日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 玉 川 惠 子* A Preliminary Investigation of Reasons Why Foreign Tourists Become Repeat Visitors to Japan Keiko TAMAGAWA 序 研究の背景 2008 年 10 月 1 日に観光庁が発足し、日本国政府は新たに 2020 年までに訪日旅行客数を 2000 万人 に増やすキャンペーンに着手した 1。独立行政法人日本観光振興協会(以降 JNTO -通称「日本政府 観光局」 )が本年 10 月3日に発行した「JNTO 国際観光白書 2008」によると、自分の国以外を旅行 した観光客、すなわち国際観光客数は 2007 年でみると、前年比 6.6%増の9億 330 万人に拡大した。 一方、2007 年の訪日外国人旅行客( 「外客」 )数は 835 万人(1 月~ 12 月総計)で、これは世界の 28 位に位置する。外国人観光客数で、日本の順位は前年の 30 位から 2 位上昇し、初めて 20 位台に くいこみ 28 位となった。一方、1つ上の 27 位はスイスで観光客数は 845 万人、1つ下の 29 位はア イルランドの 800 万人(06 年の統計を利用)であった2。 観光立国というイメージが強いスイスが日本より1つだけしか上でないことは、意外なものと感じ られるだろう3。 しかしこのような統計は、当然ながら純然たる統計報告の目的のみのためのものにすぎない。した がって、観光客増減の数字の記録という意味をもつものでしかなく、安定したインバウンドの確保を 示すものということにはならない。 2003 年1月、 「観光立国」を実現するために 2010 年までにわが国への訪日外国人旅行客41000 万 人到達を達成することを目標として揚げたものの5、2008 年1~ 11 月の期間のわが国への外国人旅 行客の推計値は、 日本政府観光局(JNTO)によれば 784 万人であり、前年同期間の 2.2%増にとどまっ ている6。これは今年9月の外客数が前年同月比 6.9%減となり、9月、10 月と2ヶ月連続の減少となっ たことが原因と言えるだろう。2008 年 12 月の訪日外客数が昨年同期と同じ 59 万人と仮定しても 2008 年訪日外客総数推計値は 843 万人であり、これは 2007 年の1%増に過ぎない。日本としてはイ * Keiko TAMAGAWA 国際言語文化学科(Department of International Studies in Language and Culture) 035-049研究紀要16-玉川.indd 35 35 09.2.24 10:40:00 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) ンバウンドを推進したいところである。そこで、訪日旅行者数の減少など市場の変化に対して、2008 年 10 月1日に発足した観光庁は、VJC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)7での対応などを指示し、 「来年度以降の VJC の事業計画にも市場の動向を反映させていく必要がある。2010 年の 1000 万人の 達成に向けて継続的な取り組みを着実に進めることが重要だ」8としている。観光資源、施設の開拓・ 展開に力を入れ、外国人が日本を何度も訪れるような「リピーター観光客」にまでならなければ安定 したインバウンドを確保したことにはならない。そうなって初めて、これまでのさまざまな外国人観 光客誘致施策-ビジット・ジャパン・キャンペーン (VJC)、訪日ビザ緩和措置、国際拠点空港の空港 容量増大など-の成果を挙げたといえるのではないだろうか。 それでは、外国人観光客をリピーターにするためにはどうしたらよいのであろうか。そのことを見 極めて対策を講じるには外国人がどうして繰り返し日本に観光旅行に来るようになるのか、その理由、 動機、旅行形態などを知る必要があろう。そうしてこそ外国人観光客に対する望ましい受け入れ態勢 を用意することが出来ると考えられるからである。 なお調査を対象とした地域であるが、2008 年を含め過去3年間の国別訪日外客数がトップスリー になっている近隣国の韓国、台湾、中国9や国別訪日外客数が第4位と比較的高い米国に関してでは なく、ヨーロッパ諸国を対象とした。なぜならば、ヨーロッパは地理的に遠隔地であり日本とは文化 も全く異なるところであり、外客訪日誘致数が現在は低い。それゆえヨーロッパを対象として調べる ことで、訪日客を今後増やす可能性を探ることができるからである。 そこで本稿では、ヨーロッパ諸国を対象に、外国人観光客がリピーター観光客となる理由・動機に 関する調査を実施し、その結果の分析を資料として報告し、それに基づく考察も試みたい。 2.研究の方法と経緯 外国人観光客がどのように日本への旅行を選んでいるのか、日本のどの地域に魅力を感じるのか、 外国人観光客はどのような理由で日本へ繰り返し旅をするリピーター観光客になったのか、またリ ピーターとは何回訪問した人を言うのか等を調べることとした。