持続可能な観光発展における 文化遺産環境の保存・再生とその重要性

日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
《研究ノート》
持続可能な観光発展における
文化遺産環境の保存・再生とその重要性
-「エーゲ海・サントリーニ島」における伝統的建造物集落の再生事例から-
い し も と
と う せ い
石本 東生
奈良県立大学 地域創造学部 観光学科 専任講師
In recent years, the main stream of researches and investigations for Sustainable Tourism in global scale have become
considerably detailed scientific and analytic assessing by means of implementation of diverse and appropriate indicators system
toward the tourist destinations mainly in UK, USA and Australia where this kind of research is so featured. This tendency
should be evaluated highly and essential as well from the viewpoint of reduction and management of tourism impacts within the
destinations.
On the other hand, simultaneously, it appears to the author, at least, that the above tendency might be occurring a slight
negative consequence regarding evaluation to the historic and cultural properties, also the intangible cultural heritage in every
region. Because it seems that the priority for recent sustainability research might be regarded mostly as something natural,
social and environmental within the tourist destination due to long-term substantial impacts of human activities toward the
nature world. In this meaning a sustainable development research of “Blue Plan” organized by UNEP, specifically the article
“Towards an Observatory and a ‘Quality Label’ for Sustainable Tourism in the Mediterranean” has to be taken notice
particularly. Because this survey points out quite positively the importance concerning preservation and restoration of historic
and cultural heritage of the Mediterranean countries.
This research aims to elucidate the important viewpoint on preservation and restoration of cultural heritage environment not
only for sustainable development in tourist destination, but also for their “rejuvenation” moreover “revitalization”, referring to the
national strategic project of restoration at the traditional settlement of Oia, Santorini Island, Aegean Sea, in Greece, which was
implemented during 1975-1992. By means of this governmental project fortunately Oia had a great opportunity to revive herself
from the town of DEPOPULATION and continuously the other regional stakeholders succeeded to this project in order to be one
of the most attractive island destination in the world. Hopefully this case study could suggest a precious meaning concerned with
creation & promotion of appealing destinations in Japan as well.
キーワード:持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)
