5 月 7 日、国際学部・国際協力学研究科主催の今年度第一回目の田川

5 月 7 日、国際学部・国際協力学研究科主催の今年度第一回目の田川社長公開講座
が本学で開催されました。今回は「国際観光の現状とツーリズム産業の今後の課題~
観光立国日本を目指すためツーリズム産業が取り組むべき課題~」という題目で、ツ
ーリズム産業の現状から観光業に求められる人財像までご講義いただきました。
ツーリズム産業を取り巻く環境では、北東アジア・東南アジアの国際観光市場が拡
大しています。そのような状況の中で、昨年、訪日外国人旅行者が初めて 1000 万人
を突破し、2020 年に開催される東京五輪に向けてインバウンドの受け入れ態勢の強
化が進んでいます。円安やビザ緩和などにより ASEAN 諸国からの訪日外国人客は近
年増え続けており、2020 年には訪日外国人旅行者の 1/4 近くが東南アジアからの観
光客になると予想されています。また、わが国では急速な少子高齢化が進んでおり、
その点からも拡大する国際交流人口を取り込むことが鍵となっています。
日本は島国で訪日外国人の大半が航空利用であることから、観光立国化、そして来
たる東京五輪でわが国を訪れる外国人旅行者の受け入れを促進するために、オープン
スカイの推進、羽田空港と成田空港の容量拡大、LCC 誘致など、航空ネットワークや
空港の整備が欠かせません。
このようなグローバル時代における戦略として、JTB グループでは「マーケットへ
の正対」と「ビジネスモデルの変革」という 2 つのキーワードを掲げています。「マ
ーケットへの正対」とは、『地域密着』を掲げた地域会社に分社化し、地域に正対し
て新たなビジネス領域を創り出し発展させることを志向したもので、JTB 北海道から
JTB 沖縄まで日本各地に広く展開しています。「ビジネスモデルの変革」とは、旅行
事業からあらゆる交流の創造に貢献する交流文化事業に進化して、これまでの旅行を
売るだけの業務から、お客様の感動と喜びのために JTB ならではの商品・サービス・
情報・仕組みを提供し、地域というフィールドでありとあらゆる交流を創造する役割
を果たす業務へと変革を行っています。
また、JTB ではこれからのツーリズム産業が果たすべき役割として、「新しい需要
の喚起」、「価値創造産業への進化」、「観光立国の推進」を挙げています。「新しい需
要の喚起」は、限られたマーケットで他社顧客を奪い合うのではなく、新しい仕掛け
や切り口により新しいマーケットを生み出すことを言います。その地にある資源を活
かして魅力的なプランを創造する、あるいは『女子旅』というあえてマーケットを限
定するワードを使うことで他社との差別化を図っています。
「価値創造産業への進化」
では、JTB ではかねてから、第 1 次産業と第 2 次産業と第 3 次産業を掛け合わせた観
光による 6 次産業化を進めています。6 次産業化によってモノの流れだけではなくヒ
トの流れを作り出すことにより、新たな価値を生み、地域社会経済をさらに活性化し
ます。また、国の政策である「観光立国の推進」のためには、官と民の連携が不可欠
であると考え、国による制度・インフラ面の後押しとともに、ツーリズム産業全体で
の双方向交流の実現が必要だと考えています。
東日本大震災から 2 年が経ち、震災直後の娯楽を控える“自粛ムード”が後退し、積
極的な消費意識が戻ってきました。震災以前よりも人の絆に重きを置いたり、社会貢
献度を目的とする旅行が増えました。テーマ性の強いニューツーリズムの需要が増え
つつあり、五感で楽しむ旅より、現地で何をするかに目的を置いた旅に形態が変わっ
てきたと言えます。旅が目的で旅行会社はそのためのコーディネーターということで
はなく、旅=手段、旅行会社=ビジネスパートナーという方程式のもと、JTB では総
合旅行業ではなく交流文化事業として、かねてから掲げている着地型観光や地域と人
とを結びつける機会を創造しています。以前のように人気観光地を効率よく巡るプラ
ンを考えるだけではツーリズム市場で戦えなくなり、違った切り口で新しいマーケッ
トや需要を創造していく力が必要です。そのような意味で、これからの観光業に求め
られるのは、これまでのノウハウを習得した上で新しいことを創造する力のあるクリ
エティブな人財と言えるでしょう。講義では「稲刈人から開墾人へ」と、与えられた
仕事だけしかできない「稲刈人」よりも、新しい発想力を持ち合わせた「開墾人」に
なるように、とお話いただきました。これから観光業に携わっていく人も、そうでな
い人も、創造力が必要な時代に差しかかっているように思えます。人が気づかないと
ころに気づけるか、それを取り入れて魅力あるものにできるか、そのような力が必要
になってきているのではないでしょうか。
記事 文教大学国際学部国際観光学科3年
鹿取朋子