべての口座をここの ZBS]に取り込むことは
できません。規制上の要件があるケースもあります。また国によっては国内法の要件
もあるでしょう。それ以外の制約もあります。従ってそういったケースにおいては、私ど
もは、まずそのキャッシュプールに入らないファンドをビジネスアカウントからスウィー
プして別のビジネスアカウントに入れるわけです。そしてそれにアクセスをするのです。
またディスバースメント(支払)もそこでやるわけです。それも自動化されたシステムで
やっています。
(スライド 4 Cash Pooling - Central Philosophy)
さて、ここでお示ししていますのは世界の地図です。この表では、私どもがキャッシ
ュプールを行っている様々な地域をご覧いただいています。この戦略の大きな部分
を示しています。大抵の場合、特定のガイドラインというものが決まっています。たとえ
ば GE キャピタルがキャッシュプールを行う場合、GE インダストリーとは別に扱ってい
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るのです。どうしてかといえば、多くの場合、ファンドを合わせることができないからで
あり、別にしなければなりません。でも、27カ国にある100を超えるキャッシュプール
すべてにおいて、ストラクチャーはまったく同じですし、またアプローチもまったく同じ
です。
(スライド 5 Global Locations)
さて、ここで世界の地図をまたご覧いただいています。まず、私どもの哲学(理念)と
して、常に同じプラットフォーム、同じプロセスを活用するということが挙げられます。こ
れは何を意味するのか。まずは基本的な考え方としては、「太陽を追いかけていく」と
いうものがあるのです。どういうことかといいますと、トレジャリーは、世界中のどこかで
は開いているということです。閉まるのは週末だけです。従ってひとつのトレジャリー
部門から別のトレジャリー部門が交代するのです。
Treasury Centers ということでは、3つのオフィスがあります。たとえば米州の場合、ト
レジャリーのヘッドクオーターであるコネチカット州のスタンフォードがやる。ヨーロッパ
では(インドの)ニューデリーで展開している。ヨーロッパのビジネスをすべてここでや
っています。アジアの場合、環太平洋の場合は、東京のオフィスがカバーしていま
す。
ただ、特化も行っています。たとえば為替、デリバティブ(FX/Derivatives)はアイル
ランドのダブリンがほとんど行っています。ただ、トレジャリーセンターの 3 つの先程申
し上げたオフィス(Treasury Centers)も、ある程度デリバティブに対応する能力を持っ
ています。
また Regional offices(地域オフィス)も抱えています。それぞれの特殊な状況がありま
す。たとえばメキシコシティではメキシコの現地通貨をカバーしています。ただ、コネ
チカットのスタンフォードに報告をすることになっています。ここの表に掲げた 5 つのオ
フィス(Regional offices)は、同じプラットフォーム、同じソフト、同じテクノロジーを使っ
ています。
さて、サンパウロ、ブラジルが大変ユニークな状況ですので、ブラジルの企業財務を
ここでやっています。そして今度はラテンアメリカ全体をカバーすることになります。中
国でもやはりニーズがありますので、上海に衛星的なオフィスを持っています。
先週のことですが、実はインドの国内のトレジャリーも、特別な要件がありましたが、
ヨーロッパのトレジャリーと組み合わせることになりました。同じプラットフォーム、同じ
プロセスを活用することになります。また、パリでも、ヨーロッパの資本調達(European
Funding)のオペレーションを行っています。
アメリカの場合は、これはスタンフォードに位置しています同じプラットフォームを活
用していますので、たとえば災害復旧の計画も共通にすることができます。従って、
各センターがそれぞれの災害用のサイトを持っているだけではないのです。そしてサ
ーバも、メインプロセスもそこでやっているのですが、二次的なサイトも持っています。
それと同時に、サイトの相互バックアップもできます。コネチカットのスタンフォードで
は、一日に2回、ヨーロッパのオペレーションをやることになります。早朝に入ってきて、
前日の状況を見て、そして運営するということをやっています。すなわち、24 時間一
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切中断することなく、どこでも展開できるという体制になっているのです。
(スライド 6 Major Operation Services Platforms)
さて、われわれは、様々なベーシックなシステムを活用しています。これらのシステ
ムはプラットフォーム全体で活用しているものです。まずは社内でできたもの(BAAS)
です。ひとつのキーとなるのは、やはり銀行口座の管理です。1 万 7,000 の銀行口座
を持っています。大変大きな数です。おそらく多くの企業にとっても大きな数字だと思
います。ただ、これだけ多いのは、キャッシュマネジメントサービスを数多くやってきた
からだと思います。様々な特別なニーズに応えてきたということがあります。これはイン
タラクティブなシステムで、既にビジネス、事業部門に組み込まれているものです。そ
してコントロールプロセスを経ることで、適切なチェックを受けるわけです。そして銀行
にデータが送られて、口座が開設される。そしてシステムに反映されるということになり
ます。
2 つ目のシステムは、GE Web Cash というものであり、トレジャリーのワークステーショ
ンです。これによって残高の報告、そして振替もできます。そしてリコンシリエーション
もできる。レジャー(会計口座簿の預金残高)に対する照合もすることができます。GE
では、キャッシュ・マネジメントにとっての基本的なツールとなっています。これが今度
は SWIFT につながります。これによってバンキング部門とつながることになるのです。
次に、3つ目の SWIFT は飛ばしまして、4つ目ですが、GE では logica という商品を
活用しています。数多くの銀行が活用しているのですが、これはリアルタイムのコンプ
ライアンス・スキャンをやっているものです。GE にとって重要なのは、やはり何といい
ましてもすべての法律、そして規制を遵守しなければなりません。OFAC、そしてアメリ
カのその他の規制当局との絡みで、常にしっかりと合法な取引をしなければならない
と思っています。トレジャリーでチェックがされて、何か問題があればコンプライアンス
部門と協議することになります。実際に違法活動がないかどうか、ここでチェックが行
われます。
5 つ目のツールですが、GE TRADE REQUEST SYSTEM といいますが、これも GE
内部で開発されたものです。私どもは、為替リスクの集約化ということを行っています。
過去、外為の取引はカウンターパーティ、ないしは銀行同士で行ってきました。ほとん
どの銀行ではアカウントから決済をする。たとえば、円建ての取引をするが、しかしな
がら支払い通貨は米ドルとする。そして銀行がその為替の取引をやるわけです。でも、
これは GE の方針には合いません。反することになります。私どもは、通貨ごとの支払
いはすべて GE のシステムに反映されるのです。そしてリスクを集約化する。そして為
替の取引すべて集約化して行っています。
(スライド 7 Major Operation Services Platforms)
さて、GE のトレジャリーが使っています様々なシステムを、前のページに続きまして
ここでご紹介しています。GE Treasury Central というものもあります。Trema という話が
先程出ましたが、Trema をベースに開発しているもので、これは主として会社間のロ
ーンポジションに活用するものです。私どもは様々なローンの残高があるのですが、
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正確な追跡をしなければなりません。そして、たとえば法的な組織間の金利の支払い
などもちゃんとフォローしなければなりません。
そしてもうひとつは、BRM という名の、その口座の分析を行うために使うソフトです。
アメリカから出てきているものですが、今や大変普及しています。というのは、ヨーロッ
パには大きなイニシアティブがありますので、ヨーロッパから全世界に広がってほしい
と思っています。銀行ごとの口座の分析ができます。そして金融機関へのインボイス
(請求事務)なども電子的にすることができます。そして企業がこれを活用して、その
コストのチェックもできるということになるわけです。
続いて、FXpress という大変ユニークなプラットフォームで為替のトレーディングをや
っています。そして SUNGARD も使っています。そして Web ポータル用のシステムも
あるわけです。GE は、非常にサイズが大きい、そして非常にユニークな要件がありま
すので、まさにベストのものを集めて活用することに致しました。要するに、ニーズに
最も合ったソフトを集めて、そして社内のリソースをもってこれを集約化し、そしてアウ
トソースをするということです。大体 Web を活用します。特にビジネス部門に関しては
Web を活用するようにしています。
(スライド 8 GE Web Cash ‒ Payment System)
さて、ここで、ただ今までの説明をまとめてみました。それぞれのシステムごとに、ど
ういうつながりなのか、ご覧いただいております。実は、もっと多くの統合が行われて
おり、より多くのリンクがあります。要するに、このプロセスでは、あるビジネス部門が為
替をやったとする。たとえば他国のベンダーパーティに支払いをするということである
ならば、その決済の取引というものは、私どもがやって、それをカウンターパーティに
送ります。ブローカーであろうと、銀行であろうと。この中で私どもはノウハウを加えるこ
とができます。たとえばトランザクションのドル相当の部分を直接銀行に対して送って、
それを行使するか、ないしは GE 内の為替のトレーディングの人々に対してそれを送
付し、ベストビットを得るということも行っています。
(スライド 9 GE Businesses and Payment Requirements)
さて、大きなドライバーのひとつとなっているのが、私どものビジネス上のニーズが何
であるかということです。次のように分類してみました。実はトレジャリーの大きな特徴
ということでご紹介しています。
まず GE Industrial Business=事業部門では、ほとんどの支払いは大口のものです。
ベンダーに対する支払いが多いのです。ただ、ベンダーの規模は非常に小さいとこ
ろもある。従って何百、何千単位の支払いがベンダーに対して行われます。クロスボ
ーダーのものもあるし、そのひとつのベンダーであっても、多通貨で決済されることが
あります。特にヨーロッパ、アメリカでは、低金額の支払いなどが多いわけで、場合に
よっては、送金を必要としている企業もあります。緊急性の高いものもあります。たとえ
ば、出荷に対して即時に支払いが必要であるもの。そして出荷前にその支払いがあ
るというケースといったこともあるでしょう。また、クロスボーダーですので、やはり多通
貨での取引が行われます。
14
GE Financial Services の場合は、随分様相が違います。まず、ここのトレジャリーは
カスタム化しています。ビジネスのニーズに応えるような形でカスタム化を行っている
のです。アメリカ、ヨーロッパでは、リボルビング・クレジット・ビジネスが、非常に規模が
大きなものとなっています。すなわち、ローンの申請が行われる。そしてそのレビュー
をやる。そしてローンを行います。たとえば 2,500 万ドルのローンだとします。そして実
際に引き出しをする。その際には、必要なドキュメントを出して頂きます。まさにジャス
ト・イン・タイムでファンドを提供するのです。たとえばその日の午後、給与を支払わな
ければならないということであるならば、その分を口座に入れてあげなければなりませ
ん。そうすることで、彼らは、100%確実性をもってその支払いを実行することができま
す。 そのためには、それと同時に預金の状況をチェックしなければなりません。お客
様との取り決めがある場合、GE アカウントにお客様のレシートを頂くことになっていま
す。こうすることで、キャッシュフローをマネージするのです。ただちにキャッシュを提
供することができる。そうすることで彼らのクレジットラインを最大化することができます。
もうひとつ、GE Financial Services の特徴としては、ダイレクト・デビットが多いということ
です。クレジットカードホルダーのベースが大きいと、クレジットカードの保有者の数が
多いわけです。たとえば、最低金額が設定されて、そしてデビットが行われます。また、
リース事業でも、長期的なリースを行っていますので、ここでも直接のデビットが行わ
れています。そうなりますと、緊急性の高い送金というものが行われます。
またメディアおよびエンターティメント関係の企業である NBC Universal ですが、これ
も大変ユニークなチャレンジとなっています。最近、マルタで 3 週間以内の支払いを
頼まれました。スピルバーグがそこで映画を撮っていたからなのです。そこでほとんど
通知期間がなく、直ちに支払いを求められました。これはまさにまったく異なる環境な
のです。といいますのは、通常はちゃんと評価することができるのですが、この場合は
どうしてもスピードが重要となります。
GE Treasury ですが、ここではまず送金のボリュームが大変多くなっています。為替
もやります。また CP もやります。そしてデリバティブもやりますし、またキャッシュの集
約化も行っています。すなわち、一言でいうと、本格的なトレジャリーの業務ということ
になります。GE におけるトレジャリー業務には、全世界で 125 名が当たっています。ま
た、多くのディールはタイムリーであるということが大変重要です。たとえば、買収が行
われる場合、どうしても決済がちゃんと行われなければなりません。ただ単にひとつの
送金で足りるわけではない。複数の GE のコンプライアンス部門がかかわっています。
様々なファンディングが必要となる。そして税金の問題もある。すなわち様々なニーズ
があるわけです。様々な送金をしなければならない。そして他国をまたがってしなけ
ればならない。しかもタイミングが正確でなければならないわけです。また、コストを下
げるために自動化もしなければなりません。GE にとっての課題というのは、やはり何と
いいましても規模が大きいということだと思います。これだけ大きな会社ですので、効
率よく運営しなければなりません。そして規模も活用しなければなりません。また、イン
ターフェースというものも必要となってきます。オラクルや SAP といったアプリケーショ
ン、そして様々なローンのシステムとインターフェースをすることになります。これも自
動化のために必要なのです。
15
そしてもうひとつの要素というものは、コントローラーシップということです。私どものイ
ニシアティブのひとつの原動力となっているのは、これだけ大きな会社となって、これ
だけ多くの拠点を抱えていますと、何か問題があるのではないかということが常に想
定されなければなりません。特に、決済の分野ではそうですが、私どもは、セキュリテ
ィというものに取り組んでいます。そして、監査なども行っています。ちゃんと GE のポリ
シーに遵守しているかどうか、常にそういったチェックが必要となります。
(スライド 10 GE Web Cash Metrics - Today)
では今度は、GE Web Cash Metrics をご紹介します。さきほど GE は世界中で 200
の銀行に 17,000 という数の銀行口座を保有していることをご紹介しました。このうち、
GE Web キャッシュが、私どものキャッシュ・マネジメントのコアのシステムなのですが、
133 の世界の銀行を報告の対象としています。そして日々9,600 もの口座の報告がな
されます。ほとんどは法人関係です。ひとつのシステムですが、そこから残高の報告
がなされる。従って、たとえば、スタンフォードのアナリストのほうでも、ローンの申請が
あった場合、それをチェックすることができる。今度はインドのアカウント担当の人々が、
