2011年5月号 - InterSystems

Inter view
氏
に聞く
中武 豊伸氏
宮崎大学では、 年から病棟用の
安価であることが条件でした。
端末の利
そこで考えたのが、 Android
用です。1台当たりのコストを将来的に
は3万円程度にまで抑えることができる
と考えられ、その廉価性が大きな魅力で
した。また、サイズも小振りで、利用者
が片手で扱うことができ、医師や看護師
が使うユビキタス端末として適当であろ
うと考え、コア・クリエイトシステムと
てきました。そのリース期限が切れるに
オブジェクト型データベース
の共同開発を提案したのです。
あたり、PDA端末の後継機をどうする
か、検討したのです。
運 用 し て み る と、 ポ ケ ッ ト に は 入 ら ず、
荒木
のがありましたか。
PDAは、携帯性に優れているという
イメージがありますが、実際に看護師が
非常に重くて片手で操作することができ
課 題 は 非 常 に 多 か っ た で す ね。
ないのです。その結果、皆カートに載せ
端末台数をどれくらい揃えられるかなど
新しい端末には、こうしたベッドサイド
いることも間違いない事実です。
そこで、
中武
課題でした。
端末のカメラにバーコードの読
Android
み取り機能をいかに持たせるかが大きな
も 疑 問 で し た。 ソ フ ト の 開 発 面 で は、
用の機能をさらに推し進め、医師・看護
月はバーコードの検証に時間を費やしま
システム開発では、最初の約3ヵ
師が全員1人1台〝普通に持つことがで
した。また、﹁WATATUMI﹂でも、
テ ン ツ を 3 秒 以 内 に 呼 び 出 せ る と い う、
﹁ I Z A N A M I ﹂ 同 様、 あ ら ゆ る コ ン
いわゆる〝3秒ルール〟のパフォーマン
スが要求されましたので、開発には苦労
万円で購
入できたとしても1000台で1億円か
万円前後します。例えば、
し た。 業 務 用 P D A は 安 く て も、 1 台
いう思いがありました。課題はコストで
きる〟ユビキタスな情報端末にしたいと
た だ し、 バ イ タ ル デ ー タ の 入 力 な ど、
このPDAによって業務が効率化されて
生かされていませんでした。
て運用しており、PDAの良さがあまり
端末に関する医療用のシステム
Android
開発の経験もありませんでしたし、実際
︱︱システム構築で課題はどのようなも
﹂によって
﹁ Caché
データの高速処理を実現
HIS端末として業務用PDAを使用し
荒木
お聞かせください。
︱︱﹁WATATUMI﹂開発の経緯を
株式会社コア・クリエイトシステム
システムソリューション部 部長
しましたね。しかし、それもオブジェク
新 医 療 2011年5月号 ( 60 )
宮崎大学医学部附属病院
医療情報部
教授
荒木賢二
氏
コア・クリエイトシステ ム
システムソリューション部
部長
中武豊伸
PDAに変わる新しい携帯端末として
端末を採用
Android
︱︱﹁WATATUMI﹂の概要につい
﹁WATATUMI﹂は、
てお聞かせください。
中武
Android
端 末﹁ GALAXY﹂
S 上 で、 2 0 0 6 年
に当社と宮崎大学医学部附属病院との産
学連携によって開発した電子カルテシス
テム
﹁IZANAMI︵イザナミ︶
﹂
のデー
タ参照と入力が可能な携帯情報端末シス
テムです。具体的には患者のバイタルや
観察項目の入力、
各種オーダ参照のほか、
注射・輸血・手術・処置・自科検査オー
ダの実施入力が行えます。この他、カメ
ラ機能を活用したバーコード読み取りや
患者状態の撮影、他のアプリとの連携と
いった機能が利用でき、臨床現場で有用
性の高いものとなっています。
﹁IZANAMI﹂は、インター
なお、
「 従 来 の PDA 端 末 に 比
べ、コンパクトで軽く、
女性看護師でも容易に扱
えます」
10
WATATUMI」のパフォーマンスを検証する
「
Android対応システム
06
か っ て し ま い ま す。 新 し い 情 報 端 末 は、
10
︵ キ ャ シ ェ︶
﹂
シ ス テ ム ズ 社 の﹁ Caché
を ベ ー ス に 開 発 さ れ た シ ス テ ム で す が、
今回の﹁WATATUMI﹂でも﹁ Caché
﹂
のデータベースを利用し、双方のデータ
ベースを一元管理する仕組みとなってい
ます︵構成図参照︶
。
IT System Innovation Review
スマートフォンの利用は
ITの進展からすれば自然な流れです
