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2013 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 2 回) 要旨
ICT 機器を活用した音楽教材の作成について
e2202 菅野 望
(指導教員: 鵜川 義弘)
1.
は じめ に
文部科学省によると,音楽科の現状として,歌唱の活
動に偏る傾向があり,表現の他の分野と鑑賞の学習
が十分でない状況である.課題として,創作と鑑賞の
充実が挙げられている.そこで,小学校で使われる鑑賞
曲を聴いて,何の楽器が使われているかを当てたり,そ
の曲について学んだりすることができるアプリケーショ
ン(以下アプリ)を作成した.
また,宮城県小中高学校体力運動能力調査結果
(H21)によると,宮城県の肥満傾向の出現率は,幼稚園
から高等学校まで全国値よりも高くなっている.そこで,
児童が楽しく体を動かすきっかけをつくるために,動き
を感知すると音がでる環境の作成にあたった.
2.
“楽 器 あて”アプリの 開 発
図2 “楽器あて”アプリ
また,次の問題を選択すると,ランダムに曲が選ばれる
プログラムになっている(図 3).ここでは,答えの順番を覚
えることがないように配慮した.問題の答えを,ボタンで選
ぶと正誤判定がでるため,自主学習にも使える.
本研究では,Monaca(http://monaca.mobi/)という
開発環境を用いた.これは,Android,iOS など複数の
環境に対応したアプリを同時に開発することができ
る.Monaca は,ブラウザとスマートフォン(以下スマホ)
があれば,プログラミングから動作確認,アプリの配布ま
で可能である(図 1).
開発環境 Monaca
図3 プログラミング画面
8 月 9 日に,高校生 4 名を対象に,”楽器あて”アプリの
HTML5が開発言語
AndroidとiOSで同時開発
実践を行い,アンケート調査を行った(図 4).
必要なのはブラウザと端末だけ
図 1 Monaca の特徴
作成した“楽器あて”アプリ(図 2)は,小学校全学年を
対象としており,各学年のボタンをタップして選択する
ことで,学年ごとの曲を聴けるようになっている.また,全
学年の鑑賞曲を選んで聞くことができる.このアプリは,
タブレット端末やスマホがあれば,いつでもどこでも学
習することができる.
図 4 高校生への実践
2013 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 2 回) 要旨
アンケート調査の結果,良い点としては,小学生向けの
Android
Sensor Box
難易度であること,多様な楽器の音が聴けること,音楽の
授業で使えるなどの意見があった.
Alarm
System
Iwamo
TONE
また,改善点としては,文字だけよりも楽器の画像を使
ったボタンにしたほうが分かりやすいこと,正解したら曲
の情報が表示されると勉強になること,複数の楽器では
なく1つの楽器で演奏している音源のほう聞き取りやす
⃝
動きの検知範囲
を調整できる
いこと,同じ曲が続けて出ることがあることなどが挙げられ
⃝
音が鳴る
た.これらの意見を反映し, ボタンを画像にして(図 5),曲
紹介のページをつくるという改善を図った(図 6).
⃝
図 7 各アプリの特徴
IwamoTONE は,HTML5 によるアプリで,携帯の内
蔵カメラの映像を取得し,明るさの変化量が一定の値を
超えると,音を鳴らすことができる.これは東北学院大学
の岩本正敏先生に本研究のために作って頂いたので
岩本先生の名前をとって IwamoTONE と名付けた.現
状で HTML5 の内蔵カメラアクセスに対応しているのは,
Android 用 OperaClassic だけであるため,これを研究
に使用した.
環境研と1号館の渡り廊下を通るときに音が鳴るよう
にするには,光の変化量が 1,000 を超えたところで音が
鳴るように設定すると丁度良いことが分かった.
Android スマホを廊下に設置し,前を人が通った時の
図 5 ボタンを画像に変更
様子を調べた.スマホを設置する間隔を調節することで,
曲を奏でる環境を作ることができた(図 8).
図 6 曲紹介のページ
3.
メロデ ィロー ドの 環 境 開 発
人の動きを感知して音がなるアプリを,メロディロードと
呼ぶことにした.そのアプリをつくるためには,近接センサ
ーなどで動きを感知する,音を鳴らすの2つの条件を満
たす必要があると考えた.近接センサーとは,物体の接近
を検知するセンサーのことである.
そこで,Android Sensor Box と Alarm System と
IwamoTONE の3つのアプリで,目的に合うものができ
ないか検証した(図 7).
図 8 スマホで曲を奏でる様子
4.
今後の予定
“音あて”アプリは,各楽器のソロの音を入れたり,曲の
紹介のページ内容を充実させたりする.
IwamoTONE は,より長いメロディを奏でられるように
したり,体を大きく動かしながら楽しめる仕組みを考える.
宮城教育大学の音楽科の先生にも意見を頂いたり,
ボランティア先の小学校で実践を行ったりしながら,これ
らのアプリの活用の幅を広げていく.