竹中コーポレートレポート2016

竹中コーポレートレポート2016
Corporate Report 2016
CONTENTS
03
05
07
09
サステナブル社会の実現を目指して当社グループが推し進める事業と取り組みを、
コーポレートレポートやWEBでステークホルダーの皆様にお伝えします。
■ 編集方針
特集1 竹中工務店のまちづくり
特集3 新しい木材活用への挑戦
19
www.takenaka.co.jp
竹中コーポレートレポート2016
Corporate Report 2016
TAKENAKA Financial Report 2016
Fiscal Year Ended December 31, 2015
33
●
建築作品
●
ソリューション
●
会社情報
●
CSR情報 など
コーポレートレポート
(日本語版/英語版)
建築作品集
(和・英併記)
Financial Report
(英語版)
当社の財務情報、非財務情報を統合しコンパクトにまとめました。
事業活動や成果
(作品)
などもより詳しく紹介しています。
■ 報告対象範囲
竹中工務店の活動を中心にグループ会社の
活動を含んだ内容としています。
1
TAKENAKA Corporate Report 2016
建築
— お客様の想いをかたちに
海外
— お客様のグローバルな展開をサポート
開発
— 都市・地域再生
エンジニアリング
— 最先端のソリューション
技術開発
— 竹中グループの技術開発
グループ
— 国内主要グループ会社
ステークホルダーとともに
35
37
39
41
地球環境
— 美しい地球を未来に遺す
地域社会
— 地域社会の持続的発展に寄与する
お客様
— お客様の事業の発展に貢献する
従業員 / 協力会社
— 従業員、協力会社とともに成長する
※技術・ソリューションの個別パンフレットもあります。
財務・非財務の広範囲にわたる詳しい情報をタイムリーにカバーしています。
■ 報告対象期間
2015年1月~2015年12月
当該年以外の活動も一部掲載しています。
事業活動
21
25
27
29
31
32
企業パンフレット
(日本語版/英語版)
Major Works of TAKENAKA 2016
〜
“まち”
の新たな価値を生み出す〜
特集2 ネット・ゼロエネルギービルを着々と実現
ティレポート
(CSR活動報告)を統合し、中期経営計画や財務・非財務の主要データを盛り込み、グループ・グローバルな展開
竹中工務店 建築作品集
グル−プCSRビジョン
13
データについては竹中工務店WEBサイトに掲載しています。これまで発行していた会社案内(事業概要紹介)とサステナビリ
(日本語版/英語版)
竹中の歩み
グル−プ成長戦略
をわかりやすくお伝えするものです。竹中工務店の活動内容を中心に構成し、誌面の都合で掲載できないコンテンツや事例、
企業WEBサイト
会社・グループ概要
11
「竹中コーポレートレポート2016」は、竹中グル−プのグループCSRビジョンを示すとともに、グループ事業全体の取り組み
を行う当社の事業活動全体をステークホルダーの皆様にご理解いただくことを目的に発行します。
トップメッセージ
■ 参考ガイドライン
環境省の「環境報告ガイドライン2012年版」及
び日本規格協会発行の『日本語訳ISO26000
社会的責任に関する手引』
( 第一版2010年11
月1日)
を参考にしました。
■ 発行
2016年4月
(次回発行予定2017年4月)
なお、より多くの皆様にお読みいただけるよう、
WEBサイトでも公開しています。
43
45
47
48
マネジメント
グループ会社
ステークホルダーとの対話
第三者意見
49 財務・非財務ハイライト
■ お問い合わせ先
広報部 03-6810-5140
TAKENAKA Corporate Report 2016
2
トップメッセージ
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Management Perspectives
サステナブル社会の実現に向けて
豊かで安心な
「まちづくり」
私たちは「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念のもと、創立以来、お客様の期待に
震災復興やエネルギー・環境問題などの社会的課題への対応、より強く豊かな国土形成、世界の都市・
応える建築を提供してきました。
インフラの整備、企業活動のグローバル化など、私たち建設業に求められるニーズは変化し続けて
企業が社会において担うべき役割は、時代とともに変化しています。世界がいま直面する、気候変動
います。また人々の暮らしや企業活動の多様化に伴い、まちや建物に求められる機能も絶えず高度化・
や人口増加をはじめとする地球規模の幾多の課題についても、その解決に貢献することが企業に求め
多様化しています。
られています。
そのような時代のニーズに的確に応えること、そして安全、安心といった変わらぬ期待と信頼に誠実に
私たちは時代の変化にいつも敏感でありたいと考えています。そのために絶えず人々との対話を重ね、
応え続けていくことは、建設業に携わる企業の責任であると考えています。一昨年、私たち竹中グループ
技術の研鑽を続けることで、時代が求める最良のソリューションを提供していきます。そして人々が安全
は「竹中グループCSRビジョン」
と
「竹中グループメッセージ」を定めました。人々が幸せや歓びを感じる
に安心して暮らすためのまちづくりにグループの総力で貢献することによって、サステナブル社会を
ことができる豊かで安心な「まちづくり」を通し、これからもグループ全員の力でサステナブル社会の
実現し、地球の未来につないでいきたいと思います。
実現に貢献する活動を推進してまいります。
2016年4月
取締役会長 CEO
3
TAKENAKA Corporate Report 2016
2016年4月
取締役社長 COO
TAKENAKA Corporate Report 2016
4
会社・グループ概要
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Company / Group Overview
グループ全体で
「まちづくりの全てのステージ」
でお客様の期待に応えます。
竹中工務店 会社概要
社
名
本社所在地
国内主要グループ会社 事業内容
事 業 内 容
株式会社 竹中工務店
大阪市中央区本町4-1-13
資
本
金
500億円
(2016年3月現在)
売
上
高
1兆2,843億円
(2015年度連結)
建設業許可番号
国土交通大臣許可(特-26、般-26)第2744号
従 業 員 数
7,195名
(2016年1月現在)
1. 建築工事及び土木工事に関する請負、設計
及び監理
2. 建設工事、地域開発、都市開発、海洋開発、
宇宙開発、エネルギー供給及び環境整備等
のプロジェクトに関する調査、研究、測量、
企画、評価、診断等のエンジニアリング
及びマネジメント
3. 土地の造成並びに住宅の建設
4. 不動産の売買、賃貸、仲介、斡旋、保守、
管理及び鑑定並びに不動産投資に関する
マネジメント 他
建設事業
取 引 銀 行
1級建築士………………………2,506
1級建築施工管理技士…………2,315
技術士……………………………166
博士………………………………111
(2016年1月現在)
三菱東京UFJ銀行
三井住友銀行
みずほ銀行
りそな銀行
三菱UFJ信託銀行
三井住友信託銀行 他
マネジメント・エンジニアリング事業
株式会社 竹中土木
◆
株式会社 アサヒファシリティズ
土木工事
◆
株式会社 竹中道路
◆
◆
◆
鉄筋工事及び型枠工事
◆
株式会社 TAK-QS
鉄筋工事及び型枠工事
◆
建築工事に伴う積算業務の受託
株式会社 クリエイト・ライフ
電気・給排水衛生・空調設備工事
株式会社 TAKリビング
◆
従業員福利厚生及び総務・人事に関する総合業務受託
株式会社 TAKキャピタルサービス
木製品の製造・販売及び内装・インテリア工事
株式会社 朝日興産
◆
建築工事に伴うエンジニアリング・マネジメント業務の受託、
人材派遣業務、人材紹介業務
株式会社 TAKイーヴァック
◆
建築の設計・施工に関するCAD業務、ICT支援業務
株式会社 TAKエンジニアリング
株式会社 東京朝日ビルド
◆
不動産の管理、損害保険代理及びリース業務
株式会社 TAKシステムズ
道路舗装工事及び舗装資材の製造・販売
株式会社 朝日ビルド
◆
資 格 者 数
海外主要グループ会社の拠点はP25に記載しています
◆
内・外装工事を主とした工事、建設資材の販売、
ファクタリングサービス及び財務会計業務の受託
開発事業
造園、植樹、緑化の企画・施工、並びに石油製品の販売
株式会社 裏磐梯高原ホテル
◆
リゾートホテル及びスキー場の運営
国内主要グループ会社の主な活動
共通基盤
組
織
クリエイト・ライフ
(福利厚生)
TAKキャピタルサービス
(経理業務代行)
図 (2016年4月現在)
株主総会
設計
監査役会
社長
副社長
本社
【 企画機能 】
経営企画室
【 営業機能 】
営業部
医療福祉・教育本部
広報部
CSR推進部
開発計画本部
TQM推進室
PPP/PFI 推進室
グループICT推進室
エンジニアリング本部
関連事業室
【 管理機能 】
総務室
法務室
人事室
財務室
TAK-QS
(積算)
技術研究所
FM本部
スマートコミュニティ推進室
【 設計機能 】
設計本部
ワークプレイスプロデュース本部
アドバンストデザイン部
【 生産機能 】
生産本部
調達本部
安全環境本部
(支店)
東京本店
横浜支店
作業所
土木
地区FMセンター
東関東支店
竹中土木
(土木工事) 竹中道路
(道路工事)
営業所
北関東支店
開発事業
名古屋支店
裏磐梯高原ホテル
大阪本店
京都支店
神戸支店
四国支店
広島支店
九州支店
国際支店
開発事業本部
大阪駅北地区事業本部
首都圏施設整備本部
アサヒファシリティズ
(ビル管理)
本店内標準組織図
総務部
経理部
人事部
営業部
FM部
設計部
業績の推移
受注高
(億円)
14,181
12,143
11,107
調達部
技術部
■ 単体
15,000
見積部
工務部
売上高
10,000
9,509
■ 連結
経常利益
(億円)
■ 単体
15,000
12,950
10,239
10,000
10,209
7,867
設備部
11,506
8,953
■ 連結
10,096
集合住宅センター
5,000
2013
2014
2015(年)
0
2013
2014
2015(年)
0
5.3
686
3.3
2.1
2.0
250
217
156
機材センター
0
5.4
750
500
5,000
連結(%)
6.0
単体
12,843
安全環境部
品質部
(億円) ■ 単体 ■ 連結
1,000
2013
547
2.8
383
254
2014
4.5
3.0
経常利益率
技術本部
環境エンジニアリング本部
情報エンジニアリング本部
製造・物流施設本部
原子力火力本部
先進構造エンジニアリング本部
東北支店
施設管理
経常利益
【 技術開発機能 】
TAKENAKA Corporate Report 2016
施工
支店及び事業本部
北海道支店
社長室
TAKシステムズ
(ICT)
朝日ビルド
(鉄筋・型枠)
東京朝日ビルド
(鉄筋・型枠)
TAKイーヴァック
(設備)
TAKリビング
(木製品、
内装・インテリア)
朝日興産
(内・外装、建材販売、緑化)
監査室
営業本部
5
施工計画、見積・調達
TAKシステムズ
(CAD)
取締役会
アサヒファシリティズ
(保険・リース)
TAKエンジニアリング
(人材派遣)
1.5
0
2015(年)
TAKENAKA Corporate Report 2016
6
竹中の歩み
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Takenaka Milestones
伝統を受け継ぎ 豊かな未来を拓く
2007
竹中工務店は、1610年(慶長15年)の創業以来、建築を専業とし、ランドマーク
となる多くの建築物を手掛け社会発展の一翼を担ってきました。建築とは、生命
2000
や財産を守る器であると同時に社会の資産であり、その時代の文化を後世に伝え
継ぐものである── そうした仕事への誇りを込め、私たちは、携わった建物を「作品」
2015
2015年
キャピタグリーンがCTBUH
2015年度 アジア・オーストラリア
地域最優秀作品に選定。
1997年
ナゴヤドーム竣工。
と呼んでいます。これは、宮大工の棟梁だった初代・竹中藤兵衛正高から受け継
がれてきた精神で、お客様の想いを第一に考え、建築の専門家として高い技術力
1995年
株式会社 クリエイト・ライフ設立。
を保っていくという考え方です。これまで当社は日本の社会、経済、文化に深く
かかわるようなビッグプロジェクトに参画し、数多くの作品やエンジニアリング、
技術開発を世に送り出してきました。今後も最良の品質をお届けし、社会の信頼に
1970
応え豊かな「まちづくり」を目指し、設計施工一貫方式を進化させ、時代が求める
技術開発を積極的に進めていきます。
1950
1969年
株式会社 アサヒファシリティズ設立。
2007年
中部地方一の高さを誇る
ミッドランドスクエアが竣工。
1993年
東京都心の大型複合施設
日本初の屋根開閉式多目的スタジアム・ 東京ミッドタウン、
福岡 ヤフオク!ドーム竣工。
新丸の内ビルディングが竣工。
竹中土木インドネシア設立。
1992年
日本品質管理賞受賞。
1990年
株式会社 TAKシステムズ設立。
マレーシア竹中設立。
1949年
株式会社 TAKリビング設立。
2014年
日本建築学会賞
(作品)
を
明治安田生命新東陽町ビルで受賞。
1947年
株式会社 朝日ビルド設立。
1920
1900
1900年
三井銀行神戸小野浜倉庫を竣工。
1943年
株式会社 TAKイーヴァック設立。
1941年
株式会社 竹中土木設立。
1916年
鉄骨鉄筋コンクリート造の
大阪朝日新聞本社竣工。
1912年
商店建築では日本初の鉄筋
コンクリート造の高島屋京都店竣工。
写真提供 国立劇場
1934年
明治生命館
(東京・丸の内)
竣工。
1960年
TAKENAKA & ASSOCIATES INC.
