第10回群馬県図書館大会報告書

第 1 0 回 群馬県図書館大会報告書
開かれた図書館
∼図書館の魅力を伝えるために∼
期日:平成24年11月29日(木)
会 場 : 群 馬 県 立 図 書 館 ・放送大学群馬学習センター
【講師・発表者やパネラー等の発言は、大会当日1回限りを前提とした発言内容
を事務局及び分科会検討会で要約したものです。従いまして、引用の範囲を超
えた転載・2次利用は堅くお断りいたします。】
1
全
体
報
告
事 業 名
第10回
日
時
平成24年11月29日(木)
会
場
群馬県立図書館ホール、研修室・放送大学群馬学習センター(第1講義室)
主
催
群馬県図書館協会(群馬県立図書館、群馬県公共図書館協議会、群馬県大学
図書館協議会、群馬県高等学校教育研究会図書館部会、群馬県小中学校教育
研究会学校図書館部会)
後
援
大会テーマ
群馬県図書館大会
10:00∼16:30
群馬県教育委員会
群馬県読書グループ連絡協議会、群馬県読み聞かせグループ連絡協議会
開かれた図書館
∼図書館の魅力を伝えるために∼
1 式 典 ( 1 0 : 0 0 ∼ 1 0 : 2 5 )( 群 馬 県 立 図 書 館 ホ ー ル )
(1)主 催 者 挨 拶
群馬県図書館協会 会長(代理)
小泉 仁彦
(2)来 賓 祝 辞
群馬県教育委員会
日
程
・
内
容
教育長(代理)
品川
(3)後 援 ・ 加 盟 団 体 紹 介
群馬県読み聞かせグループ連絡協議会
群馬県読書グループ連絡協議会
群馬県公共図書館協議会
(桐生市立図書館 館長)
群馬県大学図書館協議会
( 群 馬 大 学 総 合 情 報 メディアセンター教 授 )
群馬県高等学校教育研究会図書館部会
(県立新田暁高等学校 校長)
群馬県小中学校教育研究会学校図書館部会
(桐生市立北小学校 校長)
(4)表 彰 式
①優良図書館群馬県教育委員会表彰
高崎市立群馬図書館
②群馬県読み聞かせボランティア顕彰
・ わ た げ の 会 (前橋市)
・ 大 類 公 民 館 図 書 ボ ラ ン テ ィ ア (高崎市)
・ お は な し 夢 夢 の 会 (桐生市)
・ ま ん て ん 紙 芝 居 の 会 (伊勢崎市)
・ 読 み 聞 か せ か や の 木 (安中市)
- 1 -
豊
会長
会長
会長
寺澤 敬子
長谷川 光明
小泉 仁彦
会長
末松
美知子
部会長
山口
政夫
部会長
兒嶋
敦子
③優良読書グループ表彰伝達
粕川読書クラブ(前橋市)
④全国公共図書館協議会表彰伝達
荻原 允隆(桐生市)−代理受領:関本金三郎
日
程
・
内
容
3 記念講演(10:30∼12:00)
「読書はおいしいぞ 」阿刀田 高 氏
4 昼食・休憩(12:00∼13:00)
5 テーマ別分科会(13:00∼16:30)
第1分科会(県立図書館 研修室)
「指定管理者制度を考える」
第2分科会(県立図書館 ホール)
「読書力アップ!図書館のつかい方・つくり方」
第3分科会(放送大学群馬学習センター 第1講義室)
「公立図書館と学校図書館との連携∼より機能する図書館を目指
して∼」
- 2 -
延 べ 人 数 : 5 5 5 人 ( 式 典 ・記 念 講 演 3 0 4 人 、 分 科 会 2 5 1 人 )
(H23 486人
300人
186人)
参加者数
・ 式 典 ・記 念 講 演 参 加 者 の べ 3 0 4 人
(一般170人、来賓8人、表彰者40人、講師5人、
分科会検討会委員等57人、県立職員24人)
・分科会参加者
のべ251人
第1分科会参加者 68人
(一般44人、講師等6人、分科会検討会委員18人)
第2分科会参加者 132人
(一般112人、講師等1人、分科会検討会委員19人)
第3分科会参加者 51人
(一般29人、講師等3人、分科会検討会委員19人)
配布資料
①式典関係資料(次第・分科会概要、アンケート用紙、群馬県公立図書館等
の振興方策について−答申−、ご存じですか?相互貸借)
②第1分科会資料
③第2分科会資料
④第3分科会資料
・午前中の式典については、参加者を集めることがなかなか難しいが、表彰
団体に電話を入れ、一緒に活動をしているグループの方々にもお誘いをし
て皆さんでご参加くださるよう連絡をした。結果、今年度の式典も用意し
た椅子がうまってしまうほど、多くの方にご参加いただき、とても盛会な
式典となった。
・午前中の式典・講演会の係分担は、各係ごとに事前の打合せ等をしっかり
しておいたため、すべての係がすべて問題なく順調に仕事ができた。
評
価
・
反
省
・
そ の 他
・今回の、阿刀田高氏をお招きした記念講演も、参加希望者が多く、11/
8(木)には、記念講演会の参加募集を終了し、分科会だけの募集に変更
した。締め切り後も講演会の参加希望者が多く、だいぶお断りをした。
参 加 者 多 数 の た め 今 年 度 も 、 県 立 図 書 館 職 員 と 分 科 会 協 力 者 は 、「 式 典
に 参 加 」「 記 念 講 演 に 参 加 す る 場 合 に は 、 立 ち 見 」 と し た 。
・表彰者についても、昨年同様に、9時30分にホールに集合していただき
リハーサルを実施したため、速やかに式典を行うことができた。
・上毛新聞にあらかじめ取材依頼をお願いをしておいた。当日、取材に来て
ただき、12/3(月)新聞に掲載をして頂けた。
・分科会の参加者が、昨年よりだいぶ増え、第2分科会については100名
を超えた。記念講演会の参加者も、昨年より多の方に参加していただくこ
とができ、盛会な大会にすることができた。
・アンケート結果を見ると、記念講演会、分科会ともに充実していたとの意
が多かった。
・駐車場は、ベイシア文化会館の駐車場もお借りできたので、トラブル無く
運営できた。
- 3 -
【記念講演】
演題 「読書はおいしいぞ」
阿刀田
高
氏
もう5、6年前の事ですが、チェコのプラハで開かれた
ある国際大会に出席してスピーチをしてまいりました。そ
の大会は、地球の資源が不足に向かっている、何とかしよ
うじゃないかという主旨の会議でした。そんな重要な会議
になぜ私が呼ばれてスピーチをすることになったかという
と、私は日本の文化の中に、「簡素を尊ぶ」「物を使わない
ことが素晴らしいのだ」という伝統があると思って、その
ことをエッセイ等で発表しておりましたら、話をすること
になったわけです。
ス ピ ーチ の冒 頭に 、「 日 本 に はた っ た17文 字で自 然の美
し さ と 人間 の心 を通 わせ る 詩 歌 ・文 学 が ある んだ 」「31文
字というのもあって、これは人間の恋心とか人生のあきら
めとか、そういうものを読み込んで、それを楽しみにして
いるんだ」と話しました。そしてこれはお金が掛からない。
日本人は本当に簡素な趣味をもっているんです。また、外国人にも知られている茶道も、本来的に利休が
すすめたのは、たった一杯のお茶を間に挟んで主人と客人とが心を通わせるということでした。本来的に
はお茶一杯なんです。能表現だって、本来世阿弥が唱えたことというのは、小さな動きの中に人間のいろ
いろな営みを表現している。能面は一つの面で、角度を変えるだけで喜怒哀楽を表すことが出来るんです。
他にも、着物のことも話しました。外国人は日本の着物のことを非常に不思議がって素晴らしいと思っ
て見ています。着物は、元の生地にして縫い直せばまたもう一つの着物になります。古くなったら箱か何
かに貼れば立派な箱になります。さらにその後も雑巾やおむつになるまで形を変えて利用されていくのだ
と説明しました。
結局考えてみると、この国は貧しかったということなんです。今だって本当は貧しいのです。アメリカ
みたいにジャブジャブお金や物を使うという文化はこの国には向かなかったんです。我々の先人達はその
ことを知っているから、どうやってそれなりに充実したものを得ようかということを直感的に考えて、そ
して日本の文化が出来てきたわけです。
それは「美」にも通じるものです。例えば、出来るだけ削いでいったところにある日本刀のシンプルな
美しさというものを見ているということです。シンプルなものの中に価値を見いだしていこうという精神
が日本文化の中には絶対にあったのではないか。そして、それは日本のみならず世界のいろいろな国々に
もきっと存在しているはずで、そういうものをもう一回見直して見ることが、資源が窮乏していく今の事
態に私たちがもっていなければならない考え方だろう、ということを国際大会で述べてきたわけです。
私は日本人にそういう精神があったことは間違いないと信じているし、このことをどこか心の中にしっ
かり保ちながら日常を営み、そして文化というものを考えていく必要があると堅く堅く信じております。
そして、それと読書とがまた関わりがあるんです。読書というのは本来金の掛からないことなんです。
この頃、読書離れとかいろいろ言われますが、日本という国は世界的に見れば読書大国です。読書の好き
な国民であることは間違いありません。いろいろなところに証拠がありますが、特に分かりやすい例は、
日本の新聞の一面の一番下には、大概本の広告が出ているということです。世界の新聞にこんなことはあ
りません。それだけ考えても、この国の読書はなかなか捨てたものではありません。まだまだ皆が読書に
関心があるということは間違いない事実だと思います。本が高いというのは嘘です。それは自分にとって
良い本と出会っていないからです。少しおもしろい本に出会えば、千円くらい出しても惜しくはないです。
本というのは何度も何度も楽しめるし、場合によっては古本屋に持って行けば、いくらか取り戻すことも
できます。さらに、図書館に行けばタダで借りられます。
本にはいろいろな長所があるんです。例えば、本というのは一人で楽しめるんです。これは大切なこと
で、人生にはやはり孤独に耐えなければならない、孤独を生きなければならない、という時が必ずどこか
で来るわけで、そのときに本くらい良い友達になってくれるものは他になかなか無いんです。
「読書はおいしいぞ」というタイトルを掲げている以上、読書を勧めに来ているんですが、「読書は素
晴らしいよ」なんて当たり前のことなので、言わなくても皆分かっていてくれればいいことなのに、それ
を言わなければならないというのは実は少し悲しいんです。この頃私は「読書保険」という言葉を掲げて
いるんです。読書というのは確かにテレビや他のものに比べると少し自分の労力を必要とします。しかし、
若いときに努力をして読書習慣を身に付けておけば、老後に必ずその配当があるんです。老後は本当に孤
独ですが、雨が降っても家の隅で本を読んでいれば楽しいわけですから。
私の若い頃めぐり逢った本の中に、親父が持っていた「世界裸体美術全集」というのがあったんです。
私はひたすらみだらな心で見ていたんですが、一応隣に書いてある説明も読むわけです。どうしてこの人
はこんな岩の上で裸になって立っているんだろうか、と思って読むと、そこにきちんと説明が書いてある
わけです。おかげで私はこの裸体美術全集を見ているうちにギリシャ・ローマ神話について大変詳しくな
ってしまったんです。お読みいただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、私の本に「ギリシャ神話を
知っていますか」というのがあります。これは、元はと言えば裸体美術全集なんです。それから、あの本
-4-
はどこへいったか、中学生の頃を最後に私の目の前から消
えてしまいました。そうしたら10年くらい前ですか、神
田の古本屋を歩いていたらその本が棚の上の方にあったん
です。私は非常に懐かしくなって買いました。そして家に
帰って開いてみると、もう、この感動は本当に独特でした。
一番感動したことは、絵に久しぶりにめぐり会って、それ
を見ていたときの部屋の様子、階段を上がって行った部屋
に光が斜めにスッとそそいでいる感じ、畳のにおい、そう
いえば親父とお袋は昨日ケンカしていたなとか、家族のい
ろいろなことやその頃の自分の生活が、もちろん断片的に
ですが、よみがえってくるんです。もう一回その時代を生
きたような感じさえしました。もし、皆さんの中に若いと
きに愛読してそのままずっとめぐり会っていない本があっ
たら、そういうのにめぐり会うには図書館が一番いい所です。もうワクワクしてきますね。こういうこと
が出来るのも若い頃に本に親しんでいたおかげだなと思いました。
「裸体美術全集」の方を話してしまったんですが、私の最初の読書体験というか、多少自主的に読んだ
本というのは「落語全集」なんです。子どもの頃はいろいろんな本に恵まれていたわけではありません。
ラジオから落語が聞こえてきて、親父の本棚に落語全集があるもんだから持ち出してきて読みましたら、
これがおもしろいんです。落語全集というのはユーモア短編小説集みたいなところがありますので、せっ
せと読みました。一番気に入ったのは、「ちはやふる」という古典落語です。「ちはやふる 神代もきかず
竜田川 からくれないに 水くくるとは」伊勢物語を書いた在原業平の歌で、小倉百人一首の中にあります。
小学6年生だったけれど、落語が嘘の解釈であることは検討がついていました。でも実に上手く出来てい
るので、もうすっかり好きになってしまいました。落語も好きになったけれど、ついでに小倉百人一首も
好きになっていました。やはり小倉百人一首は、日本の古文、古い時代の文章を理解する上で非常に基礎
的なことを教えてくれるんです。高校生は百人一首くらいはきちんとしてみたらいかがだろうか、とこの
頃思います。つまらない歌もありますが、当時はそういうことを良しとしていたのか、ということも分か
っておもしろかったです。
その次に読んだのが「銭形平次捕物帖」でした。これも親父の本棚にあって、ラジオでもやっているも
のですから、せっせと読みました。これを書いた野村胡堂という人は大変教養の深い人でしたから、銭形
平次というのは時代考証が非常に正確のようでした。銭形平次を読んだおかげで江戸時代の風俗というも
のが自然に分かりました。これも後に時代小説を読んでいて、奥行きの深さを探る上で役に立ちました。
あの時代の読書が、自分が小説を書くようになってからどのくらい役に立ったかは分かりません。でも、
銭形平次であろうと裸体美術であろうと一生懸命学んだことというのは必ず後で何らかの形で役に立って
くるんです。悪書なんて本当は無いんです。悪書にするのはその人の性格の問題であって、悪書であろう
と良い利用の仕方があるし、まあこの頃は一概には言えないけれど、本の世界に携わっている人は、どう
しようもない悪書というものは本来的に作ったりするものではありません。
この頃「読書脳」なんて言葉が言われますね。読書の脳みそと書く「読書脳」。「読書脳」は13才までに
出来るといいます。世の中で読書が好きだという人を見ていると、確かに13・14・15才くらいで既に本を
よく読んでいた人が多いような気がします。だから「読書脳」というのは、そのくらいまでに習慣として
作られていくものなのかもしれません。習慣を付けてしまえば、保険の掛金のようなもので必ず後で良い
ことがあるんです。よくこういうところでお話しをしていますと、
「どうして本が好きになったんですか」
という質問を受けるんです。そのときに、「私は物心ついた時から読書が好きでした」では質問した人に
とっては何の役にも立たないんです。それでは読書指導になりません。どうしたらいいんだろうと思って、
私はどうして読書が好きになったかということを一生懸命考えてみました。幾らか考えられることの一つ
として、私の育った家庭環境があります。私は兄弟では一番下だし年上のいとこたちと一緒に育ちました。
そういうなかで割と言葉遊びを好む家でした。日本人の言葉遊びは世界一です。先ほど申し上げた俳句や
和歌だって一種の言葉遊びだと思います。あるいはしりとりとか。いろいろな言葉遊びをもっているんで
す。皆集まって広告の裏紙をもらって、木へんの字を3分間で出来るだけ思い出して書いてみようとか、
紙を四つの枠に分けて、人名、地名、動物名、食べ物名を書こうとか、言葉遊びをしていると自ずと本と
いうものに関心が出てくるわけです。本を読むと、だいたい言葉遊びに足しになることが書いてあるんで
す。大げさに言えば、言葉への関心をもったということが読書というものに私が導びかれた一つの理由で
はないかと思います。子どもは言葉遊びが好きです。私もそれだけで本が好きになったのかどうかは分か
りませんが、何かその辺に一つ、意図的に子どもに仕掛ける方法があるのかなと思います。
何年か前に文化庁の文化審議会の委員をしていた時があったんですが、その時、どうやって読書を子ど
も達に植え付けようかとなって、キャッチフレーズにしたのが「自ら本に手をのばす子どもを育てること」
でした。自ら手をのばすのが大事なんです。本については「これ読みなさい」と言うと、大体読みたくな
くなります。むしろどちらかと言えば「これ読んじゃいけないの」と言われた方が読みたくなるというと
ころがありまして、周りが楽しそうに読んでいれば「楽しいのよ」ということはあまり言わない方がいい
んです。「うちの子どもは本を読まなくて困っているんです。どうしたらいいでしょうか」「お父さんお母
さんは本を読みますか」「いいえ、私たちは本が嫌いで読みません」これではダメなんです。やはり、親
-5-
が楽しそうに読んでいる、そしてあまり勧めないことです。これは楽しいけれど、お前にはあまり勧めな
いぞ、という顔をしていた方が自ら本に手をのばします。読書は勧めるのが難しいです。読書に自ずと手
がのびるようにするには、そこで先ほどの言葉遊びみたいなものをさせると、何となく入っていきやすい
というような気はします。もう少し言葉遊びについて言えば、「あなた教養があるわね、いつから」「きょ
うよ」。「鮭って魚は早起きなんだって」「どうして」「早起きはさーんもんの徳」。今申し上げた「あなた
教養あるはね、いつから」「きょうよ」、というのは洒落と言われていますが、この洒落というのが日本人
の言葉遊びの一つの非常に強い軸を成しているんです。先ほどお話しした落語の世界でも「ちはやふる」
の落語等は正に洒落を基にして笑いを誘っているわけで、洒落というのは日本人の言葉遊びの重要なパー
トを占めているんです。おやじギャグなんて言われて、さんざん馬鹿にされたりしますが、馬鹿にしては
いけない。これこそ日本の文化そのものだということでもあるんです。
日本語というのは、世界にあるそれなりの文明を発達させた国の言葉としては、極めて音の少ない言葉
です。あまりたくさん音を使ってないんです。そのおかげで日本語は同音異義語が非常に多いんです。わ
ざわざ作った「きしゃのきしゃきしゃできしゃした」という文章がありますが、「あなたの会社の新聞記
者が汽車に乗って会社に帰った」という意味です。日本人は日頃から同音異義語に慣れていますから「き
しゃのきしゃきしゃできしゃした」といわれてもだいたい見当がつくわけです。英語を考えると、ある程
度長い言葉で同音異義語なんて滅多にないです。日本語はいくらでもあって、この頃ではパソコンで打つ
と同じ音が出てきてしまって、求めているのはどれか選ぶのに結構苦労するほど多いわけです。先ほど申
し上げた洒落というのは同音異義語と非常に深い関係があることは間違いありません。だから日本語の特
徴と非常に密接な遊びが、この洒落なんですね。そればかりではありません。主に古い時代、古今集とか
源氏物語といった時代のことについて言えば、あの時代には掛詞というのがありました。一番すごいのは
「いろは歌」でしょう。もちろん日本語の特色と非常に関係があるんですが、すごいことに、仮名文字を
全部一回づつ使っているわけです。しかも、きちんと意味があるんです。それもただ意味があるのではな
くて、仏教の一つの真理を伝えているんです。「いろはにほへとちりぬるを」花の色はあんなに輝いて咲
いているけれど、やがては滅びていくのだ。「わかよたれそつねならむ」私の命もどうして永遠でありえ
ようか。「うゐのおくやまけふこえて」有為の奥山というのは悟りの境地のことらしいですが、悟りの境
地に今日入って。「あさきゆめみしゑひもせす」今まで浅い愚かな夢を見ていたけれど、もうそれに酔う
こともありません。と言っている訳で、これは仏教の一つの考え方を表しているんです。歌を作り、そこ
にきちんと哲学的な命題を盛り込むというのはすごいです。日本人の言葉遊びのすごさだなと思います。
日本人はいろんな言葉遊びを知っているんです。でも、知っている言葉遊びというのはだんだん消えて
いきます。やはり家族におじいちゃんおばあちゃんのいるような社会ではよく言われた事ですが、こうい
う言葉遊びを通して日本語、ひいてはその後ろにある日本の文化というものに思いを馳せてきたというこ
とを、私たちはもう一回考え直すことが大切なのではないでしょうか。
話は変わりますが、サウジアラビアに行ったんです。大きなジェッタという都市に行きますと、そこは
ニューヨークかと思うくらいのすごい建物が広がっているんです。40年前まではただ砂漠ばかりの所だっ
たのに、自分の国の素晴らしい資源を利用して自分の国を発展させているんです。彼らは当然のことをや
っているだけだと思うんです。日本には世界第一位のものがあるだろうか、世界第一位の資源があるだろ
うか。日本には資源というと少し違うかもしれませんが、間違いなく資源と同じ価値をもつものがあるん
です。それは「識字率」です。日本人の識字率は99%と言っていいでしょう。ほとんどの人が読み書きが
出来るということです。この識字率の高さは文句なしに世界一です。アフリカに行って、子どもたちに読
書を広めようと話をすると、現地の教育者の言うことには、「読書を広める前に子どもたちが字を読める
ようにしないとだめだ」「字を読み書きできるようにする運動が先であって、読書を広める運動はそれか
らの話なんだ」という議論にしかなりません。日本で私たちが読書を広めていく方法は、アフリカにおい
ては通じないということです。そういう事を考えると、日本人が読み書きを出来るということがどれほど
の資源であるか、ここまで国民の状況をもってくるのがどんなに大変なことか、世界を廻るとつくづく分
かります。これは日本という国の、最初にお話ししたお金の掛からない事とも関係しているんです。字を
覚えておけばそれだけでいろいろな楽しみが出てくるんです。一生使えるものを手に入れて、そして主に
読書を通して喜びとする術を私たちの先祖はきちんと作ってきたんです。これを利用しなくてはダメだと
思うんです。過去の日本人はそれを大事にしてきました。
テレビで政治のことがいろいろと問題になっています
が、私たちの過去のリーダー達は本当に読書を一生懸命し
ていました。そしてその成果を私たちに残してくれている
んです。読書は本当に大事なんです。子どもは真っ白い頭
で生まれてきて、日本語を知ることによって知識を蓄え、
コミュニケーションを保ち、そして自我を確立していくん
です。当たり前のことですが、それを支えるのは読書なん
です。その結果としてこの国の姿があるんです。どうかそ
のことを知ってほしい。本当に社会のリーダーになる方が
特にそのことを知らなければダメです。もう少しその辺を
大事にしていきたいと思います。いろいろな事をお話しし
ましたが終わります。どうもありがとうございました。
-6-
2−1.分
科
会
報
告
分 科 会 名
第1分科会
日
時
平成24年11月29日(木)13:00∼16:30
会
場
群馬県立図書館
マ
指定管理者制度を考える
テ
ー
今 年 5 月 、 佐 賀 県 武 雄 市 が 市 立 図 書 館 の 運 営 を 「 TSUTAYA」 に 委 託 す る と
の計画を発表し大きな話題となりました。指定管理者制度や委託を導入し
て い る 公 立 図 書 館 数 は 、 2011年 度 に は 347館 、 全 体 の 10.7%と な り 、 身 近 な
問題となってきています。
