日本病院薬剤師会東海ブロック・ 日本薬学会東海支部 合同学術大会 2014

日本病院薬剤師会東海ブロック・
日本薬学会東海支部
合同学術大会 2014 講演要旨集
第24回 日本病院薬剤師会東海ブロック学術大会・平成26年度 日本薬学東海支部例会
2014年11月 9 日(日)
会 場 静岡県立大学
■主 催:静岡県病院薬剤師会
日本薬学会東海支部
日本病院薬剤師会東海ブロック
目 次
組織委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
大会長挨拶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
開催概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
会場案内図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
ご案内 参加者の皆様へ ・・・・・・・・・・・・・ 10
座長・演者の皆様へ ・・・・・・・・・・・ 11
日程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
プログラム 1 .シンポジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2 .FD講演会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
3 .パネルディスカッション ・・・・・・・・・・・ 16
4 .日本病院薬剤師会会長講演 ・・・・・・・・・・ 18
5 .病院薬学セミナー ・・・・・・・・・・・・・・ 18
6 .ランチョンセミナー ・・・・・・・・・・・・・ 19
7 .共催セミナー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
8 .一般講演 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
9 .懇親会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
10.企業展示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
講演要旨
1 .シンポジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 2 .日本病院薬剤師会会長講演 ・・・・・・・・・・ 45
3 .病院薬学セミナー ・・・・・・・・・・・・・・ 49
4 .一般講演 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
1
組織委員会
大会長 川上 純一 浜松医科大学医学部附属病院
組織委員会
委 員 半田 哲郎 鈴鹿医療科学大学薬学部
奥田 真弘 三重大学医学部附属病院
遠藤 秀治 岐阜県総合医療センター
勝見 章男 愛知県厚生連 安城更生病院
野口 博司 静岡県立大学薬学部
野毛 一郎 沼津市立病院
松山 耐至 JA 静岡厚生連 静岡厚生病院
西尾 正行 公立森町病院
実行委員会
委員長 篠 道弘 静岡県立静岡がんセンター
副委員長 渡邉 学 コミュニティーホスピタル甲賀病院
塩川 満 聖隷浜松病院
山田 浩 静岡県立大学薬学部
委 員 出屋敷喜宏 鈴鹿医療科学大学薬学部
定金 豊 鈴鹿医療科学大学薬学部
賀川 義之 静岡県立大学薬学部
池谷 延房 焼津市立総合病院
北村 修 富士宮市立病院
堀内 保孝 静岡赤十字病院
鈴木 高弘 国際医療福祉大学熱海病院
渡邉 進士 浜松医療センター
森本 達也 静岡県立大学薬学部
江木 正浩 静岡県立大学薬学部
轟木 堅一郎 静岡県立大学薬学部
齊藤 真也 静岡県立大学薬学部
内田 信也 静岡県立大学薬学部
事務局 下見世久美子 静岡県病院薬剤師会事務局
2
大会長挨拶
日本病院薬剤師会東海ブロック・
日本薬学会東海支部合同学術大会 2014
開催にあたって
日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会 2014 大会長
川上 純一(静岡県病院薬剤師会会長/浜松医科大学附属病院教授・薬剤部長)
日本病院薬剤師会東海ブロックと日本薬学会東海支部は 2009 年度より合同で学術大会を開催してお
り、本年度は 6 回目になります。静岡県病院薬剤師会としましては 2010 年度以来 4 年振りに合同大会
を担当させて頂きますことを大変嬉しく存じます。開催にあたりまして、ご指導やご配慮を賜りまし
た組織委員会委員の先生方、準備や運営に多大にご尽力頂いた実行委員会委員の先生方、会場を提供
頂きました公立学校法人静岡県立大学と快くご協力頂きました同大学教職員の皆様方、そして日本薬
学会東海支部幹事の先生方と静岡県病院薬剤師会事務局に深く感謝申し上げます。共催・協力頂きま
した各企業・団体・業者の皆様にも心より御礼申し上げます。
第 6 回となる合同学術大会 2014 では「東海地区における薬学および病院薬学の発展と協調」を大会
テーマにしております。薬学教育のカリキュラム改訂に関する議論が深まり、薬学研究や臨床薬剤業
務の更なる進展が求められる中、薬学会と病院薬剤師会が共に発展し協調することの重要性を感じて
おります。特に東海地区は両会の会務運営に携わり活躍している関係者も多いことから、双方の会員
が興味を持てるような特徴ある合同大会を立案しました。
特別企画としては、日本薬学会の鈴木洋史副会頭に薬学教育(FD)講演をお願いしており(共催:
東海薬学教育コンソーシアム)、日本病院薬剤師会からも北田光一会長にご講演を頂きます。また、日
本薬学会東海支部教育シンポジウムの併催として「薬食研究の推進:基礎及び臨床研究の最前線」を
企画しています。これは静岡県立大学に新設された「薬食研究推進センター」での基礎及び臨床研究
に加えて東海地区における関連領域についても紹介・討議して頂く内容であり、病院薬剤師の皆さん
にも関心あるシンポジウムかと思います。そして、パネルディスカッション「徹底討論!東海地区に
おける薬学の将来展望」では、公開討論の形式で薬学会と病院薬剤師会を代表する関係者による建設
的な意見交換を行いたいと考えております。認定・専門薬剤師を目指す方やその指導者向けには病院
薬学セミナー「薬学的介入症例サマリーの作成ポイント」を企画しています。さらに、製薬企業の共
催によるランチョンセミナー(4 講演)と、医療材料企業との共催セミナー(抗がん薬等への曝露防止
対策)も行います。
一般演題(口頭発表)では、化学系・物理系・生物系・医療系薬学と病院薬学合わせて 160 演題の
ご応募を頂きましてありがとうございました。会場移動や時間帯も考慮し、同領域はまとめた上で応
募数の多かった病院薬学と生物系薬学については同じ薬学部棟内 2 会場に午前と午後で振り分けてい
ます。薬学部棟1階には休憩室もあり、その前のカレッジホールにて企業展示(共催:日本薬科機器
協会)を行いますので皆さま是非お立寄り下さい。
本合同大会を通じて、大学・企業の薬学研究者の方には病院薬剤師の発表を聴講して頂き、病院薬
剤師の方には先端の薬学研究や久しぶりの大学キャンパスの雰囲気にも触れて頂ければ幸いです。皆
様の積極的なご参加と活発な討論を何卒よろしくお願い申し上げます。そして、夕方からの懇親会にも、
大勢の皆様にご参加頂いて有意義な情報交換の場になることを願っております。
3
開催概要
日本病院薬剤師会東海ブロック・
日本薬学会東海支部合同学術大会 2014
大会長:川上 純一
会 期:2014 年 11 月 9 日(日)
主 催:静岡県病院薬剤師会・日本薬学会東海支部・日本病院薬剤師会東海ブロック
後 援:(一社)日本病院薬剤師会・(公社)静岡県薬剤師会
テーマ「東海地区における基礎および臨床薬学の発展と協調」
会 場:静岡県立大学(〒 422-8526 静岡市駿河区谷田 52-1 TEL:054-264-5102)
総合受付: 食品栄養科学部棟 1 階 カレッジホール(※16 時以降は学生ホールになります)
A 会 場: 大講堂
B 会 場: 看護学部棟 4 階 13411
C 会 場: 一般教育棟 1 階 2103
D 会 場: 経営情報学部棟 1 階 4111
E 会 場: 小講堂
F 会 場: 薬学部棟 2 階 6226
G 会 場: 薬学部棟 3 階 6329
H 会 場: 薬学部棟 1 階カレッジホール(企業展示)
I 会 場: 薬学部棟 1 階 6128 (休憩室)
J 会 場: はばたき棟 3 階 第2会議室
K 会 場: はばたき棟 3 階 第3会議室
L 会 場: はばたき棟 3 階 第4会議室
大会本部: 食品栄養科学部棟 1 階 5112
関連行事:日本病院薬剤師会東海ブロック中小・診療所・療養・精神科担当者会議
【時間】11:40 ~ 12:30
【場所】はばたき棟3階・第2会議室
日本薬学会東海支部幹事会
【時間】11:40 ~ 12:30
【場所】はばたき棟3階・第3会議室
日本病院薬剤師会東海ブロック会長・関係者連絡会議
【時間】12:30 ~ 13:20
【場所】はばたき棟3階・第3会議室
日本病院薬剤師会東海ブロック学術部門担当者会議
【時間】11:40 ~ 12:30
【場所】はばたき棟3階・第4会議室
懇親会
【時間】17:20 ~ 19:00
【場所】学生ホール
4
会場案内図
A 会場(大講堂)
シンポジウム/パネルディスカッション
E 会場(小講堂)
共催セミナー/ FD 講演会/日病薬会長講演
一般講演
ランチョンセミナー 4
M 会場(1 階食堂)
総合受付
(16:00 〜)
懇親会
B 会場(4 階 13411)
ランチョンセミナー 1
D 会場(1 階 4111)
病院薬学セミナー
一般講演
ランチョンセミナー 3
F 会場(2 階 6226)
G 会場(3 階 6329)
C 会場(1 階 2103)
一般講演
一般講演
ランチョンセミナー 2
H 会場(1 階カレッジホール)
企業展示
I 会場(1 階 6128)
休憩室
J 会場(第 2 会議室)
日病薬東海ブロック中小・診療所・療養・精神科担当者会議
K 会場(第 3 会議室)
日本薬学会東海支部幹部会
日病薬東海ブロック会長・関係者連絡会議
総合受付
(1 階カレッジホール)
大会本部
(1 階 5112)
L 会場(第 4 会議室)
日病薬東海ブロック学術部門担当者会議
5
A 会場(大講堂)
シンポジウム/パネルディスカッション
共催セミナー/ FD 講演会/日病薬会長講演
E 会場
一般講演
ランチョンセミナー 4
B 会場(13411)
ランチョンセミナー 1
病院薬学セミナー
6
C 会場(2103)
一般講演
ランチョンセミナー 2
D 会場(4111)
一般講演
ランチョンセミナー 3
7
F 会場(6226)
一般講演
G 会場(6329)
一般講演
8
I 会場(6128)
休憩室
H 会場(カレッジホール)
企業展示
J 会場(第 2 会議室)
日病薬東海ブロック中小・診療所・療養・精神科担当者会議
L 会場(第 4 会議室)
日病薬東海ブロック学術部門担当者会議
K 会場(第 3 会議室)
日本薬学会東海支部幹事会
日病薬東海ブロック会長・関係者連絡会議
9
ご案内 -参加者の皆様へー
1 . 参加手続き
1)当日参加登録用紙に必要事項をご記入の上、総合受付にお越しください。参加費と引き換えに
参加証および講演要旨集をお渡しします。
当日参加費
一 般 大学院博士後期課程学生 大学院博士前期課程(修士課程)学生・学部学生
参 加 費 2,
000円 500円 無 料
懇親会費 500円
※大学院生・学部学生の方へ:受付にて学生証をご提示すると共に、日本薬学会に未入会の場合
は別途に入会手続きもお取り下さい。
※ 参加費には、講演要旨集代が含まれております。
2)ネームカードケースは当日、総合受付にご用意いたします。
2 . 総合受付
食品栄養科学部棟 1 階カレッジホール 8:30 ~ 16:00
※16 時以降は学生ホールに受付を移動します。
3 . 懇親会
学生ホール 1 階食堂 17:20 ~ 19:00
4 .(財)日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師制度研修シール交付
研修認定シールをご希望の方は、総合受付にて研修認定シール(4 単位)をお渡ししますので、必
要な方は参加申込時にお申し出ください。
5 . ランチョンセミナー
弁当とお茶をご用意します。整理券(チケット)は、当日朝から総合受付にて配布を致します。(定
員に達し次第、配布を終了致します。)
チケットはランチョンセミナー開始 5 分後に無効に致しますのでご了承ください。
6 . 企業展示
薬学部棟 1 階カレッジホールにて企業展示をおこないます。
時間は 9:30 ~ 16:00
7 . 会場内での呼び出し
1)会場内でのアナウンスによる呼び出しは行いませんので、予めご了承ください。
2)緊急の場合は総合受付もしくは大会本部迄お申し出ください。
8 . ご注意
1)会場内では携帯電話はマナーモードに設定しておくか、電源をお切りください。
2)発表スライドの撮影、講演の録画、録音は禁止と致します。
(報道関係者は総合受付にお申し
出ください。
)
3)質問のある方は、予めマイクの前に立ち、座長の指示に従って所属・氏名を述べたのちに簡潔
に発言してください。
10
ご案内 -座長・演者の皆様へー
1 . 座長の皆様へ
1)当日は、総合受付で参加申込後、会場入口受付までお越しください。
2)担当セッションの開始 15 分前までに、会場内の「次座長席」にご着席ください。
3)担当セッションの進行は座長にご一任いたしますが、終了時間は厳守してください。
2 . 演者の皆様へ
1)当日は、総合受付で参加申込後、会場入口の演者受付までお越しください。
2)発表時間 ①一般講演:発表時間 8 分、質疑応答 2 分(計 10 分)です。
②発表終了の 1 分前に 1 回、終了時に 2 回、質疑応答終了時に 1 回、予鈴でお知らせします。
3)発表方法
①発表機材はPCプレゼンテーション(1面映写)のみとし、以下のように対応します。
②画像枚数に制限はありませんが、発表時間内に終了するようにご配慮ください。
③発表は、ご自身でパソコンを操作して行っていただきます。
④次演者席を設けますので、前演者が登壇されましたら『次演者席』にお着きください。
⑤会場には発表開始予定時刻の 10 分前には必ず、お入りください。
4)発表データの受付
①受付時間:8:30 ~
②受付:各セッション開始予定時刻の 30 分前までに会場入口の演者受付にお越しください。
③受付時に発表データを発表者自身でご確認ください。
④発表データは、パソコンに一時コピー致しますが、終了後は事務局にて責任を持って消去い
たします。
5)データの作成
①会場で使用するパソコンは Windows のみです。
②発表データは、USB メモリに保存してご持参ください。
③アプリケーションは、Windows 版 PowerPoint2010 が使用できます。
④フォントは OS に標準装備されているものをご使用ください。
⑤音声は利用できません。
⑥ Macintosh 版 PowerPoint や動画(PowerPoint のアニメーション機能を除く)は使用できま
せん。
11
日程
12
13
14
プログラム
1.シンポジウム
A会場(大講堂) 9:30 ~ 11:30
「薬食研究の推進:基礎及び臨床研究の最前線」
(併催:日本薬学会東海支部教育シンポジウム)
座長 山田 静雄(静岡県立大学)、森本 達也(静岡県立大学)
A− 1 クルクミンによる心不全治療の展開医療研究
森本 達也(静岡県立大学)
A− 2 排尿障害を改善する機能性食品
伊藤 由彦(静岡県立大学)
A− 3 ビルベリーアントシアニンの眼疾患に対する薬理作用
原 英彰(岐阜薬科大学)
A− 4 配糖化による難水溶性機能性成分の消化管急改善の試み
牧野 利明(名古屋市立大学)
A− 5 シソ由来カルコン誘導体の細胞保護作用
赤池 昭紀(名古屋大学)
総合討論
2.FD講演会(日本薬学会副会頭講演)
共催:東海薬学教育コンソーシアム
A会場(大講堂)13:40 ~ 14:40
座長 野口 博司(静岡県立大学)
「薬学教育・研究の発展に向けた日本薬学会の取組み」
鈴木 洋史(日本薬学会副会頭/東京大学医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長)
15
3.パネルディスカッション
A会場(大講堂) 14:40 ~ 16:10
「徹底討論!東海地区における薬学の将来展望」
パネリスト(五十音順)
岡本 浩一(名城大学薬学部教授・薬学部長)
奥 直人(静岡県立大学副学長・薬学部教授)
奥田 真弘(三重大学医学部附属病院教授・薬剤部長)
勝野 眞吾(岐阜薬科大学学長)
鈴木 匡 (名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部教授)
永津 明人(金城学院大学薬学部教授)
山田 清文(名古屋大学大学院医学系研究科・医学部附属病院教授・薬剤部長)
モデレーター 川上 純一(浜松医科大学医学部附属病院教授・薬剤部長)
本パネルディスカッションは、公開討論を中心とした企画です。パネリストとしては、東海地
区において日本薬学会・日本病院薬剤師会での活動や薬学教育・研究等に関わっておられる方々
にご登壇いただきます。
討論内容につきましては、本合同学術大会 2014 の主題「東海地区における基礎および臨床薬学
の発展と協調」に基づき、以下(例)について討論を行いたいと考えております。
・カリキュラム改定により薬学教育(臨床実習を含む)はどう変わるのか?
・東海地区で薬学研究(基礎及び臨床共に)をいかに発展させるのか?
・東海地区における合同学術大会等の学会活動の方向性は?
・東海地区で将来の薬学指導者(基礎及び臨床共に)をどう育成するか?
進め方として、はじめに各パネリストから短時間での意見発表を頂いた後に、パネリスト全員
での討論を行います。モデレーターは全体の進行係を務めます。討論時には会場(フロア)から
のコメント等も適宜受け付けますので、積極的なご参加をいただけましたら幸いです。
本企画が活発な意見交換の場となり、東海地区における薬学の今後を考える上での有益な機会
になりますことを期待しております。
16
パネリスト:
・岡本浩一(名城大学薬学部教授・薬学部長):1984 年京都大学薬学部卒業、1989 年同大学院薬学研究科
博士課程修了。アップジョンファーマシュウティカルズリミテッド研究所、名城大学薬学部助教授を経て、
2007 年より同教授。名城大学薬学部長。厚生労働省薬剤師試験委員会委員、同医道審議会薬剤師分科会専
門委員、日本薬学会代議員・東海支部長、日本薬剤学会理事など。
・奥 直人(静岡県立大学副学長・薬学部教授):1975 年東京大学薬学部卒業、1980 年同大院薬学系研究
科博士課程修了。ノースウエスタン大学、摂南大学薬学部、静岡県立大学薬学部助教授を経て、1998 年よ
り同教授。静岡県立大学副学長・理事(兼務)。厚生労働省医道審議会薬剤師分科会専門委員、文部科学省
薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂専門委員会委員、薬学共用試験センター理事・運営委員長、薬学教
育評価機構理事、日本学術会議連携会員、日本薬学会代議員・学会誌編集委員長、日本 DDS 学会理事など。
・奥田真弘(三重大学医学部附属病院教授・薬剤部長):1987 年京都大学薬学部卒業、1993 年同大学院薬
学研究科博士課程修了。京都大学医学部附属病院、バンダービルト大学・エール大学を経て、2004 年より現職。
厚生労働省薬剤師試験委員会委員、同薬事食品衛生審議会医薬品第二部会委員、病院・薬局実務実習東海地
区調整機構副委員長、日本病院薬剤師会理事・東海ブロック長、三重県病院薬剤師会会長、三重県薬剤師会
理事、日本薬学会医療薬科学部会常任世話人・東海支部幹事、日本医療薬学会副会頭・理事など。
:1967 年岐阜薬科大学卒業、1973 年大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了。
・勝野眞吾(岐阜薬科大学学長)
兵庫医科大学助教授、兵庫教育大学教育学部教授、同副学長・理事を経て、2009 年より現職。大学基準協
会副会長、文部科学省大学設置審議会特別委員、薬学系人材養成の在り方に関する検討会委員、中央教育審
議会スポーツ・青少年分科会学校健康・安全部会委員など。
・鈴木 匡(名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部教授):1981 年京都大学薬学部卒業、1986 年同大
学院薬学研究科博士課程修了。ドラッグストア・保険薬局勤務を経て、2009 年名古屋市立大学大学院薬学
研究科教授。薬学実務実習に関する連絡会議副座長、日本薬学会薬学教育委員会委員・薬学教育モデル・コ
アカリキュラム委員会委員・薬学雑誌編集長・東海支部幹事、愛知県薬剤師会常務理事など。
・永津明人(金城学院大学薬学部教授):1986 年名古屋市立大学薬学部卒業、1991 年同大学院薬学研究科
博士課程修了。財団法人相模中央化学研究所、名古屋市立大学薬学部・大学院薬学研究科を経て、2005 年
より現職。日本薬学会理事・代議員・東海支部幹事・同庶務幹事、日本化学会東海支部会計幹事、日本生薬
学会評議員など。
・山田清文(名古屋大学大学院医学系研究科・医学部附属病院教授・薬剤部長):1981 年名城大学薬学
部卒業、1983 年同大学院薬学研究科修士課程修了、1991 年薬学博士。大塚製薬研究所、ジョンズホプキン
ス大学、名古屋大学医学部附属病院、金沢大学薬学部・大学院自然科学研究科教授を経て、2007 年より現職。
厚生労働省薬剤師試験委員会委員、同薬事食品衛生審議会医薬品第一部会委員、薬学教育評価機構評価委員
会委員、日本病院薬剤師会理事、日本薬学会東海支部幹事、日本医療薬学会理事、日本神経精神薬理学会理
事など。
モデレーター:
・川上純一(浜松医科大学医学部附属病院教授・薬剤部長):1990 年東京大学薬学部卒業、1995 年同大学
院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、オランダ・ライデン大学、富山大学附属病院を経て、2006 年
より現職。静岡県立大学客員教授。厚生労働省薬剤師試験委員会委員、同中央社会保険医療協議会保険医療
専門審査員(DPC 評価分科会委員等)、日本病院薬剤師会常務理事、日本薬剤師会常務理事、静岡県病院薬
剤師会会長、日本薬学会代議員・医療薬科学部会常任世話人・東海支部幹事、日本医療薬学会理事など。
17
4.日本病院薬剤師会会長講演
A会場(大講堂) 16:10 ~ 17:10
座長 篠 道弘(静岡県立静岡がんセンター)
「病院薬剤師の更なる活躍を期待して」
北田 光一((一社)日本病院薬剤師会会長)
5.病院薬学セミナー
B会場(看護学部棟 4 階 13411 教室) 13:50 ~ 15:50
「薬学的介入症例サマリーの作成ポイント」
座長:塩川 満 (聖隷浜松病院)
川村 和美 (シップヘルスケアファーマシー東日本)
B− 1 がん専門薬剤師の立場から
宮本 康敬 (浜松オンコロジーセンター)
B− 2 感染制御認定薬剤師の立場から
平下 智之 (岐阜県総合医療センター)
B− 3 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の立場から
加藤 さおり(愛知医科大学病院)
B− 4 薬物療法専門薬剤師の立場から 内藤 隆文 (浜松医科大学医学部附属病院)
B− 5 緩和薬物療法認定薬剤師審査員の立場から 川村 和美 (シップヘルスケアファーマシー東日本)
総合討論
医療は日進月歩の発展を遂げ、医療の細分化、専門分化もますます進んでいる。そのような中、
薬剤師の業務も同様に、より専門化されて様々な専門資格が確立している。
これらの専門資格を取得するには、その領域の知識や経験が問われるケースが多い。そこで、
今回のセミナーでは、がん、感染、妊婦・授乳婦、薬物療法の認定や専門を取得した先生方をお
迎えし、症例サマリー作成時に苦労された点や書く上でのポイントをご講演頂き、さらには緩和
薬物療法認定薬剤師制度を立ち上げてきた先生から、審査側の評価ポイントを伺う。
本セミナーをきっかけとして、県病薬東海 4 県病院薬剤師の皆様の専門資格取得に対するモチ
ベーションアップに繋がれば幸いである。
18
6.ランチョンセミナー 11:45 ~ 12:45
◆ランチョンセミナー1( 共催:大塚製薬㈱ ) B会場(看護学部棟 4 階 13411 教室)
座長:正木 銀三(磐田市立総合病院)
「進化する口腔内崩壊錠の臨床的機能性」
並木 徳之(静岡県立大学薬学部臨床薬学大講座実践薬学分野・大学院薬学研究院 教授)
◆ランチョンセミナー 2( 共催:日医工㈱ ) C会場(一般教育棟 1 階 2103 教室)
座長:堀内 保孝(静岡赤十字病院)
「腎機能低下患者に対する薬剤適正使用」
木村 健(兵庫医科大学病院 薬剤部長)
◆ランチョンセミナー3( 共催:武田薬品工業㈱ ) D会場(経営情報学部棟 1 階 4111 教室)
座長:牧田 道明(浜松赤十字病院)
「睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患 ~なぜ循環器内科医が睡眠時無呼吸症候群を診ているの?~」
俵原 敬(浜松赤十字病院 副院長)
◆ランチョンセミナー4( 共催:田辺三菱製薬㈱ ) E会場(小講堂)
座長:勝山 徹(静岡市立静岡病院)
「SGLT2 阻害薬 : 新たな糖尿病治療薬としての作用とメカニズム」
金井 好克(大阪大学大学院医学系研究科 生体システム薬理学 教授)
7.共催セミナー 12:55 ~ 13:40
◆共催セミナー ( 共催:日本ベクトン・ディッキンソン㈱ ) A会場(大講堂)
座長:堀 雄史(浜松医科大学医学部附属病院)
ハザーダス・ドラッグ
「チームで行なう抗がん薬曝露対策」
栗原 稔男(紀南病院薬剤部 主任)
19
8.一般講演
[ C会場 ] 一般教育棟 1 階 2103 教室
9:30 ~ 10:30【化学系薬学1】 座長 稲井 誠(静岡県大薬)
C − 01 Pd 触媒を用いる環状スルホンアミドおよびスルフィンアミド類新規合成法の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
○田中寛康 ,小西英之 ,眞鍋敬
C − 02 軸不斉含有ジカルボン酸エステルの効率的合成法の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
○星野史佳 ,小西英之 ,眞鍋敬
C − 03 相間移動触媒の創製を基盤とする不斉フッ素化反応の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○浅田純司 ,佐藤健太郎 ,川戸勇士 ,江上寛通 ,濱島義隆
C − 04 超原子価ヨウ素型クロロ化試薬を用いるオレフィン類の二官能基化反応 1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○米田貴洋 ,宇久美奈子 ,川戸勇士 ,江上寛通 ,濱島義隆
C − 05 演題取り下げ
C − 06 フロー型マイクロウェーブ装置の活用による連続合成に関する研究 1
2
3
4
( 静岡県大薬 , サイダ ·FDS, 産総研 , 阪大院薬)
1
1
2
3
4
1
1
○澤入平 ,藤田将司 ,小田島博道 ,杉山順一 ,赤井周司 ,川戸勇士 ,江上寛通 ,
1
濱島義隆
10:30 ~ 11:30【化学系薬学2】 座長 澤間 善成(岐阜薬大)
C − 07 ヘジオトール A の合成研究
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
1
○石川諒 ,河辺佑介 ,吉田直人 ,稲井誠 ,浅川倫宏 ,濱島義隆 ,菅敏幸
C − 08 Raputindole A の合成研究
1
2
( 静岡県大薬, 阪大院薬)
1
1
1
1,2
1
1
○神谷真鈴 ,石上加菜 ,太田裕也 ,赤井周司 ,江木正浩 ,菅敏幸
C − 09 TAN1251C の全合成
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
1
○松村幸亮 ,長坂洋祐 ,升田明孝 ,稲井誠 ,浅川倫宏 ,江木正浩 ,菅敏幸
C − 10 ロバタミド A の合成研究
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○森兼悠太 ,稲井誠 ,浅川倫宏 ,江木正浩 ,菅敏幸
C − 11 抗腫瘍性メロテルペノイド・バークレーオン類の合成研究
1
( 名市大院薬)
1
1
1
○鈴木恵介 ,山越博幸 ,中村精一
C − 12 ケンポナシ(Hovenia dulcis)の成分研究(第 2 報)
1
1
3
( 岐阜薬大・生薬, 岐阜薬大・薬資, 摂南大・薬)
1
1
2
3
1
1
○藤井直希 ,松本乃里子 ,田中稔幸 ,邑田裕子 ,阿部尚仁 ,大山雅義
13:00 ~ 13:50【化学系薬学3】 座長 喜多村 徳昭(岐阜大院工)
C − 13 非水系 CE- 希土類錯体時間分解蛍光測定による高感度測定法の開発
1
2
( 岐阜薬大, 岐阜大院連合創薬)
1
1,2
1
1
1,2
○富田美幸 ,江坂幸宏 ,平山祐 ,永澤秀子 ,宇野文二
20
C − 14 Truce-Smiles 転位反応を利用したヘテロ五員環縮合 [2,3-c]isoquinoline 類の合成
1
( 岐阜薬科大学 創薬化学大講座 薬化学研究室)
1
1
1
1
○豊福優太 ,奥田健介 ,平山祐 ,永澤秀子
C − 15 トリフェニルスチバンを触媒に用いた α- ヒドロキシケトンからの 2- アリールキノキサリン合成
1
( 愛知学院大薬)
1
1
1
1
○松村実生 ,高田理恵 ,鵜飼佑 ,安池修之
C − 16 セラミック担持型パラジウム触媒の開発と官能基選択的接触還元
1
2
3
( 岐阜薬大, 和光純薬, ブライトセラム)
1
1
2
3
1
1
○門口泰也 ,丸本貴久 ,三宅寛 ,永江良行 ,澤間善成 ,佐治木弘尚
C − 17 アルコールの Rh/C 触媒的脱水素酸化反応 1
( 岐阜薬大)
1
1
1
1
1
澤間善成 ,○森田康介 ,山田強 ,門口泰也 ,佐治木弘尚
13:50 ~ 14:40【化学系薬学4】 座長 小郷 尚久(静岡県大薬)
C − 18 化学修飾 siRNA の合成とそのオフターゲット効果
1
2
( 岐阜大院工, 岐阜大院連合創薬)
1
1
1
1,2
○河出美和 ,中島礼美 ,喜多村徳昭 ,北出幸夫
C − 19 クリック反応による PET ラベル化 RNA の合成と評価
1
2
( 岐阜大院工, 岐阜大院連合創薬)
1
2
1
1,2
○牧野洋平 ,仁欽 ,喜多村徳昭 ,北出幸夫
C − 20 グルタチオントランスフェラーゼで活性化される分子プローブの開発
1
2
3
4
( 岐阜大工, 北大院薬, カロリンスカ研, 岐阜大院連合創薬)
1
2
3
1,4
○柴田綾 ,阿部洋 ,Ralf Mogenstern ,北出幸夫
C − 21 スギヒラタケの毒成分プローブ分子を目指した合成研究
1
2
3
( 静岡県大薬, 静岡大学農, 静岡大学創造科学)
1
1
2
3
1
1
1
○野田和宏 ,吉野友美 ,鈴木智大 ,河岸洋和 ,浅川倫宏 ,稲井誠 ,江木正浩 ,
1
菅敏幸
C − 22 近赤外蛍光プローブを目指した donor–two-acceptor 型色素の開発
1
( 岐阜薬科大学 創薬化学大講座 薬化学研究室)
1
1
1
1
○小竹正晃 ,奥田健介 ,平山祐 ,永澤秀子
15:00 ~ 15:30【物理系薬学 1】 座長 江坂 幸宏(岐阜薬大)
C − 23 ヒト爪中ヒスタミン及びその代謝物の高感度分析法の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○内部あおい ,閔俊哲 ,井之上浩一 ,轟木堅一郎 ,豊岡利正
C − 24 イムノアフィニティー精製 - 高温逆相 LC による抗体医薬品の血漿中薬物濃度分析法の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○江田康拓 ,中野達基 ,轟木堅一郎 ,閔俊哲 ,井之上浩一 ,豊岡利正
C − 25 遠隔位不斉識別試薬を用いるアミノ酸およびペプチド類の HPLC 光学分離分析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
1
○佐藤雄飛 ,中野達基 ,轟木堅一郎 ,井口和明 ,閔俊哲 ,井之上浩一 ,武田厚司 ,
1
豊岡利正
15:30 ~ 16:10【物理系薬学 2】 座長 岩尾 康範(静岡県大薬)
C − 26 荷電コロイド粒子の会合構造制御
1
( 名市大院薬)
1
1
1
1
1
○岡地真奈美 ,中村友紀 ,豊玉彰子 ,奥薗透 ,山中淳平
21
C − 27 荷電コロイド粒子を固定した高分子ゲル中の物質拡散
1
( 名市大院薬)
1
1
1
○山中淳平 ,豊玉彰子 ,奥薗透
C − 28 難溶性化合物の光安全性評価のための改良型 reactive oxygen species (ROS) assay の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
○世戸孝樹 ,加藤尚視 ,尾上誠良
C − 29 Thymoquinone の体内動態解析ならびに cold wet-mill 法による経口吸収性改善
1
2
( 静岡県大薬, 摂南大薬)
1
1
1
1
2
2
1
○仁平拓也 ,鈴木寛貴 ,青木麻子 ,大竹啓斗 ,弓樹佳曜 ,橋本直文 ,世戸孝樹 ,
1
尾上誠良
16:10 ~ 16:50【物理系薬学 3】 座長 世戸 孝樹(静岡県大薬)
C − 30 超高圧乳化分散機を用いた脂質ナノ粒子製剤の物理化学的特性に関する研究
1
( 静岡県大院薬食生命科学)
1
1
1
1
◯舟越由香 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井茂
C − 31 拡散理論を応用したマトリックス製剤における薬物放出機構の解析
1
2
( 静岡県大薬, アステラス製薬物性研)
1
1,2
1
1
1
○稲用義隆 ,阿形泰義 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井茂
C − 32 近赤外分光分析計を用いた遠心転動造粒法による原薬造粒の工程管理
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○大杉祐貴子 ,見瀬僚平 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井茂
C − 33 クラリスロマイシンの除菌効果増強を目的とした薬物高含有胃内浮遊性粒子の設計と評価
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○溝口緑理 ,青木肇 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井茂
[ D会場 ] 経営情報学部棟 1 階 4111 教室
9:30 ~ 10:30【生物系薬学1】 座長 村田 富保(名城大学)
2+
D − 01 物体認識記憶における海馬 CA1 細胞内 Zn シグナリングの関与
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○天白宗和 ,鈴木美希 ,大橋加純 ,小川泰右 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
D − 02 海馬歯状回 LTP の発現における Zn シグナルの作用解析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○佐々木美紅 ,佐藤祥子 ,小川泰右 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
D − 03 グルココルチコイドによる海馬 CA1 LTP 抑制における Zn シグナリングの関与
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
○橋本勇輝 ,鈴木美希 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
D − 04 海馬歯状回での細胞内 Zn シグナル過多による物体認識記憶の獲得障害
