アーキテクチャのポジショニングの移動戦略の選択 ――TFT-LCD 産業発展における台湾キーコンポーネン産業の事例―― 楊 英賢(国立嘉義大学) 要旨 本研究の目的は、アーキテクチャのポジショニングの視点から、TFT-LCD 産業の発展過程に おける台湾のキーコンポーネント(特にカラーフィルターとバックライト)産業を研究対象と して、そのメーカーの製品ポジショニングのあり方とその移動戦略の選択を探索することによ って、なぜ、台湾メーカーは、日本メーカーが依然として圧倒的な世界シェアを持っているキ ーコンポーネント分野に参入することができたのか、またはキャッチ・アップすることができ たのかの要因を明らかにする。 本研究の主な発見事実は以下である。第一に、TFT-LCD 産業のキーコンポーネントは、もと もとインテグラル型の製品だったが、パネル産業の発展とともに、日本の先行企業から技術提 携や移転を通じて、外販による素材の市場化が形成され、その調達が容易化されてくることな どによって、部品間のインタフェースが産業内で広く標準化され、徐々にモジュール型構造に なる傾向を持っている場合が多い。例えば台湾のバックライトメーカーは、製品のモジュラー 化を一層進め、高度な開発や部門協調の費用を削減し、大幅に中国への投資生産を行なってい る。また、同メーカーは、光学設計、金型開発、機構設計といった統合能力を持っているため、 多様な顧客のカスタマイズ化の要求に迅速かつ低コストで応えている。 第二に、アーキテクチャのポジショニングの移動戦略は、製品の内部構造や製品市場の組合 の差異によって、四つの選択肢がある。しかし、これらの選択肢は自国や自社の得意な分野と 適合するかどうかも重要であろう。このモジュラー型カスタマイズ戦略の選択は、台湾メーカ ーの得意なモジュール型の組立て分野と一致しているため、同キーコンポーネント分野のイン テグラル型のカラーフィルターメーカーより、国際競争力をかなり発揮することができた。か つ、バックライト産業での市場シェアにおいて日本をキャッチ・アップすることができた要因 だと考えられる。 KEY WORDS:アーキテクチャのポジショニングの移動戦略、カラーフィルター産業、 バックライト産業、インテグラル型、モジュール型 1 アーキテクチャのポジショニングの移動戦略の選択 ――TFT-LCD 産業発展における台湾キーコンポーネン産業の事例―― 1. はじめに 1980 年代以降、台湾の輸出財は、労働集約型の製品から、資本や技術集約型に関する IT 製 品への転換に成功した。特に、1998 年前後から、TFT-LCD (Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display の略称)産業に参入した台湾メーカーは、歴史は短いが、その爆発的な成長 のイメージが強い。台湾の『2005 資訊(情報)工業年鑑』によれば、大型 TFT-LCD 製品の出 荷量は、1999 の年世界市場占有率の 5%未満から、2001 年には 23.3%に急増し、2003 年は 35% で、日本を越えて世界 N0.2 となっている。2005 年には、台湾の出荷量シェアは 43.6%で、 韓国の 40.3%を越えて、世界 N0.1 となっている1。 台湾政府は TFT-LCD を半導体と並ぶコアとなる「二兆産業(2006 年の生産額がそれぞれ1 兆元(1元は約 3.5 円)を超える目標)」として、重点育成産業に指定しており、今後の経済 発展の上で、非常に重要な産業と位置づけている。 台湾 TFT-LCD 産業の発展に関連する調査は、近年、新聞社による調査記事や動向分析レポー トが増えてきたが、学術的な研究や文献がまだ少ない。そのうち、王(2003)は、台湾 LCD 産業発展の歴史的観点から、同産業の発展要因を、政府の役割や政策優遇、日本メーカーから の技術移転と提携、ノートパソコンのような川下産業からの強い国内需要などに帰するとして いる2。陳(2004)は、台日韓三国の TFT-LCD 産業におけるその発展や競争力の成長を探索し ている。赤羽(2004)は、台湾 TFT-LCD 産業の発展の系譜をみて、最初の生産の立ち上がりが、 主に日本からの技術移転に依存したことが確認でき、その後の進化の過程も、日本企業のコミ ットメントによって進められたことが明らかとなった。新宅他(2006A)は、台湾液晶産業の 発展に貢献した要因として、日本からの技術移転のほかには、業界参入のタイミング、投資の 規模、量産体制を立ち上げるスピード、日本の川上企業との協業などの要因も考えられる。 これらの先行文献の分析視点は、主に Porter が指摘したように、ある産業における国の競 争優位の決定要因を示す「ダイヤモンド」の説明を中心としている3。 しかし、台湾 TFT-LCD 産業の発展に関する分析は、 「ビジネス•アーキテクチャ」という新た な視点を採用した研究は、まだ少ない4。本研究はアーキテクチャ論を応用して、既存のフレ ームワークとは異なる新たな論点を導入する。 近年、「ビジネス•アーキテクチャ」論に関連する研究文献については、例えば藤本(2001、 p10)の、 「20 世紀後半の日本企業は、インテグラル型•クローズ型アーキテクチャの製品で国 際競争力を持つ傾向があった」という仮説は、多くの人が納得する命題だと思われる。また、 楊(2006)は、製品アーキテクチャの視点を使って、TFT-LCD パネルの製品アーキテクチャは インテグラル型であるが、そのパネルの後半製造過程にある LCM の組み立て作業がモジュラー 1 『IT 零組件関鍵報告(p28)』財訊出版社(2006)を参照。 詳しくは、王(2003)を参照。 3 ある産業における国の競争優位の決定要因の「ダイヤモンド」については、例えば要素条件、需要条件、関連・支 援産業、企業の戦略・構造およびライバル間競争、チャンス、政府の役割などが挙げられる(Porter、1990)。 4 楊(2006)は、製品アーキテクチャの視点を使って、TFT-LCD 産業進化や発展における台日韓三国の競争パターンと 企業間の競争行動を明らかにした。 2 2 型に近づいていると指摘している。この点については、中田(2007)も指摘したように、液晶 産業は「擦り合わせ型」のアーキテクチャを持つのである。 本研究の目的は、アーキテクチャのポジショニングの視点から、TFT-LCD 産業の発展過程に おける台湾のキーコンポーネント(特にカラーフィルターとバックライト)産業を研究対象と して、そのメーカーの製品ポジショニングのあり方とその移動戦略の選択を探索することによ って5、なぜ、台湾メーカーは、日本メーカーが依然として圧倒的な世界シェアを持っている キーコンポーネント分野に参入することができたのか、またはキャッチ・アップすることがで きたのかの要因を明らかにする。 2. 分析視点6 2.1 アーキテクチャの分類 アーキテクチャとは、 「構成要素間の相互依存関係のパターンで記述されるシステムの性質」 である(青島、1998) 。