改善事例集のPDF(経済産業局 PDF No.10、頁No.70

4.生産性向上のための
モデル改善事例5社
1及び2で整理したサービス産業の要素及び生産性向上策の様々な組み合わせを抽出
し、各組み合わせを代表し、取り組み内容について公表可能な企業を近畿経済産業局管
内のサービス業から5社選出しました。その5社に対して実際に専門家を派遣し、生産性向
上への取り組みを行ったものをまとめています。
61
株式会社 ALL CONNECT
ベンチャー企業の急成長期における生産性向上
対個人
《企業概要》
企業概要》
対事業所
【代 表 者】
【 住 所 】
【電話番号】
【 業 種 】
【資 本 金】
【従業員数】
【U R L】
岩井 宏太
福井県福井市大和田60-4-11
0776-31-2100
販売代行業
62,000(千円)
83名
http://www.all-connect.jp/index.html
《ビジョン》
ビジョン》
個人対応
Web販売代行のパイオニアとして、今後も多くの企業をサポートさせていただきます。Webの世界
では、販売力が弱い企業が多い。そのため、良い商品を持っているにもかかわらず、Web上でモノ
が売れない企業は少なくありません。当社はそんな企業を支援し、売上げを伸ばしていきたい。そ
して日本経済の発展に貢献したいと本気で思っています。
《沿
革》
チーム対応
2005年年4月設立。
代表取締役岩井宏太が「起業」を意識したのは大学生の時。大学3年生の時にインターネット回
線を販売するアルバイトを始める。入社3ヶ月で営業マン100名の中でトップの営業成績。そして
大学卒業後、ALL CONNECTを創業。
ホスピタリティ
《事業内容(サービスモデル)》
事業内容(サービスモデル)》
インターネット上での販売に特化した“次世代型のWeb販売代行”サービスを展開している。クラ
イアントはホームページを持っているが、自社製品やサービスの販売にWebが活用されていない
企業が多い。ALL CONNECTはそのような企業に代わって、Web制作からプロモーション、コール
センターなどを含めた販売代行を請け負う。基本的には、成果達成時に報酬を得るサービスモデ
ルである。
システム
プッシュ
プル
62
販売代行業
株式会社ラカン
株式会社 ALL CONNECT(福井県福井市)
《Web販売代行ステップ
》
Web販売代行ステップ》
Web販売代行ステップのうち、 4.Webサイトの制作 及び 7.売れ続ける仕組みの構築 プロセスに
関わるWebデザイナーの業績評価、生産性向上が課題となっている。
《改善手法・プロセス》
改善手法・プロセス》
地域資源
《抽出課題》
抽出課題》
職場環境
5.テストマーケティング
リスティング広告を出稿し、Web上で小規模に商
品を販売。Webサイトへの訪問者数、購入率、
売上実績から広告費に対する売上げ見込を立
てる。
6.本契約の締結
クライアント企業にテストマーケティングの結果
を報告し本契約を締結。良い結果がでなかった
場合は戦略変更か撤退かを協議する。
7.売れ続ける仕組みの構築
SEOへの取り組み。コールセンターの本格稼働。
継続的なWebサイトの改善。
情報共有
1.代理店基本契約
Webデザイン、Webプロモーション、システム開発、
コールセンターの4部門のスペシャリストを1名ず
つ、計4名のプロジェクトチームを組む。この4名
が常に連携を取り、プロジェクトを推進。
2.リサーチ
クライアント企業、競合企業、市場情報を収集。
3.販売戦略の策定
販売のコンセプトを決定し、具体的なWebサイトの
打ち出し方、構成、キャッチコピーなどの詳細な戦
略に落とし込む。
4.Webサイトの制作
実際にWebサイトを制作。Webサイトのデザイン、
文書は事前にクライアント企業と合意。
《コーディネーター支援内容》
コーディネーター支援内容》
市場創造
1.会社現況、業界動向、生産性懸念事項等
を経営者よりヒアリング。
2.Webデザイナーリーダーより、業務フロー
把握と生産性課題事項をヒアリングにて抽
出。
3.改善提案策を立案。
4.現状把握、課題提示、改善案を提案。
5.改善提案の実行(ALL CONNECT)。
6.効果の確認、感想、今後の取り組み確認。
市場特化
Webデザイナーの生産性向上策
1.Webデザイナー評価
関与サイト数、商品特性等を顧慮する。
2.Webデザイナーリーダーの役割
プロジェクト内でのデザイナーリーダーの位
置づけを明確にする。
3.サイト保守、継続改善の取り組み
サイト保守に関する「Web保守業務フロー」を
明確にする。
4.Webデザイナーの継続的クオリティ向上
デザイナーのスキル、モチベーション向上を
組織的、計画的に実行する。勉強会を開催し
定着させる。
社員教育
《改善結果》
改善結果》
63
経営効率化
2. Webデザイナーの継続的クオリティ向上
従来の部門会議とは別にデザイナーの勉強会を実施する年間計画を作成した。この勉強会で、
Webデザイナーの基礎知識、担当クライアントのデザインのこだわりを共有、あるいは熱きデザイン
への想い等々をWebデザインリーダー主導で開催する。デザイナースキルの向上、結果的には生
産性向上が期待できる。
組織活性化
1.Webデザイナーリーダーの役割
プロジェクト組織にWebデザイナーリーダーの位置づけを明確にし、全スタッフに公開した。 Webデ
ザインリーダーはWebデザイナーとのコミュニケーションが容易になり、デザイナー指導とプロジェク
ト運営を効率化できた。
《改善活動ドキュメント》
改善活動ドキュメント》
1.改善ポイントヒアリング(経営陣)
当社は、設立以来急成長を続けているが、経営陣・マネージャーも含
め社員の年齢層が低く、人材マネジメントに頭を悩ましていることが判
明。特に、数字で評価しにくいWebデザイン部門についての評価方法に
ついて試行錯誤を繰り返している状況であった。社員の中においても同
部門においての評価が分かれている状況であり、経営陣は、この状況
は従業員満足に大きく影響し、会社全体の生産性が落ちことが想定さ
れることから、公平感のある評価方法が必要と認識していた。
(ミーティングの様子)
2.現状把握(Web
デザイナー)
2.現状把握(Webデザイナー)
1) 年齢も若く、Webデザインに関する経験年数は少ない。
2) 当社におけるWebデザインの評価は、販売代行業の中でのデザイン
