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UNEP FI 投資家向けブリーフィング
UNEP FI 不動産ワーキンググループによる出版物
商業用不動産:
省エネ改修投資機会の展開
1
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2
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しています。
私たちの配布ポリシーは、国連環境計画のカーボン・フットプリント削減を目的としています。
3
目次
序文................................................................................................................................................. 5
エグゼクティブ・サマリー......................................................................................................... 6
A. エネルギー効率のためのビジネスケース.......................................................................... 8
B. 課題の認識............................................................................................................................ 11
C. システマチックなアプローチによる制御........................................................................ 13
情報........................................................................................................................................... 14
インセンティブ....................................................................................................................... 19
投資........................................................................................................................................... 23
結論............................................................................................................................................... 30
参考文献....................................................................................................................................... 31
プロジェクトチーム................................................................................................................... 34
注................................................................................................................................................... 36
4
序文
建築物は、世界のエネルギー消費と温室効果ガス(GHG)の排出の約 3 分の 1 を占めている。し
たがって、気候変動に対する緊急緩和策にとって大きな影響を与えるセクターだと考えられて
いる。建物オーナーや運営業者として、不動産のプロ達はエネルギー消費と GHG の排出を減ら
しながら、不動産資産の価値を引き上げる機会を有している。この業界がそれを実現する最も
有効な方法の一つは、省エネ改修(EERs)を行うことである。
建築物のサステナビリティを改善できる可能性は相当にある。しかし、有効な省エネ改修戦
略を導入することは容易ではない。問題は、建築物の固有の特徴や複雑な省エネ改修市場から、
様々な規制による要請、市場の認識、さらには発展途上にある業界基準にまで及ぶ。国連環境
計画金融イニシアティブ(UNEP FI)不動産ワーキンググループは、これらの課題に取り組み、不
動産投資家達が省エネ改修によりもたらされる多くの利益に着目するよう促してきた。
不動産ワーキンググループを代表し、我々は商業用不動産市場における、エネルギー効率性
についての我々の最新のレポート”商業用不動産: 省エネ改修投資機会の展開”を公表できること
をうれしく思う。広範囲にわたるケーススタディの収集、この市場における先進的投資家たち
の知恵と行動の融合とともに、不動産ワーキンググルーブは、エネルギー効率化機会に向けて
の強力なビジネスケース*を実施し、また、課題を認識し取り組むことに努めてきた。このレポ
ートは投資家たちに、あらゆる資産構成に適用できる選択肢があること、そして正しい情報を
所有・管理することが省エネ改修の可能性を展開するのに不可欠であることを示そうとしてい
るものである。
この概要に続き、第 2 弾のレポートが出る予定であり、それは投資家たちが正確なサステナ
ビリティメトリクスにたどり着けるようにすること、また、投資家たちがこれらの情報を意味
のある方法で管理し、改修が正しいタイミングで正しい個所に確実に行われるようにすること
に焦点を合わせている。
この「投資家向けブリーフィング」出版を通じて、不動産ワーキンググループは、省エネ改
修投資機会について真剣に考え、行動する不動産オーナーや投資家たちに力を貸そうとしてい
る。我々のゴールは不動産ファイナンスでのサステナビリティを促進すること、また、実現可
能な最良の金融的、環境的、社会的結果を達成するための不動産投資と管理手法を後押しする
ことである。
*訳注:ビジネスケース: 環境プロジェクトを開始するための論拠・理論建て。省エネ改修には、それ
により業務上どのような利益が得られるか、等の見通しが説得力を持つ必要があり、それを裏付ける
論拠・論法。
Laurie Weir
Senior Portfolio Manager
CalPERS
Co-Chair, UNEP FI
Property Working Group
Frank Hovorka
Responsible Property Director
Caisse des Dépôts et Consignations
Co-Chair, UNEP FI
Property Working Group
5
エグゼクティブ・サマリー
このレポートは、投資家が省エネ改修を通じてどのように不動産価値を増大させることがで
きるかについて、不動産の先駆者たちから得られた知恵と行動の統合体を、7 ステップのプロ
セスという形で提供するものである。それぞれのステップは、投資家がどのようにしてそれに
取組み、導入したかという実例によって裏付けられている。1
このレポートの中心的な論点は、 以下の通りである。





エネルギー効率的な建築物の改修に対する投資機会は、2020 年までに世界全体で、年
間 2,310 億米ドル2から 3,000 億米ドル3と、相当な金額になる。これは未来に向け増加し
続けると考えられている。
これらのタイプの投資については、確固たるビジネスケースが存在しており、費用対効
果は他のほとんどの経済セクターより良いものである。
市場の失敗に対する伝統的な対応策は、新政策の導入、免税、補助金や融資制度であっ
た。しかし、これらのインセンティブ策が実施されていても、収益性のある改修機会の
大部分は手つかずのままにある。
補完的な市場誘導アプローチとは、これらの問題を 3 つの投資に関連する根本原因に変
換し、どのようにこれらに取り組むべきかという実際的な枠組みを作り出すものである。
この枠組みはこれらの「原因」を克服するための 7 ステップのプロセスで構成されてお
り、それは、不動産オーナーや投資マネージャーが制御できる範囲内にある。
彼らの資産構成が何であれ、オーナーや投資家が成功に向かえるよう、今すぐ採用でき
るステップが存在している。
枠組みの最初の 5 つのステップにより、不動産オーナーやマネージャーは、省エネ改修の件
数を大幅に増やすための、正しい情報とインセンティブを確実に持つことができる。
1. ビジネスケースについての経営の認識を確実にする。これによって、次のステ
ップを実行するためのコンサルタントや社内スタッフの時間に対する投資が導
かれる。
2. 建築物のエネルギーパフォーマンスを測定し、指標と比較する。ポートフォリ
オレベルのプログラムを管理したり、監査の実施やエネルギー・ベンチマーキ
ング・ソフトウエア導入のための資金配分を管理するために、有能なスタッフ
や信用できるコンサルタントが必要となる。
3. ポートフォリオのエネルギー効率性目標を設定する。公に開示するかどうかは
別として、経営層と重要な意思決定者は、彼らが目指すものが何なのかを知る
必要がある。
4. マネージャーの報酬をエネルギーパフォーマンスにリンクさせる。他のあらゆ
るメジャーな企業イニシアティブと同様、進歩するための最も確実な道は、社
6
員にその業績に基づいて給与を支給することである。本件の場合は、エネルギ
ー効率性と、認証のような定性的な目標である。
5. 改修が可能な賃貸借契約に整える(グリーンリース)。 リース契約の締結時や更新
時にこれらの条項を体系的に導入することで、省エネ改修計画が実行可能にな
る。
最後の 2 つのステップにより、投資マネージャーが、省エネ改修の承認やファイナンスを得
る機会が増加する:
6. 投資分析に資産価値へのインパクトを含める。 その投資の金融的パフォーマン
スに対するインパクトについて説明することにより、ビジネスケースを、単な
るエネルギー効率化評価のレベルを超えるものに拡大する。
7. 次のステップを決定するためにポートフォリオアプローチを採用する。自らの
建築物を 4 つのキー変数(リースのタイプ、リースの期間、資金の利用可能性、
資産との関係(オーナーかマネージャーかテナントか))により位置づけ、改修す
るか、あるいは改修を可能にする新たなリース契約の締結と融資条件を作り出
すか、という次のステップを決定する。
7
A. エネルギー効率のためのビジネスケース
2020 年までに地球上で実現される省エネ建築物改修の投資機会の規模は大変大きく、毎年
2,310 億米ドル4から 3,000 億米ドルに上り、その規模は確固たるビジネスケースに支えられて
いる。
大変な将来性があることについては議論の余地はないものの、算出された金額の範囲は様々
な研究により異なっている。国際エネルギー機関(IEA)の推計に基づく 2013 年の Celes のレポー
トによると、「2 度シナリオの世界(2100 年時点の世界の平均気温の上昇を 20 世紀初頭の水
準に比べ摂氏 2 度以内に抑える、というもの)」を達成するために必要となる、建築物のエネ
ルギーシステムに対する追加的投資は、2010 年から 2020 年の間、世界中で 1 年あたり最大
3,000 億米ドルとなる。これをこの期間の建築物に対する 1 年あたりの総投資額 6,200 億米ドル
5
と比べてみて欲しい。
話題を呼んだ 2009 年のマッキンゼーカンパニーのレポート”低炭素経済への進路”では、建築
