小商圏の家電販売ビジネスを変える

Japan Marketing Academy
マーケティング・エクセレンスを求めて
小商圏の家電販売ビジネスを変える
シリーズ
●
第90回
【コスモス・ベリーズ株式会社】
清水 信年
● 流通科学大学 商学部 教授
マーケティングジャーナル Vol.31 No.1(2011)
http://www.j-mac.or.jp
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小商圏の家電販売ビジネスを変える
①
対的に出店・退店コストが少ない小型店舗を
はじめに
重視する小売企業が増えていると考えられる。
さて,家電販売においてそうした小さな商
小売業において,従来よりも小規模な商圏
圏を得意とし,顧客に手厚いサービスを長ら
をターゲットとした店舗展開が目立ってきて
く提供してきたのは地域家電店,いわゆる町
いる 。
の電器屋さんである。本稿で取り上げるコス
1)
例えば,スーパーマーケットではセブン&
モス・ベリーズ株式会社は,そうした地域家
アイ・ホールディングスやイオンが,売り場
電店をボランタリー・チェーン(VC)化する
面積が数百㎡の小型食品スーパーを,都市部
ビジネスを展開しており,革新的な家電販売
において積極的に出店する計画をたてている。
の仕組みを構築しようと新しい取り組みを始
ヤマダ電機やしまむら等の専門店チェーンで
めている企業である 3)。
も,従来展開していた標準的な店舗よりも小型
で小商圏を想定した店舗の展開を始めている。
②
地域家電店の現況
こうした動きは,日本の人口動態の変化や
企業競争の局面の変化に対応するためのもの
と考えられている 2)。
地域家電店は,各種データに現れている限
高齢化社会の到来は,店舗までの移動およ
りでは,家電流通における存在感を失う傾向
び店舗内での移動に苦労をする消費者が増え
にある。
ることを意味する。実際に,交通や買い物に
地域家電店の大部分は,大手家電メーカー
便利な都市部への高齢者世帯のシフトも起き
の系列店であるが,主要メーカーの系列店舗
ている。あるいは,有職主婦の増加により,
■図―― 1
買い物時間の節約や便利さの観点から,生活
家電メーカー系列店数の推移
圏で利用できるような身近な立地の小売店へ
60,000
のニーズが高まっている。つまり,大型店で
はカバーできない“商圏のすきま”が生じて
50,000
26,000
きているのである。
25,000
40,000
また,小売企業間の激しい競争や長引く不
12,000
件の入手が容易になってきていること,「ま
20,000
ちづくり三法」の見直しにより郊外での大型
10,000
出店が難しくなったこと,あるいは将来の有
10,000
5,500
10,500
18,000
10,500
9,000
4,000
7,600
5,800
3,400
3,300
3,700
4,300
4,000
4,100
4,400
4,550
5,000
2,400
2,600
60年代
70年代
80年代
90年代
2009年
0
形固定資産の除去に要する費用を債務として
財務諸表に反映させる「資産除去債務会計」
松下(パナソニック)
の導入が迫ったこと等から,大型店よりも相
東芝
日立
三菱電機
出所:リック [2010],195 頁のデータをもとに一部修正した。
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17,000
30,000
況のため,主に都市部で空き店舗が増加し物
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★ マーケティング・エクセレンスを求めて
粽
数は 1980 年代をピークに大きく減少している
電店が得意とするところである。また,そう
( 図− 1 参照)。また,日本における家電製品
したデジタル製品を苦手とする高齢層の消費
の出荷金額が,1980 年の約 3 兆 3685 億円か
者にとっても,長い間つきあいのある近所の
ら 2000 年には約 7 兆 6212 億円 へと拡大し
地域家電店を利用する傾向にあったと考えら
ている一方で,メーカー出荷額に占める地域
れるだろう。
4)
家電店のシェアは,大型量販店の事業拡大な
今後,ますます高齢者人口が増加し,また
どの影響によって,1999 年度に 10%を切るに
オール電化住宅に対する需要が拡大するとす
至っている 。
れば,小さな商圏において継続的なサービス
5)
ただし,2000 年代半ばになって,地域家電
を顧客に提供する,こうした地域家電店の存
店を通じての家電商品販売が少し盛り返して
在感がさらに高まるかもしれない。
いるという(図− 2 参照)。
幅広い品揃えの家電製品を低価格で販売す
これは,主に大画面の薄型テレビに対する
る大型家電量販店に対して,地域家電店なら
需要拡大によるものと考えられている 。地
ではの方法で業績を伸ばしている事例として,
上デジタル放送用アンテナの設置や DVD レ
大阪府に本部を置くボランタリー・チェーン
コーダーとの接続などを伴う薄型テレビの販
(VC)の「アトム電器」や,同じく鹿児島県
売は,設置工事や使用方法の説明が必要にな
に本部を置く「セブンプラザ」,東京都町田
るなど,手厚いサービスを強みとする地域家
市の家電店「でんかのやまぐち」などがしば
6)
■図―― 2
家電流通チャネル別シェアの推移
45.5
2003年度
9.7
47.3
2004年度
7.5
10.2
7.8
30.0
3.13.9
49.2
2006年度
49.6
12.3
8.1
2.8 5.8
21.5
2007年度
49.9
12.5
7.7
