特集−1 コンペ・プロポーザルを活用した まちづくり 29 CONTENTS 29 ■ 特集 コンペ・プロポーザルを活用したまちづくり 自治体においては公共空間の整備にあたり、従来の枠組みにとらわれない新しい アイデアや質の高いデザインを求めて、コンペやプロポーザルを実施するケースが増 えつつあります。 そこで、コンペやプロポーザル方式を採用して質の高い公共空間を実現した事例に 焦点を当て、どのような体制や方式で進められたのか、その経緯と整備後の公共空間 の現状について特集します。 象の鼻パーク ∼横浜港発祥の地∼ 千葉健志 2 新潟市都市政策部 新潟駅周辺整備事務所 6 横浜市港湾局 港湾整備部 企画調整課 計画担当課長 新潟駅南口広場の取り組みについて ふるさとの顔『おび通り』 ∼宿場町の新しい顔としての路ひろば∼ 静岡県島田市建設部 市街地整備課 11 大野良昭 15 熊本県土木部 建築課 19 大阪道頓堀川人道橋「浮庭橋」 大阪市建設局 道路部 橋梁担当係長 くまもとアートポリス「熊本駅前広場」 ■ 図書紹介 24 ■特集 -1 千葉 健志(ちば たけし) 1992年 横 浜市入 庁。港 湾局、都市整 備局勤務を経て 2010年から現職。 横浜港内港地区の整備計画策定業務に携わる。 象の鼻パーク ∼横浜港発祥の地∼ 横浜市港湾局 港湾整備部 企画調整課 計画担当課長 千葉 健志 1.はじめに 横浜港は、1859年(安政6年)6月2日に開港し、2009 年に開港150周年を迎えた。横浜港は、開港当初から我 施設形状は震災や戦災で多少変わってきているものの、 開港当時の姿が現在でも残っている点で、我が国の港 の歴史を振り返る上でも貴重な存在となっている。 が国最大の貿易港としての役割を担う一方、人や物の 象の鼻地区は、みなとみらい21地区臨港パークなど 国際交流を通じて西洋文化や文明を取り入れる窓口で から山下公園へ続くウォーターフロント軸と横浜公園 もあった。その横浜港の中心としてその重責を担って から日本大通りを通り、大さん橋国際客船ターミナル いたのが横浜港発祥の地「象の鼻地区」である。 へ続く都市軸とが交差する結節点に位置している。 横浜市では、開港150周年記念事業として、歴史を積 み重ねてきた「象の鼻地区」を歴史と未来を繋ぐ象徴的 な空間にすることを目指し一部を「象の鼻パーク」とし て再整備を行った。 2. 「象の鼻地区」とは 3.象の鼻地区の再整備事業の概要 (1)事業の概要 地区面積 約4ha(うち緑地部分 3.3ha) 港湾緑地名称 象の鼻パーク 事業期間 2006年∼ 2009年(第1期整備) 横浜港は、開港にあたり2本の直線状の波止場が造 られた。その後、1867年に東側の突堤が湾曲した形に 変更され、その形が「象」の鼻の形に似ていることから 「象の鼻」と呼ばれるようになった。 象の鼻地区は、防波堤と波止場として利用されてき た周辺の陸域及びそれに囲まれた水域を指す。地区の 象の鼻地区位置図 (2)再整備事業の経緯 1982年 港湾計画に港湾緑地として位置づけ 2004年 開港150周年事業として再整備が決定 2005年 基本構想とりまとめ 市民意見募集 象の鼻パーク基本計画図 29 | 11 ■特集 -1 ナショナルアートパーク構想とは 都心臨海部を今以上に市民に親しまれる場とするとともに、 開港都市としての歴史や文化等の資源を活かしながら、文化 芸術活動の積極的な誘導により創造的産業の育成や観光資 源を発掘することでまちの魅力を高め、都市の活性化、横浜 の経済の発展を図る構想である。 象の鼻地区の位置づけ 「象の鼻地区」を中心に、大さん橋や赤レンガ倉庫によって形 成されるエリア一体を、横浜を代表する国際的な文化観光交 流エリアの一つとして捉え、積極的に創造的な機能集積を図 ることによって、 「文化芸術創造とし・横浜」の都市イメー ジを牽引する。 公開プレゼンテーション 実施状況 (3)評価方法 評価については評価委員会(山本理顕委員長)を設 置して、評価及びヒアリングを行い、その結果を本市の ナショナルアートパーク構想の提言 2006年 基本計画策定 プロポーザル方式による設計者の選定 2009年 象の鼻パークオープン (3)基本理念 「時の港」∼横浜の歴史と未来をつなぐ象徴的な空 間∼を基本理念として再整備を進めた。 業者選定委員会に報告し最終的に設計者を選定した。 評価は2段階で行った。第2次評価時のプレゼンテー ションとヒアリングは公開で行い、評価の審議は非公 開とした。 (4)評価項目 ①第1次評価の評価事項 ・再整備基本計画との整合性 ・まちづくりの方針の妥当性 4.プロポーザル方式による設計者の選定 (1)設計者選定方法の検討 象の鼻パークの整備については、開港150周年事業 ・独創性・象徴性 ・代表設計者の業務実績 ②第2次評価の評価事項 という位置づけから質の高い空間づくりが求められた。 ・2009年時点での整備イメージの妥当性 そこで、緑地とトイレ・休憩棟の設計は一貫して同一 ・2009年以降の事業アイデアの卓越性 の設計者が行うことが望ましいと考え、象の鼻パーク ・段階整備の妥当性 全体の施設設計については、防波堤や護岸の施設設計 ・提案内容の独創性・象徴性・景観性・機能性 を除き公募型プロポーザル方式で設計者を選定するこ ・業務体制の実現性等 ととした。 ・その他、当該業務に対する意欲等 ※プロポーザル方式:対象業務に対する熱意、発注者が示した 課題に対する考え方、設計者の実績、実施体制能力などをも とに設計者を選定する方法である。なお、コンペ方式は、設 計案を提案していただき、設計作品を選定する方法である。 (5)実施概要 ・応募総数: 62件 ・第1次評価: 5者 (2)応募条件 横浜市では「開港150周年∼市政120周年∼基本計 ・第2次評価: 最優秀賞1者 小泉雅生氏 (小泉アトリエ/首都大学東京) 画」を策定し、その中で「チャンスあふれるまち」とし て元気な横浜を創造する人材育成に向けた取組みの推 進を目指していたことから、プロポーザル方式による 設計者選定に当たっては、対象を開港100周年以降に生 まれた若手設計者とした。 これは開港150周年を契機に新たな人材を発掘し、今 後も長く横浜で活躍していただきたいという観点から、 若手設計者に設計を託すことにしたものである。 12 | 29 【評価委員会講評(抜粋) 】 小泉さんの提案は象の鼻防波堤と開港を記念する広場を含 む「大きな風景」全体を囲む大きな光のサークルです。FRP グレーチングでできたスクリーンが並べられて、大きなサー クルをつくっています。象の鼻防波堤と開港を記念する広 場全体の風景から、このサークルの形状を発掘しそれを視 覚的に表現することに成功しています。高いシンボル性を 獲得する可能性を持っていると判断されました。 