なにわ橋通信第3号 - なにわ橋法律事務所

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非弁護士活動 につい て
2.成 立要件
いわゆる非弁行為
弁護士
1
津 田 尚度
非弁活動 とは ?
みなさんは、「)F弁 行為」 という言葉 を知 ってい
ます か。 非 弁 護 士 活 動 の ことで 、弁 護 士 法 第 72
条 に規定 があ ります。簡単 に言 うと、弁護士 でな
い ものが、弁護 士 の ような活 動 をす る と、 罰 せ ら
非弁活動 が成立 す るため には、つ ぎの 4要 件 が
必要 です。
弁護士又 は弁護士法人でない者 が行 うこと
取締 の対象 となる行為
I 法律事件に関する法律事務 を取 り扱 う行
為 (本 文前段 )
Ⅱ 法律事件 に関す る法律事務 の取 り扱 いを
周旋する行為 (本 文後段 )
①
②
れるというもので、非弁活動 は犯罪 です。
委任関係等
当事者 寺 ――――――――■ 代理人等
弁護士法第 72条 (非 弁護士 の 法律事務 の 取扱
い等 の禁止 )
弁護 士 又 は弁護 士法人 でない者 は、報酬 を
得 る目的 で訴訟事件 、非訟事件及 び審査請求 、
異議 申立 て、再審査請求等行政庁 に対 す る不
服 申立事件 その他一 般 の法律事件 に関 して鑑
定 、代理 、仲裁若 しくは和解 その他 の法 律事
務 を取 り扱 い 、又 は これ らの周旋 をす る こと
を業 とする ことがで きな い。
第 3者
ここでい う法律事務 とは、「法律上 の効果 を発
生、変更する事項の処理」をい うとされています
当事者間で賃金 の交渉
を行 い、いつ、い くらずつ支払 うのかの話がまと
まったところ、甲はその 内容 を書面化 したという
ケースで、甲は交渉 に関与 していませんが、法律
事務 に該当す ると解 されています。
また、債権者の委任により、請求・弁済受領 ・
債務免除等を行 つた場合 にも、法律事務 に該当 し
ます (最 決昭和 37.10.4)。
(東 京高判昭和 39,9.29)。
これ に違 反 した場 合 の 罰則 は、 同 77条 で、 2
年以下 の懲 役又 は 300万 円以下 の 罰金 と規定 さ
れています。
この 規定 の 制 度 趣 旨 は、「 国民 の公正 円滑 な法
律生活 を維持 し、法 律秩 序 を維持 確 立 」 する こと
にある と言 われてお り、 この 規定 に基 づ き、弁護
士 会 には、非弁委 員会 が設置 され、非弁 活動 の 調
査 、摘発 を行 つています。
た とえば、 こんな例 があ りま した。 内縁 の 夫 が
③
不倫 している と妻 の ほ うか ら相談 を受 けた甲は、
内縁 の 夫 に対 して慰 謝料 を支 払 って和解 した らど
うか と提案 した とい う事 案 があ りま した。 大 阪弁
護 士会 は、 甲を非弁活動 で大 阪地 検特捜部 に刑事
告発 しま した (そ の 後 その事件 が どうな ったかは
定かで はあ りません )。
報酬 を得 る目的があること
目的犯 (主 観的違法要素
)
業 としてなされること
業 としてなされた と言 えるためには、「反
覆的 に又は反覆継続 の意思をもって法律事務の取
扱等 を し、それが業務性 を帯 びるに至 った場合」
④
でなけれ ばな りません (最 判 昭和 50.4.4)
反 覆 継 続 の意 思 が認 め られ れ ば足 り、具 体 的
にな され た行 為 の 多少 を問 わ な い とされています
(仙 台高半J昭 和 29,2. 1 6)。
友 人 に頼 まれ て債権取 り立 て行 為 を 1回 行 い、
友 人 か ら謝 礼 をもらつた とい うケ ー スで は、 業 と
して行 つた もので はない とされて い ます (東 京高
半J S49.11.21)。
3.具 体例
では、以下 のケー スで、非弁活動 が成立 す るで
③
しょうか。
①
示談 交渉 を してあ げた御礼 に、 3000円