物における費用効率的な炭素削減性能を導入するのに必要な、通常分を超える資本支出は、
2020 年までに全世界で毎年およそ 2,310 億米ドル6、2030 年までに約 2,700 億米ドル7である。8
これらの投資におけるビジネスケースの費用効率性や信頼性の根拠は、後述の事実に基づい
ており、学術的または市場によるリサーチ、公的声明、最近の市場の変化に対する知識に基づ
く専門家によるレポートなどにより裏付けられている。
以下にみられる、様々な地域にわたる一連の研究や出版物から得られた現実世界の投資例9が
示すように、エネルギー効率化手法は、素早く回収することが可能であり、価値の低減はゆっ
くり、リターンは数十年にわたる。

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


建築物の効率性を 30%向上させるための投資は、将来の 10 年間にわたり 28.6%の内部収
益率(IRR)を得ることになるとされる。
1930 年代から 1990 年代に建てられた建築物による、フランスの商業建築物のポートフ
ォリオにおいて、30%かそれ以上のエネルギーの節約がみられた。10
シンガポールにおける建築物の研究では、サンプルとした建築物において、改修後には
17%のエネルギーが節約できたことが明らかとなった。米国の民間不動産企業である
Transwestern は、同社が管理しているエネルギーパフォーマンスの改善を図った物件に
ついて、標準的には 3 から 15%の水光熱費の節約ができたと報告している。11
ある調査によれば、既存の建築物を改修することにより、その建築物全体について、中
央値で 16%のエネルギーを節約することができ、その回収期間は 1.1 年、逆数としての
キャッシュオンキャッシュリターンでは 91%となる、としている。12
世界グリーンビルディング協会は、グリーンビルディングについての詳細なビジネスケ
ースを出版し、これらの議論を補強している。 13
8
以下の世界中からの調査研究が示す通り14 15、よりエネルギー効率的な建築物とより高い
賃料、より高い売却価格の間には相関がある。同様に、非効率な建築物と価値の下落、空
室の長期化にも相関がある。:
 Energy Star の標章を得ている建築物は、標章を得ていない同等の建築物より、財務的な
パフォーマンスが大幅に良い。市場価値は 13.5%高く、水光熱費は 10%低く、1 平方フ
ィート当たりのネットインカムは 5.9%高く、賃料は 4.8%高く、稼働率も 1%高い16。米
国の CoStar データベースを用いた研究では、Leadership in Energy & Environmental Design
(LEED)認証を受け、Energy Star の格付を受けている建築物は格付等がない建築物に比べ
て、稼働賃料(賃料金額と稼働率の両方を取り入れた関数)が 8%高く、売却価格も 13%の
プレミアムとなると結論している。17
 英国において British Research Establishment Environmental Assessment Method(BREEAM)の
格付のあるオフィスビルに関する研究では、販売価格に 8%のプラスのインパクトがあ
り、賃貸取引の価格においても 16 から 20%の増加がみられている。18
 オーストラリアにおいて National Australian Built Environment Rating System(NABERS)の格
付を持っている建築物について行われた研究では、最高水準のパフォーマンス(NABERS
レベル 5 と 6) の売却価格には 9%のプレミアムが付き、いくつかのセントラルビジネス
地区においては、比較的低いパフォーマンスのレベル(NABER2-2.5)では、13%のディスカ
ウントが報告されている。19
 フランス全体の住宅に関するデータ分析では、平均的なスコアを持つ物件に比べると、
最高の建築物エネルギーパフォーマンス認証を持つ家屋については、その価値が 40%増
加し、最悪のパフォーマンスの物件については 40%のディスカウントがあることが示さ
れている。20
 Institute for Building Efficiency の 2013 年 Energy Efficiency Indicator Survey によれば、テナ
ントの 3 分の 1 は、グリーンビルディングに入居するに際し、割高な賃料を払ってもよ
いとしている。21
規制強化は、資産の全体的な価値を守るためのリスク管理に欠かせない要素となってきてい
る。
建築物のエネルギー効率性に関する規制要件は世界中の多くの国で強化されてきており、 22
国際エネルギー機関(IEA)は改修率の義務付けやゼロエネルギー建築物の目標設定を提唱してい
る。23これらの規制は、建築物の平均的パフォーマンスを向上させている。パフォーマンスの
低い建築物は、ベンチマーク(基準)の上昇につれて価値を失いつつあり、法的要件に適合させ
るようにアップグレードする必要があるため売却も難しくなるかもしれない。現在、シンガポ
ール、オーストラリア、英国、フランスと、米国の 10 都市以上において、商業建築物のエネル
ギーパフォーマンスについて開示を義務付ける規制が導入されている。物件譲渡の際のエネル
ギー監査を要求する地域の数は増え続けており、最低パフォーマンス基準を要求するところも
ある。
投資の意思決定にエネルギーパフォーマンスを含めることは、リスク管理と投資家の受託者
義務の重要な部分を形成すると、Institutional Investors Group on Climate Change (IIGCC)が論じて
いるように、24機関投資家や投資マネージャーにとって、不動産投資の中心的な方針は、長期
的な価値を作り出し、維持することである。受託者義務は、機関投資家が、入居者の好みや行
9
動の変化、また、規制枠組みと法的な要請の変化など、市場の変化を理解し、機動的に管理す
べきことを求めている。同様に、不動産市場のサイクルの中で現れてくるこれらのトレンドに、
適応し、対応していくことも重要である。資産の先駆的な保有者は、すでにサステナビリティ
を標準的なリスク評価手法の中に組み込んでおり、選択とモニタリングのプロセスを通して、
投資マネージャーやコンサルタントたちが、サステナビリティと気候変動に対する配慮を、投
資と資産管理の手法に十分組み込むことを確実にしている。
エネルギー価格がますます不安定になる中、エネルギー効率化への投資は、良いヘッジ戦略
を提供する。25その上、省エネ改修を終えた建築物は、その改修がテナントの快適性、室内の
空気質、自然光等、関連する側面についても考慮している場合、テナントの生産性を向上させ
るものであることが証明されている。26異なるタイプの小改修に対するビジネスケースは、建
築物のライフサイクルの中でのタイミング(改装サイクルと保有期間)や、また、規制の背景、
地域の消費者の需要に依存している。
クイックウィン(短期間で成果が出る取組)への投資と合理的な回収計画は、短期の投資期
間においても、ビジネス的に意味を成す。小改修の最初のタイプは、インパクトの小さい取組
に関するもので、一般に回収期間が短く、現在入居中/賃貸中の建築物に導入されている。 こ
れらの種類の小改修は、通常 5%から 20%のエネルギー消費の削減を導き、照明、エネルギー管
理、コントロールシステムと冷暖房設備のアップグレードなどの手法を含んでいる。
「グリーンバリュー」が重視される市場セグメントでは、大規模改修も採算に合う。大規模
改修計画は建築物全体の高いエネルギーパフォーマンスを狙っており、通常、断熱や窓の改善
を含んでいる。これは通常、当初数年のエネルギーの節約だけでは回収できない多額の投資を
含んでおり、投資機会についての財務的な分析においては、資産価値へのインパクトを含める
必要がある。Rocky Mountain Institute は最近、大規模改修について計算し提示する際の分析方法
についての関連文書を出版した。27
10
B. 課題の認識
前述したような、エネルギー効率性への投資に対する確固たるビジネスケースに使用可能な
投資の将来性や根拠を考える際には、なぜ収益性のある改修市場の将来性と現実との間にこの
ような大きなギャップがあるのか、その主な理由を理解する必要がある。その根本には、金融
業界において、省エネ改修計画のリスクとリターンを正確に評価する手法が確立されていない
ことがある。
過去数年にわたり、すべての地域において多くの信頼できる研究が一貫して、この理由と課
題についての指摘を行ってきた。地理や分野の違いを超えて、これらは、整合性のないインセ
ンティブ、情報の欠如、リスクとリターンの正確な評価の困難性が入り混じったものとまとめ
ることができ、それが投資収益(ROI)を計算する際の過剰に視野の狭いアプローチにつながって
いる。詳細に言うと、これらは以下のものを含んでいる。 28







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
異なるインセンティブ:投資家はエネルギー節約の価値を得られないかもしれない。
情報の欠如:建築物レベルでの省エネの機会は知られていないことも多い。
当初費用のハードル: 改修ビジネスケースを構築するための費用の埋没。
債務制限: 債務の特約が建築物に対する新たな借入を妨げる。
市場の細分化:多重の所有権構造や資産クラスのセグメント。
複雑なプロジェクト実践手法:複雑な売買、工学技術、財務分析。
引受業務: プロジェクトを評価するための実績のある業界基準の欠如。
ディールサイズ:ディールは通常、相対的に小規模(たとえば 5 百万米ドル未満)。
高い採算基準利回り:平均的な期待回収期間は 3.6 年。
短い保有期間。
これらの市場の失敗に取り組むため、政府は新しい政策、免税、補助金、融資制度などを導
入している。29こうした場合、例えば、オーストラリア、ドイツ、中国とフランスにおいて、
改修活動の増加がみられた。実際、世界中の最も成熟した市場の全てが、資産の効率性格付、
追加的なインセンティブや規制プログラムと合わせ、義務的な開示プロセスを持っている。 30
しかし、こうした支援を行っている地域においてすら、収益性のある改修機会の大部分は手つ
かずである。単に待ち続けたり、より良い政策に向けて活動するだけというのは、経済的に合
理的ではないように思われるのだが。
違った角度からのアプローチでは、これらの問題を投資に関する 3 つの根本問題と言い換え
ることもできる。実務的な枠組みは、これらを投資家の視点から取り組むことでできてくるは
ずである。31
1. 改修への投資に対して指標や評価を伴った説得力あるビジネスケースを提示できていな
い。
2. 省エネ改修投資の決断をどのように行うかについて確信を持てていない。
11
3. 組織内部において、エネルギーを節約し、CO2 を削減する小改修を見つけだし、計画し、
実行するための責任と権限を持った役割が置かれていない。更に、明確に規定された承
認プロセスや評価基準がない。
12
C. システマチックなアプローチによる制御
UNEP FI 不動産ワーキンググルーブメンバーの経験に基づき、このセクションは、不動産投資
家がこの投資機会を利用し、可能性のあるプレミアムで利益を得ることを支援するために開発
された、7 ステップのプロセスを提案する。これらステップは、以下のセクションで説明され、
各々について、それが投資家によってどのように導入され取り組まれてきたかのサポート実例
を付している。
省エネ改修を通じて不動産投資家が価値を引き出すための 7 ステップのプロセス
情報
1. ビジネスケースについての経営の認識を確実にする
2. 建築物のエネルギーパフォーマンスを計測し、指標と比較する
インセンティブ
3. ポートフォリオのエネルギー効率目標を設定する
4. アセットマネージャーの報酬をエネルギーパフォーマンスにリンクさせる
5. 改修が可能な賃貸借契約に整える(グリーンリース)
投資:包括的アプローチ
6. 投資分析に、資産価値へのインパクトを含める
7. 次のステップを決定するためにポートフォリオアプローチを採用する
.