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○藤瀬裕貴 ,土屋友香 ,鈴木美希 ,藤井洋昭 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
D − 05 海馬歯状回での細胞内 Zn シグナル過多による学習した空間認識記憶の消失
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○中田裕之 ,久恒麻里衣 ,藤井洋昭 ,南埜達也 ,玉野春南 ,武田厚司
D − 06 アミロイド β によるインビボ歯状回長期増強障害における亜鉛シグナルの関与
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○小池勇太 ,植松千裕 ,中村仁聡 ,安藤靖 ,玉野春南 ,武田厚司
22
10:30 ~ 11:30【生物系薬学2】 座長 田中 正彦(名古屋市大薬)
D − 07 海馬グルタミン酸作動性神経活動に対する牡蠣成分の作用
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○釋氏佑紀奈 ,大橋加純 ,植松千裕 ,玉野春南 ,武田厚司
D − 08 海馬グルタミン酸作動性神経の過剰興奮に対する抑肝散生薬成分の抑制作用
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
○塩谷悠介 ,井出和希 ,玉野春南 ,武田厚司
D − 09 ラット孤束核における低酸素誘発性シナプス伝達抑制に対するプロゲステロンの拮抗作用
1
( 愛知学院大薬)
1
1
1
1
1
○大井義明 ,加島典良 ,福岡里菜 ,木村聡子 ,櫨彰
D − 10 モルヒネの呼吸抑制に対するカフェインの作用
1
( 愛知学院大薬)
1
1
1
1
○木村聡子 ,三浦佑樹 ,大井義明 ,櫨彰
D − 11 モノクロタリン誘発性肺高血圧症ラットにおけるニフェジピンの増悪効果
1
2
3
( 金城学院大薬, 名市大院薬, アリゾナ大医)
1
1
1
1
1
1
2
○山村彩 ,森志穂 ,堀井千裕 ,平工明里 ,大原直樹 ,塚本喜久雄 ,山村寿男 ,
3
Jason X.-J. Yuan
2+
D − 12 膵 β 細胞における H2O2 誘発アポトーシスへのミトコンドリア Ca シグナルの関与の検討
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○澤谷俊明 ,金子雪子 ,佐藤太治 ,野口亜希子 ,石川智久
14:40 ~ 15:30【医療系薬学1】 座長 中村 克徳(名古屋市大薬)
D − 13 インスリン抵抗性自然発症マウスにおけるインスリン分泌の亢進
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○有澤佳純 ,井出直仁 ,小倉加称美 ,今井志織 ,賀川義之 ,前田利男
D − 14 インスリン抵抗性自然発症マウスにおける腸内細菌叢の細菌分布の変動
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○小倉加称美 ,有澤佳純 ,井出直仁 ,賀川義之 ,前田利男
D − 15 新規トリアゾール系化合物による爪白癬治療を目的とした外用液剤の開発
1
2
( 科研製薬総合研製剤研究部, 同薬理研究部) 1
1
2
1
○奥村智広 ,落合明子 ,巽良之 ,薗田良一
D − 16 リボフラビン含有ファモチジン製剤の光安定性改善並びにその動態解析
1
2
( 静岡県大薬, 山梨大医病院薬)
1
2
1
1
2
2
2
○大竹啓斗 ,内田淳 ,鈴木友季子 ,世戸孝樹 ,寺松剛 ,寺島朝子 ,小口敏夫 ,
1
尾上誠良
D − 17 抗原修飾リポソームにより脾臓 B 細胞を標的化した新たなスギ花粉症治療法の開発
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
1
○後藤峻吾 ,松木孝太 ,伊藤あゆみ ,斉藤大騎 ,橋本正寛 ,清水広介 ,浅井知浩 ,
1
奥直人
15:30 ~ 16:20【医療系薬学2】 座長 宮嵜 靖則(静岡県大薬)
D − 18 RNA 干渉効率の向上を目指した抗体修飾脂質ナノ粒子の開発
1
2
3
( 静岡県大薬, 大阪大医, 大阪大微生物病研)
1
1
1
1
2
3
1
○岡田憲明 ,岡本彩香 ,清水広介 ,浅井知浩 ,南野哲男 ,目加田英輔 ,奥直人
D − 19 三元複合型遺伝子吸入粉末剤に添加するヒアルロン酸の分子量の影響
1
( 名城大薬)
1
1
1
1
1
○伊藤貴章 ,奥田知将 ,高嶋祥匡 ,冨田庸介 ,岡本浩一
23
D − 20 VEGF-C 高発現がんへのリポソーム製剤の集積性と治療効果に関する研究
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○村岡英一 ,清水広介 ,中村元気 ,浅井知浩 ,奥直人
D − 21 ドキソルビシン内封リポソーム吸入粉末剤による肺癌治療効果
1
( 名城大薬)
1
1
1
1
○奥田知将 ,中村俊介 ,山崎千聖 ,岡本浩一
D − 22 ワルファリン感受性に与える CYP4F2 遺伝子多型および血漿中ビタミン K 濃度の影響
1
2
( 静岡県大薬, 岐阜薬大)
1
1
1
1,2
1
○鈴木将之 ,山田悠人 ,平井啓太 ,林秀樹 ,伊藤邦彦
16:20 ~ 17:10【医療系薬学3】 座長 間宮 隆吉(名城大薬)
D − 23 後期高齢者におけるメロペネムの投与方法に関する検討
1
2
3
( 名城大薬, 国立病院機構金沢医療センター臨床研究部, 国立病院機構金沢医療セン
4
ター薬, 国立病院機構金沢医療センター呼吸器科)
1,2
1
3
3
3
4
1
◯相宮光二 ,間宮隆吉 ,田淵克則 ,林誠 ,舟木弘 ,北俊之 ,平松正行
D − 24 L −アスパラギナーゼ注射剤調製時に発生する凝集体のキャラクタリゼーション
−注射シリンジ中のシリコーンオイルの影響−
1
2
( 静岡県大薬, 東京大病院薬)
1
1
1
1
2
2
1
○内野智信 ,宮嵜靖則 ,大川寛代 ,山崎拓人 ,柳原良次 ,鈴木洋史 ,賀川義之
D − 25 薬局検体測定室における継続的 HbA1c 測定の効果
1
2
( 名市大・薬, はるか薬局)
1
2
2
1
1
○藤田直希 ,鍋谷伸子 ,梅村紀匡 ,菊池千草 ,鈴木匡
D − 26 薬学生における服薬体験に関する調査
1
( 鈴鹿医療科学大薬)
1
1
1
○清水俊樹 ,市橋哲平 ,長南謙一
D − 27 実務実習生から見た薬剤師業務としての生活習慣指導の評価
1
( 名古屋市立大学・薬 )
1
1
1
1
○井上渉 ,藤田直希 ,菊池千草 ,鈴木匡
[ E会場 ] 小講堂
9:30 ~ 10:30【病院薬学1:がん薬物療法①】 座長 北村 修(富士宮市立病院)
E − 01 外来化学療法における薬剤師の活動〜セツキシマブ・パニツムマブにおける低マグネシ
ウム血症対策への取り組み〜
1
( 岡崎市民病院)
1
1
1
1
1
1
1
○鈴木大介 ,川和田百華 ,三森佳代 ,本多百合 ,伊豫田智子 ,稲嶋早希 ,佐藤力哉 ,
1
1
大山英明 ,小林伸三
E − 02 肺癌患者へのシスプラチン投与における Short-Hydraiton 法の導入と有用性評価
1
2
( 浜松医療センター薬剤科, 同呼吸器内科)
1
1
2
2
2
1
○坪井久美 ,遠藤拓未 ,矢野利章 ,小笠原隆 ,笠松紀雄 ,渡邉進士
E − 03 カルボプラチンの投与量に上限はあるか?~肺がん患者を対象とした検討~
1
2
( 静岡県立静岡がんセンター薬剤部, 同センター呼吸器内科)
1
1
1
2
1
○三浦理恵子 ,望月敬浩 ,加藤こずえ ,高橋利明 ,篠道弘
E − 04 肺癌患者の CINV に対するアプレピタントの治療効果と予防効果
1
2
( 愛知医科大学病院 薬剤部, 愛知医科大学病院呼吸器アレルギー内科)
1
1
1
2
1
○築山郁人 ,築山純代 ,片上昌代 ,久保昭仁 ,松浦克彦
E − 05 大腸癌 MEC レジメンの制吐対策はパロノセトロンへの変更で改善されるか
1
2
( 名古屋市立大学病院 薬剤部, 名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床薬剤学)
1
1
1
1,2
○竹本将士 ,黒田純子 ,江崎哲夫 ,木村和哲
24
E − 06 シスプラチンを含む高度催吐性化学療法による悪心・嘔吐に対する危険因子の検討
1
2
3
( 愛知県がんセンター中央病院薬剤, 看護部, 薬物療法部)
1
2
3
1
1
1
1
○長谷川郁恵 ,山田知里 ,宇良敬 ,下村一景 ,浅野知沙 ,前田章光 ,水谷旭良
10:30 ~ 11:30【病院薬学2:がん薬物療法②】 座長 石川 寛(静岡県立静岡がんセンター)
E − 07 当院におけるデノスマブ使用と低カルシウム血症発現状況に関する調査
1
( 聖隷三方原病院薬剤部)
1
1
1
1
○川合麻未 ,橋本有可子 ,奥村知香 ,柴山芳之
E − 08 愛知県がんセンター中央病院におけるアファチニブの有害事象発現状況について
1
2
( 愛知県がんセンター中央病院薬剤部, 看護部)
1
2
2
1
1
1
○浅野知沙 ,山田知里 ,戸崎加奈江 ,前田章光 ,梶田正樹 ,水谷旭良
E − 09 エンザルタミドの使用経験について~有効性と副作用など~
1
2
( 社会医療法人厚生会 木沢記念病院 薬剤部, 泌尿器科 )
1
1
1
1
2
1
○宮本義浩 ,平出耕石 ,古田愛果 ,今関孝子 ,石原哲 ,加藤武司
E − 10 ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネルブロッカーがアルブミン懸濁型パクリタキセ
ルの血液毒性発現に及ぼす影響
1
( 松阪市民病院 薬剤部)
1
1
1
○若宮加寿馬 ,中西大介 ,柳川泰裕
E − 11 妊婦と薬剤師の関わり~妊娠 13 週に悪性リンパ腫と診断された一例~
1
2
( 富士宮市立病院薬剤部, 磐田市立総合病院薬剤部)
1
2
1
○加藤祥世 ,浮田浩利 ,北村修
E − 12 妊娠中にがん薬物療法を行った子宮頚がん患者に対して薬学的介入を行った一症例
1
2
( 三重大学医学部附属病院薬剤部, 同産科婦人科)
1
1
2
1
1
1
2
◯日置三紀 ,赤阪未来 ,北野裕子 ,杉本浩子 ,村木優一 ,岩本卓也 ,村林奈緒 ,
1
奥田真弘
13:00 ~ 13:50【病院薬学3:病棟・薬剤管理指導業務】 座長 鈴木 高弘(国際医療福祉大学熱海病院)
E − 13 当院における病棟薬剤師の処方提案及び相談応需の現状-栄養管理について-
1
( 静岡県立総合病院 薬剤部)
1
1
1
1
1
1
1
○萩倉翔 ,中桐季畝 ,岩崎剛士 ,青島弘幸 ,中垣繁 ,鈴木貴也 ,角入壽彦
E − 14 点眼指導用紙の改訂がアドヒアランスに与える影響
1
2
( 公立陶生病院薬剤部, 金城学院大学 薬学部)
1
1
2
1
1
1
1
○伊藤聡一郎 ,松本茂 ,打田由希 ,脇田恵里 ,勝野晋哉 ,水野尚章 ,鷹見繁宏
E − 15 仙骨部褥瘡に合併した真菌症にステロイドおよび抗真菌外用薬を推奨し、著効した 1 例
(碧南市民病院 薬剤部 )
○榊原ゆかり,永田実,板倉由縁
E − 16 トルバプタン錠の長期投与における安全性の検討
1
( 地方独立行政法人岐阜県総合医療センター薬剤センター)
1
1
1
1
1
○牧田亮 ,岩田知恵子 ,平下智之 ,新谷俊一 ,遠藤秀治
E − 17 吸入補助器具を用いたスピリーバレスピマット吸入の有効性評価
1
2
( 浜松医療センター 薬剤科, 浜松医療センター 呼吸器内科)
1
2
2
2
2
2
1
○坂田淳 ,小笠原隆 ,矢野利章 ,田中和樹 ,青島洋一郎 ,笠松紀雄 ,渡邉進士
13:50 ~ 14:40【病院薬学4:救命救急・薬物動態(PK/PD を含む)】 座長 渡邉 進士(浜松医療センター)
E − 18 当院の ER 室における薬剤師の役割
1
( 静岡徳洲会病院薬剤部)
1
1
1
1
○菊本紗也香 ,又吉樹 ,坂田志穂 ,根岸孝光
25
E − 19 ハリーコール(院内蘇生支援システム)における薬剤師の関わり
1
( 名古屋第一赤十字病院薬剤部)
1
1
1
1
○服部哲幸 ,黒野康正 ,三輪眞純 ,森一博
E − 20 菊川市立総合病院におけるジゴキシンの血中濃度測定状況と測定値に影響を与える因子の検討
1
( 菊川市立総合病院薬剤科)
1
1
1
○後藤貴裕 ,松下久美 ,瀧祐介
E − 21 タクロリムスの体内動態に関わる遺伝子解析法の開発
1
2
3
( 岐阜薬科大学, 岐阜大学医学部附属病院薬剤部, 岐阜大学大学院医学研究科泌尿器
科学分野)
1
1
1
1
1
1
2
○柴山篤 ,曽田翠 ,藤谷桃子 ,道内玲奈 ,金森建太 ,吉國早織 ,大野雄太 ,土
3
3
2
1
屋朋大 ,出口隆 ,伊藤善規 ,北市清幸
E − 22 劇症肝炎に対する血漿交換施行前後のアミオダロンおよびモノ - N - デスエチルアミオ
ダロンの血中濃度推移を検討したトルバプタン併用心不全症例
1
2
( 独立行政法人地域医療機能推進機構 四日市羽津医療センター薬剤科, 腎・透析科,
3
4
臨床工学科, 三重大学医学部附属病院薬剤部)
1
1
2
3
4
4
1
○小島さおり ,片山歳也 ,三宅真人 ,西村直樹 ,村木優一 ,奥田真弘 ,松田浩明
14:40 ~ 15:30【病院薬学5:薬物療法①】 座長 柴山 芳之(聖隷三方原病院)
E − 23 フランスにおけるアロマテラピー使用例と臨床研究について~補完代替医療の実践を目
指す病院薬剤師の取り組み~
1
2
( 国際医療福祉大学熱海病院 薬剤部, 国際医療福祉大学 薬学部)
1
1,2
1
○坂田妹子 ,鈴木高弘 ,松坂昌宏
E − 24 定期的な検査が必要とされた医薬品の使用実態調査
1
( 愛知医科大学病院 薬剤部)
1
1
1
1
1
1
1
○柴田祐一 ,福田裕子 ,前仲亮宏 ,松平厚蔵 ,野々垣知行 ,林予志美 ,川澄紀代 ,
1
松浦克彦
E − 25 血液透析患者の腎性貧血に対する C.E.R.A. の有用性について~ rHuEPO からの切換え
投与が病院経営に及ぼす影響をふまえて~
1
( 早徳病院薬局)
1
1
1
○古田和也 ,西岡恵子 ,河合永晴
E − 26 ラタノプロスト / チモロール塩酸塩配合点眼液の有用性の検討
1
2
3
( 国民健康保険 坂下病院 薬剤部 同眼科 名城大・薬)
1
1
1
1,3
1
2
○窪田真 ,清水幸一 ,保母香純 ,岡本輝美 ,荻野晃 ,木下慎介
E − 27 せん妄を改善し、離脱症状なく、トリアゾラム長期内服を中止した1例
1
2
3
( 静岡県立静岡がんセンター薬剤部, 静岡県立静岡がんセンター緩和医療科, 静岡県
4
5
立静岡がんセンター精神腫瘍科, 静岡県立静岡がんセンター看護部, 静岡県立静岡
がんセンター緩和ケアサポートチーム)
1,5
1,5
2,5
3,5
4,5
4,5
1
○久保さやか ,佐藤哲 ,木村陽 ,松本晃明 ,横山智子 ,新開由紀 ,篠道弘
15:30 ~ 16:20【病院薬学6:薬物療法②】 座長 原田 晴司(静岡市立清水病院)
E − 28 新規経口抗凝固薬 apixaban の忍容性の検討
1
2
( 豊橋ハートセンター 薬局, 岐阜ハートセンター 薬局)
1
2
1
2
2
2
2
○芦川直也 ,岩田晃佳 ,佐合裕子 ,上村裕美 ,宮村大佑 ,中嶋佳子 ,石黒英行
E − 29 抗結核薬による高尿酸血症出現患者へのベンズブロマロンの使用状況
1
2
( 大垣市民病院薬剤部, 同呼吸器科)
1
1
1
2
○田中孝治 ,元山茂 ,森博美 ,安部崇
26
E − 30 リツキシマブによるインフュージョンリアクション発症状況の検討
1
2
3
4
( 名古屋市立大学・薬, 同病院 薬剤部, 同大学院・医, 同大学院・薬)
1
1
2
2
2
2
3
○松村治穂 ,宮野百合香 ,近藤勝弘 ,黒田純子 ,江崎哲夫 ,木村和哲 ,飯田信介 ,
1,4
1,4
中村克徳 ,松永民秀
E − 31 C 型慢性肝炎に対する新旧 3 剤併用療法の有効性と安全性
1
2
( 三重県立総合医療センター薬剤部, 三重県立総合医療センター消化器内科)
1
2
○森尚義 ,森谷勲
E − 32 薬剤師によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の適正化に向けた取り組み
1
( 愛知医科大学病院 薬剤部)
1
1
1
1
1
○一栁知里 ,野々垣知行 ,林予志美 ,川澄紀代 ,松浦克彦
[ F会場 ] 薬学部棟2階 6226 教室
9:30 ~ 10:30【病院薬学7:感染】 座長 野毛 一郎(沼津市立病院)
F − 01 職員ワクチン接種プログラムにおける接種率向上への取り組みとその効果
1
2
( 浜松医療センター薬剤科, 浜松医療センター ICT)
1,2
2
2
1
○石井範正 ,葛原健太 ,矢野邦夫 ,渡邉進士
F − 02 高校生を対象とした緑茶うがいによる急性上気道炎の発症予防及び症状軽減効果の検討
1
2
3
( 静岡県大薬, 菊川市立総合病院, 市立御前崎総合病院)
1
1
1
1
1
2
3
○野尻桂 ,伊東未来 ,井出和希 ,豊泉樹一郎 ,松本圭司 ,松下久美 ,鮫島庸一 ,
1
山田浩
F − 03 当院における抗菌薬の使用状況と動向について
1
( 特定医療法人沖縄徳洲会 静岡徳洲会病院薬剤部)
1
1
1
○又吉樹 ,坂田志穂 ,根岸孝光
F − 04 当院における緑膿菌の感受性とカルバペネム系抗菌薬の使用状況について
1
( JA 三重厚生連松阪中央総合病院薬剤部)
1
1
1
1
○櫻井香織 ,鈴木美世利 ,谷口賢二 ,福永浩也
F − 05 クロストリジウム・ディフィシル感染症多発事例への介入と考察
1
2
3
4
(高山赤十字病院 薬剤部, 医療安全推進室, 同検査部, 同内科)
1
2
3
4
4
1
〇上田秀親 ,後藤泰代 ,橋渡彦典 ,細江敦典 ,西尾優 ,吉岡史郎
F − 06 薬剤部における抗菌薬適正使用カンファレンスを開始して
1
( 済生会松阪総合病院薬剤部)
1
1
1
1
1
1
○水本果歩 ,内藤潤 ,中西伸樹 ,佐久間隆幸 , 三井聖子 ,中村昭宣
10:30 ~ 11:30【病院薬学8:調剤・製剤・処方監査】 座長 角入 壽彦(静岡県立総合病院)
F − 07 抗がん剤混注監査システムの重量監査における適正誤差範囲の検討
1
( 磐田市立総合病院 薬剤部)
1
1
1
1
○廣瀬和昭 ,後藤敏也 ,鈴木直哉 ,正木銀三
F − 08 医療従事者の抗がん剤暴露防止に対する取り組み−閉鎖式調製・投与器具導入の試み−
1
2
( 公立陶生病院医療技術局薬剤部, 同化学療法センター)
1,2
1,2
2
2
2
1
○小崎耕自 ,深津昌弘 ,村田智美 ,梶口智弘 ,木村智樹 ,鷹見繁宏
F − 09 静岡県立こども病院における「院内製剤:亜セレン酸内服液 50μg/mL」の使用状況
1
2
( 静岡県立こども病院薬剤室, 静岡県立こども病院 NST)
1,2
1,2
1
2
○板倉美奈 ,井原摂子 ,平野桂子 ,渡邉誠司
F − 10 薬剤師による NICU 入院患児の TPN 調製 ~ 365 日体制への取り組み~
1
2
3
( 名古屋第一赤十字病院薬剤部, 同看護部 NICU 病棟, 同小児科)
1
1
1
1
1
1
1
○花井美月 ,山田総 ,野村浩夫 ,水野恵司 ,黒野康正 ,水谷年男 ,三輪眞純 ,
2
2
1
平岩美緒 ,大城誠 ,森一博
27
F − 11 当院薬剤部における調剤過誤防止への取り組み
1
( 聖隷三方原病院薬剤部)
1
1
1
1
1
1
○泉みどり ,江藤公美 ,川合麻未 ,長浦宏之 ,奥村知香 ,柴山芳之
F − 12 当院における新規経口抗凝固薬の処方状況
1
( 豊橋市民病院 薬局)
1
1
1
1
○蒲伴彦 ,隅田徹 ,石川元章 ,石田隆浩
13:00 ~ 14:00【生物系薬学3】 座長 佐伯 憲一(金城学院大)
F − 13 ノビレチン及びノビレチン含有柑橘類果皮抽出物による芳香族炭化水素受容体(AhR)
の活性化
1
2
3
4
( 静岡県大薬, 東北大学院薬, 東北大学院工, 横浜薬科大)
1
1
1
1,2
1
1
1,3,4
○勝又慶人 ,関本征史 ,榊夏澄 ,阿部太紀 ,根本清光 ,出川雅邦 ,大泉康 ,
1
吉成浩一
F − 14 毒性試験公開データを用いた肝細胞肥大の毒性学的特徴の解析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
○増田雅美 ,関本征史 ,根本清光 ,吉成浩一
F − 15 性ホルモンによる肝 CYP7A1 発現制御機構の解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 農業生物資源研, 東北大学院薬)
1
1
1
2
1
1,3
1
○栗田隆三 ,倉冨雅 ,関本征史 ,小島美咲 ,諸田まどか ,阿部太紀 ,根本清光 ,
1
1
吉成浩一 ,出川雅邦
F − 16 カドミウム慢性毒性におけるメタロチオネイン III の関与
1
( 愛知学院大学薬学部)
1
1
1
1
○李辰竜 ,古川洋光 ,徳本真紀 ,佐藤雅彦
F − 17 ヘビードラッグ開発に向けた核酸代謝酵素の探索
1
2
3
( 岐阜大院工, 岐阜薬大, 岐阜大院連合創薬)
1
1
2
1,3
○山形直也 ,喜多村徳昭 ,佐治木弘尚 ,北出幸夫
F − 18 アセトアルデヒド由来核酸アダクトの培養細胞からの検出
1
2
3
( 鈴鹿医療科大薬, 愛工大工, 大原薬品工業㈱)
1
1
1
1
2
3
1
○平井一行 ,藤澤豊 ,伊藤朱里 ,土谷崇裕 ,村上博哉 ,酒向孫市 ,出屋敷喜宏
14:00 ~ 14:50【生物系薬学4】 座長 出屋敷 喜宏(鈴鹿医療科学大)
F − 19 大腸ムチンの硫酸化による大腸癌抑制効果の検討
1
2
3
( 静岡県大・薬, 静岡県大・看護, 星薬科大・薬)
1
1
1
2
1
1,3
○西谷麻予 ,坪井康一郎 ,飛澤悠葵 ,金澤寛明 ,今井康之 ,川島博人
F − 20 強細胞毒性を示すレジオネラ宿主内増殖性欠損株のマウスを用いた病原性解析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○三宅正紀 ,丸川敬大 ,國安健太 ,杉山亜由美 ,吉田一平 ,今井康之
F − 21 低 pH 曝露による前立腺癌細胞死における Caspase-10 の関与
1
( 岐阜薬科大学)
1
1
1
1
1
○平田紗希 ,曽田翠 ,井口和弘 ,臼井茂之 ,北市清幸
F − 22 ドキソルビシン耐性化による消化器癌細胞の抗癌剤代謝・排泄能の亢進
1
( 岐阜薬科大学 生化学)
1
1
1
1
1
1
1
○毛塚ちひろ ,松永俊之 ,鈴木綾香 ,鷹澤博明 ,米澤綾乃 ,遠藤智史 ,五十里彰
F − 23 肺腺癌細胞におけるクローディン -2 発現に対するケルセチンの効果
1
2
( 岐阜薬科大学生化学, 静岡県立大学薬学部)
1
2
1
1
1
1
2
○園木寛之 ,佐藤友成 ,下馬場俊 ,多賀小枝子 ,遠藤智史 ,松永俊之 ,菅谷純子 ,
1
五十里彰
28
15:00 ~ 16:00【生物系薬学5】 座長 玉野 春南(静岡県大薬)
F − 24 脳形成に必須な分泌タンパク質リーリンの C-t site 切断プロテアーゼに関する解析
1
( 名市大院薬)
1
1
1
1
○佐藤嘉高 ,小林大地 ,河野孝夫 ,服部光治
F − 25 抗シアロ糖鎖単クローン抗体の糖鎖認識性と利用法
1
2
( 静岡県大薬, 会津大学短期大学部食物栄養学科)
1
1
1
2
1
○上野史彦 ,都竹真帆 ,疋田智也 ,左一八 ,鈴木隆
F − 26 海馬依存性記憶に関わるシアリダーゼアイソザイムの機能解析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
1
○間々田奨 ,南彰 ,榛葉すみか ,播摩沙希 、家野太輔 ,鈴木隆
F − 27 血中由来シアル酸分子種によるラット脳内糖鎖の修飾
1
2
( 静岡県大薬, 静岡県大看・機能形態学)
1
1
1
1
2
1
○松田夕妃乃 ,南彰 ,田口理紗 ,中島さや香 ,金澤寛明 ,鈴木隆
F − 28 シアリダーゼは海馬 CA1 領域におけるシナプス可塑性を制御する
1
2
( 静岡県大薬, 広島国際大薬)
1
1
2
2
1
○堀井雄樹 ,南彰 ,大坪忠宗 ,池田潔 ,鈴木隆
F − 29 希少シアル酸分子種発現による海馬依存性記憶の減弱
1
2
( 静岡県大薬, 広島国際大薬)
1
1
1
2
2
1
○田口理紗 ,南彰 ,堀井雄樹 ,大坪忠宗 ,池田潔 ,鈴木隆
16:00 ~ 16:50【生物系薬学6】 座長 海野 けい子(静岡県大薬)
F − 30 ヒトレギュカルチン遺伝子の選択的スプライシングバリアントの機能的役割の解析
1
( 名城大・薬・生体機能分析学)
1
1
1
1
1
1
○杉村祐貴子 ,西村光未 ,深谷知世 ,疋田清美 ,金田典雄 ,村田富保
F − 31 インフルエンザ A 型ウイルスのヘマグルチニンのスルファチド結合機構の解析
1
2
( 静岡県大薬・生化学, 立教大理)
1
1
2
2
1
○大石健太 ,高橋忠伸 ,藤田侑 ,常盤広明 ,鈴木隆
F − 32 2013 年に中国でヒトに感染した H7N9 型トリインフルエンザ A 型ウイルスのノイラミ
ニダーゼの性状解析
1
2
( 静岡県大薬・生化学, 東大医科研・ウィスコンシン大獣医)
1
1
1
2
1
○田中大夢 ,高橋忠伸 ,紅林佑希 ,河岡義裕 ,鈴木隆
F − 33 ヒト細胞上に発現した Neu5Gc はインフルエンザウイルスの感染を抑制する
1
2
3
( 静岡県大薬・生化学, 広島国際大薬, JRA)
1
1
2
2
3
1
○紅林佑希 ,高橋忠伸 ,大坪忠宗 ,池田潔 ,山中隆史 ,鈴木隆
F − 34 新規糖尿病モデルマウスにおける β 細胞形質の解析
1
( 静岡県大薬)
1
1
1
1
1
○石渡千裕 ,金子雪子 ,佐藤太治 ,中山貴寛 ,石川智久
[ G会場 ] 薬学部棟3階 6329 教室
9:30 ~ 10:30【病院薬学9:リスクマネジメント】 座長 落合 敏明(富士市立中央病院)
G − 01 電子カルテ情報を用いた自動的スクリーニングによるHBV再活性化対策
1
2
3
4
5
( 沼津市立病院薬剤部, 同検査科, 同医事課, 同呼吸器内科, 同消化器内科)
1
1
2
2
3
4
5
○近藤昌子 ,真野徹 ,川口詳司 ,工藤早苗 ,高橋由佳 ,下村巌 ,篠崎正美 ,野
1
毛一郎
G − 02 前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤タダラフィルの適正使用に対する事前調査
1
( 岐阜市民病院薬剤部)
1
1
1
1
1
1
1
○馬淵温子 ,梅田道 ,甲田明英 ,小林寛子 ,牧野哲平 ,青山智 ,水井貴詞 ,後
1
藤千寿
29
G − 03 大垣市民病院における病棟薬剤師によるプレアボイド報告の調査
1
( 大垣市民病院薬剤部)
1
1
1
1
1
1
1
○橋本茉緒 ,高田裕子 ,中島啓二 ,森卓之 ,鈴木宣雄 ,大橋健吾 ,西川智子 ,
1
1
1
1
1
1
栗林未帆 ,森光輝 ,篠田康孝 ,廣瀬達也 ,大月千祐 ,森博美
G − 04 当院における医薬品副作用報告の解析
1
( 聖隷三方原病院薬剤部)
1
1
1
○加賀正基 ,北野谷美保 ,柴山芳之
G − 05 調剤過誤に対する当院の取り組み ~再発防止に繋げることへの難しさ~
1
2
( 鈴鹿回生病院薬剤管理課, 医療安全管理課)
1
1
1
1
2
1
○堀部緑 ,青孝明 ,近藤智彦 ,山川恵子 ,寺田雄亮 ,木村匡男
G − 06 薬剤師および看護師を対象とした注射薬に関わる診療材料における体験型安全対策研修
会の実施
1
( 一宮市立市民病院薬剤局)
1
1
1
1
1
○杉浦あゆみ ,桜田宏明 ,細川健一 ,山田直克 ,山村益己
10:30 ~ 11:30【病院薬学10:実務実習・その他】 座長 松山 耐治(静岡厚生病院)
G − 07 診療報酬改定に伴う向精神薬外来処方整理の流れについて
1
( 医療法人社団進正会服部病院薬局)
1
○松井美由紀
G − 08 市販データベースソフトを利用したDI業務サポートシステムの構築と業務の効率化 ~薬事委員会業務を中心に~
1
( 半田市立半田病院薬剤科)
1
1
1
1
○横田学 ,野田直人 ,田中尚美 ,村上照幸
G − 09 実務実習における問題点の抽出−薬剤管理課スタッフ対象アンケートより−
1
2
( 社会医療法人峰和会鈴鹿回生病院 薬剤管理課, 同医療安全管理課 )
1
2
1
○片桐左希子 ,寺田雄亮 ,木村匡男
G − 10 三重大学医学部附属病院における精神科神経科病棟実習での取り組みと今後の課題
1
2
( 三重大学医学部附属病院薬剤部, 鈴鹿医療科学大学薬学部)
1
1
2
1
1
1
○佐々木典子 ,池村健治 ,三輪高市 ,村木優一 ,岩本卓也 ,奥田真弘
G − 11 地域薬剤師会との在宅訪問薬剤指導依頼・運用方法の構築 ~入院から在宅への移行 1 例を通じて
1
2
3
4
( 総合病院中津川市民病院薬剤部, 同看護部, 同循環器内科, ハロー薬局加子母店、
5
岐阜県薬剤師会)
1
4
5
1
2
1
3
○花田伸子 ,西野義彦 ,曽我望武 ,幸脇正明 ,大山孝子 ,小木曽正輝 ,林和徳
G − 12 病院採用薬変更に伴う門前薬局における後発医薬品調剤率の変化および患者の反応について
1
2
3
( 杏林堂薬局 労災病院前店, 薬局フォーリア将監店, 浜松労災病院 薬剤部)
1
1
1
2
3
1
○富田淑美 ,岡田まり子 ,城戸口有美 ,松野恒夫 ,菅野和彦 ,前嶋克幸
13:00 ~ 13:50【生物系薬学7】 座長 五十里 彰(岐阜薬大)
G − 13 ヒストン脱アセチル化酵素 HDAC9 が相互作用するハンチントン病関連因子 HAP1 の領
域の解析
1
( 名市大・薬)
1
1
1
1
○山口桃子 ,市岡香貴 ,今川正良 ,長田茂宏
G − 15 心筋細胞肥大におけるヒストンアセチル化修飾を介したエピジェネティックな制御機構
の解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1,2
2
2
2
1,3
○船本雅文 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,森本達也
30
G − 16 天然物クルクミンは用量依存的に心筋梗塞後の心不全を改善させる
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1,2
2
2
2
1,3
○宗野匠吾 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,森本達也
G − 17 柑橘系由来天然物オーラプテンの心肥大抑制メカニズムの解明
1
2
3
4
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1,2
3
2
2
2
○鈴木美保 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,村上明 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,4
森本達也
G − 14 肝細胞肥大と薬物代謝酵素誘導の関連性の解析
1
2
( 東北大薬, 静岡県大薬)
1,2
1
1,2
○中島宏之 ,松沢厚 ,吉成浩一
13:50 ~ 14:50【生物系薬学8】 座長 長田 茂宏(名古屋市大薬)
G − 18 転写因子 GATA4 のホモ 2 量体化形成におけるアセチル化の意義について
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○羽鹿成人 ,砂川陽一 ,依光奈津美 ,刀坂泰史 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 19 転写因子 GATA4 ホモ 2 量体化部位の同定および解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○依光奈津美 ,砂川陽一 ,羽鹿成人 ,刀坂泰史 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 20 TBL1/HDAC3 複合体による心肥大抑制メカニズムの解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○小山内崇人 ,刀坂泰史 ,永井陽介 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 21 心肥大反応における新規 GATA4 結合タンパク質 TBLR1 の機能解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○廣田翔 ,刀坂泰史 ,並木雅俊 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,長
2
1,3
谷川浩二 ,森本達也
G − 22 新規 GATA4 結合タンパク質 PRMT1 による心筋細胞肥大反応の抑制
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1,2
1
2
2
2
○天野七菜 ,刀坂泰史 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
G − 23 新規 GATA4 結合タンパク質 WDR5 による p300/GATA4 経路への影響
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○永井陽介 ,刀坂泰史 ,天野七菜 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
15:00 ~ 16:00【生物系薬学9】 座長 澤田 潤一(静岡県大薬)
G − 24 柑橘類果皮成分 Nobiletin は心臓でのエネルギー代謝を改善し、心筋梗塞後の心肥大・
心収縮力低下を抑制する
1
2
3
4
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院)
1
1
1
1,2
3
1
○稗田蛍火舞 ,五十井愛美 ,小川原慎太郎 ,砂川陽一 ,村上明 ,浅川倫宏 ,刀坂
1,2
2
2
2
1
1,4
泰史 ,和田啓道 、島津章 、長谷川浩二 、菅敏幸 、森本達也
G − 25 心筋組織を用いたプロテオミクス解析による新規 Nobiletin 標的因子の探索および解析
1
2
3
4
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院)
1
1
1
1,2
3
1
○五十井愛美 ,稗田蛍火舞 ,小川原慎太郎 ,砂川陽一 ,村上明 ,浅川倫宏 ,刀坂
1,2
2
2
2
1
1,4
泰史 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,菅敏幸 ,森本達也
31
G − 26 新規 Nobiletin 標的因子の心筋細胞での機能解析
1
2
3
4
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院)
1
1
1
1,2
3
1
○小川原慎太郎 ,稗田蛍火舞 ,五十井愛美 ,砂川陽一 ,村上明 ,浅川倫宏 ,刀坂
1,2
2
2
2
1
1,4
泰史 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,菅敏幸 ,森本達也
G − 27 加齢に伴う心臓における p300/GATA4 経路の変化
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○野村幸弘 ,刀坂泰史 ,永井陽介 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 28 心肥大反応抑制分子 RACK1 と GATA4 の結合部位の同定
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1
1,2
1,2
2
2
2
○田中寿樹 ,鈴木秀敏 ,刀坂泰史 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
G − 29 RACK1 による p300/GATA4 経路を介した心肥大反応抑制機構の解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1,2
