エンジンルーム内に 設置可能な 超小型測定モジュール

DEVELOPMENT
SOLUTIONS
ETAS
Burkhard Triess
エンジンルーム内に
設置可能な
超小型測定モジュール
ES400シリーズ:XCP-on-Ethernetサポートによる高速転送を実現
ETASは、新しいES400シリーズ小型測定モジュールにより、テスト用車両の機器装備を簡素化して労力を軽減し
時間と費用を節約できるソリューションを提供します。
各
モジュールは監視対象センサのすぐ近
デターミニスティック型のデータ転送
この転送では二重通信のイーサネットネッ
くに設置されます。当シリーズは従来
ES400シリーズは、イーサネットデイジー
トワークを使用するので、測定データと制
の測定モジュールに比べ大幅に小型化し、
チェーン上で(タスク切替、割込み処理な
御変数の両方について最大限のイーサネッ
手のひらに載るサイズ(高/幅/奥行:37×
どが常に前もって決められた時間内に行わ
ト帯域を使用できます。モジュールからマ
40× 124mm)にした上、前面パネルに
MIL-SPEC準拠の丈夫なコネクタを備え、
IP67規格に適合した防塵防水構造、動作温
度範囲−40℃∼+120℃という特長を備え
れる)デターミニスティック型のデータ転送
スタ(PC)への測定データ転送はタイムド
を行う新しい手法を取り入れ、効率的なモ
リブン型でリクエストを繰り返す必要がな
ジュール間通信を実現してレイテンシを低
いため、プロトコルオーバーヘッドが大幅に
く抑えます。100MBit/sの高速イーサネッ
減少し、それがペイロードデータレートにも
ており、エンジンルーム内の非常に狭い空
トにより広帯域データ通信が可能です。デ
有利に働いています。
間にも配置することができます。複数の測
イジーチェーン接続された複数のモジュー
定モジュールはデイジーチェーン接続され、
ルは、システム全体の中では1つのMACア
ある測定チェーンで数個の高速信号と多く
ケーブル1本ですべてのシステムをPCまた
ドレスを持つ単体のモジュールと同様の挙
の低速信号を収集する場合、後者の転送を
はイーサネットネットワークに接続でき、配
動で動作します。デイジーチェーン接続さ
時分割にすることができます。これに基づ
線作業の手間を大幅に簡素化します。この
れた最終のモジュールは、極めて高精度の
き、レイテンシ低減、サイクルタイム最小
ES400シリーズの最 初 の製 品 として、
ES411センサ電源付A/Dモジュール(4チャ
ンネル)、ES420温度測定モジュール(8
チャンネル)が2006年10月にリリースさ
タイムスライスを連番付きのブランクのイー
化、帯域利用最適化などによりデータ転送
サネットフレームという形で周期的に生成
の最適化が可能になります。
れました。
フィックの遅延やジッタに影響されること
します。そのため、クロックサイクルがイー
サネットチェーン外のネットワークトラ
はありません。タイムスライスの使用により
モジュール間のイーサネットデータラインで
のコリジョンが回避され、リアルタイム挙動
が保証されます。タイムスライスの周波数
は選択可能になっていて、チェーン内で最
高の収集レートが設定されている測定チャ
ンネルに合わせて調整されます。イーサネッ
トフレームはチェーン内のモジュールからモ
ジュールへと伝達され、デイジーチェーン接
続されているどのモジュールにもタイムスラ
イスを自由に選択して割り当てることがで
きます。モジュールではこれらのタイムスラ
イスを使用して測定データをイーサネット
パケットに付加できます。図1は、デイジー
チェーン接続されている3つのモジュールの
収集レートがそれぞれ異なる場合の例を示
しています。この場合に実際に行われる転
送のしくみは図2に示す通りです。
06
RT J2. 2006
DEVELOPMENT
SOLUTIONS
図1:
イーサネット
モジュールチェーンの
概略図
Ethernet 100 Mbit/s
PC
Module 1
Module 2
Module 3
Control
variables
Control
variables
Control
variables
Signal
extraction
Signal
extraction
Signal
extraction
Signal
injection
Signal
injection
Signal
injection
Measured
values M1
Rate: 10 kHz
Measured
values M2
Rate: 2 kHz
Measured
values M3
Rate: 5 kHz
Frame
Generator
(10 kHz)
図2:
シリアルモジュール
チェーンにおける
測定データ収集のための
タイムスライス方式
No. 65536
Ethernet Frame No.1