2.7 6.1
21.1
2008年度
50.3
12.5
7.4
2.5 5.8
21.5
10%
20%
家電・PC量販店
30%
大型カメラ店
40%
50%
地域家電店
7.9
27.6
2005年度
0%
11.4
3.44.0
60%
2.8 5.4
70%
チェーンストア
23.3
80%
電材・住設機器
90%
100%
その他
※ シェアは販社出荷金額ベース。
※ 「チェーンストア」は,食料品,衣料品,住生活関連商品などを扱う総合スーパー。
※ 「その他」には,ホームセンター,農協・生協,百貨店,通信販売,総合ディスカウンター,
コンビニエンスストア,メーカー販社からの直販などが含まれる。
出所:リック [2010],36 頁のデータをもとに一部修正した。
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しば取り上げられる 7)。
古屋市に本社を置き,「家電小売店事業を営
さらに,地域家電店の力を活用しようとす
む加盟店メンバーへの商品,販促,情報など
る動きは,大手家電メーカーや家電量販店チ
協業システムの提供 9)」を主要事業とする。
ェーンでも見られるようになっている 8)。
前身は,1971 年 9 月に創業された株式会社豊
たとえば,パナソニックの「スーパーパナ
栄家電で,2005 年 9 月にその家電事業(地域
ソニックショップ」,東芝の「ブランダリー
家電店に対するフランチャイズ・チェーンお
ストアー政策」,日立の「日立フューチャー
よびボランタリーチェーンの本部機能)を会
クラブ」,三菱電機の「三菱電機オール電化
社分割し,株式会社ヤマダ電機との共同出資
倶楽部」といった大手家電メーカー各社の施
でコスモス・ベリーズ株式会社が設立された。
策は,デジタル家電やオール電化住宅関連の
2008 年 12 月 1 日付で,ヤマダ電機が豊栄家
商品販売,設置工事やアフターサービスに積
電の所有株式分をすべて取得し同社を子会社
極的な系列店を対象にして,近年取り組まれ
化した。こうした経緯の詳細については,後
ている支援策である。
述する。10)
さらに,シャープは他メーカーの系列店で
コスモス・ベリーズの 2010 年度の売上高は
あっても同社ブランドの製品を扱いたいとい
191 億 9 千万円で,2011 年度は 212 億 6 千万
う地域家電店に対して,商品供給や販促支援
円を見込んでいる。この売上高は,主に加盟
を行なう「シャープ・バリュー・パートナ
店からの加盟金・月会費,加盟店向けの販促
ー・グループ(SVPG)」を 2007 年 10 月に発
助成物(チラシなど)の販売,加盟店に卸す
足させている。そうした,メーカー系列を超
商品販売額によってもたらされている( 図−
えての地域家電店の組織化は,エディオン,
■図―― 3
デオデオという大手家電量販グループでも積
コスモス・ベリーズ株式会社の売上高推移
極的に取り組まれ,自社の大型量販店が出店
212.6
200
している地域を中心にそれぞれ数百のフラン
191.9
500
450
チャイズ加盟店を持つに至っている。
386
150
本稿で取り上げるコスモス・ベリーズ株式
会社も,日本最大の家電販売小売企業となっ
400
116.9
300
100
たヤマダ電機の完全子会社として,メーカー
83.1
71.1
系列を超えた地域家電店の新しいビジネスを
175
200
54.8
実現するための事業を展開している。
50
100
20.1
7
③
コスモス・ベリーズ株式会社の概要
0
16
10
0
第1期
第2期
第3期
第4期
第5期
第6期
第7期
(2005年度)
(2006年度)
(2007年度)
(2008年度)
(2009年度)
(2010年度)
(2011年度)
売上高(左軸 単位:億円)
経常利益(右軸 単位:百万円)
※ コスモス・ベリーズは 2005 年 9 月に設立。決算時期は 3
月 1 日∼ 2 月末。第 7 期の数値は見込み。
出所 : コスモス・ベリーズ社内資料を参照し筆者作成。
コスモス・ベリーズ株式会社は,愛知県名
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3 参照)
。社員数は,現在 51 名である。
在の同社の事業拡大の中心となっている
。
(表− 2 参照)
コスモス・ベリーズでは,主に地域家電店
BFC は,コスモス・ベリーズ設立前の 2003
を対象としたボランタリーチェーン事業とフ
ランチャイズチェーン事業とを展開している。
年から,豊栄家電がチェーン本部の役割をつ
会社設立後の 2006 年 3 月における全加盟店数
とめるボランタリーチェーンとして展開が始
は 131 店で,2007 年 3 月時点で 271 店,翌
められた。当初は,もともと豊栄家電の営業
2008 年 3 月 17 日に 500 店を達成し,2011 年 3
エリアであった東海地方において加盟店を募
月時点では全 47 都道府県に合計 2004 店の加
っていたが,ヤマダ電機がコスモス・ベリー
盟店を持つに至っている(表− 1 参照)。
ズを完全子会社として以降に全国展開を始め
同社では,全部で 5 タイプの加盟店を設け
た。
ており,その中でも「ベリーズ・フレンド・
また,現在では地域家電店だけではなく,
チェーン(BFC)」が最多となっていて,現
他の業種から家電販売に参入してきた加盟店
表―― 1
も増えている(表− 3 参照)。加盟店の開拓は,
コスモス・ベリーズ加盟店の数と立地
同社の加盟店開発部が担当し,電話やインタ
北海道
青 森
岩 手
宮 城
秋 田
山 形
福 島
東 京
神奈川
埼 玉
千 葉
茨 城
栃 木
群 馬
山 梨