をサンフランシスコに設立。
1958年
高さ333mの東京タワーを竣工。
裏磐梯高原ホテル開業。
1957年
南極観測用施設製作。
竹中式潜函工法特許を取得。
株式会社 朝日興産設立。
1610
初代竹中藤兵衛正高 名古屋で創業。
神社仏閣の造営を業とする。
1899年
14代 竹中藤右衛門が神戸に進出、
創立第1年とする。
1897年
三井名古屋製糸所竣工。
1884年
三井銀行名古屋出張店竣工。
1874年
維新後次第に洋風建築を手掛け、
名古屋鎮台兵舎竣工。
7
TAKENAKA Corporate Report 2016
1909年
合名会社竹中工務店設立。
神戸を本店に名古屋を支店とする。
1927年
一橋大学兼松講堂竣工。
2006年
世界一の高さの超高層免震マンション
シティタワー西梅田が竣工。
1963年
国立劇場の設計競技において
1等に入選。
1961年
株式会社 竹中道路設立。
1937年
株式会社 竹中工務店設立。
資本金150万円。
立命館大学 大阪いばらきキャンパス
が竣工。
1988年
日本初の空気膜構造による
多目的スタジアム・東京ドーム竣工。
竹中錬一会長がデミング賞本賞を受賞。
株式会社 TAKエンジニアリング設立。
1987年
有楽町マリオン竣工。
あべのハルカスがオープン。
2013年
グランフロント大阪
が竣工。
2012年
大阪の超高層ビル
中之島フェスティバルタワーが竣工。
2010年
インド竹中設立。
1986年
2003年
第二国立劇場の国際設計競技において 中国竹中設立。
最優秀作品に入選。
株式会社 TAK-QS設立。
1979年
2002年
竹中工務店を含むASTMグループが
株式会社 TAKキャピタルサービス設立。
提案した芦屋浜シーサイドタウン竣工。
2001年
アメリカ竹中設立。
大分スポーツ公園 大分銀行ドーム、
札幌ドーム
「Hiroba」
が竣工。
1974年
タイ竹中、インドネシア竹中、
シンガポール事務所設立。
1973年
ヨーロッパ竹中設立。
1972年
株式会社 東京朝日ビルド設立。
2009年
創立110周年。
三菱一号館の復元及び
丸の内パークビルディングが竣工。
2008年
世界初の3棟連結超高層集合住宅
アイランドタワースカイクラブが竣工。
TAKENAKA Corporate Report 2016
8
グループCSRビジョン
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Group CSR Vision
想いをかたちに 未来へつなぐ
当社は「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」
ことを使命としてきました。そのために、社是を基本姿勢とし、手掛ける建築の一つひとつ
を丹精込めてつくってきました。そして、お客様満足や社会の信用を得て企業の社会的価値を高める
「品質経営」
を継続してきました。
しかし、私たちを取り巻くステークホルダーが多様化する中で、建築に求められる機能や価値も変化してきており、これまで以上に社会と
価値観を共有する企業活動が求められています。また、社会全体を見ても、
「エネルギー問題」
「災害リスクの増大」
「社会インフラの老朽化」
「少子高齢化」など多くの課題を抱えています。これらの問題は未来の社会に大きな影響を及ぼす可能性があり、企業が果たす社会的
ビジョンを実現するためのステークホルダーの方々との取り組み
「地球環境」
「地域社会」
「お客様」
「従業員」
「協力会社」など当社のステークホルダーの期待に応えるため、具体的なCSRの取り組みとして
15の活動領域と、それを支えるマネジメントの取り組みを企業行動規範とも整合性を取りながら定め、推進しています。これらの取り
組みを着実に進めることで様々な社会的課題を解決し、サステナブル社会の実現に貢献していきます。
責任は一層重要性を増しています。
こうした中で、当社はグループの力を結集し、社会そしてステークホルダーとの対話を深め、社会の課題を解決してサステナブル社会を
実現することを示した「竹中グループCSRビジョン」
と、当ビジョンを含む企業理念、品質経営基本方針の考え方を表現した「竹中グループ
メッセージ」
を定めています。当社の原点である企業理念を一人ひとりが胸に刻み「品質経営」
を推進するとともに、CSRの行動指針で
ある企業行動規範を実践することで、このビジョンを実現していきます。
企業理念
全社方針
経営理念
最良の作品を世に遺し、社会に貢献する
社是
正道を履み、信義を重んじ堅実なるべし
勤勉業に従い職責を全うすべし
研鑽進歩を計り斯道に貢献すべし
上下和親し共存共栄を期すべし
品質経営基本方針
品質重視の経営に徹し
新しい環境創造への挑戦により
お客様満足と社会の信用を得る
竹中グループ
CSRビジョン
私たち竹中グループは、ステークホルダー
との対話を深め、その想いを「まちづくり」
を通してかたちにし、未来のサステナブル
社会へつないでいきます。
安全衛生方針
竹中グループ
メッセージ
品質方針
環境方針
ステークホルダーの想いをかたちにし、未来へつなぐための活動領域と
それを支えるマネジメント
美しい地球を
未来に遺す
地域社会の持続的
発展に寄与する
自然との共生
低炭素社会
資源循環
環境配慮活動の基盤
知識・技術の
普及と発展
地域との交流・
社会貢献活動
建築文化の
継承と発信
企業行動規範
まちづくりを通した
サステナブル社会の実現
調達方針
個人情報保護方針
想いをかたちに 未来へつなぐ
協力会社とともに
明日を担う人材の育成
ワーク・ライフ・バランス
品質の向上
ものづくりの実践
多様な人材
安全と健康
建物価値の向上
安全・安心・豊かさ
従業員とともに
成長する
竹中グループCSRビジョン、竹中グループメッセージに込めた想い
私たちは、サステナブルな社会の実現に向け、
「地球環境」
「地域社会」
「お客様」
「従業員」
「協力会社」などのステークホルダーの期待
に応えるとともに、その人々が集い、作用し合う
「まち」が、今も未来も豊かで、安全で、優しいものでなければならないと考えています。
お客様の事業の
発展に貢献する
マネジメント
組織統治、危機管理、公正な事業慣行、グループ会社、
ステークホルダーダイアログ、第三者意見
そのために、今後ステークホルダーとの対話をより一層深めます。そして、その「想い」を建築、土木、不動産・開発、ファシリティマネジ
メント、リニューアルといった当社グループの事業力を組み合わせた、新たな価値をもつ「まちづくり」を通してかたちにし、未来の
サステナブル社会を実現していきます。
9
TAKENAKA Corporate Report 2016
TAKENAKA Corporate Report 2016
10
グループ成長戦略
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Group Growth Strategy
■ 新たな価値を創る
「まちづくりの全てのステージ」で貢献していくためには、建設
お客様の事業活動に、グローバルなスケールで
事業の周辺領域において、グループ各社と緊密に連携して取り
最良のソリューションを提供し、
グループの総力でサステナブル社会の
• 建設技術の研鑽
• サービスの領域拡大と質的な向上
• 新たな事業領域への挑戦
発注形態は広がりをみせており、更にIoTやビッグデータは
まちづくりに大きな影響を及ぼし、建物の役割を大きく変える
実現を目指していきます。
取締役社長
新たな価値を創る
組む必要があります。またPF
IやPPPのような新たな事業形態・
COO
サービス
可能性をもっています。このように、社会が抱える課題やニーズ
• ファシリティマネジメント
に応えていくことは、私たちにとってただ建物をつくること
• PM/CM
• 設計・エンジニアリング
竹中工務店
アサヒファシリティズ
• 不動産・開発
竹中道路
TAKエンジニアリング
だけではなくなっていきます。建設技術とサービスが融合した
宮下 正裕
新しいソリューションで、まちに新たな価値を提供し、社会と
社会とお客様にとって
最良のパートナーに
竹中土木
朝日ビルド
建設
クリエイト・ライフ
TAKリビング
裏磐梯高原ホテル
朝日興産
■ 成長に向けてのステップ
STEP
グループが一体となり、社会とお客様に新たな価値を提供するため
■ グループで、グローバルに、まちづくりにかかわる
にそれぞれが専門技術やサービスの質を磨き、一歩ずつ成長に
私たちには、国内外における様々な社会の課題を解決し、
収益基盤の改善を図り、
そのうえでグループ連携や生産力の強化を
人々が 豊かで明るく、そして安 心して暮らすことができる
クル全てにおいて貢献していきます。
「まちづくりの全ての
進め、まちづくりにおける新たな価値の創出にリーダーシップを
サステナブル社会を実現するという大きな使命があります。
ステージ」で、グループ各社が緊密に連携して社会とお客様
発揮していきます。海外建設事業においても対応体制を整備し、
そのために、私たちはグループ全体の事業領域を「まち」として
の期待に応え、サステナブル社会の実現を目指します。
STEP
3
2020~2022
STEP
2
2017~2019
STEP
1
2014~2016
更なる事業の成長を目指します。そして2025年には、社会と
お客様にとって最良のパートナーとなることを目指していきます。
TAKキャピタルサービス
4
2023~2025
向けてのステップを進んでいきます。当3か年
(STEP1)
ではまず
捉え、企画・計画から建設、維持運営まで
「まち」
のライフサイ
TAK- QS
東京朝日ビルド
TAKイーヴァック
• 建築 • 土木
[新築/リニューアル]
お客様にとって最良のパートナーとなることを目指します。
2025年のグループ成長戦略
TAKシステムズ
READY TO JUMP
GROUP POWER
CHALLENGE
BEST PARTNER
社会とお客様にとって
最良のパートナーに
新たな事業領域に
チャレンジし結果を出す
グループ全体の力で
社会に価値を提供する
安定経営を確保し
飛躍に備える
サステナブル社会の実現
高齢者にやさしい
環境にやさしく経済的
●
安全・安心
●
知的・物的生産性向上
●
●
最良の作品と建築ソリューションを
建築No.1企業として、世界のお客様と地域社会に
最良の作品とソリューションを届けます。
設計施工
Construction Stage
環境と共生する強い社会基盤を
時代が求める土木技術を通じ、
人々の安心・安全を支える
強い社会基盤をつくり、
地球環境と共生する
「グリーンインフラ」
の
構築を目指します。
土木
建築
本年は、2014年にスタートした3か年計画(STEP1)の最終
設計・エンジニアリング
PM/CM
まちのライフサイクルの
企画・計画、建設、維持運営
ファシリティ
マネジメント
リーシング
エネルギー
メンテナンス
リニューアル
不動産・開発
インベストメント
11 TAKENAKA Corporate Report 2016
まちの資産を大切につかう
施設環境を育て、施設を利用する
全ての人々に最適な空間を提供し、
環境と空間を未来へつないでいきます。
Maintenance & Management Stage
環境の変化に最適なリニューアルを
Development & Planning Stage
リサーチ・企画・提案
技術でスマートコミュニティを描く
3か年計画の2年間
(2014年、2015年)
の活動の振り返りと、
最終年度となる2016年に取り組むこと
社会環境やお客様のビジネスの変化に応じた
リニューアルを提案し、快適な空間を届けます。
最先端の建設技術とともに、省エネ、高齢化、自然災害等の課題に向き合い、
スマートで安全なビジネス環境、居住環境を描き、実現します。
2年目となった2015年は、これらの活動が順調に進捗し定着
年度となります。STEP1においては、業績面で厳しい状況が
が図られ、建設事業を中心に前年を上回る業績となりました。
続く中で、収益力の改善による安定経営の確保と、将来の
また、2017年からスタートするSTEP2を見据えた、将来の飛躍
飛躍に向けた事業基盤の強化を図ることを掲げました。
のための具体的な検討について取り組みを開始しました。特に
「まちづくりの全てのステージ」で社会課題の解決へ貢献を
1年目となる2014年は、建設需要の急増による労務需給の
果たすための新たな事業領域におけるチャレンジや、市場環境
逼迫という経営環境の激変に伴い、安定経営の確保と生産力
の変化に伴う繁忙への対応やダイバーシティ推進のための
の確保が喫緊の課題となりました。そのような中、当社はBIM
新たなワークスタイルについて、グループ内で幅広く意見を
(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用、
「竹中
取り入れ、グループ連携のもと検討を進めています。
スマートワーク」の推進、PC化をはじめとする省力化施工の展開
などにより、生産性の向上をこれまで以上に加速させました。
組織面では「PPP/PFI推進室」
「スマートコミュニティ推進室」
STEP1の最終年度となる本年も、まずは作業所における確実
な災害の防止と品質の向上に、引き続き最優先で取り組みま
「グループICT推進室」を設置し、まちづくりの様々なステー
す。そのうえで、生産力を確保し、生産性の向上を更に推し進
ジにおけるソリューション力やグループ連携の強化を図って
めるとともに、グループ連携や協力会社とのパートナーシップ
います。また海外では「タイ竹中技術訓練場TAKSA」を設立
を推進し、社会やお客様のニーズに的確に対応できる生産
し、ローカルスタッフや現地協力会社の育成を図るなど、基盤
体制の構築については引き続き重要課題として取り組みま
強化も進めました。様々な施策の着実な推進に市場環境の
す。そして、安 定 経 営 の 確保と事業基盤の強化を果たし、
回復が重なり、当社グループ業績も大きく改善しました。
次期3か年での飛躍につなげてまいります。
TAKENAKA Corporate Report 2016
12
特集1
竹中工務店について
特集
グループ成長戦略
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Special Feature 1
竹中工務店のまちづくり
今わが国では、都市再生や2020年東京オリン
〜“まち”の新たな価値を生み出す〜
VOICE
当社は、時代とともに変化する
ます。地球環境への配慮や自然災害への備えに加え、人口減少・
ピック・パラリンピック開催に向けたインフラ
整備や都市開発とともに、20年後、30年後を
見据えた「都市の将来像づくり」が進められてい
“社会のニーズ ”
、
“社会や地域が抱える課題”
を捉え、
高齢化の中での経済成長や国際競争力強化というこれまでの
建築に対し新しい価値の提案と
その価値創造へのチャレンジを行うことで、
社会や地域に、そして、お客様に
“おどろき”
と
“感動”
を提供いたします。
延長線上では解決できない課題への取り組みも始まりました。
都市を取り巻く状況は国や地域により異なり、時代とともに変化・
まち を
繋 げる
まち を
変える
高度化します。私たちは、常に社会や時代の変化の一歩先を読み
取り、人・建築・都市のあるべき姿を創造・革新し、グループの
総合力を結集して“まちづくり”に取り組んで行きます。そして、
新しい価値は、社会や地域への刺激となり、
人々が安心・快適に住み、働き・憩い、幸せや
新たな価値
新たな人々を呼び込み、経済活動を活性化させ、
歓びを感じることのできる
「都市」
と
「未来」
を
活気がある豊かな
“まち”
に変えていきます。
当社は、グループ総力で、
まち を
高める
建築に新たな価値を創造することにより
“まちづくり”
に貢献していきます。
お客様や社会に提供し続けたいと思います。
まち を
育てる
株式会社竹中工務店
執行役員 開発計画本部長
佐藤 清吾
“まち”を変える
“まち”を高める
“まち”を育てる
“まち”を繋げる
超高層タワーと公園リニューアルによる
相乗効果がまちの雰囲気を一変
新宿区と地元が連携し
「安全安心なまちづくり」
を実現
イノベーションの場の提供とエリアマネジメント
により進化し続けるまちを実現
新業態開発により地方と東京を結び
浅草の活性化と地方創生を実現
デザインと屋上テラスに設けら
パークマネジメント事業「てんしば」を整備することにより、
「あべの
れた実物大のゴジラ頭部などの
ハルカス」への観光客、買い物客のみならず、周辺の子育て世代か
話題づくりにより、新たな客層を
ら高 齢 者まで 幅 広 い
呼び込んでいます。
鉄御
堂筋
線
マークにより、まちの
鉄天
雰囲気を一変させてい
ます。
JR天王寺駅
地下
あべの
キューズモール
王寺
駅
あべの
ハルカス
近鉄南大阪線
大阪阿部野橋駅
また、まちのテナント、在勤者、一般来街者、近隣の企業とともに、
靖国
通り
まちの豊かなオープンスペース
を活かし、にぎわいと活気あふ
新宿駅からの導入動線「セントラ
れるまちを目指すエリアマネ
ルロード」の改修、大型バスがア
ジメントにも、 取り組んでい
プローチ可能となる道路整備、防
ます。これら2つの活動をそ
犯対策や地域の情報発信や隣接
れぞれ進化させる運営組織
する
「シネシティ広場」
の再整備な
を事業者で立ち上げ、これか
ど
「安全安心なまちづくり」
を進め
らの時代にふさわしいまちを
ています。こうした官民連携によ
育てていきます。
グランフロント
大阪
「東京楽天地浅草ビル」は、かつ
て日本を代表する興行街であっ
全国の地域情報が浅草に
集結、魅力を発信
北海道
た浅草六区の中心部に位置し、
東北
建替えにあたって高層部にイン
バウンド対応のホテル、低層部
近畿
には真の地域振興拠点を目指
中国
す商業施設「まるごとにっぽん」
阪急梅田駅
しました。
東海
四国
を導入し、2015年12月に開業
阪
急
都線
地下
天王寺公園リニューアル
JR新宿駅
サービスや商品を生み出すことを目指すイノベーションの場です。
急京
しむなど、2つのランド
てんしば
セントラルロード
阪
な時間の過ごし方を楽
これを機に行政と地元も連携し、
研究者や企業人、消費者が集まり、交わりながら、いままでにない
線
戸
神
来 街 者 が 訪 れて様 々
天王寺公園
(天王寺動物園、大阪市立美術館)
展示施設や交流施設、オフィス、ショールームなどで構成され、
新宿東宝ビル
西武新宿駅
通り
更に近傍の天王寺公園では、広大な芝生広場と店舗群からなる
シネシティ広場
明治
と都市型ホテルや、特徴的な外観
げられる“一つのまち”です。その用途の一つナレッジキャピタルは、
0m
強化することで、地域全体に回遊する人々のにぎわいを広げました。
商業、ホテル、ナレッジキャピタルを複合させ、様々な活動がくりひろ
歌舞伎町ルネッサンスエリア
本線
中央
開業以来、都内最大級のシネコン
西武新宿線
再生の起爆剤としての期待を担い、
提供することで拠点性を高めるとともに、周辺のまちへのつながりを
地下鉄谷
町線
周辺地域に不足していた商業・宿泊・オフィスなどの都市機能を
「グランフロント大阪」は、JR大阪駅前の北側7haのエリアに、オフィス、
職安通
り
約40
「新 宿 東 宝ビ ル 」は、歌 舞 伎 町
山手線
日本一の高さで注目を集めた「あべのハルカス」は、これまで阿倍野
九州
〈東京浅草〉
まるごと
にっぽん
「まるごとにっぽん」は、浅草六区に賑わいを取り戻したいという想い
と、大都市への人口流出や後継者不足の課題を抱える地方都市の
再活性化の足掛かりとなる施設をつくりたいという想いから実現した
うめきた2期
「村おこし町おこしの総合拠点」
です。
JR大阪駅
「点=地方」が集まり「面=全国」の魅力を国内外に向けて発信する
新業態は、
「国際観光都市・浅草」の地の利と相まって新しい客層を
地方に送り込む機会創出の場になるでしょう。
り、まちのイメージを変え、地域
を活性化し、周辺での連鎖的な
再開発が誘発されています。
TM & ©TOHO CO., LTD.
TM & ©TOHO CO., LTD.
13 TAKENAKA Corporate Report 2016
(一社)
ナレッジキャピタル
(一社)
グランフロント大阪TMO
TAKENAKA Corporate Report 2016
14
特集2
竹中工務店について
特集
グループ成長戦略
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Special Feature 2
ネット・ゼロエネルギービルを着々と実現
環境メッセージ・コンセプト・長期目標
ネット・ゼロエネルギービル
(ZEB)
とは、エネルギー消費量を最少まで削減し、
そのうえで創エネルギーによって自給する建物のことです。
当社はZEBを2030年に定着させるため、2020年にリーディングプロジェクトを実現するという
ロードマップを設定し、超省エネルギービル、ZEB、更にエネルギー消費量を創エネルギー量が上回る
ネット・プラスエネルギービル
(PEB)
の実現に取り組んできました。
• 環境メッセージ
そして2016年3月に、当社の東関東支店のZEB化改修工事が完了しました。
人と自然をつなぐ®
この建物は築12年の実用オフィスで、執務をしながら改修を行い、投資コストを抑えながら
ZEBを目指すプロジェクトです。地方に多く存在する既存中小オフィスのZEB化改修のモデルになるものです。
計画では、ZEBを達成し、更にPEBとなる予定です。
この建物の改修では、既存の外装の省エネ化や照明機器・空調機器の改修に加え、
• 環境コンセプト
人の感性や創造性を高め、自然を活かし、ネット・ゼロエネル
ギービルからカーボンニュートラルな都市への実現を目指す
• 長期目標
ワークスタイルや意識の変革によるエネルギー使用量の大幅低減、
2020年にネット・ゼロエネルギービルを実現
2030年に定着、ネット・プラスエネルギービルを目指す
健康・快適性にも踏み込んで計画し実施しています。
竹中工務店東関東支店ZEB化改修プロジェクト(2016年4月より改修後の稼働開始)
実施項目
適用技術
高断熱ガラスによる断熱性能強化
①既存サッシを利用し
た外皮熱負荷ミニマ 既存サッシの断熱強化
ム化ファサードへの 外付けブラインドによる日射遮蔽
改修
自然換気口追加による自然換気促進
室内環境改善による知的生産性の向上:放射空調、小型デシカント
空調、天井照射LED
②ウェルネスオフィスと
再生可能エネルギー熱利用:地下水流動型地中熱、太陽熱集熱器
ZEB化を両立する改修
ウェアラブル端末を利用したスマートウェルネス制御:個人の位置
情報を利用した省エネ制御、個人の健康情報を利用した快適制御
③ZEB実現のためのス 負荷のダウンサイジング化と自立型ZEBを実現するリアルタイム
マートエネルギー導 エネルギー制御
入とBCP性能向上
太陽光発電、蓄電池による自立型ZEBの実現とBCP性能の向上
■ ZEB化改修の概要
続々と生まれる当社ZEB / ZEB Ready プロジェクト
ZEB Ready プロジェクトの10年にわたる実践
経済産業省や空気調和・衛生工学会では、一般的な建物(リ
と比較してエネルギー消費量が50%以下の
ファレンスビル※)
ビルを
「ZEB Ready」
「nearly ZEB」
とするなど、ZEBの定義を
見直して、省エネルギー型ビルの普及促進を図っています。
当社では、2004年の竹中工務店東京本店社屋をはじめ
として、第一生命新大井事業所、飯野ビルディングなどの
オフィスでZEB Readyを達成しています。また、滋賀銀行
栗東支店ではZEBを達成する計画です。更に、愛知製鋼新
本館や横浜新市庁舎の計画においてはこれらを上回る性能
を目指しています。
太陽熱集熱器
天井照射型LED照明
小型デシカント
(調湿式)
空調機
太陽熱・地中熱を利用して除湿材を再生
放射空調パネル、
パーソナル気流ユニット
簡易ダブルスキン
自然換気口の追加
地下水の流動を利用した
高効率な地中熱利用システム
ウェアラブル端末によるスマート制御
ワーカー個人の代謝量や心拍数を測り、
空調の制御に利用
ZEBのための継続的な技術開発
当社はZEB実現のために、最新の外装、地下水を流動化させ
る地中熱利用技術、低湿度を実現する省エネ型デシカント
空調、超省エネ型地中熱利用放射空調、様々なエネルギーを
最適管理するマネジメントシステムなどを開発してきました。
今後も更にブラッシュアップを続け、先進的な技術開発を
進めていきます。
ル
ビ
ー
ギ
創エネルギー量
︵比︶
高断熱ガラス、
サッシの断熱強化
0.5
0
ル
ビ
ル
ー
ネ 5
ギ
エ
ル
ロ
ネ
ゼ
エ
ト・
ラス
プ
ネッ
・
ト
11
ネッ
B
ZE
ly
r
a
y
ne
ad
Re
8
B
ZE 12
2
3
4
写真提供:互助營造股份有限公司
(Fu Tsu Construction Co.Ltd.)
