ESPEC技術情報 No.17

お 客 様 の た め の 技 術 情 報 誌
◆特集…湿度計測・信頼性試験
■技術レポート
○恒温恒湿槽の性能評価用乾湿計の構造と
湿度測定精度
−品質工学的な取り組みについて− 1
■技術解説
○電気・電子分野における環境試験の基礎知識
−Part2:温湿度試験を企画・計画するために必要な
標準環境や水分の挙動に関する知識(後編)− 8
■トピックス1
○プラチナスKシリーズが「’
98年度優秀省エネル
ギー機器」に選定 13
■トピックス2
○「公益信託エスペック地球環境研究・技術基金」 14
株式会社
技術レポート
恒温恒湿槽の性能評価用乾湿計の構造と湿度測定精度
−品質工学的な取り組みについて−
中浜 寛和*
恒温恒湿槽の性能を測定する場合、業界規格では、湿度検知器として乾湿計(性能評価用乾
湿計)を用いることになっている。しかし、乾湿計の構造自体については何も触れておらず、
使用する乾湿計公式と乾湿計係数についてのみ規定している。近年、湿度の測定技術が向上
し、トレーサビリティー体制も整いつつある。そこで、改めて、乾湿計の構造と湿度測定精
度について検証した。
今回、実験としては、品質工学の手法を適用してみたので、その手法の紹介も行う。
1.はじめに
のトレーサビリティー体制が整いつつある。そこで、性能評
価用乾湿計の湿度測定精度を、改めて正確に確認しておく必
恒温恒湿槽の性能表示方法については、日本試験機工業会
が、JTM K 01:1998「恒温恒湿槽の性能試験方法および性能
要が出てきた。
今回、品質工学の手法を使って、性能評価用乾湿計の構造
表示方法」という規格(以下、JTM 規格)を定めている。こ
と湿度測定精度について実験を行った。品質工学の紹介を兼
の規格では、槽の湿度変動幅や湿度分布を求めるための湿度
ねて、その内容を報告する。
検知器としては、乾湿計(3-1節で詳述)のみを規定してい
る。しかし、使用する乾湿計の具体的な構造については何も
触れていない。ただ、風速と使用する乾湿公式を規定してい
るだけである。槽の湿度性能を測定するための乾湿計のこと
を、この論文では、性能評価用乾湿計、または単に乾湿計と
2.品質工学的アプローチ
2-1 環境試験と品質工学
品質工学について知るには、インターネットで品質工学あ
るいはタグチメソッドというキーワードで検索するのが手っ
呼ぶ。
弊社で使用している性能評価用乾湿計の構造については、
取り早い。品質工学とは、技術の良し悪しを判断するための
ESPEC 技術情報 No.11 で掲載した「環境試験装置における
評価手法である。田口玄一博士が提唱されており、米国では
湿度測定と乾湿計について」という技術解説の中で、図示し
Taguchi method と呼ばれている。
弊社の環境試験装置は、製品の信頼性試験を行うためによ
ている。その図を、図1として引用しておく。
プラスチック製の容器(写真フィルムの空き容器等で代用)
を水つぼとし、ウイックをT 熱電対にかぶせて湿球温度を検
出している。この構造については、BS 規格
1)、2)
を参考にし
く使われる。温度・湿度・圧力・振動等の過酷な環境に製品
をさらすことにより、製品が各種の環境で正常に動作するか
どうかを確認したり、寿命を推定したりするものである。
た。この乾湿計でほぼ妥当な再現性が得られている。一方、
しかし、最終的な製品や部品を使って信頼性試験をして不
現在では、光学式鏡面冷却露点計(以下、露点計)でかなり
具合が出た場合、その対策のために設計変更をしていては、
正確な湿度測定ができるようになり、国際的・国内的に湿度
開発期間が長くなる。対策後に別な不具合が発生して、設計
恒温恒湿器
熱電対リード線
乾球
温度記録計
木綿糸等
でしばる
プラス
チック
容器
黄銅球
純水
図1 装置の性能評価時の温湿度測定概略図
* 技術開発本部 テクニカルセンター
1
ESPEC 技術情報 No.17
⇒試作⇒性能確認というループを繰り返すことにもなりやす
子とするか制御因子とするかは、実験の目的によって変わる。
い。また、信頼性試験を長期間行うには、時間的な制約が大
きい。開発期間を短くするためには、短時間で評価結果が出
るように、各種の条件を組み合わせた複合環境試験を行う、
あるいは、HAST(High Accelerated Stress Test)や冷熱衝
撃試験などの一層過酷な環境試験を行うという方法がある。
一方、品質工学では、これらの環境試験は、技術開発段階
3.実験内容
3-1 乾湿計の基本
乾湿計とは、2本の温度計をセットにして、空気の温度と
湿度を同時に測定する温湿度計である。
でテストピースを用いて行うよう推奨している。テストピー
一本の温度計には、ウイックと呼ばれる布をかぶせて水で
スでの特性が、標準状態での場合と各種環境条件や劣化試験
濡らしておく。この温度計を湿球温度計という。もう一本の
後の場合で変化せず、特性のバラツキが少ない設計条件を求
温度計は乾球温度計と呼ばれ、周囲の空気の温度を測定する。
めるものである。この時、カタログに記載する最終的な品質
環境試験器では、乾球温度計・湿球温度計のセンサプローブ
特性ではなく、製品の持つ本質的な機能(基本機能)につい
を、それぞれ乾球温度検出端・湿球温度検出端と呼んでいる。
て、SN 比というただ一つの指標で評価する。このような設
乾湿計では、周囲の空気の乾き具合に応じてウイックから
計手法をパラメータ設計と呼んでいる。SN 比の大きい設計
水分が蒸発し、湿球温度検出端の温度が低下し、ある平衡温
条件は、製品化した時の再現性が高く、市場での不具合が発
度に達する。この温度を湿球温度という。一方、その時の空
生しにくい。まず、バラツキの少ない設計をしておいてから、
気の温度を乾球温度と呼ぶ。
次に、必要とする目標値に特性を合わせるわけである。この
乾湿計の入出力関係の基本は、次式で表される。
t d −t w ∝ e sw −e
ような設計手法を二段階設計法と呼ぶ。
2-2 SN 比と理想機能
ここで、t d
:乾球温度
tw
:湿球温度
SN 比とは、信号(Signal)とノイズ(Noise)との比であ
(3)
e sw :湿球温度における飽和水蒸気圧
る。計測器の場合、測定したい対象(入力信号)の変化には
e
:空気中の水蒸気分圧
できるだけリニアに反応して出力し、各種の誤差要因(ノイ
(3)式の関係を求めたものが乾湿計公式であり、その式の
ズ)には影響されない設計は、SN 比が高くて性能がよい。
係数を乾湿計係数と呼ぶ。乾湿計公式で最も一般的に用いら