指定管理者制度や委託の問題について検討するにあたり、司書の専門性
や職員の雇用等の問題について、どのように考えていったら良いのでしょ
うか。図書館のあり方や図書館サービスについて、再確認する良い機会と
もいえます。
この分科会では、日本図書館協会、管理委託する側、受託する側それぞ
れの立場からのお話しを伺い、その可能性や課題・問題点等について、参
加者の皆さんと共に考えていきたいと思います。
開催趣旨
1
2
日程・内容
3
4
5
参加者状況
係
分
担
配 布 資 料
評
反
そ
価
の
3階研修室
省
他
合計
開催趣旨説明
(13:00∼13:08)
基調講演
(13:08∼14:08)
「公立図書館と指定管理者制度」
大橋 直人(日本図書館協会図書館政策企画委員会 委員長)
事例報告①
(14:10∼14:47)
「栃木市図書館における指定管理者制度の導入事例」
中島 多美子(栃木市教育委員会生涯学習課 主幹)
事例報告②
(14:48∼15:08)
「太田市立中央図書館の業務委託について」
大矢 公子(太田市立中央図書館 館長)
状況報告
(15:20∼16:02)
「「指定管理者」∼民間ならではの取り組み」
谷一 文子(TRC図書館流通センター 代表取締役社長)
フロアー・トーク(16:03∼16:30)
コーディネーター: 大橋直人
パネリスト
: 中島多美子、大矢公子、谷一文子
68人(一般参加者 41人、発表者 6人、
分科会検討会委員 18人、県立職員
3人)
総合調整:富所、岩井(県立)
司会進行:岩井(県立)
受付:堤(健康福祉大)、野村(桐生市)、橋本(西邑楽高)
記録:星野(県立)、渡辺(前橋)、和佐田(伊勢崎)、田島(安中市)、
金庭(下仁田町)、倉林(共愛学園高)
会 場 : 青 木 ( 県 立 ) 、 福 島 (玉 村 )、 高 田 ( 伊 勢 崎 興 陽 高 ) 、
井ノ口(健康福祉大)
接待:侭田(女子大)、星野(県立)
資料・横断幕等印刷: 富所、岩井、星野、青木(県立)
機器操作:星野(前橋)、青木(県立)
写真:吉田(桐生大)
①「公立図書館と指定管理者制度 −創設後10年間の問題点」レジュメ
「公立図書館と指定管理者制度 −創設後10年間の問題点」関連資料
②「栃木市図書館における指定管理者制度の導入事例」レジュメ
③「太田市立中央図書館の業務委託について」レジュメ
④「指定管理者 ∼民間ならではの取り組み」レジュメ
・指定管理者制度について、あいまいな知識しかなかったので大変勉強にな
りました。否定的・肯定的な両意見を伺えたのも良かったです。これから
の自分の仕事内容を精査し、質の高い司書業務を行わなければと、身が引
き締まる思いであるとの感想が多く聞かれた。
・各々の図書館のありのままの状況(栃木市の取り組み姿勢、太田市の直営
化への戻り等)がよくわかり、大変勉強になったとの感想も多かった。
・指定管理のテーマは関心が高く、基調講演の大橋講師の時間が短かったよ
うで、もっと話を聞きたいとの声もあった。
・TRCの話は具体的なサービスの話でこの視点から指定管理者でないとで
きないサービスを考えていくとよい結果になるのかなと思いました。指定
管理者とは関係なく非常に有益なお話でした。
-7 -
【基調講演】
『公立図書館と指定管理者制度』
日本図書館協会図書館政策企画委員会
委員長
大橋
直人
氏
皆さん、こんにちは。日頃図書館協会にご協力をいただきありがとうございます。日本図書館
協会は、図書館および個人も会員になれる組織ですので、図書館界の活性化のため、ぜひ皆さん
に参加していただければと思います。
簡単な自己紹介ですが、私は図書館プロパーではなく親の勧めで公務員試験を受け、仕事を数
年続けるなかで、行財政や年金問題の勉強会に参加し、そのとき図書館に出会いこんなすごい所
はないというか励まされました。よくみると東京23区の周りには司書制度がなく、図書館を希
望する人も少なかったです。文京区の図書館で長年勤務し、現在は路上生活者やワーキングプア
の人々の相談業務を行っています。図書館に勤務していたときは、係長と週刊誌の受け入れやリ
クエスト対応等でいろいろな議論をしました。例えば、
あの9.11事件 世界貿易センタービルが爆破され、
私達は何が起きたのかわからないときに、各週刊誌に色
々な見解が出ていることによって自らの見解ができると
かそういう議論をしました。東京23区の場合、人事異
動でくる課長や係長は司書資格を持っている人がほとん
どいない現状がありましたので、こういう人との交流を
通じて何とか良い図書館を作ろうとやってきました。
今日のレジュメは6つの構成になっています。第1に
日本の図書館がどういう現状になっているか、第2に指
定管理者制度は何も図書館だけでなく、日本が曲がり角
にきており、どういう方向に向かうのかが大切なスキル
として、いろいろな市場化テストができたということを説明したいと思います。第3に指定管理
者制度というものはどういう制度か、地方自治法上どうなのか、第4に図書館協会が指定管理者
制度について毎年行っているいろいろな調査の中からピックアップした本日の話に役立つ資料の
説明。第5に図書館協会の指定管理者制度に対する見解。第6に今年で10年目になる指定管理
者制度について、どういうことが言われているのか、文芸作家協会なりいろいろな団体が見解を
表明しているので紹介いたします。最後は、群馬県のように県レベルで図書館の振興策があると
ころは比較的少なく、非常に意欲的な県と感じましたが、今後の図書館の振興策をどうしたらよ
いか皆さんと一緒に考えたいと思います。
図書館協会のホームページに載っているものは本日のレジュメからは削除してあります。指定
管理者制度や武雄(市)の指定管理者制度についても我々の見解を発表しておりますので、ホー
ムページを見ていただきご活用ください。
早速、レジュメに沿って説明します。我々は、文字活字振興法のときに日本の図書館は実際ど
うなのかについて着目し、図書館の振興策を出しました。そのときの視点は、国際的な視点を含
めて日本の国の経済力からみたとき、どうなのかということで作った政策です。資料集のうち1
ページから5ページは公立図書館の設置率です。家の近くに図書館があるという環境の中で育っ
ている子どもと、そうでない子どもとは全然違うと思います。これからの世代を担っていく子ど
も達にどういう読書環境を準備するかということは大事な課題です。しかし、残念ながら資料集
の1ページにあるとおり日本の図書館設置率は、教育の問題で非常に話題になっているフィンラ
ン ド の 1 /9 で す 。 多 様 な 価 値 観 の 中 で こ う い う 風 な 図 書 館 と 学 校 の 教 室 が 非 常 に 近 く 、 そ れ ら
を活用しながら教育環境が作られていくと言われています。それだけでなく、日本の館長で司書
資格を持っている人は20%しかいません。より一層深刻にさせているのは、常勤職員の非専門
職化と非常勤職員の専門職化が進行し年々増えていることです。図書館が利用者の希望に沿って
適切な資料を提供するには訓練された職員が必要ですが、なかなかそういう事態になっていませ
ん。そこに日本の貧困さがあります。この数年、非常に資料費が減っていてようやく下げ止まり
となったようです。一番多かったのは平成5年ですが、1館あたり1,436万円が925万円
まで低迷してきました。結局、貧困な状況の中での図書館の振興策を進めることにいろいろな課
題があり、その時にどういう方法を取れば良いのか。また、現状を打破していく、変えていく意
味での視点をどこに据えるかが問題です。
この1990年代後半から日本の世の中の考え方が変わってきました。その逆流が今回起きて
います。小泉さんの時代については、経済財政諮問会議とか市政改革会議とかトップマネジメン
トを強化することを最大目標にしていたので、閣議で決定される前にそこで決めたことが決定し
ていく行政システム・政治システムで、橋下さん流に言えば統治機構というところで全部決まっ
ていく訳です。だから図書館の指定管理者制度についても文部科学大臣がある会議に出て、館長
の 仕 事 に つ い て も 「 指 定 管 理 者 の 委 託 が で き ま す 。」 と 、 従 来 と は 異 な る 見 解 を と っ た も の で す
-8-
から、我々は唖然としてしまいました。我々は図書館行政に携わるサービス業をやっていて、新
公共経営という考え方も役所機構の不親切を脱却するためには、民間の手法を取り入れなければ
ならないということで、行政評価システムなどが取り入れられてきた訳です。この考え方も経済
財政諮問会議の「骨太の方針」で日本で初めて言われました。そのとき図書館が先頭に立って良
いサービスを市民のために役立っていると思ったのですが、そうではなくて消費者として市民を
捉えて、サービスを受ける側が権利としての福祉サービスとしてではなく、お金を払うことでい
ろいろなところに導入されてきました。労働市場で言われる官製ワーキングプアや指定管理者制
度の下で30時間以下で働いている職員は多いです。官製ワーキングプアは単に図書館だけに出
ているのでなく、労働者がずっと変わってきていることの中で出ていると思います。
3ページ目の指定管理者制度はどういう制度かということですが、図書館は公の施設で地方自
治法244条の「公の施設」という規定があり、住民の福祉のために役立つとなっています。図
書館はそれだけにとどまらず、教育機関でもあります。教育機関が何かという規定はここに書い
てあります。学校長や公民館長、博物館長、図書館長は行政から自立性が担保されているという
のが、文部科学省の回答です。自立性が確保されている問題として、図書館の自由に関わる資料
の提供や貸出制限をするという問題については、制度上は図書館長の権限に属する仕事として、
法解釈上位置づけられています。指定管理者制度についてどういう特徴があるかというと、1つ
は今までは同じような地方公社に管理運営をまるごと委託するということが可能でした。管理委
託は以前から可能でしたが、指定管理者制度になってからは民間事業者、株式会社を含めて参入
することができるようになったことと、決定方式として入札制度でなく行政用語では行政処分と
呼びますが、行政判断で指定会社を決められるということが決まりました。これは国会を通ると
きに、あまり十分な議論がされなかったからです。だから審議は、例えば図書館の無料の原則は
どうなるのかとか、しかしその後自治省の担当課長が「月刊地方自治」の中で指定の期間はどう
するかと書いてないのです。自治法の改正の中に。そのときに各県の担当課長が出席する自治省
で の 会 議 で 京 都 代 表 の 方 か ら「 何 年 指 定 管 理 は で き る の で す か 。」と 質 問 が 出 ま し た 。国 側 は「 5
0 ∼ 1 0 0 年 間 は 制 度 的 に は 可 能 で す 。」 と 答 え る の で す が 、 実 際 は そ ん な こ と は な い で す 。 な
ぜかというと、市場の競争原理を活かすという建前ですからいい業者と悪い業者はどっちが優れ
ているかAの方はデザイン性が強く、Bの方はフロア廻りやフットワークが良いとかそういう市
場の競争原理を出すことになります。だから図書館の場合5年の範囲で全部収まっています。先
程も言ったように民間事業者を選べることになりますから姻戚関係があります。恣意的に選ばれ
ないように、わざわざ条例で規定しているところが多いです。市長や副市長、教育長の親族は指
定管理者にはなれませんので、そのため選定委員会を設けています。指定管理者制度を図書館に
導入するときは、まず市が指定管理者制度の条例や要綱を作ります。選定の場合は、選定委員を
行政内部だけでやっているところが結構あります。指定の場合は、外部の専門の人を入れている
ところ、いないところさまざまですが、10年経って検証するといろいろあるので、きちっとや
りなさいと言われています。全体としてはプロポーザルでコンテストで提案書に基づき、図書館
側はこういうサービスをしたいという方針を立て、それに応じた業者の案を選定します。選定委
員も恣意的に選ばないようなメンバーをどれだけ選ぶかということになります。当然、開館時間
や料金徴収などは公の施設は必ず条例で決めなければならなりません。利用者に差別なく公平に
接するなど非常に原則的に書かれています。ここで大きな問題というのは、東京でもほとんどの
自治体、千代田と田無以外ですか、情報公開の適用です。我々も何回も情報公開を請求しました
が出てこないです。それは情報公開の対象外と言われています。なぜなら従業員にお金が支払わ
れているからです。予算上もそれぞれの使用料ではなく、委託料で一括支払いと出るので、それ
が良いのかどうか議論の対象になります。ただ、こういうことについて事前に決めときなさいと
いうのが今の総務省の考えです。
指定管理者制度導入から10年間経ちました。244条の2の最後のところですが、業務の命
令が指定する側からあった場合、それに従わない場合は指定管理を取り消すのか。今まで図書館
の場合、指定管理者制度で指示命令の関係になるかならないかという問題も微妙な問題ですが、
指定管理者の事例集を読みますと、経営が破綻したとか従業員に給料が支払われていないなどで
指定管理が取り消された事例があります。日本図書館協会が指定管理者制度について毎年行った
さまざまな調査資料が、資料集の9ページから13ページにあります。この項目は指定管理者の
性格を4種類に分けています。従来の役所が作っていた財団・社団・文化振興公社などがありま
すがそれを丸投げで図書館の管理委託をしていました。今管理委託はありませんが、前後します
が3年間で指定管理者制度へ移行するか直営に戻すかしなければいけないとなっていて、地方自
治法上は管理委託の概念がないので指定管理者制度に譲った形になっています。過去のNPOと
その他団体がなっています。太田区は退職校長や退職職員が図書館の管理者になっています。今
はありませんが、地元の商店組合もやっていました。図書館の最大の特徴ですが、資料集11ペ
ー ジ の 表 -1 、 最 初 の 調 査 の 民 間 企 業 を 見 て い た だ き ま す と 2 5 % と な っ て い た の が 年 々 高 ま っ
てきています。失敗した事例を読んでいきますと労働派遣でいけると思っています。実際図書館
の車の修理屋さんが図書館の指定管理者制度に参加するのです。そういうところにヘッドハンテ
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ィングして自治体からプロポーザルと出ているのでコンテストに通るように文書を作ってくれ
と、文書が通った場合に初めて職員を雇う。図書館に関係ない人達がやっている会社や派遣会社
が結構多かったのですが、今は収れんされてきています。図書館協会では、どこの業者さんがど
の位やっているか調査をしています。公社・財団などは平成18年指定管理者制度以前、広島市
のように図書館をまるごと管理委託していた所があります。指定管理者制度の変化については、
文科省の社会教育調査が分かりやすいので13ページをご覧ください。図書館は以前1.8%し
か な か っ た の で す が 、こ の 間 が 非 常 に 増 え て い ま す 。私 の 出 身 の 区 が 指 定 管 理 者 制 度 な っ て い て 、
区民の行政改革会議を傍聴したところ、指定管理者制度の議論の際、区の総務部長が「これで職
員が50名減らせるな」と言ったから、シンボリック的なんですよね。
指定管理者になると民間など公社の場合は、天下り先というのがあります。我々の退職後そこ
にいく場合もあるし、部課長が理事長になるところもあります。どちらかというと役所の延長線
上にあり、制度的に問題がありますが役所直営と似たところがあります。危機的と言いますか、
公務員感覚というところがあります。レジュメに戻っていただいて、目的の達成について安藤氏
の調査が5ページの(3)と(4)にあります。そこでは、指定管理者制度の導入理由として経
費の削減が一番と言われています。次にサービスの向上です。北九州市の場合ビックリしたので
すが、開館時間の延長と資料の裁量です。民間に頼まなくても自治体の自浄努力でできることで
はないでしょうか。指定管理者制度はより一層経費の削減とサービスの向上と図書館経営の弾力
化ということです。
今後の課題ですが、指定管理者側と自治体側の回答では図書館経営の安定性の欠如を感じてい
ます。自治体側は、長期的視野に立った見方ができないのではないか、また労働条件の悪化とい
うことを挙げています。より一層深刻に考えているのは指定を受けた側で、図書館経営の安定の
欠如が49%で自治体が30%、長期的視野に立ったというのは40%で自治体が20%ですか
ら、指定管理者制度の方が問題を直視していることになるわけです。3番目のCは労働条件の悪
化です。自治体側の方がのんびりしているのがわかります。30時間労働にすると社会保険とか
払わなくていいわけです。沖縄で指定管理者制度の管理下で働いている人のアンケートをした時
非常に興味深いですが、次年度の契約が取れるかどうか分からないですよね。年間契約は実際も
う 少 し 早 く 決 ま っ て い る の で す が 、何 か あ る と 取 り 消 さ れ る 場 合 が あ る の で 公 表 で き な い の で す 。
そ こ で 働 い て い る 人 達 か ら は 、「 私 達 は 、 給 料 が 安 い こ と
よ り も 来 年 4 月 か ら 働 け る か ど う か が 心 配 に な り ま す 。」
というアンケート結果が出てきました。私の年収と比べる
と大変安いです。年収のことが出てくるのかと想定したの
ですが、そんな事はなかったのです。
図書館協会の見解は、要は図書館は無料の原則ですが、図
書館の仕事とは訓練された職員が商品知識を持って利用者
に資料提供を案内するかどうかです。私が図書館にいたと
きに、司書でない図書館の事を何も勉強していない人が人
事 異 動 で 来 て 、 当 然 カ ウ ン タ ー に 出 る わ け で す 。「 困 っ ち
ゃ う か ら 私 は カ ウ ン タ ー に 出 な い で 配 架 だ け や り ま す 。」
と。私の経験ですと一番声を掛けられるのが配架に行っている時です。利用者に「こういう本は
ど こ に あ り ま す か 。」 と 言 わ れ ま す 。 ノ ル ウ ェ ー の 森 と い う 小 説 が あ り ま す 。 以 前 は マ ー ク が ウ
ェイと書いてあり、それを直さないといけないのですが、図書館に来たばかりの人は本を調べな
いで端末を検索して「ありません」と対応しているのです。利用者の「アリナミンみたいな横文
字 で 、 お 餅 を 膨 ら ま せ る 成 分 は 何 か 。」 と い う 質 問 に 、 レ フ ァ レ ン ス 担 当 者 が 対 応 し た の で す が
端末で調べるわけですよ。まず百科事典や化学事典で調べて対応するのが常識ですがしていない
のですね。そういう意味で本当に職員問題というのは、非常勤職員の専門職化のところに非常に
表れています。だから業務の蓄積性が図書館には必要ですと主張しています。
無料の原則ですが、自治体から図書館に出る委託料の構成をみると大きいのは資料費です。そ
れと施設の維持管理やエレベーターの保守管理が2番目です。もう1つは人件費です。受けた側
が減らせる場所は人件費の1箇所しかないわけです。だから図書館協会としては民間事業者を避
けるべきであると考えます。中野区の非常勤職員が委託になった時は、自分たちでNPOを立ち
上げました。立派だと思います。まず300万。300万を頭数で割って採用できる人数以外は
採用しませんでした。それで経理などの仕事を家に持ち帰り仕事をしているんですとレポートを
受けたことがあります。大切な事は継続するかどうかという事だと思います。
指定管理者制度ができて10年ですがいろいろな事があります。ホームページで三菱総研の人
が平成19年に指定管理者の評価と再指定について書いています。静岡の三ヶ日町についてバス
ケットボールのリンクが壊れていた事件があり、協定で例えば50万円以上の修理費は役所側が
持つとかそれ以下は指定管理者の委託料の中で決めるのです。指定管理者からは役所側へ言って
いたのですが、自治体側が直すのが遅れ倒れて死亡事故が起きたとか、富士五湖のどこかの青年
の家で指導員が未熟で女子高校生が亡くなったという事件もあります。総務省の行政課長や三菱
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総研などがまとめたものです。こういう中でいくつかの見直しが出てきました。次に6ページ目
の6のところですが、社会教育法、図書館法を含めた改正、教育基本法も変わりました。指定管
理者制度の問題の時に質問が出て、文部大臣が「図書館は指定管理者制度になじまない」という
答 弁 を し た の で す が 、( 4 ) の と こ ろ で 片 山 さ ん は そ の 前 の 年 に 資 料 集 の 2 0 ペ ー ジ で す が 、 ぶ
ら下がりでテレビ朝日の記者のインタビューがされました。18ページの通達とか指示命令の関
係と地方公共団体と国は関係がなくなりました。対等平等なのです。だから国と地方公共団体の
見解が別れた時には、係争機関を設けて議論することになりました。でも旧態依然で平成12年
の分権改革の時政令指定都市が厚生省に生活保護の指定統計を提出しませんでした。国がきちっ
と高額補助金を自治体に押し付けるという方針を出したのです。それについてできないと地方公
共団体の政令指定都市が全部一斉に反発して指定統計を出さなかったのです。すると来年度予算
が組めないわけです。老人世代がどの位いて、成年がどの位いると大きく違いますから。生活保
護費が決められないわけです。国の方は参ってしまいその方針を撤回した事があります。従来で
すと主務大臣は長を免職することができるのですが、地方分権になってからその文章はそういう
事を含めて「助言する」と改めて片山さんはおっしゃっています。20ページを見ると片山さん
は、10行目後に出てくるその4行目の「コストカットのツールとして使ってきた嫌いがありま
す」と答えています。一番の狙いとしては、指定管理者制度は行政サービスの資質の向上にある
べきです。だから地方自治法の中でも効果的なサービスができるのであれば委託できますよと。
統一的ではないのです。お金の経済的な効果によるものではなくて質なのですね。これは地方行
政をやっていく上で非常に大切な事です。大切にされてきたのです。今でも大切にしなければい
けないと思います。
次に21ページです。自治体内では非常勤化がどんどん進んでアウトソーシングを通じて官製
ワーキングプアを大量に作ってしまう。地方公共団体は本来地域の幸せなり就労とかお願いする
所です。自分の会社の失業率を下げて税収が上がるとか、そういう地域経済のために一生懸命や
るのが地方行政の基本の 1 つであると思います。それにもかかわらずワーキングプアを作ってし
まった。集中改革プランというのが市長から出ていて、どういう風に進めるのかとアウトソーシ
ングということで報告を求めているのがいっぱいあるのですね。そういうものは法的根拠のない
仕組みを全国に強いてきたと片山さんは記者会見で言っています。この問題は自治体側の新公共
経 営 の 影 響 と か 、も う 1 つ は 当 初 言 わ れ て い た の は 5 0 兆 円 の 投 資 が 生 ま れ る 経 済 の 活 性 化 だ と 。
だから財界も含めて指定管理者だけでなく法律の仕組みをワーッと作りました。この問題が深刻
