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アフリカの高度成長は 終わったのか

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所
感
【 P r e f a c e 】
アフリカの高度成長は
終わったのか
ケープタウン大学[客員教授]
日野 博之
Hiroyuki Hino
この8月に、第6回アフリカ開発会議(TICAD
年前には「希望の大陸」をキャッチフレーズにア
VI)が、ケニアの首都ナイロビで開催される。ア
フリカ特集を発行したが、本年4月のアフリカ特
フリカ側の強い要望を受け、初めてアフリカで開
集では、
「Making Africa Work」との見出しに
催されると聞く。大変喜ばしいことである。ケニア
軌道修正をした。
の首相経済顧問、そして大統領府上級顧問として、
アフリカ経済の減速の要因は外部要因だけでは
また、ケニアとの融資交渉のIMF代表として、延
ない。資源国のガーナとザンビアでは財政規律が
べ10年近くケニアの発展に尽くした者として、感
緩み、大きな財政赤字が生じた。そして、インフ
慨深い。
レが2桁にまで進み、両国とも経済危機に陥った。
本稿では、アフリカ経済の現状と将来の展望、ア
サブサハラ・アフリカ平均で、インフレは9.2%、
フリカ各国政府の取り組み、そして日本に期待する
経常収支の赤字はGDPの6.2%と、安定した経済が
こと、これらをテーマに私の考えを短くまとめたい。
確保されていない。また、製造業の長期的な衰退
減速するアフリカ
にみられるように、アフリカ経済の構造転換、資
源依存の軽減が進んでいない。
3年前に開催された前回のTICAD Vと今回で
さらに、汚職が深刻な問題であることに変わり
は、アフリカでの風向きがかなり異なっている。前
はない。ケニアと南アフリカでは数年前から状況
回は、サブサハラ・アフリカ平均で6~7%の経
がより悪化し、経済成長の足かせになっていると
済成長と資源ブームを背景に、アフリカ待望論一
の見方が大方だ。ナイジェリアとタンザニアでは、
本で議論が盛り上がった。
新大統領が腐敗撲滅を掲げ、それぞれ果敢に取り
その後、資源ブームは去り、中国経済の減速の
影響も受け、サブサハラ・アフリカの経済成長は、
組んでいるが一朝一夕に解決できることではない。
民主化に関しても、あまり好ましくない動向が
今年3.0%にまで落ち込むと予測されている。すぐ
みられる。過去のものと思われていたクーデター
に大きくリバウンドするとは考えられていない。多
が、近年、時折、発生する。憲法を書き換え、多
くの非資源国は好調を維持しており、コートジボ
選を果たし、超長期政権を維持する大統領もみら
ワールは、長く続いた内紛から脱却し、急速な回
れる。民主主義の制度と実態に乖離がある国も少
復を遂げている。しかし、特に南アフリカとナイ
なくないようだ。
ジェリアが不調である。2016年の成長率は、それ
ぞれ0.6%と2.3%と予測されている。
本年4月のIMF・世銀会合では、以前のような
「失われた大陸」には戻らない
確かに課題は多いが、1980・90年代前半のアフ
アフリカの「高度成長の長期的維持」ではなく、
「忍
リカに戻るとは思わない。この20年間で、アフリカ
耐力(resilience)
」と「持久力(durability)
」に
経済は大きく前進した。為替管理や価格コントロー
テーマが移った。同様に、英エコノミスト誌は、3
ルなどの経済活動の規制が緩和され、国営企業が
2016.5
1
図表1 サブサハラ・アフリカにおける経済成長率の推移
(%)
6
1995
2000
2005
2010
2015
刻な失業問題がさらに悪化する。労働人口の増加は、
確かに「ボーナス」をもたらし得るが、失業した若者
が街に溢れれば、社会不安を導きかねない。いわば時
4
限爆弾でもある。
2
を長期に維持することが望まれる。さらに、大幅に拡
0
1990
成長では雇用の創出が追い付かず、すでにきわめて深
2021
出所:IMF WEO データベース 2016年4月
独占する分野も減り、民間主導が定着した。アフリカの
強さは、創造力が豊かでバイタリティーに溢れるアフリ
カ人そのものだと考えるが、この強みが、さまざまな自
8
由化・規制緩和のおかげで活きてきた。また、国税庁や
6
中央銀行の独立性など、経済制度が整備され、有能な
人材が育ち、政府のキャパシティーが大きく強化された。
サブサハラ・アフリカでは、やはり7~8%の成長
大した国内所得格差を縮小させ、成長の果実を、民族、
人種、宗教にかかわらず、国民の間で公正に分け合う
ことが望まれる。これは容易なことではない。
アフリカ諸国に望まれる社会・経済政策
アフリカでは、善意に満ちた独裁者(benevolent
dictator)待望論がよく聞かれる。
「アフリカが、より
早く、高度の開発を達成するためには、リー・クアン
ユーのような強いリーダーが必要だ」との議論だ。ル
ワンダのカガメ大統領が、その例として、よく挙げら
れる。同様の趣旨で、開発志向国家を望む声も強い。
資源価格は、実質で1992年の水準にまで低下したが、 「国家主導で強力な産業政策を実施し、高度成長を達
サブサハラ・アフリカは、全体で3%の経済成長を堅
成する」との主張だ。
4
持している。92年には、経済成長は1%にも達してい
2
なかった。2016年の成長率は、サブサハラ・アフリカ
の過半数の国で、3~6%、いくつかの国では6%以
0
199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013201420152016201720182019202020212022
上に達すると予測されている。これは、中国とインド
を除けば、アジアと比較しても遜色ない。
私は、今後、資源価格が現在のレベルに留まっても、
私は、産業政策そのものに反対するものではない。
ただし、国家主導との関連で、注意深く議論する必要
があると考える。元来、競争力がない産業を国が無理
押ししても、長 期的にはもたない。アフリカには、
1980年代にそのようなケースが数多くあった。また、
ガバナンスに問題が多い国で、国家あるいは政治家が
アフリカ経済が再び加速し、平均で4.5 ~ 5.5%の成長
過度の影響力をもつと、往々にして弊害が生じ得る。
を持続することは十分可能だと考える。
やはり、一般的には、政府と民間が密に協力し、政府
しかし、サブサハラ・アフリカにとって、5%の成長
では十分でない。人口がまだ年2.7%増加しているので、
が民間をサポートし、競争力を強化する産業政策が望
ましいのではないだろうか。
GDPが5%で成長しても、先進国との所得格差があま
言うまでもなく、東アジアの国々は、製造業を先頭
り縮小しない。また、労働人口は、人口全体をはるか
に、長期間高度成長を維持することに成功したのだが、
に上回るペースで増加すると推定されている。5%の
ハーバード大学のロドリック教授は、
「東アジア型開発
図表2 アフリカとその他の国の経済成長率(2016 年
予測値)
図表3 サブサハラ・アフリカ:労働人口増加の推移
出所:IMF Data Mapper, 2016年4月
2 2016.5
出所:IMF Regional Economic Outlook, Sub-Saharan Africa, April
2015
モデルの有効な時代は終わった」と説いている。
「アフ
第3に、人的資本を強化する。この20年で就学人口
リカでは、各国が人的資本を蓄積し、制度と統治を改
が大幅に増えたが、教育の質が伴わない。特に、乳幼
善することに主眼をおき、着実に開発を進めるべきで
児のころの栄養失調、就学前の教育不足、そして初等
ある」と主張する。そして、アフリカでは、東アジア
教育の不備のため、成人しても認知能力の発達が著し
で実現できたような高度成長は望めず、経済成長は、
く遅れている人が全体の約30%にものぼる。南アフリ
よりスローなものになるであろうと予測している。
カでは、小学校・中学校の就学率はほぼ100%と大きく
私は、アフリカのすべての国が経済成長を7~8%
改善した。しかし、小学校6年生就学年齢の児童のう
に加速し、長期間維持できるとは思わない。しかし、
ち、小学校6年生相当の読み書きができる児童は4人
ケニア、セネガル、エチオピア、ルワンダをはじめ多
に1人で、3人に1人は読み書きがほとんどできない。
くの国は、資源に頼らずともこのような高度成長を達
政府が最優先で教育の質の強化に取り組み、教員組合
成するポテンシャルをもっている。南アフリカとナイ
が協力すれば、時間はかかるかもしれないが、必ず解
ジェリアの現状は厳しいが、資源価格の低迷が続いて
決できる課題である。
も、4~5%の成長を望み得るであろう。
最後に、インフラの整備、特に、近隣諸国同士を結
このポテンシャルを実現するには、経済のファンダ
ぶ道路網、航空路、通信施設など、アフリカ域内イン
メンタルズに焦点を当て、民間の原動力を最大化する
フラの整備を加速させる。アフリカを1つの結ばれた
大胆な政策が必要だ。
マーケットとし、域内の貿易を振興し、より魅力的な
第1に、腐敗を抑える。もちろん、強いリーダーシッ
プが不可欠だ。深く浸み込んだ社会の習性を一晩で変
えることはできないが、腐敗の回路を絶つことは可能
だ。たとえば、ナイジェリアでは、まだ為替の公式
(official)マーケットと非公式(parallel)マーケット
投資のロケーションとすることが、成長を加速するた
めの1つの鍵である。
結び - 日本に期待すること
日本の企業と政府に期待することは盛りだくさんであ
が併存し、それが腐敗を助長している。公式レートが
るが、特に以下の3点を取り上げ、本稿の結びとする。
市場に合わせて動くようにすれば、2つのレートに大
1. アフリカ諸国のポテンシャルを、資源の有無のみ
きな差は無くなり、この腐敗ルートは消滅する。ケニ
で判断せず、個々に見極め、前向きに投資に向うこと。
アでは、1993年に当時のモイ大統領の一声で、外貨取
特に、鉱物資源をベースにしたバリューチェーンを現
引の資本規制が完全に取り払われた。
地で開発し、あるいは、海外市場に直結した付加価値
第2に、財政の無駄を取り除く。どの国でも政治の
圧力はあるものだが、アフリカの多くの国では、往々
にして、経済的にみれば最善ではない選択がなされ、
の高い農業を構築することで、アフリカの構造転換に
貢献できる。
2. 日本の企業が投資にかかわるリスクを取りやすく
無駄が生じることがある。プロジェクトの遂行も遅れ
できるよう、日本政府がリスクをシェアする公的支援
る。ケニアでも、現政権の看板プロジェクトに、いく
を拡充すること。アフリカでの投資案件は、ハイリス
つか経済的には最適でない選択や執行の遅れがみられ
ク・ハイリターンのものが多い。政府・政府機関がリ
る。経済政策の意思決定をより広くメリトクラシーに
スクをシェアすることで、他国に遅れをとらず、投資
委ねることで、この問題は解決できる。
のリターンを享受できる。
3. 初等教育、特に理数教育の強化を日本の対アフ
リカ援助の核として、本格的に取り組むこと。この分
野は、日本の援助が強い分野として認識されている。
日本の「アフリカ初等教育マーシャルプラン」が期待
される。
※筆者略歴:1975年よりIMF勤務、アフリカ局シニア・アドバイ
ザー、アジア・太平洋地域事務所長を歴任後、2006年退職。
帰国し、07年から15年まで神戸大学経済経営研究所教授/特命
教授。その間、09年からケニア首相経済顧問、大統領府戦略
イニシアティブ兼経済担当上級顧問を歴任、14年からイェール
ケニア:オルカリア140MW地熱発電所(写真提供:KenGen)
大学客員教授/客員フェローを経て、15年5月より現職。
2016.5
3
日本企業の取り組み
住友商事、
タンザニア・キネレジ
天然ガス焚き複合火力発電所
建設プロジェクト
住友商事株式会社 執行役員
電力インフラ事業本部長
秋元 勉
着工式典
ンバイン(複合)するのでコンバインドサイクル(複
合火力)と呼ばれる。
2016年3月16日、タンザニア連合共和国(以下「タ
総発電出力240メガワット(MW)は同国最大の規
ンザニア」
)政府主催によるキネレジガス複合火力発
模、2018年9月の完成後は経済成長著しいタンザニ
電所の着工式典が、盛大に執り行われた。
アの経済・産業の発展に寄与すると期待されている。
と
ダルエスサラーム市郊外に位置する建設サイトで
ガスタービン発電機は、世界でも有数のガスタービ
は、ジョン・ポンベ・ヨセフ・マグフリ大統領列席の
ンメーカーである三菱日立パワーシステムズ(以下
もと、同国エネルギー鉱物省をはじめ多数の政府関係
「MHPS」
)が供給、蒸気タービンをはじめプラント補
者と発電所オーナーであるタンザニア電力供給公社
機一式の調達と工事・試運転を東芝プラントシステム
(
「TANESCO」
)
、さらには地域住民も多く参加し、盛
(以下「TPSC」
)が 取りまとめる。TPSC、MHPS、
況のなかにも新設される発電所への大きな期待感をあ
当社各々にとって、サブサハラ地域での初の複合火力
らためて感じさせられる式典となった。
案件の受注となる。
式典がつつがなく終了したとの報を受けて、タンザ
にぎ
本プロジェクトの資金のうち85%は、国際協力銀行
ニアらしいカラフルな衣装を身にまとった住民らで賑
(以下「JBIC」
)の輸出金融(バイヤーズクレジット)
わう写真を見ながら、ここに至るまでの長い道のりに
が供与され、協調融資部分には日本貿易保険(以下
ふ
ほ
「NEXI」
)による貸付保険が付保されるが、いずれも
しばし想いを馳せた。
