H-23 無線通信の電波による位置推定 (和歌山高専知能機械工学科) ○古谷翔太郎,村山暢 キーワード:無線通信,電波強度,RSSI 値,位置推定 2.距離推定手法 電波強度𝑃𝑅 [mW]の理論式は以下である. 𝑃R = ( 𝜆 4𝜋𝑑 )2 𝐺𝑅 𝐺𝑇 𝑃𝑇 (1) ここで,λ[m]は電波の波長,d[m]は通信距離, 𝐺𝑅 ,𝐺𝑇 は受信アンテナ,送信アンテナの利得 である.また,XBee で取得することができる RSSI 値𝑄𝑅 [dBm]は以下となる. 𝑄𝑅 = −10 log10 𝑃𝑅 (2) 以上 2 式より,波長 λ[m]と送信電力𝑃𝑟 [mW] の値を代入すると通信距離 d[m]を推定する以 下の式が得られる. 𝑄𝑅 −30.046 ) 20 𝑑 = 10( (3) 以上を考慮して,後述の位置推定実験のため に長さ 80m の廊下で予備実験を行った結果が 図1である. RSSI値[dBm] 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 距離[m] 50 55 60 65 70 75 80 にばらつきが大きいことが分かる. これらの結果を踏まえ本研究では,予備実験 時の測定値のばらつきを標準偏差として記録 しておき,RSSI 値の平均と標準偏差の両方を 利用して位置推定を行うこととした. 3.位置推定実験 予備実験と同じ廊下長さ 80m の両端に送信 アンテナを,線分上に目標の受信アンテナを 配置し,位置推定の実験を 5m 間隔おきにそ れぞれ 10 回行った.その結果を次の図 2 に 示す. 推定による位置[m] 1.緒言 通信インフラや GPS の整備に伴い,屋外で の徘徊老人の検出や迷子探しなどは,比較的容 易になってきた.しかし,屋内での位置推定や 徘徊検知は未だ一般的ではない.一方, Bluetooth や Wi-Fi,XBee といった無線通信 規格が近年,様々な機器に標準装備されている. これらの無線の電波強度によって位置が推定 できれば新たに位置センサを設置する必要性 が少ないと考えられる. 本研究では,無線通信の電波強度を用いて位 置推定を目的とする.電波強度の測定によって, 複数の通信体間の距離を推定し,対象通信体の 位置を推定する.移動体の移動履歴を利用して 位置推定の精度を向上させる. 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 実際の位置[m] 図 2.位置推定実験結果 結果より,0m~25m および 55m~80m での 位置推定は精度よく行われている.30m~50m 間の位置推定が安定しないのは送信アンテナ からの距離が遠いことに加えて,40m 地点は 先述通り,電波伝播が他の地点と異なることが 原因であると考えられる.また,位置推定履歴 をプログラムの実行画面に表示させた. 4.考察 位置推定精度を向上させるため,さらに位 置推定履歴を利用することが考えられる.各 地点において RSSI 値が得られる条件付き確 率を予め求めておき,全時刻の推定位置から 求められる現時点の位置の確率と観測された RSSI 値から推定位置の事後確率を計算す る.これを利用し位置推定精度の向上を検討 する. 図 1.RSSI 値と距離の関係 結果より,多くの測定値が理論値(3)の近く にあることがわかる.さらに,距離が遠いほど お問い合わせ先 測定値のばらつきが大きいことがわかる.また, 氏名:村山暢 40m の地点には別の廊下が繋がっており,特 E-mail:[email protected] H-24 無人航空機の自律飛行による 農業用フィールドセンサ情報の取得 (鶴岡高専専攻科機械電気システム工学専攻 1,鶴岡高専創造工学科2) ○須貝優磨 1・石黒康平1・金帝演2・宍戸道明2 キーワード:農業用フィールドセンサ,無人航空機,自律飛行,センサ情報モニタリング 1.まえがき 近年、農業従事者の少子高齢化が進んでおり、 次世代への技術の継承が困難となっている。こ の解決策として、農業における作業や生産性の 向上のために圃場の温度や日射量等の環境情 報の取得が重要である。従来の環境情報取得方 法の例として Ad-hoc 通信型やフィールドサー バ型[1]がある。しかしながら、Ad-hoc 通信型 は通信が不安定になりやすく、フィールドサー バ型は消費電力が大きい等の課題がある。 そこで本稿では、上記の問題を解決するため に無人航空機(以下 UAV : Unmanned Aerial Vehicle)を用いた農業用フィールドセンサ情 報取得システムの提案し、自律飛行によるセン サ情報取得の安定性の評価を行う。 2.提案システム 提案システムのイメージを図 1 に示す。本シ ステムでは UAV に無線通信コーディネータ ーを搭載し、GPS の位置情報を利用した自律 飛行により圃場に設置したセンサの上を通過 してデータを取得する。その後 BaseStation に戻り、無線 LAN 等によりサーバにデータを 送信する。 3.性能評価 実験方法を図 2 に示す。実験場所は鶴岡高専 グラウンドとし、A~D の各センサ(TWE-Lite DIP) の そ れ ぞ れ の 上 を 通 過 し 、 そ の 後 HomePoint に戻るように UAV (Phantom3)を 高さ 6m、速度 2.5m/s で自律飛行させ、これ を 5 回行う。同時に、UAV にコーディネータ ー(ToCoStick)を搭載し、通信間隔 1 秒で各 センサからのデータ取得を行う。 性能評価は、コーディネーターと各センサと の通信品質(LQI : Link Quality Indication) とデータ取得回数を評価項目として行う。 図 3 に UAV の自律飛行時における各センサ とコーディネーターとの平均 LQI を示す。評 価は、使用装置の仕様より、LQI が 50 以上で 安定した通信であるとする。各センサの LQI が 50 以上の通信回数は A~D でそれぞれ 13 回、14 回、14 回、19 回と十分な回数であり、 いずれも安定したデータ取得ができていると 判断できる。この結果より、本システムの実際 の圃場での運用可能性が得られた。 図 1 提案システムのイメージ 図 2 実験方法 図 3 コーディネーターと各センサとの LQI 4.まとめ 本稿では安定してフィールドセンサ情報を 取得するために、UAV の自律飛行によるセン サ情報の取得を行った。実験結果から、本シス テムの実際の圃場での実現可能性が得られた。 参考文献 [1] 深津時広,”農業分野におけるセンサネット ワーク技術の利用の課題”,電子情報通信学 会誌, Vol.97, No.8, pp.688-694, Aug. 2014. お問い合わせ先 氏名:須貝優磨 E-mail:[email protected] H-25 無線通信環境構築のための群ロボットの被覆制御 (和歌山高専知能機械工学科) ○中出裕也・村山暢 キーワード:群ロボット,被覆制御, 1.緒言 災害地,海上,山間部などの通信インフラが ない広大な環境では,携帯電話などの通信機器 や遠隔操作ロボットを使用するのが難しい.こ のような環境に対して,無線通信機能を持った ロボットが移動することによって通信インフ ラが確保され,対象エリアで通信機器が利用で きるようになると考えられる. 群ロボットのセンサ範囲によって対象エリ アを覆う,被覆制御という手法が提案されてお り,本研究の目的に対して有用であると考えら れる.しかし,これらの先行研究手法はセンサ の感知範囲で被覆することを目的としており, ロボットに搭載された通信機器の通信範囲を 考慮するものではない. 以上の背景より本研究では,被覆制御の先行 研究手法を拡張し,通信インフラが確保されな いエリアにアクセスポイントを持った群ロボ ットを配置する自律移動手法を提案する. 2.従来手法 本研究における被覆制御は,空間を各ロボッ トに最も近い点からなる領域(ボロノイ領域 Vi )に分割した時に,それぞれの領域が均等 になる状態を目指す.ロボット i が自身のロノ イ領域 Vi のボロノイ重心 gi に向かって移動す ることで,自律分散的に目標状態が達成される. 計算機シミュレーションによって個々のロ ボットに上記の手法で求められるボロノイ重 心 gi への移動を逐次的に行わせた結果,図 1 の初期状態から図 2 の状態へと収束していく ことを確認した.また,実際のロボットでも実 験を行い同様の結果を得ることができた. しかし,この手法では図 3 に示すような各ロ ボットの通信可能範囲を考慮しておらず,ロボ ット間のネットワークが非連結になる恐れが ある.次節ではこの問題点を解決する自律分散 制御手法を説明する. 3.通信範囲を考慮した被覆制御 本節では,各ロボットが通信可能距離を超え て移動しないよう,ボロノイ領域よりも範囲を 狭めた領域を利用する手法を提案する.具体的 には,通信可能半径の 1/2 の半径を持つロボッ ト i の位置 pi を中心とした円板 Di とボロノ イ領域 Vi の共通集合を求め,その共通集合の 図 1. 初期位置 図 2. 従来手法 図 4. 提案手法 図 3. 従来手法 (通信範囲描画) 図 5. 提案手法 (通信範囲描画) 重心へロボットを移動させる手法を考案した. この手法では,近傍ロボットの通信可能範囲か ら離れることなく互いに通信ができる状態を 維持したまま被覆制御を行うことができる. 計算機シミュレーションによって,各ロボッ トが自律分散的にロボット間の距離を通信可 能範囲内に保ちつつ被覆状態を目指すことを 確認した(図 4).また,通信可能範囲が被覆対 象領域に対して十分に大きい場合は,先行研究 の被覆制御と同様の結果を得ることを確認し た(図 5). 4.結言 従来手法の被覆制御に条件として通信可能 範囲を付け加えることで,互いの通信を保った ままエリアを覆うことができた. しかし,提案手法のシミュレーション結果の 状態(図 5)より,被覆範囲を拡大できる状態が 存在するように思われる.またロボットが途中 で通信切れや故障を伴った時,通信の連結が維 持できなくなる可能性が考えられる.以上 2 点の課題を解決する手法を考えることが今後 の課題となる. お問い合わせ先 氏名:村山暢 E-mail:[email protected] H-26 通信連結性を維持した 群ロボットのフォーメーション制御 (和歌山高専知能機械工学科) ○宮本和典・村山暢 キーワード:フォーメーション制御,通信距離,衝突回避 1.緒言 フォーメーションを形成した群ロボットを 移動させる場合,ロボット同士の衝突や障害物 への衝突を避けて目標地点に到着する機能が 必要とされる為,自律回避手法が提案されてい る[1].一方,ロボット間の情報交換には電波 による無線通信の利用が想定される.無線通信 には通信可能な距離に上限があり,通信を継続 出来る様にロボット間距離を維持する必要が ある. 以上のことから,本研究では通信距離とフォ ーメーションを維持した上で,障害物を回避し つつ目標地点に到達する制御手法を提案する. 2.制御手法 ・フォーメーション形成 ロボット𝑖にリーダーロボットの位置を基準 とした配置座標を追従させる事でフォーメー ションを形成する.フォーメーション制御速度 は配置座標𝑥𝐹(𝑡)と現在のロボット𝑖の座標𝑥𝑖 (𝑡) の差で与える. 𝒗𝐹𝑖 (𝑡) = 𝑘𝐹 (𝒙𝐹 (𝑡) − 𝒙𝑖 (𝑡)) ・障害物の回避 ロボット𝑖は半径𝑟𝑖 の円形ロボットと仮定し, 周囲の障害物を感知できるセンサを持つロボ ット𝑖を考える.障害物がセンサの範囲𝑑𝑎 内に 入った時,障害物から離れる方向への速度を与 える.障害物に近づく程,障害物から離れる方 向への速度が大きくなる様なポテンシャルを 設計し,その勾配を回避速度とする. 𝜕𝑈𝑖𝑜 (𝑡) −𝑘𝑜 𝒅𝑖𝑙 (𝑡) = ×( ) 𝑘 +1 𝑜 ‖𝒅𝑖𝑙 (𝑡)‖ 𝜕𝒅𝑖𝑙 (𝑡) ‖𝒅𝑖𝑙 (𝑡)‖ − 𝑟𝑖 ) ( 𝑑𝑎 − 𝑟𝑖 ・通信連結性の維持 ロボット𝑖と𝑗間の距離‖𝒅𝑖𝑗 ‖が任意の距離𝒅𝑐 を越えると,通信連結性を維持する為の速度を 与える.ロボット𝑖と𝑗の距離が通信距離の上限 𝑑𝑚𝑎𝑥 に近づく程,通信相手へ向かう方向への 速度が大きくなる様なポテンシャルを設計し, その勾配を通信維持速度とする. 𝒅𝑖𝑗 (𝑡) 𝜕𝑈𝑖 (𝑡) −𝑘𝑖 = ) 𝑘𝑖 +1 × ( 𝜕𝒅𝑖𝑗 (𝑡) ‖𝒅𝑖𝑗 (𝑡)‖ 𝑑𝑚𝑎𝑥 − ‖𝒅𝑖𝑗 (𝑡)‖ ( ) 𝑑𝑚𝑎𝑥 − 𝑑𝑐 以上のフォーメーション制御速度,回避速度, 通信維持速度の総和をロボット𝑖の目標速度と 設定する. 𝒗𝑑𝑖 (𝑡) = 𝒗𝐹𝑖 (𝑡) + ∑ 𝑗∈𝑁𝑖 𝜕𝑈𝑖 (𝑡) 𝜕𝑈𝑖𝑜 (𝑡) +∑ 𝜕𝒅𝑖𝑗 (𝑡) 𝜕𝒅𝑖𝑙 (𝑡) 𝑜 𝑙∈𝑁𝑖 急激な速度変化が起こらないように,実際には ロボット𝑖に次の速度制御入力𝒖𝑖 (𝑡)を与える. 𝒖𝑖 (𝑡) = 𝒗𝑖 (𝑡) + ∆𝑡 ∙ 𝑘𝑣 ∙ {𝒗𝑑𝑖 (𝑡) − 𝒗𝑖 (𝑡)} 3.実験 図 1 の様にロボットを3台配置し,障害物を 回避させながら移動する実験を行った.その結 果,障害物に衝突することなく,目標地点にた どり着いた.さらに移動している間,通信が可 能な距離を維持することができた.(図 2) 540 (max) ロボット間の距離(最大値) 130 障害物との距離(最小値) 300 (min) 0 時間[s](制御周期:0.15s) 図 1 実験の様子 図 2 ロボットからの距離 4.考察 設計パラメータ𝑘𝐹 ,𝑘𝑜 ,𝑘𝑖 ,𝑘𝑣 の数値によっ て,ポテンシャルが大きい場合は衝突しないが 動きが大きく振動し,小さい場合は振動が小さ くなるが,障害物への衝突や通信できない距離 になる可能性がある.そのため,より適した設 計パラメータの数値を見つける必要がある. 5.結言 通信距離とフォーメーションを維持した上 で,障害物を回避しつつ目標地点に到達する制 御手法を提案した.実験により,提案制御手法 が制御目標を達成していることを確認できた. 【参考文献】 [1] 宮崎 達也,鷹羽 浄嗣,“障害物回避を考 慮した移動ロボット群のフォーメーショ ン制御”,システム制御情報学会論文誌, Vol. 28,No. 2,pp. 50-57,2014. お問い合わせ先 氏名:村山暢 E-mail:[email protected] H-27 3D センサーを用いた動体の認識と追跡技法の 開発に関する研究 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○奥村 亮祐 ・ 孫寧平 キーワード:3D センサー,LeapMotion,動体認識 1.まえがき コンピュータを用いて動体の認識・追跡を行 う技術の現状は,2D の画像情報に対してプロ グラム処理を行うという方法が一般的である. しかし近年は Kinect などが開発され,3D の 情報を扱う技術の必要性が年々高まっている. そこで手の情報取得に特化した 3D センサー である LeapMotion を利用して手の動きをジ ェスチャーとして認識・追跡するためのアルゴ リズムの開発を行い,それを通して 3D の情 報から動体の認識と追跡を行う方法の研究を 行った. 本研究では,まず「LeapMotion」による手 の動きデータを取得する方法について調査を 行い,手の各関節の位置,掌の回転角,手の重 心などの情報を取得する事が出来た.その後, 取得した3D 情報を図1のように視覚化し,こ れらの情報を一旦保存,比較することでジェ スチャーの認識を行う. 図 1 取得した情報の可視化 2.ポーズの認識 ある時点の手の状態(以下,ポーズとする) を保存し,それを現在の手の情報と比較して ポーズの認識を行う.比較の方法としては二 つの状態における指先と指の各関節の座標群 を空間としてユークリッド距離を求め,その 値が予め設定した閾値よりも小さい場合はそ のポーズを取っていると判定する.ユークリ ッド距離 d は(1)式によって求めることが出来 る. (1) なお,x,y にはそれぞれ同じ箇所の同じ座 標系の値を代入するものとする.この比較を一 定のタイミングだけでなく,複数のタイミング にまたがって同時に行うということによって ポーズの変化,つまりジェスチャーの認識が可 能になると考えられる. 前述では座標の比較だけを行ってポーズの 認識を行っていたが,実際に読み取る手の動 きには手の傾き,手全体の位置,特定の指の 形に大きな特徴を持った物がある.そういっ たものをより確実に認識するためには,より 多くの情報を判定に用いる必要がある.その 準備として LeapMotion から直接取得できる掌 の回転角,手の重心といった情報に加え,2 つの時刻における座標から算出できる速度, 手の重心を原点とした場合の指先・関節の座 標といった情報を算出し,それらをポーズ, ジェスチャーの判定材料として使えるように している. 3.今後の課題 ジェスチャーの認識について複数のポーズ を同時に判定することでジェスチャーの判定 を行うとしたが,このジェスチャーを行う速さ が時と場合によって様々であり,同じ動きでも 速さが違えば先程提示した方法では認識が出 来ないという問題がある.またポーズについて も LeapMotion に対する手の角度は誤差が出 やすく,掌の回転角を全て 0 に補正した各点の 座標の取得を行えるようにする必要がある. お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] H-28 囲碁棋譜自動作成システムの構築 (米子高専電気情報工学科) ○中山健太・浅倉邦彦 キーワード:囲碁棋譜,Processing,画像処理,リアルタイム 1.緒言 一般の囲碁の対局では記録係がいないため, 棋譜を残すには対局者自身が対局中に棋譜を 記録する必要があるが,自身および相手の対局 への集中を削ぐので好ましくない.これまでに 囲碁棋譜自動作成システムが構築された例 [1] があるが,着手の検知が手動という不便性があ る. そこで本研究では統合開発環境 Processing を用い,自動的に着手の検知・着手位置の推 定・碁石の判別をリアルタイムで行う囲碁棋譜 自動作成システムを構築する. 3.結言 本研究では,統合開発環境 Processing を用 い,リアルタイムで囲碁棋譜自動作成を行う システムを構築した.現段階では,盤上座標 (a) 着手前 (b) 着手後 図 2 着手前後のキャプチャ画像 1 黒からの距離 2.研究内容 図 1 に本システムのイメージ図を示す.図中 の Web カメラが 0.2 秒間隔で画像をキャプチャ し,そのキャプチャ画像を監視し続けることで, 定常状態から次の定常状態への移行を自動的 に検知できる.それを着手とみなし,着手位置 の推定処理へ移る. 図 2 に着手前後のキャプチャ画像を示す.ま ず,2 枚の画像について同一ピクセル座標の RGB 値の差分をとり,それがしきい値を超えた ピクセルを抽出する.次に抽出された領域を近 似円で表現し,その円内部に含まれる唯一の盤 上座標を特定することで着手位置を推定でき る. 続いて碁石の識別方法について述べる.ここ では,碁石の中心座標から半径 R の円内部の各 ピクセルカラーの黒からのユークリッド距離 の平均を黒白間距離で規格化した値により,碁 石の黒白識別を行うこととする.検証結果を図 3 に示す.黒石と白石,それぞれ盤上の 3 か所 について検証を行った.碁石の半径である 11[px]以下では,黒石,白石ともにそれぞれ 0.23 以下,0.90 以上の値を安定的に示すこと から,黒白判定のしきい値は単純に 0.5 とし, また半径 R は碁石半径の半分程度とすれば十 分正しい識別が行えることを確認した. 以上の手順により棋譜情報が取得でき,それ をもとに棋譜の自動作成を行うが,自動作成さ れた棋譜は当日示す. 図 1 システムのイメージ図 0.8 白石 0.6 0.4 0.2 黒石 碁石の半径 0 0 5 10 15 碁石の中心座標からの半径R[px] 20 図 3 碁盤画像の碁石の黒からの距離 と画像座標の対応付けが手動であり,自動化が 今後の課題である. 文 献 [1] 芝浩二郎, 古屋保, 西省吾, 森邦彦,画像処理によ る囲碁棋譜自動生成システム,電気学会論文誌 C, vol.126, no.6, pp.980-988, 2006. お問い合わせ先 氏名:浅倉邦彦 E-mail:[email protected] H-29 輝度解析に基づいたデッサン風絵描き技法の開発 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○片岡千知 ・ 孫寧平 キーワード:画像処理,輝度解析,デッサン 1. はじめに 広告物などのデザイン物にデザイナの趣向 を凝らすには手間と時間がかかる.そのため, 今日ではデザインに関する画像処理のツール やアプリケーションが多く存在している.この 中で,絵画の基本となる「デッサン」に着目し たところ,再現性の高いツールが少ないことが 分かった.そこで,本研究では輝度解析を用い て「デッサン」をより簡単に再現し,新しい画 像処理の画風として提案することを目的とす る. 2. アルゴリズムの概要 デッサンとは物体の形体,明暗などで平面に 描画する美術の作品,またはその技法を指す. 主にペンや鉛筆,木炭などで描かれ,モノクロ が基本であり,陰影を濃淡で表すため,二次元 の画像を三次元的に見せる効果がある 本研究では,画像をデッサン風に仕上げるた めに,輝度解析を基づいたアルゴリズムを考案 した. 明度の赤,緑,青成分にそれぞれ重み付け をしてもとめた輝度をいくつかのグループに 分ける.この時,等分割して得たグループで は人の目に見える色の変化量が等しくならな い.よって,以下のような式を用いる. アルゴリズムとしては,まず,画像をモノクロに 加工し,輝度のグループ化を行う.次に,ピ クセルごとに輝度を取り出し,グループに当 てはめていく.その後,同じグループの点ま で線を描画する.これを線の角度とグループ の範囲を変えて繰り返すことにより,線を重 ね鉛筆の流れを再現する. 3.アルゴリズムの検証 現段階では,輝度解析を用いてグループ化を 行い,そのグループに当てはめて線を引くこ とでデッサンを表現している.前述のアルゴ リズムの検証を行った.図2の元画像を考案 したアルゴリズムで処理した結果を図3に示 す.細かいところを見ると全てが線で描かれ ていることが確認できた. 今後はより人の描くデッサンに近づける方法を 模索し,開発と検証などを行う. 図2 元画像 ここで, は表現する最低の輝度を表し, は グループの数を指す. の場合をグラフに 表したものが図 1 となる. 図3 実行結果 図1 輝度解析を表したグラフ お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] H-30 球技フォーメーションシミュレータにおける データ入力手法の改善 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1, 仙台高専機械システム工学科 2) ○菊地 凛 1・北島 宏之 2 キーワード:フォーメーションシミュレータ,Kinect,データ入力 1. 背景 球技における選手のフォーメーションは一般 に矢印を用いた図によって表現されるが,選手の 動きの直感的理解が困難であることが多く,フォ ーメーションの検索や管理も容易とは言えない. そのため,所属する研究室の先行研究において 球技フォーメーションシミュレータが開発され てきた.しかし,フォーメーションの入力作業が 容易ではないという問題点があったことから,本 研究では外部デバイスとして Kinect を用いたシ ミュレータに対するデータ入力システムを提案 し,本報告では選手のすれ違い時におけるデータ 入力手法の改善について検討する. 2. Kinect によるデータ入力 これまでの研究において,Kinect の骨格追跡 機能を用いて選手の位置情報を取得するプログ ラムの実装を進めている.