237 色彩の感情効果に関する研究(1) -色と形の関連についての基本的考察- 田 辺 正 友 (障害児学教室) 従来、色彩の認知を発達的に扱ったものは、ほとんど色彩の時好に関するものである。色彩の 噌好がいかなる傾向をもつものであるかについては、幼児から老人に至るまでの各段階で、多様 な側面からの研究が多くなされてきた。しかし、これらの研究は一次元的であって色彩の持つ内 容的複雑さを究明するには不十分であると考えられる。即ち、色彩から我々はいろいろな感情 を感じとるし、色彩によっていろいろな感情を表現することもできる。この色彩の持つ感情効果 は、単一の色彩だけではなく、色の組み合せによっても変化し、また、形、位置、材質、面積な どの多岐にわたる要因によっても規制されるものである。本稿では、このような諸要因によって 影響される色彩の感情効果が、とくに形、位置によってどのように変化するか把握しょうとする ものである。一方、感情効果は上述のような刺激の側の要因のみでなく、感情を感じとる個人の 経験や態度といった主体的条件の問題があり、従って、それは発達的にも変遷することが予想さ れる。色彩の感情効果は前述の刺激が持つ要因と刺激を受ける側の主体的条件の両側面から考察 されなくてはならない。筆者の今後の研究方向としては、客観的、物理的条件と色彩の感情効果 との閑適を手がかりとして、方法による制紬こついても吟味しつつ、児童と成人を対象とした横 断的方法に並行して継断的方法をとり入れ、発達的かつ包括的な研究を進めて、さらに幅広い諸 要因とのかかわり合いをみていこうとするものである。 間 題 単一の色彩だけでなく、 2つの色彩の組合せを眺める時に、我々はそこにまた、一種特別の感 情を体験する。つり合いの良し悪しの感情、即ち、調和感がこれである。色彩調和については、 古くから種々の説が立てられているが、実験的研究は少く、多くの場合、経験的に調和論がたて られている。 (Ostwald,W., Munsell. A. H.等) 配色の調和感を実験的に取上げ、 2つの色彩の結合に対する快感情といったものを、その構成 色の感情価から予測しょうとしたものとして、 Washburn, M. Fら(1921)、 Guilford, J. P. (19 31、 1934)、 Allen, E. C. & Guilford, J. P.Q936)などが挙げられる。しかし、色彩調和の法則 は、彼等の推論したよりももっと複雑であった。やはり、実験的に取上げた代表的なものとし て、 Moon, P. & Spencer, D.E.(1944a、 1944b、 1944c)を挙げなければならないO彼等ほ色彩調 和と色の三属性の関係を調べ、同一の調和、類似の調和、対比の調和と三区分を作り、それらの 関係にある色同志を組合せれば調和するという定量的な調和の公式にまで進めた理論を発表し注 238 感情効果に関する研究(1) (田辺) 目されたo更に、彼等は、色彩調和の面積効果、調和の程度を示すものとして美度を算出する式 を提案している。 しかし、その後の研究結果ではいくつかのくい違いも生じている(Pope, A., 1944; Granger, G. W., 1953、 1955 ;細野尚志ら、 1954、 1955、 1958)c細野らの一連のカラー--モニーの研究 によると、 Moon・Spencerが不調和領域としていた部分が必ずしもそうでない傾向がみられるこ と、調和志向傾向にいくつかの類型があることなどが見出されている。また、納谷嘉信ら(1965、 1966a、 1966b、 1966c)はMoon-Spencerの公式のかなりの部分を改める必要があるとし、 調和の良さの評価の計算式を導き出そうとしている。 これらの実験結果は、配色の調和感の法則を見出そうという試みは、決して簡単ではないとい うことを示唆している.実際、配色が我々に与える印象・感じは、決して調和・不調和感に限ら れるものではない。様々な気持ちを我々に呼び起こすものである。ある色彩は温かく、他の色彩 は冷たい、重い色彩があり、軽い色彩がある。最近、 Osgood, E.C.によって考案されたSD法 (Semantic Differential Method)を用いて、種々の感情をあらわしているように感ぜられる このような色彩の持つ感情を確かめようとする研究がなされている。 配色の色彩感情に関するものとしては、相馬一郎・富家直(1960、 1961)、富家直・巽瑞子(19 60)、神作順子(1963)、納谷嘉信・辻本明江(1967)らの研究があり、また、このような研究方 法を建築における室内設計の問題にまで拡げて、小木曽定彰・乾正雄(1961a. 1961b)が室内の評 価尺度を作成している。各研究者によって多少の差異はあるが、色:彩の感情問に及ぼす効果に は、大きくいって3つの種類があると考えられる。 さて、配色による色彩感情については、多次元的検討も行なわれるようにはなった。しかし、従 来の実験で用いられた試料は等面積で、四角な色片を並置した形式のものであった。