1
2
2
2
○鈴木秀敏 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,田中寿樹 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
16:00 ~ 16:50【生物系薬学10】 座長 大井 義明(愛知学院大)
G − 30 心肥大反応遺伝子転写抑制における PRMT5 のもつメチル化活性の影響
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○中田淳也 ,刀坂泰史 ,北條祐也 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 31 PRMT5 による p300 のメチル化とその機能解析
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
1
2
2
○北條祐也 ,刀坂泰史 ,中田淳也 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津章 ,
2
1,3
長谷川浩二 ,森本達也
G − 32 MEP50 による p300/GATA4 転写経路調節機構
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
2
2
2
○宮﨑雄輔 ,刀坂泰史 ,櫻井涼賀 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
G − 33 心肥大誘導時における MEP50 の効果の検討
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
2
2
2
○櫻井涼賀 ,刀坂泰史 ,宮﨑雄輔 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
G − 34 PRMT5 心臓特異的過剰発現マウスにおける加齢性心肥大への影響
1
2
3
( 静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院)
1
1,2
1
1,2
2
2
2
○若林弘樹 ,刀坂泰史 ,櫻井涼賀 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津章 ,長谷川浩二 ,
1,3
森本達也
32
9 .懇親会 学生ホール1階(食堂) 17:20 ~ 19:00
参加費 500 円
10.企業展示
H会場(薬学部棟1階カレッジホール) 9:30 ~ 16:00
<出店企業>
サカセ化学工業(株)
(株)シンキー
(株)シンリョウ
(株)タカゾノ
(株)トーショー
ニプロ(株)
日本ベクトン・ディッキンソン(株)
(株)湯山製作所
33
シンポジウム
A会場(大講堂)
9:30 ~ 11:30
「薬食研究の推進:基礎及び臨床研究の最前線」
(併催:日本薬学会東海支部教育シンポジウム)
座長 山田 静雄(静岡県立大学)、森本 達也(静岡県立大学)
A‒1 クルクミンによる心不全治療の展開医療研究
森本 達也(静岡県立大学)
A‒2 排尿障害を改善する機能性食品
伊藤 由彦(静岡県立大学)
A‒3 ビルベリーアントシアニンの眼疾患に対する薬理作用
原 英彰(岐阜薬科大学)
A‒4 配糖化による難水溶性機能性成分の消化管急改善の試み
牧野 利明(名古屋市立大学)
A‒5 シソ由来カルコン誘導体の細胞保護作用
赤池 昭紀(名古屋大学)
35
A‒1
クルクミンによる心不全治療の展開医療研究
1)静岡県立大学薬学部分子病態学講座
2)静岡県立総合病院臨床研究センター心血管臨床研究室
森本達也
,砂川陽一
1,2,3
、刀坂泰史
1,2,3
、長谷川浩二
1,2,3
3
心不全は増加しつつある虚血性心疾患、高血圧性心疾患の最終像であり、この問題を解決することは
社会的、臨床的に極めて重要である。これまでの心不全薬物治療は心不全において活性化される細胞外
の神経・体液性因子を標的としたものであった。心不全のより根本的治療を確立するためには、心筋細
胞情報伝達の最終到達点である核内の共通経路を標的とした治療法を確立する必要がある。我々は内因
性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有する p300 と GATA 転写因子群の協力(p300/GATA 経
路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した。これにより心筋細胞核の
アセチル化、脱アセチル化のコントロールが心不全の進行に中心的役割を果たすことが国際的に認識さ
れつつあり、p300 HAT 活性が心不全治療の重要なターゲットであると考えられる。最近、天然物ウコ
ンの主成分であるクルクミンが p300 の特異的アセチル化阻害作用を持つということが明らかになった
が、我々はこのクルクミンが心不全の進行を抑制することを高血圧性心疾患ならびに心筋梗塞後の2つ
の慢性心不全ラットモデルにおいて証明した。クルクミンは心不全の進展・増悪を抑制するのみなら
ず、高血圧から高血圧性心肥大への移行も抑制することも見出した。さらに、臨床応用を見据えて、既
存の心不全治療薬 ACE 阻害薬との併用効果を心筋梗塞ラットモデルで検証したところ、クルクミン及
び ACE 阻害薬は同程度の心機能改善効果を認め、さらに両方を併用すると相加的な効果を示した。こ
のことからクルクミンは心不全治療薬である ACE 阻害薬に加えて、効果のある治療薬となる可能性が
示された。しかしながら、クルミンを臨床応用するにあたり、一番の問題点は、腸管からの吸収効率が
悪く、大量に服用しなければならないことである。そこで我々は、新たに、Drug delivery system(DDS)
を用いて吸収効率の良い経口コロイダルディスパージョン型クルクミン(高吸収クルクミン)の作成に
成功し、極めて低用量で梗塞後心不全の心機能を改善することを示した。さらに、経口 DDS クルクミ
ン製剤を用いて、高血圧性心肥大患者(軽症心不全)を対象としたヒト臨床試験を行った。経口 DDS
クルクミン 60mg を 24 週間内服したところ、高血圧性心肥大患者の拡張機能障害を改善することを見
出した。
本講演では、クルクミンによる心不全治療の可能性について、基礎研究から臨床試験にわたるトラン
スレーショナルリサーチの結果を概説する。
37
シンポジウム
3)国立病院機構京都医療センター展開医療研究部
A‒2
排尿障害を改善する機能性食品
静岡県立大学薬学部薬物動態学分野
伊藤 由彦
シンポジウム
近年、健康増進や疾患の予防・治療を目的として健康食品・サプリメントへの関心が高まっている。ハー
ブ類を含め、いわゆる健康食品に関しては医薬品の場合と比較して、有効性や安全性についてそのメカ
ニズムを含めた科学的検証は未だ十分とは言えない。とこで、排尿障害は生活の質(QOL)を著しく
低下させる疾患であり、高齢化が進む中で健康寿命の延伸という観点からも重要な疾患である。我々は、
排尿障害に効果があるといわれる機能性食品を中心に、その有効性及び作用機序の検討を行ってきた。
ノコギリヤシ果実エキス(SPE)は、欧州において前立腺肥大に伴う排尿障害治療に用いられ、90%
以上が飽和・不飽和脂肪酸で構成されている。薬理作用としては、5α-reductase 阻害作用や抗炎症作
用などが知られているが、我々は下部尿路への新たな薬理作用を見いだした。種々の頻尿モデルラット
を用いて検討を行ったところ、SPE 投与により頻尿症状の改善作用が示された。SPE の主要成分であ
るオレイン酸とミリスチン酸の脂肪酸混合物の反復投与により、SPE の場合と同様に、一回排尿量の
増加が観察された。また、SPE 及び含有脂肪酸は、排尿障害治療薬の作用部位となる前立腺や膀胱の
α 1 受容体並びにムスカリン性受容体に結合活性を示した。これより下部尿路受容体に対する結合活性
が頻尿改善作用に寄与することが考えられた。
ボタンボウフウ(牡丹防風、Peucedanum japonicum)はセリ科の多年生植物で、そのエタノール抽
出物は動脈硬化予防作用、また有効成分のイソサミジンは血管拡張作用を示すことから機能性食品とし
て注目されている。我々は、ボタンボウフウの経口投与によるラット排尿機能に対する作用を検討した。
ボタンボウフウエキスは単位時間当たりの排尿量には影響を与えず、排尿回数を有意に減少させた。ま
た、一回排尿量を有意に増加させた。次に、過活動膀胱患者にボタンボウフウエキス含有カプセルを 1
日 1 回 1 カプセルずつ内服させる試験を行った。過活動膀胱患者における排尿に関する症状スコア(IPSS
及び OABSS)が有意に減少し、ボタンボウフウの内服により、下部尿路症状が改善されると考えられた。
SPE およびボタンボウフウは組成が複雑で多成分を含むために、その薬理作用の発現には複数の成
分による作用メカニズムが関与していると考えられる。これらの有効成分が規格化されれば臨床薬と同
様に、排尿障害症状の改善のための一選択肢となることが期待される。
38
A‒3
ビルベリーアントシアニンの眼疾患に対する薬理作用
岐阜薬科大学薬効解析学研究室
原 英彰
ある。加齢と共に進行する眼疾患の例として、白内障、加齢黄斑変性症および緑内障などが挙げられる。
一方、現代に生きる我々の生活は目を酷使し過ぎており、同時に増える生活習慣病をはじめとした疾患
が眼に及ぼす影響も無視できない。情報技術の進歩によってコンピュータを使用する人は確実に増加し
ており、テレビゲームや長時間のテレビの視聴,携帯電話のメール操作など,生活の中で目に負担を感
じている人はかなりの数にのぼると考えられる。厚生労働省が発表した「2003 年技術革新と労働に関
する実態調査」によると,約 8 割の身体的疲労を感じる労働者のうち,「目の疲れ,痛み」と回答した
人は約 90%(複数回答)に達し、眼疾患の治療および予防に対するニーズは、今後益々高まることが
予想される。現在の治療戦略としては、薬物療法や眼科手術など対処療法が主であるが、予防医療の観
点ではブルーベリーを主成分とした健康志向食品が市場に多くみられる。ブルーベリーサプリメントの
大半は、ビルベリー(英名:Bilberry、学名:Vaccinium myrtillus L.)を原料とし、主成分アントシア
ニンの含有量を 36%以上に規格化したエキス(Vaccinium myrtillus anthocyanoside:VMA)を用いて
いる。以前より血流改善や抗炎症作用などの薬理作用が報告されており、ヨーロッパの一部の国では既
に医薬品として販売されている。
我々は、VMA の眼疾患予防作用に着目し、各種眼疾患モデルを用いて視機能改善作用を検討した。
VMA は緑内障様モデルとして知られる興奮性アミノ酸(N-methyl-D-aspartic acid:NMDA)誘発マ
ウス網膜神経節細胞障害を抑制し、さらに、未熟児網膜症および糖尿病網膜症様モデルであるマウス高
酸素負荷網膜血管新生モデルにおいて、マウス網膜における異常血管新生の発達を抑制することを明
らかにした。また、老化に関わる紫外線や青色光などの光が網膜に及ぼす影響に対し、マウス由来網
膜視細胞(661W)を用いた紫外線および青色 LED 光誘発網膜視細胞障害 in vitro モデルを作成して、
VMA の網膜細胞保護作用を検討した。VMA は、紫外線並びに青色 LED 光誘発網膜視細胞内 ROS 産
生を抑制し、mitogen-activated protein kinase(MAPK)などストレスタンパク質およびアポトーシス
関連シグナルの活性化を抑制することで細胞障害保護作用を示すことを明らかにした。
本講演では、我々がこれまで報告した VMA の眼疾患予防作用に関する研究成果を中心に、その他の
アントシアニンを含有する食品(黒米、マキュベリー他)についても紹介したい。
39
シンポジウム
私たちの体の部位で老いを示す言葉に “老眼” があるように、眼は老化と密接に関わりをもつ器官で
A‒4
配糖化による難水溶性機能性成分の消化管急改善の試み
名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野
牧野 利明
シンポジウム
ケルセチン(Q)はタマネギやソバなどに、クルクミン(C)はウコンに含まれている機能性成分である。
しかし、Q、C、いずれもその難水溶性のために消化管からの吸収率は低く、それらの機能性発現には
限界がある。そこで、種々の糖鎖構造を付加することによって水溶性を高めた Q および C 配糖体を調
製し、ラットに経口投与した時のそれぞれのアグリコンの体内動態を比較検討した。Q、isoquercitrin
(IQC, Q-3-glucoside)、IQC の glucose(G)に α1 → 4 結合で G を 1 または数分子(n = 1 〜 6)さらに
付加した Q-3-diglucoside(Q3D)と酵素処理 isoquercitrin(EMIQ)、IQC の G に β1 → 6 結合で G を
1分子付加した quercetin gentiobioside(Q3G)、IQC の G に α1 → 6 結合で rhamnose が付加している
rutin(R)、R の G に α1 → 4 結合で G を 1 または数分子付加した α-monoglucosyl rutin(αRM)と
α -polyglucosyl rutin(αRP)の 8 種類の化合物と、C および C の分子内に2つ有る水酸基に G を付加
した curcumin-diglucoside(CDG)を水に溶解または懸濁し、ラットに経口投与した後の血中 Q または
C 濃度推移を測定した。また、正常ラット小腸上部の上皮をホモジナイズして得た粗酵素液を用い、そ
れら配糖体の加水分解反応を検討した。Q および各種 Q 配糖体の生物学的利用率は、Q(2.1%)、IQC
(12%)、Q3D(31%)、EMIQ(36%)、Q3G(3.1%)、R(0.8%)、αRM(4.2%)、αRP(1.9%)であった。
また IQC、Q3D、EMIQ を経口投与したときの Q の最高血中濃度到達時間は 30 分以内であった。小腸
上皮粗酵素液により IQC、Q3D、EMIQ は速やかに Q へ加水分解されたが、Q3G、R は加水分解されず、
α RM、αRP は R までしか加水分解されなかった。CDG についても同様に C の消化管吸収の改善が認
められ、小腸上皮粗酵素液により CDG は速やかに C に加水分解された。Q 配糖体の消化管吸収は IQC
からさらに α1 → 4 結合で G 糖鎖を伸張したものほど吸収率が高く、それらの配糖体は小腸上皮に存
在する酵素により加水分解されて良好な吸収が見られた一方、その酵素により分解されない配糖体は大
腸の腸内細菌により分解された後に緩やかに吸収されるものと推定された。すなわち、難水溶性機能成
分の消化管吸収を改善するためには、小腸上皮にある糖加水分解酵素の基質となるように配糖化するこ
とが重要であることが考えられた。
40
A‒5
シソ由来カルコン誘導体の細胞保護作用
1名古屋大学大学院創薬科学研究科
2京都大大学院薬学研究科
、久米利明 、泉安彦
1,2
2
3
細胞内の活性酸素種の生成・除去の均衡が崩れて生じる酸化ストレスは、生活習慣病や神経変性疾患
などの様々な疾患に関与すると推定されている。生体内抗酸化系の一つとして、抗酸化酵素の発現誘導
に関与する nuclear erythroid 2 p45-related factor 2(Nrf2)-antioxidant response element(ARE)経
路が知られている。転写活性化因子の Nrf2 は、kelch-like ECH-associated protein 1(keap1)と複合体
を形成し細胞質に留められており、酸化ストレス下で核内へと移行し、プロモーター領域にある ARE
と結合して抗酸化遺伝子の発現を誘導する。我々は、生体内の抗酸化機能を高める食品由来成分に着
目し、Nrf2-ARE 経路を活性化する作用を食品間で比較した。ラット NADPH:quinone oxidoreductase
1(NQO1)遺伝子の ARE 配列を含むプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込ん
だ PC12 細胞を用いたレポーターアッセイにより、種々の果汁および野菜のエーテル抽出物について
ARE 活性を評価した。その結果、青ジソおよびクランベリーの抽出物が有意な活性上昇を引き起こし
た。青ジソ抽出物の方が高い活性を示し、細胞毒性も示さなかったために、青ジソ抽出物について、
逆相 HPLC を用いて活性成分の単離・精製を行い、比較的疎水性の高い分画から、活性成分は分子量
300.0985、分子式 C17H16O5 の化合物を有効成分として単離した。NMR 解析による化学シフトやピー
クパターンから、化合物は 2',3'-dihydroxy-4',6'-dimethoxychalcone(DDC)と推定された。PC12 細胞を
用いた薬理学的検討の結果、DDC は、MAPK 系を介して Nrf2-ARE 経路を活性化することが示された。
Nrf2-ARE 経路の活性化により、グルタチオン合成の律速酵素の γ-glutamylcysteine synthetase(γ
-GCS)や heme oxygenase-1(HO-1)などの抗酸化系の発現が誘導されるが、DDC は Native PC12 細
胞においてこれらの酵素のタンパク量を増加した。さらに、6-hydorydopamine により誘発される細胞
死に対して保護作用を示した。DDC のような生体内抗酸化システムを活性化する化合物の摂取により、
生体内の抗酸化力を高まり、酸化ストレスが関与する疾患の予防や進行の緩徐化につながることが期待
される。
41
シンポジウム
赤池昭紀
日本病院薬剤師会会長講演
A会場(大講堂)
16:10 ~ 17:10
座長 篠 道弘(静岡県立静岡がんセンター)
「病院薬剤師の更なる活躍を期待して」
北田 光一((一社)日本病院薬剤師会会長)
病院薬剤師の更なる活躍を期待して
(一社)日本病院薬剤師会会長
北田 光一
疾病構造の変化に伴って求められる医療が変化し、医療に対する需要動態も多様化し、加えて、医療
の進歩に伴う医療費の高騰により、限られた医療資源のなかで質が高く、安全で安心な医療サービスの
提供という難しい課題に直面している。さらに、医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大は医療現場の
疲弊を招いており、チーム医療が医療の質の向上あるいは医療安全の向上に不可欠であることが共通の
認識となって今日に至っている。
一方、近年の生命科学技術・製剤技術等の進歩は目覚ましく、新しい作用機序の医薬品を含め、多く
その重要性が増大しているが、用法・用量、相互作用など使用にあたって注意を要する場面が多くなっ
ており、また、臨床現場での医薬品の選択や投与量の設定など薬物療法の適正化を実践するための解析
方法や生化学的手法が臨床応用されるようにもなっており、薬物治療の安全性と有効性の確保に対する
薬剤師の貢献が求められている。
薬剤師は専門職として、薬に関することについては全て責任をもつ覚悟で、明確な医療への貢献を示
す努力が求められる。各施設の事情に合わせて病棟にとどまらず中央診療部門や外来を含めた「薬ある
ところ」での薬剤業務の展開・充実を図り、チーム医療の推進に積極的に取り組むことが重要である。
費用対効果の視点も重要である。医療の中で医薬品が関わるあらゆる業務において、医療安全のため、
医薬品の有効性を最大限に、予測される危険性を最小限にするために、知識・技術を活用する責任があ
る。医薬品の適正使用を実践し、薬物療法の最適化、副作用の防止あるいは副作用の早期発見による重
篤化の回避など薬物療法の質の向上や病棟における薬剤の管理・使用に関するインシデント・アクシデ
ントの減少による医療安全の確保など、患者の利益につながる病棟を含めた薬剤業務のさらなる充実と
実践が期待される。また、病院完結型の医療から地域完結型の医療への転換を踏まえた地域連携におけ
る薬剤師の貢献も課題である。薬剤師に求められる役割に対して的確に応えていくこと、そして、患者
および他の医療スタッフから評価される客観的な臨床上のアウトカムを積み重ねることが職能の確立に
大事なことである。
また、基礎から臨床あるいは臨床から基礎そして臨床といった一連の研究展開が医療の進歩・発展、
医療の質の向上を支えてきた。臨床応用を指向した、「患者への貢献」という最終的な目標をもった薬
剤師の臨床研究への積極的な取り組みにも期待したい。
45
日本病院薬剤師会会長講演
の優れた医薬品が開発・供給され、薬物療法の向上に大きく貢献している。薬物療法の選択肢が拡大し、
病院薬学セミナー
B会場(看護学部棟 4 階 13411 教室)
13:50 ~ 15:50
「薬学的介入症例サマリーの作成ポイント」
座長:塩川 満 (聖隷浜松病院) 川村 和美 (シップヘルスケアファーマシー東日本)
B‒1 がん専門薬剤師の立場から
宮本 康敬 (浜松オンコロジーセンター)
B‒2 感染制御認定薬剤師の立場から
平下 智之 (岐阜県総合医療センター)
B‒3 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の立場から
加藤 さおり(愛知医科大学病院)
B‒4 薬物療法専門薬剤師の立場から 内藤 隆文 (浜松医科大学医学部附属病院)
B‒5 緩和薬物療法認定薬剤師審査員の立場から 川村 和美 (シップヘルスケアファーマシー東日本)
B‒1
がん専門薬剤師の立場から
医療法人社団 圭友会 浜松オンコロジーセンター
宮本 康敬
がん領域に関連した専門・認定の資格には、日本病院薬剤師会のがん薬物療法認定薬剤師、医療薬学
会のがん専門薬剤師、日本臨床腫瘍薬学会の外来がん治療認定薬剤師、日本緩和医療薬学会の緩和薬物
療法認定薬剤師が存在する。これらに認定申請を行う上でも症例サマリーは必須であり、いずれも文字
数も決められているため、簡潔かつ具体的に記載する必要がある。今回は、自身が経験した乳がん患者
をもとに症例サマリ作成のポイントなどを紹介する予定である。
乳がん薬物療法は、他のがん種と同様に病態や既往歴、初期か再発か、などによって治療方法は決定
されるが、さらに病理検査の結果から得られるホルモン受容体や HER2 蛋白の有無、核異形度、Ki67
値などによっても治療内容は異なる。したがって、治療方法を検討・確認する際には病理結果報告書を
読み解く必要がある。また、使用される薬剤や投与スケジュール、主な副作用やその発現時期などを事
前に説明し、副作用発現時の早期対応は治療を安全に完遂するうえでは必要となる。初期の乳がん薬物
療法では、化学療法だけでなく内分泌療法も 5 年以上の長期間にわたり実施される。内分泌治療の副作
用は比較的軽微な事が多いが、長期間の治療を完遂するためには、副作用対策だけでなく、アドヒアラ
ンスや薬物相互作用の確認は必須と考える。薬物動態学的観点を考慮した薬物相互作用の確認や臓器障
には、乳がん診療や各種支持療法のガイドラインを把握すると同時に、個々の薬剤の薬物動態パラメー
タとそれらの変動要因などを把握しておく必要がある。以上の事を踏まえて、症例サマリ作成にあたっ
ての着眼点や内容・形式の留意点など述べたい。
49
病院薬学セミナー
害時の投与量設定も薬学的な介入の重要なポイントとなる。以上のような内容に薬剤師が介入するため
B‒2
感染制御認定薬剤師の立場から
岐阜県総合医療センター 薬剤センター
平下 智之
感染領域では、日本病院薬剤師会の「感染制御認定薬剤師」、「感染制御専門薬剤師」、日本化学療法
学会の「抗菌化学療法認定薬剤師」の資格が存在する。「感染制御認定薬剤師」、「抗菌化学療法認定薬
剤師」の資格申請時には、それぞれ「施設内において、感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師として
の薬学的介入により実施した対策の内容を 20 例以上」、「感染症患者の治療(処方設計支援を含む)に
自ら参加した 25 例以上」の報告が必要となる。今回、薬学的介入症例の作成ポイントとして、当院に
おける取り組み内容を紹介し、自己の苦労した経験もふまえ症例報告の要点などについて報告する。
当院の ICT(Infection Control Team)は、医師 5 名、看護師 2 名、薬剤師 1 名、臨床検査技師 2 名
のメンバーで構成されている。ICT では、週 1 回 2 時間程度のミーティングの他、院内ラウンドや院
内講習会、ICU における抗菌薬カンファレンスなど院内の感染制御活動を行っており、薬剤師として
は抗菌薬の適正使用を中心に関与している。その一つとして、抗 MRSA 薬の TDM については、2011
年 6 月より全症例の TDM 実施体制を構築し、薬剤師から積極的に処方介入を行っている。
また、2012 年 6 月より病棟薬剤業務実施加算の算定と共に全病棟に専任薬剤師を配置し、ICT 薬
剤師と病棟専任薬剤師が連携して抗菌薬の適正使用を行っている。ICT ミーティングにおいて de-
病院薬学セミナー
escalation が可能な症例は、主に ICT 薬剤師から各病棟担当薬剤師を通して主治医に処方提案を行う流
れとしているため、各担当薬剤師のレベルアップも含め、TDM を中心とした症例カンファレンスを週
3 回(1 回 30 分)実施している。こうした活動を行うに当たり、成人院内肺炎診療ガイドラインやサン
フォード感染症治療ガイド、JAID/JSC 感染症治療ガイド 2011、抗菌薬 TDM ガイドライン、MRSA
感染症の治療ガイドラインなど様々なガイドラインが必要不可欠となる。そして、介入した症例につい
ては、その都度介入したポイントをまとめておくことも重要である。症例に関与した経緯から具体的な
介入内容とその後の経過について、自ら行ったことは能動態で根拠をもとに書くことが大切なため、日
ごろから、ガイドライン等の根拠に基づく処方提案等を心がける事が重要と考える。
最後に、症例はとても厳しくチェックされるため、提出前には前述の要点や薬剤師としての介入、提
案がしっかりと記載されているかを再確認することが大切である。
50
B‒3
妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の立場から
愛知医科大学病院薬剤部
加藤 さおり
妊娠中、あるいは授乳中における薬物の使用は、服薬中の本人に加えて胎児・哺乳児への有害作用に
配慮する必要がある。安易な情報提供が胎児の命の選択に発展したり、母乳から人工乳へ切り替えるきっ
かけとなったりすることもあるため、胎児毒性や発育毒性、催奇形性などリスク評価に必要な情報を収
集・統合評価し、カウンセリングを提供することが重要となる。母子双方にとって安全且つ適切に薬物
療法を実施するために、より専門的な情報とカウンセリングが提供できるよう妊婦・授乳婦薬物療法専
門薬剤師制度が制定されている。
妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の認定申請資格には、研修施設における実技研修や講習会の履修な
どのほかに、『妊婦・授乳婦の薬剤指導実績が 30 症例以上(複数の疾患)を満たしていること』がある。
その内容としては、妊婦・授乳婦に対する薬物療法の胎児毒性・乳児毒性に関する評価・カウンセリン
グ、妊娠と薬情報センター利用による妊婦・授乳婦カウンセリングが合わせて 20 症例以上が必要であり、
残りの症例については、病棟における周産期の患者への薬剤管理指導事例も可となっている。また、妊
婦の症例が 20 例以上 25 例以下、授乳婦の症例が 5 例以上 10 例以下と規定されている。この症例報告は、
どんな情報を利用したか、根拠となるデータにもとづきどう評価したか、患者にどう説明したかなど詳
はないが、少しずつ書きためておくと、活動内容を示すうえでも、介入方法を振り返るためにもよい資
料となるため、症例サマリーを作成しておくことが有用である。今回は、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬
剤師として、患者への介入において注意している点や日常業務で気をつけている点など、実際の経験を
もとに症例報告作成のポイントを紹介したいと思う。
51
病院薬学セミナー
細に記載しなければならず、かなりの労力が必要となる。日常業務のなかでまとめていくことは容易で
B‒4
薬物療法専門薬剤師の立場から
浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部
内藤 隆文
平成 24 年 5 月に日本医療薬学会が薬物療法専門薬剤師の認定制度を発足させた。薬物療法専門薬剤
師とは、「広範な領域の薬物療法に関して、一定水準以上の臨床能力を有する薬剤師」とされている。
すなわち、薬剤師の薬物療法におけるスーパージェネラリストの認定制度になる。
薬物療法専門薬剤師の認定要件の一つに薬学的ケアや介入に関する症例サマリーの提出がある。薬物
療法専門薬剤師の認定制度における症例サマリーは、他の認定・専門薬剤師制度のような特定の分野の
専門性を提示するのではなく、既定の 15 領域における薬物療法から、4 領域以上の薬学的ケアや介入
の提示が必要になる。その中には、がん、感染症、栄養などの症例も含むことができる。薬学的ケアや
介入の症例サマリーの作成にあたり、多くの薬剤師の障壁となっている要件に、「4 領域以上(ただし、
1 領域につき 5 症例以上)、且つ複数の領域を合わせた内科および外科領域の症例をそれぞれ 10 症例以
上含んでいる」がある。実際には、この要件については、重症患者の薬物療法のように集学的アプロー
チを必要とする病棟では、様々な領域や視点からの介入事例の提示が可能である。
平成 22 年 4 月の医政局長通知(厚生労働省)では、医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の
推進を求めている。薬剤師においては、高い専門性に基づく、薬物治療全般の処方設計に必要な情報提
病院薬学セミナー
供や処方提案を行う役割が期待されている。このような背景を踏まえて、薬学的ケアや介入に関する症
例サマリーを作成するポイントとして、以下の項目が挙げられる。
(1)患者の状態や特性に応じた薬学的管理、(2)医療スタッフ(医師、看護師、管理栄養士、臨床検
査技師など)との連携、(3)薬効、有害作用、臨床検査値および薬物血中濃度のアセスメント、(4)薬
学的ケアや介入効果のアセスメント、(5)患者やその家族および医療スタッフへの薬剤情報提供および
教育本シンポジウムでは、薬物療法専門薬剤師としての視点から、薬物療法における薬剤師の関わりを
まとめた症例サマリーの作成のポイントを紹介する。
52
B‒5
緩和薬物療法認定薬剤師審査員の立場から
シップヘルスケアファーマシー東日本 教育研修部
川村 和美
日本緩和医療薬学会は設立当初より、緩和医療に携わる職種の方々の緩和薬物療法に関する知識と技
術の向上、ならびにがん医療の均てん化に対応できる薬剤師の輩出を目指して認定制度を敷いてきた。
この認定制度は 2009 年から始動し、緩和薬物療法に精通していると認められた者に、“緩和薬物療法認
定薬剤師” を認定している。これまでに 5 回の試験が実施され、現在、約 400 名の緩和薬物療法認定薬
剤師が全国で活躍している。
緩和薬物療法認定薬剤師の取得には、5 年以内に認定対象研修会や学会への参加により認定単位 100
単位を取得するとともに、病院薬剤師 30 例、薬局薬剤師 15 例の電子症例報告を申請して、緩和薬物療
法の経験が問われる(技能の保証)。審査によって十分な学習と経験があると認められた者に、認定試
験受験のチャンスが与えられる。認定試験では相対的に 70% 以上の正答率があった場合、合格となり
(知識の保証)、晴れて緩和薬物療法の認定が付与される。さらに、態度教育を中心に開発された緩和ケ
ア研修会「PEOPLE(Pharmacy Education for Oncology and Palliative care Leading to happy End-oflife)プログラム」を 2012 年度から開始し、この研修会の受講を取得 5 年後の認定更新あるいは専門へ
のランクアップの必須要件としている(態度の保証)。
プログラムを提案し、審査を行って来た立場から、どのような介入が望ましく、どのように書き方が好
ましいのか、具体的な事例を用いて解説する。緩和薬物療法に志のある東海地区のみなさんの緩和薬物
療法認定取得に繋がれば幸いである。
53
病院薬学セミナー
今回は、認定申請のスタートラインである症例報告について、認定制度を立ち上げ、症例の電子申請
一 般 講 演
【C会場】 一般教育棟 1 階 2103 教室
【F会場】 薬学部棟2階 6226 教室
9:30 ~ 10:30 【化学系薬学1】
9:30 ~ 10:30 【病院薬学7】
10:30 ~ 11:30 【化学系薬学2】 10:30 ~ 11:30 【病院薬学8】
13:00 ~ 13:50 【化学系薬学3】 13:00 ~ 14:00 【生物系薬学3】
13:50 ~ 14:40 【化学系薬学4】
14:00 ~ 14:50 【生物系薬学4】
15:00 ~ 15:30 【物理系薬学 1】
15:00 ~ 16:00 【生物系薬学5】
15:30 ~ 16:10 【物理系薬学 2】
16:00 ~ 16:50 【生物系薬学6】 16:10 ~ 16:50 【物理系薬学 3】
【G会場】 薬学部棟3階 6329 教室
【D会場】 経営情報学部棟 1 階 4111 教室
9:30 ~ 10:30 【病院薬学9】 9:30 ~ 10:30 【生物系薬学1】
10:30 ~ 11:30 【病院薬学10】 10:30 ~ 11:30 【生物系薬学2】 13:00 ~ 13:50 【生物系薬学7】
14:40 ~ 15:30 【医療系薬学1】
13:50 ~ 14:50 【生物系薬学8】
15:30 ~ 16:20 【医療系薬学2】
15:00 ~ 16:00 【生物系薬学9】
16:20 ~ 17:10 【医療系薬学3】
16:00 ~ 16:50 【生物系薬学10】
【E会場】 小講堂
9:30 ~ 10:30 【病院薬学1】 10:30 ~ 11:30 【病院薬学2】 13:00 ~ 13:50 【病院薬学3】 13:50 ~ 14:40 【病院薬学4】
14:40 ~ 15:30 【病院薬学5】
15:30 ~ 16:20 【病院薬学6】
C‒01
Pd 触媒を用いる環状スルホンアミドおよびスルフィンアミド類新規合成法の開発
静岡県大薬
1
1
1
○田中寛康 ,小西英之 ,眞鍋 敬 1
【目的】 近年 Pd 触媒と二酸化硫黄等価体を用いるハロゲン化アリールの一段階でのスルホンアミド合
成が報告されている。しかしその報告例の全てにおいて、ヒドラジン誘導体を窒素源として用いる Nアミノスルホンアミド類の合成しか達成できておらず、第一級および第二級アミンを用いる一段階での
スルホンアミド類の合成は報告されていない。また Pd 触媒を用いるハロゲン化アリールからのスルフィ
ンアミド類の合成例も皆無である。そこで Pd 触媒と二酸化硫黄等価体を用いる一段階でのスルホンア
ミド類およびスルフィンアミド類の新規合成法の開発を目指し研究に着手した。
【方法・結果】 分子内に第二級アミンおよびヨード基を有する化合物 1 を基質に選択し検討を行った。
種々反応条件を検討した結果、Pd 触媒存在下、二酸化硫黄等価体としてピロ亜硫酸カリウム、塩基と
して n-Bu3N、溶媒としてジメチルスルホキシドを用いることで、化合物 1 から中程度の収率でスルホ
ンアミド 2 を得ることに成功した。また極めて興味深いことに、塩基の当量を変化させることでスルフィ
ンアミド 3 が選択的に生成することを見出した。
C‒02
軸不斉含有ジカルボン酸エステルの効率的合成法の開発
静岡県大薬
1
1
1
○星野史佳 ,小西英之 ,眞鍋 敬
1
1)Ohta, T.; Ito, M.; Inagaki, K.; Takaya, H. Tetrahedron Lett. 1993, 34 , 1615.
2)
(a)Ueda, T.; Konishi, H.; Manabe, K. Org. Lett. 2012, 14 , 3100.(b)Konishi, H.; Manabe, K. Synlett 2014, 25 ,
1971.