ここで,2 人の選手が すれ違った際に,背後側を通過する選手の骨格情 報を取得できなくなる問題が考えられる.あるい は,選手が一時的に動きを止めることで Kinect は背後側の選手の骨格情報を再認識し位置情報 を取得することができるが,再認識した選手は別 の選手として認識されることが考えられる.また, 位置情報も別の選手として取得される可能性が ある.今回はこの問題を確認するために,複数の すれ違い状況についてデータ取得実験を行った. 3. 実験 実験ではすれ違いの際に被験者(選手)の前後 を入れ替えた 8 パターンについて,それぞれ 5 回ずつ情報を取得し確認を行った.図 1 はそのう ちの一つであり,縦軸が Kinect から見た奥行き 方向,横軸が水平方向を表している.情報の取得 方法に際して,すれ違い時に Kinect が骨格情報 を取得できなくなった時点で被験者に一時停止 を指示し,Kinect がもう一度骨格を認識した時 点で移動を支持した. 図 2 に実験で取得した被験者の位置情報を示 す.実験の結果より,Kinect が骨格情報を再認 識した場合は,新たな別の選手として認識される ことが分かった.また,取得した位置情報につい ても新たな被験者の位置情報として取得される ことが確認できた.従って,このような位置情報 を同一選手であると判断するためのアルゴリズ ムを考案する必要がある.この際,すれ違い以前 の位置情報とすれ違い以降の選手の位置情報を 関連付けるためには,すれ違い前の位置情報から すれ違い後の位置を予測する必要がある. 図 1 選手のすれ違い移動パターン 図 2 取得した被験者の位置情報 他方,すれ違いが起きた前後の位置情報につい ては,誤差の大きい情報もあることが確認できた. 従って,選手の位置情報を正確に予測するために は,位置情報の中から誤差の大きいデータを取り 除く必要がある. 4. まとめ 本報告では実験の結果から選手のすれ違い時 に取得される位置情報とその問題点について確 認した.現在,問題解決のためのアルゴリズムの 実装を進めており.結果については発表にて報告 できる予定である. お問い合わせ先 氏名:北島宏之 E-mail:[email protected] H-31 Ocblock を用いた voxelization の実用化に関する研究 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○酒井雄野 ・ 孫寧平 キーワード:ボクセル化,3DCG,3D プリンタ 1.まえがき 3.Ocblock デザインの改良 昨今,新たなモデリング手法として,小 前述の方法を用いてモデルのボクセル化 さな立方体で内部を満たし,表現する を施し, 3D プリンタで検証を行こうとした. voxelization(ボクセル化)という手法の研 しかし,図2のように 2 次再帰以上の再帰 究が進んでいる.当研究室では,現実世界 的描画を行うと,角と角が重なってしまい, のように細胞の組み合わせによってモデル 3D プリンタで印刷することはできないとい を描画する方法を考え,その細胞として再 った問題が発生した. 帰的な規則に従って自己相似形状に成長し ていくことが可能なフラクタルモデルを用 いる研究を以前から行っている.しかし, 先行研究ではモデリングを行うだけに留ま っており,実用化には至っていない.そこ で本研究ではこのモデリング手法を実用化 する第一歩として 3D プリンタで印刷でき る形式にする手法を開発,検証する. 2.Ocblock の概要 本研究では,2次元シェルピンスキー曲 線を3次元へ展開させるとの発想で,図1 に示すようなボクセルパターンを提案し た.この2つの基本図形は再帰構造を用い た立体が八方向へ拡張できるため, Ocblock と命名した. (a) Ocblock1 (b) Ocblockc 図 1 基本ボクセルパターン 中央に位置する Ocblockc の描画後に再 帰を用いて Ocblock1 を呼び出す.この際描 画座標の平行移動を行う.その後,平行移 動した Ocblock1 と中央の Ocblockc の角の 面(三角形)をマッチさせるため,平行移 動した Ocblock1 の各角を軸にして,描画座 標を 60°回転させてオブジェクトを呼び 出す.この処理を 8 つの角全てに行う.そ して再びこのパターンが再帰処理により フラクタルな性質を保持したまま発展し ていく. Ocblock を用いてモデルのボクセル化を 行った結果,内部充填ができた.また,ボ クセルの回転がもたらした斜面での光の 反射効果は他の手法と比べてよかった. 図 2 改良前の Ocblock そのため,角の長さや ocblockc の大きさ を吟味し直し,Ocblock の基本パターンを 構成し直す必要がある.角の長さなどの各 構成要素の大きさを変えた Ocblock の基本 パターンを複数個用意し,内部充填率など の要素から検証した.Ocblock1 では角の側 面が正方形でないとの原因を突き止めた. 角の側面を正方形と過程するならば,モデ ルが破綻しない最大の角の側面の一辺の 長さと Ocblockc の側面の長さの比率は 8:5 であることが分かった.図3のよう なモデルの破綻がない基本パターンを構 成することができた.これを3D プリンタ で印刷できる形式に変換し,実際に 3D プ リンタにて検証を行い,今後モデルへの展 開を図る. 図3 改良後の Ocblock お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] I-01 音形補正支援ディジタルチューニングシステムに おける音形識別方法の考察 (仙台高専専攻科生産システム工学専攻) ○森田 望夢 本郷 哲 キーワード:音形,アタック,エンベロープ,音圧レベル 1.緒言 楽器音の評価には,ピッチが正確であること はもちろん,音形や音色といった評価指標も重 要となる.本研究では,楽器初学者が理解する ことの難しい『音形』に着目し,チューニング と同時に音形を識別して提示することのでき るディジタルチューニングシステムの提案を 目的とする. 本報告では,音の立ち上がり時間による音形 識別方法の提案とその検討について述べる.ま た,トランペットとトロンボーンの音の比較か ら,それぞれどのような特徴が見出されるか考 察した結果を述べる. 2.音形とは 吹奏楽において,音形は音を特徴付ける重要 な指標であり,音の立ち上がり部分はアタック, 音の継続時間はコア,音の終わりの処理はリリ ースと呼ばれる.中でも,アタックの鳴らし方 によって基本的な形,アタックの弱い形,アタ ックの強い形の 3 種類に大別され,同じ高さの 音であっても,それぞれ大きく印象が異なる. 3.音の立ち上がり時間による音形識別 音を『形』で表現する音形識別方法として, 波形の形を表すエンベロープの利用が有効で はないかと考え,これを用いて音の立ち上がり 時間から音形を識別する方法を提案する. 音 形の評価には,振幅データを人間の感覚量に近 い音圧レベルに対数化したものを用いた. 音圧レベル波形のエンベロープの導出には, 音圧レベルデータを FFT し,あるカットオフ 周波数までの周波数データだけを残して, IFFT する手法(周波数領域の LPF)を用いた. 2.で述べた 3 種類の音形について,B♭4, F4,B♭3 の音を,音形を区別して演奏できる トランペット上級者により録音した.次に,録 音して得られたオーディオデータの音圧レベ ルを求め,上述した方法でエンベロープを導出 し,音圧レベルの最低値とした−50dB から−20dB に達する,即ち30dB 増加するまでの時 間を測定した. 以上の過程で得られた波形と立ち上がり時 間の測定結果をそれぞれ図 1 と表 1 に示す. Table 1 音の立ち上がり時間測定結果 音 B♭4 F4 B♭3 基本形 0.026 0.032 0.029 立ち上がり時間[s] アタック 弱い 0.102 0.110 0.101 音形ごとに値を比較すると,アタックの弱い 音の立ち上がり時間がどのデータについても 0.1s 以上要していることから,トランペットの アタックの弱い音形については提案した方法 で識別が可能であると分かった. 4.異なる楽器音における音形の比較 3.では,トランペットの音源を用いて提案 した音形識別方法の検討を行ったが,トランペ ット以外の楽器についてはこの音形識別方法 が適さない可能性が考えられる.そこで,デー タ[1]に収録されているトランペット・コルネ ットとトロンボーンの音源を 3 種類の音形に 分別し,音圧レベル波形の形を比較した. その結果,トロンボーンの音形はトランペッ ト・コルネットのものに比べて立ち上がり時間 が遅い(時定数が大きい)ことが分かった.さ らに,トランペット・コルネットの音源のうち アタックの強い音は,アタックで最大の音圧レ ベルに達し,その後一定の割合で指数減衰する 傾向があることが分かった. 5.考察とまとめ トランペットのアタックの弱い音について は,提案した方法で識別が可能であった.トロ ンボーンの音の立ち上がり時間はトランペッ トに比べて遅いことが分かり,音域によって時 定数を変えることで効果的な音形識別ができ る可能性がある. また,トロンボーンのアタックの強い音形に ついては比較を行うことができなかったので, 今後は実際に録音して音形の比較を行いたい と考えている. 6.参考文献 [1] RWC 研究用音楽データベース:楽器音 お問い合わせ先 氏名: 本郷 哲 E-mail:[email protected] Fig. 1 音圧レベル波形とエンベロープ アタック 強い 0.014 0.011 0.017 I-02 音響ノイズ除去を用いた安全運転支援システムの検討 (鶴岡高専専攻科機械電気システム工学専攻 1,創造工学科 2) ○樋口哲也 1・武市義弘 2・渡部誠二 2 キーワード:音響,信号処理,安全運転支援,ANC 1.はじめに 近年、自動車に対して多機能デバイスや自動 運転システムなどの搭載や開発が進められて いる。このため、車載 OS や先進安全自動車 (ASV : Advance Safety System)の機能搭載な どが検討されている。特に、ASV ではプリクラ ッシュセーフティシステムやレーンキープア シスト、ACC(Adaptive Cruise Control)などが 実用化されている。これらは、カメラやレーダ の搭載によって運転手の誤操作や低覚醒状態 の防止、運転負担や事故被害の軽減などの運転 支援を行うシステムである。そこで本研究では、 車載マイクから取得した音源などに対する音 響ノイズ除去によって運転支援を行うシステ ムを検討する。 2.測定条件 録音は、車室内中央に三脚によって固定した 小野測器社製高機能型騒音計(LA-5560)を用い た。測定車両は、ハイブリット車としてトヨタ 社製プリウス(TA-H76W)、ガソリン車として三 菱自動車製パジェロイオ(NHW11)を用いた。測 定結果解析とシミュレーションは、National Instruments 社製 LabVIEW2013 などを用いる。 音 響 ノ イ ズ 除 去 は 、 ANC(Adaptive Noise Cancellation)を用いたシミュレーションとす る。シミュレーション条件として、ガソリン車 とハイブリッド車の走行時車室内環境音に正 弦波などを印加した信号に対して音響ノイズ 除去を行う。 3.処理結果と考察 ガソリン車とハイブリッド車の走行音に対 して正弦波 100[Hz]を印加した信号の音響ノ イズ除去結果を図 1 と図 2 に示す。図 1 より、 ガソリン車では走行時に発生する 25[Hz]周辺 のピークと 100[Hz]以下の低周波成分が低減 されている。このピークは、ガソリンエンジン による回転音などの雑音成分であると考えら れる。図 2 より、ハイブリッド車では走行時に 発生する 100[Hz]以下の周波成分によって処 理前の印加正弦波成分がガソリン車と比較し て不明瞭である。また、処理後では 250[Hz]か ら 3000[Hz]のパワースペクトルの減少が確認 された。これらの結果より、ガソリン車および ハイブリッド車の走行時に発生するロードノ 図 1. ガソリン車における処理結果 図 2. ハイブリット車における処理結果 イズなどの車室内騒音の差異とノイズ低減を 確認した。このため、走行時に発生する車室内 騒音の低減によってロードノイズなどの雑音 に印加された音情報の明瞭化が可能であると 考えられる。 4.まとめ 本研究では、ASV などの運転支援に利用可能 な音情報取得の検討を行った。ガソリン車とハ イブリット車の車室内騒音は、低周波成分に差 異を確認した。また、ANC の適応によって自動 車走行音などの低周波成分の低減を確認した。 今後の課題として、自動車へのシステム搭載や 非定常雑音を含むデータなどのオンライン処 理の検討などが挙げられる。 お問い合わせ先 氏名:武市義弘 E-mail:[email protected] I-03 ヘッドフォンの周波数特性による聴き疲れへの影響 (仙台高専電気システム工学科) ○相澤夕希・矢入聡 キーワード:ヘッドフォン,聴き疲れ,周波数特性,イコライジング 1.研究背景 イヤホンやヘッドフォンで長時間音楽を聴 くと、耳鳴りや耳に圧迫感が起こるなどして聞 き疲れを実感することがある。この聞き疲れの 原因は、音の上げすぎ、高すぎる音を聴く、な どが挙げられるが、これは、最近増加している イヤホン・ヘッドフォン難聴の原因の「大きな 音を聴く」 「長い時間音を聴く」 「周波数が高い 音を聴く」にも当てはまっており、聴き疲れに ついて研究を行う事は、イヤホン・ヘッドフォ ン難聴の改善にもつながっていくのではない かと考えた。 2. 研究目的 本研究では、ヘッドフォンから耳に与える影 響を減らすために、聴き疲れで考えられる 3 つの原因のうち、周波数に着目した。ヘッドフ ォンがそれぞれ違う周波数特性を持つことに 着目し、7 つのヘッドフォンの周波数特性を調 べた。その結果ヘッドフォンの左右の周波数特 性の異なるものがあり、7 つのうちで最も聴き 疲れしやすいと感じたものと一致したため周 波数特性の違いが聴き疲れを起こしやすくし ているのではないかと考え、このことが原因と いえるかどうか実験を行ったのでそれを報告 する。 3. 実験方法 実験は被験者 10 人(19~21 歳)を対象とし、 実験場所は研究室内の段ボール製防音室の中 で行った。音源の出力は Mac から USB オーディ オインターフェース(CREATIVE Sound BLASTER SB1240)を通して行い、音源を用意し、イコラ イジングをかけて周波数特性を左右均等にし たものと何もしていないものに分けて、普段の 音楽聴取についてアンケートに答えさせてか ら音楽の聴取を行う。音源はポップとロックと クラシックとエレクトロの 4 つのジャンルか ら 4 曲、1 回約 16 分を聴かせた。音圧レベル は平均で 58.73[dB]で、使用するヘッドフォン は MONSTER Beats By Dr.Dre である。2 回の音 楽聴取の間に 20 分間休憩を行う。音質は MP3 形式の 320kbps で揃えている。実験中は何をし ていてもいいが 2 回の聴取で同じ事をする事 を条件とする。評価方法は、疲労感 VAS 検査と イコライジングをかけていない音源(A 音源と する)とかけている音源(B 音源とする)を比較 した一対比較法を用いて行った。疲労感 VAS 検査は、直線を用いて自分の感覚で疲れを評価 する方法で、音楽を聴取する前後で行い、計 4 回疲労感の評価を行う。一対比較は音楽聴取が 全て終了したあとに行う。項目は「不快感を感 じたか」 「うるささを感じたか」 「どちらが好み の音か」 「違和感を感じるか」 「聴きやすさはど うか」の 5 つで答えさせた。この評価は、シェ ッフェの一対比較法を利用しており、本実験で は、5 段階評価で A 音源と B 音源の相対評価で 行っている。項目は「強く感じた」「やや感じ た」「どちらでもない」で評価を行っている。 4. 実験結果 聴取前後で VAS 差分値を取り(図 1)、t 検定 を行ったところ、イコライジングの有無による 有意差はないという結果が出た。これより、ヘ ッドフォンの左右の周波数特性の違いによっ て疲労度に差はないという結果が出た。比較評 価については、A 音源側の「強く感じた」「や や感じた」をそれぞれ-2,-1 点とし、B 音源側 の「強く感じた」 「やや感じた」をそれぞれ 2,1 点として集計を行った。「どちらでもない」は 0 点としている。項目ごとの平均値を求めた結 果、全ての項目が-1,および 1 以下となり、誤 差の範囲と言い切れなくない値となった。だが、 5 つの項目の中で最も大きな値を出したのが 「不快感を感じたか」「違和感を感じるか」の 2 つで、この 2 項目は A 寄りの値が得られた。 また、「聴きやすさ」、 「好み」は B 寄りの値が 得られた。これにより、イコライジングの有無 は疲労度には違いがあらわれないが、音楽とし て聴きやすさ好まれやすさは B 音源の方が近 いことがわかる。このことから、左右の周波数 特性を均等にす ると均等にして いない音源より も、多少聴きや すさが改善され るといえるとい うことが分かっ た。 図1:算出したイコライジング有の時と 無の時の VAS 差分値 お問い合わせ先 氏名:相澤 夕希 E-mail:[email protected] I-04 ANC を用いた住宅内における雑音除去の検討 (鶴岡高専専攻科 生産システム工学専攻 1,創造工学科 2) ○澤郁恵 1・武市義弘 2・渡部誠二 2 キーワード:音響,信号処理,住宅,ANC 1.はじめに 近年、騒音に関する公害苦情件数が増加して いる。これに伴い、騒音による健康被害が多発 している。主な騒音源として、自動車や鉄道、 飛行機、建築現場などが挙げられる。騒音の対 策として、空気伝播音を防ぐための壁の増強や 固体伝播音を防ぐための家具の固定などがあ る。しかし、低周波帯は空気や物体による音波 の減衰度が低いために防音・遮音対策が困難で ある。そこで本研究では、低周波帯に有効な ANC(Active Noise Control)を用いて住宅内に おける低周波帯の騒音低減の検討を行う。 2.測定条件 本研究では、駅周辺の道路上および周辺住宅 の屋内における鉄道車両の走行音取得を行っ た。駅周辺の道路上における測定は、小野測器 社製高機能型騒音計 LA-5560 を用いて晴天の 夕方に行った。また、屋内における測定は SONY 社製 IC レコーダーICD-SX1000 を用いて晴天の 深夜に行った。ボイスレコーダーは線路側の窓 ガラス周辺に設置した。 図 1 周波数解析結果(左:屋外 右:屋内) 図 2 スペクトラム解析結果(屋外) 図 3 スペクトラム解析結果(屋内) 3.測定結果と考察 駅周辺の道路上における普通列車の走行音 の解析結果を図 1 左側と図 2、周辺住宅の屋内 における普通列車の走行音の解析結果を図 1 右側と図 3、室内録音における環境音を図 4 に 示す。図 1 と図 4 より、屋内録音における波形 の 30[Hz]から 5000[Hz]に列車の走行音が確認 できた。このため、30[Hz]から 5000[Hz]間に 雑音低減が必要な音波があると考えられる。図 2 より、0.5[kHz]以下に時間的に変化しない周 波数成分と 0.6[kHz]から 2.9[kHz]間の 5 箇所 にピークを持つ周波数成分を確認した。図 3 より、0.5[kHz]以下に時間的に変化しない周波 数 成 分 と 2.0[sec] か ら 7.0[sec] に お い て 0.7[kHz]から 2.8[kHz]間に強い周波数成分を 確認した。このため、室内の走行音は 0.5[kHz] から 3.0[kHz]間に壁や窓などによって周波数 分布が拡散されていると考えられる。以上のこ とより、時間的に変化しない 0.5[kHz]以下と 室 内 に お い て 音 が 拡 散 す る 0.6[kHz] か ら 2.8[kHz]間の 2 箇所の雑音低減が必要である と考えられる。そのため、2 箇所の周波数帯の 削減によって列車騒音の低減が可能である。 図 4 屋内環境音の周波数解析結果 4.まとめ 本研究では、普通列車の屋内外の録音記録を 用いて鉄道音の解析や低減音の推定を行った。 屋内外および屋内環境音の周波数解析結果よ り、列車の走行音が存在する周波数帯を確認し た。また、スペクトラム解析によって一定の周 波数成分とピーク値を持つ周波数成分が障害 物によって拡散された周波数帯を確認した。こ のため、住宅内における雑音低減のために 0.5[kHz]以下と 0.6[kHz]から 2.8[kHz]間の 2 箇所の雑音低減が必要である。 お問い合わせ先 氏名:武市義弘 E-mail: [email protected] I-05 天井スピーカを用いた臨場感のある サラウンドシステムに関する研究 (仙台高専電気システム工学科) ○西塚悠羽 ・ 矢入聡 キーワード:Dolby Atmos,サラウンドシステム,ハイトスピーカ,ホームシアター,音響 1.はじめに 最 新 の ホ ー ム シ ア タ ー シ ス テ ム 「 Dolby Atmos」[1]は、天井に設置するスピーカが加わ ることで音空間の三次元表現を可能にした。し かしこれらの音響効果を具体的に評価するデ ータは少なく、詳しく解明されていない。 本研究では、ハイトスピーカ(天井部分から の音信号)が聴取者にもたらす影響を調査し、 これを用いてより良いサラウンド効果が得ら れるようなシステムについて検討していく。 2.実験方法 ハイトスピーカを使用した場合(5.1.4ch)と 不使用の場合(5.1ch)についてシェッフェの一 対比較による実験を行った。被験者は 19~20 歳の男女 12 人である。 音源は Music(stereo,5.1ch)・Movie(5.1ch, Dolby Atmos)・Anime(stereo,5.1ch)の 6 種類 を選定し、それぞれ任意のシーンを 1 分半程度 抜粋し、再生時の音圧は 56dB 程度に設定した。 評価項目は包み込まれ感(音空間の広がり・ 上方向への伸び)、方向感(動き・軌跡)、臨場感 (迫力・躍動感)の 3 項目をそれぞれ 5 段階評価 で設定した。 サ ラ ウ ン ド 環 境 は セ ン タ ー (ONKYO D-109C)、フロント L/R(ONKYO D-109E)、サ ラウンド L/R(Pioneer S-31B-LR)による 5 つの メインスピーカ、サブウーファー (ONKYO SL-A251)、4 つのハイトスピーカ(ONKYO SKH-410)を使用し 5.1.4ch を構成した。天井 設置型のスピーカは取り付けが困難であるた め、天井へ音を反射することで同じ効果が得ら れると言われている Enabled スピーカを使用 し た 。 ま た 、 ス ピ ー カ セ レ ク タ (SOUNDTECHSP-24B, NEWSTAR SP-24) を接続することで 5.1.4ch と 5.1ch を切り替え る。AV アンプは ONKYO TX-NR3030 を使用 し、リスニングモードは「Dolby Surround」 (「Dolby Atmos」)に設定した。 3.実験結果 5 段階評価における「無しが良い」~「有 りが良い」の項目ごとに-2 点~+2 点(どちら ともいえない:0 点)を振り分け点数化し、平 均を求めた(図 1)。これは点数がプラス側に偏 ればハイトスピーカ使用時の効果が感じられ やすく、マイナス側に偏ればハイトスピーカ不 使用時の効果が感じられやすいという指標で ある。ほとんどの 5.1ch 作品は点数がプラス側 に傾いているため、アンプによってハイトスピ ーカへ送られる信号がうまく生成され効果が 感じられやすかったと考えられる。 また、Music(stereo)は包み込まれ感が最も 優れていることからハイトスピーカの効果が 確認できた。