現実にはノイズにまったく影響されない計測器は存在しない
れているのが、次のスプルング式である 3)。
e = e sw −A・p(t d −t w)
から、これはあくまで理想であり、理想機能と呼ぶ。
乾湿計の場合、計測器としての入力と出力の関係は、図2
(4)
ここで、p :気圧
のように考えられる。この入出力関係が理想的な形で実現し
A :乾湿計係数
たものが、理想機能である。
A = 0.000662(K −1)…湿球が氷結していない時
ただし、風速は2.5m/s 以上必要とされている(文献によっ
て多少異なる)。圧力の単位は統一しておけば何でもよいが、
制御因子(設計定数)
入力信号
出力信号
温度 t
乾球温度 t d
乾 湿 計
湿球温度 t w
温度 U
現在では、パスカル(Pa)が用いられる。
湿球温度と乾球温度から、乾湿計公式により、空気中の水
蒸気分圧を求め、相対湿度を計算する。相対湿度 U(%RH)
は、次式のように定義される。
U =(e/e s)×100
(5)
ここで、e s :乾球温度における飽和水蒸気圧
誤差因子
なお、JTM 規格では、2.5m/s 以上の風速を確保できない
図2 乾湿計の入出力関係
場合、次のペルンター式を採用している。その係数を表1に
示す。
乾湿計では周囲の温度 t と湿度 U が入力信号である(この
e = e sw −a・p(t d −t w)(1 +t w/b)
ような入力信号となる因子を信号因子という)。入力信号の
(6)
表1 ペルンター式の係数
変化に応じた乾湿球温度t d、t w が、乾湿計の特性値として出
力されればよいのである。すなわち、
td = t
t w = f(t, U)
(1)
(2)
で表される。
湿 球 付 近 の 風 速
(m/s)
湿球が氷結していない時
a
b
静 穏 0∼0.5
0.0012
610
弱 風 1.0∼1.5
0.0008
610
強 風 2.5以上
0.000656
610
設計者が自由に決定できる設計定数が制御因子である。例
えば、風速は、槽の制御用乾湿計では設計で決定できるから
制御因子である。しかし、性能評価用乾湿計では、風速はそ
の時の周囲状況によって異なるから誤差因子となる。ただし、
風速を測定して補正するなら誤差因子とはならない。誤差因
ESPEC 技術情報 No.17
2
3-2 信号因子
3-3 制御因子
乾湿計の入力信号は、乾湿計の周囲の温湿度である。乾湿
性能評価用乾湿計の湿球の構造を図4のように表す。制御
計公式自体は湿度の校正方式として考えればよいから、ここ
因子は7 つ取り上げた。これを表3に示す。制御因子は、表
では公式の吟味はせず、スプルング式を用いる。
5に示す通り、内側直交表 L 18 に割り付けた。
基準温湿度計で測定した温湿度を、乾湿計が本来示すべき
基準温湿度とする。まず、基準温度計で測定した空気温度を
乾球温度検出端(φ5)
基準乾球温度Td とする。次に、校正された露点計を基準湿度
計として測定した露点D p および前述の基準乾球温度Td から、
熱電対使用法 A
乾湿計が示すべき基準湿球温度 T w を計算する。そして、基
準乾湿球温度差(Td − Tw)を求める。同時に、各種構造の
ウイック素材 D
乾湿計で同じ雰囲気を測定し、乾湿球温度差(t d −t w)を求
湿球温度検出端 B
乾湿球距離 G
める。 各 種 のノイズがあっても、( T d − T w ) に対 する
ウイック長さ F
(t d − t w)のバラツキが少なく直線性のよい構造の乾湿計が、
性能評価用乾湿計として最適である。乾湿計に系統的な偏差
ウイック高さ E
があれば後で補正すればよい。
この関係をゼロ点比例式として、図3に示す。
湿球水容器 C
y
y=βM
乾湿計で
測定した
乾湿球温
度差
注)実際は、湿球温度検出端子Bの上下でウイックを糸でしばる。
図4 性能評価用乾湿計の構造と制御因子
バラツキσ
表3 制御因子とその水準
(t d−t w)
記号
M
露点計と温度計から求めた基準乾湿球温度差(T d−T w)
図3 信号因子 M と出力 y の関係
品質工学では、横軸に入力信号 M、縦軸に出力 y を取り、
比例定数をβという記号で表す。
信号因子としては、表2に示す 4 つの温湿度条件とした。
制御因子
水 準
A
熱電対使用法 A1:通常方式
A2:差動方式
B
湿球温度検出端 B1:素線のみ
B2:φ3mm黄銅球付 B3:φ5mm黄銅球付
C
湿球水容器
D
ウイック素材 D1:ナイロン不織布 D2:さらし木綿 D3:ガーゼ
E
ウイックの高さ E1:10mm
E2:20mm
E3:30mm
F
ウイックの長さ F1:10mm
F2:30mm
F3:50mm
G
乾湿球の距離 G1:乾湿球同位置 G2:乾球が25mm風上 G3:乾球が50mm風上
*
C1:乳酸菌飲料容器 C2:フィルム容器 C3:サンプルビン
*プラスチック製で、直径 30mm 高さ 50mm の円筒容器。
3-4 誤差因子と信号因子
これらを槽の設定温湿度とし、その時の湿り空気状態量(計
算値)を示す。露点計の性能上、高温高湿域では露点の測定
誤差因子として、風速、風向、露点計でのサンプリング位
置の3 つを取り上げた。これを、表4に示す。
が困難なので、最高で85 ℃ 90 % RH とした。
表4 誤差因子とその水準
表2 信号因子と状態量(計算値)
設定温湿度
乾球温度
t d(℃)
10
85
相対湿度
記号
湿 り 空 気 状 態 量
露 点
U( % R H ) D p(℃)
湿球温度
T w(℃)
乾湿球温度差
T d−T w(℃)
50
0.1
5.6
90
8.4
9.2
0.8
20
48.7
52.2
32.8
90
82.3
82.4
2.6
4.4
誤 差 因 子
水 準
H
風 速(m/s)
I
風 向
H1:1.0∼1.5
I1:真上
H2:≧2.5
I2:正面
J
露点計サンプリング位置
J1:固定
J2:等距離
信号因子としての温度・湿度(表2参照)と組み合わせて、
表5の外側直交表 L 8 に割り付けた。
なお、今回の実験では、誤差因子の組み合わせが煩雑にな
り、実験時間が長くなってしまった。風速という重要な誤差
因子に的をしぼって、実験のスピードアップをはかった方が
よかったと思われる。
3
ESPEC 技術情報 No.17
3-5 実験の組み合わせ
実験の組み合わせを表5に示す。すなわち、18 種類の構造
の乾湿計について、それぞれ8 通りの条件で測定を行う。実
験回数は18 × 8=144 回である。
表5 実験因子の割り付け
外側直交表 L8
No.