なのは自治体側が実施するにあたって生まれるのは非常勤職員の解雇や正規職員の人事異動で
す。地方公務員法の中にその業務がなくなれば懲戒免職ができるという規定がないわけではない
ですが、公務員の人件費減らしをすることは指定管理者制度を提案するところは大体賛成する訳
ですが、そこが一番深刻な問題です。
平成21年の第95回全国図書館大会東京大会の時に図書館職員の雇用問題をお願いして大学
も公共団体以上に進んでいないというかアウトソーシングが進んでいるというか、そういうとこ
ろでは報告できないのですね。会社との関係です。ペーパーで出てきたのはライブラリア方式で
気軽に情報交換するのは難しい状況になります。図書館の発展のためには現場レベルの情報交換
が必要と感じます。同じ会社の中で情報共有できるというのはいつか息詰まると思いますし、図
書館コミュニティの崩壊に繋がるのではないかと言っています。どこの自治体でも地域資料を集
める時にこういう工夫をしたとか、どんなにひどい図書館を見に行っても学ぶところは1つや2
つあります。そういう交流を通じて図書館の発展に繋げてきました。彼はその後に図書館コミュ
ニティの崩壊に繋がるのではないかということも考えていますと。この人は平成21年の図書館
大会で発表できなかったものを連名の文書で送ってきました。勇気ある人は例えば足立で館長だ
った人が足立から要請されている仕事をやると学校支援とか書かれているわけです。学校へのニ
ュースを作っているとか一生懸命やっているわけです。それで超過勤務が相当増えたからダメだ
と解雇される事件があり裁判になるのですが、最終的には双方和解する事件なども起こります。
その彼はホームページの平成21年の図書館大会の図書館職員の雇用問題のところに出ています
のでご覧になってください。官製ワーキングプアについては荒川の新川さんが「隗より始めよ」
ということで図書館職員の雇用問題は何とかしなければいけないと考え、最終的には総括非常勤
職員で25万円の給料の体系を作り、荒川は指定化ではなく非常勤化の道になっています。
次に7ページ目の下から6行目に情報公開して出された市が会社に払った金額と会社が執行し
た金額です。九州のある炭鉱町の話ですが、そこの自治体の予算書は非常に細かく出来ていて今
年の図書館大会で配られそういうのは非常に珍しいことです。千代田区が指定管理者制度の情報
公開をやるという条例があるにもかかわらずやらなかったんですね。
最後ですが、今の図書館の現状を改革するためにはどうしたら良いか。図書館法の第3条は土
地の事情で一般公衆の希望に沿いサービス計画を立てると書いてあります。群馬県は振興計画を
お作りになっていてそれがどこまで進んだのか、文部科学省はすごく熱心で教育振興計画という
のを作らなければいけないと5年経ったものを今改訂作業に入っていて望ましい基準についても
改訂でパブリックコメントを求めています。たぶん来年の初めにはなると思うんですが、新しく
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望ましい基準が出ると思います。それに基づいてきちっと作ることが大事だと思います。選定基
準などがホームページで公開されるとか自由宣言についてどうするのかとあります。利用者でも
熱心な人は分かっていてなかなか言わないです。なんでこの本を入れてこの本を入れないのか、
図書館は無料の原則じゃないですか。利用者はそのジャンルに一番詳しくて、その次が図書館み
たいなことを前川さんは書いています。レファレンス事例集なども作って書架の間に、例えば医
学関係だったら医学の所にこういう相談がありましたなどを作っておけば、そうかレファレンス
も受けてくれるんだという話になるのだと思います。創意工夫で光交付金や鎌倉は図書館基金と
いうのを作りました。それは市民からの提案で図書館の予算作りとかいろいろ工夫してやってい
く。だから地方自治の劣化だと思うのですよね。出来ることをやらないと手放してしまうと現場
を知らないから豊かな政策ができなくなります。委託問題については、配布した資料を読んで頂
ければわかります。御清聴ありがとうございました。
【事例報告①】
『栃木市図書館における指定管理者制度の導入事例』
栃木市教育委員会生涯学習課図書館担当主幹
中島
多美子
氏
栃木市は、平成22年3月29日に旧栃木市・大平町・藤岡町・都賀町が合併し、翌23年1
0 月 に 西 方 町 と 合 併 し ま し た 。 南 北 が 3 2 . 6 km、 東 西 2 2 . 3 km、 面 積 2 8 4 . 3 k ㎡ と
広域化されてきました。人口は11月1日現在で147,138人です。
栃木市においては、合併方式を総合支所方式という新しい方式を採用しました。そのため、合併
後各地域にある図書館は、その地域で管理するという形をとっていました。しかし、指示系統や
連絡調整に不具合があり、総合的に組織上の不具合を調整する必要が生じました。そこで、業務
の一元化を図るため、組織再編を実施しました。本年4月に本庁生涯学習課に図書館担当を新設
し、市内図書館を統合的に管理することになりました。新設された図書館担当が手がけたことの
一つとして、図書館計画の策定をいたしました。市の上位計画である総合計画、教育計画の策定
に合わせたものです。資料として栃木市図書館計画概要版が配布されていますので、それに沿っ
て若干説明をします。
現在栃木市は、合併により5つの図書館があります。各館が質の高い、均一化した図書館サー
ビスを提供していくにはどうしたらよいか、また各地域の独自性・特性をどのようにとらえ、市
民サービスに反映していくかが課題となっています。そのため、課題解決を図り、効果的・効率
的な図書館運営を行うことを目的とし、栃木市の図書館のあるべき姿、図書館が目指す将来像の
実現に向けた計画を策定しました。計画の期間は、平成24年度から平成29年度までとしまし
た。本計画の達成状況や環境の変化等により、随時見直し更新を図っていきます。
本計画の基本理念を「市民と歩む暮らしに身近な図書館」と定め、7点を栃木市の目指す図書館
像、本計画の基本方針と位置づけました。また基本計画・基本方針の具現化を図るため、4つの
柱と15の具体的な取組を設定しました。
栃木市の図書館施設概要については、以下のとおりです。
No
図書館名
設置地域
開館年
運営形態
備 考
1 栃木図書館 栃木地域 昭和61年
指定管理 平成21年度から指定管理を導入
2 大平図書館 大平地域 昭和60年
指定管理 平成19年から旧大平町が指定管理を導入
3 藤岡図書館 藤岡地域 昭和56年
直営
築31年の施設
4 都賀図書館 都賀地域 昭和62年
直営
歴史民俗資料館を併設
5 西方分館
西方地域 平成24年
直営
西方分館は、前年度までは公民館図書室でした。合併の際の住民の強い希望により、2階に開
設されていました公民館図書室を、利用者の利便性を考慮し1階入り口すぐの部屋に移転し、専
任の臨時職員を置きました。その影響で、昨年1年分の利用数を、開館後1か月半でクリアしま
した。現在はますます数を伸ばしていて、1階のだれでも入れる場所、また人がいることの大切
さが実感できました。直営館につきましては、開館時間・休館日の不均一がありましたため、本
年4月より統一してサービス提供をしています。なお、指定管理館の開館時間・休館日につきま
しては、指定管理時の事業者からの提案を受け入れてのサービス提供となっています。
図書館の指定管理者制度導入について、まず、制度の理解に向けて説明させていただきます。
指定管理者制度と業務委託は全く別物であるということをきっちり認識してほしいと思います。
多くの自治体関係者が、業務委託との区別ができていないため、混乱が生じていると聞いていま
す。昭和38年の地方自治法の一部改正で、自治体が行っている土木・水道・建築等公的事業で
ある営造物から施設を切り離し、公共団体等に委託できるものとなりました。住民サービス提供
の施設を切り離し、運営を委託することができるとしたものです。その後、平成3年に一部改正
が あ り 、 委 託 の 受 託 者 に 出 資 法 人 が 参 加 可 能 に な り ま し た 。 こ の 出 資 法 人 と い う の は 、 1 /2 以
上自治体が出資している法人のことです。しかしながら、職員の慢性的な人員不足、シフト体制
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による勤務、土・日・祝日勤務、8時∼5時の勤務ではないという問題、またそのような勤務体
制について、組合との交渉も必要である等、さまざまな問題が各地で出てきました。平成15年
9月2日から施行された地方自治法の一部改正により、民間のノウハウと活力による効率性を求
めた指定管理者制度に大きく変わりました。それまで、自
治体が直接行う直営方式、また公共団体や公共的団体、自
治体が出資している外郭団体に委託する方式に限定されて
いましたが、法改正により、直営にするか、管理委託を行
っている施設について、民間事業者・NPO等の幅広い団
体の中から指定管理者を指定するかを選択できるようにな
りました。法律の施行後3年以内に公の施設の管理に関す
る条例等を改正しなさいという附帯経過措置が付いたもの
です。それに合わせて、平成17年には総務省から「地方
公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策
定について」が示されています。まず集中改革プランを公
表し、地方公共団体における行政の担うべき役割の重点化として、民間委託等の推進・指定管理
者制度の活用、PFI手法の適切な活用などがあげられており、すべての公の施設について、管
理の在り方についての検証、行政として施設に対する関与の必要性の検討、存続の適否について
の検証、管理主体が管理者になっていない場合の理由について説明責任を十分に果たすことなど
が盛り込まれていました。その段階で、全国の各自治体では、財政力等を勘案し、行財政改革の
手法として指定管理者制度を導入したところが多いと聞いています。直営のまま管理運営を続け
た自治体もありますが、正規行政職員100%というところは、ほとんどないと聞いています。
その場合、サービス部門だけを一部業務委託にする、また臨時職員や非常勤職員の採用による対
応で直営を継続して管理運営をしているところもあります。栃木市の直営3館も、その例に漏れ
ません。
管理委託は、自治体がすべて業務を仕様書にして明記します。そして原則として単年度契約で
す。随意契約ですので、議会の議決は必要ありません。しかし、指定管理は公募による選定を原
則としています。自治体の考え方で、仕様書や要求する意見書にどこまで指定管理者に任せるの
か、どういうサービスレベルをするのかということを明示して募集します。民間事業所を想定し
て雇用の確保、運営の安定を求めて複数年契約する例が多いです。指定管理の場合、正しくは契
約 で は な く 行 政 処 分 の 一 つ で す の で 、指 定 の 決 定 後 に 協 議 の 上 、協 定 書 を 結 ぶ と こ と と な り ま す 。
複数年のため、会計処理上債務負担行為をしますので、議会の議決が必要となります。指定の手
続は、条例で定め、その中に該当施設の名称、指定管理者の名称、指定の期間等を盛り込んだも
のを作成します。指定管理を導入するか、また指定自体は、自治体のトップ(市長・町長等)が
決 定 者 で す 。議 会 は 首 長 の 指 定 の 提 案 に 対 し て 、賛 否 を 議 決 す る と い う こ と に な り ま す 。そ し て 、
それに関する条例については議会に議決を求めます。また相手先や契約年数などについても、議
会の賛同を得るということが、この指定管理者の議会との関係ということを覚えてください。
指定管理の導入に当たって、経費削減だけを目的に指定金額の一番安いところに決定するケー
スが見られます。施設管理については自治体に責任がありますから、自治体として求めるサービ
スに対し最低限必要な金額があるはずなので、それを精査し適正金額で決定するということが大
切です。それがサービスの向上につながります。
自治体としての責任を考えると、まず図書資料等の収集方針があげられます。選書方針等をきち
んと作成し、それに伴う資料収集のバランスを保つことを仕様書に述べていること、指定管理の
目的を果たすためのミッション内での議論を、関係者間で十分にして共通理解を得るということ
です。指定管理者制度の導入でコストを抑えられればよいという安易なものでなく、自治体とし
て、何のためにやるのかという目的、何をしてほしいのか、何を求めているのかというというこ
とを十分議論した上で、共通理解を図ることが大切です。指定管理の事業所は一定水準以上のサ
ービス提供をしてほしいと求める姿勢、そういうことも自治体として出てきますし、水準以上の
ものを求める姿勢を保つことにもなります。常に利用者のニーズを把握し、自治体と指定管理事
業者との相互連携により、対応できる体制ということが大切だと思います。また、平成22年1
2月付総務省からの通知「指定管理者制度の運用について」で留意すべき点が8点があげられて
います。
また、直営で図書館運営を実施していく上での悩みもあります。慢性的な正規職員の配置不足で
す。行財政改革もこういうところに出てきまして、人件費削減のために職員の配置を極端に減ら
しますので、臨時職員・非常勤職員でまかなっているのが現状です。臨時職員等で対応している
ために、職員の質の維持・向上や変則的な勤務条件等に対応することが求められます。
現在の栃木県内における指定管理者制度の導入状況ですが、本年度導入したところが2自治体
あり、平成25年度当初の予想数として県内22自治体・図書館数50館で、16自治体・31
館が導入の予定です。よって、県内指定管理者導入率は62%となり、全国的に見ても高い導入
率だと思います。全国の状況を見てみますと、指定管理者制度を導入して失敗して直営に戻すと
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いうところは、図書館では事例がありません。ほかの美術館・体育館・文化会館などは、施設の
特性に合う事業者選定でなかったため、直営に戻したという例があると聞いております。ただ、
2期目・3期目というところもありますので、ノウハウを蓄積し能力を備えた事業者に変更にな
ったところもあると聞いています。
栃木市では最初にお話ししたように、5館あるうち2館が指定管理による運営で、3館が直営
です。栃木図書館では、平成22年度より合併前の旧栃木市が選定した共同事業体により運営さ
れています。NPO法人山本有三記念館、シダックス大新東ヒューマンサービス、紀伊国屋書店
の3社による共同事業体です。5年間の選定で、平成25年度末で終了の予定です。大平図書館
は平成19年度から合併前の大平町が選定した株式会社図書館流通センターが1期目3年間、平
成 2 2 年 度 か ら は 2 期 目 4 年 間 の 選 定 に よ り 行 っ て い ま す 。栃 木 図 書 館 が 2 5 年 度 末 終 了 な の で 、
それに合わせて年度を調整しています。両館とも多様化・複雑化する市民ニーズにこたえ、かつ
効率的に対応するため、民間事業者の経営の発想やノウハウを有効活用し、経費削減を図るとと
もにサービスの質の向上を図ることを目的として導入しました。導入手続は、公募によるもので
す。導入のメリットとして、開館時間・開館日の増加があげられます。開館日は年間300日を
超えています。そのため利用者数・貸出数も伸びています。また、司書有資格者の配置率が高く
なり、専門職員の配置によって利用者の求めるレファレンスに的確な対応ができ、利用者の満足
度は向上しています。デメリットとしては、職員の継続性についてあげられます。指定期間のみ
の雇用であることが、一般的に問題と言われていますが、最近では再継続制度があり、栃木市も
採用していますので、このデメリットについては解消できると思っています。
行政側のチェック体制については、担当部署を配置することにより、統一した考え方で監理・
監督しています。今後の課題として栃木市としては、各館の管理運営形態の方向性を検討する時
期でもありますので、図書館計画策定時にあげられた問題点等の解決をし、指定管理者制度の積
極的な導入を検討していく予定です。
最 後 に な り ま す が 、指 定 管 理 を 導 入 し 成 功 さ せ る に は 、自 治 体 の 判 断 姿 勢 が 大 き く 影 響 し ま す 。
何を目的として指定管理者制度を導入するのか、図書館行政の施政方針が明確にあることが大切
です。また、そのことが内部で十分に議論され、共通理解を図っていることが必要です。指定管
理事業者に何をしてほしいのか、自治体として求めているものが明確であることが大切です。任
せたのだからと丸投げしてはいけません。公共施設は住民のための施設です。特に図書館は、幼
児から高齢者までと利用者の年齢層の幅が広く、利用目的も多様です。皆さんの勤務している図
書館、あるいはお住まいの地域にある図書館行政の施政方針を見直してみてください。現在指定
管理を導入している栃木市は、自治体と指定管理事業者が、目的達成のために連携し、市民サイ
ドに目線を合わせ、最大の効果を上げるために努力しています。指定管理者制度の導入は経費削
減が目的の一つでありますが、サービスを抜きにした経費削減は考えていません。図書館は利用
者と資料があり、その利用者と資料を結びつける図書館職員がいるからこそ図書館であると考え
ています。また職員がいるだけでなく、職員が利用者に対し適切な働きかけを行うことで、図書
館の魅力が倍増します。栃木市の職員は、元気で根気があり勇気もあって情熱を持って日々対応
しています。さらに、企画力・実践力アップのためにも努力しています。元気な図書館が地域を
元気にします。御参加の皆様にも、この熱い思いが伝わることを願っています。御清聴ありがと
うございました。
【事例報告②】
『太田市立中央図書館の業務委託について』
太田市立中央図書館 館長
大矢
公子
氏
はじめに中央図書館の沿革について申しあげます。太田市立中央図書館は県立東毛学習センタ
ーの併設施設として、平成3年に創設されました。太田市が県立東毛学習センタ−を平成15年
に譲与を受け、隣にありました江戸時代よりの文書を引き継ぐ中島記念図書館と大正11年設立
私立金山図書館とを併せて、平成17年に太田市立中央図書館と名称変更し開館しております。
年 間 利 用 者 数 で す が 、2 4 年 3 月 現 在 2 0 8 ,9 4 5 人 、開 館 日 数 は 3 2 9 日 で す 。登 録 要 件 は 、
群 馬 県 内 の 在 住 者 及 び 太 田 市 内 在 勤 者 。県 外 は 、足 利 市 、佐 野 市 、熊 谷 市 、深 谷 市 の 在 住 者 で す 。
これは県立東毛学習センターの施設だったということで群馬県内全域を対象とし、合併しても市
内4館とも引き継いでいます。特色として登録要件もそうですが、図書の宅配サービスを行って
います。70歳以上の方や障がいをお持ちの方、あるいは病気などで一時的に図書館へ来られな
い方へ無料で本を配達しております。一般の方も登録できますが、1回200円で配達をしてい
ます。見守りの意味もあり郵送等はせず、お顔を見ながら本を手渡すことを基本としています。
NPOへの図書館業務委託開始から終了までについて説明申し上げます。太田市には群馬県の
NPO認証団体が74団体あります。平成13年4月に図書館の業務委託が始まりました。図書
館においては、利用しやすい図書館運営や経費節減、雇用支援、市民参画ということで任意団体
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でしたがNPO太田市図書館サポ―タ―ズを立ち上げました。平成16年に法人化されNPO太
田 ラ イ ブ ラ リ ー サ ポ ー タ ー ズ と 名 称 変 更 し 、そ ち ら に 委 託 を し ま し た 。当 初 は 雇 用 契 約 で は な く 、
NPOの精神に基づき図書館運営に生きがいを持って奉仕することにより低額の報酬を得ること
に賛同するということで、1時間500円でスタートしました。当時の館員数は40名ぐらいで
し た 。成 果 と し て は 、守 秘 義 務 の 業 務 ま で 委 託 を し た た め 、
まず人件費の節減が図られ30名いた正規職員が18名に
減りました。通年開館、宅配サービスもそれを機に実施し
ました。市民参画のNPOが運営に加わったことにより、
気軽に利用できる親しみやすい図書館作りを目指しまし
た。NPOの会員の半数が司書等の有資格者でしたので、
専門的知識を生かした利用サービスができ、11年間頑張
っていただきました。問題点ですが、職員が当初18名か
ら去年の解散するまで嘱託を含め7名に減らされてしま
い、なおかつ7名は司書の資格がありませんでした。やは
り専門的な知識がなかったため、当初は対等なパートナー
シップとして発足をしたのですが、NPO主導の図書館運
営となってしまいました。また、当初の賃金であった1時間500円をだんだんに上げざるを得
なく、最終的に委託経費が年間6,000万円になりました。
市長の一言により平成24年3月31日で業務委託終了することになりました。24年4月か
らは、NPO太田ライブラリ−サポ―タ−ズの中から図書館臨時職員として幾人か勤務すること
になり、正規職員5人、臨時職員30人と人数減の体制になりました。変則勤務により全職員が
出勤するのは月末の図書館整理日だけですので、事務連絡などうまく行うかが課題となっていま
す。また、業務量に見合った人員配置や業務の質的充実を図るための職員研修をする日程を設け
る難しさも問題となっています。勤務体系の問題については、週3日の扶養の範囲で勤務をして
いる職員についてはそのままとし、週4日の職員については週5日勤務として行政嘱託職員にな
るよう働きかけています。直営に戻したと言っても今半年たち検証の段階です。新しい図書館を
作るという意識で毎日働いております。御清聴ありがとうございました。
【状況報告】
『「 指 定 管 理 者 」 ∼ 民 間 な ら で は の 取 り 組 み 』
TRC図書館流通センター
代表取締役社長
谷一
文子
氏
日頃、お世話になっております、図書館流通センターの谷一でございます。紹介のとおり、図書
館勤務の経験がございまして、そういう意味でも非常に180度、真逆な事をいろいろやってい
るような気持ちもしております。
TRCは図書の納入やMARCの作成、最近ではICを使った新しい流通等を開発して、図書
館の皆さま方の利便性を高める事を主な業務としています。図書館の運営業務は平成8年からし
ています。最初は書庫の中から本を出す、ただそれだけの仕事でした。そういう所から始まり、
現在は全国で339館の受託があり、業務委託が183館、指定管理が156館あります。
スタッフは4,720人います。6割以上が司書ですが、その集団を抱えて仕事をさせていただ
いています。指定管理ですが、会社としては順調に受託していて年々伸びています。以前は業務
委 託 と い う 形 が 多 か っ た の で す が 、こ こ 近 年 は 業 務 委 託 か ら 指 定 管 理 に 変 わ っ て い る 所 、 い き な
り指定管理を導入して効果が出ている所もあります。
私たち、PFIの事業もやっていて、これは建物を建てるところから一緒にやります。例えば三