しかし臨場感の項目においてはハ イトスピーカ無しの評価が高い。また Anime(stereo)についても包み込まれ感と臨場 感の評価が真逆になっている。これらのことか ら stereo 音源については臨場感と包み込まれ 感を同時に得られることはできないことが読 み取れる。Dolby Atmos 音源に関しては 3 項 目全ての点数がマイナス側に傾くという結果 になってしまった。今回は実験を行った部屋の 構造上の問題や Enabled スピーカを使用した ためなど様々な条件が重なり効果が感じられ にくかったのではないかと考えている。 Music stereo 臨場感 Music 5.1ch Movie 5.1ch 方向感 Movie Dolby Atmos Anime stereo 包み込まれ感 Anime 5.1ch -0.6 無しが良い -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 有りが良い 図 1. 実験結果の点数化 4.まとめ ハイトスピーカの効果は音源のジャンルや フォーマット、シーンによって異なるが、5.1ch 音源は比較的ハイトスピーカの効果が期待で きた。これらを踏まえて stereo 音源において も 3 項目全てを満たす効果が得られるような 新しいサラウンドシステムを検討していく。 参考文献 [1]ドルビーアトモス http://www.dolby.com/jp/ja/technologies/dolb y-atmos.html (2015.12.14) お問い合わせ先 氏名:西塚悠羽 E-mail:[email protected] I-06 音声解析アプリケーションの開発 (仙台高専情報ネットワーク工学科 1) ○新田彰啓 1・矢島邦昭 1 キーワード:音声解析,FFT,スペクトル,音の特性,成長過程の可視化 1.研究の背景と目的 近年では気軽に音楽活動を行う事が可能と なりプロの歌手でなくても歌う機会が増えて きた.市販のヴォーカル用のチューナでは,音 程と声量を時系列的に可視化する機能が存在 しないため,練習成果が分からずユーザの練習 に対するモチベーションの低下につながる恐 れがある. そこで本研究では,『幅広い年齢層でも使い やすく』,『場所を選ばず使用できる』,『発声 音程が視覚的にわかりやすい』発声音程の正確 さと成長過程を可視化するアプリの開発を目 的とする. 2.アプリケーションの概要 今回のアプリでは成長過程を可視化するた めに,録音した音声を解析し,結果を時系列毎に 保存し,時系列順に周波数とスペクトルで表示 する機能と,市販のチューナと同様にリアルタ イムで発音の正確さを可視化する 2 つの機能 を実装する. 具体的な解析対象の音声として,本研究では 練習で改善しやすい『音程』と『声量』に着目 した.解析対象となる音声の周波数範囲はバス ~ソプラノまでの約 65Hz(C2)~1.8kHz(A6)ま でとする. また,歌唱におけるピッチのずれにより聴き 手側が違和感を覚えるのは,半音の 3 分の 1 程 度ずれた時であるというデータがある.[1]これ より,約 0.5Hz のピッチで解析を行えば十分な 精度である.表 1 に FFT に用いるデータの要件 を示す.[2] また、スペクトルの解析精度の向上を目的と して平均化処理を行う.今回は加算平均により 平均化処理を行う事とする. 表 1. FFT に用いるデータの要件 サンプリング周波数 8[kHz] データ点数 16384[点] 周波数分解能 0.48828125[Hz] 3.進捗状況 現在の進捗状況としては FFT プログラムの 作成を行い解析精度などの検証を行った. (1)261Hz(C4)~523Hz(C5)までの正弦波,方形 波,三角波の wav ファイルを解析し精度を調査 した.結果を図 1 に示す.それぞれの波形の特性 と中心周波数を正しく得る事が出来たため解 析精度は問題ないという結果が得られた. (2)ファンクションジェネレータとスピーカ を接続し,440Hz の正弦波を出力し,0~1m の間 でスピーカとマイクの距離を変えて音を録音 する.その後,録音したデータを解析し距離の変 化によるスペクトル値の変化を調査した.結果 を図 2 に示す.中心周波数のスペクトル値は距 離によって反比例し,ノイズは中心周波数成分 の解析結果に影響はないという結果が得られ た. 図1.440Hz_正弦波 図2.距離による スペクトル値の変化 4.今後の予定 今後は人間の音声を解析し,音声の特性を理 解する.また,市販のチューナとの精度の比較等 も行い,開発するアプリケーションの解析精度 を再度検証する.その後,解析結果や成長過程の 可視化のグラフの表示方法を工夫しアプリの 開発を行う. 参考文献 [1] スンドベリ・ヨハン,歌声の科学,東京電機 大学出版局,March.2007. [2]白川利昭,高分解フーリエ変換による音声分 析 , 大妻女子大学紀要,vol. 27, 2008. お問い合わせ先 氏名:矢島邦昭 E-mail:[email protected] I-07 『枕草子』可視化カード提示システムの開発 ~章段の3次元表現の検討~ (仙台高専情報ネットワーク工学科1,一関高専2,東北大学3) ○佐々木志歩 1・奥村俊昭1・渡辺仁史2・大原理恵3 キーワード:枕草子,ハイパーカード,文学作品,可視化,3 次元表現 1.研究の背景と目的および先行研究 近年、情報ネットワークならびに情報機器の 発達により、気軽に電子書籍を楽しむ環境が整 っている[1]。電子書籍は冊子同様に冒頭から順 に読み進めることができる。しかし、文学作品 の中には必ずしも最初から読むべき一貫した ストーリーのない『枕草子』のような作品もあ り、そうした作品への対応システムは十分に構 築されてこなかった。本研究では類聚的章段を 中心に『枕草子』の章段順序にとらわれない新 しい鑑賞のしかたを提案するために『枕草子』 可視化カード提示システムを作成する。 以下に、先行研究[2]で作成されたプロトタイ プのメイン画面および機能を示す。 (3) (1) (2) 3.進捗状況 現在、プロトタイプで可視化された全 51 章 段の CG カードの球体化が完了している。球体 の中には章段のキーワードを示す有職文様の コイン型のオブジェクトを、球体内に配置して いる。 本システムでは、ユーザはキーボードの矢印 キーにより、定められたフィールド内を自由に 動き回って章段を探すことができる。また、マ ウスカーソルを動かすと可視範囲を変更する ことができる。 球体にオンマウスすることで、その章段の冒 頭部分が左上に表示され、クリックすることで 章段が表示される。 以下に現在のシステムのメイン画面を示す。 (4) (5) 図1.プロトタイプのメイン画面 (1)キーワード・色を用いた章段検索機能 (2)カードのランダム並べ替え (3)カード配置保存・読出機能 (4)履歴表示機能 (5)CG カード表示キャンバス 先行研究では 51 個の章段の CG カードが作 成された。 2.本研究の取り組み内容 プロトタイプの平面的なカードキャンバス は、表示数に制限がある。そのためユーザが自 由に読み進めるという特徴を出しにくい。 この問題を解決するために本研究では、カー ドキャンバスを仮想3次元空間へ変更し、ここ に CG カードではなく、球体で各章段を表現し たものをちりばめる。 これに加え、新たな機能の検討や操作マニュ アルの作成、章段の追加・変更を行うことで、 ユーザの理解度およびユーザビリティの向上 を目指す。 図2.現在のシステムメイン画面 4.まとめ 本研究では、ユーザの作品鑑賞への積極性お よび自由度を高めるために3次元的な仮想空 間を用いたシステムへの再構築を行った。 今後は新たな機能追加の検討およびシステ ムの評価を行う。 参考文献 [1] 佐々木俊尚:電子書籍の衝撃,ディスカヴ ァー・トゥエンティ―ワン,p.246 (2010). [2] 森谷優大:『枕草子』可視化カード提示シ ステムの開発,International Symposium on Technology for Sustainability 台湾 (2014) お問い合わせ先 氏名:奥村俊昭 E-mail:[email protected] I-08 メトロノームアプリケーションの携帯端末上への効率的表示 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1 ) ○相澤祐樹 1 ・本郷哲 2 キーワード:メトロノーム,スマートフォン,アニメーション,フレーム 1.背景及び目的 楽器練習の補助として使用される一般的な メトロノームは一定のテンポを刻む.楽曲によ ってはテンポが変化するため,楽曲を連続的に 練習することは困難である.また,最近ではス マートフォンやタブレットの普及に伴いアプ リケーションとしてのメトロノームも増加し ている. スマートフォンをメトロノームとして使う 場合,端末のフルスペックの性能を用いると電 池の消耗が激しくなり好ましくない.そこで, 本研究ではメトロノームアプリケーションに おいて,電池の消耗を考慮した効率的表示法を 考察することを目的とする. 2.フレームアニメーション 一般的にアニメーションはフレームと呼ば れる画像をいくつか用意し,それらを素早く切 り替えることで動いているように見せる,アプ リケーション上で動かす場合も同様であり,一 般的に最大 1 秒間に 60 枚のフレームの切り替 えが実現可能である. しかし,最大フレーム数で表示を行った場合 電池の消耗が著しく実用的ではなくなる.逆に フレーム数を減らすと,アニメーションの視覚 的な違和感が問題になる. 3.効率的表示に関する実験 3.1 fps 増加による携帯端末への負荷 fps (frame per second) は 1 秒あたりの切り 替えるフレームの枚数を表す単位である.テン ポが速い時に多くのフレーム処理を行えば, fps の値は高くなり,電力消費が大きくなると 考えるため,本研究では fps 増加による携帯端 末への影響があるのか実験を行った. 実験方法として,メトロノームの針を模した 画像をいくつか用意し,それらを携帯端末上で フレームアニメーションさせた[1].また,ア ニメーションの切り替え間隔を調整すること によって fps を増減させた.フレームアニメー ション実行している際の CPU 占有率を計測し た. 本実験では携帯端末を Google Nexus 4 を用 い,CPU 占有率の計測には CPU Stats という アプリケーションを使用している. 図1に実験結果を示す.図1では fps が増え るごとに CPU の占有率が増加している.また, 最大の 60fps でアニメーション切り替えを行 図1 fps 増減による CPU 占有率の変化 うと CPU を 20%占有することから,より少な いフレーム数でアニメーションを実現させる ことが望ましい. 3.2 表示に対する違和感の調査 前述の通り,フレームレートと CPU 占有率 ほぼ比例することが明らかになったので,フレ ームレートをどこまで抑えれば良いか実験を 行う.表1に示すパラメータによりメトロノー ムアニメーションを用意し,被験者に提示し, 違和感を 5 段階評価した.結果については現在 分析中である. 4.まとめ 本稿では、フレームレート増加は電池の消耗 につながることが明らかになった。今後の展望 として、パラメータの分析を行う。 表1 実験における提示条件 B PM \提示枚数 60 120 180 13 9 13/13 9/9 13/26 9/18 13/39 9/27 5 3 5/5 5/10 5/15 3/3 3/6 3/9 表中の数字は,提示枚数/フレームレートを表す. 【参考文献】 [1] Android アプリ開発における Frame アニ メーション http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/12 05/21/news003.html お問い合わせ先 氏名:相澤祐樹 E-mail:[email protected] I-09 ソフトテニス競技におけるスコアリングシステムの設計 ( 近大高専専攻科 生産システム工学専攻 1, 近大高専 総合システム工学科 教授2) ○山本由樹 1・宇田 隆幸2 キーワード:ソフトテニス,スコアリングシステム,電子化,設計 1.はじめに とが多い。 本研究では、多数の競技者が存在する中学 生・高校生に焦点をあてて、ソフトテニスの科 4. 電子的ゲーム記録システムの仕様 学的競技指導方法の確立を目指す。本稿では、 電子的ゲーム記録システムを作成するにあた ゲーム記録シートの電子版試作、電子版により り、① ~⑤ に示す利用目的および仕様を明確に 得られる記録情報、記録情報に基づく指導方 した。① 選手がゲーム記録を容易に残せること。 法・弱点克服方法・選手の目標値設定、推奨す 試合中に得失点を含む試合状況を閲覧でき ② べきゲーム展開など、研究課題を検討する。 ること。③ 球の軌跡を含む詳細な情報を記録で 2. 本学の情報戦略(現状)と問題点 こと(選手の弱点把握・目標設定・成長記録 きること。④ 記録した情報を後から活用できる 本校のソフトテニス部は、他校と同様にスコ など)。⑤ 有利なゲーム展開を予測できること ア記録を紙媒体で残している。現状、天候・風 (将来目標)。 向き・球の軌跡・コート内の選手位置などは 記録していない。さらに、選手の成長を定量的 4.ゲーム記録システムの設計 に把握する場合や、定量的な目標設定を行う場 電子的記録システムは web アプリケーション 合には、多くの記録シートを閲覧する必要があ として開発する。DB 設計は完了し、画面遷移の る。このため、選手や顧問の記憶や勘に頼るこ 設計は図 1 の通りに設計した。 Java EE 7 を使用す るために、アプリケー トップ画面 [新規試合] [チーム管理] [選手管理] [分析] ションサーバーは GlassFish Server を 試合登録画面 チーム一覧画面 選手一覧画面 [チーム登録] [試合登録] 試合、選手一覧画面 [選手登録] [選手、試合選択] 選択した。開発環境は Net Beans IDE を 使 チーム登録処理 選手登録処理 統計情報表示画面 [ファイル出力] 用する。現在は画面の ゲーム登録画面 ファイル出力処理 [試合終了] 作成と、サーバーの構 築とテストを行っ て 試合終了処理 [試合の入力] いる。 球の軌跡登録処理 [ゲーム登録] [確定] [ゲーム終了] 軌跡などの入力 入力データの確認や修正 お問い合わせ先 図 1: 画面遷移図 氏名:宇田 隆幸 E-mail:[email protected] I-10 名張市住民意識調査の自由意見分析 (近畿大高専 総合システム工学科 電気電子コース) ○今井潤・宇田隆幸 キーワード:住民意識調査,アンケート分析,統計学,自然言語処理 1.はじめに 多くの地方自治体(市区町村)が,住民の要 望把握や理想郷の実現を目指す目的で住民意 識調査を実施している.先駆調査事例として, 1975 年に運輸省第一港湾建設局が実施した 「日本海地域における住み心地の良し悪しに 関する住民意識」が挙げられる.この調査によ って,高速道路網や鉄道網の充実に活かされた. 2000 年頃からは,地方自治体による 意識調 査が増加している.この頃より,調査目 的が 社会インフラ整備対象の把握から,住民意 識 の実態調査および人口減少問題対策へと変 遷 している.多くの住民意識調査は,偏りの無い 被験者を選び,複数のカテゴリ分割された質問 に回答させるものである.回答形式は,定量分 析可能な項目と定性分析可能な項目とがある. 本校所在地の名張市も,2005 年から住みよい 街づくりを目指して,住民意識調査を実施して きた. 本研究では,名張市の 2015 年度住民意識調 査のうち, 「市内永住希望者」と「市外へ移住 希望者」に着目して,各々の希望理由の差異を 分析し,分析結果の妥当性を評価する. 2. 住民意識調査の概要 名張市では定点観測を実施するため,毎年, 同じ時期・同じ被験者選択方式・同じ質問主題 にて 10 年間継続調査している.昨年度から, 定住促進のため,「市内永住希望者」と「市外 へ移住希望者」とが明確に分析可能となるよう に,質問項目が追加された. 2.1. 被験者 性別・年齢について,被験者の偏りがないよ うに抽出してある.居住地域・勤務地・子供の 有無・職業・居住年数・世帯構成は,偏りがあ る. 2.2. 質問項目 直接質問(選択回答): 住み心地,永住/移 住希望,地域づくり,健康福祉,地域医療,福 祉,子育て支援,社会保障,自然環境,省資源 /省エネルギー,都市環境,防災,住宅/住環境, 交通対策,道路整備,都市産業,観光,学校教 育,幸福度など. 自由記述質問(テキスト回答) : 件名(どの ようなことについてか) ,具体的な内容. 被験者数:約 1000 人 3. 分析 3.1. 分析方法 「市内永住希望者」と「市外へ移住希望者」 に 調査データを分割し,直接質問の差異,および 自由記述質問の回答のテキストマイニング結 果の差異について比較する.そして,差異のあ る因子について良否を判断することで,市外 への移住希望理由を抽出する. 3.2. 分析結果 アンケート分析結果の一例を下図に示す. 図 3.1 「医療」の定性分析結果 特徴語の肯定/否定を把握することができ,定 量回答部との紐付けに成功した.また,肯定/ 否定に関するカテゴリ分類を行えた.出現した 特徴語の相関として医療関連の語に関しては 急患が市外の病院へ搬送されたときの不安や 不満因子であると考えられる.また,2014 年 度と比べると,名張市には市立病院が 1 つしか ないことから,総合病院の少なさに対する不満 因子が把握できた. 4.まとめ 本研究の目的である「市民意識調査の回答を電 子的に分析して,質的満足因子および質的不満 因子を抽出する方式を確立すること」を達成し た.同方式を用いて,永住希望者と移住希望者 の意識の違いを抽出でき,自治体の分析担当者 の意見と一致することも確認できた. 今後は,感性ついて分析を進める予定である. お問い合わせ先 氏名:宇田隆幸 E-mail:[email protected] I-11 超音波診断におけるプローブ走査時の メンタルローテーション能力の評価 (沼津高専 電子制御工学科 1,専攻科総合システム工学専攻2) ○赤池郁也 1・佐野徳美 2・鈴木克真 2・青木悠祐 1 キーワード:超音波診断,断層像,メンタルローテーション,プローブ走査 1. はじめに 超音波診断は生体に対する低侵襲性,リアル タイム性に優れ,いつでもどこでも施行可能な 画像診断法という注目されている.しかし,検 査者は診断中に超音波プローブを同じ位置・姿 勢で維持し,特定部位を常に断層像中心へと撮 像し続けなければならず,長時間の診断が検査 者だけでなく患者の負担となってしまうとい た欠点が存在していた.そのため,検査者の負 担を減らす支援システムが望まれているが,診 断手技そのものを定量的に解析し,その結果を ロボット制御へと反映した研究は報告されて いない現状にある.検査熟練者は所望の断層像 撮像をする際,人体のどの位置にどのような形 で臓器が配置されているのかを理解し,プロー ブを適切に動かし所望の断層像を撮像するこ とができる.本研究ではこのような空間把握能 力をメンタルローテーション(以下 MR)能力 と呼び,超音波診断における熟練度の指標とし て定義する.本論文では胆嚢追従時とプローブ 固定時におけるプローブ移動量および断層像 情報から MR 能力を評価したので報告する. 2. メンタルローテーション行列計測実験 MR 能力の計測に用いるシステム[1]を Fig.1 に示す.まず,プローブを固定した際の胆嚢の 断層像を取得し,動画像処理によって胆嚢の位 置を計測する.次に,胆嚢の動きを追従した際 Fig.2 Comparison of object movement and MR のプローブ移動量をモーションキャプチャー システムによって計測する.その際,断層像変 化とプローブ移動量の関係を MR 行列として 定義し,その値を評価した.Fig.2 にプローブ を固定した際の胆嚢移動量と胆嚢を追従した 際の MR 行列を示す.この結果より,断層像中 で変化している胆嚢を追従するには,変位 Xe に対して同じ様にプローブを移動させつつ,他 の軸も変化させる必要があることが確認でき た.このことから熟練検査者が臓器を追従する 際には,単に臓器の移動にあわせるだけでなく 様々な手技が必要になっていることが示唆さ れた.今後,この能力を MR 行列として解析し ていくことで MR 能力の定量化を図っていく. 3. おわりに 本論文では超音波診断における熟練者の断 層像情報からプローブ位置を決定することを MR 能力として定義し,MR 行列によってその 関係を示した.今後はこの MR 行列を解析する ことによってプローブ走査時の MR 能力の評 価を進め,診断支援システムを構築していく. 4. 参考文献 [1]佐野他,ROBOMECH2015,DVD-ROM,2015. Fig.1 The view of measurement system お問い合わせ先 氏名:青木悠祐 E-mail:[email protected] I-12 臓器トラッキングのための超音波断層像処理に基づく ビジュアルフィードバック系の構築 (沼津高専 電子制御工学科 1,専攻科総合システム工学専攻2) ○大山拓真 1・佐野徳美2・青木悠祐 1 キーワード:超音波診断支援,断層像処理,ビジュアルフィードバック 1. はじめに 超音波診断は,他の医用画像診断法と比較し て,低侵襲,低コスト,可搬性に優れるといっ た利点を持つ一方,所望の断層像の取得には専 門的な知識や超音波プローブ(以下プローブ) の経験的な探査手技が必要であり,断層像観察 時にプローブを体表面に押し込んだ状態を維 持することは,検査者の精神的・肉体的疲労に つながることが知られている.そこで我々は, 超音波診断における医師・検査技師(以下検者) の熟練手技を解析することで,超音波診断支援 のためのロボットシステムの開発[1]を進めて きた.しかし,通常の診断において使用される プローブは 2 次元断面を撮像するため,体動・ 呼吸による臓器の 3 次元的な動きに対しては 断面から消える方向に変化することが多く存 在していた.先行研究では,3 次元ボリューム データを表示する 4D プローブを用いた断層像 維持システム[2]を考案したが,4D プローブは 2[vps]であるためリアルタイムで臓器をトラッ キングすることができなかった.そこで,本研 究では 2 次元断層像から 3 次元的な臓器の動き をトラッキングするビジュアルフィードバッ ク系を構築したので報告する. 2. 断層像を用いた 3 次元位置計測 Fig.1 は,超音波診断装置を用いて,断層像 を取得しており,同じ位置にプローブを当てて いても呼吸によって,取得断層像が変化する様 子を示している.3 次元的な臓器の追従は従来 Fig.2 Contour length の 2 次元断面しか撮像できないプローブでは 行うことができなかった.そこで,断層像から 消える方向の臓器の動きによって臓器の大き さが変化することに着目し,胆嚢の輪郭周囲長 を抽出,時間による変化を計測した.Fig.2 に 示す結果より,呼吸によって臓器が断面から消 える方向に動くことで周囲長が周期的に変化 していることが確認できた.今後は呼吸によっ て消える方向の推定を行う予定である. 3. おわりに 本論文では,従来のプローブから得られる断 層像を処理することによって,今回対象とした 胆嚢の輪郭を抽出するシステムを構築した.こ の処理システムでは,位置だけでなく輪郭周囲 長と面積を算出することが可能であり,従来の プローブでは得ることの出来なかった断面か ら消える方向に移動する臓器の動きをみるこ とができた.