この場合、 形や材質感の差異、面積の関係も、配置の関係もネグレクトされている。我々が現実に接する色 とは、抽象化された色ではない。もちろん、そのような形式で導き出された結果も色彩の感情効 果といったものの検討を容易にする根拠ではあるが、形,材質などの他の要素も当然、入ってく る。色と形などの要因が印象形成にどのように関与するかといったことも検討されなければなら ないであろう。面積と色彩調和傾向については、従来の色彩調和の研究で触れられてはいる。 (Washburn, M. F., McLean, K. G.& Dodge, A., 1934 ; Moon, P. &Spencer, D. E., 1944b; Granger, G. W., 1953)また、 Campbell, I. G. (1942), Birren, F. (1961), Itten, J. (1961)ら は色が最も心地よく結びつく形は色によって違うということを報告している。 ・では、色と形の印象効果をどのように捉らえていくかという測定の方法の問題である。色彩が 与えるいろいろな印象効果は、大体3つのグールプに大別できたが、形の場合はどうであろうか。 形の印象効果については測定方法も決まったものもないし、研究も少いが、浜口光子(1964)の 研究が参考になる。浜口はFechnerやゲシタルト学派の艮き形態に関する研究が、形態の美し さや、まとまりについてのみ取上げているのに対して、その他の印象効果についても SD法に よって判定し、因子分折を行っている。これによると、形の印象効果も、色彩の場合と同様に、 三次元の感情空間を考えておけば、ほとんどの印象を位置づけることができるようであるQ ま た、宮城音弥ら(1961、 1962)は、いわゆる「色・形問題」の研究で SD法を用いることがで きることを明らかにしている。色と形とをそれぞれ変化させたときの印象効果の測定にもSD法 を用いることは効果的であると考えられる。 そこで、本研究は、色彩のみで生じた感情果効が、印象形成に関する要因と考えられるものの 色彩の感情効果に関する研究(1) C田辺) 239 うち、形および位置によりどのように変化するかを検討するため次の実験を計画した。 級 実 日的 2色配色の持つ色彩感情をSD法により分析し、色彩のみで生じた感情効果、特に調和 感が、形および位置により、どのように変化するかを検討することを目的とした。 材料 刺激配色は、細野ら(1955)のカラ---モニーの研究による、最も調和、中間、最も 不調和段階から各5配色、合計15配色を選択して用いた。それをMunsell表色系に換算したも のがTablelに示したものである。 Table 1. 刺 激 配 色 最 も 不 調 和 群 l 中 間 群 i 最 も 調 和 群 ﹁羊三./,蝣)) 形は、正方形(一辺4.0cm)、正三角形(一辺4.9cm)、円(直径4.2cm)の3種。位置は、 Fig. 1に示すA、 B、 C、 D、 E、の5種である。位置BとCでは、 Bで上部に配置された色は、 C では下部に、 DとEでは、 Dで内部に配置されたものは、 Eでは外部になる。なお、これらは見 AⅢ△ BEj A 225種の刺激配色カードを背景N 7の中央にそれ ぞれ置いた。色紙は日色研作製の標準色紙を使用 した。 尺度 従来の色彩感情の研究において一般に用 いられている次の14組の形容詞対を用いた。 あっさりした - く ど い 強 い - 弱 い 重 :'fv 美 し ii=二 積で,色15種,形3種、位置5種を組合せたもの m 明 莱 三三_i_ 好 然 な - 不 自 然 I TU ・ 蝣,-* Fig. 1刺激図形 手し︰る か き か 気的 フ≡ た、本研究においては、 1配色をなす2色は等面 暖 陽 不 調 和 な 動 い な い た い い な い な な C日△ かけの大きさが大体、同じようにしてある。ま 餐_ い .11出 " s ti み に く い 不 安 定 な 暗 い か た い 嫌 m^m 田 f^mm K -3 な 静 的 な 240 色彩の感情効果に関する研究(1) (坦辺⊥ 手 続 225種の刺激配色カードについて、 14の両極尺度で5段階評定を行う。尺度の出現頓 および配色カードの提示順序はランダムとした。評定は、なるべく光線の一定した昼間の室内間 接光のもとで、被験者は椅子に腰を下して行い、直観的に、素朴な態度で行なうよう教示した。 被験者 大学生男女各50名、合計100名O 結果お よ び考 察 形容詞尺度上での評定結果については、各人の5段階評定の中央に0、左方へ1、 2,右方へ 11、 -2の得点を与え、 225種の各配色カードについて、各形詞尺度評定値の平均値を算出した。 これをもとにして14C2の相関係数を算出した後、 Centroid法による成分分折を行ったo相関係 数および成分分折の計算は、日立HIPAC103を使用したO成分分折の結果のうち、第I、 Ⅱ因 子を直交軸として、形容詞を困子負荷量によりプロットしたものがFig.2であり、 225種の個々 のサンプルについて成分得点によりプロットしたものがFig.3-a-Fig.3-cである。