の 図書 カー ド 1枚 をもらつた。
報 酬 は 金 銭 に 限 らな い と さ れ て い ま す
の で、 図 書 カ ー ドで も成 立 します。 で は、
3000円 の価値 で報酬 と言 えるで しようか。
断定 で きませ んが、対価 が、 1円 50銭 で も
報酬 に該 当す る とす る昭和 15年 の 判例 があ
ります (大 判 昭和 15,4.22)。 これを、現
報酬 を得 る目的で、依頼者 の代 わ りに示談
交渉 を行 い示談 が成立 したが、依頼者 は報酬
を支払 つて くれなか った。
報酬 を得 る目的があれば足 り、実際 に報酬
を得たかどうかは関係 ないとされ、非弁行為
が成立 しています。
④
段階 での金銭価値 に換算す ると
1円 50銭 × 819(物 価比率 )=1228円
示談交渉 を依頼 されたが、示談交渉 自体 は
無料 とし、事前 の調査 と示談書の作成 (作 成
名義 は本人 )だ けを有料 とす る契約 を結んだ。
前述 の法律事務 の概念 からすれば、非弁行
為 に該当 します。
にな ります ので、本件 は、非弁活動 が成立
す る可能性 があ ります。
②
ア パ ー トの借 家 人 6軒 が 家 賃 を滞 納 して
困 つている との 相談 を家主 か ら受 けたので、
家賃 を支払 え との 内容証 明郵便 を 6通 書 き、
家 主 の 名前 で 出 した。
この ケ ースで は、 代理 になるか どうかが問
題 とな りま したが、代理 に該 当す る とされ ま
した。非弁行為 にな ります。
⑤
当事者 の依頼 を受けてその者 の作成名義 に
よる仮処分申請書等 を作成 し、その者の使者
として裁判所に赴 いて裁判所 に提出 した。
本件 について、最高裁 は、「代理」 に該当
する (最 決昭和 39.12。 2)と して、非弁
活動 を肯定 しました。本条の代理 は、民法総
則 の代理の規定 よりも広 く解 されて いるよう
です。
⑥ 同 じく、当事者 に代わ つて、当事者 の名
で支払 い命令 を申請 した。
代理 に該当す る (大 判昭和 14.3.6)と さ
れて いますが、反対説が強 く主張されていま
す。
⑦ 真正な登記名義 を回復す る登記手続 きを
した。
法律事務 に該当す るとされています。
4.最 後に
場合 によつては、ひとのため に善意 で したこと
が、非弁行為 だとして、犯罪に問われる可能性が
あります。みなさんも注意 してください。
以上
卒寿を迎 えた老 骨か ら後輩の法
律家たち に苦言 を呈す る。
弁護士
穴 や鳥
戸根 住 夫
1
数十年前 ,現 役裁判官 だ った私 は,あ る司法修
習生 が 「実務 は理 論 どお りでな くてよ いそ うだ。
」
と口 をす べ ら したの で ,「 だれ か らそ う教 え られ
たかは知 らんが ,い や しくも若 い者 が 口にす べ き
言葉 で は な い。
」 と訓 戒 した こ とが あ る。 先 方 は
「ち ょっと納得 しかねる」 といった顔付 を していた
が,こ ち らは正論 を言 つたつ も りである。法曹 の
卵が若 い うちか ら先 輩 の いい加減 な性 格 に染 まっ
る外 国 の 文献 も熟読 しオー ソ ドックスな方法 で 法
律理論 の 探求 に当 たる 向 きが少 な くな っている と
ては 困る。理論 と実務 の 架橋 は法律家養成 の重 要
い う印象 を受 けて いる。 あ ま りた くさんの本 を読
な課題 だが ,最 近 の 法科大学 院 にお ける教育 と司
んで いないので一 般論 と しての 断言 は避 けるが
法修 習生 の 研修 は,こ の 点で あ ま りうま く機能 し
ていないようだ。われわれの 世代 とは違 い近 頃 の
若者 はお しなべ て利巧 に育 って い る ところ,近 年
内国 の 偉 い人 ,偉 くな い 人の所説 をや た らと引用
しなが ら内外 の権威 があ る文 献 の 参酌 に欠 ける も
の や ,理 論 面 の 記 述 が平 板 で 読 後 に 充 実 感 の 得
