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BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
Move B***h - Ludacris feat.Mystikal & Infamous 2.0
最近自分がそのアーティストのことを知ろうとするときにまず歳を調べる。音楽性と
か経歴とかじゃなくて、たぶんもっと人間的なことを知らないと今一その人のことが
よく掴めないからだと思う。で、そんなリュダクリスの生年月日は1977年9月11日。
ヘビ年。あ、密かにタメ歳だ。学年は彼のが1コ下だけど。そんなことよりコイツの
誕生日に注目。また、よりによって・・・。そういえばモービーやスティックスのト
ミー・ショウも同じ誕生日だ。おとめ座生まれ。おとめ座の性格は「ロマンチスト。
幼い頃のピュアな夢を、いつまでも持ちつづけられるのがこの星座の人。強い正義感
あり。完璧主義で潔癖、几帳面。さわやかな性格。頭がよく、判断力に優れ、記憶力
抜群、勤勉。」らしい。小さな頃からの夢をいつまでも持ちつづけてる割には、高校
の頃はレスリングやってたり、自分の曲かけてもらおうと思ってラジオ局にデモテー
プ持っていったらハズミでDJになったりしてるんだが(笑)。
ところで、この曲はリュダのセカンドアルバム「 Word Of Mouf(口から生まれた男)」
からの実に4枚目のシングル。ラップで1枚から4曲のトップ40ヒットって実は相
当凄いんじゃないかという気がしている。しかもこの曲はあの一連のノー・リミット
作品の名曲(?)の数々を世に送り出したKLCプロデュースな上、旧ノー・リミット
繋がりでミスティカルが参加という痒いところに手を届かせてくれた内容。お蔭でめ
でたくリュダに取って初のトップ10ヒット曲となった。いや、めでたい。しかし逆
にヒットしてしまったからか、この曲の歌詞(レイプを助長するような歌詞が満載。
基本的に最初から最後まで4分間見事に女性蔑視な内容)に嫌悪感を覚えた“とある
米国FOX NEWSのキャスター”が「こんなヤツをCMに使うなんてけしからん」とペ
プシのボイコットを始めた(リュダは当時ペプシのCMに出演していた)。結果、そ
んな運動を起こされては商品にも悪い影響があると判断してか、ペプシはリュダの
CM降板を決めてしまった。
たぶん、昔自分が聴いて育ったギャングスタラッパーがかつてやってたような内容の
曲をアルバムに1曲入れて、たまたまそれがヒットしただけなんだろうにね。ほんと
はただのお笑い芸人で人を楽しませるのが好きで、ちょっとエロいけど凄く繊細な神
経の持ち主だと思うんだけどな、この人。そうそう、さっきのおとめ座の話。「誤解
されたり、真意をくんでもらえなかったりして、人間関係では悩むこともありそう。」
だって。「時にはいいか、と心に余裕を持てば、あなたは更に魅力的な人物になるら
しい」だってさ。聞いてる?リュダクリス!(はまべ)
One Last Breath - Creed
前作『Human Clay』(99年作品)のヒットが記憶に新しい彼等の、2年という短
いブランクで製作されたサードアルバム『Weathered』からの、「 My Sacrifice」に
次ぐセカンドシングルの登場だ。デビュー当初のパール・ジャムやストーン・テンプ
ル・パイロッツなどのオルタナティヴのフォロワー的なイメージは、コンパクトでキ
ャッチーな曲を普通に書き続け、ヒットチャートの世界での成功を収める事により払
拭されてきたと思う。彼等は日本とアメリカでの評価の温度差があることでも知られ
ているが、さしずめ現代における産業ロックなのではないかと思う。何故なら人気の
理由が薬物や飲酒に明け暮れた退廃期を誇らしげに語る低俗なキャラクターでもない
うえ、メンバーが交通事故に遭えば必死にリハビリをしツアーを続行させたるする真
面目で勤勉なバンドだからである。これはデフ・レパートやナイト・レンジャーあた
りの感覚に近いバンドに感じる。少々勝手な俺の印象を語ってしまったが、この曲は、
パワー・バラードである。前作までの彼等のヒット曲は、ミディアムであっても、バ
ラードには聞こえなかったような気がするが、これはバラードだ。80年代後半から
90年代前半にメタルバンドらが頻繁に流行らしたパワーバラードばりに、最近のバ
ンドにしてはアレンジも派手な上、ストリングス等も被せてあり、80年代指向の3
0代の人達も「最近のにしては、結構いいなぁ」なんていう感覚で聴くことが出来る
のではないかと思う。俺は断じてこういったメジャー受けする(良い曲だから多く聴
かれて、セールスにも結びついて支持されている)バンドの大ヒットを通ぶって馬鹿
にする気は更々ない。だって、聴き易いもん!何も間違っていないよ。宜しくどうぞ!
(奥村)
Why Don't We Fall In Love - Amerie
韓国人の母親とアフリカン・アメリカンで軍人の父親との間に産まれたアメリ(例の
フランス映画とは関係ありません)。アラスカをはじめ、ドイツなど父親の転勤で世界
中の米軍基地を転々とする幼少時代を過ごした模様。しかし将来を見据えて、彼女は
早い時期からダンス教室に通っては、行く先々のタレントコンテストでパフォーマン
スを繰り広げていたとのこと。「彼女は高校時代から才能があると思っていたわ」とは
彼女の出身高アラスカのベルモント高校の先生の弁。(ま、成功したら取って付けたよ
うに誉めるわな(笑))一方彼女は「ただずうっとメアリーJブライジやSWV、トニ・
ブラクストンのCDを聞いていたわ。アラスカでは音楽産業なんか無いから、デモテー
プを作るとかそんなことは一切せず普通の学校生活を送ることが出来たの。これは私
にとっては憧れの生活だったのよ!」と普通の女のコを満喫。高校を卒業すると一家
はヴァージニア州にやっと落ち着くことになり、彼女はジョージタウン大学で英語と
造形芸術の学位を取得。ワシントンDCに移り住むと念願のメアリーJブライジのプロ
デューサー、リッチ・ハリソンと出会うことに。そこからトントン拍子でコロンビア
レコードから今曲のデビューと相成りました。
曲はリッチ・ハリソンのプロデュースでしょうね、と納得の出来。彼女はメアリー
Jブライジより軽い声質だけれども、より若い情熱的な雰囲気で”私達、恋に落ちまし
ょうよ!”ってフレーズが健康的に響き渡る。若いって素晴らしい! 今年の夏はメア
リーJブライジとアッシャーのオープニング・アクトを勤めたアメリ。数ヶ月の内に
は、なんと「あげチン」ネリ−とロードに出てツアーのオープニング・アクトをやる
予定もあるのだとか。アメリ、、飛躍のヨ・カ・ン。(彼女の公式ホームページでは"Why
Don't We Fall In Love" のルダクリスが手がけたリミックスバージョンが期間限定
でダウンロードできます!お早めに!!)(田鍋)
Two Wrongs - Wyclef Jean feat. Claudette Ortiz
再結成が囁かれながらも全くメンバーが集まることのないうちに、それぞれソロキャ
リアを重ねているフージーズ(約1名出遅れがちな人もいるが)。ローリンはアルバム
1作ですっかり俗世を離れた人になってしまい、久々にアコースティックアルバムで
も出してみれば下手下手なギターにもかすれて出ない歌声にも、畏れ多いとばかりに
感嘆されるような存在に(年内にリリースされるというセカンドソロアルバムの出方
次第でもあるが)。一方のワイクレフは精力的にプロデュース業をこなし、デスチャを
デビューさせたりマイケル・ジャクソン/ホイッヒュー/ミック・ジャガーらのビッ
グネームをプロデュースしたりクイーンのリミックスを手掛けたり。一方で自身も2
枚のソロアルバムをリリースする傍ら、自分のレーベルであるブーガベイスメントを
立ち上げて第一弾アーティストとしてシティ・ハイを成功させている(その前にサン
タナと共演したプロダクトG&Bってのもいたっけ)。
さて今回TOP40入りしてきたのはワイクレフのソロ早くも3枚めとなるアルバム
『Masquerade 』からの先行シングル。ゲストに迎えるのはシティ・ハイの歌姫クロ
ーデット・オーティス。実際のとこシティ・ハイについては「フージーズと同じで後
の2人はいらないってかんじ」というリスナーも少なくなく、めちゃめちゃキュート
なルックスで社会派ソングを歌うクローデットにローリンの姿を重ねる向きもあった。
しかし実はローリンとは違って明るめキャラのクローデット嬢、「最近自分のセクシ
ーさに目覚めてきちゃって?」と屈託なく男性グラビア誌にボンテージルックで登場し
たりとなかなか柔軟。もしかしてアイドル狙い?アタマ悪め?という疑惑が頭をもた
げてきたところに、恩師ワイクレフとのこの本格派アコースティック・デュエット。
ダブっぽいリズムにのせてワイクレフとギターを携え真摯な愛を語らうクローデット
のまなざしにはアーティストっぽさが蘇っていて安心したようなしないような。ワイ
クレフの土臭さ漂う唄い回しとクローデットの清涼感を感じさせる声のコントラスト
が印象的だが、何となくエロ親父セルジュ・ゲンズブール+歌のエロさに気づかずに
歌わされているフレンチ・ロリータの図式に近いものがある気も。ワイクレフの敏腕
プロデューサーぶりが光る作品に仕上がっている。(中村)
Long Time Gone - Dixie Chicks
アルバム『Wide Open Spaces』『Fly』がともにダイアモンド・ディスクとなったチ
ックス(DXC とも略すそう)。デビューから 2 作連続の獲得は、過去にはレッド・ツ