6
1
4 10
7
2
0.5
5
8
1
3
2
3
4
5
6
7
8
9
9
一次エネルギー消費量
(比)
15 TAKENAKA Corporate Report 2016
1
※リファレンスビル: 標準的な仕様の建物。用途や建築地域などにより、
それぞれエネルギー消費量が設定されています。
太陽光発電と蓄電池による自立型ZEB
縦ルーバー、外付
ブラインドによる日射遮蔽
環境メッセージ・コンセプトと2050年に向けた
長期目標を2010年に制定し、
環境と調和する空間創造に努めています。
リファレンスビル
1.0
※計画値を含む
10
11
12
6
7
9
竹中工務店 東京本店
(2004)
第一生命新大井事業所
(2012)
2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム(高雄國家體育場)(2009)
愛知製鋼新本館
(2017予定)
滋賀銀行 栗東支店
(2015)
横浜新市庁舎
(2020予定)
飯野ビルディング
(2014)
市立吹田サッカースタジアム
(2015)
明治安田生命新東陽町ビル
(2011)
日産自動車 グローバル本社
(2009)
竹中工務店 東関東支店
(2016)
AOB小淵沢ホール
(2016予定)
TAKENAKA Corporate Report 2016
16
特集3
竹中工務店について
特集
グループ成長戦略
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Special Feature 3
新しい木材活用への挑戦
VOICE
CO2
日本の森は伐採適期を迎えていますが、
CO2
O2
近年の戸建住宅着工件数の減少に伴って木材需要が減少しており、
O2
森林の整備が充分とは言えない状況にあります。
林業活性化、森林活性化によるCO2 吸収の促進・
国産木材活用の拡大が求められています。
植える
と思い、竹中工務店さんにお願いしました。最初は柱や梁の重厚
さに強い印象を受けましたが、それが開放的な空間の中に個室の
O2
ような落ち着きをつくり出していました。ベッドから見上げた天井の木目や木の
匂いも好評で、
「こんな良い場
育てる
土砂災害防止などの観点から、
建替えにあたり、長時間過ごされる透析患者様のストレスをいか
に減らすか、考えあぐねていた時に燃エンウッドを知って
「これだ!」
所をつくっていただいてあり
収穫する
がとうござ います」という嬉
CO2
CO2
しいお言葉を患者様からいた
だきました。今 後、更に木 の
CO2
竹中工務店では新しい木材利用の方法として、
クリニックの効果について調
都市の大規模木造建物に応用可能な耐火木造技術と、
査していく予定です。
木質材料による耐震補強技術を実用化しました。
医療法人社団中郷会
理事長
新柏クリニック
木村 靖夫様
院長
木村 敬太様
これにより従来、耐火規制や性能面で利用が難しかった
都市部の建築へ積極的に木を用いることが可能となりました。
上手に使う
木材需要が増えることで、森林サイクルの更なる促進が期待できます。
また、木による心地よさだけでなく健康増進効果も期待されています。
森林サイクル
耐火集成木材
「燃エンウッド®」
による大規模木造建築の推進
新しい木質材料
「CLT」
「LVL」
を活用した技術の展開
江戸時代から震災・戦災の教訓を経て火災に強いまちづくりを目指してきた都市部
燃え代層
建設業における就労者の高齢化や技能労働者不足を受け、軽
においては、耐火性能に関する厳しい規制が障壁となり、長い間大規模な木造建築を
柱荷重支持部
量で加工がしやすい木材は省力化の点からも見直されています。
従来からの集成材に加え、近年、
「CLT※1」や「LVL※2」といった
つくることが困難でした。
近年、防災技術や耐震設計技術が向上したことなどを背景に、2000年に行われた
新しい木質材料が登場したことにより、大きな建物の壁、ブレース
燃え止まり層
建築基準法改正で規制が緩和され、一定の性能を満たせば木を用いて耐火建築を
など様々な構造部分に木材の適用が広がっています。
つくることが可能になりました。これにより、戸建住宅以外にも木造の可能性が広がり
当社はいち早く技術の実用化を進め、強度と木の施工のしや
ました。耐火集成木材「燃エンウッド」はこうした時代の要請を受けて、当社が開発を進
すさを両立させた耐震補強技術「T-FoRestシリーズ」を開発し
めてきた技術です。首都圏・大阪・名古屋で現在6件の建築物に採用されています。
「燃エンウッド」の特徴は、火災時にも火が自然に燃え止まる自消性能と、構造材をその
まま見せる
「あらわし」
で使用した時の意匠性です。木のぬくもりや安らぎをそのままに、
オフィスやショッピングセンターなど現代的で大規模な木造建築が実現されています。
■ 燃エンウッド ®
柱、梁荷重支持部の外側に燃え代層、燃え
止まり層をもつ3層構造の集成材です。
1時間の耐火性能(国土交通大臣認定)を
有しています。
見直される、
木の心地よさ
和らげる効果があります。また疲労感に対する影響や感染予防、健康増進に関する効果との因果関係につい
ても明らかになりつつあります。 詳しくはWEBページに記載しています。
特殊な接着工法との組み合わせにより、工事中の塵埃発生が少なく、
短工期での施工を実現しました。鉄筋コンクリート造の耐震壁とほぼ
同等の強度をもっています。
武庫川女子大学文学2号館
鉄筋コンクリート造建物の耐震補強にLVL
を用いた国内初の事例です。春休みの短
い期間内での工事完了を実現しました。木
パネルを「あらわし」で用いることで、ぬく
ました。軽量で現地での加工が少なく短い工期で済むことか
もりを感じられるデザインになりました。
ら、長期間閉鎖できない建物の改修に適しています。
国産木材の活用につながり、CO2削減にも貢献する取り組み
が評価され、
「平成27年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰」
を受賞しました。
木には高い断熱性や調湿性があり、建物の省エネ性能を高めるだけでなく、冷えや暑さといった不快要因を
■ 木の耐震壁 T-FoRest Wall
■ 木のブレース T-FoRest Light
人の手で簡単に設置できるローコストな工法です。
鉄骨造のブレースとほぼ同等の強度をもっています。
京都競馬場グランドスワン
鉄筋コンクリート造の建物の耐震補強に
※1 CLT:Cross Laminated Timber 直交集成板
厚さ30mm程度の板を互いに繊維が直交するように積層、接着した
木質建材
※2 LVL:Laminated Veneer Lumber 単板積層材
丸太を桂むきにした厚さ3mm程度の板を繊維の方向をそろえて積層、
接着した木質建材
集成材のブレースを適用した国内初の
事例です。
■ 燃エンウッド®適用事例
完成予想パース
大阪木材仲買会館
(2013 大阪)
17 TAKENAKA Corporate Report 2016
サウスウッド
(2013 神奈川)
イオンタウン新船橋
(2013 千葉)
ATグループ本社 北館
(2015 愛知)
横浜商科大学高等学校実習棟
(2015 神奈川)
中郷会 新柏クリニック
(2016 千葉)
第二有明小・中学校
(2018予定 東京)
TAKENAKA Corporate Report 2016
18
事業活 動
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Business Activities
建築、土木、開発、その他の事業分野で、竹中グループの人材、設計、エンジニアリング、
技術開発などあらゆるノウハウやリソースを活用。
安全・安心で豊かなまちづくりを通じてサステナブルな社会の実現に貢献していきます。
概要
建築
コンテンツ
現代の建築には、仕事や生活空間としての快適性や
● サステナブル・ワークス®
効率性だけでなく、地域文化・都市環境への配慮が求め
● 総合力から生まれるデザイン
られます。周辺環境と調和したデザイン、社会的資産で
● 魅力再生®
ある建物の再生・価値創造など。当社は建築を通して、
ページ
P21
地球環境や社会に貢献したいと願うお客様の想いを
かたちにするお手伝いをしています。
海外
1960年の米国進出から半世紀を超え、欧米・アジアで
● ヨーロッパ拠点
20拠点を超えるネットワークへと拡大してきました。
● アジア拠点・中国拠点
空港、超高層オフィス、ホテル、工場、美術館など多彩な
● アメリカ拠点
プロジェクトの設計施工から技術指導、コンサルティング
P25
業務、資材調達まで。多岐にわたる事業活動で、お客様
のグローバル展開をサポートしています。
開発
国内主要都市の都市再生など様々なビッグプロジェクトで
中核となるオフィスビルやホテル・商業・エンターテイン
メントの複合施設の企画や設計や施工を数多く手掛けて
います。また、自社開発事業、市街地再開発事業やPPP/
PFI事 業 へ の 事 業 参 画などを通じて、当 社は、都 市・
● 市街地再開発事業
● PPP/PFI事業
● 海外開発事業
● 開発事例
P27
地域の再生、まちづくりの様々なステージに積極的に
取り組んでいます。
エンジニアリング
製造・物流施設の再構築や最先端医薬製造・研究施設の
● エネルギーマネジメントシステム
計画、大空間建築や鉄道関連建築への取り組み、エネ
● 製造・物流、最先端医薬製造・研究施設
ルギーマネジメント、地震対策など企業のリスクマネジ
● 大空間建築、鉄道関連建築
メント支援、大規模耐火木造建築の実現、放射線防護技術
● 企業のリスクマネジメント支援
の医療施設への展開など。最先端のエンジニアリングで
● 放射線防護技術
P29
社会とお客様の様々なニーズに応えます。
技術開発
19 TAKENAKA Corporate Report 2016
P31
www.takenaka.co.jp/rd
グループ
P32
www.takenaka.co.jp/corp/group/list01
TAKENAKA Corporate Report 2016
20
建 築
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Architecture
お客様の想いをかたちに
建物に求められる機能は高度化・多様化しています。
環境への配慮はもちろんのこと安全で安心、そして強靭でなければなりません。
人にやさしい居住環境をつくる
更に当社は
「人への優しさ」
という視点を重視し、建築の新たな価値創造にチャレンジしています。
地球を
汚さない
当社が提唱する
「サステナブル・ワークス®」
とは、
「お客 様とともに環 境に調 和する
したいと願うお客様の想いをかたちにするお手伝いでもあります。
人にやさしい
居住環境を
つくる
お客様が建物を「地球にやさしくつかう
(運用)
」
ことができるよう、
やさしく
つくる
お客様と
ともに
やさしく
おもう
エネルギーを
上手につかう
私たちは「地球にやさしくおもう
(設計)
」
、
「地球にやさしくつくる
(施工)
」ための様々な工夫をしています。私たちは、運用・設計・
施工の全ての活動において、右記の6つの視点から評価し、お客様
とコミュニケーションをとりながら進めていきます。
建物を永く
つかう
豊かな
景観をつくり、
まもり、
育てる
あべのハルカス
“複合用途”と“高さ”という
ポテンシャルを活かし、環境負荷低減と
快適性の両立を実現した
「立体的なまちづくり」
あべのハルカスは近鉄南大阪線・大阪阿部野橋駅直上に巨大な都市活動
が集積した高さ300mの「超高層集密都市」です。鉄道指向型のコンパクト
な都市構造は、エネルギー消費の抑制・低炭素化の面からのメリットだけ
でなく、多様なサービスや情報が高密度に提供されることで、人口減少期
においても知的・経済活動を一層活性化させる効果を生み出します。
第56回 BCS賞受賞
-38%
8,886
t-CO2/year
14,383
熱源
2,637t
t-CO2/year
その他
950t
設計・監理=竹中工務店
外装デザイン=竹中工務店+ペリ クラーク ペリ アーキテクツ
施工=竹中工務店JV
(2013)
“複合用途”
と
“高さ”を生かした環境負荷低減と快適性の両立
一般的なビル
自然を取り込む多種多様なエコボイド
オフィスフロアのボイドは、コアへ柔らかな光を導くことで、
時刻の感覚を提供するとともに、換気機能を担う風洞となり
ます。建物の随所に組み込まれたエコボイドが、超高層建築
においても人にやさしい環境性能に優れた快適な空間を生
み出します。
建物を永くつかう
再現期間(年)
50年
震度階 5弱
地震の大きさ
中地震
5強
一
軽微被害
一
小破
中破
大地震
東北地方太平洋沖地震
般
的
的
な
超
なビ
ル
高
の
層
耐
修復可能な被害
大破
倒壊
般
500年
6強
6弱
+
被害の程度
あべのハルカス
環境技術導入による削減
運用段階の削減
・ 待機電力
・ 流量調整による電力
・ 熱源の最適選択など
※削減量は計画値
あべのハルカス
運用改善による削減
低炭素社会に向けて
標準的なビルの二酸化炭素排出量と比べて、排出削減量は
36%、諸設備の運転改善や待機電力の削減など竣工後の改善
を含めた削減量は38%です。最先端の建築・設備技術を融合
した取り組みが認められ、国土交通省による平成20年度住宅・
建築物省CO2推進モデル事業に採択されました。
ものを捨てずに大切につかう
の
震
耐
震
+
極大地震
兵庫県南部地震
あ
べ
のハ
グ
レ
ード
グ
レ
ード
建築基準法の最低限の性能
1500年
7
巨大地震
ルカ
スの
耐
震
グ
レ
ード
想定外
△LEVEL2
取り組み」を意味します。サステナブルな
アプローチであり、地球環境や社会に貢献
t-CO2/year
やさしく
つかう
バイオガス
250t
給湯
450t
空調
1,782t
LED照明
2,317t
t-CO2/year
14,883
空間創造を行うことを目指した建築への
社会を次世代に手渡すための建築からの
-36%
8,386
t-CO2/year
23,269
ものを捨てずに
大切につかう
△LEVEL1
サステナブル
ワークス
エネルギーを上手につかう
あべのハルカスにおける
CO2排出 削減量
想定外
高い耐震性能
あべのハルカスの耐震グレードは、一般の超高層建物よりも
1ランク上を実現しています。500年に一度の大地震を上回る
巨大地震に対しては小破に、これまで発生した記録のない想定
外というべき極大地震に対しても継続使用が可能な被害に
留めることができるよう設計しています。
豊かな景観をつくり、まもり、育てる
掘削土を再利用する環境にやさしい山留工法の採用
地下鉄が敷地境界に近接して走っている中で安全に掘削工事
を行うため、剛性と遮水性に優れた、竹中ソイルセメント連続
壁工法(TSW工法)を採用しています。この工法により、あべの
ハルカスでは、約40%の掘削土を再利用しています。
地球を汚さない
持続可能な社会の実現に向けて環境負荷低減と快適性の両立を目指す
うえで、超高層集密都市の「複合用途」と「高さ」は非常に有効なポテン
シャルです。これらを生かし、
「アクティブ(高効率なエネルギーシステム
など)
」
「パッシブ(エコボイドなど)
」
「コミュニケーション(エネルギーの
見える化)
」という3つのアプローチで、様々な環境技術を取り入れ大幅な
環境負荷低減を実現しました。
“ボイドネットワーク”
と立体的な“緑のネットワーク”
吹き抜けを介して3次元的に連続する「ボイドネットワーク」を設けること
で、建物全体にゆったりとした時間と「今、ここに居る」というアドレス感が
広がっています。また、建物を構成する3つのボリュームをずらして積み
重ねることでカスケード状に展開する屋上緑地は、緑地面積の少ない
大阪において、隣接する天王寺公園と呼応する都市的なランドスケープ
を実現しています。
21 TAKENAKA Corporate Report 2016
2016
都市・自然とのゆるやかな接続
セットバック形状を利用し庭園を配置しています。人々は、これら
の屋上庭園で、自分の居場所を見つけながら、思い思いに時間
を過ごしています。超高層建築において、都市と断絶することの
ないゆるやかな人の居場所・風景との接続を目指しています。
ユニット化などによる廃棄物削減
設計から施工を通し一貫した工業化を実現しました。建物全体
を覆うカーテンウォールや、パイプシャフトのユニット
(ライザー
ユニット)化により、梱包材や廃材発生量を削減し、環境に配慮
した施工を実現しました。また、生ごみからバイオガスを生成
し、発電や給湯の燃料とするシステムを開発・適用しました。
TAKENAKA Corporate Report 2015
2016
22
建 築
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Architecture
総合力から
生まれる
デザイン
サントリーワールドリサーチセンターは、これ
建物は私たちの生命や財産を守る器であるとともに、時を経て社会
まで分散していた基盤研究及び技術開発
的資産に変化していきます。当社の推奨する「魅力再生®」とは、
の機能を集約・一新し、社内外の
「知の交流」
を積極的に促進しながら新しい価値を創出
里山と広大な公園が近接する自然豊かな環境。
周辺には大学や研究機関が集積しています。
魅力再生
建築時の機能や美観を回復するだけではなく、新たな機能を付加
することで資産価値を高め、事業性を向上させることを意味します。