重 県 の 桑 名 市 は 図 書 館 で は 初 め て の P F I で し た が 、殆 ど 全 面 委 託 に 近 い 形 で の 業 務 委 託 で し た 。
指定管理ではありませんが、大体の業務、選書からすべての業務はさせていただいています。
図書館を民間で運営する事への疑問ですが、指定管理者制度の導入の目的は、経費を削減しサ
ービスを向上する、これが大前提です。しかし、いろんなところで言われるのは「図書館は無料
が 原 則 な の だ か ら 民 間 企 業 は 儲 け を 期 待 で き な い 。」 と 言 わ れ ま す 。 人 件 費 が 非 常 に 厳 し い 、 人
材 が 短 期 雇 用 で 専 門 化 が 育 た な い の で は な い か 。契 約 の 期 限 が あ っ て 継 続 で き な い の で は な い か 、
と言われます。先日、スタッフの10年表彰をしましたが今年は20名、10年以上の勤続者が
いました。また私どもは実はかなり業界の中で先の方を行っているものですから、私たちが仮に
ものすごく安い金額で仕事をすると、それが基本となりがちだと思っています。非常にそこの所
を気にして、だから本当は金額ではなくて提案でとっていきたいと思っています。
先 日 、 草 加 図 書 館 総 合 展 で C C C と 一 緒 に フ ォ ー ラ ム で 話 し ま し た 。「 T ポ イ ン ト っ て 何 す る の
で す か ? 」 と 聞 い た ら 、「 自 動 貸 出 機 を 使 っ た 人 に は 3 ポ イ ン ト 差 し 上 げ ま す 。」 と い う 事 を い
っていました。これ、理にかなっていませんか、実は。一冊一冊やるコストはすごいです。時間
単価を冊数で考えると一冊相当な金額になり、3円どころでは賄えないような金額でやっていま
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す。だから皆さん、いろいろ疑問はあると思いますが、その所を解決できたらと思います。
図書館ビフォーアフターの事ですが、お受けした時にどのような事があったか。私たちが最初
に 受 け た 時 、 た く さ ん の 問 題 が あ り ま し た 。( ビ フ ォ ー ア フ タ ー が わ か る 写 真 を 見 な が ら 。)
仕事を効率的に進めるためには整理整頓が必要です。それからお客様に感じ良く、この図書館に
来たいと思っていただかないと困ります。これは内側の方ですが、私たちが入った時、手を入れ
ないといけないと感じ、整理整頓をして見やすくしました。パソコンの画面がお客様に見えてし
まっていました。長年していると当たり前の風景になってしまいます。でも他の図書館に行くと
目についてしまう、という事がありますが、まず一番はじめに手をつけたのがこのような改善で
した。
良 く あ る の で す が 書 架 の 上 に 本 が 並 ん で い ま せ ん か 。 地 震 の 時 等 、 怖 い で す 。「 本 が 増 え て 書
庫 が い っ ぱ い に な り 廃 棄 で き な く 困 っ て い ま す 。」 と い う 答 え が 返 っ て き ま す が 、 そ れ は 違 う と
思います。洋服を買う時に綺麗に見栄え良くきちんと並んでいれば手に取ってみたいと思いませ
んか。図書館も全く同じでたくさんあれば良いというものではありません。必要な物が必要なだ
け揃っている事が大切です。そのために検索もシステムもあり本が取り出せます。司書の皆さん
も紹介してくれるわけですから、このような所も手を加えました。
このように、今まで蓄積していた物をいくつかリセットする、という事が大切になると思ってい
ます。
業務委託の北海道の図書館は、ポストが古くなり塗り替えました。職員のアイデアで“ウォー
リー”柄や“エルマーとりゅう”柄になりました。こういったことは本来の図書館の仕事とは関
係ありませんが、実は図書館に来て下さるお客様がまず、最初に気持ち良さや居心地の良さに凄
くひかれる物なので、この所に重力を注いで手掛けさせていただいています。
直営の図書館では新潟県立図書館が様々な工夫を行っています。新潟には『本ポート』という新
しい新潟市立中央図書館ができてお客様がそちらの方に流れはじめ、こちらが減り続けていると
の事でした。館長が考えたのは、どういうお客さんが来
て、どういうお客様が来ないのかを分析しました。そし
たら、女性が来ない、子どもが来ない。子どもが来ない
というのは、子どもの本が無かったからです。女性が来
ないというのは、子どもと一緒に来られないからです。
そ こ で 館 長 は 、女 性 と 子 ど も が 来 ら れ る 図 書 館 と 考 え て 、
例えば、婦人雑誌が手前の方に並んでいるとか、女性が
大好きなガーデニングの本等を揃えました。また会議室
の一室を全面改装して女の人が好むカフェを作りました。
言いたかったのは、お客様のニーズをくみ取るという事
です。
指定管理というのは、必ず、モニタリングという評価
があります。顧客の満足の向上が運営の評価につながっていきます。お客様有りきです。利用者
=主(お客様)へのサービス向上が運営の評価になります。
そして、今までしてきた事が間違っている事もあります。企画をしたその曜日と時間帯を見た
ら、保育園等の行事と重なっていました。お客さまが来ないはずです。そういう視点でお客様の
方をちゃんと向いて考えているか、という事が大切になってくると思います。
「 で き な い 。」 と い う 一 言 を 言 わ な い よ う に し ま し ょ う 。 民 間 で 「 で き な い 。」 と い う 事 は 言
え ま せ ん 。「 や っ て 。」 と 言 わ れ た ら 「 は い 。」 と 言 わ ざ る を え ま せ ん 。 だ か ら 、 で き る 工 夫 を し
ま す 。 こ の 図 書 館 は 受 託 を 受 け て か ら 数 年 間 は 「 忙 し く て 、 で き な い 。」 と 言 っ て い ま し た 。 新
し い 事 業 を し よ う と す る け れ ど 「 で き な い 。」 と 言 い ま す 。 で き る 事 か ら と 、 片 付 け を し て 予 約
本 を 整 理 し た ら 時 間 が 生 ま れ 、 新 し い 自 主 的 な 事 業 を 行 う 事 が で き る よ う に な り ま し た 。「 で き
な い 。」 の で は な く 「 で き る よ う に し て 行 こ う 。」 と い う 事 を 私 た ち は 考 え て い ま す 。
事業の構築の事例ですが、お客様がどんな事を考えているか、という事から町の人に投書等し
てもらうのですが、本を買うお金がないのなら古本市でお金を得たらどうかという事を考えまし
た。そして、自分たちだけでするのは相当大変なので市民の皆さまの力も借りて実行しました。
ここで大事なのは、私たちだけが得をするのではなくてみんなが得をする、という仕組みを考え
なければいけません。古本市で得たお金で新刊を購入し次の資料として使う、という事を実行委
員会にしていただいて、寄贈してもらいました。成果は、ホームページにあげて、皆様にアピー
ルをさせていただきました。大事なのは、必ず、市民の皆さまにきちんと御礼を言い、伝える事
です。
最近、飲食したいという方が多くありませんか。一個人の意見として聞いていただきたいので
すが、家に帰って本を読まれている時は、物を食べたり飲んだりしながら読まれていませんか。
また最近は、段階世代のお父さんが非常に増えています。弁当を持たされて来る人、多いそうで
す。食べる所がないと困ります。ここはたまたま、スペースがありましたので作りました。また
自動販売機は災害時に水の提供もできるので設置して非常に助かっています。もちろん、収入に
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もなっています。
私たちは、図書館に来ていないお客様を掘り起こしたいと、考えています。皆さんは市民の何
パーセントが登録されているか知っていますか。2割ある所は素晴らしいです。たぶん、2割以
下なのではないかと思うのですが、図書館は住民が主であるのですから、たくさんの主に使って
もらいたいです。利用されない理由は様々だとおもいますが、一つ一つ、原因を考えながらして
いかないといけません。私たちはマスコミを相当、利用しています。地元の新聞、放送局に取り
上げてもらいます。最初はFAXを送ってもなかなか取材に来てもらえないという状況ですが、
一回来ていただくと新聞記者の方ともだんだん親しくなって、良く取り上げていただけるように
な り ま し た 。や は り 新 聞 に 取 り 上 げ ら れ る と 、皆 さ ん も 興 味 を 持 ち 来 て 下 さ る 方 が 増 え て き ま す 。
学生やママ友の口コミも凄いです。
予 算 が 無 い の は 当 た り 前 で す 。 私 た ち 、 限 ら れ た 指 定 管 理 料 で し て い ま す 。 共 同 企 画 で 1 /3 、
1 /4 の 予 算 で で き な い か 、 企 業 の 応 援 を も ら え な い か 、 図 書 館 で グ ッ ズ を 売 れ な い か 、 市 民 の
皆さんの力をもらえないか、こんな事を考えながらやっています。これは、鉄道企画で企画展示
をしてもらっています。本社で大きな物を作って全国に回しています。鉄道ファンはたくさんい
るので、JTBの時刻表とコラボしながら、また地域の鉄道会社さん、私鉄さん等とコラボしな
がらしています。ほかに企業のコラボではNHKや有線事業、出版社、大学等とやっています。
効 率 的 な 運 営 の 中 に は 、一 時 間 あ た り の 仕 事 量 を 考 え 余 分 な 仕 事 を 減 ら し て サ ー ビ ス を 厚 く し 、
環 境 を 整 え 、 便 利 な 機 能 I C で 自 動 貸 出 機 を 使 っ て も ら え る よ う な 工 夫 を し ま す 。「 私 、 こ れ し
か で き ま せ ん 。」 は 無 し で す 。 臨 時 職 員 や 嘱 託 職 員 が 多 い と 「 今 ま で こ ん な 事 、 や ら せ て も ら っ
て い な い の で で き ま せ ん 。」 と い う 事 を 良 く 言 わ れ ま す 。「 そ ん な 事 を 言 っ て い な い で ド ン ド ン
や れ ! 」 と 、「 勉 強 を し て 行 け ! 」 と 言 っ て い ま す 。
やはり、人です。企画して実行するのはスタッフです。そのスタッフがいかにモチベーション
を上げてするか、そんなに高い給料ではありませんが、みんなモチベーションを持ってしていま
す。今までやりたかったけどできなかったこと、もっとお客様にしてみたいと考えている事を引
き出してあげる必要があります。そのため、私たちはオリジナルの研修のメニューを作っていま
す。また他の県立図書館の研修とか、文部科学省の研修とか外部の研修も出します。出す予算が
無かろうが出します。ただし、出した結果は図書館に持ち帰って必ず公開してもらい、みんなに
還元してもらいます。4,700人以上のスタッフが自治体の枠を超え、各地に散らばっていま
す。その人たちのネットワークがあり情報の交換をしています。
スケールメリットもあります。研修もいくつかの図書館で一緒にやることができ、また異動がで
きるという利点もあります。例えば、サブチーフクラスをリーダーにさせる等して、空気の入れ
かえを図ることもできます。
スケールメリットの中で今、観光に力を入れています。地域の情報を発信する事を図書館の仕
事と考えて、地域の良さを展示物にして他の図書館に持っていきます。これは今、とても好評で
す。ほかにも『TRCスタッフが選んだ本2012』というのを企画しており、当社の指定管理
館で展示したいと思っています。ほかにも地元出身の漫画家さんの原画展や地域の動物園と協力
し、動物と目の見えない子のふれあい等を企画しました。またこのような企画で一番人気のある
『ふるさと再発見塾』という地域の方が自分の地域の事を語るということも行っています。
言いたいのは地域と密着させる、という事です。TRCが受託している図書館は全国一律なので
はないか、と良く言われますが、実はそうでなく結構、地域密着型でしています。企画するのは
本 社 で な く ス タ ッ フ で す 。内 の 地 域 に 根 差 し た 物 は 何 だ ろ う 、と い う 事 を 考 え て い ま す 。す べ て 、
本と結びつけていくための行事です。楽しいだけではいけません。そこを忘れないでください。
その事により違うファンの方が図書館に足を踏み入れて下さるという事が起こっています。
私たちは、図書館のカルテ、評価を独自で作っていて自分たちの館の様子をわかるようにしてい
ます。次の年に何をするか、どこにターゲットを持っていくか、という事をやっています。Eラ
ンニングで研修ができるようにも作っています。先程、モチベーションと言いましたが、年一回
表彰する等しています。これは、私たち図書館の運営理念ですが、指定管理者導入の中で、目的
が大事ですが図書館の運営がはっきりしていないと変な方向に行ってしまいます。当社のスタッ
フにはうるさい位に言っています。私たちはいつも未来を作る図書館を目指していきたいと思っ
ています。
私たちが今、実践的にしている事を皆さん、まねしていただいて結構です。使っていただいて
結構です。その事によって全体的に図書館の活性化がはかれれば大変、素晴らしいと思います。
御清聴、ありがとうございました。
【フロアートーク】
コーディネーター:大橋
大
氏
パネリスト:中島
氏、大矢
氏、谷一
氏
橋:お疲れ様です。とりあえず皆さんの中でそれぞれの方に共通項などの質問があるかと思
- 17 -
います。まず、皆さんのほうで質問のある方は気楽に堅苦しくなくやっていきたいと思
います。我々は今までメッセージを送ってきましたので、皆さんからコメントをいただ
いたり、質問していただくことが大事だと思います。いかがですか?自分の館でやって
いるとか、群馬でやっている今図書館の目標や進行計画があって、それをやっていくう
えでこういったことが困難であるとか、いろいろある場合もあろうかと思います。そう
いったことも含めていかがですか?説明などもっとしてほしいなどあるかと思いますが
・・・。
井 ノ 口( 健 福 大 ): 今 日 は い ろ ん な 視 点 か ら の 指 定 管 理 者 制 度 の お 話 を あ り が と う ご ざ い ま し た 。
2点ほど質問をさせていただきたいのですが、栃木の中島さんのお話を聞いて非常に自
分たちの指定管理者制度はうまくいっているというお話でした。図書館担当としての人
数までお話いただいたかと思いますが、現場を見る人が現場を知らないと困るので、現
場を知るための研修、工夫を教えていただきたいのが1点と太田の図書館長様のお話の
中で、今、指定管理者制度をおやめになって直営になりましたが、今後どのようにお考
えかをお尋ねしたいと思います。以上です。
高
橋 ( 富 岡 ): 4 人 の 先 生 方 に は 大 変 参 考 に な る お 話 を お 聞 か せ い た だ い て あ り が と う ご ざ い
ました。私の図書館も昨年包括委託の話が出て、実際には実現はしなかったのですが、
その中で、栃木市の事例4ページに導入のメリットが挙げられておりますが、その前の
大橋先生のお話の中では自館でできることではないかと思えることでしたので、導入の
メリットをもう少し詳しくお話いただけたらと思います。大平町図書館が導入した時は
とても全国的に話題になりましたのでその後栃木県内は急速に広がっていった理由をわ
かるかぎりで中島先生にお聞かせいただければと思います。
中
島:ではまず一点目の現場を知るための工夫を図書館担当はどうしているのかと、人員体制
をお答えしたいと思います。人員体制は図書館総務チームは本庁に私を含めて4名うち
1名は司書有資格者、もう1名は司書教諭の有資格者、西方には総務チームより1名有
資格者が配属されています。開設準備から雇用しています。直営館(藤岡・都賀)につ
きましては現在スタッフ5名ずつです。正規職員が2名、臨時職員が3名です。また、
現場を知るための工夫ということですが、西方分館へは勤
務日数は週5日なので一日は必ず図書館総務チームが西方
で勤務しています。労基法の関係で昼食時間1時間は西方
の教育司書が勤務しています。土日祝日の勤務については
シルバー窓口の職員を派遣で委託しています。第3日曜日
と祝日はシルバー職員がいないので総務チームから2,3
時間程度勤務しています。ですので、全員現場をまったく
知らない職員ではありません。また、私は指定管理に対す
る現場はよく分かっています。総務チームのものが栃木図
書館に勤務し、栃木の現場をよく理解しています。また、
私が定期的に月2,3回全図書館を巡回をして内容等を確
認しています。指定管理業者とは月例報告として月1回1時間半程度時間をとり、利用
者の状況等の綿密な連携を図っています。
井ノ口:栃木市は全館すべて指定管理者を導入したいとのお話でしたが、今は担当者は現場の仕
事をしてらっしゃると思いますが、そのうちに担当者が撤退する可能性がおありかと思
い、その辺をお聞かせいただきたいと思うのですが。
中
島:将来的には市長判断では将来全館指定管理を予定しております。ただし、管理監督や連
携を図るために図書館担当はおいて、自治体の責務を果たすつもりです。もう一点指定
管理のメリットは19年に導入したときは新聞等で大きく報じられました。有資格8割
配置でしたので、専門部分に対して的確な対応と職員教育のしっかりした業者でしたの
で、にこやかで、穏やかで爽やかな対応で行政的な対応が全くなかったので、対応一つ
一つが好評でした。スタッフの人数が倍近くになり、綿密な対応をしています。また、
直営館時代の臨時職員(有資格者)を優先雇用してもらい、現在も活躍しています。そ
れもメリットだと思います。開館時間もその地域の特性を考えて適切な時間で利用者に
満足してもらっています。
大
矢:今後、太田中央図書館ではどのように考えていくのかということですが、私どもは指定
管理ではなくNPOへの業務委託でありました。それは市長判断です。現在、職員が5
- 18 -
人臨時が30人です。今後は職員増員は難しいので週4日勤務から週5日勤務にしてス
タッフの中身の充実をはかり、サービスを提供していきたいです。宅配も職員5人で実
施しています。欠勤補充も職員が行っています。お互いに協力しながら、新しい図書館
づくりに努めています。精神論が主になりますが。太田市内他3館は直営でやっており
ます。規模の大小がありますので人数が少ないのですが、基幹となるべき中央図書館が
くすんでいるとも言われていましたので、まずは心を入れ替えてみんなで協力して頑張
っていこうとしています。それで何とか半年頑張ってきました。以上です。
中
島:追加(補足)します。デメリット部分で、合併して新しく図書館担当を見直したら指定
管理が合併前の旧自治体の協定であったために、サービス範囲が旧地域に限られていた
デメリットがありました。来年度は合併して宅配などサービスが全市に及ぶように委託
事業として別に予算を取り均一化されたサービスが提供できるように計画しています。
永
井 ( 富 岡 ): T R C 谷 一 さ ん に 伺 い た い の で す が 、 現 在 指 定 管 理 料 だ け で 運 営 し て い ま す 、
というお話でしたが、企業としての利益、それから、実際に4,700人の従業員の雇
用は大丈夫なのでしょうか?個々のスタッフ、特に正規職員の人事制度についてお伺い
できればと思います。以上です。
谷
一:基本的に指定管理料だけで運営しておりますが、ただ今後どうなるかわかりません。た
とえば千代田区さんが新しい試みとしていろいろな有料イベントをしております。私た
ちも日比谷図書文化館では有料の講演会をかなり行っております。うちだけではありま
せんが、中には1回1万円以上という高額なものも満席になったりしています。だから
本来の資料の利用、入館等の無料ではない部分(プレミアムな)が起こるかもしれませ
ん。でもまだ分かりません。まだ様子を見ていきたいと思います。雇用の件ですが、契
約社員の形をとり、評価をしています。あなたはこの一年これだけ頑張りましたのでこ
れだけ差し上げますといった形で評価をしています。年々給与が何%か上がっています
ので、だんだん指定管理料からの利益が薄くなっていますので打破しなければいけない
と 思 っ て い ま す 。 そ れ と 利 用 者 が 増 え て い て ど の 図 書 館 も 1 1 0 ∼ 1 2 0 %ア ッ プ し て
い ま す 。当 然 忙 し く 、今 の ス タ ッ フ で は 見 き れ な い の で や っ て い け な く な り ま す 。た だ 、
今のところは本業も本、用品のところで何とかやっております。今後そのあたりも自治
体の皆さんにも働きかけていきたいと思います。なぜなら、韓国で市長に物申せるのは
住民だけと住民が例えば3,000人がサポーターになったらその票は大きいでしょと
いう話を聞きました。やはり市民の賛同を得ることが必要ですし、図書館が重要だと思
っている長は予算をきちんとつけています。重要なポイントなのだなと認識していただ
いていることが私たちの今後の図書館の政策のありかたにつながっていくのかなと思っ
ています。実は言い足りなかったのですが、大平図書館では自治体の方が明確な方針を
示してくださっているのでやりやすいです。これがあいまいであったり、ポリシーがな
いと丸投げになり細かいことに口を出されてしまいます。そうではなく、こういった目
的でこういったことをここまでやってくださいとはっきり仰ってくださるので非常にや
りやすいです。自治体との密な関係は今後の指定管理においては絶対のポイントだと思
います。
大
橋:最後にこちらで感じていることを発言させていただきます。ツタヤの本丸である視聴覚
資料と雑誌については視聴覚資料については有料貸出でツタヤさんの当然やることです
ね。雑誌については販売するということなんですね。このごろ図書館で資料を売る図書
館が出てきて良いも悪いも含めて10年後の図書館像はどうなのかいろいろな所で言わ
れてきています。だからそういった意味でも管理形態の問題について言えば、賢い民間
人と図書館に情熱がない公務員で運営すればどちらが良いかははっきりしています。た
だ、制度問題としてそういったことも含めて考えていく必要があると図書館協会は考え
ています。小郡が公社から直営に戻しましたがいろいろな複雑な背景があり、表面的に
は消費税と法人税の支払いで消費税が150万円、法人税はもっと高いお金が支出され
て二重構造になっているため取りやめの判断になりました。全体として取り組みをよく
するための手法としては谷一さんが問題提起したお話は刺激的で参考になります。我々
が市民の中にどれだけ図書館像を提起していくのかということはもっともっと精力的に
解決していかなければいけません。どちらかと言えば図書館協会自体が指定管理者制度
に批判的な見解を持っていますので、3名の方々は別のスタンスでありますので、別の
見解として発言させていただきました。今日は本当にありがとうございました。
- 19 -
2−2
分
科
会
報
告
分 科 会 名
第2分科会
日
時
平成24年11月29日(木)13:00∼16:40
会
場
県立図書館
マ
読書力アップ!図書館のつかい方・つくり方
テ
ー
ホール
図書館とはなにか? 司書とはどういう仕事か?