象の鼻パーク ∼横浜港発祥の地∼ サート会場になる。 ②象の鼻テラス(多目的レストハウス) ナショナルアートパーク構想の拠点地区として創 造的な機能の集積を図るため、カフェを併設した休 憩施設「象の鼻テラス」を整備した。ここではアート 作品の展示や音楽、演劇等のパフォーマンスの開催 ができる文化観光交流拠点としての活用が計画され ている。 山下臨港線プロムナードから歩いても入ることの 小泉雅生氏の作品 できる屋上は、芝で緑化しており、横浜港を見渡すこ とができる展望台にもなっている。 5.施設の概要 (1)検討体制 象の鼻パーク( 整 備 面 積 約3.3ha)の設 計は、 プロ ③開港波止場 横浜スタジアムのある横浜公園から海側に伸びる ポーザルで最優秀者となった小泉雅生氏が横浜市と調 日本大通りから港への通景空間を確保するとともに、 整の上、具体化した設計案を専門家や学識経験者で構 中央部の石張り広場はイベント等が可能な開放的な 成する「象の鼻地区再整備景観デザイン調整委員会」 空間とした。 に提案し、それに対する同委員会でのまちづくりや歴 日本大通り側入口横には、象の鼻を中心に横浜港 史、港、文化芸術など広い視点からの意見交換を基に の発展の歴史や港の活動等を紹介した歴史紹介パネ 確定した。 ルを設置している。 (2)施設の概要 ①開港の丘 ④スクリーンパネル(照明器具兼モニュメント) 復 元 後の防 波 堤の曲 線を活かしながら一 定の間 港や海を見渡す緑のオープンスペースや水辺のプ 隔で配置することにより、地区全体にわたる大きな ロムナードを整備し、水辺の景観や夜景を楽しむ場 サークルを描き、地区全体で美しく魅力的な夜景を とした。 演出するシンボル空間を形成している。 約6千平方メートルの芝生広場を観客席、前面の石 照明施設としては、日没から午後8時までは電球 張りの広場をステージとして利用すれば、横浜なら 色、午後8時から10時までは薄紫色、午後10時から夜 ではのウォーターフロント景観を活かした野外コン 明けまでは青色と3段階に色を変えて演出している。 象の鼻テラス 開港の丘 29 | 13 ■特集 -1 開港波止場 6.おわりに 公募型プロポーザル方式で設計者を選定し、その過 程を公開したことは、多くの人々が公共事業をより身 近に感じる手段の一つとして有意義であった。 象の鼻パークの整備は、都市計画・土木・建築・ラ ンドスケープ・照明などさまざまな分野においてさま ざまな職種の人々が意欲的に係り実現した、横浜のま ちづくりの新たな試みであった。 夜景 全景 14 | 29 ■特集 -1 新潟駅南口広場の取り組みについて 新潟市都市政策部 新潟駅周辺整備事務所 1.はじめに 舎・駅前広場計画提案競技企画会議(以下、 「企画会議」 新潟市は、近隣14市町村との大合併を経て、人口約 という。)」を設立し、2001年(平成13年)度から市民参 81万人となり、2007年(平成19年)に本州日本海側初 加を取り入れた公開による「新潟駅 駅舎・駅前広場 の政令指定都市となりました。 計画提案協議」を実施しました。企画会議は、市民が 高速道路や上越新幹線により首都圏と直結している 主体となった市民参加活動を企画・実施し、市民意見 など、陸上交通網が充実しているほか、国際空港、国際 を反映させることを目的として、主に新潟県内に活動 港湾を擁し、国内主要都市と世界を結ぶ高次の都市機 拠点を持つ「NPO法人まちづくり学校」に「新潟駅コン 能を備えており、北東アジア諸国との多面的な交流や ペ市民窓口委員会(以下、 「窓口委員会」という。 ) 」の 国内諸国とのパートナーシップの構築などを進め、本 設置・運営を委託しました。同委員会によりコンペに 州日本海側最大の拠点都市として発展してきました。 係る応募要項案に対する市民意見の収集及び取りまと このようななか、鉄道の連続立体交差事業をはじめ めや、コンペの実施過程における市民参加活動の企画 とする新潟駅周辺地区の整備を積極的に進めており、 及び運営等がなされ、第一段階応募要項に市民の意見 新潟駅周辺整備事業の一つとして、陸の玄関口に相応 や想いを反映しました。 しいまちの顔づくりに向けて新潟駅駅舎及び駅前広場 第一段階コンペは国外2作品国内123作品、計125作 の整備を進めており、その第一段階整備として、新潟 品の応募があり、企画会議により設置された8名の審査 駅南口広場整備を行いました。 委員によって59作品の第一次絞込みが行われ、最終的 2.コンペに至る経緯と実施の概要 実施体制図 新潟駅南口広場の計画作りの特徴としては、コンペ 方式を採用しながら、各段階で市民意見を取り入れて 設置 主催者 市民参加組織の 設立・運営を委託 企画会議 審査委員会 (アドバイザーチーム) 市民と一体となって進めてきたことが挙げられます。 新潟駅コンペ 市民窓口委員会 新潟駅周辺における課題として、鉄道による南北市 応募要項 街地の分断や、横断道路の不足による交通渋滞、駅前 広場が駅舎から離れていることなどがありました。こ 審議 計画作りへの市民参加を求める声が多数寄せられまし た。そこで、主催者(新潟県・新潟市)が「新潟駅 駅 6 | 29 募集・広報 意見 審議・審査 評価・選定 市民参加活動 募集 応募者(提案作品) 意見 県民・市民 成10年)度の「新潟駅周辺整備基本構想」公表以降、 企画運営 把握 れらの課題を解決すべく、1992年(平成4年)度から新 潟駅周辺の整備について検討をしており、1998年(平 設立・運営 NPO法人 まちづくり学校 新潟駅南口広場の取り組みについて 当選作品パネル 広場模型 「新潟駅周辺整備に関わる市民参加企画会議(略称「駅 きかく会議」)」を立ち上げ、ワークショップを企画運営 しながら、堀越グループや当市と意見交換を進めてき ました。計11回に渡るワークショップを開催し、これ までの「作り手の視点」だけでなく「使い手の視点」を 設計に反映させるという点で、全国的にもユニークな 手法でした。ワークショップの中で要望の多かった「作 りこみ過ぎないようにして、時と共に成長できるような 統括者 建築 都市計画 土木 造園 堀越 英嗣 ㈱アーキテクトファイブ ㈱アプル総合計画事務所 パシフィックコンサルタンツ㈱ 鳳コンサルタント㈱ 広場に」という意見を踏まえ、コンペ案では設置予定で あった水辺やステージ等については時間の経過を見た 中で設置するかどうか再検討することとしたり、空間 の広がりを持たせるために、ケヤキの本数を少なくしま に5作品まで絞り込まれました。その後、第一段階審査 した。その一方で、ベンチには埋め込み式の照明と電 通過者と窓口委員会との市民意見交換会を開催し、市 源を付けたり、排水用マス、給水栓、ポール基礎を設置 民の想いを再度まとめ、第二段階審査に市民意見を反 することで各種イベントに対応できるようにしました。 