九州工業大学学術機関リポジトリ"Kyutacar"

九州工業大学学術機関リポジトリ
Title
Author(s)
Issue Date
URL
Partial Discharge Properties and Gas Decomposition Analysis
of Environmental Friendly Gas Insulation Media as a Basis of
Diagnostic Technique Development
Jamil, Mohamad Kamarol bin Mohd
2008-06-30T00:00:00Z
http://hdl.handle.net/10228/1292
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
モハマド
氏
名
カマロ
ビン
モハマド
ジャミル
Mohamad Kamarol bin Mohd Jamil(マレーシア)
学 位 の 種 類
博
士(工学)
学 位 記 番 号
工博甲第260号
学位授与の日付
平成20年 3 月25日
学位授与の条件
学位規則第 4 条第 1 項該当
学 位 論 文 題 目
Partial discharge properties and gas decomposition analysis of
environmental friendly gas insulation media as a basis of diagnostic
technique development
(診断技術開発の基礎としての環境調和型ガス絶縁媒体の
部分放電特性および分解ガス分析に関する研究)
論 文 審 査 委 員
主
査
匹
田
政
幸
〃
三
谷
康
範
〃
趙
孟
佑
〃
廣
瀬
英
雄
准教授
大
塚
信
也
教
授
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ガス開閉装置(GIS)、ガス遮断器(GCB)等の送変電機器の絶縁ガスに用いられる六フッ化硫黄
SF 6 は地球温暖化係数が 23,900 と非常に高いため、その漏洩防止対策が電力会社等によって着実に
実施されている。この漏洩防止対策と共に、様々な産業界では SF 6 ガス消費を減少させるか、あるい
は代替ガスの探索に関する研究が進められている。しかし恒久対策としては、SF6 に代わる地球温暖
化係数の低い新しい絶縁ガスの開発が期待されているところである。SF 6 代替し得る送変電機器の新
しい絶縁ガスは、未だ実用化されていない。
真空回路遮断器(VCB)は、SF 6 ガス絶縁開閉機器に取り替わる可能性を持っている環境調和型装
置のうちの 1 つである。VCB の高電圧化開発の研究は進行上にあり、回路遮断器と開閉装置への真
空技術利用の拡大の可能性がある。VCB 適用の拡大に伴い、その中核のデバイスである真空インタラ
プタ(VI)の性能を監視する診断装置の開発が強く要請されている。
以上の観点から、本学位論文では真空遮断器の性能を支配する装置内の真空度の高精度診断技術開
発を目的として、空気および SF 6 ガスで満たした実用的な VI 中での基礎的な部分放電(PD)特性の
電気的・光学的測定とそれらの放電メカニズム解明、およびその知見に基づく VI 内部ガス圧力の決
定アルゴリズムの提案を行っている。さらに、本論文では、ポスト京都議定書を見据えた代替フロン
等のガス排出削減のための新規技術開発発掘の一環として、CF 3I 等の SF 6 代替候補ガスを電気絶縁媒
体として使用した場合のコロナ放電現象および放電により生じる副生成物について検討・解析を行っ
た。本論文は 6 章よりなり、第 1 章は上記の研究内径と目的、第 2 章では本研究での実験方法、第 6
章は本論文の総括を述べている。
第 3 章では、これまでは十分な研究がなされていなかった実用的な VI を用いての PD 特性および
PD 発生の光学的観測を行い、放電メカニズムの解明を試みている。この実験では、VI 内の圧力は真
空漏出を模擬するために 1 Pa から 1 kPa オーダーに設定した。VI の内部で生じる PD 発生の測定は、
変流器(CT)、光電子増倍管(PMT)、増倍型電荷結合素子(ICCD)カメラ、PD 測定装置を使用し
て行われた。観測した放電光パルスの立上り時間 tr、ピーク強度 Ip および時間幅から PD 特性は理
解できることが示された。すなわち、空気で 260 Pa 以下の圧力では、tr=2μ s と比較的に長い立上
り時間で小さな強度 Ip となりこの放電はタウンゼント形放電であること、一方、260 Pa 以上で
tr=10-100 ns と急な立上り時間で大きな Ip はストリーマ形放電の特性であることが示された。また、
SF 6 ガスで満たした VI では、50 Pa 以下の圧力では 100 ns オーダーの大きな tr を示しタウンゼン
ド型放電であり、一方、50 Pa 以上の圧力で tr が 10 ns オーダーと急峻なパルスとなりストリーマ