13
情報
1. ビジネスケースについての経営の認識を確実に する
ポートフォリオに含まれる物件の、エネルギー効率性の改善をシステマチックに進歩させる
には、時間と資金が必要である。会社の経営陣がイニシアティブを認識し、その価値を理解す
ることが必須である。そのようにするために、彼らは省エネ改修のビジネスケースを信頼しな
ければならない。経営陣の支持を得るために、十分な証拠を示し彼らの反論に対処するのに時
間を割くことは、大変価値のあることである。省エネ改修は、エネルギー費用削減を通じた見
返りというだけの問題ではない。他にも多くの便益があり、それが経営陣の既存の優先事項を
成し遂げるのにどのように手助けになるかを示すために、それら便益をいかに位置づけるか、
という問題である。以下は、これらの点に光を当てた、Bentall Kennedy の経営陣の気付きに関
する話である。
ステップ 1 の例: Bentall Kennedy 32
Bentall Kennedy の多くのシニアマネジメントパートナーは、サステナビリティに関する明確
な支持者である。彼らは、エネルギー効率性スコアや建築物格付と資産価値の増加を結びつけ
る主要な研究は認識していたが、彼らの支持はそもそも直接の体験に基づいている。彼らは、
エネルギー効率性とサステナビリティ方針の、商業用不動産に関する決定への組み込み方が、
賢明な行動計画につながると理解していた。それぞれの方針が直接、エネルギー効率的なデザ
インと改修を含む、新築と既存の建築物におけるライフサイクルコストに関する慎重な検討を
含んだ重要な決定に関連していた。ここにいくつか、共有するに値する重要な過程がある。
2003 年初めに、物件のより良い水光熱データを得るための意識的な努力がなされた。エネル
ギー価格が上昇し続け、だんだんと不安定になっているのは明らかで、この傾向が収まる見込
みはほとんどなかった。物件管理の機能は地方・地域レベルで取り扱われていたが、エネルギ
ーデータを標準化し、それをポートフォリオレベルで利用可能とすることにより、有益な報告
や意思決定を行うことができると考えられた。このプロセスは十分成熟するまでに 2-3 年かか
った。経営陣は、ある程度支持をしていた。なぜならば、それは、この業界で最高のマネージ
ャーとなる、という同社の目標に整合していたからである。
2007 年に、40 人余りのアセットマネージャー、プロパティマネージャーに LEED についての
訓練を受けさせるよう、勧告がなされた。これにより、ベントールケネディは LEED の Volume
Program を先導する会社の一つとなり、米国内の約 50 のオフィスビルをまとめて認証した。繰
り返すが、明確で計測可能な ROI を持った完璧なビジネスケースは無かったのである。マネー
ジャーを訓練し、今や管理下の資産の 70%以上を認証するという決定は、これが、同社の物件
を魅力あるテナントに訴求するものにする最良の有効な証拠であり、投資家たちが向かおうと
している方向であり、ベントールケネディのバリューであるという考え方に整合するという強
い合意に基づいてなされたものである。LEED によって要求される最低限のエネルギー効率性ス
コアをクリアし、LEED ポイントを最大化するために、様々な物件に対して、多額の投資が行わ
れた。経営陣は、顧客のポートフォリオについての全体戦略の範囲内で、これらの決定を組み
立てることができた。
“その根拠は、直観的にかつ方向性として、エネルギー効率性への投資はネットオペレ
ーティングインカム(NOI)と資産価値を増加させるものであると示すものではあるが、
我々は 100%の確信を持ってそうだといえるわけではない。また、我々は省エネ改修に
よる資産価値の増加率を完ぺきに財務的に予測することもできない。我々は魔法の計
14
算式を持っているわけではない。上位経営陣の支持により、我々は認証、エネルギー
消費原単位、テナント満足度、稼働率、NOI と資産評価の相関についてより明確な構
図を得るため、既存のデータを分析し始めているところである。完全なビジネスケー
スが存在しない中、エネルギー効率性への取り組みの進展は、尐なくとも多分に防衛
的な意味合いによるものとみることができる。エネルギー効率性を向上させず、かつ/
または、その資産タイプや市場に適切な基準の認証を得ないという選択は、その物件
の購入を考える投資家のプールを限定し、従って入札数や、最終的には売却価格を減
尐させるだろう。物件レベルでのエネルギーコストの効率的な管理や、改修を通じて
エネルギー消費を引き下げることを常に進展させることは、現在経営陣により、評判
の良い資産管理会社であるための「テーブルステーク(最低限の要件)」であると見られ
ている。
David Antonelli
Executive Vice President, Portfolio Management
2014 年末までの展望としては、、投資マネージャーに対する公式訓練プログラムは彼らの環
境・社会・ガバナンス(ESG)マネジメントのベストプラクティスに関する知識をリフレッシュす
るだろう。この訓練を通じて、2015 年には ESG キーパフォーマンスインジケーターがより広く、
投資・資産管理報酬に組み込まれることになるだろう。
15
情報
2. 建築物のエネルギーパフォーマンスを計測し、指標と比較する
格言にあるように、測らないものは管理できない。 これは、サステナビリティ・ベンチマー
キングが不動産投資や資産管理の意思決定プロセスに対して、情報を提供する本質的な道具で
あることの理由の核心に迫るものである。重要な教訓は、どのベンチマークが自身の業務に役
に立つか、どのようなデータが使用可能か、その市場が、資産価値の増加とともにオペレーテ
ィング費用が減尐するということを信用するかどうか、熟考することである。データに求めら
れる詳細さについては適切な均衡水準を見つけることが必要である。複雑なデータを収集し分
析するのには資源が必要であるが、それにより、リスクとそれをいかにして回避するかについ
て、より良く理解することができるだろう。ベンチマークは、投資マネージャーがデータを他
の市場参加者にもっと容易に理解される形で提示することを可能にし、そのポートフォリオに
導入されたアクションの強さを示すことを可能にする。確立された基準が一般的になっていな
い地域にいる投資家たちにとって、小規模のメトリクスのセットを選択することは、徐々に複
雑さを加えて行くにあたっての良い出発点である。次回の UNEP FI の文書は、サステナビリテ
ィ評価指標の話題や、不動産の投資家・マネージャー達にとって価値のある事柄について、よ
り深く掘り下げることになる。33
ステップ 2 例:Hermes Real Estate
2006 年における Hermes にとっての優先事項は、サステナビリティの費用対効果上の意味と、
それらがどのように資産価値と関連しているかをよりよく理解することであった。当時の
Hermes の見方は、建築物のサステナビリティのプロファイルが、その投資価値にインパクトを
与えるというものであった。しかし、同社は「どの程度」「どれくらいの期間で」を明らかに
する分析手法を持っていなかった。そのため、Hermes は、サステナビリティの潜在価値をより
よく理解するための、同社独自のサステナビリティ格付システムを開発することを決定した。
金融パフォーマンスに対するインパクトは、各資産に対する 10 年にわたるキャッシュフロー
IRR に対する、サステナビリティ特性のインパクトとして計算された。キャッシュフローの入
力(変数)は、賃料、利回り、税金、その他の費用(保険等)へのインパクトを含み、一方、主要な
サステナビリティ特性としては、エネルギー、気候に対する強靭性、建築物の用途柔軟性、建
築物の質、交通、廃棄物、水、そしてコミュニティが含まれる。これらの情報は、資産につい
てのビジネスプランに投入された。
以下のグラフは、個々の建築物のサステナビリティスコアがどのようにして改善されるかを
示したものである。全般に、資本的支出による改善は管理費や管理方法の改善から得られるも
のよりも小さい、ということに注意すべきである。ここで繰り返される教訓は、建築物におけ
るエネルギー効率性の改善は、資本的支出による改善から始める必要はなく、良い測定と良い
データから始めるものだということである。.