今後は,輪郭周囲長や面積の変化 量と,実際の臓器の動きとのスケール変換を行 うことにより,臓器の 3 次元的動きをロボット に反映させることで,所望の断層像を維持する ビジュアルフィードバック系を構築していく. 4. 参考文献 [1]佐野他,ROBOMECH2015,DVD-ROM,2015 [2]佐野他,富士山麓 A&S フェア予稿集, Fig.1 Echogram shift by body motion お問い合わせ先 氏名:青木悠祐 E-mail:[email protected] I-13 生体情報を用いた集中度計測のシステムに関する研究 (仙台高専情報ネットワーク工学科 1) ○岩月理羽 1・矢島邦昭 1 キーワード:アクティブラーニング,生体情報,皮膚電気抵抗,脈拍,体温 1.研究の背景と目的 現在,教育の手法として Active Learning(以 下 AL)が注目されている.AL は学生が能動的 に学習するグループディスカッションやディ ベート等のスタイルであり,学生の集中力を計 測することは AL を実施する上で重要な役割 を果たすと考える. 本研究では AL 実施中の学生の生体情報を計 測,分析し,集中度を客観的に解析するシステ ムの開発を行う.計測器は体温,皮膚電気抵抗 (以下 GSR),脈波を同時に測定する.この結果 を用いて能動的な AL の支援を目指す. 3.進捗 ・ハードウェア:測定器小型化,センサ部改良 従来の測定器の 10×7[cm]から 4×9.5[cm]と なり,約 1/3 の大きさに縮小した.額に装着し ていたセンサ部を,人の手首の皮膚電流は脳波 と極めて近い動きを示すことが研究で明らか になっているため[4],手首に装着できるよう にリストバンド形式にした. 2.本研究の取組内容 AL は課題の発見と解決に向けて主体的・能動 図1.簡易測定器 図2.センサ部 的・協働的に学ぶ学習で,学生同士での問題解 ・実証実験:先行研究と同様に 5 分間隔で計測 決を図ることができる.しかし,テストがない し演習と休憩の繰り返しパターンを,20 分間 ために学生が自分の理解度を確認できている 行いデータを収集した. のか,話し合いに混ざれているのか,教員・指 導員側は一見して判断することができないと 4.今後の予定 考える[1]. 実際に測定実験行い結果を解析する.先行研 先行研究では,e-learning(以下 EL)における集 究のデータと比較することで,有用であった生 中力解析のため GSR と脈拍を計測し.その結 体情報を選定し,複数の分野を測定できる簡易 果 GSR が集中度の判別に有効であることがわ 測定器を開発する.また評価をもとに,アプリ [2] かった .本研究では AL 時の集中力を解析す ケーションの改良を行う. るため脈拍,体温の生体情報を追加で測定する. 課題として AL 実施時は EL 時より体を動かす 参考文献 場面が多いため測定部の再設計を行い,さらな [1] 名古屋高等教育研究 第 7 号 溝上慎一「ア る小型化を目指す.また対象被験者は 4~5 人 クティブ・ラーニング導入の実践的課題 」 のグループとする.データの送信方法としては, (2007) 多対一のクライアントサーバ方式を用いる. [2] 矢島邦昭,我妻祐樹「生体情報を用いた e-learning コンテンツの効果測定」(2012) 2.1.測定対象 [3] 慶應義塾大学保険管理センター 河邊博史 集中状態とは,リラックスしている状態,ス 「ストレスと高血圧」 トレスがない状態のことである.臨床試験では, [3] 八谷百合子「第 2 章 精神疲労の評価方法 騒音にさらされている人の方が血圧が高いと に関する従来の研究と評価方法の考え方」 いう論文が発表されるなど,ストレスが血圧上 (2012) 昇に影響することは,医学的に証明されている [4] 友野伸一郎 「 「深い学び」につながる 「ア [2] .そこで脈拍,体温,GSR に着目する.脈拍 クティブラーニング」とは」(2013.2) は,ストレスを受けると心拍数増加,心拍変動 の減少,心拍間隔が小さい値で安定し,集中力 が上がると体温が低下する[3].以上より脈波, お問い合わせ先 体温, GSR と集中力の妥当性について調査し, 氏名:矢島邦昭 より簡易的に集中力を計測可能かどうか検討 E-mail:[email protected] する. I-14 2DCG によるリハビリトレーニングシステムの開発 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○平川晃希 ・ 孫寧平 キーワード:2DCG,スプライン補間,最小二乗法,データベース 1. まえがき 近年高齢化が深刻な問題となっており, 認 知症やパーキンソン病といった高齢者に多い 疾患を持つ方々が増えつつあるが, それらの 疾患は日常のコミュニケーションやリハビリ によって進行を防止できる.そこで本研究で はリハビリという点に着目し,なぞり絵を用 いて高齢者疾患を持つ方々に日々の進歩(軌 跡)を実感してもらいつつ, 継続して楽しめ るアプリケーションの開発を目指し,「2DCG を用いたリハビリ用トレーニングシステムの 開発」に取り組んだ. 本研究は Java 言語を用いてプログラムを 実装し, スプライン補間や最小二乗法により, 図形の描画・比較を行う.また MySQL により, なぞる元となる図形や利用者の情報・経過な どを保存するデータベースを構築する. 3.操作手順 図2に本アプリケーションの操作手順を示 す. 2. アプリケーション概要 アプリの利用者は,はじめにアカウントボ タンからユーザ登録を行い,そのアカウント でログインする.その後,シンプルな円の図 形をなぞってもらい, その一致率によって疾 患の進行度合いを三段階に分類する(これに より利用者に合ったリハビリの難易度を設定 する) .設定後はスタートボタンから利用者に 応じた図形が描画され,実際になぞってもら い,一致度の算出・評価を行うという流れに なる.作業画面の予想図を図1に示す.描画 する図形はあらかじめ難易度ごとに用意され ており,それらの中からランダムで表示する ものとする.これらの図形ならびに利用者に 関するデータは順次データベースに保存する. アプリ起動後にアカウントを選択し,ユーザ 用データベースよりユーザ情報ならびに,トレ ーニング用のなぞり絵の設定を行う.設定後ユ ーザの準備が出来次第,トレーニングを開始す る.トレーニングは計3問行い,終了毎に一致 度を表示.3問終了後改めてすべての結果を表 示ならびに記録を行いトレーニング終了とす る. 図 2 . 操作手順 4.操作インターンフェイスの工夫 本アプリケーションの利用対象の主は, 高齢者であるため,細かな操作・複雑なシス テムはあまり好ましくない.そのためボタン や文字を必要最低限とし,タッチパネルを用 いて簡単に操作できるインターフェースの実 装を行った.また,文字に関して,通常より 大きめに表示しするなどして,高齢者の方で も見やすく,より扱いやすいものとした. 5.今後の課題 現在ではなぞり絵による手関連のトレーニ ングのみの実装となっている.しかし,リハビ リ箇所は手以外にもいくつも存在するため,よ り多くのリハビリに対応できるよう,トレーニ ング用のアプリケーションの設計・追加が求め られる. 図1. トレーニング画面完成予想図 お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] I-15 腹部 X 線 CT 画像を用いた 体格位置合わせのためのランドマーク検出 ~撮像範囲が広範囲に及ぶ症例への対応~ (仙台高専情報ネットワーク工学科 1) ○朽木悠弥 1・奥村俊昭 1 キーワード:腹部 X 線 CT 画像,脊椎,ランドマーク,体格位置合わせ 1.研究背景 近年,医学分野において,CT 画像などの 医用画像を計算機で定量的に分析し,診断や 手術計画の策定を支援する計算機支援診断 (CAD,Computer Aided Diagnosis)システ ムの研究開発が行われている[1]. CAD を利用した診断支援として,臓器の 位置・形状・大きさなどといった統計情報の 把握や,同一患者の経過観察を行うものがあ る.この支援のためには,撮像範囲が異なる 場合,その範囲に存在する共通の部位から導 出した範囲を利用し,患者の体格を 1 つの座 標系で表現する体格位置合わせが必要とさ れている. 2.研究概要 本研究では,CAD による臓器の統計情報 や,患者の経時変化の把握を行う前処理であ る,体格位置合わせの検討を行う.その手段 として,基準となるモデル範囲を導出するた め,共通の特徴的な部位(ランドマーク) を 人体骨格中の第 12 胸椎と呼ばれる部位とし て CT 画像から検出する[2].これを利用した 体格領域の 3 次元的位置合わせを行うため の手法の提案と評価を行う. 3.提案手法 本研究ではこれまでに,CT 画像における ランドマークの自動検出システムを構築し てきた.このシステムの問題点の一つとして, 撮像範囲が未知かつ広範囲に及ぶ場合に結 果が不安定となる問題があった.そこで,こ れを改善するために,撮像範囲からランドマ ーク位置を含む狭い範囲で処理領域を限定 し,旧手法との比較検討を行った. 2 値化によって求められた骨領域のモー メント値と脊柱領域の有無から腰椎領域を 特定し,そこから上下に探索を行い,しきい 値で探索を打ち切ったところまでを処理範 囲とする. 4.実験結果 第 12 胸椎の検出を行う対象症例として, 服部 X 線 CT 画像 30 症例を利用した.各症 例の撮像範囲は,腹部を中心として体軸方向 に最大で頸椎から大腿骨までである. 症例に対して,提案手法を適用した結果, 旧手法では,30 症例中 16 症例で第 12 胸椎 検出が失敗したが,本手法を適用した場合, 全症例での第 12 胸椎検出が成功した.この ことから本手法の有効性を確認した. 対 象 領 域 (a)骨領域 (b)第 12 胸椎検出結果 図 1.領域限定後の第 12 胸椎検出結果 4.まとめ 本研究では,体格位置合わせに利用するラ ンドマークの 1 つとして,第 12 胸椎の検出 を行う手法の提案と評価行った. 補足 本研究では,日本医用画像工学会監修の医 用画像データベース Vol.3[3]を用いた. 参考文献 [1] 鳥脇純一郎,目加田慶人,“人体内部の 計測と診断” ,情処学論,CVIM,vol.47, no.SIG9(CVIM 14) , pp.73-84 , June 2006. [2] 保田竜也 他, “腹部 X 線 CT 画像を用い た脊椎セグメンテーションによるラン ドマーク検出”,信学技報,vol.114, no.482,MI2014-68,pp.77-82,2015 年 3 月. [3] 医用画像データベース「腹部 CT 画像デ ータベース Vol.3」日本医用画像工学会. (2012) お問い合わせ先 氏名:奥村俊昭 E-mail:[email protected] I-16 汎用 PC を用いた高精度なソフトウェアタイムスタンプ 方式の検討とネットワーク計測への応用 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1, 専攻科2,機械システム工学科 3) ○髙橋優元 1・遠藤昇 2・北島宏之 3 キーワード:タイムスタンプ,ネットワーク計測,PC アーキテクチャ,リアルタイム処理 1.緒言 近年リアルタイム性を重視するトラヒックが 急増し,品質保証の観点から高精度の遅延計測の 要求が高まっている. 遅延計測には,専用ハードウェアを用いる方式 と汎用 PC を用いる方式がある.町澤らは汎用 PC を用いてパケット受信時に割込みハンドラで タイムスタンプを取得することでファストイー サネットにおいて標準偏差 130ns 程度の精度を 実現している[1].しかし,より高速にパケットを 受信するギガビットイーサネットなどには適用 が難しい. 本稿では,ポーリングを用いたタイムスタンプ 取得方式の概要とソフトウェアルータ内の処理 時間の計測への応用について報告する. 2.ポーリングによるタイムスタンプ取得方式 PC でのパケット受信処理の流れを図 1 に示す. NIC でのパケット受信イベントをカーネルが検 知する方式として割込み方式とポーリング方式 がある.図中ではそれぞれの処理の流れを実線, 破線を用いて表している.町澤らの方式では,パ ケットの受信後に NIC が発生させた割込み要求 を検知して,割込みハンドラでタイムスタンプを 取得する割込み方式を用いていた.そのため,割 込みハンドラの起動遅れによりタイムスタンプ にばらつきが生じていた. そこで,提案方式ではポーリング方式を採用し パケットの受信を検知する.ポーリングで受信状 態を確認するために,NIC から PC のメモリへ の転送完了を知らせるステータスフィールドの DD(Descriptor Done)ビットを常時監視する. また,従来方式で周期的に発生していたジッタ を防ぐために,CPU をポーリングプロセスに固 定するハードリアルタイムスケジューリングを 適用し,その CPU で動作している他のプロセス を停止する. 3.提案方式の有効性の検討 提案方式の精度を検証するために 2 台の PC を 直接接続し,通信を行った.リンク速度は 100Mbit/s で,フレーム長 1,518byte の UDP パ ケットを連続的に送信し,受信間隔のジッタを測 定した.その結果,受信間隔の標準偏差は 58ns 図 1 パケット受信処理の流れ 図 2 実験システム となった.また,リンク速度を 1Gbit/s に変更し ても標準偏差は 55ns に収まった. 本提案方式の応用として,ソフトウェアルータ の処理時間を測定した.図 2 に示す実験システム において,受信側及び送信側にポーリング方式を 適用し,送信時刻𝑡𝑠𝑛𝑑 と受信時刻𝑡𝑟𝑐𝑣 を取得した. その結果,ルータの平均処理時間は 18.48μs で標 準偏差は 0.90μs で,処理時間のばらつきも観測 できることがわかった. 4.結言 タイムスタンプ取得にポーリング方式を採用 することにより,割込み方式よりも高い精度を実 現できることを示した.また,提案方式を用いた ネットワーク計測の可能性を示した.今後は本方 式の応用についてさらに検討する. 参考文献 [1] 町澤, 北口, “割込みハンドラと高精度 PC によるソフトウェアタイムスタンプの精度 改善”, 通学論, vol.J87-B, No.10, pp.16781685, 2004 年 10 月. お問い合わせ先 氏名:遠藤昇 E-mail:[email protected] I-17 積極的な情報提供を促す災害時情報共有システムの設計 (仙台高専専攻科情報電子システム工学専攻) ○園部達也・萱場啓太・髙橋晶子 キーワード:情報共有,提供者効用,自動交渉 1.はじめに 提供情報 災害時情報共有システム 提供者評価 大規模災害時の情報共有では,情報利用者(評 価者)数に比べて情報提供者(提供者)数は少なく [1],評価者が求める情報が十分共有されないこと がある.従って,情報提供を提供者に促すことで 情報を収集する枠組みが求められる.これに対し, 特典などによる効用(提供者効用)を用いて誘因 を与える手法[2]があるが,誘因となる提供者効用 は提供者の価値観により異なるため,情報提供を 促す誘因として十分であるとは言えない. そこで本稿では,提供者の価値観を考慮したエ ージェントの自動交渉により,特典の基準となる 情報の価値決定を行い,情報提供を促す誘因とな る十分な提供者効用を与える,情報価値決定手法 を適用した災害時情報共有システムを提案する. 2.情報提供を促す災害時情報共有システム 情報提供を促す災害時情報共有システムの概 要を図 1 に示す.本システムは,投稿された情報 の価値をその情報の有用性などに基づき決定し, 価値に応じた特典を提供者に付与することで効 用を与える.その際,評価者からの評価(評価者評 価)だけでなく,提供者からの情報の評価(提供者 評価)を情報の価値に反映する情報価値決定手法 を用いて提供者の価値観を考慮した価値決定を 行い,提供者に十分な提供者効用を与える. 具体的には,提供者評価に基づく提供者エージ ェントと,提供者評価を反映する程度を表す譲歩 度と評価者評価に基づく評価エージェント間で の自動交渉によって,情報価値を決定する.また, 本手法で用いる効用関数を以下のように定義し, 𝑢𝑢𝑠𝑒 を提供者エージェント,𝑢𝑠𝑦𝑠 を評価エージェ ントへ適用する. (𝑥 − 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡)𝛼 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 × (1 − )+ (𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 − 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡)𝛼 𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑝𝑖𝑛𝑡 (𝑆 − 𝑥)𝛼 − (−𝜆)|𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 − 𝑆|𝛽 (𝑥 ≤ 𝑆) (𝑆 − 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡)𝛼 − (−𝜆)|𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 − 𝑆|𝛽 𝑢𝑠𝑦𝑠 (𝑥) = 𝛽 𝛽 −𝜆(𝑥 − 𝑆) − (−𝜆)|𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 − 𝑆| (𝑥 > 𝑆) {(𝑆 − 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡)𝛼 − (−𝜆)|𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 − 𝑆|𝛽 情報公開(情報評価待ち) 提供者情報 評価結果 情報評価 譲歩度決定機構 評価者情報 情報価値決定手法 提供者エージェント (提供者効用関数) 評価エージェント (システム効用関数) 自動交渉 提供者 評価者 提供者ごとに異なる情報 情報ごとに異なる情報 情報価値(提供者効用) 図1 評価者ごとに異なる情報 情報提供を促す災害時情報共有システム 図 2 従来手法と提案手法の比較 条件は,α = 0.5,β = 0.2,S = 2×maxPoint,λ = 2.25とし,提供者ごとに異なる価値観を想定する ため,実験状況(評価者評価, 提供者評価)を A(200, 300),B(200, 500),C(200, 1000),D(200, 10000)とした.また,提案手法は100回実験を行 い,その結果の平均を取った. 比較実験の結果を図2に示す.状況A-Cにおい て,提案手法の情報価値が提供者評価とともに高 くなり,提供者効用が最大で従来手法の2.09倍と なることを確認した.また,状況Dのような極端 に高い提供者評価の場合,自動交渉が成立せず評 価者評価が採用されることを確認した. 以上より,提案システムの有効性を確認した. 4.おわりに 本稿では積極的な情報提供を促す災害時情報 共有システムの設計を行い,実験によりその有効 性を確認した.今後は提供者ごとの譲歩度決定機 構について検討する. 𝑢𝑢𝑠𝑒 (𝑥) = 𝑥 :情報価値 𝜆 :損失回避係数 𝑆 :譲歩度 𝑚𝑖𝑛𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 :評価者評価 𝑚𝑎𝑥𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡 :提供者評価 𝛼, 𝛽 :効用の変化制御パラメータ 3.実験と評価 提案システムの有効性を確認するため,評価者 評価を情報価値とする従来手法と情報価値決定 手法による提案手法との比較実験を行った.実験 謝辞:本研究は日本学術振興会の科学研究補助金(若 手研究(B)26730054)の助成を受けて実施された. 【参考文献】 [1] 植原慶太,中村文彦,岡村敏之:インセンティブ導入に よる通勤時刻転換意向に関する研究,運輸政策研究, Vol.11,No.4,pp.2-9(2009). [2] 株式会社ウェザーニューズ:減災調査 2015 ネットの 意識編,入手先〈http://weathernews.jp/ip/info/gensai_cho sa/2015/net.html〉(参照 2015-12-08). お問い合わせ先 氏名:髙橋晶子 E-mail:[email protected] I-18 避難所への誘導情報の伝送を意識した DTN 活用の検討 (徳山高専専攻科情報電子工学専攻 1,徳山高専情報電子工学科2) ○藤井公大 1・新田貴之2 キーワード:DTN,モバイル端末,避難誘導,避難所情報 大規模災害発生直後,被災者は迅速・安全に避 難所へ避難する必要がある。現在,スマートフォ ンなどの端末を活用した DTN(Delay Tolerant Network)[1]を構築する試みがある。DTN は,被 災者同士がすれ違う際に情報を交換することが 可能であり,通行不能箇所の情報を交換すること で避難所への最短避難経路を示す研究[2]がある。 しかし,先の研究では,特定の避難所への人の 集中や避難所自体の被災の有無については検討 されていない。 そこで本研究では,より適切な避難所に被災者 を誘導するため,早期に各避難所の情報を被災者 端末に渡すことを検討する。本稿は,この「避難 所情報の拡散方法」について新たに考慮した移動 モデルを示し,そのシミュレーション結果を示す。 2.移動モデル staff-model の導入 本稿で提案する「避難所情報の拡散方法」は, 先行研究[2]と同様のシミュレーション方法に対 し,避難所から遠ざかる移動を取り入れる。この 移動は避難所職員に採らせることを想定するた め,この移動モデルを staff-model と称し,その 移動体を staff と定義する。図 1 に概要を示す。 ○:被災者 □:避難所 △:staff :staff が別の 避難所 に向かう :staff が最初の 避難所 に戻る :被災者 が最寄の 避難所 に向かう 図1 staff-model 今回検討する staff-model の staff には,災害 発生直後,自身が属する避難所とは別の避難所へ 最短経路で向かわせ,その避難所に到着後,最初 の避難所に戻るという動作を採らせる。 3.シミュレーション評価 staff-model を用いることによる情報の拡散 特性を ONE シミュレータ[3]を用いて評価する。 ONE に用意されている地図上に,100 人の被災 者をランダム,任意数の避難所を任意に配置し, 内一か所の避難所に staff を配置する。シミュレ ーション開始直後,被災者は 4[km/h]で,最寄の 避難所へ最短経路で移動を開始し,staff は任意 の速度で,避難所情報を持って図 1 に示した移動 を開始する。全移動体間では擦れ違い通信を行わ せ,その通信範囲は半径 100[m]とする。図 2 に, staff-model の避難所情報の拡散特性を示す。 100 避難所情報を受信した被災者数 [人] 1.緒言 90 【 staff の移動速度 】 80 70 約30km/h(バイク) 60 約19km/h(自転車) 50 約7km/h(ランニング) 40 約4km/h(徒歩) 30 0km/h(移動なし) 20 10 0 120011001000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 図2 避難所までの距離 [m] staff-model による避難所情報の拡散特性 図 2 は,ある 1 回のシミュレーションにおける 代表的な値について「被災者が情報を受信した地 点と避難所との直線距離を計算し,その距離毎に 被災者数を集計・累積」という手順で作成した。 