スマートフォンの利活用が増える中、 医療現場でも、 その活用が注目を集めている。コア・クリエイトシステム社は、
宮崎大学医学部附属病院と共同で、 携帯情報端末向けプラットフォーム 「Android(アンドロイド)」 に対応した
HIS の携帯情報端末システム 「WATATUMI(ワタツミ)」 を開発した。システム開発の経緯とその有用性について、
宮崎大学医学部附属病院の荒木賢二氏とコア・クリエイトシステム社の中武豊伸氏にインタビューした。
﹂を
Caché
開発基盤としたことで、膨大なデータ量
ト型のデータベースである﹁
でも高速に処理することができ、宮崎大
学病院の求める〝3秒ルール〟を満たす
オーダ画面。電子カルテ上
の情報を「WATATUMI」
画面で参照、注射や処置な
どの実施を入力
株式会社コア・クリエイトシステム
ことができました。
IZANAMI アプリケーションサーバ
︱︱開発されたシステムを実際操作され
WATATUMI アプリケーションサーバ
て、どのような感想をお持ちですか。
電子カルテ端末(IZANAMI)
バイタル画面。測定項目
は患者ごとに異なるので、
それぞれの患者のカスタ
ム画面を開いて入力する
Android 端末(WATATUMI)
荒木 バーコードの読み取りは安定して
いて、しかも速いですね。使用者はスト
レスを感じないはずです。当院の看護師
の感想は、今まで使用してきたPDAと
ActiveDirectory サーバ
ウィルス対策ソフト
配信サーバ
1000 ライセンス
「IZANAMI」と「WATATUMI」は、インターシステムズ社のオブジェクト
データベース「Caché」を共通のバックエンドとして、それぞれ Android 端
末と PC 端末でアクセスするアプリケーションサーバーとして実装している
比較して、非常にコンパクトで軽いこと
端末のほうが
か ら、 圧 倒 的 に Android
よいと言っています。
︱︱ 20 0台 の 端 末 が 一 斉 稼 働 し て も、
システムのレスポンスについて
システム的には問題ないのでしょうか。
中武
は、5年間を想定したダミーデータでテ
ス ト を 行 い ま し た が、﹁W AT ATU M
I﹂
稼働に支障はありません。この点も、
大きな特長のひとつと言えます。
MI﹂は、
﹁ IZAN
︱︱﹁ W A T A TU
荒木賢二氏
中武
﹁WATATUMI﹂は﹁IZA
N A M I ﹂ と 共 有 す る デ ー タ ベ ー ス を、
別のデバイス・ユーザーインターフェー
スで呼び出す﹁院内クラウド﹂と呼べる
システムです。もちろん、他社の一般的
な電子カルテでも、データベース同士を
連携させることは十分可能です。
端 末 に は、 さ ま ざ ま な 種
Android
類・大きさの機種が存在します。どのよ
︱︱
うな端末でも利用可能なのでしょうか。
中武
端末ならばインストー
Android
ルする機種を問わず、目的に応じて端末
を選定できます。
端末には、最も小さい3・
荒木
Android
2 イ ン チ、 そ し て4 イ ン チ、7 イ ン チ、
並 み の イ ン チ、 ノ ー ト P C タ イ
iPad
プの機種もあります。最も標準なものと
の長所だと
Android
勤務時間中にバッテリー切れを起
使 い っ ぱ な し で は な い で す か ら、
てば十分です。もちろん、8時間ずっと
こさなければよいのですから、8時間持
荒木
リーについてはいかがですか。
︱︱病棟端末でよく問題とされるバッテ
思います。
豊富であることは、
プは患者説明用など、バリエーションが
す。小さなタイプは病棟用、大きなタイ
よくなりますが、その分携帯性が落ちま
きい端末は、それだけ見やすく操作性も
しようと考えています。画面サイズが大
しては、4インチのものを導入の主体に
10
端末であれば、1日1回の充電
Android
で、十分だと思いますね。
( 61 ) 新 医 療 2011年5月号
A M I﹂ 以 外 の H I
「Android は 機 種 が 豊 富 で、
職種やシーンに合わせて機種
を選べる点が優れています」
部門連携
サーバ
画像文書ファイルサーバ
クラスタ構成
データベースサーバ
クラスタ構成
バックアップ
サーバ
Sと も 連 携 が 可 能 な
のでしょうか。
宮崎大学医学部附属病院
医療情報部 教授
電子カルテシステム IZANAMI/WATATUMI 全体構成図
経営分析
サーバ
Caché データベース
な方向に進化していくのであれば、医療
のと思います。医療だけが世間と異なる
もそれに合わせるというのが自然の発想