、文化遺産環境、伝統的建造物集落の保存・再生、ヘリテージツーリズ
ム、サントリーニ島
Keywords:Sustainable Development of Tourism, Cultural Heritage Environment, Restoration & Preservation of Traditional
Settlements, Heritage Tourism, the Island of Santorini
1.はじめに
じめ1、欧米豪そして中国においても、数
やニュージーランド、オーストラリアで
周 知 の 通 り Sustainable Tourism
多くの指標を用いたモニタリングとその
も各国の自然公園の管理運営に採り入れ
Developmentに関する研究は、今や世界
データ解析による観光地の管理システム
られているという。
的にも様々な大学、研究機関および国際
が注目されている経緯を、日本の研究者
このように軽量的な手法でのサスティ
機関(UNWTO、UNEP、UNESCO、EU
たちも報告している(二神:2013、中島、
ナブルツーリズム研究が深化することは
etc.)において進められ、数々の論文、著
清水:2013)
。また、熊谷(2013)が述べ
実に喜ばしいことではあるが、他方、島
作が世に出されている。特にUNWTOが
る通り、1970年代に米国における自然公
川(2002)が指摘する「社会・文化的に
2004年に「持続可能な観光のための指標」
園の観光利用のために考案された管理運
サスティナブル」
、すなわち「新しい理論
(Sustainable Tourism Indicators : STI)
営システム LAC(Limits of Acceptable
で最も特徴的なのが、社会・文化的にサ
をガイドブックとして作成したことをは
Change for Wilderness Planning)は、今
スティナビリティを追及する点である。
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日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
(中略)今までの観光開発において無視さ
要視している。
オーストラリア南部のカン
きるように ④国民が休暇期間中に、よ
れがちであった、観光地に根付く文化、
ガルー島におけるTOMMプロジェクト研
り持続可能なアクティビティーを選べる
伝統、歴史、風習すべてをサスティナブ
究などは、その代表的な例であろう。こ
ように。-ミラーはそこで「観光による
ルにしなければならないという発想であ
れらの点は、寺崎(2013)も「目的達成
環境へのインパクトを一般市民がどのよ
る」というような部分が、現時点では再
型」の観光地モデルと指摘しているが、観
うに認識しているか?」というアンケー
び影を潜めてはいないか…? と危惧す
光地のサスティナビリティを検討する際
トを実施、その結果を集計分析し、Defra
るのは筆者だけであろうか。
には最も大切な作業の一つである。
への提言としてまとめている。
本論文では、近年の注目すべきサステ
ミラーはさらに、デスティネーション
このように、英国の環境行政とサリー
ィナブルツーリズムの研究例を参考にし
に関わるステークホルダーの心理をも深
大学とが協働し、地球的な自然環境を保
つつ、その一つには、未だ日本では紹介
く掘り下げ、
倫理観の喚起を訴えている。
全するためには、まずサスティナブル
されていない地中海沿岸地域のサスティ
そこでは近現代の著名なフィロアンソロ
ツーリズムに対する市民国民の声や認識
ナブルツーリズム研究をもとりあげなが
ピストや哲学者、例えば「鉄鋼王」と称
を十分に理解しようと努力するその姿
ら、地域における「有形・無形の文化財」
さ れ た ア ン ド リ ュー ・ カ ー ネ ギ ー
勢、さらには環境・エネルギーへの負荷
を主要な観光資源とした国際観光デステ
(Andrew Carnegie)
、ステークホルダー
を軽減するためには、自国民の旅行形態
ィネーションの持続可能な発展に関して
理 論 を 主 唱 し た フ リ ー マ ン(Edward
に変化を与える政策までも見据えている
考察していきたく思う。
Freeman)
、さらには『実践倫理批判』な
という先進的な官学連携のプロジェクト
どを著わしたカント(Immanuel Kant)
に、筆者は驚きを隠し得ない。しかしな
等の説得力ある言葉を用いつつ、各ス
がら、筆者が見る限り、ミラーの研究に
テークホルダーの社会倫理啓発に努めて
おいて観光地の歴史、伝統、文化や文化
2-1.グラハム・ミラーによる研究例
いる。自然・社会環境が蒙るインパクト
財の持続可能性に関する言及がそれほど
今やサスティナビリティ研究分野にお
そして経済効果の分析により、観光によ
多く見られないという、その一点にのみ
ける世界的なリーダーの一人とされる英
る負荷の軽減に寄与するミラーの政策提
若干残念な思いが残る。
国サリー大学のミラー(Graham Miller)
言にも、その背景に彼自身の篤い倫理観
は、例えばアイルランドのDIT指標シス
さえ感じられる2。
テム、広域カリブ諸国連合のSTZC指標、
一方で、ミラーは自国の英国において
オーストラリアの TOMM 指標など、近
も、英国政府環境・食・地域事業局〔UK
さて、2013年2月のことであるが、世
年世界の各地で開発、駆使されている
Government
the
界的には中国に次いで、欧州では初めて
種々の指標モニタリングシステムに関し
Environment, Food and Rural Affairs
となる UNWTO 後援のサスティナブル
て、詳 細 に 報 告 し て い る(Miller, (Defra)〕
(以下、
Defra)と共に、国民の