eメールに添付した英文アンケート に対し、外国の旅行代理店に回答してもらう形で調査した。そこで英文によるアンケートを作成して e メールに添付し、それを外国の旅行代理店に送って回答してもらう形で調査を行った。 旅行代理店は観光客と直接に接しその希望を聞いて旅行を提供する立場にあることから、旅行代理 店に観光客の動向を聞くことは妥当であり、その結果は客観的な資料と成り得ると考えられる。 先ず、友人・知り合いが利用しているヨーロッパの旅行業者を紹介してもらいその会社のホーム ページの URL を Web で検索し、そのページからコンタクト用のアドレスを見つけた。そしてアン ケートを添付したeメールを、ヨーロッパの 13 ヶ国(ドイツ、オランダ、ノルウェー、フィンランド、 デンマーク、ベルギー、フランス、イギリス、スイス、オーストリア、イタリア、ハンガリー、チェ コ) ・旅行業者 30 社に送信した 10。 この結果、返信・回答はドイツ、イギリス、オランダ、チェコの各 1 社ずつの 4 社のみとなったため、 ドイツとイギリスに絞って調査することに切り替えた。ドイツを選択した理由は次による。1:ドイ ツ語が古い英語の形を部分的に有しており、欧州各国間での商取引は英語でするようになっている現 36 035-049研究紀要16-玉川.indd 36 09.2.24 10:40:00 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 代においても、ドイツ人は特に英語に堪能である印象があったこと、2:ドイツの人口は約8千万で、 ヨーロッパの中ではロシアの1億4千万についで2番目に多いこと、3:ドイツはヨーロッパ諸国の 中でも経済力があり、旅行が好きな国民性であること、などによる 11。イギリスを選択した理由は英 語でのコミュニケーションが出来るからである。 旅行代理店のリストを見つける作業は、ドイツに関しては、「12 カ国辞典」(三修社)を利用し 「主催者」= Veranstalter、 「旅行会社」= Reisebüro、Reisefirma、「パックツアー」= Rundreise、 Pauschalreise、といったドイツ語単語を見つけ、これをタームとして Google で検索し、コンタクト 用に公開されているリスト、Japanreisen 2008 を見つけた 12。イギリスについては「イギリスの旅行 代理店」= Travel agents in UK をタームとして同じく Google で検索し、旅行代理店の無料宣伝ペー ジ兼リスト集として利用できるサイトを見つけた 13。 このように外国の組織・会社を相手に調査をする場合、調査者がその国の国語またはその国で使用 されている第1公用語を使えないとかなり厳しいものがあると分かった。 37 035-049研究紀要16-玉川.indd 37 09.2.24 10:40:00 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) 使用した英文アンケートの和訳を下に示す。 【日本への旅行についてのアンケート】 1.日本への旅行と扱っていますか。 (a) はい (b) いいえ 「はい」の場合、次の2~8の質問に回答してください。「いいえ」の場合、9の質問に回答して ください。 2.日本のどの都市が人気がありますか。最も人気がある都市名を3つ書いてください。 3.どうしてこれらの都市は人気があるのですか。その理由を3つ選んでください。 (a) 買い物 (b) 食べ物 (c) 観光 (d) 博物館(美術館) (e) 特別な興味の対象となる店や場所(IT グッズ、アニメ、コスプレ、その他) (f ) 日本の伝統的なイベント(さまざまなお祭り、その他) (g) 寺院、神社、城などの古い建造物 (h) 旅館を含む日本の伝統的な家屋 ( i ) 世界遺産 ( j ) その他 4.最初の日本への旅行は、どのような形態の旅行ですか? 2つ選んでください。 (a) 1人旅 (b) 日本の旅行会社による添乗員付きパッケージツアー (c) 日本の旅行会社ではない旅行会社による添乗員付きパッケージツアー (d) 日本の旅行会社による添乗員無しのパッケージツアー (e) 日本の旅行会社ではない旅行会社による添乗員付きのパッケージツアー ( f ) その他 5.最初の日本への旅行を探す際に、 お客様はどうやって貴社(の営業所)を見つけたのでしょうか。 2つ選んでください。 (a) 貴社の宣伝チラシまたはパンフレット (b) 貴社のホームページ (c) 観光局のホームページ (d) 旅行代理店のホームページ (e) ガイドブック ( f ) 友人や親戚の推薦 38 035-049研究紀要16-玉川.indd 38 09.2.24 10:40:00 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 6.日本へのリピーター旅行者となっている貴社のお客様はどのような旅行形態を利用しますか。 2つ選んでください。 (a) 1人旅 (b) 日本の旅行会社による添乗員付きパッケージツアー (c) 日本の旅行会社ではない旅行会社による添乗員付きパッケージツアー (d) 日本の旅行会社による添乗員無しのパッケージツアー (e) 日本の旅行会社ではない旅行会社による添乗員付きのパッケージツアー ( f ) その他 7.どうして日本へのリピーター旅行者になるのでしょうか。(理由を)2つ選んでください。 (a) 丁寧なマナー (b) サービスの良さ (c) 価格 (d) 清潔さ (e) 自然の景色 ( f ) 特別な興味の対象となる店や場所(IT グッズ、アニメ、コスプレ、その他) (g) その他 8.お客様が何回日本を訪れたら「リピーター」と呼びますか。その数を書いてください。 9.日本へのどのような種類の旅行も取り扱っていない場合、次の A、B の質問に回答してください。 A. 現在は日本への旅行を取り扱わないのは何故ですか。2つ選んでください。 (a) 費用が高すぎる (b) お客様が興味をもっていない (c) 遠方過ぎる (d) リスクがある(リスクの例: ) (e) 情報が少ない 2. 1 アンケートの集計 上記のアンケートの英文原票を当初の 30 社に加え、更にドイツ 100 社、イギリス 100 社の合計 200 社にメール送信した結果、上記の当初の4社(ドイツ、イギリス、オランダ、チェコ各1社)に 加え、14 社からメール返信による回答があった。なおこれは、最初に送信したメールへの返事が遅 れた会社(デンマーク 1 社)を含めたものである。 合計 230 社にも送信して、返信がわずか 18 社にとどまった理由は何によるものだろうか。使用し たeメールアドレスは全て連絡用としてネット上で公開されたものであったこと、また、不達として 戻って来たのは2社であったこと、さらに返信・回答をした会社の通信文は丁寧で好意を感じさせる ものであったことを考えると、このように回答が少数にとどまった理由として、次の2つが考えられ 39 035-049研究紀要16-玉川.indd 39 09.2.24 10:40:00 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) るのではないだろうか。 ① 先方のセキュリティーシステムにより「迷惑メール」に分類され、自動的に削除された。アンケー ト文を添付した当方のメールを友人に送ったところ、先方の迷惑メールフォルダに入っていた、 という報告を何件か受けたのである。 ② アンケートに回答・返信した会社名または反対に回答・返信しなかった会社名を公表するなどの インセンティヴ提供、交渉のテクニックが足りなかった。そのため、先方が回答するまでに至ら なかった。 今回は連絡用メールアドレスにこちらから添付ファイル付メールを送る、という形をとったが、旅 行会社の HP 上に、アンケートに答えてもらえるかどうかを書き込み、返答のあった会社に改めてメー ルを送る、といった形態も併せてとることが次回からは必要と思われる。 さらにこちらからも事前に何らかの情報を提供し、先方に興味を抱かせ、回収率を高めることにつ なげること、そして現地旅行会社だけでなく、実際に旅行ガイドとして活躍している人たちともコン タクトをとることなども必須であろう。 尚、自由回答にしたアンケート調査票の質問 2 および選択肢の「その他」への回答はアンケートの 集計表には含めず、 「2.2 アンケートの分析」にまとめた。 2.2 アンケートの分析 以上のアンケート調査票と回答の集計表を照合した結果、次のようなことが明らかになった。 ① 回答した 18 社はいずれも日本への旅行を扱っている。 ② 人気のある訪問地は東京、京都、大坂、北海道、沖縄、箱根、広島、長崎、奈良、名古屋、日光であっ た。広島を「その他」として選んだ理由として「世界的に有名な場所」と記述があり、広島が原 爆を経験したことを指していると考えられる。長崎についても同様と考えられる。また、質問文 に cities =「都市」という言葉を使わずに areas =「地域」とした場合の回答について考察する 必要があると考えられる。 ③ ②の都市が訪問地として人気があるのは1.観光 2.寺院、神社、3.城などの古い建造物 4.特別な興味の対象となる店や場所(IT グッズ、アニメ、コスプレ、その他)の順であった。 ④ 日本へ初めて旅行するときの旅行形態で多いのは1.日本の旅行会社ではない旅行会社による添 乗員付きパッケージツアー 2. 1人旅 3.日本の旅行会社による添乗員付きパッケージツアー の順である。 ⑤ 日本への初めての旅行を申し込む旅行業者を選ぶ際に参考にする資料は、ドイツでは「その旅行 業者のホームページ」に集中し、イギリスでは回答した会社が旅行代理店であるにもかかわらず 40 035-049研究紀要16-玉川.indd 40 09.2.24 10:40:00 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 「その旅行業者のホームページ」と「旅行代理店のホームページ」が伯仲しており、旅行業務内 容が分化されていることが示されている。また、イギリスでは「友人や親戚の推薦」を参考にす る者が多いことが分かった。