換言すれば、一般に、製品アーキテクチャとは、どのようにして製品 を構成部品に分割し、そこに製品機能を配分し、それによって必要となる部品間のインターフ ェースをいかに設計•調整するか」に関する基本的な設計構想のことである。したがって、ア ーキテクチャの代表的な分け方としては、 「モジュラー型」と「インテグラル型」の区別、ま た「オープン型」と「クローズ型」の区別があると言われる(Ulrich、1995;藤本他、2001、 藤本 2002、2003) 。 製品のアーキテクチャ インテグラル 企 業 クローズ モジュラー 自動車 汎用コンピュータ オートバイ 工作機械 小型家電 間 の パソコン 連 携 自転車 オープン 関 係 図1 図1 アーキテクチャの分類 アーキテクチャの分類 (出所)藤本(2001) 、p6。 藤本(2001、p11)が指摘したように、日本企業が得意とするのは、部品設計の微妙な相互 調整、一貫した工程管理、緊密な社内部門間調整、取引先との濃密なコミュニケーション、顧 客との接点の質の確保など、社内外の擦合せが競争力を決めるタイプの製品・産業である。図 1の左上の「クローズ⁄インテグラル型」にあたる製品分野、例えば自動車、小型家電、オー 5 ここでは、従来強調された製品の内部構造のアーキテクチャだけではなく、顧客面の製品市場のアーキテクチャを 加えている。すなわち、新宅(2005)が指摘したポジショニングの移動戦略という視点を使う。 6 主に藤本他(2001)編を参照。 3 トバイでは、戦後日本のメーカーが国際的に見て比較的強いという傾向が見られたのである。 2.2 アーキテクチャ・マトリックスとそのポジショニングの移動戦略7 まず、製品アーキテクチャは設計思想だから、技術的に一律に決まるわけではない。製品に よって異なると同時に、同じ製品でも、時代や場所によっても違ってくる。例えば、パソコン では、デスクトップパソコンはモジュラー型の典型だが、小さなサイズに埋め込む型のノート パソコンは、擦り合わせ型に近づいてくるといえる(新宅、2005)。 そして、産業の初期段階では、製品アーキテクチャはインテグラル型であるのが、普通であ る。その産業の進化や発展に従って、その製品アーキテクチャはインテグラル型からモジュラ ー型へとシフトし、またインテグラルなアーキテクチャへと逆転するというサイクルを経験す る(楠木他、2001)。 新宅(2005、p12)は、アーキテクチャに基づいて、自社の製品ポジショニングのあり方を 把え直し、そのポジショニングによる違いを明確に意識した戦略を立てるというのが、アーキ テクチャのポジショニング戦略の考え方であると指摘している。その際に、アーキテクチャを 二つの軸によるマトリックスで把える枠組みが有用である。図2で、縦軸は自社製品の内部構 造がモジュラー型かインテグラル型かという軸、横軸は自社製品を販売する顧客側の製品市場 がインテグラル型かモジュラー型かという軸である。2*2 で 4 つのポジショニングが考えら れ、それによってとりうる戦略が異なってくる。 徹底した 独自性のある インテグラル型 カスタマイズ戦略 汎用品戦略 モジュラー型 モジュラー型 大量生産による カスタマイズ戦略 低コスト戦略 インテグラル型 モジュラー型 内 部 製 品 構 造 製 図2 品 市 場 アーキテクチャ・マトリックス (出所)新宅(2005)、p12。 左下のポジションは、受注生産型の工作機械のように、モジュラー型構造の製品をインテグ ラル型の顧客に販売するケースである。この場合は、製品のモジュラー化を一層進めて、顧客 のカスタマイズ化の要求に迅速かつ低コストで応えていくということである。 右上のポジションは、シマノの自転車部品やインテルの MPU のように、インテグラル型構造 の製品をモジュラー型製品を作る顧客に販売するケースである。ここでは、独自性のある汎用 品を徹底的に追求することである。 7 この節では、主に新宅(2005)を参照。 4 右下のポジションは、デスクトップパソコンのようにモジュラー型構造の製品をモジュラー 型の製品市場に販売するケースである。この場合は、非常に厳しい価格競争に巻き込まれるこ とになり、大量生産によって低コストを実現するしかないということになる。 左上のポジションは、自動車部品のように、インテグラル型構造の部品をインテグラルな製 品作りをする顧客に販売するケースである。この場合は、徹底したカスタマイズ戦略を推し進 めることが必要になる。中途半端にカスタマイズしても、左上のポジショニング戦略で攻めて くる競争相手にスピードやコストで負けてしまう。 以上の 4 つのセルで、右下と左上の二つのセルにある事業は収益上の問題を抱えていること が多いと推測される。したがって、この二つのポジションからは、他のポジションへ「再ポジ ショニング=ポジショニングの移動戦略」 (図3)を考えるべきであるといえる(新宅、2005) 。 自動車部品 内 部 インテグラル型 シマノ自転車部品 超小型 PC 一般電子部品 〈高コスト〉 製 B MPU・ブラウン管 シリコンウエハ A 品 C 構 造 モジュラー型 BTO の PC PC・DVD 工作機械 D 塩ビブラウン管テレビ 〈価格競争〉 インテグラル型 モジュラー型 (顧客仕様特注品) 製 (汎用品) 品 市 場 A:構造モジュラー化戦略 B:汎用品市場開拓戦略 C:部品特化戦略・構造インテグラル化戦略 D:カスタマイズ戦略 図3 ポジショニングの移動戦略 (出所)新宅(2005) 、p12。 例えば右下のセルにある事業では、顧客の要求にカスタマイズすることで左下のポジション に移行する(D:カスタマイズ戦略)。デルの BTO 販売のようなやり方である。また、完成品レ ベルでの競争は止めて、インテグラルな構造の部品、他社が作れない部品に特化することによ って、右上のポジションに移行する方法もある(C:部品特化戦略・構造インテグラル化戦略)。 そして、左上に位置する事業にとっても、ポジショニングの移行戦略が考えられる。例えば 自社部品の構造をモジュラー化することによって、左下のポジションに移行して迅速かつ低コ ストにカスタマイズできるようにすることである(A:構造モジュラー化戦略)。あるいは、カ スタマイズを開発した製品を汎用品市場で大量に販売するなど、右上へ移行する戦略もある (B:汎用品市場開拓戦略) 。 ここで注意しなければならないのは、擦り合わせ型に強みを持っていたとしても、その事業 5 展開は単純ではないということである。どの製品分野型要素が強いか、どの製品階層でそれが 見られるか、また発展過程でどのように変化しているかといった分析をベースにして、ポジシ ョニングの移動が考えられる。それによって、自社の強みをより活かした事業戦略が可能にな っていくるのである(新宅、2005) 。 3. 台湾 TFT-LCD のキーコンポーネント産業の早期調達とそのアーキテ クチャの分析 3.1 台湾 TFT-LCD のキーコンポーネント産業の早期調達 すでにわかったように、キーコンポーネントのコストが全コストの約 5 割以上を占める TFT-LCD パネル産業の発展には、これらのコストダウンや安定調達が不可欠である8。