列
因子
1
2
3
4
5
6
7
8
1
温度
10℃
10℃
10℃
10℃
85℃
85℃
85℃
85℃
2
湿度
50%RH
50%RH
90%RH
90%RH
20%RH
20%RH
90%RH
90%RH
3
−
−
−
−
−
−
−
−
−
8
4
風速
1.0∼1.5
≧2.5
1.0∼1.5
≧2.5
1.0∼1.5
≧2.5
1.0∼1.5
≧2.5
内側直交表 L18
列
1
制御
熱電対
因子
使用法
記号
A
2
3
湿球検出端 湿球水容器
5
4
6
7
ウィック素材 ウィック高さ ウィック長さ 乾湿球
D
E
実験
5
風向
真上
正面
真上
正面
正面
真上
正面
真上
距離
誤差
6
サンプリング位置
固定
等距離
等距離
固定
固定
等距離
等距離
固定
F
G
e
7
−
−
−
−
−
−
−
−
B
C
実験No.1 通常方式
素線のみ
乳酸菌飲料容器 ナイロン不織布 10mm
10mm
0mm
1
y11
y12
y13
y14
y15
y16
y17
y18
2 通常方式
素線のみ
フィルム容器
さらし木綿 20mm
30mm
25mm
2
y21
…
…
…
…
…
…
y28
3 通常方式
素線のみ
サンプルビン
ガーゼ
30mm
50mm
50mm
3
y31
…
…
y38
4 通常方式
φ3黄銅球
乳酸菌飲料容器 ナイロン不織布 20mm
30mm
50mm
3
y41
…
…
y48
5 通常方式
φ3黄銅球
フィルム容器
さらし木綿 30mm
50mm
0mm
1
y51
…
…
y58
6 通常方式
φ3黄銅球
サンプルビン
ガーゼ
10mm
10mm
25mm
2
y61
…
…
y68
7 通常方式
φ5黄銅球
乳酸菌飲料容器 さらし木綿 10mm
50mm
25mm
3
y71
…
…
y78
8 通常方式
φ5黄銅球
フィルム容器
ガーゼ
20mm
10mm
50mm
1
y81
…
…
y88
9 通常方式
φ5黄銅球
サンプルビン
ナイロン不織布 30mm
30mm
0mm
2
y91
…
…
y98
10 差動方式
素線のみ
乳酸菌飲料容器 ガーゼ
30mm
30mm
25mm
1
y101
…
…
y108
11 差動方式
素線のみ
フィルム容器
ナイロン不織布 10mm
50mm
50mm
2
y111
…
…
y118
12 差動方式
素線のみ
サンプルビン
さらし木綿 20mm
10mm
0mm
3
y121
…
…
y128
13 差動方式
φ3黄銅球
乳酸菌飲料容器 さらし木綿 30mm
10mm
50mm
2
y131
…
…
y138
14 差動方式
φ3黄銅球
フィルム容器
ガーゼ
10mm
30mm
0mm
3
y141
…
…
y148
15 差動方式
φ3黄銅球
サンプルビン
ナイロン不織布 20mm
50mm
25mm
1
y151
…
…
y158
16 差動方式
φ5黄銅球
乳酸菌飲料容器 ガーゼ
20mm
50mm
0mm
2
y161
…
…
y168
17 差動方式
φ5黄銅球
フィルム容器
ナイロン不織布 30mm
10mm
25mm
3
y171
…
…
…
…
…
…
y178
18 差動方式
φ5黄銅球
サンプルビン
さらし木綿 10mm
30mm
50mm
1
y181
y182
y183
y184
y185
y186
y187
y188
3-6 実験装置
yij
−
3-7 実験結果
実験装置の概略を図5に示す。設定温湿度に制御した槽内
3-7-1 測定温湿度と基準温湿度
に風洞(R 付きダクト)を設置し、実験 No.ごとに各構造の
性能評価用乾湿計および基準温度計と露点計での測定デー
乾湿計を風洞内に取り付ける。同時に、基準温度計と露点計
タの一部を表6に示す。表6は、表5の内側直交表 1 の乾湿
とを、風洞内温湿度を測定できるように装着する。
計を用い、外側直交表 No.2 の条件で測定したものである。
表6 測定データの例:実験 No.1-2
風洞内基準
性 能 評 価 用 乾湿計
時 間
乾球温度検出端
乾球温度
湿球温度検出端
整流板
風
湿球水容器
露 点
D p(℃)
乾球温度
t d(℃)
湿球温度
(min)
T d(℃)
t w(℃)
0
9.8
-0.62
9.6
5.7
1
9.7
-0.07
9.5
5.6
…
…
…
…
…
11
9.7
-0.57
9.6
5.8
風洞を槽内にセットし、風洞内の温湿度が安定状態に達し
露点計
サンプリング
チューブ
基準温度計
プローブ
てから、1 分間隔で 11 回測定したデータを SN 比の計算に用
いた。
3-7-2 SN 比の計算
直交表L 18 のNo.1 ∼18 までの実験それぞれについて、基準
乾湿球温度差(Td − Tw)を入力信号、乾湿計で測定した乾
湿球温度差(t d − t w)を出力信号とし、ゼロ点比例式の SN
比を求めた。実験 No.1における SN 比の計算手順を次に示
す。
図5 実験装置の概略図
ESPEC 技術情報 No.17
4
全変動 S T
S T = 個々のデータの二乗和
=y
111
2
+…+ y
1111
2
感 度 β 2
β 2 =(Sβ−V e)/r
バラツキ σ
σ 2 =V e
2
S N 比 η
+y
121
2
+…+ y
1211
2
+…
η=β 2/σ 2 =(Sβ−V e)/(r・V e)
通常、SN 比ηは、次のようにして、デシベル(db)の単位
で表す。
+ y1812 +…+ y18112
ここで、y i j k は、性能評価用乾湿計の乾湿球温度差(t d −
SN 比 η[db]=10Log η= 10Log{(Sβ−V e)/(r・V e)}
t w )である。すなわち、i は18 種類の乾湿計、j はそれぞれの
乾湿計で行う 8 回の実験、k は各実験での測定回数(11 回)を
示す。実験 №1 の場合、i =1、j =1 ∼8、k =1 ∼11 である。
以上の計算を、18 種類の構造の乾湿計について、それぞれ、
同様に行う。
SN 比をデシベルで表すのは、要因効果の加法性を実現さ
一次の変動 Sβ
Sβ = ( y 1 1 1 ・ M 1 1 1 + y 1 1 2 ・ M 1 1 2 + … + y 1 1 1 1 ・ M 1 1 1 1
+ y121・M121 + y122・M122 +…+y1211・M1211
せるためである。詳細な意味については、図書 5)を参照され
たい。
+…
+ y181・M181 + y182・M182 +…+y1811・M1811)2/r
3-7-3 SN 比の結果
ここで、M i j k は、基準乾湿球温度差(Td − Tw)のことで
各実験 No.での SN 比を表7に示す。表7から各要因の水
あり、露点計で測定した露点 D p と基準温度計で測定した乾
準ごとのSN 比を計算したのが表8である。18 種類の乾湿計
球温度Td から計算する。設定温湿度は4 条件であるが、実験
の SN 比について、求める因子の水準がふくまれている乾湿
回数としてはj = 8 回となる。
計のSN 比を平均している。
有効除数 r
r =M1112+…+M11112+M1212+…+M12112 +…
+M1812 +…+M18112
誤差変動 S
Se = ST − S β
誤差分散 V e
V e = S e/f e
ここで、f e は自由度であり、データが88 個なので、f e は87
である。
表8 各要因の水準ごとの SN 比
表7 SN 比
実験No.
η
No.1
7.379
No.2
No.3
No.4
記号
制 御 因 子
水準記号
水 準 の 内 容
各 水 準 の
各水 準 の
SN比の合計
SN比(db)
A1
通常法
83.663
9.296
2.608
A2
差動方式
60.173
6.686
9.725
B1
素線のみ
32.919
5.487
B2
φ3mm黄銅球
46.022
7.670
B3
φ3mm黄銅球
64.896
10.816
C1
乳酸菌飲料容器
51.453
8.576
C2
フィルム容器
42.969
7.161
15.699
A
B
熱電対使用法
湿球温度検出端
No.5
6.727
No.6
7.238
No.7
14.040
C3
サンプルビン
49.415
8.236
No.8
6.299
D1
ナイロン不織布
68.586
11.431
No.9
13.948
D2
さらし木綿
32.102
5.350
No.10
3.861
D3
ガーゼ
43.149
7.191
No.11
11.757
E1
10mm
57.104
9.517
E2
20mm
42.446
7.074
E3
30mm
44.287
7.381
F1
10mm
28.531
4.755
F2
30mm
52.806
8.801
F3
50mm
62.499
10.416
G1
乾湿球同位置
41.670
6.945
G2
乾球が25mm風上
47.549
7.925
G3
乾球が50mm風上
54.617
9.103
No.12
No.13
5
SN比(db)
–2.410
C
D
E
湿球水容器
ウイック素材
ウイックの高さ
0.343
No.14
5.895
No.15
10.120
No.16
10.131
No.17
9.683
No.18
10.795
平 均
7.991
F