環境保全やサステナブルな観点から、
「スクラップ&ビルドから
することを目指して計画されました。
「よい水(研究)はよい土壌(施設)から」にな
ストック活用へ」という考え方が浸透しつつあります。時代の
ぞらえ、地層のように幾重にも重なる水・緑・土を外観のコンセプト
ニーズに合わなくなった建物の基本機能・性能の向上だけではなく、歴史的な意義をもつ
とし、四季のうつろいを感じることができる親しみやすいオープン・
建物の保存と活用の両立、用途変更(コンバージョン)による新たな価値創造など、求め
ランドスケープを設けることで、お客様の企業理念である「人と自
られる機能も多様化、高度化しています。
「魅力再生」には、当社が手掛けた数々の実績で
然と響きあう」デザインを表現しました。内部には、交流を生む仕掛
培った設計力や技術力が活かされ、BELCA賞(ロングライフビル推進協会主催)などで
けとして吹抜けやスキップフロアを立体的に配し、縦・横・斜めの視
高い評価を得ています。
線の先に研究者同士の様々な偶発的な出会いを誘導し、積極的な
コミュニケーションを促す知のネットワークを構築しました。
深い軒や庇、高い設備更新性、排熱回収システムの採用などの
様々な環境配慮技術を導入し、外装PCにおいては時が経っても
旧桜宮公会堂
1935年( 昭 和10年 )に明 治 天 皇 記 念 館として
建設された大阪市所有の洋風建築です(正面玄
関は重要文化財)
。近年まで閉館していましたが、
2階にガラスブロックの式場を挿入するなどの改
修を施し、結婚式場として生まれ変わりました。
第42回日本建築士会連合会賞受賞、2014年グッド
デザイン賞
改修設計・改修施工=竹中工務店
(2013)
色褪せない深い素材感にこだわるとともに、徹底した省部材化と
作り込みによって品質管理の向上と短工期化を図り、まさに総合
日本橋ダイヤビルディング
1930年(昭和5年)に竣工した東京都選定歴史的建造物「三菱
倉庫江戸橋倉庫ビル」の外観と4割の躯体を遺して高層棟を
増築。保存により都市景観を継承しつつ、中間層免震や水害対
策により事業継続性の高いオフィスビルとして再生しました。
第28回日経ニューオフィス賞受賞
設計=三菱地所設計、竹中工務店
施工=竹中工務店
(2014)
力を発揮した最先端の研究所が完成しました。
3階西面テラス。正面に見えるのは国立国会図書館関西館。
サントリーワールドリサーチセンター
ー世界にひらかれた最先端の研究所ー
設計・施工=竹中工務店
(2015)
神戸海星女子学院中学校・高等学校
1952年(昭和27年)の竣工以来、地域と学校関係者に愛されてきた景観
の継承、耐震性の向上、教育施設の充実を目的としたカトリック女子校の改修
と改築。既存建物の外装ディテールを再現した耐震改修を行ったほか、最新
の構造・設備を備えキャンパス景観と調和した図書館棟に改築しました。
平成26年度耐震改修優秀建築表彰 国土交通大臣賞受賞
改修設計・改修施工=竹中工務店
(2014)
裏磐梯高原ホテル
互いに刺激があり、移動を促すような
期待感にあふれた空間構成。
23 TAKENAKA Corporate Report 2016
1983年(昭和58年)に現在の建物に建替えられ、切妻屋根とウッドシングル
葺きのデザインが周辺環境に調和し、長い間愛されてきました。既存の客室は
ほとんどが和室でしたが、改修工事により様々なバリエーションを設けて多様
化する宿泊ニーズに応えています。またレストラン、ライブラリーラウンジ
などを一新し、随所に豊かな滞在時間を過ごせるスペースを生み出しました。
新たに増築した温浴棟は、周辺の環境に調和し、自然との一体感が感じられ
ます。 第23回BELCA賞受賞
改修設計・改修施工=竹中工務店
(2011~2014)
TAKENAKA Corporate Report 2016
24
海 外
竹中工務店について
グループ成長戦略
事業活動
特集
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
International Operations
お客様のグローバルな展開をサポート
海外の主な営業拠点を掲載しています
戦前からの歴史をもつ当社の海外活動は、1960年のアメリカ進出をきっかけに本格化し、
現在では世界各地にネットワークを広げています。
海外進出を目指す日本企業、各国公的機関や現地企業などをお客様に、
空港から超高層オフィス・ホテル・工場・美術館など、多彩なプロジェクトを手掛けてきました。
設計施工はもとより、技術指導・コンサルティング業務・資材調達など、活動範囲も多岐にわたっています。
■ アメリカ竹中
(2001年〜)
24 シカゴ
25 インディアナポリス
■ ヨーロッパ竹中
(1973年〜)
16
15
14
13
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
20
12
19 22
21
17
デュッセルドルフ
(ドイツ)
アムステルダム
(オランダ)
ブリュッセル
(ベルギー)
バレンシエンヌ
(フランス)
ロンドン
(イギリス)
ミラノ
(イタリア)
バルセロナ
(スペイン)
プラハ
(チェコ)
ブロツワフ
(ポーランド)
ブダペスト
(ハンガリー)
ジリナ
(スロバキア)
ブカレスト
(ルーマニア)
■ タイ竹中
(1974年〜)
(タイ)
1 バンコク
(ミャンマー)
2 ヤンゴン
8
6
11
2
7
9
9 上海
10 天津
11 広州
27
25
26
■ 開発事業
26 ニューヨーク
27 サンフランシスコ
28 ホノルル
28
1
■ インド竹中
(2010年〜)
6 グルガオン
7 バンガロール
8 アーメダバード
23
24
■ 中国竹中
(2003年〜)
10
■ マレーシア竹中
(1990年〜)
4 クアラルンプール
■ シンガポール事務所
(1974年〜)
5 シンガポール
18
■ ヨーロッパ
■ アジア/ ■ 中国
1973年にドイツ・デュッセルドルフに事務所を開設して約40年。
当社はタイ、シンガポール、インドネシアにおいては40年以上
■ インドネシア竹中
(1974年〜)
竹中土木インドネシア
(1993年〜)
3 ジャカルタ
■ アメリカ
当社はアメリカへ1960年に進出し、海外事業の礎を築いてき
ヨーロッパ竹中は、これまで1,500以上の工事を手掛けてきま
前より活動を開始し、マレーシアでは2015年に拠点設立から
ました。現在はイリノイ・インディアナ・オハイオ・ケンタッキー
した。現在では12カ国に展開する拠点で活動する約40名の
25年目を迎えました。そして現在は、中国を含めたアジア地域
の4州を事業の中心エリアとしています。日系企業のお客様
派遣社員と約350名のローカルスタッフが連携し、ヨーロッパ
への派遣社員は約170名、ローカルスタッフは約1,800名が
を中心に、新規進出時に欠かせない土地探しのご相談から、
域内への進出を検討されているお客様に対して、必要とされる
活動しています。プロジェクトの規模や建築種別にかかわらず
新築・増築・改修・アフターサービスなど、建物全般にかかわる
情報をタイムリーに提供します。
対応しています。
幅広いサービスを提供しています。
2015年ミラノ国際博覧会 日本館
(2015 イタリア)
シンガポール国立美術館保存再生
(2015 シンガポール)
曙ブレーキ工業スロバキア新工場
(2015 スロバキア)
25 TAKENAKA Corporate Report 2016
高砂香料ヨーロッパ新本社事務所
(2015 ドイツ)
豊田通商新物流センター
(2015 タイ)
ヤクルト無錫第3工場
(2015 中国)
アクシア・サウス チカラン Tower1
(2014 インドネシア)
イオンビッグアロースターSC
(2014 マレーシア)
キャピタグリーン
(2014 シンガポール)
青山製作所 インディアナ工場
(2015 アメリカ)
アマダバンガロールテクニカルセンター チャンギ国際空港第4ターミナル
(2014 インド)
(2017竣工予定 シンガポール)
ハマド国際空港 王族・国賓専用
ターミナル(2013 カタール)
TAKENAKA Corporate Report 2016
26
開 発
竹中工務店について
グループ成長戦略
事業活動
特集
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Development
都市・地域再生
※アンダーラインの物件は、SPCなどへの事業参画及び自社事業としての取り組みです
東京の丸の内・日本橋をはじめとする都心部、名古屋
駅前、大阪の梅田・中之島・阿倍野において当社は数々
[ 市街地再開発事業 ]
目黒駅前地区市街地再開発事業(2017年竣工予定)
の都市再生プロジェクトの企画や設計、施工を手掛け
東京都品川区の目黒駅前における延床17万㎡に及ぶ大規模な市街地再開発
てきました。また、市街地再開発事業やPPP/PFI事業、
となる「森」を敷地内に有するオフィス・商業棟と住宅棟からなる複合施設
提案により当選(JV)
しました。事務局員を常駐させ、約130名に及ぶ地権者
自社開発事業などの事業参画、まちづくり組織への参
画なども積極的に行っています。当社はまちづくりへ
の様々な取り組みを通じて、国際競争力の強化、安全
事業です。当社は、2007年の事業協力者コンペにおいて、都心の憩い空間
[ PPP/PFI事業 ]
みなとみらい21中央地区20街区MICE施設整備事業(2020年竣工予定)
グランドハイアット カウアイ リゾート&スパ
本事業は、グローバルMICE戦略都市を掲げる横浜市が、国際会議で有名な
当社の自社事業として開発から施工・運営まで一貫して手掛けた海外開発
ホテル(民間収益事業)を複合的に整備・管理する事業者を募集したもので、
当社は代表企業として2015年に当選を果たしました。まちづくりの視点か
したリゾートホテルです。103haの広大な敷地に602の客室、各国料理の
レストラン、スパ、
「PGAグランドスラム」を13年間開催したゴルフコース
パシフィコ横浜の機能強化を目的として新たにMICE施設(PFI事業)と
の合意形成や行政協議などを実施し、2012年には設計・施工業務を担う
らも豊かな歩行者ネットワークの整備やミナトヨコハマの景観形成などの
取得、2014年8月に新築工事を着工し、2017年の完成を目指しています。
※MICE: Meeting・Incentive・Convention・Event / Exhibition
特定業務代行者(JV)
に選定されました。2013年には権利変換計画認可を
[ 海外開発事業 ]
期待を受け、オリンピックイヤーの2020年完成を目指しています。
事業プロジェクトで、ハワイ諸島で最も自然豊かなカウアイ島に1991年開業
など充実した施設を備え、ハワイトップ10リゾートに毎年ランクインする高い
評価を得ています。地域に根ざした長年にわたる事業活動は、地域社会
からも大きな信頼を集めています。
安心の向上、環境共生など都市が抱える課題やニーズ
の解決に貢献しています。
全体完成予想パース
基本設計=日本設計
実施設計・施工=竹中工務店
(JV)
TM & ©TOHO CO., LTD.
新宿東宝ビル
完成予想パース
完成予想パース
©2015 TAKENAKA CORPORATION, AXS SATOW INC.
MICE 設計・施工 = 竹中工務店
(JV)
ホテル 基本構想 = 竹中工務店
第二吉本ビル・ハービスENT
グローバルゲート(2017年竣工予定)
グランフロント大阪
西梅田・大阪駅南地区開発
設計=Wimberly Allison Tong & Goo
施工=アメリカ竹中
梅田1丁目1番地計画
(2022年竣工予定) 完成予想パース
旧新宿コマ劇場と隣地の一体的な再開発で、
名古屋駅から南へ1km、国際交流拠点
「ささしま
合計約7haの2街区にまたがる延床面積約57
大阪の玄関口である西梅田・大阪駅
シンボリックな外観をもち、屋上テラスには実物
ライブ24地区」
の中核施設となる複合都市開発
万㎡の大規模複合都市開発で、都市再生特別
南地区の鉄道地下化による都市
大のゴジラ頭部を設置した複合施設(都市型
(オフィス、ホテル・コンファレンスセンター、商
地区の指定を受けています。当社は企画・設
基 盤 整 備を伴う面 開 発や、機 能
ホテル、シネコン、店舗、アミューズメント)です。
業施設)
です。2008年に事業コンペ当選以降、
計・施工だけでなく、共同事業者としての役割
更新のための建替えなどにおいて、
隣接する広場を囲む街区を核とした「エンター
2017年の竣工に向け、企画・設計・施工の他、
も担っています。
テナント誘致から企画・設計・施工
テイメントシティ歌舞伎町」再生の起爆剤とし
都市再生特別地区や環境アセスメントなどの
など多様な役割を担い、約1kmに
ての役割を果たしています。
行政協議のプロジェクト推進支援を行っています。
設計・施工=竹中工務店
設計・施工=竹中工務店
基本設計=日建設計、三菱地所設計、NTTファシリティーズ
実施設計=日建設計、三菱地所設計、NTTファシリティーズ
竹中工務店、大林組
施工=竹中工務店
(JV)
27 TAKENAKA Corporate Report 2016
わたるまちづくり、駅前の活性化に
貢献しています。
JR大阪駅
約1km
大阪第一生命 梅田1丁目1番地計画
ビルディング (2022年竣工予定)
(1990年竣工)
ハービスENT
(2004年竣工)
吉本ビル
(1986年竣工)
第二吉本ビル
(2004年竣工)
ハービスOSAKA
(1997年竣工)
大阪駅南
地区開発
西梅田
地区開発
ビル名表示建物
設計・施工=竹中工務店
(一部建物は施工JV)
(梅田1丁目1番地計画は基本設計=日本設計)
大手センタービル
One Fleet Place
当社が東京・大手町に手掛けた
2013年9月、当社グループの海外
開発事業プロジェクトです。申
不動産事業の新たな展開を図る
し分のない立地条件を備え、大
ために取得した英国ロンドンの
規 模 改 修 工 事により、快 適な
オフィスビルです。グローバル
ビジネス環境を提供しています。
企業が欧州での拠点を置いている
設計・施工=竹中工務店
地域に位置しています。
写真のスケールは実際の建物とは異なります
TAKENAKA Corporate Report 2016
28
エンジニアリング
竹中工務店について
グループ成長戦略
事業活動
特集
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Engineering
最先端のソリューション
市場変化に追従したスピーディーな対応、高度な建物環境、様々な安全・安心が求められています。
当社は、お客様のニーズに対し、企画段階から計画・設計・施工・アフターケアまで
トータルエンジニアリングでお応えしていきます。
エネルギーマネジメントシステム
負荷予測システム
パーソナルDR
最適運転計画
システム
リアルタイム
制御システム
制御対象のマルチ電源
大空間建築
鉄道関連建築
日本初の空気膜構造による大型多目的スタジアム「東京ドーム」
都市の利便性向上やまちの新しい魅力創出のため、駅ビルの新設
をはじめ、数多くのスポーツ・イベント施設を手掛けてきました。
や改修、駅前再開発、新線の設置など、様々な駅や鉄道関連施設
これらの施設の建設を支える技術には、デザイン・構造・設備・
の建築が話題になっています。鉄道高架下に振動のない空間を
防災・施工といった各技術が相互に密接な関係をもちつつ効率的
実現する「吊り免振工法」や線路上空に建物を構築する「トラベ
江東区)に導入して実証運転を開始しています。I.SEMは、建物
に機能する必要があります。その時代のニーズに対し最適な
リング工法®」など、鉄道や駅・駅周辺建物から再開発・まちづくりに
の負荷予測、熱源運転の最適化、電力デマンドのリアルタイム制御
ソリューションを提供し、更に未来シーズを見据えた施設を提案
至るまで、幅広い分野で取り組んでいます。駅を中心に駅とまち・
し続けています。
人をつなげた
「サステナブル ステーション シティ」
をご提案します。
エネルギー分野では、これまでに数多くの省エネルギー技術を開
クラウドプラットフォーム
発、導入し建物のエネルギー消費の削減に取り組んできました。
ビルコミ
®
2015年、新たに電力システム改革に対応したエネルギーマネジ
太陽光発電
メントシステム「I.SEM」
(アイセム)を開発し、TAK新砂ビル(東京都
という3つの機能をもち、電力コストの低減やBCP機能強化に
対応したソリューションを提供します。
発電機
空調設備
照明設備
I.SEMの特長
①当社開発のクラウド
「ビルコミュニケーションシステム®」
を
活用して高速処理が可能となり、セキュリティも万全です
直流
パワー
コンディショナー
直流
電気自動車
固体音
固体音
吊免振装置
直流
②居住者一人ひとりの節電協力度合いをデマンド調整に活用します
③太陽光発電や電気自動車などのマルチ電源を統合して
リアルタイムに制御します
交流
商用電源
④停電時も自立電源として活用します
I.SEM:I. Smart Energy Managementの略称。
「I」
は、
「Inter-=連携」
のコンセプトを表現しています。
I.SEMの構成
製造・物流施設
吊材
蓄電池
ダンパー
大梁
支柱
市立吹田サッカースタジアム
(2015)
高架下の防音・防振・免震建物を実現する
「吊り免振工法」
の概要
最先端医薬製造・研究施設
企業のリスクマネジメント支援