サブサハラ地域の発電案件向けでは初となる。
事業内容
このように、タンザニア初のガス複合火力発電所に、
タンザニア政府向けに初めて日本の輸出金融を供与
キネレジ発電所プロジェクトは、タンザニアの首都
し、日本の業者が初めて建設する本プロジェクトは、
機能と経済の中心であるダルエスサラーム市郊外に、
アフリカ・サブサハラ地域向けのビジネス展開への関
タンザニアでは初めてとなる複合火力発電所一式を建
心の高まりもあって、日本政府が掲げる「質の高いイ
設するものである。ガスタービン発電機、ガスタービ
ンフラパートナーシップ」の好例としてご期待を頂い
ンの排熱から蒸気を発生するボイラー、その蒸気を動
ている。
力とする蒸気タービン発電機からなり、ガスタービン
発電機、蒸気タービン発電機の2種類の発電方式をコ
発電所を必要とする背景・効果
タンザニアは日本の約2.5倍の国土をもち、人口は増
加中で5000万人に迫っている。この10年間にわたり
GDPで年6~7%台の経済成長率を実現。資源や鉱
物、農産物と観光資源にも恵まれた、サブサハラ諸国
でも有数の成長国である。
一方で途上国の例に漏れず、タンザニアの電力事情
まかな
はなかなか厳しく、急成長する電力需要を賄えていな
い。既存の発電設備の総計は約1400MW程度。この
うち4割ほどは渇水時の出力低下など季節要因が大き
スキーム図
4 2016.5
い 水 力 発 電 で あ り、 残 り を 占 め る 火 力 発 電 は
アフリカ 特集
TANESCO所有のものと民間による発電事業がある
が、燃料および買電料金の支払遅延が発生しており、
緊急で導入したリース電源は重油やジェット燃料の費
用がかさむため、いずれも効果的に運用されていると
はいえない状態である。
このような電力事情に対してやはり長期的安定的に
使用できる発電所を、政府および電力会社で整備する
必要がある。さらにタンザニアはすでに自国産の天然
ガスを有しており、今回建設するキネレジ発電所も同
ガスを燃料とするが、ガスタービンで消費するガス燃
料量は同じまま蒸気タービンによる発電分が加わるた
現地着工式典のようす
め、天然ガス燃料の有効活用という点でも同国財政に
大きく寄与することとなる。
のキクウェテ大統領(当時)の本社御訪問という貴重
な機会を得た。この時にキネレジプロジェクトの重要
着工までの紆余曲折
性とファイナンス供与推進をタンザニア政府・財務省
との間で確認し合ったことが、その後開始され長期に
当社がTANESCOとの間で 建 設 契 約(いわゆる
わたった融資交渉の基礎となったのである。
しゃっ かん
EPC契約)を最初に締結したのはさかのぼること2012
とはいえ、インフラ開発を無償援助や借款による資
年。その後必要な資金が確保され着工に至るまでに3
金供与に頼っているタンザニアにとって、まだまだ経
年以上という非常に長期間を要した。タンザニアは
験の乏しい融資借入の交渉は難航した。タンザニアの
IMFによる金融財政管理下にあり、政府系金融機関で
主張や要求に何度も行きつ戻りつしながらもJBICほか
あるJBICの輸出金融とはいえ対外借入とカウントされ
関係者による度重なる調整のご尽力によって乗り越
る。当時の対外借入枠のため融資交渉が開始できず最
え、ようやく2015年3月に融資契約の調印をみた。そ
初1年余りは交渉もままならない状況であった。
の後、タンザニア政府より頭金の受領、融資契約発効、
この間1つの転機は2013年6月初旬開催の第5回
アフリカ開発会議(TICAD V)であった。アフリカ
各国首脳が一堂に会するこの機に、当社はタンザニア
2016年3月にようやくEPC契約発効に至る。
アフリカにおける取り組み
当社はこうしたタンザニア・キネレジ案件の受注を
契機に、モザンビーク共和国においても本年2月に
110MWガス焚き複合発電所を受注、現在、建設工事
を開始している。サイトは首都マプト近郊で発電所の
完工は2018年8月を予定。プロジェクトの資金は円借
款で賄われる。
一方で、当社は2014年9月にガーナ共和国(首都
キネレジ所在地
アクラ近郊のポーン地区)において同国最大級となる
340MWの複合火力発電IPP事業に参画。2017年後半
の商業運転開始を目指して現在発電所を建設中で、完
工後20年にわたり発電所の運営に主体的に携わってい
く予定となっている。これは当社のみならず本邦企業
によるサブサハラでは初の天然ガス焚き火力発電方式
によるIPP事業への参入となる案件である。
アフリカ各国はそれぞれお国柄、お国事情も異なり、
一様の価値基準で取り進めるわけにはいかないが、今
後もサブサハラにおける優良EPC案件ならびにIPP案
3D完成図
件の発掘、開発に戦略的に臨む所存である。
2016.5
5
寄 稿
拡大・強化中の中国の
アフリカ向け政策金融
株式会社野村資本市場研究所
北京事務所 首席代表
関根 栄一
アフリカ向けビジネスの日中逆転
日本と中国のアフリカ向けビジネスの規模が逆転し
1332億ドルを初めて逆 転した(図表 2)
。その後、
2006年末には日本が中国を再度逆転し、2007年末に
なると再び中国が日本を逆転した。中国のアフリカ向
け直接投資(フロー)は、グローバル金融危機が発生
てから久しい。
まず貿易面をみると、中国のアフリカ向け貿易総額
した2008年に54.9億ドルと過去最高を記録した。執筆
は、WTO(世界貿易機関)加盟前の1999年の65億ド
時点で最新の2014年末時点のアフリカ直接投資残高
ルから、2000年には106億ドルに増加し、同年の日本
は、日本の104.7億ドルに対し、中国は323.5億ドルと、
の100億ドルを早くも越え、その差は年々拡大してい
日本の約3.1倍の規模となっている。
る(図表1)
。また、中国のアフリカ向け貿易総額は、
ピーク時の2014年には2221億ドルと、日本のピーク時
の2012年の343億ドルの約6.5倍に達している。
直近の2015年のアフリカ向け貿易総額は、日本の
国家開発銀行と中国輸出入銀行による
金融支援
201億ドル(うち輸出が86億ドル、輸入が116億ドル)
このような中国のアフリカ向けビジネス拡大の背景
に対し、中国は前年より減少したとは言え1793億ドル
のひとつとして、中国の政策金融による支援の存在が
(うち輸出が1088億ドル、輸入が705億ドル)と、日本
指摘できる。2006年10月に中国国内で設立された「中
の約8.9倍の規模となっている。
国・アフリカ 民 間 商 会 (
」China-Africa Business
Council)は、中国企業のアフリカ向けビジネスを支
次に直接投資をみると、中国のアフリカ向け直接投
援する政策金融を紹介している注1。本稿では、そのな
資 残高は2005年末で1595億ドルと、同年の日本の
かの国家開発銀行と中国輸出入銀行の役割と活動につ
いて、ほかの資料も用いながら以下で紹介する。
図表1 日本と中国の対アフリカ貿易総額
注1:h ttp://www.cabc.org.cn/detail.php?cid=8&category_
id=8&id=280
(100万ドル)
250,000
1.国家開発銀行
200,000
(1)国際業務の展開
150,000
中国では、1994年に、これまで国有銀行が
担っていた政策融資と商業融資の分離が行わ
100,000
れ、政策性銀行が3行設立された。国家開発
銀行(China Development Bank、中国開銀)
50,000
0
はそのひとつである。中国開銀の役割は、中長
期の融資・投資などの金融業務の展開を通じ
99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15(年)
日本 輸出
日本 輸入
中国 輸出
出所:JETRO、CEICより野村資本市場研究所作成
6 2016.5
中国 輸入
て、中国経済の重要な中長期の発展戦略に貢
献することであるが、この役割の延長線上で、
もともと中国開銀の中国国内での投融資先で
アフリカ 特集
あった中国企業の海外進出(貿易、直接投資)に伴い、
及び、アフリカ向け投資を約160億ドルけん引したと中
2005年から国際業務を本格的に展開し始めている。
国開銀は発表している。
中国開銀の国際業務は、①短期(1年以内)および
中長期(1年超)の貸付業務、②傘下のファンドを通
特別業務のふたつめが、中国開銀による「アフリカ
じた投資業務、③財務アドバイザリーなどの中間業務
中 小 企 業 発 展 特 別 融 資(
」Special Loan for the
から構成される。2015年末時点で中国開銀の国際業務
Development of African SMEs)である。同融資は、
は115の国・地域に及び、貸付残高は2867億ドル(う
2009年11月の第4回中国・アフリカ協力フォーラムで
ち外貨建てが2760億ドル、人民元建てが690億元)と、
温家宝総理(当時)が10億ドルの規模で創設を表明し
同行の貸付残高全体の約4分の1を占めるに至って
たものである。同融資は、2012年7月の第5回フォー
いる 。
ラムで30億ドルに拡大され、その後2015年12月の第6
注2
回フォーラムで、習近平国家主席が50億ドルを増額し、
また、2016年2月4日付当地誌によれば、中国開
銀のアフリカ向け国際業務は40カ国に及び、累計貸付
当初規模に加え合計60億ドルの規模に設定することを
金額は300億ドル、貸付残高は206億ドルとなっている
表明した。
この特別融資制度は、アフリカのインフラ、製造業、
。対象分野は、エネルギー、鉱山、交通・運輸、電信、
注3
製造業、農林・牧畜・漁業、金融業となっている。同
サービス業の中小企業(現地進出の中国企業も含む)
行は、エジプト(カイロ)にも駐在員事務所を開設し
を対象に商業性の原則で供与されるが、対象国の状況
て、アフリカ業務に当たっている。
によっては、優遇貸付との組み合わせもあるとしてい
る。また、資金需要は設備投資でも運転資金でも可能
注2:http://www.cdb.com.cn/ywgl/xdyw/gjhzyw/
注3:http://www.cdb.com.cn/xwzx/mtjj/201602/t20160218_2478.
html
で、融資期間は最長5年、通貨は外貨または人民元、
金利も固定やフロートが選択可能である。融資方法は、
金融機関向けのTSL(ツー・ステップ・ローン)と直接
貸付があり、前者ではケニアの住宅金融機関向け貸付、
(2)アフリカ向け特別業務
後者ではエジプトに進出した中国の中小企業の現地法
人向け貸付の例が中国商務部から紹介されている注4。
中国開銀の国際業務では、アフリカ向け特別業務を
行っていることも特徴である。
注4:http://www.mofcom.gov.cn/article/zhengcejd/bq/201106/
20110607591437.shtml
特別業務のひとつめが、中国開銀が出資して運営す
る「 中 国・ ア フ リ カ 開 発 基 金 (China-Africa
」
Development Fund、CADF)である。CADF
は、2006年11月に中国(北京)で開催された第
1回中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で、
胡錦濤国家主席(当時)が創設を表明したもの
である。CADFは、農業、インフラ、製造加工業、
工業団地、資源開発などの中国・アフリカの協力
事業に対する①エクイティ投資(普通株、優先
株など)
、②ファンド向け出資を行うものとして、
2007年6月から運営が開始された。
当初、CADFは50億ドルの規模で設定され
ていたが、2015年12月の第6回中国・アフリカ
協力フォーラムで、習近平国家主席がさらに50
億ドルを追加し、合計で100億ドルの規模に設
定することを表明した。CADFは、エチオピア、
ガーナ、ザンビア、南アフリカにそれぞれ地域
事務所を開設し、担当地域で案件の発掘とモニ
タリン グ に 当 た っ て い る。14年 末 時 点 で、
CADFの投資承諾金額は31.3億ドル、80案件に
図表2 日本と中国の対アフリカ直接投資残高
(100万ドル)
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14(年)
日本
中国
注:中国は、2003年からの数値。06年からは金融部門も計上。
出所:JETRO、中国商務部『中国対外直接投資統計公報』より野村資本市場研究
所作成
2016.5
7
寄 稿
(3)
「一帯一路」戦略のもとでの
アフリカ向け業務
を経てインド洋、アフリカ東部、欧州に至るルート、
②中国の沿海港から南シナ海を経て南太平洋に至る
中 国 開 銀 は、 中 国 政 府 が 進 め る「 一 帯 一 路 」
(OBOR:One Belt, One Road)戦略に対して金融サー
ルート、と定義している。中国開銀によれば、同行は、
2015年末時点で、OBOR沿線国向けに1900億ドルの
融資承諾を行い、累計貸付金額は1556億ドル、貸付
ビスを提供する方針である。
OBORとは、習近平国家主席の2013年9月のカザ
フスタン訪問と同年10月のインドネシア訪問の際に提
唱された構想で、その後、同年11月に開催の中国共産
党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中全
会)で採択された改革プランの中に党の政策として正
残高は1114億ドルと、国際業務全体の約3分の1を
超える規模となっている注5。
注5:http://www.cdb.com.cn/rdzt/gjyw_1/201603/t20160307_2805.
