フランス民主共和国海軍装甲戦列艦〈篠宮《アルザス》悠〉

フランス民主共和国海軍装甲戦列艦〈篠宮《アルザス》悠〉 元ネタ:カクテル・ソフト「CANVAS∼セピア色のモチーフ∼」篠宮悠
■その経緯
隆山条約で不当な制限を受けたフランスが1922年度に建てた長期計画における最後の装
甲戦列艦(パーティマン・ド・リューヌ)。 資料によってはイタリアの〈霧島《ローマ》佳乃〉
級やドイツのH級に対抗する戦艦と書かれているがこれは違う。基本的には隆山条約へのフラ
ンスとしての最終回答である。 そのため最初から46センチ砲とそれに対する対応防御を
持った戦艦として設計され、1940年4月の新艦隊建造計画で承認、起工準備に取りかかった
がどう考えても遅すぎた。すぐにフランスは降伏して起工は中断。その後ヴィシー政府とドイ
ツの交渉が実り大西洋沿岸地域が返還されるとともに新艦隊建設計画も改めて推進されること
となった。ただし「共同行動も頭に入れて欲しい」というドイツ側の要望が入ったが。 新艦隊
建造計画の設計者で〈君影《シャンプレン》百合奈〉級も設計したティルス・ポアゾンはこれを
よく守り、また建造の効率化も図って設計している。
■最強を目指して
〈篠宮《アルザス》悠〉は主砲として〈ルミラ《ジャン・バール》〉等と同じ49口径46セン
チ3連装砲を搭載(ただし装甲はより厚い)、配置は前2基、後1基いうオーソドックスなものと
されたのは好事家から見ると意外だが、4連装砲塔は大口径になればなるほど欠点である幅の広
さと重さが利点を覆い隠す点を忘れている(*注1)。性能は最大仰角40度、初速810m、射
程48700m、砲弾重量1522kg、発射速度毎分2発。「スーパーチャージ」
(*注2)に
よる水平弾道射撃と重量弾による遠距離射撃を使い分けるフランス独特の射撃システムにより、
どの距離でも非常な威力を持つことに成功している。 ちなみにこの砲の砲身はドイツのH級
と同じもの(砲塔はもちろん違う)であり、消耗品だが造りにくい砲身を共用することで各国の
負担を減すことに成功している(*注3) 副砲(15.2センチ半自動砲)は最初前後の主砲と
背負い式に1基づつ、艦橋左右に2基の4基だったが、戦訓による対空火器増強によって左右の
副砲は廃止され、10センチ連装高角砲が階段状に装備されている。 防御も元々重防御で定評
のあるフランス艦らしく充実巧妙。400ミリ装甲板によるインターナル・アーマー(20度傾
斜)と機関部で170ミリ、主砲周り部分は200ミリの水平甲板装甲(上甲板に60ミリと2
0ミリのスプリンター防御装甲付き)を張り巡らせ、水中防御は7層の防御隔壁とその間に重油
タンクと発泡性エボナイトを充填するフランス独自のもの。元々フランス艦の舷側防御と水中
防御の強固さには定評があったが彼女はそれの頂点に立てる存在であり、バランスの取れた性能
とともに「単独では攻略不能」と枢軸側に言わしめた。 艦影としては前から背負い式にやや離
して配置された前部砲塔、その後ろに副砲、
〈ルミラ《ジャン・バール》〉とほぼ同じ箱型艦橋(た
だし背が少し高い)、その後に煙突が二本。建造当初はファンネル・キャップを付けた直立煙突を
そのまま立てていたが、建造途中で第2煙突は上部に副砲兼予備主砲測距儀を載せたマック構造
に変更、煙突間には爆風を避けて短艇を格納。続けて後部副砲と後部主砲。最後に搭載機用のカ
タパルトとクレーンを置く。 癖のあるフランス艦の中では意外とオーソドックスで、
〈高瀬《大
和》瑞希〉級の設計で最後まで検討された案(46センチ3連装3基、64000トン)に近い
(ただしこちらの煙突は1本)艦型を持っている。 新艦隊建造計画によりサン・ナゼールの大
ドックで建造されたが、2番艦の〈パトリシア《ロレーヌ》メイフィールド〉は建造中止、
「幻の
戦艦」として資料にその存在を残すだけとなったいる。 なお、彼女の艦名はドイツ側から「〈フ
ランス〉や〈サン・ペリーヌ〉(フランスの守護聖女)」に改名すべきでは?という意見があった
が、当のフランスは〈篠宮《アルザス》悠〉で押し通してしまった。1940年の降伏時からつ
1
いに返ってこない領土であるアルザス・ロレーヌ地方。その名を冠した彼女は「帰らざる想い出」
を常に背負って戦い抜くことになる(*注4)
・注1:それを知らない一部の戦記作家は40センチ5連装砲(!)3基版の彼女を出して
いる。造船とは受けを狙うものではない。
・注2:発射薬を通常の倍使うことにより初速を高める技術。ただし命中率がかなり落ち
る。
・注3:46センチ砲身はドイツ・フランス共用、42センチ砲身はドイツ・イタリア共用
・注4:もっともアルザス・ロレーヌ地方は元々ドイツ(神聖ローマ帝国)領だったものを
フランスが徐々に自国領土にしたものであり、「固有の領土」から言えばドイツ側になる。
■ノバスコシア南西沖にて
1948年1月に完成した〈篠宮《アルザス》悠〉はシリア攻防戦で英国艦隊相手に僅かな兵
力をもって陥落の日まで戦い抜いた勇将ピエール・グートン中将が座乗。エタナリス・マルザン
を初代艦長としてカナダ戦線に出撃することになった。艦内の雰囲気も士気も高く特にコート
ジボアール産のココアは乗員に非常に好評。フランスの象徴としての役目を充分に果たせると
誰もが思っていた。 同盟国ドイツ海軍は外洋海軍に変貌しつつあるが、栄光と歴史に彩られた
フランス海軍はとうの昔から外洋海軍。その歴史を復活させ、世代を超えて教えなければならな
い、そしてフランス海軍の全艦艇に金文字で刻まれた「名誉・国家・勇気・規律」この意味を教
育せよ。カナダ出撃前にそうド・ラボルト海軍総司令官は訓示した。 グートン自身は反英主義
者ド・ラボルトの芝居がかった演説よりも欧州最強戦艦(この時点で)たる〈篠宮《アルザス》悠〉
を指揮して戦えることの方がありがたい。 さてプリンス・エドワードアイランドを占領し、ノ
ヴァスコシアとニュー・ブランズウィックに英加軍を分断させる作戦はドイツの合衆国侵攻作戦
「ヴァレンシュタイン」に対し「リシュリュー」と呼ばれた。 作戦の方は1948年5月13日
に開始、ドイツの秘密兵器A10中距離反応弾道弾による先制攻撃により合衆国は大混乱に陥
れ、強大な合衆国艦隊の方も潜水艦による港湾攻撃によりかなりの部分を出港不能にすることに
成功。分断作戦側も制空権を握り母艦航空隊も使えるフランス側の優勢で進む。14日には
シャーロットタウンを占領、16日にはパグウォッシュから上陸したヴィシー・フランス軍とア