放射線防護技術
製造・物流施設においては、生産能力の増強、製造品目の変更、
無菌・高活性、PIC/S GMP、バイオハザードなど、最先端の医薬品
企業活動に影響を与える様々なリスクに対し、
リスクを特定し、分析・
がんの早期発見に有効なPET検査施設では、最新の医学の知見や
建物の老朽化対策、敷地の有効活用など、様々なお客様の課題を
製造・研究施設に求められる技術は日々高度化しています。次世代
評価を行い、対策立案・実施までの各ステップでトータルにお客様
信頼の高い放射線防護技術が必要とされます。その中で、当社の
解決する再構築計画の提案により、お客様の事業戦略に適合した
医療として期待される再生医療やバイオ医薬品の実用化も視野に、
を支援します。地震はもとより、
「津波シミュレーション」や「波力・
設計施工実績は国内トップを誇ります。また、高エネルギー加速器
継続的発展を支援します。建物計画だけでなく、生産・物流設備
高度なバイオクリーン・バイオセーフティを実現するための先端技術
流入解析」などのツールを用いた水害対策、竜巻危険度や噴火に
施設の豊富な実績を踏まえて、最先端放射線がん治療である重粒
計画や省エネなどを含めた総合的な施設計画提案により、
「機会
の開発を進めています。施設構築では、3Dモデリング活用により、お
よる降灰影響度など、自然災害から火災・犯罪などの人為的災害
子線・陽子線治療施設の実現に積極的に取り組んでいます。放射
損失しない」
工場の再構築を実現します。
客様と細部に至るまで内容を確認し、生産機能の最適化を図ります。
まで多岐にわたって企業のレジリエンス化をお手伝いします。
線医学総合研究所HIMAC新治療研究棟は、最新鋭の治療機器に
石福金属興業 草加工場における再構築
バイオクリーン・バイオセーフティ実験施設
リスクマネジメントのプロセス
再構築前
新A棟
STEP2
3Dを活用した原薬製造施設
(塩野フィネス福井事業所)
新C棟
STEP3
新D棟
BCP
企業アピール
新E棟
対象となる災害の抽出
災害等の様相を知る
被る被害を想定する
療 施 設です。2015
年度は世界初の超
伝導電磁石を採用
した回転ガントリー
が設置され、治療開
始に向けた準 備 が
進められています。
重粒子線治療室
波力・流入解析
戦略
環境
8秒後
29 TAKENAKA Corporate Report 2016
対 応した 放 射 線 治
事前事後の対策立案
生産
施設計画
新G棟
企業の弱点を把握
モニタリング・レビュー
新B棟
コミュニケーション・協議
STEP1
津波シミュレーション
12秒後
HIMAC新治療研究棟
(2010)
TAKENAKA Corporate Report 2016
30
技術開発
グループ
Technological Development
Corporate Group
竹中グループの技術開発
国内主要グループ会社
社会が求める環境、安全・安心、生産革新にかかわる最先端の技術開発と、
まちのライフサイクルのあらゆるステージにおいて、
イノベーションを指向した独創的なシーズ技術の研究開発を竹中技術研究所を中心に推進しています。
当社をはじめグループ各社は、お客様の多様なニーズにお応えします。
まちづくりのあらゆるステージでグローバルに先端技術・ソリューションを提供し、サステナブル社会を実現します。
竹中技術研究所
■ 竹中土木
1953年に開設した竹中技術研究所は、常に時代のニーズを先取り
人と環境に優しいものづくり
した新技術の創出と実証フィールドとして、お客様に満足いた
竹中土木は、竹中グループの土木分野を担う会社です。経営理念に「最良の作品を
だける価値を提供しています。建設にかかわる多様な専門分野の
世に遺し、社会に貢献する」を掲げ、社会資本整備を通じ、社会の発展と人々の暮らしが
研究者が結集し、国内外の研究機関と連携しながら、世界トップ
豊かになるよう努めています。また、
「環境と共生する社会基盤の構築に努め、社会の
レベルの研究を行っています。先進技術を身近に体感できる展示
持続的発展に貢献する」という環境方針のもと、環境保全・省エネ・都市再生などの
室には、お客様の課題解決と事業創出のヒントがあり、潜在的な
ニーズに的確に応えるべく、
「人へのやさしさ」
を視点に企業活動に取り組んでいます。
ニーズを掘り起こす情報発信の役割を担っています。当社は、今後
コーポレートメッセージでもある「人と地球のかけ橋に」という使命を全従業員が共有
のまちづくりに向けて、
「地球環境に貢献する技術」
「安全・安心・
し、住み良い未来の環境づくりをお客様と一緒に歩んでいきたいと考えています。
快適性を支える技術」
「最先端の空間創造技術」
「高度な建設を可能
にする技術」
の4つの領域で技術開発に取り組んでいます。
www.takenaka.co.jp/rd
近畿自動車道紀勢線立野地区改良工事
■ 東京朝日ビルド
竹中技術研究所
誇りあるものづくり
東京朝日ビルドは、当社の技能工東北養成所が前身であり、その卒業生を中心に1972年に
設立された会社です。最新鋭の設備を備えた鉄筋・型枠加工場を併設し、躯体工事を専門に
営んでいます。設立以来、
「誇りあるものづくり」のポリシーのもと、活発な人材育成を推進
バイオクリーン・バイオセーフティ実験施設
当社は政府が成長戦略の柱と位置付ける再生医療・創薬分野に関
連するバイオクリーン・バイオセーフティ実験施設の品質と安全性
を実証する研究拠点を2015年に構築しました。この研究拠点は、
WHO(世界保健機構)の「実験室バイオセーフティ指針」が求める
長周期地震動ゆれ対策技術
長周期地震動に対して多様な技術を開発し、適用しています。
「デュアル
TMD®-NT」は超高層建物に対して、小さな揺れは積層ゴムで、大きな揺
れはリニアスライダーでおもりを支持する機構です。この装置により、揺
れ時間が半減し揺れ幅も大幅に低減できます。
しています。特に、若手社員の育成に全社を挙げて取り組んでおり、
「ビルド学校」をはじめと
する自社教育プログラムの充実と現地現物教育システムの展開により、若手社員の早期
自立を強力に推進しています。現在、同社は30歳以下の若手社員が全社員の40%を占め、
彼ら若手社員が一次会社の職長として、あるいは施工管理者として建設工事の最前線で
活躍しており、先輩社員から受け継いだ技能・技術に一層の磨きをかけています。
最高レベルの建築設備を有する実験施設です。
同社社屋と併設工場
■ TAKシステムズ
B
IMのリーディングカンパニーを目指して
TAKシステムズは、当社の増大する設計業務量のうち、高品質で高効率を確保する目的
デュアルTMD -NT
®
おもり
から作図機能を分社化し設立され、今年で25周年を迎えます。社名の由来は、電子
データ化された建築生産情報が建築プロセス全体で活用される時代が到来すること
を意図して命名されました。同社は設計図・施工図・ICT支援を3本柱とし、大阪、名古屋
スライド機構
バイオクリーン・バイオセーフティ実験施設
DFL
DFL
(Digital Fabrication
Lab)
は
「人と機械の協働」
超速硬コンクリート技術
超速硬コンクリート技術「ハイファード ®」は、PCaコンクリート部材の製造
期間を最大3分の1に短縮できる技術です。某総合競技場の観客席床パネ
ルに適用することで、当初計画していた部材製造期間よりも約2カ月の短
縮を実現しました。今後は柱や梁に適用を拡大し、工場や集合住宅などを
中心にPCaコンクリート部材を使用する建物全般に適用します。
及び東京を拠点にCAD作図をはじめ3D-CAD、CG、動画作成などの他、グループ
ICT支援業務など、着実に業務領域を深め拡大しつつあります。BIMをはじめとした
設計・施工・維持管理での一貫した建築データの活用がますます重要性を増す中、
更なる高品質、高効率を追求します。
■ アサヒファシリティズ
お客様の建物価値と安全を守る
をテーマに東京大学と共同
アサヒファシリティズは、1969年の会社設立以来、竹中グループの中で建物ライフ
で建設する、素材・技術・デ
サイクルの運用段階における運営・維持管理事業を担っています。建物は、その機能
ザインのネットワークを目
を長期にわたって発揮してこそ優良な資産となります。建物の「価値」を導き出す最良の
的としたパビリオンです。
パートナーを目指し、設備の運転・保守、警備、清掃など建物管理の最適化を実現する
2 0 1 5 年 の TOCA(Tool
ビルマネジメント事業をはじめ、不動産の収益を向上させるプロパティマネジメント
Operated Choreographed Architecture)
は
「人が地面から
事業、リスクマネジメントを担う保険代理事業と、お客様の建物価値を守るため、
建築を描き上げる3Dペン」
による建築に挑みました。
31 TAKENAKA Corporate Report 2016
ハイファード
3D-CADを使ったミーティング
高品質できめ細かなサービスを提供しています。
モバイル端末を活用した施設確認
TAKENAKA Corporate Report 2016
32
ステークホルダーとともに
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
ステークホルダーとともに
事業活動
財務・非財務ハイライト
Collaboration with Stakeholders
2014年〜2016年の主な活動計画と2015年の実績
「地球環境」
「地域社会」
「お客様」
「従業員」
「協力会社」
など
ステークホルダーの方々との対話を深め、
社会の課題を捉え、事業活動を通して解決を図ることにより、
未来のサステナブル社会の実現に貢献していきます。
ステークホルダー及び
活動領域
2014年~2016年の主な活動計画
●
ページ
地球環境
地球環境
地域社会
地域社会
地域社会の持続的発展に寄与する
お客様
P37
低炭素社会
資源循環
●
●
知識・技術の
普及と発展
地域との交流・
社会貢献活動
「知識・技術の普及と発展」
「建築文化の発信と継承」を軸とし
た各事業所における地域に密着した社会貢献活動の展開及
び支援
●
●
建築文化の
継承と発信
●
品質の向上
●
ものづくりの実践
建物価値の向上
従業員
協
\ 力会社
お客様の事業の発展に貢献する
明日を担う
人材の育成
ワーク・ライフ・
バランス
多様な人材
安全と健康
従業員 / 協力会社
●
●
●
マネジメント
P41
P 43
グループ会社
P45
ステークホルダーとの対話
P47
第三者意見
P 48
33 TAKENAKA Corporate Report 2016
ステークホルダー共通
建物とお客様の事業の安全・安心を確保する対応技術の開発・
展開と総合BCP策定の支援
従業員のキャリア形成や能力開発の実施及び支援と「想」を
活用した建設技能者研修などによる若手入職者の育成
社会保険加入促進や竹中優良職長制度(マイスター制度)の
充実、生産性向上など魅力ある建設業の実現を目指した施
策の展開
女性活躍推進など多様な人材の育成、活用促進
●
定年及び再雇用者の再就職支援など従業員への支援の強化
●
●
●
●
グループ会社
ものづくりの最前線での協力会社と一体となった品質のつくり
込みによる品質の向上
健康で豊かな生活のためのワーク・ライフ・バランスの推進
●
マネジメント
お客様の事業活動への最良のソリューションの創出と提供
●
危機管理
公正な事業慣行
●
●
●
財団法人の活動の継続支援と当社活動との連携強化
●
●
従業員、協力会社とともに成長する
省エネルギー設計の実践、エネルギーマネジメントシステム
「I.SEM」などの要素技術開発(P29)
、東関東支店のZEB化
改修着手
(特集2)
●
●
組織統治
サステナブルな
「まちづくり」
を目指し、
「都市」
や
「まち」
が抱え
る社会的課題の把握と解決の促進
●
安全衛生管理活動の継続強化とメンタルヘルス、ハラスメント
対応の促進
内部統制の継続強化
グループ各社の状況に応じた教育啓発活動の実施、指導による
グループ全体のCSR・コンプライアンス知識、意識の向上
情報セキュリティ方針及びとセキュリティレベルに応じた基準
の整備と、それに応じたサプライチェーンも含めた対策の実
施及び関係者への教育啓蒙
災害発生時に備えた社内対応体制の整備と強化の継続
法令改正にタイムリーに対応した研修の実施による法的リスク
の予防
グループ相乗効果による付加価値を社会に提供するための
事業間連携の強化
従業員の成長を促進し、いきいきと働くことのできる環境づく
りとワークライフバランスの向上
ステークホルダーとの対話による社会の課題の把握と事業
活動を通した解決の促進
お客様や地域社会の生物多様性保全活動の支援
●
●
●
P39
要素技術開発による多様な選択肢の確保やグループ内連携
などによるスマートコミュニティの実現
●
●
安全・安心・豊かさ
お客様
地域・地球環境への負荷低減に対する積極的な取り組みによ
る持続可能な事業の基盤の強化
環境配慮活動の
基盤
P35
美しい地球を未来に遺す
自然との共生
省エネルギー設計、再生可能エネルギー利用の取り組みや要
素技術の開発によるZEBの実現
2015年の主な活動実績・具体的活動事例
●
®
燃エンウッド(
特集3)
やECM®セメントの適用拡大によるCO2
排出削減の推進
協力会社とともに建設現場における3R活動を推進
スマートコミュニティの要素技術として、
「 分散型コミュニティ
スペース」
「執務スペースへの誘導システム」
などの要素技術実証の
継続実施、
「ビルコミュニケーションシステム®」
の実用化 WEB
石巻における復興事業へ反映するための公園づくりWSへの
協力やネパールでの学校づくりを行う活動への支援などの
地域貢献活動を実施
都市模型を活用したコミュニケーションの実施や、健康長寿社
会をまちづくり、建築から実現するためのステークホルダーコ
ミュニケーションを実施
(P.47)
財団法人の活動の継続支援及び当社社員を中心として活動し
ていたボランティア団体のNPO法人設立支援
ハード・ソフト両面からのお客様への支援によるニーズの実現
●
建設技能者不足を解決する生産性向上技術の開発と適用
●
お客様の建物への幅広いライフサイクルサポートの実施
●
●
●
巨大地震に対応するための既存タワーへの免震レトロフィット
の適用
従業員のキャリア形成、能力開発の継続実施
入職者増加に向けた活動の促進や若手技能者育成のための
竹中優良職長制度の拡充
「時短推進キャンペーン」
「働き方(ワークスタイル)変革提案
コンペ」
などワーク・ライフ・バランス確保に向けた施策の実施
●
●
●
●
●
女性活躍推進のための対話・研修の実施と、女性技能者のた
めの疲労軽減ウエアを女性の力で開発するなどの実践事例
の創出
従業員支援制度の充実と運用の強化
WEB
作業所、協力会社、内勤部門三位一体となった安全衛生管理
活動の継続強化
内部統制の継続強化
「CSR・コンプライアンス月間」を海外現地法人を含めたグ
ループ全体で実施
●
●
●
●
●
●
情報セキュリティ意識向上のためのeラーニングの海外を含
むグループ全体での実施、標的型メール訓練の実施及び取引
会社も含めた集合教育・巡回の実施
地域性を踏まえた個別実働防災訓練及び全社連携を目的と
した合同震災訓練などグループ会社含め実施
建設業法遵守、社会保険未加入会社への指導、
「 調達方針・
活動指針」
浸透のための活動の継続
格子状地盤改良工法による液状化対策「TOFT工法®」につい
て竹中土木と共同で一般評定取得 WEB
グループ会社従業員を対象とした研修他、人材育成の会社
間連携の実施継続
ステークホルダーダイアログや座談会、協力会社巡回などを
通じたコミュニケーションの促進と社会課題の把握
TAKENAKA Corporate Report 2016
34
地球環境
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Global Environment
美しい地球を未来に遺す
私が新飯野ビルディング計画に携わったのは、地下鉄接続、地下店舗及び地上
VOICE
「環境方針」
、
「生物多様性活動指針」
と
「環境コンセプト」
に基づき、
「自然との共生」
「低炭素社会」
「資源循環」
への取り組みや、環境配慮の基盤となる啓発活動などを行っています。
の緑地帯 「イイノの森」を対象としたⅡ期工事からでしたが、完全竣工まで竹中工
務店の皆様と緊密なコミュニケーションを重ね、様々な思いを実現することがで
きました。竣工に先立ち、
「イイノの森」や屋上緑化を活用する
「ミツバチプロジェ
気候変動枠組み条約第21回締約国会議
(COP21)
での世界的合意を受けてますます重要になる温暖化対策など、
クト」を開始しました。ニホンミツバチの養蜂と社員や家族を対象とした採蜜イベントを開催し、自
社会的課題を解決し期待に応えていくための活動を継続しています。
然との共生の普及啓蒙の機会としています。今後も思い入れの深い「イイノの森」を大切に育て
ながら、都市における生物多様性の保全と創出につながる継続的な活動を展開してまいります。
自然との共生
飯野海運株式会社
不動産事業部
和田 浩二
様
資源循環
建設現場における
生物多様性の保全を目指すお客様や地域社会の取り組み
3R
(リデュース・リユース・リサイクル)
活動の推進
を様々な形で支援しています。
建設工事は、その建物が立地する敷地や周辺環境などに
建築計画における生物多様性保全
よる様々な条件や制約がありますが、環境配慮の課題に
-飯野ビルディング
(東京)