図書館を、本や文字という資料をさらに有効に活用してもらうためにも、図
書館を利用する側の方たちに対して、図書館や司書や本についての解説が"
言 葉 で ! "で き る よ う に な ら な け れ ば な り ま せ ん 。 そ の た め に は 、 自 分 の 仕
事を一度バラバラにしてそれを再構築しながら言語化するという作業が必要
です。
第2分科会では、図書館とはなにか、図書館の仕事とはなにか、司書とは
なにか、どんな仕事をしなければならないのかというような基本を、初心に
かえり、一般市民に解説できるように、みなさんと確認し、言語化するとい
う作業をとおして、図書館 のつかい方、つくり方を考えてみたいと思いま
す。ぜひ、ご参加ください。
開催趣旨
1 2: 1 5 ∼ 1 3 : 0 0 受 付
1 3: 0 0 ∼ 1 4 : 3 5 講 演 ① 「 図 書 館 員 の た め の 図 書 館 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン 」
赤木かん子(児童文学評論家)
日程・内容
1 4: 3 5 ∼ 1 4 : 5 0 休 憩
( 休 憩 中 に 「 平 成 24 年 司 書 講 習 問 題 」 を 実 施 )
1 4: 5 0 ∼ 1 6 : 1 5 講 演 ② 「 か ん 子 さ ん お す す め の 本 の 紹 介 」
赤木かん子(児童文学評論家)
1 6: 1 5 ∼ 1 6 : 4 0 質 疑 応 答
参加者状況
合計132人(一般参加者 105人、発表者 1人、
分科会検討会委員 19人、 県立職員 7人)
係
司会…武部(上野)
受 付 … 加 藤 ( 高 崎 )、 後 藤 ( 渋 川 )、 割 田 ( み ど り 笠 懸 )、 須 賀 ( 邑 楽 )
記 録 … 中 沢 ( 草 津 )、 高 草 木 ( 医 療 福 祉 大 )、 橋 爪 ( 県 立 )
会 場 … 永 井 ( 富 岡 )、 小 田 澤 ( 玉 村 )、 宮 尾 ( 高 工 )、 宮 崎 ( 新 田 暁 )
展 示 … 諸 星 ( 太 田 女 子 )、 太 田 ( 藤 岡 中 央 )
分
担
配 布 資 料
ブ ッ ク リ ス ト 、 自 然 科 学 の 分 類 図 、 第 二 次 区 分 表 ( 項 目 表 )、 平 成 2 4 年 司
書講習問題、第2次区分表(綱目表)
・
評
価
反
省
そ
の
他
図 書 館 で 働 く 職 員 は 、「 図 書 館 と は な に か ? 」、「 司 書 と は ど う い う 仕
事か?」という質問に対して、言葉でしっかり説明できなければならな
い。また、説明できるということは、図書館の本質を理解できている、自
分のやるべき仕事が認識できているということになる。
・ 「子どもと読書」をテーマとして、図書館の仕事とは何か、司書はどん
な仕事をしなければならないのかということを考えながら、どんな図書館
をつくれば、どんな使い方をしてもらえば、良い児童サービスを提供でき
るのかを研修する分科会として企画した。
・ 参 加 状 況 を み る と 、 公 共 4 0 人 ( 30.3 % )、 学 校 ( 小 23 、 中 13 、 高 17 )
5 3 人 ( 40.2 % )、 そ の 他 ( 一 般 11 、 読 み 聞 か せ 7 ) 1 8 人 ( 13.6 % ) の
参加があった。学校からの参加が多かったことが際立ったが、スタッフと
して運営に携わった大学の職員も含めて、それぞれの現場で役立ちそうな
かつ刺激的な内容の分科会であった。
・ 児童青少年サービスの括りであるが、受講対象が公共、大学、高校、小
中と幅広いため、講師には特段の配慮していただいた。企画の反省点でも
あり、結果として幅広い参加が得られたので良かった点でもある。
・ 参加者からは「冷水を浴びせられた、頬を張られた気分。明日からは、
生 ま れ 変 わ っ て 仕 事 に 励 み た い 。 あ り が と う ご ざ い ま し た 。」、「 濃 い 内
容 で ド キ ド キ し た 。 ブ ッ ク ト ー ク の 時 間 を も っ と 取 っ て ほ し か っ た 。」、
「実際の仕事で役立つ情報がたくさんあり、学校に戻ってすぐに活用した
い 。」、「 図 書 館 の 仕 事 は お も し ろ い と 感 じ な が ら 仕 事 を し て い け る 気 が
し た 。」、「 良 い 本 を た く さ ん 紹 介 し て い い た だ き 、 楽 し か っ た で す 。 そ
し て 、 そ の 楽 し さ を 子 供 た ち に 伝 え た い と 思 い ま し た 。」 な ど の 声 が 寄 せ
られた。
- 20 -
講演①「図書館員のための図書館オリエンテーション」
【定義をことばに】
初心にかえって「図書館とは何なのか、司書の仕
事とは何なのか」を話したい。若い頃図書館でバイ
ト を し て い た が 、「 司 書 と は 図 書 館 と は 」 と 言 う 私
の問いかけに図書館員の誰も明確に答えてくれなか
った。でも、働いている人たちを見ていると自分の
仕事は何なのか心得て仕事をしているものの、それ
をバイトの私に説明することができない。
公共図書館と学校図書館は一般人を相手にする図
書館。専門的な大学図書館と異なり「解説者」とし
ての役割が大きくなる。特に小学校図書館は子ども
が生まれて初めて利用する。だから「図書館とはこ
ういうものだ」という概念が子どもの中で決まる可
能 性 が 高 い 。「 説 明 す る 」 と い う こ と は 「 言 葉 」 が 必 要 。 つ ま り 言 語 化 す る こ と 。 物 事 は 言 語 化
しないと他人に説明ができない。
今日は多くの公共、学校図書館の関係者が集まっているので、全員の言語に対する知識を固め
る。参加者以外の人には皆さんが説明して欲しい。一般人を相手にしている学校図書館員、公共
図書館員は「しゃべれなければ、解決できなければ」話にならないという場面がたくさんある。
相手が理解するための言語化を行うこと、そのためには常に考えることが大切。特に小学校は
そ う 、「 定 義 」 を 用 い る 。 漢 字 一 文 字 一 文 字 を 考 え 理 解 す る 。 定 義 と 言 う の は 「 コ コ か ら コ コ ま
での範囲を意味する」という意味。人に説明するには「言語化」しなければならない。言語化す
るには定義があればいい。
ではその「定義は」どこに書いてあるのか「百科事典」の最初の一行にある。百科事典の最初
は必ず「定義」からはじまる。何か調べる時には「百科事典」からはじめる。ほかに定義が書い
て あ る の は 、「 漢 字 辞 典 」 と 「 国 語 辞 典 」 こ れ は 図 書 館 員 の 三 種 の 神 器 。 定 義 を 押 さ え 、 考 え れ
ば人に説明できる。
これを小学校2年生と3年生に説明していて、話すと「そうかあ!」と感動される。小学2、
3年生に「定義」というのは難しい、と思う大人が大部分だけど、小学生には逆に難しくない。
小学校低学年に難しいのはなにか「これもあるし、これもあるよ」と意味が定まらない言葉がい
ちばん苦手。ひとつしか答えが無いもので、日常言語で解決できるものは彼らにとって「やさし
いことば」になる。
小 学 校 の 低 学 年 は「 わ か ら な い こ と だ ら け で 、世 界 は 怖 い も の で 満 ち て い る 。」と 思 っ て い る 。
しかし、定義を説明するとそれが強い武器になることが2年生には分かる。低学年には難しい概
念 で は な い 。 答 え が 1 個 し か な い も の は 「 や さ し い 」、 複 数 あ る も の は 「 む ず か し い 」。 調 べ 学
習 で た く さ ん ク イ ズ を つ く る 。 例 え ば 、「 地 球 と 太 陽 の 距 離 は 何 キ ロ メ ー ト ル で す か 」 こ れ は 、
やさしい。なぜなら、これは調べれば必ず書いてある。しかも、1つしか答えはない。難しいの
は 「 犬 の 大 き さ は ? ど の く ら い か 」・ ・ ・「 何 セ ン チ か ら 何 セ ン チ ま で 」 と い う の は 特 に 低 学 年
男子はとても弱い。そういうクイズを作る時には答えが1つしかないものを心掛ける。
小学1年に【分類ってなに】という授業をしている。みんな大興奮。分類が好きなのは、3歳
から10歳まで、特に好きなのは5〜8歳。1年生になぜ授業をしているかというと、男女の差
がないから。1年生なら女子でもダンゴムシ、トカゲ、ヘビが好き。ところが、2年生になると
女 子 は そ れ ら が 「 き ゃ ー ( 怖 い )」 と な る 。 同 時 に 分 類 も 嫌 い に な る 。 2 年 に な る と 女 の 子 は 女
になって、分類も嫌いになる。6年になると徹底的に嫌われる。分類の授業、本の分類を教える
のは4年生。世の中には分類という言葉と概念があるよと話すのは1年生が一番いい。
【図書館とはなにか】
図書館の「定義」については書きません。大人は文字の威力を知っているので書くと忘れる。
今 書 く 必 要 は な い 。 な ぜ か 、「 か ん 子 さ ん の 本 に す べ て 書 か れ て い る か ら お 金 を だ し て 買 っ て く
だ さ い 」。 な ら ど う し て 、 本 も あ る の に こ こ で 話 を す る の か 。 本 を 読 ん で 勉 強 す る に は 、 相 当 に
能力が必要だから。勉強は基本的に一人でするもの。本を使って勉強しようとする。それが出来
る人はごく少数。読んで理解できるひとは少ない。本に書いてすべてのあること(単語の意味)
が果たして分かるか。本を読んで分からない単語を一つ一つ丹念に辞書で調べることも出来なく
はないが、相当に時間がかかる。それを解説してくれる本があるかも分からない。
大 学 の 先 生 の テ キ ス ト は 、先 生 が 毎 週 9 0 分 話 を す る 前 提 で 書 か れ て い る 脚 本 の よ う な も の で 、
お客さんが面白いと思ってもらうにはかなりの演出が必要になる。教師は相手(生徒)が本を使
って勉強できる所まで連れていくのが仕事。私がここで話すのは、皆さんが私の本を読んで理解
できる所まで連れていくため。私は、この本を頑張って頑張って相当やさしく書いた。だけど、
際限なくやさしく書くことも無理。人前でしゃべることはいちばん効率がいい。書いたり読んだ
りしたときより3倍から4倍しゃべれる。基礎的なことはしゃべって、それが身に付いたら本を
読めばいい。でも誰もしゃべってくれなければ、自らで基礎知識を手に入れなければならない。
- 21 -
ただ、それをするには時間がかかる。
【5千年まえから、教師と言う職業は存在していた】
今 、分 か っ て い る 書 物 は 、シ ュ メ ー ル 人 が 用 い た く さ び 文 字 の 書 か れ た 粘 土 板 と 言 わ れ て い る 。
契約関係の粘土板が多い。これを集めたのが図書館であり、管理していたのはおそらく司書だっ
たろう、その文字を子どもたちに教えた教師もここから生まれたのだろう。子どもたちが落書き
をしたような粘土板が多数見つかった所、ここが、たぶん学校だったと言われている。文字は人
が造り出したものなので、ルールを教えてもらわないと使えない。文字のように人工的に作った
ものは解説されないと使うことはできない。だから教師と司書は非常に古い職業ということが言
える。少なくとも、5000年前から文字の発明の派生として存在している。
図 書 館 は 「 学 術 機 関 」。 言 葉 が い か め し い の は 明 治 時 代 の 翻 訳 だ か ら 。 こ う い う 言 葉 に 対 し て
「何だろう」と思ったら、英語から考えてみると謎が解ける。機関の英語はシステム。これは、
今 ま で 人 間 が 考 え た り 、 作 っ た り し た 知 恵 を 「 集 め て 」「 研 究 」 し 「 分 類 」 し 、 そ し て 「 保 管 」
して一般の人に「還元する」という5つの働きがある。博物館の仕事がそれ。世の中には総合を
名乗る学術機関がいくつかある。イギリスの大英、フランスのルーブル、アメリカのメトロポリ
タンなどが代表例。そういう所はミイラから本までを集めている。そうすれば、それぞれの分野
での専門家が必要になる。同時に費用もかかる。ルーブルの館長どこかのテレビでインタビュー
を受けていたが「私の仕事は金集め」だと言っていた。ルーブルは入館料よりは寄付によってい
る。このように大掛かりな総合的な機関は、誰もが作ることの出来るものではないので、分担収
集がはじまる。
学 術 機 関 が 集 め る も の = 資 料 。資 料 に は ル ー ル が 2 つ あ る 。① 固 定 化 さ れ て い る 資 料 を 集 め る 。
生 身 の も の ( 芝 居 や コ ン サ ー ト ) は 集 め な い 。 CD や DVD に な れ ば 収 集 す る 。 ② 運 べ な い も の は
集めない。ルネサンス時代に美術館が盛んになったのがわかる気がする。彫刻や絵画は固定化さ
れていて、移動が出来るから。エジソン以降、音楽館や映像館が作られなかったのは、古い映像
・音楽資料が入手できないことは悔やまれる。
学術機関は個々で連携し、地球規模の総合機関になる。お互いコレクションを充実して貸し借
りを行っている。
【司書のしごと】
図書館は「文字と印刷物を集めた学術機関」人類が考えたことや作ったことは、ほぼ文字に書
き 留 め ら れ 、図 書 館 が そ れ を 収 集 す る 。気 が 付 い た ら 学 術 機 関 全 体 の「 最 終 的 な 海 の よ う な 存 在 」
となっている。図書館司書はその海の水先案内人。
5000年経って人類が作った図書館という「知識のプール」は膨大なものになった。素人が
潜っても、図書館の海は深くて何がどこにあるか探すことはできない。それを替わりに潜ってく
れ て 、 色 々 探 し て く れ る の が 「 司 書 」。 司 書 は 「 潜 れ な い 」( 探 せ な い ) と い け な い 。
人 に 頼 ま れ て 成 立 す る の が 「 し ご と 」。 頼 ま れ な い で す る の が 「 道 楽 」。 頼 ま れ て 引 き 受 け た
以上、それは「しごと」になる。ほんとうに狭い意味では、人からお金を払ってもらって頼まれ
るのが「しごと」となる。その人は、なぜお金を払ってまで頼むのか、答えは「自分には出来な
い か ら 。」 ほ か の 人 が 三 日 も や れ ば で き る 「 し ご と 」 は 「 し ご と 」 と し て 成 立 し な い 。 つ ま り 、
皿洗いという職業はない。
「しごと」と名のつくものは基本10年の修行が必要。知識と経験が必要。司書はどこが他の
人ができない部分なのか。
図書館を考えるとき、範囲が広すぎるため、自分に分かるようなところまでに細かく切って行
く。そして、ひとつひとつ考えて行く。物事を考える時は必ずそうする。
図書館を「つくる」と「つかう」に切り分ける。今の学校図書館はつくられていない。図書館と
し て 作 ら れ て い な い 。だ か ら 、図 書 館 と し て 機 能 し な い の は 当 た り 前 。今 の 小 学 校 の 図 書 館 は「 本
が 並 ん で い る 場 所 」 に す ぎ な い 。「 つ く る 」 を も う 1 回 分 け て み る 。
①建築。図書館は特殊な仕事をする所なので、それ用に建てられることが望ましい。払い下げら
れた郵便局、つぶれた銀行、もっとも困るのが合併後の町長室・・そういったものを図書館に改
造をしたけどやっぱり、おかしい。図書館は図書館として作られていなければおかしい。
②内装。病院と図書館の作りは全く違う。違わないと仕事がし難い。
③ 目 的 。 ひ と つ ひ と つ す べ て 違 う 。 4 0 万 冊 の 蔵 書 を 入 れ る 図 書 館 と 2,000 人 の 村 立 図 書 館 で は
作り方が違う。大きい所より、小規模のところのほうが難しい。40万冊の図書館は全点買い。
小さい所は少ないお金で何を買おうと気を使う。小さい所でバランスの良い図書館を作れば客は
来 な い 。小 規 模 な 所 の 方 は 腕 が 必 要 。誰 が 使 う の か 、何 の た め に 使 う の か 、置 く 本 が 違 っ て く る 。
④ 分 類 体 系 を つ く る 。 NDC の 採 用 で 学 校 も 公 共 も う ま く 行 か な く な っ た 。 NDC を 使 え ば 図 書 館
は う ま く で き る と 勘 違 い さ れ て し ま っ た 。 NDC は 倉 庫 用 の 分 類 。 シ ョ ッ プ 用 と は 言 い 難 い 。
公共は医学の本が増えている。分類は非常に細かく分けられている。小学校にはそんな細かい
ものはいらない。カラダのしくみは必要。歯の分類が必要、中学校は不要。小学校ではアトピー
や花粉症と言った棚は必要。
【分類はどこまで必要? カッコイイ棚をつくる】
小学校用の分類体系をまとめた(当日配布資料)
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4 5 の 地 学 と 4 5 1 の 気 象 は 別 ( 日 本 人 は 気 象 が 大 好 き )。 あ と は 一 緒 。 分 類 は 困 っ た ら 分 け
始める。困らなくなったら止める。特に低学年になるほど分類にこだわる(特に男子)きちっと
分けられていることにたいそう喜ぶ。
人間の子どもは3歳になると自発的に分類をはじめる。快感だと思うのは8歳まで。自然科学や
っている人で、分類の嫌いな人はいない。特に植物学、何人か集まって、必ずケンカになっちゃ
う。植物学者に聞いても分からないので、仕方ないので、見た目で分けた。きのこ/花/木。学
問的な分類ではなく、実用的な分類。知識がないとわからない分類。
学問的な分類体系ではない実用の分類。専門家がみればみんな怒る。なぜか「間違っているか
ら 」。 で も プ ロ が 言 う よ う に 作 っ た ら 使 え な い 。 知 識 が な い か ら 。 学 術 的 に 「 正 し い 、 正 し く な
い 」 の 分 類 で は な く 。 実 用 的 な 分 類 を 作 っ た の が NDC 。 た だ こ れ は 倉 庫 用 の 分 類 。 そ れ ぞ れ が
考えて年齢や図書館の規模によって分類を活かさなくていけないのが司書の仕事。この、分類体
系を作るのは知識・経験・才能・センスがないとダメ。数字の順に本を並べるだけではダメ。お
客さんの前に、3 − 5 − 6で小学校は並べる。小学生は社会と言うものがどのように作られてい
る か を 知 る の が 目 的 。 真 ん 中 に 4 を 置 く と 浮 く 。 工 業 高 校 は 4 -5 -6 、 理 系 の 高 校 な ん か も こ う
並べると凄くカッコいい。世界が見える。図書館は無限に増殖できる訳ではない。ジャンルにこ
だわって、棚を作っていく。
分量、配置、設計をして初めて本が入る。今ある本を分類するのは「ド素人、ご家庭のやりか
た 」。 つ ま り 、 家 庭 に は 【 必 要 の 無 い 本 が な い 】。 公 共 と 学 校 は ま ん べ ん な く 本 が あ る 。 そ の 館
で必要なジャンルの棚のスペースを考え、捨てるか、書庫行きにする。
中学でティーンズ文庫が増殖して困る。そんな質問はあり得ない。求められているなら棚は増
やす。99年以降ファンタジー隆盛期。棚は8段に、リーマンショック以降ハリーポッターが下
降、ファンタジーもその役割を終えた。棚は4段になった。はじめに作った状態で何十年も持つ
訳がない。新興住宅地もファミリーから30年経てば高齢向けになる。図書館も地域の変化に応
じて棚を変え、蔵書を変えて、その地域に合うように作り替えていくことが必要。それは、知識
がないとできないこと、だからみんなに頼まれる。
小学校の図書館は小学生用に作られ、中学校は「ここはオレたちのものだ」と中学生が感じる
ように作られなくてはならない。高校は「高校生の部屋なんだ」と彼らが認めてくれるようでな
ければならない。
【図書館のレイアウトと知的な司書になるために】
飾りをする時は、誰が弱いかを考える。例えば小学校では、6年生男子が弱い。小学校の図書
室で働いているのは圧倒的に女性。女性のセンス、趣味で飾りをしたら男は入れない。お客さん
が満足するように自分の趣味、才能を使うこと。自分の満足のためにつかってはいけない。知的
で可愛くカッコよいデザインを目指す。今風であること。
中学生で弱いのは1年男子。だから、ワンピースのカレンダーを1枚ずつはいでブッカーかけ
て 貼 る 。折 り 紙 を 模 造 紙 に 貼 る の は 最 悪 、さ ら に そ れ に ガ ム テ ー プ を 使 っ て 貼 る 。下 手 な 手 芸 品 、
ゲームセンターでとった縫いぐるみも×、強いキャラクターも×。それを見て「みっともない」
というセンスを持って欲しい。図書館員,特に学校司書は子どもから信頼され、尊敬されないと
いけない。キャラクターは知的でないといけない。だから、学校内では生徒たちが憧れる靴やバ
ッ ク を 持 つ ( 大 人 の 底 力 を 見 せ る )。 身 な り は 大 事 。 学 校 司 書 は キ ャ ラ ク タ ー 、 そ こ に は 必 ず「 知
的」と入らないとダメ。子どもたちに「ああいう人になりたい!」と思わせないとだめ。子ども
たちからの尊敬、憧れを勝ち取る。飾りつけが先ではなく、まず「図書館」をつくろう。子ども
は(図書館で)飾りを観ないで本の背中を見る。
NDC を 自 由 自 在 に 使 う に は こ れ ( 二 次 区 分 表 ) を 使 い こ な せ な い と い け な い 。 二 次 区 分 表 を
見 て 、 子 ど も た ち に 覚 え さ せ る の は 、 お 客 が 離 れ る 。 NDC は 公 共 と 学 校 が 採 用 し て き た も の 、
大 学 は ま た 違 う 。 NDC を 覚 え る 手 間 ひ ま は い ら な い 。 お 客 さ ん は NDC を 考 え な い 、 本 の あ る と
ころに直行している。スーパーマーケットで分類のこと考えるか?