台湾の TFT-LCD パネルメーカーは、技術イノベーション開発に対する大型投資を引き続き行なってい るほかに、素材のコスト削減や安定調達を実現するためには、海外素材メーカーの台湾への誘 致やそのクラスター化、さらに研究・開発への長期間に渡る投資の継続による自社育成などの 内製化を、積極的に推進している9。 赤羽(2004)は、生産技術のみならず、キーコンポーネント調達の点でも、勃興期の台湾 TFT-LCD 産業は、対日依存度が大きかったと強調している。表1は台湾の TFT-LCD のキーコン ポーネントの調達先を示すものである。この表から、1990 年代末の時点では、TFT-LCD 産業の キーコンポーネント分野は、日本メーカーの市場占有率が高く、台湾メーカーは TFT-LCD パネ ルを生産する際に、ほとんどの素材を日本から輸入しなければならなかったことがわかる。 表1 台湾 TFT-LCD のキーコンポーネントの早期調達先(1998 年) 液晶のキーコンポーネント 液晶パネル製造原価に占め 主要な日本メーカー 日本メーカーの市場占有率 る素材コストの割合 カラーフィルター 23.2% 凸版印刷、大日本印刷、東レ 80% ドライバ IC 20.7% NEC、シャープ、日立、東芝 40% バックライト 15.4% スタンレー電気、デンソー、 84% 茶谷電気、富士通化成 ガラス基板 5.6% 旭硝子、日本電気硝子 62% 偏光板 5.4% 日東電工、住本化学 64% (出所)光電科技工業協進会〈1999〉 『1998 年顕示器産業及技術動態調査』 。 しかし、TFT-LCD 産業の立ち上げには、台湾国内の周辺素材の基盤整備が欠かせないため、 台湾の多くのメーカーは、日本素材メーカーとの技術提携や合資などによって、カラーフィル ター、バックライトなどのキーコンポーネント分野に進出している。これまでのように、日韓 8 例えば 17 インチの LCD モニターを占めるキーコンポーネントのコストが、バックライトの 14%、カラーフィルタ ーの 14%、ドライバ IC の 10%、偏光板の 9%、ガラス基板の 5%、液晶の 1%である。また、32 インチの LCD-TV を 占めるキーコンポーネントのコストが、バックライトの 21%、カラーフィルターの 16%、ドライバ IC の 4%、偏光 板の 7%、ガラス基板の 6%、液晶の 3%である(財訊、2007、p21)。 9 電子産業・成長戦略フォーラムの発行レポート「韓国・台湾 LCD パネル戦略と日本の装置・部材戦略」 (http://sangyo.jp/ri/asia/news2006/20060127.html)を参照。 6 に頼ることからくる素材の品薄をさけられるだけではなく、地元で素材調達ができればコスト ダウンも実現できる。そのため、台湾 TFT-LCD 産業における川上部門のキーコンポーネントの 産業システム整備は、同産業の垂直統合体制を確立することにもなった。 3.2 TFT-LCD のキーコンポーネントのアーキテクチャの分析と特性 3.2.1 TFT-LCD のキーコンポーネントの製品アーキテクチャ 先述したように、 「アーキテクチャ」とは、 「システム設計の基本思想」のことである。そこ では、 「製品アーキテクチャ」が「製品機能システム」と「製品構造システム」の対応関係に関 して定義される(藤本、2002、2003)10。ここでは、TFT-LCD のキーコンポーネントの製品ア ーキテクチャを考察する(図4)。 一般的に、材料と成形法の両方の調整(擦り合わせ)が必要なケースは技術的な難易度が高 く、暗黙知が重要な意味を持つ。すなわち、材料の調整と加工プロセスの擦り合わせのノウハ ウが暗黙知として部材メーカーの内部に蓄積され、他社は容易に真似できない。この分野で日 本メーカーは高い競争力を有している(藤堂、2007) 。 例えば、TFT-LCD パネルを構成するガラス基板、カラーフィルター、偏光板といったキーコ ンポーネントについては、一連の緊密な微細調整の工程技術が用いられているため、主にイン テグラル型だと言える。これらの分野は、韓国や台湾メーカーが積極的に参入しても、日本メ ーカーは依然として圧倒的な世界シェアを持っている。 一方、バックライトを構成する素材の中に、最も重要なコア技術を持っているのは、導光板 (Light Guide Plate、LGP と略称)である。その主要な性能は光の方向の引導によるバック ライト全体の輝度の向上や均一な光源のコントロールである。そこでは、導光板の設計や製造 方式の相違がバックライト全体の性能(輝度や光源の均一性など)に大きな影響を与えている 11 。そして、導光板の性能は射出成形の金型開発や技術に関わっている。 つまり、導光板の開発については、光学、金型、機構を合わせた設計が必要で、そのアーキ テクチャはインテグラル型だと考えられる。しかし、後半作業のバックライトは、インターフ ェースが比較的シンプルで済むため、大量の人の手による組立作業(例えば拡散板の裁断や冷 陰極管(Cold-cathode fluorescent lamp、CCFL と略称)の排列、反射板の両面粘着、Mold Frame の組立て、製品テスト、検査など12)が必要で、モジュラー型に近いと言えよう。 具体的には、前工程で完成した導光板と後半の組立て作業で必要なほかの部品、例えば拡散 板(Diffuser、光源の拡散)、Brightness Enhanced Film(BEF と略称、光度の向上)、反射板 (Reflector、光源の反射) 、ランプ(CCFL/LED、発光源) 、Inverter(電源転換の瞬間による 高電圧で CCFL を駆動)、Mold Frame などを見れば、それぞれが独立性の高い機能を持ち、部 10 それに対して、 「工程アーキテクチャ」は、直接的には「生産工程システム」と「製品構造システム」の対応関係 に関して定義される。特に化学産業や鉄鋼業の場合、その製品は主として一定の組成の固体・液体・気体であり、機 能と構造の関係は機械製品程には明瞭ではないし、インターフェースの概念は機械製品と同じように解釈しにくい。 このような場合、アーキテクチャ概念を生産工程に適用することによって、「工程アーキテクチャ」を規定すること ができる(藤本、2002、2003) 。本研究では、主に「製品アーキテクチャ」の概念を採用している。 11 導光板はアクリル板に白色インクで反射ドットを印刷した印刷方式、スタンパーやインジェクションでアクリル面 に凹凸をつけた整形方式、アクリル板と反射板をドット状の粘着材で貼り付けた粘着ドット方式などがある。また、 この導光板という面光源技術は日本発祥のものである(フリー百科事典を参照、 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%8...)。 12 「輔祥実業の公開説明書(Prospectus for capital increased by cash)(2007 年)」を参照。 7 品間のインタフェースが比較的簡素化する。各部品の製造者や設計者は、インタフェースの設 計ルールについて事前の知識があれば、ほかの部品の設計を考慮しなくても、独自の製造や設 計ができる。