G.ヴェルディのオペラ《ラ・トラヴィアータ》におけるヴィオレッタ像 A study on the character of Violetta in the opera La Traviata by G. Verdi 音楽文化研究科 音楽表現専攻 1000-121014 森田奈奈 指導教員 島崎智子先生 2014 年 1 月 9 日提出 本研究では、ジュゼッペ・ヴェルディ(Verdi, Giuseppe 1813-1901)のオペラ《ラ・トラ ヴィアータ La Traviata》(1853 作曲、初演)におけるヴィオレッタ・ヴァレリー(Violetta Valery)の人物像を明らかにした。 第 1 章ではヴィオレッタのアリアから、第 1 幕第 5 場 “È strano! è strano!” および第 3 幕第 4 場 “Addio, del passato bei sogni ridenti,” のふたつを取り上げ、そこから読み取れ るヴィオレッタの心情の変化を分析した。その結果、前者においては、ヴィオレッタがア ルフレードの真剣な愛情に心惹かれ、本当の愛に憧れる純粋な心と高級娼婦として生きて いく決意がカヴァティーナ・カバレッタ形式を生かして表現されていること、また後者に おいて、自分自身の死が近づいていることが分かっていながらもアルフレードを愛し、生 きたいと願う、力強く素直な心を持った女性像が描かれていることが明らかになった。 第 2 章では、第 1 幕第 3 場 “Oh qual pallor! ” のアルフレードとヴィオレッタの二重唱 および第 2 幕第 5 場 “Madamigella Valery?” のジェルモンとヴィオレッタの二重唱から ヴィオレッタの心情の変化を分析した。前者では、初めはアルフレードに対して高級娼婦 として誇り高い精神を持つ、気位が高い女性だった。しかし、アルフレードの真剣な愛の 告白を受け、徐々に心を動かされていく心情の変化がヴィオレッタの言葉に付けられた旋 律で表現されていることが分かった。一方、後者では、ジェルモンに対して気が強く冷静 な態度だったヴィオレッタがアルフレードとの永遠の別れを突きつけられ、絶望する。し かし、アルフレードのために永遠の別れを決意する芯の強い女性であることが分かった。 以上の分析と考察の結果から、ヴィオレッタは気位が高く、誇り高い精神を持つと同時 に、純粋な心を持った、芯が強い女性であると考えられる。それを踏まえ、演奏者の立場 としては、ヴィオレッタの人物像を明確に築き、ヴィオレッタの心情の変化に影響を与え た言葉、ヴェルディがヴィオレッタに与えた音楽の効果、特徴を理解することが良い演奏 に繫がると考える。
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