G
ウイックの長さ
乾湿球の距離
平 均
7.991
ESPEC 技術情報 No.17
各制御因子の水準ごとに求めたSN 比を図6に示す。
SN比(db)
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
A1
A2
B1
B2
B3
C1
C2
C3
D1
D2
D3
E1
E2
E3
F1
F2
F3
G1
G2
G3
通
常
差
動
方
式
素
線
の
み
φ
3
黄
銅
球
φ
5
黄
銅
球
乳
酸
菌
飲
料
容
器
フ
ィ
ル
ム
容
器
サ
ン
プ
ル
ビ
ン
ナ
イ
ロ
ン
不
織
布
サ
ラ
シ
木
綿
ガ
ー
ゼ
10
mm
20
mm
30
mm
10
mm
30
mm
50
mm
同
位
置
25
mm
風
上
50
mm
風
上
熱電対
湿球検出端
湿球水容器
ウイック素材
ウイック高さ
ウイック長さ
乾湿球距離
制 御 因 子 と 水 準
図6 制御因子と水準ごとの SN 比
3-8 確認実験
3-7-4 SN 比の分散分析
SN 比について分散分析を行うと表9となる。分散が比較
的小さい要因(この場合はC,E,G)をプールすると、表 10 と
3-8-1 SN 比での確認
SN 比の大小と他の要素も考慮して、現行条件、および、
表 11 のように組み合わせた最適条件と最悪条件とで、確認
なる。A,B,D,F の要因効果が大きい。
実験を行った。現行条件とは、図1で示すように当社で用い
表9 SN 比についての分散分析
ている性能評価用乾湿計の構造を指す。
要 因
自由度 f
変 動 S
これらの条件で、3-7節の結果から推定したSN 比と、確
分 散 V
A:熱電対
1
30.6545
30.6545
B:湿球検出端
2
86.1346
43.0673
C:湿球水容器
2
6.5382
3.2691
D:ウイック素材
2
116.6722
58.3361
E:ウイック高さ
2
21.2519
10.6259
F:ウイック長さ
2
102.0557
51.0278
G:乾湿球距離
2
14.0080
7.0040
1現行条件:A1B3C2D1E1F1G2
12.3
−
17.7
−
誤 差 e
4
13.7100
3.4275
2最適条件:A1B3C3D1E1F3G3
18.0
5.7
17.8
0.1
17
391.0251
3最悪条件 :A1B1C2D2E1F1G2
0.9
–11.4
–7.1
–24.8
計
表 10
要 因
プーリング後の分散分析表
自由度 f 変 動 S
認実験で実測したSN 比を、表 11 に示す。
表 11
制御因子の組み合わせと SN 比の推定値・実測値
推 定 値
実 測 値
制御因子の組み合わせ
SN 比
利 得
SN 比
利 得
因子と水準の組み合わせは、以下の理由による。
分 散 V 分散比 Fο 寄与率ρ(%)
水準 A 2 の差動方式の熱電対は、精密なディジタルボルト
A:熱電対
1
30.6545
30.6545
5.52
6.4
メータを用いて熱起電力を測定する場合には適していると思
B:湿球検出端
2
86.1346
43.0673
7.76
19.2
D:ウイック素材
2
116.6722
58.3361
10.51
27.0
われるが、ハイブリッドレコーダでの温度測定では、通常は
F:ウイック長さ
2
102.0557
51.0278
9.19
23.3
誤 差 e
10
55.5081
5.5508
17
391.0251
計
24.1
100.0
用いない。したがって、A 1 に統一した。水準C 1 の乳酸菌飲
料容器は耐熱性がなく85 ℃で変形してしまうので、除外した。
ウイック高さE とウイック長さF は、ウイック全体の長さか
ら制約される場合が多いので、上記の組み合わせにした。
SN 比の推定値は、表8のSN 比の平均値 T を基準にして、
要因効果の大きいA、B、D、F の各水準のSN 比を加えて計
算する。現行条件でのSN 比の推定値は、次のように計算さ
れる。
ESPEC 技術情報 No.17
6
現行条件: A1 +B3 +D1 +F1 −3 ×T
ただし、スプルング式では風速を誤差として扱い、乾湿計
=9.296 +10.816 +11.431 +4.755 −3 ×7.991
係数は、すべてA=0.000662(K −1)を用いた。参考に、風速
=12.3(db)
別の乾湿計係数を用いてペルンター式でも計算してみた。
最適条件と最悪条件での計算も同様である。
表 11 からわかるように、最適条件は、SN 比は高いが、現
4.結 論
行条件との差があまり出ていない。最悪条件が良くないこと
は、はっきりしている。しかし、直交表実験から推定した
現行条件の性能評価用乾湿計は、風速を誤差として扱いス
SN 比が、確認実験では充分再現していない。実験方法とし
プルング式で計算すると、低温低湿域でかつ低風速の場合、
ては、信号因子としての基準湿度の取り方など、検討する余
測定値が高めにずれる。しかし、風速を測定してペルンター
地がある。図3における信号 M として、基準乾球温度 Td と
式で計算すると、低風速でも、全温湿度域でほぼ正確な測定
基準露点D p との差(Td −D p)を採用する方法なども考えら
ができる。
れるが、その場合は直線的な比例式にはならない。あるいは
最適条件の乾湿計は、風速を誤差として扱いスプルング式
水蒸気圧の差で考えることもできる。また、誤差因子として
で計算しても、すなわち低風速の場合でも、全温湿度域でほ
の風速は、自然対流から強風まで、もっと広い範囲に水準を
ぼ正確な測定値が得られる。乾湿計の構造としては、現行条
採った方がよいだろう。
件を少し改良しただけである。
乾湿計における湿度測定では、湿球における水の蒸発と熱
しかし、不適当な構造の乾湿計では、10 %RH 以上の誤差
伝導が基本的要因である。湿球検出端が熱電対素線のみのB1
を生じる場合があり、標準偏差もやや大きく、1.0 %RH に達
では、ウイックとの熱伝導が充分でないと思われる。また、
する。
ウイックの素材として、ナイロン不織布D1 は、繊維の構造に
偏りがなく、水の蒸発も均一になりやすい、と思われる。
ウイック長さF は、熱電対のワイヤーから湿球への熱伝導
を防ぐために、ある程度の長さが必要であり、現行(F1=10)
よりは長め(30 ∼50mm)にした方がよい。
現行条件でも最適条件でも、標準偏差はあまり変わらず、
0.8 %RH 以内である。現行条件でもほぼ妥当な再現性が得ら
れてきた実績を裏付けるものであろう。
今回は、風速を誤差因子とし、1 ∼1.5m/s の低風速でもス
プルング式をそのまま適用した。一方、ペルンター式は風速
乾湿球距離G は、乾球を風上に置いた方がよいが、実際の
槽内では風向が常に定まっているわけではないので、あまり
こだわる必要はない。
別に係数が与えられているが、風速範囲が飛び飛びなので、
その間はどうするのかという疑問が生じる。
現実的な方法としては、風速が 1.5m/s 以上あれば、スプ
ルング式をそのまま適用すればよい。風速 0.5 ∼ 1.5m/s では
3-8-2 相対湿度での確認
ペルンター式の弱風の係数を使用すればよいだろう。ただし、
乾湿計で測定した乾湿球温度t d、t w から相対湿度(%RH)
を求め、露点計と基準温度計による測定値から換算した基準
乾湿計の構造は、今回求めたように、最適化しておく必要が
ある。
相対湿度との偏差を求めたのが、表 12 である。
表 12
乾
現行条件
実験
5.おわりに
基準湿度からの相対湿度偏差(% RH)
湿
計
構
造
今後、槽の性能評価用湿度検知器としては、乾湿計だけで
最 適 条 件
最 悪 条 件
スプルング式 ペルンター式 スプルング式 ペルンター式 スプルング式 ペルンター式
なく、電子式湿度センサ等、他の湿度計の採用も検討してい
σn−1
m σn−1
m
m σn−1
く必要がある。いわゆる湿度センサは、その経年変化や耐環
1
6.6 0.55
2.1 0.59
2.7 0.56 -2.3 0.60 15.0 0.90 10.9 0.96
境性に不安があるが、短時間の使用なら影響は小さいと思わ
2
2.7 0.49
2.7 0.49 -0.6 0.71 -0.6 0.71
9.3 0.67
9.3 0.67
れる。この場合、校正が問題となるが、JIS でも品質工学を
3
2.1 0.56
0.9 0.60
1.2 0.60
0.0 0.65
4.8 0.68
3.9 0.70
用いた校正方式が規格化されている 6)。
4
1.1 0.76
1.0 0.76 -0.7 0.68 -0.8 0.68
4.1 0.40
4.0 0.40
5
1.2 0.06
0.1 0.06
0.2 0.07 -1.0 0.07
5.8 0.06
4.8 0.06
6
1.4 0.07
1.2 0.07
0.3 0.06
0.0 0.06
5.4 0.09
5.2 0.09
さらには、市場でのクレームを発生させない手法として、多
7
0.4 0.25
0.2 0.25 -0.4 0.27 -0.5 0.27
0.7 0.40
0.5 0.40
くの分野で応用されつつある。
8
0.7 0.19
0.6 0.19
0.2 0.18
0.7 0.19
0.6 0.19
No.
