-1- 第11章 公債論 第1節 公債発行の現状 (1)公債とは 建設公債

第11章
第1節
公債論
公債発行の現状
(1)公債とは
建設公債→公共事業を行うために発行
将来世代に便益がおよぶケースに発行
赤字公債→特例公債 人件費等の経常的経費を賄うために発行
財政法第4条「国の 歳出は公債又は借入金以外 の歳入を以て、その財源としなければなら
ない。但し、公 共 事 業 費 ・・・の財源に つ い て は、国会の議決を経た金額 で公債を発行し
又 は 借 入 金 を な す こ と が で き る 」。 で は 禁 止 さ れ て い る
(2)日本の財政運営と公債発行
図 11-1
歳出総額、税収総計、国債発行額の推移(単位:億円)
出所:財務省資料より作成
1950 年 代 か ら 1960 年 代 前 半
1965 年 の 不 況
均衡予算原則
財政特例法にもとづき赤字国債発行
1973 年
石油ショック
1974 年
戦後初のマイナス成長
法人税の税収大幅ダウン
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2兆円規模の所得税の大減税
1973 年
老人医療無料化
1975 年 度
図 11-2
約 5 兆 3,000 億 円 の 国 債 発 行 ( う ち 赤 字 国 債 は 約 2 兆 3,000 億 円 )
公債発行額の推移
( 注 ) 12 年 度 ま で は 決 算 、 13 年 度 は 2 次 補 正 後 、 14 年 度 予 算。
出 所 :財 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm
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1979 年
約 13 兆 5,000 億 円 ( う ち 赤 字 公 債 は 約 6 兆 9,000 億 円 )
公 債 依 存 度 34.7 %
大平内閣
一般消費税導入
増税による財政再建
鈴木内閣
増税なき財政再建
マイナス・シーリング
所得税の自然増収
1980 年 代 後 半
バブル経済
巨額の自然増収
1990 年 か ら 1993 年 ( 平 成 2 年 か ら 5 年 )
1994 年
赤字公債の発行額ゼロ
村山税制改革のもとでの所得税の先行減税
小渕内閣の減税政策
減税規模
1999 年
平 年 度 ベ ー ス 4.1 兆 円 ( 国 税 3.0 兆 円 、 地 方 税 1.1 兆 円 )
国 債 発 行 額 約 37 兆 5000 億 円
公 債 依 存 度 42.1%
小泉内閣
30 兆 円 枠
2002 年 度 の 補 正 予 算
赤字国債が約 5 兆円だけ追加発行
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図 11-3
公債残高の推移
(注 ) 1 . 公 債 残 高 は各 年 度 の 3 月 末 現 在 額 。 た だ し、 13 年 度 、 14 年 度 は 見 込 み ( 13 年 度 は 、 14 年 度 借 換 国 債 の 13 年
度 に お け る 発 行 予 定 額 ( 約 7 兆円 ) を 含 む )。
2 . 特 例 公 債 残 高 は、 国 鉄 長 期 債 務 、 国 有 林 野 累 積 債 務 等 の 一 般 会 計 承 継 に よ る借 換 国 債 を 含 む 。
出 所 :財 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm
(3)国と地方の長期債務残高
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表 11-1
国および地方の長期債務残高
4 年度末
( 1992 年 度 末 )
< 実 績>
国
(単位:兆円)
9 年度末
( 1997 年 度 末 )
<実 績 >
12 年 度 末
( 2000 度 末 )
< 実 績>
14 年 度 末
( 2002 年 度 末 )
< 予 算>
357 程 度
491 程 度
528 程 度
258 程 度
368 程 度
414 程 度
地
方
150 程 度
181 程 度
195 程 度
国 と地 方 の重複分
▲ 15 程 度
▲ 26 程 度
▲ 30 程 度
国 ・地 方 合 計
301 程 度
492 程 度
646 程 度
675 程 度
693 程 度
対 GDP 比
62.2 %
94.6 %
125.9 %
134.8 %
139.6 %
( 注 ) 1 . GDP は 、 13 年 度 は 実 績 見 込 み 、 14 年 度 は 政 府 見 通 し 。
2 . 13 年 度 末の 国 の 長 期 債 務 残 高 及 び 普 通 国 債 残 高 は 、 実 績 ベ ー ス で は 、そ れ ぞ れ 514 兆 円 程 度 、
392 兆 円 程 度 。
3 . こ の ほ か 14 年 度 末 の 財 政 融 資 資 金 特 別 会 計 国 債 残 高 は 78 兆 円 程 度 。
普通国債残高
224 程 度
178 程 度
79 程 度
▲ 2程度
13 年 度 末
( 2001 年 度 末 )
< 2 次補正後
>
513 程 度
395 程 度
190 程 度
▲ 29 程 度