ため、一般的なサイト受注による評価のように明確に出来ない。
3) デザイナーの意識が受け身になっている(顧客に近いマーケティング
部門のほうが強い)。
4) 高いクオリティのデザインを短期間で制作する力量が求められている。
5) リーダーがプレーイングマネジャーであり、サイト構築時、保守時にデ
ザインに関するメンバーへの助言、指導、指示がプロジェクトの意思
決定と相違することもある。
(WEB制作業務フロー)
3.現状把握から見えてくる課題⇒対応策
対応策
結果
・各サイト構築を“プロジェク
ト”と認識した場合、組織的
な運用になっているとはいえ
ない
・サイト構築数増加に対応出
来る組織体制ではない
・新規サイト構築の手順は「W
eb制作基本業務フロー」で
明確だが、保守に関しては
業務フローの提示はなく整
備されていない
・各“プロジェクト”のメンバー、
役割を明確化、掲示すること
により社内全体に「見える化」
・社内全体に「見える化」したこ
とにより、Webデザイナーの
社内での立場が明確になっ
た
・下記評価方法の見直しと同時
に進めることによって、公平
に案件が割り振れるように
なった
・他部門も含めた 「Web保守
業務フロー」確立に向けて調
整中
・リーダーの役割が不明確
・各“プロジェクト”へのリー
ダーの関与が“メ ンバー指
導”なのか、“サイトの改善
案の提案”なのかが不明確
・組織としてのリーダーの役割を
明確化
・各“ プロ ジェクト”においての
リーダーの役割を明確化
・上記役割を全社に「見える化」
・リーダーの役割が明確化した
ことにより、指導と“プロジェク
ト”の切り分けが可能になり、
混乱が現場の混乱が減った
デザイナー
・関与サイト数、難易度(商品
特性)等を考慮した評価に
なっていない(不透明)
・マインド(熱意)育成
・スキル取得、向上策が組織
的に計画されていない
・関与サイト数、難易度を数値
化することによる評価の「見え
る化」を実験的に実施
・定期的な勉強会を実施し、体
系的にデザイナースキルの向
上を図れるようにした。
・不 完全ではあるが、評価が
「見える化」したことにより、に
公平感が出てきた
・教育体系を整備したことによ
り、デザイナーのレベルアッ
プが組織的に可能になった
組織・
業務フロー
課題
リーダー
項目
・各デザイナーのスキル等を明
確化し、担当案件の最適化
(件数・内容)を図った
・「Web保守業務フロー」を明確
に向けた取り組みを実施
新たに設定された
勉強会年間スケジュール→
←各プロジェクトメンバー
を社内全体に“見える化”
(WEB制作業務フロー)
64
株式会社 ALL CONNECT
《代表者からのコメント》
代表者からのコメント》
弊社は 「Web販売・営業代行業」という新しい事業スキームを基軸
にビジネスを展開する、創業5年目・平均年齢約27歳・社内のマネー
ジャーも半数以上が20代というの若い会社です。
しかしその一方では、私自身そしてマネージャーも経験が浅く、特に
人材マネジメントが追いついていない状況にありました。
今回のコンサルで、弊社の改善点を明確に見出していただき、改善策
を行ったことにより、プロジェクト運営の効率があがったことを実感で
きました。
岩佐さんには短い期間にもかかわらず、的確に問題点を抽出しクリ
ティカルな解決法を提示していただきました。
今後も断続的に今回の改善策を行っていくことで、社内のクオリティ
アップに期待するとともに、生産性の向上を確信しております。
まだまだ若い会社なので、今回のコンサルでの成果をもとに、これか
らも次のステージへとチャレンジしていきたいと思います。
株式会社 ALL CONNECT
代表取締役
岩井宏太
《支援者からのコメント》
支援者からのコメント》
ALL CONNECTは創業5年程の新しい企業であり、非常に若いスタッフが活き活きと活動してい
る企業です。初回訪問時に、岩井社長、古市取締役から会社の現況と経営者としての熱い「想い」
を聞き、自らの経験を基に新しいビジネスモデルを構築していることを知りました。WEB制作会社
は数多く存在していますが、ALL CONNECTのようにWEB販売代行に特化し、自ら制作したWeb
からの売上げ実績で成功報酬を得るビジネスを実践している企業は希少な存在です。
ベンチャー企業の生産性向上支援を実施するにあたって、支援期間が短いこともあって、最も懸
念事項になっているWEBデザイナーの生産性向上に的を絞って現状把握、対策案検討、実行、
効果確認を行いました。
Webデザイナー部門はリーダーも含めスタッフ全員が20代であり、企業人としての成果を求めら
れるとともに、クリエーターとしての誇りが交差しています。WEBデザイナーリーダーの悩みは、や
はりリーダーとしての“マネジメント”と“若いスタッフの育成”が整理されなく困惑している状況でした。
今回の対応策は、プロジェクトでの立ち位置を明確にすることと、スタッフの勉強会を計画するこ
とでした。すなわち、「コミュニケーションの機会創出」 「育成プログラム」が生産性向上の鍵だと気
付いたことが最大の成果でした。
今後も成長過程にあるALL CONNECTは次のステージではまた別の視点で生産性向上に取り
組むことが必要になるでしょう。最後に、この支援期間を通じてWEBデザイナーリーダーの表情が、
最初に会った時と比べて随分と明るくなった様に感じられたことが私の喜びです。
(担当専門家 岩佐 修二)
65
TONY TANAKA STUDIO 心斎橋店
個人主義から組織主義への転換
対個人
《企業概要》
企業概要》
対事業所
【代 表 者】 森下 朋広
【 住 所 】 大阪市中央区南船場4-13-10
南船場OCA 1・2F
【電話番号】 06-6253-7300
【 業 種 】 美容業(トータルビューティーサロン)
【従業員数】 10名
【U R L】 http://tony-tanaka-osaka.com/
《経営理念》
経営理念》
個人対応
美(内面の美・外面の美・時間の美)を通して、お客さまに元気を提供する。
《沿
革》
チーム対応
1984年に、メイク界の先駆者であるトニータナカ氏がオリジナル化粧品の企画・販売、美容室サ
ロンの経営、美容スペシャリストの教育・育成、ウェディングヘアメイクなど、美容に関わる業務を
行う株式会社トニーズコレクションを設立。
1999年に関西の拠点として「TONY TANAKA STUDIO 心斎橋店」を出店し営業を開始した。 そ