マーストから上陸したドイツ軍が地峡中央部で握手。これによりデンプシーの英加主力軍はノ
バスコシア半島に孤立。絶望的な戦いへと進むことになる。 17日午前、グートンの艦隊は
ケープブレトン島から大西洋沿岸に回りこみ、天然の良港で再重要拠点のハリファックスを占領
すべく沖合に展開。〈君影《シャンプレン》百合奈〉
〈御薗《デスタン》瑠璃子〉からの攻撃隊が
爆撃を開始した。そして反撃する英空軍機と空中戦を展開、午後には艦載機の上空援護の元〈ル
ミラ《ジャン・バール》〉と〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉による艦砲射撃を開始した。特に46
センチ砲を持つ〈篠宮《アルザス》悠〉
〈ルミラ《ジャン・バール》〉の威力は凄まじくハリファッ
クス市民と英加軍にその威力を心底から教育させている。 英側も隠していた〈椎名《MTB》
繭〉隊を出したり航空攻撃で反撃をかけるが、北側にいる〈菜乃花《ベアルン》恵理〉と〈メイ
フェア《ジョッフル》〉級3隻を含めたフランスの6空母からの艦載機の「数」
(総計約270機)
はいかんともしがたく勇戦の末空軍機は潰滅、
〈椎名《MTB》繭〉隊も対空自動砲の一斉水平射
撃の前では「みゅー」とばかり逃げまわるしかなかった。 夜も暮れた2350分、グートンは
艦載機を収容させて艦隊を反転、ニューファンドランドに戻ろうとしていた。そこにドイツ側か
らの合衆国艦隊出現の通信が入る。退路を断つべきとグートンは判断した。北米沿岸に敵艦隊
がいると後々面倒だからだ。 真夜中ということで空母部隊を残し、グートンの座乗する〈篠宮
《アルザス》悠〉は南下していく、ついていくのは〈ルミラ《ジャン・バール》〉
〈佐伯《クレマン
ソー》玲奈〉、巡洋艦に駆逐艦。 18日0120分、
〈篠宮《アルザス》悠〉のレーダーは敵戦
2
艦2隻と護衛部隊を発見。南方に撤退しつつある〈桜庭《ミズーリ》香澄〉
〈遠場《ニュージャー
ジー》透〉だ。グートンは〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉のソーシーヌ艦長に〈ミネアポリス〉他
の護衛部隊の排除を命令、自らは距離を詰めつつ同航戦に持ちこむ。 艦長のマルザン自身は自
己の艦について「昼戦はともかく、夜に戦闘するのは怖い」と素直に評価していた。訓練が間に
合わない上に自慢の国産レーダーは故障がち、予備のつもりで取りつけたドイツ製レーダーの方
が信頼性が高いという有様。無闇に意地を張るとロクなことがない。しかしこうなった以上は
文句を言っても始まらない。戦闘開始だ。 0150分、距離27000から〈篠宮《アルザス》
悠〉は先頭の〈桜庭《ミズーリ》香澄〉に射撃を開始した。幸運にもレーダーは故障しておらず
早くも2斉射目で夾叉。 それを〈遠場《ニュージャージー》透〉艦長は水柱だけで相手の実力
に気付いた。ちっ、46センチ砲かい。しかも撃ってくるのがフランス人の戦艦とはね。3斉射
目、2発の命中弾が〈桜庭《ミズーリ》香澄〉を直撃する。40センチ超重量弾よりも300k
g近くも重い46センチ砲弾は〈桜庭《ミズーリ》香澄〉の副長もろとも後部艦橋を粉砕、もう
1発は艦尾カタパルトと艦尾区画を吹き飛ばす。更に5斉射目の一撃が機関室で炸裂。33
ノットの華麗な高速戦艦の行き足が17ノットにまで低下する。対して〈篠宮《アルザス》悠〉は
直撃弾を食らっているようなのだがまるで戦闘能力に支障ががない。〈遠場《ニュージャージー》
透〉も決定的ではないが〈ルミラ《ジャン・バール》〉からの砲撃でかなりの損傷を受けている。
まずい。このままでは全滅も時間の問題か? そう〈遠場《ニュージャージー》透〉が観念した
時、硝煙と炎で彩られた夜空から航空機が出現した。「あれは〈広場《バンカーヒル》まひる〉の
機だ!」 正にこれを天の助けと言わず何と言おうか、難しい夜間攻撃も航続距離ももろともせ
ずに駆け付けてくれたそれを。 F8F が舞い、主翼下に4発装備した6インチロケット弾〈アイア
ンクロー〉を戦艦部隊に叩きつける。 「落ちつくんだ!」 グートンはあわてて回避行動を取る
各艦に命じた、戦闘機のロケット弾で沈む戦艦がいる訳がない。たとえ直撃を食らったとしても
衝撃程度で済むし、大西洋で稼働できる合衆国空母の数からして攻撃はすぐに止む。それよりは
敵戦艦に止めを刺すんだ。だが〈広場《バンカーヒル》まひる〉は戦闘機だけを搭載している訳
ではない。F8F はあくまで陽動。本物は・・・ 「〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉被雷!」 しまっ
た。グートンもマルザンも 1 つ忘れていたことがあった。F8F がかく乱している間に TBM アヴェ
ンジャーが雷撃。〈広場《バンカーヒル》まひる〉にはそれを実行できるだけの搭載機数(約10
0機)があったのだ。 〈ルミラ《ジャン・バール》〉のディプレ艦長は戦闘継続を懇願している
が、次に攻撃隊が来たら面倒なことになる。危機を悟った〈君影《シャンプレン》百合奈〉
〈御薗
《デスタン》瑠璃子〉からようやく飛んで来た MB158 が空中戦をやっている間に撤退すべきでは
ないか?ディプレは不満だったが次の展開が予想できない以上、ドイツ北米艦隊のように翻弄さ
れかねない。ここは引こう。 0240分、大破した〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉を他艦が援
護しつつ、フランス艦隊は撤退。グートンが正しかったかは難しい、だが同じく撤退する合衆国
艦隊のエアカバーが途切れなかったことを考えると僅かに撤退が正しかったようではあった。
そして30日、空襲と艦砲射撃に耐えかねてハリファックスは陥落。半島先端に追い詰められ
た英加第1軍を残してカナダは欧州連合側に占領された。
■勢ぞろい
1949年秋、マイアミ。 〈皆瀬《フォン・ヒンデンブルク》葵〉艦長オットー・レヴィンス
キーは湾内を見回した。そこには欧州連合の各艦が停泊している。 中央には親交を深めるた
めということでフランス大西洋艦隊旗艦〈篠宮《アルザス》悠〉、イタリア大西洋艦隊旗艦〈多上
《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉が彼の〈皆瀬《フォン・ヒンデンブルク》葵〉と並んで停泊して
いる。 全く、よくも我々は凄いものを造り上げたものだ。30年近く前は隆山条約会議すら誘