したがって、バックライト業者は、異なる企業からこれらの部品を購入したとし ても、複雑な擦り合わせは不要で、ただちに機能性の高い製品が組立てできる13。このモジュ ール型の分野(主に組立ての作業)は、台湾メーカーのほうが競争優位を持っている。 TFT-LCD パネル Array Cell LCD Module ガラス基 カラー ドライバ バック 板 フィルター ーIC ライト 「インテグラル型」に近いカラーフィルター 「モジュラー型」に近いバックライト ブラ カラ 露 ITO Photo 光 LGP バ ック ーレ 光 膜の Spa- 学・ 一体 ッ マト ジス 形成 cer 金 型 鏡 ピ ク リク ト塗 工程 型・ 射出 面 ー ラ ス形 布 現 機構 成型 仕 チ イ 像・ベ 設計 上 印 ト げ 刷 組 成 ーキ LGP ング 立 裁断 て 図4 TFT-LCD のキーコンポーネントのアーキテクチャの分析 (出所)新宅他(2007)を参考に作成。 3.2.2 アーキテクチャのダイナミックな転換と掌握 以上をまとめてみると、この TFT-LCD パネルとキーコンポーネントの製品アーキテクチャは インテグラル型の特性を持っている(ただし、バックライトがモジュラー型に近い) 。これは、 従来日本企業が得意とする製品(社内外の擦り合わせが競争力を決めるタイプ)分野と一致し ていると考えられる(藤本、2001) 。 しかし、多くの産業(例えば HDD 産業)で製品アーキテクチャは、きわめてインテグラルな 状態からモジュラーな状態へとシフトし、またインテグラルなアーキテクチャへ逆転するとい うサイクルを経験する。そして、アーキテクチャがモジュラー化した場合では、インターフェ 13 「瑞儀光電の公開説明書(Prospectus for stock initial public offering)(2007 年) 」を参照。 8 ース標準が確立するため、製品システムの構成要素の相互作用がコード化される。その標準を 所与として、相互に代替可能なコンポーネントを供給する企業間では激しい競争が起こる。こ れがさらに技術進歩とコストの改善をもたらす(楠木他、2001、p265) 。 また、新宅他(2006B、p96)は、「本来なら擦り合わせ型のアーキテクチャ構造をとる製品 であっても、量産設計・コストダウン設計・歩留まり向上・海外生産などのプロセスで製品ア ーキテクチャの構造が急速にモジュラー型へと転換される」と主張している。 したがって、長期的に見れば、TFT-LCD 産業は、その技術移転•累積によって、その製品ア ーキテクチャは次第にインテグラルからモジュール(例えば TFT-LCD パネル製造における後半 プロセスの LCM モジュールの組立ての現場作業において、主にドライバ IC やバックライトや ケースなどの手作業が標準化されている14)へ、さらに将来的には、クローズ型からオープン 型(例えばパソコンに関する技術情報の公開戦略を行なった IBM と同じように、TFT-LCD に関 する技術情報も公開される)の方向へダイナミックに推移する可能性が高い15。 4. 台湾 TFT-LCD のキーコンポーネント産業の発展とそのアーキテクチャ・ポジショニング の移動戦略の選択 ここでは、台湾の TFT-LCD 産業の発展過程におけるキーコンポーネントの中で、最も重要な カラーフィルター(LCD パネルメーカーが最初に内製化した対象)とバックライト(最初にロ ーカルなメーカーが生産できた部品)の産業を挙げて議論する。 4.1 台湾カラーフィルター産業の特性、発展とその再生戦略 4.1.1 カラーフィルターの特性 まず、カラーフィルターは、LCD 画質を左右する重要な素材である。そして、TFT-LCD パネ ルの製造プロセスにおいては、一枚の LCD パネルは一枚のカラーフィルターを搭載する必要が ある。したがって、カラーフィルターメーカーは、TFT-LCD パネルメーカーとともに、絶えず 次世代ラインの設備投資をしなければならない。ほかの素材産業と比較すると、カラーフィル ターは技術や資本集約産業に近づいており、かつ次世代ラインの基板規格のサイズの拡大化と LCD-TV の高画質や高輝度などの要求によって、同産業の技術参入の障壁が高くなっている16。 4.1.2 台湾カラーフィルター産業の発展と経営危機 台湾カラーフィルター産業は、早期の STN 用から、TFT-LCD 産業の急速拡大とともに、大型 TFT 用の分野に参入して、発展してきた。同産業メーカーの主な技術源泉は日本の凸版印刷と 14 台湾企業(2002 年から、NB/モニター用のパネルモジュールが最初にシフトし、2005 年に、LCD-TV 用のパネルモジ ュールもシフトした)と日韓(日韓とも、2003 年からシフトし、2005 年韓国の LCD-TV 用のパネルモジュールもシフ トした)の LCM モジュール工場は、既に中国へシフトしていた。例えば蘇州にある日立、三洋、Samsung、友達(AUO)、 無錫にある Sharp、Sony、上海にある NEC、東芝、広輝電子、南京にある LG、翰宇彩晶、深圳にある奇美などの工場 が挙げられる(2006 年 8 月 2 日に、友達の CF(カラーフィルター)工程部門のマネージャーへのインタビューと工 業技術研究院の ITIS 産業観察、瑞儀光電の内部資料に基づく)。 15 この点については、楠木他(2001)や柴田他(2002)が主張した製品アーキテクチャのダイナミックな本質やその 進化モデルと一致していることがわかる。 16 優比士公司の Home Page から「大サイズ TFT-LCD のキーコンポーネント産業の分析」 (http://usersbest.myweb.hinet.net)、及び元大投資顧問公司の産業レポート (http://intra.yuanta.com.tw/PagesA2/hot_issue/9304%Blm%A6%E2%C2o%A5%FA%A4%F・・・)を参照。 9 大日本印刷(DNP)からである。例えば和鑫光電(Sintek、1999 年成立)は、日本 IBM からの 第3世代のカラーフィルターの技術移転を受け、台湾最初のカラーフィルターの量産メーカー となっている。そして、同社は大日本印刷からの第 3.5、第 4、第 5 世代などのカラーフィル ターの技術移転を受けている。 2001 年当初は、TFT-LCD 用のカラーフィルターに参入した 6 社のメーカーは、自社 LCD 用の 内製化メーカー奇美電子(CMO)を除いて、すべて専業外販メーカーであった17。そのとき、 各専業外販メーカーは、 利益率が高かった(例えば和鑫光電は、2002 年の 24.5%、 03 年の 11.2%、 04 年の 15.7%)18。 しかし、台湾 LCD パネルメーカーはキーコンポーネントの掌握やコストダウンのため、垂直 統合行動を積極的に行なっている。特に、LCD パネルのコストに占める比率が一番高いカラー フィルター(約 25%)は、最初に内製化対象であった。