そのアカウントの照査を行っている。そして、監督担当の部門が同じデータを共有す
ることができるわけです。それぞれ都合のいいときに同じデータを共有することができ
る、それがポイントだと思います。現在のこの Web Cash システムでは月間 7 万 8,000
件もの非常に緊急性の高い決済が行われています。たとえば、送金など、非常に数
多くの緊急性の高い決済がなされています。緊急性の高くないものは、大体月間 4 万
件となっています。
GE の場合は、たとえば事業部門の行う買掛金支払いというのはそんなに緊急性の
高いものではありません。でも特別なプロセスをもって銀行に対して支払いを行って
います。Web Cash というシステムでは、世界中で GE の 300 ものビジネスユニットがつ
ながっています。そしてこの数はどんどん増えているのです。そして、大変アクティブ
なユーザーを抱えています。
(スライド 11 GE Payment Systems - Past)
過去、GE は 2 つの主たるシステムを抱えていました。ひとつはヨーロッパ、ひとつは
アメリカです。そして、たとえば東京でもそうでしたが、数多くのデスクトップのシステム
を稼動させていたのです。でも、集約化されたデータベースがなかった。これは大変
問題となりました。実は PC の非常に古い陳腐化した技術でやっていたのです。でも
グローバルシステムでなければ問題はなかったのですが、そうはいかなかった。そこ
で最先端の Web ベースのものを入れました。初期のシステムは、実は長年使われて
いたものですが、アメリカ、ヨーロッパのニーズには合っていたのです。
さて、ヨーロッパのビジネスニーズの 50%を満たすことができたと書いていますが、ヨ
ーロッパのグループ企業の 50%はこれでよかったわけです。ただ、すべてのプロセス、
すべての商品を提供することはできなかった。GE トレジャリーとしては、常にそのグル
ープ内の企業に対して提供しているものを改善したいと考えています。彼らのニーズ
に応えることができなければ、彼らは銀行と直接取引をしてしまうかもしれませんの
16
で。
(スライド 12 GE Payment System - Today)
現在は中央集中化された Web ベースシステムになっています。すべてのオフィスは、
もう既に 350 以上の事業が、この Web ベースに乗っています。
それからまた、24 時間のプロダクションサポートが、3 つの都市で地球全体をカバー
しています。テクニカル・サポートに関しては、DBA(Database Administrator の略で、
データベース管理者のこと)、Web マスター、それからアプリケーションの人材を、世
界中に配置してサポートしています。
それからまた SWIFT の接続性に関しては標準化を進めています。後程詳述しま
す。
それからまた、新しいプロダクトを提供し、機能アップのための努力を続けています。
ひとつの製品としては、多言語化をするということです。現在は、英語ないしは西洋文
字しか使えないということですので、特にアジアで事業展開を進めるにあたって、より
よいサービスを、多言語も含めて行いたいと思っています。ただ、これは一例にすぎ
ません。低コストのビジネスに関して、たとえばダイレクト・デビットを行うということにな
ると思います。それからまた、信頼性をさらに高め、モニタリングをする、トラッキングを
するということにも注力をしています。それから STP(Straight-Thru-Processing)、これ
は Web にアクセスをするユーザーでトランザクションをきちんと確認する人のためのも
の、あるいは承認をする人のためのもので、すべての機能、すべてのコミュニケーショ
ンをシステムで執り行うということです。銀行と協力してインターフェースを改善し、破
綻がないようにする。正確な情報を必ずもらえるような形で STP を進めていくという意
味です。
(スライド 13 Bank Connectivity - Past)
古いテクノロジーを昔まで使っていました。若干それが残っています。EDI マッパー、
ヨーロッパのフォーマットを使っています。EDI Mapping の世界ではファイルを受け取
ってマッピングをするということで、バラバラになったプロセスがあるわけです。ストレー
トスルーではないわけです。ひとつの取引がまったく切れ目なく取り扱われるのでは
なくて、ということです。
これに関してはいろいろと問題がありました。銀行ごとにいろんな標準があるわけで
す。たとえば PAYMUL を使っていたとしても、ある銀行の PAYMUL(国連標準メッセ
ージ(Multiple payment order))が、コンテンツという意味で若干異なっているというこ
とがよくあるわけです。私たちにとってのドライバーとしては、やはり一番いいプロダク
トを使っていきたいということで、銀行と常に対比をさせているわけですから、私たちの
システムにおけるレスポンスに関しましては、銀行のレスポンスと一致したものにした
いということで、これをグローバルに進めていきたいわけです。たとえばパリにいて 15
カ国と対応しなければいけないというような場合に、15 カ国の銀行からまったく同じサ
ービスを提供してもらえるようにしたいということです。従ってそのための努力をしてい
ます。
17
銀行を選ぶ際に考える点としては、各国のニーズを見て、私たちのビジネスニーズ
に一番合っている銀行はどこかということを見て、その国ごとのニーズに合う形で銀行
の入札をしてもらうわけです。そうするとことがベストなわけです。ということは、数百の
銀行とインターフェースをするということです。実際そういうことをやっています。
ほかにもいろんな問題があります。古いテクノロジー関係ではいろいろと問題があり
ました。SWIFT も検討してプロセスの改善を進めています。SWIFT は非常に成功して
います。
(スライド 14 Bank Connectivity ‒ Legacy Systems・15 GE SWIFT Project Strategy)
図ではかつてのネットワークがどういうものであったかというのをお見せしています。
この SWIFT のプロジェクトを進めるにあたりまして、いろいろな指針を定めてまいりまし
た。ひとつは、古いインフラを取り替えなければいけないということで、しかし何かをそ
の過程で壊すということをしたくなかったのです。EDI では 50 ぐらいの銀行が絡んで
いたわけですが、これを成功裏に移行させる。それと同時に、何かを止める、拡大で
きないということでは困るわけです。従ってどうするかといいますと、できるだけ迅速な
形で銀行と協力をして新しい環境に移行していく。それと並行して、プライオリティベ
ースで協力してくれる先を選ぶということです。
私たちにとっての究極の優先順位というのは、キャッシュプールかどうかということで
す。キャッシュプールは非常に重要ですので、キャッシュプールが必要な際には、そ
の銀行は一番優先順位のトップに置かれるということになります。
SWIFTNet Fin messages に関しても標準化ができています。私たちにとっての注力
事項としては、ペイメントを銀行に送信して、銀行が記録できるように、執行した際に
それを記録し、それからレファレンス情報、たとえばアメリカのヘッドナンバーを入れま
して、Web にポスティングをし、受領できるように同時にするということです。何らかの
理由で取引がキャンセルされた場合には、インテリジェントのメッセージをシステムに
送り返してもらって、ユーザーとしてなぜその取引が行われなかったのか見られるよう
にするということです。アラートが、2、3 カ月後には出るようにしたいと思っています。
SWIFT が出てきた際には、初期の段階では SWIFTNet Fin に注力をしていました。
すなわち Bank to Bank の伝統的なメッセージのやり取りです。新しいものが FileAct
です。何をやるかというと、ファイルを取ってきて、どんなファイルでもいいわけです。
周りにエンベロープ、すなわちルーティング情報を付けるわけです。そしてそれをファ
イルとして銀行に送り、銀行と顧客が合意をした段階で処理をしてもらうわけです。ヨ
ーロッパでは PAYMUL フォーマットをとっています。EDI の伝統的なフォーマットです。
ペイメントをバルク化しまして、たとえばひとつのファイルに 1 万のペイメントを入れて
処理するわけです。非常に低額の取引に関しては有効です。大型の案件には適して
いません。しかし、GE の買掛金側の決済ニーズがこれで対応できるわけです。こうし
たメッセージがちゃんと戻ってくるということも大事です。
もうひとつ銀行と協力してやる点としては STP です。GE の中で STP をやりたいという
だけではなくて、銀行でも STP をやってもらいたいと思っているわけです。銀行といろ
んな協力をしてテストをするわけですが、よくあることとしては、SWIFT メッセージを銀
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行に送ると、紙に印刷して、別のターミナルに行って(手入力でもって)支払いシステ
ムに入力するということです。いくつかの銀行でこういうことがありました。やはりここで
のやりたいこととしては、銀行も含めて STP を進めたいということです。やはり執行に
おいてエクセレンスを目指したいということです。
(スライド 16 GE SWIFT Project Scope)
32 の主な銀行グループをこのために特定をしています。私たちが事業展開している
100 カ国をカバーできるように。
プロジェクトの現状については後程数字をご紹介しますが、これは非常に大型のプ
ロジェクトでありまして、事業法人としては最大級になると思います。私たちにとっての
慣行としては、銀行と協力をして SWIFT を導入する。これは標準的なインターフェー
スを持ったバンキングシステムでも使えるシステムでありまして、そうすることで、コー
ポレート・コミュニケーション全体で使える。私たちの責任としては、銀行がやはりこれ
において成功するということです。これは自前のテクノロジーになってしまってはいけ
ないわけです。かつて、過去におきましては、そういう形になっていました。10 年後に
おきましては陳腐化するということがよくあったわけです。SWIFT に関しては常にカレ
ントであるということ、アップツーデートであることが大事です。そうすることで、ほかの
事業法人がこれに参加してくれるということ、銀行が成功するということ。銀行が成功
するということは、すなわち私たちが成功するということです。
ダイレクト・デビットも追加することが必要です。Direct to Bank ということで、このよう
な機能をそのトレジャリーに持ち込むことが必要です。それからまた、もともとの基盤、
欧米以外の地域に拡大することも必要です。SWIFT のいいところのひとつは、インフ
ラをいったん整備するとほかのシステムへもつなげて、SWIFT メッセージができるわけ
です。外為でも、スポットでも、担保のメッセージであっても、すべてのメッセージを扱
えるということです。
ほかにどのようなお話があるか分かりませんが、SWIFT はほかにもいろんなエキサイ
ティングな取り組みを向こう数年間かけて進めていく予定です。私たちはこれを非常
にバックアップしているということで、これは私たちの利益を考えて SWIFT を推進して
いるものであるということを強調したいと思います。
(スライド 17 GE SWIFT Project Status (January 15, 2006))
現状ですが、12 月だけで(Web Cash を使った緊急性の高い決済を)7 万 8,000 件
やったと言いました。このうち SWIFT で 7 万 2,000 件です。現在は 30 行とライブで
SWIFT を進めています。それからまた 6 つの銀行がユーザー・アクセプタンス・テスト
を進めています。非常に強力に進めているということです。ライブということで、本当の
銀行口座を使って本当の取引で進めているということです。銀行を通じてきちんと送
ったその取引が、最終的に執行されるということです。ということで、非常に広範なテス
ティングをトレジャリー主導で進めているということです。
(スライド 18 SWIFT / Bank Connectivity)
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こちらの図は、私たちの大まかなレベルでの戦略です。SWIFT を中心に、GE Web
Cash をインターフェースに使うわけです。オンラインでトランザクションをやって、バル
クファイル・プロセッシングも行うということです。インフラをいったん整備しますと、これ
はいろんな銀行を交えてやっているわけですが、バルクファイルで事業会社がつくっ
たものをパススルーできるようになる。たとえば、給与のファイルをトレジャリーで開ける
ことはやらないつもりです。給与というのは事業会社にとって非常に微妙なわけです。
従って、給与のファイルをとってきて、暗号化して、そのまま銀行に送る。そうすること
によって、インフラネットワークを活用できるわけです。よりよいサービスがそれで提供
できるようになる。普通の銀行とのインターフェース、ほとんどの銀行に関しては、
CUG に直接行くということだと思います。これがコーポレート・インターフェースです。
いろんな銀行がいろんな理由から CUG を使っていません。ボリュームがないので、
CUG の必要がないという場合があります。そのような場合にはインターミディアリー・バ
ンクを通じてメッセージをそのまま転送してくれる。SWIFT からインターミディアリー、イ
ンターミディアリーからセカンドティアバンクへ。現在の事業環境においては、事業法
人は、銀行には CUG がなければ送れない状況になっています。これがもうひとつ
SWIFT の取り組みとなっていまして、この先それに対応できないかということを検討中
です。
(スライド 19 GE Payment Systems - Future)
将来はどうか。私たちにとって大きな課題はインフラを整備するということだと、
SWIFT に対しても言っているのですが、これが大事です。どうやってメッセージを交
換していくのか。メッセージのコンテントが大事なわけです。今の取り組みとしては、古
いインフラをやめて、問題の多いもの、あるいは人材を要するものから移行していって、
そして新しいシステムを拡大していくということです。これはグローバルなイニシアティ
ブです。支払いの能力をアップグレードしていくということ。財務だけではなくて、事業
法人のニーズを考えているということです。これはビジネス側のイニシアティブというこ
とです。
それから STP をさらに改良・改善するということ。STP というのは、私たちも銀行もメリ
ットを享受できるわけです。何をやるかというと、銀行と協力をして、銀行がエラーレー
トを報告してくれるわけです。エラーレートを事業ごとにトラッキングをする。追加的な
訓練が必要なこと、サポートが必要なこともあるでしょう。あるいは、何をやっているの
かレビューをし、ソフトウェア・マッピングが問題なのかもしれない。場合によっては修
正・訂正をするということです。
日本における大きな問題としては、やはりこれが挙げられると思うのですが、多言語
支援です。多言語支援というのは非常に大きな取り組みです。データベース、それか
らスクリーンだけではありません。しかし、プロセッシングをマッピングして、ちゃんとレ
スポンスを多言語で返せるように、日本のユーザーに対して日本語で返せるように、
そうすることでユーザーが日本語で受け取って、入力できるようにしたいと思っていま
す。タイでも同じことが言えますし、インドネシアでも同じです。多くの環太平洋諸国で
同じようなニーズを抱えています。従って日本で初めて多言語化を図りたいと思って
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います。
詳細は言いませんが、インハウスバンキング、これは非常に複雑なコンセプトですが、
これももうひとつのイニシアティブです。銀行の口座を減らしたいということです。そし
て、事業間のローンの融通でやっていくということです。いろんなソフトウェアがシステ
ムに組み込まれています。私たちは規模が非常に大きいわけですから、非常に大き
なタスクとなります。最大のタスクとしては、ソフトウェアというよりは、税務や、法的な問