われずに「3等国」のレッテルを貼られた(我が国は敗戦国だったから当然か)ドイツ、フラン
3
ス、イタリア。30年近くの歳月は我々にこれほどの「ヒロイン」を出現させる程に成長させて
くれた。 「第三次世界大戦は「隆山条約国」対「非隆山条約国」との戦い」と誰かが言ってたな。
確かにそうだ、83000トン、46センチ砲8門(50センチ砲と交換予定)の〈皆瀬《フォ
ン・ヒンデンブルク》葵〉、68600トン、46センチ砲9門の〈篠宮《アルザス》悠〉、67
200トン、42センチ砲10門の〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉
・・・こりゃ日本人が
頭抱えるな。 ふと横を見ると〈篠宮《アルザス》悠〉艦長アリスティード・マルソー、
〈多上《レ
ジナ・マルゲリータ》愛姫〉艦長ジュリアーノ・マランツィアーノが別々の所から同じ方向を観
ていた。考えていることはみんな同じか・・・
■別れ
中部大西洋海戦が終った後、マルザンは搭載機補充でいなくなった〈君影《シャンプレン》百
合奈〉の代わりに〈篠宮《アルザス》悠〉に乗り換えていた、臨時航空参謀であるノルトマンも
一緒。 この時点でマルティニークを撤退することになった連合側では、次の枢軸側の侵攻場所
を決めかねていた。守る側はどこを攻められてもいいように戦力を展開させなければならない。
しかし戦線は広すぎた。 フランスとしては、ダカールやカサブランカに枢軸側が上陸してこな
いかと危惧していた。あそこを取られると大西洋の制海権を失いかねない上にアフリカの植民
地が雪崩を打って寝返りかねない。そうなると艦隊わ置かねばならない。50年1月、ダカール
のアフリ方面司令部の下にアフリカ艦隊が編成されることになった。旗艦は〈篠宮《アルザス》
悠〉。だが通信翻訳の遅れからこの派遣はノルトマンには知らされず、彼が所用を終えてマイア
ミに戻ってみると港はカラ・・・思い出は突然に失われるもの、だがあまりに辛い別れだった。 ■カサブランカ沖海戦∼知らない想い出
西インド諸島における戦局が枢軸側有利に展開しつつある50年始め、合衆国軍主体の北米反
攻作戦、英軍主体のスエズ奪回作戦の「両輪(カートホイール)」からなる反撃が策動された。北
米側は「オーバーロード」作戦の準備に入り、スエズ側は英連邦軍がソコトラ島に終結しつつあっ
た。 そしてもう1つ、アフリカの大西洋側に牽制攻撃をする作戦が立てられた。目標はモロッ
コ最大の都市カサブランカ。整備された港湾施設と世界屈指のカズ飛行場を持ち、ダカールとと
もに連合側の再重要拠点でもあるここに打撃を加えれば戦力吸引にもなり、また決してヴィ
シー・フランス寄りではないモロッコやのらりくらりしているスペインも枢軸側に傾くだろう。
戦力としては機動部隊の再建が間に合わないので戦艦を使う。カサブランカに艦砲射撃を食
らわせるのだ。きっと敵は大慌てになる。それにカリブ海では日本戦艦は「動く対空砲台」の役
目程度だったのだ、ここで戦艦を使わないとまた何言われるかわからない。 そして以下の艦隊
(伊集院)が編成された。 戦艦:
〈宮内《戸隠》シンディ〉
〈宮内《阿蘇》あやめ〉
〈宮内《伊吹》
レミイ〉 〈長谷部《高千穂》彩〉
〈新城《穂高》さおり〉
〈保科《天城》智子〉空母:
〈芳賀
《翔鶴》玲子〉〈緒方《瑞鶴》理奈〉装甲巡洋艦:
〈牧部《春日》なつみ〉〈槙原《愛鷹》愛〉巡洋
艦:
〈御影〉〈猪名〉駆逐艦:12 対してカサブランカのフランス・アフリカ艦隊(ルリュック)
はあくまで抑止力的戦力だった。しかしここに急派されたイタリア艦隊(コロンビーナ)が加わ
り、一挙に大勢力に変貌していた。戦艦:
〈篠宮《アルザス》悠〉
〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉 〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉〈涼原《インペロ》千晴〉(伊)空母:
〈菜乃花《ベア
ルン》恵理〉
〈雛咲《パンルヴェ》祭里〉 〈アストーレ〉
(伊)重巡洋艦:
〈三梨《シャルルマー
ニュ》涼子〉
〈サン・ルイ〉 〈ボルツァーノ〉
〈トリエステ〉
(伊)軽巡洋艦:
〈東雲《ギッ
シャン》深月〉
〈明石《シャトールノー》達郎〉
〈ラ・ガリソニエール〉 〈ジュゼッペ・マッ
ツィーニ〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉〈モンテクッコリ〉〈カリオ・ラ・ミーサ〉〈カイオ・マリオ〉
(伊)駆逐艦:仏6+伊6 3月1日、日本艦隊はカサブランカ沖に現れた。まずは偵察。すると
こちらに向かってくる戦艦4隻を中心とする艦隊がいるではないか。しかも上空にはウーラガ
4
ンが舞っている。これはまずい。敵側も空母がある、ならばこのまま接近して砲撃すべきだ。こ
ちらには戦艦と装甲巡洋艦合わせて8隻もあるのだから。 ルリュックも同じことを考えてい
た。戦艦の性能も巡洋艦勢力もこちらが上、ならば相打ちになりかねない航空戦よりも砲撃戦を
すべきだと。これをコロンビーナも了承。かくて日本艦隊対仏伊連合艦隊の対決の舞台はそ
ろった。後は役者がいかに巧く演じるかだ。 3月2日朝、レーダーで発見した両艦隊は反航戦
から同航戦に移りつつ射撃体勢に入った、まず〈篠宮《アルザス》悠〉が撃つ、同じ46センチ
砲といっても一時代違う。「奴らは隆山条約の象徴だ、一隻残らず沈めてしまえ!」
〈篠宮《アル
ザス》悠〉のランスロー艦長が叫ぶ、フランス海軍にとって屈辱とだまし討ちの代名詞だった隆
山条約。その最強艦を叩く。これが叫ばずにいられようか。 マランツィアーノ艦長の〈多上
《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉も続く。隆山条約からすればイタリアもフランスの同士だ。ソコ
トラ沖で日本戦艦部隊を叩きのめした超高初速の42センチ砲が叩きつけられる。先頭を走る
〈宮内《戸隠》シンディ〉
〈宮内《阿蘇》あやめ〉は両艦の攻撃をもろに受けて脱落していく。代
わって〈宮内《伊吹》レミイ〉
〈新城《穂高》さおり〉
〈長谷部《高千穂》彩〉が両艦を迎え撃ち、
割り込もうとした〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉は〈保科《天城》智子〉が食い止める。そして
