特別寄稿 『 アクトビラ のネーミングの由来』 株式会社ジザイズ 代表取締役社長 横井 惠子 「テレビをネットにつなぐだけで、良質で厳選された情報・動画コンテンツを楽しめる」。 私がその新サービスの名称開発をお引き受けしたのは、今からおよそ5年前のことでした。 日本のテレビ産業を支える名立たるメーカー6社が集結して立ち上げる画期的なインターネット・ ポータルサービスに、私は、テレビ新時代の幕開けを感じながら、いったいどんな名前が ふさわしいのかと思案することになったのです。 ポータル、すなわち「入り口」。利用者は、ここを入り口として、新たな世界に行くことができる。 では、「入り口」をどのような言葉で表現したらよいのだろうか。 玄関、エントランス、ドア、門、戸、扉……… 頭の中で、さまざまな言葉を思い巡らしていく中で、どうしても気になる言葉が一つありました。 それは、「扉」。 どことなく、「テレビ」という音感と似ているようで、今回のネーミングにおける重要なキーワードに なる、と思えたのです。 私は、気になる言葉に出会うと、まずは紙に書くことが習慣となっています。 頭で考えているイメージが、文字という「形」に置き換わると、目で確認でき、新たな可能性を 発見できることがあるからです。 「扉」、「トビラ」、「とびら」… 「TOBIRA」、「TOBILA」、「TOVIRA」、「TOVILA」 ビは「BI」よりも[VI]、ラは[RA]よりも「LA」と表したほうが、テレビとの関係性をより強く感じ 取れると思われました。 『テレビ(TELEVI) の トビラ(TOVILA)』 確かに両者には文字の共通性があり、新サービスを象徴する言葉として使えそうです。 入り口を「TOVILA/トビラ」で表現する、という方向性が固まったところで、次は、この言葉が 生み出す価値に磨きをかけながら、ゴールに向けていかに展開していくかという課題に取り組み ました。 「その扉がどうなるのか」、「その扉をどうするのか」。 2 扉というのは、それを開けることによって、初めてその先へと行けるものです。 このサービスは、まさに「テレビの新時代を開く扉」と言えるでしょう。 「開く扉」 これを「あくとびら」と読むと、「あくと」は英語の「act(アクト:行動する)」に置き換えることが できます。 そうだ!「act(開くと)」と「TOVILA/トビラ」を繋げてみればどうだろうか!! T の文字で終わる「act」と、 T の文字から始まる「TOVILA/トビラ」。2つの言葉を T の 部分で接合して、 ACT + TOVILA → ACTOVILA/アクトビラ さらに、 TV を際立たせるために、ACTOVILAの O を外し、TVのみを大文字としてみました。 扉 (トビラ) ① アルファベットに変換する TOVILA ② 「開くと」を act”に置き換える act (開くと) + TOVILA ③ 「act」と「 TOVILA」を T”で接合する ACTOVILA アクトビラ ④ 中央の o”を外し、さらに「TV」以外の アルファベットを小文字に変換すれば、 「TV」の存在を強調させることができる! acTVila アクトビラ 3 こうしてあらためてこの「acTVila」の名前を紙に書いてみると、どこか文字の並びが、「active」 に 似ています。さらに反対側から読むと「alive」に似ています。 a c T V i l a active alive 「active」と「alive」 これらは、いずれも「活き活きとした」という意味をもつ英語であり、まさに新サービスのコンセプト にふさわしいと思いました。 そこで、 active & alive というキャッチフレーズを補い、「テレビ(TV)を介したネットワークへの トビラ(扉) として、アクティブ(active)かつアライブ(alive)な情報サービスを提供し、双方向型 のコミュニケーション世界(village)を創造していく。」 というステートメントとともに、「acTVila(アクトビラ)」を提案させていただきました。 アナログ放送の終了がいよいよ間近に迫り、テレビ環境が大きな変化を遂げる中、次にどんな 扉 を開けてくれるのか、「acTVila(アクトビラ)」の今後を心から楽しみにしております。 最後になりましたが、こうしたブランドネーム開発に携わることができますのも、「平穏な日常」が 前提になってのことだと、今回改めて思い知らされております。 どうか一刻も早く、被災された方々が「平穏な日常」を取り戻すことができますよう、心よりお祈り 申し上げます。 ■プロフィール 横井惠子(よこい・けいこ) 1977年、大阪外語大学(現大阪大学)卒業。 1984年「株式会社ジザイズ」を設立。 2002年「ブランドブレインズ株式会社」を設立。 現在、両代表取締役社長。 主な社名開発実績として「NTT DoCoMo」「りそな銀行」「あいおい損保」、 ブランド名開発実績として「au(KDDI)」「XXIO/ゼクシオ(ダンロップ)」などがある。 著書に「ネーミング発想法」(日本経済新聞社)、 「最新ネーミングのための8か国語辞典」(三省堂)他。 4
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