16
Current score : 現在のスコア
Improved via management behavior : 管理方法による改善
Improved via service charge : 管理費による改善
Improved via capital expenditure : 資本的支出による改善
Performance impact ceiling : 改善の影響を含めた上限 Average : 現在の平均
図1
ハーミーズ・サステナビリティ・格付システム (SRS):2009 年における様々な建築物のサ
ステナビリティ点数 とその改善についての分析
社内でこのベンチマーキングを実施した後、Hermes は、ベンチマーキングはもっと尐数のメ
トリクスに集中し、建築物のより大きい集団を含む方が有意義であると認識した。この経験か
ら、Hermes は、Jones Lang Lassale(JLL)のオペレーショナル・サステナビリティ・ベンチマーク
とともに、英国での業界にわたるベンチマークの創設を支援した。このベンチマークはエネル
ギーと廃棄物、水のパフォーマンスに特に焦点を当てることとなった。2008 年にスタートした
このベンチマークは現在、英国における 15 の投資会社と 500 を超えるオフィスとショッピング
センターをカバーするほどに成長した。これにより Hermes は、年次の産業毎の比較とともに、
真のオペレーショナル・パフォーマンスを毎年理解できるようになり、それは、改善に向けた
活動領域を特定するのに役立っている。Hermes はこのツールを、所与の資産について最も費用
対効果の高い改善を特定し、それを投資ライフサイクルと整合した資産ビジネス計画に統合す
るために、同社内部の費用便益分析とともに用いている。
17
Typical practice : 普通の運営 Good practice : 良い運営
Cellular : 自然換気型 個室オフィス Open : 自然換気型 大部屋型オフィス A/C – Standard : 空調付 標準オフィス
A/C – Prestige : 空調付 高級オフィス
図2
エネルギー消費原単位:オフィスビル全体 - kWhe * 1 / m2 * 2 / 年
*1:業務時間・天候連動冷暖房調整後、キロワット時の電力換算 ; *2:賃貸可能面積ベース
このレベルの産業ベンチマーキングにより、アセットマネージャーは、彼らの建築物の相対
的なパフォーマンスを理解し、彼らがどの程度改善できるか(または、彼らがどの程度同業者を
アウト・パフォームしているか) の程度を計量化できるようになった。インダストリー・ベンチ
マーキング・イニシアティブの成功に伴い、Hermes は 2012 年に IPD EcoPAS イニシアティブの
創設を通じて、さらなる産業の協働を可能とする作業に着手した。このイニシアティブは、あ
る不動産ファンド全体として曝されているサステナビリティリスクをベンチマークするために
使われる。これは同業者たちがそのパフォーマンスを比較することに用いられているが、やが
ては彼らのサステナビリティ行動によって、ポートフォリオ全体や建築物の価値が上昇する程
度についての分析を強化するために用いられることだろう。
Hermes の例から得られる重要な教訓は、より大規模なエネルギーとサステナビリティデータ
に対する自発的な取り組みは、そのイニシアティブが新たな業界ベンチマーク/指数として成長
するのに、十分価値があることを証明した、ということである。価値を創造したいと考える不
動産のオーナーやマネージャーは、義務的な開示や、インダストリーベンチマークを待つこと
はない。彼らは、データと協働によって、市場を改善し前進させるのである。
18
インセンティブ
3. ポートフォリオのエネルギー効率目標を設定する
目標がなければ、いつもうまく行ったつもりでしょう。大規模な不動産ポートフォリオの所
有者が発することのできる最も強力なシグナルは、ポートフォリオ全体にわたるエネルギー利
用を削減するための合理的かつ意欲的な目標を表明し伝達することである。このことは不動産
エコシステム全体に反響する明快な呼びかけとなる。ビル効率性研究所(Institute for Building
Efficiency)34によれば、建物のエネルギー効率目標を持つ組織は目標を持たない組織よりも、
50%多くのエネルギー削減の方策を実施している。
ステップ3の例: CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)
好例の一つが米国最大の年金基金 CalPERS である。2004 年に CalPERS の投資委員会は、「コ
ア」不動産ポートフォリオにおけるエネルギー消費量を 2009 年までに 20%削減するという目
標を設定した。このプログラムの終了時点で、CalPERS の運用マネジャーはこの目標を超過達成
し、全体で 22.8%のエネルギー削減ができたことを報告している。累積エネルギー削減量はお
よそ 126,000 トンの CO2 排出量の抑制に相当し、これは米国の車道から約 22,000 台の自動車を
減尐させたか、もしくは 9,750 軒の家庭に 1 年分のエネルギーを供給したのと同様の効果に当
たる。
さらに最近では、CalPERS と同基金の「コア」不動産を運用する全てのマネジャーはアーバン
ランド研究所(Urban Land Institute)の建物パフォーマンスに関するグリーンプリント・セン
ター( Greenprint Center for Buiding Performance)の会員となり、現在では、選ばれたいつかの
不動産のエネルギー使用状況を報告している。不動産の所有者、投資家、管理者の世界的アラ
イアンスであるグリーンプリントは、世界の不動産業界において炭素排出量の削減に取り組ん
でいる。グリーンプリントは、環境性能、特にエネルギー消費量、温暖化ガス排出量、水利用
量、廃棄物処理量といった項目を不動産の所有者や運用者が測定、分析、評価するための環境
マネジメントプラットフォームを提供している。グリーンプリントは会員主導の非営利組織と
して、参加者がお互いに学び情報共有するコミュニティを創造する一方、環境パフォーマンス
性能の継続的改善への道をリードしている。過去 3 年間、グリーンプリント会員は、全体とし
て毎年エネルギー消費量を減尐させている。
CalPERS のシニアポートフォリオマネジャー、Laurie Weir 氏は次のように述べている。
「CalPERS は、サステナビリティに向けた我々の共通のコミットメントを通じて、「コア」不動
産のマネジャー達と提携することを目指している。我々は明確なゴールを設定し、外部のマネ
ジャーに、その投資戦略と投資対象の特性に基づき、エネルギー利用、費用とリスクに効果の
ある解決法を開発する権限を与えている。」
19
インセンティブ
4. アセットマネージャーの報酬をエネルギーパフォーマンスにリンクさせる
人間が合理的でないことは言うまでもないが、報酬はいつでも強い動機となる。人に報酬を
与えて何をしてもらうかは非常に重要なことで、企業統治のまさに核心である。不動産アセッ
トマネージャーにとって、エネルギー生産性は価値の変動要因の一つにすぎないが、ますます
重要性を増している要因である。なぜなら、商品価格が上昇し、変動し易い時代に突入したか
らである。確かにいくつかの市場では天然ガスの価格は下落しているが、総体的には、実質エ
ネルギー価格は上昇し、ますます不安定になってきており、エネルギーヘッジ戦略と企業価値
創出能力との関係はますます密になってきている。こうしたことから、アセットマネージャー
のエグゼクティブ報酬のパッケージの一部に資源効率を連携させるべきであるということには
論拠があると言える。
ステップ4の例: Stockland
この点から最も先進的な企業の一つに、株式上場しているオーストラリアの不動産アセット
マネージャー、Stockland が挙げられる。Stockland は、マネージングダイレクター、ビジネスユ
ニット CEO、その他シニアエグゼクティブ(マネージングダイレクターの直属の部下も含む)
の報酬に資源生産性の改善度を連携させている。短期変動報酬総額35のおよそ 25%が資源利用
に照準をおいたサステナビリティパフォーマンスと関連付けられている(下記参照)。
2012 年会計年度の短期インセンティブ報酬総額における、サステナビリティ関連短期イン
センティブ報酬の割合: 25 %
エグゼクティブ 7 名の短期インセンティブ報酬平均額: AUD 77,024
エグゼクティブ 7 名の基本給平均額: AUD 873,327
注記:パフォーマンスが目標並みであったことを仮定した数値
Stockland は、エグゼクティブに焦点を当てて定量・定性両面をミックスした目標を設定して
いる。エネルギー面では、オフィスポートフォリオでの NABERS 平均 4.5 スターの取得と併せて、
「商業用不動産」(オフィス、インダストリアル、リテール)ポートフォリオにおいて 2014 年
までにエネルギー消費原単位を 20 パーセント削減するという目標を設定し、エグゼクティブボ
ーナスの支給と結び付けている。
Stockland の取締役会は、気候変動による潜在的リスクに曝されている資産についての具体的
な分析を行い適応プランを準備することによって、グループの気候変動適応戦略を進めるにあ
たっての定性的な側面を、エグゼクティブの報酬と関連付けている。このために、エグゼクテ
ィブ達はオフィス及びリテールポートフォリオの代表的な 8 物件について気候変動による脆弱
性と建物強靭性評価を行っており、これは Stockland の「商業用不動産」の資産に関する気候強
靭性評価ツールの開発に情報を提供した。この評価ツールは現在「住居用」不動産及び「退職