ツーリズム観測センター(Sustainable
Twining-Ward:2005)。
サスティナブルツーリズムに対する理解
Tourism Observatory)が、ギリシャ国
ミラーによる研究手法の特徴の一つ
促進のため、積極的な研究活動を行って
立エーゲ大学に設立された。同年夏、筆
は、その「歴史眼」とも言うべき識見を
いる(Miller:2010)
。その内容を端的に
者も早速エーゲ大学を訪ね、初代所長イ
以て、各デスティネーションの発展段階
説明すると以下の通りである。
オアニス・スピラニス(Ioannis Spilanis)
を捉えている点であろう。すなわち「対
世界的なLCCの急成長もあって、近年
と面識を得ることができた。近年、スピ
象とする地域の歴史的バックグラウンド
は航空機運賃が廉価になり、
Defraは、航
ラ ニ ス は テ リ エ ル(Tellier)と と も に
から説きはじめ→同地域おけるツーリズ
空機の過剰運行による環境・エネルギー
UNEP(United Nations Environment
ムの発生の経緯→その後ツーリズムがも
へのインパクトを抑制するため 、
国民の
Programme)による Plan Blue 調査研究
たらしたベネフィットとインパクト→サ
旅客機による頻繁な海外旅行に注意を促
(2012)に着手し、アフリカ北岸地域も含
スティナブルツーリズムの必要性に着目
し、将来的には英国国民の旅行形態に変
めた地中海沿岸地域の観光デスティネー
した要因→実際に指標を開発して実施→
化を与えたいという目標を掲げている。
ションにおいて、各地域の「高品質ブラ
データを収集・分析の上で政策に反映」と
その目標には具体的に次の4項目が挙げ
ンド化」を目指した持続可能な観光のあ
いう一連の過程を整理する。しかしまた
られている。①英国国内の観光地を国民
るべき姿を検証している。A4版65頁にわ
指標を開発する段階では、ステークホル
の休暇滞在先として支持されるようにク
たる詳細な報告書となった同研究の特徴
ダーが描くデスティネーションとしての
オリティを高める ②国民の頻繁な(航
は以下の通りである。
最終的なヴィジョンあるいは到達点を可
空機による海外)旅行に抑制を促す ③
①調査地の選定
能な限り具体化することを、とりわけ重
国民がより持続可能な旅行形態を選択で
地中海沿岸地域の無数のデスティネー
2.視点を異にするサスティナブルツー
リズム研究例
Department
2-2.UNEP による PLAN BLUE 調査研
for
3
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究の紹介と本研究の位置づけ
日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
ションの中から、高級性、地域性、国
域の民芸や地産池消の食文化が新たな観
においても求められているのではないだろ
際性、規模、歴史性、人気度など、観
光資源となり、さらには地域の労働力が
うか? 筆者は長年「地中海」の北東部に
光地としての性格に偏らず、且つ様々
観光産業を活性化させている点に注目し
位置するギリシャ・エーゲ海地域をフィー
な地域を研究対象地としてとりあげて
ている。
ルドとして研究を進めてきたが、本論文に
いる。また、ローマやバルセロナなど
同研究におけるアプローチの背景に
おいては、以下、
「若返り」
(rejuvenation)
既に成熟し、高いネームバリューのあ
は、古代からの歴史遺産、そして中世の
というよりも、むしろツーリズムによる地域
る観光都市などは調査対象から外して
伝統的な町並みが数多く残る地中海沿岸
の「甦り」
(revitalization)と言っても過言
いる。
地域特有の歴史的背景が多分に影響して
ではないような事例をとりあげて、その経
②地域の「高品質ブランド化」を目指す
いることと推測される。すなわち、周知
緯を探っていきたく思う。
各種指標によるモニタリングデータを基
の通り地中海沿岸地域は、古代エジプト
それは「エーゲ海の珠玉」とも呼ばれ
に、その地域に適切な「高品質ブランド
文明、エーゲ海&古代ギリシャ文明、ヘ
るサントリーニ島の事例である。この島
化」を目指す事例研究を行っている。具
ブライズム、ヘレニズム、古代ローマ文
のある重要伝統的建造物集落の修復・再
体的には、大きく3つのカテゴリーに区
化、ルネサンス、ビザンティン文化など、
生事業に関する報告書(Greek National
分し、国際的な大規模3S(Sea, Sun and
人類の歴史上、非常に重要な文化文明が
Tourism Organisation:2009)
、文献等を
Sand)リゾートとしてAlanya(Turkey)
、
誕生し繁栄した地である。そのような観
調べて、その事実は明らかとなり、且つ
Djerba(Tunisia)
、
Torremolinos(Spain)
点から、上述したスピラニスとテリエル
2012年夏に行った現地調査により、その
を、国内旅行客中心の3S 観光地として
のリサーチは、地中海沿岸地域における
歴史と経緯も確認できたのである。
El Alamein(Egypt)
、Marsa Matrouh
サスティナブルツーリズム研究の独自性
(Egypt)
、The Tetouan Coastal Area
を有しており、注目に値する。これは日
(Morocco)
、Tipeza(Algeria)を、さら
本においては未だ紹介されていないもの
には特殊性に富みヘリテージツーリズム
の、以上の観点から高く評価されるべき
さて、筆者は2010年年頭に「ギリシャ
を 看 板 と す る 観 光 地 とし て Cabras
ものと筆者は信じる 。
経済危機」が表面化して以来、そのネガ
(Italy)
、Castelsardo(Italy)