また、LCD パネルメーカーは、パネル サイズの拡大化とともに、運送コストの削減や工程調整のため、5 世代ライン以上のカラーフ ィルターを主に内製化している。したがって、カラーフィルターの専業外販メーカーの販売や 利益が圧縮されていた。2005 年頃から、和鑫光電、達虹、展茂光電などの専業外販メーカー は販売不振によって、経営赤字が続いている19。そのうち、2007 年初から、展茂光電は銀行融 資の返還遅延に関連した資金調達の危機が起こり、原材料サプライヤーからの素材出荷が中断 され、工場の生産がやむを得ず停止している20。 台湾における TFT-LCD 産業のキーコンポーネント分野に参入しているローカルな大手メー カーの中で、カラーフィルター産業(専業外販メーカー2 社)だけが、2 年以上連続経営赤字 が続いている。ほかには、CCFL 産業(7 社、そのうち 1 社が 2006 年に赤字) 、光学膜や化学素 材産業(6 社) 、偏光板(6 社、力特光電だけが連続経営赤字) 、バックライト産業(8 社、そ のうち 1 社が 2006 年に赤字)などは、ほとんど経営利益が順調に上がっている(財訊、2007) 。 4.1.3 台湾カラーフィルター専業外販メーカーの再生戦略 以上述べたように、台湾カラーフィルターの専業外販メーカーは、近年、顧客(主に LCD パネルメーカー)からの厳しい値下げ要求、顧客の内製化行動、同業者間の価格競争などによ る販売不振で、国際的な競争力が次第に低下しており、経営危機に陥っている。 しかし、パネルメーカーは、カラーフィルターの内製化行動を進めているが、もしその内製 の良品率が高くなかったり(例えば専用のカラーフィルター生産ラインではなく、もとの第 5 世代パネル生産ラインを借りて、カラーフィルターを製造すること、またはいろいろな規格に よって、生産ラインの変換が頻繁に行うこと) 、あるいは足りないカラーフィルターがあれば、 外から調達する必要がある21。例えば翰宇彩晶(Hannstar)の Fab3 工場は、第 5 世代の TFT-LCD パネル生産ラインを持ち(8 万枚/月の処理能力) 、そのカラーフィルターを一部内製する(6 17 カラーフィルターメーカーの分類は、LCD パネルメーカーの In house による自社製造のような「内製式」(例えば、 奇美光電)、及び各 TFT-LCD パネルメーカーに販売する目的の「外販式」がある。 18 「和鑫光電 95 年度〈2006〉年報(Annual report)」を参照。 DIGITIMES Inc.名人講堂-和鑫光電總經理林氏に関するレポート (http://tech.digitimes.com.tw/print.aspx?zNotesDocId=C7DAB943FE555B7A482571E80035F05D)を参照。 20 和鑫光電に関するニュース(http://www.sintek.com.tw/chinese/newseventsl_detail.asp?id=270)、 『商業週刊』 1011 期(2007.4)、pp77-78 を参照。 21 2008.9.4 に、和鑫光電の管理幹部余氏とのインタビューから。 19 10 万枚/月の処理能力)が、かつその良品率が高くないので、毎月約 4 万枚のカラーフィルター を隣の和鑫光電から調達しなければならない22。 一方、顧客の内製化行動が積極的に進んでいることによって23、長期市場の将来性が見えず に、カラーフィルター専業外販メーカーは製品の多角化戦略を採っている。例えば和鑫光電は、 太陽電池のモジュールの生産ラインを作って、2009 年から、量産する計画がある。そして、 同社はもとのカラーフィルターの生産ライン(同工場が 6 つのラインを持っている)の 1 つを 借りて、極少数メーカーが参入している Touch Panel 分野を開発し、2009 年からも量産する 24 予定がある 。それにもかかわらず、台湾メーカーは、インテグラル型の製品に得意な日本企 業(例えば凸版印刷や大日本印刷)との技術提携を一層強化するのがベストであろう。 4.1.4 日本凸版印刷のケース 以下では、日本企業の例を挙げてみよう。例えば凸版印刷は、徹底したカスタマイズ戦略(図 2左上のポジションにある)を採用している範例である。すなわち、インテグラル型構造のカ ラーフィルターを、インテグラルな LCD パネル作りをする顧客に販売するケースである。 近年、TFT-LCD 産業の発展や市場成長とともに、凸版印刷は、台湾のカラーフィルターメー カーとの技術提携や合資をしただけではなく、2002 年に急成長した台湾市場に対応した台湾 凸版国際彩光公司(台南で)を設立した。そして、2006 年に、台湾最大手の TFT-LCD パネル メーカー友達光電(AUO)と技術提携を結んでいる。2004 年、2006 年に、凸版印刷は、急速に 拡大した大型液晶テレビの市場需要に対応する第 6 世代(1,500 ㎜×1,800 ㎜)、 第 8 世代 (2,160 ㎜×2,460 ㎜)カラーフィルターの製造を開始した。同社は一辺 2mを越える超大型サイズで ありながら、世界初の高度なフォトリソ技術により、従来と変わらない世界トップクラスの高 品質、高精度を維持している25。 つまり、凸版印刷は、次世代のカラーフィルター分野については、徹底したカスタマイズ戦 略を行ない、成熟したカラーフィルター分野については、台湾メーカーと技術提携、合資、ま たは台湾子会社の設立を行なっているのである。 具体的には、凸版印刷は、他社から真似されない独自の次世代製品を敏速に開発し、高付加 価値のものを提供し、顧客の多様化と大型パネルサイズの需要に対応できるような迅速かつ徹 底したカスタマイズ戦略体制を構築することができた。一方、同社は、台湾メーカーとの技術 提携や合資や子会社の設立などによって、自社製品がインテグラル型から次第に標準化された 部品を組み合わせれば作れるモジュラー型に転換したら、市場成長を伸ばすことができる戦略 を行なっている。これは、新宅(2006、B)が主張したように、新興国企業との競争を前提に した敵対的な戦略だけではなく、モジュラー型製品に長けた新興国企業との協業によって達成 される相互補完的な有効な戦略だと考えられる。 現時点では、凸版印刷は、世界最大手のカラーフィルターメーカーとなり、台湾メーカーと 22 2007 年度『液晶・PDP・EL メーカー計画総覧』 、pp212-213、及び「和鑫光電 95 年度〈2006〉年報(Annual report)」、 p42 を参照。 23 2007 年 4 月、台湾のパネルメーカー華映(CPT)が和鑫光電の新竹湖口の工場(3 代、4.5 代)を買収した(2008. 4.23、「工商時報(新聞)」より)。 24 2008.4.23、5.30 の「工商時報(新聞)」、及び 2008.9.4 の和鑫光電の管理幹部余氏とのインタビューから。 25 日本凸版印刷の Home Page を参照。 11 の技術移転を行った重心メーカーである(財訊、2007)。 4.2 台湾バックライト産業の特性、発展とポジショニングの移動戦略 4.2.1 バックライトの特性 バックライトとは LCD パネルの光源を提供する部品である。