の後、同店のトップアーティストとして活躍し、現場スタッフのまとめ役であった森下朋広氏が、暖
簾分け制度を活用。
2007年に「TONY TANAKA STUDIO 心斎橋店」を独立させた。現在は母体である株式会社ト
ニーズコレクションからの経営的な援助に甘んじることなく、独自の経営展開を行い、店舗営業の
他、CM・TVタレントのメイクアップ活動など幅広い分野で活躍している。
ホスピタリティ
《事業内容(サービスモデル)》
事業内容(サービスモデル)》
システム
20代後半から30代のOLをターゲットに、トータルビューティー
サービス(ヘア・メイク・ネイル・エステ)を提供している美容サロン
である。各サービス部門ごとに専門家を配置しており、常に質の
高いサービスを提供できることが強みとなっている。特にメイク部
門には、親会社の社長でメイク界の先駆者であるトニータナカ氏
から、メイク技術を受け継いだスタッフが在籍し、その高い技術力
によって他の美容室よりも競争優位なポジションを築いている。
(スタッフミーティングの様子)
《取り組み背景》
取り組み背景》
プッシュ
プル
1.取組みのきっかけ
店舗POSデータをもとに、売上分析を行った。その結果、昨年と比較して売上が減少している事
実が判明した。詳細には①提案力の低下による客単価の低下、②リピート率低下による月間来
店客数の減少の2点であった。
2.業務(オペレーション)の見える化を行う
上記の原因を探すため全部門の業務の見える化を行い、業務の現状把握と分析を行った。
3.スタッフ全員に対してアンケート調査を行う
アンケート調査により、業務フロー上の問題点の洗い出しを行った。
4.問題点の集約と課題設定を行う
上記2,3で収集した情報をミーティングにて全員で共有。その中で 最も優先順位が高い問題
点を特定し、課題設定を行った。
66
美容業
株式会社ラカン
TONY TANAKA STUDIO 心斎橋店(大阪市中央区)
《抽出課題》
抽出課題》
情報共有
各部門や個人の専門性を追求し過ぎた結果、「部門・個人主義」が横行。組織全体の利益・効率性を考えず、
自ら担当する部門の職務のみを優先する状態である。その結果、顧客情報が部門間で共有されず、当社の
強みである複合提案力(トータルビューティー提案力)が低下し、売上低迷につながっている。
ヘア・メイク・ネイル・エステなど各部門で持つ顧客情報の共有ルールを明確化することで部門間の壁を打ち
破る。それにより個人でなく組織として、顧客へ複合提案(トータルビューティー提案)ができる体制・風土を再
構築する。
・顧客へのカウンセリング方法を具体化する
・ロールプレイングを実施、レベルの引き上げを行う
解決策:「ロールプレイング設計シート」の作成と運用
課題② 価値観を全員で共有する必要がある
課題④ コミュニケーションの経路を明確にする必要がある
・個人がこれまで大切にしている価値観を具体化する
・組織として大切にすべき価値観に集約化する
解決策:「共通の価値観」の設計と運用
・改善・営業活動の工程と進捗を具体化する
・上記の内容を確認できる会議、ミーティングを設定する
解決策:「会議ルール」の設定と運用
《改善手法・プロセス》
改善手法・プロセス》
《コーディネーター支援内容》
コーディネーター支援内容》
・課題抽出のためのアンケート調査及び個人面談
・業務の見える化及び業務フローの見直し
・情報管理方法についての整理
・共通の価値観策定のためのファシリテーション
・業績管理のための管理シートの作成
・業績管理のための会議設計
・接客レベル向上のためのロールプレイング設計
市場特化
1.プロジェクトチームの立ち上げ
各部門からメンバーを招集し、部門横断的に
現場で改善を推進するチームを編成。
2.改善キックオフミーティングの実施
スタッフ全員で課題を共有し改善の方向性を確認。
3.改善活動の実施
ロールプレイングやその他の改善活動を実施。
4.改善成果ミーティングの実施
改善の進捗を確認するためのミーティングを実施。
地域資源
課題③ 人材の能力の標準化を図る必要がある
・全員として共有すべき顧客の情報を洗い出す
・部門として共有すべき顧客の情報を洗い出す
解決策:「全部門共通カウンセリングシート」の作成と運用
職場環境
課題① 顧客情報を全員で共有する必要がある
市場創造
67
「共通の価値観」活用による成果
⇒ 共通価値観の明確化及び実践
『 元 気 』 (自分が元気でなければ人を元気にできな
い)
⇒ 毎日一番元気な接客を行っていたスタッフを表彰する。
『 感 性 』 (ゴール無く磨き続けるものである)
⇒ 毎日店内のディスプレイ、スタッフの身だしなみを改善する。
『 自発性 』 (周りに変化を求めるならまずは自分から)
⇒ 毎朝、店舗の200m圏内の掃き掃除を実施
『 共 有 』 (ひとつひとつの物事を全員で共有)
⇒ 顧客カルテや会議議事録の情報共有を徹底
『 感 謝 』 (常に感謝の気持ちを忘れない)
⇒ 毎日「ありがとう」の言葉を50人に伝える
経営効率化
○客単価の向上 (計測期間:09年11月~10年01月)
成果:08年度(8,518円)⇒09、10年(8,795円) 成果:+277円
業績評価指標(KPI):
⇒新規部門リンク獲得数 (未計測)⇒改善後(11人)
※他部門サービスを提案し新規に利用した顧客
⇒顧客理想共有度 (未計測)⇒改善後(41%)
※顧客ニーズの聞き取り及び提案の達成率
○平均来客数の向上 (計測期間:09年11月~10年01月)
成果:年間/176名×2回=+352名 月間/352名÷12ヶ月=+29名
業績評価指標(KPI):
⇒次回予約確約・来店周期改善人数 約176名
※平均来店周期 改善前(年6回利用)⇒改善後(年8回利用)
組織活性化
「全部門共通カウンセリングシート」活用による成果
↑(全部門共通カウンセリングシート)
顧客情報だけでなく、提案の内容や
プロセスが管理できるよう、シートが
設計されている。
社員教育
《改善結果》
改善結果》
↑(情報管理BOX)
顧客カルテの書きもれ
などが無いように、管理
の見える化を実施。
←(ロールプレイングの様子)
新規顧客や既存顧客に対するカ
ウンセリングをスタッフ同士で徹
底ロールプレイング。
《改善活動ドキュメント》
改善活動ドキュメント》
Scene1:
Scene1: 解決の糸口は必ず現場にある
分析の視点:会社の強みが現場で組織として活用できているか?