-
創意・工夫しながら積極的に取り組んでいます。下記の2つ
当社は、建物の計画・設計を通してお客様の生物多様性
分別推進ツールの例
保全の取り組みを支援しています。
のプロジェクトは、平成27年度3R推進功労者等表彰に
おいて国土交通大臣賞を受賞しました。
2014年に建替えⅡ期工事が竣工した飯野ビルディングでは、
都市における生物多様性の保全と創出に貢献する緑化計
-住友不動産金町Ⅰ街区建設工事
(東京)
-
画とし、植栽する樹木の約9割を地域の在来種としました。
当工事のような大規模集合住宅の建設工事では、多品種
敷地内に設置した巣箱でニホンミツバチを飼育し、採蜜
で大量の廃棄物発生が予想されたため、リサイクルだけで
イベントなどが実施されています。また、敷地だけでなく
はなくバランスの取れた質の高い3R活動を計画し、実践
しました。
周辺環境にも配慮し、東京都の「東京ふれあいロード・
埋め戻し土仮置き場を野菜畑に利用
プログラム」などにより前面道路の植栽管理も行われてい
まず、作業所で働く全員が3R活動の正しい知識と確実に
ます。こうしたお客様の取り組みが評価され、2015年2月
実践するという強い意志をもつことが重要と考え、分別
にABINC認証※を取得しました。
ツールを制作し、それを活用しながら処理会社も含めた
「三者合同分別パトロール 」
「 分 別 教 育 の 徹 底 実 施 」に
定期的な敷地内の「いきもの調査」の実施を支援し、建替え
後の「いきもの環境」がどのように充実しているか、
状況を確認しています。
力を入れました。また、廃棄物発生抑制では、建築部材の
VOICE
PC化や搬入資材の簡易梱包化を推進。再利用では、発生
した掘削土を埋め戻し土として活用するため場内に仮置き
※ABINC認証:一般社団法人いきもの共生事業推進協議会(Association
for Business Innovation in harmony with Nature and Community)
による、生物多様性保全に取り組むオフィスビルや商業施設の認証制度。
地域の生態系保全活動の支援
神奈川県横浜市の住宅地にある茅ヶ崎公園自然生態園
は、湧水が流れ込む溜池、雑木林のある山、谷戸田と呼ば
れる谷あいの田んぼなどの生態系が遺され、地域のNPO
飯野ビルディング
など、資源循環と自然の恵みの体感につながりました。
木製型枠の代替として鋼製型枠を使用
低炭素社会
-三重大学医学部附属病院外来・診療棟新営その他工事-
三方を稼働中の病院に囲まれた建設工事であり、騒音・
環境配慮設計や技術開発により、建物の運用段階のエネル
法人の活動によって保全されています。この長年にわたる
ギー消費量削減、ネット・ゼロエネルギービル(ZEB)の実現
保全活動の成果を「見える化」する手法を当社の研究員と
に取り組んでいます。詳しくはP.15の特集をご覧ください。
神奈川大学が共同で提案し、2014年に一般社団法人環境
また、施工段階のCO2削減として、製造時のCO2排出量を
®
情報科学センターより表彰されました。
6割以上削減できるECM セメントを開発し、適用拡大を
更に、昆虫に詳しいNPO法人の方や大学の生物の専門家な
図っています。2015年までに適用した7件のプロジェクト
どとも共同して、現地の環境や生き物の調査・解析を継続し
で合計1,300トン以上のCO2を削減し、平成27年度地球
ており、地域住民の方が自ら保全活動の成果と生き物の多様
温暖化防止活動環境大臣表彰、第25回地球環境大賞 日本
性を評価できるプラットフォームの整備を目指しています。
経済団体連合会会長賞を受賞しました。
35 TAKENAKA Corporate Report 2016
し、その仮置き期間は、野菜を育てる「畑」として利用する
飯野ビルディングの植栽
(手前)
と
日比谷公園
(奥)
の緑のネットワーク
WEB掲載コンテンツ
www.takenaka.co.jp/enviro/vision/01
環境方針・生物多様性活動指針
環境コンセプトブック
活動データ
■ 環境関連の取り組み項目と目標
(2014~2016年)
■ マテリアルフロー
■ グリーン調達など
活動事例
自然との共生 ■ 低炭素社会 ■ 資源循環
■ 環境配慮活動の基盤
(啓発活動など)
■
振動・粉じんの発生を抑制したり、通行の妨げとなることを
防ぐため工事車両台数の削減が必須でした。中でも、廃棄
物の運搬車両を削減するため発生抑制を徹底しました。
一例として、鋼製型枠を活用することで、木製型枠の加工・
解体時に発生する木くずを削減し、また、免震上部の基礎
部材をPC化するなどの取り組みにより、端材発生量を削減
しました。これにより、工事車両が減り、CO2排出量の削減
にも寄与しました。
TAKENAKA Corporate Report 2016
36
地域社会
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Local Communities
地域社会の持続的発展に寄与する
石巻市新門脇地区では、震災復興を目指し、市とURが連携して土地区画整理
VOICE
事業活動を通じて培った
「ものづくりの精神や知識・技術」
を、
地域の自治体、学校、NPOなどのステークホルダーと対話を行い、学会や教育機関への人的貢献、
事業による宅地整備と復興公営住宅の建設を同時に進めており、両事業の設
計・工事につき2013年度より、竹中工務店さん・竹中土木さんに関与頂いて
おります。2015年度は
「子どもと築く復興まちづくり」
として、同地区内の公園
社内教育施設の解放・利用による知識・技術の普及、各事業所における地域社会とのコミュニケーション、
について、ふるさとへの愛情などに溢れた地元中学生の想いを受け止めて具体の公園計画に
企業財団の活動や季刊広報誌の発行を通じた建築文化の継承と発信などを通して、
まとめる作業にも関与頂いております。まさに「想いをかたちに 未来へつなぐ」を復興現場で
次世代を担う人材の育成と地域の発展に貢献していきます。
も実践しておられる竹中グループの今後の発展を期待いたします。
UR都市機構
石巻復興支援事務所 所長
大山 雄二郎
様
知識・技術の普及と発展
建築文化の継承と発信
石巻市新門脇地区の公園づくりに協力
公益財団法人への活動支援
当社は、公益財団法人日本ユニセフ協会から委託を受け、
当社は、3つの 公益財団法 人 の 活 動 支 援を通じて、
「伝
山形大学と協働で復興カリキュラム「子どもと築く復興まち
統技術の現代・未来への伝承」
( 竹中大工道具館)
、
「 現代
づくり」
を実施しています。
の建築文化の社会への発信」
( ギャラリーエークワッド)
、
2015年5月、プログラムの一つである「復興・まちづくり
学習」の一環として、子どもたちの意見を石巻市新門脇
地区の復興事業へ反映するために、地元中学生による公園
「未来の社会を担う人材の育成」
(竹中育英会)を柱とした、
石巻市新門脇地区
過去・現在・未来をつなぐメセナ事業、育英事業を展開
公園計画地の説明
しています。
づくりのワークショップを開催しました。
●公益財団法人竹中育英会
震災で全焼し、2015年3月に廃校となった門脇小学校の
1961年に設立した「竹中育英会」は、創設者であり初代
卒業生が通う、門脇中学校の1年生約80名が、当社社員を
「近代建築 ものづくりの挑戦」
神戸会場の展示風景
含むまちづくりの専門家からのレクチャーや、自らの調査を
少年の育成と教育の深耕を図ることを趣旨に事業を続けて
通して、自分たちの発想を模型に表現し、7月の発表会で
います。中心となる奨学事業では、毎年約180名の学生に
保護者の方々に披露しました。
「いろいろな場所から来てもら
える公園」
、
「ずっと残していけるような公園」という子ども
たちの想いを関係者の方々と一緒に実現してい
きます。
理事長である竹中藤右衛門の
「感恩報謝」
の理念のもと、青
奨学金を給与し、海外留学生への学資金支援も行ってい
ます。また、将来性のある建築系研究者に対する助成や、
学校での朝礼の様子
(震災後)
文化・芸術分野への支援も引き続き実施しました。
VOICE
●公益財団法人竹中大工道具館
民族遺産として大工道具を収集・保存し、研究や展示を通じ
地域との交流・社会貢献活動
て工匠の精神や道具鍛冶の心を後世に伝えることを目的
に、1984年竹中工務店創立の地、神戸に開館。30周年の
NPO法人AAF
(Asian Architecture
2014年には新神戸駅近くに移転し、新たなスタートを切り
Friendship)への活動支援
ました。国内唯一の大工道具の登録博物館として、常設展示・
当社の大阪本店設計部の有志が中心となって活動するボラン
ティア団体AAFは、アジアの子どもたちのために学校など
「第5回 世界の建築スクール展」
展示風景
都市模型を活用した講演会の様子
「近代建築 ものづくりの挑戦」と題した企画展を開催し、
の建設支援を行っています。2000年から開始したネパール・
フィリム村の学校建設事業は、その後も募金や広報活動で
都市模型でまちづくりコミュニケーション
寄せられた資金により、3期工事を継続中です。
当社は、東京の臨海部を中心としたまちづくりやその在り方
2015年4月には当社も支援して、特定非営利活動法人
を、ステークホルダーの皆様と一緒になって考え、対話を促
(NPO法人)化し活動基盤を整備しました。時を同じくして
進していくため、
「TOKYO臨海都市模型」を制作し、12月
不幸にもネパール中部大地震に見舞われ、フィリム村の学
より東京本店1階エントランスにて展示を開始しました。
校は大きな被害を受け、子どもたちもテント生活を強いられ
模型は2000分の1スケールで、映像コンテンツによる多様な
ています。子どもたちが1日も早く元の学校生活に戻れるよ
情報を投影できるようにしています。展示開始に合わせて、
う、当社も寄付金集めに協力し、新社員においては寮祭の
法政大学の陣内秀信教授をお招きし、近未来のベイエリア
売上金を全て寄付するなど支援を続けていきます。
開発をテーマに従業員への講演会を実施しました。今後は、
地域や学生との交流などへの活用も検討していきます。
37 TAKENAKA Corporate Report 2016
企画展・体験教室など積極的に活動しています。10月には
明治以降の近代化に向けた技術革新の過程を、建設会社
WEB掲載コンテンツ
www.takenaka.co.jp/enviro/vision/02
知識・技術の普及と発展
■ 教員研修への協力
■ なにわ出前塾の子ども教育支援
地域との交流・社会貢献活動
■ 国連防災世界会議のイベントに協力
■ 地域へ安全・安心を提供
建築文化の継承と発信
季刊誌
「approach」
の発行
■
や大学などの貴重な資料を通して振り返りました。
●公益財団法人ギャラリーエークワッド
2005年に東京本店1階に開設して以来、様々な企画展を
通して「建築の愉しみ方」や「建築のもつ芸術性や文化」を
発信し、質の高い文化の振興に寄与する活動を続けており、
本年も8本の企画展を開催しました。6月には、世界の建築
スクールシリーズの5回目として、フィンランドのアアルト
大学での木造建築に特化した教育を紹介し、
「木」の可能性
とものづくりの魅力を伝えました。
TAKENAKA Corporate Report 2016
38
お客様
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Customers
お客様の事業の発展に貢献する
このプロジェクトは
『みんなの寄付金でつくる日本初のスタジアム』
を目指してはじ
VOICE
お客様に満足していただける
「安全・安心で魅力的な作品」
を創り出し、社会の信用を得るために、
まったのですが、敷地選定、寄付金集め、各種事前協議など想像を超える苦難の
連続でした。その苦難を一つひとつ乗り越えるために、竹中工務店の皆さんには
「品質保証体系」
に基づいた、設計・施工段階での品質のつくり込みを行っています。
事業計画段階から設計施工全てのプロセスにおいて総合力を如何なく発揮し協力
プロジェクト初期からハード・ソフト両面による支援や、
していただきました。皆さんと熱い想いで共有したスタジアム完成という夢の実現を達成した今、 スタジアム建設募金団体理事
建物のライフサイクルを通じたお客様と対話をしながらのサポートにより
その想いを継承して、4万人のサポーターでスタジアムを満員にし、サッカーを通じて大阪を元気に
お客様の社会的資産としての価値の持続・向上に取り組んでいきます。
品質保証体系に基づいた活動
お客様の多様な期待を具現化し高い品質を実現するため、
設計施工品質保証体系図
お客様
品質の向上
事業計画
▲
事業計画
引渡し検査
施工
管理
捉え、建物に必要とされる新たな価値提案を行い、お客様
アフターケアへの引継
施工
計画
工事
監理
CS調査 竣工後点検
技術
審査
確認
申請
当社は建物のライフサイクルを通して社会環境の変化を
の事業をサポートしています。
「福岡ヤフオク!ドーム」は
建物外観
日本初の開閉式屋根をもつ多目的スタジアムとして1993年
に完成し、今年で23年を迎えます。これまで、世界一の球団・
施設を目指すお客様とともに、営業・設計・技術・FMの各
セクションが連携し新たな魅力創出に挑んできました。
フェーズゲート
(各プロセスでのお客様と当社の合意を確認し、次フェーズへの移行の可否を決定する場)
2015年はオフシーズンの各種イベントの合間を活用し、
みんなでつくった市立吹田サッカースタジアム
プレミアムスイート
ホームランテラス
当社の「ものづくり」とは、単に高品質の建物を建てること
だけではありません。お客様の想いをかたちにするため
遠隔制御機構
り添い、グループの総合力で、お客様の事業の発展に貢献
していきます。
市立吹田サッカースタジアムは、Jリーグ「ガンバ大阪」の
間近で感じられる
「ホームランテラス」
、ワイドサッシを用いた
全国のドーム球場に先駆けたアリーナ照明の「LED化」を
完成させ、これまで以上にエキサイティングな野球観戦を
テンション
ガーダ
演出し、お客様から高い評価をいただきました。これからも、
積層ゴム
支承
コンプレッション
ガーダ
日本を代表する大型施設の魅力創出に貢献し続けます。
新ホームグラウンドとなる、国際基準のサッカー専用競技
安全・安心・豊かさ
場で、個人・法人からの寄付金と助成金による「みんなの
寄付金でつくる日本初のスタジアム」として、9月に竣工し
通天閣全景パース
ました。観客席からピッチまでの最短距離はわずか7m。
通天閣免震レトロフィット
戦後復興の証として誕生した2代目通天閣は、登録有形文化
臨場感あふれるヨーロッパ水準の観戦環境となっています。
ジャッキ&
®
地震感知システム ロックダンバー
プロジェクトの構想段階から、解決しなければならない
竣工時に約5千人のファンでつくった人文字
施工面では、22カ月という短工期と、技能労働者不足の問
ジェクトならではの課題はもちろん、その大切な原資を無
題に対処するため、基礎梁をはじめ躯体の約80%をPC化
駄にしないための効率的な設計・施工に至るまで、お客様
しました。また上層階を支えるメガPC梁(約85トン)は、超
と想いを共有しながらプロジェクトに取り組みました。
大型クレーンによって無足場で設置され、屋根工事では鉄
設計面ではローコストに加え、
「エコ・コンパクトスタジアム」
骨部材の大型ブロック化工法を取り入れるなど、様々な取
を目指して、建物全体を無駄なくコンパクトにつくることと、
り組みによって究極の省人化が図られ、次世代建設技術の
メンテナンスフリーを追求しました。オールLEDのグラ
先駆けとなっています。
ウンド照明や、0.5メガワットの太陽光発電などを備えたほか、
Jリーグの新しいスタンダードを目指したサッカースタジア
近傍の大型複合施設と連携しエリア全体の省CO2を可能
ムは、ガンバ大阪というチームとともに地域社会
とするスマート受電も実現しました。災害時には、市の大
に根差し、クラブと日本サッカーの発展に貢献し
規模公共施設として避難所となることも想定されています。
ていきます。
VOICE
財に指定され、年間百万人超が訪れる大阪のシンボルです。
エレベータ塔
免震構造の構成
環境影響評価や行政との協議・調整といった大規模プロ
39 TAKENAKA Corporate Report 2016
24時間体制で、外野手のダイナミックな迫力あるプレーを
より開放感溢れる個室型観戦席「プレミアムスイート」
、
じゃばら
エキスパンション
に、プロジェクトの初期から全てのプロセスでお客様に寄
多くの課題がありました。敷地の選定から、ボリューム検討、
様
福岡ヤフオク!ドームの魅力創出に貢献
▲
建物受領 アフターケア
5フェーズ
6フェーズ
アフターサービス
施工
プロジェクトの総括
詳細
設計
4フェーズ
生産準備
施設運用
着工準備の確認
ものづくりの実践
施工計画
見積
調達計画
3フェーズ
詳細設計
生産準備開始
ています。
2フェーズ
基本設計
基本
設計
建設
▲
契約
受注
受命
当社
営業活動
基本
計画
本設計移行
フロー化した「品質保証体系」によって、設計・施工段階で
お客様満足度調査のフィードバックなど更なる改善に努め
施設計画
1フェーズ
基本計画
野呂 輝久
建物価値の向上
▲
設計発注
0フェーズ
受命活動
TQMに基づくプロジェクトの品質保証プロセスを標準
の品質のつくり込みとアフターサービスによる品質点検、
するという次の目標に向かってチーム一同頑張りますので、引き続き応援よろしくお願い致します!