映させました。2002年(平成14年)12月に、審査委員 その後、2006年(平成18年)1月に都市計画決定、同 会により第二段階審査会が開催され、市民が見守るな 5月に事業計画認可を経て2007年(平成19年)7月に着 か、プレゼンテーション・審査委員によるヒアリング 工しました。 等を通じて最優秀賞1点を選定しました。 最優秀賞に選ばれたのは、堀越英嗣氏を統括者とす 4.整備状況 る共同体(以下、「堀越グループ」という。 )で、人、交 新潟駅南口広場の第一段階整備は、2009年(平成21 通、自然が気持ちよく循環する「都市の庭」をコンセプ 年)9月に開催の「トキめき新潟国体」に向けて整備を トとした作品です。 進めました。2007年(平成19年)7月より着工し、部分 ごとに供用開始し、2009年(平成21年)9月に全面供用 3.当選案の事業の進め方、経緯等 最 優 秀 賞に選ばれた堀 越グループの作 品を基に、 開始となりました。 広場は、人、交通、自然が気持ちよく循環する「都市 2004年(平成16年)度に、都市計画素案を策定すると の庭」というデザインコンセプトの基に整備を進めてき ともに、基本設計が行われましたが、基本設計段階に ました。中央にプラザ(以下、「中央広場」という)を おいても市民参加の仕組みを取り入れています。これ 配置し、周辺の街路樹と連動したケヤキによる緑の天 までコンペにおいて市民意見参加に携わっていた方々 蓋を設けることで、新潟市の豊かな自然を象徴する空 の中から、自主的に手を挙げた方々から9名を選定し 間として、憩いの場を形成しています。また、駅舎の2 29 | 7 ■特集 -1 南口広場全体写真 階レベルと新潟駅南口広場を接続するペデストリアン 地熱を利用して融雪するため、電力の消費が無く、環境 デッキを設置しました。中央広場におけるイベント開 に配慮したものとなっています。 催時にはペデストリアンデッキの一部が物見台として 今後、鉄道高架化(連続立体交差事業)を完成させ、 の役割を果たすように設計されていることも特徴の一 その後、駅舎を挟んで南口広場と反対側の万代広場の つです。更に、バスバースやタクシー乗り場の上屋に 整備を着手し、万代広場と南口広場を繋ぐ高架下交通 冷却ミストを設置し、時刻、気温、湿度、風速など一定 広場も整備する予定です。 の条件になると微細な霧を噴霧し、夏季においてのバ これにより、鉄道直下にバス乗り場が設置されるこ スやタクシー待ちの市民に暑さを和らげる仕掛けを施 ととなり、鉄道とバスの乗り換え利便性の向上が期待 してあります。冬季には雪を考慮して、広場の歩行者 されます。 通行部分については地熱融雪システムを設置しました。 冷却ミスト 地熱融雪システム(中央広場の歩行者動線部分に埋設されている) 8 | 29 新潟駅南口広場の取り組みについて サッカーパブリックビューイングの様子 5.取り組みの効果・評価 車が日常的に飲食販売をしたり、ストリートミュージ 以前の新潟駅南口広場は駅舎から約90メートル離れ ていたため、お年寄りや障がい者にとっては必ずしも利 シャンによる演奏が頻繁に見られるような賑わいのあ る空間に生まれ変わりつつあります。 便性が高いものとはいえませんでしたが、今回の広場 また、地元プロサッカーチームのアウェイ試合には 整備で駅舎に隣接したため、歩行者の移動距離の問題 中央広場に大型モニターを設置し、パブリックビュー が緩和されました。 イングとして開 放することもあり、 数 百 人 規 模のサ また、旧新潟駅南口広場には無かった中央広場を活 ポーターが集まることもあります。 用することで、駅周辺における賑わいの創出がなされ 更に、駅きかく会議の有志を核に、地元の若手商業 ています。公共用地であっても賑わいに資するもので 関係者などが集まり、南口広場の利活用を促進するた あれば、民間企業にも出来るだけ活用してもらえるよ めにNPO法人を立ち上げ、イベントの実施や誘致など うな条例作りがなされています。その結果、移動販売 の積極的な活動を行っています。 南口広場オープニングイベント NPO法人が主催した「キャンドルナイトinにいがた2010 夏」 29 | 9 ■特集 -1 6.おわりに 駅前広場というと公共交通の利便性だけがクローズ アップされ、交通広場が中心になりがちですが、交通広 場だけでなく「利用する広場」を実現させたいという市 民の意見を新潟駅南口広場の設計に組み込んだことは 当市において画期的な試みでした。また、市民参加と 言うのは簡単ですが、その参加を支えていく仕組みを、 市民の自主的な発意により作り上げたことも意義深い ことであり、今後の万代広場・高架下交通広場整備の 際にも、市民意見を取り入れる仕組みが機能してくれ ることを期待しています。 新潟駅南口広場 所在 新潟市中央区花園一丁目他 地域・地区 商業地域、建ぺい率80%、容積率400% 面積 全体面積:約14,000m2、 バスターミナル:約2,800m2、 タクシー停留所:約560m2、 中央広場:約 1,350m2、 自家用車駐車場:約1,000m2 発注者 実施設計者 設計協力者 監理者 管理者 施工期間 中央広場 10 | 29 新潟市 堀越英嗣+堀越JV =堀越英嗣ARCHITECT5(堀越英嗣)、 アプル総合計画事務所(中野恒明、池田晃一)、 鳳コンサルタント環境デザイン研究所(堤肇、坂田健太郎)、 パシフィックコンサルタンツ(田井賢) 設備:総合設備計画(渋谷周策) 新潟市、堀越英嗣(堀越英嗣ARCHITECT5)、 中野恒明(アプル総合計画事務所) 新潟市 2007年7月∼ 09年9月 基本設計時の駅前広場全面図 ■特集 -1 ふるさとの顔 『おび通り』∼宿場町の新しい顔としての路ひろば∼ 静岡県島田市建設部 市街地整備課 1.はじめに 島田市は、2005年(平成17年)に旧島田市と旧金谷 町が、続いて2008年(平成20年)に旧川根町と合併し、 どを整備。多様な人・車の流れを促す都市基盤を構築 し、面的に、かつ魅力ある中心ゾーンを創出することを 目的とした事業です。 人 口10万 人 超の新たな市として出 発しました。 地 理 的には静岡県のほぼ中央に位置し、大井川と旧東海道 3.おび通りの概要 が交差する交通の要衝であり、また東海道五十三次の 当地区の中心市街地では、モータリゼーションの進 「宿場町」として栄えた大井川流域の中核都市です。市 展、商業活動の低下、少子高齢化等の諸状況により、本 内を通る旧東海道沿いには当時の面影を残す川会所、 来の中心市街地として持ち合わせるべき都市機能や商 札所、番宿などが保存され、伝統的な風情を残してい 業機能が失われつつありました。このため基盤整備と ます。