このことは日本国内での外客への対応に国別の配慮を盛り込む必要 性を示唆していると考えられる。 ⑥ 日本へのリピーター旅行者が日本へ旅行するときの旅行形態はドイツもイギリスも「1人旅」に 集中しているが、ドイツのほうが 2 倍多い。次いで、両国において「日本の旅行会社ではない旅 行会社による添乗員付きパッケージツアー」と「日本の旅行会社による添乗員付きパッケージツ アー」が伯仲している。このことは、同じヨーロッパの国同士でありながら、国民性により行動 様式が違うことから、⑤と同様に、日本国内における外客への対応に国別の配慮を盛り込む必要 性を示唆していると考えられる。 ⑦ 日本へのリピーター旅行者となる理由のトップは「自然の景色」で、次いで「特別な興味の対象 となる店や場所(IT グッズ、アニメ、コスプレ、その他) 」である。このことは外客が都市部の 特別な場所以外では都市部自体から離れた、自然の多くある場所にもっと行きたがっていること を示唆していると考えられる。 ⑧ 日本へのリピーター旅行者とは 2 回目に日本へ旅行に行く者であるとするのがドイツ、3 回目に 行く者であるとするのがイギリスである。このことはドイツに比べイギリスがやや慎重であるこ とを示唆しているように思われる。 2.3 アンケートの分析と回答者の指摘に基づく旅行目的地に関する考察 アンケート調査票に回答したドイツの旅行業者のうちの1社 Hotei Japan Reisen( 「布袋日本旅行」 ) の Dr. Wolfgang Bauer(ヴォルフガング・バウアー博士、以下「バウアー博士」)から同時に通信文 をいただいた 14。バウアー博士は、 アンケート調査票の質問2. 「日本のどの都市に人気がありますか。 最も人気がある都市名を3つ書いてください。 」に対して「東京、京都、奈良」と回答したが、通信 文で外国人観光客向けの日本国内の旅行目的地に関して更に開拓すべき地域があることを指摘してい る。バウアー博士の通信文の要約は次の通りである。 ① 日本へ初めて旅行する外国人観光客は東京、京都、大阪などのよく知られている日本の代表的な 都市に行きたいと当然思うだろうし、これらの都市名を挙げるのは「不可避」であるので、この 質問は外客に人気のある代表的な都市を再確認するためのもののように思われる。 ② 国際空港の立地条件もあり、外国人にとって日本国内での行き先は現在限られてしまっている感 じがある。 ③ 日本における(インバウンド)ツーリズムの開発ではもっと「田舎」15 をターゲットにするべき 41 035-049研究紀要16-玉川.indd 41 09.2.24 10:40:01 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) である。 ④ 美しい自然の中での活動(ウォーキング、ハイキング等)の追求。 ⑤ 持続的なエコツーリズムの分野における更なる開発。 バウアー博士は「外客は自分で旅館 1 軒見つけるのも困難である。日本には都市よりももっと価値 のある見所があるのですよ!」と締めくくっている。このことは、外客のなかでも1人旅を好む者に とっての都市以外の観光地に関する情報提供が質・量共にまだ充分とは言えない現状を示唆している と考えられる。 以上のアンケートの分析②とバウアー博士の指摘から、訪日外国人旅行客の訪問先がアクセ スしやすい都市に偏る傾向があることが示唆されたが、このことは JNTO による 2007 年の訪 日旅行客についての調査「性別 都市・観光地別訪問率ランキング」の結果に合致している 16。 この調査において男女ともあわせた全体順位の全国上位 20 位に入っている観光地はいずれも都市か 都市に準じるアクセスの良い場所である。上位順に示すと次の通りである: 新宿、大阪市、京都市、 銀座、渋谷、浅草、その他 23 区、原宿、横浜、上野、お台場、秋葉原、名古屋、福岡市、TDR(東京ディ ズニーリゾート) 、六本木、箱根、成田市、品川、奈良市。また、これらの観光地はこれまでに充分 開発され外客に情報発信されているからこそ高い外客誘致数を獲得できている現状だと考えられ、外 客誘致数を更に増大させたい日本としては、観光地の持ち駒を増やす場合に従来の観光地ではない、 いわゆる「田舎」 、ありふれた里山などを観光地として再開発の対象と考えることは現実的であろう。 2.4 日本の田舎を観光地として再開発した例 以上の分析と考察により、いわゆる「田舎」と呼ばれる地域は、今後インバウンド拡大の可能性が ある、すなわち外国人旅行客誘致の可能性を持つことが分かった。それでは、 「田舎」に観光地とし ての魅力の開発、観光関連施設の整備のために現在何かなされているだろうか。進行中の好事例とし て、テレビ東京(12 チャンネル)で放映中のシリーズ・日経スペシャル「ガイアの夜明け」で放映・ 紹介された和歌山県・南部にある田辺市の取り組みがある 17。田辺市には世界遺産の熊野古道がある にもかかわらず、交通の不便さと宣伝不足がたたり温泉街が低迷していた。この状態を打破すべく、 外国人旅行客を誘致することによって街の再開発を成し遂げようと現在取り組んでいる。