問題点
業務の見える化
①顧客へ実施する「カウンセリング」の品質にバラつきがある。
②収集した情報の保管基準(ルール)がない。
③部門間で情報の共有と活用が出来ていない。
Scene2:
Scene2: シンプルで即効性のある仕組みを考える
解決策: 「全部門共通カウンセリングシート」
解決策のポイント:
現場で扱いやすいように、出来るだけシンプルで、質
が維持できるものになるよう工夫を行いました。
①シートの大きさをA4用紙1枚に設定
②10分以内ですべて記入できる項目数
③顧客への提案プロセスの管理も行えるようにする
④スタッフが全員参加でアイデアを出し決定する 等
(カウンセリングシートのアイデア集)
Scene3:
Scene3: 知識を学び、理解し、活用する
解決策を現場に定着させるために
徹底したロールプレイング演習の実施
カウンセリング時の話し方や態度を、
他のスタッフに客観視してもらうことで、
自分たちのスキルレベルや課題など
を明確化しました。
(早朝にスタッフ全員でロールプレイング)
Scene4:
Scene4: 改善の進行を阻むもの
仕組みの現場投入を終えた後、改善活動は順調に進むであろうと安堵しておりました。しかし、数日
後にスタッフに対しヒアリング調査を実施してみると、数名が改善に対して、批判的な行動や発言を
行っている事実が判明しました。表向きには前進しているように見えていたのですが、 「“部門間の壁”
(セクショナリズム) 」が取り払われておらず、足並みが揃っていない状態であることが判明しました。
真の問題点
「“部門間の壁”(セクショナリズム) 」
組織全体の取組みよりも個人や
部門業務のみを優先する状態
Scene5:
Scene5: 壁を壊すエネルギー
「“部門間の壁”(セクショナリズム) 」の打開のために
解決策:プロジェクトチームの立ち上げ
トップ(経営)とボト
ム(現場)の両面か
ら改善を促進
チームメンバー選出規準
①貢献意欲が高い、②コミュニケーション力がある、
③組織目標を理解している、④共通の「価値観」の理解
68
(佐藤さん、吉田さん、森野さん、若林さん)
TONY TANAKA STUDIO 心斎橋店
Scene6:
Scene6: 組織として何が大切で何を優先させるか
プロジェクトチーム選出の基準のひとつ: 「共通の価値観」
共通の価値観とは:
スタッフや部門間でバラバラになっている想いをまとめたもので、何が大
切で何を優先させるかの組織の取り決めです。ものごとを遂行する際の
行動基準として機能させる仕組みでもあります。
「元気」「共有」「感性」「自発性」「感謝」
改善活動の
原動力
(共通の価値観調査シート)
Last scene:
scene: 組織の構築、活性化が生産性向上の鍵
動機づけ(共通の価値観)
行動管理(ガントチャート)
組織の使命感向上
やる事の明確化
これまでは、指示されなければ動かなかったスタッフも、目的や手段、
そして行動の基準などが明確になると、自らが自らの動きを考え、組
織全体の目標を自分の目標として動くようになりました。
(ガントチャートで改善活動の進捗を常に確認)
組織として様々な取組みを積み重ねた結果、生産性が向上
《代表者からのコメント》
代表者からのコメント》
私はこれまでスタッフ全員を組織としてひとつにまとめようと努力を行ってきまし
た。 しかし、私の指示がスタッフ全員に落ちていなかったり、意見が合わずぶつ
かりあう事も多くありました。 私の考えと若い世代との考えはそんなに異なってい
るのだろうかと不安を抱き、非常に迷った時期でもありました。 今回の生産性向
上のための取組みでは、売上に直結する活動だけでなく、スタッフの「想い」を全
員で表に出し「共通の価値観」として集約化し共有することを行いました。 その結
果、スタッフ間の想いのすれ違いを解消でき、全員が同じ方向を向いて動けるよう
になりました。 これまで越えられなかった壁を打破できた気がします。 また、方
向性にブレが無くなることで次に組織としてやるべきことが見えてきました。
これからも私たちは美を通してお客様に元気を提供していきます。また、今後は
現在のスタッフ全員が組織の核となり、同じ価値観の人財を会社に増やし、社会
にどんどん貢献していける企業へと成長させていきたいと考えております。
TONY TANAKA STUDIO
心斎橋店
代表 森下朋広
《支援者からのコメント》
支援者からのコメント》
生産性向上の取り組みについては、以前から課題のひとつとして取り組む努力を行っていらっしゃいまし
た。 しかし、思うように改善が進まず、成果として現れてきていない状況でありました。 そこで今回は、こ
れまで目に見えなかったものを見える化し、何を目標とするのかをしっかり確認できる仕組みをつくりました。
例えば、「共通の価値観」です。これまで各スタッフ間でバラバラであった想いを、組織として共有し活用で
きる目標へとファシリテーションをさせていただきました。 それにより、「チームとして普段どのような行動を
とるべきなのか」を意識できるようになり、自律した組織へと変貌の一歩を踏み出しました。 今後、価値観
はもちろんのこと、他の業績評価指標(
(KPI)も参考にしながら、改善活動を継続していただきたいと思って
います。
最後に、今回色々と頑張っていただいたスタッフの皆様に感謝。
(担当専門家 酒井吉貴)
69
株式会社 若葉総合鑑定
社内情報共有化による生産性向上
対個人
《企業概要》
企業概要》
対事業所
【代 表 者】
【 住 所 】
【電話番号】
【 業 種 】
【資 本 金】
【従業員数】
【U R L】
個人対応
《沿
チーム対応
1998年
2001年
2002年
2005年
2006年
簗瀬 康政
大阪市西区靱本町1-7-9
06ー6459ー5300
損害評価鑑定
10,000(千円)
13名
http://www.wakabakantei.co.jp/
革》
会社設立
事務所を2フロアーに増床
業界で初めて「ISO9002」の認証取得
事務所移転
業界で初めて「Pマーク」認定
損害保険会社からの委嘱を受けて行う財物に
係る損害額の算定および保険価額の評価なら
びにそれらに関連する一連の業務。
損保会社
ホスピタリティ
《事業内容(サービスモデル)》
事業内容(サービスモデル)》
委嘱
若葉総合鑑定
損害額算定
保険価額評価
上記関連業務
システム
《取り組み背景》
取り組み背景》
プッシュ
プル
当社は、損害保険会社からの委嘱を受けて損
害額の算定などの業務を行っている。鑑定業務で
は、一人ひとりの損害額鑑定の正確さ文書表現
能力などの力量が、損害保険会社からの評価に
つながる。
また、案件委嘱から鑑定書完成までの時間短縮
は事業活動そのものの生産性に影響を与える。
若手の鑑定人の場合、案件に対する力量不足
によって委嘱から鑑定書作成までの時間が長期
化する傾向にある。
70
生産性向上
作成時間の
短縮
損害評価鑑定
株式会社ラカン
株式会社若葉総合鑑定(大阪市西区)
《抽出課題》
抽出課題》
鑑定書を損害保険会社に提出してはじめ
て現金化されるので、協定後の鑑定書をい
かに早く作成するかがCS向上と生産性の向
上、キャッシュフロー改善につながる。
6.協定後と7.鑑定書作成の間に時間を要して
いる。
1.業務プロセスの短縮化に対する効果
類似案件を参考にして、鑑定書作成の時間短縮が図れた。
ISO9001の品質目標である「6.協定から7.鑑定書作成まで
の所要日数を1週間以内とする」について、前年10%達成が
60%に改善。
71
経営効率化
2.鑑定書の品質に対する効果
特殊事案(社寺仏閣、クリーンルーム等)の事例を共有化
でき、鑑定技能の向上につながった。
組織活性化
《改善結果》
改善結果》
社員教育
◆ボトルネック
1.から6.までは滞りなく進捗しているが、6.
から7.の間がボトルネックである。
市場創造
◆業務プロセス分析
1.受付
2.実調:現場立会、書類審査
3.立会速報
4.見積り受領
5.原案作成
6.協定
.