html
式に盛り込まれている。具体的には、改革プランの6
番目の「開放型経済新体制の構築」の中で、
「開発性
OBORのうち、
「21世紀海上シルクロード」につい
金融機関を設立し、周辺国・地域のインフラとの相互
ては、アフリカ東部から紅海、スエズ運河を抜け、地
接続・相互交通建設を加速しシルクロード経済ベルト
中海に至るルートに関するインフラ整備も含まれるこ
(帯)及び海上シルクロード(路)の建設を推進し、
とになる(図表4)
。2016年に入ってからの動きとして
は、1月20日から22日まで習近平国家主席がエジプト
全方位開放の新局面を形成する」としている。
続いて、2015年3月に中国政府(国家発展改革委
を訪問、シン大統領と会談し、共同文書の中で、エジ
員会、外交部、商務部)が公表した「一帯一路」構想・
プトは、中国のOBORを支持すると強調した。また、
行動プランでは、陸上の「シルクロード経済ベルト」
両国は、OBORの枠組みの中での協力を強化し、協力
について、①中国から中央アジア、ロシアを経て欧州
対象分野として、エジプト政府の経済復興計画(
「ス
(バルト海)に至るルート、②中国から中央アジア、西
エズ運河回廊」など国家レベルの重要プロジェクトを
アジアを経て、ペルシャ湾、地中海に至るルート、③
含む)や、両国が経済的に実行可能性があると認定し
中国から東南アジア、南アジア、インド洋に至るルー
た重要プロジェクト(①電力、新エネルギー、再生可
ト、と定義している。同様に、海上の「21世紀海上シ
能エネルギー、運輸・鉄道、道路・港湾などのインフ
ルクロード」について、①中国の沿海港から南シナ海
ラ施設、②農業、農業加工、土地改良、漁業資源、③
電子・電力工業、ガラス繊維などの先進工業、
図表 3 中国の政策性銀行の事業規模(国際業務)の推移
の訪問期間中、中国開銀は、エジプトの中央銀
(億ドル)
3,000
行および金融機関との間で、合計17億ドルの融
資契約を締結している。
2,500
2.中国輸出入銀行
2,000
中 国 輸 出 入 銀 行(The Export-Import
1,500
Bank of China、中国輸銀)も、1994年3月
1,000
の銀行改革を受け設立された政策性銀行のひ
とつである。中国輸銀の役割は、金融業務を通
500
0
④銀行業およびその他業種)をあげた。習主席
じて、中国の機械・電機製品、設備、ハイテク
2002 03
04
05
06
07
国家開発銀行
(外貨貸付残高)
08
09
10
11
12
13
14(年)
中国輸出入銀行
(貸付残高)
注1:国家開発銀行は、海外業務に充てられているとされる外貨建て貸付残高のみ
を計上。2011年末以降は、人民元建て海外貸付もあるため、年末レートでド
ル換算のうえ、合算して計上。
注2:中国輸出入銀行は、各年度末の人民元建て貸付残高全体を年末レートでドル
換算。
出所:国家開発銀行、中国輸出入銀行より野村資本市場研究所作成
製品の輸出入を拡大し、企業の対外工事請負
や対外投資を促進することにある。この役割を
遂行するため、同行の業務は、①輸出金融(S/
C、B/C)
、②輸入金融、③対外工事請負・対
外投資金融、④優遇借款などから構成されて
いる。
『中国金融年鑑2015』によれば、2014年末時
8 2016.5
アフリカ 特集
点で中国輸銀の貸付残高は1兆7979億元(うち外貨
建てが1330億ドル、人民元建てが9841億元)となっ
(2)既存の政策金融の強化
ているが、中国開銀の国際業務とは厳密に役割分担が
既存の政策金融の強化も始まっている。
中国政府から設定されているわけではないので、両行
1つめは、2015年4月に中国政府が公表した政策
の事業規模は拮抗する形となっている(図表3)
。中
性銀行3行の機能強化に向けた改革案である。うち、
国輸銀のアフリカ向け業務は、アニュアルレポートに
中国開銀については、市場化および国際化の新情勢に
個別の代表的案件は紹介されているものの、現地報道
対応し、国家戦略に対して十分なサービスを提供する
も含め全体像を把握できる情報は執筆時点では見当た
ことを求め、このために資金源への支援政策を明確に
らない。一方、中国輸銀も、中国開銀と同様、中国の
し、資本金を合理的に補充するとしている。また、中
OBOR戦略に対して金融サービスを提供する方針であ
国輸銀については、中国の対外貿易の発展を支援し、
り、2014年には、アフリカ東部のケニアのモンバサ―
企業の海外進出戦略の実施面での機能と役割を果た
ナイロビ間鉄道事業向けの融資を進めている。中国輸
すことを求め、このため資本力を強化するとしている。
銀によれば、同行は、2015年末時点で、OBOR沿線
両行とも、中国のOBOR戦略を支援することが期待さ
国49カ国向けに5200億元(残高全体の約3割)
、1000
れており、このなかにはアフリカ向け業務も含まれる
件超の貸付残高を有している 。
こととなる。
注6
注 6:http://www.eximbank.gov.cn/tm/Newlist/index_343_27977.
html
2つめは、上記の改革案を受けた増資である。2015
年8月、国家外為管理局が管理する外貨準備から、
中国開銀に480億ドル、中国輸銀に450億ドルの資本
注入がそれぞれ行われた。この結果、中国開銀の登録
なお、中国輸銀のアフリカ業務で特記すべきものと
資本は3067億元から4212億元に、株主資本は6676億
して、①東・南アフリカ事務所(南アフリカのヨハネ
元から9863億元に増加し、自己資本比率は11.41%に
スブルク)および西・北アフリカ事務所(モロッコの
上昇した。また、中国輸銀の登録資本は50億元から
ラバト)の開設と、②アフリカ輸出入銀行への出資(持
1500億元、株主資本は282億元から3085億元に増加し、
分比率は4.48%)があげられる。
自己資本比率は12.77%に上昇した。
合計930億ドルに上る資本注入は、両行の与信能力
今後の展望
を高め、中国の国際的な政策金融の水準を押し上げ、
アフリカ向け業務の拡大にも寄与していくこととなろ
(1)新たな政策金融メニュー
う。政策金融と企業が一体となった中国のアフリカ向
中国のアフリカ向け政策金融は、今後も強化される
け業務は、アフリカ諸国の成長に向けた資金需要を補
完していくこととなろう。日本を含む先進諸国が、こ
見通しである。
1つめはバイの動きで、2015年12月に習近平国家主
席が設立を表明した「中国・アフリカ生産能力協力基
金」である。同基金は、中国輸銀と外貨準備が当初
うした中国の動きを踏まえ、今後どのように対応して
いくのかがまさに問われている。
100億ドルの規模で創設し、アフリカの高速鉄道・高
速道路・航空路線の整備と工業化に用いられ
る見込みである。
図表4 「一帯一路」のルート
2つめはマルチの動きで、14年7月に設立
が決まったブラジル、ロシア、インド、中国、
南アフリカのBRICSが出資する新開発 銀 行
(New Development Bank、NDB)で ある。
アフリカを含む新興国および途上国のインフラ
整備に向けた融資活動がいずれ動き始めること
となっている。
出所:Chinadaily(2015年4月15日付)
、
http://europe.chinadaily.com.cn/business/2015-04/15/content_20435638.htm
2016.5
9
寄 稿
持続的かつ包摂的な
アフリカの成長に向けた
アフリカ開発銀行の取り組み
1.アフリカ開発銀行グループについて
(1)アフリカ開発銀行グループの
使命・役割と組織
アフリカ開発銀行グループ(以下「当グループ」
)は、
アフリカ開発銀行
アジア代表事務所長
横山 正
全体でみて、インフラ投融資にその資金の半分以上を使っ
ていることである。
本部は、コートジボワールのアビジャンにおかれている。
また、アフリカにおいてさまざまな資金提供業務を行って
いるため、域内に38の事務所を有している。域外には、唯
アフリカ地域の持続的かつ包摂的な開発に資することを使
一、私が所長を務めているアジア代表事務所が東京に設
命とした国際開発金融機関グループである。その役割は、
けられており、アジア太平洋地域でのパートナーシップの
アフリカ諸国の政府や民間を対象として、開発に資するた
拡大、知識の普及・情報の交換、ビジネス・投資の促進を
めの資金の提供や助言を行うことである。
行っている。
後述するが、アフリカ経済には成長に向けた大きな潜在
性がある一方、幅広い課題やボトルネックもある。した
がって、アフリカの主要な開発課題のひとつは、いかにし
①アフリカ開発銀行(AfDB)
AfDBは、1964年に設立され、80カ国(アフリカ54カ国
てそれらの課題に対処し、ボトルネックを取り除き、その
(域内国)と日本や主要欧米諸国を含む26カ国(域外国)
)
潜在性を解き放つかである。当グループは、アフリカ地域
が加盟国(イコール株主)となっている。AfDBは、アフ
における国際開発金融機関として、さまざまな開発パート
リカ域内の互助的な開発金融機関として設立されため、当
ナーと協力・連携しつつ、この課題の克服に向けた大きな
初は加盟国も域内国に限られていたが、80年代に入り、域
役割を担っている。
外国にも加盟が開放されることとなった。現在、日本は、
当グループは、組織的にいうと、アフリカ開発銀行
(AfDB : African Development Bank)
、アフリカ開発基
ナイジェリア(9.3%)
、米国(6.6%)に次ぐ第3位(5.5%)
の出資国である。
金(AfDF : African Development Fund)と、ナイジェ
当行は、強固な資本基盤、潤沢な流動性、慎重なリスク
リア信託基金(NT : Nigeria Trust Fund:ナイジェリア
管理により、良好な財務状況を維持しており、主要格付け
のみが出資する基金)から構成される。
機関から最高の格付け(AAA級)を取得、かかる信用力
当グループは、近年では、毎年60億~ 80億ドル規模の
に基づき、資本市場から資金を調達して、準商業ベースの
投融資の承認を行っている。その投融資状況の特色は、ア
条件で中所得国14カ国の政府などに対して融資するととも
フリカにおける幅広い開発ニーズに対応しているものの、
に、その他の域内国も含めた民間セクターへの投融資など
この地域におけるインフラ整備の重要性に鑑み、グループ
を行っている。
10 カ年戦略(2013 ~ 22 年)
②アフリカ開発基金(AfDF)
かんが
AfDFは、1972年に設立され、38カ国の受益国と30カ国
の拠出国が参加している。日本は、累積で第2位の拠出(貢
献)をしている。AfDFは、低所得国の政府などに対して無
じょうきょせい
償資金や譲許性の高い条件での融資の提供を行っている。
(2)当グループの 5 つの優先課題と今後の
取り組み
当グループは、アフリカにおける多様な開発課題に取り
10 2016.5
アフリカ 特集
組むための10カ年戦略(2013 ~ 22年)を策定している。
昨年9月に就任したアデシナ新総裁(前ナイジェリア連邦
農業・農村開発大臣)のもと、昨年の持続可能な開発目標
(SDGs)採択やCOP21の合意などの動きも踏まえつつ、
今後、当グループとして取り組みを加速させる5つの優先
分野を定めている。それは、①エネルギー(特に電力)へ
のアクセスの向上、②食糧増産、③地域統合、④工業化、
⑤アフリカの人々の生活の質の向上、といった、いわゆる
“ハイ・ファイブズ(High 5s)”である。
この中でも、エネルギー(特に電力)へのアクセスの向
上は、そのほかの4つの優先分野に不可欠なインフラとい
うべきものであり、特に重要視されている。たとえば、エネ
ルギー部門でのボトルネックと電力不足を解消することによ
が3%、来年は4%の成長が見込まれる。中長期的にも、
り、アフリカのGDPは、年率2~4%高くなるとの推計もあ
全世界平均を上回る成長が見込まれる。面積も広く、米国、
る。そのため、アフリカにおけるエネルギー普及のための
中国、旧ソ連を除く欧州、インド、メキシコの合計にも匹
新政策「ニューディール」を策定しており、アフリカ域内
敵する。人口増も目覚ましく、2050年には、現在の約2倍
外のさまざまな主体の力を合わせ、2025年までにアフリカ
の約22億人となることが見込まれ、現在の中国とインドの
におけるエネルギーへのユニバーサル・アクセスの実現を
人口の合計に近い規模となる。2100年には、34億~ 56億
目指すこととしている。ただし、この実現には、現在見込
人になるとの試算もある。いずれにしても、今後、1人当
まれる域内外の公的資金、民間資金に加え、年間500億ド
たりのGDPの増加や中間所得層の拡大も見込まれ、今世
ル以上の資金動員が必要との試算もある。アフリカ諸国に
紀中にはアフリカが巨大な市場となる。また、天然資源に
おける税収増などによる域内での資金動員は不可欠である
加え、太陽光、水力、風力、地熱などの再生エネルギーも
が、さらなる国内外の民間資金の動員も課題となっている。
豊富である。全世界の未耕作の耕作可能面積の65%がア
さらなる民間資金の動員は、エネルギーセクターに止ま
らず、幅広い分野で必要となる。したがって、すべての公
フリカにあり、食糧生産基地としての潜在性も大きい。
一方、この潜在性を解き放つための諸課題もある。国に
的セクターに共通した課題であるが、当グループとしても、
より状況は異なるので、国別で論じるべき面もあるが、ア
いかにして、自らの限りある資源で、民間資金を動員でき
フリカ全体でいえば、電力や交通を含めた基礎インフラ整
るかが課題となっている。
