値段の安いクリーニング店は ワイシャツを縮ませる。

2010.8
2010.8
値段の安いクリーニング店は
ワイシャツを縮ませる。
10数年前のことです。
クリーニングか
ら返ってきたばかりのワイシャツが腕の長
さがツンツルテンで足りない。
首のまわり
も窮屈で苦しい。
胸の周りもとても窮屈で
締め付けられる感じ、
これは、
クリーニング
店が他人のものと間違えたのに違いない。
すぐに脱いで、
クリーニングに出していな
いワイシャツと比較してみると、
全体に一
回りは小さい。
しかし、
その小さなワイシャ
ツにはしっかりと私のイニシャル
が・・・???。
自慢だ った 、オーダ
、 オーダ ー
メードのワイシャツ
朝の出勤前だったので、あわてて別の
朝の出勤前だったので、あわてて別の
ワイシャツに着替えて会社に向かう。帰宅
して件のワイシャツを見ると、腹が立って
きた。他のワイシャツは大丈夫だろうか、
きた。
他のワイシャツは大丈夫だろうか、
とチェックをすると5000円、8000
円で数着オーダーメードしたワイシャツは
すべてダメだった。
とくに8000円のものは合成繊維が
はいっていないので、著しく縮み、見る影
もない。
「これほどまでにして下さってありがとう」
とお礼が言いたくなるほど酷い状態だっ
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た。街中の「F - ワン」というイージーオー
ダー専門のチェーン店で生地を選び、採寸
ダー専門のチェーン店で生地を選び、
採寸
してもらって、自分の体の動きにピッタリ
してもらって、
自分の体の動きにピッタリ
だったオーダーのシャツがおジャンなのだ。
それなのに出張の旅先で3枚1000円で
買ったワイシャツは縮みもしないでピン
シャンしている。
「くやしー、こんな間尺
「くやしー、
こんな間尺
に合わない話があってよいものか?!」。
3枚1000円がピンシャンしていて、1
枚8000円のオーダーメイドのシャツが
縮んで着られなくなっている。
原因はすぐにわかった。
クリーニング店を変える時に
はご注意!!
業界トップの『白洋舎』のお店が近所か
らなくなり、その隙間を縫って訪ねてきた
クリーニング店に変えたのを、私が知らな
かったのだ。
『白洋舎』は30年ほど前に
『白洋舎』
は30年ほど前に「神戸生協
「神戸生協
事件」を経験している。
事件」
を経験している。
「ロイヤルクリーニング」という最高レ
「ロイヤルクリーニング」
という最高レ
ベルの注文を受け、高い料金を取りなが
ベルの注文を受け、
高い料金を取りなが
ら、最低レベルの仕事をした。
ら、
最低レベルの仕事をした。
「返ってきた毛布に飼ってもいない犬の
毛がついていた」とか、
毛がついていた」とか、
「白のブラウ
「白のブラ
ウスが
灰色になっていた」というアレだ。当時の
『白洋舎』は敬虔なクリスチャンの五十嵐
『白洋舎』
は敬虔なクリスチャンの五十嵐
常務がクレームを一手に引き受けて、改
常務がクレームを一手に引き受けて、
改
善対策を徹底して行った。それは見事な
善対策を徹底して行った。
それは見事な
ものだったが心労と過労が災いしたのだ
ろう、五十嵐常務は突然に亡くなられて
ろう、
五十嵐常務は突然に亡くなられて
しまった。
五十嵐常務が十字架の人となって人柱
となった。そんなことがあって、
となった。
そんなことがあって、私はク
私はク
リーニングは『白洋舎』
リーニングは
『白洋舎』と決めていた。
と決めていた。五
十嵐常務の努力のかいあって改善され、安
心して任せられたからだ。その
心して任せられたからだ。
その『白洋舎』
『白洋舎』
が突然閉店し、回ってきていた担当者が来
なくなっていた。
なんでもそうだが、オープンするとき
なんでもそうだが、
オープンするとき
は鳴り物入りで周知させるが、退く時は、
は鳴り物入りで周知させるが、
退く時は、
ひっそりと無くなる。
クリーニング業界の競争が
ワイシャツを縮ませる
クリーニング業界も競争が激化してい
るらしく、取次店だけというお店が増えて
チェーン展開をしている。郊外に大規模の
クリーニング工場を構え、効率化に余念が
ない。
料金を安くして競争に勝とうすると、
工場で短時間にたくさんの洗濯物を処理し
なければならない。仕分けして大量に洗う
のは良い。問題は乾燥だ。繊維メーカーに
よれば、天然自然の繊維は急激に熱を加え
て乾燥させれば、繊維の目が詰まって縮
て乾燥させれば、
繊維の目が詰まって縮
む。縮んだ繊維は元には戻らないそうだ。
む。
縮んだ繊維は元には戻らないそうだ。
具体的には、お客さんが増えて忙しく
具体的には、
お客さんが増えて忙しく
なってきた。
お店と工場の間の距離は工場
が郊外へ行くに従い遠くなっていく。ク
が郊外へ行くに従い遠くなっていく。
ク
リーニング業はサービス業の側面が強いか
ら早く安くを競争する。
●「朝預かって、
「朝預かって、夕方渡し」
夕方渡し」
「中 1 日でお
渡し」
・・・という具合で競う。
●値段は他社、他店より安く
●値段は他社、
他店より安く・
・・・これは
誰にでも簡単に比較できる。
消費者に見えにくく、
犠牲にされがちな
のが洗ってから乾燥させる工程。
生乾きの
ままですぐにアイロン・プレスを掛けると
水分は蒸発して乾くが、
繊維は目が詰まっ
て縮んでしまう。
ココの工程を急がずにや
れるか、
新しい乾燥方法を取り入れるかす
ればワイシャツの縮みはなくなる。
「悪貨は良貨を駆逐する」
実は、ここ10年間私のワイシャツは
実は、ここ10年間私のワイシャツは
縮みがなかった。
近くに昔ながらの、自前のクリーニン
近くに昔ながらの、
自前のクリーニン
グ作業場をもち、
「中2日いただいてもい
いですか」という
いですか」
という「真田クリーニング」
「真田クリーニング」の
おじさんに
「縮ませないクリーニングをお
願いしたい」と相談した結果、
願いしたい」
と相談した結果、
「わかりま
した、デラックス仕上げの1枚450円に
なりますがよろしいですか」。
これで始めたのが10年前。
以来5000円のワイシャツも8000
円のワイシャツも全く縮んだことはない。
それよりも、あまり長くモツものだから、
生地が薄くなってきたのが目立つほどだ。
しかし、幸せな時間は長くは続かない。
しかし、
幸せな時間は長くは続かない。
その「真田クリーニング」も競争には勝
てず。閉店が決まった。
てず。
閉店が決まった。
やはり「悪貨は良貨を駆逐する」
やはり
「悪貨は良貨を駆逐する」のか。
のか。
私のワイシャツの受難はつづく。
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