M3
M2
No. 2
M1
0
No. 3
M1
100 µs
M3
No. 4
M1
200 µs
No. 5
M1
300 µs
M3
M2
M1
400 µs
Time µs
Time slice
period
UDP/IP Header (from Frame Generator)
Measured values of module 1
Reserved for additional communication
Measured values of module 2
Measured values of module 3
データ転送のために各ES400モジュールの
IEEE1588(Precision Time Protocol)に
サネット帯域幅100Mbit/sの場合、タイム
ローカルタイムベースを同期させる必要は
よる時間同期とは異なり、この方式には帯
スライスのサイズは1250バイトになります。
ありませんが、タイムスタンプはシステムに
域幅は必要ありません。その代わり、モ
より同期化されます。データ転送終了後に
ジュールは各イーサネットデータパケットに
測定データと様々なモジュールのスキャニ
測定データのタイムスタンプを挿入します。
ングインスタンスを1つのタイムライン上で
100バイト以下の小さな設定パケットを測
定データに挿入する場合、ヘッダサイズを
70バイトと想定すると、残る約1000バイ
相関させることができます。このために、
このようにタイムスタンプ同期とタイムスラ
ES400モジュールではハードウェア回路を
用いて1μs以内の精度で時間同期を行って
イス割当てを組み合わせて用いることによ
トを測定データに使用できます。この現実
的な例では、イーサネット帯域の最大 80
り、ES400シリーズのモジュールでは非常
パーセント、つまり80MBit/sを測定とプロ
います。
に高いペイロードデータレートを実現でき
トコル管理の両方のデータ転送に使用でき
ます。タイムスライス周波数10kHz、イー
ます。
07
J 2 0 0 6 .2 RT
DEVELOPMENT
SOLUTIONS
図3:
オープン性
したがってデータ収集を行う際は、市販の
IAV Drive
Recorder NG®、
ES411センサ電源付
A/Dモジュール、
ES400シリーズの統合によりETASの高性能
ES400シリーズは、自動車業界で広く受け
入れられているXCP-on-Ethernetプロトコ
ル(ASAM規格)をアプリケーション層の
PCやドライブレコーダを直接ES400の測定
なセンサ信号測定モジュールが加わり、IAV
チェーンに接続できます。データ転送は周
の車両用バスをベースとした耐久性の測定
期的に行われるので、市販のPCを使用する
技術はさらに強化されることになります。
および
データ転送方式に使用しており、他社製の
ことで大量のデータを効率的に収集できま
ES400の測定データを実車やテストベンチ
ES420温度測定
アプリケーションに容易に統合できます。
す。一方、ラピッドプロトタイピングシステ
で行う測定に利用できる便利な環境が、配
モジュール
イーサネットのトランスポート層とネット
ムや自動適合システムといったリアルタイ
線の手間もほとんどなく実現します。
ワーク層にはUDP/IPプロトコルを使用しま
ム環境で動作可能なマスタを使用する際は、
す。XCP(Universal Measurement and
サイクルタイムが極端に短い場合でも様々
ES400測定チェーンのイーサネットケーブ
ルをIAVドライブレコーダに接続するだけで
Calibration)プロトコルにより、測定デー
なI/O信号タイプにアクセスできます。
よいのです。
タやシミュレーションデータのイーサネット
モジュール間転送を、予測可能で非常に正
ES400シリーズとIAVドライブレコーダの
確な時間枠内で行うことができます。厳し
統合
いリアルタイム要件に対応する必要のない
IAV GmbHでは、ES400シリーズのオープ
ンなXCP-on-Ethernetインターフェースに
基づき、2006年10月から同社のIAVドライ
ブレコーダをES411 センサ電源付 A/D モ
ジュール、ES420温度測定モジュールに統
合して販売します。この設定はASAM規格
A2LファイルをIAV Drive Recorderにダウ
PCアプリケーションでは、モジュールの同
期化にタイムスタンプを利用します。
ンロードすることにより行われます。この
ファイルにはチェーン接続されるES400シ
リーズから収集されるすべての測定変数が
記述されていて、ユーザーは測定するバス
信号を簡単なドラッグ&ドロップ操作で選
択できます。A2Lディスクリプションファイ
ルはETASのスタンドアロン設定ツールで容
易に生成できます。
08
RT J2. 2006