備、食糧増産、より高付加価値な産業への移行、分断され
なお、High 5sは一体的に解決されなければならない課
た市場の統合、人材育成、雇用創出、ガバナンスや透明
題であり、今後の人口増大がこれに大きな影響を与える。
性改善、紛争解決などである。しかしながら、これらの課
たとえば、地球環境問題への影響や、貧困削減といった問
題は、大なり小なり、アジア地域を含め、他の地域の途上
題は当然のこと、加えて、アフリカ大陸は現在でも純食糧
国にもみられる。
輸入状況にあり、食糧増産が十分でなければ、世界の食
たとえば、世界銀行グループが毎年公表している、ビジ
糧需給は深刻化する。また、特に若年者への雇用創出が
ネスのしやすさのランキングである「Doing Business」
十分でなければ、失業者の不満のはけ口として、テロ活動
(2015)をみても、日本企業が主要な進出先としている東
をはじめとする問題へとつながりかねない。アフリカの持
南アジア諸国が、必ずしもアフリカ諸国より上位にランキ
続的かつ包摂的な成長の成否が、グローバルリスクに直結
ングされているわけではない。例えば、90位のベトナムよ
しているのである。それがゆえに、国際社会が、アフリカ
り上位にアフリカ6カ国(南アフリカ、モロッコなど)
、
の開発課題に協力して取り組まねばならない。
109位のインドネシアより上位に11カ国(加えて、ナミビア、
2.アフリカの潜在性とビジネス・投資機会
アフリカは成長の潜在力に富んだ地域である。マクロ経
済成長率でみれば、近年の資源・一次産品価格の低迷で
下方修正はみられるものの、サブサハラ地域全体で、本年
ケニヤなど)
、134位のラオスより上位に15カ国(加えて、
ガーナ、モザンビークなど)がランキングされている。
インフラ整備不足、食糧増産の必要性や人材育成の必
要性についても、むしろ、アフリカに膨大なビジネス・投
資機会があると考えることもできる。
当グループとしては、アフリカにおけるビジネス・投資
2016.5
11
寄 稿
機会に関する情報を日本も含めたアフリカ域外で広めると
援となる。また、当行としては、部分的保証業務、また、
ともに、域内外国、ほかの国際機関などと協力しつつ、民
A/Bローンなどのスキームによる支援も実施している。
間資金が動員されやすいような環境整備に貢献していき
たい。
AfDBの民間セクター向け資金の利用を検討される場合
には、具体的な事業について、どのような支援が必要かな
3.AfDB の民間セクター向け業務
①民間セクター向け業務の概要
どについて、最終的にAfDB(民間局)にご相談していた
だくことになる。
②日本による民間セクター開発支援
AfDBと民間セクターのかかわり合いは、大きく分けて
日本は、先に述べたとおり、AfDBやAfDFに対する主
ふたつある。まず1つめは、民間事業者が、いわゆるソブ
要出資国として、当グループに対して多大な貢献をしてい
リンに対する当グループの融資などに基づくプロジェクト
る。これに加え、AfDBに対するJICAの円借款供与を活
などの調達先(契約者(コントラクター)
)になるといった
用 し たEPSA(Enhanced Private Sector Assistance
かかわり合いである(AfDBの公共セクター窓口)
。この
for Africa)という民間セクター開発支援スキームを通じ
ウィンドウには、政府が民間セクターに出資する場合の
た重要な協力も行っている。直近の5年間では、20億ドル
バックファイナンスをAfDBが行うことも含まれる。
の円借款が供与されることとなっており、順調に進捗して
もうひとつが、ここで述べる、民間セクター(ノンソブ
いる。また、日本の信託基金を通じて、東アフリカのマイ
リン)が当行から直接資金提供の受け手となるかかわり合
クロファイナンスに関する技術協力を行うなど、有益な事
いである(AfDBの民間セクター窓口)
。具体的には、プロ
業も行っている。
ジェクトの準備や実施のための投融資、部分的リスク保証
などの提供者と受け手との関わり合いである。提供してい
る資金量としては、年間、AfDBによる承認全体の3分の
4.日系企業に対するアフリカの期待
1程度に当たる15億ドル程度、案件数でいうと、15~25件
アフリカは、日系企業からの投資(特に直接投資)に大
程度の規模となっている。提供する資金と金融商品、その
きく期待している。それは、アフリカが必要としている、
提供条件などについては、図表1、図表2を参照されたい。
高付加価値産業への移行、雇用創出、技術移転、人材育
AfDBの民間セクター向け業務についてご理解いただく
成に大きく貢献することが期待されるからである。また、
ため、具体的なPPP支援の一例を述べたい(図表3)
。こ
カイゼン文化や職業倫理観といった好ましいソフト面での
れは、ザンビアでの水力発電所および送電線網の整備事
伝播も期待される。
業のために、AfDBが水力発電整備プロジェクトに融資、
一方、日本企業からすれば、アジアに比べてアフリカは
AfDFが、ザンビア政府向けに、国営電力公社(ZESCO)
地理的に遠く、投資・ビジネス環境についての情報に乏し
に出資するためのバックファイナンス(融資)
、AfDFと
く、また、所得水準が低い、市場が分断されているなど、
NTが送電線網の整備に対する融資を行ったという包括的
投資・ビジネス環境が整っていないという見方も根強い。
支援の例である。
しかしながら、アフリカの潜在性は膨大である。インフ
通常は、たとえば、モロッコの太陽光発電プロジェクト
ラ未整備などの課題は、裏を返せば、需要が膨大というこ
に融資を行うといった、より単純なプロジェクト向けの支
とでもある。また、投資・ビジネス環境も不十分な状況の
図表1 提供資金ならびに金融商品
図表2 投融資適格性および提供条件
12 2016.5
アフリカ 特集
うちに進出したほうが、競争相手の参入も少なく、また、
とサービス(コンサル業務)が4分の1ずつ。韓国(233)
競争が激化する前に市場で強いポジションを確立できれ
も若干土木が多いも、インドと似た状況。これに対し、日本
ば、先行者利益を維持しやすい。
アフリカに早く進出しなければ、席はなくなる、いや、
(596)は、大部分が物品でサービスが若干。これに対し、
ヨーロッパ勢の英(138)
、仏(1552)
、独(2980)は、若干
今は魅力的な席はなく、所得水準が上がって魅力的な席が
のウェイトの差はあるが、物品が約半数で、サービスも半
出てきたときに席を取りにいくかどうかを考えればよいな
数程度ある。カナダは、圧倒的にサービスとなっている。
ど、いろいろな意見を聞く。もちろん進出の可否、そのタ
この傾向をみると、日本としても、いかにコンサル業務
イミングについては、業種や会社のサイズ、リスク・エク
のウェイトを増やしていくかが課題ということが、ほかの
スポージャーの態様などを踏まえたビジネス戦略によろう。
先進国との比較で示唆されるのではないか。
しかし、アフリカについての情報が乏しいと思っている
なお、当グループの調達情報については、当行の調達サイ
方々が、現地に根を張っていないのに、より魅力的な席が
ト(http://www.afdb.org/en/projects-and-operations/
出てきたとタイムリーに認識できるのか? 認識できたと
procurement/)にアクセスいただきたい。
して、十分な情報を入手して迅速に行動できるのであろう
か? そもそも魅力的な席は、すでに進出している人が今
の席をグレードアップするか、新たに作り出して、さっと
横移動して座ってしまうのではないか? という視点も必
要かもしれない。
6.最後に
アフリカは潜在性にあふれている。人口面でみても、今
世紀はアフリカの世紀となろう。アフリカ市場を語らずし
アフリカビジネスで成功するためには、10年、20年と
て、グローバル市場を語れなくなる時代となる。もし、ア
いった、長い期間で投資を回収する覚悟が必要であり、そ
フリカが持続的かつ包摂的な成長を遂げることができなけ
のためにも、企業トップの強いコミットメントが必要であ
れば、グローバルリスクは増大する。この課題克服におい
るといわれる。日本企業は、一度決めると腰を据えて進出
て、民間資金が果たす役割は大きい。
して容易には撤退しないが、判断は慎重であり、決断に至
るには時間がかかるといわれる。
当グループとしては、前述の民間支援ツールを駆使する
とともに、当アジア代表事務所として、当グループの事業
この意味で、本年8月下旬のケニヤで開催されるTICAD
に関する広報や、アフリカのビジネス・投資機会について、
VIには、多くの日本企業のトップの方々にご参加いただき、
日本政府、JICA、JBIC、JETRO、アフリカ各国大使館
アフリカの潜在性、ビジネス機会を体感し、今後のアフリカ
などと協力しつつ、セミナー開催や個別の面談を通じて、
における積極的な事業展開を検討する際の参考にしていた
民間セクターの支援を行っていきたい。また、当事務所で
だくための絶好の機会としていただきたいと思う。
は、ABネット(African Business Net)というポータル
5.当グループが支援する
プロジェクトの調達先
当グループによるソブリンに対する融資・無償支援プロ
ジェクトの調達先の状況について、日本の民間の方々のご
参考になると思われるので、簡単にご説明する。当グルー
プが資金提供するプロジェクトの入札については、加盟国
サイトを運営しており、関連する種々の情報発信に引き続
き努めていきたい。
当グループのツールのご活用を検討される方は、アビ
ジャン本部や域内事務所へのコンタクト、または、当事務
所を通じて、必要な情報を入手され、アフリカでの事業進
出の一助としていただきたい。
図表3 PPP ストラクチャー例
企業等間の国際競争入札となる。2000年1月~15年3月
までの調達状況をみると以下のような傾向、特徴がある。
まず、毎年総額20~26億ドル程度を調達、件数が2000
件程度であるので、1件あたり100万ドル程度である。電力、
水案件のウェイトは大きく、金額ベースで3~5割を占める。
かっ こ
各国別(括弧内は、100万ドル単位の受注総額)でいうと、
当グループのアジア加盟国の4カ国については、中国(4361)
は、金額でみても、案件数でみても、工事のウェイトが多く、
残りは物品、インド(928)は、物品が半分で、あとは工事
2016.5
13
寄 稿
Egypt the Future;
Between Reforms and
Opportunities
Alaa Omar
Chief Executive Officer
General Authority for Investment and Free Zones
Egypt, the country of 7000 years of civilization, one of
the most diverse economies in the region with great
potential and resources, is back again and ready to
compete in global market while moving on the path
towards achieving sustainable and inclusive growth;
achieving steadily increasing growth rates of 4.2%
during FY2014/15 and targeting 5% by the end of
FY2015/16 after 4 years of economic and political turmoil. With the return of certainty, security, and a
stabilizing political scene, it started to produce a turnaround in economic activity and investment. The
opening of the parallel Suez Canal in August and the
recent discovery of a major gas deposit could improve
Egypt’s energy position and contribute positively to its
economy in the medium term. Growth is being driven
by the manufacturing sector, despite energy shortages
and changes to the energy-subsidy scheme; for its
competitive costs. FDI is recovering with a strong
pace signalling ongoing improvement in investors’
confidence reaching US$ 6.4 billion in FY2014/15
(increasing by 56%) and reaching US$ 3.0 billion in
1st half FY2015/16, driven mainly by the rise in the
net inflows for greenfield investments by 87.5% to
reach US$ 2.5 billion during 1st half FY2015/16. Also, unemployment fell from 13.4% to 12.7% in 2015.