装甲巡洋艦は〈涼原《インペロ》千晴〉と2対1の勝負を挑んだ。〈宮内《伊吹》レミイ〉が「ハ
ンター」の名に恥じず〈篠宮《アルザス》悠〉を46センチ砲弾で射抜く。さすがに〈篠宮《ア
ルザス》悠〉も直撃弾を浴びて高角砲と1番煙突がひん曲がる。だが〈宮内《伊吹》レミイ〉は
〈篠宮《アルザス》悠〉の撃つ砲弾に答えられるほどの防御力は持ちきれなかった。8斉射を撃っ
たところで脱落、しかし〈篠宮《アルザス》悠〉も12発の46センチ砲弾の直撃を受けて上部
構造物がかなり壊され、速度が落ちていた。 一方、
〈新城《穂高》さおり〉が「サーブのような」
直線弾道で〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉を狙い撃つ。しかし「火の玉をプールに打ち
込むように」ダメージがない。しかし後ろからしずしずとついてきた〈長谷部《高千穂》彩〉が
放ったこの海戦ただ1発の命中弾が〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉の艦橋と一体化した
司令塔に直撃、そのショックでコロンビーナ司令官、マランツィアーノ艦長を壁の反対側(イタ
リア戦艦の司令塔は狭い)まで叩きつけて気絶させ、指揮官を一時的に失った彼女は「おろおろ」
と妙な航進を始めてしまった。 慌てて〈槙原《愛鷹》愛〉と撃ち合っていた〈涼原《インペロ》
千晴〉と〈東雲《ギッシャン》深月〉が両旗艦の援護に回る。そして伊集院中将から指揮を受け
継いだ〈保科《天城》智子〉艦長はこれを察知、
「撤退や、撤退!」 巡洋艦以下の艦艇は〈御影〉
が見境なく近寄ってきた〈明石《シャトールノー》達郎〉を吹き飛ばしただけで後は大苦戦、元々
補助艦艇では圧倒されているのに戦艦部隊がこのザマではどうしようもない。後方に下げた空
母部隊から撤退援護をしてもらい、日本艦隊は後退。 これに対し、巡洋艦を率いてなおも追撃
をしようとした〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉だが、敵の母艦航空隊を発見するとさすがに引い
た。ファンディ湾でこのパターンにやられた経験があるからだ。結局両軍とも決定的打撃を挙
げる前に終わった。 これにコリた日本側はカサブランカ上陸作戦を無期延期、結局ヴィシー側
はWW3を通してここを守り抜くことに成功している。 実はこの作戦の最大の勝者は英連邦
軍であった、相手となるイタリア軍、特に海軍が地中海の反対側に出向いていってくれたため、ソ
マリアへの上陸作戦に対する抵抗力が弱くなり、割と順調に占領することができたからである。
まあ当の英国人はそんなものがなくても楽々占領できたと反論しているが。
■「雷撃隊出動」
戦局が目に見えて悪化していた1951年8月、ノルトマンの第一航空艦隊に編入されること
になった〈君影《シャンプレン》百合奈〉
〈御薗《デスタン》瑠璃子〉は護衛を連れてバルト海に
到着した。間もなく〈篠宮”アルザス”悠〉を始めとする艦隊も編入された。ノルトマンにとっ
ては懐かしい思い出、しかし浸っていられるほど戦局は楽ではない。 9月上旬、第一航空艦隊
5
旗艦の〈橘《フォン・リヒトフォーヘン》天音〉に撮影隊が乗艦してきた。映画「雷撃隊出動」の
撮影である。当時としては画期的とも言える空母からの飛行機発着艦シーン、発艦した飛行機か
らの撮影。〈橘《フォン・リヒトフォーヘン》天音〉の艦橋周りの構造、対空機銃の訓練、発艦す
る He481 に装備された Fug245/3 レーダーのアンテナ、
〈橘《フォン・リヒトフォーヘン》天音〉と
並走する〈篠宮《アルザス》悠〉、周囲を囲む〈桜塚《シュリーフェン》恋〉と〈鷺ノ宮《ビュー
ロー》藍〉。そして訓練弾を放つ〈エタンダール〉攻撃機・・・などを収めた資料価値の高いこの
映画は DVD 化もされている。 さっそく〈篠宮《アルザス》悠〉が目標訓練艦となって母艦攻撃
隊やT攻撃部隊の教育を施す。10センチと5.7センチ高角砲それぞれ28門づつを持つ彼
女の対空砲火の威力は的確、若年搭乗員達のよい訓練対象になった。
■再びの別れ
しかしノルトマンにとってはある意味面倒だった、ノルトマン少将よりも5つも年上、階級で
も上回るマルザン中将に命令を発するのは組織秩序上の大問題だった。簡単に言えば生徒が先
生に命令しているのと同じようなもの。カリブ海では司令官と参謀の立場だったからわがまま
を言えたが今回はそんなことは出来ない。 ノルトマンとしては辛かった。マルザンやフラン
ス側の乗員は例外はあるものの彼らの行動は極めて協力的で、食料も一緒のを分けるやり方。そ
して識別や対空訓練でももっぱらドイツ側が教えられる。果たしてこれでいいのか?このまま
だとこちらが子供扱いされかねない。対空訓練で〈橘《フォン・リヒトフォーヘン》天音〉と併
走する〈篠宮《アルザス》悠〉を眺めながらノルトマン達はそう思い始めていた。 そうこうし
ていた10月10日、枢軸側の第二機動艦隊が英本土に奇襲をかけてきた。これに対しドイツ側
は「タイフーン」作戦の名のもとに第二航空艦隊(フランス第一航空師団も指揮下に入っている)
による夜間空襲をかけ、空母10隻、戦艦4隻を撃沈。残余の艦隊はほうほうの体で逃走中とい
う「大戦果」を挙げた。 これだけ空母を叩けば枢軸側には母艦兵力はない、戦果拡大の絶好の
チャンスだ。そう判断したヒトラーは高海艦隊を投入させ、さらには第一遊撃部隊と称して〈篠
宮《アルザス》悠〉らも引きぬいて追撃に参加させることになった。「空母機を作戦には使用しな
い」と前に説得して母艦機を引きぬいた、だから機動部隊の出撃はしばらくない。だから護衛も
いらないだろう。というよりデーニッツ自身が「戦果」を疑問視していたのだ。二度目の別れ。
また遠くに行ってしまうのか。「戻ってくる」という言葉を残さずに・・・ そして残敵追撃と搭
乗員救出と思って出かけてみれば枢軸機動部隊は健在、逆に空襲を受けそうになり慌ててフリー
ジア諸島に避難、これで戻れるかと思えばアフリカ方面司令部に編入されて今度は「スペインの
攻撃に備えるため」という理由で北アフリカへ。そして12月下旬にカサブランカに到着。とは
いえ予想されたスペイン艦隊の攻撃もなくただ日々が過ぎていく。ここでアフリカ地域司令部
所属の〈三梨《シャルルマーニュ》涼子〉が編入されたが、だからといってリガに戻れる訳でも
ない。そして1月、とりまとめた艦隊はフランス本国に移動した。目的は極めてあいまい、第二
義戦力とはそういうものだ。
■出撃