、Rovinj
それらの調査分析、考察の末、スピラニ
ティブインパクトによりギリシャ国内の
(Croatia)
、Siwa Oasis(Egypt)という
スは最終結論において、バトラー(Butler)
観光産業が大きな打撃を受ける中、しか
合計11のデスティネーションの事例を挙
のモデルを借りつつ、
こう結んでいる。
「地
しそれにも打ち勝ち、むしろ集客力をア
げている。
中海沿岸の観光デスティネーションが『高
ップさせているという、いわば「強い観
同研究において筆者が特に注目するの
品質ブランド化』を遂げるには、特に成熟
光力」を持つデスティネーションに関し
は、先述した欧米豪などのサスティナビ
を極めた3S(Sea, Sun and Sand)デステ
て調査研究を継続してきた(石本:2011、
リティ研究同様、観光行動が観光地に与
ィネーションの『若返り』
(rejuvenation)
2012、2013a、2013b)
。中でも2012年シー
4
ことば
3.2013年の観光統計データに見るギ
リシャ観光
える環境的、経済的、社会的なインパク
が必要だ」という言を以て。
ズンにはその悪影響が最もピークに達し
トやベネフィットのモニタリングを実施
然り、この「若返り」のエネルギーと知
たことは拙論の中でも報告済みである。
し分析に至るものの、地域の有形・無形
恵が世界の多くの観光デスティネーション
ところが、ギリシャ銀行の最新調査に
の文化遺産や町並み景観保存に関する言
及が相当な量割かれている。例えば、ス
ピ ラ ニ ス は そ の 中 で Mediterranean
Strategy for Sustainable Development
(MSSD)の重要な方向性の一つとして
「地中海沿岸地域の文化・環境遺産に焦点
を当てること」を明言しており、上記3
つのカテゴリーの観光地においても「特
殊性に富み、ヘリテージツーリズムを看
板とする観光地」の持続可能性を最も高
く評価している。中でもサルディニアの
Cabras と Castelsardo における地方行政
と中央政府による環境保全政策が、能く
自然&歴史文化遺産を保護しており、地
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日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
図2)ギリシャの大まかな地域区分とサ
ントリーニ島の位置
4.事例研究-サントリーニ島8
図3)サントリーニ島の地図
(世界的観光デスティネーション「イ
ア地区」における「過疎」という過去)
4-1.世界的な人気を博すサントリーニ
島、その歴史・地理的概要
サントリーニ島はエーゲ海のほぼ中央
部に円周状に浮かぶキクラデス諸島の南
端に位置する。アテネの外港であるピレ
ウ ス 港 よ り 約 210km、ク レ タ 島 か ら
120kmの距離。紀元前2000年という石器
時代からエーゲ海で最も古い文明がこの
地に発生し、海上交通の要所として繁栄
よると、2013年のシーズン(1~9月)
した。
においては、ギリシャへのインバウンド
この島はヨーロッパでも最古の文明と
また、サントリーニ島は毎年のように
入込総数は前年同期比で15.2%の増加と
言われるエーゲ海文明発祥の地で、その
観光地として世界的な賞を様々受賞して
報告されている 。これには、12年6月に
歴史はとてつもなく古い。紀元前1500年
いる。2012年の年末には英国 BBC の公
行われた国政選挙後の政権の安定化がま
頃に島中央部の火山が大爆発を起こした
式ウェブサイトにおいて「世界の最も魅
ずその要因に挙げられるだろうが、国内
ため中心部が海底へ陥没し、カルデラ状
力的な島 ベスト5」の筆頭に選ばれ、
の主要デスティネーション毎にも目を向
の地形に変形。今日では、サントリーニ
2013年に入って3月には、トリップアド
ける必要があるため、図1を作成した。
本島の他にテラシア島とアスプロニシ島
バイザーの“Travelers’ Choice 2013”にお
同図はa)2010年~2012年と、b)2012年
が内側に絶壁を連ねて環状に続き、その
いて「世界の人気の島トップ10」で5位
(1~9月)~13年(1~9月)における
中に新旧2つのカメニ島が黒々とした溶
にランクインし、ヨーロッパ部門として
外国人空路到着客前年比増減率の年平均
岩をむき出しにして並んでいるが、この
は栄えある1位に輝いた。他にも島内の
値(%)を色分けし、デスティネーショ
ような島々の地形は長期にわたる火山活
アコモデーションが次々に世界的な賞を
ン毎に示している。
動によって生み出されたものであって、
受賞している。今や世界中から多くのリ
このグラフからは、これまで筆者自身
もともとは本島のプロフィティス・イリ
ゾート客、クルーズ客が妬むほどの憧れ
の先行研究にもとりあげてきたとおり、
アス山を核とする円形の一つの島であっ
をもって訪れるエーゲ海、否、地中海き
ミコノス島やサントリーニ島の南エーゲ
たと考えられている。9
ってのデスティネーションである。
海諸島、そしてクレタ島のデスティネー
サントリーニ島の面積は76km 。島内
ションが強い観光力を示していること、
に13の集落が存在し、人口は約7千人。
また図中右端のカラマタに代表されるペ
先のピレウスやクレタとは船の便で、ま
ロポネソス半島南部のマニ地方が顕著な
たアテネとの間に空の便で結ばれてい
伸びを示していること。実に50%アップ
る。夏期の観光シーズンには、主にヨー
という記録的な数字を弾いていることな
ロッパ各地から多数のチャーター便が直
現在のサントリーニ島において中心の
どが確認できる 。
接に入り、華やかな賑わいを見せる。
街となるのはティラ島中部のフィラ
5
6
7
2
中でも南エーゲ海のサントリーニ島
4-2.島内第2の街イア(Oia)とその歴