7.鑑定書作成
市場特化
1.鑑定人が抱えている課題の洗い出しと、
検索システム構築による解決手法の成否
検証作業を行い、経営者が考えている方
向性を検討する。
2.検索システム化を行う場合の手順の検討
を行う。
3.検索システム化した場合の業績評価指標
の検討を行う。
4.検索システム化に伴う鑑定人に対する研
修項目の内容検討を行う。
5.評価指標に基づいた検証を行い、検索
キーワードや活用状況を把握し、適宜見
直しを行う手順を確認する。
地域資源
1.業務プロセス分析
委嘱受付から鑑定書の完成までのプロセスを
洗い出し、ボトルネックがどこにあるかを確認。
2.検索システム構築にあたりITベンダーとの意
見交換を行う。
3.改善後の評価指標として何がふさわしいか数
値化できるものを洗い出す。
4.改善後の仕組みを確実なものにするため、研
修を実施する。
5.改善後の評価指標の検証を行い、改善があ
れば見直しを行う
職場環境
《コーディネーター支援内容》
コーディネーター支援内容》
《改善手法・プロセス》
改善手法・プロセス》
情報共有
過去から蓄積された鑑定書(=知的資産)は、グループウェアを経由して社内のサーバーに保存さ
れている。しかし、鑑定書は一人ひとりの資産にとどまり社内全体で共有化されていない。社員全員
社員全員
で共有化することで個人のノウハウが全員で活用することができ、鑑定書の品質向上による損害保
で共有化
険会社からの評価向上と、作成時間の短縮によるCS向上、委嘱案件の増加が期待できる。 しかし、
どのような検索の仕組みが必要なのか、また、どのように利用すれば、最適な情報共有が得られ、品
質と生産性の向上が図られるか方向性
方向性が見えない。
《改善活動ドキュメント》
改善活動ドキュメント》
1.鑑定書情報の共有化
個人のノウハウを社内で共有化することで、ひとりの経験値を全体
に拡げ、業務プロセス全体の最適化を図ることで鑑定書の品質とCS
および生産性の向上をめざす。
2.検索方法の確立
どのような検索方法が効率的であるかを検討した。
これにはベンダーの意見も確認した。
検索キーワードは、財物や事故形態によって、大分類、中分類、小
分類に区分けし、いろんな切り口から登録キーワードに辿りつき易く
した。
3.効果的な活用方法に関する教育
効果的な活用方法に関する教育
朝礼およびグループウェアメールでの通達を行い、全員に徹底した。
4.鑑定書作成のスピードアップを確認
6.協定から7.鑑定書作成までの所要日数を1週間以内とする目
標について、前年10%から60%に改善。
測定方法は業務管理DBにより測定。
5.評価方法の決定
既存鑑定書の活用度測定を行う。
定量データは上記業務管理DBにより測定したが、定性的な評価は
社員アンケートを実施し、ほぼ全員から高い評価を得た。
6.若葉総合鑑定全体の生産性と品質の向上
手一杯になって、同業他社に流れてしまった業務を確実に受注でき
ている。
特殊案件などの知識を共有化することによって、幅広い業務に対
応できるようになった。
1.鑑定書情報
の共有化
2.検索方法の確
立
3.効果的な活用
方法に関する教育
4.鑑定書作成の
スピードアップ
5.評価:既存鑑定
書活用度測定
6.若葉総合鑑定
全体の生産性と
品質向上
7.キャッシュフ
ロー向上
7.キャッシュフローの向上
社内の業務プロセスが
短縮化されたので、損害保険会
社からの案件受け入れ余裕がう
まれ、受注機会が増えた。
また、特殊な案件の対応ス
キルができたので、他社との差
別化を図かることができた。
検索画面
「100万円~200万円」 or 「バリアフリー」の案件を検索
72
株式会社 若葉総合意鑑定
検索画面
「財物」-「建物」-「建材」で案件を探しています
《代表者からのコメント》
代表者からのコメント》
株式会社若葉総合鑑定は損害保険鑑定の専門家集団として、揺るぎない信頼
と永年培った知識を適正かつ迅速に提供できるよう常に心掛けております。
そのためには顧客ニーズを正確に酌みとり、従業員一人ひとりの教育訓練によ
るスキルアップを図り、より高度な専門知識に関してはコンサルタント等の起用に
よるバックアップ体制を整えて臨んでおります。
国際品質保証規格ISO9001ならびにプライバシーマークを業界で最初に取得し
たのも、私たちの意気込みを表現した結果であります。
私たちは、現状に満足することなく柔軟な発想と地道な努力を続け、鑑定人業
界屈指の技術力を提供できる体制をこれからも維持して参ります。
代表取締役
簗瀬 康政
《支援者からのコメント》
支援者からのコメント》
株式会社若葉総合鑑定は1998年の創業以来、インターネットや電子メールの活用などIT化を積極的に
推進している。また、ISO9001の取組みを通して業務の標準化や効率化も進めている。
今回の取組みも社員教育による若葉総合鑑定の品質向上・強化の一環として取り組んだ。
経験豊富なベテラン鑑定人の知識やノウハウを社内で共有化する意義は高く、損害保険会社からの評価
やひいては案件受注の機会を増やすことになる。
今回の取組みは、ベテラン鑑定人が作成した鑑定書をデータベース化することで的確な検索が行え、品
質が高く、迅速な鑑定書を損害保険会社に提供できる体制を整えることがねらいにあった。
プロジェクトメンバーは、鑑定業務の多忙の中、鑑定人全員の意見を聞きながら、どのような方法で構築す
るべきか議論を重ねた。
検索方法もひとつではなく、自由なワードからも検索できるような柔軟なシステムができ、鑑定人が調べ
たいときに直ぐに調べられるように、検索結果も的確に迅速にレスポンスがあるようにベンダーからの意
見も取り入れながら進めた。
その結果、業務プロセスの短縮や、特殊案件のノウハウも社内で共有化することができ、受注案件の増
加やキャッシュフローのアップにつながっている。
今回の取組みは、社員の力量向上を通して顧客満足を高めた事例であるといえる。
(担当専門家 森下 勉)
73
あんしんケアねっと有限会社
「のれんわけ制度」による新しい介護のしくみ
対個人
《企業概要》
企業概要》
対事業所
【代 表 者】
【 住 所 】
【電話番号】
【 業 種 】
【資 本 金】
【従業員数】
【U R L】
《沿
個人対応
1992年
2004年
チーム対応
2007年
2008年
松村 美由紀
大阪府守口市大枝東町13-6
06-6993-6490
通所介護事業・整骨事業
3000(千円)
20名
http://www.j-hamd.com
革》
大阪府守口市で松村整骨院 開業
あんしんケアねっと有限会社設立
コミカデイサービス開業
(テイクオフ大阪21認定事業)