さらには熱計表やDPC参照、コミュニ
荒木
で し ょ う。 た だ し、 医 療 用 に 使 う 場 合、
別 世 界 と い う こ と は も う あ り 得 ま せ ん。
おうと考えています。現在は、院内連絡
ります。その1つはバーコードの読み取
ケーション機能を追加することを計画し
用としてPHSを配布していますが、院
ないでしょうか。医療のデータで数字の
だから、世の中がスマートフォンのよう
端
内 の 無 線 L A N を 活 用 し て Android
末でIP電話として使えるようになれば、
入力は必須ですから。スマートフォンの
ています。
PHSの購入費用で全員分の Android
端
末を買うこともできます。この点につい
ソフトキーボードは良くできているの
また、今後はIP電話としても使
て は、 再 来 年 度 く ら い に 実 現 し た い と
で、通常のテンキーと同様に使えます。
り機能であり、もう1つはテンキーでは
絶対に必要な機能というのがいくつかあ
思っています。
スマートフォンの普及は
当院での事例が成功し、それで医療関
係者が﹁ああ、これなら自分の施設でも
できる﹂と考えるようになれば、スマー
トフォンを利用したシステムは一気に拡
医療業界にも波及していく
︱︱﹁WATATUMI﹂の今後の販売
新 医 療 2011年5月号 ( 62 )
カルテ情報・画像情報の閲覧機能等、
来春までにバージョンアップを計画
月 に は ド ク タ ー 用 と し て、
︱︱現在、 Ver.1.0
ということですが、
今後の機能拡張の予定があれば、お聞か
本年
せください。
中武
放射線画像や検査歴の参照、写真撮影と
その管理機能を追加する予定です。写真
撮影および管理機能とは、患者の顔写真
を撮影、それを自動的に電子カルテサー
バに送って参照できるものです。看護師
が褥創の写真を撮影、カルテに貼り付け
写真機能はニーズが高い機能で
るなど、
さまざまな応用も考えられます。
荒木
す。チーム医療が当たり前の時代、逆に
医療従事者と患者との関係が相対的に薄
がっていくのではないでしょうか。
﹁WATATUMI﹂は宮崎大学
戦略をお聞かせください。
中武
URL :http://www.corecreate.com
くなります。カルテの情報はわかるけれ
E-Mail :[email protected]
ど、 患 者 の 顔 と カ ル テ が 一 致 し な い と
本 社:宮崎県宮崎市本郷南方 3231-3 医学部附属病院と共同開発しています
・ソフトウェア開発 (
「電子カルテシステム IZANAMI」
、
いったケースが増えてきています。そこ
[事業内容]
が、今後はこれを実際に製品化し、大学
株式会社 コア・クリエイトシステム
で、カルテに患者の顔写真が貼ることが
[所在地]
病院や中小規模病院に対して営業活動し
・システム運用
ていきたいと考えています。九州エリア
・システム機器販売・パッケージ販売
重要となります。宮崎大学病院では、一
「経営分析システム Mercury」の開発など)
般に入院した患者の顔写真を電子カルテ
FAX :0985・56・3331
を中心に、年間5∼6病院の導入を目指
しています。また、他の電子カルテベン
ダと協業して、全国販売も視野に入れて
検討を進めています。
や iPad
な ど、 デ バ イ ス
︱︱ Android
がここ数年で大きく進歩してきました
が、今後の進展について、どのようにお
医療のIT化と言っても、基本的
考えですか。
荒木
に世の中全般のIT化の流れに乗ったも
電話番号:0985・56・7111
に貼り付けていますが、急患ではなかな
Android
端末でそれが実現できれば、非常に便利
か撮影する機会がありません。
になりますし、リスクマネージメントに
も貢献すると思いますね。
中武 来年の4月には実際のカルテの文
章を参照・入力する機能を付け加えたい
とも考えています。看護サマリーやドク
ターのレポート、あるいは部門からのレ
ポ ー ト な ど も 閲 覧 で き る よ う に し ま す。
・システムコンサルティング
バーコードを読み取るカメラ機能
の向上や、指でのスクロールやフ
リック入力など、スマートフォン
ならではの高い操作性が好評
オブジェクト型のデータベース「Caché」は、多元
的で膨大な診療データを取得・処理する医療系の情
報システム構築にとって重要と話す中武氏と荒木氏
10
WATATUMI は、まず職員証の
バーコードを Android 端末のカメ
ラで読み取って利用者を識別、パ
スワードを入力して認証