史10
①魅惑の観光スポットが秘める
「過疎化」
という過去
(Fira)
。そしてそれに続く第2の街が同
は、その近代の歴史を含めて、実に興味
写真1)サントリーニ島フィラの街。眼
島北部に位置するイア(Oia)である。イ
深い。というのも、20世紀半ばには廃墟
下にエーゲ海を望む(筆者撮影)
アの街は中世よりサントリーニにおける
と化していた町が、国の「伝統的建造物
5つのCastle Townsの一つで、Castellia
集落再生事業」を契機に甦り、今や世界
(カステリア)
と呼ばれていた。現在はフ
中のツーリストから羨望のまなざしで見
ィラと並び、サントリーニ観光において
つめられる魅力的な観光デスティネーシ
も最も魅力的なスポットの一つで、カル
ョンへと生まれ変わっている。
デラの絶壁にへばり付くような「洞窟ホ
テル」から眼下に望む紺碧のエーゲ海と、
その西の水平線に沈む夕陽の美しさは、
世界中から訪れる旅行客を魅了してやま
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日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
写真2)サントリーニ島北部イア地区の
街並(筆者撮影)
写真3)現在でもイアのグーラス集落に
数多く残る洞窟住居跡
(筆者撮影)
が、
1977年になると306人まで激減してい
たのである。また、1928年と1956年には
地震による被害もあり、さらには1942年
冬の過酷な天候時には作物が育たず、食
料が途切れ、餓死者も少なからず出た。
そういった天災の影響もあり、その後次
第にサントリーニを離れる人々が増加し
た。つまり、イアのみならずサントリー
ニ島全体の集落が典型的な過疎地とな
り、寒々と荒れた果てた孤島へと様変わ
りしていった。
ない。
形的特異性が大きく影響している。
ところが、このイア地区にはつい40年
というのも、サントリーニ島はそれ以
4-5.トラディショナル・セトゥルメン
ほど前まで「過疎化」に苦しみ、荒廃し
降も歴史上度重なる火山噴火を起こして
ツ(伝統的建造物集落)としてのイア
きっていたという歴史がある。そのよう
きたために、全島の土地は比較的軟らか
しかしその後、イアの繁栄を復活させ
な状況から、どのようにして世界中の
な火山灰層で厚く覆われている。且つカ
る契機となる出来事があった。ギリシャ
人々を魅了する街と生まれ変わったの
ルデラの内側は急斜面の断崖であるゆ
観 光 省 と ギ リ シ ャ 政 府 観 光 局(Greek
か? そこには、おそらく「経済危機の
え、島の住民たちにとって宅地を求める
National Tourism Organisation)がイア
最中にも揺るがない観光力」そして「持
こと自体が困難であった。よって、海運
地区の各集落に目を留め、1976年より荒
続可能な観光発展」のカギが隠されてい
業が盛んであった当時、富裕な船主等を
れ果てた集落の大規模な修復・復元プロ
るはずである。
除く一般の船員たちは、断崖面に「横穴
ジェクト(第1期工事)に着手したので
②海運業の拠点として繁栄を迎えたイア
洞窟」を掘って住居とした方が、より安
ある11。1992年にようやく第4期工事を終
イアの興隆期は19世紀終期から20世紀
価に広い住まい空間を比較的容易に造る
了したが、計16年の歳月をかけて、イア
初めにかけての時期。当時イアには帆船
ことができたのである。そして彼らは岩
はいわゆる再生された「トラディショナ
の商船団が数多く寄港し、東地中海にお
盤に洞窟を掘りぬいただけではなく、エ
ル・セトゥルメンツ」
(伝統的建造物集
いてロシアとエジプトのアレクサンドリ
ントランスレベルには、屋根が主にドー
落)へと変貌を遂げたのである。
アを結ぶ航路の格好の中継地点として繁
ム型をした石造りの拡張(継ぎ足し)部
以下、実施された同プロジェクトの手
栄していた。また、イアは歴史的にも船
分を設け、立派な玄関ホールに仕上げて
法、実例の一部を紹介する。
舶所有者の街であったと見られている。
いた。建築形式としてはドーム型屋根の
①約60件の伝統的家屋が修復・復元され
例えば、1890年にはイアの人口は2500人
他に、十字ドーム型のものも多く見られ
ており、
総計200におよぶベッド数が確
に満たなかったが、
130もの船舶がイアの
る。これにはやはりサントリーニが中世
保されるほどのゲストハウス群に転用
居住者所有であり、カルデラ下のアルメ
キリスト教の拠点であったことが影響し
された。それらはイア、ペリボラス、
ニ港には小さくとも商船用のドックまで
ているとみられる。それらがイアをはじ
アムディの各集落に分散しているが、
造られていた。その時代、イアには13の
めとした島内の各集落において独特の景
且つそのすべてがカルデラの断崖側で
行政教区が設けられ、銀行1件、税関、
観を形成することとなった。
様々な伝統工芸の工房、後背地からの重
要な農作物を販売する店舗も存在した。
元工事の対象として選ばれた。また、
4-4.繁栄した海運業の終焉とイア、サ
ントリーニの過疎化
4-3.伝統的家屋「洞窟住居」が造られ
た理由
「オーシャンヴュー」の家屋が修復・復
このプロジェクトには「船舶所有者の
邸宅群」は含まれていない。その対象
ところが、このように麗しいイアの繁
家屋選定の条件は以下の通りである。
栄もつかの間、海運業の世界でより安全
ⅰ)
「空き家」あるいは「放棄された」
ところで、19世紀終期から20世紀初頭
に長距離を航行する「蒸気船」が「帆船」
にかけて、イアをはじめサントリーニの
よりも優勢になるにつれ、ギリシャ&
各地区・集落で「洞窟住居」が造られる
エーゲ海における海運業の中心はアテネ
ようになった理由は何であろうか? そ
の外港であるピレウス港に移っていき、
ⅲ)原型は留めていなくとも、周囲の