産業面では古くから、南アルプスを源とする大 併せて商業活性化の一体的な推進が大きな課題となっ 井川を活用した水運とともに、豊富な森林資源を背景 ていました。 にした木材関連産業が発展、地域の主要な産業構造が そこで、市では1996年「ふるさとの顔づくりモデル 形成されました。また、江戸時代に広まったとされる 土地区画整理事業」の地区指定を受け、地元代表およ 茶の栽培が「やぶきた茶」の普及とともに、茶の有数の び有識者からなる「顔づくり委員会」を組織し、中央第 産地として、そのブランド名を全国へ発信しています。 三地区の骨格となるような道路とその沿道地区の基本 さらに郊外地等では良質な工業用水を求め、食品産業 計画および整備方針を定めることとしました。この基 などを中心とした企業立地もあり、近代的な商工業都 本計画については、 宿場町・島田の風情を伝える楽し 市としての一面もあります。 いくつろぎの街 をテーマに設計コンペを実施。全国か ら広く提案を募集し、応募24作品のうちの1つ(建設大 2.地区の概要 島田駅周辺ではこれまで島田中央第一地区土地区 画整理事業(1977年完了)を皮切りに、中央第二地区 臣賞)を選定しました。これをもとに、沿道住民との意 見交換会や「顔づくり委員会」との協議を重ね、基本計 画を策定しました。 (1985年完了)と市施行の土地区画整理事業を継続的 また、1997年、個性豊かで魅力的な街並みを形成する に行ってきました。島田中央第三地区土地区画整理事 ために地区計画を策定(中央第三地区計画区域図−参 業はこれら事業に隣接する位置に展開されました。当 照−おび通りはA地区:ふれあい空間形成地区) 。民有 事業は1985年に事業認可され、第一・第二地区で整備 地における適切な土地利用や建築物の整備について制 した市役所を中心とする行政、文化拠点との有機的な 限(壁面後退や和風建物)を設け、住民の協力のもと、 連携を図りつつ、特に商業拠点を形づくる道路を中心 良好な街並み景観形成への取組方法を確立。翌1998年 に、駅へのアクセス道路、隣接する地区との連絡道路な より第1期工事に着手、部分開通を経て2006年度まで整 29 | 11 ■特集 -1 提案された設計コンセプト (建設大臣賞) 〈㈱アーバンハウス都市建築研究所〉 おび通り L≒360m 中央第三地区計画区域 北側広場 各地区の境 南側広場 ふれあい空間形成地区 中心商業業務施設地区 都市型施設集積地区 コミュニティ商業地区 一般住宅施設地区 地区計画区域図(おび通りはA地区) 備を行い、2007年5月総延長約360m全区間開通となり 道路)で結ぶ形態となっています。 ました。通りの名称は全国公募を実施、700件を越す応 北側広場は旧本陣や御陣屋稲荷などの歴史的建物を 募数の中から、島田市が誇る日本最大奇祭島田大祭− 擁する地区で、歴史的建物の前庭にふさわしい「和」を ※ 帯祭り −にちなみ『おび通り』が選定されました。 ※1695年(元禄八年)から始まった祭りで、3年に1度実施。 300年以上の歴史をもつ祭り モチーフとした落ち着きのある広場デザインとなって いる。また子供の水とのふれあいを図る目的で、豊か な伏流水を水源とした「せせらぎ水路」を設置、川越し のまち島田を演出している。イメージは『静』。 4.整備方針と利活用 おび通りは『宿場町・木都・伏流水のまち島田∼く つろぎの路ひろば』をコンセプトに整備されました。 南側広場はJR島田駅からの来街者、歩行者を迎え入 れる賑わいのイベント空間、日常の市民のくつろぎの 場等、多様な機能に応えうる多目的広場となっている。 通りは南北に約360mの延長で、区間両端の南北に広 木都島田にふさわしく天然木を舗装材として多用、広 場があり、この広場を12mの歩道(自転車歩行者専用 場内にはウッドデッキも設け、イベント等で活用され せせらぎ水路で遊ぶ子供たち(北側広場) 天然木で整備した南広場でのイベント 12 | 29 ふるさとの顔 『おび通り』 ∼宿場町の新しい顔としての路ひろば∼ 夏の風物詩 ペットボトル灯篭 足元灯兼用のスツール ている。イメージは『遊』 。 た空間を印象付けています。 12mの歩道については、まず居心地良い歩行空間と 前述の通り北側と南側区間に分け施工を実施、2007 するため、「修景・滞留ゾーン」を中心に、 「自転車通 年に全線開通の運びとなりましたが、基本的な設計コ 行ゾーン」 、 「歩行者ゾーン」を両側に配置している。 ンセプトを極力崩さず施工を実施できたこともあり、 「修景・滞留ゾーン」ではベンチ、スツール、デッキ これまでに2000年に北側区間で、2007年には南側区間 などのストリートファニチャーを配置しています。材 で静岡県都市景観賞 優秀賞(いづれも「美しいまちな 料については、 「木都島田」にふさわしい木材を使用し、 み部門」 )を受賞、さらには2008年度都市景観大賞「美 子供からお年寄りまで誰もが快適に利用でき、サイズ、 しいまちなみ賞」をおび通り全線とその周辺地区とし 形状を多様化、照明機能も合わせもたせる等機能が限 て受賞することが出来ました。都市景観が行政と市民・ 定されないように工夫しております。 企業等の連携・協力を通して形成され、そこを舞台と 「自転車通行ゾーン」については、沿道の和風街並み 家屋とも調和するよう舗装材を御影石、燻し瓦を使用、 して市民活動が積極的になされている地区として評価 されたことは非常に大きな意義を持つものです。 自然素材を多用しております。色に関しては黒、白、燻 利活用状況として、せせらぎ水路は、日常の憩いの し色を基調としたモノトーンな色彩を採用し落ち着い 場としてだけでなく、子供花火大会やペットボトル灯 誰もが快適に利用できる木製ベンチ 29 | 13 ■特集 -1 ユニークなイベント「悪口コンテスト」授賞式 北側広場の満開の枝垂桜(シンボルツリー) しまだ元気市フリーマーケット 篭大会などにも利用されています。 また、上述の受賞理由ともなりますが、2002年以降、 5.おわりに 島田中央第三地区土地区画整理事業は工事が完了、 TMO㈱まちづくり島田が主体となり、 「しまだ元気市 現在清算業務を進めており、区画整理事業としての都 フリーマーケット」 (月1回)を開催し、通り全体を活 市基盤整備は一段落ついたところですが、周辺地区に 用、現在通算100回を超える定期的なイベントとして市 おいて新たに再開発事業も始動しており、中心市街地 民の間にも定着しています。また、毎年おび通り北端 活性化の機運が高まってきているところです。 に位置する御陣屋稲荷神社では、「愛するあなたへの悪 今後は、この施設・景観をさらに生かすようなソフ 口コンテスト」を全国公募するなど、南北広場を含め通 ト面の整備を行い、地元商業者との協調、再開発事業 り全体を活用したユニークで多彩なイベントが多数開 との連携を図りながら、「おび通り」が、地域の商業・ 催され、沿道の賑わいを創出しています。 