ェッペリンとバックストリート・ボーイズだけ(ただしツェッペリンがダイアモンド
を獲ったのは最近のことで、BSB のアメリカでの 1st は世界的には 2ndの位置付け。
ちなみにイン・シンクは 1st と 2nd の間にクリスマス・アルバムがあるので対象外で、
ガース・ブルックスとパール・ジャムはちょっと惜しい)。そんな彼女たちの待望の
3rd アルバム『Home 』は、第一週だけで 80 万枚近くを売り上げ、当然のように初
登場 1 位、Columbia 系列では歴代最高の初週売り上げとなった。
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さて『Fly』が 99 年秋のリリースだから『 Home 』は 3 年ぶりの新作ということにな
るが、その間彼女たちは決して休んでいたわけではない。ツアーは今年初めまで続け
られ、チケット売り上げは実に 4600 万ドル。合間をぬっては冬季オリンピック開会
式に参加し、「 Ready To Run」を生演奏で披露した。また所属レーベルであるソニ
ーと全面的に争い、結局ロイヤリティの増額と自らのレーベル Open Wide の設立と
いう勝利を勝ち取る一方、トビー・キースのお騒がせソングを「カントリー界の恥さ
らし」と一蹴。そんな強気の言動にはカントリーの音楽誌だけではなく、Rolling
Stone などのロック誌、さらには女性誌・ファッション誌までもが注目した。
そんなわけで今やセレブといってもいいほどの知名度を持つチックスだが、アルバム
『Home 』は華やかなイメージとは無縁の作風。レコーディングはナッシュビルを離
れ、彼女たちの故郷テキサスで行い、チックス自身によるプロデュース。そして完成
したアルバムは、ほとんどがアコースティック楽器で構成された、カントリーという
よりむしろブルーグラス。アルバムに先駆けて発表された「 Long Time Gone 」も元々
ガース・ブルックスらに曲を提供していたダレル・スコットのペンによるものだが、
チックスの手によって見事なブルーグラス・チューンに仕立て上げられている。元々
その卓越した演奏力からデビュー前は「プログレッシヴ・ブルーグラス」とまで呼ば
れていたチックス。だからアルバムタイトルは「地理的な故郷」だけでなく、「音楽的
な故郷」も意味するのかも。
作風の変化には、『 O Brother, Where Art Thou? 』のサントラが大ヒットしたこと
の後押しも大きかった。「スタジオでレコーディングしているときにグラミーの授賞
式を見たの。『 O Brother...』が最優秀アルバムを受賞したときはホントに飛び上がっ
て喜んだわ。そして私たちの音楽にも扉が開かれたと確信したの。」と、エミリーが言
うように。一方巷では「彼女たちはブルーグラスを再現することで満足したようだ」
(Rolling Stone 誌)「『O Brother...』のサウンドはブルーグラスとは言えないよ。
でもあのアルバムの成功を自分たちの機会に利用している人はいるね」(ニッケル・ク
リークのクリス・シーリー、というかお前が一番利用してるだろ)などと微妙な評価
も。しかし広義のポップ・ミュージックはある意味勝てば官軍。アルバムの売れ行きを
見れば、彼女たちの選択が正しかったことは明らか。そしてその先には、前人未到の
「デビュー以来 3 作連続ダイアモンド」が待っている。(松本)
Cleanin' Out My Closet - Eminem
あのエルトン・ジョン!との共演だったグラミー3部門獲得が記憶に新しい上、最新
作「The Eminem Show」が全米で600万枚を超えるセールスを記録し、もちそ
の中から「Without Me 」の大ヒット、、、春に離婚してしまった事以外は、絶好調な
大人気振りを見せる彼の、前述アルバムからのセカンド・シングルとして切られたこ
の曲。今回はバラードというかミディアムというか、う∼ん、、スロウである。ミュー
トで弾くギターとピアノと廉価ドンカマが絡む面白いフレーズの上に、彼のラップと
歌が加わるという作品。フォー・レター・ワードが所々聴かれ、英語の全く出来ない
俺にも、彼の育ちと品の良さ(笑)が印象として残る。恐らくオールド・ファンには
L・L・クール・Jの「I Need Love」あたりと比較されそうな曲と言えばつかみ易い
かも。俺的には年齢(31歳)と職業(タクシー運転手)のせいか?今までのハーコ
ー・ラップ・スタイルより、リリックは分からないも、サウンド的にはかなり聴き易
く、この曲のヒットによって彼に好感すら持つようになった。さて、そんな彼は、既
に自ら主演で日本でも近日中に公開予定の自伝的映画「8 Mile」(カーティス・ハン
ソン監督:因みに俺の家の近所では、市川コルトンプラザ/錦糸町シネマ楽天地でカミ
ング・スーンを確認済み)のこれまたカミング・スーンなサントラ盤から、「 Love
Yourself」なる曲を凄い勢いでチャートに送ってきている。
因みに彼には6歳になるヘイリーちゃんなる娘さんがいて、最新アルバムに「参加」
もしくは「コラボ?」もしている。シングル・ファーザーとなった彼は、かなり本気
で子育てに情熱を燃やしているという微笑ましい一面もあり、ハーコーなイメージの
裏でホッとさせられる。
ところで、かなり胡散臭い情報筋によると、彼の身長は154.5センチで、体重
が65.6キロって言うんだけど、そうは見えないなぁ。ってなことで、エミネムに
興味が無いそこの貴方!(一寸前は俺も)「音楽は学習」ってうよく言うけど、やはり
繰り返し聴いていかないと「良さ」も分からないままチャートから落ちるだけで過ぎ
てしまうので、是非立ち止まってこの今に聴こうじゃないすか!案外この曲の「好き・
嫌い」が貴方の若さを測定する「リトマス試験紙」だったりするんじゃ、、、、、で、俺
BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
は勿論!、、、、、、、宜しくどうぞ。
(奥村)
Love At First Sight - Kylie Minogue
Thought that I was going crazy / Just having one those days yeah / Didn't
know what to do / Then there was you / And everything went from
wrong to right / And the stars came out and filled up the sky / The music
you were playing really blew my mind / It was love at fi rst sight / 'Cause !
この“Cause!”。最初のサビに入る直前の、この一声で、腰が砕ける。カイリーの魅力
のすべてがこの一瞬に凝縮されたが如き、甘く、溌剌とした一声に導かれ、ビートが
弾け、ストリングスが音に厚みを加える。静と動が巧みに交錯する緩急自在なトラッ
クと、媚びすぎてイヤらしくなるギリギリの、一歩手前までサービス全開にしたカイ
リーの歌声とが、見事に融合する。表情もポーズも完全に作られ、操作されていた
「Can't Get You Out Of My Head」に対し、この曲のビデオクリップでのカイリ
ーは終止自然な笑顔を見せ、ずっとカメラに目線を向けながら踊り続ける。コレオグ
ラファーから指導された通りにではなく、彼女が曲に合わせ、自然に体を動かす。控
えめながらも実に巧みな映像処理効果が加わり、「 Can't∼」とは違う意味で見る者を
釘付けにする。
「Fever」から、アメリカでは2曲目の、イギリスでは3曲目のヒット。
イギリス版シングルには、ブリット・アウォードで披露された「Can't Get Blue
Monday Out Of My Head」(ニュー・オーダー「Blue Monday」のトラックに乗
せて「Can't Get You∼」を歌った)が収録されている。また、イギリスではこれの
DVDシングルも発売されている。amazon.co.uk 価格で5ポンド(1000円弱)なの
で、下手にシングル買うよりはお得かも。
(しんかい)
ット。彼はその前のアルバム「Place In The Sun」からも、4曲TOP40ヒットを出
しており(一番最後の「My Next 30 Years」は、ベスト盤からのカットともいえる
が)、 2アルバム連続。これは、80’s後半ならともかく、今時かなり珍しい。(ざっと
思いつくのは、デスチャくらいだが、それでもサントラヒット含めてだし。) しかも、
その計8曲の殆どが、20位台後半∼30位台というのが、いかにも彼らしい。
ここ最近、妙に人生訓じみた曲が続いた彼だが、今回の詞は一転、おのろけ一本槍。
God、Swearといった語の使いで多少敬虔な印象も出しつつ、基本は「君のキスで全
ての苦痛が癒され」「君の微笑みで再び活力がみなぎり」「初めての時のように愛し合
い」「君のマジックハンドのソフトタッチで目覚め」といった調子。かみさんがフェイ
ス・ヒルでよかった!という喜びを、真っ正直に書いただけと考えれば、多分そのと
おりなんだろうが、ここまでくると、Unbrokenったって、別の所がどっか壊れてる
んじゃないか? という気もする。ま、30代半ばで人生訓ばかりじゃ、歌うのも聞く
のも辛いから、たまにはいいけど。尚、辛い過去と対比し、「それが君が来た今、なん