新 潟
84
35
23
25
26
20
32
100
47
69
50
31
34
38
23
36
長 野
富 山
石 川
福 井
愛 知
岐 阜
静 岡
三 重
大 阪
兵 庫
京 都
滋 賀
奈 良
和歌山
鳥 取
島 根
38
22
27
15
189
47
99
50
101
68
39
16
20
17
13
37
岡 山
広 島
山 口
徳 島
香 川
愛 媛
高 知
福 岡
佐 賀
長 崎
熊 本
大 分
宮 崎
鹿児島
沖 縄
合計
ーネットを通じての問い合わせ受付の他,担
43
67
25
23
31
27
47
55
21
31
35
25
32
35
36
2,004
当者が各地の地域家電店などを訪問し勧誘す
る活動も行っている。
④
ベリーズ・フレンド・チェーンの仕組み
BFC は,最初に加盟金 10 万円,その後は
月会費 1 万円を加盟店がコスモス・ベリーズ
※ 2011 年 3 月 1 日現在の加盟店数。
出所:コスモス・ベリーズ HP を参照し筆者作成。
に支払う会費制である。この加盟金と月会費
表―― 2
コスモス・ベリーズ加盟店のタイプ
ボランタリーチェーン
加盟のタイプ
加盟店数
フランチャイズチェーン
エレクトリック・コンサル
ティング・マネージャー
(ecm)
ベリーズ・フレンド・チェーン
(BFC)
コスモス・ベリーズから商品
供給や販促支援を受けること
ができる。従来からのメー
カー系列販社から商品を仕入
れることも可能(2帳合)。
店舗を持たずに営業活動を行
なう“1人事業者”。
1,882
15
Berry’s
コスモス・メンバーズ・ストア
(CMS)
前身の豊栄家電時代から加盟 コスモス・ベリーズから商品
しているフランチャイジー。 供給や販促支援を受ける。加
「Berry’s」の看板を 盟店が店名を変える必要はな
掲げ、商品仕入れはすべてコ いが、コスモス・ベリーズの
スモス・ベリーズから
(1帳合)。 1帳合になる。
38
59
コスモス・ヤマダDK
ヤマダ電機が展開していた小
型家電専門店のフランチャイ
ジーを引き継いだもの。
10
※ 2011 年 3 月 1 日現在の加盟店数。
出所:コスモス・ベリーズ社内資料および同社 HP を参照し筆者作成。
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表―― 3
取り扱い商品に関しては,コスモス・ベリ
BFC 加盟店の業種
家電
燃料(LPガス・ガソリン)
工事店
工務店・リフォーム
管材・設備工事
事務機器
電材
Netショップ
ホームセンター
生活雑貨
ーズの親会社であるヤマダ電機の商品調達や
1,133
357
130
59
14
13
10
9
8
7
リサイクル
携帯ショップ
不動産
カメラ
カー用品
飲食店
生協
カタログ通販
百貨店
その他
物流システムにもとづくメリットが,BFC 加
7
5
4
3
3
2
1
1
1
62
盟店にもたらされる。具体的に,同社の加盟
店募集パンフレットでアピールされているの
は,加盟店が全メーカーの商品を取り扱うこ
とができるようになる 11)という点,ヤマダ電
※ 加盟店数は 2010 年 11 月末現在。分類項目は同社資料の内
容のまま。
出所:コスモス・ベリーズ社内資料を参照して筆者作成。
機グループの物流システムを通じて売れ筋商
品が加盟店に安定供給される(店舗までの配
送は無料)という点,「市場に連動したリア
の金額は,コスモス・ベリーズを通じての商
ルな仕入れ価格」(パンフレットの文言のま
品仕入れ額や,各店における商品販売額に関
ま)で量販店並みの価格設定も可能であると
わらず一定であり,それらについてのノルマ
いう点,およびヤマダ電機グループのオリジ
や販売ロイヤリティも課せられない。
ナル商品も取り扱えるという点である。
BFC 加盟店は,店名や看板といった,それ
販売活動の支援に関しては,BFC 加盟店は
ぞれの店舗が築いてきた信頼の“のれん”は
ヤマダ電機グループの様々な販促支援システ
変える必要がないが,「BFC マーク」の看板
ムを利用できる。
を店頭に掲示することが求められる( 図− 4
具体的には,まずヤマダ電機が直営店舗で
参照)
。
の商品購入者に対して提供するのと同様の,
一方,加盟店がボランタリー・チェーン本
商品の延長保証サービスや「全国まごころサ
部であるコスモス・ベリーズから提供される
ー ビ ス 」( 宅 配 , 取 り 付 け 工 事 , 持 込 修 理 ,
のは,大きく分けると取り扱い商品に関する
出張修理といったサービス)を,BFC 加盟店
メリットと,販売活動に関わる支援である。
も自店の顧客に提供することができる。
なお,「全国まごころサービス」はすべて
■図―― 4
有償である。商品の宅配サービスの場合,
BFC マーク
BFC 加盟店の営業圏内の顧客に商品を直接届
ける場合は,その手数料は当該加盟店が負担
する。また,エアコンやアンテナ等の取り付
け工事サービスの場合は,顧客に手数料が請
求される。こうした手数料は,ヤマダ電機の
直営店舗での商品購入者が同様のサービスを
受ける場合と,同じ金額である。
また,顧客が希望する商品の在庫が BFC 加
出所 : コスモス・ベリーズ HP より引用。
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盟店にないような場合でも,その顧客を近隣
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のヤマダ電機の直営店舗に連れてゆき,陳列
最終的には各店の裁量に任されている。
商品や在庫商品を紹介したり販売したりする
こうしたことに加え,情報システム「BFC.