液晶は発光しないため、表示が 見えにくく、見えやすくするためにバックライトを LCD の後方に置き光源からの光を反射させ て LCD を透過させると、画面表示が見えやすくなる。そして、バックライトは、上拡散板、下 拡散板、導光板、Brightness Enhanced Film、反射板、ランプ(CCFL/LED) 、Mold Frame、Inverter などの素材で構成されている。これらの素材は、バックライトのコストの 7-8 割以上を占めて、 日本メーカーが圧倒的な優位を示している。 前節で述べたように、バックライトは、前半の導光板の開発については、光学、金型、機構 を合わせた設計が必要で、そのアーキテクチャはインテグラル型だと考えられる。しかし、後 半作業のバックライトは、インターフェースが比較的シンプルで済むため、大量の人の手によ る組立作業が必要で、モジュラー型に近いと言えよう。 4.2.2 台湾バックライト産業の発展 2006 年、台湾 FPD(Flat Panel Display)産業の出荷金額は約 1.27 兆元である。そのうち、 LCD パネル産業(一部の TN/STN-LCD を含む)とキーコンポーネント産業が、それぞれ 71.66% と 28.34%を占めている。そして、キーコンポーネント産業の中で、出荷金額最上位のバック ライトが 35.44%で、次はカラーフィルターの 25.61%、ガラス基板の 22.23%、偏光板の 16.72%などの順になっている(財訊、2007、p9) 。これらから、バックライト産業の重要性が 見える。 1990 年代の後期から、瑞儀光電(Radiant、1995 年成立)に始まり、約 30 社ほどのメーカ ーがバックライト分野に参入してきた。当初は、日本メーカーが同産業に関連する製造技術や 素材をほとんど掌握していた。2000 年は、日本五大メーカーが、世界の市場占有率の 80%を 占めている26。そこで、台湾で多くの習ったばかりの中小メーカーは、日本メーカーからの技 術提携や支援を受け(例えば中強光電が日本 Denyo から、瑞儀光電が茶谷興業から、大億科技 が Stanley 電気から27)、最初の後半のモジュール型の容易な組立て作業から始まり、次第に 導光板などの重要な素材の製造や開発に進むといった技術吸収戦略を採用している28。 2001 年から 03 年まで、同業者間の激しい競争結果によって、経営不振のメーカーが次第に 同市場から撤退した。近年、台湾バックライト産業は、規模経済の効果によって、7社の大手 メーカーが残っている29。2004 年には、台湾バックライトの国内調達率が 93.9%に達した30。 2005 年、台湾(40.4%)は、韓国(35.7%) 、日本(15.4%)を越えて、バックライトの市場 シェアが世界1となった。2006 年には、台湾メーカーは 45.7%で、その市場シェアが半分に 26 例えば Stanley 電気が 25.8%、日本 Denyo が 19.9%、茶谷興業が 13.7%、富士通化成が 12%、多摩電気が 10.2%で ある(理財網に関するレポート(http://www.moneydj.com/z/glossary/glexp_4643.asp.htm)を参照)。 27 理財網に関するレポート(http://www.moneydj.com/z/glossary/glexp_4643.asp.htm)を参照)。 28 「瑞儀光電の公開説明書(Prospectus for stock initial public offering)(2001 年) 」を参照。 29 「輔祥の公開説明書(Prospectus for capital increased by cash)(2007 年)」を参照。 30 「瑞儀光電の公開説明書(Prospectus for stock initial public offering)(2007 年) 」を参照。 12 近づき、韓国と日本のがそれぞれ 33.9%と 12.6%である31。メーカーを個別に見ると、台湾 の中強光電が 13.9%の市場シェアで世界 1 となり、第二位の瑞儀光電が 10%で、第三位の韓 国 Taesan 電子が 9%で、次は日本 Stanley 電気が 6.4%であった(財訊、2007) 。 2007 年第一 4 半期の財務資料によれば、バックライトの大手メーカー7 社は、すべて経営黒 字を獲得している。これは台湾のキーコンポーネント分野のうち、全産業の経営パフォーマン スが最も高いである32。特に、多くの LCD パネルメーカーの経営損失の幅が市場予測を超えて いるにもかかわらず、キーコンポーネントの販売を影響させながら、バックライトメーカーの このような結果は珍しいと言える。 近年、日韓と台湾の LCD メーカーは、 大量の手作業に依存した後半の LCM モジュール工場を、 中国へシフトしている。2002 年から、台湾バックライトメーカーでも、運送費用と労働コス トの節約のため、中国にある顧客工場の近くに、後半の組立作業工場を設立してきた。2007 年では、これらの中国工場の出荷額は台湾の親会社を超えている。そして、これらの中国工場 は、バックライトを台湾系の LCD メーカーに供給しているほかに、Samsung や中国顧客からの オーダーをも取得している。 4.2.3 台湾バックライトメーカーの事例研究 ここでは、台湾でバックライト分野に最初に参入した瑞儀光電(Radiant)のケースを挙げ て考察する。 まず、高雄加工輸出区にある瑞儀光電の発展沿革を少し概観しよう33。最初に、日本茶谷興 業から組立てに関連する技術移転を受け、1996 年に、小型 STN 用バックライトの生産を開始 し、導光板を韓国 Taesan 電子(Samsung のバックライトのサプライヤー)へ外販した。1997 年、スタンパー導光板の取引を開始し(納入先:日立電子)、1998 年に、ISO-9001 品質認証を 取得した。1999 年、大型バックライトを初出荷し(納入先:奇美電子) 、2000 年、政府から主 導性新製品開発計画の補助(大型スタンパーバックライト金型開発)を受けた。2001 年、導 光板の生産ラインを拡大し、翌年中国への投資生産を開始した。2003 年、台湾で有名な産業 経営誌の『天下雑誌』の調査によれば、製造業 Top1000 の中で、経営パフォーマンス(経営利 益と利益の成長率)が首位であると高く評価された。同年及び 2005 年に、第 5、第 6 工場を 増設し、LCD-TV 用のバックライト生産ラインを増設した。2006 年の「工商時報(新聞)」の調 査では、中国大陸の台商 Top1000 のうち、経営パフォーマンスがトップであった。このように、 台湾と中国の工場がすべて経営パフォーマンスの首位を獲得したのは、極めて珍しい。2006 年の同社の経営実績〈台湾と中国の工場の合計〉を見ると、出荷量が約 5,149 万枚で、売上高 を 2001 年の 24.59 億元から 243.53 億元までに伸ばし、利益率が 12.58%となっている。 次に、瑞儀光電はどのようにして競争優位を構築することができたのか。