て幸せ」という詞の展開は、筆者の世代だと、ジャーニーの「Open Arms」やエア
サプライの「Even The Nights Are Better」を思い出させるものがある。
曲調は、詞の感じから甘々バラードかと思いきや、試聴サイトでサビを聞いた限り
では、それなりにノリのいいポップ・ロック。昨今のカントリー・ヒットの例に漏れ
ず、この曲も、所謂カントリーよりは、かつてのイーグルスやドゥービー、ヒューイ・
ルイスあたりに通じる、泥臭さと軽快さ、豪快さをあわせもった、アメリカン・ロッ
ク然としている。特に、8分の裏を4回連打するキメや、ギターの音にそれを感じた。
ところでこの曲、もう2週ふんばれば、産休明け早々TOP40入りしたフェイス・ヒ
ルの新曲「Cry」と夫婦同時TOP40内となるところ、惜しくも40位台での二アミス
で終わった。が、彼らのこと、そんな記録はここ1、2年で既に20週以上達成済。曲
の組合せも4通りもある。しかし上には上があり、10年前のホイットニー・ヒュース
トン/ボビー・ブラウン夫妻、及び31年前のカーリー・サイモン/ジェームス・テーラ
ー夫妻(当時は未婚)は、夫婦同時TOP10内まで達成した。子供は3人作り、TOP40
ヒットは1アルバム4曲ずつ出すティムでも、2、30位台の常連とあっては、これの
達成はちょっと荷が重いか(笑)。(窪田)
Gotta Get Thru This - Daniel Bedingfield
クラブ・シーンから飛び出した男性シンガーで、あっという間に UKNo.1 ヒット。ス
タイルがどうこうよりも、その現れ方から「白いクレイグ・デイヴィッド」と例えら
れるのも無理はない。ダニエル・ベディングフィールド、ニュージーランドで生まれロ
ンドンで育った 22 歳。6 歳で自分で曲を書き、9 歳で妹たちとともにグループを結
成。16 歳のとき、ロンドン橋を歩きながら恋人への思いを歌にして、自室のベッド
ルームで 1 本のマイクと 1 台の PC で作り上げたのが「Gatta Get Thru This」。つ
んのめるようなリズムに、早口のヴォーカルが乗るクールなダンス・チューン。デモを
片っ端から DJ に送り、やがてコンピ盤『Pure Garage 4』に収録されるとたちまち
反響を呼び、クラブやラジオ局で大ヒット。Top Of The Pops 出演効果もあって、
2001 年末に全英チャート No.1 まで上り詰めた。さらに一旦は年末商戦用の大物ヒ
ットに首位を譲るも、年明けには再度返り咲くという、息の長いヒットになっている。
この曲のヒットでダニエルはすぐにポリドールとアルバム製作の契約を交わすが、彼
に目をつけたレーベルはもうひとつあった。それがアイランド。アイランドはすぐに
北米での契約を交わし、こうしてダニエルのアルバムは英米ほぼ同時発売ながら、別
のレーベルからリリースということになった。英国のアーティストが米国で売れると
きは、スパイス・ガールズやクレイグ・デイヴィッドのように、すでにアルバムが英
国でヒット済みである場合がほとんどなので、ダニエルのように新人のアルバムが英
米で同時リリースという例は珍しい。まあダーティ・ヴェガスのような例もあるけど、
あれは英国ではそんなに売れてなかったわけだし。今後は世界規模の成功を狙って、
こういう新人の売り方も増えるかもしれない。
アルバムではハウスだけにとどまらず、R&Bやファンクへのアプローチも見せるダニ
エル。北米の契約がアイランドということで、同じアイランド系列のデフ・ジャム所
属であるマライア・キャリーと共演するという噂も。音楽における輸入超過国に成り下
がった英国の、逆襲の切り札になるか要注目。(松本)
I Miss My Friend - Darryl Worley
最近のカントリーシンガーはルックスも良くないとなかなかデビューまでこぎつけ
ないのだろうか?私、田鍋にとっては超えがたいそのハードルもDarryl Worleyは難
なくクリア。彼はアイドル的要素が幾分漂う最近のカントリーシンガーの傾向に違わ
ない若くて甘いマスクの持ち主で、ロマンティックなメロディーと歌声で駄目押しを
しつつ、一方トラディショナルな面を持ち合わせたナイス・ガイ。大学では有機化学
を副専攻し生物学の学位を会得しつつ、その化学的知識で密造ウイスキーをこしらえ
ては飲みまくり、安酒場でどんちゃん騒ぎをする男なのだとか。ルックスがいい=仮
想敵と想定していた私もつい、そんな逸話を聞くと話が分かるヤツじゃないかと親近
感が湧くものである(笑)彼はいろいろな職を転々としながら、唯一週末のバーで歌
うことだけは継続していたのが吉と出たのか果たして99年晴れてドリームワークス
と契約を結ぶに至る。そして同レーベルから2枚目のアルバム『I Miss My Friend 』
からの第1弾同一タイトルシングルが今回目出度く40ヒットになったというわけで
ある。
さて今曲のタイトルでは「友達を想う」とのことなのだが、どうやら友達というよ
りも現在目の前にいない恋人あるいは妻を寂しく思っていると判断したほうが自然に
うなずける内容の歌詞である。しかし何故LoverでもWife でもなくあえてFriendなの
か、、、。おそらく、かつては恋人、妻であった女性が、今は友達の関係になってしまっ
ている状態で、それでも主人公は彼女に対する恋する気持ちを払拭することが出来な
い状態なのでしょう。なかなかカントリーの伝統に即した苦酸っぱい味わい深い曲だ
ねぇ。
10月はTrace Adkinsと「Big Men of Country Music Tour - Size Does
Matter」というツアーを敢行。ルックス勝負ならぬ、サイズ勝負とのことらしいが、
一体何のサイズなのだろうか(笑)(田鍋)
Good Times - Styles
Unbroken - Tim McGraw
約1年半前のリリースの「Set This Circus Down」から、実に4曲めのTOP40ヒ
ヒップホップシーンもますます多様化を増し、新陳代謝を激しくしている今日この
頃、最近嬉しかったのはLLクールJの復活だが、ことほどさように90年代後半盛り上
がったヒップホップシーンを彩っていたアーティスト達の噂は、パフ・ダディ(=P.
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ディディ)なんかは別にして最近はめっきりと聞かなくなっている。そんな中で突然
トップ40に初のソロヒットシングルを送り込んできたのが、ロックスのメンバー、ス
タイルズことデヴィッド・スタイルズ。ロックスといえばもともとメイス(懐かしい!)
や今をときめくキャムロン同様パフ・ダディ門下生で、あのメアリー・J・ブライジ
と同郷のNY北部郊外のヨンカース(うちの近所です)出身で彼女に見いだされて、パ
フィの「All About The Benjamins」やマライアの「Honey」なんかに客演して知
名度を高めた後1998年にバッド・ボーイからアルバム『 Money, Power & Respect』
をいきなりチャート3位に送り込んでデビューしたあのロックスである。その後
2000年にラフ・ライダーズにちゃっかり移籍してアルバム1枚を出した以外は、メ
ンバーのジェイダキスがマイヤやイヴと共演して小ヒットを記録したくらいでもうす
っかり噂を聞かなくなってしまっていたロックスの面々だったが、ここでいきなりど
ちらかというとメンバーでは一番地味目だったスタイルズがソロデビュー、アルバム
『A Gangster And A Gentleman』もいきなりアルバムチャートの6位にまで昇る
本人もびっくりの大ヒットとなったというわけ。
ロックスといえばどちらかというとバッド・ボーイ時代からストリート指向でハー
ドコアで音作りも贅肉を削ぎ落としたような荒々しいマッチョな感じを漂わせていた
のだが、今回のこのスタイルズの新曲はタイトルからも察せられるように、そういう
従来の感じからは180度異なる典型的なパーティ・チューン。スイズ・ビーツのプロ
デュースとあって、キレのあるベーストラックの上に、ピッチを上げたような女性コ
ーラスが「I get by, by, by...」と絡み、それにスタイルズのドスの利いたフロウが絡
む、というもので、ビデオクリップも「昔からのダチだ」というシカゴ・ブルズのフ
ォワード、ジェイレン・ローズがチラリ出演する、女の子とパーティがふんだんにテ
ーマとして盛り込まれたいわゆる「売れ線仕様」。スタイルズ自身も、「この商売は何
せラジオでちゃんとかかって、ビデオが放映されることが大事だ。できるだけ長いこ
とラジオとTVで露出しないと成功しない。それがこの業界の商売のやり方ってもんだ。
だからあの曲のコーラスも『 I get high, high, high...(ドラッグでのトリップを連想)』
だったのを変えたのさ。前のままではラジオはまずかけちゃくれねえ。そういうのが
大事なんだ」うーんスタイルズ君すっかり青年事業家風のコメントをしてますが、今
回のアルバムもゲスト満載のトラックを揃えてヒット狙い度満点。次のシングルに予
定されているアンジー・ストーンとリル・モーをフィーチャーした「Black Magic」
や、この春に交通事故で亡くした弟についての「My Brother」など聴き所も多そう。
この「Good Times」だけでなくまだまだスタイルズ君のブレイクは続きそうだ。
(阿多)
Feel It Boy - Beenie Man feat. Janet
気持ちいい!もう最高に気持ちいい!!