(株式会社ガンバ大阪
代表取締役社長)
巨大地震への安全・安心確保と集客力向上という建築主の
天井画
WEB掲載コンテンツ
www.takenaka.co.jp/enviro/vision/03
ものづくりの実践
■ 医療スタッフのコミュニケーションを
「見える化」
する
シミュレーションツール
■P
Caコンクリートの接合作業を省力化する
「TT―JOINT」
工法
建物価値の向上
■ 電力システム改革に適合した
エネルギーリアルタイム制御システム
「I.SEM」
■「大手センタービル」
にクラウドを活用した
「ビルコミュニケーションシステム®」
を導入
安全・安心・豊かさ
格子状地盤改良工法による液状化対策
「TOFT工法®」
が一般評定を取得
■
想いを受け、世界でも類を見ないタワー免震へ挑戦しました。
免震採用の決め手は、改修範囲を脚部と渡り廊下に集中
することで、登録有形文化財としての外観に与える影響を
最小限にとどめ、最高水準の耐震性を確保できることです。
天然ゴム積層支承と風揺れ防止機能を有するジャッキ&
ロックダンパー®で構成された免震層を地上10mの基壇部に
設け、渡り廊下のじゃばらエキスパンションで免震の動きに追従
させます。施工ではエントランス上部全面に仮設構台を設け、
来場者と工事エリアを分離することで営業しながらの工事を
実現しました。脚部上部には初代通天閣の天井画を復刻し、
大きな話題を呼んでいます。時代を超え、大阪の心の灯ともい
える通天閣は、当社の世界最先端の技術によって再生しました。
TAKENAKA Corporate Report 2016
40
従業員 / 協力会社
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Employees and Cooperating Companies
従業員、協力会社とともに成長する
支えあう力
VOICE
当社は従業員・協力会社が向上心や先見性をもち、多様な人格・個性が尊重され、
安全かつ健康で働きやすい環境づくりを進めています。
私は育児休業から復帰後「育児のための短時間勤務制度」を利用しました。覚悟
をもって臨んだのですが、1時間半短くなった所定時間で設計業務をこなすの
に苦戦し、子どもの成長を機に2年で通常勤務に戻りました。この経験を通じて、
そのために、従業員や協力会社との対話や女性社員・女性技能者が中心となり施工を担う
制度の利用には周囲の理解と支援が不可欠で、そのためにはまず自己の能力と業務量を把握し、
「けんせつ小町工事チーム」
の活動などを通じ、課題の共有と解決を進めています。
どの程度支援が必要かを自ら上長や周囲に発信し協力をお願いすることがとても大事だという
育成面では、体験型研修に重きを置いた
「竹中技術実務研修センター 想」
で
ことを学びました。現在は、周囲の支援を得てワーク・ライフ・バランスを保っています。支えて
建築技術者・技能者・学生向けの教育プログラムを展開し、
もらっている感謝の気持ちを、今は支える力として蓄えています。
その取り組みが日本能率協会主催のKAIKA賞及び日本建築学会教育賞
(教育貢献)
を受賞しました。
九州支店 設計部
設計1グループ
安河内 小織さん
明日を担う人材の育成
多様な人材
入社後1年間の新社員教育
女性活躍推進から始まるダイバーシティの活動
当社では、入社後1年間をかけ新社員が誠実な人間へと成
当社では、性別、国籍、年齢、障がいの有無などに関わらず誰
長し、幅広い知識と当社の伝統精神を身に付けるための教
もが働きやすい職場環境の実現のためダイバーシティ・マネ
育を実践しています。当社創立の地・神戸市にある教育寮
ジメントを進めており、中でも女性の活躍推進に力を入れて
での生活や経営層との懇談会、複数部門での指導担当者と
います。全従業員にダイバーシティ講座のeラーニングを実
マンツーマンでのOJTなどを通じ、企業理念をはじめ「もの
づくり」への真摯な姿勢や建築生産のプロセスを幅広く体
施するとともに、経営層によるダイアログと、職場ごとに課題
新社員と社長との懇談の様子
ライン長研修の様子
と取り組みを語り合う職場ダイアログにより意識向上を図り
得し、一人ひとりの適性を伸ばす指導が行われています。ま
ました。就業継続とキャリア形成の鍵を握るライン長に対する
た、海外現地法人へ選抜派遣する「新社員異文化体験研修」
研修や女性従業員への階層別研修も実施しています。
など社会環境や経営戦略、教育ニーズの変化に合わせ柔軟
具体的な女性活躍の場も着実に増えています。当社・協力
に改善・充実を図っています。
会社・メーカーの女性チームにより、女性建設技能者のための
「疲労軽減ウェア職人DARWING
(ダーウィン)小町」を開発、
学生を対象とした展示会&建築体験フェアの実施
販売を開始しました。開発にあたっては、ダイヤ工業株式会社
当社は建設業界における技能者不足への対応として、協力
会社と一体になった様々な取り組みを行っています。2015
年は当社西日本機材センターにおいて、協力会社組織
「竹和
と共同開発した
「疲労軽減ウェア
“職人DARWI
NG”
」
をベースに、
作業所体験見学会
女性技能者活躍推進座談会の様子
職人DARWING小町
開発会議の様子
長としての女性の登用も増えており、建築の最前線である
会」との共催による「建設機械展示会&建築体験フェア」を
作業所でも、当社初の女性作業所長が誕生しました。様々な
開催しました。フェア期間中には女性技能者の活躍の場を
職場環境で女性活躍からダイバーシティを進めています。
広げる、といった座談会も開催し、学生・一般の方々など
総勢1,714名の来場者を迎えることができました。
安全と健康
竹中優良職長制度の拡充
建設工事現場では、様々な専門工事会社の多くの技能
当制度の更なる拡充のために、若手技能者の育成を目的
としたジュニアマイスター制度の新設、また業界における
労働者を元請会社が統括管理しながら、建物を完成させて
働き方(ワークスタイル)変革コンペ審査の様子
三位一体となった作業所巡回
女性社員による安全衛生パトロール
待遇改善の一環として、報奨金の増額改定を行いました。
いきます。安全衛生管理では、それぞれの工事に伴う特有
のリスクを事前に抽出し、当社の社員と各協力会社の技能
ワーク・ライフ・バランス
WEB掲載コンテンツ
従業員が心身ともに充実した状態で働けるよう社員組合
した制度の見直しを行うとともに、今後増加が予想される
と意見交換を行いながら様々な取り組みを進めています。
介護にかかわる従業員の不安を解消するための介護セミ
2015年は前年と同様に、
「時短推進キャンペーン」活動を
ナーを開催しました。これらの活動を含めた「一般事業主
月間化し、併せて、ワーク・ライフ・バランスに関して幅広
行動計画」の策定・実施により、厚生労働省より
「次世代育
く従業員のアイデアを募るために、
「働き方(ワークスタイ
成支援対策推進法」に基づく基準適合一般事業主として
ル)
変革提案コンペ」
を実施しました。
認定を受け、2012年に続き2度目の次世代認定
また、育児による短時間勤務が必要な従業員の声を反映
マーク
(愛称:くるみん)
を取得しました。
41 TAKENAKA Corporate Report 2016
多くの女性の声を取り入れました。また、組織をまとめるライン
VOICE
www.takenaka.co.jp/enviro/vision/04
明日を担う人材の育成
■ 一人ひとりの適性を伸ばす育成体系、
グローバル人材育成の現況
ワーク・ライフ・バランス
■ 従業員支援制度の充実と運用の強化、
労使協調での時短活動
多様な人材
■ ダイバーシティ推進の現況
安全と健康
■ 健康ケア制度、
2015年安全成績、
「想」
での安全研修
労働者が密にコミュニケーションをとりながら、日々労働
災害防止に努めています。更に、作業所支援部門である
内勤の関係者、技能労働者を雇用する各事業主の代表者
が作業所と三位一体となった安全巡回を実施することで、
お互いに忌憚のない意見を交わすことのできる「作業所
風土づくり」に力を入れ、安全意識の向上を図っています。
また、女性社員による安全衛生パトロール隊を編成し、
女性の目で見た労働災害の防止や快適な職場の実現を
推進しています。
TAKENAKA Corporate Report 2016
42
マネジメント
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
ステークホルダーとともに
事業活動
財務・非財務ハイライト
Management
当社は企業理念のもと
「品質経営」
を実践し、お客様の満足や社会からの信頼を得て、
企業としての社会的価値を高めていくとともに、企業としての社会的責任を果たしていきます。
そのために、事業活動を公平かつ効率的に行うだけでなく、
取り組みの状況を評価し、改善していくことができる体制・仕組みづくりを推進し、
グループ事業間連携の基盤強化についても取り組みを進めています。
組織統治
CSR・コンプライアンス体制を構築し、
経営の質の向上と、迅速で的確な意思決定を行う
啓発活動を継続実施
ガバナンスの充実
危機管理
公正な事業慣行
情報セキュリティ対策を継続して推進
関係法令の改正内容を周知・徹底し
当社はお客様の大切な情報資産を守るため、情報セキュリティ
建設業法順守への取り組みを継続
対策を実施しています。2015年度は、情報セキュリティ意識の向上
法令順守に基づいた適切な企業活動を実践するために、関係
経営に関する意思決定及び業務執行の監督機関として、取締
CSR及びコンプライアンスを維持・向上させる体制として、
役会を毎月1回、その他必要に応じて開催しています。また、
CSR推進分担役員を委員長とするCSR推進中央委員会と、
のために、海外も含めた竹中グループ全社、全従業員を対象に実施
する様々な法令などの改正及び運用動向の社内への周知・
経営意思決定の迅速化と事業執行機能、監督機能の強化を
その下部組織でコンプライアンス分担役員を委員長とする
している
「eラーニング」
に加えて、
「標的型メール訓練」
を実施しま
徹底に努めています。2015年度は国土交通省のガイドライン
図るため、2010年より執行役員制度を導入しています。これに
コンプライアンス専門委員会、更に支店CSR・コンプライアンス
した。また、内勤・作業所に
改訂に伴い、業界を挙げて社会保険100%加入への取り組み
加え、会計監査法人より、独立監査人としての公正・不偏的
委員会を設置しています。また本社にCSR推進部を設置し、
おけるセキュリティ対策の
立場から監査を受けています。また、内部監査組織として監査室
竹中グループにわたり各事業所にCSR・コンプライアンス推進
点検、グループ会社及び取
を置き、会社の業務、会計及び財産の実態について、正確性・
責任者、CSR・コンプライアンスリーダー、コンプライアンス責任
引会社の意識向上を図るた
妥当性の確認を行っています。
者、コンプライアンス・
(サブ)
リーダーを任命し、教育・啓発の
めの集合教育・巡回も継続
内部統制については、内部統制基本方針に基づき、コンプライ
推進役としています。加えて当社内、グループ会社、協力会社・
して実施しています。今後
アンスを含むCSR活動の推進やリスク事象発生時の危機回避・
作業員などからの相談・通報窓口を複数設置し活用しています。
も活動を継続・推進し、強
軽減及び平時における危機管理活動の推進など、全社的な体制
CSR・コンプライアンスに関する具体的な教育・啓発活動とし
化を図っていきます。
整備や啓発・訓練を実施しています。また、グループ会社に
ては、社内外の身近なCSR、コンプライアンス問題を取り上げる
ついても、当社に準拠した企業行動規範を制定しました。各社
「CSR・コンプライアンスニュース」を2009年からほぼ月に
に対して、管理体制を整備し、この行動規範を実践することを
1度、全従業員に配信しています。
指導しています。
更に、毎年11月に実施している「竹中グループCSR・コンプラ
イアンス月間」では、
トップメッセージの発信、社外講師による
「CSR役員セミナー」
、職場のコンプライアンス活動をテーマ
コーポレート・ガバナンス体制図
とした「寸劇・ミーティング」、各種相談・通報制度の周知、
株主総会
「e-クイズ」などを、海外法人を含むグループ全体で実施した
選任
選任
ほか、
「建設業取引適正化推進月間」に伴うプログラム、ハラス
選任
メント防止研修などを各社独自に実施しました。
こうした活動を繰り返し行うことにより、コンプライアンスを
[取締役会]
取締役
監査
報告
会計監査人
[監査役会]
監査役
社外監査役
選定
選任
含むCSRに関する知識・意識の深化と向上を図っています。
報告
就業者
一人ひとりの
意識と行動
が加速する中、当社としても取引企業が100%加入できるよ
うに、全社での新たな取り組みを開始しました。
また国の定める「建設業取引適正化推進月間」
(11月)に合わ
ルール整備
教育・啓発
活動
技術的な
安全措置
せて、作業所における建設業法の順守、社会保険加入状況の
確認・フォローの確実な実施を期間を設けて確認し、全社を
挙げて適切に取り組むよう周知徹底しました。
適切な調達に向けた取り組みと、
反社会的勢力への継続した対応
BCPに基づき、自然災害などにおける
被害の最小化への取り組みを継続
当社は企業が果たす社会的責任の一環として、
“お取引先と
当社は発生が予想される地震を想定し、対策本部を設置し、
一体となり社会・お客様のニーズに応える調達を推進する”と
従業員・家族の安否確認、作業所・自社施設、当社施工建物の
した「調達方針」及び「活動指針」
を定め、調達分野における明確
被災状況確認及び復旧などを全社的に行うBCPを策定してい
な方針に基づいた活動を展開しています。また取引会社に対し
ます。2015年は、東日本・中部日本・西日本の3地域で地域性
ては、安全衛生協力会や当社の協力会社組織である竹和会で
を踏まえた個別実働訓練(従業員・家族の安否確認・津波被害へ
の会合を通してその方針を説明し、方針に基づいた具体的実施
の対応・徒歩出社帰宅訓練・作業所や自社施設と当社施工建
事項をお願いしています。
物の被災状況確認復旧対応訓練)を実施し、従業員への訓練
反社会的勢力に対しては、従来よりすべての取引会社との間
内容の浸透強化を図りました。また、11月20日には、全社連
で暴力団排除条項覚書の締結を行うとともに、幅広く情報共有
携を主な目的として全社合同震災訓練を実施しました。更に、
して水平展開を図るなど反社会的勢力との関係遮断を徹底し
大規模地震発生時における初動対応状況を対策本部メンバー
ています。
が体験するシミュレーション訓練も昨年に引き続き実施しまし
経営審議会
代表取締役
執行役員会
CSR推進委員会
た。実施した4つの訓練には
指導
危機管理委員会
指導
執行役員
本社・支店
事業本部
監査室
業務監査
グループ会社
当社全従業員にグループ会
顧問弁護士
会計
監査
社17社も含めた約11,000
CSR・コンプライアンスニュース
CSR役員セミナー
CSR推進部
名が参加し、グループの総
力を結集する機会にもなりま
した。今後も継続的に厳しい
コンプライアンス指導
名古屋支店震災訓練風景
条件を想定した訓練を実施
全国竹和会総会で調達方針・活動指針を説明
していくことでBCPのスパイ
WEB掲載コンテンツ
www.takenaka.co.jp/enviro/news
「竹中グループCSR・コンプライアンス月間」
を実施
43 TAKENAKA Corporate Report 2016
WEB掲載コンテンツ
ラルアップを図り、有事の際
www.takenaka.co.jp/enviro/procurement
の具体的な行動につなげて
いきます。
合同震災訓練風景
調達方針
TAKENAKA Corporate Report 2016
44
グループ会社
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Group Companies
竹中グループCSRビジョンの実践のために、
国内外のグループ会社で企業行動規範を定め、CSR推進活動を進めています。
また海外現地法人では、各国・地域の文化や慣習にも配慮した活動を推進しています。
国内グループ会社の活動
アサヒファシリティズ
地球環境
お客様
● エネルギー使用量削減に向けた取り組み
海外グループ会社の活動
裏磐梯高原ホテル
地域社会
お客様
● 地域との交流
同社はESP事業者である(株)シーエナジー様のもと、伊勢
赤十字病院への電力・熱などのエネルギー供給を行う施設
の設備管理・保守業務を受託しています。
病院への電力エネルギーを供給する同施設には、きめ細や
かな省エネ対策を講じた安定供給が求められます。同社は
ボイラーや熱源機器などの大型設備の運転において、設備
機器管理に対する豊富な知識・経験を活かした日々の運用
改善を重ね、安全・
安心で安定的な
施 設 運 営に加え、
エネルギー使用量
と光熱費のコスト
削減を高い次元で
両立させ、お客様
にも満足いただい
ています。
同ホテルでは、文化や芸術の魅力を伝える展示会や講演会、
コンサートなど様々なイベントを開催し、地域との交流を深
めています。
2015年10~11月には、公益財団法人ギャラリーエークワッ
ド主催の企画展「いわさきちひろの小さい秋」
(協力:安曇野
ちひろ美術館、後援:裏磐梯観光協会)を開催しました。展示
期間の最終日には「おはなしの会」や「ちひろの水彩技法体験
ワークショップ」を
実施し、絵本の読
み聞かせや、
「にじ
み」の水彩技法で
缶バッジとカード
を作る体験を地域
の皆様や来館され
たお客様に楽しん
でいただきました。
TAK-QS
TAKリビング
同中央監視室での業務風景
地域社会
従業員
● 建設積算業務の体験学習
積算業務を営む同社は、この度、江戸川区立西葛西中学校
の男子生徒2名の職場体験を受け入れました。
建設業の職場体験というと、ビルの建設現場や設計室など
がイメージされやすいと思いますが、今回は積算業務という
視点を通じ建設業を知ってもらうユニークな提案を行い実
現したものです。生徒は5日間にわたる職場体験で3Dモデ
ルのシステムを用いた積算業務を行いました。偶然にも生徒
1名のお父様がゼネコンにお勤めで、日頃の父親の仕事内
容を知る機会にもなったようです。
一方、同社従業員、特に若手社員にとっては“人に教えるこ
との 難しさ”を学
んだり、今の中学
生 がPC操 作に何
の苦も無く操れる
ことを知る機会に
なるなど、双 方に
とって大変有意義
な職場体験となり
ました。
インターシップ研修風景
45 TAKENAKA Corporate Report 2016
いわさきちひろの小さい秋
「おはなしの会」
地域社会
● 会社組織と施工管理業務の体験学習
イタリア
地域社会
● 日本の食文化と多様性を伝える
国家的プロジェクトに参画
アジア・ヨーロッパ・アメリカ
従業員
● 明日を担うローカルスタッフ育成への取り組み
2015年5月から10月までイタリア・ミラノで開催された「ミ
ラノ国際博覧会」にて、当社は日本館の施工を手掛けました。
「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、
「食」に焦
点を当てた今回の博覧会。日本館のシンボルとなった外壁に
は、日本の食文化を育む素材として「木」が取り入れられ、当社
は日本の伝統的な建築手法を用いて実現しました。
伝統技術をもつ職人がいないイタリアでの作業とあって、
ヨーロッパ竹中では3Dソフトや実際の素材を用いた検証作業
を繰り返し実施し、イタリア人技術者・技能者と一丸となって
作 業 に あ たりました。
日本館を訪れた外国人
訪問者からは「繊細さと
緻密さがとても日本的」
といった声 が 聞かれ、
日本の食文化とともに
伝統建築の技と文化を
伝えることができました。
一際目を引いた、木の外壁
国際支店と当社海外拠点では、ローカルスタッフ(現地採用
社員)のキャリア形成や能力開発、そして日本の建築や文化
に触れることで、当社の「品質経営」への理解を一層深めても
らうことを目的に、1997年から「ローカルスタッフ短期研修」
を実施しています。2015年は5日間にわたって行われ、当社
海外現地法人計7拠点から10名が参加しました。
研修では座学をはじめ作業所見学会、技術系従業員を交え
た技術討論会など幅広いプログラムが続きましたが、初めて
日本を訪れた参加者も多く、
「 今後は、日本人の同僚と一層
良いコミュニケーションが取れそうです」と、皆笑顔で語りま
した。国 際 支 店 及び
当社海外現地法人で
は、こうした研修を通
して海外拠点の中核
を担う人材の育成や、
日本と海外の技術交
流の活発化を目指し
ています。
都内作業所で、日本の
「朝礼」
を初体験
従業員
内装工事を営む同社では、都立蔵前工業高等学校建築科の
生徒5名の職場体験(インターン)を受け入れました。企業活
動と建設業の全般を学びたいとの学校側の依頼を受けて実
現したものです。生徒は3日間の職場体験を通じ、同社と竹