題を見ていくということです。私たちの法人すべてが税務上マイナスの、想定外の結
果に至らないように担保するということが大事になってきます。
それから最後の取り組みとしては、ここに挙げていますのは、銀行が得意なことをや
っていきたいということです。銀行の Web サイト、あるいはデスクトップで仕事をすると、
カスタム化されたスクリーンでビルトインされたエディティング機能がほとんどの銀行で
入っているわけです。ベストと言われる銀行がそういうことをやっています。たとえば小
切手の番号が間違えている。あるいはバリュー・デーティング、先付けがうまくいかな
いといったようなことに対応できる。100 ぐらいの銀行と対応しているわけですが、こう
いうロジックがうちにはないわけです。従って、やはり支払いのエクセキューションにお
いてエクセレンスを目指すということ。そうすることで、ユーザーが、銀行のソフトと同じ
ようなエディットとかバリデーションができるようにしたいということです。
(スライド 20 GE SWIFT CUG ISSUES)
SWIFT CUG を進めるにあたって問題がなかったわけではありません。ここにその問
題のリストを挙げています。公的な SWIFT に対しても訴えかけている問題です。やは
り SWIFT を検討なさっている方は検討しなければいけない問題です。
GE において、このようなプロジェクトを進めるにあたって言えることは、私たちは戦略
的な意思決定をして、やはり SWIFT を進めようということにしたということ。コスト分析を
やった。そしてシステムの能力を見た上で、この先成長する、あるいは銀行の数を増
やす、あるいは拡大していくというのであれば、パラダイムシフトが必要だと、その段階
で意思決定をしたわけです。これは、従ってコスト分析だけの結果ではないわけです。
やはり GE のポイントとしては、戦略的な方向性でもってこのような意思決定を行うこと
ができるということです。コスト分析だけで決まるわけではない。
この先進めるにあたって、SWIFT は標準化が不十分である。SWIFT Fin、これはフィ
ナンシャルなメッセージですが、かなりオープンで、銀行としてもいろんな形で解釈が
できてしまうということです。従っていろんなマッピングの差異が出てくるわけです。
EDI のほうがもっと標準化が進んでいます。従って標準化の問題があるということ。
XML ペイメントカーネルのイニシアティブが進んでいます。これは一般的なフォー
マットで、SWIFT だけではなくて、できればいろんな決済システムが使えるようになる
ものが実施できればと思っています。
XML を銀行に送ると、銀行がそれを受け取って、マッピングをやるのではなくて、支
払いシステムに送って、そしてそれを執行する。で、受け取る側が受け取るということ
です。トランスレーションとかマッピングが必要ないということです。究極の STP でやっ
ていくということです。
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ひとつの決済システムでソフトウェアを書き直すということをやっているそうです。
XML フォーマットに書き直す。移行期において、古いシステムを新しいものができるも
のができるまでは使い続けるということです。内部のプロセッシングは純然たる XML
であるということです。やはり将来的にはそういう標準化が必要です。
XML のいい点というのは、XML というのは文字のセットがどうなっているか関係ない
のです。XML のフォーマットに当てはまっている限りにおいて、どんな文字を使っても
いいということです。従って、多言語の問題も XML であれば解決できる。SWIFT Fin
ですと、やはりローマ字でなければいけないということです。ほとんどの銀行はローマ
字の中でも英語でなければいけないという制約があります。
銀行の中には SWIFT CUG を採用していない先もある。1 年半ぐらい前に議論を始
めた際には非常に限られていました。しかし、SWIFT CUG はそれ以降非常に広範に
普及してきました。興味深い状況としては、採用のされ方ですが、私たちの経験から
分かったことは、ヨーロッパにおきましては、事業法人が採用したのです。非常にヘビ
ーな形で採用してきた。私たちの意見では、銀行はといいますと、必ずしもそれをうま
く実施できていない。私たちは、いろいろ苦労して、その結果 31 の銀行を関与させる
ことができました。ヨーロッパの 75%をこれでカバーできたと思います。従って最終的
には銀行も追いついたということですが、SWIFT CUG における、ヨーロッパにおける
大きな推進要因はやはり事業法人にあったということです。アメリカではヨーロッパの
逆でした。アメリカの事業法人で SWIFT CUG を採用した先は非常に限られていた。
多くのドライバーは銀行であったわけです。アメリカの銀行は、非常にいい仕事をして
いまして、非常に初期の段階からうまく順調に進めています。GE はやはりこれが必要
だと思っています。公的な場で、あるいはほかの会議におきまして、ほかの事業法人
にも働きかけをしていまして、ぜひ SWIFT CUG に参加をと言っています。
すべての事業法人にとってのソリューションにはならないかもしれませんが、多国で
事業展開をしている事業法人で、集中管理をしたいという先で多くの銀行と対応しな
ければいけないようなニーズがある。ひとつのニーズが多くの銀行が絡むような環境
であれば、それが必要だということです。
FileAct に関しては課題がありましたが、これも取り組まれつつあります。銀行も、初
期の段階ではまずい対応もあった。1 カ月、2 カ月で済むところもあれば、18 カ月もか
かっている銀行もありました。事業法人のパイオニアとして、こういうことも認識しなけ
ればいけないと思うのですが、いい点としては、こういうプロセスを経てまいりましたの
で、経験上、この銀行に対してこういうことをやるとこういう結果になるなということが、
予想がつくということです。従って、この後に続く事業法人は、その経験を活用するこ
とができると思うのです。やりやすいと思います。やはり GE としては、リーダーとしての
責任があると思っているのです。
(スライド 21 Other Hot Cash Management Topics)
では、若干の点を付け加えて終わりたいと思います。最後のまとめに入るにあたりま
して追加ですが、いろんなイニシアティブ、課題があるということのリストです。事業法
人にとっての最大の課題のひとつ、これは世界中に共通しているニーズですが、
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KYC(Know Your Customer)です。これは一般的な言い方ですが、お金を受け取った
際に、そのお客がだれであるのか。それから支払いをするにあたってもベンダーは何
者か知っているということが必要だということです。多くの決済システムで銀行によって
は、送られるデータをちょん切ってしまうわけです。口座番号が載っていないというこ
ともあるわけです。一体だれがお金を送っているのか分からないということが往々にし
てあるわけです。従って私たちにとって重要なことは、昨日送ってくれたお客さんの資
金、そのお客さんが本当に私たちの持っているお客かどうかということ。そうでなけれ
ばちゃんとアラートが必要です。
それから 2 つ目、やはりこれは事業法人に共通している課題だと思いますが、キャッ
シュのアプリケーションにおいて自動化が必要ということです。すべての支払いの詳
細情報でお客さんから来たものは全部把握する必要がある。多くの場合、支払いシス
テムにおいてデータが切られてしまうわけです。バックスというのはローバリュー・クリ
アリング・システムで、イギリスのシステムですが、レファレンス情報として 18 文字しか
入っていないと、お客さんがだれかすら分からないことがある。従って、インボイスでき
ないわけです。複数のインボイスナンバー等が絡んでくると、非常に困難を極めます。
SWIFT との取り組みにおきまして、やはり XML スタンダードを導入して、より多くの情
報を盛り込めるように、標準的なフォーマットを取り入れることによりまして、ソフトウェ
アのベンダーが自動的な形でアプリケーション・オブ・キャッシュをインコーポレートで
きるようにしたいと思っています。
GE は銀行の数が非常に多いわけですから、銀行の手数料をちゃんと分かりたいと
いうことです。アメリカにおいては、この 18 年というもの、EDI の標準というのがあって、
それを使ってきたわけです。私たちのソフトウェアはスタンフォードで走らせていて、グ
ローバルに使っていて、インドのオペレーションでアナリストがサポートしているわけで
すが、口座のステートメントを取ってきて、確認できるわけです。ちゃんとしたプライシ
ングになっているかどうか、銀行によっては手数料のチャージを間違えているというこ
とがありまして、交渉が必要な場合もある。あるいは、ボリュームがある特定の月、まっ
たく違うと、月次比較することで検証できるわけです。データが入ると分析をしなけれ
ばいけません。
International Bank Compensation (IBC)という XML フォーマットのイニシアティブがス
イスで進んでいます。GE もサポートしています。皆さん、この日本とアジアの地域では
分かりませんが、ヨーロッパは非常にエキサイティングな動きがありまして、ユーロ諸
国を通じてスタンダードな形でトランザクションを取り扱うということができるようになりま
す。これは革命のようなものになると思います。ターゲットデートとしてはあと 4.5 年ぐら
いかかると思います。このような取り組みですから、もうちょっとかかるのではないかと
思っていますが、これによりまして事業法人はどうなるかといいますと、いろんな変革
を今まで経ていかなければならない。ひとつのプロダクトをやると、フルにインプリメン
テーションができない。ある銀行がインプリメンテーションをやって、またインプリメンテ
ーションをやるということになるわけで、非常に時間がかかります。
それから、標準化を進めることによりましてコストを下げていかなければなりません。
それから財務、トレジャリーに関しての注力事項に関しましては、システムに関して、
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戦略にどのようなシステムが当てはまっているかはすでに申し上げたと思うのですが、
ここで何をやろうとしているかといいますと、(1)コストを引き下げて、(2)作業を減らし
て、(3)基本的なサポートができるようにしたい、ということです。サポートの人材が私
のチームにおりますし、インド、アメリカ、日本、それからメキシコに人材を置いていま
す。
支払いの問題に対応するようなことに時間を割いてほしくないわけです。事業をや
って、よりよいサービスを事業に提供し、プロダクトに対応できるように、イノベーション
を進められるように、やはりトレジャリーのサポート機能はそういうものであるわけです。
プラットフォームをきちんと整備し、安定した体制にして、コンサルティングしてキャッ
シュへの利用を最大限に高めるということ、新しいプロダクトを常に見出すということが
必要です。
GE におきましては、やはりお客さんにとって新しいプロダクトを常に出すということが
要求されています。GE の事業法人、あるいは事業に対してサービスを提供するだけ
ではなくて、システムを整備し、あるいは支払いシステムをきちんと実施することによっ
て、よりよい顧客サービスを提供できるようにするということが大事だと思っています。
以上です。ありがとうございました。
犬飼 Paul さん、本当にありがとうございます。大変情報に富み、しかも先端性が高く、
重厚なお話をおうかがいすることができました。
犬飼 この後 Q&A コーナーに移らせて頂きたいと思います。それでは何でも結構で
す。お願いします。
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Q&A
原田(格付け投資情報センター) 非常に面白い話をありがとうございました。グロー
バルに、日常的に、効率的にシステムをつくっておられるというので非常に感心した
わけですが、システムですから、必ずオペレーショナル・リスクというのが生ずると思う
のです。それは人的なファクターにも起因するでしょうし、ハードウェアのファクターに
も起因するでしょうし、場合によってポリティカルなファクターにも起因する。そういうオ
ペレーショナルなリスクに対して、GE のグローバル・キャッシュマネジメントというのは
どういう備えをしておられるのか。キャピタルをお積みになるのか、インシュアランスを
掛けるのか、それともいろんなイクイップメントに対してリダンダンシーというか、デュア
ルなシステムを設けておられるのか。膨大なシステムを持っておられるので、そこに対
するオペレーショナル・リスク、それが目的どおりいかなかったときに、どういう備えをし
ておられるのかというのを教えて頂きたいと思います。
Burstein 実は私どもは、このシステム、そしてシステム・アプローチに対して誇りを持
っております。いろいろなやり方をやっています。実は、コマーシャルペーパーの世
界最大のイシュアーとなっています。そこで身を守るために、そしてお客様を守るため
に、非常に広大なバックアップラインというものを持っているのです。リスクに対しては
まずバックアップを持つということをやっています。
もうひとつは、システム的にですが、銀行のモデルを活用しています。どういうことか
といいますと、まずリアルタイム・アプリケーションというものをすることができます。災害
のサイトに対して行うことができます。これはコネチカットから 1 時間離れたサイトでバ
ックアップサイトを持っているのです。たとえば、様々な評価を行います。
この 2 つのシステムを、2 つの別の電力会社によって電源を受けることができます。
すなわち、たとえば電力系で送電網に問題がある場合、2 つの電力会社を使ってい
ますので、これを避けることができます。
また、年に 3 回、私どもは災害サイトで 1 日そのシステムがうまく機能するかどうかチ
ェックをしています。コネチカットでもそうです。デリー、日本、ダブリン、メキシコでも、
実は私どもは災害サイトを持っています。これも定期的にチェックをします。実際に運
用して、うまくいくかどうかチェックしています。稼働させるのです。
さて、政治的なリスクですが、もちろんこれは状況によってリスクというものは変わっ
てくるのですが、たとえばインドで運用する際にはどうしても政治的なリスクが大きくな
ります。ストの問題もあります。また、自然災害のおそれもあります。また、潜在的なリス
クとしては、紛争の可能性もあるわけです。それに対する対応策としては、まずスタン
ダードプロセスをグローバルに展開していますので、たとえばスタンフォードでアメリカ
ビジネス用にやっていることは、実はヨーロッパ向けにインドで行っているものとまった
く同じです。すなわち全部同じことをやっている。
また、サイト間の人々の異動もあります。そして、各サイトでいろんな人が関わるよう
になっているのです。そして年に 2 回、たとえば 1 日だけインドのオペレーションをシ
ャットダウンして、たとえばスタンフォードでやるのですね。インドはヨーロッパのオペレ
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ーションを担当しています。大体朝 3 時から、たとえばコネチカットでやることはできる。
すなわちその日だけスタッフが 1 時間早くやって来るわけです。そして Web でドキュメ
ンテーション、そしてアップデートなどもチェックします。そして別のサイトで、すなわち
アメリカでそのシステムをダウンするわけです。そして第 2 のシフトが入ってくる。そし
て同じようにシステムをダウンする。そしてそれでチェックを終えるわけです。
場合によっては、たとえばインドで意図的にシステムをシャットダウンするということを
やりました。実はストがありました。そして暴動なども発生するということがあったのです。
また、選挙もありました。議会の与党が休日と宣言して、その日はだれも仕事ができな
くなってしまった。そこで電話がかかってきました。朝 11 時にアメリカのスタンフォード