八雲楽楽デイサービス開業
知的資産経営報告書作成
《事業内容(サービスモデル)》
事業内容(サービスモデル)》
ホスピタリティ
地元密着の整骨・通所介護事業を展開。整骨院事業をベー
スに、小規模定員10名のデイサービスを開業。
顔と顔がつながり、心も身体も楽になるケアをコンセプトに、
利用者満足を第一に運営。2009年度は平均利用率も90%を超
えた状態を維持。
また、2010年度には介護職(施設長)の独立制度(のれんわ
け制度)を展開。
《取り組み背景》
取り組み背景》
システム
プッシュ
あんしんケアねっとは、2004年に利用者10名にこだわった
「コミカデイサービス」を創業した。
介護現場の労働環境は、介護保険制度の枠組みにおかれ、
その他の産業と比較して恵まれた環境にない。また、多くの施
設は労働資源をボランティアに頼らざるを得なくなっており、従
業者が自身の成長や能力発揮に繋がらないと感じて離職にい
たるケースが多い。
このような介護支援者のモチベーションの低下は、利用者や
その家族のニーズも満たせなくなる場合があり、介護の品質
低下につながる可能性がでてくる。
プル
74
テイクオフ大阪21
認定証
通所介護事業
株式会社ラカン
あんしんケアねっと有限会社(大阪府守口市)
《抽出課題》
抽出課題》
《コーディネーター支援内容》
コーディネーター支援内容》
2.「秘伝
本」の定義の洗い出し
2.「秘伝本」の定義の洗い出し
必要とされる「秘伝本」を定義すること。
「品質秘伝本」「運営秘伝本」「経営秘伝本」
の3本柱で構成させ、それぞれの内容も策定
させる。
3.契約内容
のブラッシュアップ
3.契約内容のブラッシュアップ
のれんわけ対象者である施設長との契約
内容の検討を行う。
市場創造
社員教育
<のれんわけ制度>
施設長としてデイサービスを運営し、秘伝本免許皆伝者は「のれ
んわけ」起業の資格を得る。
これにより、今まで手塩に懸けたデイサービスで独立が可能となる。
高齢化社会が進むなか、小規模デイサービスは競争力もあり安定
収入も見込める。
当社は介護職の新たな人生プランとして「のれんわけ」制度を整備
し、「楽しくって心も身体も楽になる」小規模デイサービスの良さを
次々と地域に発信します。
市場特化
1.のれん分け制度の明確化
「のれん分け」に必要とされる要件の整
理を行い定義を明確にし、具体的な実行
計画に基づき事業ミッションの実現を具体
化していく。
2.「秘伝本」の定義と作成支援
「秘伝本」の定義と目的・役割を明確に
し、必要とされる項目の洗い出しと整理を
行い骨組みの作成と具体的内容の作成
支援を行う。
3.「のれんわけ」における適切な契約内容
の検討
リーガルチェック面だけでなく、事業推進
という側面からの契約内容の検討
地域資源
1.のれん
分け制度の明確化
1.のれん分け制度の明確化
「のれん分け」の定義の明確化を行い、施
設長(のれんわけ対象者)と意識の共有化を
図りながら、具体的な事業計画を立案した。
職場環境
《改善手法・プロセス》
改善手法・プロセス》
情報共有
介護現場の品質を高めるには、従業者、特に若手従業者が将来に希望が持て、介護を継続的に担
える人材として育成していく仕組みを構築することが必要である。
従業者が自分自身が安心して働けることや将来に希望を持てることで、利用者やその家族のニー
ズに合った品質の高い介護の仕組みを作り上げることが可能になる。
そこで松村氏は、その仕組みを「のれん分け」と、「のれん分け」を実現させるためのマニュアルにあ
たる「秘伝本」という方法で実現しようと考えた。だが「のれん分け」や「秘伝本」の定義があいまいな
ため、定義の明確性によって具体的な手順まで落とし込み、実現性を高めたいと考えていた。
《改善結果》
改善結果》
組織活性化
経営陣と施設長による、
知的資産や秘伝本の洗出し中!
75
経営効率化
2010年7月を目標に、「のれんわけ」の準備が順調に進み、のれ
んわけ対象である施設長、利用者やその家族、金融機関、従業
員、施設の貸主等 すべてのステークホルダーの理解と了解を取
り付けることができた。
また、知的資産経営報告書は「あんしんケアねっと」の理解を深
めて頂くのに、有効であった。
《改善活動ドキュメント》
改善活動ドキュメント》
1.価値創造の共有化
あんしんケアねっとの強み(知的資産)
は何か。あんしんケアねっとの強みは、利
用者を10名の少人数にする事で、肌理細
やかなサービスが行えることにある。
経営陣の想いである「日常生活型の安
全、安心の楽しい介護デイサービス」を実
現するために、価値創造ストーリを描き、
KPI(重要業績指標)の明確化とともに、知
的資産(強み)を施設長(のれんわけ対象
者)と意識の共有化を図った。
2.「秘伝本」の定義と必要な「秘伝本」の洗い出し、
2.「秘伝本」の定義と必要な「秘伝本」の洗い出し、作成
のれんわけに必要なツールである「秘伝本」を、次の3つの「秘
伝本」に定義。
「品質秘伝本」
「楽しくって心も身体も楽になるデイサービス」の品質を取りま
とめ、品質の礎とする。
「運営秘伝本」
「仕事が楽しみで仕事を楽しめる職場」を作るためのノウハウ
を取りまとめ、運営の礎とする。
「経営秘伝本」
「楽をつくり楽に儲ける経営」を実践するための心得をとりまと
め、のれんわけの礎とする。
「秘伝本」は運営、管理が行いやすいよう
に、版管理を行うとともに、本来の趣旨を徹
底させるため、全体目的、利用者目標、職員
目標を設ける。
また、説明内容の理解がしやすいように写
真を張り付けるなどの工夫を行った。
ちなみに「品質秘伝本」は、
1.心構えの巻き
2.行動の巻き
3.前準備の巻き
4.送迎の巻き など10巻。
「運営秘伝本」や「経営秘伝本」も各々10巻
ずつ作成を行っている。
3.施設長(のれんわけ対象)との契約
施設長が「のれんわけ」を受けた後、仲間
として連携をとりながら共に発展するために、
「のれんわけ」に関わる契約内容について、
リーガルチェックとともに、支援者の視点とし
てサポートを行った。
76
あんしんケアねっと有限会社
《代表者からのコメント》
代表者からのコメント》
今回の支援、本当にありがとうございました。
「のれんわけ制度」のデザインが明確になりました。
利用者さんの満足を重視し、定員10名の小規模デイサービスの
スタイルで開業以来突き進んで来ました。その満足が当社の存在
価値であり、他のデイサービスとの競合優位の源です。しかし、施
設長の退職などを経験し、利用者さんの満足維持には職員のモチ
ベーション維持の大切さを実感しました。
世間的にも介護職は将来の展望が見えにくく低賃金で重労働のイメージがあります。その現状を打破す