とりあえず叫んでみた。でもそのくらい聴いていて気持ちよく、思わず体を動かした
くなるような曲である。
この曲のプロデュースを担当しているのは、現在絶好調のネプチューンズ。というこ
とで、どれほどまでエキセントリックな音を創り出してきたのかという点に着目しが
ちだが、そこは今最も勢いのある彼ら。相変わらずのブヨブヨした音を織り交ぜつつ
も、決してヴォーカルより前面に出ることのない、滑らかなトラックを準備してきた。
そのさじ加減は絶妙だ。
そしてそれにライムを乗せ、曲の展開を引っ張るのがビーニー・マン。最新アルバム
『Tropical Storm』を出したばかり(この曲は当該アルバムからのファーストシング
ルである。)の彼は、ご存知のようにジャマイカ出身。普通ならジャマイカ? レゲエ?
夏という安易な構図を想定しがちだが、ここではそんなことは忘れよう。そもそも彼
は全世界を視野に入れてアルバムを制作しているようで、そのようなジャンル分けは
無用である。それはこの曲のポップな作りに触れれば一目瞭然だ。
そのポップさの演出に大きく貢献しているのがジャネット。彼女がサビ部分をお得意
の可愛らしいポップ路線で歌い上げることにより、曲の雰囲気がグッと柔らかくなる。
80年代からポップなR&Bを数々歌いこなしてきた彼女にとって、こうした仕事はお
手のもの。
いろいろ回りくどい説明をしてしまったが、やはりこの曲の魅力は自分の耳で聴き、
BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
体で感じてみて欲しい。とにかく気持ちいい!(? 冒頭に戻る)(小川ボ)
If I Could Go ! - Angie Martinez feat. Lil' Mo & Sacario
アンジー・マルティネスはニューヨークのラジオステーションHOT97
(97.1WQHT)の看板DJ。月曜∼木曜の午後の番組、そして金曜夜の「Ladiesユ
Night(アンマルが過去にリル・キム、ダ・ブラットらとヒットさせた曲と同名の番
組)」と、毎日出ずっぱりの売れっ子。ファンクマスター・フレックスの番組のアシス
タントからキャリアをスタートし、ラジオ番組のインタビューを通じて数々のラッパ
ーとの交流でも知られている。
そんな人脈を武器にヒップホップ界をスムーズに渡り歩いてきたアンマルだが、ここ
にきてジェイZとナスとのビーフに巻き込まれ、キャリアを脅かしかねない事態に。
まず2人がお互いをディスった「The Takeover」「Ether」を発表。HOT97はリス
ナーにそれぞれの優劣投票を募り、結果ナスが勝利。しかし97.1WQHT主催サマー
ジャムのステージで、ナスがHOT97側からパフォーマンス中のジェイZへのディス
を禁じられたことから(前年のサマージャムはジェイZがナスとプロディジーをディ
スった曲で幕を閉じた)ナスはステージには上がらずライバル局Power 105の番組
でHOT97を批判。アンマルも結局HOT97のステージに姿を見せなかった。HOT97
のナスへの決定は必ずしもアンマルの意思とは相容れないものの、アンマルは語る。
「ジェイZはシングルもいっぱい出してるし、コマーシャリズムをうまく利用してい
るラッパー。でもナスは今回の件について凄くセンシティヴになってる。ナスは高い
スキルを持ったドープで尊敬すべきラッパー。ここでジェイZとのビーフに固執して
ランダムで猥雑なばかばかしいライムを乱発してそのキャリアを台なしにしてほしく
はないの。」
さて今回のシングル「If I Could Go!」は彼女のセカンドアルバムとなる『Animal
House』からの先行シングル。このアルバムタイトルは、アンマルが毎日働き詰めの
日々で自分の居場所について例えたもの。18時間くらいぶっとおしで働いてる時に思
い付いたらしい。とはいえ「ラジオの仕事とラッパーとしてのキャリア、どちらかを
選ぶなんて考えられない」と常に自分の仕事へ愛着を感じている上でのネーミング。
そしてこのシングルも「バケーションとりたい!」の意味がこめられた多忙人間アン
セム。ちなみにアンマルが休暇をとれたら「プエルトリコでのんびりした∼い」だそ
うで。
ゲストに迎えたのはかつてのフィーチャリング女王のリル・モー、そしてこれからア
ンジーがデビューさせるラッパーのサカリオ。リル・モーはすっかりその座をアシャ
ンティに奪われたような気もするが、実は今年8月19日に女児を出産。妊娠がわかっ
た時にファンから赤ちゃんの名前を公募したりしてたが、結局ヘヴン・L・ストーン
(ストーンは父親の姓)に落ち着いた。一方のサカリオはアンマル主催のレーベル「ア
ニマルハウス」の第一弾アーティスト。ジェイZ似のフロウで既にシングル「 Live Big」
もフロアを賑わせている期待の新人。ラジオDJとラッパーの二足のわらじを履きこな
すアンマル、新しくレーベルのオーナーという肩書きも加わってますます忙しくなり
そう。プエルトリコでの休暇はいつ取れることやら。(中村)
Ten Rounds With Jose Cuervo - Tracy Byrd
1970年代生まれでアイドル的なルックスを売り物にした“イケメン・カントリー”ア
ーティストが続々と登場する最近の男性カントリーシーン。かつて大変な人気を誇っ
た1990年代の元“イケメン”たちは世代交代の波に押され、いい加減中身を伴った“い
い大人”としてカントリー界を支えていかなければならない立場に置かれつつある。
そんな訳で若手と中堅の間に位置する、日本でいえば昭和40年代生まれのアーティス
ト(ミーンタイマーと同年代くらい)は近頃色々と苦労が多い。特に「 9.11」以降重
大な社会問題に直面せざるを得なくなった彼らは、ある者は星条旗を掲げながら攻撃
的なメッセージを発して喝采を浴び、またある者は突然愛するものを失った悲しみを
内省的に歌って、それぞれの見解を表明している。
そんな中90年代の“イケメン”代表トレイシー・バードのシングルが登場。昨年発表し
たアルバム「Ten Rounds」からのアルバムタイトル曲、ということは勝負曲をこの
時期になってようやくリリースするのは、恐 らく「9.11」の暗い世相に気遣ってのも
のだったと思われるが、それもそのはずこの曲の中で彼が10ラウンド戦を繰り広げて
いる相手は“ホセ・クエルボ=テキーラ”なのだ。
数年前「田舎者でなにが悪い!」と豪快に開き直ってみせた「 I’m From Country (and
I Like It That Way)」を大ヒットさせた彼の本領は、その陽気さ。テキーラの杯が進
むにつれヘベレケになっていく様子がユーモラスに語られるこの曲は彼にとって久々
のカントリーチャートナンバー1ヒットとなり、また私生活でもつい先日第3子に恵ま
れるなど順調そのもの。彼のような存在は、シーンに幅と厚みを持たせてくれている
のだ。(八亀)
I Care 4 U - Aaliyah
遺作となってしまったセルフタイトルのアルバム「Aaliyah」からの3曲目のトップ
40ヒット。早いもので彼女のあまりにも早過ぎた死( 2001.8.25)から1年が過ぎ
た。思い起こせば彼女の死があまりにも突然すぎて多くの人々がまだ現実を冷静に受
け止められずにいるうちに9月11日つまり同時多発テロの日をむかえ、人々はさら
なる悲しみのふちへと追いやられた。当初そのダメージがあまりにも大きいので彼女
の死さえも風化してしまうのではないかとの
心配もあったがこうして1年たってもヒットを出し続けている。この歌の中で彼女は
「慰めてあげる/気になるの/何も心配ないわ/電話してくれればすぐに駆けつけるわ」
とまるで世界中の人々の不安を知っていたかのようにやさしくメッセージを投げかけ
てくれる。彼女が主演した映画も公開された。まさにそのすばらしい才能で輝ける未
来を手にしたと思った瞬間に幸せがその両手からすり抜けてこぼれていってしまった
彼女。改めて冥福を祈りたい。(篠崎)
Hey Ma - Cam'ron feat.Juelz Santana, Freekey Zekey & Toya
ROC-A-FELLA への移籍が功を奏したのかキャムロンがアルバム『Come Home
With Me 』から全米ポップチャートで2作連続トップ5入りを果たしました。彼が移
籍したROC-A-FELLA レコードといえばもう説明の必要も無い現ラップ界の巨頭ジ
ェイZが旗揚げしたレーベルですが、現地でのレーベルのプロモーションも良くお蔭
様でキャムロンの音楽もようやく一般リスナーの耳まで届くようになりました。
ブレイクの背景にはレーベルのブランド力やビジュアルの良さも確かにあるでしょう
が、やはりジェイZ秘伝のポップス系に巧くクロスオーバーできるプロダクションの
妙につきると思います。「あのジェイZと同じ音」ですから貴局のリスナーにおかれ
ましても関心が高くなるのは必至です。前曲に引き続きこの「Hey Ma」でもジェイ
Zが「Izzo (H.O.V.A.)」で完成させた過去の名曲を分からない位切り貼りして仕上げ
るという職人技が施されています。今回素材に使われているのはライオネル・リッチ
ーも在籍したコモドアーズの大ヒット曲「 Easy」です。ご存知のようにあの切なくな
るピアノを使っているわけですが、ブツ切して繋げるとアラ不思議!このように見事
なほのぼのソングとして生まれ変わるわけです。クラブで女の子を口説くようなやり
取りがそのままサビになっているのも斬新です。こういう掛け合いソングは何となく
昔のヒップホップの香りがして旧来のヒップホップ・リスナーも懐かしさを覚えるの
ではないでしょうか。
ところでキャムロンの最近はというと、出演2作目となる映画「Death Of A
Dynasty」の撮影現場へ向かう途中、交通違反で警察に止められ不覚にも車内から多
量のマリファナとハンドガンを発見され逮捕されてしまいました。一方兄貴分である
ジェイZのほうはというと99年にマンハッタンのクラブでランス・リヴェラをナイフ
で複数回刺した容疑で1年前から3年間の保護観察処分に入っています。ところでこ
のリヴェラという男ですが、実は当時自分のレーベルを持っていたんですが、訴訟だ