に電話がかかってきました。そこでインドでは休日だということで、直ちに災害サイトを
立ち上げました。実際に緊急に人々がこのサイトにやって来られるどうかチェックした
のです。結局、インドをシャットダウンしてアメリカでやろうということになったわけです。
また、キャッシュ・マネジメントのスタンフォードの人間がダブリンに行ってカバーをす
るということをやります。ですから、一時的なシステム、そしてハードというものがありま
す。そして練習をする。そして関連のドキュメンテーションを整備している。
また、場合によってはそれ以外の問題も想定しなければなりません。従って、Web
ベースのバンキングシステムというものを、実は準備しています。まだ使ってはいませ
ん。でも、ちゃんと練習はしています。どうしても非常に重要な送金が必要なケースは、
これを活用することができます。従って、私どもは運用面でまさにカルチャーの一環と
して、こういった災害に備えています。
犬飼 ありがとうございました。レジリエンス・プランニングというふうにわれわれは呼ん
でいますが、危機対応の分野についても大変に進んだ対応をやっておられるというこ
とがよく分かります。
遠藤(野村マネジメントスクール) スケーラビリティについては若干触れられたと思う
のですが、柔軟性というか、アダプタビリティというか、その点について若干コメントを
頂きたいと思います。まずベーシックなレベルで、われわれ、GE という会社でよく知っ
ているのは、非常に大量の M&A をやられる。そうすると新しい企業が常に入ってきて、
そのシステムに乗らなければいけない。御社にすれば、もうルーティーンになっている
のかもしれないのですが、そのインテグレーションのプロセス、若干プレゼンテーショ
ンの中でトレーニングのような話もありましたが、単純にシステムをインストールするだ
けではいけない。昔使っていたシステムとの統合などがあると思うのですが、そういう
問題とか、単純にカウンターパーティであった銀行がマージして、日本でもトラブルが
あったわけですが、そういうトラブルがある。要は、御社のコントロールの外にある現象
をどう対応するか。御社のシステムはどういうふうになっているのかということをコメント
していただければと思います。
Burstein 2 つ、お答えとしてできると思うのですが、まず、初期の段階で、たとえば
M&A が発表された段階で、その事業の検討を始めます。
26
最初に言ったと思うのですが、いろんな機能があって、ひとつはビジネスサービスだ
と言いました。ビジネスサービスの部門が銀行と事業会社と対応してインターフェース
になるわけです。オペレーションレベルではなくて、プロジェクトベースでインターフェ
ース役を果たすわけです。ビジネスサービス部門が、その案件が成約する段階で入
ってきて、デューデリジェンスをやるわけです。成約の前に銀行口座を全部特定して
おくということです。すべての法人を捉えておくということ、それから税務関係も対応す
るということが必要です。法務が対応致します。
ドキュメンテーションが初日から用意されていることが大事です。最初にやらなけれ
ばいけないのは、案件が成約される中で、新しい取締役を送らなければいけないわ
けで、新しい取締役が、いろんな文書面での対応をしなければいけないということで
す。ということで、そのようなとりまとめを初日から行います。
それから 2 つ目ですが、そのような統合に関しては、各 M&A ごとにスケジュールを
用意するということです。2 つ目は、理念という部分があると思うのですが、GE というの
はコングロマリットです。一つひとつの事業法人がそれぞれやっているわけで、コーポ
レート・ファンクション=本社機能というのは限られている。法務、税務、財務、それか
ら調達、いくつかあります。しかし、ほとんどの事業法人というのは、それぞれのプロセ
スは自前でやっているわけです。ローンシステムと言えば、その会社独自のローンシ
ステムです。一部共通している部分もある。統合を進めている部分も多々あります。効
率アップを図りたいからです。
しかし、標準的なインターフェースを事業法人間に置いているわけです。たとえば、
ファイルを GE の Web Cash に送りたい場合には、決まったフォーマットがありまして、
インプリメンテーションをやってくれる人材も揃えています。デューデリをやる場合、そ
の成約に向けて、事業戦略の中でその事業会社がどのようなニーズを持っているか、
どのようなプロダクトを持っているのか見た上で、事業戦略を策定するわけです。銀行
も、絡んでくる。従って GE の新しいバンキング・ストラクチャーに取り込むには時間が
かかる。従って銀行口座を閉鎖し、そして新しい口座を開ける。その段階において基
本的なインフラに彼らを取り入れるわけです。従って、いろんな人材が絡む非常にコ
ーディネートされた一貫したプロセスになっています。そういうプロセスを持っているの
です。
犬飼 ありがとうございます。GE さんの M&A に関するデューデリジェンスのプロセス、
あるいはチームワークのプロセスというのは非常に効率的で、しかも協調性に富んで
いるということは、その道では大変評判です。
それでは、時間も多少押してまいりましたので、残りのご質問等はまた後程ということ
にさせて頂きます。
Paul さん、ありがとうございます。
犬飼 続きまして、先程来お話がたくさん出てきていますが、SWIFT CUG を実際に供
給されておられるスイフト ジャパンの吉見さんにお願いします。
27
スピーチ:「企業トレジャリーマネジメントと標準的メッセージツールの趨勢」
吉見 亨 スイフト ジャパン Vise President, Commercial Division
吉見 SWIFT のクローズ・ユーザー・グループ、CUG と言ったりするわけですが、ど
んなものなのかというのをアナログ的にちょっと説明すると、企業が銀行とデータをや
り取りしたいときに、SWIFT のデータの標準とフォーマットを使って、SWIFT のネットワ
ークを通じてやる枠組みだ、と言えます。ただ、これは伝統的に SWIFT というのが、銀
行ないしは証券会社さんといった金融機関さんの持ち物であったがために、企業が
SWIFT を使いたいというニーズが出てきてから実現するまでには数年の時間がかかり
ました。その経緯や今後の状況というのは、先程 Paul さんもちょっと触れられましたが、
私のスライドの 20∼22 ページあたりにごく簡単にまとめております。
(スライド 2)
本日は、今までの実例とか若干の経験を基にして、SWIFT から見て、企業さんと銀
行さんの両側を見られるものですから、そんなポイントから解説をさせていただければ
と思います。どうしても「SWIFT って何?」という方もいらっしゃるかもしれないので、ご
説明すると、SWIFT とは基本的ベルギーの共同組合法というものに基づいた共同組
合でございます。従ってユーザーさんが株主になるという仕組みをもっておりまして、
ユーザーさんが出資者ですから、いわゆる資本構成からいくと、国籍は、一応本部は
ベルギーにあるのですが、株主が世界に分散しているので、言ってみれば無国籍と
いうふうにも言えるかと思います。
目指すものというのは、高度に安全な金融の情報メッセージをデリバーする。かつ、
安価にデリバーする、というのがわれわれの目的でございます。30 年前に SWIFT が
できたときというのは、そもそもテレックスというのはなかなか効率悪いし結局全部人手
で解釈をして、人手でインプットしてということで決済をしなければいけなかったものを、
SWIFT によりなるべく標準化して、かつ Straight to Printer ではなく、Straight to
Process ができるようにというふうにしたのがその始まりでございます。
さらに、STP を推進するためにはどうしても標準が必要ということで、標準化の推進
母体にもなっておりまして、Paul さんのスライドにもございましたが、TWIST という団体
との、こと決済に関するフォーマットについては、SWIFT と一緒にやっているとか、同
じようなケースは、ロゼッタネットというハイテク産業のサプライチェーン・マネジメントの
中のペイメントカーネルについては共同しているなどあります。さらには、XML という
言葉が再三出てまいりましたが、拡張可能なモデリング・ランゲージということですが、
これに基づいた標準をつくることに、方法論として国連の CEFACT に基づいた、
ISO20022 というような方法論でもって XML スタンダードをつくっている母体でもあるわ
けです。
(スライド 3)
どういったところに使われているかというと、世界を見回しますと、いろいろな業態、
あるいは中央銀行さん、証券あるいは資金の決済システムといったところにも使われ
28
ている一方で、トラディショナルな銀行さんや証券会社さんの利用というのが基本的
には一番多いわけです。数字はあまり出すなと言われているものですから口頭でご
説明しますが、2004 年 1 年間で、SWIFT のメッセージというのは約 23 億件ございまし
た。これが 2005 年 1 年間では約 25 億件ということで、日本で言うと全銀ネットよりもち
ょっと大きいかぐらいの取引の件数を世界中でやり取りしているわけです。
企業と銀行の間ではどのぐらいのメッセージがやり取りされているのかという話です
が、2004 年ですと約 300 万件、2005 年には 500 万件になりました。今後 GE さんを初
めとして代表的な企業が SWIFT を使い始め、そのプロジェクトが進んでいくにつれ、
この数はおそらくもっと大きくなっていくのではないかと思います。
(スライド 4)
現時点では、代表的な企業というと、こちらに出ているように、各業種で代表的な企
業が、これだけではなく、全部で 60 社ぐらいございますが、皆さんがよくご存じというと
ころであるとこういったところをまとめました。特筆すべきは、最後のところで、お名前
はまだ出せないのですが、仮に A 社さんと呼ばせて頂きますが、日本のリーディング
カンパニーも現在 SWIFT を利用するということの準備を始められております。
(スライド 5)
多分に犬飼さんのお話や Paul さんのお話と重なってくる部分もあるわけですが、左
側に企業の、どんなシステムが入っているというところを絵にして、その上で真ん中辺
に、どういうレベルでキャッシュ・マネジメントというのを高度化していくのかというような
観点から、ポンチな絵をつくってみました。点線があるところが、おそらく大きな意味で
分岐点というか、分かれ目になると思います。企業さんの場合、多国籍であるかない
かは別として、ERP というのは半ば当たり前のように入れられるようなケースが昨今非
常に多くなっております。その中では、銀行とのおつき合いでは、たとえば日本国内
での円のキャッシュプーリングといったものは、銀行のサービス、ないしは銀行のイニ
シアティブで提供されます。同じことは、キャッシュプーリングなどについても言えると
思います。さらに、企業さんが財務管理を集中的にやろうと、多国籍にまたがるグル
ープ会社の資金の調達運用といったところ、あるいは市場取引の中央管理といったと
ころをやろうと思うと、トレジャリーマネジメントシステムといった形でシステムを入れるこ
とが必要になります。そのときに、銀行さんとどうつき合うのという話が、先程来 Paul さ
んがおっしゃられた SWIFTNet というか、SWIFT を利用するということになるのです。ト
レジャリーの目指すところというのは、トレジャリーセンターが確立して、取引を集中管
理できることです。さらにそれがもう少し高度化していくと、まさに GE さんが取り組まれ
ている、あるいは取り組まれようとしている部分だと思いますが、ペイメントファクトリー
ですとか、シェアドセンターといったところのように、大口の市場性の決済だけではな
くて、アカウンツ、ペイアブル、レシーバブルを含めて中央で集中的に管理するといっ
た体制になってまいります。将来的にこういうことがあるかどうかはちょっと私もよく分か
りませんが、そういった幅広い財務の管理を他の企業に提供するという、インソースと
いうようなところもひょっとしたら出てくるのかもしれません。
29
いずれにしましても、点線の下までは銀行のサービスを使うということでおそらく対応
ができると思うのですが、点線の上になってくると、これはもう何と申しましても、企業さ
んご自身がイニシアティブをとってやっていかなければいけないところになるのだと思
われます。
(スライド 6)
ERP+トレジャリーマネジメント+SWIFT のメリットというのは、突き詰めていくとどう
いうところかというと、1 番目には、当たり前のようですが意外となかなかできない、デリ
ーで世界中のグループ会社の各社の銀行口座の残高・異動明細を集約して見ると
いったところです。そのためには、多くの国の多くの銀行と標準のフォーマットでやり
取りをしなければいけないということになりますので、結果必然的に SWIFT という話に
なってしまうのかもしれません。
2 番目のポイントは、トレジャリーセンターが、各トレジャリーのアクティビティを中央
で管理することによって、当然のことながら、その企業のフィロソフィーを浸透させ、さ
らには内部統制をジョインするといったところになろうかと思います。
最後に、キャッシュフロー経営の基礎というか、足場固めと言うとちょっと言い方が曖
昧ですが、要は企業全体、グループ会社全体のキャッシュを見えるようにするといっ
たところが非常に重要なところでありまして、これの基礎になるのが ERP+トレジャリー
マネジメントシステム+SWIFTNet なのかなと思ったりする次第でございます。
(スライド 7)
企業が SWIFT を導入するといったときには、どういったところがメリットになるのか。
GE さんの場合には、ストラテジックな判断というお話もございましたが、細かい点を積
み上げていきますと、複数の銀行とのやり取りを行っている複数のシステムを管理す
るところの負荷の軽減と、銀行さんも今日はたくさんいらっしゃっているのでなかなか
言いにくいところなのですが、対銀行との取引の手数料の交渉のベースとして標準的
なツールを設けるということは、おそらくは大きなポイントのひとつではないかと思いま
す。キャッシュの把握もさることながら、セントラルのシステムをつくることによって、拡
張性、あるいは取引増加に対して人員を増加しなくてもよい体制をつくるといったとこ
ろもまたポイントだと思いますし、いくつかのケースで過去の独立したコンサルティン
グ会社の調べによると、ある企業では 170 万ユーロ投資したら 5 年で約 800 万ユーロ
のネットリターンがあったとか、累計で 300 万ユーロ投資したら 1,000 万ユーロのリター
ンがあったとか、計量化できるところと、必ずしも計量化できないところはあるわけです
が、再三 Paul さんのプレゼンを思い出しますと、多国籍でセントラルのトレジャリーが
あって、非常に大きなボリュームがあるところにとっては、こういった SWIFTNet を使う
という投資効果というのが、ある程度明示的に実証されているというケースが広がって
いるわけでございます。
(スライド 9)
ここでマイクロソフトの例、これはマイクロソフトがプレスリリースでやったところを絵
30
に落としてみたわけですが、基本となるのが ERP、その上に SAP のトレジャリーマネジ
メント機能である Corporate Finance Management を付け加えて、あとはマイクロソフト
さんお得意のいろいろな BizTalk などのツールを使って、世界中、彼らはプレスリリー
スでは 1,200 口座を集中管理するという体制をつくられた、といったところを絵にして
みました。
(スライド 10)
それから気になる日本を代表する A 社さんの例ですが、44 カ国 400 社超のグルー
プ会社の管理を集中して行うために SWIFT を使うということを今準備されておりまして、
これもやはり SAP を初めとした ERP の上にトレジャリーマネジメントシステムがあり、さ
らには、GE さんと非常によく似た使われ方になるのではないかと思われますが、決済
指示は伝統的な FIN のフォーマットを使い、口座情報を代表的な銀行から FileAct の
形で集約するといった形で進められております。
(スライド 11)
システム的にもう少し簡単にブレークダウンしますと、要は、何度も出てきますが、
ERP、TMS と、その SWIFT につなぐための Integration の連動ツール、この辺かおそ