ることが、当社の課題でした。夫婦で小規模デイサービスを経営する私たちは「まちの自営業者」です。地元
密着で堅実な運営を心がければ、経済状況の変化の影響も少なく、大儲けはできずとも、なんとか生活は
出来ます。介護職として働く職員も、将来は「まちの自営業者」になれる。自分のデイサービスが持てる。独
立できる。そうなれば、仕事は将来の独立ノウハウ獲得の貴重な機会になるのではと考え、「のれんわけ制
度」を企画しました。
今回ご支援頂いた結果、現在2010年7月「のれんわけ」に向け、着々と計画が進行しています。独立第一
号となる介護職員もやる気満々です。結果、職員間のやる気も高まり、利用者さんの満足が高まり、2009年
度は90%以上の高稼働率を維持。支援の効果がしっかりと現れています。
今後は「のれんわけ」を成功させ、利用者さんも職員も当社も喜び合える事業運営に邁進します。
《支援者からのコメント》
支援者からのコメント》
松村夫妻は、介護デイサービスを開業するにあたり、その事業計画の評価を受けるため、大阪府中小企
業支援センターが行っている創業者のビジネスモデルを評価する「テイクオフ大阪・21」にチャレンジした。
松村夫妻の介護に掛ける想いは審査員の心を動かし、みごと承認を得た。
松村氏は介護デイサービスを運用する中で、期待していた施設長が急に退職した時に新たな介護サービ
スのあり方を考えた。利用者やその家族の満足を高めることは大切だが、介護職として働く職員の満足も重
要である事。そのために必要な仕組みは何かを真剣に考えた。それが「のれん分け」を考えるきっかけで
あった。「のれん分け」を成功するための制度としてどのような仕組みにするか、必要な要件の整理とともに
定義付けを行った。
また、具体的な実行計画では、①利用者、社員、会社のメリット・デメリットの整理 ②デイサービス経営に
かかる事務仕事量 ③必要な資金とその調達方法 ④施設オーナーとの交渉 ⑤のれん分けを受ける施
設長の事業計画書作り ⑥後継者と非後継者との人的関係の整理 ⑦新家主との交渉と了解 ⑧契約内
容の相互の納得 など多岐にわたる課題があった。
松村夫妻の実行力は高く、これらの課題を、順に整理し解決しながら「のれん分け制度」の実現に向けて
実行していった。また、「のれん分け」を支えるツールとして「秘伝本」の策定も同時に進めていった。
この「のれん分け」制度は今まで介護分野で無かった仕組みであり、是非成功させ、介護ビジネスの在り
方に一石を投じて欲しいと考えている。
(担当専門家 森下 勉)
77
プロカラーグループ(株式会社プロカラーラボ・株式会社プロテク)
グループ間の情報共有ロス低減による生産性向上
対個人
《企業概要》
企業概要》
対事業所
【代 表 者】
【 住 所 】
【電話番号】
【 業 種 】
【資 本 金】
【従業員数】
【U R L】
個人対応
《沿
≪プロテク≫
荒川 臣男
兵庫県西宮市石在町1-28
0798-35-6333
デジタル出力、屋外看板作成等
24,000(千円)
56名
http://www.kk-protech.jp/
≪プロカラーラボ≫
【代 表 者】 荒川 臣男
【 住 所 】 兵庫県西宮市石在町12-6
【電話番号】 0798-35-6333
【 業 種 】 プロ用デジタル画像処理
【資 本 金】 48,000(千円)
【従業員数】 150名
【U R L】http://www.procolorlab.co.jp/
革》
チーム対応
ホスピタリティ
1969年 大阪営業所 開設
1973年 大阪営業所、改め株式会社プロテクニカル
センター 設立
1977年 (株)プロテクニカルセンター大阪南現像所
新設
1980年 (株)プロテクニカルセンター麻布現像所
新設
1984年 (株)プロテクニカルセンター大阪北現像所
新設
1992年 (株)プロテクニカルセンター、改め(株)プロ
テクに社名変更並びに現像所表記をラボに
改変
1993年 (株)プロテク京橋ラボ 新設
1998年 (株)プロテク京橋ラボ、改め(株)プロテク
茅場町ラボに営業所名変更
2005年 (株)プロテク東陽町ラボ、新設
1965年
1966年
1976年
1989年
1989年
1991年
1996年
2001年
2003年
プロカラーラボ 創立
株式会社プロカラーラボ 設立
本社現像所 新設
PRO COLOR LAB WEST INC. 設立
(株)プロカラーラボ KYOTO現像所 新設
(株)プロカラーラボ 本社ビル 増設
(株)プロカラーラボ イースト 新設
(株)プロカラーラボ 九州ラボ 新設
(株)プロテク麻布ラボ、改め(株)プロカラー
ラボ麻布ラボへ編入
2006年 (株)プロカラーラボ東陽町ラボ、開設
プロカラーラボ
本社
プロテク
大阪北ラボ
システム
《事業内容(サービスモデル)》
事業内容(サービスモデル)》
プッシュ
プル
プロテクとプロカラーラボは関連会社である。
プロテクは大型ディスプレイ等の制作技術を持ち、商業店舗用ディスプレイや、電飾ポスター、クロ
プロテク
スプリント、屋上・ビル壁面の大型広告を作成している。プロテクは、プロカラーラボが作成するブラ
イダルフォトやポートレイトのデザインアルバムの技術支援
技術支援を行っている。
プロカラーラボは、B2Bとしてプロの写真館やホテルなどが撮った写真を現像しブライダルフォト・
プロカラーラボ
ポートレイト・デザインアルバム等を作成している。プロが撮影したデジタル写真はWEBを利用した
デジタル入稿で受け入れ、社内ではプロテクのサポートを受けながらデジタル処理を行い商品に仕
デジタル入稿
上げていく。
78
デジタル出力、プロ用デジタル画像処理
株式会社ラカン
プロカラーグループ(兵庫県西宮市)
《取り組み背景》
取り組み背景》
職場環境
《抽出課題》
抽出課題》
デジタル入稿の図
情報共有
≪業務プロセスによる分析≫
プロテクからプロカラーラボへの技術サポー
トは、当初アナログ的な支援であったが、デジ
タル入稿やデザイン性の高いポートレートや
アルバムが高い評価を得て作業量が飛躍的
に伸びた。
作業量が増えることで、プロカラーグループ
が課題としているものは何か、業務プロセスか
ら現状分析を行った。
プロカラーグループの業務プロセス
デジタル入稿の売上推移
市場創造
社員教育
1.決定のための組織体制の決定
2.支援ツールの目的の明確化
3.支援に必要とされる要件の洗い出し
4.必要要件を満たすツールやソフト、ハード
の選定
5.導入における手順の確定
6.導入
7.導入後の評価
組織活性化
1.プロカラーラボとプロテクの両方のメンバーで