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型放電はであることが示された。
第 4 章では、第 3 章での VI 内の種々の圧力に対する PD 特性に基づき、VI 中のガス圧力の評価を
位相分解した放電特性に基づくバック・プロパゲーション・ニューラル・ネットワーク(BPNN)を
利用して行った。VI 中の各圧力レベルで発生した PD はφ-ν(φ: Va の位相角; n: 印加電圧 Va の
300 のサイクル中に発生した PD パルスの数)で表した。結果は、BPNN で φ- n パターン用いるこ
とで VI 中のガス圧力の識別の適用性を示し、93 から 98%まで認知成功率を与えた。
第 5 章では、GWP が 1 程度と非常に低くかつ SF 6 と比べて 1.2 倍以上の高い絶縁耐力を持つトリ
フルオロヨードメタン(CF 3I)を対象として、不平等電界下での PD による CF 3I ガスの分解生成物
分析およびスパークオーバー電圧 VS 特性を調査した。その結果、CF 3I ガスの負極性 VPDI- は SF 6 ガ
スとほぼ同じであり、一方、CF 3I の VS は SF 6 ガスより小さことを明らかにした。CF 3I ガスおよび
SF 6 ガス中で VS の圧力依存性が異なるのは、コロナ安定化作用により生じることを示した。CF 3I ガ
スの PD 累積電荷量 qc とガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)検知器で測定した分解生成物量の
量的関係について明らかにした。その結果主要な分解生成物は C 2F 6、C 2F 4、C2F 5I であり、他の分解
生成物は微量に検出された C 3F 8、CHF 3、C 3F 6、CH3I であることを明らかにした。
学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究で得られた上記の知見は、これまでほとんど報告がなされていない真空インタラプタの内部
の放電メカニズムの解明に大きな寄与をするものと判断できる。さらに、本研究は、キュービクル形
ガス絶縁型開閉装置(C-GIS)で実際の状況を模擬した実験回路を用いて実用的な VI における PD 基
礎過程解明に基づいてニューラル・ネットワークアプローチによる診断技術を最初に提案したもので
あり、実験から明らかにされた結果は、中電圧(MV)および HV クラスの VI 性能の評価への基礎知
識として非常に有用で重要である。これらの知識は、特に HV 用 VI 開発目的のための設計ガイドラ
インを与えることが期待できる。
また、本研究で得られた知見は、環境調和型ガス絶縁電力機器の絶縁媒体として CF3I ガスを実現す
るための設計ガイドラインをもたらすのに有用である。さらに、PD により発生する分解生成物の同定
は、化学的検出法に基づいた CF 3I ガスの絶縁性能による診断システム開発のガイドラインに貢献する。
以上に示したように、本論文は環境調和型の電力機器開発の要である絶縁媒体として真空および
CF 3I ガス中の放電現象および分解生成物の定量的関係について従来試みられていない新しい視点か
ら現象究明を行い、独自のメカニズムを提唱している。これらの成果は、従来のガス絶縁機器や真空
遮断器の絶縁性能・信頼性を大幅に向上させるばかりでなく、次世代の環境調和型電力機器の応用へ
の新しい道を拓くものであり、産業上ならびに学術上寄与するところが大きい。以上示したように、
本論文は学術的かつ産業応用面から、極めて高い価値を有しており、博士学位論文として十分である
と判定された。
審査会および公聴会において、BPNN(ニューラルネットワーク)による真空度判定法の不透明な
セラミック容器の VI や他の電圧階級用 VI への適用性、対象圧力領域が 1Pa 以下の場合の真空度判
定法への適用性、SF 6 ガス排出による地球温暖化への寄与の絶対値、印加電圧の位相で分解した放電
特性パタンの圧力・電圧特性変化の物理的解釈、BPNN のニューロン構造の判定誤差への影響、SF 6
ガスと CF 3I ガスの臨界電界の大きさと実験での PD 開始電圧との比較、等について質問がなされた。
その多くに対して、論文発表者は適切に回答し、質問者の理解が得られた。
審査委員会は、著者のこれまでの出版論文、中間発表、および今回の論文発表から判断して、論文
発表者の英語能力は十分高いものと認めた。発表者の日本語能力も、日本語の質問を理解できるほど
十分あるものと判断した。審査委員会は以上の事項を総合的に判断して、モハメド・カマロ君を博士
(工学)の学位を授けるに値するものと判断した。
以上により、論文調査及び最終試験の結果に基づき、審査委員会において慎重に審査した結果、本
論文が、博士(工学)の学位に十分値するものであると判断した。
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