の 法曹教育 の場 で は,有 能 な教 師 の払 底 ,指 導過
られぬ ものが多いので はないか。 ことに私 が痛 感
程 で 見 られ る実務 の 現状 に対 す る安易 な妥協 の肯
定 ,画 一 的 な司法研修所流 「要件事 実論」教育 の
す るの は,民 法典 の うち訴訟手続 や執 行手続 に隣
接 す る領域 につ いて,学 者 たちの理 解 がお しなべ
消極面 な どの ため ,若 い人 たちの法 律理論 に向 け
られ た主 体的 な研究心 が そがれ ,官 に就 いては先
て貧 困 であることだ。 ドイツの大学 で は一人 の教
授 が民法 と訴訟法 の 両方 の講 座 を兼 ねるのが通 例
輩 か ら伝承 の型 を無批 判 に墨 守 して事件処理 に当
た り,野 に在 つては もっぱ ら書式集 とマ ニ ュアル
で ,Oertmann,Lent,Baur,Jauernigと
本 を座右 の書 とす る,ス テ レオ タイプ法 曹量 産の
様相 を呈 しているのではないか。
,
い った
大学 者 も双方 の 分野 に名著 をの こ しているが,わ
が国では どこの大 学 で も昔 か ら民法学者 と訴訟法
も っと も私 は,問 題 はむ しろ法曹教育 以前 にあ
学者 との 分業 が極端 に徹 底 して いる。 そ こで,民
法学 者 の 著 作 に は 一 著 名 な 学 者 の それ で も 一
り,わ が 国 にお ける裁判 実務 と理 論 の 断層 の 根本
的原 因 は,第 一 に 法律学界一 般 の 低調 ,こ とに 「民
消滅 時効 の 中断 とか財産 分与請求 の取扱 いといつ
た手続法 関連 の点 になる と,「 わが領域 にあ らず」
法学者 の訴訟法知 らず」 の現象 であ り,第 二 に 在
官 ,在 野双方 の 実務家 に見 られ る理 論探究 の怠慢
と議論 を放棄 している ものや ,論 旨 を実 際 の場合
に適 用 す る ととて も納得 しかね る結論 になる記述
が 多 く見 られ る。そ して訴訟法学者 は,お おむね
と慣行盲従 の通弊 であると考 えている。
この あた りの理論 に無関心 である。 最近 の債権法
2
われわれが若 か つたころ,法 律学 の大 学教 授 と
いえば,雲 の上 の人で 学 識 も一般 の 法曹人 よ リー
段 と高 いとい うイ メー ジだ った が ,大 学 が乱立 し
教 師 の 月給 も安 い現状 で は,た だのサ ラ リーマ ン
と同然 で ,権 威 と貫禄 に 欠 けるだけでな く中身の
学 識水準 もかな り怪 しくな って いる。私 も 11年
間大学教 師 を して いたが ,若 い教員 たちの論 議 が
低調 なことを何 度 か痛 感 させ られ た もの だ。そ し
て近 頃 は一 流大学 の 若 い教員 の 間 で も,権 威 のあ
改正 作業 は,訴 訟法学者 や法律 実務家 があま り関
与 してお らず ,主 宰 している民法学者 の先生方 は
,
手続 法 をあ ま りご存知 で ない ら しいので ,出 来 ば
えが非常 に心 配 だ。
3
最近 は裁判 官 の 間 で も,学 者 に伍 して積極 的 に
法律学 の 著作 や論稿 をもの にす る向 きが 顕著 で
ことにそ こで 近年実務上生起 す る 多様 の 案件 につ
,
き問題 を提起 しているの は喜 ば しい。 しか しその
≧″
多 くに通 ず る傾 向 は,は つ き りいつて,基 礎理論
面 での 分 析 と批 判 的思 考 が 足 りず ,安 易 な現 状
実務追認 の 域 か ら脱 却 していない ものである。そ
してその理 由 は,は っ き りして いる。裁判官経 歴
‐
‐
40年 近 くの私 か らい うの はち ょつと気 が ひける
が,わ が国の 平 均 的裁 判官像 による と,(1)訴 訟
法規 は,人 民 の ためではな く裁判所 の ための もの
であるか ら,そ の 解釈 ,運 用 は,裁 判所 の手抜 き