者住宅」の評価にも用いられている。
資源使用量低減のために Stockland のエグゼクティブ報酬インセンティブプログラムを使用す
ることの有効性については、それを説明する 4 つのキーファクターが存在する。
1. 目標は、信頼できるデータに基づき合理的ながら野心的なものであったこと
20
2. インセンティブが短期インセンティブ報酬の約 25%36を占める意味のある金額であった
こと
3. インセンティブが長期目標と短期目標に結びつけられ、定期的に測定され報われていた
こと
4. Stockland のインセンティブプログラムに、定量的目標を補うものとして定性的目標も含
まれていた。これはアルバート・アインシュタインの「会計士はすべての価格を知って
いるが、その価値を全く知らない」という先見の明があるコメントに学んだものである。
定量的目標は必要であるが、最終的な成果は定性要因と定量要因が組み合わさったとき
に、一般的により効果を発揮するものである。
インセンティブ
5. 改修が可能な賃貸借契約に整える(グリーンリース)
関係者間のインセンティブが異なるために、省エネ改修を行うことが困難または不可能にし
ていると言われ続けてきた。オーナーや貸主は、たとえエネルギー利用量を低減させるために
投資しても、エネルギー料金を支払うのがテナントであるために、オーナーたちは何の見返り
も得られないと主張する。さらに言えば、賃貸契約の構造は様々なので、省エネ改修に同意を
得るために苦しい戦いに直面している場合がしばしばある。テナントが改修の進展を困難にす
ることもある。こうした不都合を避けるための最も良い方法は、賃貸借契約更新時に重要な条
項を加えるようにすることだ。次のようなグリーンリース契約項目が最も重要である37。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
サステナビリティの目標と趣旨を規定
サステナビリティ施策に係る資本的コストをオペレーティングコストから回収
環境マネジメントプランなどによる制限の活用
テナントによる改善、改変、改修全般に関する基本事項の規定
モニタリングとレポーティングに関する要求事項
委託や転貸に関する要求事項
不履行、救済や紛争解決のメカニズム
ステップ5の例: Colonial First State Property
こうした問題を解決するための積極的かつ計画的アプローチを行っている企業が、Colonial
First State Property である。
“今や私たちのすべての商業オフィス賃貸契約はグリーンリースである。言い換えれば、全契
約が賃貸借契約と同様の法的地位をもつグリーンリース付則条項を含んでいる。グリーンリー
スは貸主に ESG プログラムに関する義務を規定し、貸主はその達成にコミットする。テナント
は成果にコミットすることも可能であるし、そうしたコミットメントや CSR ポリシーがないた
めに、あまり関心がない場合は辞退することもできる。我々のグリーンリース付則条項の目的
は、不動産とその建物の全ての居住者及び利用者のためによりよいサステナビリティ成果を達
成することである。”– Rowan Griffin, Head of Sustainability for Colonial First State Property
グリーンリースプログラムを機能させる鍵は:
21
 貸主による法的コミットメントの表明
 貸主とテナントがグリーンリース付則条項を運営するための実行メカニズムである、
「建物効率運営プラン」
 それを実行し成果を確認するための定期的なミーティング
 テナントが関与に前向きでなくても計画を進行するという共通認識
建物効率運営プランが真摯に受け取られるようにするために、すべてのスタッフの雇用契約
には、キー・パフォーマンス・インディケーター(KPIs)があり、そこにはエネルギー効率向
上が業務責任の一つであることが明記されている。前進を促すための明確なガイドラインとプ
ロセスが規定されているのである。資産(不動産)計画にはエネルギー効率化の機会を含める。
これは 3 年毎に作り直され、毎年更新される改善プランに補完される。すべての認識されてい
る効率化機会は評価され、その効果が一定の指標に収まっていれば、毎年の資本的支出や運営
費用の予算に組み入れられる。
改善プランはポートフォリオ全体で一貫した測定基準を用い、これには、エネルギー、排出
量、サステナビリティの国家基準(オーストラリアの NABERS プログラム)も含まれる。ポー
トフォリオレベルのデータはグローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)に
提出される。Colonial First State Property は 2013 年の GRESB において、世界で上場されている不
動産投資信託(REIT)の中で世界 1 位となった。2007 年からのエネルギー消費原単位削減は、
驚異的にも 40.8%、1,200 万オーストラリアドル38にも達した。
22
投資
6. 投資分析に、資産価値へのインパクトを含める
エネルギー効率化投資は、単なるエネルギー節約以上の多くのことをもたらしてくれる。建
物がより高額な賃料を徴収することも可能となり、適切に考慮されれば、建物の価値も大幅に
上昇させる。
ステップ6の例: Caisse des Dépôts et Consignations
2009 年末、CDC(Caisse des Dépôts et Consignations)はフランスの環境法 GrenelleⅡを見越し
て一つのプロジェクトを開始した。その法律は 2020 年までに既存の商業不動産の一次エネルギ
ー消費量を 38%削減させることを要求している。CDC は既存のポートフォリオの価値低減リス
クを抑制し、改装コストを時間的に分散させるため、課題に迅速に取りかかる必要があった。
始めに、ポートフォリオ全体のエネルギー監査が行われた。(テナント及びオーナーから集め
た)実際の請求書を、エネルギーの利用用途別(HVAC、照明、その他)の消費の内訳を確定す
るために分析し、動態シミュレーションを通して推奨案が発表された。主な更新についてはラ
イフサイクル評価に沿って部品寿命に伴う交換に一致するように時期が決定された。こうして、
大きな更新は大規模修繕保守について計画されている予算でカバーされることとなった。
エネルギー費用のみで計算する場合、投資回収期間は多くのケースで 8 年を超えていた。し
かしながら、改装費用の資産価値に対する比率(%)も算出された。この比率は資産の機能的
質と立地によって決まってくる。回収期間が長期であっても、不動産市場がよりグリーンであ
る建物のパフォーマンス便益に価値を見出すのであれば、改装の意味はあるかもしれない。
このプロジェクトの最初の段階では、改装の意思決定をするために同時に調査されていた複
数の指標に焦点が置かれていた。主な指標は下記の通り。
表
1: 改装における意思決定のための主な指標
ポートフォ
リオ
時間
枠
改装費用
(€/M2)
費用-効果
(€/KWH 削減)
商業用
居住用1
居住用2
2020
2020
2030
173
100
288
1.34
1.07
3.06
資産価値に対 一次エネルギ
する改装費用 ー低減目標
(%)
(%)
4.0
39
2.1
36
4.1
32
不動産価値における環境面での改善のインパクトは、2010 年にパリ中心ビジネス地区(CBD)
の 1930 年代の建物(7,500 ㎡)で実施された大規模改修に表われている。その建物は現在完全
に改良、商業化され、予測と実際のデータの比較が可能となっている。環境面での改修による
付加価値を評価するために、結果も含めて下記の3つのシナリオが検討された。
現状維持 (BAU): 改装なし。標準的メンテナンスのみ。賃料は中古ビルの賃料に相当する。資産
流動性は低いと考えられ、売却時利回りと空室率が高まる。
23
通常の改修 (RT): 現行規制の要求に応じた改修。資産は新築ビル並みの価値があるが、グリーン
プレミアムによる利益はない(平均的な新築市場の賃料)。資産流動性は次第に減尐してゆく
と予想。
グリーン改修 (HQE): エネルギー効率の向上により、オーナーは、テナントの要望に応えられ、
また非常に高い流動性により恩恵を得ることができる。
評価は、モンテカルロ・シミュレーションによる損害リスク推計を加えたディスカウント・
キャッシュフロー法で行った。環境配慮のない場合の価値の違いを評価するために、レンタル
バリューとエグジットバリューの違いに加えて、賃貸物件でテナント入替時の空室期間を用い
た。ディスカウント・キャッシュフロー法による算出によると(図 3)、2つの改修シナリ
オ(RT と HQE)ではそれぞれ 7 年と 9 年までは、改修を行わないシナリオよりも低いキャッシュ
フローにとどまるという結果が示されている。反面、長期でみるとふたつのシナリオは最も高
いネット現在価値(NPV)を示している。しかしながら、改修は初めから金融面で有益であること
が読み取れる。なぜなら、オーナーは賃料収入を増やすことができ、将来の価値低減リスクを
減尐させることができるからである。初期投資費用は将来の利益、とりわけ高い出口価格が期
待できることによって、相殺されると考えられる。
表
2:CDCのケーススタディの主な結果
BAU
投下資本 (€)
0
年間賃料収入 (満室時) (€)
4 288 611
年間賃料上昇率 (%)
1.50
割引率 (%)
7.75
テナント入替時の空室期間 (月)
12
124 257
保守運用費用 (含む空室費用) (€)
ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法 52 748 917
による投下資本コストに対する計算価値 (€)
RT
13 000 000