ことも許されている。
Net」と「スキルアップ技術研修」によって,
こうした支援により,個別の地域家電店の
情報の側面から加盟店を支援するということ
規模の小ささやオーナーの高齢化によって
も行なわれている。
「技術的にも体力的にも難しかった事」(パン
「BFC.Net」は,コスモス・ベリーズが
フレットの文言のまま)でも,BFC 加盟店は
加盟店向けに専用ホームページにおいて各種
顧客に提供することが可能となる。
情報を提供するシステムである。加盟店が得
加えて,販促媒体としてコスモス・ベリー
られるのは,ヤマダ電機グループが持ってい
ズが作成する「おすすめセレクションカタロ
るタイムリーな業界情報や,コスモス・ベリ
グ」が毎月 100 部,無料で BFC 加盟店に提供
ーズが蓄積している地域家電店経営に関する
される。これは,200 アイテムが掲載されて
経験・ノウハウの情報である。また,メーカ
いる新聞大のチラシ(カラー印刷)であり,
ー在庫や納期がリアルタイムで確認できる
各店の顧客への配布用となる。100 部以上が
「リアル発注」機能も備えている。将来的に
必要な場合は,1 部 8 円(A4 サイズの小型版
は,加盟店自らが各種情報を書き込めるよう
は 1 部 4 円)で加盟店がコスモス・ベリーズ
な相互交流サイトにしてゆく考えもあるとい
から購入する。また,それ以外にヤマダ電機
う。
のオリジナル商品が掲載されたチラシを 1 部
「スキルアップ技術研修」は,BFC 加盟店
8 円,年 4 回発刊される季節販促雑誌を 1 部
における家電販売の技術・知識を向上させる
50 円,それぞれ加盟店が希望すればコスモ
ため,定期的に実施する研修会である。2010
ス・ベリーズから購入できる。
年度は,地上波テレビ放送のアナログ停波が
なお,チラシに掲載されている各商品には,
迫っていたことから,「デジタル AV 機器」に
価格も記載されている。コスモス・ベリーズ
関連したテーマで 6 回の研修会(各 6 時間)
では,BFC 加盟店における販売価格として
を,愛知と静岡の 2 会場で実施し,のべ 218
名が受講した 12)。
「表示価格」と「ベリーズプライス」の 2 種類
以上のような商品取り扱いのメリットや販
を設定している。前者は,販促チラシや店頭
でのプライスカード用に示される価格であり,
売活動の支援を,比較的低い加盟金や月会費
後者は,顧客への値引き対応後の価格として
の支払いで得られるという点は,様々な事情
想定しているもので,同社の商品推進担当者
で商売を続けることが難しくなった地域家電
がヤマダ電機の店頭価格および市場価格を考
店のみならず,前述したような家電販売以外
慮して決めている。ただし,実際に BFC 加盟
の業種の小売業者などにとっても,BFC に加
店が顧客に商品を販売する際の価格について
盟しようという動きを促す要因になっている。
は,「表示価格」「ベリーズプライス」を必ず
守らなければいけないということではなく,
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電気専門大型店協会(NEBA)が,1972 年 2
⑤
地域家電店の協業を目指した豊栄家電
月に発足する。NEBA の入会資格は,年商 10
億円以上の企業というものであった。中島氏
商品仕入れの 2 帳合が可能であること,仕
は,大型の家電量販店が増えることによって,
入れ額ノルマがないこと,店名や看板も変え
メーカー系列の地域家電店の経営が圧迫され
る必要がないこと,といったような BFC の特
るだろうと考えていた。また,消費者のニー
徴は,コスモス・ベリーズの前身である豊栄
ズが多様化し,一つのメーカーからの情報し
家電時代から重視されてきた,地域家電店同
かもたらされない系列店は,不利になること
士の「協業の理念」が引き継がれているもの
も予想された。こうした背景から,小規模な
と言える。以下では,豊栄家電の創業からコ
地域家電店が協業して生き残ることを目指し
スモス・ベリーズの設立,そしてヤマダ電機
て,豊栄家電を 1971 年に設立したのである
グループの傘下に入るまでの経緯を記述する。
(当初の年商は 9 億 3 千万円)。14)
中島氏は,豊栄家電の事業においては,地
株式会社豊栄家電は,地域家電店が共同し
て運営するチェーン本部として,1971 年 9 月
域に密着した家電店という強みだけでなく,
に愛知県で設立された。松下電器産業の系列
量販店のような戦略性(価格に関して,ある
店である「ナショナルショップ」を,瀬戸市
いは人材や情報収集に関して)も必要である
で経営していた中島武則氏が中心となり,当
と考えていた。そのために,豊栄家電が本部
時のナショナルショップで全国トップ級の売
機能を果たすチェーン組織は,単なる商品共
上高だった愛知県の 4 社が,共同で立ち上げ
同仕入れ機構としてのボランタリー・チェー
た。
ンではなく,また本部が加盟店を主導すると
それ以前より,中島氏は家電店経営の将来