らくは一番大きなポイントになるのではないかと思います。
(スライド 12)
では具体的に、トレジャリーマネジメントシステムや Integration ツールってどんなの
があるのかというのは、過去いろいろとこういったお仕事をしていく中で見てきますと、
SUNGARD の Quantum Avangard ですとか、KTP、XRT、犬飼さんもおっしゃって GE
さんも使っていらっしゃる Trema、あるいは Wall Street といったところが、企業ないし
は銀行で多く使われる財務管理システム、トレジャリーマネジメントシステムと言えると
思います。
こういったいくつかのシステムをつなぐ場合には、やはりどうしてもミドルウエアと称さ
れる製品が必要になりまして、メッセージベースでやり取りをする MQ Series ですとか、
もう少し高度化した eGate とか、Webmethod、あるいは Websphare といった製品がいろ
いろ出ておりまして、これは企業さんのポリシーとか、今あるインフラに応じてご選択さ
れていくものなのかなと思います。
さらに、SWIFT に対する Integration ツールという意味では、特に FileAct という、
SWIFT 上のファイル転送の仕組みに関しては、製品としてスターリングコマースの
Connect Direct for SWIFTNet ですとか、フランスの会社だったと思いますが、Axway
ですとか、これはベルギーの会社ですが TRAX といったところがもう既に製品があっ
て、実際に銀行ないしは企業で使われています。
さらにはもう一歩進んだ形で統合的にかつ異機種のシステムを、異なったプロトコル
と異なったフォーマットをダイナミックに管理しましょうということになると、Sterling
Integrator ですとか、TRAX といったところが、おそらくはこれから日本でも使われてく
るようになるシステムではないかと思われます。
31
(スライド 13)
次にプロジェクトの成功要因ですが、ここはおそらく Paul さんの生のお言葉のほう
が圧倒的にパワフルなのですが、やはりプロジェクト体制と管理、さらに、一番下に置
いてしまいましたが、スポンサーである経営層の強いサポートというのが一番大きなポ
イントになるかと思いますし、さらにはギャップアナリシスといったところや、事前のテス
ト、それからパートナーとして選ぶ銀行さんの SWIFT の理解度といったところも非常に
重要になりますし、言うまでもないことですが、業務としての要件はどこにあるのか、ゴ
ールはどこにあるかということを明確に定義しておく必要があると思います。
(スライド 14)
もうひとつ逆のポイントで注意しなければいけないことというのが、SWIFT も標準フ
ォーマットとして定めているわけですが、アメリカとヨーロッパでは微妙に、同じ SWIFT
のメッセージタイプを使うにも微妙に違うとか、市場慣行上、たとえば日本ではこういう
ものはやっていないといったところも注意して進めていく必要がございますし、銀行さ
んによってシステムの機能や決済に対する対応というのは微妙に違ってくるケースも
ございます。そういったところを事前に洗い出しておいた上でプライオリティをつけると
いうのが、おそらくは注意されなければいけないポイントだと思います。
(スライド 15
今日は銀行の方も非常にたくさん集まっていらっしゃるので、この SWIFT のクロー
ズ・ユーザー・グループといったところをどう位置づけるかというところですが、おそらく
は、企業に対して標準化ですとか、効率性のもとになる STP というのを切り口に、グロ
ーバルにネットワークで決済サービスをどう提供できるか、その上でどういうふうにアド
バイスをされるかというのがポイントになると思います。
そのためには、6 点ぐらいずらずらと書いたわけですが、おそらく日本の銀行さんの
場合、特に下から 2 番目と一番下のところが――私も元銀行員なのでよく分かるので
すが、本支店をまたいで RM とは違ったところで実際の決済のサービスが行われると
いうケースというのが今後非常に増えてくるし、特にグローバル企業の場合にはその
ニーズが高いのですが、そのときに、サービスを提供する支店と RM をやっている支
店と、そこでどう収益配分をしてあげるかといったところのルールづくりというのが必要
になるかなと思いますし、そのために、サービスをするグローバルな体制、多くの欧米
の銀行さんでは、グローバル・トランザクション・サービスというような部門が確立してい
て、その中で RM とのやり取りを含めてお客様と一緒に推進をされているように聞いて
いるわけですが、そういったところがこれからつくられていかなければいけないポイン
トなのではないかと思います。
(スライド 16)
今後の予定としては、先程の A 社さんが、お名前が出せるようになれば、可能であ
ればケース・スタディといった形でご報告をしたり、あとはこの後のパネルでも触れたり
32
することもできると思います。 その中で、本邦の決済インフラと海外の決済インフラと
いうのは非常に親和性がないわけで、そこをどう対応していくかといったところについ
ても今後考えていきたいと思います。スイフト ジャパン自身でも、年に 1 回ぐらい、非
常にオープンな形でフォーラムを行っておりますが、この次のテーマとしては、Post
ERP みたいな切り口から、いろいろな調査なり実例の紹介といったことができればい
いかなというふうに思っております。
最後はまた宣伝になってしまいますが、今年は SIBOS という、SWIFT が主催するグ
ローバルなカンファレンスがシドニーで 10 月に行われます。またこちらのほうも、おそ
らく Web などを通じて、どういった進捗になっているかというのをシドニーでアップデ
ート致しますので、ご覧になっていただければよろしいかと思います。
以上、簡単ではございましたが私からの説明を終わらせて頂きます。ありがとうござ
いました。
犬飼 吉見さん、どうもありがとうございました。 続きまして、ただいま吉見さんのほう
からの本邦のコミュニケーションシステムの話も出てまいりましたが、日銀ネットもそう
かもしれませんけれども、そういうシステムを供給されておられる会社からということで、
NTT データの村上様よりお話を頂きます。
33
スピーチ:「グローバリゼーションと IT 経営」
ビジネスプロセスとキャッシュの流れを可視化する IT 経営のトレンド
村上 雅春
NTTDATA 決済ソリューション事業本部 eB ビジネスユニット eB 商品企画担当 部長
村上 NTT データの村上でございます。私は、IT を提供している企業の立場で、本
日のテーマであるグローバル・キャッシュマネジメントについて考えてみたいと思いま
す。
まず、今 IT の世界で話題となっている内部統制についてお話をします。そして、そ
れが最終的にキャッシュ・マネジメントに密接に絡んでくることに言及します。次に、そ
れを前提としたときに、日本のキャッシュ・マネジメントのどういうところに課題があるか
という点に触れ、それをクリアするために、私どもとして提案できるいくつかのアイデア
をご紹介したいと考えています。
(スライド 2)
最初に、内部統制をめぐる動きということで、これは皆さんもご存じのとおり、米国で
2001 年当時 7 位だった超大企業のエンロンが、不正経理の指摘を受け、何回か決算
修正をした結果、ある日突然債務超過に陥って、会社更生法の適用を受けました。
その時点で投資家が持っていた株や債券が、一夜にして紙屑となってしまいました。
最近、日本でも同じようなことが起こっていて話題になっておりますが、当時の米国に
おいても大問題となったのは周知のとおりです。昨今のようにお金がグローバルに世
界中を駆けめぐるようになりますと、投資家保護という観点でこういう企業の不正をどう
防止していくのかということは非常に重要なテーマになってきます。その結果、2002
年 7 月に、サーベンス・オクスリー法(米国企業改革法)という法律が米国で成立をさ
れました。この法律は、企業に内部統制報告書の作成と開示を義務付け、経営者が
これに対する評価をコミットして、その経営者のコミットが正当であるかどうかを監査法
人が監査するという内容となっています。
実は、今日本でもこういう法律をつくろうということで、行政当局の関係者の方が一
生懸命ご努力されており、いろんな法律を適宜改正しております。2003 年には「企業
内容等の開示に関する内閣布令」が改正されました。それから 2004 年 11 月には東
京証券取引所等の上場規制も改正され、最終的に金融庁の「ディスクロージャー制
度の信頼性確保に向けた対応について」が公表され、最終的に、「財務報告に係る
内部統制の評価及び監査の基準」として、日本版 SOX 法と言われる草案が公開され
ています。
(スライド 3)
この日本版SOX法は、米国とおなじように、基本的に、企業の信頼のおける決算
書をつくるために、ちゃんと内部統制をしていますということを確認して、それを外部
に報告することを義務付けることを目的とした法律です。「内部統制報告書」という形
で財務報告書の一部として報告することが義務づけられますので、当然のことながら、
34
それを外部の監査法人等が監査をするということになるわけです。
(スライド 4)
内部統制の考え方も国際会計基準と同じように国際標準になっておりまして、ここ
に書いてあるとおり、業務の有効性と効率性、つまり、ビジネスプロセスそのものが有
効的で効率的であるかどうかということが分かるようにすることが問われます。それから、
当然のことながら、その結果として、財務報告書、財務諸表等が正確につくられてい
ることもコミットすることになります。さらに、法律に則ってつくられていることや、あるい
はビジネスプロセスそのものが法律違反してないということもコミットしなければいけま
せんし、最終的にそれが企業の財産の保全にもつながっていくということになるわけ
です。
こういうことを経営者がちゃんと自分で確認をして、対外的に公表するということが義
務づけられるわけです。そうすると、ここに書いてある①∼⑥のような、まずちゃんとビ
ジネスプロセスを管理しているかどうかということについて評価するための枠組みをし
っかりつくらなければいけませんし、それからどういうリスクが起こるかということも事前
に評価をして、そのリスクに対応するアクションがとれるようにする。そのルールを規定
した上で、実際にそのルールどおりに活動がされているかどうかというのをモニタリン
グして、それを最終的に報告書という形で公表するという一連の行動をやっていかざ
るを得ない状況になるわけです。
(スライド 5)
まだ公開草案が開示されているだけですので変わることも想定されますが、早けれ
ば 2008 年の 3 月期に内部統制報告書をつくるということが義務づけられる予定です。
コンサルティングをおやりになっている方々に、「この準備にどれぐらいの期間がかか
りますか」と聞くと、「大体 1 年半ぐらいかかりますね」という返事が返ってきます。ここに
いらっしゃる皆さんの企業の場合には、かなりビジネスプロセスそのものが可視化され
て、当然のことながら、そこに必要な内部統制の仕組みが作り込まれていると思いま
すが、もしそういうところに不備があるとすれば、そういうビジネスプロセスのルールを
決めた上で、それを実際にやらせて、それを評価していくという、PDCAを回していく
作業が必要になりますので、かなり準備に時間がかかることになります。
(スライド 6)
ですから、こういうものが基本的に法律で規制されることによって、すべての企業、
特に上場している企業、もしくはこれから上場しようとしている企業は、こういうビジネ
スプロセスを可視化して、さらにそこに内部統制の仕組みを組み込んで、PDCAのサ
イクルをグルグル回していく仕組みが必要になります。また、その仕組みに何か問題
があれば、それが自律的に改善されるような仕組みをつくっていくことが問われるわけ
です。
このようなトレンドに対応すべく、IT ベンダーは、ビジネスプロセスを可視化するとい
う意味で非常に役に立つERP等の仕組みに、内部統制の仕組みも組み込んでいく
35
ことが必要となっており、組織単位の管理からビジネスプロセスの管理に仕組みその
ものをどう移行していくのかという、発想の転換が問われています。
このような発想の転換や、もう皆さんがおやりになっている国際会計基準に準拠した
グループ経営を前提にすると、まさに個々の企業単位の管理ではもう限界がありまし
て、グループ単位、もしくはそれをさらに超えて、取引先をも含めたビジネスプロセス
の単位の管理というものが必要になってくるということです。また、IT ベンダーは、この
ような企業ニーズに対応するために、これから知恵を絞って、新たなソリューションを
提供していくことが問われているわけです。
(スライド 7)
ご覧のとおり ERP の特徴の1つは、情報そのものを大福帳データベースで一元管
理して、それを必要なときに必要な人がいつでも確認できるようにすることにあります。
さらに重要なのは、その業界でナンバーワンとなっているような企業のビジネスプロセ
スを分析して、ベストプラクティスモデルをつくって、これをシステムに組み込んでいく
ということも ERP の 2 つ目の特徴です。先程 Paul さんがお話をされていました GE さ
んの仕組みをうかがっていると、まさにこのビジネスモデルそのものを旨く可視化して、
そこに内部統制の仕組みも組み込んで、その結果としてキャッシュ・マネジメントが行
われているように私には聞こえました。つまり、グローバル・キャッシュマネジメントを高
度にやろうと思えば思うほど、ビジネスプロセスそのものをちゃんと整理していくことが
必要になってくると言えます。
(スライド 8)
そのためには、今 IT ベンダーから提案されているようなビジネスプロセスマネジメン
ト(BPM)という新しいコンセプトのソリューションが必要になっています。これはビジネ
スプロセスそのものを可視化するとともに、ここに内部統制の仕組みも取り込んで、そ
れが税法、商法、商取法等の既存の法律に照らし合わせて妥当であるかどうかという
ことも可視化して、これがちゃんと実行されているかどうかをモニタリングできるように
する、新しい企業システムのコンセプトになります。
(スライド 9)
今 IBM 等のITベンダー各社から、いろいろなBPM製品が提案されており、大まか
にこれを整理すると、ビジネスプロセスそのものをモデリングし、それから、そのモデリ
ングに従って実際に実行できる環境を提供する製品群や、そのビジネスプロセスがち
ゃんと守られているかどうかをモニタリングできる機能を持っていて、最終的にそれが
評価されて、問題となる部分や、修正すべきものについてはアラームが立って、そこ
に対して手を打っていけるような製品群となります。こういうものを最終的には ERP と
組み合わせて使いこなしていくということが必要になってくると思います。
(スライド 10)
そうすると、ここに書いてあるとおり、企業全体のビジネスプロセスや、内部統制も
36
可視化されて、不正が起こらないようにモニタリングされ、評価して対策を打っていけ
るような統合的な企業の仕組みというものが確立されるようになるわけです。もし、グロ
ーバルな経営をされる企業の場合には、世界的な観点でこのような仕組みをつくって
いくことが問われるわけですが、それを実現するためには、非常にコストもかかります
し、時間もかかると思われます。
しかし、そういうものをつくっていかないと、最終的には投資家に信用してもらえなく
なって、結果として株価も維持できず、株価が維持できないと、その企業の価値その
ものがどんどん低下して、結果として資金調達などに不利な条件がつけられるという
悪循環に陥ることになります。その悪循環に陥らないためにも、ERPをベースにBPM
の仕組みをしっかりつくっていくということが重要となるわけです。
(スライド 11)
一方、キャッシュ・マネジメントについても、このビジネスプロセスを可視化して、内
部統制のもとにしっかり管理していくことと同じように、キャッシュ・マネジメントも最終
的には企業価値を向上させるということにつながるわけですから、実はその目的は一
緒であります。つまり、キャッシュ・マネジメントのゴールは、企業価値を向上させてい
くということで、そのためにキャッシュをどう効率的に管理していくかということが問われ
てきます。しかも、難しいのは、グループ内のキャッシュそのものを統合的に管理する