れには、先述した紀元前1500年頃の火山
イ ア は 衰 退 の 一 途 を 辿 る こ と に な る。
建造物との比較からほぼ原形に近
大爆発まで遡るサントリーニの地質・地
1940年には1348人であったイアの人口
い姿が想定可能な家屋。
あるいは、
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家屋であること。
ⅱ)個々の建造物が持つ建築様式が重
要視された。
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所有者の記憶や資料から復元可能
ンがあったが、そのうち一つのキャッ
継承するためにも、この上ない賜物であ
と判断された建造物。
スルがここに存在した。1920年当時の
ったと言えるだろう。
②1 件の古い喫茶店はゲストハウスの
写真素材からは、グーラス地区がとて
後期の第3&4期プロジェクトは、2
「レセプション兼オペレーションオフ
もよく景観保存されていたことが確認
つの民間建設会社に委託され、引き続き
できるが、先述のとおり、その後商船
修復・復元工事が継続された。その代表
③ギリシャ政府観光局とギリシャ中小企
団の基地としての役割低下 ⇒ 島内人
的な工事の1つが
「耐震用擁壁補強工事」
業局の監督下で、レセプションオフィ
口の本土への流出、そして1928年と56
である。修復・復元された「トラディシ
ス隣の古商店が「伝統織物」の工房に
年の大地震などで、その後はほぼ廃墟
ョナル・セトゥルメンツ」全体の7割に
改修された。ここでイア在住の、ある
となっていた。
当たる建造物において施工された。
ィス」として改修された。
いは他の町々からの婦人たちが、伝統
⑦ギリシャ政府観光局がグーラス集落の
同プロジェクト終了当初は、復元され
織物の技術を訓練且つ習得すること
修復工事に着手した1976年時点では、
た伝統的家屋は政府観光局直営のゲスト
で、その技術の保存継承にも一役買う
地震の被害によるものか、この地区の
ハウスとして宿泊客を受け入れるように
こととなった。ここで作られたカーペ
中心的教会であったパナギア・プラツ
なったが、それ以降順次民間に払い下げ
ット、ブランケットなどは、政府観光
ァニ教会はその基礎部分を残すのみで
られ、ホテル、レストラン、カフェ、商
局運営のゲストハウスで使用され、ま
殆ど全壊状況であった。小さなゾード
店などの経営がより活発に進められた。
たその宿泊者に限って販売された。
ホス・ピギ教会も被害が大きかった。
さらに、他の未修復の古民家に対しても
④「海洋博物館」
がイアのメインストリー
しかし、グーラス集落は当時からギリ
民間によるリノベーションの動きが一段
トに面するある船舶所有者の邸宅を改
シャ文化省指定の重要景観保存地区で
と加速し、街全体が年々活気を取り戻し
装して作られた。先述の通り19世紀か
あったので、古城の城壁部分とゾード
ていった。しかし近年は、イアの街並み
ら20世紀初頭、東地中海における商船
ホス・ピギ教会は完全に修復された。
は「トラディショナル・セトゥルメンツ」
団の基地ともなったイアらしく、当時
⑧また、公共インフラとしての汚水・上
の 帆 船 の 舳 先 と な っ た 女 神 像 な ど、
水、貯水池がイア地区内に完備された。
(伝統的建造物集落)として、その景観保
存および建築、改修が国の特別法により
数々の個人コレクションの寄贈によっ
⑨その他、メインストリートを大理石の
厳しく保護・制限されており、いずれの
て得られた船舶関連の珍しい品々を展
舗道に造り替え、さらにアムディ港に
建築・建設計画も国の審議委員会により
示した。
桟橋を建設。
承認されない限りは、
施工は困難である。
⑤イ ア の 古 い ワ イ ン 工 房 跡 “Cannava”
は、レストランに改装された。現在は
4-6.プロジェクト終了後のイアの街
5.結 論
文化イベントも催されるホールとして
初期の第1&2期プロジェクト(1976
以上、今から40年ほど前には過疎化に
も使用されている。
~1980年)においては、ギリシャ政府観
苦しんでいたサントリーニ島イア地区
光局の指揮の基、
以上の工事が完了した。
が、国の伝統的建造物集落再生事業を契
くまた美しいところで、イアの中核と
この期間に同工事に関わった現地の職人
機に見事に甦り、今や世界的にも注目を
も言える。ヴェネツィア統治時代のサ
たちが、貴重な修復・復元の技術を習得
集める観光デスティネーションとして成
ントリーニには5つのキャッスルタウ
する機会を得たことは、同時にサント
長してきた経緯を綴った。
「観光地として
リーニの伝統的家屋の建築技術を後代に
持続可能な発展」というよりも、むしろ
⑥グーラス集落はイア地区内でも最も古
写真4)サントリーニ島イア地区の伝統
的建造物集落の再生例
左下部はドーム型玄関ホール拡張
部の例(筆者撮影)
「深刻な過疎化により存続が困難であっ
写真5)国の再生事業終了後、民間経営
た集落が甦った」事例である。この事例
が進むイア地区のホテル例(エス
に関しては、現時点では日本において筆
ペラスホテル:筆者撮影)
者の他に研究報告を見ることはないが、
非常に重要な示唆を与えるものと確信す
る。サントリーニ島、イア地区の伝統的
建造物集落は、歴史的、建築学的観点か
らも、地域の独自性、住民の知恵や苦労
が結集して形成された貴重な文化遺産で
あった。そして本論文2‒2)において触れ
たスピラニスの指摘、すなわち「地中海
沿岸地域の文化・環境遺産に焦点を当て
-110-
日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
る」
というコンセプトと本質的に同じ方向
モデーションビジネス-ギリシャ・
pp.53-77 passim, pp.201-231 passim.