いう関係にあるフランチャイズ・チェーンで
に対して問題意識を持ち,東海地方の家電店
もない,地域家電店の連邦経営が行なわれる
が集まる経営研究会や公開討論会を行なって
ものを目指した 15)。
そのために構築したのが,意思決定でも利
おり,1961 年 6 月に設立された中部日本電気
店経営研究会(中日電)の代表を務めた。
益配分でも店同士の協力やつながりを重視す
1967 年に,中日電は株式会社中日電チェーン
る,独自の「F.V.C」という組織形態であ
となり,全日本電気大型店経営研究会(全日
った(図− 5 参照)。それぞれの家電店の,人
電)グループの一員として,独自ブランド
事や資産に関する問題はお互いに独立させて
「JES」も展開するボランタリー・チェーン組
おく一方で,家電販売に関わる職能について
織となった。しかし,メーカーの協力が得ら
はすべて協業で行なおう,というのがその基
れなかったことや,加盟店が全国に散在し物
本的な考えである。
設立当初,豊栄家電は商品仕入れで問題を
流コストが多大となったことなどから,全日
電チェーンは解散するに至った。
抱えた。その当時,家電メーカーは複数の系
13)
その後,全国の家電専門店 78 社による日本
列店が共同で商品仕入れを行なうボランタリ
135
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■図―― 5
には東海 4 県で 106 店舗(56 オーナー),年
F.V.C とボランタリーチェーン,
フランチャイズ・チェーンとの違い
商の合計が 280 億円という規模に達した。
⑥
第二の創業としての BFC
1999 年 10 月,テイチクレコード社長を退
任した三浦一光氏が,豊栄家電の代表取締役
社長に就任した。三浦氏は,もともとは松下
電器産業勤務で,1997 年までビデオ事業部長
を務めていた。先述した通り,1971 年に豊栄
家電が設立された際に,松下電器産業は取引
を行なわなかったが,この時に三浦氏は名古
屋営業所に勤務しており,豊栄家電を担当し
ていたのがまさに三浦氏だった 18)。
その後,三浦氏は主に量販店向けの営業を
担当していたが,かつて松下が力を入れてい
出所 : 豊栄家電社内資料(加盟店や本部社員向けに理念な
どを共有するために作成されたもの)より引用。
た系列店政策が 1990 年代に入って徐々に崩壊
し,十分な支援を受けられなくなった各地の
地域家電店が衰退していく様子を,辛い思い
ー・チェーンを,一切認めていなかったため
で見ていた。また,かつて松下幸之助氏が系
である。豊栄家電を設立した 4 社はいずれも
列下の地域家電店と共に目指していた,「お
ナショナルショップであったが,松下電器産
得意先の電器係になろう」という考え方を,
業も最初の 1 年間は取引を行なわなかった 。
自分も実践して確かめてみたいという思いも
しかし,中島氏が図− 5 のような F.V.C の
持っていた。豊栄家電の中島氏から社長就任
考え方をまとめ,店名を含めた店舗イメージ
についての要請を受けて,そうした地域家電
や,商
店を助けることができれば,と考え引き受け
16)
(”のれん”)が統一されていること
17)
ることを決めたという 19)。
品仕入れに対する支払いが本部で一括して行
われること,事業運営全体が共同で行なわれ
就任当初,三浦氏は豊栄家電の F.V.C
るということなどが示されたため,複数店舗
について,このままでは行き詰まると捉えて
を経営する系列下の小売業者と同様のものと
いた 20)。なぜなら,F.V.C の店舗数が 100
理解され,メーカーとの取引が行なわれるよ
を超え,合計で 200 億円台の売り上げを実現
うになったという。
するようになったことによって,各店のオー
ナーの気持ちも行動も,まるで量販店のよう
その後,豊栄家電の F.V.C は,最盛期
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マーケティングジャーナル Vol.31 No.1(2011)
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小商圏の家電販売ビジネスを変える
になってしまっていると感じたからである。
クラブ,コストコ・ホールセールである。コ
実際に,三浦社長が就任する前には,売り場
ストコでは,一定額の会費を支払えば,誰で
面積が 100 坪を超えるような店舗網で好業績
も様々な商品を低価格で購入することができ
をあげていた時期もあったという。しかしそ
る。また,そうした数千万人の会員からの会
の後,ヤマダ電機をはじめとして桁違いの売
費収入が,同社の大きな収益源である。BFC
り場面積を持つ大型家電量販チェーンが出店
加盟店が,仕入れ額の大小に関わらず好条件
を加速させ,中途半端な規模の拡大ではもは
での販売価格や品揃えを実現でき,またコス
や勝負にならない状況になっていた。
モス・ベリーズの経営もそうした加盟店から