そこで、 「外 国人を誘致するためには、外国人の目線が必要だ」とし、市はカナダ人のブラッド・トウルさんを国 際観光推進員に採用し、市内、宿泊所において外国人が好きな「和」の雰囲気を壊さないように配慮 しながら取り組みを進めている。ブラッドさんは「何でもない田舎の風景に日本の良さがある!」と している。 42 035-049研究紀要16-玉川.indd 42 09.2.24 10:40:01 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 3. リピーター動向調査の展望 3.1 今回の調査の意味 今回の調査では返信・回答が少ない結果になったが、遠方の海外の会社から直にアンケート回答し てもらえたことは、このような調査においてインターネットとeメールが確実に機能することが明確 になった。調査対象母数を増やし、アプローチの内容に工夫をする、例えば国民性により違うと考え られる休暇の過ごし方の嗜好についての情報も併せて収集する、ことにより訪問地に関するアピール 点を把握することが期待できると考えられるのではないだろうか。同様な調査を南北アメリカ大陸諸 国およびアジア諸国の旅行業者に対しても実施したいが、旅行業者はより新しい魅力的な旅行商品の 開拓・提供を永続的に行う必要があるため、観光地開発・拡大に関する調査に対して協力が期待でき るだろう。 3.2 今後必要な調査-外国人は都市以外にどのような場所に行きたいか 外国の旅行業者を対象に今後の観光地開発希望に関する質問を加え調査を継続する一方で、日本へ の外国人観光客を対象に、日本国内の宿泊施設において数ヶ月間の調査を行い、その調査結果を外国 の旅行業者を対象とした調査の結果と比較・考察することにより、日本への外国人旅行客の訪日の理 由・動機を明らかにし、同時に、外国人旅行客が今後日本国内でいわゆる都市部以外にどのような場 所に行くことを期待しているのか潜在的な要望を掘り起こし、観光地開発・拡大のヒントとしたい。 おわりに 外国人旅行客が「リピーター」になった動機を知り、またリピーターの潜在的要望を掘り起こして 新たな観光地を顕在化させ、官民連携により実際に観光地開発につなげることが出来れば、持続的な インバウンドの確保につながるだけでなく、日本人国内観光旅行者をも惹き付けることになると考え られる。 新たな観光地出現の効果は、旅行関連業界-輸送(交通) ・飲食・宿泊・土産物産業-にお ける経済効果となって現れ、その地域の活性化に繋がることが期待されるからである。さらに、その 地域の魅力を現地の人が再発見する、という経済以外の効用にもつながるのではなかろうか。 ご協力してくださった方々に心より謝意を表します。 43 035-049研究紀要16-玉川.indd 43 09.2.24 10:40:01 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) 主な参考文献 ・太田久雄、山口晶美 『ネット時代に生き残る旅行会社』2002 ・フィリップ・コトラー、ジョン・ボーエン、ジェームズ・マーキンズ『コトラーのホスピタリティー& ツーリズム・マーケティング 第3版』ピアソン・エデュケーション 2003 ・安田亘宏 『旅の売り方入門』イカロス出版 2005 ・岡村 薫 公正取引委員会競争政策研究センター 福重 元嗣 大阪大学大学院経済学研究科教授大阪大学大学 院経済学研究科教授『リピーター観光客育成に向けた観光プロモーション策』2007/11 KISER Discussion Paper Series No.10 ・鈴木茂、奥村武久『「観光立国」と地域観光政策』晃洋書房 2007 ・『JNTO訪日外客実態調査2006-2007<訪問地調査編>』独立行政法人国際観光振興機構2008 ・『JNTO国際観光白書2008』JNTO(独立行政法人国際観光振興機構)2008 ・週刊『観光経済新聞』 1 観光庁ホームページ http://www.mlit.go.jp/kankocho/ 「観光庁設立の経緯」: 観光履行推進基本法の成立(2006年12月)、観光基本法(昭和38年法律第107 号)等に基づいて策定された「観光立国推進基本計画」の閣議決定(2007年6月)などを受けて、「国土 交通省設置法等の一部を改正する法律」(2008年6月)などを根拠法令として、地域経済の活性化や国際 相互理解の増進を企図して2008年10月1日に国土交通省の外局として設置された。 2 トラベルニュース http://www.travelnews.co.jp/2008/10/inbaund081003-1.html 3 例えば、今年度の世界経済フォーラムで発表された、2008年の旅行・観光の競争力ランキングでスイスは 1位、日本は23位であった。http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=34559 また、スイスでは人口約700万のうち、観光に従事している人は25万人にも及ぶ。 