m
σn−1
m σn−1
0.2 0.18
m
σn−1
近年、品質工学は、新製品の開発期間短縮とコストダウン、
この中で、環境試験は非常に重要な要素である。様々な環
m:平均値, σn−1:標準偏差, n=11
境条件で製品の機能が変わらなければ、市場での使用条件で
No.2,4,6,8:風速>2.5m/s、No.1,3,5,7:風速 1.0∼1.5m/s
も機能が低下しにくいと予想できる。我々としては、より合
No.1,2:10℃50%、No.3,4:10℃90%、No.5,6:85℃20%、
理的な環境試験方法を提案していきたい。
No.7,8:85℃90%RH
[参考文献]
1)BS3898(1965): Specification for Laboratory humidityovens(injection type)
2)BS4864(1973): Recommendations on the design and testing of enclosures for environmental testing
3)JIS Z 8806-1995 :「湿度−測定方法」
4)JTM K 01 : 1998「恒温恒湿槽の性能試験方法および性能表示方法」
5)田口玄一:「品質工学講座」全7巻、日本規格協会
6)JIS Z 9090-1991 :「測定−校正方式通則」
7
ESPEC 技術情報 No.17
技 術 解 説
電気・電子分野における環境試験の基礎知識
Part2:温湿度試験を企画・計画するために必要な標準環境や水分の挙動に関する知識(後編)
山本 敏男*
この章の後半として、湿度ストレスを取り扱う上で、あらかじめ習得しておくべき物理的な
予備知識について取り上げる。まず、水の物理的な特性をまとめた後、自然界の地理的な湿
度環境を復習する。さらに、水が物質を浸透する際の挙動についてまとめておくことにする。
3-2 湿度ストレス
1.8
市場で使用されている、または使用済みの製品の故障現象
1.6
あると判断される機会が非常に多いことを知ることになる。
これらの事象の再現を目的に実施される湿度試験の結果か
ら言える特徴は、次の3点に集約できる。
(1)部品や装置の故障率が他の故障原因と比較して大きく、
かつ、その現象が複雑である。
粘 性[mPa・s(cP)]
を解析すると、使用環境における湿度との関わり方に原因が
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
(2)試験の結果がばらつきやすいため、再現性が取りにくく、
故障原因を特定しにくい。
0.4
(3)自然環境とか、他のタイプの試験、他所で行った同様の
0.2
0
試験結果の相関が非常に取り難い。
10
20
30
40
50
60
70
80
90 100
温 度(℃)
その他の問題点としては、試験装置ごとの相対湿度制御の
精度に違いがみられること(制御方式の相違も要因のひとつ
図1 温度と水(液相)の粘度の関係
である。)および長期間の湿度試験が必要な場合、試験を継
徴は、水分単独では問題とならないレベルのストレスであっ
ても、他の要因が組み合わさった場合、その複合条件で発生
する現象が非常に多くなることが原因であると考えられる。
湿度ストレスの故障への形態については、定性的な事項に
ついてはすでに述べた。ここでは、このような種々のストレ
スを生起させる環境要因としての水の性質について、物理的
な観点からまとめておくことにする。
3-2-1 液 相
湿度を扱う上で知っておくべき水(液相)の物理的な特性
表面張力 [1×10-5N/cm(dyn/cm)]
続・維持するための対処法の違いなどがある。このような特
80
75
70
65
60
50
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
温 度(℃)
は、粘度、表面張力と密度である。そして、これらは温度と
ともに変化する性質でもある。図1は温度に対する粘度変化、
図2 温度と水(液相)の表面張力関係(空気接触の場合)
図2は表面張力変化を表している。
密度については、20 ℃における0.998 ㎝ 3 から100 ℃におけ
る 0.958 ㎝ 3 まで変化する。また、純粋の水の体積抵抗率は、
約20M Ω/㎝ 3 であるが、水は大変強力な溶剤であり、他から
汚染されやすく(観点を逆にすれば、他の物質を取り込みや
すく)ある物体表面に付着した水膜の抵抗値は非常に変化し
やすい。
* 技術企画室
ESPEC 技術情報 No.17
8
3-2-2 気 相
160 ℃に至る範囲の変化をg/m3 の単位であらわしている。こ
気相における水の代表的な物理的定数は粘度、拡散係数、
そして圧力と密度である。
のカーブは、飽和水蒸気である絶対湿度と温度の関係を示す
ことになる。水蒸気量がそのままの状態で、空気の温度が下
気相の粘度は、ある層が他の層に引っ張られる際のガス中
の内部摩擦の程度であると理解できる。図3は温度に対する
がって飽和温度を下回ったり、塵や他の凝縮核があると、水
蒸気は凝縮し液相となる。
粘度の変化を示している。拡散係数は空気の層を通過できる
1,000
水蒸気の量である。そして、その値は大気圧においては、
1.6 × 10
(g/㎝ /sec)である。
− 10
2
260
240
220
200
180
160
140
120
100
80
60
10
絶対湿度 (g/m3)
粘 性 [1×10-7Pa・s(μP)]
100
1.0
0.1
0.01
0
50
100
150 200
250 300 350
400 450
温 度(℃)
0.001
図3 水蒸気の粘度と温度との関係
0.0001
-80
-112
10,000
-40
-40
0
32
40
104
80
176
120
248
160 °C
320 °F
温 度
図5 飽和水蒸気の絶対湿度と温度との関係
100
さらに水蒸気は2 つの好ましくない電気的性質を持ってい
る。すなわち、絶対湿度の増加による、電気回路の端子間、
10
配線間の絶縁低下と電波伝播エネルギーの吸収である。図6
は多くの周波数と周波数帯が電磁場からエネルギーを吸収さ
1.0
れる様子とその吸収係数を示している。
0.1
300
0.01
0.001
-80
-112
-40
-40
0
32
40
104
80
176
120
248
160 °C
320 °F
温 度
吸収係数 (cm2/g)
飽和蒸気圧 [1.33×102Pa(mmHg)]
1,000
200
100
図4 飽和水蒸気圧と温度との関係
図4には飽和空気の圧力変化を温度の関数として表してあ
る。
水蒸気はガスであり、温度、圧力と容積の関係が理想気体
0
10−8
10−7
紫外線
10−5
10−4
波 長(m)
紫外線
10−3
10−2
10−1
電 波
可視光
の法則に従うものとして取り扱う。水蒸気による圧力は、自
然大気中では分圧となっており、他のガスの分圧を加えて全
10−6
図6 水蒸気の電磁波吸収バンドと吸収係数
圧である大気圧を構成しているわけである。(なお、環境試
験方法の中で、HAST(高度加速寿命試験)では、水蒸気以
外のガスは試験容器から放出しているので、理論的にはいか
なる試験環境も、そのときの水蒸気圧=全圧の関係にあるこ
とになる。)
9
3-2-3 自然界の湿度環境
ここで、自然界の湿度環境について概略をまとめておくこ
とにしよう。
自然界の絶対湿度は地理的に広く分布しているが、一般に
ある圧力における空気が混入させることのできる水蒸気量
温暖地域では高くなり、寒冷地域では低くなっている。すな
(絶対湿度)は温度によって変化する。図5は− 80 ℃から+
わち蒸発の割合と水蒸気を維持できる能力は温暖地域では高
ESPEC 技術情報 No.17
帯地方の約 27g/m3 となっている。時として、熱帯地域では、
32.0g/m3 程度の高湿度を記録することもある。
地上の環境を考えるとき、ある地域における絶対湿度に影
響するファクタは多くあり、その地域環境(局所環境)ごと
のすべてについて分類することは不可能であるが、大まかな
地域分類とその気候タイプ、絶対湿度の年間変動の例を図7
に記載している。すなわち、極地型、熱帯型、砂漠と温暖型
蒸気圧
[1.33×102Pa(mmHg)]
において絶対湿度の平均値の範囲は、極地の0.1g/m3 から熱
絶対湿度(g/m3)
くなり、寒冷地域では最も低くなる。データによると、地上
についてである。また高度と絶対湿度の関係が図8に示して
24
温 度(℃)
示した。なお、その他の気象学的知識については専門書を参
14
13
12
11
10
15
14
13
12
11
10
9