とともに、アセットマネジメントの対象となるバランスシートも、キャッシュ・マネジメントと
表裏の関係として、取引先企業との取引の流れも踏まえて、そのお金の流れを管理
していくということが必要になる点だと思います。
(スライド 12)
更に、トヨタ自動車の財務担当部長さんから伺いましたが、キャッシュ・マネジメント
においては、オペレーショナルサイクルの全てのビジネスプロセスそのものが、キャッ
シュ・マネジメントそのものなのだということです。ここに書いてあるように、ビジネスを
やるために原材料を買って、お金が在庫という形に転化されて保管され、それが最終
的には製品という形に組み上げられ、それを販売することによって売掛金が計上され
て、最終的にそれがキャッシュとして回収される、このオペレーショナルサイクルがキ
ャッシュ・マネジメントそのものであるとともに、ビジネスプロセスそのものにもなるわけ
です。ですから、ご覧のとおりキャッシュ・マネジメントはまさにビジネスプロセスそのも
のを管理できなければ実現することが難しいと言えるわけです。ここがこれから内部
統制を前提として、企業のITシステムそのものを改善していくことが問われる時代に
おいて、非常に重要な観点になるわけです。
(スライド 13)
ここで日本のキャッシュ・マネジメントの現状を考えるために、NTT データが提供し
ている ANSER というキャッシュ・マネジメントに利用されているネットワークサービスを
ご照会したいと思います。ANSERは、日本の国内だけに利用できる統一的な EB(エ
レクトロニック・バンキング・サービス)を提供するプラットフォームとして、かれこれ 30 年
37
ぐらい利用されています。最初のスタートは、どちらかというと入出金明細を電話等で
問い合わせるというサービスがメインだったのですが、1980 年後半ぐらいからパソコン
が日本にどんどん普及してきて、これが企業にもどんどん導入されるとともに、パソコ
ン系のサービスのトランザクションもそれに応じる形で徐々に増えてまいりました。そ
の後、インターネット・バンキングが個人や法人向けに開発され、これが普及するとと
もに、音声系の電話での問い合わせで入出金明細を確認するというニーズはどんど
ん減り始めて、パソコンで残高を確認したり、入出金明細を取得したり、あるいは電子
的に資金移動をしたりといったサービスを行う企業が逆にどんどん増えてきていると
いう状況にあります。
それとともに、先程 Paul さんがお話しになったようなSTP(ストレートスループロセッ
シング)でキャッシュ・マネジメントをやりたいという企業のニーズが非常に高くなって
います。特に資金集中配分というキャッシュプーリングのサービスについては、大手
の企業が非常に興味を持っており、これを私どものプラットフォームを使って、日本国
内だけですが、実現するということが行われています。このように、企業のITシステム
と銀行のITシステムを直接接続することをどんどん突き進めていくと、先程言いました
ように企業のビジネスプロセスそのものと、銀行が提供するキャッシュ・マネジメントを
ストレートスルーでつなげていきたいというニーズが非常に高くなってきます。こういう
企業ニーズに応えるために、私どもとしてどういうソリューションを具現化するかという
ことで、昨今考えたものがございます。これは後でご説明します。
このようなソリューションを提供するにあたって、私どもなりに企業の EB 利用におけ
る課題というものを整理しました。それが次のページです。
(スライド 14)
ご覧のとおり、企業のビジネスプロセスと銀行のキャッシュ・マネジメントとの間に大
きなギャップがあって、なかなかストレートスループロセッシングで連携することができ
ない。その結果として、手作業がいろんなところで発生し、結果としてお金の管理がう
まくできないというのが、私どもの企業ヒアリング調査の結論でした。
(スライド 15)
従って、こういう課題を少しでもクリアできるようにということで、企業の LAN と金融機
関のキャッシュ・マネジメントを直接接続して、ストレートスループロセッシングができる
eBAgent というサービスをご提供しています。この実例は、新聞等で報道されていま
すが、リコーグループが、eBAgent をリコーグループのキャッシュ・マネジメントに利用
し、キャッシュプーリング業務を大幅に効率化しています。その他いくつかの企業グル
ープのキャッシュプーリング、あるいは ERP と連携した高度なキャッシュ・マネジメント
を具現化するための道具としてご利用いただいている状況です。
(スライド 16)
今まで申し上げたとおり、このキャッシュ・マネジメントは、企業が法的に内部統制
を義務づけられる時代になれば、最終的にビジネスプロセスそのものと密接に絡んで
38
きて、結果としてやらざるを得なくなるマネジメントであると言えますし、IT システムのト
レンドを踏まえた上でもそのことを確認できます。そして、そのためにはやはり先程言
いましたように、キャッシュ・マネジメントの現状の課題をクリアする仕組みや制度とい
うものを見直すことが問われています。こういうものをクリアする仕組みや制度をつくる
ための知恵というものを、皆さんと一緒に考えていく必要があるわけです。このような
観点で、私どもとしては、たとえば、日本の中で共通のキャッシュ・マネジメントのプラ
ットフォームとしてご利用いただいている ANSER と SWIF ネットワークを、ゲートウェイ
をかませてつなげて、日本国内だけではなくて、グローバルな観点でキャッシュ・マネ
ジメントができるような仕組みをつくれないかというふうなことも、まだ構想段階ですが、
検討しようと考えています。
こういうことで、世の中の変化に合わせて新しいアクションを起こしていきたいと考え
ております。
以上が私の本日申し上げたい論点です。まとめとしては、今後、内部統制のシステ
ムづくりは企業にとって非常に重要なテーマになります。そのときに、ビジネスプロセ
スマネジメントとキャッシュ・マネジメントというのは、表裏一体の関係に位置づけられ
ます。その中で、企業のITシステムと銀行のITシステムを直接接続できるストレートス
ループロセッシングやグローバル・キャッシュマネジメントをどう具現化するかということ
が問われ、そのために、新たな仕組みや新たな制度というものが問われているという
ことを申し上げて私のお話を終わります。ありがとうございました。
犬飼 村上さん、どうもありがとうございました。企業経営にとって本当に重要なポイン
トをズバッとお話しをいただいたという感じが致します。
39
パネルディスカッション:
「クロスボーダー・トレジャリーマネジメントが日本企業ではなぜうまくいかないか?」
伊藤(GE)・小森(スタンダードチャータードバンク)・村上(NTTD)・大山(三井住友銀行)・吉見
(SWIFT)・犬飼
犬飼 それでは、これからパネルディスカッションに入りたいと思います。皆様のほうか
ら向かいまして、先程お話しいただいた NTT データの村上さん、三井住友銀行の大
山さん、GE の伊藤さん、SWIFT の吉見さん、そして私のお隣がスタンダード・チャー
タード銀行の小森さんです。よろしくお願いします。
犬飼 今までのお話をおうかがいして、トレジャリーマネジメントにおいて、GE さん、大
変に頑張っておられて、素晴らしいシステムを導入されておられるということがよく分
かったわけですが、その中で、先程の GE さんのペーパー、Global Locations の 5 ペ
ージですが、GE さんのハブといいますか、Treasury Centers ということで、アメリカがス
タンフォード、ヨーロッパがデリー、ヨーロッパのデリーというのはちょっと面白いですけ
れども、アジアが東京ということで、通常金融機関ですと、アジアのハブを東京に置か
れる方ってすごく少ないと思うのですね。そういう意味で言うと、よくぞ GE さんはアジ
アの拠点として東京を選んでいただいたということが非常にうれしいなという感じがす
るわけです。それはともかく、まず話の口火を切って頂くのは、GE の伊藤さんからお
願いしたいと思います。GE における日本・アジアのトレジャリーマネジメント導入に際
してのご苦労話のようなところからお話をいただけるとありがたいです。
伊藤 こんばんは。GE の伊藤です。トレジャリーセンターのことについて簡単にご説
明申し上げます。
5 年前、6 年前につきましては、アジアについても今のように日本に集中化しており
ませんで、シンガポールにあったり香港にあったりというものが、先程 Paul の説明の中
にありましたように、スタンダードのセイムプロセス・セイムプラットフォームというものを
使うことによって、できるだけ効率的にひとつのところに持っていくということで、変遷
をしまして、2003 年にアジアトレジャリーセンターということで、日本にフルファンクショ
ンということを持ちました。リージョナルリーダーとしては、今日も一番後ろに髭を生や
して座っているアザム・ミストリ(Azam Mistry, Managing Director, Asian Regional
Treasury Center)というのがおりまして、彼のもと、私はオペレーションのヘッドというこ
とでコントロールしています。日本からアジアパシフィックの、先程出ましたようなキャッ
シュプールなりのコントロールというものを行っているということです。
苦労について言うと、何が苦労かということは、ほとんど神経が麻痺しているので、よ
く分からない部分はあるのですが、逆に、セイムプラットフォーム・セイムプロセスという
のがもうギブンなものとして与えられています。やっぱりこれをアジアの中に導入して
いこうとなったときに、それが要するに導入できるものなのか、できないものかというの
は、やはりその国その国でビジネスとのコミュニケーションもありますし、当局との規制、
それに本当に従ってできるのかというところは、時間をかけて議論をしていかなけれ
40
ばいけない。
GE の特徴として胸を張って言えるのは、絶対に当局なり、その国の規制があったら、
それに従う。絶対それは破らない。だめなものはだめだということなのですが、それを
どうだめなのか、どうならできるのだということを、本社の人間と説明するというのは非
常に大変苦労があります。日本についてはまた後でコメントさせて頂きますが、そんな
ような感じでやっています。
2003 年から、日本でも電子 CP というのがありまして、GE ジャパン・ファンディング
KK という会社を設立しまして、そちらのほうでも電子 CP の発行というのを行うようにな
っています。
犬飼 ありがとうございました。このパネルディスカッションのタイトルは、「クロスボーダ
ー・トレジャリーマネジメントが日本企業ではなぜうまくいかないのか」という、一風変わ
ったタイトルになっているわけですが、今 GE のお話をお聞きしたところで、それを受
ける形で、日本の企業のキャッシュ・マネジメント、このあり方に深く関与されてこられ
た、そういうご経験をお持ちの、スタンダード・チャータード銀行の小森さんのほうから、
クロスボーダーの商品展開に関するお話ということでお願いできればと思います。
小森 「日本企業ではなぜうまくいかないか」という議題よりも、どちらかというと、「なぜ
うまくいかなかったのか」というほうが実態に近いと思います。もちろん、まだ、「なぜう
まくいかなかったのか」ということは今も続いていまして、うまくいかせるためには、それ
なりの工夫、努力が必要だということで、いろいろと先程からお話も出ていましたが、
いくつか越えなければならないハードルがあります。
グローバル・キャッシュマネジメント、特にクロスボーダーの仕組みというところで言う
と、日本の黎明期というのは大体 10 年ぐらい前になると思います。時期的には、ユー
ロの導入がちょうど行われたころに、初めて日本の企業さんが真剣にクロスボーダー
のキャッシュ・マネジメントというものを検討され始めたということが背景にあるというふ
うに考えています。私も、大体 10 年少々このキャッシュ・マネジメントという分野でいろ
いろと仕事をさせていただいておりまして、そういう中から一体何が問題だったのかな
ということを今日お話しさせて頂きながら、これが「いかなかった」というところからうまく
「いく」というところまでどうやってつなげていくのかという話につなげていければなとい
うふうに考えています。
まず、キャッシュ・マネジメントというと大別して 2 つありまして、いわゆるリクイティマネ
ジメントという部分と、いわゆるペイメントのマネジメントの部分ですね、この 2 つに大別
されるのですね。当然お客様はキャッシュ・マネジメントの導入を策定されるときには、
この 2 つをクオンティファイして、大体どれぐらいここから、コスト削減であるとか、そうい
うふうなメリットが出るのかというところを数字にして出されるのが一般的なのですけれ
ども、これがいわゆる入口の部分に当たります。キャッシュ・マネジメントの導入という
のは、もちろんこれはプロジェクトになりますので、入口から出口があります。入口の
部分がこの策定のところで、真ん中が導入、3 つ目の出口のところは多分トレジャリー
マネジメントという形の運用になると思うのですが、過去 10 年間の日本の企業さんを
41
見ていると、この 3 つともすべてつまずいてきているというのが実情だったなあと考え
ています。
まず入口の部分ですが、大体 10 年ぐらい前にそういうプロジェクトの策定をされたと
きに、ドルの金利はまだよかったのですが、ペイメントの部分を、いわゆる銀行のシス
テムとクロスボーダーをグローバルにつなごうというときに、ERP がなかったのですね。
ERP の導入がまだ非常に遅れていまして、ERP の導入があっても、そこの部分にトレ
ジャリーのマネジメントファンクションがぽっこり抜けていたりして、それはどうなってし
まうかというと、結局ペイメントファクトリーとか、そういうマスの部分でメリットを得ようと
いう、キャッシュ・マネジメントひとつのメリットの部分が欠如してしまうというところから
始まって、大体のお客様が、10 年ぐらい前のときには、結果としてリクイティマネジメン
ト、いわゆるプーリングのみを導入という方向で動かれたということがあります。
その後導入が始まったわけですが、導入が始まると同時に何が起こってきたかとい
うと、ドルの金利が下がってきてしまったということが始まってしまいまして、これはいか
んということで、今度はペイメントのところでもうちょっとメリット感を出せないかなという、
いろんなお客様がそういう形で考えられたわけですが、いわゆる ERP の導入時にトレ
ジャリーマネジメントの仕組みを入れていませんので、TMS というのは銀行のシステム
との連携というのはもともと考えられてデザインされているのですね。従って連携を実
現するときに、極めて安いお金でできるようになっているのですが、それがない ERP
のシステムと銀行のシステムをつなごうとすると、比較的高い導入費用になる。そうい
うことで、導入プロジェクトの途中で、思いもかけないコストが発生してしまって、財務
部の方が非常に四苦八苦するという状況になったということが、導入時のつまずきとし
て挙げられます。
実は、導入時で一番大きな問題になるのは、本当のところを言うと、店内の抵抗な
のですね。一般的にグローバルとか、たとえばヨーロッパとか、そういうリージョナルベ
ースの大きな導入プロジェクトの策定というのは、本店が仕切られるのが一般的なの
ですが、その後導入の段階になると、当然各国のトレジャラーであるとか、あるいは各
国の現法の社長さんのご意向が非常に大きな力を持ってくる。そこのバインがまった
くないまま導入作業が始まってしまっているというのが大きな例です。
そうなるとどうなってくるかというと、骨抜きにされてしまうのですね。骨抜きにされる
がために、たとえばキャッシュプールのプロジェクトに入ってこられないエンティティが
そこここに出てきて、そもそも最初に目論んでいた効果が表れない。そういう形になっ
てきてしまうということで、まず導入途中で非常につまずいて消化不良を起こしてしま
うということがよくありました。
先程の話でも何回も出ていましたが、やはりトップマネジメントが非常に強いフルサ
ポートとコミットメントがなければ、財務部の部長さんとか、シニアな方でも、海外の支
店にはもっともっとシニアな先輩方が行かれているわけですね。そういう方の意見は
覆せないのですね。これが日本の人間関係というか、そういう世界なので、ここはどう