http://www.swissinfo.ch/jpn/specials/country_profile/detail.html?siteSect=2605&sid=6975279&sub=yes 4 JNTOホームページによる-訪日外客とは、国籍に基づく法務省集計による外国人正規入国者から日本 に居住する外国人を除き、これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のことである。 5 国土交通省総合政策観光部門資料 6 NEWS RELEASE 日本政府観光局 平成20年12月24日の中の2008年11月のデータによる。 7 ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部資料-2010年に訪日外国人旅行者数を1,000万人とするとの 目標に向け、日本の観光魅力を海外に発信するとともに日本への魅力的な旅行商品の造成等を行うビジッ ト・ジャパン・キャンペーンを官民一体で推進している。このためにビジット・ジャパン・キャンペーン 実施本部及び執行委員会が設置されており、日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部は実施本部 事務局としての機能を担っている実施本部は、国土交通大臣を実施本部長、(社)日本ツーリズム産業団体 連合会(TIJ)会長、国土交通副大臣、(社)日本観光協会会長、 日本政府観光局理事長を副本部長とし、官民 の関連団体・企業や関係省庁等のトップ計57名で構成されている。 8 観光庁国際交流推進課・金指和彦課長補佐『観光経済新聞』2008年11月1日“訪日外客2ヶ月連続で減少” 9 日本政府観光局(JNTO)2006年-2008年の統計資料による。 10 ドイツ8社、オランダ4社、ノルウェー2社、フィンランド1社、デンマーク2社、ベルギー2社、フランス2 社、イギリス2社、スイス2社、オーストリア1社、イタリア1社、ハンガリー1社、チェコ2社の合計30社。 11 ドイツでは年に6週間もの休暇をとる。また、外国への旅行が非常に多く、その規模は世界最大クラスで ある。『現代ドイツハンドブック』(三修社)p.300 44 035-049研究紀要16-玉川.indd 44 09.2.24 10:40:01 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 12 ドイツ語による検索は千葉商科大の森田里津子氏にご協力いただいた。http://JNTO.de/nach-japan/ reiseangebote/reiseveranstalter.html 13 Free Index. Co. UK <The People’ s Directory>Travel Agents in the UK http://www.freeindex.co.uk/categories/travel_and_tourism/travel_agents/ 14 ヴォルフガング・バウアー博士からの通信文本文: Attached you will find the answered questionnaire. To be honest, the questionnaire is too short and I am afraid that it will in the end only proof existing assumptions about the role of Tokyo and Kyoto for inbound tourism in Japan. Naturally most people who never had been to Japan before want to see both cities - but for me they are both in a sense just“unavoidable”, and because of the airports also start or endpoint of most tours (for Kyoto naturally Kansai airport). In my opinion development of tourism in Japan should aim at the country side - Tohoku, Hokkaido, Japan Sea side, Shikoku (Kyushu is already in quite a lot of itineraries of German travel agents), in more sustainable eco-tourism (why are there only four eco-lodges in Japan?), and more possibilities of moving in nature (walking, hiking, etc.). If the questionnaire only reassures that certain cities are top-destinations it misses the chance to develop tourism in beautiful traditional Japanese country side areas where it is still sometimes difficult for tourists just to find a“ryokan”. There is much more to Japan than just the cities! I am sorry if I should have misread the purpose of your questionnaire. 