三浦氏は,豊栄家電が「お客さまの電気係」
の会費によって支えられているという BFC の
を目指すこと,具体的には「近くて便利な電
姿は,まさに三浦氏が家電販売の B to B 取引
気屋」「困った時,頼りにされる電気屋」「あ
にコストコの仕組みを取り入れようとした結
なたに合ったアドバイスができる電気屋」を
果である。
モットーとすることを改めて宣言した 。そ
しかしながら,かつて豊栄家電が創業時に
して,それを具体化させるための新しい事業
メーカーから取引停止の対応を受けたのと同
として,2003 年から始めたのが BFC だった。
様の理由で,ボランタリー・チェーンである
F.V.C からフランチャイズ・チェーンの要
BFC の事業においても,メーカーからの商品
素を取り除き,地域家電店の協業によるボラ
供給を受けることが難しかった。
21)
ンタリー・チェーンとしての特徴を持たせた
三浦氏は,それならばメーカーではなく大
のが,BFC であった 。
手小売企業と提携を図り,商品調達の問題を
22)
三浦氏が BFC を事業化するために,参考に
解決しようと考えた。そして,家電量販チェ
した仕組みが二つある 。
ーンのマツヤデンキ,および名古屋市に本社
23)
一つは,一般に「バイイング・グループ」
を置くパソコン専門店チェーンの OA システ
と呼ばれている,欧州における家電販売店の
ムプラザと,商品供給を中心とした業務提携
商品共同仕入れ機構である。欧州では,日本
を実現させた。
のように大手メーカーが家電販売店を系列化
ところが,マツヤデンキは 2003 年 9 月に民
するような政策はとられてこなかったが,大
事再生法の適用を申請し,OA システムプラ
型量販チェーンではない単独経営の地域家電
ザも経営不振で 2004 年 10 月に他社の傘下に
店が各地に多く存在している。そうした小規
入ったため,いずれもコスモス・ベリーズと
模の家電販売店が,お互いに力を合わせて競
の提携関係が消えてしまった。そうした経緯
争力を保っているバイイング・グループの仕
から,いよいよ商品調達に困った三浦氏は,
組みは,家電メーカーが系列店政策から手を
業界最大手で経営がもっとも安定していると
引きつつある日本でも大いに参考になる,と
考えたヤマダ電機と関係を構築することが必
三浦氏は考えた 。
要と考え,自ら同社の山田昇会長に面会を求
24)
もう一つは,米国の会員制ウェアハウス・
めたのだという。
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★ マーケティング・エクセレンスを求めて
粽
ちょうど同じ時期に,ヤマダ電機でも従来
果でグループ全体の顧客満足度を高めること
より小さな商圏をターゲットとする家電販売
が期待されている。同時に,地域家電店同士
店のフランチャイズ事業を準備していたとい
の協業を通じて「お客さまの電器係」となる
うこともあり,地域家電店を束ねるコスモ
ことを実現する,という三浦氏が掲げるコス
ス・ベリーズにも高い関心が示され,2005 年
モス・ベリーズの理念も,ヤマダ電機の経営
4 月に豊栄家電とヤマダ電機との業務提携,
陣から理解され尊重されている。26)
そして同年 12 月に共同出資でのコスモス・ベ
⑦
おわりに
リーズ設立に至り,三浦氏がその代表取締役
会長に就いた 25)。その後,東海地区だけだっ
家電量販チェーンの交渉力の高まりや国内
た展開エリアを,2007 年からは全国に広げ,
さらに 2008 年 12 月にはヤマダ電機が豊栄家
需要の縮小に直面する日本の家電メーカーに
電の所有するコスモス・ベリーズ株式をすべ
は,もはやすべての系列店を支えるだけの余
て取得し,同社を完全子会社化した。(以上
裕はないと,三浦氏は考えている。コスモ
)
の経緯について,表− 4 に整理した。
ス・ベリーズの仕組みは,そうした十分な支
現在,三浦氏はヤマダ電機顧問も務める。
援を受けることが難しくなった地域家電店を,
小商圏もターゲットにしてゆくというヤマダ
メーカーに代わって支えるものだと言える。
電機グループの戦略がある中で,コスモス・
ただし,あくまでもそれは支援であって,
ベリーズの仕組みを活かした地域家電店が,
加盟店がコスモス・ベリーズやヤマダ電機グ
本来の強みである手厚いサービスを顧客に提
ループに依存するような考え方ではいけない,
供することによって,大型量販店との相乗効
と三浦氏は強調する。系列店に対するメーカ
表―― 4
コスモス・ベリーズ株式会社に関連する年表
1971年
愛知県のナショナルショップ4社で、株式会社豊栄家電を設立。
1999年
三浦一光氏が豊栄家電社長に就任。
2003年
現在のチェーン展開の柱である BFC を開始。
2003∼2004年 マツヤデンキ、OAシステムプラザとの業務提携を図る。
2005年2月
三浦氏がヤマダ電機の山田昇会長と会談。
2005年3月
ヤマダ電機がフランチャイズ推進のための「コスモス事業部」を発足させ、小型FC店「コスモスヤマダDK」の展開を開始。