性をもって、デスティネーションづくりを
エーゲ海地域における事例研究-」
『奈
・Miller Graham, Kathryn Rathouse,
行っていったのがイア地区であった。
良県立大学研究季報』第24巻第2号、
Caroline Scarles, et al.(2010)
, Public
そこには、再生後も国の事業を引継ぎ、
pp.1-37.
Understanding of Sustainable Tourism,
地元の経営者等ステークホルダーが、再
Annals of Tourism Research, Vol. 37,
・熊谷嘉隆(2013)
「
『米国の自然公園利
No.3, UK, pp. 627-645 passim.
生古民家を利用して、地域の「独自性」
用におけるインパクト研究』と Limits
に富んだ中小規模のホテル、レストラン、
of Acceptable Change system for
カフェ等、新用途への転用を展開。国も
Wilderness Planning(LAC)
」
『観光文
Systems of Indicators for Sustainable
建造物の外観に関しては厳しい規制を敷
化』第216号、公益財団法人 日本交通
Tourism、
『観光文化』第216号、公益
くが、内部の活用については規制緩和を
公社、pp.2-6.
財団法人 日本交通公社、pp.27-28.
・Miller Graham(2013)Examaples of
・Spilanis, I. & H. Vayanni(2006)The
進めている。加えて地産池消の「地中海
・島川崇(2002)
『観光につける薬-サス
式食文化(ユネスコ無形文化遺産)」を地
ティナブル・ツーリズム理論-』同友
position
元のサービス、ホスピタリティ・ビジネ
館、p.39.
Product in the European market, 24th
スに豊かに採り入れている点は、観光デ
スティネーションとしての人気と価値を
・周藤芳幸(1997)
『ギリシャの考古学』
、
of
The
Greek
Tourist
EuroChrie Congress, The University
同成社、p.100、104.
of the Aegean, Greece, pp.1-8.
・Spilanis, I. and J. Le Tellier (2012)
押し上げる要因となっている。また、イ
・周藤芳幸・村田奈々子(2000)
『ギリシ
アにおいて再生事業が実施された1970年
ャを知る事典』
、東京堂出版、p.64.
Towards
an
代後半以降、同様の国家プロジェクトが、
・寺崎竜雄(2013)
「
『指標を活用した観
“Quality
Label”
observatory
for
and
a
Sustainable
他15か所の伝統的建造物集落において実
光地づくり』に思うこと」
『観光文化』
Tourism in the Mediterranean, Blue
施された。それらの地域も、現在注目す
第216号、公益財団法人 日本交通公社、
Plan Paper 12, UNEP/MAP Regional
べきデスティネーションとして成長の過
pp.28-30.
Activity Centre, Valbome, France,
程にある。
日本においても有形・無形の文化財を
関(UNWTO)による持続可能な観光
活かした「持続可能」な観光発展ととも
のための指標を活用した観光地の管
に、
「マイナスからプラス」を、あるいは
理・運営の体系-概要と国内導入の展
「無から有を生み出す」ツーリズム、そし
望」『観光文化』第216号、公益財団法
てデスティネーションづくりを、行政も
含め観光学界・業界で十分議論する必要
があると筆者は痛感する。
参考・引用文献
・石本東生(2013a)「経済危機下にも好
pp.1-65 passim.
・中島泰、清水雄一(2013)
「世界観光機
人 日本交通公社、pp.14-20.
注
UNWTO
1 (2004)
,
Indicators
of
Sustainable Development for Tourism
・二神真美(2013)
「観光分野における持
続可能性指標開発の系譜」
『観光文化』
Destinations : A Guidebook
Miller Graham and Louise Twining-
2 第216号、公益財団法人 日本交通公社、
Ward (2005) Monitoring
pp.9-13.