同社のマネジャー 林氏によれば、次の数点が挙げられる34。 第一に、小型バックライトの量産や開発経験を累積してから、大型バックライトに応用した。 31 「輔祥の公開説明書(Prospectus for capital increased by cash)(2007 年) 」、p77 を参照。 また、EPS を見ると、中強光電の 1.18 元が最高で、 瑞儀光電の 0.77 元が第二位となっている ( 「工商時報(新聞)(2007. 5.4)」 )。 33 「瑞儀光電の公開説明書(Prospectus for stock initial public offering)(2007 年) 」を参照。 34 2007.5.21 に、瑞儀光電の行政センターのマネージャ林氏とのインタビューから。 32 13 例えば同社は、小型サイズのバックライトから、導光板(LGP)の射出技術を自主開発し、ノ ートパソコン用の V-Cut(光学効率の向上技術)LGP 射出能力は同業他社をリードしている。 当初、多くの台湾メーカーが日本メーカーから LGP を調達していた時も、瑞儀光電は LGP の自 主開発で、高付加価値を獲得してきた。また、モニター用のバックライトの量産の組み立て経 験を通して、より複雑な機構設計〈例えば軽薄短小化の要求〉が必要な LCD-TV 用のバックラ イトに応用することができた。 第二に、瑞儀光電は光学技術の統合能力を持っている。バックライトでは、各製品タイプと 素材の規格によって光学設計、金型開発、射出成形、機構設計などのいろいろな光学技術の要 素の擦り合わせ能力や微調整がなければならない。同社はこれらの技術能力や製造設備を持ち、 同一工場で生産することができ、外部への委託加工や外注が不要である。 第三に、多様化する顧客の要求をカスタマイズで満足させることができた。例えば 2006 年 は、顧客への出荷比率の順が、友達(AUO)の約 23%、奇美電子(CMO)の約 20%、翰宇彩晶 (Hannstar)の約 18%、中華映管(CPT)の約 16%、Samsung と LG 合計の約 11%などになっ ている35。同社は各顧客と緊密な提携関係をもって、新機種を共同開発で行い、かつ顧客の過 度集中リスク(例えば輔祥実業(Forhouse)の顧客は、約7割の比率が友達(AUO)に集中し ている)を避けて、顧客の分散化を徹底して実施している。 そこでは、広範な顧客に基づいた大量生産の規模経済を取得し、各顧客をまとめる開発設計 のシナジー効果を発揮することができた。そして、国際顧客(例えば Samsung、Sharp など) との共同開発を通して、製品に関連する新たな傾向や新たな設計の技術情報を早めに獲得して きた。これらの最新の情報は、次に来る台湾顧客(例えば AUO や CMO など)に参考として与え ている。その結果、台湾 TFT-LCD パネルメーカーは、新たなバックライトを応用する学習曲線 をも短縮することができた。 4.2.4 台湾バックライトメーカーのポジショニングの移動戦略の選択 次に、アーキテクチャのポジショニング視点から、台湾バックライトメーカーはどのよう なポジショニングの移動戦略を選択するのかを考察する。 前節で述べたように、バックライトのアーキテクチャは、全体としてはモジュラー型に近い と言えよう。そして、バックライトメーカーは、各機種や製品タイプ(例えばサイズの大きさ、 材質、薄さ、高輝度などの要求)について、顧客である LCD パネルメーカーのカスタマイズに 応じる必要性が高い。例えば、瑞儀光電は平均で、毎月約百種以上のバックライトを生産して いる。どのサイズのバックライト生産ラインでも、約 20 種類の機種を生産することが多い。 異なった顧客(例えば AUO、Samsung など)に対して、異なった製品の特殊ニーズ、さらに、 バックライトの重要な素材の光学膜の日本製や台湾製の指定の有無など、顧客の多様なニーズ に合わせた設計開発をしなければならない。かつ、バックライトのサイズが少し小さくなった だけでも、その組立てに必要な素材は、例えば導光板やプラスチックカバーや CCFL 反射用の 鉄カバーなどについて、新たな金型を再開発しなければならない36。 35 36 「瑞儀光電法人説明会(2008.8.7)」の資料より。 2007.11.27 に、瑞儀光電の行政センターのマネージャ林氏とのインタビューから 14 以上の例は、モジュラー型構造の製品をインテグラル型の顧客に販売するケースである。こ のような場合は、製品のモジュラー化を一層進めて、顧客のカスタマイズ化の要求に迅速かつ 低コストで応えていくということである。例えば先述したように、台湾 TFT-LCD パネル産業の 発展とともに、バックライトのようなキーコンポーネントでも、技術移転、提携による多くの 台湾ローカルなメーカーの参入、かつ日米サプライヤーからの拡散板(日台が各 6 社、米 1 社)、反射板(日 8 社、台 1 社、米 2 社)、BEF(日 6 社、台 5 社、米 4 社) 、CCFL(日 6 社、台 7 社)などの外販による素材の市場化が形成され37、その調達が容易化されてくる38。そこでは、 台湾バックライトメーカーは、構造モジュラー化戦略を徐々に実現することができた。 したがって、バックライトメーカーは、顧客の要求に基づいて、その光学や機構設計、金型 の開発、テスト・サンプルの製作や交付、顧客の認証などの一連のプロセスを行なわなければ ならない。瑞儀光電の行政センターのマネージャ林氏は、ほかのキーコンポーネント、例えば ガラス基板やドライバ IC やカラーフィルターと比べると、バックライトの顧客は、そのカス タマイズ化の要求程度が一番高いと述べている。特に、ノートパソコン用のバックライトはそ のカスタマイズの程度が最も大きい39。 そして、TFT-LCD パネル産業の発展とともに、もともとインテグラル型の高いバックライト は、日本の先行企業から技術提携や移転を通じて、または外販による素材の市場調達の容易化 されてくることによって、部品間のインタフェースが産業内で広く標準化され、その後半のプ ロセスで次第にインターフェースが標準化されて、モジュール型構造化する傾向を持っている。 ゆえに、この場合では、台湾のバックライトメーカーは製品のモジュラー化を一層進めるこ とを掌握し、高度な開発や部門協調の費用を削減し、大幅に中国への投資生産を行なっており、 多様な顧客のカスタマイズ化の要求に迅速かつ低コストで応えていっている。 つまり、多様な顧客の要求に迅速かつ低コストで応えるためには、構造モジュラー化戦略の 実現が必要である。そのためには、実は光学設計、金型開発、機構設計などといった統合能力 が必要であり、台湾バックライトメーカーは、さらにそうした能力を構築してきたのである。 そこでは、ポジショニングの移動戦略〈図2〉から見れば、台湾のバックライトメーカーは 左上から左下への構造モジュラー化戦略を採っている。すなわち、アーキテクチャのマトリッ クスは左下のモジュラー型カスタマイズ戦略の位置にある。この戦略の選択は、台湾メーカー の得意なモジュール型の組立て分野と一致しているため、同キーコンポーネント分野のカラー フィルターメーカーより、国際競争力をかなり発揮することができた。