の何だので所属アーティストをずっと飼い殺しにしてきたプロデューサーです。挙句
の果てにレーベルも潰れてしまいました。当然所属するアーティストもその音楽人生
を汚されるわけで、最近マーダー・インクに移籍したチャーリー・ボルティモア、そ
してこのキャムロンもその被害者です。そういう経緯でやっとのこと新天地で第2の
音楽人生を順調に歩みだせたキャムロンの音楽を、これからも引き続きご贔屓下さる
様、宜しくお願い致します。(はまべ)
リークルーなどのロックバンドが人気だったなか、父親の血の影響なのか独りトラデ
ィショナルカントリーに埋没し、浮いた存在であった。「(モトリーとか)彼らの音楽
は確かにクールだし、いいと思うけど、音楽としての情熱を鑑みると、いいとは思え
ないんだよな。」彼は主にジョージ・ジョーンズ、マーレ・ハガード、マーティ・ロビ
ンスなどのクラシックカントリーのレコードを好んで聞いていたようで、80年代、
90年代ものでは彼らの影響を受けたランディ・トラヴィスやアラン・ジャクソンを
進んで聞いていたという。とりあえずロックバンドの真似事もしてみたが、結局駄目
だったとのこと。夜にDJ家業をし、昼間は車のディーラーショップでメカニックを担
当して食いつないでいたところ、プロディーサーのランディ・エドワーズが客として
店を訪れた。そのときラジオに合わせて歌っているニコルズの歌声を聞いて、彼の表
現力に心動かされたランディは彼をランチに誘いスカウトしたのだという。やれやれ
やっとスポットライトを浴びることになったかと思いきや、世の中そんなに甘くなく、
1996年、最初のレーベル、インターサウンドレコードから不本意ながらガースブ
ルックスもどきのスタイルで登場しやはり不発、解雇。次にワーナーブラザースに移
籍するも会社の合併で、何の実績もない彼はリストラされてしまう。しばらくどこに
も所属しない状態でいろいろなレコード会社からちょっとしたアルバイトの仕事をも
らいながら数ヶ月間、食いつないだ模様。しかし2000年になるとアラバマやゲリ
−アランとの仕事で名の知れたセッションギタリスト、ブレント・ローワンから作曲
の依頼を受ける。果てさて結局は二人で意気投合、共同製作を行い、自分達が本当に
聞きたい、一切コマーシャリズムに妥協しないトラディショナルカントリーに裏打ち
された作品を2年がかりで完成させたのである。それを今回新進レーベル、
”Universal
South”が目をつけ、『 Man with a Memory 』なるタイトルでアルバムとして結晶さ
せる。そこから今曲「The Impossible」を第1弾シングルとして今回満を持してカッ
トしたのである。この曲の中に次のような一節にある。
もう、終わったなんて言わないでくれ
君と僕はまだあきらめちゃいけないんだ
望みが無いなんてことは決して無いのだから
彼は妥協せずに製作した作品がヒットして世に受け入れられた今、何を思っているの
だろうか。今までの苦労も噛み締めながら今ごろ男泣きしているのかもね。(田鍋)
I Keep Looking - Sara Evans
これは予想外のヒットである。この曲は彼女の通算3枚目のアルバム『Born To Fly』
から、「 Born To Fly」「I Could Not Ask For More 」に続く3曲目のTop40ヒット
である。何が予想外かと言うと、このアルバムが出たのは2000年の末、上述の二曲
がヒットしたのも、それぞれ一昨年末と昨年夏。つまりこの曲のヒットまで一年もの
インターヴァルが存在している。カントリー系アーティストはシャナイア・トゥウェ
インなどの例外を除き皆1∼2年以内に新作を出してくるだけに、今回も彼女がニュ
ーアルバムを出したのかと勘違いした方も多かったのではないだろうか。
さて、このサラ・エヴァンス略してサラエヴァの持ち味はその歌唱の包容力にある。
伸びやかでゆったりしたその優しい歌唱は、バラードを歌わせれば一級品。これまで
彼女のバラードに癒されてきた人も少なくなかろう。しかし。彼女の作品の中には一
部ミドル∼アップテンポのナンバーも存在する(「 Born To Fly」もその一つ)。そう
いった曲を歌う際には、その歌声は突如張りを帯び、力強い歌唱を見せる。
そしてこの曲。これまでの彼女の作品の中では最もロック色の強いナンバー。今まで
になくかき鳴らされるギター音をバックに、負けじと彼女の歌唱も気合が入る。「 I
Could Not Ask For More 」のカヴァーによりロックナンバーへの対応を披露した彼
女が、またしてもカントリーの枠を取り払った活躍を見せてくれる。今後も文字通り
"keep looking for something more"な精神を保っていって欲しいものだ。
(小川ボ)
The Impossible - Joe Nichols
新進レーベル”Universal South”より登場の男性カントリーシンガー、ジョー・ニコ
ルズ。彼はあたかも順風満帆にさっそうと登場した若き才能あふれたアーティストと
まず思われがちだが、結構苦労人だ。アーカンサス州、ロジャースに生まれたとき、
父親はトラック運転手兼、ローカルカントリーバンドのべーシストだったが、既に両
親は離婚しており彼は母親のもとに引き取られた。高校時代は廻りがAC/DCやモト
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Stingy - Ginuwine
“ぶらぴ”と言えばブラット・ピット。“ぶらぺ”と言えばブラット・ペイズリー。
“ぶらまく”と言えばブライアン・マクナイト。“ぶらまこ”と言えばブライアン・マイケ
ル・コックス。
ジャギド・エッジの一連のヒットや、アッシャー「U Got It Bad」などを手掛けてい
BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
るブラマコが、この曲のライター&プロデューサー。もともとジャーメイン・デュプ
リのサポート的な役割からスタートしているが、ことR&B系の曲に関してはデュプリ
よりも才能があるのは間違いないだろう。
30位台∼40位台を何度も上がったり下がったりと、変なチャートアクションを見せ
ているジニュワインの新曲は、「 Barber Shop」サントラからのカット。タイトルの
読みは“すてぃんぎー”ではなく“すてぃんじー”。貧弱な、とかケチな、の意。この曲で
は女性に向かって、君は最高だぜ独占したくてしょうがない、そんな俺ってstingyだ
けど君があまりにも魅力的なせいだぜベイベーという感じで使われる。ありがちな曲
調で、予定調和で終わってしまっている感は否定できないが、曲の出来にもジニュワ
インの歌にも、特に文句をつけるべき理由は見当たらない。
映画のほうはアイス・キューブやイヴ、コメディアンのセドリック・ジ・エンターテ
イナーらが主演するコメディで、ボックスオフィス1位の大ヒット。しかしサントラ
のほうはそれほど大スター勢揃い!って感じでもなく、それほど売れなかった。
(しんかい)
Mess」は早くもカントリー・チャートで No.1 と、バンドにとって第二の黄金時代が
訪れたよう。この曲はサザン・ロックのようにゆったりとしたうねりを持つナンバーで、
ヴァースではマイナー調だが、コーラスでメジャーに転調し、爽やかなコーラスで盛
り上げる。ちょっとエフェクトがかかったヴォーカル処理も印象的。これで彼らにと
って 3 曲目の TOP40 ヒット。しかしベスト盤には TOP40 ヒットが全く収録され
ず、それ以降に発表されたアルバムから毎回1 曲ずつ TOP40 入りというパターンで、
音源集めている人は大変だなという感じ(他人事)。ブルックス&ダンみたいに同じア
ルバムから固め打ちだったらまだ諦めがつくんだろうけど(何の?)。
ちなみにメンバーのジミーとダナは先日、CNNのヘッドライン・ニュースに出演。
「PCに対するMacのメリット」をディベートしたのだとか(何者?)。一方、別れた
恋人への思いを歌った昨年のヒット「One More Day」をモチーフにステファン・デ
イル・ジョーンズ、ボビー・トムバーリンとバンドが執筆した同名の本( CD付き)も
出版された。新作が出たというのにツアーが週に1-2回しか組まれておらず、なんか
暇そうにしてるのかと思ったら意外と副業に忙しいようで。(松本)
Trade It All - Fabolous feat. P.Diddy & Jagged Edge
Ordinary Day - Vanessa Carlton
ファボラスというとどうしても小物(笑)という印象がある。そもそものブレイク
のきっかけが曲も書けて歌もうまい才女、リル・モーのヒット「 Superwoman Pt. II」
にフィーチャーされてたというものだけに、実は小物どころか小々物かもしれない
(爆)。冗談はさておき、既に初のメイン・クレジット・ヒットである「 Can't Deny It」
(25位)を軽く抜いて彼のキャリア上最大のヒットとなっているこの曲、アイス・キュ
ーブがイブと共演してコメディに挑戦したのが受けたかちょっと前まで全米映画興行
売上成績トップだった映画『Barbershop』のサントラからのカット。P.ディディと
ジャッギド・エッジという大物2組をおそれ多くも従えたミディアム・アップのパー
ティー・チューンだが、ジャッギド・エッジのケイシー兄弟がペンを取っているとい
うこともあって、これがまんまジャッギド・エッジ・フィーチャリング・ファボラス
(笑)という感じになっているのがいかにもこいつらしくて笑える。従って曲は手堅
いし、プロデュースもDJクルーということでヒット性も充分、ここまで上がって来て
まあ当然という感じでしょう。こうなってくるとファボラスとしての存在感が気にな
ってくるわけだけど、彼も12/3に2作目の『Street Dreamz 』(なーんかどっかで聞
いたことのあるタイトルだなあ、これも。リル・ウェインの『500 Degreez』と並
んで真似っこタイトルの双璧だなあ)をリリース、先行シングルの「 This Is My Party」