ある。 さらに、温度と水蒸気圧の日変動の例を図9∼ 12 に
照されたい。
15
26
24
22
20
18
16
24 2
4 6
8 10 12 14 16 18 20 22 24
時 間(h)
20
図 10
16
温暖地域の日変化(夏)(トロント)
温 暖
(トロント)
12
11
10
砂 漠
(アルジェリア)
8
絶対湿度(g/m3)
絶対湿度 (g/cm3)
熱 帯
(シンガポール)
4
北 極
(ツーレ)
0
月
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 1
9
絶対湿度
8
7
6
5
4
3
蒸気圧
2
図7 各気候型における月別絶対湿度の変化
1
10
10,000
1.0
温 度(℃)
100,000
高 度 (ft)
高 度 (km)
100
0.1
1.0
絶対湿度(g/m3)
10
絶対湿度(g/m3)
蒸気圧
26
28
27
26
25
24
25
24
23
23
22
22
絶対湿度
21
21
33
25
5
4
8
7
6
5
4
7
29
28
27
26
8
12
16
時 間(h)
20
24
図9 熱帯地域の日変化(夏)(シンガポール)
ESPEC 技術情報 No.17
砂漠地域の日変化(夏)
6
8
4
8 10 12 14 16 18 20 22 24
時 間(h)
7
31
30
25
24
4 6
8
32
温 度(℃)
温 度(℃)
30
図 11
図8 高度と絶対湿度との関係
28
27
35
100
蒸気圧
絶対湿度(g/m3) [1.33×102Pa(mmHg)]
0.01
40
20
24 2
1,000
0.1
0.001
60
45
6
5
4
3
2
24 2
4 6
図 12
8 10 12 14 16 18 20 22 24
時 間(h)
極地地域の日変化(夏)
10
4.水の侵入メカニズム
10
侵入限界
高圧,100℃
飽和蒸気
1.0
電気・電子製品、特にそれらを構成する部品への水の侵入
(1)装置・部品を構成する材料自体(バルク)を拡散して侵
入するもの。
(2)装置・部品のシール部分の隙間から侵入するもの。
気相、すなわち、水蒸気の場合には、理論的に、たとえば部品
の材料を構成する分子どうしの空間が水の分子直径(3.4 Å)
よりも大きい場合にのみ侵入することができることになる。
10−2
る。
さらに、水蒸気が材料の内部へ移動していく現象には固有
のメカニズムがあり、材料を通過するメカニズムが生じるサ
侵入限界
遷移流
10−3
低圧空気−
蒸気混合
10−4
分子流
10−5
10−6
10−6
平均自由行程
10−5
そして、水蒸気が材料の分子空間を拡散するときの割合は、
入り口の開口面積と流れ方向の水蒸気の圧力勾配に比例す
低圧
分子流
粘性流
mg/24 h
わち、
材料からの浸透
10−1
メカニズムは、次のような 2 つのルートが挙げられる。すな
10−4
穴の半径(cm)
図 13
10−3
10−2
水蒸気の侵入特性
4-1 低圧メカニズム(ほとんどが空気)の場合
この場合にも、さらに2 つのメカニズムに区分して考える。
イクル(回数あるいは周期)が材料の拡散係数に関わってい
① まず、温度、水蒸気圧力と大気圧は一定と仮定する。水
る。材料の内部においては、安定した定常状態が造られるま
蒸気は侵入経路の中に存在する空気の塊の中を拡散によ
で、水蒸気は材料の中を流れることになるが、この場合、拡
って侵入・通過する。この場合、侵入の程度は経路に存
散係数はその材料のもつ特性によることになる。たとえば
在する空気の抵抗の大きさによって決まる。また、その
10 −7g/cm2/sec の拡散係数を持つ材料では、1mm の厚みに対
侵入割合は、穴の直径によって変わる。
して水が浸透して安定するには約10 時間を要する。このよう
に一見して、シール機能が完全と思われる個所についても、
② ここで温度サイクルがあった場合には、経路に及ぶ圧力
変動が蒸気と空気の混合ガスの経路通過を助成する。水
水蒸気は拡散現象によって材料の中に侵入する可能性がある
分の侵入程度は水蒸気分圧、すなわち空気/水分の混合
ことになる。
割合と、経路抵抗とその直径に支配される。穴の大きさ、
次に、大気中で水蒸気の挙動をみる場合には、常に乾燥空
すなわち、直径は侵入のメカニズムを変えることになる
気の存在を考えておかねばならない。すなわち、たとえ相対
が、低圧下のサイクルでは侵入の変化は小さく、大きい
湿度 100 %の水蒸気環境を想定した場合であっても、漏れ部
穴の場合にのみ顕著になる。
分への水の侵入メカニズムについては水蒸気と共存している
乾燥空気の存在を考慮に入れなければならない。通常、電
4-2 高圧力メカニズム(ほとんどが水蒸気)の場合
気・電子製品の市場にあっては、乾燥空気+水蒸気の混合ガ
高い温度において、高い水蒸気圧が存在した場合には、濡
スとしての環境であり、この混合ガスの状態が侵入部分近傍
れ部分あるいは穴の直径の違いによって、次の3 種類の侵入
に存在しているとして、この混合ガス状態について、次の 2
メカニズムに分類される。
つの状況(湿潤状態)に区分する。
① 分子の平均自由行程(7 × 10 − 5 cm)よりも小さな直径の
(1)低圧力水蒸気の場合には、ほとんどが空気である。(低
圧メカニズム)
(2)高圧力水蒸気の場合には、ほとんどが水分である。(高
圧メカニズム)
そして、これらの状態での混合ガス状態は、水蒸気の侵入
現象について固有のメカニズムを持っている。
穴では、流入割合の程度は経路の抵抗の平方根と水蒸気
圧によるものとなる。経路の中で、方向変化を余儀なく
されるときの抵抗は経路の直径、および長さと残留する
空気塊を通過する水蒸気の浸透割合によることになる。
(分子流: Molecular flow)
② 穴の直径が平均自由行程よりも大きい場合、流入割合の
低圧水蒸気の場合のメカニズムは、水蒸気が50 %以下の場
程度は経路の抵抗の平方根と圧力の2 乗に比例する。この
合に適用され、高圧水蒸気の場合のメカニズムは50 %を越え、
場合、抵抗は直径の4乗と経路の長さと水蒸気の粘度に
100 %水蒸気の状態まで適用されている。80 ℃の飽和状態の
よるところとなる。それゆえ侵入割合は、大きな漏れの
とき、乾燥空気:水蒸気= 50 : 50 の比率になるが、高圧プ
場合、小さな漏れに比して飛躍的に大きくなる。(粘性
ロセスは通常80 ℃飽和状態以上の環境で適用される。侵入割
流: Viscous flow)
合は、図 13 に示すような特性が計算されている。
③ 穴の大きさが平均自由行程と同じオーダのとき、あるい
は上記2つの流れの遷移領域においては、侵入割合は蒸
気圧力の1∼2乗に比例し、両方の流れの混合流が生ま
れる。空気が在留する閉じた箱体のような場合の流れに
ついて、温度サイクルがあると流入程度に影響するが、
その割合は比較的小さい。(遷移流: Transition flow)
11
ESPEC 技術情報 No.17
4-3 液状侵入
5.まとめ
これまでは、蒸気がそのままのガスの状態で侵入することを
考えたのであるが、水溶液の中の浸透試験と同様に、水蒸気
この章では、まず、環境試験の基準となる標準条件をまと
の中の試験であってもまた、図 14 に示すような特性を持った
めた。公的な試験規格あるいは私的な規格にしろ、与えられ
液状態での侵入が起こる場合がある。穴の半径が 2×10 − 3 cm
た個別の試験条件には必ず基準となる条件が存在している。
を越える場合には、水蒸気が経路の壁などに衝突することに
しかし、分野の違いによって、その規格ごとに異なっている
よって保有エネルギーを消耗して、圧力と経路の抵抗による
基準値も、特殊なものを除いて近い将来 IEC /ISO に準拠し
液状化(毛細管凝縮)が生じ、液体の状態で流れ込むことに
て統一が図られるであろう。
なる。この場合、経路の抵抗は半径の4 乗、水の粘度と密度
次に、環境試験の基礎となる熱ストレスと製品との関係に
および経路の長さによるとされており、侵入の動力は単純な
ついて、また、湿度ストレスにおける水分の侵入メカニズム
水圧あるいは温度差による圧力差とみることができる。
を理解するための基本的な物理的知識をまとめた。
穴の半径が 2 × 10
−3
cm よりも小さいときには、水の表面
このような基本的知識の整理については、さまざまな現象
張力は考えられる温度範囲においては水の流れの障害となる。
の理解のために、詳細でかつ緻密な物理的解析と思考方法が
このような漏れの経路の直前は、すでに水で満たされるてい
欠かせないことを主張したかったからである。一方、化学的
るであろうが、すでに侵入した水(液状)の先端より先では