Inflation has been on a declining trend in recent
months; reaching 9.2% in March 2016. Hence, investors’ confidence have been restored in the Egyptian
market, which is assured by the international credit
ratings (Fitch, Moody’s, Standard and Poor’s) stable
outlook. In addition, Egypt occupied the 29th rank
among 58 countries in FDI restrictiveness index.
Reforms towards Sustainability &
Inclusion; To Leave No One Behind
Egypt is moving on the right track. Macroeconomic
14 2016.5
stability is a necessary condition for securing the business community’s continuing confidence and to ensure
that Egypt’s economic recovery remains durable. The
government recognizes that it must maintain the momentum of reforms so that growth can accelerate in a
sustainable manner. Since FY2014/15, the government
started executing a balanced and gradual imperative-home-grown reform agenda, which gained the
trust of experts and international institutions. The reform agenda was designed to achieve inclusive growth,
realize financial stability, fiscal adjustment and invest
in human capital while ensuring an efficient and wide
spread social protection. This includes reduction in energy subsidies, increasing investment in infrastructure,
especially schools and hospitals, and undertaking new
legislative reforms. In addition, in 2014, the Ministry of
Investment launched the Egyptian Regulatory Reform
and Development Activity (ERRADA) to reform the
business climate in Egypt. Through this initiative, all
business- and investment-related regulations have been
reviewed and will be made available to the public and
to business investors. Also the new and first microfinance law was issued in 2014 to regulate microcredit
provided by non-bank micro-financiers, such as companies and non-governmental organisations, placing
them under the authority of the Egyptian Financial Services Authority. It is worth to note that there are some
2.5 million SMEs working in Egypt, representing 75%
of the total employed workforce.
While, 2015 witnessed the issuance of the new unified investment law and its executive bylaws that aims
at solving all problems and obstacles facing Egyptian,
Arab and Foreign investors. It is considered a quantum
leap to stimulate and encourage investment in Egypt,
and an important gateway to attract foreign investment, the law includes a package of legislative
incentives to stimulate investment, most importantly
アフリカ 特集
are concerned with activating of the “one stop shop”
system, unifying the entity for the disposition of lands,
ensuring easy movement of funds (entry and exit of
money) to and from Egypt, and settlement of investment disputes.
The objective is to create an investment-friendly environment and promote the private sector; which
would in return contribute to broad-based growth.
This would require improving the business climate
and restoring competitiveness. To reach these objectives, the government is focusing on streamlining
burdensome regulations, improving access to finance,
and modernizing insolvency and land laws. Increasing
investment in human capital and infrastructure would
also help boost economic activity and productivity,
and provide more equal access to job and business opportunities for all.
With the aim of promoting entrepreneurship and
development in the governorates, the government has
also formed a holding company, “Ayady for Youth
Employment” set to commence activities during the
third quarter of FY2014/15. Its plans centre around the
establishment of investment companies in each of the
governorates to finance and partner with local entrepreneurs with the aim of developing the main regional
product and services for export.
Egypt is a Global Hub for Business
and Investments
Create new prospects for sustainable development,
creating new communities integrated with the economic fundamentals of the surrounding environment
and embarking in a number of MEGA projects, producing value chains and contributing to economic
growth. These projects are mainly located in southern
Egypt, the Suez Canal region, and Sinai and will contribute to creating new urban communities in the
depths of the Egyptian deserts, outside the narrow valley, including:
- The New Valley reclamation project and the development of one and a half million acres the city of
Farafra, which is part of reclamation project 4 million acres nationwide, establishing “Reef Company”
for this purpose with a capital equivalent to EGP 8
billion. The company aims to develop new integrated societies based on agriculture and agro-processing
and to create value added projects and maximizing
the economic return of the water used.
- The announcement of 14 new cement production
license in 9 governorates worth 28 billion pounds
investments, to produce 28 million tons of cement
by the end of 2019 which requires the use of coal
with other energy alternatives. The new licenses
aiming at meeting the growing demand for cement
for the mega-projects that have been announced, including the new administrative capital. It’s expected
that this production will bridge the gap between the
future production of 60 million tons per year and
consumption, which is expected to reach 90 million
tons by 2025.
-The development of the entire Suez Canal to
achieve integrated development starting in East Port
Said includes: Ports logistics areas, and industrial
zones to be built over 40 Sq KM which includes
integrated exports oriented heavy, medium industries, new city on 136 acres, R&D centers as well as
new 5 KM tunnel beneath the canal. The amending
of the Special Economic Zones designed to regulate
the framework for the operations of the New Suez
Canal.
- Golden Triangle Project will capitalize on the natural resources and mineral wealth in the region
between Qena, Quseir and Safaga while also developing the area for tourism- related industrial,
commercial and agricultural opportunities.
GoE has identified a set of readily available business opportunities to mobilize private investments,
covering a wide range of industries, projects cover a
wide range of sectors to include retail and internal
trade, IT sector and knowledge parks, oil & gas exploration, energy supply to meet the nation’s increasing
demand from and electricity and tourism sector.
In conclusion, the effort remains ongoing, and the
government is committed to continuing and deepening reforms to fulfil its stated goal to substantially
improve Egypt’s business climate over the coming
years, create a business friendly environment, ensure
investor protection and security, remove regulatory
and bureaucratic barriers to private sector development and foreign investments. Moreover, Egypt is
offering you an opportunity for growth and still many
business opportunities have not been tapped. Egypt is
inviting the world to further explore potential business
ventures.
2016.5
15
レポート
アフリカ工業化の鍵を握る経済特区
(SEZ)
——中国によるSEZ 開発の現状と課題——
海外投融資情報財団
調査部 上席研究員
村上 美智子
アフリカでは、1次産品価格の低下や中国経済の減
このうちアルジェリアについては、江西省の企業2
速に伴う資源需要の縮小を受け、伝統セクターの農業
社による共同開発が予定されていたが、2009年年初に
や鉱業に依存する経済成長からの脱却が急がれてい
同国の投資法改正により外資企業に対して地場企業を
る。雇用創出や貧困削減に向け、工業化の推進が喫緊
マジョリティとする合弁による進出が義務付けられるよ
の課題との認識が高まっている。その鍵を握るものと
うになったことを受け、現地政府との間で出資構成に合
して法人税などの優遇税制を備えた経済特区(SEZ:
意できないまま保留となっている。15年4月現在、モー
Special Economic Zone)の開発がある。SEZをテコ
リシャスが建設中、それ以外の5件(ザンビアのサブ
に外資導入と輸出指向型工業化で成果を収めてきた中
プロジェクトLusaka East Multi-Facility Economic
国は、アフリカにおいて、従来の資源開発やインフラ
Zoneを計上すると6件)は稼動済みとなっている。
きっきん
整備に加え、SEZの開発に注力している。
2015年12月の第6回FOCACで採択された「ヨハネ
スブルグ・サミット宣言」
、および「2016 〜18年行動
中国によるSEZ 建設の経緯
計画」では、SEZに関する協力関係をさらに強化する
ことがうたわれた。
中国企業のアフリカにおけるSEZの開発は、1990年
FOCACの枠組みによらない2国間の取極としては、
代後半に始まった。2006年11月には、第3回アフリカ協
ボツワナ、ナイジェリア、シエラレオネ、南アフリカ、
力フォーラム(FOCAC) で採択された「北京宣言」
ウガンダ、ギニアといった諸国に、民間企業や省政府
にSEZ建設への協力が盛り込まれ、商務部(MOFCOM)
による工業団地や自由貿易区の建設が知られている。
の支援プログラムのもとで開発が進められることに
それらは総じて小規模なものとなっている。
注1
なった。同年にはモーリシャス、ナイジェリア、およ
びザンビア、翌07年にはアルジェリア、エジプト、エ
チオピア、およびナイジェリアのもう1件の開発計画
について、MOFCOMの支援が決定された。
図 中国商務部の支援下にある稼動または建設中の SEZ
EGYPT
NIGERIA
Ogun-Guangdong Free Trade Zone
Suez Economic and Trade
Cooperation Zone
ETHIOPIA
Eastern Industrial Zone
MAURITIUS
Jinfei Economic and
Trade Cooperation Zone
ZAMBIA
Zambia-China Economic and Trade Cooperation Zone
a)Chambishi Multi-Facility
Economic Zone
b)Lusaka East
Multi-Facility Economic Zone
出所:UNDP ワーキングペーパー No.6 2015
2016.5
中国政府の支援戦略
MOFCOMのSEZ開発支援プログラムはアフリカ以
外にも、タイ、ベトナム、パキスタン、ロシアなどで
NIGERIA
Lekki Free Trade Zone
16 注1:中国とアフリカ50カ国およびアフリカ連合委員会をメンバーとする。
稼動している。中国政府が海外のSEZ開発を推進する
のには、経済・政治両面の目的がある。経済目的とし
ては、中国製機械類の需要創出、貿易摩擦の回避、成
熟産業の海外移転を通じる国内産業高度化の促進、中
小企業の海外進出支援といったことがあげられる。一
方、政治目的としては、中国の成功体験の輸出を通じ
るソフトパワーの拡大がある。
中央政府による支援措置としては、SEZ開発事業者
に対する2〜3億人民元の補助金や、20億人民元を
上限とする長期融資などがある。また、入居企業に対
し、中国の銀行からの借入を対象に利子補給が行われ
ている。さらに、2007年6月に中国アフリカ開発基金
アフリカ 特集
(CADF:China ‐ Africa Development Fund)注 2
ラゴス国際空港に、それぞれ近接している。
が創設され、SEZやアフリカ進出中国企業の合弁企業
開発面積は、第1フェーズで100 〜 250haを中心と
などへ出資を行っている。CADFは今のところ、ナイ
するが、モーリシャスはより小規模である一方、ナイ
ジェリアのLekki Free Trade Zoneおよびモーリシャ
ジェリアのLekki Free Trade Zoneは1000haと大規
スのJinfei Economic and Trade Cooperation Zone
模である。
稼働中のSEZは、それぞれ投資先国の製造拠点とし
の第2位の出資者となっている。
注2:総額当初50億ドル、2015年には100億ドルに拡大(コミットベース)
。
て産業集積が形成されつつある。エチオピアでは、特
区内の靴製造工場が同国最大の規模となっているほ
か、繊維・アパレルや建設資材といった産業が集積し
SEZ の現状
つつある。ザンビアのChambishiでは、銅選鉱工場の
立地が進んでいる。このほか、ナイジェリアでは、主
MOFCOMの支援下にあるSEZの開発事業者は、エ
に建設資材や消費財の製造工場が、エジプトでは、機
チオピアやモーリシャスでは中国系のみで構成されて
械類製造業が集積を始めている。これらの進出企業は
いる。このうち前者は、江蘇省蘇州市張 家 港の鉄鋼
中国企業が中心であるが、地場企業や第三国企業の進
メーカーQiyuan Groupが最大出資者および運営事業
出もみられる。
ちょう か こう
者である。同省および市の両政府は助成措置(1億人
2015年2月現在、SEZの開発投資額は合計5.0億ド
民元以上)を講じている。後者は、2001年から同国で
ル、進出企業による投資実行額は合計9.7億ドルで、
国内向けおよび輸出目的で繊維製造業に従事している
入居企業による現地雇用創出件数は合計2万件ほどと
山西省国有企業のTianli Groupが主導している。エ
されている(ザンビアのサブプロジェクトを除く)
。
てんしん
ジプトでは、天津経済技術開発区の開発事業体が中心
となっており、同市政府はサービス企業を対象とする
ユーティリティ・コストの負担や、特区内の中国人労
今後の課題
働者に対する食費の援助(初年度のみ)といった支援
中国ではSEZの成熟に12 〜15年を要したとされる
を行っている。一方、ナイジェリアやザンビアは、現
が、アフリカ、とりわけサブサハラアフリカでは、言
地政府との合弁事業である。ナイジェリアのLekki
語を含む文化的差異を克服しつつ行政管理の効率性
Free Trade Zoneで開発を主導しているのは、同国
向上を図ることや、特区外のインフラ整備といった問
で事業実績を有する中国土木工程集団公司CCECCで
題の解決が不可欠なこともあり、さらに長い時間が必
ある。ザンビアについては、Chambishi鉱山の銅およ
要とされよう。インフラ整備では、特区内を開発事業
びコバルトのバリューチェーンを主眼に、中国有色鉱
者が、特区外は現地政府が担うというのが基本的な分
業集団有限公司CNMCが中心的役割を果たしている。
担であるが、トラック輸送に困難をきたすような未舗
各SEZの立地はいずれも、中心的な経済都市や既存
装道路や、特区への安定的な供給が脅かされるような
または開発中の主要輸送インフラに近接している。エ
電力事情からの影響を遮断することはできない。
チオピアでは海洋への出口となるジブチへのハイウェ
中国によるSEZはすでに一定の産業集積を果たして
イ沿いに立地している。モーリシャスではポートルイ
おり、今後、地場経済とのリンケージをいかに構築し
ス港に、ナイジェリアでは開発中のLekki港、および
ていくかが問われることになろう。
図 中国商務部の支援下にある SEZ の詳細
国
SEZ 名称
アルジェリア Jiangling
立地
中心的事業者 当初 /直近
現状
開発面積(ha) 入居企業数
第1フェーズ /
稼動 / 契約
総面積
雇用件数
2007
Jingling Automobile Co.