文化の拠点的な存在となり、ひいては島田市の中心市 このようにおび通りは景観としてだけでなく、まち づくりに活かすことのできる施設となっています。 「おび通り」の全景 14 | 29 街地の活性化の象徴となる、もうひとつの新しい『顔』 となることを目指していきます。 ■特集 -1 大阪道頓堀川人道橋「浮庭橋」(2005年公開コンペ ̶ 2008年12月完成) 大阪市建設局 道路部 橋梁担当 担当係長 大野 良昭 はじめに ています。(写真1) 道頓堀川は、大阪ミナミの中心部を東西に流れ、東 この一環として、湊町地区に人道橋を架橋すること 横堀川から木津川までの延長約2.7kmで、1612年(慶長 となり、そのデザイン等については、新たな大阪の新名 17年)から町衆が私財を用いて開削工事を行い、1615 所となるよう広くアイデアを公募することとしました。 年(元和元年)に完成しました。 (図1) 今回は、そのデザイン等の決定について紹介します。 当時、道頓堀川周辺は道頓堀五座と称される芝居小 屋が立ち並び歓楽の町として発展し、明治の中頃まで、 1.浮庭橋整備の背景 道頓堀川では芝居見物にあわせて屋形船や茶船が利用 南側の湊町地区では、平成8年に開業したOCAT(大 され、川岸に軒を連ねた芝居茶屋は、紋提灯をもって情 阪シティエアーターミナル)を起点に民間ビルが建設 緒のある風景をつくりあげていました。 され、2002年(平成14年)には、コンサートホールや多 目的イベント施設、FM大阪がある湊町リバープレイス 大阪市では、1995年(平成7年)から、道頓堀川水辺 がオープンし、にぎわいを集めています。(図2) 整備事業に着手し、高潮防御や潮の干満で変化する水 位を一定に保つ機能などをもつ水門を建設し、水面に また、北側の南堀江地区では地区計画による民間開 近く親水性の高い川沿いの遊歩道整備、さらには沿川 発が行われており、道頓堀川の沿川に飲食施設である の大規模開発との一体的な水辺空間づくりを実施し、 「キャナルテラス堀江」が2008年(平成20年)7月に東 水辺空間の積極的な利用を促進し、川とまちを一体化 側が、つづいて2009年(平成21年)2月には西側がオー し、にぎわいあふれる空間の創出を目指し整備を図っ プンし、今後、その北側には、大型複合施設の整備が計 大阪 (梅田) 大川 大阪市役所 堂島川 土佐堀川 大阪城 東横堀川 大阪ドーム 図2 湊町地区 道頓堀川水門 道 頓 堀 川 浮庭橋 湊町 尻無川 木津川 安治川 御堂筋 東横堀川水門 遊歩道 整備 区間 難波 図1 道頓堀川周辺位置図 写真1 とんぼりリバーウォーク 図3 南堀江地区 完成予想図 29 | 15 ■特集 -1 図4 最優秀作品1 図6 優秀作品1 図5 最優秀作品2 図7 優秀作品2 図8 特別賞1 画されています。 (図3) さらに、北側の堀江一帯には、新しい店が続々とオー プンし、立花通り(通称:オレンジストリート)を中心 に脚光を浴び、道頓堀川水辺整備事業とともに、さら なるミナミのにぎわい創出に向けた交流拠点を目指し、 地区ごとの開発と連携したまちづくりが展開されてい ます。 図9 特別賞2 3.デザインコンペ 浮庭橋のデザインコンペの実施は、大阪市の橋梁と しては3例目で、一般公募により実施しました。 〔過去の実施橋梁:大江橋、淀屋橋1935年(昭和10 年)完成、戎橋2007年(平成19年)完成〕 提案募集においては、人道橋の規模、橋と周辺施設 との接続、河川法上の条件、桁下のクリアランス、にぎ 浮庭橋は、湊町、南堀江両地区を結び、道頓堀川水 わいスペースの配置例についての条件明示を行った上 辺遊歩道とも安全かつ快適に回遊できる動線を確保し、 で、デザイン性、景観性、シンボル性、にぎわいスペー 周辺の地域開発の促進や、地域の活性化に寄与するこ スのアイデアなどについて審査しました。 とを目的とする他に、単に歩くだけの橋ではなく、にぎ (1)公募期間 2005年(平成17年)4月∼ 5月 わい・たたずみができ、地域のランドマークとなるこ (2)応募数 60作品 とを想定しました。 (3)審査ならびに結果 審査は、三輪利英名誉教授(福山大学)を委員長と 2.実施案の決定手法 一般的にデザインコンペを行った場合、デザイン性、 景観性を重視しているため、実施設計を行うと部材断 した「 (仮称)道頓堀川人道橋デザインコンペ審査委員 会」で審査し、最優秀作品2作品、優秀作品2作品、特 別賞2作品を決定しました。(図4 ∼ 9) 面等によりイメージが異なったり施工困難なものがあ るなどの課題が知られています。浮庭橋については、 4.設計提案コンペ デザインコンペと公募型設計提案コンぺの2段階に分 設計提案コンペは、参加希望者は参加表明書を提出 けコンペを行い実現性のある実施案を決定することと し、その後、デザインコンペ最優秀作品2作品より、1 しました。 作品を選択し、その作品イメージを大きく損なわない まず、第1段階のデザインコンペについては、1作品 を選定するのではなく数作品を優秀作品等として選定 することとし、結果、最優秀作品として2作品を選定し ました。第2段階の公募型設計提案コンペでは、デザイ ンコンペの最優秀2作品について、応募者に1作品を選 び性能、機能、景観性等について提案を求め、実施案を 特定しました。 16 | 29 範囲で、性能、機能、景観性及び、橋上の空間利用等に 対して、設計提案書を提出します。 (1)公募期間 2005年(平成17年)12月∼ 2006年(平成18年)2月 (2)審査ならびに結果 提出された設計提案書については、古田均教授(関 西大学)を委員長とした「 (仮称)道頓堀川人道橋技術 大阪道頓堀川人道橋「浮庭橋」 たたずみスペース 主塔 メインデッキ サブデッキ バックステイケーブル 支点部 図10 実施案鳥瞰図 図11 構造概要図 【橋梁諸元】 審査委員会」で内容を審査した結果、アバン・日建設 ・橋梁形式 内藤俊彦氏、コンセプト:浮かぶはらっぱ)が特定され ました。 (図10) ・橋 長 76.3m ・幅 員 4.0m ∼ 6.2m ・位 置 大阪市浪速区湊町1丁目∼西区南堀江1丁目 ・事業期間 5.橋名の決定 鋼吊橋(人道橋) (使用鋼材 鋼桁319t、主塔226t) 計シビル業務委託特別共同企業体の提案(デザイン者: 2004年度(平成16年度) ∼ 2008年度(平成20年度) ・事 業 費 橋名については、市内在住、通勤、通学されている方 約10億円 (うち4.5億円は株式会社住友倉庫よりの寄附) を対象に一般公募を実施し(平成20年9月∼ 10月) 、応 募数343件の中から選考委員会(委員長:古田均関西 ・橋上には、通路以外にたたずみや眺望などができる 大学教授)の審査を経て、決定しました。