15 バウアー博士のいう「田舎」とは「都会から離れているところ」という意味だと考えられ、著者も「田 舎」という言葉の意味をそのように考え、本稿における「田舎」も同様である。 16 『JNTO訪日外客実態調査2006-2007<訪問地調査編>』独立行政法人国際観光振興機構2008年2月 17 「外国人観光客を呼べ~変わりゆくニッポンの名所~」テレビ東京(12チャンネル)・日経スペシャル 「ガイアの夜明け」2008年4月29日放送 第312回 英文アンケートの原票 Questionnaire About Travel To Japan 1. Do you handle travel to Japan? Please check. (a)Yes. (b) No. If“Yes,”please answer questions 2 ~ 8. If“No,”please go to 9 below. 2. Which cities in Japan are popular? Please write top three cities’names. 1st. 2nd. 3rd. 3. Why are those cities or prefectures popular? Please choose top three reasons. 1st. 2nd. 3rd. (a) shopping (b) food 45 035-049研究紀要16-玉川.indd 45 09.2.24 10:40:01 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) (c) sightseeing (d) museums (e) shops or places of special interests (IT goods, animation, cosplay, etc.) (f ) traditional Japanese events (various kinds of festivals, etc.) (g) old architectural structures such as temples, shrines, castles, etc. (h) traditional Japanese houses including Inns “Ryokan” ( ) ( i )world treasures ( j ) others 4. Which forms of travel to Japan do people usually take for the first time? Please choose two. 1st. 2nd. (a) traveling alone (b) guided package tour by a Japanese travel company (c) guided package tour by a non-Japanese travel company (d)package tour without a guide by a Japanese travel company (e)package tour without a guide by a non-Japanese travel company (f) others 5. How do your customers reach you when choosing their first travel to Japan? Please choose two. 1st. 2nd. (a) your ad. fliers or pamphlets (b) your own home page (c) tourism board’s home page (d) travel agent’s home page (e)guide books (f) friends’or relative’s recommendation 6. Which forms of travel to Japan do your repeater travelers to Japan take? Please choose two. 1st. 2nd. (a) traveling alone (b) guided package tour by a Japanese travel company (c) guided package tour by a non-Japanese travel company (d) package tour without a guide by a Japanese travel company (e) package tour without a guide by a non-Japanese travel company (f) others 7. What makes your customers become “repeaters” to Japan? Please choose top three factors. 