2005年4月
豊栄家電がヤマダ電機と業務提携 (パソコン関連等の商品供給に関する提携)。
2005年12月
豊栄家電が地域家電店向けチェーン本部機能を分離し、ヤマダ電機と共同出資でコスモス・ベリーズ株式会社を設立。
2008年
ヤマダ電機が豊栄家電の所有株式分を取得して、コスモス・ベリースを完全子会社化 (12月1日付)。
出所 : インタビューや各種記事をもとに,筆者作成。
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小商圏の家電販売ビジネスを変える
ーの過保護が,現在の地域家電店の厳しい状
況を招いたと考えるからである。加盟店が自
立するためには,量販店に比べて高い販売管
理費の比率を下げることが必要で,そのため
に,これまでまさに“サービス”で行なって
いた様々な活動からもきちんと収益をあげる,
という態勢をつくってゆくことが今後の課題
だという。27)
また,家電販売以外の業種からの BFC 加盟
が増えていることは,単に店数の量的な成長
だけではなく,様々な業種の加盟店同士が連
携することを通じて,コスモス・ベリーズか
ら新しいサービスや価値が生みだされること
にもつながるかもしれない。親会社であるヤ
マダ電機においても,電気自動車(EV)や
「スマートハウス(IT を駆使して消費電力を
コントロールする住宅)」など新しい製品や
サービスの販売拡大を目指す戦略の中で,
BFC 加盟店という営業拠点を持つことは大き
な強みになると考えているだろう。28)
【謝辞】
本稿の作成にあたって,コスモス・ベリーズ
株式会社会長の三浦一光氏,同社顧問の岩瀬
弘之氏,同社営業本部加盟店開発部・関西支
店長の青木實氏には,インタビュー調査の機
会を与えていただき,また各種資料やデータ
のご提供をいただいた。ここに記して,改め
て感謝の意を表したい。ただし,本稿におけ
る誤謬は,すべて筆者の責に帰するものであ
る。なお,本稿は科学研究費補助金(基盤研
究(A),課題番号 22243034)の支援による研
究の一部である。
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注
1)『日本経済新聞』 2010 年 9 月 2 日付記事,同 2011
年 1 月 22 日付記事,『日経流通新聞』 2010 年 3 月
8 日付記事,同 2010 年 9 月 6 日付記事,同 2011 年
1 月 1 日付記事を参照。
2)『日経ビジネス』 2004 年 3 月 29 日号,30-33 頁,
『ストアーズレポート』 2010 年 2 月号,34-35 頁,
『日経流通新聞』 2010 年 9 月 6 日付記事,『激流』
2011 年 4 月号,14-59 頁を参照。
3)コスモス・ベリーズ株式会社について言及してい
る研究としては,川上 [2009] や関根 [2010] がある。
両研究とも,同社の親会社であるヤマダ電機の側
から同社を捉えているが,本稿では,同社の前身
である株式会社豊栄家電の時代からの歴史的経緯
を取り上げ,同社を主体とした家電販売ビジネス
の取り組みを記述することを意図している。
4)家電ハンドブック編集専門委員会編 [2005],122 頁
のデータを参照。ここでの「家電製品」には,電
気機器,映像・音響機器,情報通信機器(パーソ
ナルコンピュータ本体のみ),照明器具,電球類,
電池類が含まれる。
5)リック [2010],35 頁を参照。
6)同上。シャープをはじめとする大手家電メーカー
が,2000 年前後から液晶テレビやプラズマテレビ
に対する積極的な技術投資とマーケティングを行
なったことや,2003 年 12 月から地上デジタル放送
が始まったことにより,薄型テレビ市場が急速に
拡大した。また,そうした高精度の動画を録画す
るための製品として,ハードディスク内蔵型 DVD
レコーダーが家庭に普及し始めたのもこの頃であ
った。
7)月刊「技術営業」編集部 [2008],『日経ビジネス』
2004 年 3 月 29 日号,34-35 頁,『日経流通新聞』
2008 年 5 月 28 日付記事,『日経ベンチャー』 2008
年 8 月号,38-39 頁を参照。
8)川上 [2009],『技術営業』 2003 年 7 月号,28-57 頁,
『Wedge』 2005 年 6 月号,26-28 頁,『日本経済新
聞』 2007 年 2 月 27 日付記事,同 2009 年 10 月 21
日付記事,『日経流通新聞』 2008 年 5 月 28 日付記
事,同 2008 年 6 月 27 日付記事,同 2011 年 2 月 21
日付記事,『日経産業新聞』 2009 年 10 月 7 日付記
事,リック [2010],194-205 頁を参照。
9)同社 HP より引用。
10)本節以降の内容に関しては,文末注で出典を記載
している参考文献や各新聞・雑誌記事のほか,コ
スモス・ベリーズ株式会社三浦一光会長が日本商