橋梁の名称 ベンチや芝生を植えた約300m2 のたたずみスペース (橋名)を公募で決定したのは、大阪市では、夢舞大橋 (港湾局管理)に次いで2橋目の試みです。 を設置しました。 ・桁側面を、ヘデラ(ツタ植物)で覆い、 「浮かぶはらっ ぱ」をイメージしています。 (1)機能、修景面 ・湊町リバープレイスの大階段や道頓堀川水辺遊歩道 の円形ステージを、橋の上から眺望でき、水辺空間を ゆっくり散策できるように川を斜め45度で渡ってい ます。 ・夜間照明については、周囲とは異なる白色照明を用 いることによって、「浮かぶはらっぱ」を表現してい ます。 (2)構造面 ・本橋は、斜め45度の吊り構造部材のメインデッキと 川を直角に渡るサブデッキで構成しています。 ▲ 6.橋の特徴 ▲写真2 完成写真 29 | 17 ■特集 -1 ・地震時の水平力等に対しては、サブデッキ支点部の 水平支承(橋軸方向は免震機能、橋軸直角方向は固 定)と鉛直支承で負担する構造となっています。 ・ケーブル定着部(バックステーケーブル)は、地盤 を考慮し主塔基礎と一体構造の地中梁に定着してい ます。 ・吊橋特有の風や歩行による揺れ対策として、上部工 の自重を大きくすることにより対応しています。 7.供用開始 本 橋は、2006年( 平 成18年 )12月に現 地 着 工し、 写真3 橋面 2008年(平成20年)12月20日に供用開始しました。 供用開始日には、午後1時から現地において「浮庭 橋」の命名者への表彰式と橋名板の除幕式を執り行い、 午後2時から一般の供用を開始しました。 〔写真2に完 成(昼間)写真3に完成(橋面) 、写真4に完成(夜間)〕 8.おわりに 浮庭橋周辺は、現在、昼・夜間景観性に優れた空間 として多くの情報誌で紹介され、多くの人に利用して いただいております。 浮庭橋が、今後さらに、にぎわいスペースとして、ま た地域のシンボルとして地域に貢献することを願って 写真4 夜間の状況▲▼ 18 | 29 ▼ います。 ■特集 -1 くまもとアートポリス「熊本駅前広場」 熊本駅東口駅前広場(2007年指名プロポ ̶ 2011年3月暫定整備 ̶ 2018年最終完成予定) 熊本駅西口駅前広場(2008年公開コンペ ̶ 2011年2月竣工予定) 熊本県土木部 建築課 はじめに の伊東豊雄コミッショナーのもと「学びつつ創る。造 くまもとアートポリス(KAP)は、熊本県下を舞台 に豊かな自然や歴史、風土を生かしながら、後世に残り りつつ育む。」をテーマに、第3期のくまもとアートポリ スを推進しているところです。 得る文化的資産としての優れた建造物を造り、人々の 都市文化、建築文化などへの関心を高め、地域の活性 熊本駅周辺の整備状況 化に資する熊本独自の豊かな生活空間を創造するとと 熊本県では100年に1度の大事業である九州新幹線 もに、世界へ向けて文化の情報発信基地「熊本」を目指 の全線開業を本年3月12日に迎えるにあたり、現在、熊 すことを目的として、1988年から始まりました。 本駅周辺において道路や建物など、さまざまな工事が これまで、4代の知事にわたり四半世紀近く続いてい 急ピッチで進められているところです。また同時に、 るこの取り組みは、全国でも初の試みであり、熊本独自 2016年度の完成を目指してJR鹿児島本線の連続立体交 の個性的で魅力ある文化の香り高い生活空間の創造に 差事業(高架化)工事が、上熊本駅と熊本駅を含む延長 大きく役立っています。現在、日本を代表する建築家 約6kmの区間で、新幹線工事と並行して進められてい 熊本駅周辺の連続立体交差事業 1 現状(2010年7月現在) 3 豊肥本線高架切替時(2016年度) 2 新幹線開業時(2011年3月) 4 東口駅前広場完成時(2018年度) 29 | 19 ■特集 -1 るところです。 そのような中で、KAPプロジェクトとして整備中の 「熊本駅東口駅前広場(暫定整備)及び関連施設」及び 「熊本駅西口駅前広場」も、新幹線開業に併せて供用開 始するため、工事も最終段階を迎えたところです。 なお、2016年度の高架化後に、現在の在来線駅舎を 約40m後退した位置に建て直し、その後東口駅前広場 事業主体:熊本県 建設場所:熊本市春日1、2、3丁目 対象施設:東口駅前広場(暫定整備)、立体横断施設、 市電熊本駅前電停 選定方式:指名プロポーザル 公開の場で、指名した8者からのプレゼンテーション、審査 員からのヒアリングの後、総括質疑を行い、設計者を選定。 審査員長:伊東豊雄(KAPコミッショナー) (完成形)が2018年度までに整備される予定となってい 審 査 員: 桂 英昭(KAPアドバイザー) るため、東口駅前広場は新幹線開業後の8年間、暫定形 末廣香織(KAPアドバイザー) で供用されることになっています。 曽我部昌史(KAPアドバイザー) 公開審査:2007年11月17日 当選者: 西沢立衛 これまでの経緯 2005年6月に公表された、 「熊本駅周辺整備基本計画」 で位置づけた「都市空間デザイン基本方針」に基づき、 設計コンセプト 広場に集まる、市電などの交通機能と人の流れを幾 熊本駅周辺における良好な都市空間(街並み)形成を つかに分けて、その上にやわらかな雲形のおおらかな 図るため学識経験者や専門家等で構成された「熊本駅 屋根がかかる。この複数の屋根は、強い日差しや大雨 周辺都市空間デザイン専門家会議」 (現在は熊本駅周 から広場の利用者を守り、お互いに関係し合いながら 辺都市空間デザイン会議)を設置し、都市空間デザイ 雲のように浮かび、広場全体を構成し、様々な活動が出 ン計画の実効性を図るとともに、デザインの統一性や 来る空間をつくることができる。透明感のある屋根空 長期にわたるデザインの一貫性を図る制度を構築しま 間により、駅前広場全体が一つの公園のように散歩を した。また、熊本駅を整備するにあたって、駅前広場 したり、くつろいだり出来るような、新しい都市空間を 及びその周辺を単なる街路整備ではなく駅を中心とし めざしている。 たエリアで、良好なデザインでの整備を行うこととし、 選定理由(伊東豊雄コミッショナー) KAPとの連携がはじまりました。 『雲のような屋根』というのは非常にニュートラルで 爽やかな提案。一方でインパクトがあり、他の駅には 駅前広場の設計者選定(※敬称略) ない空間の質を創り得る。フレキシブルな形態なので、 □熊本駅東口駅前広場(暫定整備) 長丁場にわたってデザインを続けられる中で、様々な 県が事業主体である東口駅前広場は、様々な関係者 デザインの関係にも対応しうることを重視した。また、 等と調整を行いながら進めていく必要があるため、指 今後の協議に柔軟に対応していくと言う姿勢を評価し 名型プロポーザル方式で設計者を決定することとしま た。