57
一 般 講 演
【目的】 軸不斉含有ジカルボン酸エステルは、不斉配位子や有機触媒、およびそれらの重要な合成中間
体となる有用な化合物である。しかし、その合成には原料である 1,1́-ビナフトールのトリフリル化に加
1)
え、3、4 段階を要するか、毒性の高い一酸化炭素(CO)ガスを使用しなければならず 、非常に煩雑
な工程を経なければならなかった。一方、当研究室ではギ酸誘導体が弱塩基と反応して CO を発生する
2)
こと見出し、ギ酸誘導体を CO 源として利用する反応を開発してきた 。そこで、ギ酸誘導体を CO 源
して用いるカルボニル化法による、軸不斉含有ジカルボン酸エステル類の簡便かつ効率的な合成法の開
発を目的に検討を行った。
【方法・結果】 (R)-1,1́-ビナフトールをトリフリル化あるいはノナフリル化した化合物を基質とし、ギ
酸フェニルを CO 源として用い、溶媒、配位子、温度等の条件検討を行った。その結果、DMF 溶媒中、
配位子に DPPP を用いた場合に、中程度の収率で目的物が得られることを見出した。今後、引き続き
ギ酸エステル、塩基、触媒、反応時間等についても検討を行い、最適条件を決定する予定である。
C‒03
相間移動触媒の創製を基盤とする不斉フッ素化反応の開発
1
静岡県大薬
1
1
1
1
1
○浅田純司 ,佐藤健太郎 ,川戸勇士 ,江上寛通 ,濱島義隆 【目的】 フッ素は水素と同程度の原子半径でありながら、全元素の中で最大の電気陰性度を持つという
特徴がある。そのため、有機分子の水素をフッ素に置き換えた場合、化合物の立体的な性質を大きく変
えずに生物学的な性質を大きく変えることができる。したがって、医薬品や農薬の分子構造にフッ素を
導入することは非常に重要な戦略である。しかし、未だに立体選択的なフッ素化は合成化学的に困難で
あり、特にオレフィン類の不斉フッ素化は未開拓である。そこで、新規触媒を設計することにより新規
不斉フッ素化反応を開発することとした。
【結果・考察】 今回、これまでに成功例のないラクトン環形成を伴う不斉フッ素化反応の検討を行った。
新規に設計したモノカルボン酸触媒を、系中でモノカルボキシラート触媒とし、これを用いて種々不
斉フルオロラクトン化反応の条件検討を行った。これまでに 80%ee を越える不斉収率が得られている。
本発表では、この反応の詳細について報告する。
C‒04
超原子価ヨウ素型クロロ化試薬を用いるオレフィン類の二官能基化反応
1
静岡県大薬
1
1
1
1
1
○米田貴洋 ,宇久美奈子 ,川戸勇士 ,江上寛通 ,濱島義隆 一 般 講 演
【目的】 塩素は天然有機化合物等の有用な生物活性物質に含まれているのみならず、そのクロロ基自体
の反応性を利用した変換反応もあることから、有機分子骨格に塩素を導入する反応の開発は重要である。
一方、当研究室では超原子価ヨウ素試薬を用いたトリフルオロメチル化反応の検討を活発に行なってい
る。そこで我々は対応するクロロ化試薬 1 に着目した。この試薬は既知であるにもかかわらず、その反
応性に関しては系統的な研究がなされていない。そこで今回、このクロロ化試薬 1 を用いたオレフィン
類のクロロ二官能基化の開発を目的として研究を行うこととした。
【結果・考察】 p-メチルスチレン 2 に対し、アセトン:水を溶媒としてクロロ化試薬 1 を反応させたと
ころ、オキシクロロ化された 3 が単一生成物として得られた。さらに種々検討を行なったところ、非極
性溶媒中、ルイス塩基を触媒量添加したときに、ジクロロ化された 4 が得られることを見出した。本発
表ではその詳細について報告する。
58
C‒05
演題取り下げ
フロー型マイクロウェーブ装置の活用による連続合成に関する研究
2
3
4
静岡県大薬, サイダ ·FDS, 産総研, 阪大院薬
1
1
2
3
4
1
○澤入 平 ,藤田将司 ,小田島博道 ,杉山順一 ,赤井周司 ,川戸勇士 ,
1
1
江上寛通 ,濱島義隆
C‒06
1
【結果・考察】 Biginelli 反応はベンズアルデヒド、尿素、アセト酢酸メチルの縮合によりジヒドロピリ
ミジノン化合物を与える有用な反応である。本反応の連続合成を行ったところ、良好な結果を得た。単
位時間あたりの収量についてはさらなる改善を目指し、更なる検討を行っている。また Hantzsch ジヒ
ドロピリジン合成反応についても検討しており、本発表ではこれらの詳細について報告する。
59
一 般 講 演
【目的】 マイクロ波を反応溶液に照射することで、効率的で迅速な加熱が可能となり、反応時間の大幅
な短縮と収率が向上することが報告されてきた。一方近年では、溶液を流して反応を連続して行うフロー
ケミストリー技術を用いた合成法の研究が盛んである。それは大量合成において、バッチ反応に比べ安
全で運用コストが少なく、反応条件の検討が容易なことが要因である。我々の研究グループでは、マイ
クロ波の利点を活かしつつ安全に大量合成を行えるベンチトップ型のフロー型マイクロ波照射装置を開
発した。ところで、医薬品や農薬など生物活性を有する化合物の多くはヘテロ環を有している。ヘテロ
環化合物の合成法として、様々な基質に対して縮合反応が用いられている。そこで今回、開発したフロー
型マイクロ波照射装置を用いて縮合反応によるヘテロ環構築の効率化を目指して研究を行った。
C‒07
ヘジオトール A の合成研究
1
静岡県大薬
1
1
1
1
1
1
1
○石川 諒 ,河辺佑介 ,吉田直人 ,稲井 誠 ,浅川倫宏 ,濱島義隆 ,菅 敏幸
【目的】
ヘジオトール A(1)は Hedyotis lawsoniae の葉より単離された新規フロフランリグナンであ
る。フロフラン骨格とジヒドロベンゾフラン環を有する 1 は優れた生物活性が期待されているにも関わ
らず、これまでに合成例がないために十分な研究がなされていない。そこで、1 の立体選択的かつ誘導
体化可能な合成法の確立を目指し、合成研究に着手した。
【方法・結果】 フロフラン骨格の連続する 4 つの不斉中心は、不斉アルドール反応により得られる立体
化学を足掛かりとして構築することとした。種々検討の結果、2、3 に対するプロリン触媒を用いた不
斉アルドール反応により、望む立体化学を有する 4 を得た。この際、強力な電子求引性基である Ns 基
を用いて芳香環上の電子密度を低下させることで、通常困難である電子豊富なベンズアルデヒド誘導体
とのアルドール反応が収率よく進行することを見出した。また、ジヒドロベンゾフラン環の不斉中心は、
当研究室で開発した 5 へのロジウム触媒を用いた分子内 C–H 挿入により構築し、6 へと導いた。これ
ら 2 つの鍵化合物を強塩基にて縮合し、フロフラン骨格を構築後、種々の変換を行うことで、1 の全合
成を達成した。
C‒08
Raputindole A の合成研究
2
静岡県大薬、 阪大院薬
1
1
1
1, 2
1
1
○神谷真鈴 、石上加菜 、太田裕也 、赤井周司 、江木正浩 、菅 敏幸
1
一 般 講 演
【目的】 Raputindole A は Ruputia simulans Kallunki の幹皮及び根から単離、構造決定されたインドー
ルアルカロイドの一種である。本化合物はアルツハイマー病や糖尿病への治療効果を期待されているが、
これまで合成例は報告されていない。一方、最近我々は第三級プロパルギルアルコールとイナミドを銀
触媒存在下で反応させると四置換アレンが得られ、続いて白金触媒による分子内環化でインデンに変換
できることを見出した。そこで、開発した反応を用いて Raputindole A の三環性骨格を構築することと
し、合成研究に着手した。
【方法・結果】 インドールやシロキシ基で官能基化された第三級プロパルギルアルコール 1 を用いて、
AgOTf によるイナミド 2 との反応を行なった。その結果、反応は良好に進行し四置換アレン 3 を収率
良く与えた。続く 3 の分子内環化では反応点(5 及び 7 位)の制御が問題であったが、インドールの保
護基として Ts 基を用いると反応は 5 位で優先的に起こり、目的の三環性化合物 4 を得ることに成功した。
得られた 4 に対してアミド側鎖の変換と TBS 基の脱保護を行い、5 を合成した。5 のインデン骨格を天
然物と同じ立体を持つインダン骨格へ変換するため、遷移金属触媒による第一級水酸基のキレーション
効果を利用した面選択的な還元を試みた。種々検討を行なった結果、Wilkinson 触媒に Hünig 塩基を共
存させて水素添加反応を行なうと、目的の立体を有する 6 が優先的に得られることが分かった。現在、
5 から 6 への還元について収率、選択性の向上を図るとともに、Raputindole A への合成経路の確立を
行なっているところである。
60
C‒09
TAN1251C の全合成
静岡県大薬
1
1
1
1
1
1
1
○松村幸亮 ,長坂洋祐 ,升田明孝 ,稲井 誠 ,浅川倫宏 ,江木正浩 ,菅 敏幸
1
【目的】 TAN1251 類は 1991 年に武田薬品工業の研究グループにより Penicillium thomii RA-89 株の培
養ろ液より分離されたアルカロイドであり、ムスカリン受容体に対して親和性を有することが明らかと
なっている。構造的特徴として、二環性骨格である 1,4-diazabicyclo[3.2.1]octane 環とシクロヘキサノ
ン環がスピロ結合している点が挙げられる。この特異な構造と生物活性に興味を持ち、TAN1251C(1)
及びその類縁体の合成研究を行っている。これまでに当研究室では FR901483 の全合成での知見を生か
し、Ugi 反応を利用した 1 の全合成を達成している。しかし、全 15 工程の中でモノメチルアミノ基の
導入に 4 工程を要しており、さらなる短工程化が見込まれる。そこで、著者は合成序盤でアミノ基を
導入することで短工程化が可能であると考え、Ugi 反応での複雑な基質の適用を試みた。
【方法および結果】 以前の合成では、カルボン酸ユニットとして酢酸を用いていたが、N-Boc- サル
コシン 5 へと変更し、アミン 2、ケトン 3、イソニトリル 4 と反応させることで 1 の中心骨格構築に
必要な官能基を全て導入した 6 を良好な収率で得ることに成功した。続いて種々の変換を行うことで
Ciufolini らの報告している中間体 7 へと導き、1 の形式全合成を達成した。
C‒10
ロバタミド A の合成研究
1
静岡県大薬
1
1
1
1
1
○森兼悠太 ,稲井 誠 ,浅川倫宏 ,江木正浩 ,菅 敏幸
1)Boyd, M. R, et al. J. Org. Chem. 1997, 62 , 8968.
2)Kishi, Y.; Namba, K. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127 , 15382.
61
一 般 講 演
【 目 的 】 ロ バ タ ミ ド A(1) は、 オ ー ス ト ラ リ ア 近 海 に 生 息 す る ホ ヤ
Apilidium lobatum より単離された Z 三置換オレフィン、ジビニルカルビノー
1)
ル基を含む 15 員環マクロライドである 。1 は強力な V-ATPase 阻害作用
を有していることが知られ、癌の新規治療薬として期待されている。我々は、
構造活性相関研究と効率的供給を目的とした 1 の柔軟な合成法の開発を目
指し研究を行った。
【結果】 ロバタミド A 類縁体合成及び誘導体合成を容易とするべく側鎖エ
ナミド部は、合成終盤に導入することとし、先に 15 員環骨格を構築するこ
ととした。マクロラクトン骨格構築には、官能基供与性に優れ高希釈条件を必要としない、Ni/Cr カッ
2)
プリング反応の改良法を適用することとし ,その前駆体としてアルデヒド 5 を設定した。現在、5 の
前駆体となる三成分 2、3、4 の大量合成と前駆体 5 の合成を検討中である。
C‒11
抗腫瘍性メロテルペノイド・バークレーオン類の合成研究
1
名市大院薬
1
1
1
○鈴木恵介 ,山越博幸 ,中村精一 【目的】 バークレーオン類は Stierle らによって単離・構造決定されたメロテ
ルペノイドであり、カスパーゼ -1 に対する阻害活性を持つことが報告されて
いる。今回我々は、本化合物群の網羅的な全合成に向けての第一段階として、
生合成共通中間体と考えられているバークレートリオンを最初の標的化合物と
して選び、BCD 環部の立体選択的な構築法の開発を目指した。
【方法・結果】 我々は、バークレートリオンの BCD 環部をポリエン環化反応により構築することを計
画し、D 環部を簡略化した基質を用いてモデル実験を行うことにした。文献既知のアルコール 1 を出発
原料として、スルホンのアルキル化、TMS メチル基の導入、Sharpless エポキシ化を含む 20 工程の変
換を経て C4 位にビニル基を持つエポキシアリルシラン 3 を調製した。3 に対して反応条件を種々検討
した結果、CH2Cl2 中 -98℃で Et2AlCl を作用させると、望みとする三環性化合物 4 が収率 72% で単一異
性体として得られることが分かった。一方、C4 位の置換基が異なるシリルエーテル 5 を用いた場合に
は基質が分解するのみであったことから、望みの反応の進行にはビニル基による C4 位カチオンの安定
化が重要なことが示唆された。本発表ではポリエン環化反応における C4 位置換基の効果と反応条件の
詳細な検討結果についても報告する予定である。
C‒12
ケンポナシ(Hovenia dulcis )の成分研究(第2報)
2
3
岐阜薬大・生薬、 岐阜薬大・薬資、 摂南大・薬
1
1
2
3
1
1
○藤井直希 、松本乃里子 、田中稔幸 、邑田裕子 、阿部尚仁 、大山雅義
1
一 般 講 演
【目的】 ケンポナシ(Hovenia dulcis )は、日華植物区系に属するクロウメモドキ科の落葉高木であ
る。本植物の化学成分に関する研究の歴史は古く、根皮から frangulanine のような環状ペプチドが
報告されているほか、葉および果実から hoduloside 類のような構造特異なダンマラン型トリテルペ
ンサポニンなどが単離されている。前報において、我々は本植物の木部アセトン抽出エキスから、
2-hydroxybetulinic acid 3-O-ferulate や pronuciferine の様なトリテルペンアシレートおよびプロアポル
1)
フィンアルカロイドなど、本植物からは初めての報告となる化合物の存在を明らかにした。 今回、引
き続きアセトン抽出エキスについて成分研究を行うとともに、メタノール抽出エキスについても検討を
加えたので、それらの結果について報告する。
【方法】 ケンポナシ木部を細断後、室温でアセトンおよびメタノールにより順次抽出し、エキスを調製
した。得られたアセトン抽出エキスを 80% メタノールと n- ヘキサンで液々分配し、各相についてクロ
マトグラフィーを繰り返し行い、化合物の分離、精製を試みた。単離した成分の構造は各種機器スペク
トルを解析することにより決定した。
【結果】 現在までに、本植物の木部アセトン抽出エキスより、新規ネオリグナン(1)を始め、パラク
マル酸をアシル基に有する 2-hydroxybetulinic acid 誘導体2種、naringenin 誘導体2種を単離し、それ
らの構造を明らかにした。化合物 1 は、既に単離した balanophonin にパ
ラクマル酸が結合した構造であると考えられた。
ケンポナシは古来多くの成分研究が行われてきた植物であるが、この様
に化合物ソースとして新たな可能性が示唆された。現在メタノールエキス
についても、高極性成分を目標に詳細な成分研究を行っている。
1)藤井ら、日本薬学会第 134 年会(熊本)講演要旨、29amM-123(2014)
62
C‒13
非水系 CE- 希土類錯体時間分解蛍光測定による高感度測定法の開発
2
岐阜薬大, 岐阜大院連合創薬
1
1,2
1
1
1,2
○富田美幸 ,江坂幸宏 ,平山 祐 ,永澤秀子 ,宇野文二
1
【目的】 生理活性物質の中には、非常に低濃度であっても、生体に及ぼす影響が大きいものが多く存在
する。その検出と挙動の解明は生命化学分野における重要な課題である。本研究では検出対象をユーロ
ピウム錯体誘導体に変換し、キャピラリー電気泳動(CE)で分離し、希土類錯体特有の長寿命蛍光を
-10
遅延測定するやり方で、広範な生理活性物質に対して 10 mol/L の濃度感度を有する高感度検出法の確
立を目指している。
【方法】 ここではアルキルフェノールをモデルターゲットに β ジケトン構造を持つ誘導体化試薬
CDPP と反応させる。生成した DPP 誘導体を DMSO 溶液である泳動液中でユーロピウムイオンと定量
的に錯体形成させて、荷電及び発光させる。荷電したターゲットは CE 分離され、時間分解遅延検出に
より高 S/N 比で検出される。今回は特に、実分析で感度を発揮するための「誘導体化に伴う干渉ピー
クの除去」を目的に、分析対象の誘導体化反応条件の抜本改良を行った。即ち、トルエン - 水の二相系
に相間移動触媒として TBACl を添加して反応を進行させ、トルエン相を測定サンプルとする。これを
非水 CE 測定系に導入し、分離・検出を行った。
【結果】 アセトニトリルを反応溶媒として均一溶液反応で得られた誘導体化試料の CE の検出チャート
と比較して、今回行った二相系反応では干渉ピークが劇的に減少または消滅した。さらに誘導体化試薬
による大きな分解物ピークは二相系を用いた誘導体化法では検出されなかった。また、二相系に相間移
動触媒を添加することにより、現状で 54%前後の誘導体化収率を得た。
【考察】 アセトニトリルと比較してトルエンには誘導体化試薬 CDPP(酸クロリド)と反応する不純物
が少ないことが、干渉ピークの大幅な減少の理由の一つであろう。また誘導体化試薬の分解物は水相へ
と移動するため、測定サンプル中には残存せず検出されなかったと考えられる。同様に、高極性な干渉
成分が水相へ移動することで、干渉ピークの減少に貢献した可能性が高い。誘導体化反応を用いる場合、
干渉成分の除去が実質感度を高めるうえで非常に重要となる。今後、固相抽出を含めた前処理法の検討
も行う予定である。
C‒14
Truce-Smiles 転位反応を利用したヘテロ五員環縮合 [2,3-c]isoquinoline 類の合成
1
岐阜薬科大学 創薬化学大講座 薬化学研究室
○豊福優太,奥田健介,平山 祐,永澤秀子
Ref. K. Okuda, et al., Chem. Pharm. Bull. 58(3), 363–368(2010); K. Okuda, et al., Tetrahedron Lett. 51(6),
903–906(2010).
63
一 般 講 演
【目的・方法】 以前に、炭素求核種を用いる分子内芳香族求核置換反応である Truce-Smiles 転位から
のドミノ反応により、2-(3-cyanopropyloxy(or 3-cyanopropylthio))aryl(or cycloalkenyl)nitrile から、
一挙に fused 1,2-dihydrofuro(or 1,2-dihydrothieno)[2,3-b]pyridin-5-amine を形成できることを見出し
た(Scheme 1)。これらの三環性骨格はドラッグライクな構造として有用であり、例えば PARP(poly
ADP ribose polymerase)阻害剤である TIQ-A(thieno[2,3-c]isoquinolin-5(4H)-one)誘導体の基本骨格
である。そこで、本反応による三環性 PARP 阻害剤の多様性志向合成を目指して、反応基質の合成お
よび転位反応を行った。
【結果と考察】 Truce-Smiles 転位により得られた成績体を 1)diazonium 中間体経由の chloro 化、2)
silyl ether 経由の加水分解、および 3)DDQ ないしは NBS 酸化を用いて変換することにより、TIQ-A
類縁体およびその 1,2-dihydro 体を種々合成することができた。また、転位反応の基質一般性の検
討 過 程 に お い て、 基 質 と し て sulfoxide
(X: SO) お よ び trifluoroacetamide(X:
NCOCF3)を用いた際においても ThorpeZiegler 反応ではなく Truce-Smiles 転位が
進行していることが各種スペクトルの結
果から示唆された。今後、X 線結晶構造
解析等により構造を確定する。
C‒15
トリフェニルスチバンを触媒に用いた α- ヒドロキシケトンからの
2- アリールキノキサリン合成
1
愛知学院大・薬
1
1
1
1
○松村実生 ,高田理恵 ,鵜飼 佑 ,安池修之
【目的】 キノキサリン骨格は生理活性物質をはじめとして、医薬品の合成中間体など、幅広く活用され
ている。その中で、2-アリールキノキサリンは CuCl2、MnO2、CaO などの触媒存在下、α-ヒドロキシ
ケトンと 1,2-ジアミンから合成する方法が知られている。一方で近年、我々は 15 族高周期典型元素化
合物の化学反応性の解明に取り組み、これまでにトリフェニルスチバン(Ph3Sb)を触媒に用いた、空
気雰囲気下で行うベンゾインからベンジルへの簡便な酸化反応を報告してきた。そこで今回、各種 15
族元素化合物を触媒として、α-ヒドロキシケトンと 1,2-フェニレンジアミンからの酸化的閉環反応を利
用した 2-アリールキノキサリンの合成を検討した。
【方法・結果】 先ず、モデル反応として 2-ヒドロキシアセトフェノン(1a; Ar = Ph)と 1,2-フェニレン
ジアミン(2a; R = H)を選び、反応条件(触媒・添加剤・溶媒等)の検討を行った。その結果、Ph3Sb
を触媒に用いて、室温下、トルエンや CH2Cl2 溶液中で反応を行うと、対応する 2-フェニルキノキサリ
ン(3a)が高収率(80-83%)で得られることを見出した。本反応は 1 や 2 の芳香環上の置換基の影響
はほとんど受けず、対応する 2-アリールキノキサリン(3)を良好な収率(60-80%)で与えた。
C‒16
セラミック担持型パラジウム触媒の開発と官能基選択的接触還元
1
2
3
岐阜薬大, 和光純薬, ブライトセラム
1
1
2
3
1
1
○門口泰也 ,丸本貴久 ,三宅 寛 ,永江良行 ,澤間善成 ,佐治木弘尚
一 般 講 演
【目的】 分子内に共存する還元性官能基のなかで所望の官能基のみを選択的に水素化する官能基選択的
接触還元反応は、既存合成ルートの短縮や新規合成ルートの開拓を可能とする。我々は市販のパラジウ
1
2
ム炭素(Pd/C)に、触媒毒として作用するエチレンジアミン やジフェニルスルフィド を配位 ・ 固定
化して、Pd/C の触媒活性を適度に抑制した Pd/C(en)及び Pd/C(Ph2S)を調製し、それぞれ官能
3
基選択的接触還元反応触媒として開発している。また、蚕糸のタンパク成分であるフィブロイン や窒化
4
5
6
7
ホウ素 、モレキュラーシーブ 、ポリエチレンイミン 、有機合成ポリマー など様々な素材に 0 価パラ
ジウムを担持する手法を確立し、接触還元に対して各触媒が担体の性質に依存した官能基選択性を示す
8
ことを明らかとしている 。今回、天然粘土鉱質由来の多孔性
セラミックを担体とするパラジウム触媒を開発し、様々な還元
性官能基の接触還元に対する触媒活性を精査した結果、興味深
い知見を得ることができたので報告する。
【方法 ・ 結果】
酢酸パラジウムのメタノール溶液に粉末状セラ
ミックを懸濁し、アルゴン雰囲気下室温で 6 日間撹拌すること
で、灰黒色の 5% Pd/ceramics を調製した。5% Pd/ceramics
を触媒とする常温 ・ 常圧下の接触水素化反応ではベンジルエス
テルやベンジルエーテルは安定であったが、N-Cbz 基は脱保護
されるなど、これまでの触媒では達成できなかった官能基選択
的反応を確立することができた。
J. Org. Chem. 1998, 63 , 7990. Adv. Synth. Catal. 2008, 350 , 406. Tetrahedron Lett. 2003, 44 , 171. Adv.
5
6
7
Synth. Catal. 2012, 354 , 1264. Tetrahedron 2012, 68 , 8293. J. Mol. Catal. A: Chem. 2009, 307 , 77. Chem. Eur. J.
8
2009, 15 , 834. Catal. Sci. Technol. 2014, 4 , 260.
1
2
3
64
4
C‒17
アルコールの Rh/C 触媒的脱水素酸化反応
1
岐阜薬大
1
1
1
1
1
澤間善成 ,○森田康介 ,山田 強 ,門口泰也 ,佐治木弘尚
【目的】 アルコールからカルボニル化合物への酸化反応は基本的かつ重要な化学変換法である。しかし、
重金属酸化剤を必要とする反応が多く、代替法が活発に研究されている。近年、副生成物が水素ガスの
みである脱水素型酸化反応が注目されており、特に不均一系触媒反応は、触媒が容易に回収・再利用で
きるため環境負荷低減型の反応として有用である。しかし、有機溶媒中の例しか報告例が無く、第 1 級
アルコールはアルデヒドまでしか変換されないなどの課題が残る。一方我々は、不均一系プラチナ炭素
(Pt/C)触媒がイソプロパノール(iPrOH)からの脱水素を水中で促進することを明らかとし、生成す
1)
る水素ガスを利用した芳香族フッ素化合物の脱フッ素化(還元)反応を確立している 。 この知見をも
とに、水中でアルコールからの脱水素反応(酸化反応)を不均一系触媒的にできるものと考えた。
【結果】 この反応では、副生する水素ガスによるカルボニル化合物の接触水素化(逆反応)の抑制が鍵
となる。詳細な検討の結果、Na2CO3 や NaOH 存在下、ロジウム炭素(Rh/C)を触媒として水中加熱
撹拌することで、第 2 級アルコールはケトンに、第 1 級アルコールはカルボン酸に効率良く変換される
2)
ことを見出した 。水を溶媒としているため、第 1 級アルコールの脱水素で生じたアルデヒドは水和さ
れ(A)、2 度目の脱水素反応が進行してカルボン酸が
得られる。また、水中反応では不均一系触媒の発火の心
配が無く安全であり、経済的にも優れる。副生する水素
ガスは次世代エネルギー源として期待されるため、本反
応は不要な廃棄物を出さない環境調和型の方法論として
工業的実用化が期待される。
1)Adv. Synth. Catal. , 2012, 354, 777.
2)Green Chem., 2014, 16, 3439.
65
一 般 講 演
化学修飾 siRNA の合成とそのオフターゲット効果
1
2
C‒18
岐阜大院工, 岐阜大院連合創薬
1
1
1
1,2
○河出美和 ,中島礼美 ,喜多村徳昭 ,北出幸夫
【目的】 siRNA(small interfering RNA)は、21 - 23 塩基対からなる短鎖二本鎖 RNA で RNAi にお
いて重要な役割を担っており、遺伝子レベルでの治療が望めることから様々な遺伝子疾患の治療への応
用が期待されている。しかし、siRNA を実用化するには、いくつかの問題点が存在する。そのひとつ
に標的遺伝子以外の遺伝子の発現を抑制する現象(オフターゲット効果)がある。当研究室では、セン
ス鎖(標的 mRNA と相互作用しない鎖)が RISC(RNA-induced silencing complex)に取り込まれる
ことによって引き起こされるオフターゲット効果の回避を目的として、3′- 末端二塩基突出部位に窒素
原子を含む極性残基 Nm を導入した siRNA を合成し、その機能を評価してきた。これまでに、siRNA
のアンチセンス鎖(標的 mRNA と直接相互作用する鎖)に極性残基 Nm を導入すると、ノックダウン
効果が低下することを見出している。RISC の主要構成因子である Argonaute の PAZ ドメインとの相
互作用が低下することで、PAZ ドメインへの 3′- 末端二塩基突出部位の取り込みが抑制されることが
示唆された。本研究では導入した極性残基 Nm と PAZ ドメインとの相互作用の評価を目指した。
【方法および結果】 極性残基 Nm との
比較対照として thymidine 二量体(TT)
をホスホロアミダイト法を用い、液相
にて合成することに成功した。さらに、
当研究室にて発現に成功しているヒト
Argonaute の PAZ ドメインと 3′- 末端
二塩基突出部位である Nm および TT
との結合親和性を調査し、報告する予定
である。
C‒19
クリック反応による PET ラベル化 RNA の合成と評価
1
2
岐阜大院工, 岐阜大院連合創薬
1
2
1
1,2
○牧野洋平 ,仁 欽 ,喜多村徳昭 ,北出幸夫
【目的】 Copper-catalyzed azide-alkyne cycloaddition(CuAAC)反応は、1 価の銅触媒存在下で末端ア
ルキンとアジドが容易に反応して安定なトリアゾール環を形成する事から PET プローブ合成に汎用さ
れている。しかし、CuAAC 反応で一般的に用いられる条件、すなわち 2 価の銅と還元剤を用いて反応
系内で 1 価の銅を発生させる方法では、系内で副生するヒドロキシラジカルによる核酸オリゴマーの分
解が併発するため、高価な配位子の添加が必要とされている。また、基質が DNA に限定される等の課
題を有している。当研究室ではこれまでに種々の末端アルキン含有人工核酸を開発するとともに、配
位子不要で室温で効率的に進行し、RNA を含む任意の核酸オリゴマーの PET ラベル化に適用可能な
E
CuAAC 反応を開発している。本研究では、最近開発したグリコール骨格を有する人工核酸 M を導入
した機能性 RNA を合成し、その機能を評価した。
【方法・結果】 L(+)-マンデル酸を出発原料とし、5 工程を経てエチニルベンゼン置換型グリコール
E
ME を得た。固相ホスホロアミダイト法での M の核酸オリゴマーへの導入にあたり、対応するホスホ
E
ロアミダイト体と CPG 樹脂連結体に誘導した。核酸自動合成機にて M を導入した機能性 RNA を合成
し、その機能を評価した。
C‒20
グルタチオントランスフェラーゼで活性化される分子プローブの開発
2
3
4
岐阜大工, 北大院薬, カロリンスカ研, 岐阜大院連合創薬
1
2
3
1, 4
○柴田 綾 ,阿部 洋 ,Ralf Mogenstern ,北出幸夫 1
一 般 講 演
【目的】 グルタチオントランスフェラーゼ(GST)は正常細胞と比較して腫瘍細胞で過剰に発現してい
ることが古くから知られている。この GST の過剰発現が腫瘍の薬剤耐性の一因となっていることから、
細胞内の GST 活性レベルを知ることは、抗がん剤選定等の決定のために重要である。しかし、既存の
GST 検出プローブは検出の際にグルタチオン(GSH)との抱合体を形成するため、細胞外に排出され
やすい問題があった。そのため、本研究では GST 活性を検出する際に、GSH との抱合体を形成しない
プローブの設計を試みた。
【方法】 求電子性保護基であるアリールスルホニル基を用いて細胞内 GST 活性を測定するための蛍光
プローブの開発を計画した。それぞれ異なる置換基を 4 位に導入した蛍光プローブを合成し、各 GST
サブタイプとの反応性を検討した。
【結果および考察】
蛍光化合物のローダミンのア
ミノ基を 4 位置換基が異なるアリールスルホニル
基で保護することで、いずれもほぼ無蛍光の化合
物になった(図)。これらの合成したプローブは、
GST 存在下でグルタチオンと反応させることで
その蛍光強度が大きく増大したことから、GST
のよい基質になることが分かった。この際、アリー
ルスルホニル基の 4 位置換基が反応に及ぼす影響
は GST サブタイプによって異なることが明らか
となった。
66
C‒21
スギヒラタケの毒成分プローブ分子を目指した合成研究
2
3
静岡県大薬, 静岡大学農, 静岡大学創造科学
1
1
2
3
1
○野田和宏 ,吉野友美 ,鈴木智大 ,河岸洋和 ,浅川倫宏
1
1
1
稲井 誠 ,江木正浩 ,菅 敏幸
1
【目的】
2004 年、それまで安全に食されてきたスギヒラタケの摂取が食中毒を
引き起こし、17 名の死者を発生させ大きな社会問題となった。 2011 年に、静岡
大学の河岸教授との共同研究により不安定なアミノ酸 Pleurocybellaziridine(1)
1)
を合成し、毒成分であることを明らかにした 。今回、簡便かつ微量分析を可能
にする抗体作製を目的として、ハプテン前駆体となる末端にアミノ基を有する 8 の合成に着手した。
【方法・結果】 プローブ前駆体となる 8 の合成に先立ち、まず L- セリンより合成したエステル 2 を
Weinreb アミド 3 に変換し、MeLi を用いてメチルケトン 4 を得た。続いて長鎖アルキルリンカーの付
加を試みた。アルキン 5 を n-BuLi によりリチオ化しケトン 4 に対して付加を行ったところ反応は完結
しなかったが、CeCl3 の添加により収率が向上した。得られたリンカーユニット 6 に対してアセタール
の脱保護に続く TEMPO 酸化、カルボン酸の Dpm(diphenyl methyl)保護を行いアミノ酸誘導体とし
た後、リンカー部の TBDPS 基の脱保護を行った。生じた一級アルコールに対してプローブユニット
導入の足掛かりとなる窒素原子の導入を試みた。すなわち、光延反応条件下 NsNHCbz を加えることで、
アミド 7 を合成した。今後、アジリジン環形成と脱保護により、プローブ前駆体となる 8 の合成を行う
予定である。
1)T. Kan et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50 , 1168.