図書館の基礎は分類体系と配置、それがうまく出来るのが司書。だから司書は独立した職業と
なる。
【図書館員として】
図 書 館 で 働 く な ら 、「 客 の 個 人 情 報 は 守 る 」。 図 書 館 の し ご と は 情 報 を プ ー ル し 必 要 な 時 に 必
要としている人に出す。図書館員は探偵のようなもの。図書館員は情報探索のノウハウを知って
いることが大切。あらゆるジャンルの本を扱う、自分の好みでとやかく言わない。図書館や図書
館員のしごとは相手に幸福な人生を送らせるためにある。
(休憩)
講演②「かん子さんおすすめの本の紹介」
【 講 演 ① ( NDCと 配 架 に つ い て ) の ま と め 】
「 図 書 館 っ て 何 ? 」「 司 書 っ て 何 す る 人 ? 」 と 、 相 手 は 茶 飲 み 話 レ ベ ル で 訊 い て き ま す 。 な の
で、これからは訊かれたら「定義」を言葉で「即答」出来るようにしましょう。以前私は一緒に
本の分類していた学校の先生に、こんなことを訊かれました。
「ねぇねぇ、かん子さん。ミステリーとホラーは何処が違うの?」
- 23 -
「 先 生 、 最 後 を 見 て 犯 人 が 捕 ま っ て い た ら ミ ス テ リ ー 。 捕 ま っ て い な か っ た ホ ラ ー で す 。」
「 S Fと フ ァ ン タ ジ ー は 何 処 が 違 う の ? 」
「 魔 法 が 出 て き た ら フ ァ ン タ ジ ー 、 機 械 が 出 て き た ら SF 」
このように、とっさに切り返すには「訓練」が必要です。常に「その言葉の定義はどうなってい
る ん だ ろ う 」と『 百 科 事 典 』な ど を 引 く 習 慣 が 必 要 で す 。で も そ う い う 文 化 が 育 っ て い な い の で 、
日本の国語の辞書も百科事典も物凄く出来が悪い。<左手>→「右手の反対」これは「定義」と
いえるのだろうか?『オックスフォード英語大辞典』を見ると、割とはっきりとした「定義」が
載っています。
大 和 民 族 は 「 物 事 を は っ き り 言 う 」 こ と は 無 作 法 だ と 思 っ て い る の で 、「 相 手 に 説 明 す る 」 と
い う こ と が 民 族 性 と 合 わ な い 。「 正 し い ・ 正 し く な い 」 じ ゃ な く て 、「 礼 儀 の 問 題 」 に す り 替 え ら
れちゃうんです。それから日本の教育は、全部1・2・3が抜けるの。読書感想文を書く時も、
「 読 書 感 想 文 と は 何 か 」 と い う 話 を し な い 。「 何 の た め に 書 く の か 」 も 言 わ な い 。 昭 和 3 0 年 代 の
読 書 感 想 文 の 本 を 見 る と 、「 読 書 感 想 文 は 論 文 の 一 種 で あ り 、 1 冊 の 本 を 深 く 思 考 し 探 す こ と に
よって自分の思考力を鍛え、その作品の本質を掴むために書くもの」ってはっきり書いてある。
読 書 感 想 文 に 使 う 本 は 、「 読 書 感 想 文 に 使 う の に 耐 え る 本 か 」 と い う 吟 味 が い る 。 だ か ら 「 感 想
の書き方」は教えないと出来ない。まず読書感想文を書く前に「文章が書けるのか?」という問
題もあるでしょ?でも何にも教えないで、いきなり「書け」と先生は言うんです。子供が出来な
かったら怒られるのは先生の方であって、子供じゃないはずです。
今 皆 さ ん に お 渡 し た よ う に 、 私 は 「 4: 自 然 科 学 」 を 40種 類 に 分 け て い ま す 。 こ こ は 小 学 生 が
と て も 好 き な 分 野 な の で 、 こ こ ま で 分 け な い と 小 学 校 の 図 書 館 で は 役 に 立 ち ま せ ん 。「 61 : 農 業 」
と 「 6 6 : 水 産 業 」 と 「 6 4 : 畜 産 ( 畜 産 業 ・ 獣 医 学 )」 が こ こ に 入 っ て い る の は 、 こ の 3 つ は 「 4 7
: 動 物 学 」 の と こ ろ に 付 け る と 、「 こ の 部 屋 に あ る 動 物 に 関 す る 本 は 、 こ こ だ け 」 と い う 棚 が 出
来るからです。それから、色んなジャンルが入っているシリーズものは全部バラします。学校図
書 館 は 『 図 鑑 』 を 「 0 3: 百 科 事 典 」 で 分 類 を 取 ら な い 。『 動 物 図 鑑 』 だ っ た ら 「 48 : 動 物 学 」、『 植
物 図 鑑 』 だ っ た ら 「 47: 植 物 学 」 を 付 け ま す 。 NDC( 日 本 十 進 分 類 法 ) を 崩 し て 使 い こ な す た め
に は 、 ま ず 基 本 は 押 さ え な い と い け な い の で 、 NDC は 2 桁 ま で 全 部 丸 暗 記 し て 下 さ い 。
今 日 は 皆 さ ん が 弱 い 「 5 : 工 業 」 と 「 6: 産 業 」 に つ い て や り た い と 思 い ま す 。 NDC は 、「 社 会 を 構
築 す る 側 」 か ら 作 っ て あ る の で 、 1960年 代 に 開 架 式 の 図 書 館 を つ く っ た 時 、 公 共 図 書 館 は 配 架 方
法 の ノ ウ ハ ウ を 色 々 を 考 え な く て は い け ま せ ん で し た 。 そ の 代 表 が 、「 ペ ッ ト 」 で す 。「 ペ ッ ト 」
は 「 64: 畜 産 」 に 分 類 さ れ ま す 。 そ れ は 「 畜 産 」 と い う の は 「 動 物 は 人 間 の た め に 利 用 す る 」 と
い う 概 念 で 出 来 て い る か ら な ん で す 。「 畜 産 」 と 「 ペ ッ ト 」 の 違 い は 何 か ? − 「 食 べ る か 、 食 べ
ないか」この順番通りに並べると、公共図書館でも資料が見つからなくなります。同様に公共図
書 館 で は 、 便 利 な よ う に 「 ガ ー デ ニ ン グ ( 629.75)」 と 「 ペ ッ ト ( 645)」 と 「 料 理 ( 596)」 と 「 手
芸 ( 5 9 4 )」、 場 所 に よ っ て は 「 書 道 ( 72 8 )」「 花 道 ( 7 93 )」「 茶 道 ( 791 )」 ま で 引 っ 張 り 出 し て 、
カウンターの前の三段ぐらいの低段書架に並べます。何故なら、このジャンルの本は物凄く貸出
が多いからです。
「並べ方」や「動線」をどうやって勉強するかというと、商業マーケティングが参考になりま
す。大勢の人がたくさん出入りする所は「動線」が必要です。いくら「良い本」を入れても「分
類」や「配置」が下手だと資料は活きない。同じ分野の本は纏めて「これとこれは同じ」という
ことを考えるのも「分類体系を作る」と言います。ジャンルに跨る本を「何処に分類するか」が
司書の腕になるんです。だから同じ本でも、図書館ごとにそれを何処の「分類」に入れるかが違
う の で 、 同 じ 棚 に 入 る と は 限 ら な い 。 NDC を 自 由 自 在 に 崩 し て 使 い こ な す 時 、 そ れ が 「 分 類 体 系 」
を「根本から覆すような分類」なのか、それとも「ただの枝葉にすぎない」のか、区別が付かな
い と 困 り ま す 。「 低 学 年 の 部 屋 」「 高 学 年 の 部 屋 」「 絵 本 の 部 屋 」 と 分 け ら れ て し ま う と 、 も う 図
書 館 は お 陀 仏 で す 。「 子 供 」は 分 け ら れ る け ど 、「 本 」は 分 け ら れ な い 。そ れ か ら「 情 緒 的 な 分 類 」
は さ れ た ら 困 り ま す 。「 泣 け る 本 」 と い う 「 分 類 」 が 中 学 校 や 高 校 に あ る け ど 、 あ く ま で も 「 お
遊 び 」 の レ ベ ル 。「 分 類 体 系 を 根 本 か ら 傷 つ け る 分 類 」 は 、 や っ て は い け な い 分 類 で す 。 そ れ か
ら 、 学 校 図 書 館 を 預 か る 人 は 、「 自 分 の 好 み は 考 え な い 」 こ と も 大 切 で す 。 な る べ く 優 れ た 本 を
買いたいと思うのは、優れた本の方が「楽しみ」と「喜び」が大きいからです。そこから「楽し
み 」 が 引 き 出 せ な い と 思 っ た ら 、 買 わ な い 。 基 準 は そ こ で す 。「 必 要 」 か 「 必 要 で な い 」 か 。 図
書 館 は 「 良 い 本 を 集 め る 」 と こ ろ で は あ り ま せ ん 。「 必 要 な 本 を 収 集 」 す る 所 で す 。
「 5 : 工 業 」 の 所 を 見 て 下 さ い 。 小 学 校 の 本 は 「 52 : 建 築 」 と 「 5 1 : 土 木 」 に 分 け ら れ ま せ ん 。
し か も 『 工 業 ・ 産 業 』 っ て い う 本 が あ っ た り し て 、 1桁 目 も 分 け ら れ な い こ と が あ る 。 小 学 生 の
本 は 、「 5 : 工 業 」 と 「 6 : 産 業 」 は 一 緒 に し て 、 そ の 中 か ら 「 建 築 ・ 土 木 」 と し て 独 立 さ せ ま し
た 。「 日 本 の 城 」 と か 「 東 京 ス カ イ ツ リ ー 」 が あ る し ね 。「 自 動 車 工 業 ( 5 3 7 )」 に 関 し て も 、 小
学校1年生では『車のしくみシリーズ』と『はたらく車シリーズ』が見つからなくなってしまう
ので、
「 の り も の 」と い う 名 前 を 付 け て 別 置 し ま し た 。同 様 に 、子 供 が 好 き な「 ロ ボ ッ ト( 548.3 )」
の本も結構あるから独立させました。でも、あとは全部一緒です。
「 6 : 産 業 」 の 方 は 、「 6 1 : 農 業 」 ∼ 「 65 : 林 業 」 ま で は 、「 動 植 物 」( 農 業 / 園 芸 / 蚕 糸 業 / 畜
産 業 / 林 業 ) だ か ら 「 6: 産 業 」 を し っ か り 勉 強 す る 学 校 だ っ た ら 、 そ れ ぞ れ に 一 段 ず つ く ら い
- 24 -
必 要 で す 。 で も そ う じ ゃ な か っ た ら 、 別 に 移 し て し ま っ た 方 が 便 利 で す 。「 植 物 ( 4 7 0 )」 の 隣 に
「 農 業 ( 6 1 0 )」 を 、『 動 物 図 鑑 ( 4 8 0 )』 の 隣 に 「 ペ ッ ト ・ 畜 産 ( 6 4 0 )」 を 、「 魚 類 ( 4 8 7 . 5 )」 の
隣 に 「 水 産 業 ( 6 6 0 )」 を 置 い た 方 が 便 利 で し ょ ? も し 「 水 産 業 」 で 生 活 し て い る 町 が あ っ た ら 、
「 水 産 業 ( 6 6 0 )」 は 「 郷 土 資 料 ( K )」 に な り ま す 。「 郷 土 資 料 ( K )」 の 所 に 「 水 産 業 ( 6 6 0 )」 を
棚 ご と 持 っ て き て し ま う 。 そ し て 「 郷 土 調 べ を す る 」 と い う レ フ ァ レ ン ス に 困 る ん だ っ た ら 、「 こ
れに関しては、○○の本の△ページにあるよ」というアルバムを作る。ただこんなことをしてい
る と 、 い く ら 時 間 が あ っ て も 足 り ま せ ん 。 次 に 「 6 8 : 運 輸 ・ 交 通 」「 6 7 : 商 業 」 で す が 、 小 学 生
用 の 本 と い う の は 、「 農 家 が お 花 を 作 っ た ら 、 ト ラ ッ ク で そ れ を 運 ん で 、 花 屋 さ ん で も っ て そ れ
を 売 る 」 っ て い う と こ ろ ま で が ワ ン セ ッ ト 。 最 終 的 に は 「 68: 運 輸 ・ 交 通 」 を 潰 し て 「 運 輸 +商
業」の棚を作りました。
【ブックトラックから本を取り出しておすすめの本の紹介】
「 分 類 体 系」を 考 え「 頭 の 小 引 き 出 し 」を 作 っ た ら 、
本 を 探 し に 行 き ま す 。 こ の 辺 は 「 発 明 ( 5 0 7 . 1 )」 と
「 分 解 ( N DC 多 数 )」 の 本 で す が 、 付 い て い る 数 字 ( 分
類 : N D C)は 全 部 バ ラ バ ラ で す 。で も「 発 明( 507.1)」
と 「 分 解 ( N D C 多 数 )」 の 図 鑑 は 同 じ 棚 に あ っ た 方 が
便 利 で し ょ ? そ う い う 訳 で 、「 じ ゃ あ “ 発 明 ” や “ 発
見 ” の 本 は 、 全 部 こ の 数 字 ( 分 類 : NDC) に 統 一 し よ
う!」と自分で決めてノートに書いておきます。な
るべく関連資料は一箇所に集めるようにします。
以 下 抜 粋 ( 主 な No,付 紹 介 資 料 は 、 別 表 リ ス ト 参 照 )
◆「ビジュアル博物館シリーズ」は目次を眺めてお
き ま す 。そ う す る と 、訊 か れ た 時 に「 ど っ か で 見 た ! 」
と思うわけですね。時々こうやって開いて中身を見
せておきます。そうすると「えっ?この本って、こういう事が書いてあるんだ!」ってことが宣
伝されるので、利用者が増えます。
◆ 『 イ ラ ス ト で 見 る 世 界 を 変 え た 発 明 』 武 田 ラ ン ダ ム ハ ウ ス ジ ャ パ ン ISBN:978-4270002582
特に小学校図書館のレファレンスというのは、細かいことを訊かれるんです。使う本はせいぜ
い 15,000冊 で す が 、 中 身 を 熟 読 し て い な い と 答 え に 困 る 質 問 が 多 い ん で す 。 小 学 生 に は 「 は い 、
このページ」って出さないといけないので、中身を沢山知っていることが必要になるんです。逆
に 大 人 の 方 は 、「 ど う や っ て そ の 本 を 探 し 当 て る か 」 と い う ハ ウ ツ ウ の 方 が 重 要 に な る わ け で す 。
◆ 『 み ん な が 知 り た い ! 「 モ ノ の し く み 」 が わ か る 本 』 メ イ ツ 出 版 ISBN : 978-4780409987
◆ № 24『 ど う や っ て 作 る の ? パ ン か ら 電 気 ま で 』 こ れ は 「 読 み 聞 か せ 」 に も 使 え ま す 。 そ し て 、
とてもウケます。ここには「情緒」が一つもありません。そういう文体がウケるんです。
◆ № 4『 天 才 エ ジ ソ ン の 秘 密 : 母 が 教 え て く れ た 7 つ の ル ー ル 』 大 人 用 に 作 ら れ た 本 で す が 、 中
学生から小学生5年生でも十分読めるレベルです。著者はエジソンマニアの弁護士。明快な文章
でとても読み易いです。
◆ № 1 7 『 街 で 見 か け る ナ ゾ の 機 械 ・ 装 置 の 秘 密 』 こ れ は 小 学 校 の 中 学 年 か ら 使 え る 。「 家 の 外 に
あるメーターは何のメーター?」といった、今まで無かったところを埋めてくれた1冊です。
◆ 『 ヤ モ リ の 指 か ら 不 思 議 な テ ー プ 』 ア リ ス 館 ISBN : 978-4752005513
大 人 の 本 に な り ま す が 、 こ れ は 「 5: 工 業 」 に 入 り ま す 。 こ れ は 工 業 系 の 人 が 読 む と 、 と て も 興
奮する1冊です。
◆ № 8 8 『 ポ ッ プ ア ッ プ : モ ノ の は じ ま り へ ぇ ー ! ? 図 鑑 』「 仕 掛 け 絵 本 」 に な っ て い て 、「 モ ノ の
はじまり」を全部解説してくれています。こういう本は“パッチン”で留めて展示に使います。
そ う す る と 、子 供 達 は 毎 日「 へ ぇ ー 」っ て 読 ん で く れ る の で 、1 週 間 ご と に ペ ー ジ を 捲 っ て い く 。
はっきり言って壊れますが、それだけの値打ちはある本です。
◆ 『 満 点 ゲ ッ ト シ リ ー ズ : 両 さ ん の 産 業 と 仕 事 大 達 人 』 集 英 社 ISBN : 978-4083140488
◆ 『 ね じ と ね じ 回 し : こ の 千 年 で 最 高 の 発 明 を め ぐ る 物 語 』 早 川 書 房 I SB N : 9 78 -415 208 504 7
大 人 用 の 本 で す 。 こ れ を 書 い た の は 工 業 系 の 大 学 の 先 生 ( R y b c z y n s k i , W i t o l d ) で す が 、「 ど う
いう風に調べたか」っていうのが克明に書いてあって、図書館員としては大変面白い1冊です。
◆ 『 天 才 科 学 者 の ひ ら め き 3 6 : 世 界 を 変 え た 大 発 見 物 語 』 創 元 社 ISBN : 978-4422400228
「 5 : 工 業 」 と い う よ り 「 4 : 自 然 科 学 」 の 方 で す が 、 今 年 ( 2 01 2 年 ) に 出 た ば っ か り の 本 。 面 白
いよ。児童書系の出版社以外の本も集めないと、こういう対応は出来ません。
◆ 『 世 界 で 一 番 美 し い 建 築 デ ザ イ ン の 教 科 書 』 エ ク ス ナ レ ッ ジ ISBN : 978-4767812397
こういうのは図書館員にとても勉強になります。書架が乱列すると居心地の悪い「書庫」になっ
てしまうため、小さい図書館は「廃棄」が必要。学校図書館や公共図書館で持っていてもらわな
く て は 困 る の は 、「 郷 土 資 料 」 で す 。 そ の 学 校 の 資 料 は 、 そ の 学 校 し か 持 て ま せ ん 。「 市 立 図 書 館
や県立図書館が持っていれば十分」というレベルの本で今使わないならば、廃棄しても良い。
◆ № 7 1 『 き み の 家 に も 牛 が い る 』 解 放 出 版 社 ISBN : 978-4759221398
◆ № 8 9 『 お こ の み や き 』 解 放 出 版 社 ISBN: 978-4759222517
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こ れ も 「 絵 本 ( E )」 で は な く 「 畜 産 ( 6 40 )」 に 入 れ て 下 さ い 。 初 め て 「 屠 殺 場 」 を 子 供 の 世 界 に
描いてくれた本です。これは「読み聞かせ」が出来ます。
◆ № 59-62 『 か わ い い 食 育 : や さ い む ら の な か ま た ち 』 < 全 4 巻 > 子 供 用 に 作 ら れ た 本 で 、 こ
れ も 大 変 良 く 出 来 て い る 。い っ ぱ い あ る 材 料 の 中 か ら 、ど れ を 引 っ 張 っ て き て 、ど う 組 み 立 て て 、
ど の 順 番 で 出 す か 。 こ う い う の を「 編 集 能 力 」っ て 言 う ん で す 。 こ れ も「 絵 本( E)」 で は な く「 食
育」に入れて下さい。
◆ № 6 3 『 新 犬 種 大 図 鑑 』 ◆ № 6 4 『 新 猫 種 大 図 鑑 』「 ペ ッ ト の 本 」 は 、 ま ず こ れ を 入 れ ま す 。
分厚いですがボロボロになるほど読まれます。こういう本は、たいてい高価な本の方が、写真が
綺 麗 な の で 良 く 動 き ま す 。 1 冊 6,400円 の 本 を 小 学 校 図 書 館 に 入 れ る に は 、 ち ょ っ と 勇 気 が 要 り
ますが、誰も気にしないので大丈夫です。子供達は本当に正直で、安くてつまらないセット本は
利用しないので買うだけ無駄です。
◆ 『 無 人 島 の サ バ イ バ ル : か が く る B O OK : 科 学 漫 画 サ バ イ バ ル シ リ ー ズ 』 朝 日 新 聞 出 版 ISB N
: 97 8 - 4 0 23 3 0 3 8 5 0
今必ず買って欲しいのは「かがくるシリーズ」の「サバイバルシリーズ」です。1年に1冊くら
い、必ずこういう「ヒット商品」が出ます。こういう本は人気が落ちないうちに足りるだけ買っ
て 読 ま せ て 下 さ い 。 他 の も の を 犠 牲 に し て も 良 い 。 こ れ は 全 30 巻 で 、 今 『 実 験 科 学 シ リ ー ズ 』 が
5 冊 出 て い る の で 、 全 部 で 35冊 で す 。
◆ 『 雪 の 結 晶 : と び だ す ポ ッ プ ア ッ プ 絵 本 』 グ ラ フ ィ ッ ク 社 ISBN : 978-4766123418
も ち ろ ん 壊 れ ま す 。 で も 、 そ れ だ け の 値 打 ち が あ る 。 こ れ 「 説 明 」 が と て も 上 手 で す 。 2,200円
なので、ひと冬使われてボロボロになっても惜しくはない値段です。こういうものに反応するの
は、低学年なので、貸さないけど「展示」します。
先 程 の 試 験 (「 司 書 講 習 問 題 」) の 答 え を 知 り た い 方 は 、 こ れ を 見 た ら 書 い て あ り ま す 。
◆ 『 赤 木 か ん 子 の 図 書 館 員 ハ ン ド ブ ッ ク 』 埼 玉 福 祉 会 ISBN : 978-4884196882
◆ 『 赤 木 か ん 子 の 図 書 館 員 ハ ン ド ブ ッ ク 分 類 の は な し 』 埼 玉 福 祉 会 ISBN : 978-4884197964
◆ (調 べ 学 習 紙 芝 居 シ リ ー ズ : 7)『 報 告 書 っ て な あ に ? 』 埼 玉 福 祉 会 ISBN: 978-4884197599
◆ (調 べ 学 習 紙 芝 居 シ リ ー ズ : 2) 『 テ ー マ の 決 め 方 』 埼 玉 福 祉 会 ISBN : 978-4884196837
「 調 べ 学 習 」 に 使 う “ 道 具 ” と し て 、「 紙 芝 居 」 を 作 っ て い ま す 。 こ れ で と り あ え ず 、 小 学 校 三