5 685 730
1.60
6.80
10
91 855
82 191 774
HQE
18 300 000
6 054 200
1.70
6.70
9
76 310
88 243 576
資産価値 (€)
89 926 650
100 377 224
52 748 917
24
図
3: 累積ディスカウントキャッシュフローの経年変化
当初の建物価値のおよそ3分の1の費用をかけて行ったパリの建物のグリーン改修は、投資
家に当初の資産価値を約2倍に増やすことを可能にした。加えて、在来型の改修シナリオに比
べ 10%のバリュープレミアムが生じた。この結果は、エネルギー節約のみ考慮した従来の投資
回収算定は、長期的資産価値を考慮していないためにミスリーディングな結果となるおそれが
あることを明らかにした。
エネルギー改修が法的規制対象となれば、投資家はリスクを低減するために、ポートフォリ
オ全体のエネルギー効率戦略をもつことが必要となるであろう。意思決定には技術的基準に沿
った建物の改修シナリオを選択することのみならず、財務面及び環境面の基準に沿った長期的
なポートフォリオ価値最大化のために、どの資産を優先するのかという観点が必要となってく
るであろう
25
投資
7. 次のステップを決定するためにポートフォリオアプローチを採用する
最初の6ステップでアセットオーナー及び運用者は利益の出せるエネルギー効率化の機会を
発見し、推進することができるだろう。第7のステップは、4 つの変数、すなわち賃貸借の種
類、賃貸借期間、資本のアベイラビリティ、資産との関係(オーナーか運用者かテナントか)
を理解して能動的に管理することである。ポートフォリオアプローチをとり、これらの変数を
正確に設定することによって、各不動産毎に実現可能な多くの方策を創りだすことができるだ
ろう。そして、こうした方策に計画的に取り組むことで、各建物のより根本的な省エネ改修に
ついて資金調達できる可能性が高くなるだろう。主な変数は以下のようなものと考えられる。
i.
賃貸借の種類
o
o
ネットリースとは、ネットレントのことで、エネルギー料金をテナントが
支払っているリースタイプ 。
グロスリースとは、テナントがエネルギー料金、共用部分の費用や維持費
を含んだ、固定された月額賃料を支払っているリースタイプ。
ii.
iii.
iv.
賃貸借期間
o
長期賃貸とは、オーナーと(または)テナントがスペースをより長く所有
または賃貸することで、一般的には 5 年以上だが、理想的には 10 年以上が
望ましい。
o
短期賃貸とは、オーナーまたはテナントがスペースを 5 年以下所有または
賃貸することだが、多くは 2 年以下である。
資本のアベイラビリティ
o
調達可能資本とは、市場金利に近いか市場金利の水準で資金にすぐにアク
セスできる所有者またはテナントに関するもの。例えば自らの資金で賄え
たり、競争力のある金利でクレジットにアクセス可能である場合など。
o
制限された資本とは、改修による財務的な利益を確保しつつ、彼らが負う
リスクを市場金利を超える部分に織り込んだ割高なローンを確保しなけれ
ばならない、所有者またはテナントに関するものである。
資産との関係(オーナーか運用者かテナントか)
これらの変数の組み合わせは省エネ改修が大変複雑であるということを主張するために用い
られてきた。しかし、これらの変数をシンプルな4×4の表にまとめることによって、16 個の
シナリオを創出することができるのである。(下表参照)。各ケースには意味のある、あるい
は根本的な省エネ改修を遂行する難しさのレベルに応じて等級をつけている。




改修が最も容易であるのは、建物/賃貸スペースが
オーナーによって長期間所有される予定であり
テナントの賃貸契約期間が複数年残存しており
オーナーの手元に資金があり
賃貸借契約の構成により双方が改修の利益を得られる(もしくは、回収可能な費用をテナ
ントに肩代わりさせる)ことが可能となっている場合である。
改修が最も困難であるのは:
26



オーナーもテナントも短期間しか当事者でいない予定であり
資本面でも制約があり
賃貸借契約が相反したインセンティブの問題を解決できていない場合である。
27
ステップ 7: キーとなる変数と各シナリオにおける次のステップ
長期保有
グロス
制限された資本
ネット
グロス
調達可能な資本
ネット
オーナー
8 年前後で回収でき
る根本的改修、
戦略的な資産価値の
構築
短期保有
テナント
オーナーが改修に
投資すれば、エネ
ルギー効率化によ
る利益を両社で分
配するとオーナー
に交渉
オーナー
テナント
売却価格を上げる エネルギー改修工
ためのビル認証
事を条件とした契
約更新の実施
短期間での成果が
出る取組
グリーンリース契
約
根本的改修を可能
にするための長期
エネルギー効率化
計画をオーナーと
策定
8 年前後で回収でき 消費エネルギーの 短期間での成果が エネルギー改修工
る根本的改修、
削減による利益を 出る取組
事を条件とした契
戦略的な資産価値の 得るための、グリ
約更新の実施
構築
ーンリース契約の
グリーンリース契
エネルギー削減にテ 交渉
約
ナントの支持を得る
ためのグリーンリー
ス契約
ビル認証
自身のスペースに グリーンリース契 グリーンリース契
対して合理的な対 約
約
所有スペースに対し 価を全て獲得
調達ポリシー
て合理的な対価を全
共用エリアの最も
て獲得
ビルレベルで全て 非効率的な照明を 非効率的な照明を
の合理的な対価が 交換(1~2 年の回 交換(1~2 年の回
エネルギーサービス 獲得できるようオ 収期間の場合)
収期間の場合)
会 社 (ESCo) の 提 案 を ーナーを後押し
検討
営業時間の調整
営業時間の調整
効率的装置への合理 オーナーがエネル グリーンリース契 グリーンリース契
的交換
ギー向上の当初費 約
約
用を払えるよう、
中級ビルオートメー リースの費用回復 非効率的な照明を 調達ポリシー
ションシステム(BAS) 条項について交渉 交換(1~2 年の回
のアップグレード
収期間の場合)
コミッショニング(性
能検証)
コミッショニング
(性能検証)
ESCo の提案を検討
営業時間の調整
28
ビルが表のどこに属していたとしても、エネルギー効率を向上できるか、もしくはビルとオ
ーナーとテナントを利益の出せる省エネ改修に向けて方向づける環境を作り出すことができる
次のステップがある。エネルギー効率化プロジェクトの 3 つのレベルについて考えることは有
益である。クイックウィンは(現地の公共料金と技術・労働コストには依るが)一般的に 2 年
未満で回収できるものである。
プロジェクトの 3 つのレベル
1. クイックウィン:短期間で成果が出る取組
a) グリーン契約に関する文言を契約に入れ込む
b) 営業時間をリース契約でなく実際のビルの利用に合わせる
c) リコミッション(性能の再検証)(直近 3 年間していない場合)を行う
d) 電源負荷を減らし、エネルギー効率性の明細事項を調達ポリシーに導入する
e) 非効率な照明を交換する(例えば T12 蛍光ランプ、マグネティックバラストやハロ
ゲンランプなど)
2. 合理的回収
a) 効率性手法についての勧告を行うエネルギー監査の実施
b) 標準的な交換時期に最新かつより効率的な装置(例えば冷却機やボイラー)に交換
して、制御性の向上した、よりスマートな建物にする
c) 定期的にエネルギーデータをモニターする機能のある、中級程度の建物自動制御シ
ステムを導入する
d) 照明のアップグレード(通常 LED、T5 蛍光照明、人感センサー)
e) 当該マーケットにふさわしい検査とビル認証を受けること
3. 根本的方策
a) 建物の外皮のアップグレード(窓、日射調整装置、屋根・壁の断熱材)
b) 建物の基本照明システムをデジタル制御照明インターフェイス(DALI)による LED 照明
システムに交換する
c) 再生可能エネルギーシステムを導入する
d) 次世代スマートビル自動制御システム(BAS)を導入する
こうした省エネ改修を行うかどうか、いつ行うか、を決定する際に最も重要な要因はポート
フォリオ全体にわたる将来を見据えた投資プランを持つことである。これは、エネルギー節約
及び資産価値に関して投資リターンが最大化される資産への投資を優先させるポートフォリオ
レベルの戦略を意味する。将来を見据えた戦略的視野は誤った機会を回避するために必要であ
る。例えば、暖房設備をより効率的な装置に交換した数年後に、建物全体のオーバーホール修
繕が必要だと気付いてしまう、といったことだ。オーバーホールにより建物の暖房需要は大幅
に減尐し、交換したばかりの暖房装置がサイズオーバーになってしまう。このケースでは資源
は有効に配分されなかったのである。
29
結論
省エネ改修は投資に対して魅力的なリターンを示してきた。短期投資家にとっても同様であ
る。これは、そうした方策が直接的な費用削減となるだけでなく、建物の価値全体にとっても
良いインパクトを与えているからである。
そうした投資について、ビジネスケースの費用対効果や堅牢性が証明されているにもかかわ
らず、利益の上がる改修の機会はその大部分が依然活かされていない。穏当な結論は、省エネ
改修プロジェクトへの投資について市場はリスクが高いと判断しているということである。本
ペーパーで提案したフレームワークでは、省エネ投資の利点を説明し、オーナーと投資家が存
在するリスクを認識・管理して省エネ改修機会を生かした意思決定プロセスを支援している。
7ステップのプロセスに沿って進めることで、不動産オーナー及び投資家は彼らのポートフ
ォリオの中の富創造の重要な源を掘り起こすことができる。オーナーが十分な資金を有する場
合は、彼ら自身で金銭的利益を獲得することができる。資金がなかったとしても、エネルギー
改修のためのしっかりと構築されたビジネスケースを、そうしたプロジェクトへの需要が高ま