中グループの取り組みについて説明を受け、見積・作図・工
場・施工管理の一連の業務について部門の役割を確認しな
がら体験していただきました。
職場体験の最終日には社員総会とバーベキュー懇親会にも
参 加し、建 設 業 へ
の理解を深めて
もらえ たと思 い
ます。今 回 のイン
ターンの他、同社
では別の高等学
校3校からも約30
名を受け入れるな
ど、職 業 教 育と地
域社会への貢献を
積極的に行ってい
ます。
造作工事作業現場での研修風景
タイ
地球環境
地域社会
● マングローブ植林活動を通じた環境・地域貢献
タイ竹中では2008年以降、現地に根付いた企業を目指し
て、年一度の社員旅行の際に地域・環境貢献活動を実施して
います。2015年は、タイ中部のサムットプラーカーン県に
あるバンプー自然教育センターで、マングローブの苗木
植樹、橋や手すりのペンキ塗り替え、ゴミ清掃などを行いま
した。
揃いのポロシャツを身に付けたタイ竹中社員とその家族は、
レクリエーション活動やウォークラリーを行いながらマング
ローブについて学びました。参加者は皆、泥だらけになりな
がらも多くの笑顔や歓声が沸き、大盛り上がりとなりました。
今後もこの国の将来
のため、多 様 な 生 命
を育むマングローブ
をはじめとした自然環
境保全活動や地域社
会貢献活動を継続し
ていきたいと考えて
います。
マングローブ植林活動
アメリカ
地球環境
地域社会
● グランドハイアット・カウアイの地域貢献活動、
環境保護活動
当社がハワイに所有・経営するグランドハイアット・カウア
イは自然環境保護と地域社会の発展のため、米国における
熱帯植物生態系の研究・保護・教育を目的とするNPO団体
National Tropical Botanical Garden(以下NTBG)に寄
付を行いました。NTBGは、現在5つの植物園と3つの特定
保護区をもち、6万種の植物を保護・育成しています。
また、2015年、同ホテルでは水溶栽培プラント(以下、野菜
工場)を立ち上げ、6種類のレタスを生産し、ホテル内の全
レストランに新鮮なまま、常時供給しています。島内では野菜
を本土からの輸入に頼っ
ており、その解消と環境
保護という観点から野菜
工場を推進しています。
自然環境に恵まれたこ
の地で今後とも地域貢
献、環 境 保 護に努 力し
ていきます。
レタスが生い茂った野菜工場の様子
TAKENAKA Corporate Report 2016
46
ステークホルダーとの対話
第三者意見
Dialog with Stakeholders
External Perspectives
サステナブル社会の実現に向けた取り組みを推進するため、
2015年12月に 気 候 変 動 枠 組 み 条 約 第21回 締 約 国 会 議
(COP21)に お い て パリ協 定 が 合 意 さ れました。これは、
様々なステークホルダーの方々との対話を行っています。
2020年以降の世界の温暖化対策の枠組みを定めるもので、5年
当社の事業とのかかわりが深い社会的課題をテーマにし、
それぞれの分野で活躍されている外部の有識者の方を招いて、課題解決に向けた議論を行っています。
議論された内容はCSR推進委員会でも共有され、経営及び事業へのフィードバックも実施しています。
ごとに各国が温暖化目標を提出し、その実行状況を確認し合う
ものになります。産業革命時と比較した地球の平均気温上昇幅
を2℃を超えないように、できれば1.5℃に抑えること、目標の改
訂においては改訂前の目標よりも厳しい目標を掲げることにつ
いても合意されました。そして、ポイントは、京都議定書に参加し
「健康長寿社会とまちづくり」
をテーマとした
テーマ
ステークホルダー・コミュニケーション
1964年、三 重 県 伊 賀 市 生まれ。東 京 大 学
経済学部卒業後、1987年から1998年まで
環境庁に勤務。1998年に千葉大学に移り、
2011年より現職。環境経済論、環境政策論。
著書に『政策・合意形成入門』
『エコロジカル
な経済学』
『環境政策論』
『環境を守るほど
経済は発展する』など。
の枠組みに合意したことです。科学者は、地球の平均気温上昇
を2℃以内に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を今世紀
きます。今後、このコンセプトをさらに具体化し、着実にその方
後半にゼロまたはマイナスにしなければならないことを報告して
向に向かうよう進行管理を行っていくことが求められます。
超高齢社会や社会保障費増大などの社会的課題の解決につながる健康長寿社会
います。これは、化石燃料に依存してきた従来のエネルギー供
を実現するために、当社は、国立大学法人千葉大学予防医学センター花里真道
給のあり方を大きく変えざるを得ないことを示しています。
や未来の健康都市のあり方をディスカッションする「ステークホルダー・コミュニ
千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。
なかったアメリカ、中国、インドを含めて、全世界の196カ国がこ
2015年4月~ 於;東京本店
准教授及び、鈴木規道特任助教と共同で、都市や建物が果たすことができる役割
倉阪 秀史 氏
毎年発行するコーポレートレポートは、まさに、その進行管理の
状況が報告されるべきものであると思います。2050年という
ディスカッションの様子
ケーション」
を行っています。
日本においては、人口減少という流れも認識しなければなりま
長期ビジョンを視野において、10年や5年といった単位で到達
せん。さまざまな予測の中で、人口に関する予測はあまり外れ
すべき目標を掲げ、毎年、進捗状況を確認しつつ、目標達成に
がないものです。日本の人口は2008年の1億2,808万人を
向けて努力することが必要です。過去、3年間にわたって、コー
「健康長寿社会に向けての課題」といった全体的なテーマから始まり、身体的・精
ピークとして減少に転じました。国立社会保障・人口問題研究
ポレートレポートに対する意見を述べさせていただきましたが、
神的・社会的健康にかかわるテーマを取り上げ、医学系、公衆衛生学、運動学など
所によると、概ね2050年前後に1億人を割り込み、2060年に
竹中工務店のレポートは、取り組み内容のショーケースとして
は8,000万人台に落ち込むことが予測されています。ちなみに
は非常によくできた報告となっています。多岐にわたる取り組
第二次世界大戦によって1944年からの1年間で約230万人の
みを毎年さまざまに実施されていることから、毎年、新しい事
人口減となりましたが、翌年からは人口が回復しています。一
例が豊富に掲載されています。一方、長期的な取り組みの進捗
方、今後は、2060年まで、平均して、毎年80万人以上の人口
状況を確認するという観点からは、少し物足りない報告となっ
の専門家を招き、最新の研究や現在及び将来の課題、解決に向けて建築・空間・
まちづくりが果たすことができる役割や可能性について意見交換を行いました。
今後も、健康長寿社会実現のために、多様な専門家の方々と対話・協働を進めて
ディスカッションの様子
いきます。
テーマ
が失われていく可能性があるのです。この間、高齢化も進行し
ています。非財務データについて、過去3カ年間のデータがグ
ていきますから、労働人口はもっと減ることとなります。
ラフとともに掲載されていますが、たとえば、CASBEE(建築環
境総合性能評価システム)のSまたはAランクプロジェクト比率
「ダイバーシティ推進」
をテーマとしたダイアログ
2015年4月15日、6月19日 於;東京本店
竹中工務店は、400年以上の歴史を有しています。さらに、
が2015年度に大きく減少している原因が、この報告書からは
400年にわたって企業組織の持続を図っていくためには、激変
読み取れません。量的な管理指標について目標を設定し、その
する長期的な経済社会の流れをいち早く正しく認識し、新しい
状況を報告し、改善すべき点を明らかにして、翌年につなげる
2014年に「ダイバーシティ-女性社員の活躍推進の視点から」のテーマで本支店の
経済社会の中でどのような役割を担うべきかを見定め、その
という管理サイクルがわかるように報告書に記述されるべきで
女性社員や部門長との対話を実施しました。この活動を通して、ダイバーシティ・
役割を果たせるように戦略的に行動することが求められます。
しょう。
マネジメントを進めていくうえで、多様な従業員の就業継続とキャリア形成、能
力発揮を可能とする働きやすい職場環境の実現が必須であり、そのベースとして
竹中工務店においては、すでに2050年を視野において「環境
ディスカッションの様子
ワーク・ライフ・バランス(WLB)があると考え、今回は特にWLBを中核テーマ
コンセプトブック 2050年を目指して」を2010年に公表され
建設業は、その作り出す人工物の寿命が超長期にわたるという
ています。コンセプトブックにおいては、
「人の感性や創造性を
意味で、他の業種以上に長期的な視野が求められます。2050
高め、自然を活かし、ネット・ゼロエネルギービルからカーボン
年という将来に起きる変化を正しく見定めつつ、竹中グループ
として、ダイアログを開催しました。有識者として、中央大学大学院戦略経営研究科
ニュートラルな都市への実現を目指す」
ことが謳われています。
が着実に行動されること、そして、毎年のコーポレートレポート
の佐藤博樹教授を招き、2015年4月は本社部門長を対象に、6月には宮下社長、
これは、時代を見通した先進的なコンセプトであり高く評価で
をその進捗管理に活用されることを心から期待いたします。
CSR推進委員会委員長及び委員が参加し、実施しました。
ご意見を受けて
当日は、社外環境のトレンドや社内の状況などの情報共有、佐藤教授からのご講演
の後、
「今後ワーク・ライフ社員が増える中で、WLBを図りながら、企業として
持続的に事業継続を実現するための課題は何か」
「働き方改革のために、従業員と
一体となってどのように行動していくか」
などについて、現状認識や意見を出し合い、
共有しました。それらを踏まえ、佐藤教授から
「目指すものは、仕事をするときはする、
休むときは休むといったメリハリが利いた働き方。仕事以外でもインプットを得る
ことが個人や組織としての競争力を高めることにつながる」
「これまでは良いもの
を作るために時間を長く使ってきたが、今後は一定の時間で生産を高める方向で
佐藤教授のご講演の様子
倉阪先生には、
「竹中グループCSRビジョン」に示したサステナ
課題を解決する活動を紹介していますが、今後も長期的な視野
ブル社会の実現に向けた私たちの取り組みに対する評価と
において到達すべき目標や管理指標を明確にして、目標達成に
貴重なご助言を賜り、ありがとうございました。
向けての管理サイクルがわかるように努めてまいります。
冒頭に昨年12月の気候変動枠組み条約第21回締約国会議
レポートをお読みいただいた方々には、今後の活動やレポート
(COP21)におけるパリ協定の合意、日本社会の人口減少な
作成の参考にさせていただくため、WEBアンケートを設けて
どの激変する長期的な経済社会の流れに対して戦略的に行動
おります。皆様の率直なご意見・ご要望をいただければ幸いです。
することについて重要な示唆をいただきました。
このレポートでは、ステークホルダーとの対話を深めて、社会の
CSR推進部長
佐藤 経生
競争をしていかなければならない」
などの提言をいただきました。
47 TAKENAKA Corporate Report 2016
TAKENAKA Corporate Report 2016
48
財務・非財務ハイライト
竹中工務店について
グループ成長戦略
特集
事業活動
ステークホルダーとともに
財務・非財務ハイライト
Financial and Nonfinancial Highlights
損益計算書・貸借対照表
(連結)
(百万円)
第74期
2011
第75期
2012
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
受注高
929,542
1,004,492
1,214,335
1,418,103
1,295,029
売上高
976,612
998,381
1,020,956
1,150,663
1,284,362
11,106
△1,369
11,525
27,741
59,883
1.1
△0.1
1.1
2.4
4.7
10,962
12,595
21,709
38,367
68,666
2,273
6,122
7,162
23,545
44,140
純資産
308,135
350,884
438,468
471,436
521,011
総資産
899,718
977,735
1,105,029
1,240,256
1,342,971
営業利益
営業利益率
(%)
経常利益
当期純利益
その他の財務データ
(連結)
第75期
2012
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
営業活動によるキャッシュフロー
55,933
△10,610
△929
14,674
40,032
投資活動によるキャッシュフロー
△14,082
△9,275
△18,646
△5,207
△20,119
財務活動によるキャッシュフロー
△7,262
△5,792
8,294
12,984
2,415
研究開発費
(億円)
71
64
55
57
62
設備投資
(億円)
55
99
263
272
253
自己資本利益率
(ROE)
(%)
0.7
1.9
1.8
5.2
9.0
事業別売上高
(連結)
第75期
2012
第76期
2013
建設事業
910,646
921,188
939,100
1,063,666
1,188,308
開発事業
32,627
42,206
45,929
48,287
46,743
その他
33,338
34,986
35,926
38,709
49,309
売上高/経常利益
(連結)
(億円)
15,000
売上高
経常利益
当期純利益
(連結)
(億円)
800
12,000
11,506
(億円)
500
6,000
441
600
10,209
400
純資産
(億円)
15,000
(億円)
100
研究開発費
11,050
13,429
5,210
12,402
5,000
12,000
11,050 4,714
4,384
設備投資額
9,000
263
253
80
400
55
57
62
3,000
235
6,000
217
200
第77期
2014
49 TAKENAKA Corporate Report 2016
第78期
2015
0
100
0
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
861,700
872,155
960,443
1,090,954
アジア
63,462
91,575
90,399
129,903
134,923
欧州
14,662
17,274
25,260
33,308
27,783
北米
11,995
17,493
23,289
25,921
30,701
その他
29,623
10,337
9,851
1,086
–
第74期
2011
第75期
2012
従業員数
(人)
(連結)
7,272
(12,016)
3,000
300
250
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
0
第77期
2014
7,049
(11,941)
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
44.6
44.5
44.7
44.4
平均勤続年数
(年)
20.5
20.4
19.5
20.2
19.8
女性役付職人数
(人)
36
48
53
68
78
度数率
※1
(休業4日以上災害)
0.75
0.62
0.75
0.55
0.47
施工時CO2排出量
※2
原単位
(t/億円)
10.0
10.4
10.3
10.8
10.6
3.4
4.2
3.9
3.2
2.7
56.0
60.9
69.0
78.5
52.0
建設廃棄物最終処分率
※3
(重量%)
100万延労働時間あたりの休業4日以上の労働災害による死傷者数の割合。
施工高あたり。
建設汚泥、特別管理廃棄物は含まない。
Sランク及びAランクプロジェクトの合計。対象は当社設計プロジェクト。
従業員数
(単体・連結)
(人)
15,000
単体
女性役付職人数
(単体)
連結
施工時CO2排出量原単位
(単体)
(人)
80
78
12,000
11,941
12,187
68
12,328
100
12
10
10.3
10.8
80
8
60
7,049
7,133
7,195
40
件数
比率
(%)
100
10.6
60
53
CASBEE S・AランクPJ件数/比率(単体)
(件)
( t /億円
(施工高あたり)
)
9,000
0
7,195
(12,328)
44.6
200
50
第78期
2015
7,133
(12,187)
80
78.5
80
73
69.0
60
6
52.0
6,000
20
第78期
2015
従業員平均年齢
(歳)
※1
※2
※3
※4
(億円)
第76期
2013
7,080
(11,854)
39
40
100
1,000
71
856,868
CASBEE S・Aランク
※4
プロジェクト件数比率
(%)
40
2,000
3,000
第77期
2014
150
200
6,000
60
第76期
2013
272
4,000
383
第76期
2013
第78期
2015
研究開発費/設備投資額
(連結)
総資産
300
9,000
0
純資産/総資産
(連結)
(億円)
12,843 686
第77期
2014
第75期
2012
非財務データ
(単体)
(百万円)
第74期
2011
(百万円)
第74期
2011
日本
(百万円)
第74期
2011
地域別売上高
(連結)
40
4
20
3,000
0
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
20
20
2
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
第76期
2013
第77期
2014
第78期
2015
0
TAKENAKA Corporate Report 2016
50
本
社
大阪市中央区本町4-1-13
〒541-0053
06-6252-1201
北 海 道 支 店
札幌市中央区大通西4-1
〒060-0042
011-261-2261
東
北
支
店
仙台市青葉区国分町3-4-33
〒980-0803
022-262-1711
東
京
本
店
東京都江東区新砂1-1-1
〒136-0075
03-6810-5000
横
浜
支
店
横浜市西区花咲町6-145
〒220-0022
045-321-1261
東 関 東 支 店
千葉市中央区中央港1-16-1
〒260-0024
043-242-0525
北 関 東 支 店
さいたま市大宮区桜木町1-9-6
〒330-0854
048-647-4471
名 古 屋 支 店
名古屋市中区錦2-2-13
〒460-8633
052-211-2111
大
阪
本
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大阪市中央区本町4-1-13
〒541-0053
06-6252-1201
京
都
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京都市中京区壬生賀陽御所町3-1 〒604-8811
075-801-2131
神
戸
支
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神戸市中央区磯上通7-1-8
〒651-0086
078-265-3300
四
国
支
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高松市西内町12-11
〒760-0022
087-851-1175
広
島
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広島市中区橋本町10-10
〒730-0015
082-212-0111
九
州
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福岡市中央区天神4-2-20
〒810-0001
092-711-1211
国
際
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東京都江東区新砂1-1-1
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開発事業本部
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