保留中
120/500
n.a.
n.a.
エジプト
China-Egypt Suez スエズ
2007
Tianjin TEDA Co.
稼働中
134/634
38/58
2,000
エチオピア
Eastern *
2007
4,500
Yonggang/Qiyuan Investment Group
稼働中
233/1,000
27/27
テール・ルージュ 2006
Tianli/Tianli を含む山西省の 3 社
建設中
70/211
0/5
n.a.
ラゴス州
2007
CCECC
稼働中
1,000/3,000
21/100
551
Ogun-Guangdong
オグン州
2006
Guangdong XinGuan Group
稼働中
250/2,000
19/40
4,250
Zambia-China *
チャンビシ
ルサカ
稼働中
200/1,158
520
38/45
10/10
8,735
125
モーリシャス Jinfei
ナイジェリア
ザンビア
オラン市
入札年
Lekki *
アジスアベバ
2006
CNMC
注:入居企業数、雇用数は 2015 年2月現在(英国海外開発研究所)、*は 2015 年4月現在(UNDP)。
出所:英国海外開発研究所ブリーフ July 2015、UNDP ワーキングペーパー No.6 2015。
2016.5
17
レポート
サブサハラ・アフリカの電力プール
海外投融資情報財団
調査部 上席特別研究員
岩見 元子
はじめに
数年前、南アフリカのヨハネスブルグからドバイま
で夜行便を利用した。中継地のドバイを目指してアフ
リカ大陸の東岸を北上するのであるが、地上を眺める
ハラ・アフリカの電力事情を概観し、4つの電力プー
ルの状況をまとめることとする。
1. サブサハラ・アフリカの電力事情
とどこまでも真っ黒な闇が続く。1カ所、途中で街ら
アフリカ諸国の平均電力普及率は30%とされてい
しい灯りが見られたがそのまたたきはドバイ上空のま
る。アフリカ54カ国の電力普及率(2012年)を見ると、
ばゆいばかりの輝きとは対照的な弱い光であった。
半数以上の33カ国の普及率が50%以下であり、30%以
2014年現在のアフリカの人口は約12億人であるが、
下の国が22カ国ある(図表1)
。電力普及率100%とい
北アフリカの電力普及率は高いのに対して、サブサハ
う国もあるが、それらは北アフリカに集中しており、
ラ・アフリカの10億人の約40%、4億人は電力のない
サブサハラ・アフリカ諸国の電力普及率に限ると30%
暮らしをしている。
を下回る。10億人を擁するサブサハラ・アフリカの発
電力普及率の低いアフリカで、多くの地域経済共同
電容量は約7万MWとされているが、技術的な問題か
体(REC)が形成されるのに伴い、域内で電力プール
らそのすべてが稼働するということはなく、実際には
(電力取引所)を導入するようになった。現在アフリカ
4万5000MW程度、すなわち、人口4500万人のスペ
には5つの電力プールが存在するが、まだプールを利
イン1カ国とほぼ同じ程度が稼働しているものと考え
用した電力取引量はきわめて少ない。5つの電力プー
られる。サブサハラ・アフリカの1人当たり電力消費
ルの中で、北アフリカのCOMELEC(マグレブ電力
量124kWh /年は100ワットの電球1個を1日3時間
委員会)はヨーロッパおよびアラブ諸国との結びつき
使う量にすぎない注1。
を強めようとしており、サブサハラ・アフリカとは別の
サブサハラ・アフリカは2000年代に政治的に安定す
観点から検討する必要がある。そこで、以下にサブサ
るようになり、資源価格の高騰、外国直接投資の受入の
図表1 アフリカ諸国の電力普及率(2012 年)
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
リビア
モロッコ
モーリシャス
チュニジア
セーシェル
エジプト
アルジェリア
ガボン
南アフリカ
カーポヴェルデ
コモロ
赤道ギニア
ガーナ
ギニアビサウ
サントメ・プリンシペ
セネガル
ナイジェリア
コートジボワール
カメルーン
ジブチ
ボツワナ
ナミビア
スワジランド
コンゴ共和国
ジンバブエ
ベナン
アンゴラ
エリトリア
ガンビア
ソマリア
スーダン
トーゴ
エチオピア
ギニア
マリ
ケニア
ザンビア
モーリタニア
レソト
モザンビーク
ウガンダ
ルワンダ
コンゴ民主共和国
タンザニア
マダガスカル
ニジェール
シエラレオネ
ブルキナファソ
中央アフリカ
リベリア
マラウィ
ブルンジ
チャド
南スーダン
0
出所:World Bank ホームページ
18 2016.5
アフリカ 特集
増加などにより5%を超える高い経済成長を遂げた注2。
年、各地域経済共同体は次項で述べるような電力プー
その結果、電力需要が増加したが、既存の電力設備の
ルを設立し、域内での電力供給を安定的に行うととも
老朽化とメンテナンス不足による停電が頻発した。また、
に、競争市場を通じて安い電力を供給する規模の経済
政府がコストに見合わない安い電力料金を設定してい
を目指すようになった。
るため、電力事業は赤字であり、新規投資は進まず、
供給が需要に追いついていかない。こうしたサブサハ
ラ・アフリカの電力セクターや進出企業が直面している
問題点をまとめると以下の通りである。
⃝老朽化した電力設備(発・送・配電)とメンテナン
ス不足により設備の稼働率が低く(送電ロスは25%
に達する)
、停電が頻繁に起こる。
⃝化石燃料の場合、燃料コストが高く、電力会社の負
担が増す。水力を含む再生可能エネルギーの場合
は、時期により発電量が変動するため、安定的な発
電量を確保することができない。
注1:KPMG, Sub-Saharan Africa Power Outlook 2014
注2:世界銀行、World Development Indicators 2014によると、サブサ
ハラ・アフリカの1999年から2010年までの平均成長率は5.5%(南ア
フリカを除くと6.5%)であり、他の発展途上国を1%ポイント上回った。
注3:たとえば米国は2013年にオバマ大統領がアフリカを歴訪した際に
“Power Africa”というプログラムを打ち出し、5年間、70億ドルを投
じて1万MWの発電所を建設し、2000万人に新たに電力を供給する
予定である。
2. サブサハラ・アフリカの電力プール
図表2はアフリカにおける電力プールを示している
⃝加えて、電力価格が低く抑えられていること、電力料
(あわせて後掲図表3の左図を参照)
。プール内での電
金の回収が不十分であることから電力会社(多くの
力取引量はまだ少なく、たとえば北欧4カ国が実施し
場合は公営)は赤字経営となり、新規投資が難しい。
ているノルドプールでの取引が域内電力消費量の77%
⃝サブサハラ・アフリカの多くの国で都市化が進み、
にも達している注4 のに対して、せいぜい1桁台の水準
電力普及率は増加しているが、地方の電力普及率は
依然としてきわめて低い。
にとどまっている。
アフリカにおける最初の電力プールは1995年に設立
⃝いくつかの国で民間部門の電力部門への参入を促進
された南部アフリカ電力プール(SAPP)であり、欧
するためのPPP法などの法制度を策定するように
米以外では初の電力プールである。SAPPについては
なったが、電力料金設定が規制されているなど、広
以下で説明するが、プール内競争市場での取引量はア
義の投資環境の不備から民間部門の参入は進んで
フリカの電力プールの中で最も高く注5、また唯一、競
いない。
争市場であるスポット市場での取引を行っている。
⃝環境保護のための国際的な枠組みに呼応した環境政
いずれの電力プールもメンバーの中に圧倒的な発電
策を実施するようになり、発電所は環境に優しい設
容量を有する国(電力会社)が存在する。SAPPは南
備を導入する必要から投資コストが増加している。
アフリカでシェア76%(2013 /14)
、COMELECはア
⃝アフリカの高い成長ポテンシャルを見越した直接投
ルジェリアの42%(2009)
、EAPPはエジプトの71%
資が増加しているが、それら事業の多くは現状、安
(2012)
、WAPPは ナ イ ジ ェ リ ア で60 %(2010)
、
定的に電力供給を受けられないため、自家発電設備
CAPPはコンゴ 民 主 共 和 国( 以 下、DRC)の39 %
を備える必要があり、投資コストがかさんでいる。
⃝いくつかの国で大規模発電所設備の計画があるが、
資金調達面においてバンカビリティ(融資適格性)
に問題があり、計画は進展していない。
これらの問題点を抱えるサブサハラ・アフリカの電
(2011)である。
(1) CAPP /PEAC(仏語)
(中部アフリカ電
力プール)
CAPPは 中 部 ア フ リカ 経 済 共 同 体(ECCAS /
力セクターであるが、最近になって多くの国、機関の
CEEAC)傘下の機関であり、①域内諸国の安定的電
支援を受けて、制度改革を行うようになり、徐々に新
力供給、②電力普及率と供給量の拡大、③域内電力
規投資が行われるようになった 。新規投資の形態と
システムの質の向上と安定、を目指して2003年に設立
しては、規模の経済を享受するための大規模投資と、
された。13年には設立10周年を迎えて報告書が出され
地方の電化のための小規模オフ・グリッド投資が考え
たが、当初の目標はほとんど達成されていないこと、
られる。小規模市場が多いアフリカの場合、規模の経
新たに環境問題や再生可能エネルギー利用といった
済は国境や地域をまたいで電力取引を行うことによっ
テーマが持ち上がったことが指摘されている。
注3
て実現する。これまで、国境を超えた電力取引は主と
CAPPの主な電源は水力であり、既存のインガ水力
して2国間のバイラテラル契約で行われてきたが、近
発電所(第1インガ351MW、第 2インガ424MW)
2016.5
19
図表2 アフリカにおける電力プール
単位
CAPP
中部アフリカ PP
加盟電力会社数
WAPP
西部アフリカ PP
10
設立年
EAPP
東アフリカ PP
SAPP
南部アフリカ PP
14
2003
11
2001
COMELEC
マグレブ電力委員会
12
2005
1974
発電容量(2010)
GW
5.6
10.0
38.0
54.0
発電量(2010)
TWh
20
50
160
320
144.9
260.6
403.7
160.5
人口(2010)
一人当たり発電量
百万人
kWh 電力取引量の割合
138.0
%
191.9
0.2(2009)
396.3
6.9(2010)
6
1995
60.0
260
85.4(除くエジプト)
1,993.8
0.4(2008)
3,044.5
7.5(2010)
6.2(2009)
ルワンダ
ベナン
ブルンジ
南アフリカ
エジプト
ガボン
ブルキナファソ
ジブチ
ジンバブエ
アルジェリア
赤道ギニア
コートジボワール
DRC
ザンビア
リビア
DRC
ガンビア
エジプト
タンザニア
モーリタニア
コンゴ
ガーナ
エチオピア
スワジランド
モロッコ
チャド
ギニア
ケニア
ナミビア
チュニジア
カメルーン
ギニアビサウ
ルワンダ
モザンビーク
中央アフリカ共和国
リベリア
スーダン
マラウィ
ブルンジ
マリ
タンザニア
レソト
アンゴラ
ニジェール
リビア
DRC
ナイジェリア
ウガンダ
ボツワナ
セネガル
アンゴラ
シエラレオネ
トーゴ
注:網かけは重複してメンバーとなっている国(実際は電力会社)
出所:IRENA (International Renewable Energy Agency), AFRICA POWER SECTOR: Planning and Prospects for Renewable Energy 2015、
ICA (The Infrastructure Consortium for Africa), Regional Power Status in African Power Pools Report 2011、UN, Demographic
Yearbook、World Bank, World Development Indicators よりJOI作成。
のリハビリ注6と第3インガ(4800MW)の新設プロジェ
理し、電力の域内標準化を図るため、地域電力規制機