っている金融マーケットに持ち込むことができるだろう。
30
参考文献
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Institute for Market Transformation.
http://www.imt.org/uploads/resources/files/Energy_Reporting_in_Appraisal.pdf
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32
国連環境計画金融イニシアティブ不動産ワーキンググループについて
不動産投資は世界的に何兆ドルもの産業となっており、環境、社会、文化面での目標に良い面でも悪い
面でも深い影響を与える可能性がある。都市の貧困問題、地球温暖化と先住民の権利等様々な問題が、
不動産の開発、改修と運用に関する決定の影響を受けている。投資家はこれらの決定に良い影響を与え
ることができる。
国連環境計画金融イニシアティブ不動産ワーキンググループ(PWG)は 2006 年に設立され、可能な限り
最高の環境面、社会面、金融面での結果を導くような不動産投資・運用の取組みを世界中で促進するこ
とを目的としている。
.PWG メンバー:
Actis, UK
Allianz Real Estate (Allianz SE), Germany
Aviva Investors (Aviva plc), UK
Axa Real Estate Managers (Axa – Group Management Services), France
Bentall Kennedy, USA and Canada
BNP Paribas Real Estate Investment Services (BNP Paribas Fortis), France
British Columbia Investment Management Corporation (bcIMC), Canada
Caisse des Dépôts et Consignations, France
CalPERS, USA
Colonial First State Global Asset Management (Commonwealth Bank of Australia), Australia
Deutsche Bank, Germany and USA
F&C REIT Asset Management, UK
Hermes Real Estate, UK
Hesse Newman Capital AG, Germany
Infrastructure Leasing & Financial Services, India
Investa Property Group, Australia
Lend Lease, Australia
The Link REIT, Hong Kong
M&G Real Estate, UK
三菱 UFJ 信託銀行(日本)
Portigon, Germany
RobecoSAM, Switzerland
三井住友信託銀行(日本)
Sustainable Development Capital LLP, UK
Thomas Lloyd, UK
UBS Global Real Estate (UBS AG), Switzerland
国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)(Back cover page)
UNEP FI は政策決定者と金融機関のパートナーシップとして、1992 年に設立された。世界中の銀行、保険
会社と投資家を代表する 200 以上のメンバーとともに、UNEP FI は国連やサステナブル金融における世界
的な活動に対して、金融機関の見方を伝えている。 UNEP FI の使命は、持続可能な世界をサポートするた
めに、「金融を変え、変化に融資する」ことによって、金融に制度的な変化をもたらすことにある。
このブリーフィングは、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)不動産ワーキンググループのプロジ
ェクトである。
33
プロジェクトチーム
James Gray-Donald
Project Lead and Author
Vice President, Sustainability
Bentall Kennedy
Toby Heaps
Co-AuthorCEO
Corporate Knights
Laurie Weir
PWG Co-Chair
Senior Portfolio Manager
CalPERS
Frank Hovorka
PWG Co-Chair
Responsible Property Director
Caisse des Dépôts et Consignations
Tatiana Bosteels
Head of Responsible Property Investment
Hermes Real Estate
Carrie Douglas-Fong
Investment Officer
CalPERS
Anuschka Hilke
Project Officer, Energy Transition
Caisse des Dépôts et Consignations
Gil Levy
Partner
Sustainable Development Capital LLP
UNEP FI 事務局
Elodie Feller, Investment Commission and Property Working Group Coordinator
Annie Degen, Energy Efficiency Coordinator and Special Advisor Long-Term Finance
UNEP FI PWG アドバイザリーグループ
Gary Pivo, Professor of Urban Planning and Professor of Natural Resources, University of Arizona
Maria Atkinson, Director, XO, Australia
Michael Brooks, CEO, Real Property Association of Canada
Paul McNamara, OBE, Former Director, Head of Research, PRUPIM
Sarah Sayce, Professor and Head of the School of Surveying & Planning, Kingston University
プロジェクトチームは、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)不動産ワーキンググループのメンバー全員とア
ーバンランド研究所(Urban Land Institute)建物パフォーマンスに関するグリーンプリント・センター( Greenprint
Center for Buiding Performance)の Helen Gurfel 氏の貢献に感謝する。加えて、コロニアル・ファースト・ステイトの
Rowan Griffin 氏、Stockland の Ramana James 氏と Corporate Knights Capital の Michael Yow 氏のケーススタディへの貢
献と、Sarah Houghton 氏と Eloise-My-Tien Hoang 氏の発行に向けたサポートに感謝をする。
34
本日本語版は、原文をもとに、以下の 3 社が翻訳*・監修をしたものです。
*翻訳にあたっては、万全を期しておりますが、万が一、誤訳等がありましても責任は負いかねますので、必ず原文
(英文)も参照してください。
(なお図表につきましては、原文のイメージと多尐異なっておりますのでご了承ください。)
35
注
1
この文書は、省エネ改修のファイナンシングモデルやアレンジメントについての詳細を扱ってはいない。その点に
ついては将来の UNEP FI の不動産ワーキンググルーブ・レポートの基盤となるだろう。さしあたり、我々はこのレポ
ートで、様々な教訓やビジネスケースや拡張可能なツールを提供してくれた先駆者たちから、全ての市場において省
エネ改修が利益を伴って実行され、ファイナンスもされたということを学ぶことができる。
2
McKinsey & Company (2009). 2009 年のこの 2310 億米ドルという値は、元の値である 1690 億ユーロを、(為替サイト
の) http:// www.xe.com の 2014 年 1 月 29 日の値を用いて換算したものである。McKinsey & Company (2009)は、このよ
うな議論に対する計量的な根拠を提供している。McKinsey & Company は、10 の先進的な世界的企業や組織- The
Carbon Trust, ClimateWorks, Enel, Entergy, Holcim, Honeywell, Shell, Vattenfall, Volvo and WWF -に支えられ、現在から
2030 年までの、10 の主なセクター、21 の世界の地域についての 200 を超える温室ガス削減の機会について評価して
きた。この成果物は、それらの可能性と、これらの手法の各々について必要となる投資についての掘り下げた評価を
含んでいる。
3
IEA のデータに基づき、Ceres (2013) は、2050 年までにクリーンエネルギーギャップ(工業化以前の水準より摂氏 6
度上から、同 2 度上までの部分)を無くすために、追加的な投資が毎年平均で 3000 億米ドル必要であると見積もって
いる。
4