業学会関西部会 2010 年 7 月例会にて行なった講演
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の内容,筆者が三浦会長および同社顧問(前社長)
の岩瀬弘之氏に行なったインタビュー(2011 年 2
月 25 日,同社本社にて)の内容,および同社営業
本部加盟店開発部・関西支店長の青木實氏からの
メールでの回答内容にもとづいている。
11)メーカーとの系列関係を維持したまま BFC に加盟
している場合,当該メーカーの商品に関しては,
加盟店はコスモス・ベリーズではなく従来通りの
メーカー販社から仕入れることが可能である。た
だし,ボランタリー・チェーンである BFC ではな
く,フランチャイズ・チェーンである「コスモ
ス・メンバーズ・ストア」の加盟店として契約し
た場合は,コスモス・ベリーズとの 1 帳合とする
ことが求められる。
12)なお,BFC 加盟店には,もともと家電販売を行な
っていた店と異業種からの参入組とがあるが,研
修会はそのどちらも区別せず実施されている。
13)
『電化新聞』 2002 年 1 月 28 日号,2 頁を参照。な
お,当記事は 1987 年 6 月に中島氏が中小企業大学
校において行なった講演の内容を再録したもので
ある。
14)同上,3 頁を参照。
15)同上。
16)
『技術営業』 2003 年 7 月号,34 頁を参照。
17)
「ホーエー家電」「ベリーズ・ホーエー」という看
板を掲げていた。その後,豊栄家電設立 20 周年を
機にした CI で,全店を「ベリーズ」に統一させた。
(『日経流通新聞』 1986 年 7 月 10 日付記事,同
1991 年 12 月 5 日付記事を参照。)なお,豊栄家電
時代の「ベリーズ」店は,コスモス・ベリーズに
おけるフランチャイズ・チェーンの「Berry's」と
して現在も事業が続けられている(表− 2 参照)
。
18)
『技術営業』 2003 年 7 月号,34 頁を参照。
19)当初,三浦氏は 3 年間の予定で,初めて豊栄家電
の外部から招へいした社長(4 代目)として就任し
た。なお,中島氏は三浦氏がまだ名古屋営業所に
勤務していた頃から,豊栄家電への移籍を三浦氏
の上司に打診していたという(『電化新聞』 2002
年 1 月 28 日号,1 頁を参照)
。
20)片山 [2011],189 頁を参照。
21)豊栄家電が 2001 年に発刊した,顧客向け地域生活
情報誌『いどばた会議』 Vol.1,2 頁に掲載された
三浦氏のあいさつ文より引用。現在も,コスモ
ス・ベリーズでは「ずっとあなたの電気係です」
をスローガンとしている。なお,こうしたフレー
ズについて三浦氏は,前述のように松下幸之助氏
がかつて系列店オーナーに対して唱えていた「お
得意先の電器係になろう」という表現を尊重して
● JAPAN MARKETING JOURNAL 121
マーケティングジャーナル Vol.31 No.1(2011)
用いているという。
22)豊栄家電の他の役員(= F.V.C の各店のオーナ
ー)には,BFC について賛意を得ることができな
かったため,三浦氏が社長としての独断に近い形
で事業を始めたという。
23)片山 [2011],185-187 頁を参照。
24)具体的には,三浦氏はドイツの Electronic Partner
を研究したという。
25)片山 [2011],189-190 頁。
26)片山 [2011],176-181 頁および『日本経済新聞』
2010 年 9 月 2 日付記事を参照。
27)片山 [2011],194-200 頁を参照。
28)
『日経流通新聞』 2010 年 12 月 22 日付記事および
同 2011 年 2 月 21 日付記事を参照。
参考文献
片山 修 [2011] 『だからヤマダ電機で買いたくなる』
潮出版社。
家電ハンドブック編集専門委員会編 [2005] 『家電産業
ハンドブック』 財団法人家電製品協会。
川上智子 [2009] 「家電業界における流通チャネルの再
編」 (崔相鐵・石井淳蔵編著 『流通チャネルの
再編 (シリーズ流通体系 2)』 中央経済社,135161 頁)
。
月刊「技術営業」編集部 [2008] 『ヤマダ電機に負けな
い「弱者の戦い方」
』 リック。
関根 孝 [2010] 「日本,中国,韓国における家電品流
通の進展 ―優越的地位変動の視点から」 『商学
研究所報』
,第 42 巻第 3 号,1-29 頁。
リック [2010] 『家電流通データ総覧 2010』 リック。
清水 信年(しみず のぶとし)
1972 年生まれ
神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了
奈良大学社会学部専任講師、流通科学大学商学部専
任講師、准教授を経て 2011 年より同教授。
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