クトが計画されている。グラン・インガと呼ばれるプ
関としてECOWAS地域電力規制機関(ERERA)を
ロジェクト総体の発電容量は4万MWにのぼり、世界
設立した。
最大の水力発電所計画である。
インガ水力発電所のあるDRCがCAPP内の主な電力
かなめ
WAPPの要はナイジェリアであるが、石油・天然ガ
スの輸出国であるナイジェリアの1人当たり電力消費
輸出国であり、送電線がDRCとコンゴ共和国、ザンビ
量は小さく、電力普及率は41%にとどまる(2012年)
。
ア、そしてSAPP(ボツワナを経て南アフリカに至る)
しかし、ナイジェリアはガーナ、コートジボワールと
をつないでいる。その他、DRCは隣接するブルンジ、
ともにWAPPの電力輸出国であり、ベナン/トーゴ、
ルワンダ、中央アフリカ共和国にも電力を輸出している。
ブルキナファソ、ニジェール、マリ、セネガルほかが
注4:Nord Pool, Annual Report 2012
注5:競争市場での取引の割合は日により、月によって異なり、2014年度(4
月~ 2015年3月)の平均は6%であったが、8月だけを取ると8.8%
であった(SAPP, Annual Report 2015)
。
注6:日本のJICAが第2インガの改修を無償協力で行うこととなっている。
(2) WAPP(西部アフリカ電力プール)
WAPPは1999年 に 西 ア フ リ カ 経 済 共 同 体
(ECOWAS)に設立された機関である。WAPPには
19電力会社が加盟しており、平均電力普及率は23%と
輸入国となっている。なお、ガーナとコートジボワー
ルは輸出国であるとともに、輸入国でもある。
WAPPの主なプロジェクトは、海岸線に沿ってナイ
ジェリアからベナン、トーゴ、ブルキナファソ、ガーナを
経てコートジボワールに至る送電線の建設、地域西部の
ガンビア、ギニア、ギニア・ビサウ、リベリア、マリ、セ
ネガル、シエラレオネを結ぶ送電線の建設である。
(3) EAPP(東部アフリカ電力プール)
他の電力プールと異なり、EAPPは当初、地域経済
アフリカ域内で最も低く、いずれも国土面積の小さな
共同体をベースとはせず、2005年に7カ国注7首脳が集
国の集まりであるため、メンバーが協力して電力開発
まり、MOUを締結して設立された。その後、2006年
に当たり、各ナショナル・グリッドをつなげて中・長
のCOMESA(東南部アフリカ市場共同体)の首脳会
期的には市場統一を実現することを目指している。
議でEAPPをCOMESAの機関とすることで合意した
ECOWASは2008年に電力のクロスボーダー取引を管
が、創立の経緯からEAPPはオープンな組織であり、
20 2016.5
アフリカ 特集
後にタンザニアとリビア、そしてジブチとウガンダが
加盟し、11カ国となった(前掲図表2参照)
。
EAPPの中ではエジプトの存在が総発電容量の71%
前日取引(スポット)市場を設立し、15年4月からは
(現物)先渡し市場を導入するようになった。競争市
場における電力取引量は2014年度には50万8264MWh
を占め、他の国を圧倒しているが、現状、リビアとの
に達したが、取引全体に占める割合は6%にすぎず、
間に送電線があるのみ
で、メンバー国との連携は今
残りの94%はバイラテラル市場で行われた。競争市場
後を待つことになる 。エジプトのほか、EAPPの電
への期待は電力価格の低下であるが、14年度の市場
力輸出国はCAPPのメンバーでもあるDRCであり、ル
決済価格は需要が供給を上回ったため、前年度の5.7
ワンダとブルンジという電力小国に接する東部で、両
¢/ kWhに対して6.7¢/ kWhとなった。
注8
注9
国に電力を輸出している。
EAPPの主な連携プロジェクトとしては、エジプト
=スーダン=エチオピアを結ぶ南北回廊と、DRC=ウ
ガンダ=ケニア、DRC=ルワンダ=タンザニアの2つ
の東西回廊がある。
(4) SAPP
SAPPは2016~17年にかけてZIZABONA(ジンバ
ブエ=ザンビア=ボツワナ=ナミビア)と称する国際
ふ せつ
送電線を敷設する予定である。
おわりに
図表3が示すアフリカの送電網図はいずれも将来計
SAPPは1995年にSADC(南部アフリカ開発共同体)
画である。左の図からは各地域電力プールが地域内で
首脳会議でその設立が決まったことになっているが、
電力網を張り巡らそうとしている様子がうかがえ、右図
実際には南アフリカの電力公社Eskomがその生みの
からは2040年にはアフリカ全体が電力網によって結ば
親であるといわれる。南アフリカはSAPPの発電容量
れる様子がわかる。インフラの未整備は投資を妨げる
の74%、電力消費量の84%を占め、SAPPの主な電力
要因ではあるが、逆に投資機会を提供しているともい
輸出国であるが、同国はBRICS(新興工業国)の一
える。電力はすべての事業活動の源であり、最後のフ
角を成し、電力需要が旺盛なことから電力輸入国でも
ロンティアとされるアフリカ大陸、中でもサブサハラ・
ある。メンバーの中、ボツワナ、レソト、ナミビア、
アフリカでの電力インフラ整備は喫緊の課題である。
スワジランドはそもそも電力供給のほとんどを南アフ
リカに依存してきた。
SAPPはノルドプールをモデルに競争市場を設立し、
まだわずかではあるが、競争市場での取引を行うよう
になった。すなわち、2001年にそれまでの相対取引に
加えて、短期電力市場(STEM)を設立、09年には
注7:ブルンジ、DRC、エジプト、エチオピア、ケニア、ルワンダ、スーダ
ンの7カ国。
注8:ほかにヨルダン、シリア=ヨルダンとの間に送電線が敷設されている。
注9:2016年2月現在、エジプトはナイル川上流のスーダンとエチオピアの
発電所建設プロジェクトに反対しており、同問題が片づくまでEAPP
を脱退するという報道がある(http://www.esi-africa.com/news/
egypt-resigns-from-eapp-until-concerns-over-nile-areresolved/)
。
図表3 アフリカの電力プール(計画を含む、左図)と将来の連携図(右図)
注:NEPAD:アフリカ開発のための新パートナーシップ
出所:http://www.geni.org/globalenergy/library/national_energy_grid/africa/africanelectricitygrid.shtml および
アフリカ開発銀行アジア事務所「インフラストラクチャーアウトルック2040」
(The PIDA Energy Vision)
2016.5
21
新興国マクロ経済 WATCH
モザンビークの光と影
——成長への期待と足元の不安——
古高 輝顕
国際協力銀行 外国審査部
参事役(アフリカ担当)
モザンビークという国
族抵抗運動(Renamo)との間で内戦が勃発、1992年
まで内戦は継続した。独立戦争から数えて30年程度、
南部アフリカの交通の要衝ヨハネスブルグを発つ
国が戦争状態にあったモザンビークの経済は、この間、
と、1時間後にはモザンビークの首都マプトの表玄関
停滞する。英国の支援団体が2015年にモザンビークの
マプト国際空港に到着する。とはいっても、南アフリ
地雷の完全撤去を発表したが、これは内戦の負の遺産
カ共和国の東北に位置する同国まで、日本から欧州経
の1つが取り除かれた喜ばしいニュースであるととも
由で直接行くとなれば、24時間超の長旅となり、やは
に、地雷の除去までに20年以上かかったこと自体が内
りモザンビークは日本から遠い国である。中国の援助
戦の負の影響の大きさを物語る。
で建設された空港から市内に入ると、ヨハネスブルグ
と比べて、中心部はこじんまりとして、高層ビルも少
図1 モザンビークの地図
ない。それもそのはずで、南アフリカの1人当たり所
得7190ドル(2013年)に比べ、モザンビークは同590
ドルとその1/10以下である。国連の分類によれば、後
発開発途上国(LDC:Least Developed Countries)
に分類され、要は最も貧しい国のグループに入ってい
る。それでも、市内をドライブすると、ポルトガルの
ロヴマ沖合鉱区
旧植民地らしくコロニアルな建物が点在しているのと
合わせ、建設中のビルも目に入り、ショッピングセン
おう か
ターやオフィス街の中心部では、高成長を謳歌するア
フリカ諸国に共通する活気も感じられる。
出所:Google Map
しかし、モザンビークは、そこから目覚ましい成長
を遂げる。1991~ 2000年の平均経済成長率が6.5%、
マプト国際空港ターミナル入口:日本の地方空港のイメージに近い。
2001~10年は年平均7%超、11年以降も毎年6~7%
台の高成長を維持している。
モザンビークの歴史を紐とくと、同国はモザンビー
おもしろいことに、モザンビークのこのような高成
けん
ク解放戦線(Frelimo)が主導した独立戦争を経て、
長の裏側には、大規模プロジェクトが代わる代わる牽
1975年にポルトガルから独立を果たしている。しかし、
引役として存在してきた。古くは2000年代はじめから
そ の 後 ソ連 など の 支 援 を受 け 政 権 の 座に 就 いた
操業しているモザール社によるアルミニウム精錬事業
Frelimoと、南アなどの支援を受けたモザンビーク民
であり、2000年代後半から開発が始まった北部テテ州
22 2016.5
いん やく
アフリカ特集
における石炭開発事業であった。現在、モザンビーク
表2 LNGプロジェクトのモザンビーク経済への影響
経済にとって最も影響の大きいプロジェクトは、タン
LNG生産開始
2021年
ザニア国境に連なる北部カーボ・デルガド州沖合のロ
LNG生産ピーク
2028年
2020年代半ば:
LNG部門が50%超(2013年;鉱業で3.6%)
総投資額
1000億ドル超(GDPの6 ~ 7倍)
成長率
2021 ~ 25年:年平均24%(経済全体)
2028年以降:年平均3 ~ 4%(経済全体)
財政収入
LNGからの総財政収入5000億ドル(2045年まで)
2020年代後半:LNG部門が財政収入の50%超
ヴマ沖合鉱区の天然ガス開発である。
LNGプロジェクトが生みだす破格の成長
期待
図2 天然ガス埋蔵量(単位:兆立方フィート)
⑯エジプト
⑮マレーシア
⑭カザフスタン
⑬インドネシア
⑫イラク
⑪中国
⑩アルジェリア
⑨ナイジェリア
⑧ベネズエラ
⑦アラブ首長国連邦
⑥トルクメニスタン
⑤サウジアラビア
④アメリカ
③カタール
②イラン
①ロシア
77.2
83.0
85.0
108.0
111.0
141.0
159.0
182.0
195.0
215.0
265.0
287.0
308.0
0
200
400
経常収支
モザンビーク
出所:IMF資料より筆者作成
IMFは当推定にあたり、ガスの販売価格の低下リス
890.0
600
~ 2020年:経常収支赤字がGDP比90%超
2025年:経常収支黒字化
2020年代半ば:LNG輸出が全輸出の75%
(ガス輸出2014年:8.7%)
1187.0
1688.0
800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800
出所:International Energy Statistics, August 2014より筆者ほか作成
ク、税制を含め各種歳入の仕組みが想定と異なること
による財政収入変動リスク、政府による経済のミスマ
ネージメントリスクなどを指摘しており、あくまでFID
のタイミングを含めすべてが順調に行った前提での試
モザンビークで今後開発が期待されるロヴマ沖合鉱
算とはなるが、その場合、モザンビークでは2020年代
区の 埋 蔵 量はナイジェリアに匹 敵 する180兆 立 方
後半にLNG部門がGDPと財政収入の50%超、輸出の
フィートに達するとみられ、これをLNGとして輸出す
75%を占めることになり、急速に資源国化することが
ることで、モザンビークは、今後、アフリカで1~2
想定される。同時に、2020年代前半は年平均24%と破
位を争うガス輸出国となるポテンシャルを秘めている。
格の成長を遂げるとみられている。1997~2006年の世
界の年平均成長率が4.0%、地域別に最も成長率が高