な知識や思考が必要となる場面は、実際にはこれ以降であっ
抵抗が大きく、侵入方向に対しては蒸発が生じることが考え
て、たとえば「水分の侵入途中のコンタミネーションや水分
られる。すなわち、熱的条件、経路の半径と、先ほどから述
が不純物を溶解し」に始まり、部品の中の電気回路に到達し
べている空気中における浸透割合に基づいた蒸気侵入メカニ
たときからその活用の最盛期となることが多いのである。こ
ズムとなる。経路がより狭くなると、先端の水面から蒸発す
のような基本的な物理・化学的な事項をあらかじめ学習して
る水蒸気は経路を拡散することになる。この場合の水蒸気圧
おくことは、あらゆる現象が生じることの必然性を理解する
力は、水の温度に相当する飽和水蒸気圧となっている。それ
上で大変重要なことである。すべての現象には、直接の原因
ゆえこの先では、すでに述べた蒸気侵入のメカニズムと同じ
メカニズムになると認識できる。
を生むベースとなる要因・材料があるのであって、決して
「無」から「有」は生じないのである。このことは将来の予
測が過去のデータがあって初めて可能になることと良く符合
する。いずれにしても、眼前の現象に戸惑うことなく、時間
104
条件A,B
条件C
がかかっても、常日ごろの基本的な学習の継続(再確認を含
103
む)と現在・将来の数多い経験の積み重ねによってのみ未知
液体侵入(mg/h)
液状侵入限界半径
の世界を開くことができることを再認識されたい。そのこと
102
によって、将来、実際の試験品の構成を観察し、触れただけ
10
1.0
穴の内側から
の蒸発
MIL – STD – 202
method 104の条件(A,B,C)
でどのような試験を計画すれば適切であるか迷わずに判断で
きるようになるであろうし、ひよっとすると、試験を行わず
して結果が予測できるかもしれない。
0.10
バルク浸透 [ p=10−14 ]
条件 A,B,C
0.01
*図 1 ∼ 14 までについては下記の文献から引用した。
International Series of Monographs on Electronics
0.001
10−5
10−4
10−3
穴の半径(cm)
10−2
10−1
and Instrumentation Volume 5
ENVIRONMENTAL TESTING TECHNIQUES AND
図 14
水の侵入特性(MIL-STD-202 参照)
MATERIAL 1962 PERGAMON PRESS
No.16 の記事訂正のお知らせ
「技術解説 1」の 6 ページ左側、下から 9 行目の「参考」に誤りがあり
ました。
「参考: JIS C 0010 − 1985 では、相対湿度の上限を 85 %としていたが、
これは我が国の気候条件に合わせたものであった。しかし、1993 年版
において IEC 規格に統一させるため、表 2 のとおりに改訂されてい
る。」
上記のとおり訂正するとともに、お詫び申し上げます。
[Part2 の参考文献]
1)International Series of Monographs on Electronics and Instrumentation Volume 5 ENVIRONMENTAL TESTING TECHNIQUES AND MATERIAL
1962 PERGAMON PRESS
2)MIL-STD 810E Environmental Test methods and Engineering Guidelines
3)IEC 60068-1 Environmental testing Part 1: General and guidance(1989)Amendment 1(1992-5)
4)東京天文台、「理科年表」、丸善株式会社
ESPEC 技術情報 No.17
12
2.優秀省エネルギー表彰制度
本制度は社団法人日本機械工業連合会(日本の代表的な機
械工業関係企業と機種別工業会を会員とする機械工業の全国
プラチナスKシリーズが
「’
98年度優秀省エネルギー機器」に選定
的総合団体)が省エネルギー推進の国の政策に呼応して、昭
和55年度から実施しているものです。この制度は、優秀省エ
ネルギー機器を開発し実用化を図ることにより、エネルギー
の効率的利用の推進に貢献していると認められる企業または
赤松 謙介*
企業等グループを表彰し、それによって優秀な省エネルギー
機器の普及を図るとともに、省エネルギー機器の開発を促進
しようとするものです。対象機器は自動車、電気式エアコン
1.はじめに
ディショナー(これらは別途表彰制度がある)を除く産業機
器となっています。
1997年8月に発売を開始したプラチナスKシリーズが、この
審査は書類審査(一次審査)、ヒヤリング審査(OHP、ビ
たび優秀省エネルギー機器に選定され、「日本機械工業連合
デオ等を使用したプレゼンテーションおよび審査委員との質
会会長賞」を受賞いたしました。
疑応答による二次審査)、現地調査審査(申請機器を実際に
弊社では1995年に環境保全への取り組みを開始し、1996年
使用されているユーザー様を訪問し、稼動状況の確認と使用
12月に福知山工場がISO14001の認証を取得し、その他事業所
者のご意見を伺う三次審査)の3段階の審査からなっており、
も順次取得してきています。その活動の中で、製品開発関連
一次、二次、三次と候補が絞られていきます。本年度は第19
では、省エネをはじめ、HFC対応、材質表示などに取り組ん
回目であり、応募総数48件で表彰件数は11件でした。11件の
できました。ここでは、今回受賞した賞の概要と、プラチナ
うち通商産業大臣賞が2件、日本機械工業連合会会長賞が9件
スKシリーズの省エネに対する開発についてご紹介します。
で、プラチナスKシリーズは後者を受賞しました。
3.プラチナスKシリーズの省エネルギー化
今回受賞したプラチナスKシリーズは、環境管理活動の最
初の取り組み製品であり、開発企画段階から環境に対する取
り組みをコンセプトの1つの柱にして開発を進めました。そ
の目標値として省エネルギー率を従来装置の30%以上、リサ
イクルとして樹脂・成形品の材質マーキングの実施、オゾン
層保護対策としての冷媒のHFC対応(発売開始時はオプショ
ンでしたが、現在は標準搭載されています。)、使用環境改善
として試験時間の短縮や低騒音化を取り上げ開発を進めまし
写真1 受賞対象製品:低温恒温恒湿器 [ PL−2,3,4K (H) ]
送風機
温湿度センサ
加熱器
た。
冷却器
温湿度調節器
(兼除湿器)
計装パネル
=風の流れ
=制御信号
=冷 媒
槽 内
加湿器
空調室
アキュムレータ
電子膨張弁
圧縮機(モータ)
凝縮器
インバータ
図1 装置のシステム構成
* 技術開発本部 テクニカルセンター
13
ESPEC技術情報 No.17
本装置は希望の温湿度を得るための試験槽と調温調湿空気
でもっとも大きな能力から決められます。しかし、この条件
を得るための空調室からなり、弊社が開発したBTHC(平衡
で決定した圧縮機の能力は、常時必要というわけではありま
温湿度制御)システムを基本にした新制御方式“ダイナミッ
せん。したがって、希望する温湿度を維持するための冷却能
クBTHCシステム”で制御を行っています。装置のシステム
力を必要最低限にすることが省エネルギー化につながります。
構成を図1に示します。
今回の開発では、従来以上の省エネルギー化を図るため、
BTHCシステムは、熱容量の大きな冷却器(兼除湿器)を
能力一定で連続運転させた状態で、熱容量の小さい加熱器と
ロータリ圧縮機のインバータ制御と電子膨張弁の併用などに
より、冷却能力の増大と可変幅の拡大を図りました。
加湿器を温湿度調節器でリアルタイムに制御し、槽内の温湿
また、一方で一般空調用機器の制御と比べ、前述したよう
度を精密に創り出すシステムです。図2に示すように、冷却
に環境試験には非常に高い温湿度精度が要求されます。ここ
能力と加熱能力・加湿能力のバランスにより温湿度を高精度
で省エネルギー化のため、冷却と加熱のバランスする能力を
に制御します。しかし、従来のBTHCシステムでは、冷却能
小さくしていけば、外乱に対しては弱くなります。この課題
力を大きくすると、バランスさせる加熱能力・加湿能力も大
に対しては、必要に応じた最小冷却能力にできるだけ短時間
きくなり消費電力が大きくなります。
で変化させるための、自社開発による「冷却能力制御アルゴ
リズム」、および急激な冷却能力変化や外乱に対して安定性
の高い加熱制御方式を採用しました。
従来のBTHCシステム
冷却能力
設定温度
加熱能力
冷却能力が可変できない
と、負荷が小さいときで
も冷却能力とバランスさ
せるための加熱能力は大
きくなる。
(消費電力大)