staff の移動速度が 0, 4[km/h]の時の結果から, staff-model を用いた方が,被災者が避難所から より遠方の地点で情報を受信可能と分かる。また, 19, 30[km/h]の結果から,staff の移動速度を上 げれば,1000[m]付近で効果が上がっている。 4.結言 本稿では,災害時の適切な避難誘導法を提案す るために DTN を用いた避難所情報の拡散を検討 した。その際,避難所の情報を被災者に早期に渡 すために必要な新たな移動モデルを提案し,その 移動モデルによる情報の拡散特性を示した。 参考文献 [1]鶴正人, 内田真人, 滝根哲哉, 永田晃, 松田 崇弘, 巳波弘佳, 山村新也,“解説論文:DTN 技 術の現状と展望”, 通信ソサイエティマガジン No.16, pp.57-68, 2011. [2]小松展久, 笹部昌弘, 川原純 , 笠原正治 , “モバイル端末の軌跡情報を用いた避難誘導 方式の提案と評価”, 電子情報通信学会技術研 究報告(CQ2014-104), pp.101-106, 2015. [3]TheONE(online), <http://www.netlab.tkk.f i/tutkimus/dtn/theone/> お問い合わせ先 氏名:新田貴之 E-mail:[email protected] I-19 P2P 型安否情報共有システムにおけるノードの物理的な 近傍性を考慮した通信手法の実装と評価 (仙台高専専攻科情報電子システム工学専攻 1,東北学院大学2) ○門脇伸明 1・武田敦志2・髙橋晶子 1 キーワード:構造化 P2P ネットワーク,安否情報共有システム,位置情報,通信手法 1.はじめに 2.物理的な近傍性を考慮した通信手法 P2P 型安否情報共有システムは災害時に損害 等がなく,かつ通信可能な各端末(ノード)が生 成する 1 次元ノード ID を基に P2P ネットワーク を構築し,ノード間の通信を行う.そこで,Z 曲 線[2]を用いて 2 次元の位置情報から 1 次元のノー ド ID 空間へのマッピングを行い,P2P ネットワ ークに物理的な近傍性を適用する.具体的には, 2 次元平面を小さなセルに区切り,ノードの属す るセルに対応する離散座標値のビット列 (xnxn-1…x2x1, ynyn-1…y2y1)から Z 曲線上の 1 次元座 標(Z 値 zValue)を下式により算出する. zValue ( xn yn xn1 yn1... x2 y2 x1 y1 ) 2 次に,ノード ID 空間[0,maxNodeID]に合わせて 0 zValue maxZvalueの値をとる Z 値の正規化 を下式に基づいて行い,位置情報に基づく初期ノ ード ID initNodeID を生成する. initNodeID zValue maxNodeID maxZValue また,Waon は動的負荷分散によってノード ID を変更するため,初期ノード ID 空間で隣接する ノードに合わせて initNodeID を調整し,新規参加 ノードのノード ID として割り当てる. 上述のとおり,ノードの物理的な位置情報に基 づくノード ID を生成することで,ノードの物理 的な近傍性を適用し,ネットワークへの負荷を低 減する. 他拠点経由の通信量の割合[%] 90 災害時に利用される安否確認サービスは,被災 地の劣悪なネットワーク環境下において,十分に 機能することが求められる.これまで我々は,構 造化 P2P ネットワークアルゴリズム Waon に基づ く P2P 安否情報共有システム [1]を提案してきた が,P2P ネットワークにおける下位のネットワー ク構造を考慮しない通信は,被災地の劣悪なネッ トワークへの負荷を増大させる可能性が高い. そこで,本稿では P2P 安否情報共有システム におけるノードの物理的な近傍性を考慮した通 信手法を提案する.また,安否情報共有システム に本手法を適用し,被災地の拠点間通信を想定し た実験を行うことで,本手法の有効性を確認する. 80 70 60 50 40 30 20 10 0 270 315 360 従来手法 図 1 提案手法 405 450 ノード数[台] 実験結果 3.実験 P2P 安否情報共有システムへ本手法を適用し, 評価実験を行った.本実験では 9 台の計算機端末 上にノードを仮想的に起動し,安否情報を登録し た.また,被災地の複数拠点における安否情報共 有システムの運用を想定し,災害時にネットワー ク資源が限られ劣悪な通信環境が想定される,拠 点間通信における負荷を測定するため,計算機端 末毎に被災地内の複数地域の位置情報をノード に与え,別の計算機端末上のノードを経由した通 信量の割合を評価基準とした. 図 1 に実験結果を示す.別の計算機端末上のノ ードを経由する通信量の割合が従来手法では 72.0%であったのに対し,提案手法では 33.9%で あった.実験結果より,被災地内の拠点間の通信 量を削減し,災害時の劣悪なネットワークへの負 荷を低減したことを確認した. 4.おわりに 本稿では P2P 安否情報共有システムにおける ノードの物理的な近傍性を考慮した通信手法を 提案した.今後は災害時の頻繁なノードの離脱や 参加を想定した評価実験を行う. 参考文献 [1] 生出拓馬,武田敦志,高橋晶子,菅沼拓夫:ネットワー クアウェアな P2P 型安否情報共有システムの提案,情報 処理学会論文誌,Vol. 55, No. 2, pp. 607–618 (2014). [2] Morton, G.: A Computer Oriented Geodetic Data Base and a New Technique in File Sequencing, International Business Machines Company (1966). お問い合わせ先 氏名:髙橋晶子 E-mail:[email protected] I-20 構造化 P2P ネットワーク Waon における ノードの性能差を考慮した負荷分散手法の検討 (仙台高専専攻科情報電子システム工学専攻 1,東北学院大学2) ○今野裕太 1・門脇伸明 1・武田敦志2・髙橋晶子 1 キーワード:構造化 P2P,Waon,動的負荷分散 1.はじめに 構造化 P2P ネットワークでは,特定の端末へ の負荷の偏りを防止するために,ネットワーク全 体に負荷を分散する手法が提案されている.我々 は,動的に負荷分散を行う構造化 P2P ネットワ ークとして Waon[1]を提案してきたが,Waon は各 端末の所持コンテンツ数に基づき負荷分散を行 うため,低性能な端末が過負荷な状態に陥ること を防止するのは困難である.したがって,端末の 性能に応じて,負荷を調整する手法が求められる. そこで本稿では,現在の Waon の負荷分散手法 と問題点に関して述べ,端末の性能差を考慮した 負荷分散手法の検討を行う. 2.Waon Waon は各端末(以降ノードと記述)の負荷値 が均等になるよう動的に負荷分散を行う構造化 P2P ネットワークである.具体的には,各ノード が自ノードの負荷値を算出し,ネットワーク全体 の合計負荷値と総ノード数を推測後,ネットワー ク全体の平均負荷値を算出する.負荷分散時は, 負荷値が平均負荷値を上回るノードを過負荷ノ ードと判断し,過負荷ノードが自ノードの管理領 域を狭めて,管理外となったコンテンツを隣接ノ ードに譲渡する.Waon では負荷値としてコンテ ンツ数を考慮することで,ネットワーク全体で各 ノードの所持コンテンツ数が均等になるような 負荷分散を行う. 3.ノードの性能差を考慮した負荷分散手法 ノードの性能差を考慮した負荷分散を実現す るために,本研究ではノードの負荷値としてコン テンツ数に加え,ノードの性能に基づいて動的に 負荷分散を行う.具体的には,CPU 使用率やス トレージ容量,ネットワーク帯域幅など,ノード やノード間の通信において,負荷の偏りに影響す る性能差の要因を負荷値とし,各要因に対して任 意に重みづけを行う.本稿では,各ノードの負荷 を次のように定義する. 値 load i ( contenti ) n k 1 ( k dif _ pk ) n ここで,contenti は各ノードの所持コンテンツ数, α は所持コンテンツ数に対する重み,dif_pk は性 能差の要因,n は性能差の要因数,βk は dif_pk の Node60 Node0 C2 C50 C7 Node15 Node43 C18 Node35 C33 Node23 Node30 ノード コンテンツ 管理領域 図1.Waon ネットワーク 優先度を表す.この負荷値に基づき,Waon の負 荷分散を行うことで,ノードの性能に応じて負荷 を調整し,低性能なノードの過負荷な状態を防止 する.また,サービス形態に合わせて性能差の要 因を設定することで,サービス形態に応じた負荷 分散を行う. 4.おわりに 本稿では,構造化 P2P ネットワーク Waon に おける,ノードの性能差を考慮した負荷分散手法 の検討を行った. 今後は,本提案手法の有効性を確認するために 動画配信サービスを想定し,CPU 使用率とスト レージ容量を性能差の要因として考慮した実験 と評価を行う. 参考文献 [1] Atushi TAKEDA, Takuma OIDE, and Akiko Takahashi : New Structured P2P Network with Dynamic Load Balancing Scheme, 2011 Workshops of International Conference on Advanced Information Networking and Applications, pp.108-113, 2011. お問い合わせ先 氏名:髙橋晶子 E-mail:[email protected] I-21 ソフトウェアモジュラールータを用いた ネットワーク学習システムの検討 (仙台高専 専攻科生産システムデザイン工学専攻 1,専攻科 2,機械システム工学科 3) ○宍戸 拓也 1・遠藤 昇2・北島 宏之 3 キーワード:Click Modular Router,ルータ,GUI,ARP,性能評価 1.緒言 ネットワーク技術を学習する際には,ネット ワークに関する基本知識を持ちながら,実際の 機器を運用した演習を行うことが重要である. 現在,機器を用いてネットワーク設計や運用手 法について学習を行うカリキュラムが存在す るが,ネットワーク分野を専門としていない教 育機関にとって,このような設備の導入は負担 が大きい.本研究では,ソフトウェアルータで ある Click Modular Router(以下 Click)[1]を 用いて,PC ベースの簡単な構成で演習が実施 できる学習システムの開発を行う. 2.Click を用いた学習システム Click は,柔軟にネットワーク機器の構成と 設定を可能とするソフトウェアであり,Click で構成されるルータはパケット分類,接続など を行う要素と呼ばれるパケット処理モジュー ルで組み立てられる.この Click の機能を学習 システムに組み込み,学習者が学んだ知識を活 用した演習を行えるようにする. Click の実行を行う際は,構成に基づいてス クリプトを記述しなければならない.しかし, 学習システムでは,学習者が Click の詳細な知 識を持つことなく,簡易的にネットワーク通信 の演習が行えることが重要である.そこで,学 習者にとって分かりやすい形で接続に必要な パラメータを提示したり,データ出力を行う GUI と処理プログラムを開発する. 3.実装した機能と演習の概要 今回,パラメータを設定する機能や,得られ たデータをアニメーションやグラフに出力す る機能を学習システムに組み込み,3 つの演習 を例として構成した.具体的には,GUI に以 下のような機能を追加し,必要な処理プログラ ムを作成した. (i) スクリプトの生成機能 テキストボックスに値を入力し,ボタンを押 すとスクリプトが生成される機能(図 1) (ii) アニメーション機能 Click の実行結果から得られたパケットを解 析し,学習者にアニメーションで通信の流れ を表示する機能 (iii) グラフ機能 コンボボックスで複数のパラメータを指定 図 1 ネットワーク情報設定のパラメータ設定 図 2 性能評価演習のパラメータ設定 し,Click を制御しながら得られたデータを グラフに出力する機能(図 2) これらの機能を組み込んで,演習を作成した. 「ネットワーク情報設定」では,スクリプト 生成機能を組み込むことで,各 PC の NIC に 適切な IP アドレスやサブネットマスクを割り 当てるなど,パラメータの設定のみでネットワ ーク構築が行える. 「ARP の動作確認演習」で は,アニメーション機能を組み込むことで, Click の実行結果から ARP の処理の流れをア ニメーションで表示できる.TCP スループッ トを測定する「性能評価演習」ではスクリプト 生成機能,グラフ機能を組み込むことで,遅延 時間と帯域幅を制御しながら,複数の通信を行 い,更に設定した帯域幅ごとに遅延時間とスル ープットの特性を示すグラフを出力し,得られ たデータを学習者に分かりやすく図示できる. 4.結言 学習者が Click を用いながら簡易的にネッ トワーク演習を行うために必要な機能を 3 つ の演習を例に実現した.これにより,身近な PC を用いながら学習者にとって理解しやすい 学習システムの構築を可能とした. 参考文献 [1] E. Kohler, et al. , “The Click Modular Router”, ACM Transactions on Computer Systems, vol. 18 , no. 3 , pp. 263-297 , Aug. 2000 お問い合わせ先 氏名:遠藤 昇 E-mail:[email protected] I-22 オンライン型 VR 提示システムの開発 (熊本高専専攻科電子情報システム工学専攻 1, 熊本高専人間情報システム工学科2) ○八木智徳 1・孫寧平2 キーワード:仮想現実感,3D センサー,ネットワーク,3DCG 1.はじめに バーチャルリアリティ(VR)は事前に記録し たデータを提示するものと,取得したデータに 処理を施してリアルタイムにオンラインで提 示するものとに大別される.現状として,産業 への応用などの普及がみられている前者に比 べ後者は少ない.また,VR には 3 次元の空間 性・実時間の相互作用・自己投射性が不可欠と なる.これを満足するため,3DCG・ネットワー ク・3D センサーを用いたオンライン型の VR 提 示システムの開発を試み,その一例として 3D センサーから取得した情報を 3DCG で表現した 人形に適用し,コンピュータで構築した 3 次元 空間内の人形を操っているような自己投射性 を与えるシステムを開発した. 2.人形の構造 本システムで使用する人形は関節ごとに分 割されており,それぞれの形状データは obj ファイルから読み取る.このデータは描画およ び人形の自然な動作を表現するための物理演 算に用いられる. 物理演算に適用するため,本システムでは人 形の各パーツを剛体として扱っており,質量, 反発係数,摩擦係数などのパラメータを設定し ている.これらの各パーツには人形の形状に保 つため,各関節には関節の動きに合わせた自由 度を持つ拘束条件を設けている.また,各パー ツは内部に静的剛体を持っており,その間にも 拘束条件を設けている.人形の各パーツを動か す際は,入力される移動量を設定された自由度 方向の回転移動量として静的剛体に適用する. これにより,関節間を接合しながらもパーツを 動作可能にすることを実現している. 3.3D センサーの導入 本システムでは,人形の操作のための入力デ バイスとして 3D センサーである Leap Motion を使用している.このセンサーでは,赤外線の 照射により手の関節を認識し,本体中心からの 各関節の 3 次元位置情報を取得することが可 能となっている.また,理論上最大 6 本の手を 認識することが可能であるため,両手の全関節 の情報を取得することができる. 本システムでは,ユーザー1 人に対してこの センサー1 台を割り当て,両手の中心および全 ての指の関節の位置情報を取得する.手の中心 と中指の第 1 関節から手の上下方向の回転量 を,各指の第 1 関節と第 2 関節間のベクトルと 第 2 関節と第 3 関節間のベクトルから取得可能 か指の第 2 関節回りの回転量を各静的剛体に 適用し人形に動作を加える. 4.ネットワーク構造 本システムでは,複数人が同時に利用可能と なるシステムとすること及び使用する 3D セン サーが 1 台の PC に 1 台しか接続できないこと の 2 点からクライアント・サーバー型のネット ワーク構造をとっており,クライアントがセン サー情報の取得と描画情報の出力を担い,サー バーにおいてセンサー情報を基にした物理演 算を行う.ここで,センサー情報と描画情報に 関してはサーバーとクライアント間での共有 が必要となるため,ネットワーク通信によりこ れを実現する. クライアントからはセンサーで取得した手 の関節の 3 次元位置情報を送信し,サーバーが 全クライアントからの受信完了後に物理演算 を行う.これによって得られる人形の位置・姿 勢行列をサーバーから全クライアントへ送信 する.クライアントは,受信した行列を基に人 形の各パーツを再描画する.本システムではこ のデータ取得および通信,描画を繰り返し行っ ている. 5.まとめ 本システムの目的とする,3D センサーから 取得したデータを基にネットワークを介して リアルタイムに 3DCG 空間内の人形を動かすこ とが可能なシステムの構築ができた. しかしユーザーの感想として,人形を動かす ことは操り人形のように操作することのよう な考えがあり,操作性の点においては改善の余 地があると考えられる. お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] I-23 オンラインの手描きコミュニケーションアプリの開発 (熊本高専 人間情報システム工学科) ○坂本 叶夢 ・ 孫寧平 キーワード:ペイントツール,オンライン,データベース 1.まえがき 従来のオンラインペイントツールは,デー タ通信を行う際に線のデータを画像として送 るためデータ量が多くなる.また,それは OS・ブラウザに依存するものが多い.そこで, 本研究では,線のデータ通信にスプライン曲 線の点列データを使うことで,より効率のよ い通信方法を提案した.更に JavaScript や jQuery などを用いて,OS・ブラウザを問わず に使用できるペイントツールを作成し, 「オン ラインの手描きコミュニケーションアプリ」 の開発に取り組んだ. 2.デザイン概要 開発において,下記の 3 点に重点を置いた. (1)スプライン曲線を用いた手描き曲線実装 スプライン曲線は,点から点を計算で補間 して滑らかな線を描画する技法である.なの で,線を描くときは,点の座標,点の個数,色, 線の太さなどの点列データがあれば描画する ことができる.これを用いることで,通信のデ ータ量が少なくなる.また,線を描いている途 中にリアルタイムで描写していくと,点が取 られると度に複雑な計算が行われるので,動 作が遅くなってしまう.なので,計算は1本の 線を書き終わってから行う.描いている途中 は,点を取得した位置に小さい丸を描画し,通 った軌跡が分かるようにする. (2)スマートなインターフェースの導入 ユーザーインターフェースのデザインの面 では,スマートフォンやタブレット,パソコン ともに使いやすいようにインターフェースを 実装した(図 1). ウの表示,非表示を切り替えることが出来る. これは,タブレットで操作する際,画面全体を キャンバスにした方が操作しやすいためであ る. (3)オンラインのデータ通信 通信には,jQuery や PHP を用いて実装した. 送信は,送信ボタンが押された時に,Ajax リク エストで,サーバーへ,json 形式にパースした 点列データを PHP ファイルへ渡す.渡されたデ ータを PHP がファイルに書き込むことで送信 が完了する.受信は,誰かが書き込みを行った 際に,他の端末から書き込みが行われたファイ ルを読み込む.読み込んだファイルから点の座 標,点の個数,色,太さなどを取得する.そして, スプライン曲線で,他の端末で描かれた線を計 算で再現する. 3.通信方法の実装 図 2 に示すように,ユーザーがキャンバス にて手描きスプライン曲線を描画した際に, 取った点の座標などの情報をサーバー上にあ らかじめ用意された,そのユーザー用の json ファイルに書き込む.各ユーザーが全員分の json ファイルを読み込むことで,データを共 有し,それぞれのキャンバスに計算で同じ線 を描画することができる.ユーザーは,線を 1 本描く度に送信ボタンを押す必要はない.線 が描かれる度に送る情報を追加していくので, 一度に複数の線を送信することができる. 図2:通信のイメージ図 図 1:スマートフォンでの GUI 特に,色の変更や消しゴムとペンを切り替 えるボタンはサイドウィンドウに配置してい る.Menu ボタンを押すことでサイドウィンド お問い合わせ先 氏名:孫寧平 E-mail:[email protected] I-24 スマートフォン操作可能な 汎用型学習リモートコントローラの開発 (米子高専電気情報工学科) ○田草健太郎・浅倉邦彦 キーワード:Raspberry Pi,赤外線信号,スマートフォン,Web アプリ 1.緒言 我々の身の回りの電化製品にはそれぞれにリ モコンがあるため,リビングはリモコンで溢れか えってしまっている.本研究では,これらのリモ コンを一元化し,スマートフォンから Web アプリ を介して電化製品を操作できる汎用型学習リモ コンを開発する.なお,システムの中枢には Raspberry Pi を用いる. 2.研究内容 図 1 にシステムの外観を示す.図右側の装置 が Raspberry Pi 2 で,Linux 系 OS である Raspbian 7.8 を搭載したシングルボードコン ピュータである[1].図左側の装置は,Raspberry Pi の GPIO インターフェイスと接続された自作 の赤外線送信回路で,Raspberry Pi からこの 回路を制御してリモコン信号の送受信を行う. 以上のシステムで所望のリモコン信号を学習 してエミュレートする.それをスマートフォン から Web アプリを介して制御することで遠隔 操作可能なリモコンとして動作する. リモコン信号の送受信には,Raspbian 上で 動作する赤外線信号解析プログラムの LIRC (Linux Infrared Remote Control)[2]を用いた. リモコン信号の学習には端末上で irrecord コ マンドを用い,信号にリモコン名とボタン名を つけ,各リモコンごとに一つのファイルとして 保存する.学習した信号は irsend コマンドを 用い,設定したリモコン名とボタン名を指定す ることで所望のボタンの信号を送信できる. スマートフォンから Web アプリを介して Raspberry Pi を制御するために,Raspbian に Web サーバとして Apache2.2,サーバサイドス クリプト言語として PHP5.4 をインストールし た.図 2 に作成した Web アプリの実行画面の一 例と実際のオーディオ用リモコンを示す.慣れ た操作性をそのまま継承するために,実際のリ モコンに極めて近いインターフェイスとなる ようデザインした.