いアジア(日本除く)でも同7.1%であるので、モザン
表1 ロヴマ沖合鉱区Area 1、Area 4の出資者
Area 1
Andarco(米)
Area 4
26.5% ENI(伊)
50%
三井物産(日)
20% CNPC(中)
20%
ONGC(印)
16% Galp Energia(葡)
10%
ENH(モ)
15% KOGAS(韓)
10%
10% ENH(モ)
10%
Bharat Petroleum(印)
PTTEP(タイ)
Oil India(印)
8.5%
4%
出所:各種資料より筆者作成
ビークはこの時期、ざっと世界の5~6年分、アジア
の3年分を1年で成長することになる。このようなイ
ンパクトのあるプロジェクトが控えるため、モザンビー
うるお
クは一躍、注目の的となり、直接投資で潤ってきた。
しかし、ここに来て、LNGプロジェクトの将来も万
事快調とばかりはいえなくなってきた。政府の対応の
遅さとLNG需給の緩みや石油ガス価格の低迷がLNG
事業の早期実施への逆風となっている。もともと、政
ロヴマ沖合鉱区のArea 1とArea 4では、これま
府にはこのような巨額のガス開発、LNG事業の経験が
で最終投資決定(FID)に向けた事前調査が進められて
ない。そのため、国際機関や参加企業などが、マスター
きたが、2015年から持ち越しとなったFIDがいよいよ
プランの策定からLNG事業そのものの理解促進、ガス
2016年になされるのではと期待されている。出資者の
収入の財政マネージメントに至るまでさまざまな支援
顔ぶれは表1のとおりだが、Area 1は米Andarco社、
を行ってきたが、政府の対応は早いとはいえない。政
Area 4では伊ENI社がオペレーターとなり、これに
府は、ガス開発のマスタープランを2014年6月に承認
三井物産をはじめとして、LNG需要の大きいアジアの
し、ようやく基本的な方針・体制を決定したが、国内
パートナーが加わっているのが特徴である。
でのガス活用の詳細、新規鉱区の入札、LNG収入の
IMFは2015年12月、両プロジェクトのFIDが2016
財政マネージメント、国内で建設や運営に対応できる
年半ばに行われることを前提に、LNGプロジェクトの
労働者の確保・育成など課題は山積している。特に目
経済への影響を表2の通り推定、発表している。
の前の課題としてはArea 1およびArea 4の事業計
さんせき
2016.5
23
画や契約の最終的なレビュー・交渉をできるだけ早期
ンチンなど一般に経済危機と認識されていた国が主で
に終わらせることが必要である。2016年2月にArea
あることから、高成長を継続するモザンビークのSD格
4ではENIが第1フェーズの開発計画につき政府承認
付与は一種のショックともいえるだろう。
が得られた旨発表するなど、一部前進もみられるが、
FIDまでまだ道のりは長い。
この債券交換の背景には、もともとモザンビーク政
府の「残念な」債券発行があった。2013年9月にモ
もうひとつがLNG需給の緩みや石油ガス価格の低
ザンビーク政府は国際資本市場で初めて、8.5億ドル
迷である。インド洋に面したモザンビークでは、大消
の外債を発行したが、これは新たに設立された国営の
費地から地理的に離れており、販売先としてはアジア
マグロ会社EMATUM社が発行する債券への政府保
が有力視されてきた。しかし、アジア市場をめぐって
証であった。当該資金はEMATUM社の漁船購入や
は、たとえば大口の日本や韓国など、モザンビークが
政府の海上警備費用に充てられたといわれているが、
生産を開始する2021年の段階では、現状の見通しでも
高成長の傍らでインフラ整備のための投資を必要とし
需要を十分賄え、需要家は切迫していないとの見方も
ているモザンビークにとって、このような費用を初の
ある。一方で、2020年代中盤以降も、カナダ、豪州、
起債で調達する必要があるかは疑問の残るところであ
タンザニアなどがLNGの供給を増加させることが見込
り、2014年の選挙の前年に起債され、翌年に財政支出
まれている。特にタンザニアとは地理的にも競合関係
が拡大した経緯からも、首をひねる向きが多い。結局、
にあると考えられるが、2016年中にFIDを行った場合、
元本8.5億ドルの返 済については政 府が 5 億ドル、
モザンビークの生産開始はタンザニアに数年先立つ見
EMATUM社が3.5億ドルを負担することとなったが、
込みであることから有利な位置にあり、この点でもモ
2015年から元本の一部償還がはじまるとEMATUM
ザンビークは早めに販売先を確保し、生産を開始した
社は債務を返済できずに政府が代わりに支払うことと
いところである。しかし、LNG需給の緩みは、販売先
なり、今度は政府の財政資金繰りが圧迫されたことが、
まかな
と価格の早期確定にはネガティブに働くとともに、足
かたわ
き さい
「債券交換」提案の背景とされる。
元の石油ガス価格の低迷は石油会社の投資余力を低
今回の政府の「債券交換」の提案は、当面の財政
下させるなど、最近の市場をめぐる動向はスケジュー
の資金繰りを緩和するため、2020年9月の満期まで行
ルに負の影響を与えるともみられる。実際、もともと
われる予定だった元本の分割返済を、2023年を満期と
2015年中と想定されていたFIDは、結局両プロジェク
する元本一括償還に変更する代わりに、クーポンを当
トとも2016年に持ち越されている。
初の6.305%から10.5%に引き上げ、発行価格も低くし
とはいえ、両鉱区とも、政府や関係者は2016年内の
て、投資家に配慮を行ったものである。それでも、格
FIDを目標とすることで一致しており、マーケティン
付機関にはD格を付与され、本債券交換は結果的にモ
グやファイナンスなどを固めつつ、政府と諸契約に合
ザンビーク政府にとっては高い買い物となった。また、
意し、2016年内にFIDを行うことが関係者の最大の課
モザンビーク政府はこれまで、IMFとの間で、資金供
題となっている。なお、Area 4で50%のシェアをも
与を受けないもののIMFと合意した政策指標を遵守す
つENIは権益の一部を売却する意向を表明しており、
ることにより市場の信認を得る効果をもつPSI(Policy
これも時間がかかるようであればスケジュールの遅延
Support Instrument)というプログラムを実施し、
要因となる。
そのお墨付きをもらうかたちでマクロ経済運営への信
格下げショック~「残念な」債券発行のつけ
2016年4月1日、格付会社スタンダード・アンド・
頼を得ていたが、本債券発行に加え、2014年に赤字
幅がGDP10%超に急拡大した財政運営によって、マク
ロ経済運営の信頼も損ねるかたちとなり、投資家や金
融機関のモザンビークの経済に対する見方は厳しく
プ ア ー ズ(S&P) は モ ザ ン ビ ー ク の 格 付 を「SD
なっている(なお、モザンビーク政府はIMFとの間で、
(Selective Default)
」に引き下げた。これは、モザン
2015年12月にスタンドバイ・クレジット・ファシリ
ビーク政府が2016年3月に提案した政府保証債の「債
ティー(SCF、期間1 年 7カ月、283百万ドル相当
券交換」について、これがデフォルトに相当すると
SDR)を開始している)
。不透明な債券発行のつけは
S&Pが判断したためであるが、ここ数年、格付機関か
大きいものとなった。
らデフォルト格あるいはデフォルトに近いC格を付与さ
なお、債券交換については債券保有者の81.7%が応
れたのは、ギリシャ、キプロス、ウクライナ、アルゼ
諾し、元本返済が先延ばしとなることで、モザンビー
24 2016.5
アフリカ特集
ク政府の当面の資金繰りは少し息をつくかたちとなっ
期待できないことに加え、ドナーからの、資金使途を
た。また、格付会社でも今回の債券交換がデフォルト
限定せず、財政赤字の穴埋めとしても機能する一般財
に該当するかについては考え方の違いがみられ、フィッ
政支援の援助が減少することも見込まれることから、
チは今回の債券交換はデフォルトにはあたらないとし
歳入、歳出両面で財政の健全化が求められる。また、
て、D格には引き下げず、
「B(ネガティブ)
」としている。
国内の銀行部門はGDPの4割程度にとどまり、財政赤
字を国内でファイナンスする基盤は弱い。そのため、
成長期待の一方で、経済の課題は山積
今後5~10 年をどう乗り越えるか
IMFの想定では、公的債務を対GDP比60%台で安定
化させるためには、財政赤字を同4%程度に今後抑制
する必要がある。
モザンビークのマクロ経済指標は特徴的である。成
長率はアフリカ諸国の中でも高い水準にある一方で、
て こ
モザンビークは遠くない将来、LNG輸出を梃子に経
済成長を一層加速しうる国である。ただし、足元では、
マクロ経済運営においてもLNGプロジェクトにおいて
も不安が見え隠れしている。2016年内にFIDにこぎ着
図3 モザンビークの主要な経済指標の動向
12.0%
120.0%
けるとともに、その経済効果が大きく効いてくる2020
10.0%
100.0%
年代半ばまで、財政収支・公的債務と国際収支・対外
8.0%
80.0%
債務をどう持続的にマネージするか、今はモザンビー
6.0%
60.0%
ク政府の正念場でもある。
4.0%
40.0%
2.0%
20.0%
0.0%
2011
2012
2013
2014
2015
0.0%
経常収支赤字
(GDP 比、右軸)
直接投資(GDP 比、右軸)
公的債務
(GDP 比、右軸)
対外債務(GDP 比、右軸)
成長率(年率、左軸)
財政赤字(GDP 比、左軸)
出所:IMF資料より筆者作成
経常収支赤字はGDP比30 ~ 40%台と非常に大きい。
これらの多くは外国直接投資でファイナンスされてお
り、大規模プロジェクトのため設備などの輸入が拡大
する一方、直接投資が流入し、経常収支赤字をファイ
ナンスする構造であるが、最近は大規模プロジェクト
に起因しない経常収支赤字も拡大しているとみられ
る。直接投資の不足分は対外借入でファイナンスする
構造となっており、対外債務の一部には大規模プロ
ジェクトに関して現地会社との間の親子ローンもある
とみられるものの、その残高はGDP比100%超と高い。
また、公的債務も同70%超に達し、国際機関などから
のソフトローンの比率が高いとはいえ、その大部分は
対外債務であるため、政府は将来それらの債務を外貨
で返済しなくてはならない。
しかし、LNGプロジェクトが予定どおり進んだとし
ても、経常収支や財政収支が黒字化するのは2020年
代半ばとみられる。特に財政面では、これまで一過性
のキャピタルゲイン税を単年度の収入として予算を組
んできたことにより、赤字を抑制できていた面がある
が、キャピタルゲイン税は常時発生する収入としては
マプト市内のインド洋を臨む美しい海岸線。
観光資源も未開発である。
【追記(2016年5月1日)
】
本稿脱稿後の2016年4月15日、IMFはモザンビーク政府に10
億ドル超の債務の報告漏れがあることを発表した。詳細は、今
後のモザンビーク政府からの報告などに拠ることとなるが、10
億ドル超という多額の政府保証債務が加わり、モザンビークの
債務負担は一層重いものとなる一方、IMFとのSCFからの資金
引出しや世銀など他のドナー支援にもネガティブな影響が生じ
ることにより、国際収支や財政へのプレッシャーが大きくなるこ
とが見込まれる。5月1日にはフィッチが本債務の報告漏れを
受け、格付を「B」から「CCC」に引き下げた。モザンビーク
政府は早急に債務の報告漏れ問題の全容を明らかにし、国際金
融界からの信用を取り戻すとともに、足元の厳しい経済状況を
踏まえ、適切なマクロ経済政策や国営企業に対する債務保証の
管理が求められる。
※著者略歴:1990年日本輸出入銀行(現国際協力銀行)入行。
一橋大学経済学部卒業、英ウオーリック大学修士(経済政策)
。
リーマンショック後、IFCと共同で途上国の銀行に出資する
ファンド案件に携わり、2012年末より外国審査部でアフリカ
諸国を担当。ポリティカルリスクおよび途上国地方政府の信
用力にかかる審査手法などの調査も行う。
2016.5
25
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