なお、図 中の1-15の数字は配色を示すもので、それぞれTablelの配色番号に相当する。また、口、 △、 ○は、それぞれ正方形、正三角形、円との親合せを示す。 Fig. 2形容詞の因子負荷量による分布 色彩の感情効果に関する研究(1) C田辺) Fig. 3-a色+形の成分得点による分布(位置A) Ill Fig. 3-b色+形の成分得点による分布(位置B, C) 位置B:蝪, △, ○ 位置C:' ▲, ● 241 242 色彩の感情効果に関する研究(1) (田辺) Fig. 3-c色+形の成分得点による分布(位還D, E) 位置D:口, △, ○ 位置E: ▲, ● 本研究の目的には、直接関わりをもたないが、代表的な尺度について検討していくため、抽出 された因子について概観し、その代表的な尺度を挙げておく.本研究で抽出された因子は4因子 で、各因子の寄与率は、第I因子60%、第Ⅱ因子20%、第Ⅲ因子10%、第Ⅳ因子5%である。単 純因子型は第I因子型と第Ⅱ因子型に分かれ、第I因子型は〔美しい〕 〔好きな〕 〔明るい〕 〔調和した〕 〔あっさりした〕 〔重い〕 〔自然な〕 〔陽気な〕 〔安定した〕の9尺度であり、第II 田型は〔動的な〕である。複合因子型の尺度としては、 I ・Ⅱ型が〔派手な〕 、 I ・Ⅲ型が〔柔 かい〕、 ⅡⅢ型が〔強い〕、 i・n・mォiv型が〔暖かい〕である。 〔美しい〕 〔好きな〕 〔明 るい〕 〔調和した〕 〔あっさりした〕は、ほとんど純粋に第I因子を表わすものと考えてい。 〔自然な〕 〔安定した〕は、これらの尺度とはやや異なり、第II因子に-の負荷量が、 〔陽気な〕 は、十の負荷量が少しあり、 I ・ Ⅱ型に近い因子構造を持つものである。また〔重い〕は第Ⅳ因 子に十の負荷量が少しある。第Ⅱ因子を表わす尺度は〔動的な〕である。 C派手な〕もI ・Ⅱ型 として関わりを持つ。純粋に第Ⅲ因子を表わすものはなかったが〔柔かい〕がI ・Ⅲ型として、 〔強い〕がⅡ ・Ⅲ型として関わりをもったものである。 〔暖かい〕は第Ⅳ因子において、他の尺 度の因子負荷量とくらべて割合、大きな負荷量を示したが、前の3因子より絶対値が低く、第 I、 II、 Ⅲ因子にも関わりをもってきている。他の3因子はど強く働いていない因子であるO 前述した他のSD法による研究の因子分折の結果からみて、大体、配色感情について重要な因 子はevaluation, activity, potencyの因子であり、 potencyの因子は、強さと暖かさの意味構造 によって分けられると考えられる。それぞれの因子の代表的尺度として、美しい-みにくい、動 的な一静的な、強い一弱いが挙げられる。これらの尺度を中心に、形および位置により、それら の感情がどのように変化するか検討していく訳であるが、第I因子型の尺度としては、他研究と 色彩の感情効果に関する研究(1) (田辺) 243 の比較の上からも、同じ第I因子型であって配色の持つ感情中、最も一般的な、調和一不調和の 尺度を取り挙げることにする。 Fig. 3-a-3-c から、形および位置によって各配色の色彩感情が、印象面ではどのように 異なるのか、どの程度の差があるのか見ることができる。調和-不調和に関しては、本研究で 用いた、最も調和、最も不調和段階の配色は、大体、相応するところに評価されており、その他 の配色は、中間のところに位置づけられ、他の種々な感情効果を有することを示している。その 中でも形の効果がみられる配色、あ・まりみられない配色と様々な変化を示しているO不調和領域 から中間鶴城へ、中間領域から調和領域-という具合に変化を示している配色(配色番号、 3、 6、 9、および、位置による差異はあるが、 8) 、運に、調和領域から中間領域へと移動してい る配色(ll) 、また、調和領域内で多少の移動がみられるだけで、あまり形の効果がみられない 配色(1、 2、 4、 5、 12、 13、 15)もある。ある配色では正方形との組合せにおいて、また、 三角形、円との組合せにおいて調和感が増減しており、一定の傾向は見出し難いが、以上の結果 から大体、調和-不調和の尺度に関してとくに形の効果がみられるものは、用いた刺激配色のう ちで、中間段階の配色である。位置についても、形はど大きな効果はみられないが、ほぼ同様の ことがいえる。本研究においては、刺激配色を色立体から平均して選らび、構成色問の色差を統 制していないので,形および位置の調和感に対する効果に一定の傾向を見出し難かったが、どう いう色の組合せが、どの形または位置に配されたなら調和感が増すか、数量的に分折するという 問題は興味ある問題であり、今後の検討を要する問題である。 第II因子型の代表的尺度として挙げた、動的な一静的なについて、 I ・ Ⅲ因子空間では効果を とらえにくいところもあるが、大体の傾向をみると、かなり形、位置の効果がみられるものとし ては、配色番号1、 3、 4、 6、 9、 11、 15などの配色が挙げられる。