(これも彼らしいタイトルといえばいえる)をカットしたばっかりのようだし、年末
にかけて盛り上がるかもしれない(盛り上がらないかもしれないけど)。
ヴァネッサ・カールトン、1980年8月16日生まれの22歳。誕生日は22年年上のマ
ドンナと同じである(マメ知識)。デビュー曲「A Thousand Miles」が日本でも大
ヒットし、先日には初の来日公演で見事なパフォーマンスを披露した(行きたかった
よー!)。前後に同じく新人の女性シンガー・ソングライターであるミシェル・ブラン
チやアヴリル・ラヴィーンが鮮烈デビューを飾っただけに少々影が薄くなりがちだっ
たが、しっかり二曲目のシングルをTop40に送り込んできた。
現在ファボラス君は、ネリー、ビッグ・タイマーズ、アメリーという今をときめく
連中とのパッケージで全米ツアー敢行中。人気はネリーに完全に集まりそうなパッケ
ージだけど、どこまでファボラス君が頑張って新作の売上につなげられるかというと
ころ。また最近彼はDJクルーらと、バスケの人気ビデオゲームソフト『NBA Live
2003』の最新版にキャラクターで登場して、「 It's In The Game 」という新曲もゲ
ーム中で使われているとか。このゲーム、毎年NBAシーズンが始まる今頃になると当
年度版が発売されるのだけど(メジャーリーグも、NFLもそう。日本と同じだね)、
今回の2003年版にはこれ以外にもスヌープ・ドッグ、フリップモード・スクワッド
withバスタ・ライムス、ノー・グッドといった連中の曲がふんだんに使われてて、ヒ
ップホップ・ファンは要チェック!という感じです(何か某音楽雑誌みたいになって
きたな)。ともあれ、このシングルでも小物的なイメージが拭い去れてないファボラス
君、新作で一皮むけるか、要注目です。(阿多)
Beautiful Mess - Diamond Rio
ちょっと前ならヘヴィ・メタル・バンドみたいだとか、最近だと MP3 プレーヤーみた
いだとか、カッコいいのか悪いのかわからないバンド名が印象的なダイアモンド・リ
オ。実は往年のトラック・メーカー、ダイアモンド T とレオからとった名前だとか。
これに反応した人はオールド・タイマー。そう、レオは 80 年代初期に活躍した田舎
系アリーナ・バンド、REO スピードワゴンの由来でもある。しかしそのサウンドは名
前やルックスとは裏腹に意外に洗練されてたりするので侮れない。
さて前作『One More Day』は 3 年ぶりのアルバムということが話題だったが、今回
はわずか 1 年のインターバルで『Completely』を発表、1st シングルの「Beautiful
アルバム『Be Not Nobody』のオープニング・ナンバーでもあるこの曲は、彼女の
呟くような歌唱から始まる。曲全体を通して、語りかけるように歌うところはジュエ
ルあたりを思わせる。接続詞を頻繁に使って文章を繋いでいく切れ目なしの滑らかな
展開は、バックのピアノの演奏を効果的に前面に押し出した「AThousand Miles」
とは全く対照的だ。
彼女の歌唱にはミシェルやアヴリルのようなパンチ力はない。しかし、日常会話さな
がらの話し言葉のようなその歌唱は、まさに「 Ordinary Day」を表現するにぴったり。
一撃必殺のインパクトこそ欠けるものの、自らの等身大の姿をそのままに伝える力を
備えている。今後彼女がどのような道を歩むかは知る由もないが、自分自身を表現す
るための自分流の歌唱をしっかり身につけてくれれば、息の長い活躍が期待できるか
もしれない。将来が楽しみ。(小川ボ)
Underneath It All - No Doubt feat. Lady Saw
アルバム『Rock Stesdy』からの3曲目のトップ40ヒット。ヴォーカルのグウェン・
ステファニーは先日ようやくブッシュのギャビンとゴールインして今は人生の中で公
私共に充実した時を迎えている。(何でもそれぞれの関係者にお披露目するために場
所を変えて二回も結婚式を行うとか。)今回のアルバムはそういった大きなイヴェント
に先駆けた時期に製作されたということも影響してか以前の作品にあった荒削りでス
トレートな部分はやや後退して(ある意味そこが彼らの魅力だったのでその点では少
し残念。)余裕というか貫禄すら感じる。このアルバム発表以前にグウェン嬢が成功さ
せた武者修行というか異種格闘技選手権(モービーやイヴとの共演)もけして無関係
ではないと思う。アウェーでの成功を手土産に今度はホームである自分のバンドに他
のジャンルのアーティストを招き他流試合をということでこの曲でその相手に選ばれ
たのはレゲエ界の実力派レディー・ソウである。彼女はこれまでにもシャバランクス、
ビーニーマン、シャギーなどとの共演の実績がある。さてグウェン嬢は次はいったい
どこを目指しバンドはどこまで大きくなるのか?ますます楽しみである。(篠崎)
Where Are You Going - Dave Matthews Band
シングルヒットの数は少ないものの、今やアルバムを出せば確実に1位という安定し
た人気を誇るモンスターグループへ成長したデイヴ・マシューズ・バンド。前作の
『Everyday』はプロデューサーにエアロスミスやアラニスとの仕事で知られるグレ
ン・バラードを起用し、クオリティの高さはそのままにポップ性も兼ね備えた楽曲群
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で初登場週で73万枚を売り上げた。しかし実はこの作品、スティーヴ・リリーホワイ
トをプロデューサーに迎えて一度レコーディングしたものをボツにしてお蔵入り状態
にした後に作られたという経緯が。結果こちらの音源はネット流出してしまい「The
Lillywhite Sessions」と呼ばれる海賊版状態に。そして今回のアルバム『Busted
Stuff』はその音源を新たに別のプロデューサーを迎えて作り直したちょっとイレギ
ュラーなもの。内容もアコースティック・セッション風の地味めな曲が多い仕上がり
となったが、それでも初登場週で60万枚を超えるセールスを記録。セールス不振の昨
今のレコード業界でデブマの貫禄を見せつけることになった。
さてそのアルバムからのシングル「 Where Are You Going」は何ともシンプルな曲。
道端のギター弾きが気分にまかせてぽろぽろと歌ってみた、といった風情の気負いな
いメロディーとリリック。人生を模索して悩めるパートナーに対し、答えも出せなけ
れば何もしてあげることもできない無力な自分。それでも君の行くところへはついて
いくから、疲れた時には寄り添ってくれていいよ・・・ってな少ない言葉で誠実な愛
(ビミョーにストーカー入ってる?)を捧げる歌。こんな何のてらいもない曲がチャ
ートインしてくるのもツアーで着実にファンを掴んできたデブマならでは。いくつか
の切ない恋を経験してきた大人には何となく身に覚えのあるシチュエーションを味わ
い深く歌うこの曲、ライヴでは思い入れたっぷりなファンたちで合唱状態かも。
デイヴ・マシューズは来月7日、12月1日の国際エイズデープロモーション用にMTV
でソロ・アコースティック・ライヴを収録する予定。この曲もやってくれるかも。
(中村)
Like I Love You - Justin Timberlake
今更、説明不要かもしれないけれど、人気ポップ・グループ、インシンクの看板スタ
ーであるジャスティン・ティンバーレイク、この曲は彼のソロ・デビュウ・アルバム
からの先行シングル。一方、プロデュースを手がけているのもこれまた説明不要の超
売れっ子ヒット・メイカー、ネプチューンズ。ジャスティンの所属するJIVEレコ
ーズは、90年代暮れからマックス・マーティンをはじめとする北欧系プロデューサー
による80年代ポップスの現代風解釈によって一大旋風を巻き起こしてきた。しかしそ
のブームが一段落付きはじめた昨年あたりからはアメリカ国内のR&B系サウンドも
積極的に取り入れるようになってきた。そしてそれに一役買っているのがネプチュー
ンズである。
「セルアウト!」と白人に迎合するブラック・ミュージックを半ば軽蔑する言葉が横
行した90年代。それはラジオ・フォーマットの細分化によって、音楽が専門性を追及
しはじめた10年でもあった。しかし最近は再び黒人音楽と白人音楽との垣根を壊す流
れがポップ・ミュージックの中に存在する。昨年のデスチャの大ブレイク、女性ラッ
パーであるイヴの曲が40系ラジオ局で大ヒットしたことはまさにこの事実を象徴す
る出来事だといえるだろう。そうなると今度は黒人、白人音楽を統合するスーパース
ターの存在がシーンから切望されるようになるのも当然の流れなわけで、このジャス
ティンの新曲は彼が現代のマイケル・ジャクソンを狙ったナンバーだといえるだろう。
ネプチューンズが少年時代を過ごした80年代はマイケルやプリンスといったブラッ
ク・ミュージックのスーパースターが、同時に白人ポップスのスーパスターにもなれ
た時代であった。それを子供ながらに眺めていたネプチューンズの2人が「マイケル
やプリンスのように自分達の音楽が白人にも通じるのかどうか?」その可能性にチャ
レンジしたいと思うのはごく自然なことなのだろう。既にR&Bフィールドで最大級
の成功を収めた彼らの次のステップとして。ポスト・マイケルということではR&B
フィールドにはアッシャーというスターがいるわけだけれど、彼の最新作ではまだ黒
人と白人音楽との垣根を完全に取っ払ったというインパクトにまでには至っていない。
それなら既にポップ・フィールドでスーパースターの地位を掴んでいるジャスティン
という素材をネプチューンズが黒人音楽風味で料理するというアプローチも面白いか
もしれない。
アルバム制作に際して、ネプチューンズとジャスティンはマイケルの『 Off The Wall』
と『Thriller』を何度も聴きながらそのフィーリングを掴もうとしたそうだ。ティーン
向けポップ・スターからの脱皮を図りたいジャスティンとポップ・フィールドでも成
功したいネプチューンズ、この両者の思惑が合致し手を組んだアルバムからの先行カ
ット。かなりいい出来に仕上がってると思うのだけれどどうだろう?