Sustainable Tourism Transition, The
・Greek National Tourism Organisation
(2009)Preservation & Development of
For
a
Challenge of Developing and Using
Indicators,
CABI
Publishing,
UK
調なエーゲ海・クレタ島における観光
Traditional Settlements(1975-1992)
力の要因とエコツーリズムの展開-ト
Cultural
ラディショナル・セトゥルメンツとク
G.N.T.O Programme, Athens, Greece,
の航空輸送産業の気候変動対策の現状
pp.138-177 passim.
と課題に関しては、次の論文も参照さ
レタ式食文化の観光資源化-」
『日本国
際観光学会論文集』第20号、pp.81-88.
Heritage
Showcase,
The
・Mavromataki Maria(2004)Getting to
pp.54-56.
英国のみならず、グローバルな意味で
3 れたい。
・石本東生(2013b)「ギリシャ・エーゲ
Know Santorini Full Tourist Guide
塩谷さやか(2011)
「航空輸送事業の気
海地域におけるトラディショナル・セ
English, Haitalis Editions, Athens,
候変動対策とグローバル・セクター・
トゥルメンツの復元と持続可能な観
Greece, pp.12-22.
アプローチ-ポスト京都議定書へ向け
光・発展の事例考察-サントリーニ島
・Miller Graham and Louise Twining-
の現地調査を基に-」
『奈良県立大学研
Ward (2005) Monitoring
究季報』第24巻第1号、pp.25-57.
Sustainable Tourism Transition, The
・石本東生(2014)
「伝統的集落景観と食
文化が織りなす持続可能な観光とアコ
For
a
た自主的取り組みの可能性-」日本国
際観光学会論文集第18号、pp.41-47.
現時点では、歴史考古学的さらには建
4 Challenge of Developing and Using
築学的見地からも具体的な指標を用い
Indicators,
て、デスティネーションの持続可能性
CABI
Publishing,
-111-
UK
日本国際観光学会論文集(第21号)March,2014
を調査するまでには至っておらず、各
関連行政の定める景観保存法・条例の
が加工。
周藤芳幸(1997)
「ギリシャの考古学」
、
9 機能に関するチェックまでに止まって
同成社、p.100.周藤芳幸・村田奈々子
いる。今後そのような領域での指標が
(2000)
「ギリシャを知る事典」
、東京堂
加えられ、モニタリングが実施される
ことを待望している。一方で、地中海
出版、p.64.
「4-2.島内第2の街イア(Oia)とその
10 沿岸地域の観光デスティネーションを
歴史」以降、イア伝統的建造物集落再
「高品質ブランド化」するという明確な
生に関する部分は、その多くを、ギリ
ビジョンは、地域の価値を高め、持続
シャ観光省ギリシャ政府観光局アテネ
可能な観光発展への指針となる重要性
本部にて作成された英文報告書
を秘めているに違いない。
Greek National Tourism Organisation
“Express”(Greek Economics Newspaper)
,
5 (2009)Preservation & Development of
2014/01/23 Website 版、http://www.
Traditional Settlements(1975-1992)
express.gr/news/ellada/740108oz_
Cultural
20080225740108.php3(2014/01/24取得)
G.N.T.O Programme, Athens, Greece,
図1のように各デスティネーションの
6 データを時期によって2つに分けた理
Heritage
Showcase,
The
pp.138-177を引用、参考としている。
当時、ギリシャ観光省 ギリシャ政府観
11 由は次の通りである:a)ギリシャ経
光局は、イアの集落以外にも、ギリシ
済危機の発生が2010年の年頭、そして
ャ全土で16箇所に及ぶ伝統的な石造り
同危機が最もピークに達し、ギリシャ
の集落を再生するプロジェクトを実施
のデフォルトやユーロ離脱、さらには
した。その事業報告書が上記参考文献
EU をも脱退するという最悪のシナリ
の
オが、相当な現実味を帯びて取り沙汰
Traditional Settlements(1975-1992)
されたのが2012年5~6月。この年は
Cultural Heritage Showcase である。
Preservation & Development of
近年においてもギリシャ観光が最大の
ダメージを蒙った年である。一方、b)
【本稿は所定の査読制度による審査を経たものである。
】
今年2013年は危機のピークを越え、国
内情勢としても平穏を取り戻し、前年
の反動からもギリシャへのインバウン
ドが格段に改善した年である。本図は
SETE(ギリシャ旅行業協会)の公式
WebSite http://sete.gr/GR/Archiki/
の統計データページより、2013年11月
1日に関連データを取得。筆者が加工
作成した。
ペロポネソス半島南部カラマタについ
7 ては、ギリシャ旅行業協会(SETE)の
ウェブ サ イトに 2010~2012 年 の 年 間
データが公表されておらず、2012年1~
9月と2013年1~9月のみが公表され
ている。そのため、データが1種類のみ
である。
(2013年11月1日データ取得)
図2のギリシャ地域区分図は、ギリシ
8 ャ政府観光局公式ウェブサイト
http://www.visitgreece.jp/map よ り、
2013年10月17日にデータを取得、筆者
-112-