C‒22
近赤外蛍光プローブを目指した donor–two-acceptor 型色素の開発
岐阜薬科大学 創薬化学大講座 薬化学研究室
1
1
1
1
○小竹正晃 ,奥田健介 ,平山 祐 ,永澤秀子 1
67
一 般 講 演
【目的】
近赤外(NIR)領域の蛍光色素は in vivo バイオイメージングに汎用されている。なかでも大
きな吸光係数と比較的高い量子収率を併せ持つトリカルボシアニン系色素は代表的なもののひとつであ
る。一方、酵素などの生体内分子によって特異的に活性化され、共役 π- システムが異性化することに
よって蛍光を発する turn-on 型の蛍光プローブは、簡便かつ信頼性が高く有用である。そこでこの蛍光
制御手法を NIR 蛍光波長領域へと拡張することを目的として、分子内に π 電子の潜在的 donor と二つ
の acceptor 基を組み込んだ donor–two-acceptor 型テトラカルボシアニン系色素を設計し、その合成を
行った。
【分子設計・合成】 カルボシアニン骨格に潜在的 donor として保護ナフトール基を組み込んだ donor–
two-acceptor 型色素前駆体 1 を設計した。本分子は水酸基を保護したトリガー部位を有し、acceptoracceptor 共役状態を取るため蛍光が消光されている。一方、何らかの刺激に応じてトリガー部位が脱
離して、quinone-cyanine-9(QCy9)型になると donor-acceptor 共役系に変化して近赤外領域にて蛍光
特性を回復すると期待される(Scheme 1)。市販の 2-hydroxynaphthoic acid より出発し 9 工程にて 1(R
= Ac)を得、次いで加水分解によって QCy9 を合成した。
【結果・考察】 前駆体 1(R = Ac)と
QCy9 の光学特性を比較したところ、
期待した通り QCy9 において吸収波長
の長波長化が認められた。現在 QCy9
の吸収・蛍光特性の pH 依存性ならび
に安定性を検討中である。
C‒23
ヒト爪中ヒスタミン及びその代謝物の高感度分析法の開発
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
○内部あおい ,閔 俊哲 ,井之上浩一 ,轟木堅一郎 ,豊岡利正
【目的】 ヒスタミンは生体内において即時型アレルギーや神経伝達など様々な役割を担っている。近年、
早産や子癇前症などの異常妊娠においてヒスタミン代謝が正常に機能しないため母体血中ヒスタミン値
が増加するという報告がされており、ヒスタミン及びその代謝物はバイオマーカーとしての期待が高い。
ヒトの爪は、臨床検査で汎用されている血液や尿に比べて簡便かつ非侵襲的な採取が可能で、数ヶ月以
上の長期にわたる体内の健康状態を反映するため、妊娠中のヒスタミン及び代謝物をモニタリングする
際に有用であると考えられる。そこで、本研究ではより高感度なヒスタミン及び代謝物の分析を可能と
する UPLC-ESI-MS/MS を用いた分析法の開発を試みた。
【方法】 ヒスタミン及び 2 種の代謝物において、NH2 基を有する Histamine
(HA)
及び 1-Methylhistamine
(MHA) は 4-(N,N-Dimethylaminosulfonyl)-7-fluoro-2,1,3-benzoxadiazole(DBD-F) を、COOH 基 を 有
す る Imidazoleacetic acid(IAA) は 4-(N,N-Dimethylaminosulfonyl)-7-piperazino-2,1,3-benzoxadiazole
(DBD-PZ)を用いて誘導体化を行った。2 つの反応液を混合し UPLC-ESI-MS/MS で一斉分析を行った。
移動相には、20 mM HCOONH4/H2O 及び CH3CN を用い、装置には Watars 社製 UPLC、カラムには
ACQUITY UPLC BEH C18(1.7µm, 100mm x 2.1mm I.D.)、検出器には三連四重極質量分析計 XevoTQ-S を用いた。また、実試料への応用では、洗浄後粉砕した爪を秤取し、一定の条件下で抽出し、抽
出物を同条件で誘導体化し測定を行った。
【結果及び考察】 ヒスタミン及び 2 種の代謝物を 10 min 以内(HA 3.39min、MHA 6.08min、IAA 5.20
min、MIAA 3.22min)に溶出し、良好な分離を達成することができた。日内、日間変動試験を行った
ところ、CV 値はそれぞれ 5.0 %、6.3 % 以下を示し、ヒト爪を用いた添加回収率は 78.9-105.8% となった。
本法をヒト爪に適用したところ、HA、MHA、IAA を良好に検出できた。現在、健常妊婦のヒト爪試
料中ヒスタミン及び代謝物の定量を試みている。
C‒24
イムノアフィニティー精製 - 高温逆相 LC による
抗体医薬品の血漿中薬物濃度分析法の開発
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
1
○江田康拓 ,中野達基 ,轟木堅一郎 ,閔 俊哲 ,井之上浩一 ,豊岡利正
一 般 講 演
【目的】 近年、抗体医薬品の使用が進むにつれ、臨床現場における有効治療域濃度の維持や投与計画の
設定、適正使用などのための血漿薬物濃度分析の必要性が高まっている。現在、抗体医薬品の血漿薬物
濃度分析には、主に ELISA 法が用いられているが、交叉反応の可能性や分析精度に問題がある場合も
多い。そのため我々は、ELISA の測定結果を補完する特異性かつ信頼性の高い分析法として、イムノ
アフィニティー精製 - 高温逆相 LC 法による抗体医薬品の血漿薬物濃度分析法の開発に取り組んでいる。
この方法では、特異的抗体を修飾したアフィニティー担体により、IgG が多量に存在する血液試料の中
から抗体医薬のみを選択的に捕集する。捕集した抗体医薬を、IgG に対して高い LC 分離が期待できる
高温逆相 LC により分析することで、夾雑成分の影響を受けることなく選択的に抗体医薬濃度を測定す
ることができる。今回、アフィニティー精製の迅速化と回収率の向上を期待して、直径約 2.8μm の磁
性微粒子(Dynabeads)をアフィニティー精製用担体として使用した。抗体医薬品には関節リウマチ治
療薬である Infliximab(製剤名 Remicade)を使用した。
【方法】 磁気ビーズに Infliximab に対するイディオタイプ抗体(Abnova Corporation)を固定化した。
Remicade 添加ヒト血漿に本ビーズを添加後、分散、洗浄、溶出操作により Infliximab を単離し、高温
逆相 LC に注入した。LC 条件:装置;島津 Prominence、カラム;Aeris widepore C8 100A(3.6μm、
100×2.1mm I.D., Phenomenex)、移動相 A;H2O containing 0.1% TFA、移動相 B;iPrOH:MeCN:
H2O containing 0.1% TFA = 7:2:1 の 2 液によるグラジエント溶離、流速;0.4ml/min、カラム温度;
75℃、蛍光検出;Ex. 278 nm、Em. 343 nm。
【結果・考察】
作製したアフィニティビーズにより、ヒト血漿中から Infliximab のみを選択的に補集す
ることができ、高温逆相 LC により、血漿成分の妨害を受けることなく抗体医薬品を 15 分以内に分析
可能であった。現在、アフィニティー精製条件の最適化および分析バリデーションを実施している。
68
C‒25
遠隔位不斉識別試薬を用いるアミノ酸およびペプチド類の HPLC 光学分離分析
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
1
○佐藤雄飛 ,中野達基 ,轟木堅一郎 ,井口和明 ,閔 俊哲 ,井之上浩一 ,
1
1
武田厚司 ,豊岡利正
1
【目的】 DL-アミノ酸の分離分析法として、光学活性な誘導体化試薬を用いるジアステレオマー法が
汎用されている。しかしながら、誘導体化された分子の不斉中心が 4 結合以上離れていると光学異性
体の識別が困難となるため、一部が D 化されたペプチドなどは光学分離されない。大類らによって開
発された遠隔位不斉識別試薬、(1R,2R)-2-(anthracene-2,3-dicarboximido)cyclohexane carboxylic acid
1)
(ADCC)は、長鎖不斉アルコールなどの識別に利用されている。 今回我々は、ADCC の遠隔位不斉
識別能に着目し、同試薬が部分 D 化ペプチドの光学分離への応用を考えた。そこで、アミノ酸と反応
させるべく ADCC の活性エステル体 ADCC-Suc を新規合成し、同試薬によるアミノ酸および部分 D 化
ペプチドの光学分離評価を行った。
【方法】 ADCC と N-hydroxysuccinimide を縮合させることで ADCC-Suc を合成。アミノ酸またはペプ
チド溶液に、ADCC-Suc(DMF 溶液)および pyridine または炭酸カリウム水溶液を添加後、55℃で 40
分間加熱。2 μL を HPLC 蛍光検出器に注入。HPLC 条件:分析カラム COSMOSIL 5C18-MS-II(2.0 ×
150 mm)、移動相(A)MeCN-H2O-formic acid と(B)MeCN-formic acid の 2 液によるアイソクラティッ
ク溶離、流速 0.2 mL/min、カラム温度 50℃、蛍光検出 Ex. 365 nm、Em. 398 nm。
【結果】 ADCC-Suc を用いたジアステレオマー形成により、検討した 19 種類のアミノ酸のうち 11 種
類について光学分離を達成できた。また、合成した部分 D 化トリペプチドの分離を行った結果、一部
のペプチドについて光学分離を達成できた。現在、アミノ酸残基を伸長させた部分 D 化ペプチドを複
数合成中であり、同ペプチドを用いた遠隔位識別能評価結果についても報告する予定である。
1)Imaizumi et al., Anal. Sci . 19 1243(2003).
C‒26
荷電コロイド粒子の会合構造制御
名市大院・薬
1
1
1
1
1
○岡地真奈美 ,中村友紀 ,豊玉彰子 ,奥薗 透 ,山中淳平
1
69
一 般 講 演
【目的】 コロイド粒子の会合体は、会合のモデル系や薬物キャリア設計等の観点から注目を集めている。
本研究では、正および負に荷電したコロイド粒子を用い、会合体の形成を検討した。会合挙動の制御を
目指して、会合体形成に対するコロイド粒子のサイズおよび静電相互作用の大きさの影響を系統的に調
査した。
【方法】 正および負の電荷を持つポリスチレン粒子(PS(+), PS(-)と略す)を、ソープフリー重合法
により合成したほか、一部の粒子を Thermo Scientific Co., Ltd. から購入した。粒子の水分散液を透析
およびイオン交換法により十分精製して用いた。動的光散乱法による測定により、PS(-)粒子の直径(d)
は、390 〜 1200nm, PS
(+)粒子は d = 420nm と決定できた。希薄条件で正負の粒子を混合し、反射光
学顕微鏡により会合挙動を観察した。中心粒子(C 粒子)に対して、大過剰の反対符号粒子(V 粒子)
を添加し、全粒子の体積分率 φ は 0.002 vol% とした。
【結果】 種々の粒径の PS(-)粒子を C 粒子として用いた。PS(+)粒子濃度が十分高いとき、会合体が形
成された。水中では、C 粒子のサイズが V 粒子に対して増加するに従い、V 粒子の最大会合数 n max は
増加した。d = 390 〜 510nm では正四面体配置の会合体が多く生成した。n max は剛体球に対する値より
-2
小さかった。、また添加塩系では、塩濃度 C S が高い条件では n max が増加し、C S = 10 M では V 粒子の
-1
配置は不規則になった。C S = 10 M では塩析が生じた。
【考察】 湯川ポテンシャルとファンデアワールスポテンシャルの和として、粒子間ポテンシャルを計算
した。正四面体配置の会合体形成では、V 粒子間の静電反発の影響により、n max が剛体球の値より小さ
-2
くなったと考えられる。添加塩系における会合体形成において、C S = 10 M では静電相互作用の寄与
は無視できた。C S の増加に伴い、静電相互作用の寄与が減少したため、会合数が増加したものと思わ
-2
れる。C S = 10 M では V 粒子同士の反発が弱くなったため、V 粒子の配置が不規則な会合が起こった
ものと考えられる。
C‒27
荷電コロイド粒子を固定した高分子ゲル中の物質拡散
1
名市大院・薬
1
1
1
○山中淳平 ,豊玉彰子 ,奥薗 透
【目的】 高分子ゲルはドラッグキャリアとしてしばしば利用される材料であり、ゲル中の物質拡散につ
いては数多くの報告がなされている。近年、種々のコロイド微粒子を固定した高分子ゲルの研究が材料
科学分野で活発であり、薬学分野での活用も期待されるが、粒子固定ゲル中での物質拡散の研究は少な
い。当該現象は溶質の粒子への吸着、溶質―粒子間の静電相互作用、粒子による拡散の阻害等が関与す
る現象であり、薬学応用にあたり、現象の基礎的理解が有用であると思われる。本研究では荷電コロイ
ド粒子が固定された高分子ゲル中のイオン性および非イオン性溶質の拡散について、放出・膜透過実験
および拡散方程式を用いた理論検討の結果を報告する。
【実験】 粒径 100nm 〜 500nm で負に荷電したシリカコロイド粒子の共存下で、アクリルアミド(モノ
マー)、メチレンビスアクリルアミド(架橋剤)および 2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)
プロピオンアミド]
(光重合開始剤)の水溶液中に UV 光を照射してゲル化し、粒子固定ゲルを作製した。
厚さ 2mm のゲルを 2 室型のセルに保持して膜透過実験を行った。また、1-2mmφ のビーズ状ゲルを
用いて放出実験を行った。
【結果と考察】 イオンの膜透過係数は、膜上の電荷の存在により大きく変化することが知られている。
炭酸水素ナトリウムを用いた透過実験では、粒子濃度が十分大きい(10 体積 %)条件で、塩濃度 1mM
以下のとき、拡散定数が非イオン性溶質の値の 30%に減少した。この挙動はドナン平衡に基づくテオ
レル理論の予測と定性的に一致したが、減少分は理論値より小さかった。同理論では均一な電荷分布を
仮定しているが、粒子系は電荷が粒子表面に集中していること、またゲル固定により粒子の解離度が減
少すること、が要因であると思われる。
C‒28
難溶性化合物の光安全性評価のための改良型 reactive oxygen species(ROS)assay の開発
1
静岡県立大・薬
1
1
1
○世戸孝樹 ,加藤尚視 ,尾上誠良 一 般 講 演
【目的】Reactive oxygen species(ROS)assay は擬似太陽光照射下で被験物質からの singlet oxygen
(SO)及び superoxide anion(SA)の産生を評価する光安全性評価ツールであるが、難溶性化合物への
適用性が必ずしも高くない。そこで、本研究ではこの課題を解決するため、界面活性剤を用いて被験物
質の溶解度を高めた改良型の評価系として micellar ROS(mROS)assay の開発を試みた。
【方法】ROS assay の反応混合液に 0.5%(v/v)Tween 20 を加えた mROS assay について、光毒性化
合物 methotrexate(MTX)及び光毒性陰性化合物 erythromycin(ETM)を用いて評価系の再現性及び
頑健性を検証した。
83 種の化合物(200μM)を ROS assay 及び mROS assay を用いてそれぞれ評価し、
mROS assay の予測精度及び適用性について比較・検証を行った。
【結果・考察】mROS assay の日内及び日間変動はどちらも ROS assay と同等であり、MTX 及び
ETM の ROS data から求めた Z’ -factor は SO で 0.58 及び SA で 0.95 であった。すなわち、mROS
assay は良好な再現性及び頑健性を有することを示唆した。評価可能な化合物数は ROS assay で 58 化
合物(69.9%)であったのに対し、mROS assay では 81 化合物(97.6%)であり、すなわち 0.5%(v/v)
Tween 20 の添加により評価可能な化合物数を増加させることに成功した。一方、mROS assay での
み 2 化合物の偽陰性判定を認め、mROS assay の予測精度は現状偽陰性の認められない ROS assay と
比較しやや劣ることが分かった。そこで、ROS assay 及び mROS assay の順に組み合わせて 83 化合
物について評価を行ったところ、偽陰性を認めることなく 82 化合物(98.8%)を評価することが可能で
あった。
【結論】mROS assay は難溶性化合物の光安全性評価に適したツールであり、ROS assay システムによ
る評価可能化合物数の増大に寄与できた。また、ROS–mROS assays の組み合わせ評価により信頼性の
高いスクリーニングが可能であったため、創薬初期段階での光安全性評価に大きく貢献するものと期待
する。
70
C‒29
Thymoquinone の体内動態解析ならびに cold wet-mill 法による経口吸収性改善
1
2
静岡県立大・薬, 摂南大・薬
1
1
1
1
2
2
○仁平拓也 ,鈴木寛貴 ,青木麻子 ,大竹啓斗 ,弓樹佳曜 ,橋本直文 ,
1
1
世戸孝樹 ,尾上誠良
【目的】 中東地域に生息する nigella sativa の種・油脂は、古来から中東・アジア地域では民間薬とし
て用いられている。その抽出成分の中でも特に thymoquinone(TQ)は抗炎症作用や抗癌作用など様々
な機能が認められ、近年注目を浴びている。しかし、TQ は溶解性・安定性が低く、経口吸収性が良好
でない。そこで、本研究では TQ の溶解性向上による経口吸収性改善を指向し、以前当研究室で開発
した cold wet-mill(CWM)法を用いてナノ粒子製剤(TQ/CWM)を調製し、各種物性評価ならびに体
内動態を精査した。
【方法】 Hydroxypropyl cellulose-SSL を添加した TQ 原末を冷却粉砕後、凍結乾燥により調製した
TQ/CWM 及び TQ 原末の物理化学的特性ならびに光安定性を評価した。TQ 原末(10mg/kg)及び
TQ/CWM(2 mg-TQ/kg)をそれぞれラットに経口投与し、血漿中 TQ 濃度を HPLC/UV で測定し体
内動態解析を行った。
【結果・考察】 粉末 X 線回折ならびに熱分析の結果、TQ/CWM 中の TQ が非晶質であり、レーザー
回折散乱法において TQ/CWM 中の TQ が平均粒径約 140nm であることを示した。溶出試験では、
TQ/CWM の TQ 原末に対する著しい分散性・溶解性改善を認めた。光化学的特性として、TQ は UV
吸収及び擬似太陽光照射下での活性酸素種の産生を示し、活性酸素種を介した TQ の光分解を示唆し
た。また、光安定性試験(60min、250W/m2)では、溶液状態の TQ は 79% の著しい光分解を示した
のに対し、TQ 原末及び TQ/CWM は約 40% と同等の光分解を示したことから、CWM 法を用いた固
形製剤の調製による TQ の光安定性の低下は認められなかった。TQ 原末及び TQ/CWM をそれぞれ
ラットに経口投与し、得られた血漿中 TQ 濃度を基に体内動態解析を行った結果、製剤化による TQ
の経口吸収性改善を示唆した。本研究結果により、CWM 法で調製したナノ粒子製剤の有用性を示唆す
るとともに、TQ/CWM が TQ の経口吸収性改善に寄与し、TQ の持つ様々な機能をより効果的に発揮
させる有効な製剤処方であると期待する。
C‒30
超高圧乳化分散機を用いた脂質ナノ粒子製剤の物理化学的特性に関する研究
静岡県立大学大学院 薬食生命科学総合学府
1
1
1
1
○舟越由香 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井 茂 1
71
一 般 講 演
【目的】 近年、難溶性薬物の溶解性改善を目的とした粒子径 100nm 以下のナノ粒子製剤が、製剤学分
野において注目を集めている。本研究では、中性脂質と負電荷を持つ 2 種類のリン脂質からなる脂質ナ
ノ粒子において、リン脂質の炭素鎖の長さや飽和、不飽和などの性質が、難溶性薬物担体としての物理
化学的特性に与える影響を評価した。
【方法】 ロール混合粉砕法と超高圧乳化分散法を用いた湿式微細化により脂質ナノ粒子を調製した。薬
物 40mg および脂質混合物 1000mg を物理混合、ロール混合粉砕し、Speed Stabilizer®を用いて蒸留水
200mL 中に粗分散させた。粗分散液を超高圧乳化分散機 Microfluidizer®M-110E/H に適用し、脂質ナ
ノ粒子懸濁液を調製した。調製後 , 孔径 200nm のフィルターを通過したサンプルを回収し、平均粒子径 ,
薬物濃度の測定および粒子形状の観察を行った。
【結果・考察】 いずれの脂質を用いた粒子においても平均粒子経 100nm 以下の脂質ナノ粒子が得られ、
薬物の溶解度は原末と比較して上昇した。ルキル鎖の炭素数が異なる中性脂質について粒子の比較を
行った結果、炭素数が増加するにつれて平均粒子径も増大し、反対に薬物濃度は減少した。これらの粒
子は冷暗所で 1 か月間は 100nm 以下の粒子径を維持し、特に炭素鎖の長い脂質を用いることで粒子安
定性は向上することが示唆された。また、炭素鎖に含まれる二重結合は粒子の特性に影響を及ぼさなかっ
た。以上の結果より、本脂質ナノ粒子は多くの種類の脂質を担体として調製可能であることが示唆され、
本法は難溶性薬物の溶解性改善に有用な手法であると考えられる。
C‒31
拡散理論を応用したマトリックス製剤における薬物放出機構の解析
1
2
静岡県立大・薬, アステラス製薬株式会社 物性研究所
1
1, 2
1
1
1
○稲用義隆 ,阿形泰義 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井 茂
【目的】 医薬品原薬をワックスや高分子基材に分散させた製剤は、放出制御能を備え、副作用の軽減、
服用回数の低減、苦味マスキングなどの多彩な付加価値により、コンプライアンスを向上させることが
期待されている。これまで放出制御製剤の設計においては膨大な実験に基づいて最適な製剤の処方や形
状が探索されてきたが、こうした設計方法は多くのリソースを必要とすることから、数理モデルを利用
した製剤設計の効率化が期待されている。本研究では、特にゲルマトリックス内での拡散によって放出
を制御する錠剤を対象とし、錠剤内の薬物の動態を明らかにする数理モデルを開発し、製剤設計への応
用の可能性を検討した。
【方法】 錠剤の調製:モデル薬物として diprophylline、高分子として Kollidon SR を用いた。薬物とポ
リマーの組成を調整し、薬物含有率と厚さの異なる錠剤を直接打錠法によって調製した。モデルと解析
方法:薬物が拡散によって放出されると仮定し、拡散係数が時間及び錠剤内の位置に依存する数理モデ
ルを誘導した。このモデルを有限体積法により数値的に解き、実測値に当てはめることで拡散係数の時
間及び空間的変化を推定した。
【結果】
拡散係数を一定とした従来のモデルと、我々が開発したモデルの実測値への当てはまりの良さ
を比較したところ、従来のモデルでは初期と後半で実測値との乖離が認められるのに対し、本モデルで
は実測値とよりよく一致し、モデルの妥当性が示された。また、他の全ての薬物含有率においても同様
の結果が得られた。さらに、本モデルを利用し、錠剤の厚さを変化させた場合の薬物放出挙動を予測し、
実測値との比較を行ったところ、異なる厚さの錠剤においても薬物放出挙動を正確に予測した。
【考察】 本モデルは拡散係数が一定とした従来のモデルよりも優れていることが示唆された。これは錠
剤内へ水が侵入し、ゲルマトリックスの形状変化とそれに伴う薬物の拡散が、錠剤の外側から内側に向
かって経時的に進展するという現象を、本モデルが捉えているためと考えられた。また、錠剤の形状を
変化させた場合においても薬物放出挙動を正確に予測することができたことから、製剤設計を効率化す
る有用なツールになりうると考えられた。
C‒32
近赤外分光分析計を用いた遠心転動造粒法による原薬造粒の工程管理
1
静岡県立大学薬学部 創剤工学研究室
1
1
1
1
1
○大杉祐貴子 ,見瀬僚平 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井 茂 一 般 講 演
【目的】 薬物高含量製剤は、製剤投与量・投与サイズの減少や製造コストの削減、主薬含量均一性の向
上等の利点があることから、従来から注目されている製剤の一つである。しかしながら、現在汎用され
ている造粒法は、薬物含量の増加に伴い薬物の物性による影響が大きくなるため、薬物高含有微小球形
粒子の製造は困難となる。本研究では、近赤外分光分析計(NIRS)を用いて、造粒の進行に伴う粒子含
水率の変動をリアルタイムに測定し調節することで、薬物高含有微小球形粒子の製造を試みた。
【方法】 原料紛体には主薬として ibuprofen を、流動化剤として fumed silica を用いた。結合剤として
hydroxypropyl cellulose 5% 水溶液を用い、多機能型遠心転動造粒装置 Granurex®
(GX-20、フロイント
産業)にて造粒を行った。また、粒子含水率は装置壁面に NIRS(ビートセンサー GP2、ビートセンシン
グ)のプローブを取り付け測定した。
【結果・考察】 造粒終了時の粒子含水率と粒度分布の関係の検討および粒子含水率の増加に伴う粒子成
長の観察より、結合剤噴霧終了時の粒子含水率は 12–15% が望ましいと推察された。NIRS を用いた造
粒中の粒子含水率モニタリングに基づき層内温度およびスリットエアーの速度を調節することにより、
結合剤噴霧終了時の粒子含水率が 12–15% となるような造粒が可能となり、平均粒子径 200 µm 以下の
シャープな粒度分布を有する薬物高含有微小球形粒子(ibuprofen 含量 =97%)を製造することができ
た。以上の結果より、NIRS を用いた粒子含水率モニタリングにより、遠心転動造粒法による薬物高含
有微小球形粒子製造の工程管理が可能であることが示唆された。
72
C‒33
Clarithromycin の除菌効果増強を目的とした薬物高含有胃内浮遊性粒子の設計と評価
1
静岡県立大学 薬学部 創剤工学研究室
1
1
1
1
1
○溝口緑理 ,青木 肇 ,岩尾康範 ,野口修治 ,板井 茂 【目的】 現在、Helicobacter pylori の除菌療法には時間依存性抗生物質である clarithromycin(CAM)
を含む 3 剤併用療法が用いられているが、その除菌効果は未だ不十分であるとも言われている。そこで
本研究では、CAM の除菌効果増強を目的として、胃内浮遊性を付与した徐放性製剤を撹拌溶融造粒法
により調製し、その性能について、in vitro 、in vivo における評価を行った。
【方法】 疎水性の異なる 3 種類の脂質である glycerin monostearate(GM)、triglycerin full behenate
(TR-FB)、hydrogenated caster oil(HC)のいずれかを結合剤として用い、撹拌溶融造粒法によって
CAM 75 % 含有造粒物を調製した。得られた 3 種類の造粒物について、in vitro において、粉体物性と
浮遊性、薬物放出特性の評価を行った。また、in vivo における評価として、高疎水性の HC 造粒物を用
いて、スナネズミの胃における H. pylori 除菌効率の測定を行った。
【結果】 CAM 原末の流動性はやや不良であったのに対し、GM、TR-FB、HC を結合剤として用いた
CAM 造粒物はやや良好〜良好と、高い流動性を示した。疎水性の高い TR-FB 造粒物と HC 造粒物では,
薬物は 24 時間かけてほぼ全量が放出される程度まで徐放化されることが明らかになった。また、これ
ら 2 種類の造粒物は試験液中で 24 時間以上の浮遊性を示した。さらに in vivo 試験より、HC 造粒物は
CAM 原末の分散液と比較して H. pylori の胃内残存率を有意に減少させた。
【考察】 本研究で調製した造粒物の徐放性と浮遊性は、結合剤として用いた脂質の疎水性や造粒物内部
の空隙に起因していると考えられる。このように、高疎水性脂質を用いた撹拌溶融造粒法により調製さ
れた CAM 高含有粒子は、徐放性と胃内浮遊性の二つの機能を併せ持つことで、H. pylori の除菌効果を
増強できることが示唆された。
一 般 講 演
73
D‒01
物体認識記憶における海馬 CA1 細胞内 Zn シグナリングの関与
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
1
○天白宗和 ,鈴木美希 ,大橋加純 ,小川泰右 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
【目的】 海馬は記憶を司り、そのグルタミン酸作動性神経終末のシナプス小胞に亜鉛が存在する。グル
2+
タミン酸と共に放出される Zn は神経伝達調節因子として作用し、記憶の細胞レベルでのメカニズム
の一つである長期増強(long-term potentiation: LTP)の発現に関与する。ラット海馬スライスを用い
た実験では、CA1 LTP は細胞外亜鉛キレーターである CaEDTA(1 mM)ならびに細胞内亜鉛キレーター
2+
として用いた ZnAF-2DA(0.1mM)で減弱した。CA1 LTP 発現に CA1 錐体細胞内 Zn シグナリング
が関与することが考えられる。本研究では、個体レベルでの CA1 LTP 発現ならびに物体認識記憶にお
2+
ける CA1 錐体細胞内 Zn シグナリングの関与を検討した。
【方法】
麻酔下ラットの CA1 領域シャーファー側枝を高頻度刺激(100Hz, 0.5 秒 × 3 回)し、CA1
LTP を誘導した。なお、記録部位を薬物で灌流するために透析用プローブ付き記録電極を用いて測定
した。また、海馬 CA1 領域に ZnAF-2DA(0.1mM)を局所投与し、物体認識試験を行った。
【結果及び考察】 CA1 LTP は 1 mM CaEDTA 灌流群では減弱しなかったが、10mM 灌流群で減弱した。
また、CA1 LTP は ZnAF-2DA(0.1mM)灌流下でも減弱した。LTP 誘導時にシャーファー側枝から
2+
放出される Zn は CA1 錐体細胞内に流入し、CA1 LTP 発現に関与することが示唆された。海馬 CA1
に ZnAF-2DA(0.1mM)を局所投与して 1 時間後に脳スライスを作製し、細胞内 ZnAF-2 蛍光を観察
したところ、ZnAF-2 蛍光は CA1 領域のみで観察された。さらに、脳スライスを高カリウム溶液で刺
激すると、CA1 の ZnAF-2 蛍光は増加し、学習時に増加すると考えられる細胞内 Zn2+ シグナリング
がブロックできることが示された。そこで、海馬 CA1 に ZnAF-2DA(0.1mM)を投与して 1 時間後、ラッ
トに物体認識学習をさせ、その 1 時間後にテストを行なったところ、物体認識記憶が障害された。以上、
2+
CA1 錐体細胞内 Zn シグナリングは CA1 LTP 発現を介して物体認識記憶に関与することが示唆され
た。
D‒02
海馬歯状回 LTP の発現における Zn シグナルの作用解析
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
◯佐々木美紅 ,佐藤祥子 ,小川泰右 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
一 般 講 演
【目的】 記憶形成の細胞レベルのメカニズムとされる長期増強(long-term potentiation: LTP)の発現
2+
には、シナプス小胞からグルタミン酸と共に放出される Zn が関与することを海馬のシャーファー側
2+
枝 -CA1 錐体細胞シナプスで明らかにした。また、CA1 LTP は外因性 Zn (5μM ZnCl2)存在下で増
強されることを明らにしてきた。本研究では、シャーファー側枝 -CA1 錐体細胞シナプスとは異なり、