と拙速 主 義 を本位 に進 め られ ,弁 護 士 の 「長 い物
には巻 かれ よ」 の風潮 が これ に輪 をか け,手 続 的
正義 は, しば しば訴訟 促進 の 美名 の 下 にないが し
ろにされる。 弁護士事務所 が破 産手続 な どで ,裁
判 所 の 事 務 軽 減 の ため 筋 の通 らぬ労 務 の 代 行 を
押 し付 け られて いる実務慣 行 もある。 (2)手 続 の
運 用 と裁判 の拠 りど ころは, しば しば理 論 よ りも
実務 の慣行 と惰性 であ り,客 観 的事実 に法律理論
を当てはめ るの でな く,実 務 の慣 行 に適合 す るよ
うに事実 を少 々捻 じ曲 げる こと も珍 しくない。 そ
して こ う した傾 向 に逆 らつた裁判官 のや り方 は
,
(3)殊 勝 に適 当 な文 献 に当 た ろ うと思 って も,手
近 に 利 用 し得 る蔵 書 が 乏 しいの で あ き らめ る こ
と,な どな どである。以上 は伝統 的 マ ンネ リズ ム
の 牢 固 たる要 因 を形 成 しているか ら,こ れ につ き
しば しば偏 頗 な もの と見 られ る。 (3)判 決書 には
大概 の弁護 士 諸公 に 自覚 ,反 省 を促 す だけで はま
かな り手抜 きの ものや短 絡 な論 理構成 の ものが 多
ず改善 を望 めない。 しか し,弁 護 士 が しっか り理
論 に対処 す べ き案件 は手 近 にもた くさんあるはず
く,典 型 的 な決 定 ,命 令 で は,積 年 の 誤 謬 ,欠
陥 を是正 せ ぬ カビの生 えた書式 が まか り通 つて い
で ,そ こで は型 どお りの 漫 然 たるや り方 で事 を運
る。 (4)判 決文 で は詳細 な法律論 が敬遠 され ,弁
ぶ と,事 案 の 焦点 を把握 して 的確 な方 策 を選択す
護 士 が もちかけた難 しい法律論 を斥 ける ときは
「所論 は独 自の 見 解 で採用す るを得 な い。
」 とい っ
た木 で鼻 を括 ったよ うな例文 を慣 用 す るのが ,最
ることがで きず ,勝 てる事件 で 敗 ける結果 にもな
,
高裁が範 を示す司法 の 伝統 である。
るだろう。そ う した場合 の対 応 の如 何 で凡 庸 な弁
護 士 と有能 ,勤 勉 な弁護 士 との差 が 出 るのだ。 裁
判所 は,決 して有能 な裁判官 ばか りの集合体 では
ない。弁 護 士 は,裁 判官 が 客観 的事実 を正 しく認
4
弁護士 一 般 の 法律学不勉強 は今 に始 ま らな い。
その理 由 は,(1)大 概 の 事件 で は,ひ たす ら勘 と
定 し得 るよう尽 力す るだ けでな く,具 体 的事案 に
適合す る正 しい法 律 理論 を的確 か つ 積極 的 に示す
ことが 肝要 だ し,や ろうと思 えばそれがで きる立
経験 に頼 る先輩 のや り方 を範 と し,あ るいは もっ
ぱ ら座 右 の 書 式 集 や マ ニ ュ ア ル 本 を頼 りに,裁
場 にいるのだ。それで老 骨 の 私 か ら若 い先生方 に
訴 えたい。 諸子 は,旧 来 の 弁護士像 か ら脱 却 し
判所 の 敷 いて くれ た レー ルに沿 い型 どお りに手続
飲 み 代 を削 つて も高 水 準 の 法 律 書 を買 い揃 え
を進 めれ ば ,お おむね変 な結果 にな らず にす む こ
日々批判 的精神 を保 つて主 体的 に勉強 してほ しい。
,
,
と,(2)日 々の 事件 処理 に追 われ て いるが,勉 強
の 成果 は必 ず しも収 入 の増加 に直結 しない こと
以上
,
弁護 士
弁護 士
代表社 員
弁護 士
代表社 員
弁護士
野中 徹 也
北 野 了考
新井 教正
津 田 尚 廣
津 田 禎 三
弁護士法人
な にわ橋法律事務所
弁護士
弁護士 矢 野 智 美
緒
謙
戸根 住夫
士
事務長 小 野 和 也
事 務 職 員 一同
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