かつ、バックライト産 業での市場シェアについて、日本をキャッチ・アップすることができた要因だと考えられる。 5. おわりに 5.1 結論と発見事実 第一に、TFT-LCD パネルやカラーフィルターや導光板などの製品アーキテクチャはインテグ ラル型だと考えられる。しかし、多くの産業で製品アーキテクチャは、インテグラルな状態か らモジュラーな状態へというダイナミックなシフトが行われることに注意しなければならな 37 財訊〈2007〉、p111 を参照。 このモジュールの市場化については、コモディティー化を促進する要素の一つである(延岡他、2006)。 39 2007.5.21 に、瑞儀光電の行政センターのマネージャ林氏とのインタビューから。 38 15 い。この点については、延岡他(2006、p22)も、「全く新しい製品分野が生まれた場合には、 通常、最初はインテグラル型で始まるが、その後は、モジュラー化の進んでいく傾向が強い」 と主張している40。 第二に、近年、和鑫光電、達虹、展茂光電などの台湾カラーフィルターの専業外販メーカー は販売不振によって、経営赤字が続いている。そして、長期市場の将来性が見えずに、これら のメーカーは製品の多角化戦略を採っている。それにもかかわらず、台湾メーカーは、インテ グラル型の製品に得意な日本企業(例えば凸版印刷や大日本印刷)との技術提携を一層強化す るのがベストであろう。 最後に、TFT-LCD 産業のキーコンポーネントは、もともとインテグラル型の製品だったが、 パネル産業の発展とともに、日本の先行企業から技術提携や移転を通じて、外販による素材の 市場化が形成され41、その調達が容易化されてくることなどによって、部品間のインタフェー スが産業内で広く標準化され、徐々にモジュール型構造になる傾向を持っている場合が多い。 例えば台湾のバックライトメーカー(特に瑞儀光電)は、製品のモジュラー化を一層進め、 高度な開発や部門協調の費用を削減し、大幅に中国への投資生産を行なっており、多様な顧客 のカスタマイズ化の要求に迅速かつ低コストで応えている。このモジュラー型カスタマイズ戦 略の選択(図 5)は、台湾メーカーの得意なモジュール型の組立て分野と一致しているため、 同キーコンポーネント分野のインテグラル型のカラーフィルターメーカーより、国際競争力を かなり発揮することができた。かつ、バックライト産業での市場シェアにおいて日本をキャッ チ・アップすることができた要因だと考えられる。 日本 LCD 産業(キー コンポーネントを含 内 インテグラル型 んだ) 部 製 LCDLCDLCD 台湾キーコンポーネ 品 構 造 モジュラー型 ント産業(特にバッ クライト) インテグラル型 モジュラー型 製 品 図5 市 場 台湾 TFT-LCD 産業のキーコンポーネントメーカーのポジショニングの移動戦略の選択 (出所)新宅(2005)に基づいて、本研究のための整理。 40 コモディティー化を促進する要素は三つある。第一の要素はモジュラー化(その要因がインターフェースの単純化 と標準化)である。第二の要素は、中間財市場化(その要因がモジュールの市場化と擦り合わせの市場化)である。 第三の要素は、顧客価値の頭打ち(その要因が顧客の機能こだわりの低さと顧客の自己表現性の低さ)である〈詳し くは、延岡他、2006、pp14-48〉。 41 財訊〈2007〉、p111 を参照。 16 それに対して、インテグラル型が強い日本 LCD 関連メーカー、例えば凸版印刷、Sharp、化 学素材などのメーカーは、依然として徹底したカスタマイズ戦略を行なっている。しかし、ア ーキテクチャのダイナミックな変換に従って、モジュール型が強い新興国(例えば台湾や韓国) との緊密な協業の重要性がますます高くなっている。 5.2 インプリケーション 本研究は、2 つのインプリケーションを挙げる。 第一に、各国のメーカーは、製品アーキテクチャのダイナミックな変化とそのメカニズムを 早めに予測して何らかの対策や戦略を行うのがベストであろう。例えば凸版印刷は、他社から 真似されない独自の次世代製品を敏速に開発し、高付加価値のものを提供し、顧客の多様化と 大型パネルサイズの需要に対応できるような迅速な徹底したカスタマイズ戦略体制を構築す ることができた(図 5)。一方、同社は、台湾メーカーとの技術提携や合資や子会社の設立な どによって、自社製品がインテグラル型から標準化された部品を組み合わせれば作れるモジュ ラー型に次第に転換したら、市場成長を伸ばすことができる戦略を行なっている。 第二に、アーキテクチャのポジショニングの移動戦略は、製品の内部構造や製品市場の組合 の差異によって、四つの選択肢がある。しかし、これらの選択肢は自国や自社の得意な分野と 適合するかどうかも重要であろう。例えば台湾バックライトメーカーは、光学設計や金型開発 や機構設計などの統合能力を持っているが、それは、決して従来のインテグラル型に強い日本 メーカーのライバルではない。そこでは、台湾バックライトメーカーは、日本の先行企業から 技術移転、提携を通じて、かつ素材の外販による市場調達の容易化などによって、その製品を 次第にモジュール化し、量産化による低コストで迅速に顧客の特注品や多様化ニーズに応えて いく能力を育てている。それこそ、キャッチアップや国際的な競争力を決める鍵ではないだろ うか。 *謝辞:本研究は第 14 回全国大会の報告の際に、コメンテーターの横浜国立大学曺斗燮先生から有益なコメントを 頂きました。台湾の行政院国家科学委員会の研究計画(NSC96-2416-H-415-006-MY2)補助金も頂きました。また、本 論文の匿名レフリーの先生に厚く御礼申し上げます。 (参考文献) 青島矢一(1998)「製品アーキテクチャと製品開発知識の伝承」 『ビジネスレビュー』Vol.46 No.1、pp.46-60。 赤羽淳(2004) 、 「台湾 TFT-LCD 産業発展過程における日本企業と台湾政府の役割」 「アジア研 究」第 50 卷第 4 号、pp.1-19. 陳泳丞(2004)『台湾的驚嘆号――台日韓 TFT 世紀之争』時報出版。 藤本隆弘他(2001)編『ビジネス•アーキテクチャ』有斐閣。 藤本隆弘(2002) 「製品アーキテクチャの概念・測定・戦略に関するノート」RIETI Discussion Paper Series 02-J-008。 藤本隆弘(2003) 「「日本型プロセス産業」の可能性に関する試論――そのアーキテクチャと競 17 争力」MMRC Discussion Paper Series No.1。 楠木建他(2001)、 「製品アーキテクチャのダイナミック・シフト」、藤本隆宏他(2001)編『ビ ジネス・アーキテクチャ』有斐閣。 中田行彦(2007)、 「液晶産業における日本の競争力――低下原因の分析と「コアナショナル経 営」の提案」RIETI Discussion Paper Series 07-J-017。 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