しても避けて通れない。やはりトップマネジメントのサポートがないプロジェクトは失敗
する可能性が非常に高い。失敗せずとも、たとえば本店のトレジャラーさんがそういう
軋轢を好まずに、銀行に代わりに悪役をやらせるとか、いろんな形でちょっと消耗戦
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になってくるというケースが多かったということがよく挙げられると思います。
最後に、出口の部分ですが、出口でもつまずいたケースが多いですね。まずひとつ
にはトレジャリーマネジメントのシステムそのものがないということで、単純なトレジャリ
ーの機能を銀行にアウトソースできないかなとか、そういう非常に安易な方向に流れ
てくるようなリクエストも多々ありました。これはもともと銀行の仕事ではございませんの
で、どうしても問題が起こってくるというところが 1 点です。
あとは、最近ようやく日本でもできてきていますが、集めた資金、あるいは資金調達
の短期資金、短期余剰資金の運用のビークルは、オーバードラフト以外なかったとい
うところが非常に大きな問題だったと思います。それがいわゆる出口の部分で、大き
な 2 つの要因となって、最後はそこで固まってしまったような、そういうプロジェクトが多
かったように思います。それがいわゆる「なぜうまくいかないのか」という部分に当たる
と思うのですが、これはこれからまた変わってくるとは思います。
犬飼 ありがとうございます。今小森さんがおっしゃった海外にはシニアの方がいらっ
しゃるというお話は、これは海外だけではありませんで、国内にもいわゆる連結をベー
スの子会社、関連会社というようなところにもたくさんいらっしゃるということがあって、
その出先で頑張っておられる子会社、関連会社の経営者の方、あるいは財務担当責
任者の方が、特に国内の銀行さんと大変に特別のリレーションをお持ちになるという
ようなことも過去は多々あったのではないかなと思うのですが、それはともかくと致しま
して、国内の銀行、邦銀のお立場としてどんな感じをお持ちになられるでしょうか。大
山さん、お願い致します。
大山 三井住友銀行の大山です。今日は皆さんの先進的なお話をいろいろとおうか
がいしていまして、なんで邦銀できてないのだというので、何となく被告席に座らされ
ているようで、今朝からここに出てくるのが、気が重かったのですが、つらつら考えま
すと、邦銀がこれまで置かれてきた状況というのは非常に不自由な状況があったとい
うことがひとつあると思うのですね。システム投資なり何なりがなかなか自由にできな
いというところもあって、というのがちょうど多分今年ぐらいから変わりかけてきているの
かなというふうに今のところ思っています。
特に、先程から出ておりますような SWIFT の MA-CUG の話ですとか、こういったも
のというのは、多分今年、来年ぐらいで日本の会社の中でもいくつか採用されるところ
が出てくるのではないのかなと。もちろん、お客様=事業所さんのほうで相当の準備
をしないと、そんな簡単に入れられるものではないというふうに思っているのですが、
それなりの海外での売上があるとか、送金決済なり、資金のボリュームがおありになる
というような企業さんの場合には、情報のやり取りをかなり標準化することは間違いな
くできると思います。
あと、ここ 4∼5 年というのはインターネット・バンキングの時代だったと思います。各
銀行ともインターネットを使ったバンキング・ソリューションみたいなものを展開してお
出ししてきたわけですが、これが一定の規模以上の会社になってくると、インターネッ
ト・バンキングというのは個別の銀行のソリューションなので、そこのところを個別の銀
43
行の言語に合わせていかなければいけないという問題点が出てくると思います。従っ
て、こういったところを考えていくと、標準化というのはやっぱり出てくるのだろうなと。
ですから、そういう意味で GE さんが経験されたようなところというのが、多分ここ 1∼2
年ぐらいが変わり目といいますか、ちょっと潮目が変わってきたのではないかなという
ふうにわれわれは思っています。
実は国内の銀行さんでも、残念ながらうちではないのですが、できているところはあ
るようにうかがっています。対応が「一応できますよ」とおっしゃっている銀行さんもお
ありになるようですし、多分邦銀というのは、悪弊でもあるのですが、大体ひとつのサ
ービスを出すとみんなワッと対応しますので、こういったところという対応も、多分 1∼2
年ぐらいの間にできてくるのではないかなというふうに思っております。
それと、先程小森さんがいろいろ述べられたところでひとつだけコメントしておきます
と、私もここ 10 年ぐらいキャッシュ・マネジメントの仕事に携わっているのですが、面白
い事象として去年あたりから出てきたなと思うのは、いちばん最初の海外での CMS の
流れというのは多分 10 年ぐらい前にあったのだと思うのですね。結構そういうことで外
銀さんのプラットフォームを使われてというケースが多かったと思うのですが、そういっ
たお客様の中で、何となく当初予定していたような効果が出ていないので、やっぱり
見直しますというケースがいくつか出てくるようになりました。そういう見直しのケースの
中でひとつ非常に印象的なケースがありまして、ちょっとお客様の名前を出すわけに
はいかないのですが、ヨーロッパのキャッシュ・マネジメントが思ったようにワークして
いません、従って見直しをしますと。結果として、とある銀行さんを最終的にセレクショ
ンされたのですが、いろいろお話をうかがっていて、これは多分あんまりうまくいかな
いのではないかなというふうに、私は個人的に思ってしまったのです。
なぜかというと、理由は明快でして、海外、特にヨーロッパの個別のローカルな決済
みたいなものは自分たちには分かりませんと。従ってローカルの方にすべてお任せ
ですと。その人たちから上がってくる意見は、すべからく尊重します。従って、その会
社さんにとってのポリシーがどうであるかというのがあんまり明快になくて、どちらかと
いうと戦略論みたいなものがすっぽり抜けていて、戦術的にこれがよさそうだからこれ
にしようというような決め方をされた会社さんがあって、これは結構まずいだろうなとい
うふうに感じたケースがありました。多分そういった会社さんばかりでは当然ないと思
いますし、もちろんきちんとした決め方をされている会社さんはいっぱいあると思うの
ですが、ただ、私も 10 年ばかりアメリカでこの手の仕事を以前しておりまして、どうも日
本の会社ってそういう傾向が若干あるのではないのかなと。というのは、邦銀も同じよ
うなところがあるのですが、そういったところというのは何となくあるような気がします。
だから、ポリシーの話というのを GE の Paul さんが強調しておっしゃっておられました
が、どうもこのあたりに対する認識というのが、われわれ少し違っているのかなというの
が最近の感想です。
犬飼 ありがとうございました。それでは続きまして、吉見さんのほうから、先程村上さ
んのお話の最後のところに、グローバル・キャッシュマネジメントへの展開ということで、
SWIFT ANSER ゲートウェイ構想というお話も出てまいりましたし、日本における
44
SWIFT 導入についての問題、あるいは長年の経験を踏まえられた日系の企業と金融
機関へのアドバイスのようなことを、もしあればお願い致します。
吉見 あまりたくさんのことはカバーできないかもしれないのですが、日本には郵便局
を除いても 1,500 を超える金融機関があって、これは証券会社ではなく、いわゆる銀
行系の金融機関ですね。そのうちの、SWIFT に加盟していただいている金融機関さ
んはわずか 1 割なのです。もちろんこれはわれわれの努力の至らないところとか、敷
居が高いだとか、英語しかドキュメンツがないとか、いろいろな理由があるのですが、
結局そういうところがあるがために、外資系の企業さんのニーズ、あるいは本邦の企
業さんでも、グローバルのスタンダードベースで管理をしたいといったときに、たとえ
ば何々県の漁業連合では SWIFT なんか全然関係ありませんとか、何とか信用組合で
はそんなこと聞いたことありませんというような話になってしまう。
一方で、SWIFT から見たときに、日本の地位って、これはあんまり大きな声で言えな
いのですが、実は経済規模からすると非常に低いのです。イギリス、アメリカを先頭に、
欧州の主要国がきて、10 番目ぐらいにルクセンブルグという人口が日本の何十分の
一かという国のほうが、実は SWIFT の利用量が多いというような状況もございます。こ
れもまたわれわれの力が足りないと言えばそれだけなのですが、海外――特に欧州
が中心ですが――を見ますと、国内の大口の決済や小口の決済を SWIFT のインフラ
を使っているケースが多いのに比べると、われわれ日本においては、SWIFT を利用
する度合いが少ないのです。
もうひとつの理由というのは、日銀ないしは全銀ネットという国内の非常に強固な基
盤がございまして、こちらの手順ないしはフォーマットというのが SWIFT と合わない。
先程 Paul さんのプレゼンにもございました OFAC どう対応するのという中に、全銀の
フォーマット、これはカナですから、何らか壁を乗り越えなければいけないのですが、
その壁をどう乗り越えるかというのは、翻って企業の方々に提供する金融サービスを
どう拡充していくかというところと、実は表裏一体の関係にあるわけです。
一説には、日本には約 3,000 社の外資系の企業がある。そのうちの半分以上はお
そらくアメリカ資本の会社になっている。そのうちの多くの割合はアメリカで上場してい
る企業ということになると、必然的に、サーベンス・オクスリーの対応も迫られて、その
ために標準的にその企業の中で、中央で財務を管理する。そのときに SWIFT に加盟
していない銀行の場合どうするのかといったところが、先程の村上さんの ANSER と
SWIFT を何とかつないであげることによって、対海外へのリポーティングもできるだろ
うし、それからもう一歩広がってくれば、海外からの送金の指示の受付といったところ
もできるだろうし、さらには、海外から見たときの日本円のキャッシュプールというのを
もうちょっと使いやすくする、というようなことに広がっていけるのではないかなと思う次
第です。
いずれにしましても、フォーマットの違いといったところを誰かが乗り越えなければい
けないのですが、そこについて非力ながら、われわれも、官のシステム、あるいはパブ
リックのシステムというのはどうしても投資のサイクルも長いので、そうそう簡単には実
現というのはできないので、そこは何らか民間ベースでよりスピーディに解決できるよ
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うな方向を考えたいと思っている次第です。
犬飼 ありがとうございます。それでは、今の吉見さんのお話を受けまして、村上さん、
一言いかがでしょう。
村上 IT のベンダーの立場で言うと、日本の企業にとっては大きな問題で、IT ベンダ
ーにとっては大きなビジネスチャンスになっている点があります。それは何かというと、
お客様が自分流 IT の仕組みをつくりたがるという傾向が強いということです。たとえば
EB の世界で言うと、口座残高というのは 6 種類あるのですね。どういう残高があるかと
いうと、小切手などを手形交換所等に持ち込む前の残高と、持ち込んだ後の残高、
それから、最終的にそれをキャッシュとして引き出せる残高で、これがリアルで提供で
きる銀行もあれば、30 分もしくは何時間か後にそれを更新しているという銀行もあって、
その結果、私どもがご提供している口座残高というのが 6 種類になるわけです。どうし
てこういう差が出たかというと、これはある意味つくった人の個性がシステムに反映さ
れてしまったことが理由になるわけです。
先程 GE さんのほうでお話があったように、これからグローバルにキャッシュ・マネジ
メントをするとすれば、基本的なところについての標準化というのは非常に重要なテ
ーマになります。逆に言うと、この標準化なしにグローバル・キャッシュマネジメントは
できないだろうということが言えるわけでありまして、これが、私どもが今一番、頭を痛
めているところであります。
こういう標準化の問題を、できれば今回の SWIFT ANSER のゲートウェイ構想のよう
な案件で整理し、課題を明確にして、いいものをつくっていけないかなというふうに考
えているというのが先程のお話になります。
もうひとつ、私の観点から申し上げたいのは、日本はかなりキャッシュ・マネジメント
が遅れているように受け止められてしまいますが、非常にいいところもあるわけです。
日本のドメスティックな観点で言うと、実は金融機関さんの EB のサービスと全銀と日
銀というのが、ストレートスルーでつながっていまして、たとえば私が今携帯電話で
100 万円を犬飼さんに振り込むとすると、ほぼ 1 分後には犬飼さんはご自分の口座か
らその 100 万円を引き出せる。これは現金社会であるがゆえにつくれた仕組みであり
まして、流動性リスクを軽減していく、あるいは企業のビジネスプロセスとキャッシュ・マ
ネジメントを融合していく、そういう仕組みをつくっていかなければいけない時代には、
逆に非常にいいコンセプト、道具になるわけです。もしつくれるとすれば、SWIFT
ANSER ゲートウェイの中では、その日本のよさも取り込んだ上で理想的な仕組みをつ
くっていければと考えております。
犬飼 ありがとうございます。それでは最初に戻りまして、伊藤さんにお願いしたいの
ですが、GE のご経験を日本の企業、あるいは金融機関などに、どんなふうに生かし
てもらったらいいか、また、日本とアジア各国の政府に対する注文とか、もしあれば、
そんなことも含めて、総括的なコメントをいただけないでしょうか。
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伊藤 日本での今までやってきたところのお話をさせて頂きます。私は今年の 5 月で
丸 6 年になるのですが、日本の決済制度はどうなっているかというのをいかに本社の
人間に理解させるかというのに、最初の 3 年ほぼ費やしました。半年すると、半年前に
言ったことを忘れてしまいますので、ローマ字で、こういうふうにやらなきゃいけないと。
カレントアカウントは当座だから「ト」でやるのだよとかという説明を、ほぼ毎回のように
繰り返し、それだけでも相当な痛みはあったのですが、暫くしまして、Web キャッシュ
をどうやって導入していこうかという中で、やり取りをして、こういう変換をしたらどうだと
いう議論もほぼ、ここずうっと彼とやっていますから、それができてきた中で、一番困っ
たのは、日本の銀行さんにそういう話を持っていったときに必ず言われるのは、「そん
なこと考えているのは GE さんだけですよ」と。とても GE さんだけのためにそんな開発
はできませんと。もしするのだったら全部のコストを持って頂きます、というような対応
をされた銀行さんもいます。お名前を出すことはできませんけれども。
また、とある銀行さんにおいては、SWIFT によってファンドトランスファーのサービス、
こんなものやっていませんと。耳を疑ったのですが、なかなか手ごわいなと。バランス
レポーティングなんかは遅れますよということなのですが、ほかの国に比べて、非常に
コストが高いのですね。SWIFT を使って Web キャッシュのあれをやろうと思うけど、と
んでもないコストがかかってしまう、というのがここ 4∼5 年ぐらいまでですね。さっき大
山さんがおっしゃったのですが、そういう中でここ 1 年ぐらい風向きが変わってきたな
と思いますのは、私は前回犬飼さんとの会議のときに申し上げたのですが、GE がつく
っているインフラなりが、開示できるものは皆さんに開示しますと。シェアしましょうと。
日本の企業の方でも、同じように、同じものを構築しようという中に、お役に立てるので
あればいくらでも開示しますよということを、ここ 1 年ぐらいずうっと続けてきまして、や
はり同じ方向を見ていただける銀行さんというのがここ増えてきて、ようやく重い腰を
日本の銀行さんも、どうも GE だけじゃないと。これは考えなきゃいけないのだなという
流れになってきて、自分としては非常にいい方向に来て、ようやく面白くなってきたか
なというように感じています。
ちょっと GE という立場を離れるのですが、日本がファーイーストのとってもユニーク