1月23日昼、マルザン部隊はボルドー湾に到着。この時始めて正式な命令書が電信室に送ら
れてきた。合同艦隊とともにケフィラビクに突入するという簡単明瞭なものだった。突入時間
から逆算するとぼんやりとはしていられない、目的地はアイスランドにあり、通過すべきはノー
ス海峡なのだから。しかしケフィラビクとかアイリッシュ海とかの詳細な知識も資料も無く、そ
もそも高海艦隊や合同艦隊と協同訓練はおろか打ち合わせもしてない。だからといって無線で
聞くことも出来ない。憤慨するランスロー艦長や幕僚達にマルザン提督は「ただ一途に本分を尽
くせ。文句は冥王の前であらためて聞く」と叱咤した。 憤慨するのはわかる、今まで第一航空
艦隊とやってきた共同訓練が全て無駄になるのだ、だが愚痴や弁解を言っている時間はない、命
6
令を受けた以上遂行しなければ。 23日午後、ロリアン沖に到着したマルザン部隊は待機して
いるタンカーから燃料を・・・が、タンカーが来なかった。仕方ないので駆逐艦は〈篠宮《アル
ザス》悠〉から燃料を分けてもらった。どこまでも第二義、つまり「サブキャラ」に近い扱いか。
乗員の一部からは不満が出てくるのは仕方ない、実際問題マルザンだって不満を抱えているのだ
からそれでも第一遊撃部隊は合同艦隊を追ってノース海峡を目指す。幸いにして空襲も潜水艦
の襲撃も全くなく、追いつくのも時間の問題となっていた。
■突入
1月24日2300分、合同艦隊は闇夜を突いてセント・ジョーンズ海峡に入った。このまま
進めばノース海峡には翌日0300分頃に到着する。 この時、クメッツの北米艦隊は以下の編
成になっていた。 戦艦:
〈双葉《フォン・モルトケ》涼子〉(旗艦)〈岩倉《ツオルンドルフ》夏
姫〉 軽空母:
〈愛沢《ライン》ともみ〉 装甲艦:
〈桜橋《ロートリンゲン》涼香〉 軽巡洋艦:
〈佐
久間《マインツ》晴姫〉〈ポンメルン〉 駆逐艦:
〈志摩《Z20》紀子〉〈神塚《Z25》ユキ〉、
他に4隻そしてこの後につくグートンのフランス本国艦隊は 戦列艦:
〈佐伯《クレマンソー》玲
奈〉(旗艦)〈持田《ガスコーニュ》祥子〉〈ブルゴーニュ〉〈ラングドック〉 軽空母:
〈雛咲《パ
ンルヴェ》祭里〉 重巡洋艦:
〈サン・ルイ〉〈ゴーロワ〉〈アルジェリー〉〈デュプレクス〉 軽巡
洋艦:
〈明石《シャトールノー》達郎〉〈ジョルジュ・レイグ〉〈エミール・ベルタン〉〈ラ・ガリ
ソニエール〉 駆逐艦:
〈佐伯《ランドンタブル》正義〉、他に11隻 戦艦6隻を中心とする打撃
力は一見した限り、高海艦隊のそれを上回る。だが二人の司令官の思考が「合同」を名ばかりの
ものにしかねない状態だった。 オスカル・クメッツ大将はフランス艦隊を頭痛の種としか思っ
ていなかった。カリブの経験から彼はフランス艦隊を信用できない存在とみていた。そもそも
マルティニーク島攻防戦にズルズルと引きこんだのはどこの国だ。 対してピエール・グートン
中将は(階級と年齢がクメッツより下だから)一応彼の指揮下にはあったが、内心は失望してい
た。面子ばかり立ててこちらの行動を掣肘し、せっかくのカリブ海でのチャンスを潰したのはど
この国だ。 これを迎え撃つべく松田千秋中将の日本第一艦隊はクルー湾から出撃、以下の布陣
を敷き、ノース海峡の「罠」の口を閉じようとしていた。 戦艦:
〈澤田《信濃》真紀子〉
(旗艦)
〈高瀬《大和》瑞希〉
〈宮内《伊吹》レミィ〉
〈宮内《鞍馬》ジョージ〉 〈神津《ニューハンプ
シャー》麻美〉
〈長谷部《高千穂》彩〉
〈新城《穂高》さおり〉 装甲巡洋艦:
〈大庭《白根》詠美〉
〈千堂〉〈九品仏〉〈七瀬《ハワイ》留美〉 駆逐艦:22隻 46センチ砲戦艦5隻を始めとする
砲撃力なら合同艦隊を凌ぐ、だが松田は編成を見て嘆いていた。「巡洋艦」がいないのだ。元々日
本は巡洋艦が少ない上に補充は大柄な装甲巡洋艦ばかり、とうとう「ひょうたん」のような編成
になってしまったのだ。 10隻以上の巡洋艦を擁する合同艦隊との接近夜戦に持ちこまれた
ら振りまわされた挙句に大損害は免れない。だから彼らは対艦噴進弾を搭載した駆逐艦に先制
攻撃させる方法を選んだ。そうやって巡洋艦以下の艦艇を削り、次の砲戦に対して優位を保つ。
そのためには戦艦部隊の護衛が一時的に無くなってもかまわない。〈大庭《白根》詠美〉に座乗
する杉浦矩朗少将には「したぼく」と呼ばれる装甲巡洋艦と駆逐艦からなる遊撃隊を引き連れて
南下させ、自らはノース海峡を塞ぐように東に向った。後は哨戒機(九式長距離陸上警戒管制機
/富嶽改)の報告待ちだ。海軍を見限った連中(統合航空軍)に頼らないといけないのは多少癪
に障るが。 さて一方の合同艦隊、風が雲を払い、月が輝き、艦隊が淡く存在を表す。そして哨
戒機からの電波が増幅する。発見されたと判断したクメッツは射撃を命じた。瞬殺するか追い
払わないと位置がバレる。 「対空射撃を命じろ、短時間ならレーダーの発振も大丈夫だろう」 外周の駆逐艦が対空射撃を始めたのはグートンにも見えた。しかもレーダー射撃で。 「何がし
たいんだ?」 ダメだ、あのドイツ人は。マルタでイタリア人が半年前に失敗したことを真似し
ている。学習能力というものがないのか。彼はすぐに「対空戦闘用意!」を通信させた。次に来
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るのはミサイルの一斉攻撃だ。敵はこちらを見つけたんだから。 「またフランス人め!」 フ
ランス側の通信が一挙に増大し、対空陣形をとったことにクメッツはうめいた。せっかく電波発
振を最小限度にとどめたのにあんな派手にやったらバレるではないか! いや、完全にバレてい
た。哨戒機はわざと電波を出して合同艦隊を誘ったのだ。 ■射撃
「ポチ、撃ち方始め!」 0320分、
〈大庭《白根》詠美〉に座乗する杉浦の命令一過、一斉に
十式誘導弾が発射された。その数138発。 去年7月のマルタ沖海戦で使われたタイプより
も一層完成度が高く、能力が上がった対艦誘導弾はほとんど音速で敵艦に突進、あらゆる妨害を
突破して48発が命中した。まず前衛にいた〈Z62〉が直撃により内部から捻じ曲がるように
沈没していく。続けて〈双葉《フォン・モルトケ》涼子〉に5発、〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉
に3発が命中。だが「戦艦」としてはこの新兵器に耐えぬいた。マルタ沖でイタリア戦艦が身を
もって証明したように、複合装甲化され、空間を取れる「幅」のある戦艦では噴進弾だけでは沈