1st. 2nd. 3rd. (a) polite manners (b) good services (c) prices (d) cleanliness (e) natural scenery (f) special interests (IT goods, animation, cosplay, etc.) 46 035-049研究紀要16-玉川.indd 46 09.2.24 10:40:01 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 (g) others 8. How many times have your customers visited Japan before you call them“repeaters”? Please write a number. (times) 9. If you do NOT handle any kind of travel to Japan, please answer the following questions. A. Why do you NOT handle any kind of travel to Japan now? Please choose. 1st. 2nd. (a) Too expensive. (b) Customers are not interested. (c) Too far. (d) Too risky. (possible risk(s) ) (e) Not much information available. B. Do you have any plans to start handling any kind of travel to Japan in near future? Please check. (a) Yes. (b) No. This is the end of the questionnaire. I very much appreciate your cooperation ! Would you like to have the results of the survey? Please check. (a) Yes. (b) No. 47 035-049研究紀要16-玉川.indd 47 09.2.24 10:40:01 AM 東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 16 号(2009) アンケート集計表 番 号 ドイツ イギリス デンマーク オランダ チェコ 合計数 1 (a) 10 5 1 1 1 18 (b) 0 0 0 0 0 0 3 (a) 0 0 0 0 0 0 (b) 0 1 0 1 0 2 (c) 10 3 1 1 1 16 (d) 2 0 0 0 0 2 (e) 4 2 0 0 0 6 (f) 0 1 1 0 0 2 (g) 9 1 1 1 1 13 (h) 3 0 0 0 0 3 (i) 1 0 0 0 0 1 (j) 1 1 0 0 0 2 4 (a) 5 4 0 0 1 10 (b) 4 0 1 0 1 6 (c) 7 3 0 0 0 10 (d) 3 0 1 0 0 4 (e) 1 0 0 1 0 2 (f) 0 0 0 1 0 1 5 (a) 2 1 0 0 1 4 (b) 9 1 0 1 0 11 (c) 8 0 0 0 0 8 (d) 2 1 1 0 1 5 (e) 0 0 0 0 0 0 (f) 1 3 1 1 0 6 6 (a) 8 4 1 0 1 14 (b) 2 0 0 0 0 2 (d) 4 1 1 0 1 7 (e) 2 0 0 1 0 3 (f) 0 0 0 1 0 1 48 035-049研究紀要16-玉川.indd 48 09.2.24 10:40:01 AM 日本への外国人旅行客がリピーターになる理由に関する調査報告 (d) 3 1 1 0 1 6 (e) 1 0 0 1 0 1 (f) 0 0 0 1 0 1 7 (a) 4 1 1 1 0 7 (b) 3 3 1 1 0 8 (c) 1 1 0 0 0 2 (d) 3 0 0 0 0 3 (e) 7 1 1 1 0 10 (f) 8 1 0 0 1 10 (g) 5 3 0 0 1 9 8 1 回 5 1 0 1 0 7 2 回 4 3 1 0 0 8 3 回 1 0 0 1 1 3 4 回 0 0 0 0 0 0 9 A-(a) 該当なし A-(b) 該当なし A-(c) 該当なし A-(d) 該当なし A-(e) 該当なし B-(a) 該当なし B-(b) 該当なし 49 035-049研究紀要16-玉川.indd 49 09.2.24 10:40:01 AM
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