2+
2+
シナプス小胞に Zn を含まない貫通線維 - 歯状回顆粒細胞シナプスでの LTP 発現における Zn シグナ
ルの作用を検討した。
【方法】 ラット海馬スライスを調製し、歯状回顆粒細胞に投射する貫通線維束を高頻度刺激し、シナプ
2+
ス Zn の動態を細胞内亜鉛蛍光指示薬 ZnAF-2DA の蛍光強度変化で調べた。また、麻酔したラットの
貫通線維束を高頻度刺激し、歯状回顆粒細胞層を記録電極付き微小透析膜を用いて亜鉛キレーターまた
は ZnCl2 で灌流下、歯状回 LTP を計測した。
【結果・考察】 海馬スライスの貫通線維束を高頻度刺激すると、顆粒細胞とシナプスを形成する歯状回
分子層において、細胞内 ZnAF-2 の蛍光強度が増加した。この増加は細胞外亜鉛キレーター CaEDTA
2+
の存在下でも増加した。歯状回顆粒細胞では LTP 発現に伴い細胞内ストアから Zn が放出され、細胞
2+
内 Zn シグナルとして機能することが考えられる。一方、歯状回 LTP は CaEDTA を灌流しても減弱
しなかったが、細胞内亜鉛をキレートする ZnAF-2DA を灌流することにより減弱した。以上より、歯
2+
状回 LTP 発現には顆粒細胞内 Zn シグナルが必要であり、細胞外からの流入よりも細胞内ストアから
2+
放出される Zn シグナルが重要であることが示唆された。また、歯状回 LTP は 0.1μM ZnCl2 を灌流
2+
することにより有意に減弱した。貫通線維 - 歯状回顆粒細胞シナプスでは、通常時の細胞外 Zn レベ
ル(0.01μM と推定されている)が約 10 倍増加し持続すると LTP 発現が抑制されること、シャーファー
2+
側枝 - CA1 錐体細胞シナプスとは異なり、LTP 発現に対するシナプス Zn の作用様式が異なることが
示唆された。
74
D‒03
グルココルチコイドによる海馬 CA1 LTP 抑制における Zn シグナリングの関与
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
○橋本勇輝 ,鈴木美希 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
【目的】 ストレス負荷により、記憶が障害される。記憶の分子基盤の1つとされている長期増強(LTP)
もストレスにより阻害される。若齢ラットの海馬 CA1 では主にグルタミン酸受容体である NMDA 受
容体に依存する LTP が誘導されるが、NMDA 受容体に依存する LTP は依存しない LTP に比べてス
2+
トレスに脆弱であることが報告されている。これまでに NMDA 受容体に依存する LTP は過剰な Zn
シグナルにも脆弱であることを報告してきた。本研究では、急性ストレス負荷による海馬 CA1 LTP 抑
2+
制における Zn シグナル過多の関与を検討した。
【方法】 脂溶性亜鉛キレート剤である clioquinol(30mg/kg)をラット腹腔内投与 2 時間後、30 秒間ラッ
トの尾を持ち上げるストレス(Tail suspension)を負荷し、1 時間後に海馬スライスを調製し、CA1
LTP を誘導した。また、正常ラットから海馬スライスを調製し、これにコルチコステロン(5 - 500
2+
ng/ml)を添加し、細胞内外の Zn レベルを亜鉛蛍光試薬である ZnAF-2DA と ZnAF-2 で測定した。
【結果・考察】 Tail suspension 負荷により CA1 LTP は減弱したが、この減弱は clioquinol 前投与によ
り回復した。また、Tail suspension 負荷により血清コルチコステロン濃度が上昇したことから、海馬
2+
スライスにコルチコステロンを添加して Zn 動態を調べたところ、コルチコステロン添加量に依存し
2+
て細胞内外の Zn レベルが上昇した。コルチコステロンはグルタミン酸作動性シャーファー側枝終末
2+
2+
からの Zn 放出を増加させ、ポストシナプス CA1 錐体細胞内への Zn 流入を増加させることが示唆
された。さらに、海馬スライスをコルチコステロン(500ng/ml)で 30 分間処理し、CA1 LTP を誘導
すると、CA1 LTP は減弱したが、この減弱は細胞外亜鉛キレーターである CaEDTA で同時に処理す
ることで回復した。ストレス負荷後に脳細胞外コルチコステロン濃度が上昇すると、シャーファー側枝
2+
2+
終末から Zn 放出が増加し、CA1 錐体細胞への Zn 流入が増加すること、これらの増加が CA1 LTP
の減弱に関与することが示唆された。
D‒04
海馬歯状回での細胞内 Zn シグナル過多による物体認識記憶の獲得障害
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
1
○藤瀬裕貴 ,土屋友香 ,鈴木美希 ,藤井洋昭 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
75
一 般 講 演
【目的】 海馬 CA1 のシャーファー側枝 -CA1 錐体細胞シナプスではプレシナプスからグルタミン酸と
2+
2+
ともに Zn が放出され、シナプスが過剰に興奮するとポストシナプス神経に Zn が過剰に流入し、神
2+
経細胞死が惹起される。一方、Zn の過剰流入による記憶障害については報告がなかった。当研究室で
+
は、ラットの海馬 CA1 に高 K 溶液を局所投与して過剰興奮を誘発した場合に記憶が一過性に障害され、
2+
この障害に Zn の CA1 錐体細胞への過剰流入が関与することを明らかにした。本研究では、シナプス
2+
小胞に Zn を含まない貫通線維 - 歯状回顆粒細胞シナプスを過剰興奮させ、記憶形成の細胞レベルでの
メカニズムとされる長期増強(long-term potentiation: LTP)を指標に記憶への影響を検討した。
【方法】 若齢ラット(6-9 週齡)の貫通線維に刺激電極を挿入し、その投射先である歯状回顆粒細胞層
にインジェクションカニューレ付き記録電極を挿入して LTP を計測した。インジェクションカニュー
レを介して 100mM KCl を流速 0.25mL/min で 4-8 分間投与し、1 時間後に LTP を誘導した。同様に高
+
+
K 溶液を歯状回に投与し 1 時間後に物体認識試験を行なった。また、高 K 溶液を歯状回に投与して 5
2+
分後に全脳スライスを作製し、細胞内亜鉛蛍光試薬 ZnAF-2DA で染色して細胞内 Zn レベルを共焦点
レーザー顕微鏡で測定した。
【結果・考察】 高 K+ 溶液 1 µl(4 分間)投与で LTP は減弱しなかったが、2 µl(8 分間)投与で有意
に減弱した。この減弱は細胞外亜鉛キレーターである CaEDTA(10 mM)の同時投与により改善された。
+
高 K 溶液 2 µl 投与 1 時間後、ラットに物体認識学習をさせ、その 1 時間後にテストを行なったところ、
+
+
高 K 溶液投与により、物体認識記憶は障害されたが、CaEDTA の同時投与により改善された。高 K
2+
溶液投与により顆粒細胞内 Zn は有意に増加したが、CaEDTA ならびに AMPA 受容体(グルタミン
2+
酸受容体サブタイプ)ブロッカーである CNQX の同時投与により細胞内 Zn の増加は有意に抑えられ
2+
た。以上、歯状回でも過剰興奮に伴い顆粒細胞内 Zn が増加し、記憶障害が惹起されることが明らか
となった。
D‒05
海馬歯状回での細胞内 Zn シグナル過多による学習した空間認識記憶の消失
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
1
○中田裕之 ,久恒麻里衣 ,藤井洋昭 ,南埜達也 ,玉野春南 ,武田厚司
2+
【目的】 海馬グルタミン酸作動性神経のシナプス小胞に存在する亜鉛は記憶に関与する。しかし、歯状
回顆粒細胞に投射する貫通線維にはシナプス小胞に亜鉛が含まれない終末が存在する。貫通線維 - 歯
2+
状回顆粒細胞シナプスにおける長期増強(long-term potentiation, LTP)には顆粒細胞内 Zn シグナル
2+
が必要であり、この Zn シグナルは細胞内ストアから由来することが考えられる。一方で、グルタミ
2+
ン酸作動性神経の過剰興奮により、シナプス間隙の Zn がポストシナプス神経に過剰に取込まれると、
記憶が障害される可能性がある。高カリウム刺激により貫通線維 - 歯状回顆粒細胞シナプスを過剰興奮
2+
させた場合に、維持された LTP と空間記憶がとともに消失するか、これらの消失に顆粒細胞内 Zn シ
グナル過多が関与するかを解析した。
【方法】 記憶の分子基盤の一つとして考えられている LTP を誘導するために、覚醒下でラットの貫通
2+
繊維束を高頻度刺激(400Hz, 1 秒 , 5 回)し、その応答を歯状回顆粒細胞層で記録した。シナプス Zn
動態は海馬スライスを作成し、共焦点レーザー顕微鏡を用い、細胞内亜鉛蛍光試薬 ZnAF-2DA で観察
した。また、空間認識記憶には Y 字迷路試験を用いた。
【結果・考察】 LTP 誘導 2 日後に KCl(200nmol)を記録電極付きインジェクションカニューレを介し
て歯状回顆粒細胞層に投与すると、維持された LTP は不可逆的に障害され、同時に学習した空間認識
記憶も消失した。これらの障害は膜不透過型亜鉛キレーターである CaEDTA あるいは膜透過型亜鉛キ
レーターである ZnAF-2DA を同時投与することで回避された。また、KCl を歯状回顆粒細胞層に投与
2+
すると、顆粒細胞内 Zn レベルは顕著に増加したが、この増加は CaEDTA の同時投与により抑制された。
貫通線維 - 歯状回顆粒細胞シナプスが過剰興奮することにより、このシナプスで維持された LTP は不
可逆的に障害され、同時に学習した空間認識記憶が消失することが明らかとなった。また、これらの障
2+
2+
害に顆粒細胞内 Zn シグナル過多が関与すること、Zn シグナル過多は細胞外からの流入によること
が示唆された。
D‒06
アミロイド β によるインビボ歯状回長期増強障害における亜鉛シグナルの関与
静岡県立大・薬
1
1
1
1
1
1
○小池勇太 ,植松千裕 ,中村仁聡 ,安藤 靖 ,玉野春南 ,武田厚司
1
一 般 講 演
【目的】 アルツハイマー病の発症機序は、アミロイド β(Aβ)の可溶性オリゴマーが神経伝達を障害し、
記憶障害を起こすとの仮説が最近支持されている。老人斑の主成分である不溶性の Aβ 凝集体には亜
鉛、銅、鉄が検出されるが、神経伝達に対するこれら重金属と Aβ オリゴマーの相互作用は明らかで
ない。Aβ のオリゴマー化は重金属イオンの存在により促進されると考えられる。今回、Aβ による
2+
神経伝達障害に Zn などの重金属イオンが関与するとの考えを検証するため、記憶の分子基盤とされ
る長期増強(long term-potentiation:LTP)を指標に、Aβ と重金属イオンを海馬歯状回に投与し、歯
状回 LTP に対する重金属の作用を検討した。
【方法】 麻酔下のラットの貫通線維束に刺激電極を、歯状回領域にインジェクションカニューレ付き記
録電極を挿入した。カニューレを介して Aβ(25pmol)を投与し 1 時間後、貫通線維束を高頻度刺激し、
LTP を誘導した。また、ZnCl2、CuCl2、FeCl3、CdCl2(いずれも 50pmol)を Aβ と同時に歯状回に投与し、
LTP を誘導した。
【結果および考察】 Aβ を歯状回に投与するとコントロール(生食投与)群に比べ、歯状回 LTP は有
意に減弱した。ZnCl2 単独投与では LTP は減弱しなかったが、ZnCl2 と Aβ の同時投与では Aβ 単独
投与と比較して有意に LTP が減弱した。CuCl2 と FeCl3 の同時投与では Aβ 単独投与と比較して有意
2+
な LTP 減弱効果は見られなかった。以上から、Aβ による歯状回 LTP 障害は Zn により増強される
2+
ことが示唆された。一方、Aβ による LTP 減弱作用は CdCl2 の同時投与により回避され、Cd が Aβ
による歯状回 LTP 障害を減弱することが示唆された。この減弱作用は、Aβ が Cd2+ と結合し、内在
2+
性 Zn による Aβ オリゴマー化が回避されたためと考えられる。以上から、Aβ による歯状回 LTP
2+
障害は、外因性及び内在性の Zn によるオリゴマー化を介し、増強することが示唆された。
76
D‒07
海馬グルタミン酸作動性神経活動に対する牡蠣成分の作用
1
2
3
静岡県大院・薬, 渡辺オイスター研, 広島国際大薬
1
2
3
1
1
1
1
○釋氏佑紀奈 ,渡辺 貢 ,池田 潔 ,大橋加純 ,植松千裕 ,玉野春南 ,武田厚司
【目的】 牡蠣は、亜鉛等の必須微量元素や抗酸化物質を多く含んでおり、ヒトにおいて牡蠣肉抽出エキ
スの摂取は、睡眠時脳波の改善など抗ストレス効果を示すことが報告されている。また、牡蠣肉抽出エ
キスから高い抗酸化作用を示す 3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol(E6)が発見された。ストレス
により海馬グルタミン酸作動性神経活動が亢進することから、本研究では、牡蠣成分に含まれる新規抗
酸化物質 E6 と亜鉛の海馬グルタミン酸作動性神経活動に対する作用を検討した。
【方法】 E6 は化学合成した。ラットの海馬に微小透析膜(3 mm)を挿入した。E6 あるいは ZnCl2 で
灌流後、神経細胞を非特異的に脱分極させるために、それぞれの灌流液に塩化カリウム(100mM)を添
加して灌流し、回収した灌流液中のグルタミン酸濃度を測定した。マウスから海馬スライスを作成し、
E6 及び ZnCl2 を含む人口脳脊髄液で処理後、高カリウム溶液を添加し、グルタミン酸作動性神経の興
奮性を細胞外亜鉛蛍光指示薬 ZnAF-2 と細胞内カルシウム蛍光指示薬 Ca-orange AM を用いて調べた。
また、グルタミン酸放出を開口放出蛍光指示薬 FM4-64 で調べた。
【結果】 海馬細胞外グルタミン酸濃度は、E6(1 mM)あるいは ZnCl2(10μM)で灌流することによ
り有意に低下した。さらに、高カリウム溶液で灌流すると、海馬細胞外グルタミン酸濃度はコントロー
ル群では有意に上昇したが、E6 あるいは ZnCl2 存在下では有意に上昇しなかった。また、海馬スライ
2+
2+
スを高カリウム溶液で刺激すると、細胞外 Zn レベルは上昇し、細胞内 Ca レベルも上昇したが、こ
れらの上昇は、E6(1 mM)あるいは ZnCl2(100nM)の前処理により抑制された。これまでに ZnCl2
存在下でグルタミン酸開口放出が抑制されることを示したが、E6(1 mM)前処理によっても抑制された。
2+
【考察】 牡蠣成分である E6 と亜鉛は、グルタミン酸作動性神経活動時の細胞内 Ca シグナルを抑制し、
神経終末からのグルタミン酸放出を抑制することが示唆された。その抑制作用は亜鉛の方が強かった。
D‒08
海馬グルタミン酸作動性神経の過剰興奮に対する抑肝散生薬成分の抑制作用
静岡県立大・薬
1
1
1
1
○塩谷悠介 ,井出和希 ,玉野春南 ,武田厚司
1
77
一 般 講 演
【目的】 漢方薬の抑肝散は、不安・抑うつ、攻撃的行動などのアルツハイマー型認知症の周辺症状の改
善に有効な治療薬として汎用されている。しかし、改善効果のメカニズムは十分には明らかにされてい
ない。亜鉛欠乏食を与えたマウスやラットは、うつ様行動や攻撃行動を示し、認知症の周辺症状と類似
した行動異常を示す。これらの動物では海馬グルタミン酸作動性神経活動が亢進しており、行動異常と
関係することが考えられる。これまでに、亜鉛欠乏食飼育による攻撃性の増大および海馬グルタミン酸
作動性神経活動の亢進を抑肝散が抑制することを報告してきた。抑肝散によるアルツハイマー型認知
症の周辺症状の改善メカニズムを解析するために、本研究では、抑肝散成分の Geissoshicizine methyl
ether(GM)および、腸内代謝物である 18β-glycyrrhetinic acid(GA)に着目し、亜鉛欠乏食ラット
における海馬グルタミン酸作動性神経の過剰興奮に対する抑肝散成分の効果について検討した。
【方法】 海馬グルタミン酸作動性神経の活動を評価するため、亜鉛欠乏食で2週間飼育したラットの海
馬スライスに開口放出検出蛍光試薬 FM46-4 を取り込ませた。その海馬スライスを GA または GM を含
むリンゲル液に移した後、60mM KCl で神経細胞を過剰興奮させ、グルタミン酸作動性苔状線維終末
が存在する CA3 透明層において蛍光強度の減弱を観察し、開口放出の指標とし評価した。
【結果・考察】 海馬スライスを 60mM KCl で刺激すると、開口放出により FM4-64 蛍光強度が減弱し
たが、この減弱は亜鉛欠乏食群で増大した。一方、この開口放出の増大は、GA(100, 500μM)の存在
下で有意に抑制され、GM(10, 100μM)の存在下においても、100μM で有意に抑制された。亜鉛欠
乏食飼育による苔状線維終末からのグルタミン酸放出増大は抑肝散より抑制されるが、GA および GM
がその抑制作用に関与することが示唆された。現在、苔状線維終末のカルシウムシグナリングにおける
これらの抑肝散成分の作用を検討中である。
D‒09
ラット孤束核における低酸素誘発性シナプス伝達抑制に対するプロゲステロンの拮抗
作用
1
愛知学院大学薬学部応用薬理学
1
1
1
1
1
○大井義明 ,加島典良 ,福岡里菜 ,木村聡子 ,櫨 彰
【目的】 低酸素刺激によって呼吸は一過性の促進の後、抑制されることが知られている。促進に関して
は頸動脈小体を介した反射と考えられており、抑制に関しては中枢性の機序が示唆されている。低酸素
換気応答をプロゲステロンが促進することも報告されているが、プロゲステロンの中枢における作用機
序は十分には解明されていない。そこで我々は頸動脈小体からの入力を受ける中継核である孤束核にお
けるシナプス伝達に対するプロゲステロンの作用を解析した。
【方法】 雄性ラットより延髄・孤束核を含むスライス標本を作製し、スライスパッチクランプ法によ
り自発的興奮性シナプス後電流(sEPSC)および誘発性興奮性シナプス後電流(eEPSC)を記録した。
低酸素刺激による反応を記録した後、プロゲステロンおよびその代謝産物であるアロプレグナノロンの
作用を解析した。
【結果】 低酸素刺激により大部分のニューロンにおいて sEPSC の頻度は減少したが、振幅は変化しな
かった。プロゲステロンにより頻度の減少は拮抗されたが、アロプレグナノロンによっては拮抗されな
かった。eEPSC の振幅は低酸素により減少し、プロゲステロンにより回復した。
【考察】 プロゲステロンは低酸素による EPSC の変化を回復させた。このことから、プロゲステロン
は孤束核におけるシナプス伝達を調節することにより低酸素換気応答に影響を与えている可能性が示唆
された。また、この作用はプロゲステロンの未変化体によるものだと考えられた。
D‒10
モルヒネの呼吸抑制に対するカフェインの作用
1
愛知学院大・薬・応用薬理
1
1
1
1
○木村聡子 ,三浦佑樹 ,大井義明 ,櫨 彰 一 般 講 演
【目的】 モルヒネによる呼吸抑制には、オピオイド μ 受容体拮抗薬ナロキソンがその治療に使用され
ている。しかし、ナロキソンは呼吸抑制を回復させると同時に鎮痛作用も減弱させる。モルヒネによる
呼吸抑制作用には呼吸中枢ニューロンの cAMP 量低下が関与する可能性が指摘されている。従って本
研究では、モルヒネの呼吸抑制に対する非選択的ホスホジエステラーゼ阻害薬カフェインの作用につい
て、麻酔ラットを使用して検討した。
【方法】 ウレタン麻酔・迷走神経切断・不動化・人工呼吸を行ったラットにおいて横隔神経からの遠心
性放電を記録した。また、ウレタン麻酔ラットにおいて、気管カニューレを介して自発呼吸を記録し、
同時に paw immersion test により疼痛閾値を測定した。これらの標本で、モルヒネの呼吸抑制に対す
るカフェインの作用について各薬物を静脈内投与して検討した。
【結果】 モルヒネ(3.0 mg/kg, i.v.)は、横隔神経活動の振幅を低下させ、また吸息時間を延長、呼息
時間を短縮させた。続いて投与したカフェイン(10.0, 20.0mg/kg, i.v.)は横隔神経活動の振幅、吸息時
間および呼息時間を回復させた。また、モルヒネ(1.0mg/kg, i.v.)により抑制された自発呼吸に対して
カフェイン(3.0, 10.0mg/kg, i.v.)は用量依存的な回復作用を示した。モルヒネ(1.0mg/kg, i.v.)によ
る鎮痛作用にカフェイン(3.0, 10.0mg/kg, i.v.)は影響しなかった。
【考察】 非選択的ホスホジエステラーゼ阻害作用を有するカフェインが、横隔神経活動に対するモルヒ
ネの作用を回復させた。以上の結果から、カフェインは、モルヒネにより低下した呼吸中枢ニューロン
内 cAMP 量を戻し、横隔神経活動および自発呼吸を回復させたものと考えられる。また、カフェイン
はモルヒネによる鎮痛作用に影響しなかったことから、ホスホジエステラーゼ阻害薬は、モルヒネの呼
吸抑制改善薬として有望であると考えられる。
78
D‒11
モノクロタリン誘発性肺高血圧症ラットにおけるニフェジピンの増悪効果
1
2
3
金城学院大薬, 名市大院薬, アリゾナ大医
1
1
1
1
1
1
2
○山村彩 ,森志穂 ,堀井千裕 ,平工明里 ,大原直樹 ,塚本喜久雄 ,山村寿男 ,
3
Jason X.-J. Yuan
【目的】 肺高血圧症は稀な疾患であるが、5 年生存率が約 50% であり、発症後の予後は極めて不良であ
ることから、厚生労働省が定める特定疾患治療研究事業(難病)の対象疾患に指定されている。肺高血
2+
圧症では、ジヒドロピリジン系 Ca チャネルブロッカーに抵抗性を示すノンレスポンダーが殆どであ
り、場合によっては、それらの薬剤で病態が悪化することが知られている。これまで我々は、特発性肺
動脈性高血圧症(IPAH)患者由来の肺動脈平滑筋細胞(PASMCs)ならびに肺高血圧症モデル動物と
して汎用されているモノクロタリン誘発性肺高血圧症(MCT)ラットにおいて、細胞外のカルシウム
濃度を感知するカルシウム感受性受容体(CaSR)が発現増加および機能増強することを見出した。さ
2+
らに我々は、ジヒドロピリジン系 Ca チャネルブロッカーが、肺高血圧症で発現亢進したカルシウム
感受性受容体を活性化するために、これらの薬剤が肺高血圧症に有効でないことを IPAH-PASMCs を
用いて科学的に証明した。本研究では、MCT ラットにおいても同様の機構が存在するかについて検討
した。
【方法】 雄性 SD ラットにモノクロタリン溶液を皮下注射(60mg/kg、1 回)した。モノクロタリン投
2+
与後 14 日目の MCT ラットを実験に使用した。Ca チャネルブロッカーのニフェジピン(1 mg/kg、1
日 1 回)は、腹腔内に投与した。
【結果】 MCT ラットの肺組織では、CaSR の顕著な発現増加が認められた。MCT ラットでは、
2 週間後・
4 週間後ともに肺高血圧症の指標である右心室圧(RVP)および右室収縮期圧(RVSP)の上昇が認め
られた。それらの上昇は、ニフェジピンの腹腔内投与によって改善されず、むしろ病態が悪化した。
2+
【考察】 ジヒドロピリジン系 Ca チャネルブロッカーが、肺高血圧症で発現亢進した CaSR を活性化
するために、これらの薬剤が肺高血圧症に有効でないことを科学的に裏付けるものであると考えられる。
D‒12
膵 β 細胞における H2O2 誘発アポトーシスへのミトコンドリア Ca シグナルの関与
の検討
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
○澤谷俊明 ,金子雪子 ,佐藤太治 ,野口亜希子 ,石川智久
2+
79
一 般 講 演
【目的】 2 型糖尿病における膵 β 細胞機能障害の一因として、過酸化水素(H2O2)を含む活性酸素種
による β 細胞アポトーシスが知られている。我々は、ラット由来膵 β 細胞株 INS-1 細胞において、最
初の 30 分間の H2O2 処置により 18 時間後のアポトーシスが引き起こされることを示してきた。しかし、
初期の H2O2 処置により誘導されるアポトーシスのメカニズムについては不明である。そこで、本研究
2+
2+
では、H2O2 により上昇することが既に報告されているミトコンドリア内 Ca 濃度([Ca ]m)に着目し、
H2O2 の作用について解析した。
【方法】 INS-1 細胞を用い、アポトーシスの評価には Annexin V 染色法を用いたフローサイトメト
2+
2+
2+
リーによる定量的解析を、細胞質遊離 Ca 濃度([Ca ]i)および [Ca ]m の測定には furaPE-3 およ
び dihydrorhod-2 を用いた画像解析を行った。また、ミトコンドリアからの cytochrome c の遊離量を
Western blotting 法にて検討した。
2+
【結果および考察】 H2O2 処置により、30 分以内で [Ca ]m の顕著な上昇が認められた。そこで、H2O2
2+
2+
誘発アポトーシスへの [Ca ]m の関与を検討するために、ミトコンドリア Ca ユニポーター阻害薬
Ru360(10μM)を用いて検討を行った。ところが、Ru360 は 100μM H2O2 誘発アポトーシスを抑制せ
2+
ず、さらには [Ca ]m 上昇も抑制しなかった。一方、小胞体の IP3 作動性チャネルおよび細胞膜のス
トア作動性チャネル(SOCs)阻害薬である 2-APB(100μM)は、H2O2 との同時処置により、100μM
2+
H2O2 誘発アポトーシスを抑制した。さらに、2-APB は 100μM H2O2 誘発 [Ca ]m 上昇反応を抑制し、
2+
[Ca ]i 上昇も抑制した。また、細胞質分画において 100μM 2-APB は 100μM H2O2 により誘導される
2+
ミトコンドリアからの cytochrome c の遊離を抑制した。Ru360 は H2O2 誘発 [Ca ]m 上昇およびアポトー
2+
シスに対し無効であること、2-APB が H2O2 誘発 [Ca ]m 上昇およびアポトーシス、ミトコンドリアか
2+
らの cytochrome c 遊離を抑制したことから、β 細胞における H2O2 誘発アポトーシスは初期の [Ca ]
m 上昇がトリガーとなって惹起されることが示唆された。
D‒13
インスリン抵抗性自然発症マウスにおけるインスリン分泌の亢進
静岡県立大・薬
○有澤佳純,井出直仁,小倉加弥美,今井志織,賀川義之,前田利男
【目的】 我々は、通常飼育により一定週齢になるとインスリン抵抗性を発現し、加齢によりメタボリッ
クシンドローム様症状を呈するマウス(ddY-H 系:H 系)とそのような病態を示さないマウス(ddY-L
系:L 系)を新規に系統分離した。H 系マウスでは、血漿中インスリン濃度が成長とともに上昇し、加
齢により高インスリン血症となる。そこで、本研究ではインスリン分泌能について検討した。
【方法】 我々のコロニーで繁殖した H 系マウスと L 系マウスを 4 週齢で離乳し、標準固形飼料(MF、
オリエンタル酵母)で通常飼育し、6、9、12、15 週齢で実験に供した。血漿中インスリン濃度は、断頭・
採血した血液から得た血漿を用い、マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所)で測定した。
【結果】 H 系マウスの血漿インスリン濃度は、4 時間(9:00 ~ 13:00)絶食した場合、6 週齢から L
系マウスと比較して僅かに高かった。12 時間絶食させた場合 12 週齢から、12 時間絶食後 1 時間摂餌さ
せた場合、9 週齢から L 系マウスと比較して有意に高かった。グルコース(3 g/kg)およびナテグリニ
ド(30 mg/kg)を経口投与した 15 分後の血漿インスリン濃度は、9 週齢から有意に高く、加齢ととも
にさらに高くなった。また、シタクリプチン(50 mg/kg)の経口投与 60 分後にグルコース(3 g/kg)
を経口投与したときの血漿インスリン濃度の上昇は、9 週齢から有意に高く、加齢とともにさらに高く
なった。H 系マウスでは、9 週齢から耐糖能が低下し、またインスリン腹腔内投与による血糖降下作用
が減弱化し、加齢に伴ってさらに減弱化した。この耐糖能の低下とインスリン分泌の亢進の週齢的経過
に相関性がみられた。
【考察】 本研究の結果から、H 系マウスでは、9 週齢からインスリン分泌が徐々に亢進し、15 週齢では
高インスリン血症となることが明らかとなった。この血漿インスリン濃度の上昇は、膵からのインスリ
ン分泌の亢進によるもので、インスリン分泌亢進による高濃度の血中インスリン濃度に曝露されること
により、インスリン抵抗性が誘発されることが示唆された。
D‒14
インスリン抵抗性自然発症マウスにおける腸内細菌叢の細菌分布の変動
静岡県立大・薬
○小倉加称美,有澤佳純,井出直仁,賀川義之,前田利男
一 般 講 演
【目的】 メタボリックシンドロームの発症と腸内細菌叢の変動との関連性が注目されている。我々は、
標準固形飼料による飼育で一定週齢になるとインスリン抵抗性を発現し、肥満、糖尿病、脂質異常症、
脂肪肝などのメタボリックシンドローム様症状を呈するマウス(ddY-H 系:H 系)とそのような病態
を示さないマウス(ddY-L 系:L 系)を新規に系統分離した。今回、H 系マウスと L 系マウスの腸内細
菌を各週齢で比較することにより、腸内細菌叢の変動について検討した。
【方法】 我々のコロニーで繁殖した H 系マウスと L 系マウスを 4 週齢で離乳し、標準固形飼料(MF、
オリエンタル酵母)で通常飼育した。5、9、12、15 週齢のマウスの糞中の細菌を末端標識制限酵素断
片多型分析)法(T-RFLP 法)およびリアルタイム PCR 法によって解析した。Bifidobacterium の生菌
数は、糞の縣濁液を BS 培地で培養し、コロニー数により測定した。
【結果】 15 週齢の H 系マウスでは糞中の全細菌数に大きな変動はみられなかったが、Bifidobacterium、
Prevotella、Clostridium cluster XVIII の割合が減少し、Lactobacillales の割合が増加する等の細菌分
布に大きな変化がみられた。そこで、5、9、12、15 週齢で経時的に検討したところ、加齢により細菌
分布の変化が大きくなり、インスリン抵抗性が発現する 12 週齢以降で細菌分布に大きな変化がみられ
た。特に、糞中および盲腸内容物中の Bifidobacterium は、リアルタイム PCR 法による菌数の測定お
よび培養法による生菌数の測定で、H 系マウスでは著明に少ないことが明らかになった。
【考察】 これらの結果から、メタボリックシンドローム様症状を呈する H 系マウスでは、L 系マウス
と同じ環境下で飼育しているにもかかわらず、腸内細菌叢の変動が生じていることが明らかとなった。
H 系マウスの腸内細菌叢の変動は、メタボリックシンドローム様症状の発症と時期的な相関性がみられ、
その変動と症状発症とに関連性があることが示唆された。
80
D‒15
新規トリアゾール系化合物による爪白癬治療を目的とした外用液剤の開発
1
2
科研製薬株式会社 総合研究所 製剤研究部, 同薬理研究部
1
1
2
1
○奥村智広 ,落合明子 ,巽良之 ,薗田良一
【目的】 科研製薬が創製した新規トリアゾール系化合物であるエフィナコナゾールは、爪白癬の各種原
因真菌(皮膚糸状菌)に対して優れた抗真菌活性を有する。日本で承認されている爪白癬治療薬は経口
抗真菌薬のみであり、経口抗真菌薬では重篤な肝障害の警告や薬物相互作用があり、特に高齢者や合併
症を抱える患者ではその使用が敬遠されている。海外においては、ネイルラッカー剤も上市されている
が、使用前に爪の表面を爪やすりで削る必要があり、患者が使いにくい製剤である。そこで、演者らは
患者が使いやすい製剤を開発することとした。
【方法】 エフィナコナゾールの爪への浸透性を調査するため、ケラチン吸着性を評価した。また、
ケ ラ チ ン と の 吸 着 に 伴 う 抗 真 菌 活 性 の 低 下 の 有 無 に つ い て、in vitro 抗 真 菌 活 性(Trichophyton
mentagrophytes )を評価した。更に、in vitro ヒト爪透過性試験及び in vivo モルモット爪白癬(T.