少なくとも90年代的な閉鎖性を打ち破る作品とは言えそうだ。アメリカのポップ・ミ
ュージックは常に黒人音楽と白人音楽とがぶつかり合い、それが溶け合うことによっ
BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
て進化してきた。再び黒人と白人音楽とのコラボが積極的に行われるようになってき
た最近のポップ・シーンはマイケル、プリンスの大活躍をリアルで体験してきた世代
には何かワクワクさせられる空気をはらんでいる。(daboy)
d a b o y appears courtesy of “ American Music Chrocnicles”
Somebody Like You - Keith Urban
オーストラリア出身(生まれはニュージーランド)のシンガーソングライター、キー
ス・アーバンのサードアルバム『Golden Road』からのファーストシングル。元々
はマーティン・ペイジやデスモンド・チャイルド系の裏方な人だったが、セルフタイ
トルの前作からは「Where The Black Top Ends」や「But For The Grace Of
God」などがヒットし一躍表舞台へ出てきた。
ところで、この曲のビデオに一人の女性が出演している。
彼女は昨年交通事故に遭い瀕死の重傷を負ったスーパーモデル、ニキ・テイラー。事
故の原因は携帯電話。彼女はその時友達の運転する車の助手席に乗っていたのだが、
その子が着信した携帯を取ろうとしてハンドル操作を誤まり車ごと電柱に激突したの
だ。結果彼女は肝臓の破損と極度の腹部内出血で瀕死の状況だったらしい。しかし難
儀な手術の末奇跡的にも一命は取り留め、長いリハビリの後こうやって仕事をキャン
セルせずにキースのビデオに出演することができた。彼女はあるインタビューで、こ
こ数年の私が送ってきた境遇とオーバーラップするものがあってこの曲にはすごくイ
ンスパイアされるものがあった、と語っている。
この曲のビデオが撮影されたのはロスの街中から車で1時時間近く走ったところにあ
るマリブキャニオンというところ。私はもちろん行ったことは無いが都心からさほど
離れていないのにすごく大自然でのどかな所らしい。ビデオは壮大な景観と眩いばか
りの朝日をバックにキースがバンジョーを弾くシーンで始まる。
新しい1日の始まり。そう何も考える必要なんてない。
人生なんていつからでもやり直せる。太陽は今日も必ず東から昇ってくる。なんとな
くそんなことを言わんとするような映像だ。
「手術が終わって目が覚めたとき、私は自分が植物かと思った。呼吸用の管と装置の
ために、動くこともしゃべることも出来なかった。とても不快で、飲み込むことさえ
ままならない、でもその機械が私を生かしてくれていた」
中盤エレキのソロで盛り上がると共にキースとニキ以外にぞろぞろとクルーが集まっ
てくる。そこにいる皆が活きていて、当たり前だけど息を吸っていて、それ以上に何
を望む必要があると言うのかい?
「仕事は単なる仕事でしかない。今はもっと“生きること”に興味がある。腕や足を
動かしたりできることをとてもすばらしく思う」
最後はこの曲の命ともいえる小気味よいバンジョーに被さるようにエレキがどこまで
もどこまでも突っ走る。前作の頃に比べてちょっと髪の毛が伸びた彼。まるで若き日
のトム・ペティみたい。このあと歳を重ねて行ってぜひトムのような味のあるシンガ
ーになってもらいたいものだ。(はまべ)
※ 文中のニキ・テイラーの言葉は『Yahoo News』に掲載されていたものをフリー
ランス・ライターの宮永氏が訳したもの(一部編集)。
Baby - Ashanti
これまではウィスパリング・ヴォイスでそっと歌うことが多かったアシャンティだが、
ぐっと腰を据えて地声で歌うのがこの曲。曲調もこれまでに比べるといかにも普通の
R&Bなので、アシャンティだと気付かずに聴き流している一般人は少なくないだろう。
彼女の憧れの存在がメアリーJブライジだということが、これを聴くとちょっと納得
できる。「 Foolish」「Happy」
「Baby」と一単語タイトルの曲が3曲続いているが、実
はアルバムの半分以上が一単語タイトルだったりするので、別に狙ってカットしてる
わけではない模様。というか普通の人はそんなこと気にしないわな。
製作陣はいつも彼女の背後にいるのと同じ連中で、チンク・サンタナ(へんな名前)
とアーヴ・ガッティ、7(? 人名)がプロデュースにクレジットされる。
ところで最近のアシャンティの話題といえば、残念ながらちょっとヤな話になってし
まう。
8月に授賞式が行われたソウル・トレイン主催のレディ・オブ・ソウル音楽賞。その、
年間ベスト・アーティスト賞に相当する「Entertainer of the Year」賞を受賞した
のがアシャンティ。しかし彼女がそれだけの活躍をしたか?彼女にそんな才能がある
のか?ソウルの女王、アレサ・フランクリンの名を冠した賞を授かる資格があるのか?
と15歳の白人のガキがネット上で疑問を呈すると、賛同者の集まること集まること。
結局「アシャンティの受賞に反対する」という署名が数日にうちに25000人分あま
りも集まってしまった。よくわからんが、ここに白人所有の黒人音楽専門ケーブルTV
局、BETも絡んできて話が複雑化。ネット上の書き込みを勝手に消しただの中傷メー
ルだのとひとしきり混沌とした後、大ベテランのパティ・ラベルがさっと登場してア
シャンティを無条件に擁護する発言をし、とりあえずこの件はほとぼりが冷めていっ
た。この一連の騒動は http://www.messed-up.com/soultrain/ にアーカイヴと
して記録されている。
確かに彼女がこの賞ってのはどうかなーとは思うが、別にアシャンティ本人は何も悪
くないわけで。この曲みたいなのをガンガン売って実力を見せていけば、ガタガタ言
う奴もいなくなるのだろう。
(しんかい)
Work It - Missy "Misdemeanor" Elliott
ポップス史的に見て、ミッシー・エリオットの存在はかなり特異なものなのではない
か?と最近考える。女性プロデューサー自体珍しいのに、彼女が手がけたイコール、
それ即ちアベレージ以上の出来であることが約束されるような人というのは、夫婦で
やってるプロデューサー・チームを除けば、比較し得るのはシルヴィア・ロビンソン
くらいなのではないかと思う。
また彼女がヒットチャートにおける女性の地位向上に果たした役割も大変なものがあ
る。何年か前、メールマガジンでリアルタイムのヒットチャートを紹介していたとき、
女性アーティストの共演による過去のヒット曲を探したことがあったが(確かホイッ
トニーとマライアの共演シングルが出たときだったと思う)、その少なさに愕然とした
ものだった。が、それから数年でこれだけ状況が変わるとは。しかもその“女性共演”
作品へのミッシー関与率の高さといったら!彼女は今すぐにでもどこかから表彰され
るべき実績を既に作り上げてしまっているのだ。
さて、そんな彼女待望のアルバム第4作「Under Construction(タイトルだけ見る
と、ちゃんと完成するのか不安だが)」の11月発売を前にリリースされたのがこの
「Work It」。これまで殆どのシングルで様々なアーティスト(多くは配下の新人)を
フィーチャーしてきた彼女が、単独名義で出してきたというだけでその意気込みが覗
えるこの作品は、ラジオ局向けにリリースされた途端物凄い勢いでヒットチャートを
上昇。エレクトロなサウンドと、唐突に登場する「パオーン!」という象の雄叫び(?)。
彼女及びティンバランドの音楽的アイディアは、まだまだ枯渇とは無縁のようだ。
(八
亀)
Luv U Better - LL Cool J
ベテランでありながらコンスタントにリリースを続けるLLクールJの2年ぶりのアル
バム『10』からの1stカット。アルバムタイトルが物語るように途中ベスト盤を挟ん
で1985年リリースの『Radio』から数えて通算10枚目のアルバム。その『Radio』
をリリースしたのが17歳のことだから実に彼は今34歳なのである。恐らくここを読
んでいらっしゃる方の中でも同年代の方は多いのではなかろうか。95年に長年連れ添
った彼女と結婚し、現在では男の子3人と女の子1人を擁する4児の父である。父親に
虐待され、更には母親の不倫相手からも暴力的行為を受けながら幼少時代を過ごして
きた彼なら、人一倍に子供への愛情は深いことだろう。そしてそれは妻へも同様だろ
う。今回のアルバムで彼は改めて自身の原点である「女性への愛」についてラップし
ている。新しいLLを追求するわけでなく、あくまでも原点回帰。それが今回のアルバ
ムを作るに当たってLLがこだわったことだ。
「ちょっと言いにくいことなんだけど、これからはきちんと君のことを愛していくよ
/だって最近忙しすぎただろ・・・」