今後の厳しい条件に、十分対応できる設計者であ した。 ると判断した。 東口駅前広場プロポーザル状況 現在の駅周辺整備に関する相関図 20 | 29 くまもとアートポリス「熊本駅前広場」 東口駅前広場プロポーザル当選案 事業主体: 熊本市 □熊本駅西口駅前広場 熊本市が事業主体である西口駅前広場は、市が駅周 辺を副都心として位置づけており、魅力的な都市空間 にするために東 口に引き続いてKAPに参 加しました が、西口広場は整備条件が比較的明確であり、市民参 建設場所: 熊本市春日3丁目 対象施設: 熊本駅西口駅前広場 規 模: 5,700m2 選定方式:公開コンペ 第1次審査で5者を選定。第2次審査では、公開の場で、提 加型のまちづくりという市政を反映し市民の意見も集 出者からのプレゼンテーション、審査員との質疑応答を行 約して行うため、提案内容がわかりやすい公開コンペ い、設計者を選定。 で設計者を決定することとなりました。市民から意見 審査員長: 伊東豊雄(KAPコミッショナー) 募集を行うため、設計者選定過程において公開コンペ 審 査 員: 桂 英昭(KAPアドバイザー) 応募作品を全て一般に公開し、審査結果の公表につい ても公開の場で行うなど、駅前広場整備に対する地域 の高い関心に対応するものとしました。 末廣香織(KAPアドバイザー) 曽我部昌史(KAPアドバイザー) スケジュール 要項発表: 2008年1月25日 提出期限: 2008年3月14日 応募作品の公開及び市民の意見募集 2008年3月17日∼ 3月19日 西口駅前広場公開コンペ当選案 29 | 21 ■特集 -1 1次審査: 2008年3月20日(5作品選定) 工事発注時の基礎データ 2次審査: 2008年5月10日(公開) □熊本駅東口駅前広場(暫定整備) ※データは、仮設、外構等を除く大屋根部分のみを記載(工事期間を除く) 。 応募総数: 205点(意見総数:36件) 当 選 者: 佐藤光彦 設計コンセプト ・半屋外の公園のような駅前広場 ・駅と街の間をゆるやかにつなぐ ・機能を集約したルーフとスクリーン ・周囲の建築群をまとめるデザイン 審査員長講評(伊東豊雄コミッショナー) 最優秀案は、東口で提案された『屋根』に対し『壁』 が一つのシンボルとなるような面白い対比を見せる良 い提案である。全国的にも他に例がない新しい提案に なっていて、ここから『熊本らしさ』が新たに生まれて くるのではないかと思っている。 □東口駅前広場の整備状況(2010年10月現在 工事中) 熊本の強い日差しや大雨から広場利用者を守る大きな屋根 工事名称: 熊本駅東口駅前広場上屋新築工事 設 計: 建築 西沢立衛/西沢立衛建築設計事務所 構造 アラン・バーデン/ストラクチャード・エンヴァイロンメント 施 工 者: 鉄建建設株式会社 工事期間: 2009年8月∼ 2011年3月 総工事費: 263百万円 構 造: 鉄筋コンクリート造、鉄骨造 基 礎: 鉄筋コンクリート造 直接基礎(布基礎) 階 数: 1階 屋根面積: 1054.34m2 建物高さ: 6.201m 仕 上: 柱 鉄骨柱+貼紙防止塗装 屋根版 プレストレストコンクリート造+塗膜防水 □熊本駅西口駅前広場 工事名称: 熊本駅西口駅前広場上屋建築外工事 設 計: 建築 佐藤光彦/佐藤光彦建築設計事務所 構造 小西泰孝/小西泰孝建築構造設計 施 工 者: 株式会社豊工務店 工事期間: 2010年3月∼ 2011年2月 総工事費: 240百万円 構 造: 鉄筋コンクリート造、鉄骨造 基 礎: 独立基礎、布基礎 階 数: 1階 屋根面積: 1282.24m2 建物高さ: 5.986m 仕 上: 単独柱 スチールパイプ Φ165.2 t = 19 複合鋼板壁 (歩道側)スチールプレート t = 6.0 (ロータリー側)スラブプレート APA45 t = 4.5 屋根 スチールプレート t = 4.5 +防錆塗装の上塗膜防水 ※柱・複合鋼板壁の鉄骨部分は、溶融亜鉛メッキドブ漬け+リン酸 亜鉛化成皮膜処理+ 2UE(2液形ポリウレタンエナメル塗り) 大屋根の下へ市電を通すため、市電の軌道は従来のセンターリザベーションから サイドリザベーションに切り換えられた 大屋根は14本の柱で支えられ、屋根下には利用者が安心してゆったりとくつろげる開放的な空間を創出している。また屋根厚は40cmと薄く、軽快なデザインとなっている 22 | 29 くまもとアートポリス「熊本駅前広場」 □西口駅前広場の整備状況(2010年12月現在 工事中) 屋根にあいた穴から2011年3月オープンの新幹線駅舎を見上げる 熊本の豊かな水資源をイメージさせる水のモニュメント。手前の屋根の下に はウォーターステーション(冷水器)が設置される 機能を集約したルーフ(屋根)とスクリーン(壁)により半屋外の公園のような空間となっている 壁で囲まれた内側はバスやタクシーのロータリーとなっている JR在来線熊本駅舎 なお、新幹線駅舎とともに熊本駅を形作るJR在来線 でいる妹島和世氏とともに(SANAAで受賞)建築界の ノーベル賞といわれている米プリツカー賞を受賞され、 熊本駅舎は、JRの発注により2010年に安藤忠雄氏の設 大屋根の軽快なデザインと相まって、県民への認知度 計で熊本城の石垣「武者返し」や長塀のイメージを取 も急上昇しているところです。 り入れたデザインが完成していますが、東西の駅前広 場と駅舎のデザインに関して伊東コミッショナーから 「どこにもない素晴らしい駅・駅前広場空間ができる。 」 との発言があり大いに期待されています。 おわりに 東口駅前広場では、大屋根部分が市電の電停として 2010年4月から供用開始されており、駅から市街地への 乗換えが便利になったとの声も聞かれています。また、 2010年5月には設計者の西沢立衛氏が、ユニットを組ん 熊本駅舎イメージ図 29 | 23 図書紹介 「日本の美しいまちなみ事例」vol.1、vol.2 (財)都市づくりパブリックデザインセンター編集、A4判、全カラー、本体は無料(送料別) 本書は、平成13年∼ 22年の10年間にわたり実施した 都市景観大賞「美しいまちなみ賞」に選定された地区 の都市景観を紹介するものです。2分冊に編集したもの で、vol.1は、前期5年(平成13年∼ 17年)に受賞した地 区(46地区)について、vol.2は、後期5年(平成18年∼ 22年)に受賞した地区(44地区)について、それぞれ取 れもわが国の都市づくりの模範となる素晴らしいもの ばかりです。 都市デザイン、都市景観、まちづくり関係者並びに 美しいまちなみに関心のある方々等にお薦めします。 図書本体は無料(但し送料別)で配布しております。 ご希望の方は下記へご連絡ください。 りまとめています。 