な国で終わってしまうというのは非常に悔しい思いがあります。こういう先進的に進ん
でいるマルチナショナルの会社でこういうことをやっていますと、日本だって捨てたも
のじゃないのだという意味の中で、こういった Web キャッシュで全銀のファンクションに
加えたものというのが今出来つつあるのですが、これをステップにして、日本が終わっ
たら、次のアジアの国、またひとつずつつぶしていきたいなと、心が折れないように頑
張っていこうなというのが私の思いです。
犬飼 ありがとうございます。素晴らしいコメントを本当にありがたいと思います。先程
の Paul さんのコメントにしましても、今の伊藤さんのお話にしましても、リーダーとして
の責任というところがすごく心に響きました。本当に今日はありがとうございました。
時間が超過しておりますので、Q&A をお一方のみ受け付けさせて頂きたいと思いま
すが、よろしいですか。それでは、もし後程ございましたら、私どものほうにおっしゃっ
ていただければと思います。
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閉会のごあいさつ
犬飼 最後に、閉会のご挨拶を、NIRA の理事であります江崎から申し上げます。
江崎 NIRAの理事の江崎と申します。本日はNIRAのフォーラムにご参加を頂きまし
て大変ありがとうございます。4 時から 2 時間半余りという短い時間ではございましたが、
内容は大変コンデンスであったと思います。キャッシュ・マネジメント、さらには財務諸
表のための内部統制という、昨日起こりましたこと 1 を考えますと、大変時宜を得た話
題についても多大の情報が提供されたかと思います。
本日ご参加の皆様には、いろいろと参考になる点があったのではないかと、私ども
期待をしております。
本日の結果でございますが、近々に整理を致しまして、NIRA のホームページに掲
載を致します。そこでもまた参考にしていただけると思います。
それから、今後、このようなフォーラムを NIRA では計画をしております。ホームペー
ジに適宜ご案内を掲載致しますので、ご覧をいただければと思います。
本日のフォーラムを開催するに当たりましては、GE をはじめ、関係者の皆様に多大
のご協力を得ました。この席を借りまして改めてお礼を申し上げます。
最後に、ご参加の皆様に、長時間おつき合いを頂きまして本当にありがとうございま
した。改めてお礼を申し上げます。
犬飼 ありがとうございました。本日は長時間のおつき合いを頂きまして、皆様本当に
ありがとうございました。お手元のアンケートがございますので、ぜひご記入をよろしく
お願い致します。
それでは最後に、ご出演の皆様にいま一度盛大な拍手をお願い致します。(拍手)
Paul さん、本当にありがとうございました。
なお、本日は各方面から多数の方にお越しをいただいております。せっかくの機会
でもございますので、ロビーにおきまして適宜名刺交換などを行っていただければと
思います。皆様、ありがとうございました。
(閉会)
1
東京地検特捜部は1月 16 日に証券取引等監視委員会と合同で、証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)の
疑いで、ライブドア本社や堀江社長(当時)宅など関係先十数か所の家宅捜索を行い、23 日には、関連会社の
企業買収や業績を巡り虚偽情報を開示したとして、堀江社長(当時)らを同法違反(偽計取引、風説の流布)容疑
で逮捕した。東京証券取引所は 23 日深夜、東証マザーズ上場の同株式を同日付で監理ポストに割り当てたと発
表した。ライブドア社は 24 日に堀江氏の社長退任、子会社社長の平松氏の社長就任等経営陣の交代を発表し
た。
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出演者プロフィール紹介
(五十音順)
伊藤 薫(いとう かおる)
GE ジャパン・ファンディング株式会社 代表取締役 兼 マネージング・ディレクター、 オペレーショ
ン・サービス・アジア
82年 青山学院経営学部経営学科卒、日本債券信用銀行入行。ニューヨーク支店、資金為替部為
替市場課長、同部債券課長(商品国債課長)等マーケット部門を長く経験後、国際証券(現三菱証券)
を経て、00年ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社入社。04年マネージングダイレクター、
オペレーションズサービス・アジア。05年より GE ジャパン・ファンディング株式会社代表取締役兼務。
大山 英司(おおやま えいじ)
三井住友銀行EC業務部CMS室 CMS商品企画グループ グループ長
国際基督教大学教養学部卒業。住友銀行入行後、サンフランシスコ支店、米州営業第一部(ニューヨ
ーク)等を経て現職。米州におけるローカルCMS開発責任者をはじめ、10年以上にわたり海外の決
済業務開発、推進に従事。
小森 英哉(こもり ひでや)
スタンダード・チャータード銀行東京支店トランザクションバンキング部部長
カリフォルニア大学デービス校 数学部、経済学部卒業。ドイツ銀行東京支店、プライベートバンキン
グ部、法人営業部、グローバル・キャッシュマネジメント部部長を経て2004年10月より現職。
村上 雅春(むらかみ まさはる)
株式会社NTTデータ 決済ソリューション事業本部 eBビジネスユニット eB商品企画担当 部長
工学院大学化学工学科中退。昭和53年電電公社入社。NTT データ経営企画部、金融システム事業
本部等を経て、決済ソリューション事業本部 eB 商品企画担当部長。
吉見 亨 (よしみ とおる)
SWIFT Japan Commercial Divisioin Vice President
1981 年卒業後三菱銀行入行。内外で外為事務・システムなどを経験の後、98 年から 01 年まで Bolero
International(ロンドン)にて日本市場の担当・サポート体制の確立を実施。 01 年より現職。
犬飼 重仁(いぬかい しげひと)
NIRA 主席研究員
慶應義塾大学法学部卒。ハーバードビジネススクール AMP 修了。75 年三菱商事入社後、ロンドン金
融子会社を含め 18 年間の同社財務部門勤務等を経て、2002 年 NIRA に出向、2004 年より現職。早
稲田大学大学院法学研究科客員教授、慶應義塾大学経済学部企業金融論講師、成蹊大学法科大
学院非常勤講師、日本資本市場協議会事務局長を務める。
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「次世代企業トレジャリーマネジメントへの展望」アンケート結果
参加者約130名中80名程度の回答(回収率61.5%)
(小数点第2位四捨五入)
1.フォーラム全体を通して
回答数
率
大いに満足した
48
60.0
少し満足した
31
38.8
(79)
(98.8)
少し不満だった
1
1.3
大いに不満だった
0
0.0
80
100.0
肯定的比率 小計
計
2.問題提起: 「わが国企業キャッシュ・マネジメントの課題」 (犬飼 重仁)
回答数
率
大いに満足した
44
53.0
少し満足した
34
41.0
少し不満だった
5
6.0
大いに不満だった
0
0.0
83
100.0
計
3.ケース・スタディ: 「GE のグローバル・キャッシュマネジメント戦略」(Paul Burstein)
回答数
率
大いに満足した
50
58.8
少し満足した
31
36.5
少し不満だった
4
4.7
大いに不満だった
0
0.0
85
100.0
計
4.スピーチ: 「企業トレジャリーマネジメントと標準的メッセージツールの趨勢」(吉見 亨)
回答数
率
35
大いに満足した
50
42.2
42
50.6
少し不満だった
6
7.2
大いに不満だった
0
0.0
83
100.0
少し満足した
計
5.スピーチ:「グローバリゼーションとIT経営」(村上 雅春)
回答数
率
大いに満足した
29
36.3
少し満足した
38
47.5
少し不満だった
12
15.0
1
1.3
80
100.0
大いに不満だった
計
6.パネルディスカッション:「クロスボーダー・トレジャリーマネジメントが日本企業ではなぜうまくいかない
か?」
回答数
率
大いに満足した
42
56.8
少し満足した
26
35.1
少し不満だった
6
8.1
大いに不満だった
0
0.0
74
100.0
計
ご意見・ご感想一覧
1.フォーラム全体を通して
・ 個社の仕組みを他社も巻き込んでより発展させられないか、考えていく良いきっかけ
となりました。
・ 意欲的なフォーラムで感謝したい。半日程度の時間をとってもよいのでは?
・ 問題提起の場として、とても良い企画だと思う。
・ 初めて参加しましたが、大変参考になりました。今後も参加したく思います。
・ トレジャリーマネジメントについて体系的に理解できた。
・ 有料でも構わないので、もう少し時間をかけて詳しくやって頂けたらと思います。
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・ GEのM&A、キャッシュ・マネジメント、SWIFT との関係が明確。日本の課題を確認
できた。日本企業と銀行への啓蒙になったのではないか。引き続き啓蒙活動をお願い
したい。
・ 特に印象に残ったのは弊社のずっと先を行くGEさんの現状の課題認識、弊社とは課題
認識の土台は同じであるものの、グループオペレーションの違いから来るSWIFT利
用の課題認識の違いなどが垣間見られたこと、それから日本の決済システムの世界標準
化には壁が厚いなと感じたことなどです。
・ 次に第二弾をして頂くとすれば、もっと具体的なこと、たとえば規制・税制面では事業
法人のグローバル・キャッシュマネジメントは何を問題視しているかとか(課題の優先
付け)、SWIFT通信の件では、SWIFTのメッセージ標準化をどう銀行の支店レ
ベルまで浸透させるかとか、銀行の体制面ではグローバル・キャッシュマネジメントか
ら見た銀行の大企業戦略のあり方などを議論されては面白いのかなと思います。もしま
た第二段があるならば、ご関係者にお伝えください。
・ フォーラム全体としてはよくまとまっていたが、それぞれのセクションの時間配分が
あまりうまく配分されていないような気がした。
・ 途中にブレイクが欲しい。
・ 総花的、企業財務担当者からみて具体的に欠ける。
・ 問題点とそれに対する解答が必ずしもマッチングしていなかった面も。
2.問題提起: 「わが国企業キャッシュ・マネジメントの課題」 (犬飼 重仁)
・ 現状の問題点がよくわかった。
・ 問題点の整理に有効。
・ 問題点が良く整理されていた。
・ 前振りとしてよくまとまっていた。Cash management ≒ Liquidity management に
は若干の異論があります。
・ 資料として使われた資料にポイントがよくまとまっていた。
・ 参考論文集(特にクロスボーダー∼)が非常に有益。
・ 問題提起としては少し長すぎるような気がした。
・ 後段のケース・スタディやスピーチとの関連性に言及して欲しかった(時間が短い)
・ 説明は資料の抜粋だったので少しわかりづらかった。後ほどじっくり資料を読みたい。
3.ケース・スタディ: 「GE のグローバル・キャッシュマネジメント戦略」(Paul Burstein)
・ 現状のグローバルなキャッシュ・マネジメントのシステム導入への方法、及びその問
題点が理解できた。
・ 非常に informative であった。Burtein 氏の経験に基づく幅広い問題意識と見識に触れ
る事ができた。
・ 説得力ある実例。
・ 具体例に基づく話で非常に参考になった。
・ 最先端の例をご紹介頂き、大変参考になりました。
・ 非常に素直に話して頂き、世界レベルでの最先端の話が聞けたと思う。
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・ GEの先進性を感じた。
・ もう少し詳細に聞きたかった。非常に有益。時間が足りない。
・ 盛りだくさんで充実していたが、もう少し時間をかけて説明して頂きたかった。
・ 具体的で良かったが、もう少し時間をさいて欲しかった。
・ 日本への applicability という点でわかり難さが残った。
・ 内部事情を知っているので、詳細にわたり理解できたが、少し話しが長すぎた。
・ M&AにおけるデューデリでGE
web cash につなぐために、ニーズとプロダクトが
調査されることは非常に大事。
・ 先進的アプローチの紹介という意味では大変意義があるもの。但し日本の企業からみ
ると 差 (GAP)がありすぎて、やや remote to プレゼンに聞こえたのではないだ
ろうか。
(もう少し身近な例、日本企業が少し努力すれば近づけるぐらいのレベルの企
業だと、より参考になるのでは?)
・ 日本の Pacific での役割機能をより詳しく知りたかった。
・ 結局システムを導入したという話にしか聞こえなかったが・・・。これは効率化の話
に近く戦略というテーマでは?
・ 専門概念が分かりにくかった。
・ 話が広範であったため、わかりにくいところがあった。
4.スピーチ: 「企業トレジャリーマネジメントと標準的メッセージツールの趨勢」(吉見 亨)
・ コンパクトで良くまとまっていた。
・ 限られた時間でポイントを掴み、とてもよくまとまっていた。PPT もみやすい。
・ SWIFT が日本で発展するには、子会社を含め統一的なプロセスを作成するという意思
決定が経営者にあることである。A社はマネジメントの強力な指導があると思われる。
・ A社の実例をより詳細に聞きたかった。
・ 切り口として分かりやすい。導入してメリットのある規模とかの説明も欲しかった。
・ よくまとまっていた。
・ やっと SWIFT の意味がわかった。
・ 3.の整理、システム面からの切り口が興味深い。
・ SWIFTNET+TMS のメリットとケース・スタディにフォーカスして説明して頂きたか
った。
5.スピーチ:「グローバリゼーションとIT経営」(村上 雅春)
・ 日本の ANSER とグローバルな SWIFT を利用しての世界的なキャッシュ・マネジメ
ントのインフラは非常に興味がある。
・ SWIFT との連携構想は面白かった。
・ 話は正にその通り、SWIFT-ANSER Gateway はNTTの生きていく道?但し・・・。
・ システムの観点の話がビジネスフォーラムにあるのは有益。SWIFT-ANSER は実現し
て下さい。
・ ビジネスプロセスとキャッシュ・マネジメントの関係が理解できたと思う。
・ 日本版SOX法への言及はいまさら。ANSER の今後についてもっと敷衍してもらい
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たかった。
6.パネルディスカッション:「クロスボーダー・トレジャリーマネジメントが日本企業ではなぜうまくいかない
か?」
・ テーマの設定がとてもタイムリーであった。パネリストの顔ぶれも多様で面白かった。
・ GE伊藤氏の体験に基づいたコメントが印象に残った。
・ 伊藤さん、小森さんの話は大変参考になりました。今後の課題など再度時間をとって
やってください。
・ GE伊藤さんの考えは心にひびいた。
・ 失敗例のコメントが意義深い。
・ 同感。
・・・なぜうまくいかなかったか。邦銀・・・個別の銀行にあわせるのではなく、
標準化の流れも正しいと思う。
・ 短い時間であったが、具体的な話が多かった為わかりやすかった。
・ 現場の実感する問題点等を聞くことができて良かった。
・ SWIFT を利用する際のカナ対応等(全銀対応)についてもう少しお話を伺いたかった
と思います。
・ 日系企業がグローバル財務の取り組みを始めたのは実質的にここ最近。その意味で「う
まくいかない」と結論つけるのは如何なものか。
・ もう少し実務レベルでの問題点や対応を聞きたかった。
・ クロスボーダーの難しさをもっと触れて欲しかった。
・ 時間が短すぎて、大変に残念。
・ 1時間とって頂きたい。
・ もう少し時間があればよかったと思います。
・ 時間不足だと思います。各人の話がもう少し関連性があれば良かったと思います。
・ 討論にならなかったのが残念。意見交換により発展するところが聞きたかった。
・ GDP、流通通貨として世界第三位の日本(円)の決済インフラの変革期を迎えてい
るので、ぜひこの機会を活用して提言活動を行って頂きたい。
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