年 生 ま で は ク リ ア で す 。「 紙 芝 居 」 の 良 い 点 は 、 1 冊 1 0 分 で 済 む と こ ろ で す 。 だ か ら 「 読 書 の 時
間 」 の 最 初 の 10分 だ け 貰 っ て 、 1 ヶ 月 に 1 回 や る だ け で 小 学 生 の 「 調 べ 学 習 」 の 基 本 的 な ノ ウ ハ
ウ は ク リ ア で き ま す 。 そ う や っ て 、 10分 刻 み で 「 知 識 」 を 細 切 れ に 入 れ て 勝 負 し て 下 さ い 。 勿 論
こ う い う の は 、「 読 み 聞 か せ ボ ラ ン テ ィ ア 」 の 人 が や っ て も 良 い で す 。 基 本 8 枚 で 作 っ て あ り ま
すが、これを使って1時間授業をすることも出来ます。
◆ № 94 『 日 本 の 地 震 地 図 』 埼 玉 福 祉 会
今 年 作 っ た 「 商 品 」 で す 。『 ジ ュ ニ ア 地 震 地 図 』 で す 。 最 初 は 大 人 用 の 地 図 が あ っ た の 。 で も ね 、
小学校2年生がね「怖い!」って泣くので「うーん、泣かないのを作ろう!」と思って“なまず
博士”を入れて可愛いめにして作ったんです。この後「世界地図」も作りましたが、太平洋環ベ
ルトがクッキリと見えます。
◆ № 15 『 ド ラ え も ん の 地 震 は な ぜ 起 こ る ・ ど う 身 を 守 る :親 子 で 読 も う ! 』 多 分 こ れ が 一 番 読
み や す い 本 で す 。 で も 、 や っ ぱ り こ う い う 本 の 形 に な る と 小 さ い 人 は 読 み 難 い の で 、「 紙 芝 居 」
を作りました。
◆ (危 機 管 理 紙 芝 居 シ リ ー ズ : 1) 『 地 震 っ て 、 ど う し て 起 き る の ?』 埼 玉 福 祉 会
◆ (危 機 管 理 紙 芝 居 シ リ ー ズ : 2) 『 地 震 が 起 き た ら ど う し た ら 良 い の ? 』 埼 玉 福 祉 会
小さい子が「たまたま一人で居る時に地震が起きたら、どうすれば良いのか」について書いたも
のです。ある中学校で小学校にこれを読みに行ってくれているグループがありますが、非常に芸
達者で小学生にとても人気だそうです。物語の絵本を読みに行くんじゃなくても良いんですね。
《全体のまとめ》
皆さんは今日「図書館」と「司書」に関する「定義」を手に入れたので、これからは言語化し
て「説明する」ことが出来るようになりました。でも、とっさに説明できるようにするには「練
習 」 が 必 要 で す 。“ 脳 ” と い う コ ン ピ ュ ー タ に “ 情 報 ” を イ ン プ ッ ト し な け れ ば 、 説 明 す る こ と
はできません。繰り返しが必要です。特に小学生を相手にしていると同じことを何千回も言うハ
メ に な り ま す 。「 や ろ う ! 」 と 思 っ て 続 け て い れ ば 、 す ぐ に 出 来 る よ う に な り ま す 。「 蜜 柑 の 定 義
は 何 か ? 」「 魚 っ て 何 な の か ? 」。 そ う す る と 、 子 供 達 か ら 「 す ご ー い ! こ の 人 は 何 で も 知 っ て い
る!」と誤解されます。そうやって、特に小学生から「信頼」されていないと何も訊いてきてく
れません。
<ホワイトボード板書>
赤 木 か ん 子 今 日 の 1 冊 ← H P http://gooddaygoodbook.sblo.jp/
紙 芝 居 → 埼 玉 福 祉 会 h t t p ://www.saifuku.com/
メ ー ル ア ド レ ス a k a g i k an k o @ g mail.com
質 問 の あ る 方 は こ ち ら へ ど う ぞ !「 今 日 の 1 冊 」っ て い う の は 、毎 日 1 冊 ず つ ア ッ プ し て い ま す 。
『図書館ハンドブック』と「紙芝居」は、埼玉福祉会で売っています。
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タイトル
モノづくり断面図鑑
災害と心のケア
万里の長城
著者
リチャード・ブラッド 偕成社
デビッド・ロモ
アスク・ヒューマン
加古 里子/文
福音館書店
講談社
集英社
講談社
西東社
ポプラ社
日本出版社
集英社
廣済堂出版
ポプラ社
ポプラ社
柴田書店
小学館
埼玉福祉会
PHP研究所
東京書籍
木楽社
世界文化社
成美堂出版
小学館
天才エジソンの秘密 母が教えた7つのルール ヘンリー幸田/著
伝記NEXT松下幸之助
日本のもと技術
出版者
山根一眞監修
ミラクルたのしいハッピー!お仕事図鑑 ドリームワーク編集会
NDCの例
出版年
033
146
222
289
289
302
366
1998
1995
201106
2006
2010
2011
2012
369
2011
2005
ビジュアル・ワイド日本名城百選 村田修三総監修
キャロル・グラスゴー
建築物を読みとく鍵
東京スカイツリー
モリナガヨウ
図解東京スカイツリーのしくみ NHK出版/編
クリス・ウッドフォード 日経ナショジオ
ビジュアル分解大図鑑
369
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369
407
420
489
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500
500
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502
502
504
507
507
507
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508
514
519
519
521
523
526
526
530
誠文堂新光社
531
地震イツモノート
地震イツモプロジェクト
親子のための地震安全マニュアル
人はなぜ逃げおくれるのか
大地震!とっさの行動マニュアル
広瀬広忠
山谷茉樹
じしんのえほん こんなときどうするの? 国崎信江
TUNAMIをこえて
藤谷 健
地震の時の料理ワザ
坂元 廣子
ドラえもんの地震はなぜ起こるどう身を守る 国崎信江
地震紙芝居
赤木かん子
街で見かけるナゾの機械・装置のヒミツ 造事務所編
ノーベル賞受賞者人物事典
ライアル・ワトソン
思考する豚
もののしくみ大図鑑
しくみが見える図鑑
小峰龍男
21世紀こども百科もののはじまり館 近藤二郎
ジョエル・ルボーム/〔ほか〕文
絵解き図鑑こんなふうに作られる! ビル・スレイヴィン 玉川大学出版
どうやって作るの? パンから電気まで
オールドレン・ワトソン/作
シブすぎ技術に男泣き!
シブすぎ技術に男泣き!2
子どもが知りたいいろんなモノのしくみわかる本
科学プロダクション
ニッポンの大発明
1000の発明・発見図鑑
発明ビジュアル博物館
日本の発明会著
ロジャーブリッジマン
グレンマーフィー
宇宙探査機・ロケット(最先端ビジュアル百科 スティーブ・パーカー
自動車・バイク
デジタル機器
船・潜水艦
エネルギー機器
航空機
ジャイアントマシーン
緊急の乗り物
軍事マシーン
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
スティーブ・パーカー
新・トンネルなぜなぜおもしろ読本 小笠原光雅
砂上の船水上の家
会田則行
池上彰のニュースに登場する世界の環境問題 1
アンジェラ・ロイストン/原著
ねじ図鑑種類や上手な使い方がよくわかる 門田和雅監修
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偕成社
中経出版
中経出版
メイツ出版
辰巳出版
丸善
昭文社
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ゆまに書房
ナノオプトメディア
ポプラ社
さ・え・ら書房
小学館
産調出版
ポプラ社
NHK出版
369
2011
2006
2006
2006
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2012
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2008
2007
201202
2011
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2002
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2003
2008
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2010
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2011
2011
2011
2009
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2008
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2012
201201
2009
2007
税込価格
2,520
735
1,785
1,500
945
1,470
950
1,500
1,000
735
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1,260
1,365
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840
2,310
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5,985
2,625
2,415
998
3,990
3,990
2,100
1,000
1,000
1,300
1,470
6,090
1,995
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
2,625
1,470
2,415
3,990
5,040
1,500
1,575
6,800
1,890
イラスト
NO
分類の例
49
50
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94
95
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タイトル
著者
出版者
NDCの例
出版年
花火ハンドブック
文一総合出版
2008
日本縦断!親子で行けるおいしい工場見学
575
588
589
596
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E
E
おもちゃ・ゲームの仕事
学研編
キョーハンブックス
学研
英国・カントリーとっておきのティープレイスへ
スチュワード麻子/著
河出書房新社
満点ゲット産業と仕事大達人
たべものがたり 食と環境7の話
豆田啓二監修 集英社
山本 良一/企画監修
ダイヤモンド社
ちびまる子ちゃんのくだものだいすきえほん いちごのまき
さくらももこ/原作
ちびまる子ちゃんのくだものだいすきえほん バナナのまき
さくらももこ/原作
ちびまる子ちゃんのくだものだいすきえほん みかんのまき
さくらももこ/原作
ちびまる子ちゃんのくだものだいすきえほん りんごのまき
さくらももこ/原作
やさいむらのなかまたち はる
やさいむらのなかまたち なつ
やさいむらのなかまたち あき
やさいむらのなかまたち ふゆ
新犬種大図鑑
新猫種大図鑑
しばいぬ
ニッポンの犬
ニッポンの猫
ヤギ飼いになる
飼い喰い
ビューティフルピッグ
きみの家にも牛がいる
アニクリ24物語
珍獣の医学
国産はじめて物語
写真でわかる日本の物流
ひろかわ さえこ/さく
金の星社
金の星社
金の星社
金の星社
偕成社
偕成社
偕成社
偕成社
ひろかわ さえこ/さく
ひろかわ さえこ/さく
ひろかわ さえこ/さく
ブルース・フォーグル ペットライフ社
ブルース・フォーグル ペットライフ社
岩合光昭
岩合光昭
岩合光昭
誠文堂新光社
内澤旬子
ポップアップモノのはじまりへぇー!?図鑑
おこのみやき
段ボールのひみつ
タイヤのひみつ
工場見学首都圏
報道写真全記録2011.3.11-4.11東日本大震災
じしん日本地図
じしん世界地図
鉄は魔法使い
岩波書店
アンディー・ケース/著 スタジオタッククリエイティブ
小森香折
解放出版社
三宅 亜希/著
チェリッシュライフジャパン
田向 健一/著
扶桑社
レトロ商品研究所編 ナナコーポーレートコミュニケーション
関橋 眞理/著
全国鉄道アミューズメント完全ガイド 講談社編
全国鉄道ものしり地図帳
ヴェルサイユの庭園
ゴーガイ第1巻
ゴーガイ第2巻
ゴーガイ第3巻
銀の匙1∼5
百姓貴族1.2
いちにちのりもの
工場ディスカバリー
COW BOOK
風をつかまえた少年
平凡社
平凡社
平凡社
荒川 弘
荒川 弘
ふくべ あきひろ/さく
汐文社
講談社
学習研究社
大日本絵画
講談社
講談社
講談社
小学館
新書館
PHP研究所
アスペクト
小林哲郎
平林 美紀 日本写真企画
文藝春秋
ウィリアム・カムクアンバ
小峰書店
ひぐちともこ 解放出版社
学研
学研
昭文社出版編集部 昭文社
朝日新聞社
埼玉福祉会
埼玉福祉会
小学館
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2011
2004
200904
2010
200903
201108
201108
201108
201108
201003
201107
201009
201011
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2002
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2002
2009
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2012
201012
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201201
2011
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2005
2009
2009
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2010
2009
2010
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2011
税込価格
2,100
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850
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6,800
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1,365
2−3
分
科
会
報
告
分 科 会 名
第3分科会
日
時
平成24年11月29日(木)13:00∼16:30
会
場
放送大学群馬学習センター
マ
「公立図書館と学校図書館との連携∼より機能する図書館を目指して∼」
テ
ー
第1講義室
子どもたちの「知りたい」「読みたい」という気持ちを育てるために、
また『読書活動』や『調べ学習』を活発化させるために学校図書館は不可
欠です。そして、より機能する学校図書館にするためには公立図書館との
連携も不可欠ですが、連携の現状には地域差があり、必ずしも機能してい
るとはいえません。情報、物流、人的ネットワ−ク化においては財政的に
も、その実現は容易ではありません。
そこで、本分科会では、全国学校図書館協議会理事(明星大学教授)の
二 村 健 氏 に 基 調 講 演 を し て い た だ く と と も に 、 学 校 図 書 館 の 連 携 ・協 力 に い
ち早く取り組まれて来られた千葉県袖ヶ浦市の先進事例と群馬県立桐生女
子高等学校の連携事例に学び、公立図書館と学校図書館が協力し合い、互
い に 有 効 に 利 用 さ れ る た め に 、 共 に 向 上 し て 連 携 ・協 力 を 維 持 し て い く こ と
を目指したいと思います。
開催趣旨
日程・内容
1 日程
(1)基調講演(13:00∼14:30)
「公立図書館と学校図書館との連携」
二村 健((公社)全国学校図書館協議会理事(明星大学教授))
(2)先進事例報告(14:40∼15:20)
「袖ヶ浦市学校図書館支援センターの取組
∼教育課程の展開に寄与する学校図書館づくり∼」
中村 伸子(千葉県袖ヶ浦市立総合教育センター
学校図書館支援センタースタッフ(大学非常勤講師))
(3)連携事例報告(15:30∼16:00)
「高等学校図書館における相互貸借について」
宮崎 好久(群馬県立桐生女子高等学校 司書専門員)
(4)質疑応答(16:00∼16:30)
2 内容
(1)基調講演「公立図書館と学校図書館との連携」
①公立図書館と学校図書館の連携の歩み、歴史認識
②公立図書館と学校図書館の連携を左右する要素
(2)先進事例報告「袖ヶ浦市学校図書館支援センターの取組
∼教育課程の展開に寄与する学校図書館づくり∼」
①「人」「もの」「情報」のネットワークづくり
②学校図書館活用の日常化に向けて
(3)連携事例報告「高等学校図書館における相互貸借について」
①相互貸借利用の現状
②研修の場を活用した「協働」への可能性
参加者状況
合計
係
司会…中沢(県立)、土師(群馬大)
受付…鈴木(県立)、井野(伊勢崎)、田角(高崎経済大)、
江原(桐生西高)
記録…熊谷(県立)、渕田(藤岡)、中村(館林)、
真下(明和学園短期大)、齋藤(新田暁高)
会場…寳木(県立)、舛山(沼田)、権田(尾島)、永井美(長野原高)
小山(桐生広沢中)
接待…内山(県立)、永井千(群馬大)、田村(安中総合高)
分
担
51人(一般参加者 29人、発表者 3人、参加協力者
分科会検討委員 10人、県立職員 5人)
4人、
配 布 資 料
1
2
3
4
評
価
反
省
・基調講演は、公立図書館と学校図書館との連携の基本的な考え方として
「協働」を挙げ、認識の推移や、国や県の図書館に関わるデータを基に
これからの連携・協力のポイントについて話があった。協働に向けての
背景を知り、方向性をもつことができた。
・事例報告は、それぞれの取組の具体的な成果や課題が発表された。公立
・学校共にどのようにアプローチすることが大切か明確にできた。
そ
の
他
「公立図書館と学校図書館との連携」
「袖ヶ浦市学校図書館支援センターの取組」
「高等学校図書館における相互貸借について」
相互貸借チラシ
- 29 -
内容詳細
【基調講演】「公立図書館と学校図書館との連携∼より機能する図書館を目指して∼」
二村 健((公社)全国学校図書館協議会理事・明星大学教授)
ちょうど昨日リクルートが行った「家のすぐ隣にあったら嬉しいと思う施設は何ですか」とい
う ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 が 出 ま し た 。 「 1 位 : ス ー パ ー 47.3% 、 2 位 : コ ン ビ ニ 46.7% 、 3 位 :
図 書 館 29.1% 、 4 位 : 病 院 、 5 位 : 郵 便 局 、 6 位 : 本 屋 」 と い う 結 果 で し た 。 こ の 調 査 を 行 っ た
方は、図書館が3位なのは意外だったというのですが、6位と合わせて考えてみると、それなり
の意味があるように思います。日本は世界に誇れるほどの読書文化があり、それを裏付けている
数字だと思います。
さて、本題に入ります。分科会の趣旨にも書いてありましたように、子どもたちの「知りた
い」「読みたい」という気持ちを育てるため、また「読書活動」や「調べ学習」を活発化させる
ためには、学校図書館は不可欠であります。学校図書館の機能をより高めるために、学校図書館
は努力すべきことがたくさんあります。その一つとして「公立図書館との連携」が挙げられます。
しかし「情報」「物流」「人的」ネットワークをつくるには、地域差やお金(財政)の問題が付
きまとってなかなか容易ではないのが現状です。
「図書館法」「学校図書館法」の中で学校図書館と公立図書館との連携については、学校図書
館側からは「連絡・協力」を、公立図書館側からは「連絡・協力、援助、資料の相互貸借」をと
いうことが書かれています。しかし、実際には法律よりも社会は先に進んでいると考えてよいと
思います。また、今年8月に「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についてパブリックコ
メントの募集がありましたが、告示にまでは至っていないようです。これが正式に告示されれば、
図書館関係者は最も新しい指針として捉えていくべきだろうと思います。
次に立教大学の中村百合子さんの研究を基に「公立図書館と学校図書館との連携」における時
代区分の試みについてお話しします。これは大きく4つの時期に分けてよいと思います。
第 Ⅰ 期 ( 1945∼ 1953年 ) は 、 第 二 次 世 界 大 戦 が 終 結 し た 後 、 学 校 図 書 館 法 が 成 立 す る 前 ま で の
間をいいます。「学校図書館建設期」という位置付けになると思います。分類法や目録法に精通
していない学校図書館が、公立図書館に教えを請うという形の援助が行われました。これは公立
図書館が、これから育とうとする子どもを指導し、将来の公立図書館利用者を育成した形とも言
えるでしょう。この時代は、学校図書館は児童・生徒のためのものであり、公立図書館は成人の
ためのものだとの認識でした。学校図書館と公立図書館の緊密な関係だったと言えます。
第 Ⅱ 期 ( 1953∼ 1973年 ) は 、 学 校 図 書 館 法 成 立 以 降 で す 。 学 校 図 書 館 は 公 立 図 書 館 の 指 導 を 離
れてアイデンティティの確立を求め始めましたが、自立できる程の対等な関係ではありませんで
した。受験戦争が過熱化し、問題集や参考書があればいいという風潮から、学校図書館は教育課
程から置いてけぼりの単に「勉強する場所」という機能となりました。一方この頃、公立図書館
は、ようやく児童サービスの重要性を自覚し、市民のための図書館といわれるようになってきま
した。しかし、公立図書館にとって学校図書館は連携に足る相手とは認めておらず、連携は不可
能と諦めていた時期であったのです。