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実際にLLは多忙だった。
ここ数年だけでも『 Deep Blue Sea』、『In Too Deep』、『Any Given Sunday』、
『Charlies Angels』、『Kingdom Come 』など数々の映画への出演し、自身のレ
ーベルROCK THE BELLSを設立した。
「ここに新しい僕がいて、ここに新しい君がいる/
新しい1日が始まる/空は晴れていて/
君と歩く間、僕の手を握っててくれないか/
僕の膝の上に座って、そして君と話をさせてくれ」
こんなロマンスを歌えるラッパーが他にいるだろうか。
しかも今回はどう考えても自分の愛する奥さんへ向けたメッセージだ。ネプチューン
ズのプロダクションもLLのスタイルに迎合したかのような穏やかで優しい今までに
なくメロウな仕上がりになっている。そしてLLは、メソッドマンの「 I'll Be There For
You/You're All I Need To Get Gy」でもサンプリングされたノトーリアスBIGの
「Me & My Bitch」の有名な一節を詞を替えてこう引用している。
So let's, laugh together cry together
God willing we gon die together
きちんと一人の女性と向かい合って、その人との幸せな時間の持ち方について考える。
そして多分レディはそんな彼のことが好きなんだと思う(Ladies Love Cool James)。
(はまべ)
※ Ladies Love Cool James = 彼の芸名LL Cool Jの本来の意味。Jamesは彼の本
名James Todd Smithより。
Sk8er Boi - Avril Lavigne
アルバム「Let Go」そしてシングル「Complicated」がロングセラーとなっている
ガール・ポップシンガー、アヴリル・ラヴィーンの新曲が早くもTOP40入り。これ
までいそうでいなかった“ちょっとパンクな美少女シンガー”ということでその人気は
日本にも飛び火、先発のミッシェル・ブランチなどはすっかり霞んでしまった形とな
っている。
一目見て「???」となる曲のタイトルは「Skater Boy」の意。NY在住の阿多さんに
よるとこの“sk8”表記は最近市民権を得始めているようで、街には“Sk8 Class
$20/H(スケート教室1時間20ドル)”なんて看板も立っているんだとか。
アヴリルのバイオグラフィーを見ると、好きな男の子のタイプ欄(凄くアイドルっぽ
い!)に「トンがった感じのスケート少年やパンク野郎」とのコメントを見ることが
できるので、この曲の登場人物は彼女の理想とする男性像なのかもしれない。
街のスケート少年が、バレエ教室に通う女の子に恋をした。そのあまりにも不釣合い
な格好に少女は彼を袖にしてしまう。それから5年後、結婚し子供の世話をしながら
TVのチャンネルを回した彼女は、スターになった彼の姿を目撃。「私はつまらない男
と結婚して、こんな退屈な毎日を送っているのに・・。」
アヴリルはその元バレエ少女に「そのスケート少年が、今のアタシのカレシなのよ。
ヘヘ∼ン。」と冷酷にも言い放つ(?)。曲調はレトロな雰囲気さえ漂うハード・ポッ
プ。わかり易くてよい。彼女の活躍はまだまだ続きそうだ。ただ、こういうアーティ
ストのセカンドアルバムは、新鮮さを保つのが結構難しいんだよねー、と今から言っ
ておこう。(八亀)
Po' Folks - Nappy Roots feat. Anthony Hamilton
メルマガでも書いたし、既にいろんなメディアで取り上げられてるけど、このナッ
ピー・ルーツ、最近のヒップ・ホップ・シーンの多様化を如実に示すいい例で、何と
ケンタッキー州というどちらかというと「ケンタッキーって、カントリーじゃない
の?」という印象の土地柄から忽然と登場したちょっと昔のアレステッド・デヴェロ
ップメント的な雰囲気を漂わせる(グループ名もそういう気分だ)6人組だ。地元ケ
BREAKOUT Singles Aug.2002 – Sep.2002
ンタッキー出身のスキニー・デヴィル、B.スティル、ロン・クラッチ、ビッグVの4
人と西海岸はオークランド出身のR.プロフェット、そしてジョージア出身のスケイル
ズの6人が1995年にウェスト・ケンタッキー大学で結成したのがこのナッピー・ル
ーツ。流行ものや派手派手しいものからは一線を画して、自分たちの好きな音楽を自
分たちらしく作る、というモットーの下に学内を中心に1998年にリリースしたイン
ディー・ベースの『Country Fried Cess』と、自らデザインしたナッピー・ルーツT
シャツが地元で飛ぶように売れ、その評判を聞きつけたアトランティック・レコード
が彼等にコンタクト、今回のメジャー・デビューにつながったという。そのデビュー
作『Watamelon, Chicken, And Gritz』は、タイトルに南部を代表するホームグロ
ウンの食べ物をあしらった(グリッツというのはトウモロコシを原料にしたお粥のよ
うな食べ物)あたりにも察せられるとおり、地元のアイデンティティに根を下ろした
彼等のシンプルさを追求する、というポリシーが伝わってくるような一種心和む作品
に仕上がっているようだ。
もともとは地元ケンタッキーの有名レコード店ET'sにたむろしていたのが6人のつ
ながりの始まりというあたり、学生時代貸レコード屋でバイトしていて普通の国立大
学生が知り合えないようないろんな人々と音楽を通じて知り合うことができたのが人
生でも重要な経験の一つだったなあと考えている筆者などには凄くよくそのノリが想
像できて面白い。たまたまそのレコード屋がスタジオも経営していたのが、1998年
のインディー盤の録音のきっかけでもあったというからナッピー・ルーツ、出現すべ
くして出現したグループという感じがする。最近地方から名乗りを上げてくるヒップ
ホップ勢力がとかく中央やメジャー勢の向こうを張ろうと気張っているのを見ると、
このナッピー・ルーツのようなノリでのシーン参画もなかなか気持ちがなごんで微笑
ましい限り。問題はそういうマイペースの活動でコマーシャル・ベースのレコード会
社とうまく折り合い付けて今後の活動を続けていけるかだけど、そこはアトランティ
ックも是非長い目で見て彼等をうまくバックアップしていって、もらいたい...などと
思わずドラフトでプロ野球界に踏み出していく教え子を送り出す高校野球監督のよう
な思いを持ってしまったのだった。(阿多)
Cry - Faith Hill
近々リリース予定の彼女のニューアルバムからの先行シングル。昨夏何かと物議を
醸した戦争映画「パール・ハーバー」の、主題歌のヒットから早1年数ヶ月、昨秋の
ベスト盤リリースからも1年と、ほんとにお久しぶりな感じだが、それもその筈、彼
女は昨年末に3人めの子を無事出産している。当然、出産直後は休みもとったろうが、
まもなく仕事に復帰したばかりか(3月24日のアカデミー賞授賞式でも、パフォーマ
ンスしたんだっけ?)、半年かそこらで早くも新作のレコーディングを完了し、プロモ
ーション活動にうつるとは恐るべし。ルックス、プロポーションのみならず、仕事振
りまでとても3児の母とは思えぬ。
私事で恐縮だが、片やうちのかみさん、専業主婦、かつ実家が近くで親の助けもえ
やすい環境にもかかわらず、子供2人で毎日てんやわんや。体重も、2年半前の出産の
頃と殆ど変わんねえじゃねえか(ヤケクソ)。ま、全米の頂点に立つ(年間チャート1
位もとったし)超美人実力派歌手に対し、愚妻を引き合いに出すのが無茶苦茶なんだ
けど。
閑話休題、曲を試聴サイトで一部聞いた感じでは、サビの前後での、3/4拍子(ワ
ルツ系)から6/8拍子(ロッカバラード系)への変化が結構新鮮だったけど、全体の
曲調はいかにもという感じの歌い上げパワー・バラード(この人のジャンルの場合、
こういう表現はしないか)。多少矛盾する物言いだけど、正直、個性はあまり感じない。
ちょっと声が変わったセリーヌ・ディオンと言われても、あまり違和感ないし。でも
フェイスも、セリーヌ同様、変わらずこの王道路線を突き進むことが、ファンのため
にも自分にも一番いいんだろうな、自分が飽きないうちは。飽きたら、おうちで妻・
母に徹する選択もあるし。
尚、この曲、この秋からのパナソニック「デジタル・タウ」のTVCMでもオンエア
されると共に、本人自身もこのCMに登場するとのこと。「パール・ハーバー」主題歌
は日本でもかなりヒットし、名前の認知度はあがっており、その美貌がお茶の間に浸
透する日も近いか。第2のヴァネッサ・ウィリアムスか(笑)。そういや、あの人は最
近とんと話を聞かないね。専業主婦やってのんかな..(窪田)
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