出 所 : 財 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm
第2節 公債の負担
(1)ケインズ派の公債負担論
ケインズ派(新正統派)の公債負担論
内国債
発行時点では国債の自発的な購入者から国への資金移転
償還時点では国から国債の保有者への資金移転
↓
利用可能な資源は不変
将来世代に転嫁せず
(2)新古典派の公債負担論
新古典派の公債負担論
ボーエン
公債の負担「ある世代の生涯消費の減少」
↓
公債の償還が自分が生きている間に行われなければ、負担を将来世代に転嫁できる
モディリアニ
公債の負担「資本蓄積の減少」
↓
公債も貯蓄手段のひとつ、民間の貯蓄が減少
(3)中立命題
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中立命題:公債の発行と課税による財源調達は、同じ経済効果を持つ
リカードの等価定理
個人は生涯の予算制約のもとで効用を最大化するように消費を決定
ライフサイクル・モデルによる等価定理の説明
2期間モデル
青年期、老年期
[課税による財源調達]
第1期の個人の予算制約
C 1 = Y − S − T 1 ( 1)
第2期の個人の予算制約
C 2 = ( 1+ r ) S − T 2 ( 2 )
第1期の政府の予算制約
G1=T1
(3 )
第2期の政府の予算制約
G2=T2
(4 )
( 1 )式 よ り
S=Y−C1−T1
( 1 )’
( 1 )’ を ( 2 ) に 代 入
C 2 = ( 1+r ) ( Y − C 1 − T 1 ) − T 2
両 辺 を ( 1+r ) で 割 る と
C 2 / ( 1+r ) = Y − C 1 − T 1 − T 2 / ( 1+r )
C 1 + C 2 / ( 1+r ) = Y − T 1 − T 2 / ( 1+r )
C 1 + C 2 / ( 1+r ) = Y − ( G 1 + G 2 / ( 1+r ) )
生涯消費 生涯所得
[公債発行による財源調達]
第1期の個人の予算制約
C 1 = Y − S − D ( 1)
第2期の個人の予算制約
C 2 = ( 1+ r )( S + D ) − T 2 ( 2 )
第1期の政府の予算制約
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G1=D
( 3)
第2期の政府の予算制約
G 2 = T 2 − ( 1+r ) D
(4 )
( 1 )式 よ り
S=Y−C1−D
( 1 )’
( 1 )’ を ( 2 ) に 代 入
C 2 = ( 1+r ) {( Y − C − D ) + D } − T 2
両 辺 を ( 1+r ) で 割 る と
C 2 / ( 1+r ) = Y − C 1 − T 2 / ( 1+r )
C 1 + C 2 / ( 1+r ) = Y − T 2 / ( 1+r ) ( 5 )
( 4 )式 よ り
T 2 = G 2 + ( 1+r ) D
( 4 )’
( 3 )式 を 代 入
T 2 = G 2 + ( 1+r ) G 1
( 4 ) ''
( 4 ) '' を ( 5 )に 代 入
C 1 + C 2 / ( 1+r ) = Y − ( G 1 + G 2 / ( 1+r ) )
バローの中立命題
公債の発行と償還 が別の世代にまたがっておこなわれるときは「リ カ ー ドの中立命題」
は成立しない。
バローによると発 行と償還が世代にまたがっておこなわれるとしても、 親の世代が子ど
もの世代の効用に関心を持つ場合には「中立命題」が成立する。
例:公債の発行に よ る財源調達が子どもの世代 でおこなわれる場合、親は 子どものことを
考え、遺産を残そうとする。
( 3 )中 立 命 題 の 前 提 条 件
①人々が政府の予算制約を正しく認識していること
②政府支出のパターンが一定であること
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③家計は単一の代表的家計によってモデル化されること
④資本市場が完全であること
⑤生存期間に不確実性がないこと
第3節
財政再建への取り組み
(1)公債発行の問題点
*赤字財政による景気対策は、現在の非効率的な産業構造を温存
*世代間の公平性の問題を発生
コトリコフ
世代会計
(2)近年における財政再建への取り組み
平 成 9 年 11 月 28 日 財 政 構 造 改 革 の 推 進 に 関 す る 特 別 措 置 法 成 立
→ 財 政 赤 字 対 GDP 比 3 % 以 下 及 び 特 例 公 債 脱 却 は 2003 年 を 目 標
平 成 10 年 5 月 29 日 財 政 構 造 改 革 の 推 進 に 関 す る 特 別 措 置 法 改 正 法 成 立
→ 財 政 健 全 化 目 標 の 達 成 年 次 を 2005 年 度 ま で 延 長
11 年 度 当 初 予 算 の 社 会 保 障 関 係 費 の 量 的 縮 減 目 標 を 「 お お む ね 2 % 」 か ら 「 極 力 抑 制 」
へ
平 成 12 月 11 日
財政構造改革の推進に関する特別措置法停止法成立
→ 財政構造改革法全体の施行を当分の間停止
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