第 Ⅲ 期 ( 1974∼ 1992年 ) は 、 生 涯 学 習 時 代 と 言 え ま す 。 学 校 で は 図 書 の 時 間 が 設 け ら れ 、 読 書
運動が広がっていき、また公立図書館では児童・生徒への読み聞かせやブックトーク等の読書活
動が通常のサービスのようになった段階です。
第 Ⅳ 期 ( 1993年 ∼ ) は 、 国 の て こ 入 れ が 行 わ れ る 時 期 に な る だ ろ う と 思 わ れ ま す 。 そ の 始 ま り
は「学校図書館図書標準・学校図書整備新5カ年計画」等です。その後の本格的なてこ入れとし
て は 「 学 校 図 書 館 資 源 共 有 ネ ッ ト ワ ー ク 推 進 地 域 事 業 ( 2004年 ) 」 「 学 校 図 書 館 支 援 セ ン タ ー 推
進 事 業 ( 2006年 ) 」 「 学 校 図 書 館 の 活 性 化 推 進 総 合 事 業 ( 2009年 ) 」 等 が 行 わ れ ま し た 。
私は「連携・協力」については、もう一歩進めて「協働」という言い方の方がよいと思ってい
ます。公立図書館が「連携・協力」で学校図書館の面倒を見てやるというのは、明らかに上から
目線です。お互いが有効に利用され、そして共に
向上するという意識をもっていく必要があると思
うのです。
さらに、連携の観点から歴史的な認識のもち方
を提案させていただきます。図書館の機能として
は「情報提供機能」と「教育機能」があります
が、それらは共に重要な機能です。ただし時代や
慣習等によってその重きが揺れ動くものです。
「 2005年 の 図 書 館 像 ( 2000年 ) 」 は 、 そ れ ま で は
貸出一辺倒だったが、教育機能も重要ではないか
と述べています。どちらかの機能に偏らないで書
かれているという点においては、ある意味歴史的
な意味をもつのではないかと思います。
それでは、連携の状況を具体的に見ていきま
す 。 文 科 省 の 「 平 成 22年 度 学 校 図 書 館 の 現 状 に 関
- 30 -
する調査」では、約4分の3の小学校が「公立図
書館と連携している」と回答しています。しか
し、中学校、高校は5割に届いていません。これ
は今後の課題でしょう。それから、連携している
と回答した学校のうち、「公立図書館の資料の利
用」を行っているのは、小学校では9割、中学校
や高校でも似た傾向です。ということは、資料提
供についてはかなり進んでいると考えてよいと思
います。それに対して、「公立図書館との定期的
な連絡会の実施」「公立図書館司書等による学校
への訪問」については、各学校とも行っていない
方が多いです。物的な支援はできているかもしれ
ないが、人的な交流については課題だということ
が数字の上で見えてきます。
群 馬 県 の 状 況 を い く つ か の 事 例 の 数 値 で 見 て い く と 、 ま ず 「 司 書 の 発 令 率 」 が 群 馬 県 は 100% で
す 。 11学 級 以 下 の 学 校 の 状 況 を 比 べ て も 、 や は り 群 馬 県 は 全 国 の 発 令 率 を 超 え て い ま す 。 ま た 、
「 学 校 図 書 館 担 当 職 員 ( 学 校 司 書 ) の 配 置 」 も 全 国 平 均 44.8% の と こ ろ 群 馬 県 全 体 で 83.9% に も
なっています。さらに「公立小・中学校における学校図書館図書標準達成率」も非常によいです。
こ こ で 私 の 所 属 す る 「 全 国 学 校 図 書 館 協 議 会 」 に つ い て 少 し 触 れ て お き ま す 。 ( ビ デ オ 上 映 10
分 内容 1:全国学校図書館協議会の概要、2:学校図書館が力を発揮するには、3:組織に
おける図書館の位置付け、4:学校図書館ネットワーク構築の推進、他)ビデオの中にも登場し
ましたが、学校図書館ネットワークの組織図では、教育センターの中に学校図書館支援センター
が 置 か れ て い ま す が 、 実 は こ の 事 例 は 少 な く て 1 割 ( 10.7% ) 位 と 言 わ れ て い ま す 。 そ れ よ り も
公 立 図 書 館 の 中 に 置 か れ て い る 割 合 ( 32% ) や 教 育 委 員 会 の 中 に 置 か れ て い る 割 合 ( 42% ) の 方
が高くなっています。
さて、本日のテーマの「公立図書館と学校図書館との連携」ですが、これを左右する要素とし
て「出版状況」「図書館状況」「読書活動」があります。
世界的に見ると、「出版状況」については、「人口1万人あたりの出版業市場規模」が日本は
ドイツと並び非常に多いです。ただし、日本の出版市場は既に2兆円を割りました。国民的娯楽
と 言 わ れ る パ チ ン コ 業 界 は 16兆 円 と か 32兆 円 と 言 わ れ ま す の で 、 比 べ る と 出 版 の 規 模 の 小 さ さ が
よく分かると思います。「人口1万人あたりの書籍の出版・発行点数」は、日本は新刊書が多い
のですがフィンランドは新刊書よりも古いものをずっと長く出版し続ける傾向にあります。
「図書館状況」についてもフィンランドは圧倒的です。「人口1万人あたりの公立図書館数」
は特に顕著です。「人口1万人あたりの公立図書館の蔵書数及び職員数」は日本も結構多いです
が、やはりフィンランドが群を抜いています。
「読書活動」については、「読書実施率」は中国が高いですが、上海(特定の都市)なので除
外して考えた方がよいと思います。日本も頑張っていますが、やはりフィンランドやカナダが高
い で す 。 「 公 立 図 書 館 の 登 録 」 は 日 本 が 43% と な っ て い ま す が 、 私 の 知 る 限 り で は ま だ 4 割 に 達
し て い な い と 思 い ま す 。 驚 く べ き 数 字 は フ ィ ン ラ ン ド の 99% で す 。 「 一 人 あ た り の 貸 出 冊 数 」 も
フィンランドは群を抜いています。
読書が豊かだと学力向上にも繋がり、ひいては子どもたちを幸せにできるのであれば読書活動
を広げていくことは、そのための大きな方法だと思います。フィンランドは学力世界一と言われ
る国です。学力と図書館利用との相関関係は十分考えられると思います。そして出版文化が進む
ことよりも、図書館利用が高いことの方が読書活動が進む要因であることは、PISA調査や世
界の同様な読書調査の結果からも明白なのです。
今年、国際学校図書館協会の大会がカタールで行われました。その基調講演で「図書館は、何
でもNOと言う。静かにしなさい、走ってはダメ、飲み物もダメ、あまりにも『ダメ×3』や
『 し な さ い × 3 』 と 言 い 過 ぎ る 。 だ か ら 人 々 は 『 fear the libralian( 図 書 館 員 恐 怖 症 ) 』 と 書
か れ た T シ ャ ツ ま で 作 っ て い る 」 と い う 話 が あ り ま し た 。 user driven innovationつ ま り こ れ か
らの図書館は利用者を主体とした革新を行いなさいという主旨です。
学校図書館はセクト主義が強く狭い領域です。いろいろなプレーヤーがいて、そのそれぞれが
様々な団体をつくり一国一城の主となっています。こういう状態はやはり阻害要因となるでしょ
う。学校は学校で境界を作ってしまい、公立図書館はなかなか入れない現状があります。
国 際 学 校 図 書 館 協 議 会 の 大 会 を 2016年 に 日 本 で 行 う こ と が 正 式 に 決 定 し て い ま す ( I A S L 日
本大会)。4年後です。群馬県として公立図書館と学校図書館の「協働」を更に深めて、優れた
実践事例をぜひ発表してください。これをお願いいたしまして私の講演とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
- 31 -
【先進事例報告】「袖ヶ浦市学校図書館支援センターの取組
∼教育課程の展開に寄与する学校図書館づくり∼」
中村 伸子(袖ヶ浦市立総合教育センター学校図書館支援センタースタッフ)
公立図書館と学校図書館が連携するには、壁があるように見られがちですが、公立図書館がい
つも近くにいて、いろいろな面でサポートしてくれる体制がとられています。今日は学校図書館
のことを知っていただいて、どの部分だったら自館でも関われるかや、学校図書館というのは今
このような場所なのだ、ということを知ってもらうために、たくさんの写真を持ってきました。
まず、話を進める前に、学校図書館にはどのような役割があるのかをお話したいと思います。
学校図書館には、「読書センター」と「学習・情報センター」という2つの機能があります。読
書センターとしては、豊かな感性や情操、思いやりの心を育むこと、学習情報センターとしては、
意欲的な学習態度や自ら学ぶ力、情報活用能力を育むことという、大きな役割があります。です
ので、学校図書館を活性化するときには、この2つのことを意識してもらうのが一番の基本にな
ると思います。また、私たちが実際に感じているところでは、学校図書館には心が癒される憩い
の場=心のオアシスのような役割もあり、影の大きな機能であると思っています。
こうしたことを踏まえながら、袖ヶ浦市では学校図書館の経営計画を策定していますが、基本
と な る の は 平 成 23年 度 に 策 定 さ れ た 「 第 二 次 袖 ヶ 浦 市 子 ど も 読 書 活 動 推 進 計 画 」 で す 。 平 成 3 年
から袖ヶ浦市の重点施策として、読書活動・読書教育の推進を進めていますが、そこで大切にし
ていることは「人」「もの」「情報」という部分をしっかりやっていこうということです。
「 人 」 の 部 分 で は 、 平 成 7 年 度 か ら 読 書 指 導 員 ( = 司 書 ) の 段 階 的 配 置 、 平 成 16年 度 か ら 司 書
教 諭 の 全 校 配 置 ( 12学 級 未 満 も 配 置 ) 、 平 成 17年 度 に は 学 校 図 書 館 支 援 セ ン タ ー ス タ ッ フ の 配 置
が行われています。
「もの」の部分では、平成9年度から図書物流システムが稼働しており、公共図書館の蔵書を
含め有効利用を行っています。しかし、公共図書館の予算削減により、学校用の図書購入枠はな
くなりましが、一方で、各学校の資料購入予算がある程度配分されています。そのため最近では、
公共図書館との相互貸借より、学校間の相互貸借の方が増えつつあります。ただし、公共図書館
の配慮により、学校図書館で購入できないような高価な資料や選書もれした資料等を、学校図書
館支援センターが各学校から要望を聞き、購入してもらっています。学校図書館内の環境整備と
し て は 、 平 成 10年 度 に 文 部 省 に よ る 「 学 校 図 書 館 情 報 化 ・ 活 性 化 推 進 モ デ ル 事 業 」 の 指 定 を 受 け 、
インターネット接続や管理用のPC、コピー機等がリース契約により整備されました。
「情報」の部分では、袖ヶ浦市内を結ぶイントラネットが整備されています。教材の貸出シス
テムも整備されていますので、予約すると物流システムを使って届けてもらうことができます。
そ し て 平 成 17年 度 か ら 市 立 総 合 教 育 セ ン タ ー 内 に 学 校 図 書 館 支 援 セ ン タ ー が 設 置 さ れ 、 「 人 」
「もの」「情報」3つのネットワークをコーディネートする役割を担うことで、3つがバラバラ
に機能していた問題が解消されました。
袖ヶ浦市の読書教育について、先生方を対象に実施された「袖ヶ浦市読書実態調査」の結果を
紹介したいと思います。「あなたの学校の図書館は、児童生徒の読書活動に利用されていると思
いますか」と「あなたの学校の図書館が児童生徒の学習活動に活用されていると思いますか」と
い う 質 問 に 対 し て 、 平 成 6 年 度 と 平 成 19年 度 の 結 果 を 比 較 す る と 、 「 よ く 活 用 さ れ て い る 」 、
「まあまあ活用されている」と回答した人数が大幅に増加しており、種々の施策の成果が現れて
いるように思います。最初に話した憩いの場としての図書館づくりとして、展示コーナーを工夫
する等、足を運びたくなる、入ってみて「いいなあ」と思える、そんな学校図書館づくりを全校
で実施しています。
学校図書館支援センターでも、学校へ向けての情報発信として、学校図書館支援センターだよ
りを毎月発行しているほか、HPで学校図書館を活用した授業を紹介したり、調べ学習の方法等
も公開したりして、学校図書館を活用した授業の日常化を支援しています。また、市内の幼稚園
の選書にも協力したり、子どもたちが0歳から読書に親しめるよう、小中高の司書、公共図書館
の 司 書 、 ボ ラ ン テ ィ ア が 話 し 合 い 、 「 お 勧 め の 100冊 」 等 の 編 集 を 行 っ た り し ま し た 。 幼 児 と の 触
れ合い体験学習では、高校生が保育園や幼稚園で読み聞かせや紙芝居、ペープサートを実演した
り、公共図書館で指導を受けた、質の高いボランティア
グループによるストーリーテリングや読み聞かせを行う
講座等も開かれています。
このように、学校図書館支援センターが設置されたこ
とにより、幼稚園、小中高、公共図書館の全体をくるむ
ように、どこにも属さず、どこにでも関わりながらコー
ディネートすることが可能となり、「読書センター」
「学習・情報センター」としての機能を充実させていく
ことができるようになりました。「子どもたちに本を手
渡す」という大原則を念頭に、これからも子どもたちの
未来のために、力を合わせてやっていければよいと考え
ています。
- 32 -
【連携事例報告】「高等学校図書館における相互貸借について」
宮崎 好久(群馬県立桐生女子高等学校 司書専門員)
約 30年 、 相 互 貸 借 に 取 り 組 ん で き ま し た の で 、 公 立 図 書 館 と 学 校 図 書 館 と の 相 互 貸 借 に つ い て
中心にお話しをさせてもらえればと思います。
初めに、高等学校の実態についてお話しさせていただきます。公立図書館と高等学校図書館と
の所謂「連携」と呼べるもの、つまり高等学校図書館が一方的にお世話になっているのではなく、
公立図書館に対しても何か提供することができているものがあるかというと、残念ながら現時点
ではこれといってありません。相互貸借と言いましても、本来は「相互」ですから、互いに貸し
借りということでしょうが、現在の高等学校図書館は、ただただ一方的に借りさせていただいて
いるのが実態です。
高 等 学 校 が 相 互 貸 借 、 所 謂 G ネ ッ ト の 利 用 を 始 め た の は 、 平 成 18年 に 高 教 研 の 図 書 館 部 会 が 県
図協に加盟してからです。高等学校図書館は小・中学校図書館に比べればはるかに蔵書等が充実
しています。では、高等学校図書館の蔵書や予算が十分かというと、かなり悲惨な状態と言わざ
るを得ません。従いまして、その中で生徒・教職員に対して「徹底的な資料の提供」と「授業連
携」、この2つのことをきちんと責任をもって果たそうとするならば、対応できるだけの蔵書が
ありませんので、公立図書館からの相互貸借は必要不可欠です。
さて、高等学校のGネット利用の現状についてです。高等学校は個々に利用はしていますが、
互いの状況は分かりませんでしたので、今回初めて調べてみました。桐生女子高等学校では、毎
年 300後 半 か ら 500冊 の 貸 出 を 受 け て い ま す 。 他 の 学 校 に つ い て も 同 じ よ う な 利 用 が あ る の か と 思
っ て い ま し た が 、 G ネ ッ ト 利 用 校 45校 の 内 28校 に 情 報 を 寄 せ て も ら い 調 べ た と こ ろ 、 28校 中 8 校
は 昨 年 度 ほ と ん ど 利 用 し て い ま せ ん で し た 。 そ の 他 の 20校 も 、 上 位 4 校 は 3 ケ タ の 利 用 が あ る も
のの、あとは一気に少なくなるということで、実は私の想像よりもはるかに利用していなかった
ということが分かりました。
問 題 点 で す が 、 1 つ 目 は 、 学 校 司 書 の 意 識 の 問 題 で す 。 生 徒 ・ 教 職 員 か ら の ニ ー ズ に 100%応 え
ようとする姿勢でいるからこそ、他の図書館から本を借りてまで渡すことができるのです。では
学校図書館部会加盟校の学校司書の全員がそのような気持ちでいるか、つまり「利用者が『この
本ありますか』と来た時に『ありません』と言って帰さないぞ」という決意をもっているかとい
うと、そういう状況ではありません。
2番目は、残念ながら群馬県の高等学校図書館は、そのほとんど、おそらく8割以上の学校に
おいて授業で活用されていないということです。司書の方が「授業のレポート対応をするぞ」と
構えていても、先生方にカリキュラムの中で図書館を使った授業を展開してもらえないと、そも
そもアクションが起こせないということがあります。
3番目は、補償のあり方です。相互貸借で借りた本をなくした場合、財源がないので学校図書
館では弁償できません。私の推測も入っていますが、学校司書は、自分で弁償しなければならな
いという覚悟がなければ怖くて利用できないということがあると思います。また、生徒が貸出期
間内にきちんと本を返してくれるのかが心配で、二の足を踏んでいる方もかなりいます。
そして4番目は、高等学校図書館が相互貸借の原則を果たしていないということです。相互貸
借規約には「参加館が平等・互恵の精神に則り、利用すること」「参加館は、自館の蔵書目録及
び電子式目録の作成・配付に努めるものとする」と謳われていますが、高等学校図書館の蔵書は
G ネ ッ ト に 載 っ て い ま せ ん 。 そ の 原 因 に は 、 G ネ ッ ト 利 用 校 45校 が 9 つ の 異 な る 図 書 管 理 ソ フ ト
を使っていること、電算化自体が遅れていること等があります。こちらが公立図書館に本を貸し
たいと思っても、その方法が確立していないので一方的な貸し借りになってしまっているのです。
私は第1回群馬県図書館大会で「今日が連携の第一歩なら第二歩目にやってもらいたいこと」
として3つの提言をさせていただきました。その中で「学校図書館への相互貸借規定の文書化」
「 県 教 委 へ 話 を 通 す こ と 」 に つ い て は 、 平 成 18年 に 県 図 協 に 高 等 学 校 図 書 館 部 会 が 入 っ た こ と に
よって達成されています。残ったのは「共同研修の実施」です。県図協に入ったので、いろいろ
な通知をもらっていますし、参加もしていますので、そういう部分では共同研修自体は達成して
います。しかし、問題は先ほど二村先生の話にもありました「協働」をどうしていくかが完全に
立ち遅れていることで、それは現場からも言えるので
す。高等学校図書館部会では地区研修会を設けていま
すが、もしそういうところに公立図書館の職員が参加
していただけるならば、二村先生の話にもありました
「定期的な連絡会」になり得るのではないか、さらに
地域によっては大学図書館の職員も入ってもらえれ
ば、そこで「協働」の目的なり計画なりを少しずつ詰
めていけるのではないかと思うのです。これは言うは
易くで、実際に始めようと思うと難しいことが多々出
てくるのですが、でも、どうしたらこれから公立図書
館と高等学校図書館が協力していけるのかを考える
と、まずはそれが第一歩かなと思われます。
- 33 -
参 加 者 の 声(アンケート結果)
今大会で、良かったと思うところ、改良した方が良いと思うところなどについて、
ご意見をいただきました。紙面の都合で纏めてあります。
(1)記 念 講 演 に つ い て
・ ユ ー モ ア た っ ふ り で 、 楽 し い 講 演 会 だ っ た 。 わ か り や す か っ た 。( 1 2 名 )
・ 日 本 語 の す ば ら し さ を 再 認 識 で き た 。 と て も 参 考 に な る 講 演 会 だ っ た 。( 9 名 )
・ 深 い 内 容 の す ば ら し い 講 演 会 だ っ た 。( 7 名 )
(2)第 1 分 科 会 に つ い て
・ 大 変 勉 強 に な り 、 有 意 義 で あ っ た 。( 8 名 )
・ T R C の お 話 し は 、 大 変 刺 激 的 で あ っ た 。( 2 名 )
・ 趣 旨 説 明 が 長 か っ た り 、 講 義 の 時 間 配 分 が あ ま り 良 く な か っ た 。( 2 名 )
(3)第 2 分 科 会 に つ い て
・ 分 類 方 法 、 選 書 等 大 変 参 考 に な っ た 。( 1 3 名 )
・ わ か り や す い お 話 し だ っ た 。( 3 名 )
・ ブ ッ ク ト ー ク 、 た く さ ん の 本 を 紹 介 し て 頂 け て 良 か っ た 。( 2 名 )
(4)第 3 分 科 会 に つ い て
・ 活 動 し て い る 事 例 が 聞 け て 大 変 参 考 と な っ た 。( 7 名 )。
・ 中 村 先 生 の 講 義 が と て も 参 考 に な っ た 。( 2 名 )
・ 質 問 の 時 間 、 レ ジ ュ メ が 欲 し か っ た 。( 2 名 )
(5)全 般 ( 大 会 全 体 、 記 念 講 演 や 分 科 会 に つ い て )
・ よ い 企 画 、 計 画 の 大 会 だ っ た 。( 2 名 )
・ 時 間 が 長 す ぎ る 、 休 憩 時 間 が 欲 し い 。( 2 名 )
・ カ メ ラ マ ン の 写 真 の 撮 り 方 が 良 く な か っ た 。 教 育 が 必 要 。( 2 名 )
・足元が寒かった(1名)
(6)今 後 取 り 上 げ て も ら い た い 企 画 ( 記 念 講 演 講 師 、 分 科 会 の 講 師 ・ テ ー マ な ど ) に つ い て
<講師>
・京極夏彦
・池澤夏樹−「世界文学について」
・柳田邦男
・群馬出身の作家
・宮崎健太郎(埼玉県学校司書) ・作家、スポーツ関係の男性講師
・児童文学・絵本作家−「子どもへの読み聞かせや読書について」
・赤木かん子−「色々な類の本を読む気にさせる方法について」
<テーマ>
・郷土資料の収集、活用について
・廃棄の具体的方法について(2名)
・図書館職員の引継ぎ書マニュアルについて
- 34 -
第10回
発
行
群馬県図書館大会
日: 平成25年2月
編集・発行: 群馬県図書館協会 ©
報告書