リモコンの各ボタンについ て,その信号を送信するコマンドを Web アプリ の各ボタンに関連付けすることで,スマートフ ォンから対象のオーディオを遠隔操作で適切 に操作することができた. 図 1 システムの外観図 図 2 作成した Web アプリとリモコン 3.結言 本研究では,複数のリモコンを一元化し,ス マートフォンから Web アプリを介して電化製 品を操作できる汎用型学習リモコンを開発し た.電化製品の状態のモニタリングについては 今後の課題である. 文 献 [1]:Eben Upton 他,Raspberry Pi ユーザーガイド 第2 版,インプレス,2014. [2] What is LIRC ?,http://www.lirc.org/,2015/12/15 ア クセス お問い合わせ先 氏名:浅倉邦彦 E-mail:[email protected] I-25 機械学習に基づく 動画配信サービスの動画品質決定手法に関する一検討 (仙台高専専攻科情報電子システム工学専攻) ○生出真人・髙橋晶子 キーワード:機械学習,動画配信サービス,利用者指向 1.はじめに スマートフォンの普及に伴い,携帯端末や無線 ネットワークを使った様々なサービスが一般的 となった.さらに,十分な計算機/ネットワーク資 源を必要とする動画配信サービスも携帯端末上 を含めて広く利用されるようになった.しかし, 携帯端末は計算機資源量が乏しいことから,多様 な利用者要求を考慮した適切な品質でのサービ ス提供は困難となる. そこで本稿では,携帯端末の計算機資源量やネ ットワーク状態を考慮しつつ,利用者要求を満足 する動画品質決定手法を提案する. 2.動画品質決定手法 動画品質決定手法は,動画配信サービスにおい て「高品質な動画を閲覧したい」, 「充電消費を可 能な限り抑えたい」等の多様な利用者要求と,利 用者が使用する携帯端末の状態を考慮して,利用 者要求を満足する動画品質を決定する. 動画配信サービスは,リアルタイム性を損なわ ないサービス提供が求められるため,学習アルゴ リズムは,オンライン学習の回帰問題として扱う Passive Aggressive[1]を用いる.学習の入力ベクト ルは利用者が発行する動画の画質や滑らかさ等 の利用者要求,CPU 使用率やネットワーク状態 等の端末状態とする.また,推定値となる出力は 動画ビットレートとする.これにより,1 秒あた りのデータ量を推定することが可能であり,推定 した動画ビットレートから画質やフレームレー ト等の各動画パラメータを学習済データ中から 近傍探索を行い決定する.そして,決定した各動 画パラメータと推定した動画ビットレートを組 み合わせて動画品質とし,利用者要求と端末状態 とともに学習させる.このような学習を繰り返す ことで,事例を蓄積し,利用者要求に適した動画 品質を決定できる. 図 1 実験結果 が満足する動画品質を提供可能であるか」を確認 した.評価指標は利用者要求と提供動画品質が一 致するときを 100%として正規化した利用者要求 充足度 RSR[3]とし,RSR が 90%以上 110%以下の とき利用者要求を満足する動画品質とした. 図 1 に実験結果を示す.ネットワーク帯域幅の みで動画品質を決定する単純手法では,常に RSR が 110%を上回り,利用者要求を超過している状 態が続いた.一方,提案手法では,3 回の学習を 行うことでネットワーク帯域幅が変化した場合 においても RSR が 90%以上 110%以下の状態を 維持した.すなわち,不安定なネットワーク環境 下においても利用者要求を満足する動画品質を 提供できることを確認した. 4.おわりに 本稿では,携帯端末の計算機資源量やネットワ ーク状態を考慮しつつ,利用者要求を満足する動 画品質決定手法を提案し,実験により提案手法の 動作を確認した.今後は,より詳細な実験を行う ことで提案手法の有効性を確認する. 謝辞:本研究の一部は,公益財団法人インテリジェント・コ スモス学術振興財団助成金の助成を受けて実施された. 参考文献 [1] Crammer, K. et al.: Online Passive-Aggressive Algorithms, 3.実験と評価 提案手法の動作を確認するため,提案手法に基 づいて実装したプロトタイプシステムを用いて 実験を行った.プロトタイプシステムでは,オン ライン機械学習向け分散処理フレームワークで ある Jubatus 0.7.2[2]を使用し,訓練データとして 270 データを学習させた.本実験では,無線によ る不安定なネットワーク環境を想定し,「利用可 能なネットワーク帯域幅を変化させても利用者 JMLR, Vol. 7, pp. 551-585 (2006). [2] Jubatus (online), available from <http://jubat.us/ja/index.html> (accessed 2015-12-09). [3] Takahashi, A. et al.: Expansion and evaluation of EAS to provision multimedia communications services in heterogeneous environments, ICCI*CC2014, pp. 236-241 (2014). お問い合わせ先 氏名:髙橋晶子 E-mail:[email protected] I-26 エリア放送向け放送コンテンツ生成システムの提案 (仙台高専情報ネットワーク工学科) ○脇山俊一郎・常前勇太・矢島邦昭 キーワード:エリア放送,地域情報,情報発信,コンテンツ生成,マッシュアップ 1.はじめに 3.放送コンテンツ生成システムの基本設計 仙台高専広瀬キャンパスでは、情報ネットワー ク工学科の教育研究設備としてエリア放送設備 を導入し、地上一般放送局としての免許を取得し 運用を行っている[1]。全国 33 事業者がエリア 放送局の免許を取得し放送業務を行っているが、 放送コンテンツ制作のコストが課題となってい る。本発表では、簡便な方法により低コストで地 域情報を提供する放送コンテンツの生成手法に ついて提案する。 PC 画面に情報素材を配置し、その画面を放送 コンテンツとするという基本構想に基づき、シス テムを開発する。ネットワークから取得できる各 種情報素材にマルチメディア処理を施し、これら をあらかじめデザインした放送画面イメージの フレームにスケジューリングしたうえで順次マ ッピングすることで変化のある放送コンテンツ として生成する手法を確立する(図 2)。また、 提供者からの情報は責任者が承認したのちに放 送されるようなフレームワークが必要であり、グ ループウェアの手法を取り入れこれを実現する。 2.放送コンテンツ生成システムのコンセプト 本校エリア放送局開設後、地域イベントの来場 者にアンケートを実施して、エリア放送にどのよ うな放送内容を期待するか調査した[2]。その結 果、視聴者が日常的に求める地域情報は、地域の 主要道路の混雑状況や鉄道の運行状況、気象情報 などのリアルタイムな情報であることがわかっ た。 例えば道路の混雑状況は道路沿線に設置した ネットワークカメラの映像をそのまま放送とし て流すだけでも十分な情報を提供することが可 能である。鉄道の運行情報や気象情報等も公的機 関がインターネット上で公開しているものがあ) り、これらを公開元の許諾を受けて放送画面に組 み込むだけで必要とされている情報を提供する ことができる。一方、自治体や町内会、学校など からのお知らせ等は、CATV 局の地域情報提供枠 でよく採用されているスライドショー形式での 掲示で事足りる。 以上の考察をもとに、図 1 に示すようにビデオ 編集等の作り込み無しに既存公開情報等のマッ シュアップをベースとした簡便な方法で地域情 報を提供する放送コンテンツを生成する手法を 提案する。 渋滞状況・路面状況 放送画面に表示する フレームパターンをスケジューリング FP1 FP1 E2 (画像) E3(文字情報) E1 (動画) FP3 FP1 FP2 t タイムスケジュール1 FP2: 学校広報 行事 映像 学校 情報 E1 動画1 カメラ2 動画2 E2 カメラ1 画像1 画像2 FP3: イベント情報 文字 情報 画像 カメラ映像 E3 文字1 文字2 文字3 t タイムスケジュール2 フレームに配置されている 放送素材の内容もスケジューリング スケジューリングをフレームと放送素材の両方で実装 変化のある放送コンテンツの生成が可能 図 2 放送コンテンツの時間的変化の実現方法 4.おわりに 現在、プロトタイプの設計・開発を行っている。 開発システムを実際のエリア放送局設備に接続 し、実現できた機能および許諾された情報をもと に、順次実証実験を開始する。 参考文献 放送コンテンツ生成・送出システム PC画面 =放送画面 あらかじめ複数の放送画面の フレームパターンを作成 エリア放送 マッシュアップ リアルタイムの地域情報 現在の気象データ 学校や自治体、町内会からの 地域情報 提供されたパワーポイントのスライドを スライドショーにして放送など 図 1 放送コンテンツ生成システムのイメージ [1]脇山俊一郎,矢島邦昭:情報通信系教育研究設 備としての地上デジタルテレビ・エリア放送局の 開設, 高専教育,No.38, pp.555-560(2015.3) [2]古積可菜, 脇山俊一郎,矢島邦昭:仙台高専にお けるエリア放送システムの運用に関する報告, 第 20 回高専シンポジウム in 函館,B-15 (2015.1) お問い合わせ先 氏名:脇山俊一郎 E-mail:[email protected] Pb-049 マイクログリッドシステムのオンライン化 (福島高専コミュニケーション情報学科 1, 福島高専専攻科機械・電気システム専攻 2) ○馬目華奈 1・樋口登 2・島村浩 1 キーワード:スマートグリッド,ネットワーク,IEEE1888,可視化,セキュリティ 1.背景 地球温暖化問題や東日本大震災以降の電力 危機によって,スマートグリッドシステムやエ ネルギーマネジメントシステムが注目されて いる.本校でもマイクログリッド実証実験シス テムを導入し,実験が行われている.今後,マ イクログリッド同士が相互接続され,スマート グリッドとして実現されていくであろう.それ に伴い,インターネットを利用したベンダによ らない通信が必要と考えられている. 2.研究内容 スタンドアローン状態である本校のマイク ログリッドシステムを外部サーバに接続する ためのテスト環境を開発した.実機への接続 は大きなリスクを伴うため,Raspberry Pi に よる擬似システムを使用した.マイクログリ ッドシステムがサーバ側に一方的にデータを 送信する単一方向性通信を実現し,可視化を 行った.次にリモートコントロールを行う双 方向性通信を実装し,サーバとマイクログリ ッドを接続した.サーバにセキュア ログイン を可能とした.尚,通信プロトコルには IEEE1888 を用いている. 3.システム構成 PV,WT,GE,BT をそれぞれ Raspberry Pi に プログラムした.外部サーバは AWS を使用 した.図 1 にシステム構成図を示す. 4.研究結果 擬似システムから外部サーバに対し 1 秒ご とにデータを送信することができた.一部デー タの送信が失敗しても可視化には影響しなか っ た . 可 視 化 に は D3 を ベ ー ス と し た JavaScript ライブラリの Highchart を使用し た.図 2 に風速データのグラフを示す. 図 2 1 時間ごとの風速データグラフ リモート操作においては,既存の技術を組み 合わせ,セキュリティを考慮した. 6.今後の展望 現在は,1 つのマイクログリッドシステムし か対応していない.将来的には複数のマイクロ グリッドシステムに対して制御を行えるよう にする必要がある.またデータ改ざん等, セキュリティ上の脆弱性への対策が必須であ る. 図 1 システム構成図 マイクログリットを構成している, お問い合わせ先 氏名:島村浩 E-mail:[email protected] Pb-050 Arduino を用いた歩行データの計測 (香川高専専攻科電子情報通信工学専攻 1, 香川高専通信ネットワーク工学科2) ○大林智樹 1・一色弘三2 キーワード:Arduino,歩行データ,心拍センサ,加速度センサ,ZigBee 2.歩行データ 本研究では,歩数・心拍数・運動時間・運動強 度・消費カロリーの 5 つを歩行データとして扱う ことにする。 運動強度とは,運動での身体への負荷を数値化 したものである。運動強度は,運動時の心拍数を R,最大心拍数を Rm,安静時の心拍数を Rr とす ると以下の式で求められ,これはカルボーネン法 と呼ばれている[2]。 運動強度(%) = {(R-Rr)÷(Rm-Rr)}×100 ここで,最大心拍数は「220 – 年齢」で求める。 更にこの運動強度を用いて,消費カロリーを求め ることができる。 3.心拍センサによる心拍数の測定 BPM(一分当たりの心拍の数)と IBI(心拍間 の時間)を算出する。心拍センサには, SEN-11574 (SparkFun)を用いた。心拍センサは指に装着し た。発光部の LED から発した光が生体内を透過・ 反射し,受光部のフォトダイオードにより測定さ れる。 4.加速度センサによる歩数の測定 歩数のカウントには 3 軸加速度センサを用い る。今回は KXM52-1050(Kionix)という加速度 センサが搭載されたモジュールを用い,x・y・z のそれぞれの軸の加速度を取得する。そして,3 軸の合成値(G 値と呼ぶことにする)を次の式で 求める。 G = √𝑥 2 + 𝑦 2 + 𝑧 2 [G] 歩行時の G 値の推移を調べた。そのグラフを図 1 に示す。横軸が時間,縦軸が G 値を表す。この G 値を判定して歩数を測定する。 G値[G] 1.まえがき 近年,国民の健康に対する意識・関心は高まっ てきている。その背景には生活習慣病の増加があ り,その原因となる要素として,食生活,運動習 慣,喫煙や飲酒の状況などが挙げられる。生活習 慣病の発症や進行を予防するためには,これらの データを継続的に取得し,医師や医療機関と共有 することが重要となる。 本研究では運動習慣について注目した。多忙な 現代人が簡単に行える運動として,ウォーキング が挙げられる。ウォーキングは,場所や時間を選 ばず,費用もかからない運動である。そこで,ウ ォーキングによるデータを計測・管理するシステ ムを考案する。システムの開発には,センサによ るデータ収集に長ける Arduino を用いる[1]。 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 0 2 4 6 8 10 時間[s] 図1 G 値の推移 5.データの送受信・表示 XBee(ZigBee プロトコルを用いたデータ送受 信デバイス)を用い,Arduino を 2 台用意して, Arduino 間でのデータの送受信を行う。子機では BPM や歩数を測定し親機に送信,親機ではそのデ ータを受信する。また,取得したデータをいつど こからでも確認できるように,親機に Ethernet シールドを搭載し,データを HTML で出力して Web ページでのデータの表示を行った。 6.今後の課題 今後の課題としては,歩き方や体格による個人 差に対応できる歩数の測定方法を考案すること, 運動時間を測定し運動強度・消費カロリーを算出 すること,BPM だけでなく心拍波形も Web ページ で見られるようにすること,などが挙げられる。 参考文献 [1] 高橋隆雄:たのしい電子工作 Arduino で電 子工作を始めよう!,秀和システム,2011. [2] 進藤武洪:ウォーキングを楽しもう,日進報 道,1988. お問い合わせ先 氏名:一色弘三 E-mail: [email protected] Pb-051 表面画像による木材の特徴量計測 (近畿大学高専 近畿大学高専 総合システム工学科) 総合システム工学科) ○松井翔平 松井翔平・ ・松生浩輝・熊木広一・川向遼・飯田嵩之・政清史晃 キーワード:画像処理,ロジスティック回帰分析,HSV 値,機械学習,ROC 解析 1.緒言 住宅や家具などの構造材として用いる木材 の欠陥は、表面の傷の他、内部の空洞・割れ・ 生き節・死に節・逆目・虫食い・やに・くさり・ とびくさり、などがある。本研究の目的は、木 材の表面画像から木材の欠陥や木目・節などの 特徴を自動的に計測するシステムを構築する ことである。 表1.8 つの計算モデルの検出結果 2.実験手順 本実験において、様々な木材の欠陥箇所の 画素値(HSV 値)を学習し、ロジスティック回 帰分析を用いて未知の木材画像に対して自 動的に欠陥を検知できるかどうかを評価す る。図 1 は、今回の実験フローである。 図2.HSV 値による節の検出結果 図1.実験フロー 3.実験結果 ロジスティック回帰分析は 2 値データによ り発生確率を予測するものである。今回、画像 の HSV 値を説明変数とし、目的変数は欠陥の 有無とするロジスティック回帰分析を行った。 あらかじめ検知したい場所を正解画像として 準備し、検知結果と比較を行った。表 1 は、 HSV 値による 7 通りの組み合わせと RGB 値 による計算モデルにより、網羅度、精度、F 値 を計算したものである。図 2 は HSV 値の計算 モデルによる実際の検出画像、図 3 は HSV 値 による計算モデルの ROC 曲線である。95%信 頼区間で、AUC= 0.9809(98.09%)であった。 図 3.ROC 曲線 4.まとめ 今後、この ROC 曲線を用いて、最適なカッ トオフ値を求める。また、木材の学習回数を増 やして、評価を行う。さらに、モルフォロジー による雑音除去やリアルタイム処理を目指す 予定である。 お問い合わせ先 氏名:政清史晃 E-mail:[email protected] Pb-052 車いすの走行状態と座圧分布の関係に関する基礎的検討 (苫小牧高専情報工学科1,苫小牧高専専攻科電子・生産システム工学 専攻2,苫小牧高専環境都市工学科3,苫小牧高専文系総合学科4) ○大橋智志 1・信田歩1・汐後聡人2・松尾優子3・小野真嗣4 キーワード:車いす,走行状態,座圧分布,面圧中心,危険予測,傾斜路 1.はじめに 歩行困難な高齢者や下肢に障がいを持つ人 の社会参加手段として車いすは広く普及して いるが,搭乗者の意に反した走行中の転倒等も 多数報告されている.このような走行時の危険 な状況を回避・抑制するには,走行状態(速度, 傾き,位置など)および路面状態を監視し,危 険予測に基づく注意喚起や回避指示の支援技 術も必要と考える.本研究の目的は,情報通信 技術(Information Communication Technology) を活用し,車いす事故とその被害の拡大を回 避・抑制することである.本稿では,下り傾斜 路走行時の状態に基づく搭乗者の座圧分布か ら,走行時における搭乗者への影響とその危険 予測について検討した結果を報告する. 2.下り傾斜路走行時の座圧分布 2.1 実験方法 下り傾斜路走行時の状態と搭乗者の座圧分 布の関係を検討する.車いすには,ジャイロセ ンサ 等を搭載した Texas Instruments 社製 CC2650STK を設置し,座圧分布の計測には,住 友理工株式会社製の SR ソフトビジョン(シー トサイズ 450×450[mm],計測箇所 256 点,計 測範囲 20~200[mmHg],計測間隔 0.2[s])を使 用した.実験時の走行条件は,苫小牧高専校舎 内における 5[deg]の傾斜路 10.3[m]と 10[deg] の傾斜路 1.35[m]を有する路面(図 1)を約 0.5[m/s]の速さで走行した.走行時は,搭乗者 によるハンドリム操作を行なわず,計測開始 2[s]後から介助者による手押し操作によって 車いすを直進させた.車いすの搭乗者は,19 ~35 歳の健常男性 8 名とし,それぞれ傾斜路 を走行し終える約 25[s]間の計測を 3 回実施し た. (a)傾斜路(写真) (b)断面図(距離・勾配) 図 1 傾斜路面の状況 2.2 実験結果 下り傾斜路走行時の座圧分布(8 名分)から 求めた面圧中心位置の移動距離結果を表 1 に 示す.座圧分布のデータ取得間隔は 0.4[s]と した.表 1 より,面圧中心の移動は,前方へ最 大 24.03[mm],平均 10.95[mm]となり,他の 3 方向と比較すると約 2 倍の差が確認できる.こ れは,下り傾斜路走行中における搭乗者の姿勢 が前方へ傾くこと,図 1(b)③に示す勾配 10[deg]から 1.10[m]の平坦路(図 1(b)④) への進入時に最大値となった結果からも推測 できる.また,勾配 10[deg]の傾斜は,階段に 設置した木製の簡易スロープであり,バリアフ リー新法の建築物移動等円滑化誘導基準第六 条に記載される「勾配は,1/12 を超えないこ と.」の基準を満たしていないことから,搭乗 者自身の操作による走行は危険を伴うことを 示唆できる. 表 1 面圧中心の移動距離 移動方向 前方 後方 左方向 右方向 最大[mm] 24.03 11.44 8.80 最小[mm] 3.36 2.88 2.06 10.01 1.89 平均[mm] 10.95 6.56 4.29 4.67 3.まとめ 本研究では,バリアフリー新法の勾配基準を 超える下り傾斜路において走行実験を実施し, 勾配 10[deg]の傾斜路から平坦路進入時の座 圧分布から求めた面圧中心位置の移動距離に ついて検討した.傾斜路走行における座圧分布 の変化から,搭乗者の座面の位置ずれに基づく 危険予測への関係性を示唆した. 謝辞 本研究の一部は,一般財団法人北海道開発協 会開発調査総合研究所による平成 27 年度研究 助成を受けて実施しており,実験に使用したセ ンサは,日本テキサス・インスツルメンツ株式 会社から提供されている. お問い合わせ先 氏名:大橋智志 E-mail:[email protected] Pb-053 C#言語を用いた頭部運動感応型 聴覚ディスプレイにおける再生方法の検討 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻) ○畠山巧幹・矢入聡 キーワード:聴覚ディスプレイ,C#言語,バッファ,DirectSound 1.緒言 聴覚ディスプレイ(Virtual Auditory Display: VAD)は、様々な方向にある音像を仮想的に出現さ せ る シ ス テ ム で あ る 。 既 存 の VAD は HRTF (Head-Related Transfer Function:頭部伝達関 数)に対応したインパルス応答である HRIR(Head-Related Impulse Response) を測定し、 HRIR を時間軸上で音源に畳み込んで実現される。 本研究で扱う頭部運動感応型 VAD[1]は、聴取者 の頭部の動きを頭部磁気センサ (FASTRAK)で検 出し、それに応じて畳み込む HRIR を切り替える 制御により、上記の問題を解決して実音源聴取時 を模擬可能にし、音響特性を厳密に再現したもの である。 本研究では Linux 環境の C 言語で書かれた既存 の頭部運動感応型 VAD[1]を Windows 環境の C#言 語へ移植し、より使いやすく、汎用性のあるもの にしていくことを目的とする。 2.再生方法の検討 調査中の FASTRAK との通信部分を除き、代わり に指定した座標を使った C#言語への書き換えは 終了した。また、試作段階ではあるが GUI の実装 も行った。しかしながら、コンパイル時にエラー は出ないものの、正常な再生ができなかった。 本プログラムは大きく分けて音源や頭部伝達 関数のデータの読み込み、音源への畳み込み処理、 再生から構成される。読み込み、畳み込み処理の 修正を終え、現在は再生部分の修正を行っている。 