さらに、位置については、 BとC (Fig.3-ら) 、 DとE (Fig.3-c)との比較において、明度、彩度を統制しておれば、 何らかの規則性をみい出せたであろうと考えられる。しかし、ここで注目しなければならないこ Table 2. 〔禍和一不調和〕と他 の尺度との相関係数 とは、調和一不調和の尺度では、あまり形、位置の効果が みられなかった。最も調和・不調和段階の配色もかなりの 効果を示していることであるO これは、形、位置によって i 度 の. o o o ハ o o 強 o 暖 o 動 o 派 o 莱 o & る気か手的か tiY o r- to lo r⊥ co w ai fo k tn CT> CT> CT> Oi nd N tO O ^ CO CVj lN N し 安 "蝣蝣I し つ あ さ定 Ill な いなた た い いな い なな い い 美 き し 然 り 好 調和感そのものが質的に異なってきたものと思われる。つ まり、動的で調和であったものが、静的で調和という具合 に変化したものだと考えられる。 第Ⅲ因子型の尺度である、強い-弱いについても、 Ⅱ、 Ⅲ因子空間に成分得点をプロットした場合、形、位置の効 果について検討できるが、前二尺度において、あまり効果 がみられなかった配色もかなりの効果を示している(2、 12、 14) 。これについても、動的な-静的なの尺度の場合 と同様のことが考えられる。 他の尺度についても、 Fig.2およびFig.3- 蝣3-cか ら大体の傾向がうかがわれるが、ここで調和一不調和の尺 度と本研究で用いた他の尺度との関係をみておこう。成分 o o 244 色彩の感情効果に関する研究(1) C田辺) 分折の際、ピアソンの相関係数を算出した(Table2) この表から〔調和〕以外の13尺度申、 8尺度が〔調和〕と高い相関を示した。この8尺度中、 〔重い〕は逆相関を示した。 〔好きな〕 〔美しい〕 〔自然な〕 〔あっさりした〕は〔調和〕と共 に、第I因子型の尺度中で、特に因子構造が類似していたものであるが、この4尺度は、形、位 置の効果について、調和一不調和の尺度の場合とほとんど同様のことがいえる、また、 〔安定し た〕も大体、似ている。 〔明るい〕 〔陽気な〕は第I因子型の尺度であり、 〔調和〕との相関も かなり高いが、前出の〔調和〕などとは少し趣きが異なっている。これは、本研究で用いた刺激 配色の最も調和段階の配色が全般的に明度が高かったことが影響したものと考えられるO また、第Ⅱ、 Ⅲ因子型および複合因子型の尺度については〔動的な〕 、 〔強い〕の尺度の場合 と同様のことがいえる。 以上、先きに述べた理由から、細かい結果の究明がしにくく、総合的な結論にその確定さを欠 いたが、形および位置も色彩感情の印象形成に関与する重要な要素であることを実験的に、いさ さかなりとも明らかにすることができたと思われる。 しかし、ここで考慮されなければならない問題がある。まず第一に、試料の問題である。色彩 の実験においては試料の検討は重要であるO本研究では、その目的とするところから、先行研究 で導き出された最も調和、中間、最も不調和段階の配色を用いた。今後、色立体から平均して抽 出し、配色の構成色問の色差を統制して選らぶ必要があろう。本研究においても、色差が統制さ れていたら、形、位置の効果に一定の傾向をみい出したのではなかろうか。 第二に、尺度の問題である。尺度によって色の効果を弁別するものと形の効果を弁別するもの とがある。ここでは、色彩の感情効果をとられる尺度として、従来の研究において、一般に用い られている14組の対語を用いた。前述の浜口の研究結果からして、第I因子型として分離された 尺度は、色の効果も、形の効果も弁別できるが、第Ⅱ、 Ⅲ因子型として分離された尺度は若干、 異なっているものである。色と形の交互作用を問題としていく時、形の効果も弁別する尺度、例 えば〔丸い〕 〔なめらかな〕 〔鋭い〕といった尺度も組み入れていかなければならないだろう。 蛋 約 本研究は、色彩の感情効果を考える場合、それが現実場面であればある程、他の諸要素の影響 を受けるのではないかということに着目し、形および位置が2色配色の色彩感情、特に、調和感 にどのような効果を及ぼすかということを検討するため、細野らによる「カラー-ーモニ-の研 究」から、最も調和、中間、最も不調和段階の配色各5杵について14の両極尺度を用いたSD法 により5段階で評定させ、分析を行った。 成分分折によって抽出された4因子のうち2因子をそれぞれ空間の軸とした時の225種の個々 のサンプルについての成分得点をプロットすることによって、大体、次の結果を得た。 1)第I因子型の代表的尺度〔調和一不調和〕においてほ、形および位置の効果があまりみら れなかった配色、調和感が増加、あるいは、減少し、一方の感じからもう一方の感じにまで 変化する配色など様々な変化がみられた。その変化に一定の傾向は、みい出し難かったが、 最も影響を受けた配色は、用いた刺激配色のうち、中間段階のものであった。