mentagrophytes )モデルによる薬効試験を実施し、海外で上市されている 2 種類のネイルラッカー剤
との比較も行った。
【結果】 エフィナコナゾールは、適度なケラチン親和性により投与局所に貯留しながらも、良好なケラ
チンからの遊離性を有するため、ケラチンとの吸着による抗真菌活性の低下が少ないことがわかった。
また、ヒト爪透過性試験において、海外で上市されている 2 種類のネイルラッカー剤と比較して優れた
爪透過性を有することが確認された。更に、モルモット爪白癬モデルによる薬効試験では、上記 2 種類
のネイルラッカー剤と比較して強い治療効果を有することが確認された。
【考察】 エフィナコナゾールの薬理効果を活かし、爪に直接塗布することで爪白癬に対して効果を示す
外用液剤を開発した。本剤は、経口抗真菌薬で危惧される肝障害及び薬物相互作用を回避でき、より安
全性が高く、患者が使いやすい製剤である。さらに、服薬指導も簡便であり、医療従事者にとっても扱
いやすい製剤である。
D‒16
リボフラビン含有ファモチジン製剤の光安定性改善並びにその動態解析
1
2
静岡県立大・薬, 山梨大学医学部附属病院 薬剤部
1
2
1
1
2
2
2
○大竹啓斗 ,内田淳 ,鈴木友季子 ,世戸孝樹 ,寺松剛 ,寺島朝子 ,小口敏夫 ,
1
尾上誠良
81
一 般 講 演
【目的】 複数の注射剤を混合した際、物理的・化学的要因による配合変化が薬物治療施行の障害となる
ことがある。塩化カリウム補正液には医療事故防止のための着色剤としてリボフラビンリン酸エステ
ルナトリウム(RF)が含まれており、消化性潰瘍治療薬ファモチジン(FMT)と混合すると散光下で
FMT 含量が著しく低下することが報告されている。本研究では RF の光化学的特性に着目し、FMT/
RF 共存系における FMT の光分解機構解明とそれを改善する製剤処方の検討並びに本製剤における
FMT の体内動態解析を試みた。
【 方 法 】 FMT お よ び RF の 光 化 学 的 特 性 評 価 の た め、UV-VIS spectral analysis, reactive oxygen
species(ROS)assay を行った。FMT(300μM)/RF(2μM)共存系に擬似太陽光(250W/m2)照射し、
FMT 光分解挙動をモニタリングすると共に、ラジカルスカベンジャー(9 種)添加時の FMT の光安
定性をそれぞれ評価した。ラジカルスカベンジャー含有 FMT/RF 製剤をラットに静注(1 mg-FMT/
kg)し、FMT の体内動態を解析した。
【結果・考察】 FMT 並びに RF は太陽光領域で吸光を持ち、RF のみが露光時に強い ROS 産生を示した。
FMT/RF 共存系では擬似太陽光照射 30 分後の FMT 残存率が 16% と低かったが、一重項酸素および
スーパーオキシドのスカベンジャーをそれぞれ添加することで FMT の光分解は抑制された。
すなわち、
FMT の光分解には共存する RF が露光時に産生する ROS が大きく関与し、ラジカルスカベンジャー添
加により FMT の光安定性が改善したと考える。特にアスコルビン酸(VC)を添加した場合、FMT 残
存率が 81% にまで改善し、VC は FMT の光安定性改善に適切な添加剤であることを示唆した。FMT/
RF 製剤の VC 添加群および非添加群をラットに静注した際、FMT の ke および AUC0–6 は両群間で有
意な差を認めなかった。つまり、VC の添加が FMT の体内動態に与える影響は小さく、本処方は効果
的に FMT の光安定性を改善する手法として、臨床において FMT/RF 製剤投薬時の安定した薬物治療
施行に貢献すると期待する。
D‒17
抗原修飾リポソームにより脾臓 B 細胞を標的化した新たなスギ花粉症治療法の開発
1
静岡県立大学薬学部
1
1
1
1
1
1
○後藤峻吾 ,松木孝太 ,伊藤あゆみ ,斉藤大騎 ,橋本正寛 ,清水広介 ,
1
1
浅井知浩 ,奥 直人
【目的】 スギ花粉症は、日本人の 4 人に 1 人が罹患しているといわれる最も一般的な即時型アレルギー
の一つである。しかしながら、現在の主な治療法は症状を緩和する対症療法であり、根治療法の確立が
望まれている。これまでに我々は、ドキソルビシンを内封したスギ花粉抗原 Cry j 1 修飾リポソームの
スギ花粉症モデルマウスへの投与により、血中抗 Cry j 1 IgE 抗体量が有意に低下することを明らかと
してきている。本研究では、この治療効果の機構解析として、花粉症の発症過程において脾臓細胞によ
る抗原得意的な認識が重要である点に着目し、Cry j 1 修飾リポソームのこれら細胞群への認識の可能
性について検討を行った。
【方法】 スギ花粉症の主要抗原である Cry j 1 は、スギ花粉より抽出・精製し、実験に用いた。得られ
た Cry j 1 をマウスに腹腔内投与することにより、スギ花粉症モデルマウスを作製した。DiI で蛍光標
識した Cry j 1 修飾リポソームを尾静脈内より投与し、その後脾臓内におけるリポソームの分布を、共
焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて観察を行った。また脾臓内における Cry j 1 認識細胞群を同定す
るために、モデルマウスから脾臓細胞を単離・培養した後、B 細胞および Cry j 1 を認識する細胞をそ
れぞれ免疫染色し、フローサイトメトリーにより解析を行った。
【結果】 顕微鏡観察による結果、Cry j 1 修飾リポソームは、未修飾リポソームに比べ、脾臓内 B 細胞
とより多く共局在することが示された。また、脾臓より単離した細胞の FACS 解析による結果、B 細
胞も含め Cry j 1 を認識する免疫細胞群が多く存在することが明らかとなった。
【考察】 これらの結果より、スギ花粉症モデルマウスにおける脾臓中に、Cry j 1 を認識する B 細胞が
多く存在することが明らかとなり、Cry j 1 修飾リポソームはこれら細胞を特異的に認識し、内封する
薬物により障害を誘導することで、高い治療効果を示すことが示唆された。
D‒18
RNA 干渉効率の向上を目指した抗体修飾脂質ナノ粒子の開発
1
2
3
静岡県立大学薬学部, 大阪大学大学院医学系研究科, 大阪大学微生物病研究所
1
1
1
1
2
3
○岡田憲明 ,岡本彩香 ,清水広介 ,浅井知浩 ,南野哲男 ,目加田英輔 ,
1
奥 直人 一 般 講 演
【目的】 RNA 干渉を利用した難治性疾患治療に向け、核酸送達技術の研究が基礎と臨床の両方面から
進められている。当研究室では、siRNA とカチオン性物質の複合体をコアとし、これを脂質膜で被覆
したナノ粒子(Lipid nanoparticle: LNP)を開発した。本研究では、LNP 表面に抗体を修飾することで
標的化能を付与した核酸送達技術の評価を試みた。さらに、これまでの抗体修飾 LNP の導入効率を凌
ぐ新規 siRNA ベクターの開発を目指し、コア形成に用いるカチオン性ペプチド脂質誘導体について検
討した。
【方法】 カチオン性物質として、アルギニンの含むペプチド脂質誘導体を複数種合成し、LNP を作製
した。LNP の血清中での安定性は、血清曝露後に存在している siRNA を電気泳動法により検出する
ことで評価した。続いて、婦人科系がん細胞表面での高発現が知られている Heparin-binding EGF-like
growth factor(HB-EGF)に対するモノクローナル抗体を Fab’ 化し、これを LNP 表面に修飾(HB-EGF
LNP)することでがん細胞への標的性を付与した。次に FITC 標識 siRNA 内封 αHB-EGF LNP と非
標識 siRNA 内封 αHB-EGF LNP を同時に細胞に添加し、細胞内移行の選択性について評価した。また、
HB-EGF を強制発現させたアフリカミドリザル腎細胞株(Vero-H)を用い、αHB-EGF LNP を用いた
siRNA デリバリーについて RNA 干渉効果を指標に評価した。
【結果・考察】 siRNA 単独およびコアでは、血清処理による siRNA の分解が観察されたのに対し、脂
質膜で被覆した siRNA は血清中において長時間にわたり安定であり、siRNA 内封の有用性が示唆され
た。阻害剤として用いた非標識 siRNA 内封 αHB-EGF LNP の濃度依存的に、FITC 標識 siRNA 内封
α HB-EGF LNP の細胞内移行が阻害され、HB-EGF 依存的な細胞内取り込み機構が示唆された。さら
に、ウェスタンブロッティング法を用いた RNA 干渉能の評価の結果、αHB-EGF LNP 導入群において、
標的タンパク質の特異的な発現抑制が確認された。以上より、αHB-EGF LNP を用いた HB-EGF 高発
現細胞への標的化および RNA 干渉誘導の有効性が示唆され、難治性疾患治療への応用展開が期待され
る結果を得た。
82
D‒19
三元複合型遺伝子吸入粉末剤に添加するヒアルロン酸の分子量の影響
1
名城大薬
1
1
1
1
1
○伊藤貴章 ,奥田知将 ,高嶋祥匡 ,冨田庸介 ,岡本浩一
【目的】 これまでに当研究室では、プラスミド DNA(pDNA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ヒアルロ
ン酸(HA)から成る三元複合体を含む遺伝子吸入粉末剤を開発し、pDNA と PEI から成る二元複合体
を含む遺伝子吸入粉末剤よりも in vivo で優れた遺伝子発現効果を発揮することを報告してきた。一方、
このような遺伝子発現向上効果が得られる HA の分子量の情報については依然不明である。そこで本
研究では、分子量の異なる 2 種の HA(LHA 及び HHA)を用いて pDNA/PEI/HA 三元複合型遺伝子
吸入粉末剤を調製し、その物性及び遺伝子発現効果について評価を行い、HA を含まない pDNA/PEI
二元複合型遺伝子吸入粉末剤の結果と比較した。
【方法】 ホタルルシフェラーゼをコードした pDNA、直鎖型の PEI 塩酸塩(約 40kDa)、低分子量(<
5 kDA; LHA)及び高分子量(50-110 kDA; HHA)の HA をそれぞれ用いて、噴霧急速凍結乾燥法によ
り各遺伝子吸入粉末剤を調製した。調製した各遺伝子吸入粉末剤を水に溶解して再形成させた複合体に
ついて、粒子径及びゼータ電位を測定するとともに、マウス由来肺癌(LLC)細胞に添加して in vitro
遺伝子発現効果を評価した。また調製した各遺伝子吸入粉末剤をマウスに肺内投与して、in vivo 遺伝
子発現効果を評価した。
【結果】 三元複合体の粒子径について、LHA では添加量に依存して 200nm から > 1000nm まで増大す
るのに対して、HHA では添加量に依らず 200-300nm と変化が小さかった。またゼータ電位については、
LHA、HHA ともに添加量に依存して正から負の値へとシフトし、特に HHA の方で変化が大きかった。
遺伝子発現効果について、LHA、HHA ともに in vitro の評価では HA 添加により効果が減弱するのに
対して、in vivo の評価では HA 添加により効果が増強する傾向が見られ、特に HHA の添加量が 25 %
を占める三元複合型遺伝子吸入粉末剤で最大の in vivo 遺伝子発現効果が得られた。
【考察】 HHA の方が三元複合型遺伝子吸入粉末剤の in vivo 遺伝子発現効果が優れていた理由として、
(1)粒子径の小さい三元複合体の形成、(2)粘性による上皮細胞との接触時間の延長が関与していると
考えられる。
D‒20
VEGF-C 高発現がんへのリポソーム製剤の集積性と治療効果に関する研究
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
○村岡英一 ,清水広介 ,中村元気 ,浅井知浩 ,奥 直人
1
83
一 般 講 演
【目的】 がん細胞から分泌される Vascular endothelial growth factor-C(VEGF-C)は新たなリンパ管
の構築に寄与し、がん組織内微小環境を変化させることで、結果として薬物送達に影響を及ぼすことが
考えられる。本研究は、がんにおける VEGF-C の発現と抗がん剤の標的化 DDS キャリアとして用いら
れているリポソームのがん組織集積の関連性を明らかとし、効率的ながん治療法の確立を行うことを目
的とし検討を行った。
【方法】 本研究では、VEGF-C 遺伝子をマウス結腸がん細胞 C26 に安定的に導入した VEGF-C 高発現
細胞(C26/VEGF-C)を用いた。同細胞をマウス皮下に移植した担がんマウスを作製し、放射標識した
ポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームをマウス尾静脈内に投与し、24 時間後の固形がんへ
の集積について C26 固形がんと比較検討した。さらに蛍光標識 PEG 修飾リポソームを用い、担がんマ
ウスに尾静脈内投与後のがん組織内でのリポソームの分布について、蛍光イメージングシステム IVIS
を用いて経時的に観察した。最後に抗がん剤内封 PEG 修飾リポソームを用い、抗腫瘍効果について各
担がんマウスで比較検討した。
【結果】 体内分布解析の結果、リポソームのがん組織への集積は C26 固形がんに比べ、C26/VEGF-C
固形がんにおいて有意に高いことが明らかとなった。さらにがん組織内のリポソームの分布については、
C26/VEGF-C 固形がんにおいて時間とともにがん組織に広がることが示された。がん治療実験につい
ては、C26 固形がん担がんマウスに比べ C26/VEGF-C 固形がん担がんマウスにおいて、1 mg/kg/day、
3 回投与のスケジュールにおいて有意にがん退縮効果が示され、また投与量の依存性も確認された。
【考察】 組織におけるリンパ管の役割として、組織浸透圧の調節がある。一般的にがん組織における浸
透圧は高まっており、それが薬物送達の障害となることが知られている。今回、新たに構築されたリン
パ管による浸透圧調節が行われた結果、リポソームの腫瘍集積性が高まり、それに伴う抗腫瘍効果が得
られたことが示唆された。本検討の結果より、VEGF-C を高発現するがんに対し、リポソーム製剤の有
用性が期待できる。
D‒21
ドキソルビシン内封リポソーム吸入粉末剤による肺癌治療効果
1
名城大薬
1
1
1
1
○奥田知将 ,中村俊介 ,山崎千聖 ,岡本浩一
【目的】
これまでに当研究室では、噴霧急速凍結乾燥(SFD)法を応用したリポソーム吸入粉末剤開発
に取り組み、粉末微粒子化後もリポソームの粒子径が維持されるとともに、抗癌剤であるドキソルビ
シン(DOX)をリポソーム内に安定に封入した粉末微粒子の開発に成功している。そこで本研究では、
SFD 法で調製した DOX 内封リポソーム粉末微粒子の肺癌治療への応用に向けて、体内動態および抗癌
効果について検討した。
【方法】 DOX 内封リポソーム溶液に、賦形剤としてヒドロキシプロピル -β- シクロデキストリンを添
加して SFD 法により粉末微粒子化した。調製した粉末微粒子を水で再溶解した後、ヒト由来肺癌(A549)
細胞に添加して MTT assay により in vitro 抗癌活性を評価した。調製した粉末微粒子をマウスに肺内
投与した後、所定の時間に摘出した肺中の DOX を定量することで DOX の肺内動態を評価した。また
調製した粉末微粒子を肺転移癌モデルマウスに肺内投与した後、摘出した肺の重量を測定することで
in vivo 肺癌治療効果を評価した。
【結果】 In vitro 抗癌活性評価から得られる DOX 濃度 - 細胞生存率曲線において、DOX 内封リポソー
ム溶液では DOX 単独溶液と比較してその曲線が高濃度側にシフトした。また調製した粉末微粒子の再
溶解液についても DOX 内封リポソーム溶液と同様の曲線が得られた。DOX の肺内動態の評価において、
DOX 内封リポソーム溶液では DOX 単独溶液と比較して投与後長時間に渡り DOX の高い肺内分布が
認められ、調製した粉末微粒子についても同様の肺内分布が認められた。また In vivo 肺癌治療効果の
評価において、調製した粉末微粒子投与群では未処理群よりも癌細胞の増殖に伴った肺重量の増加が小
さかった。
【考察】 In vitro 抗癌活性および DOX の肺内動態の評価の結果から、リポソーム化により獲得した
DOX の徐放性ならびに肺内滞留性が SFD 法による粉末微粒子化後も十分に維持されていることが明
らかとなった。また In vivo 肺癌治療効果の評価の結果で癌細胞増殖抑制効果が認められたことから、
DOX 内封リポソーム吸入粉末剤による肺癌治療の可能性が示唆された。
D‒22
ワルファリン感受性に与える CYP4F2 遺伝子多型および血漿中ビタミン K 濃度の影響
2
静岡県大薬, 岐阜薬大
1
1
1
1, 2
1
○鈴木将之 ,山田悠人 ,平井啓太 ,林 秀樹 ,伊藤邦彦
1
一 般 講 演
【目的】 食品中に含まれるビタミン K(VK)は、ワルファリン(WF)による抗凝固療法に影響を及ぼ
すことが知られている。また、VK の代謝に関与する薬物代謝酵素 CYP4F2 遺伝子多型は WF 投与量
に影響を与えることが報告されている。しかし、血漿中 VK 濃度が WF に与える影響について評価し
た報告はほとんどない。そこで本研究は CYP4F2 遺伝子多型と血漿中 VK 濃度が WF 感受性に与える
影響を評価することを目的とした。また、ラットにおいて VK 負荷投与を行い、VK 摂取が WF 感受性
に与える影響を評価した。
【方法】 静岡県立総合病院にて WF を処方されている日本人患者 217 名を対象とした。文書による同
意取得後、末梢静脈より採血し、白血球ゲノムを用いた遺伝子多型解析および WF、ビタミン K1(VK1)
およびビタミン K2(MK-4)血漿中濃度測定を行った。また、ラット(雄性 SD, 6 週齢)に WF および
低用量と高用量の VK1 または MK-4 を 7 日間連日投与し、WF および VK 群の血漿中濃度測定と PTINR の測定を行った。
【結果】 CYP4F2 TT 保持者は CC、CT 保持者に比べて血漿中 VK1 および MK-4 濃度が有意に高い値
を示した。WF 投与量および WF 感受性(PT-INR/ 血漿中 WF 濃度)は VKORC1 遺伝子多型間におい
て有意な差が認められたものの、CYP4F2 遺伝子多型間で影響は認められなかった。また、WF 服用患
者において血漿中 VK1 および MK-4 濃度と WF 感受性の間には有意な相関は認められなかったが、ラッ
トにおいて VK1 投与量依存的に WF 感受性は有意に低下し、血漿中 VK1 濃度と WF 感受性との間に
負の相関を示した。
【考察】 CYP4F2 遺伝子多型は血漿中 VK 濃度に影響を及ぼすが、WF 感受性には影響を与えないこと
が示された。ラットでは VK1 を摂取することにより WF 感受性が有意に低下したが、その際の血漿中
VK1 濃度は日本人患者よりも高い値を示していた。WF 服用患者は VK を多く含む食物の摂取を制限
するように指導されており、WF 感受性を著しく下げる血漿中 VK 濃度に達することがなかったものと
考えられる。
84
D‒23
後期高齢者におけるメロペネムの投与方法に関する検討
1
2
名城大学薬学部 薬品作用学研究室, 国立病院機構金沢医療センター 臨床研究部,
3
4
国立病院機構金沢医療センター 薬剤科, 国立病院機構金沢医療センター 呼吸器科
1, 2
1
3
3
3
4
1
○相宮光二 ,間宮隆吉 ,田淵克則 ,林 誠 ,舟木弘 ,北俊之 ,平松正行
【目的】 本研究では、肺炎に罹患した後期高齢者患者を対象に、カルバペネム系抗菌薬メロペネム
(MEPM)の投与量・投与回数の違いによる有効性を、体温、白血球数、CRP 値への影響を指標にレト
ロスペクティブに調査した。
【方法】
2007 年 1 月 1 日から 2013 年 12 月 31 日の 7 年間に、MEPM の投与を受けた診断群分類包括
評価(DPC)の診断群分類病名「肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎」の患者で、投与前の体温 37.5
度以上、白血球数 10,000 個 /mm 3以上、CRP 値 10mg/dL 以上で、7 日~ 14 日間投与を受けた患者(75
歳以上)を、1 日 2 回 1.0g(2 キット)投与を受けた群と1日 3 回 1.5g(3 キット)投与を受けた群に
分けた。患者の投与前、投与後 4 日目の体温、投与後 3 ~ 5 日目の白血球数、CRP 値について比較した。
有効性の判定基準は「呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法(案)」を参考に評価した。
【結果】 1 日 2 回 1.0g(2 キット)投与群、および 1 日 3 回 1.5g(3 キット)投与群で、それぞれ体温
16.7%(3/18)、50%(5/10)、白血球数 38.9%(7/18)、60.0%(6/10)、CRP 値 27.7%(5/18)、30.0%(3/10)
と、両群に有意な差はなく、共に有効性が認められた。
【考察】 MEPM は 1 回投与量および1日投与回数の増加により、高い治療効果が得られるとの報告が
ある。今回、1 日 2 回 1.0g(2 キット)投与群と 1 日 3 回 1.5g(3 キット)投与群を比較したところ、
投与後の体温、白血球、CRP 値について、有意な差はなかった。以上のことから、肺炎に罹患した高
齢者においては、1 日 2 回 1.0g(2 キット)投与で、十分な治療効果が得られると考えられる。
D‒24
L- アスパラギナーゼ注射剤調製時に発生する凝集体のキャラクタリゼーション
−注射シリンジ中のシリコーンオイルの影響−
1
2
静岡県立大学薬学部臨床薬剤学分野, 東京大学医学部附属病院薬剤部
1
1
1
1
2
2
1
○内野智信 ,宮嵜靖則 ,大川寛代 ,山崎拓人 ,柳原良次 ,鈴木洋史 ,賀川義之
85
一 般 講 演
【目的】 近年、バイオ医薬品に含まれる凝集体が生体の免疫反応を惹起し、副作用を発症するケースが
知られており、その要因の一つとして注射シリンジ等に含有しているシリコーンオイルが影響している
ことが示唆されている。L- アスパラギナーゼ(L-ASP)は凍結乾燥製剤として上市されており、用時溶
解し投与される。しかし、L-ASP の皮下注射剤調製時に白濁化することがあるため、凝集体形成が疑
われていた。そこで、本研究では L-ASP 皮下注射剤調製における凝集体発生の有無とその発生要因に
ついて検討した。
【方法】 溶解液として 5 % グルコース、シリンジは 5 mL のシリコナイズシリンジおよびシリコーンオ
イルフリーシリンジ用い、10,000 単位 /mL の濃度で凍結乾燥製剤から L-ASP 溶液を調製した。その後、
溶解した L-ASP 溶液を各シリンジに再度充てんし、振とう機で 5 分間振とうした。得られたそれぞれ
の試料について、円二色性スペクトル、フローサイトメーター、フロー式粒子像分析装置、顕微ラマン
分光法により評価した。
【結果および考察】 L-ASP 製剤溶解後の溶液においては、いずれのシリンジを用いた系でもフローサ
イトメーターで約 140,000 個の微粒子が存在していたが、両者の物性に違いは認められなかった。しかし、
両溶液をシリンジ内で 5 分間振とうしたところ、シリコナイズシリンジの系ではシリコーンオイルを含
有した L-ASP 由来の凝集体が多数観察され、この試料を 6 時間保存しても凝集体数は変化しなかった。
一方シリコーンオイルフリーの系では、振とうにより凝集体は形成したものの、粒子数はシリコナイズ
シリンジの系よりも顕著に少なく、保存により凝集体数は減少した。以上の結果から、シリコナイズシ
リンジの系では振とうにより注射シリンジ中のシリコーンオイルとの相互作用がおこり、不溶性凝集体
が形成されることが明らかとなった。現状で医療用注射シリンジはシリコーンオイルが含有されている
ものしか認可されていないことから、L-ASP 皮下注射剤の調製時には過度な振とうを控えることが凝
集体生成抑制に重要と推察された。
D‒25
薬局検体測定室における継続的 HbA1c 測定の効果
1
2
名市大・薬, はるか薬局
1
2
2
1
1
○藤田直希 ,鍋谷伸子 ,梅村紀匡 ,菊池千草 ,鈴木 匡
【目的】 薬局は地域住民の生活習慣の改善、疾病の予防に取り組むよう求められている。これらの課題
に取り組むには、薬剤師が患者の検査値を把握して、適切な指導および情報提供を行う必要がある。平
成 26 年 4 月より、薬局に検体測定室を設けることが可能となった。検体測定室では、血液を検体とし
て採取し測定することが認められている。この研究の目的は、薬局での継続的な測定とそれに伴う薬剤
師による適切な情報提供が、被験者の生活習慣、健康およびその指標としての HbA1c 値に与える効果
を検証することである。
【方法】 測定薬局で血液測定を行った来局者で、研究への同意が得られた 5 名を被験者とした。被験
者には 2 週間に 1 回、測定薬局に来て血液測定を行うよう依頼し、1 名につき計 7 回測定を行った。測
定項目は HbA1c、血糖、総コレステロール、HDL コレステロール、LDL コレステロール、中性脂
肪、non-HDL コレステロールだった。測定機器として、DCA バンテージ(SIEMENS)、コレステック
LDX スキャモニ(アリーアメディカル)を用いた。各測定の際に、本研究室で考案したチェックシー
トを用いて、毎回食事、運動などの生活習慣の見直しを一緒に行い、それに関連した情報提供を行った。
【結果】 被験者 5 名のうち、7 回全ての測定を行ったのは、初回測定時に HbA1c が 5.6 を超えており、
生活習慣病予備軍になりうる大学生 3 名だった。この 3 名において、チェックシート上で生活習慣の改
善が見られた。また、初回の測定に比べて最終回の測定では HbA1c が有意に低下し改善が見られた。
【考察】 薬局における生活習慣指導では、詳細な生活状況の聞き取りや専門的な指導を行わなくても、
継続的な HbA1c 測定と簡単な生活習慣のチェックを来局者と共に薬剤師が行うだけで、予防に効果が
あることが示された。これは、薬剤師による生活習慣についての簡単な問診と血液検査が、来局者のセ
ルフメディケーション向上に寄与することを示唆しており、検体測定室の有用性を示唆している。
D‒26
薬学生における服薬体験に関する調査
¹ 鈴鹿医療科学大学薬学部薬学科
○清水俊樹 ¹,市橋哲平 ¹,長南謙一 ¹
一 般 講 演
【目的】 現在、服薬コンプライアンスの不良が問題となっている。そのため薬剤師には、患者の立場に
立った服薬指導が求められており、服薬体験することは、患者の気持ちを理解することが重要だと思わ
れる。そこで、本研究では、学生に服薬体験をしてもらったのでその結果を報告する。
【方法】 調査対象は、鈴鹿医療科学大学薬学部の 2、3、4 年次生 90 名を対象とした。調査方法は、架
空の処方箋を用い、28 日間朝食後、昼食後、夕食後、就寝前の 1 日 4 回服薬体験をしてもらった。意
識した場合は時間を、意識出来なかった場合は後日 「×」 を、カレンダー式の薬袋に記載してもらった。
そして、薬袋回収時に服薬体験の感想などのアンケートをおこなった。
【結果】 服用できた継続群(n=59)と服用出来なかった中断群(n=31)に分けて比較検討をおこなった。
継続群で、女性の方が多かったが有意な差は認められなかった。「4 週間服用してみてどう感じました
か?」という問いに対して「思っていたより難しかった」という答えが中断群に比べて継続群が有意に
高かった。中断した時期は、1 週間以内に中断した学生が多く見られた。時間別の服薬コンプライアン
スでは、良い時間帯から朝食後、夕食後、昼食後・就寝前の順であった。曜日別での服薬コンプライア
ンスの状況では、土曜日、日曜日の朝食後、昼食後が平日に比べて低かった。また金曜日、土曜日の就
寝前も他の曜日と比べると低かった。
【考察】 この研究では、次の日が休日の金曜日、土曜日の就寝前や、その日が休日の土曜日、日曜日の
朝食後、昼食後の服薬率が低くかった。これは、学生の生活習慣が影響を及ぼしていると考えられる。
また、自己申告制であるため信頼性が低いと思われる。今後、電子版お薬手帳などを使い調査していき
たい。服薬体験後のアンケート調査では、多くの学生が服薬という行為が難しかったと回答している。
以上の結果から、本研究は、患者の立場を理解できる有用な経験であったと考える。
86
D‒27
実務実習生から見た薬剤師業務としての生活習慣指導の評価
1
名古屋市立大学・薬
1
1
1
1
○井上 渉 ,藤田直希 ,菊池千草 ,鈴木 匡
【目的】 新しい薬局業務の開拓が急務とされる中、薬局業務において HbA1c 等の簡易測定も許可され、
薬剤師が患者に対して生活習慣病予防の指導を行うことの重要性が増している。薬学部教育においても、
生活習慣の指導を学習し実務実習で活用する必要がある。本研究では、実習生と薬剤師の生活習慣指導
に対する意識の調査から、実務実習生と薬剤師の意識の違いとそれが薬局業務に与える影響について考
察した。
【方法】 対象は名古屋市立大学薬学部の第1期実務実習生のうち調剤薬局で実習を行った 17 名とし、
実習前後に生活習慣指導に関するアンケートを行った。協力薬局の薬剤師 51 名に対してもアンケート
を行い、比較した。
【結果】 薬剤師による生活習慣の聞き取りは必要だと思うか、という項目では実習生と薬剤師の評価は
どちらも高く、有意差はなかった。食事・喫煙状況について、どのくらい患者に聞き取りを行えるか、
実際にどのくらい行ったかを聞いたところ、実習前の実施可能性に比べて、実習後の実際の実施状況お
よび薬剤師の実施状況はどちらも低かった。薬剤師の指導によって患者の生活習慣は改善すると思うか、
という項目では薬剤師に比べて実習後の実習生の評価は有意に高かった。その結果をうけて実習生が簡
易に生活習慣チェックシートを作成し実際の薬局での利用を促した。
【考察】 今回行った調査より、薬剤師と実習生の間に、生活習慣指導に対する意識の違いがみられた。
実習生は薬局で生活習慣指導を行うべきだと敏感に感じ、さらにそれが可能であると考えた。実習生の
作成した生活習慣チェックシートは薬剤師に一定の評価を得ている。実務実習生の視点からも薬局業務
を評価することで、薬局業務が推進される可能性が示唆された。
一 般 講 演
87
E‒01
外来化学療法における薬剤師の活動
~セツキシマブ・パニツムマブにおける低マグネシウム血症対策への取り組み~
1
岡崎市民病院 薬局
1
1
1
1
1
1
○鈴木大介 ,川和田百華 ,三森佳代 ,本多百合 ,伊豫田智子 ,稲嶋早希 ,
1
1
1
佐藤力哉 ,大山英明 ,小林伸三
【はじめに】 セツキシマブ(以下、Cmab)パニツムマブ(以下、Pmab)の副作用の 1 つである低マ
グネシウム血症は無症状であることが多いが、致死的症例となることも少なくない。岡崎市民病院(以
下、当院)で Cmab/Pmab の投与期間中に低マグネシウム血症にて Cmab/Pmab の投与を中止した事
例があったため、薬局主導のもと低マグネシウム血症について当院で対策を行ったので報告する。
【当院での Cmab/Pmab の投与時の対策】 血清マグネシウム濃度の測定を行う。初回投与時から、下
痢でない患者さんに対して経口マグネシウム剤 750 ㎎ 分 3 の投与を行う。
【方法】 平成 25 年 10 月から平成 26 年 8 月の期間、Cmab/Pmab の投与開始日より経口マグネシウム
剤 750 ㎎ 分 3 で内服を行った患者に血清マグネシウムの値を確認した。
【結果】 患者 11 名のうち Grade1 に至った患者さんは 1 名であったが、投与中止、投与量の減量を行っ
た患者はいなかった。
【考察】 初回導入時より、経口マグネシウム剤を投与することにより低マグネシウム血症の発現を優位
に抑えられたと考えられる。しかし、服用後軟便になる患者さんは少なくないため服薬支援・患者相談
などを毎回行い患者さんの状態を把握していく必要がある。
E‒02
肺癌患者へのシスプラチン投与における Short-Hydration 法の導入と有用性評価
1
2
浜松医療センター薬剤科、 同呼吸器内科
1
1
2
2
2
1
○坪井久美 ,遠藤拓未 ,矢野利章 ,小笠原隆 ,笠松紀雄 ,渡邉進士
一 般 講 演
【目的】 肺癌の化学療法において、シスプラチン(CDDP)はキードラッグとして重要な役割を担って
いる。しかし、消化器毒性、腎毒性があり、腎毒性軽減のために最低 10 時間以上かけて大量輸液を行
う必要があった。近年、制吐薬の進歩により、経口補水が可能となったため、5 時間程度で施行可能な
投与方法(Short-Hydration 法)が使用されるようになった。浜松医療センターでの導入にあたり、そ
の有用性について評価を行った。
【方法】 2013 年 11 月に医師、看護師と共同して Short-Hydration 法のレジメンを組成し、院内承認を
得てレジメン登録を行った。2013 年 11 月より 2014 年 7 月までに Short-Hydration 法を用いたレジメン
を使用した肺癌患者の血清クレアチニン値、尿素窒素、血清 Na 値、血清 K 値の変動について後向き
に調査した。併せて、食事摂取量および嘔吐回数と外来移行率について調査した。対照群として、2012
年 1 月より 2013 年 10 月に、大量輸液を用いたレジメンを使用した肺癌患者について同様に調査した。
【結果】 調査期間中に Short-Hydration 法を用いた患者は 15 例であった。このうち PD による中止が 2
例、消化管潰瘍穿孔による脱落が 1 例あり、12 例は治療継続することが可能であった。なお、血清ク
レアチニン値の上昇、電解質の変動は認めず、食事摂取量は一時的に低下したが、嘔吐は 1 例(Grade1)
のみであった。
外来移行が可能となったのは 8 例(53%)であり、うち 6 例(40%)は実際に外来で施行できた。
【考察】 Short-Hydration 法の導入および経口補水の指導により、輸液投与時間の短縮ができ、かつ有
害事象の増悪を認めなかったことから、安全に施行できると考えられた。
88
E‒03
カルボプラチンの投与量に上限はあるか? ~肺がん患者を対象とした検討~
1
2
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部、 同呼吸器内科、
1
1
1
1
2
○三浦理恵子 ,望月敬浩 ,加藤こずえ ,篠 道弘 ,高橋利明
【目的】 カルボプラチン(CBDCA)の主な副作用である血小板減少と血中濃度曲線下面積(AUC)は
相関するとされており、その投与量は Calvert の式【投与量(mg)=AUC 目標値 ×(糸球体濾過量
[GFR]+25)】を用いて算出されている。国内の多くの施設では GFR の代わりに Cockcroft-Gault の式か
ら算出されたクレアチニン・クリアランス(推定 Ccr)を用いて計算している。米国では、腎機能の過
大評価による CBDCA の過剰投与を防ぐため投与量の上限(GFR の上限)を設けることを推奨する通
達が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration,FDA)より出されている。そこで、FDA が推
奨する上限量(AUC=6:900mg、AUC=5:750mg)を超えて投与した場合、日本人患者の安全性に影響
をおよぼすかどうかを検討した。
【方法】 2013 年 5 月から 2014 年 4 月までに静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科において CBDCA を
含む化学療法を行った 115 例を対象とし、FDA が推奨する上限量を超えて投与された群(高用量群)6
例と上限量未満の群(通常量群)109 例との間で副作用(血小板減少)について後方視的に比較検討した。
【結果】 高用量群と通常量群の患者背景では年齢(各々 51.3、67.9 歳)と血清クレアチニン値(各々 0.54、
0.80mg/dL)に差がみられた。Gr4 の血小板減少は高用量群で 1 例(16.7%)、通常量群で 12 例(11.0%)
に認められたが、両群間に統計的な有意差は認めなかった(p=0.91)。
【考察】 今回の調査では両群において血小板減少の発現頻度に差はみられなかった。症例数が限られて
いるものの、安全性の面では、必ずしも海外で推奨される上限量まで減量する必要はないことが示唆さ
れた。
E‒04
肺癌患者の CINV に対するアプレピタントの治療効果と予防効果
2
愛知医科大学病院 薬剤部, 愛知医科大学病院呼吸器アレルギー内科
1
1
1
2
1
○築山郁人 ,築山純代 ,片上昌代 ,久保昭仁 ,松浦克彦
1
89
一 般 講 演
【目的】 高度および一部の中等度催吐性リスクがん化学療法(HEC/MEC)による悪心嘔吐(CINV)
には、NK1 受容体拮抗薬の併用が推奨されている。しかし、従来は NK-1 受容体拮抗薬を用いない制
吐療法で悪心嘔吐を生じない例が 40-60% あり、全症例に NK-1 受容体拮抗薬の予防的投与が必要かは
明らかでない。また、悪心嘔吐発現後にアプレピタントを投与した場合の治療効果に関する報告はない。
そこで、HEC/MEC を受ける患者を対象に、アプレピタントを必要とする症例の割合およびアプレピ
タントの治療効果を検証することを目的として、調査検討を行った。
【方法】 2011 年 7 月から 2013 年 1 月までの期間に、当院呼吸器・アレルギー内科において、HEC ま
たは MEC を新規導入された 96 症例を対象とした。アプレピタントを必要とする症例の割合およびア
プレピタントの治療効果を検証した。がん化学療法 day1 から day7 までの悪心 numerical rating scale
(NRS)と嘔吐回数を記入する患者日記、および悪心嘔吐の QOL に対する影響を functional living
index of emesis(FLIE)を用いて調査した。本調査は、愛知医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】 解析可能症例 77 例のうち 18 例(23%)がアプレピタントを必要とし、内訳は HEC12/28 例
(43%)、MEC6/49 例(12%)であった。CINV 発現後に治療的にアプレピタントを投与された 9 症例では、
悪心 NRS の低下(7.44 → 5.44, p=0.10)
、嘔吐回数の有意な減少(2.11 → 0.11, P=0.03)がみられた。2 コー
ス目から予防目的にアプレピタントを投与された 18 症例では、悪心なしおよび嘔吐なしの割合が有意
に増加した(悪心なし 1 コース目 6% → 2 コース目 50%; p=0.007, 嘔吐なし 33% → 89%; p=0.002)。
【考察】 HEC では約半数の患者がアプレピタントを必要としたが、MEC では 88% が従来の制吐療法