これらにより、環境試験に求められる性能を満足しつつ、
大幅な省エネルギー化を実現しました。
表1 消費電力比較
型式
ダイナミックBTHCシステム
能力大
能力小
加熱能力
従来器 開発器 比較
Sシリーズ Kシリーズ
測 定 条 件
2.4kWh 1.49kWh 38%減
PL–2K +60℃
(H) +85℃ 85%RH 2.5kWh 1.65kWh 34%減
設定温度
冷却能力
運転条件
負荷に応じて冷却能力が
変わる。負荷が小さいと
きは、冷却能力にバラン
スさせるための加熱能力
も小さくなる。
(消費電力小)
電源電圧 200V
2.5kWh 1.48kWh 41%減
PL–3K +60℃
周波数 60Hz
(H) +85℃ 85%RH 2.7kWh 1.67kWh 38%減
周囲温度 +23℃±5℃
3.0kWh 1.8 kWh 40%減
PL–4K +60℃
(H)
+85℃ 85%RH 5.9kWh 1.9 kWh 67%減
●プラチナスKシリーズのその他器種においても30%の省エネルギー化を実現しております。
図2 ダイナミックBTHCシステムの概念
4.おわりに
本装置には、高精度の温湿度性能(たとえば、温湿度変動
弊社の主力製品であるプラチナスKシリーズが、特に現在
幅±0.3℃/±2.5%RH)と同時に、急激な温度上昇/降下性能
力を注いでいる環境保全の省エネルギーに関する賞を受賞で
や−40℃での最低温度維持能力も要求されます。また、近年
きたことは非常に光栄なことであり、弊社の環境に対する取
は試験槽内に発熱負荷を入れて試験されることが多くなり、
り組みが評価されたものと思っております。
試料の最大発熱負荷対応能力の要求も増加の傾向にありま
今後とも製品の省エネルギー化技術等を通じ、環境保全に
す。したがって、必要な冷却能力は上述の温度降下性能を満
積極的に取り組むとともにお客様により満足していただける
足させる能力、最低温度維持能力、最大熱負荷対応能力の中
製品作りを行ってまいります。
募集要項は、次のいずれかの方法で入手してください。
・弊社ホームページ http://www. espec. co. jp/
「公益信託エスペック地球環境研究・技術基金」
=平成11年度 助成対象者募集=
吉川 恭彦*
・郵送での取り寄せ、お問い合わせ
〒541-6501
大阪市中央区北浜3丁目7番12号
安田信託銀行株式会社 大阪支店
事業法人営業部 営業第3課
公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金 宛
地球環境問題の解決に資する調査研究、観測監視又は技術
TEL:06-6202-1242
開発をしようとする大学、大学院またはそれらに付属する研
FAX:06-6202-4443
究機関の構成員またはそのグループを対象として、助成対象
者を募集いたします。
募集期間は、平成11年4月1日から5月31日までです。
ESPEC技術情報 No.17
* 技術企画室
14
・発行日……1999年4月1日発行(年4回発行)
・発 行……タバイエスペック株式会社
大阪市北区天神橋3-5-6 〒530-8550
●本誌に関するお問い合わせは
タバイエスペック株式会社「ESPEC技術情報」編集室までお申し付けください。 TEL.06-6358-4511
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C 1999 TABAI ESPEC CORP.
・本誌からの無断転載、複製はご遠慮ください。 ⃝
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首都圏本部
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TEL.0720-34-1191代表 FAX.0720-34-7755
横浜市保土ヶ谷区神戸町134 〒240-0005
仙 台
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横浜ビジネスパーク・ウエストタワー9F
宇
宮
TEL.028-667-8734
FAX.028-667-8733
TEL.045-336-6400代表 FAX.045-336-6401
大 宮
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つ
ば
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都
く
首都圏本部
東京都千代田区神田須田町2-7 〒101-0041
高 崎
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東京オフィス
タームスビル2F
千 葉
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FAX.043-286-6022
日 野
TEL.0425-84-2175
FAX.0425-84-2124
TEL.03-3256-0881
FAX.03-3256-0882
東 京
TEL.03-3752-8601代表 FAX.03-3752-8625
仙 台
TEL.022-234-4881
FAX.022-275-0561
厚 木
TEL.0463-94-9433
FAX.0463-94-6542
大 宮
TEL.048-643-1918
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松 本
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FAX.0263-48-0410
つ
ば
TEL.0298-54-7805
FAX.0298-54-7785
静 岡
TEL.054-237-8000
FAX.054-238-3441
日 野
TEL.0425-84-2175
FAX.0425-84-2124
名
TEL.052-777-2551代表 FAX.052-777-2575
横 浜
TEL.045-336-6410
FAX.045-336-6411
津
TEL.059-246-7100
FAX.059-221-0679
松 本
TEL.0263-48-0401
FAX.0263-48-0410
金 沢
TEL.0762-60-8030
FAX.0762-60-8033
静 岡
TEL.054-237-8000
FAX.054-238-3441
大 阪
TEL.0720-34-1191代表 FAX.0720-34-7755
名
く
古
屋
古
屋
TEL.052-777-2551代表 FAX.052-777-2575
京 都
TEL.075-311-8081代表 FAX.075-311-6305
金 沢
TEL.0762-60-8030
FAX.0762-60-8033
滋 賀
TEL.0748-72-8077
FAX.0748-72-5070
大 阪
TEL.06-6358-4746
FAX.06-6358-5500
兵 庫
TEL.078-841-4085
FAX.078-822-4689
広 島
TEL.082-830-5211
FAX.082-876-5050
姫 路
TEL.0792-22-8461
FAX.0792-22-8490
新
浜
TEL.0897-41-3163
FAX.0897-43-1139
広 島
TEL.082-830-5211
FAX.082-876-5050
福 岡
TEL.092-471-0932
FAX.092-474-3500
新
浜
TEL.0897-41-3163
FAX.0897-43-1139
神 戸
TEL.078-822-4645
FAX.078-822-4689
福 岡
TEL.092-471-0932
FAX.092-474-3500
京 都
TEL.075-315-1232代表 FAX.075-311-6305
BANGKOK
TEL.66-2-433-8331
FAX.66-2-433-1679
滋 賀
TEL.0748-72-5077
FAX.0748-72-5070
(中国 北京)
TEL.86-10-65915691∼2
FAX.86-10-65915693
(中国 廣州)
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本
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保守作業
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ETRJ017
ESPEC技術情報 No.17