甲状腺超音波検査結果について(日光市での説明概要) 自治医科大学臨床検査医学教授 谷口信行氏 ◎ 検査判定基準について A1 判定は、結節(しこり)も嚢胞(のうほう)も無かった方で、精密検査は不要です。 A2 判定は、大きさが 5mm 以下の結節または、20mm 以下の嚢胞があった方ですが、精密 検査は不要です。B 判定は 5.1mm以上の結節または、20.1mm以上の嚢胞があった方で、 こちらには精密検査を勧めています。なお、大人では結節の大きさが 10mm 以上の方で精 密検査を勧められることが多いようです。小児についてはこれまで参考となるデータがな いため、福島の県民調査(子どもが対象)に合わせて 5.1mm 以上の結節をB判定としてい ます。C 判定は、甲状腺の状態等の所見から、直ぐに精密検査を受けることをお勧めするも のです。 ◎ 福島や他の3県との比較 福島県では 20 万人以上の方の検査が行われましたが、C 判定は 1 人、要精密検査率 0.7% です。日光市では、B 判定の中でも、大き目の結節は必ず検査してほしいとの意図から C 判 定とし、B 判定と合わせた要精密検査率は 1.2%でした。要精密検査率は、 青森県では 1.3%、 山梨県では 1.1%、長崎県では 0.6%で、日光市は、青森や山梨とほぼ同じといえます。 ◎ 検査後の対応 A1 判定は精密検査、治療とも不要です。A2 判定も精密検査や治療は不要です。A2 判定 の方の多くは嚢胞で治療不要ですが、嚢胞が大きくなって不快感が出る場合は医療機関に 相談してください。心配な方は 2・3 年に一度程度超音波検査をすると良いでしょう。B・C 判定の方は、結果記入書や紹介状を持参されての精密検査を強くお勧めします。精密検査で は、再度の超音波検査や血液検査が実施され、悪性の可能性がある場合は、細い針を使って 細胞を採る細胞診が行われます。なお、男性に比べ女性の方の精密検査率は高く、他の甲状 腺の病気(橋本病、バセドウ病等)でも女性が多いとされています。 ◎ 嚢胞について 基本的には嚢胞は、がんになることは無いとされています。数は重要視しません。がんが 一見、嚢胞のように観察されたということは、ごく稀にあります。しかし、A2 判定の大き さの方では、がんはまず問題となりません。ただ、大きいものは周囲を圧迫することがあり、 20.1mm 以上の方は B 判定として、精密検査をお勧めしています。 ◎ 結節について しこりの中に無数の細胞が詰まったもので多くは良性です。しかし大きくなってくると がんとの区別が必要です。そこで、5.1mm 以上を B 判定として精密検査をお願いし、これ より小さいものは A2 判定としました。また、5.1mm より小さくても、精密検査をお勧め したい場合は B 判定としています。 ◎ 甲状腺がんの知識と特徴 大人のデータが基本となりますが、甲状腺がんは男性より女性の方が数倍多いとされて います。甲状腺の病気をしたことがある方、家族に甲状腺の病気をした人がいる方、放射線 治療をされた方、被爆をした方についても、やはりがんが多いという研究があります。以前 は、甲状腺が大きく腫れたので病院で触診してもらい、がんが見つかるという発見のされ方 でした。しかし、約 20 年前より超音波検査が普及し、人間ドック・検診で、より小さいう ちに甲状腺の結節、嚢胞、更にはがんも見つかるようになりました。超音波検査ですと、触 診より 10 倍以上多くがんが発見できることが知られています。
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