McKinsey & Company (2009). 2009 年のこの 2310 億米ドルという値は、元の値である 1690 億ユーロを、(為替サイト
の) http:// www.xe.com の 2014 年 1 月 29 日の値を用いて換算したものである。
5
Ceres (2013)
6
McKinsey & Company (2009). 2009 年のこの 2310 億米ドルという値は、元の値である 1690 億ユーロを、(為替サイト
の) http:// www.xe.com の 2014 年 1 月 29 日の値を用いて換算したものである。
7
McKinsey & Company (2009). 2009 年のこの 2700 億米ドルという値は、元の値である 1980 億ユーロを、(為替サイト
の) http:// www.xe.com の 2014 年 1 月 29 日の値を用いて換算したものである。
8
Ibid
9
Ceres (2012)
10
Kamelgarn, Y., & Hovorka, F. (2013)
11
World Green Building Council (2013)
12
Mills, E. (2009)
13
World Green Building Council (2013)
14
省エネ改修が当該不動産の鑑定評価額に及ぼす計量的な結果を示す研究もある。 Appraisal Institute は 、
“Recognition of Energy Costs and Energy Performance in Real Property Valuation” (2012) という優れた論文を書き、価値の
増加分の範囲は 8.5%から 100%を超えるものもあるという調査結果を示した。このレポートはまた、不動産鑑定士が、
物件の価値が省エネに由来するものだとする際に直面する問題について、優れたサマリーを提供する。しかし、省エ
ネ改修と物件の価値の間の相関をはっきりさせるためには、より厳格な調査が必要である。Green Building Finance
Consortium は、Value Beyond Cost Savings: How to Underwrite Sustainable Properties (2010) という無料のオンラインブッ
クを発行した。それは、この課題に取り組もうとする人達に対し、詳細な手法を提供する。
15
更に進んだ研究に関する良いまとめが、European Commission によるレポート“Energy performance certificates in
buildings and their impact on transaction prices and rents in selected EU countries” (2013)にある。“Energy efficiency strategy
at the portfolio of a property owner” (Kamelgarn & Hovorka, 2013)というレポートは、稼働率への影響を扱っている。 省
エネと鑑定評価額の関連を示すより多くの個別の物件例については、“High Performance Green Building: What’s It
Worth?” (Cascadia Region Green Building Council, 2009) というレポートに記載されている。
16
Pivo, G. A. (2010)は、米国における 1200 を超える建物のデータセットを提示し、小改修の変数を特定するために比
較対照手法を用いている。
17
Eichholtz, Kok, & Quigley (2013)
18
Chegut, Eichholtz, Kok, & Quigley (2011)
19
Newell, MacFarlane, & Kok (2011)は、NABERS システムの高い採用率や、高い電気料金(豪ドル 19 セント以上) 、そし
てサステナビリティ問題に精通した不動産セクターが、他の国でも有益な指標になるかもしれない点については、注
目に値する。このような条件がない他のマーケットにおいては、価格におけるプレミアムやディスカウントはまだ実
現されていないかもしれないが、それは起こりうることである。
20
Plan Bâtiment Durable (2013)
21
Institute for Building Efficiency (2013)
22
IEA (2013). 今日まで、殆どの規制上の要件は、建物の新築に関するものである一方で、改修に関する要件は議論が
されている最中であり、European Commission は公共の建築物について、義務的な改修率を導入した。
23
www. sustainablebuildingscentre.org/ pages/aboutus
24
IIGCC (2013)
36
25
将来の予測は常に不確かである一方で、エネルギー価格はだんだん不安定になっていくという傾向がみられ、そ
れによりエネルギー投資はよいヘッジ戦略となる。上昇する電気料金(米国での価格は 2000 年以来 40%上昇した。同
業界はエネルギー価格は毎年 6%以上上昇すると予測している。) に加え、多くの世界的大企業は、近い将来に
「carbon pricing」が行われる可能性が相当高いと示唆し、今や「shadow carbon price(GHG の排出を1単位減らすこと
に必要な費用)」に基づき業務を行っている。これはまた、エネルギー価格のボラティリティにも影響を及ぼすだろ
う。
26
World Green Building Council (2013) によるレポートは、より外の眺望がよく、日差しがよく、より良いシステム(設
備)を持っている建物にいると、職員の生産性がより高くなるという多くの証拠を提供する。そのあらましによると、
外の眺望により職員の精神的機能や記憶力が 10 から 25%改善し、コールセンターの職員は 6%から 12%早く処理する
ことができ、入院件数は 8.5%減尐する。更に、採光が増加すると、学生たちはテストの点数が 5 から 14%上昇し、
20%早く習得することができる。職員の生産性は 18%、増加し、小売売上は 15%から 40%増加する。システム(設備)
は以下のように生産性を向上させられる。より良い照明により 23%、より良い換気により 11%、個々人を対象とした
温度管理により 3%、である。省エネの生産性に対するこの調査は、批判される心配がなく決定的なものであるとは
到底言えないが、相関は徐々に明らかになっている。結論として、多くの省エネ改修は、外の眺望のあるフロアにつ
いての生産性パーセンテージを改善し、日差しを増加させ、照明や換気、温度管理を改善することができる。これら
のいくつかは、既に先に述べた資産価値の増加に含まれているかも知れないが、それは不完全でおそらく実態よりも
低く評価されているようである。
27
Rocky Mountain Institute (2014)
28
Deutsche Bank Climate Change Advisors (2012), Marbek (2010), Better Buildings Partnership (2012) and Appraisal Institute
(2012)
29
この文書は、省エネファイナンスの複雑さについて詳しく研究はしない。大きな理由としては、その分野につい
ては十分な文献があるからである。方策の選択肢についての最も詳細な議論のいくつかは、以下の通りである。
Hilke, A., & Ryan, L. (2012); Marbek (2010), pp. 15-22; Deutsche Bank Climate Change Advisors (2012), p.9 p.38, World
Economic Forum (2011) and Investment Property Forum (2012)
30
World Economic Forum (2011)
31
Better Buildings Partnership(2012), Marbek (2010)
32
Bentall Kennedy は、北米を拠点とする資産・不動産運用会社である。管理している資産の大半は、投資期間が長期
の、大規模年金基金によるものである。オフィス、産業、リテール、高級集合住宅等、直近では約 1 億 5 千万平方
フィートが管理下にある。
33
UNEP FI によるレポートは、2014 年 4 月に発表され、http://www.unepfi.org/publications/ index.html で 入手できる。
34
Institute for Building Efficiency (2013)
35
Stockland 2012 財務報告書の 23, 25, 29, 36, 80 ページ、Stockland 2012 年次報告書の 43 ページ、Stockland 2011 CSR
レポートの 2 ページ
36
計算は、短期インセンティブ報酬に占める様々なサステナビリティ関連パフォーマンス目標の割合として開示さ
れているものに基づいている。サステナビリティ関連パフォーマンス目標には、エネルギー、温暖化ガス排出量、水、
環境負荷、従業員離職率、雇用契約、福利厚生、経営陣の性別多様性を含んでいる。サステナビリティ関連パフォー
マンス目標は長期インセンティブ報酬には関連していない。
37
著者は本部分について Fasken Martineau 社モントリオール事務所の Marie Bourdeau 氏, Anne Drost 氏と Richard Clare
氏に謝辞を申し上げたい。.
38
Commonwealth Property Office Fund (2013)
37