また、全く同 色彩の感情効果に関する研究(1) (田辺) 245 様のことが、 〔調和〕との相関も高く、第I因子型の尺度中で、特に因子構造が類似してい た〔好きな〕 〔美しい〕 〔自然な〕 〔あっさりした〕の尺度についてもいえる。 2) 〔調和〕などで、あまり形および位置の効果がみられなかった配色も、第Ⅱ、 Ⅲ因子型お よび複合因子型の尺度では、大きな変化がみられた。 これは、形、位置により調和感そのものが質的に変わってきたものであろうと推測されたO く付記〉 本研究にあたり、ご指導を賜わった早稲田大学、本明寛先生、富田正利先生、相馬一 郎先生、ならびに貴重なる助言をいただいた奈良教育大学、柳川光章先生に深く感謝いたしま す。なお、本研究の概要を日本心理学会第33回大会において報告した。 引 用 文 献 Allerl E. 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The subjects Of Factor analysis of factor color-pairs these in this exp- was con- score. scale Fl pattern, increased color-pairs, scale worst changed as to "likable", with in Fl on F2, F3 and and scale, typical and location. were obtained were high resemblance In feeling form need it was or decreased color-pairs in as middle were most affected. very same results which strong (2) regions in of color of observations on 14 kinds component : on several oi "harmonious" to harmonious and 50 females). the of difference and number in the previous scale, value The on the degree were requested As to "harmonious-inharmonious" effect only factors, method. ducted and 225 samples were plotted by each The results permit the following conclusions (1) reference figures were obtained students Not design values. and location to the total Subjects differential have been used were 100 university special The N7/sheets. by semantic affective of form according 3 standard were used as variables. mounted these color. many aesthetic felt. were selected H. Moreover, Nara, Japan in harmonizing the of the the effect combinations, pairs but also determination is keenly of color as effective themselves, is to examine 15 color- by Hosono, component suggested in the analysis study values In this been factors important The aims of this the have of color increasingly extended Masatomo Tanabe Nara University of Education, "harmonious" scale, "natural" and "simple" and factor structure the affective values had a pattern. comqosite harmonious with "beautiful", "harmonious" the feelings factors regions difference vary pattern, which in form qualitatively were not influenced and location. with the directly This form of the fact in would and location.
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