めることはできない。ノース海峡でも結果は同じだった。しかし「戦艦」としての基本機能以
外・・・レーダーのような脆弱物は使い物にならなくなり、主砲以外の構造物は燃え上がってし
まった。装甲と「幅」を持てない巡洋艦以下の艦艇はいわずもがな。航空機ならぬ対艦ミサイル
を「ナンパ」
(撃墜)しようとした〈明石《シャトールノー》達郎〉が失敗して大火災に包まれ、
〈ポンメルン〉が真っ二つに折れて轟沈している。 合同艦隊は不幸で不運で悲惨だった、多分世
界の海戦史上最も不幸な艦隊ではないだろうか?しかもこれはまだ前座に過ぎない。本当の不
幸はこれからやって来る。 0330分、松田は「撃ち方始め」を命じ、射撃データに基づいて
複数の艦が連動して同じ目標を射撃する統一管制射撃を始めた。 〈澤田《信濃》真紀子〉
〈高瀬
《大和》瑞希〉は先頭艦を相手取り、
〈宮内《伊吹》レミィ〉
〈宮内《鞍馬》ジョージ〉は2番艦に、
〈神津《ニューハンプシャー》麻美〉は3番艦に対して単艦で射撃、そして〈長谷部《高千穂》彩〉
〈新城《穂高》さおり〉が4番艦を受け持つ 。最後に対艦噴進弾を撃ち終えた遊撃部隊はは駆逐艦
とともに突撃、その他の艦を狙う。全艦が消焔火薬と超重量弾を用い、一挙に敵艦隊に大打撃を
与える腹積もりだ。 〈双葉《フォン・モルトケ》涼子〉を24本の水柱が覆い、7万トンの巨体
に震動が走る。クメッツは焦った。ミサイルを食らった上に味方艦隊はまだ1発も撃っていな
い。それなのにこの有様か。敵はどこだ。射撃データはまだか。だが射撃しようにも「眼鏡」た
るレーダー等がなければどうしようもない。 だがまだ彼女は幸運な方だった。〈岩倉《ツオル
ンドルフ》夏姫〉の方は16発の初弾のうち4発が命中している。「ハンター」と呼ばれた〈宮内
《伊吹》レミィ〉の戦闘能力はより正確に彼女を射抜き、煙突部と中央部から火災を発生させてい
る。 さらに不運だったのが〈持田《ガスコーニュ》祥子〉で、
〈長谷部《高千穂》彩〉からの命
中は2発だった。しかし艦尾のほとんど同じ場所に直撃したからたまらない。〈持田《ガスコー
ニュ》祥子〉に実質80センチ砲が当たったような衝撃が走り、艦尾部分が瞬時に粉砕された。さ
らに〈新城《穂高》さおり〉が放った40センチ砲弾がまんべんなく命中、一挙に火の玉に包ま
れる。 クメッツは愕然とした、馬鹿な。このままでは日本海海戦のロシア艦隊になってしま
う。だが彼が身の不運を嘆く時間は残されていなかった。現実の厳しさを叩きこむかのように
〈澤田《信濃》真紀子〉
〈高瀬《大和》瑞希〉からの斉射が8発の命中弾とともに〈双葉《フォン・
モルトケ》涼子〉、そして彼を粉砕した。 一方のグートンはこの時点では幸運だった。彼にはま
だ「やむをえん、閃光を目標にして撃て!」と命じ、
〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉に2回の斉射
をさせる時間があったのだから。だが〈神津《ニューハンプシャー》麻美〉の5斉射目が命中、続
けて目標を変えたを含めた他戦艦による一斉射撃をまともにくらって主砲以下をほとんど叩き
壊されてしまった。 「もう走れないな、ケフィラビク突入は無理だよ。不可能だよ、這ってもダ
メだよ」戦意を失ったグートン中将はソーシーヌ艦長に相談するように言った。「本艦は戦闘艦
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艇です、我々は船乗りです、1門でも、1発でも撃てる限り、最後まで戦いましょう」 ソーシー
ヌは強く言った。「失敗よりは死」が彼のモットーだ。「しかしこんな状態でどうやって突入する
んだ!」「このままおめおめと帰れますか!体当たりしてでも敵に一矢を報いねば!」 その瞬
間、艦橋を砲弾が貫き、司令部と艦首脳を一瞬のうちに葬り去った。もはや北上する理由も意思
も能力はない。0357分、砲術長が指揮を執りつつ彼女は反転、6ノットで南下を始めた。 ■遊撃部隊
第一遊撃部隊のマルザンは以下の編成でノース海峡に入った。合同艦隊から遅れること20
里。26ノットで静かに進んでいく。戦列艦:
〈篠宮《アルザス》悠〉
(旗艦)巡洋艦:
〈三梨《シャ
ルルマーニュ》涼子〉
〈進藤《ド・グラース》むつき〉駆逐艦:
〈アルジェリアン〉
〈セネガレ〉
〈オ
ヴァ〉
〈ソマリ〉
〈マロケン〉 途中、合同艦隊から分離した軽空母〈愛沢《ライン》ともみ〉
〈雛
咲《パンルヴェ》祭里〉らとすれ違う。彼女達艦隊の「妹」は砲撃戦の前に置いてきぼりを食らっ
たのだ。それでも心配そうに海峡入り口で待っているあたりが「妹」らしい行動だが。 ノース
海峡に入ると光景は一変した。月の光を覆い隠す硝煙と砲火の交錯、燃え上がる艦艇の炎。マル
ザンを始めとする将兵達はその艦を敵と判断した、いや、敵と信じたかった。 0345分、マ
ルザンは「当艦戦場到着」と打電させた。合同艦隊の士気を鼓舞するため。援軍がやってきたこ
とを知れば合同艦隊も百人力だ、しかしその時、合同艦隊でこの通信を受けられた艦はいたのだ
ろうか?。そして現実は余りにも冷酷だった、炎上している幅の広い軍艦はどう見ても味方戦艦
だった。間違い無い、重厚な艦影は「右前方に燃えている艦は味方の戦艦!」 どんな戦闘があっ
たかは分からない。だが現実に燃えているのは目の前の〈岩倉《ツォルンドルフ》夏姫〉であり、
横倒しになってるのは〈持田《ガスコーニュ》祥子〉であった。理解しがたい現実が突きつけら
れていた。さらに進んでいくと前方に1隻、艦橋が半分壊れた装甲艦が停止していた。その艦は
〈桜橋《ロートリンゲン》涼香〉、艦司令部を失った彼女は敵の陣営を伝えることもせずにただ味
方識別信号を出していた。 0420分、炎上停止している艦とこちらに近づく敵らしき2目標
(〈千堂〉
〈九品仏〉)を発見。炎上艦の炎から逃れるために右にかわしつつ駆逐艦に逆探知からの
魚雷攻撃を命じ、自らは46センチ砲で敵艦を狙う。これも逆探知から相手の位置を推定して
だ。46センチ砲が火を吹き、魚雷が発射された。だがこの時、炎上停止している艦が実は6
ノットで動いていることに〈篠宮《アルザス》悠〉の艦橋は気付かなかった。その艦・・・
〈佐伯
《クレマンソー》玲奈〉の前部に20度の角度で衝突。しぱらく彼女を引きずった〈篠宮《アルザ
ス》悠〉は離脱したものの艦首が凹んで20ノットしか出なくなってしまった。落胆する乗員に
〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉からメガホンの声が届く。 「本艦は司令官、艦長、副長戦死、操
舵装置破壊、よけられないで失礼しました」 こうなるともはや突撃は意味を成さない。傷つい
た戦艦1隻と巡洋艦少々では海底直行が関の山。0443分、マルザン艦隊は反転して海峡外に
避退することにした。幸い進み過ぎた遊撃部隊との同士撃ちを恐れて第一艦隊は射撃を止めて
いる。 0510分、心配で80浬後をこっそりついてきていた〈愛沢《ライン》ともみ〉らと
合流。後は帰るだけだ。 ■脱出
大破した〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉をかばいつつ海峡から離れつつあるマルザン艦隊には
まだ試練が残っていた。第一機動艦隊(村上)からの攻撃隊が散発的にやってきたのだ。対して
〈篠宮“アルザス”悠〉を中心としたグループが先頭に立ち、
〈愛沢《ライン》ともみ〉
〈雛咲《パ
ンルヴェ》祭里〉が航空援護を兼ねて真中に、後ろから大破した〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉が
〈佐伯”ランドンタブル”正義〉らに守られつつ航行する。敗残の撤退部隊ではあったが将兵は不
思議な安心感を持って戦闘に挑んだ。元々この部隊の任務は空母の護衛。ならば対空戦闘はお
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手のものではないか。しかも小さいとはいえ「空母護衛」をしている。マルザンやランスロー艦
長は部下に希望を持てと激励した。相手が鬼女(第一機動艦隊のこと)でも大丈夫。その証拠に
突撃してくる敵機の攻撃はほとんど当たっていない。 しかし、冷酷すぎる現実があった。夜の
闇では察しえなかったが、日が昇り明るくなると〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉の姿が露になっ
た。それは凄まじいを飛び越えた恐るべき状態だった。 主砲の砲身はあらぬ方向に向いたま
ま動かず、舷側はガラクタの山と化し、マストも煙突も折れ曲がり、艦上は死体、主を失った手
足が散乱している。まともに砲撃戦を体験したことがない〈愛沢《ライン》ともみ〉の乗員は絶
句した。 「これが・・・戦争か」 敗北、明日の我が身、そして死。全てのものが〈佐伯《クレ
マンソー》玲奈〉を覆っていた。これでも〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉は浮いているだけマシ
だ、
〈双葉《フォン・モルトケ》涼子〉以下の他戦艦は既に海底に叩きこまれているのだから。 弟のように彼女の直援をしている〈佐伯《ランドンタブル》正義〉にはさらに痛切だった。死体
の山を死体とわからないようにするかのように敵機が〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉に襲いかかっ
てきた。猛烈な対空砲火で「姉」を護ろうとする〈佐伯《ランドンタブル》正義〉や〈志摩《Z
20》紀子〉
〈神塚《Z25》ユキ〉を無視し、反撃力を失っている〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉
に攻撃は集中された。悲惨は徹底されなければならないのか。0930分、どうしようもなく
なった〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉は〈佐伯《ランドンタブル》正義〉に乗員を移した後、魚
雷で沈められた。生存者は僅かに35人。さらに追い打ちをかけるように次々と第一航空艦隊
から入る戦局。我々は何も出来ないのか。何も。フランス国民が誇りにしていた彼女がやった
ことは主砲を一斉射しただけ。何が最強だ、何が象徴だ。そこに〈三梨《シャルルマーニュ》涼
子〉のトリティス艦長が通信してきた。「落ちこんでいる場合か!」 〈篠宮《アルザス》悠〉の乗
員は気付いた。自艦隊の損害無しで戻れただけでも良しと思わなければならない。全艦隊・全滅
覚悟の作戦だったのだから。
■帰還
26日午後、第一遊撃部隊はロリアンに戻った。〈三梨《シャルルマーニュ》涼子〉と〈雛咲《パ
ンルヴェ》祭里〉は分離してカサブランカ防衛に向い、
〈篠宮《アルザス》悠〉はサン・ナゼール
に移動していた、凹んだ艦首そのものの修理は終ったが、問題はこれからどうするか。一緒に残
存しているのは軽巡洋艦〈進藤《ド・グラース》むつき〉と軽空母の〈愛沢《ライン》ともみ〉。
それと〈神塚《Z25》ユキ〉
〈志摩《Z20》紀子〉を始めとして駆逐艦と護衛艦が7隻。第二
艦隊(マルザン)と名乗ったこの戦力どう使う?バルト海に半分閉塞されている第一艦隊(高海
艦隊残余を改名、ティーレ)とは違って敵は第二艦隊を眼の上のコブくらいには考えてくれるだ
ろう。第二艦隊を攻撃しにきた機動部隊を横合いから基地航空部隊が叩けないものか? だが
肝心の敵機動部隊が来る前に枢軸軍は英本土奪回作戦を開始。スカパ・フロー占領の後にスコッ
トランドに上陸をかけてきた。対して英本土を守るドイツ軍も必死に防衛するが制空権も制海
権もなく補給も途絶えがちな彼等には持久防衛しか道は残されていなかった。フランス陸軍英
派遣部隊や、第5航空師団もドイツ側に加わって奮闘するが、物量と性能に勝る枢軸側の攻撃の
前に押される一方。 そんな中、ヒトラー総統に作戦打ち合わせに行ったアブリエル海軍幕僚長
が総統から質問を受けた。 「(フランスには)艦艇はないのか?航空と陸軍の攻撃だけなの
か?」 まずい、この言い方からすると次には我がフランスがドイツに占領されかねない。海軍
の全兵力を使ってでも最期を飾り、生き残らなければ。 2月5日、論理とかを後ろに置いてあ
わただしく決められた作戦に基づき、第二艦隊は命令を受けた。「第二艦隊は陸軍の攻勢に呼応
し、フォース湾に突入、艦砲射撃で上陸軍を粉砕する」 聞いた途端、マルザンは怒りを通り越し
て泣けてきた。バカかお前等は。2ヶ月前に仏独の全艦隊出しても突入できなかったんだぞ。
それがこれだけの艦隊で出来ると思っているのか?敵艦隊と航空部隊が手ぐすね引いて待って
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いる中を航空援護無しで真っ昼間に突っ込めと?ヴェールヴォルフ(*注5)やトータルアイン