本プログラムは約 1ms ごとの処理後の音データ を再生するようになっており(図 1) 、処理結果 のデータが正しく生成されていても、再生方法に 問題があった場合に処理結果が正しいか確認が できない。そこで処理後のデータをまとめて、処 理がすべて終了した後に再生する方法で確認を 行った。DynamicSoundEffectInstance を使用し た再生により、データは正しく生成できているこ とが確認できたものの、実際の再生方法(図 1)で 再生するとぶつ切り音になってしまった。 次に実際の再生方法で正しく再生ができる方 法を調査し、DirectSound の導入を行った。 DirectSound ではストリームバッファを作成 し、そこにデータを書き込み、再生することでデ ータが再生される。約 1ms 分のストリームバッフ ァで実行すると、畳み込み処理が早く再生中にス トリームバッファが書き換わってしまい、細かい ぶつ切り音が再生された。次に、再生する全デー タ分のストリームバッファを用意し、処理結果を 上書きせずに追加していくように変更した。ぶつ 切り音はなくなったものの、再生データをループ するときに最初の部分を何度もリピートするよ うになってしまった。上書きされることが無くな ったが畳み込み処理が再生よりも早く終了して しまうため、ストリームバッファ上のデータを再 生しきる前にもう一度最初から再生が行われて しまうために起こったと考えられる。 現在は畳み込み処理した約 1ms 分のデータを 一つ前のデータが再生し終わる直前でストリー ムバッファに書き込めるようにすることで再生 と処理のずれを無くす方法の検討をしている。 3.まとめ 最優先でリアルタイムに処理をしたデータを 再生する方法を完成させ、既存のプログラムと同 様の動作をできるようにする。次に、汎用性向上 のために WAVE 形式のファイルを音源データとし て使えるようにする。そして、FASTRAK との通信 において C#言語に適した方法を導入する。上記 の予定を主目標として、可能であれば既存のシス テムとの性能評価やより使いやすい GUI への改 善を行っていきたい。 図 1 既存のプログラムの再生方法 参考文献 [1] 矢入 聡,岩谷 幸雄,鈴木 陽一, “頭部運 動感応型ソフトウェア聴覚ディスプレイ の開発”,日本バーチャルリアリティ学会 誌,Vol.11,No.3,2006. お問い合わせ先 氏名:畠山巧幹 E-mail:[email protected] Pb-054 MIDI 音楽データの特徴量を用いた多次元音楽ジャンル判別 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1) ○吉田純一・本郷哲 キーワード:MIDI,音楽ジャンル判別,演奏情報, 1.はじめに 現在の音楽配信や Web 上の楽曲デ ータはジャンル,曲数ともに膨大である.このよ うな膨大な楽曲から,音楽ユーザやそれを提供す る企業はその中で適切な楽曲やジャンルを選出 する必要がある.さらに,MIDI による音楽分類 は,楽譜情報による音楽分類であることから,楽 曲を直接的,音楽理論的に分類する手がかりを与 えるものとなる. 本研究では,MIDI 音楽データから演奏情報を 抽出して「JAZZ」 「CLASSIC」 「POPULAR」な どの音楽ジャンルを判定する手法を求めること を目的としている. これまで,楽器編成情報を用いたジャンル判別 によりジャンル判定を行ってきている[1]が,し 楽器編成をもとにしたジャンル判定ではソロの 楽曲などの判別が困難であるため,他の特徴量を 用いてジャンル判別を行う必要がある. 本研究では,Tempo 情報等を加えて複数の特徴 量からジャンル判別の検討を行う. 2.Tempo 情報の特徴量としての性質 対象とす る 3 つのジャンルについてそれぞれ Tempo 情報 を抽出し,どのような特徴がみられるかを調査し た結果,CLASSIC は Tempo の変動回数が多い ということが分かった.CLASSIC の楽器存在確 率ベクトルを用いた各ジャンルとの内積(楽器編 成によるジャンル判別結果)と,対象楽曲の Tempo 変動回数との関係を図1に示す. 図1 内積と Tempo 変動回数の散布図 図1を見ると,CLASSIC は POPULAR と JAZZ に比べてテンポの変化回数が圧倒的に多 いことが分かる. CLASSIC において,楽器編成によるジャンル 判別が失敗した楽曲は,いずれも使用楽器が1種 類 で ( 例 え ば ソ ロ ピ ア ノ 等 ) JAZZ に も POPULAR にも存在しうる楽器が使われていた 場合であったため,Tempo の変動回数も特徴量 として用いることを検討する. 3.二つの演奏情報によるジャンル判別 楽器編 成と Tempo 情報の二つを用いてジャンル判別を 行った.はじめに,入力された楽曲の楽器編成を 抽出し,使用楽器が 1 種類の場合は Tempo 情報 によるジャンル判定を行った.Tempo の変動回 数が 100 回以上の場合は CLASSIC と判別し, 100 回未満の場合と使用楽器が 2 種類以上の場合 は従来の楽器編成によるジャンル判別を行った. 表 1 に楽器編成情報による判別結果を,表 2 に 2 つの演奏情報を用いた判別結果を示す. 表 1 楽器編成によるジャンル判別性能の結果 POPULAR CLASSIC JAZZ 平均判別性能 判別率 正規化前 正規化後 1 0.86 0.36 0.72 0.8 0.92 0.79 0.84 表 2 二つの演奏情報によるジャンル判別性能の結果 POPULAR CLASSIC JAZZ 平均判別性能 判別率 正規化前 正規化後 1 0.86 0.8 1 0.8 0.92 0.87 0.93 表を見て分かるように Tempo 情報からジャン ル判別を行うことで CLASSIC の判別率を大幅 に向上させることができた.これは,POPULAR や JAZZ に比べて CLASSIC の Tempo 変動量の 特徴量が大きいことが理由であると考えられる. 4.おわりに 今回の調査で,CLASSICの判別 にTempo情報を用いる有効性が確認できた.し かし,POPULARやJAZZにおいてはTempoの変 動量に大きな差がなく,判別率の向上にはつなが らなかった.そこで,現在リズム情報を用いたジ ャンル判別を検討している.音楽にはジャンルご とに独特なリズムや雰囲気が存在する(JAZZ⇒ スウィング等).それらを特徴量として抽出する ことでPOPULARやJAZZの判別率の向上を図っ ていく. 参考文献 [1] 吉田純一 高専シンポジウムin函館 B- 8 お問い合わせ先 氏名:本郷 哲 E-mail:[email protected] Pb-055 音声が遅れを伴う補聴システムの聞き取り性能評価 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻) ○髙橋琴音・本郷哲 キーワード:両耳補聴システム,音声遅延,視聴覚相互作用,了解度試験,MOS 法 1.研究背景及び目的 両耳補聴システムでは、雑音抑制等の処理の ため、両耳への出力に若干の時間遅延が生じ、 違和感が生まれる[1]。本研究では、時間遅れ が生じたときの被験者の聞き取りやすさや、了 解度の臨界を調べることを目的として、音声が 遅れを伴う発話映像の聞き取り性能評価実験 を行ってきている[2]。本報告では、処理音声 の SN が低下したとき、また、見た目の動きに 対して音声が遅れて聞こえたときの違和感や、 どのように音声の聞き取りが変化するのかを 了解度試験及び MOS 法で調査した結果につい て述べる。 2.聴取実験 2.1 実験 1 信号処理によって時間遅れが起こったと仮 定し、音声データセット(FW03)に収録されてい る単語を発声した映像を、口の動きに対して音 声を遅らせ、ピンクノイズを加えて流し、映像 の話者が何と言っているように聞こえたかを 解答用紙に記入させる[3]。音声映像刺激は、 正しい発話をしている者の上半身を撮影し、編 集により時間遅延を与えて作成する。音声は補 聴システムの品質を考慮して fs=8kHz とする。 2.2 実験 2 補聴器などを用いて歩いている人の話を聞 く場合、音声遅延が生じるため、音が話者の後 ろから聞こえてくる状態になる。 本実験では、 このような場合の違和感を調べることを目的 として、音声遅延映像を流したディスプレイと スピーカーを三脚に少しずらして設置し、レー ルに沿って等速直線運動をさせ、そのときの違 和感を MOS 法などにより調べる。 3.結果と考察 fs=44.1kHz で行った文献[2]の実験結果を 図 1 に、実験 1 の結果を図 2 に示す。2 つを比 較すると、fs が高いものは映像付加と音声単 図 2 正答率の平均と標準偏差(fs=8kHz) 独のグラフに大きな差があるのに対し、fs が 低いものはほぼ差がないということがわかる。 これは、fs が低くなるにつれて傾聴効果が表 れ、単語を認識する上で映像は意味をなさなく なることが理由と考察している。 図3 MOS 評点の平均 また、実験 2 の結果を図 3 に示す。グラフよ り、100ms 以上の遅延が与えられると違和感を 覚えるとわかる。故に文献[2]にて行った研究 同様、両耳補聴システムにおいて、入力信号か ら出力信号までの遅延は 100ms 程度の遅延以 下にすることが要求されると考えられる。 参考文献 [1]大西仁 他 音声映像の非同期と視聴覚統合(3),信学技報 pp.67-70 (2009) [2]髙橋琴音 両耳補聴時における聞き取り性能評価,第 20 回高 専シンポジウム講演要旨 (2015) [3]天野成昭 他 親密度別単語了解度試験用音声データセット -解説-pp.1-2 (2003) [4]髙橋琴音 音声が遅れを伴う発話映像の聞き取り性能評価, 仙台高等専門学校情報デザイン学科平成 25 年度卒業論文 [5]坂本修一 他 話者映像と時間伸長音声のずれの検知限およ び許容限の影響,信学技報 vol.107, no.369, HIP2007- 139, pp.55-60 (2007) 図 1 正答率の平均と標準偏差(fs=44.1kHz) お問い合わせ先 氏名:髙橋琴音 E-mail:[email protected] Pb-056 徐 々 に テ ン ポ 変 化 が 可 能 な メ ト ロ ノ ー ム の 作 成 ( 仙 台 高 専 専 攻 科 生 産 シ ス テ ム デ ザ イ ン 工 学 専 攻 1 ) ○藤田武憲・本郷哲 キーワード:キーワード:Android メトロノーム UI 楽器練習支援 1 はじめに 楽器の演奏を練習する際に使 用されるメトロノームは、テンポが一定であ り、リタルダンド等のテンポが徐々に変化す る練習は困難である。また、近年 Android 等 のスマートフォンやタブレットの普及に伴 い、アプリケーションとしてのメトロノーム が望まれている。 このような背景を受けて、本研究ではテン ポを自由にかえることができ、複雑な操作が なく扱いやすい、演奏者向けのメトロノーム アプリケーションを開発することを目的と する。研究の流れとしては、アプリの制作か ら UI のデザインを行う。また、開発したア プリについてプロトコル分析手法を用いて インターフェースの評価実験を行い、ユーザ 視点からの評価を行う。 2 アプリケーションの概要 2.1 開発の目標と開発環境 演奏者の練習 を補助するアプリケーションとして、楽譜通 りにテンポが変化する、または、ユーザがテ ンポを細かく設定できるアプリケーション を作成する。作成するメトロノームは、図 1 に示すようなシステム構成が望ましい。拍子 やテンポを入力する。その情報からテンポを 定め、それを元に音を再生する。 開発環境として Eclipse4.3.2 と開発ツー ルである AndroidSDK(Software Development Kit)を用いる。 数を用いてループする際、間隔の単位がミリ 秒のため BPM から変換する必要がある。その ため以下の式に基づいて変換した。 ここで L は、再生音波形の長さである。 2.4 小節の設定 ユーザが拍子を入力する ことで1小節に何回音が再生されるかがわ かる。小節が変わることをユーザに知らせる ため、小節が変わる度、くり返している音と は違う音が再生され小節番号が表示される。 3 ユーザビリティの評価実験 開発したア プリケーションのユーザビリティの評価実 験として日常的な楽器演奏者を用いてプロ トコル分析を行う。評価の内容は、パラメー タを設定して音を鳴らす課題を出し、入力す るのにかかった時間と操作している人の手 順をシンクアラウド法により分析し定量化 していく。また、操作した感想を聞くことで 認知過程がスムーズであるか等を調べる。 4まとめ 現段階ではユーザが感覚的にパ ラメータを入力するUIを提案した。今後は、 ユーザビリティの評価実験を行う予定であ る。 図 1.本研究のシステム構成 2.2 感覚的なパラメータ入力 ユーザが感 覚的にパラメータを入力する方法として、画 面を指でなぞりグラフを作成してもらう。グ ラフは 縦軸が「BPM」横軸が「小節」になっ ており、グラフを指で描くことで数値が入力で きる。そのグラフの座標を取得することで再生 している音を変化するための数値入力ができ る。 2.3 BPM と再生間隔の関係 音のテンポを 決定するため BPM をユーザに入力してもら い、それに基づいて音を繰り返す。Timer 関 図 2.アプリケーション実行画面 お問い合わせ先 氏名:藤田 武憲 E-mail:[email protected] Pb-057 教育用赤外線学習リモートコントローラの開発 (米子高専専攻科生産システム工学専攻 1,米子高専電気情報工学科 2) ○山根大典 1・石倉規雄 2・松本正己 2 キーワード:組込みシステム,赤外線無線通信,教育支援 1.はじめに モノづくり教育支援のために,赤外線制御信 号を学習できるリモートコントローラの開発 を行った.システムの制御には ARM マイコンを 用い,国内で使用されている代表的な赤外線信 号のパターンを自動解析し,制御信号を記憶し て再生送信する機能を C/C++プログラムで実 装した.さらに,コントローラをキット化しす ることで,電子工作初心者でも簡単にコントロ ーラを作製できるようにした.これを公開講座 で中学生に製作してもらうことにより,モノづ くりを体験するとともに,無線通信への関心を もってもらうことを目指した. 2.学習リモコンの機能 作成した学習リモコンシステム構成と外観 を図 1 に示す.学習リモコンの制御に Cortex M0 コアを搭載した ARM マイコン(NPC1114)を用 いた.また,タクトスイッチの状態検出に PIC (PIC16F690)を用い,I2C 通信でスイッチの状態 データを ARM マイコンと同期している.学習リ モコンには次の機能を実装した. ・赤外信号学習機能 ・赤外信号送信機能 ・ミニヘリコプタの操縦機能 赤外信号学習機能は,赤外信号受信モジュー ルを用い,家庭用リモコンの赤外線信号を解析 し,バイナリデータへの変換を行う.このデー タを PIC の内蔵 EEPROM に書き込むことで,タ クトスイッチ毎に 15[Byte]までのデータを記 憶可能となっている. 赤外信号送信機能では,学習機能で記憶した バイナリデータを国内 3 社の規格に準拠した 制御信号に成形し,赤外 LED から出力する. 公開講座で中学生に赤外線通信を体験して もらうために,赤外線信号で制御されるミニヘ リコプタの操縦機能を実装した. 3.赤外線制御信号のフォーマット 家電製品で使われる赤外線信号はパルス位 置変調(PPM)方式を採用している.PPM 方式は, パルス間隔の違いで「0」, 「1」を表現する方式 である.実際は波長が 940[nm]の赤外線を用い て 38[kHz],デューティ比 1/3 の PWM 搬送波上 で,パルスを実現している(図 2).また,単位 パルス長 T はメーカ毎に異なる. 4.学習リモコンのキット化 電子工作初心者でも簡単に学習リモコンを 作製できるよう,基盤のパターンの設計を行い, プリント基板を製作した.さらに,極性のある 部品や,取り付け難易度の高い部品は事前には んだ付けすることで製作難易度を下げた.また, 回路を収める筐体を 3D プリンタで作製するこ とにより,外注時に比べ,筐体のコストダウン を図った.これにより,1 キットにつき約 4000 円で製作可能となった. 5.まとめ 中学生 15 名を対象にした 5 時間の公開講座 で,実際に学習リモコンの製作を行ってもらっ たところ,約 3 時間ですべての中学生が学習リ モコンを完成させることができた.その後,作 製した学習リモコンを使って,ミニヘリコプタ の操縦や,様々なメーカの家電製品のリモコン 信号を記録・再生することで,実際に家電製品 が制御できることを確認した.これにより,情 報通信技術への関心を持ってもらうことがで きた. ⾚外信号受信 モジュール GPIO ジョイ スティック GPIO 機能切替 スイッチ GPIO ARMマイコン PWM (NPC1114FN) タクトスイッチ GPIO ×9 I2C ⾚外LED LCD モジュール PIC (PIC16F690) 図 1 学習リモコンのシステム構成と外観 38 [kHz] 1/3 [duty] V V 0 1 t O 26.3 [us] t O T T T 2T (a) PWM 搬送波 (b)PPM 方式 図 2 赤外線信号の通信フォーマット お問い合わせ先 氏名:山根大典 E-mail:[email protected] Pb-058 Leap Motion を用いたバーチャルクレイ モデリングシステムの構築 (仙台高専専攻科情報デザイン工学専攻) ○北村勇喜・本郷 哲 キーワード:3D プリンタ,3DCG,NUI,3 次元入力センサ 1.背景と目的 3D モデリングの分野において、通常入力デバ イスとしてマウスを用いるが、マウスでは平面的 な動きしか入力することができず、3 次元形状の 操作を直感的に行うことができない。そこで文献 [1]等の提案があるが装置が大掛かりである。そ こで 1 台でシステムを構築することのできる 「Kinect を用いたバーチャルクレイモデリング システム[2]」を構築した。 本研究では、Kinect に代わり省スペースかつ 安価にシステムを構築することができる Leap Motion を用い、直感的に実際のクレイ作製に近 い操作を行うことのできる NUI の実装を目指す。 2.システムの概要 本システムでは、クレイに見立てた三角形ポリ ゴンを仮想空間内に配置し、Leap Motion で取得 したユーザの指の関節の座標データを用いて、ク レイの変形を行ったり、ジェスチャ入力による操 作を行う。図 1 に概要図を示す。 図 1 システムの概要図 プリミティブを生成後、三角形ポリゴンと人差 し指第一関節の線分の接触判定を行い、接触判定 されたポリゴンの頂点座標を全て移動させ、変形 を行う。接触判定は、三角形ポリゴンの法線ベク トルの計算、三角形ポリゴンを含む面を指の線分 が貫通しているか否かの貫通判定、貫通していた 場合の交点座標の計算、求めた交点が三角形ポリ ゴンの内部にあるか否かの内外判定の 4 ステッ プで実現される。図 2 に接触判定と CG の変形の 様子を示す。 3.ジェスチャ操作による NUI 3.1 プリミティブ生成 Leap Motion のサークルジェスチャをプリミ ティブ生成のコマンドとして割り当てた。ジェス チャで描いた円の中心に、描いた円と同じ大きさ の球を配置する。 3.2 モード切替 初期状態の通常モード、プリミティブ生成を行 うことのできる生成モード、変形の操作を行うこ とのできる編集モードの 3 つのモードを実装し、 スワイプジェスチャにより、1 つずつモードが切 り替わるようにした。これはプリミティブ生成時 の意図しない変形を防止するためである。 3.3 移動・回転・拡大縮小 移動などのアフィン変換のためのキーとなる ジェスチャも定義した。本システムでは左手を握 っている間の、右手のジェスチャにより移動・回 転・拡大縮小の各操作を行う。握っている判定に は Hand クラスの SphereRadius を使用する。こ れは手にフィットする球の半径の値を返す関数 で設定した閾値より小さければ握っていると判 定する。変形にはアフィン変換を用い、右手の操 作から各係数を以下のアルゴリズムで求める。 移動:右手の人差し指の座標の変化を移動量𝒕と し、𝑛フレーム目の人差し指の座標𝒕𝑛 とすると、 𝒕 = 𝒕𝟎 − 𝒕−𝟏 となる。 回転:右手の法線ベクトルの𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ, 𝑦𝑦𝑦, 𝑟𝑟𝑟𝑟 の変化を用いて各軸の回転量𝜃𝑎𝑎𝑎𝑎 を求める。 𝜃𝑥 = 𝑟𝑟𝑟𝑙 0 − 𝑟𝑟𝑟𝑙 −1 𝜃𝑦 , 𝜃𝑧 も同様に𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ, 𝑦𝑦𝑦から求める。 拡大縮小:Hand クラスの親指と人差し指の開閉 度を返す pinchStrength を用いて拡大量sを求め る。pinchStrength は閉じているとき 1、開いて いるとき 0 を返すので反転し、これの現フレーム と前フレームの差分を求め、1 を足すことで拡大 量sとする。 𝑠 = 1 + �(1 − 𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ0 ) − (1 − 𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ −1 )� = 1 + 𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ −1 − 𝑝𝑝𝑝𝑝ℎ0 【参考文献】 [1] 上 田 悦 子 , 映 像 情 報 メ デ ィ ア学 会 誌 Vol.59, No.1, pp.123-129, 2005. [2] 北村勇喜,本郷哲,高専シンポジウム in 函館,B-11 図 2 接触判定と変形 お問い合わせ先 氏名:北村勇喜 E-mail:[email protected] Pb-059 Android 端末を用いたバブルディスプレイの 無線制御系の改良 (米子高専 電気情報工学科) ○秦昂平・前田祥吾・権田英功・宮田仁志 キーワード:バブルディスプレイ,Android 端末,ソレノイドバルブ,Bluetooth 1.緒言 バブルディスプレイとは,ソレノイドバルブ の開閉により水中に発生させた気泡で,記号, 文字等を表現するものである.主にイベントで 利用される. 現在使用しているバブルディスプレイは,無 線制御可能なソレノイドバルブの数が 16 個に 限られているという問題点がある.この問題点 を解決することで,表示物の解像度,自由度を より拡張することができる.そこで本研究では, 大規模な数のソレノイドバルブを制御できる よう,バブルディスプレイの無線制御系の改良 を行う. 通信モジュール ①②を通信モジュールに並列につなぐ ①16 個のバルブを制御する回路 ②16 個のバルブを制御する回路 PIC トランジスタアレイ PIC トランジスタアレイ 図2 ソレノイドバルブ制御部 2.システムの構成 本研究で使用したバブルディスプレイは Android 端末と無線通信しており,Android ア プリに描画したバブルパターンをバブルディ スプレイに出力する.実際の出力の様子を図1 に示す.この制御部の演算には PIC を使用して いる.図 2 に示すように PIC に Bluetooth モジ ュール,トランジスタアレイを接続し,トラン ジスタアレイに接続されたソレノイドバルブ を制御するという形になる.1つの制御回路に つき 16 個のソレノイドバルブを制御可能で, この回路を増設し,図1のように通信モジュー ルに並列に接続することで,大規模な数のソレ ノイドバルブの制御が可能となる. 