プロジェクト体制をとった。
2.課題である、技術者同士が円滑な情報交換
ができること、社員に事業活動結果をリアル
タイムに示すことの目的を明確化
3.必要な要件として、利便性、使い易さ、処理
速度、セキュリティ、コストを指標とする
4.システムはSkypeとし必要なツールを準備
5.プロテクの技術者とプロカラーラボの技術者
どうしの接続でテスト導入
6.全拠点への導入
7.実績をKPIとして今後測定
市場特化
《コーディネーター支援内容》
コーディネーター支援内容》
《改善手法・プロセス》
改善手法・プロセス》
地域資源
≪迅速性と正確性≫
業務プロセスを分析したところ、現状の課題として顧客の画像処理の繊細な要求事項に対して、プロテクとプ
ロカラーラボとの電話やマニュアル、PC画面だけでは迅速性に欠けたり意思疎通が図られにくくなりつつあるこ
と,現状を改善せずにおくと、大きなトラブルを起こす可能性があり、企業イメージの低下につながる可能性がわ
かった。
プロテクのプロカラーラボへの基本的な技術サポートにおいて電話やマニュアル、PC画面を使った支援は可
能であるが、日々の運用における応用的な技術的支援においては迅速性と正確性
迅速性と正確性が求められる。特に画像処
理やデザイン、カラー指定等における顧客からの繊細な要求
繊細な要求については、従来の方法では担当者通しの意思
疎通が不十分であったり、思い違い等による品質への悪影響が避けられない。
≪社内の情報共有≫
また事業規模が拡大するに伴って事業所が全国に分散し、経営方針や事業活動の結果を全社員に徹底する
のが困難になり、ベクトルを揃える事が困難になりつつあった。
《改善結果》
改善結果》
79
経営効率化
プロテクとプロテク営業所、プロカラーラボ本社、各営業所をSkypeでつなぎPC画面などを使って、
朝礼において当日の業務連絡や進捗の確認をはじめ、電話や書類では伝えにくい技術指導を画面
に「見える化」
「見える化」することで、迅速で正確な情報を伝えることができた。
特にプロテクとプロカラーラボの技術者同士のWEBテレビとPCを活用したインタラクティブな情報交
換は、的確で迅速な支援が円滑に行われ、業務プロセスの品質向上が図ることができた。
また、事業実績や結果を逐次見せることができ、目標への進捗がリアルタイムで把握することがで
き、迅速な対応が立てられるようになった。
《改善活動ドキュメント》
改善活動ドキュメント》
◆プロの撮影市場の変化
プロの撮影市場がアナログ(ネガフィルム)からデジタルへ変化し、従来のビジネスモ
デルでは市場ニーズに対応することが難しくなってきている。
アナログからデジタルへの市場環境の変化に対応するためには、設備への投資とともに
技術力やノウハウ、それらを実現させる社内の組織力や人材力等の知的資産が欠かせない。
◆プロカラーグループの取り組み
プロカラーグループはネガフィルム現像、ネガプリント発注などのいわゆるアナログ時
代に培った品質に対して、プロ向けの顧客に高い信頼を得ている。その信頼を基盤に、デ
ジタル化への投資を積極的に進め、顧客を支援するインターネットサービスの開発に取り
組んでいった。
それはインターネット入稿システムと斬新なデザインアルバムなどの新規商品開発等で
あり、その新しいシステムを円滑に運用するためには、工程管理の見直しや人材の育成が
求められた。
このビジネスモデルは市場に受け入れられ、飛躍的に実績を伸ばしてきたが、今後も継
続して成功させるには、プロカラーラボとプロテクの円滑で迅速な技術支援
円滑で迅速な技術支援、ノウハウや
伝承など見えない資産の共有化、
見えない資産の共有化、そして、全社員の意識改革をいかに図るか
全社員の意識改革をいかに図るかという基本的
でもっと重要な課題に取り組んだ。
◆プロカラーグループにとっての要件
情報共有ツールは様々なものが開発されているが、プロカラーグループの経営資源や情
報化成熟度などを検討し、プロテクとプロカラーラボの技術者通しが円滑に情報共有
技術者通しが円滑に情報共有でき
ること、経営方針や事業実績、進捗結果がリアルに示せる
リアルに示せることを必要要件として、利便性、
使い易さ、処理速度、セキュリティ、コスト等を比較検討した結果、Skypeに決定した。
朝礼に利用した情報交換(例)
80
プロカラーグループ
Skypeを用いた情報共有化システム
Skypeを用いた情報共有化システム
Skypeを用いた
情報共有化シス
テムの最低限の
費用
営業所
営業所
営業所
本社
PC・ソフト
大型ディスプレイ
WEBカメラ
スピーカー
マイク
営業所
営業所
◆初期費用
・ソフトウェア
無料
・ディスプレイ
液晶テレビ
・スピーカー
数千円
・マイク
数千円
必要に応じて
・WEBカメラ
数万円)
営業所
営業所
営業所
《代表者からのコメント》
代表者からのコメント》
プロテクの技術力を使い、プロカラーラボの新しいアルバム開発、技術
指導などの人的な交流、プロカラーラボの七五三・成人式などの繁忙期
の応援態勢などを確立しています。
Skype朝礼において全事業所の社員へ意思統一を行っています。例え
ば、会社の方向性やリアルタイムな現在の業績説明と打合せ。お客様よ
りインターネット入稿の用途に応じたご提案。「PLC ROSE」「プロネット」
「あるばむくん」「りさいずくん」のそれぞれの特徴を把握できたり、操作説
明できるように理解する機会を設けたり、また、現場で使用しているソフト
ウェアの説明と理解を深めることで誤った使い方を防ぎ、会社の目指す
目標にプロカラーグループ全体が一体となって取り組んでいます。
代表取締役
荒川 臣男
《支援者からのコメント》
支援者からのコメント》
プロカラーグループは、プロの写真家からのデータをネット入稿しデジタル処理を行い、
斬新なデザインアルバムなどの商品開発や、ネット入稿にまつわる様々なサービスを行っ
ている。
ネットワークシステム構築後、飛躍的に実績が向上しているが、これは顧客からの高い
評価と支持の証であり、「我が国が進めている「中小企業IT経営力大賞」にて、2年連続
認定企業と認められた。
プロカラーラボがデザイン性の高いアルバムやデジタル写真集を作成することができる
のも、技術的な支えてとなっているプロテクの存在があり、両社の技術者どうしが円滑な
技術交換ができることが成功の重要な要素になっている。
また、今回の全社の情報共有システムは、毎日の「業務の見える化」
「業務の見える化」によってリアルタ
イムな状況把握が行え、迅速な対策がとれるメリットがある。この仕組みは多くの企業に
参考になる。
(担当専門家 森下 勉)
81
82