ザッツ(*注6)の海上版でもしたいのか? 何が「海軍の伝統と栄光のため」だ。馬鹿野郎。集
団自殺になんか付き合えるか。それならば我々は「海軍の明日のために」行動する。 大喧嘩の
末、とうとうマルザンは「勝手にしろ!」というアブリエルの怒号とともに海軍司令部を追い出
された。ああ、勝手にする。それが幕僚長の「命令」ならば。 「帰ろう、彼等の元に」 そして
52年2月11日、第二艦隊はひっそりとコンカルノーを出港した、見つかれば即攻撃は免れな
い。〈進藤《ド・グラース》むつき〉を先頭にヘリコプターで警戒しながら〈愛沢《ライン》とも
み〉が続き、
〈篠宮《アルザス》悠〉を〈神塚《Z25》ユキ〉
〈志摩《Z20》紀子〉が挟む陣
形でイギリス海峡に入る。 2月12日正午、ドーバー海峡。1つの艦隊か全速で航行してい
た。対空巡洋艦〈進藤《ド・グラース》むつき〉を先頭に空母〈愛沢《ライン》ともみ〉、そして
〈篠宮《アルザス》悠〉が駆逐艦に挟まれつつ岬に近づいていた。 そんなことが出来るのか?敵
機動部隊が内陸部まで空襲をかけ、潜水艦がうろうろしているこの海域を突破して通過しようと
は。 枢軸側偵察機が発見し、警戒を出した時にはすでに彼女達はオランダ沿岸にまで達してい
た。途中〈進藤《ド・グラース》むつき〉が触雷して「ぷるぷる」と震動・停止したが〈神塚《Z
25》ユキ〉が叩き起こして再進行、13日1200、無事にヘルゴランド島に到着した。 だ
がまだ問題は残った、ユトランド半島をショートカットするキール運河を通れないのだ。結氷し
ているせいもあるが〈篠宮《アルザス》悠〉のマストが高過ぎて橋梁をくぐれないのだ(*注7)。
そうなるとユトランド半島を回りこむしかない、そしてそれを援護しなければならない。ここ
まで来ると戻れとか突っ込めとか言える状態(もう遅い)でもなく、ドイツ側は〈カスター〉
〈クー
ルラント〉といった砕氷艦(*注8)を繰出し、血路を開いて第二艦隊を迎え入れ、17日、リ
ガに到着した。 驚いたのは第一航空艦隊の面々である。2度と会えないと思っていた艦隊が
現れたのだから。ノルトマンは慌てて内火挺を出して迎えにいく。「ただいま、追い出されてし
まったよ、もうここしか帰る場所はないよ」 「お帰り」 1952年2月17日午後、
〈篠宮《ア
ルザス》悠〉はリガに戻った。懐かしいリガに・・・
・注5:枢軸重爆撃機に対して航空機による大規模体当たり攻撃をかけ、大損害を与える作
戦名。パイロットは体当たり直前で脱出する。
・注6:敵最重要拠点に対する航空機による自爆体当たり作戦名。北の暴風作戦時を始めと
して何度か論議に上ったが、実際には行われてはいない。
・注7:キール運河を常に通るドイツ艦船はマストを昇降させる装置を持っているが、フラ
ンス艦にそれを求めるのは酷だろう。
・注8:毎冬のバルト海の結氷に備えてドイツ海軍は優れた砕氷艦を有している。
■戦後
ダルラン、ラヴァルの後を受けた第四共和制フランスは53年にフランス民主共和国の成立を
宣言、マンデス・フランスを首相としてド・ゴールの第五共和制フランス(フランス連邦共和国)
と対決することになる。 たとえこちらが倒れてももう一方が生き残り復興させてくれる。だ
からそのために戦う。それぞれのフランスはそうやって自分に言い聞かせてきた。だが「両方生
き残る」とは。東西アメリカと違って民族的憎悪をそれほど持たない両フランスは統一を念頭に
行動していく。だが統一はなかなか進まない。ドイツがいるからだ。彼らはフランスの強大化
をある意味恐れていた、ドイツにとってフランスは「世話好きで、尽くしてくれる隣のお姉さん」
であってもらいたいのだ。なかなか「何でもしてくれる妹」のような存在になりたがらないイタ
リアと組まれるとその国力はドイツを超える。東方ロシアや東合衆国にしても何をやらかすか
わからない。だからドイツは表面上はフランスに対して「お姉さん」的扱いをしつつ色々肩代わ
りをさせたのだ。それは「スフィンクス」と形容されたミッテランをもってしてもなしえなかっ
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た。 そして〈篠宮《アルザス》悠〉はフランス民主共和国、いや欧州連合唯一の46センチ砲
戦艦として、北の暴風作戦の生き残りとして太平洋条約機構の戦艦と対峙しなければならなく
なった。〈日野森《ビスマルク》あずさ〉や〈霧島《ローマ》佳乃〉も残ってはいるが彼女達は3
8センチ砲戦艦。気づいてみれば「お姉さん」は彼女しかいなかった。ただ予算の都合上行動は
少なく、最強の割に印象が薄いが・・・ 1964年からの改装で指揮装置を強化するとともに
両煙突間に対艦ミサイル発射機を搭載、高角砲も半分は降ろして対空ミサイルと取り替え、欧州
連合艦隊旗艦としてノルトマン司令(ドイツ海軍総司令兼任)がしばらく座乗している。 そし
てWW4ではドイツや東部連合の艦隊と共に第二次ニューヨーク沖海戦に参加。日本艦隊との
対艦ミサイルの撃ち合いを演じ、フランス統一時にはフランス連邦側の〈氷室《リシュリュー》微〉
と並んで統一観艦式に参加。現在は予備艦としてツーロン港に係留されている。 ちなみにマ
ルザンは戦後大将となり、フランス海軍総司令にまで昇進したがそれ以上は望まず、総司令の地
位をジャルディンに譲ってツーロンの海軍大学校の校長を勤め、今もノルトマン、そしてWW3
直後に海軍を辞めて花屋になったオルベリスといったノルウェー沖の仲間と親交を続けている。
■要目
・基準排水量 68600 トン ・常備排水量 72600 トン
・全長 281.2 メートル ・全幅 38.9 メートル ・喫水 10.3 メートル
・主機 パーソンス・ギアード・タービン4基 ・主缶 スラ・インドレット缶8基
・出力 200000馬力 ・速力 31ノット
・航続力 18ノットで9200海里
・兵装 ・主砲 49口径46センチ3連装砲塔3基 ・副砲 52口径15.2センチ3連装砲塔2基
・高角砲
・45口径10センチ連装高角砲14基 ・60口径5.7センチ連装高角砲14基
・60口径37ミリ機銃20基
・装甲 舷側400ミリ、甲板290ミリ、砲塔520ミリ
■同型艦
・〈篠宮《アルザス》悠〉 1948年1月9日完成 1997年予備艦
・〈パトリシア《ロレーヌ》メイフィールド〉 建造中止
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