内容は、各受賞地区ごとに、地区の概要、都市景観の 形成・保全に関する取り組みの経緯などを整理すると ともに、豊富な写真等によって紹介しています。いず (財)都市づくりパブリックデザインセンター TEL 03-6912-0799 E-mail [email protected] 「日本の美しいまちなみ事例 vol.1」 「日本の美しいまちなみ事例 vol.2」 (財) 都市づくりパブリックデザインセンター編集 (2010年2月発行、A4判147頁、全カラー) 本体は無料(送料別) (財) 都市づくりパブリックデザインセンター編集 (2011年2月発行、A4判172頁、全カラー) 本体は無料(送料別) ■ vol.1における掲載都市(46地区)一覧 ■ vol.2における掲載都市(44地区)一覧 北海道・東北・関東地方 都道府県 番号 市町村 地 区 名 受賞年 01 函館市 都市景観形成地区 青森県 02 黒石市 こみせ通り地区 H18 優秀賞 山形県 03 04 金山町 金山地区 会津若松市 七日町通り地区 H22 H22 大 賞 優秀賞 H19 優秀賞 福島県 H22 賞 北海道 優秀賞 05 三春町 大町地区 栃木県 埼玉県 06 07 栃木市 川口市 歴史的町並み景観形成地区 リボンシティ地区 千葉県 08 浦安市 日の出・明海・高洲地区 H21 優秀賞 東京都 09 10 香取市 葛飾区 佐原地区 葛飾柴又帝釈天参道周辺地区 H18 H22 優秀賞 特別賞 11 国立市 大学通り沿道地区 H18 優秀賞 12 13 横浜市 横浜市 中区山手町地区 帷子川親水緑道地区 H22 H20 優秀賞 特別賞 神奈川県 H21 H19 大 賞 優秀賞 北陸・中部地方 都道府県 番号 市町村 地 区 名 受賞年 賞 新潟県 14 15 長岡市 村上市 栃尾表町地区 旧町人町・旧武家町地区 H19 H20 特別賞 大 賞 富山県 16 富山市 総曲輪地区 H21 特別賞 石川県 福井県 17 18 金沢市 大野市 武蔵ヶ辻第四地区 寺町通り地区 H22 H21 特別賞 優秀賞 長野県 19 長野市 ぱてぃお大門 蔵楽庭地区 H20 優秀賞 岐阜県 20 21 南木曽町 中津川市 妻籠地区 中山道馬籠地区 H22 H21 優秀賞 優秀賞 静岡県 22 23 浜松市 島田市 東地区 中央第三地区 H21 H20 特別賞 優秀賞 愛知県 24 豊田市 桜町地区 H19 優秀賞 三重県 25 伊勢市 神宮参道地区 H19 優秀賞 受賞年 賞 H18 優秀賞 01函館市 02黒石市 凡 例 近畿・中国地方 都道府県 番号 市町村 地 区 名 滋賀県 26 彦根市 大阪府 27 28 近江八幡市 北之庄町周辺地区 岸和田市 本町地区 H18 H21 大 賞 優秀賞 29 富田林市 富田林寺内町地区 H21 優秀賞 兵庫県 30 31 尼崎市 伊丹市 武庫之荘 4 丁目地区 伊丹酒蔵通り地区 鳥取県 32 鳥取市 夢街道・鹿野往来 城下町地区 H20 優秀賞 岡山県 33 34 津和野町 倉敷市 環境保全地区 倉敷美観地区 H18 H22 優秀賞 大 賞 35 真庭市 勝山町並み保存地区 H21 大 賞 36 宇部市 中央町三丁目地区 H19 優秀賞 山口県 本町地区 H18 H20 大 賞 優秀賞 特別賞 特別賞 優秀賞 03金山町 17村上市 四国・九州・沖縄地方 都道府県 番号 市町村 地 区 名 受賞年 37 内子町 八日市・護国地区 福岡県 38 39 福岡市 北九州市 アイランドシティ照葉のまち地区 紫川マイタウン・マイリバー整備地区 H18 H19 優秀賞 大 賞 40 八女市 八女福島地区 H20 優秀賞 41 42 雲仙市 山鹿市 神代小路地区 豊前街道山鹿温泉界隈地区 H18 H19 大 賞 大 賞 43 南小国町 黒川温泉地区 H20 大 賞 44 出水市 出水麓地区 H21 優秀賞 長崎県 熊本県 鹿児島県 H19 04会津若松市 賞 愛媛県 優秀賞 05三春町 16長岡市 18富山市 14長野市 19金沢市 10葛飾区 26彦根市 12横浜市中区 23豊田市 22島田市 31伊丹市 30尼崎市 27近江八幡市 21浜松市 24伊勢市 34倉敷市 29富田林市 33津和野町 28岸和田市 39北九州市 36宇部市 38福岡市 40八女市 43南小国町 41雲仙市 42山鹿市 44出水市 24 | 29 37内子町 08浦安市 15南木曽町 20中津川市 35真庭市 07川口市 09香取市 11国立市 25大野市 32鳥取市 06栃木市 13横浜市旭区 vol.29 編集後記 本号は、コンペやプロポーザル方式の採用によって魅力的な公共空間を実 現した事例を取り上げました。 多様なアイデアや高質なデザインを得るという面で、魅力的なまちづくりの推 進にとって一つの有効な手段であり、こうした手法は今後ますます普及していく ように思われます。 こうした中で当財団では、国土交通省「まちづくり月間」の関連行事の一つ として毎年「まちの活性化・都市デザイン競技」 (以下、コンペ)を実施してい ます。これは先ず対象地区を全国の自治体から公募し、立候補のあった中から 選定します。この対象地区について、地元自治体と協力しながら地域の実情に 応じた計画課題と計画条件を設定し、それに応えるための様々なアイデアと都 市デザインについて実現手法も含めた提案を広く一般から募集するものです。 応募作品は、審査委員会において審査され、優秀な作品について表彰(国 土交通大臣賞ほか)します。 これまでに(平成10年度から平成22年度)13都市で実施してまいりました。 コンペの成果は、各都市(対象地区)のまちづくりに様々な形で活用されてい ます。 同コンペは今後(平成23年度以降)も引き続き実施していく予定です。コ ンペ実施地区公募の受付は常時行っていますので、希望される自治体は、当 財 団 へご連 絡ください。コンペに関する詳 細は、当 財 団 のホームページ (http://www.udc.or.jp)をご覧ください。 「都市+デザイン」第29号 表紙写真 場 所:熊本駅西口駅前広場 写真提供:熊本市 編集・発行 財団法人 都市づくりパブリックデザインセンター 〒112-0013 東京都文京区音羽2-2-2 アベニュー音羽206号 TEL:03-6912-0799 FAX:03-6912-0930 表紙、レイアウトの基本デザイン 株式会社 GKグラフィックス 印刷 有限会社 サン・ネット 〒162-0801 東京都新宿区天神町22-3 ルート神楽坂ビル5階 TEL:03-3269-6696 FAX:03-3269-6697 発行日 2011年3月 古紙配合紙を使用しています。
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