3.Android アプリ バブルディスプレイに表示させるパターン の描画については,表示物の自由度向上,また 表示を変更する際の操作性向上のため,タッチ パネル式を採用した. この部分にパターンを 指で描画する バルブ開閉時間の選択 (泡の大きさを変える) 描画パターンの送信,消去 図3 Android アプリ画面(32 マス×32 マス) Android アプリ画面に 描画したパターンを 気泡で描いている 4.結言 PIC に書き込んでいる演算部のプログラム の改良を行った.図2の制御部に組み込むこと で,大規模な数のソレノイドバルブの制御が可 能となる.今後は Android アプリのデータの送 信に関わる部分プログラムを,PIC のプログラ ムに対応するよう改良していく. ソレノイドバルブ 図1 バブルディスプレイ (パターン出力の様子) お問い合わせ先 氏名:権田英功 E-mail:[email protected] Pb-060 小規模農家向け農場観測制御システムの開発 (舞鶴高専 電気情報工学科) ○辰野渉・片山英昭 キーワード:IoT(Internet of Things),農作業省力化,自動観測 1.緒言 2013 年,農林水産庁は情報通信技術(ICT)を活 用した次世代農業の実現に向け,農機メーカーや IT 企業などで構成する研究会を設置し,次世代 農業推進への機運が高まっている.研究会設置の 背景には,「農業従事者の高齢化が進行したこと により,労働力不足が深刻となっており,農作業 における省力化を更に進めるとともに,新規就農 者への栽培技術力の継承」といった問題が掲げら れている. 本研究では,同様の問題を抱えた,京都府舞鶴 市の農家からの依頼を元に,「農場環境の自動観 測」と「ビニールハウス内機器制御」によって, 「小規模農家が利用できる安価な農場観測制御 システム」を開発したため報告する. 2.システム概要 本システムは,農場環境観測・外部機器制御を 担う観測ノードと,観測値の蓄積・利用を行うサ ーバによって構成される.図 1 にシステム構成図 を示す. 観測ノード サーバ Raspberry Pi Atm el ATm eg a328 温湿度センサ 地温センサ 作物の生育環境を適切に管理し,農作業省力化 を推進するため,温度管理ファンや LED 防蛾灯 などを想定した 100V 機器の制御を行う.サーバ から提供される制御情報を元に,Raspberry Pi の 汎用入出力端子に接続されたソリッドステート リレーを駆動させ,100V 機器を制御する. 2.2 観測値の利用 サーバは,Raspberry Pi から送信された観測値 の格納と時系列処理したデータのブラウザ出 力,そして外部機器の制御情報に関する API を 提供する.格納されたすべてのデータは,時系 列処理され,図 2 に示すようにブラウザ上に出 力される. 本研究で運用しているサーバは,ネットワー クを通じて利用可能なコンピューティング環境 であるクラウドの Microsoft Azure を使用し, LAMP(Linux,Apache,MySQL,PHP)環境を構築し ている.一般に,サーバの設置は敷居が高く, クラウド上で API を含むサーバサイドプログラ ムを提供することによって,観測地点の増加や 変更にも柔軟に対応可能である.農地は,台風 などの自然災害による影響を受けやすいため, 可用性の高いクラウド上にデータ蓄積すること でデータ消失のリスクを軽減した. 照度センサ DB 室内ファン SSR 回路 LED 防蛾灯 図1 システム構成図 2.1 観測ノード 観測ノードは,農場環境の自動観測と,ビニー ルハウス内に設置された 100V 機器の制御を行う. 観測対象は,作物の生育状態と関係性が明らかと なっている「温度・湿度・土壌温度・照度」とした. これらの観測は,AVR マイコン ATmega328P を 用いた 3 センサの制御によって情報の取得を行 う. 定期的な観測と観測データのサーバ送信を実 行するため,汎用入出力や Ethernet を備えた,シ ングルボードコンピュータ Raspberry Pi を使用す る.マイコン-Raspberry Pi 間は RS-232C シリアル 通信によって接続されており,マイコンから観測 値が送信される. 図2 観測データ出力 3.結言 本研究では, 温度・湿度・土壌温度・照度の観測 と 100V 機器の制御によって小規模農家が利用可 能な農場観測制御システムの開発を行った.今後, 土壌肥料状態を確認する EC センサについて検討 する. お問い合わせ先 氏名:辰野 渉 E-mail:[email protected] Pb-061 津波避難シミュレーションによる 津波危険区域の避難効率化の検討 (和歌山工業高等専門学校 電気情報工学科) ○濵 晃平、謝 孟春、天野 椋也、村田 充利、森 徹 キーワード:津波避難シミュレーション、津波危険区域、マルチエージェントシステム 1. はじめに 大地震が発生した際には、建物の倒壊や津波 などの様々な 2 次災害が発生する。2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、津波で の犠牲者が 90%以上を占めたと知られている。 津波の被害がここまで拡大した原因の 1 つ は、リアス式海岸や大陸棚といった津波危険区 域の海岸の地形が津波の挙動に影響を与えた からと考えられる。本研究では、津波危険区域 に着目した避難シミュレーションを行い、住民 が効率的に避難する方法を検討することを目 的とする。 2. 津波危険区域の避難シミュレーション 2.1 津波危険区域 津波危険区域とは、リアス式海岸や大陸棚と いう海岸の地形を持つ地域のことを指す。この 津波危険区域では、津波の挙動が変化し、一般 的な海岸の地形よりも津波が早く襲来すると いう特徴がある。 2.2 シミュレーションマップと避難者 本研究では、道路をセルの列で表現し、徒歩 による避難者をエージェントで表している。[1] シミュレーションマップは OpenStreetMap から道路情報を抽出したマップファイル(図 1) と、道路や交差点の繋がりを設定するノードフ ァイル(図 2)の 2 つから構成する。 2.4 評価方法 避難成功・失敗の判断については、本研究の シミュレーション対象地域での津波第 1 波の 到達予測時間 7 分を判断基準とする。また、す べてのエージェントが避難所までの避難時間 はハザードマップ等に記載されている避難に かかる時間との比較も行う。 3. 実験と考察 本研究は、和歌山県日高郡印南町の印南地区 をシミュレーションの対象とし、エージェント を 200 体、避難所を 1 箇所と設定した。その シミュレーション結果の一部を図 3 に示す。 すべてのエージェントが避難完了するまで にかかった平均時間は 8 分 30 秒であった。こ の結果は津波第 1 波到達予測時間 7 分を越え ているため、避難失敗となる。 時間がかかった原因として、避難所を 1 箇所 しか設定していないため、避難所から遠いエー ジェントは同じ道を通ってしまい大変混雑し たことが挙げられる。 避難所 避難経路 混雑している 図 3 シミュレーション結果の一部 4. 今後の予定 現段階の状態では制限時間内に避難できな いことがわかった。避難所を増やし、人口密度 の影響等も考慮したシミュレーションを行う 予定である。 図 1 マップファイル 図 2 ノードファイル 2.3 エージェントの行動 エージェントは原則として、道路の左側を通 行し、避難所までの最短経路を通る。避難所ま での最短経路は、ダイクストラ法を用いて取得 する。また、エージェントは他のエージェント を追い越すことをしないように設定している。 参考文献 [1] 木下,謝,森,村田,マルチエージェントシステ ムによる災害避難方式の検討,平成 25 年電気関 係学会関西支部大会講演論文集,p.372 (2013) お問い合わせ先 氏名:謝 孟春 E-mail:[email protected] Pb-062 オンデマンドバスシステムを用いた 過疎地域における効率的な配車方法の検討 ○和田 (和歌山高専 電気情報工学科) 貴登・謝 孟春・天野 椋也・村田 充利・森 徹 キーワード:オンデマンドバスシステム,経路探索,過疎地域 1.はじめに 現在、日本のバスの運用形態は路線バスが一 般的である。路線バスは時間帯により乗客数が 安定しないという問題がある。特に過疎地域で は、元々人口が少ないことから利用者も少なく、 都市部に比べ乗客数が極端に少ない運行が発 生しやすい。この問題を打開するためにオンデ マンドバス(On Demand Bus, ODB)が注目さ れている。 ODB は、利用者の要望に応じて運行するた めにあらかじめ乗客数を把握しやすい。しかし、 複数予約が入った場合にすべての予約の希望 に沿った運行が困難であり、遅延が許されない 通勤や通学、通院などの用途には利用しづらい という問題がある[1]。 本研究では、利用者の優先度を考慮した ODB システムを作成し、過疎地域での主な利 用用途である通勤、通学目的での利用に適した 配車方法を検討する。 2.2 利用者の優先度を考慮したルート作成 本研究では、利用者の利用目的に応じて遅延 の許容度合を設定し、それを優先度とする。例 えば、通勤など遅延の許されない利用の優先度 を最高とし、買物など時間に余裕のある利用の 優先度は低いものとする。 運行ルート作成にあたり以下のルールを与 える。 ① 乗車希望時刻以後に乗車駅を通過しなけ ればならない。 ② 優先度を適用した降車希望時刻以前に降 車駅を通過しなければならない。 3.実験 予備実験として、表 1 に示した利用者の予約 状況と表 2 のバス停から作成した運行表を表 3 に示す。 表 1 利用者の予約状況 利用者 乗客A 乗客B 乗客C 返信 バス停 DB 運行ルート 作成 図 1. ODB システムの構成 本システムは、利用者からの予約を予約 DB に保存し、バス停間の隣接状況とコストをバス 停 DB に保存する。この 2 つの DB から運行ル ートを作成し、利用者に返信する。 降車駅 2 5 2 優先度 高 中 低 コスト(分) 5 5 3 5 駅 2 3 3 4 駅 5 4 5 5 コスト(分) 3 5 3 3 表 3 作成した運行表 予約 運行表 DB 駅 2 3 5 4 通過駅 1 3 5 2 4 2 サーバー 予約 DB 乗車駅 1 3 4 表 2 バス停(隣接状況およびコスト) 駅 1 1 1 2 2.過疎地域に着目した ODB システム 2.1 ODB システムの構成 本研究で構築する ODB システムの構成を図 1に示す。 利用者 乗車希望時刻 降車希望時刻 13:00 13:15 13:05 13:20 13:15 13:20 通過時刻 13:00 13:05 13:08 13:11 13:16 13:21 所要時間(分) 5 3 3 5 5 4.今後の予定 実際の過疎地域を対象とし、今回提案した ODB システムを検証する予定である。 参考文献 [1] 坪内孝太,大和裕幸,稗方和夫:過疎地における 時間指定の出来るオンデマンドバスシステムの 効果,日本ロボット学会誌 Vo.27, No.1, pp.115-121 (2009) お問い合わせ先 氏名: 謝 孟春 E-mail:[email protected] Pb-063 Kinect を用いた個人識別システムに関する検討 (和歌山高専 電気情報工学科) ○間所匠・村田充利・森徹・謝孟春 キーワード:個人識別,特徴抽出 1.まえがき 近年、顔画像や生体情報を利用した個人識別 システムがコンピュータやスマートフォン、 ATM 等に導入され利用されている。しかし、 盗難や漏洩等が発生した際、端末に保存された 情報の更新は不可能なため、安全性を回復でき なくなるという問題を有する。そのため、個人 識別システムを導入する難易度が高くなって いる。 本研究では服装などの外見的特徴を利用し た導入が安易かつ、個人識別用データの損失耐 性の強固なシステムの構築を行い、その精度や 利用難易度等を検討する。 2.研究内容 2.1 システム概要 図1にシステムの情報取得の流れ、図2に情 報処理の流れを示す。本研究における検討用シ ステムでは、情報取得の所要時間に比して処理 に要する時間が非常に多いため、複数の PC を 用いたグリッドコンピューティングシステム 構成となっている。 4.考察 実験結果より、 約 70~80%の精度があること がわかった。また、ある程度までなら横方向か ら撮影しても精度に影響が少ないことが分か った。これは SURF 処理による特徴量抽出の 特性によるものだと考えられる。今後の課題と して導入難易度の検討、服装以外の外見的特徴 を利用した識別対象のフィルタ、前処理を行う ことで処理時間を短くする方法を検討する。 図1 情報取得の流れ 2.2 情報取得の流れ 本システムは識別対象の人物の胴体部分も しくは背中の画像を用いて識別を行う。識別情 報 の 取得 には Kinect セ ン サー を用 いる 。 Kinect から取得した関節情報をもとに右肩、 左肩、腰の関節位置をカラーストリームにマッ ピングする。その後、カラーストリームから関 節位置の範囲をトリミングし、タスク情報とと もにデータベースに登録する。 2.3 情報処理の流れ データベースに登録されたタスク情報をも とに画像から特徴点を抽出する。抽出には画像 処理ライブラリである OpenCV の SURF 特徴 量抽出を利用する。抽出した特徴点情報を予め 用意した識別対象の特徴点情報とマッチング 処理し、結果を保存する。 3.結果 検討用システムで識別対象を正面から撮影 したものとマッチング対象との間でマッチン グを行なった。その結果を表1に示す。 図2 情報処理の流れ 表1 マッチング対象と精度 マッチング対象 識別対象を正面から撮影 識別対象を30°横方向から撮影 識別対象外を正面から撮影 精度 約70~85% 約70~80% 約20~40% お問い合わせ先 氏名:村田充利 E-mail:[email protected] Pb-064 同一偏波二周波共用反射位相の GA による設計 (函館高専生産システム工学科) ○檜山 怜史、宇野 広祐、遠藤 俊、舟橋 拳人、丸山 珠美 キーワード:リフレクトアレー、偏波、マルチバンド、M2M、GA、遺伝的アルゴリズム 1.まえがき 近年、リフレクトアレーを用いて電波の届 かないエリアに反射波を送り、不感地帯を解 消する技術が検討されている[1]。等位相面を 所望方向に向けるリフレクトアレーの設計に おいて、周波数共用を実現するためには、ア レーを構成する一つの素子が複数の周波数で それぞれ独立に所望の位相を得る必要があり 困難となる。そこで本研究では、遺伝的アル ゴリズムを用いて素子の形状を変えることに よってこれを実現する方法について検討を行 った。 2. 同一偏波二周波共用反射位相 各素子を8×8の金属パッチで構成し、パ ッチの有無を 0 と 1 に置き換えて GA の染色体 とする。ここで、設計周波数は 1GHz と 1.5GHz の2周波とした。二つの周波数で同じ方向に ビームを向けるためには、各周波数における 位相差の比は 2:3 であれば良い。そこで設計 条件を 1GHz における隣接素子間の位相差を 80°、1.5GHz における隣接素子間の位相差を 120°とおき、表1の 9 種類の組み合わせにつ いて最適計算を行った。得られた結果のうち、 80°と 120°、40°と 240°、360°と 360°の 組み合わせのおける収束の様子をそれぞれ図 1,2,3に、得られた構造を図4に示す。全 ての染色体構成において所望した反射位相へ 収束することを確認した。 3. まとめ 本研究では、GA 染色体を用いて同一偏波二 周波共用反射位相を所望した角度へ収束させ るよう最適化を行い、実際に所望角へ収束さ せることが可能であることを明らかにした。 謝辞 本研究は東北大学電気通信研究所にお ける 共同プロジェクト研究により行われた。 また本研究の一部は京都大学 AMETLAB にお いて行われた。 参考文献 [1]T. Maruyama, et. all. ;”Capacitance Value Control for Metamaterial Reflectarray Using Multi-layer Mushroom Structure with Parasitic Patches,”ACES Journal, vol. 27, no.1, pp.28-41.Jan., 2012 お問い合わせ先 氏名:檜山 怜史、丸山 珠美 E-mail:[email protected] Pb-065 遺伝的アルゴリズムを用いた ヘビ型ロボットの推進制御に関する研究 (和歌山工業高等専門学校 電気情報工学科) ○堂園翼・森徹・謝孟春・村田充利 キーワード:遺伝的アルゴリズム、ロボット、ヘビ型ロボット、シミュレーション 1.はじめに 我が国は 1994 年の阪神大震災や 2011 年の 東日本大震災により甚大な被害を受けた。また 今後南海トラフ巨大地震の発生が予想されて いる。そのため被害を抑えるため防災ロボット や救助ロボットのニーズが高くなっている。そ の中で足場に影響されにくく、動きに自由度が 高いヘビ型ロボットが注目されている。 現状のヘビ型ロボットは車輪をつけた走行 制御が主流である。しかし、この場合起伏の激 しい場所での運用は難しい。そこで本研究では 遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm :GA) を用いて車輪をつけず体の動きのみの推進で 制御する走行制御の最適化を試みる。 模な突然変異を実行することで、局所的最適解 への収束を回避することが期待できる。 個体の評価としては最後尾ユニットの原点 から進んだ距離を求めその値を評価値とする。 このときシミュレーションモデルが進んだ向 きは考慮しないものとする。 表 2 GA の構成 1世代の個体数 終了条件 1世代の シミュレーション時間 選択 交叉 突然変異 3.GAを用いたヘビ型ロボットの推進制御の 最適化 本研究ではヘビ型ロボットの推進制御を検 討するためにシミュレーション環境を物理計 算エンジンの Open Dynamics Engine(ODE) によって構築し使用する。ヘビ型ロボットはユ ニットを直線上に 10 個並べたものとする。ユ ニット 1 つあたりの大きさは長さ 5[cm]×横幅 5[cm]×高さ 5[cm]で、重さは 100[g]とする。 このモデルを図 1 に示す。 図 1 ヘビ型ロボットのモデル このモデルの持つ各ユニット間の関節角度 (Y 軸方向と Z 軸方向)を遺伝子として個体を作 成し、GA により走行制御のシミュレーション を行う。 GA の構成を表 2、 手順を図 2 に示す。 本研究では GA のシミュレーションを行う 際、大変異という手法を導入する。これは一定 世代経過ごとに通常の突然変異に代わり、大規 大変異 20体 50世代経過 20秒 評価の高い個体から10体 選択した個体の各遺伝子を 確率で混ぜる 遺伝子を一定確率で 変化させる 一定世代経過ごとに 大きな突然変異を起こす 図 2 GAの手順 4.結言 シミュレーション用の環境と GA の構築を 行った。今後はシミュレーションを行い、発表 当日はシミュレーション結果を発表する。 お問い合わせ先 氏名:森徹 E-mail:[email protected] Pb-066 表面分析ソフトウェアの開発 -動的 Shirley 法による XPS スペクトル分析の自動化- (米子高専電気情報工学科 1,NIMS2,筑波大学 3,シエンタオミクロン 4) ○西澤侑吾 1・田中博美 1・松本凌2,3・吉川英樹 3・田沼繁夫 3・吉原一紘 4 キーワード:表面分析,X 線光電子分光,バックグラウンド,ソフトウェア, 2.実験方法 動的 Shirley 法の解を安定させるために、バッ クグラウンド除去後のスペクトルが,みかけ上の “負の値”を持たないようにする必要がある.そ こでバックグラウンドの初期端点強度を自動調 整するアルゴリズムを考案した.具体的には,ま ず XPS スペクトルにおいて下に凸の変曲点を検 出する(図 1(b) :a 点,b 点) .この中からスペ クトルの両端に最も近い変曲点を探す(図 1 (b):a 点,b 点) 。これらをバックグラウンド 計算の初期端点として採用する.このアルゴリズ ムにより,みかけ上“負の値”のスペクトル領域 がなくなり,誤差が本格的に改善されることで Local minimum に落ち込まなくなるとされる. なお本手法を改良型動的 Shirley 法と呼ぶ. (a) B Intensity (a.u.) 1.緒言 X 線 光 電 子 分 光 ( XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy)は,固体表面を数ナノオーダーの 深さまで分析できる優れた手法である.この XPS で得られるスペクトルの解析過程では,バックグ ラウンドとよばれる成分を正しく推定する必要 が あ る . 通 常 こ の 推 定 に は Shirley-Proctor-Sherwood(以降,Shirley)法 [1] が 用いられる.この方法は XPS スペクトルの両端 の 2 点の選択のみでバックグラウンドを推定で きる簡便な方法である.一方,2 点の選択は解析 者に委ねられており,解析者によってバックグラ ウンド推定の解が大きく異なる可能性がある. そこで最近,人為的な選択を介さずバックグラ ウンドを自動計算できる動的 Shirley 法[2]が提案 された.しかしながら現状の動的 Shirley 法では, 入力されるスペクトルの形状によっては解の収 束が不安定になりエラーを起こす. 例えば図 ( 1 a) のように終点(B 点)が始点(A 点)に比べて強 度が高すぎるとバックグラウンドが XPS スペク トルを横切る場合がある(図 1(a)中の破線囲 み).これによってみかけ上“負の値”となる. これは初期条件として指定した 2 点(以降,初期 端点)が不適切で,みかけ上“負の値”を持つ領 域が多いためである.そこで本研究ではこの解が 安定するアルゴリズムを構築し,これを適用した 解析支援ソフトウェアを開発した. Cu2p1/2 負の値 バックグラウンド A 下に凸の変曲点 (b) a b バックグラウンド計算に必要な2点 968 965 962 959 Binding Energy (eV) 956 図 1 動的 Shirley 法の問題点と改良結果 (a) 従来の動的 Shirley 法 (b) 改良型動的 Shirley 法 3.結果と検討 図 1(b)に改良型動的 Shirley 法により推定し たバックグラウンドを示す.解析対象には Cu2p XPS スペクトルを用いた.図より改良型動的 Shirley 法で推定されたバックグラウンドは生デ ータを横切っておらず,“負の値”の領域が発生す るのを抑制できている.これは、バックグラウン ド推定が最適解に収束したことを意味する. 4.結言 動的 Shirley 法の解の安定化を目指し,入力ス ペクトルの形状を考慮したアルゴリズムを開発 した.その結果,従来の動的 Shirley 法と比較し て適切なバックグラウンド推定が可能となった. 検証結果から,新しいソフトウェアは XPS スペ クトルの形状に依存することなく安定した解を 提供できることが明らかになった. 参考文献 [1] A. Proctor et al., Anal. Chem., 54 (1982) 13. [2] R. Matsumoto, Y. Nishizawa et al., J. Ele. Phenomena., (submitted). お問い合わせ先 氏名:西澤侑吾 E-mail:[email protected]
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