のみで CINV のコントロールが可能であった。CINV 発現後にアプレピタントを投与した場合でも、悪
心 NRS、嘔吐回数の改善がみられたことから、CINV 発現後においても治療効果が得られることが示
唆された。
E‒05
大腸癌 MEC レジメンの制吐対策はパロノセトロンへの変更で改善されるか
1
2
名古屋市立大学病院 薬剤部、 名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床薬剤学
1
1
1
1, 2
○竹本将士 ,黒田純子 ,江崎哲夫 ,木村和哲
【目的】
当院では、中等度催吐性リスク(MEC)レジメンに対する制吐剤の国際ガイドライン改訂に
伴い、2013 年 10 月より、大腸癌 MEC レジメンである mFOLFOX6 療法および FOLFIRI 療法を含む
レジメンの制吐剤をグラニセトロン(GRA)からパロノセトロン(PALO)へと変更した。この変更に
より患者の悪心症状が改善されたかどうかを、後ろ向きに調査した。
【方法】 mFOLFOX6 療法、FOLFIRI 療法(分子標的薬併用も含む)に対する、制吐剤の変更前後に
おけるアプレピタント(APR)、ホスアプレピタント(FOSAPR)の追加処方数を比較した。調査期間
は 2013 年 4 月から 2014 年 6 月である。また、過去の診療録から悪心の訴えがなかったかどうか検証した。
【結果】 GRA 使用群(17 名)での APR、FOSAPR の追加使用患者は 6 名であった。また、PALO 使用群(18
名)での追加使用患者は 6 名であり有意な差は見られなかった。APR を追加しなかった GRA 使用群
において、悪心の訴えがなかったのは 11 名中 8 名であった。また、PALO 使用群で悪心の訴えがなかっ
たのは 12 名中 6 名であり、有意差は見られなかった。
【考察】 レジメン変更前後で APR、FOSAPR を途中から使用する患者の比率は有意差がなく、GRA
と PALO の制吐作用は大腸癌 MEC レジメンにおいて同等であると考えられる。PALO は遅延性悪
心に対して有用であるとされているが、大腸癌 MEC レジメンの遅延性悪心に対しては完全にコント
ロールできなかったことが推測される。また、GRA 群および PALO 群とも APR を追加した際は共
に悪心の軽快が見られており、APR の追加は有効であると考えられた。ガイドラインの改訂に伴い、
MEC レジメンに対する制吐意識が高まっており、初期から高度催吐性リスクレジメンと同様に APR、
FOSAPR の併用されている事例も見られた。5-HT3 受容体遮断薬の選択は重要であり、医療費削減の
面からの PALO への変更は再考すべきである。
E‒06
シスプラチンを含む高度催吐性化学療法による悪心・嘔吐に対する危険因子の検討
1
2
3
愛知県がんセンター中央病院薬剤, 看護部, 薬物療法部
1
2
3
1
1
1
1
○長谷川郁恵 ,山田知里 ,宇良 敬 ,下村一景 ,浅野知沙 ,前田章光 ,水谷旭良 一 般 講 演
【目的】 近年制吐療法の進歩に伴い悪心嘔吐制御率は向上しているが、シスプラチン(CDDP)を含む
化学療法はしばしば悪心嘔吐のコントロールに難渋する症例も少なくない。実臨床における CDDP 投
与患者の悪心・嘔吐完全制御率及びその危険因子となる要因を調査することは、今後の日常診療におけ
る悪心嘔吐の出現を予測するうえで重要である。
【方法】 2013 年の期間中、愛知県がんセンター中央病院の薬物療法部・呼吸器内科部において CDDP
50mg/ ㎡以上を含む抗がん剤療法を初めて実施された患者について CDDP 投与後 120 時間の悪心嘔
吐の発現及び制吐剤の使用について診療録より後ろ向きに調査した。なお、入院期間が CDDP 投与後
120 時間未満の症例、抗がん剤開始前より制吐剤の定期服用または悪心を訴えていた患者は対象より除
外した。
【結果】 対象は消化器疾患患者 78 名・呼吸器疾患患者 51 名の計 129 名であった。悪心嘔吐完全制御(悪
心・嘔吐なしかつ制吐剤追加なし;CR)率は消化器患者では 30.8%、呼吸器患者では 27.5%と同程度であっ
たが、嘔吐症例は消化器患者では 22 名(28.2%)
、呼吸器患者では 7 名(13.7%)と消化器疾患患者で
多かった。CR に及ぼす危険因子を多変量解析にて検討した結果、全期間の CR に対しては消化器患者
では女性が危険因子であったのに対して、呼吸器患者では飲酒歴なし、60 歳未満が危険因子であった。
遅発期のみの CR に対しては 5FU 持続投与レジメンが悪心・嘔吐に対する危険因子である可能性が示
唆された。
【考察】 本検討では CDDP の悪心嘔吐に及ぼす危険因子として、年齢・性別・飲酒歴など既知の要因
が確認された。また、5FU の持続投与の併用は、遅発期の悪心嘔吐に対して、これら要因とは独立し
た危険因子であることが示唆されたことから、5FU 持続投与を併用するレジメンでは高度催吐性レジ
メンの中でもより遅発期の悪心・嘔吐リスクが高い可能性が考えられた。
90
E‒07
当院におけるデノスマブ使用と低カルシウム血症発現状況に関する調査
1
聖隷三方原病院薬剤部
1
1
1
1
○川合麻未 ,橋本有可子 ,奥村知香 ,柴山芳之
【目的】 デノスマブ(ランマーク®)は、骨転移を有する癌患者の SRE(skeletal related event:骨関
連事象)発現を改善する一方、重篤な低カルシウム(Ca)血症発現による死亡例が報告され、Ca 及び
ビタミン D を適切に補充する必要がある製剤である。当院では外来化学療法室でデノスマブを投与す
る際、薬剤師が血清 Ca 値の確認を行い、Ca 製剤の予防投与を推奨しているが、全てのデノスマブ投
与患者を把握できていないのが現状である。そこで本研究では、当院におけるデノスマブ投与患者を対
象として、血清 Ca 値と Ca 製剤の使用状況を調査した。
【方法】 2012 年 12 月 1 日から 2014 年 5 月 31 日までの間、当院でデノスマブを投与された患者 74 名:
入院患者 29 名、外来患者 45 名(外来化学療法室で投与された患者 15 名)を対象とし、診療科、癌腫病名、
性別、年齢、体表面積、Ca 及びビタミン D 製剤の種類と用法・用量、血清 Ca 値、ゾレドロン酸(ゾ
メタ ®)投与歴、放射線治療の併用、血清アルブミン値、クレアチニンクリアランスを調査した。
【結果】 対象患者 74 名のうち、Ca 及びビタミン D 製剤が予防投与されたのは 60 名であった。高 Ca
血症であった患者を除き、外来化学療法室でデノスマブを投与した患者は、15 名全ての患者で予防
投与されていた。デノスマブの総投与回数は 404 回であり、そのうち投与前後で補正 Ca 値を計算で
き、かつ投与後 3 回以上測定されたのは 64 回であった。64 回のうち、低 Ca 血症が発現していたのは
20.3%であったが、Grade3 以上は認められなかった。
【考察】 一部の外来患者では Ca 及びビタミン D 製剤が予防投与されず、さらに投与前後で補正 Ca 値
を計算できなかった。投与前後で補正 Ca 値を計算でき、かつ投与後 3 回以上測定されたのは約 16%で
あり、実際には今回の結果以上に低 Ca 血症が発現している可能性がある。当院では外来患者に投与す
ることが多く、頻回な採血は難しいが、定期的な Ca 値の測定及び確認の必要性が示唆された。
E‒08
愛知県がんセンター中央病院におけるアファチニブの有害事象発現状況について
2
愛知県がんセンター中央病院薬剤, 看護部
1
2
2
1
1
1
○浅野知沙 ,山田知里 ,戸崎加奈江 ,前田章光 ,梶田正樹 ,水谷旭良 1
91
一 般 講 演
【目的】 アファチニブ(ジオトリフ®錠)は ErbB ファミリーを不可逆的に阻害することで抗腫瘍効果
が期待される一方で、その副作用の重篤性が注視されている。そこで当院における有害事象の発現状況
について調査し、その対応について検討した。
【方法】 2014 年 5 月から 8 月までの期間に、アファチニブ服用患者について、有害事象の発現状況を
診療録より後ろ向きに調査した。なお、有害事象の Grade は CTCAE(ver4.0)に基づき、G 1以上を
評価した。
【結果】 対象患者は肺腺癌患者 10 名(男性 6 名、女性 4 名)、年齢は平均で 71 歳(50-83 歳)であった。
観察期間は 17-80 日、有害事象により減量を要した患者は 6 名、中止症例は 2 名であった。有害事象は
全症例で発現し、下痢 10 例、ざ瘡様皮疹 9 例、口内炎 9 例、爪囲炎 6 例、食欲不振 6 例であった。下痢、
ざ瘡様皮疹、口内炎に対しては積極的な予防投薬が行われた。下痢の発現中央日は 3 日(2-5 日)であり、
休薬後内服再開ではより早期に下痢が再燃する症例が認められた。支持薬はロペラミドを 1-2 カプセル
用い、ロペラミドの予防投薬が行われた患者は、行われなかった患者よりも症状が悪化するまでの期間
が長かった。なお、開始前に G1-2 の便秘が 6 例あったが、下痢の発現に差はなかった。ざ瘡様皮疹の
発現中央日は、19 日(6-24 日)であり、全症例にステロイドが使用されたが、増悪によりステロイド
のランクを引き上げた症例が 2 例、ミノマイシンの内服が 3 例、抗生剤軟膏の追加が 2 例であった。ま
た、口内炎は早期よりうがい薬を使用し、症状出現時にはステロイド軟膏を用いた。食事摂取不良例に
対しキシロカイン、グリセリン含有のうがい薬を使用することで改善が認められた。
【考察】 アファチニブはその有用性から外来での継続的な使用が予想されるが、その副作用の対応が重
要となる。治療継続のためには有害事象の発現時期に注意し、薬剤師が早期より積極的に関与すること
が必要であると考えられる。
E‒09
エンザルタミドの使用経験について ~有効性と副作用など~
1
2
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 薬剤部, 同泌尿器科
1
1
1
1
2
1
○宮本義浩 ,平出耕石 ,古田愛果 ,今関孝子 ,石原 哲 ,加藤武司
【目的】 これまで本邦における去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)治療は、リン酸エストラムスチンやド
セタキセルといった化学療法が主体であったが、この化学療法施行後にも病勢の進行がみられる前立腺
がんに対する治療に苦慮していた。しかし CRPC に対する治療薬として、今年新たに 3 剤の薬剤が承
認されたためその治療効果が期待されている。その中で今年 6 月より使用可能となったエンザルタミド
(Enz)による治療を開始した症例を 9 例経験したため、有効性や副作用などを踏まえて報告する。
【方法】 2014 年 6 月から 8 月までに Enz による治療を開始した前立腺がん患者 9 例の服用開始前後の
一定期間の PSA 値を経時的に観察した。また、臨床検査値や自覚症状の有無などで有害事象の出現お
よび程度を評価するとともに、患者自身から Enz による治療開始後より気になることがないかを聴取
した。
【結果】 Enz を服用開始した 9 例のうち、6 例で PSA 値の明らかな低下がみられた。また、9 例すべて
において臨床検査値の異常はみられず、自覚症状を含めた有害事象はとくに認められなかった。一方で、
Enz は比較的大きな軟カプセル剤でありこれを 1 日 1 回 4 カプセル服用しなければならず、「大きくて
服用しづらい」「うまく飲みこめず吐いてしまうことがある」という患者からの訴えや服薬拒否もみら
れた。その対策として 1 例の患者に対し用法を分 2 と変更したところ、服薬コンプライアンスの向上を
図ることができた。
【考察】 CRPC に対する新規治療薬である Enz は安全性が高く、多くの患者で PSA 値の低下がみられ
たためその治療効果が期待できる。一方で、剤型や大きさに関連した服薬コンプライアンス悪化の問題
があり、治療を継続するためにも患者の訴えに耳を傾けるとともに、対策を講じる必要がある。
E‒10
ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネルブロッカーがアルブミン懸濁型パクリタキ
セルの血液毒性発現に及ぼす影響
1
松阪市民病院 薬剤部
1
1
1
○若宮加寿馬 ,中西大介 ,柳川泰裕
一 般 講 演
【目的】 アルブミン懸濁型パクリタキセル(以下 nab-PTX)とジヒドロピリジン系カルシウムチャン
ネルブロッカー(以下 DHP-CCB)の併用は、PTX の代謝が阻害され、血中濃度が上昇する可能性が
あるため、併用注意となっている。そこで、DHP-CCB が nab-PTX 療法の血液毒性発現に及ぼす影響
について検討する。
【方法】 当院で 2013 年 3 月~ 2014 年 6 月までに非小細胞肺癌に対して、nab-PTX 単剤療法を施行し
た 13 名を対象とした。対象患者の nab-PTX 投与時における DHP-CCB 併用の有無で群分けし、1 コー
ス目の血液毒性を retrospective に調査した。
【 結 果 】 患 者 背 景 は、DHP-CCB 併 用 群:DHP-CCB 非 併 用 群 = 6 名:7 名 で あ り、 全 例 が nabPTX100mg/m2/3 週毎(Day1、8)で投与された。Grade(以下 G)2 以上の血液毒性は、白血球減少
が DHP-CCB 併用群:DHP-CCB 非併用群= 4 名(66.7%)
:3 名(42.9%)、好中球減少が 3 名(50%)
:
2 名(28.6%)、ヘモグロビン減少が 5 名(83.3%)
:4 名(57.1%)、血小板減少が 1 名(16.7%)
:0 名(0%)
であった。
【考察】 nab-PTX 投与時の DHP-CCB 併用により、G2 以上の血液毒性発現率が高くなる傾向がみられ
た。しかし、統計学的には DHP-CCB 併用群と DHP-CCB 非併用群間で有意な差は認められなかった。
今回の調査は、症例数が少なかった為、今後多くの症例数を集めて DHP-CCB が nab-PTX の血液毒性
発現に及ぼす影響を明らかにする必要があると思われる。
92
E‒11
妊婦と薬剤師の関わり ~妊娠 13 週に悪性リンパ腫と診断された一例~
1
2
富士宮市立病院薬剤部、 磐田市立総合病院薬剤部
1
2
1
○加藤祥世 ,浮田浩利 ,北村 修
【はじめに】 妊婦への抗悪性腫瘍薬使用に関するデータは、症例報告か小規模のコホート研究に限られ
たうえ多剤併用例が多いため、単剤での評価が困難である。また、使用薬剤によっては妊孕性への影響
についても考慮する必要がある。今回、妊娠 13 週に悪性リンパ腫と診断され、多職種間での協議の結果、
妊娠中絶を選択し化学療法を実施した症例を経験したので報告する。
【症例】 0 経妊 0 経産 20 代半ば女性。妊娠 13 週に扁桃腫脹遷延のため耳鼻咽喉科受診し、生検結果よ
り、悪性リンパ腫の診断を受けた。産科医師からの妊娠初期に R-CHOP を実施した場合の胎児と妊孕
性への影響についての問合せに対し、各薬剤についての情報収集を行うと同時に患者と面談し、妊娠と
薬情報センターの紹介と相談依頼の補助をした。また、この症例に対しては Cancer Board が開催された。
血液内科医師がセンターからの回答と Cancer Board の内容をもとに患者と面談し、母体の生命を最優
先とし妊娠中絶する方向となった。妊娠 14 週 4 日から化学療法を開始し 18 週 0 日に妊娠中絶した。児
に明らかな外表奇形はなかった。化学療法実施後、放射線照射を行い悪性リンパ腫は消失した。治療中
に卵巣機能保存目的で Gn-RH アナログ皮下注射を2回行った。治療終了から1ヵ月で生理再開、1年
7ヵ月後に妊娠し健常児を得た。
【まとめ】 悪性腫瘍の治療選択の際には、母体の予後が最優先となる方法を検討し、患者へ治療による
胎児への影響について最大限の情報提供をするとともに、全身状態や妊娠週数、挙児の希望などを考慮
し症例毎に治療方針を決定する。治療方針の決定をするためには主治医、産科医師、薬剤師、看護師等
多職種による連携が必須である。今回は産科医師から依頼されたことにより、薬剤師として情報収集に
関わることができた一例である。今後は悪性腫瘍のみならず疾患を抱えた妊婦や妊娠可能年齢の女性と
もっと積極的に関与し、医療チームの一員として薬剤師の役割を果たしていくべきであると考える。
E‒12
妊娠中にがん薬物療法を行った子宮頚がん患者に対して薬学的介入を行った一症例
2
三重大学医学部附属病院 薬剤部, 同産科婦人科
1
1
2
1
1
1
日置三紀 ,赤阪未来 ,北野裕子 ,杉本浩子 ,村木優一 ,岩本卓也 ,
2
1
村林奈緒 ,奥田真弘
1
93
一 般 講 演
【目的】 妊娠中に浸潤性子宮頸がんを合併する頻度は、2,000 妊娠に 1 例とされる。今回、妊娠中に合
併した子宮頸がんに対して化学療法を含む治療が行われた症例において、薬学的介入を行ったので報告
する。
【症例】 36 歳、0 経妊 0 経産。近医の検診で子宮頸がんが疑われ、妊娠 18 週 6 日に当院受診。子宮頸
部前唇に 32mm 大の腫瘍を認め、生検にて mucinous adenocarcinoma、子宮頸がん Stage Ⅰ B1 と診断
された。妊娠中に術前化学療法を施行後、児の成熟を待って帝王切開+広汎子宮全摘の方針となった。
【薬学的介入】 薬剤師は治療中に、1)妊娠中〜後期の抗がん薬使用の安全性、2)制吐薬等の安全性、
3)妊娠に伴う循環動態の変化とカルボプラチン用量設定の留意点、4)支持療法薬デキサメタゾン使用
後の胎児肺成熟目的のステロイド投与法、5)授乳希望に対する抗がん薬の乳汁中移行と残存について、
文献検索の上、情報提供、処方提案、並びに患者指導を行った。いずれの処方提案も担当医と協議の結
果受諾され、実施された。
【治療経過】 術前(21 週 6 日)より TC(パクリタキセル + カルボプラチン)療法 3 コースが施行され、
治療効果は PR(腫瘍径 32mm → 21mm)であった。有害事象は好中球減少 Grade1, 貧血 Grade2, 悪心
Grade1, 食欲不振 Grade2 を認めたが、減量・延期なく完遂できた。妊娠 28 週 3 日に妊娠糖尿病と診断され、
超速効型インスリン(2 単位 / 日)を分娩前日まで使用した。妊娠 32 週 2 日、帝王切開術+広汎子宮
全摘術施行し、Apgar score(1 分値)3 点 /(5 分値)5 点、1,518g の生産児(女児)を得た。抗がん
薬の影響を懸念し授乳は行わない方針となった。
【考察】 妊娠中のがん化学療法においては、児への影響、妊娠に伴う母体の変化などにも留意が必要で
ある。今回、薬剤師が治療選択時より積極的に介入したことにより、妊娠中の安全な化学療法の実施に
寄与することが可能であった。
E‒13
当院における病棟薬剤師の処方提案及び相談応需の現状 ―栄養管理について―
1
静岡県立総合病院 薬剤部
1
1
1
1
1
1
1
○萩倉 翔 ,中桐季畝 ,岩崎剛士 ,青島弘幸 ,中垣 繁 ,鈴木貴也 ,角入壽彦
【目的】 当院では、平成 25 年 7 月より病棟薬剤業務実施加算の算定を開始し、現在全ての病棟に薬剤
師を配置し薬学的ケアを行っている。病棟薬剤師の薬学的関与の実態を把握し今後の病棟業務に活用す
るため、処方提案や問い合わせ内容について集計及び解析を行った。今回特に栄養管理に対する薬剤師
の関与について実態を調査した。
【方法】 平成 26 年 1 月から 6 月までに病棟薬剤師が行った処方提案・情報提供(以下、「処方提案」)
及び相談応需の事例について集計及び解析を行った。
【結果】 調査期間中に行われた処方提案件数は 609 件、相談応需件数は 568 件であった。処方提案事例
のうち、感染管理が 105 件、栄養管理が 101 件、がん化学療法が 79 件、腎機能障害・肝機能障害等の
特殊病態に関するものが 61 件、疼痛管理が 45 件、持参薬関連が 43 件であった。その他に、相互作用、
TDM、副作用対策、術前休薬の提案等が行われていた。栄養管理の内訳は、消化器症状(嘔気、口内炎、
食欲不振、味覚異常等)に対する薬剤の提案等が 34 件、輸液の適正使用(栄養輸液組成や電解質異常等)
に関する介入が 33 件、その他に排便コントロールや経腸栄養剤、栄養補助食品の提案等であった。なお、
病棟毎の処方提案件数は、0 ~ 32 件とばらつきがあった。一方、相談応需のうち、医薬品情報(適応、
用法用量、副作用等)が 109 件、がん化学療法が 82 件、入力方法等の運用に関するものが 76 件であった。
その他に、持参薬や配合変化に関する問い合わせがあった。栄養管理に関する問い合わせは 17 件であっ
た(件数は重複あり)。
【考察】 病棟薬剤師は、多岐に亘り処方提案や相談応需を行っていた。また、栄養管理に関する件数は
多く、医師、看護師等の医療スタッフに、薬剤師の視点から適切な情報提供することで、患者の状態改
善に貢献できると考えられる。現在、栄養への関与は病棟毎にばらつきがあるため、今後より多くの薬
剤師が栄養に関する知識を持つことが必要である。
E‒14
点眼指導用紙の改訂がアドヒアランスに与える影響
2
公立陶生病院 薬剤部, 金城学院大学 薬学部
1
1
2
1
1
1
1
○伊藤聡一郎 ,松本茂 ,打田由希 ,脇田恵里 ,勝野晋哉 ,水野尚章 ,鷹見繁宏
1
一 般 講 演
【目的】 現在当院で使用している点眼指導用紙には点眼知識に関する情報量が少なく、清潔操作、点眼
間隔、点眼液量は口頭での指導で行っている。しかし白内障手術患者においては高齢者の割合が多く、
口頭での指導では薬識の向上に不安がある。今回点眼指導用紙を改訂することで、薬識への影響を評価
したので報告する。
【方法】 2014 年 7 月~ 10 月に白内障手術で入院した患者のうち、退院後自己点眼を行う患者23例を
対象に、現在院内で使用している点眼指導用紙(以下、現行)と、点眼知識、点眼薬の特徴、などを改
訂した指導用紙(以下、改訂)を併用した 2 群に分け、「点眼薬の効果」「点眼前の手洗い」「懸濁性点
眼薬の振り混ぜ」「点眼順序」「点眼する際の間隔」「1 回の点眼液量」「点眼後の清潔操作」の項目でテ
スト形式のアンケートを用いて評価した。
【結果】 対象患者の平均年齢は 75.95±9.12 と高齢者が多く、現行と改訂では「点眼順序」「点眼する際
の間隔」「1 回の点眼液量」の項目で正答率に大きな差はなかった。しかし「点眼薬の効果」「点眼前の
手洗い」「点眼後の清潔操作」の項目で正答率は向上した。特に「懸濁性点眼薬の振り混ぜ」について
は大きく正答率が向上した。
【考察】 現行で口頭のみの「点眼する際の間隔」「1 回の点眼液量」においては、用法用量が重要な薬
識と認識しているためか正答率に差がなかったと推測される。また正答率が向上した 4 項目については、
点眼知識や点眼薬の特徴を明確に指導用紙に記載したため正答率が向上したと推測される。今回の調査
では現状の薬識を確認し、指導用紙の必要性やアドヒアランスの向上に必要な指導のポイントが明確と
なった。その結果を用いて薬剤師、看護師を含めたチームでの点眼指導に役立てたい。
94
E‒15
仙骨部褥瘡に合併した真菌症にステロイドおよび抗真菌外用薬を推奨し、著効した 1 例
1
碧南市民病院 薬剤部
1
2
3
○榊原ゆかり ,永田 実 ,板倉由縁 【目的】 当院では、1993 年病棟薬剤指導の一環として褥瘡処置を行ってきた。今回、Ⅳ度仙骨部褥瘡
に合併した炎症を伴う真菌症にステロイド外用薬および抗真菌薬の併用が著効し、褥瘡も完治しえた症
例を経験したので報告する。
【症例報告】 70 歳代女性。今回、発熱と胃腸症状、及び脱水症にて内科入院となった。入院 3、4 日前
から寝たきりとなり仙骨部褥瘡が発生。抗生剤と補液投与により全身状態は改善するも、仙骨部褥瘡は
治療に難渋した。デブリードマンを施行し、感染を抑えつつ創の清浄化を図るため、ヨードホルムガー
ゼ処置を推奨、翌日から施行。20 日後、肉芽増生目的にフィブラストスプレー+陰圧閉鎖療法を開始
した。陰圧閉鎖療法中に浮腫性の不良肉芽を認めたため、陰圧閉鎖療法を中止して再度外科的デブリー
ドマンを依頼。翌日からユーパスタ+ヨードホルムガーゼにて保存的に治療再開するも、創周囲に炎症
を伴う真菌症が発生したため、抗真菌薬とステロイド外用薬の併用を医師に推奨した。併用後、炎症お
よび真菌症が劇的に改善し、その後、褥瘡は外用薬で上皮化が促進し、治癒を得た。
【考察】 ステロイド外用薬は真菌症に使用禁忌である。しかし、本症例は、創周囲に炎症性の真菌感染
が合併し、滲出液が多量となり、創の湿潤環境を適正に維持できなくなったため褥瘡が改善しなかった。
治療には、ステロイド外用薬と抗真菌外用薬の併用が必要と考えられ、過去にステロイド外用薬と抗真
菌外用薬を併用した症例について文献検索を行った。実際に併用後改善がみられた文献あり。創周囲に
ステロイド軟膏と抗真菌外用薬の併用を医師に推奨。併用したところ、炎症および真菌症は改善し、浸
出液が減少した。病棟薬剤業務のチーム医療として、患者の病態を把握し、薬剤の提案を的確に行えた
結果、褥瘡部の湿潤環境を外用薬で適正に維持できるようになり、褥瘡も完治しえたと考える。
E‒16
トルバプタン錠の長期投与における安全性の検討
地方独立行政法人岐阜県総合医療センター 薬剤センター
1
1
1
1
1
○牧田 亮 ,岩田知恵子 ,平下智之 ,新谷俊一 ,遠藤秀治
1
95
一 般 講 演
【目的】 トルバプタン錠はループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留に対し
保険適応があり、当院では 2011 年 1 月に採用となった。添付文書では国内臨床試験において 2 週間を
超える使用経験がないと記載されているが、臨床現場では入退院を繰り返す症例にやむを得ず 2 週間を
こえ投与することもあり、慎重な経過観察が必要とされている。そのため、今回トルバプタン錠の長期
投与における安全性の検討を行ったので報告する。
【方法】 当院にてトルバプタン錠が採用された 2011 年 1 月から 2014 年 6 月までに、心不全に対して
15 日以上継続使用した患者 41 例とした。調査項目はトルバプタン錠の投与前、投与後 1,2,3,4,8,12,16
週の血液検査値(Na、K、AST、ALT、BUN、Cre)とした。なお、投与後の調査日は前後 3 日を含
めることとした。調査方法は投与前と投与開始後の各調査日の血液検査値を比較した。統計解析には
Wilcoxon の符号付順位和検定を用いて、P < 0.05 を有意差ありと判定した。
【結果】 対象患者 41 例の背景は性別:男性 31 例、女性 10 例、年齢 78.1±10.4(mean±SD)、投与期
間は 2 ~ 4 週は 11 例、4 ~ 6 週は 9 例、6 ~ 8 週は 10 例、8 週以上は 11 例であった。転帰は治療継続
22 例、死亡 15 例、転院 4 例であった。Na は 1 週で、K は 3 週で有意な上昇がみられた。AST、ALT
は有意な上昇はみられなかった。BUN は有意な上昇はみられなかったが、Cre は 12,16 週とで有意な上
昇はみられた。
【考察】 トルバプタン錠は、重篤な肝機能障害を示すことがあるといわれているが、今回の調査では数
値の有意な上昇はみられず、長期投与で肝機能への大きな影響はないことが示唆された。Na は 1 週、
K は 3 週で有意な上昇がみられ、Na に関しては添付文書に従った厳密な管理が必要であり、K は長
期に使用する場合は注意が必要と考えられる。また、BUN は有意な上昇はみられなかったが、Cre は
12,16 週で有意な上昇がみられた。長期使用における腎機能に関しては他の要因も考えられるため注意
深く観察が必要と思われる。今後トルバプタン錠の適正使用を推進する上で長期投与症例についてさら
なるエビデンスの蓄積が望まれる。
E‒17
吸入補助器具を用いたチオトロピウムレスピマット®吸入の有効性評価
1
2
浜松医療センター 薬剤科、 浜松医療センター 呼吸器内科
1
2
2
2
2
2
1
○坂田 淳 ,小笠原隆 ,矢野利章 ,田中和樹 ,青島洋一郎 ,笠松紀雄 ,渡邉進士
【目的】 COPD 症例でチオトロピウム(スピリーバ®)レスピマット®に吸入補助器具(エアロチャン
バー・プラス®)を用いて吸入することの、トラフ一秒量改善効果を評価する。
【方法】 2014 年 1 月より、COPD で当院呼吸器内科に入院もしくは外来受診をし、チオトロピウムレ
スピマット®5μg/ 日での治療を受けている、もしくは受ける予定のⅠ~Ⅲ期 COPD 症例で同意書を得
られたものを対象にした。対象患者はツロブテロール(ホクナリン®)テープ 2mg/ 日を 2 週間使用し
た後、吸入補助器具の有無(最初に補助器具を使う群:A 群、最初に吸入補助器具使わない群:B 群)
で 2 週間吸入療法を実施し、クロスオーバー比較試験として各群 20 症例を目標として実施した。主要
評価項目は、治療開始前後のトラフ一秒量の変化とした。
【結果】 2014 年 8 月までに試験に参加した 8 人の患者のうち、A 群が 4 人、B 群が 4 人に振り分けら
れた。トラフ一秒量の改善量は、吸入補助器具使用(n =8)で平均 0.1216±0.2482L 上昇、未使用(n
=6)で平均 0.0475±0.0829L 上昇し、吸入補助器具を使用した方がトラフ一秒量の改善量は大きい傾向
であった。
【考察】 チオトロピウムレスピマット®吸入は、吸入補助器具の使用で効果を減弱させることなく吸入
効率を上昇させる可能性があることが示唆された。この結果は、レスピマット®でも吸入不確実と考え
られる症例に対し、吸入補助器具を使用することにより吸入療法が改善される可能性があると考えられ
る。
E‒18
当院のER室における薬剤師の役割
1
静岡徳洲会病院 薬剤部
1
1
1
1
○菊本紗也香 ,又吉 樹 ,坂田志穂 ,根岸孝光
一 般 講 演
【目的】 当院薬剤師は開院当初からER室での業務参加に積極的に努めてきた。様々な勉強会、特に、
TCLS(日本救急医学会認定 ICLS)勉強会に参加することで、個人の能力向上、そして TCLS 有資格
者から新人薬剤師への教育面での充実を図ってきた。現在では、TCLS 有資格者は救急における記録、
タイムキーパーだけでなく、心臓マッサージを行う等、医師の指示の下、多岐に渡って活躍している。
また、当院開院から 10 年経った現在では ER 室での業務に関して他の医療従事者から評価を得たことで、
薬剤師による、救急カートにセットする薬品の決定、カート内の薬品の配置決定が可能となった。さら
には、ベテラン薬剤師が救急カートに関する院内講演を行う等 ER 室以外での業務拡大にも繋がってい
る。このようにして発展してきた中で、他の医療従事者からのさらなる評価や、薬剤師の経験数の違い
から新たな改善点がみえてきた。そこで、今回は当院の ER 室における薬剤師業務に視点を当て、現在
の業務内容とその改善点を報告し、今後の薬剤師の救急における可能性を考える。
【方法】 業務内容を図式化する。また、薬剤師と他の医療従事者からアンケート調査を行う。
【結果】 他の医療従事者からのアンケートでは、薬剤師の ER 室業務参加に一定の評価を得ることがで
きた。一方で、薬剤師に行ったアンケートでは経験数によるレベルの違い、業務中の視野の違いに不安
を感じるとの意見があがった。特に、経験数の少ない薬剤師からは不安を感じている意見が多くあがっ
た。
【考察】 経験が少ない薬剤師が救急という現場に立ち向かうことは本人には大きな不安を抱かせるが、
あらゆる職種がフォローし、薬剤師間での教育の充実を図ることで現場での対応力が備わっていくので
はと考える。今回のアンケートで判明したように、様々な改善点は生じるが、試行錯誤を重ね、改善を
続けながら常に挑戦することで新しい業務への可能性の拡大に繋がると考える。
96
E‒19
ハリーコール(院内蘇生支援システム)における薬剤師の関わり
1
名古屋第一赤十字病院 薬剤部
1
1
1
1
○服部哲幸 ,黒野康正 ,三輪眞純 ,森 一博 【目的】 当院では 2006 年より平日時間内におけるハリーコール(院内蘇生支援システム)に薬剤師が
関与し、蘇生用薬剤の搬送、救急カートへの薬剤補給を行ってきた。2011 年 6 月より薬剤部の夜間勤
務体系が夜勤へ移行したのを受け、時間外に発生するハリーコールも含め 24 時間対応することとなっ
た。今回、24 時間対応移行後のハリーコールの実情と薬剤師の関与状況について調査したので報告する。
【方法】 2011 年 6 月~ 2014 年 5 月の 3 年間にハリーコールの対象となった患者について、発生件数、
発生時間帯、薬剤使用率、使用薬剤の種類を調査した。
【結果】 調査期間中のハリーコール発生件数は 194 件であり、時間内(平日 8:50‒17:20)で 72 件、
時間外(平日 17:20‒8:50、土日祝日)で 122 件であった。薬剤使用有は 95 件、使用無は 99 件であっ
た。時間帯別に薬剤使用率をみると、薬剤使用有は時間内では 29%、時間外では 61%であった。使用
薬剤はアドレナリン注が 68 件、乳酸リンゲル液が 35 件、ドパミン塩酸塩注が 24 件であり、病棟に常
備されていないアミオダロン注の使用は 7 件、ベクロニウム注の使用は 4 件であった。
【考察】 ハリーコールの約 6 割が時間外に発生し、時間外での薬剤使用率が高くなった。24 時間対応
への移行は時間外における薬剤師による蘇生用薬剤の迅速な供給を可能とした。また病棟に常備されて
いないが、緊急性の高い薬剤も使用される症例があり、薬剤師による蘇生用薬剤の搬送は有用であると
考えられる。今後は薬剤師による薬剤調製、情報提供などへの関与が課題であると考えられる。
E‒20
菊川市立総合病院におけるジゴキシンの血中濃度測定状況と測定値に影響を与える
因子の検討
1
菊川市立総合病院 薬剤科
1
1
1
○後藤貴裕 ,松下久美 ,瀧 祐介 97
一 般 講 演
【目的】 ジゴキシンは心不全や心房細動等の治療に使用されているが、薬物血中濃度を測定して中毒を
未然に防ぐ必要のある薬物である。菊川市立総合病院薬剤科では薬剤師が薬剤科内で種々の薬物血中濃
度を測定・解析して治療薬物モニタリング業務を行っており、2013 年 8 月から 2014 年 7 月の 1 年間で
8 件のジゴキシン中毒を経験した。ジゴキシン中毒を未然に防ぐため、ジゴキシンの血中濃度測定状況
と測定値に影響を与える因子を検討した。
【方法】 2013 年 8 月から 2014 年 7 月にジゴキシン血中濃度を測定している 53 名を対象とした。電子
カルテを用いて後方視的に検討を行った。
【結果】 対象の平均年齢は 79.6 歳、男性 28 名(53%)、女性が 25 名(47%)であった。対象の入院症
例の半数以上が、薬剤師が主治医に依頼してジゴキシンの血中濃度測定を行っていた。ジゴキシン中毒
による入院症例では全て薬剤師からの依頼でジゴキシンの血中濃度測定を行っていた。ジゴキシン血中
濃度が 2.0ng/ml 未満の患者では、ジゴキシン血中濃度と有意な関連を示す要因はなかった。ジゴキシ
ン中毒患者では、高齢・低体重・急激な腎機能低下・高投与量・利尿剤の併用が複合的に影響していた。
【考察】 ジゴキシン中毒による入院症例は、全症例が薬剤師から主治医へ血中濃度測定を依頼してジゴ
キシン中毒であると判明している。これは全病棟に薬剤師が常駐して入院から退院まで薬物治療管理を
行っている中で、特に入院時における介入が重要であるという認識で業務を行っているためと考えられ
る。高齢者では複合的な要因で重篤なジゴキシン中毒を引き起こすため、血中濃度測定等を用いてきめ
細かいジゴキシンの投与設計が必要であると考えられた。
E‒21
タクロリムスの体内動態に関わる遺伝子解析法の開発
1
2
岐阜薬科大学, 岐阜大学医学部附属病院薬剤部,
3
岐阜大学大学院医学研究科泌尿器科学分野
1
1
1
1
1
1
○柴山 篤 ,曽田 翠 ,藤谷桃子 ,道内玲奈 ,金森建太 ,吉國早織 ,
2
3
3
2
1
大野雄太 ,土屋朋大 ,出口 隆 ,伊藤善規 ,北市清幸 【目的】 免疫抑制剤タクロリムスは、腎移植を含む移植治療で拒絶抑制のために繁用されるが、免疫抑
制効果を十分に発揮させ、かつ、有害事象の発現を抑制するためには、血中濃度を一定の範囲内に保つ
必要がある。本研究は遺伝子多型によってタクロリムスの体内動態に影響を与えることが複数報告され
ている CYP3A5、MDR1 exon21 及び exon26 の遺伝子多型に着目し、それらの遺伝子の解析法の開発
を行った。
【方法】 岐阜大学医学部附属病院にて腎移植が施行され、タクロリムスが投与された患者を対象とし、
日常診療において採血された血液検体から DNA を抽出した。抽出した DNA から目的遺伝子を PCR
法で増幅後、ダイレクトシークエンス法及び制限酵素処理による RFLP 法により、それぞれの遺伝子
多型を判別した。なお、本研究は岐阜大学医学部及び岐阜薬科大学倫理委員会に承認を得て実施した。
【結果】 PCR 法で増幅したそれぞれの遺伝子断片についてダイレクトシークエンス法で遺伝子多型を
確認するとともに、選択した制限酵素の処理により、CYP3A5*1 と変異型 *3、MDR1 exon21 の 2677G
> T/A 及び exon26 3435C > T の野生型ホモ、変異型ホモ、ヘテロの判別が可能であることを確認した。
腎移植患者 23 名における変異は CYP3A5 *1/*1(4.3%)、*1/*3(30.4%)、*3/*3(65.2%)、MDR1 exon21
GG(21.7%)、G(A/T)
(47.8%)、(A/T)(A/T)
(30.4%)、MDR1 exon26 CC(47.8%)、CT(39.1%)、
TT(13.0%)であり、それぞれの比率は既報とほぼ同じであることが確認された。
【考察】 今回の検討により、PCR-RFLP 法によって、タクロリムスの体内動態に関与する可能性があ
る 3 種類の遺伝子多型を評価することが可能になった。現在、我々はこれらの遺伝子多型とタクロリム
ス血中濃度との関連について検討を行っている。その結果を元に、今後は遺伝子多型解析によるタクロ
リムス投与設計を行い、薬剤師が移植治療におけるチーム医療に貢献できる体制を整えていく予定である。
E‒22
劇症肝炎に対する血漿交換施行前後のアミオダロンおよびモノ - N - デスエチルアミ
オダロンの血中濃度推移を検討したトルバプタン併用心不全症例
1
2
独立行政法人地域医療機能推進機構 四日市羽津医療センター薬剤科, 同腎・透析科,
3
4
同臨床工学科, 三重大学医学部附属病院薬剤部
1
1
2
3
4
4
○小島さおり ,片山歳也 ,三宅真人 ,西村直樹 ,村木優一 ,奥田真弘 ,
1
松田浩明 一 般 講 演
【目的】 アミオダロン(AMD)投与開始後に劇症肝炎を呈した心不全症例に対し血漿交換(PE)を行い、
PE 前後における AMD 及び活性代謝物モノ - N - デスエチルアミオダロン(DEA)の血中濃度推移につ
いて検討した。
【症例】 82 歳、男性、主訴:発熱・呼吸困難、既往歴:陳旧性心筋梗塞・洞不全症候群・ペースメーカー
留置後・甲状腺機能低下症、現病歴:頻脈性心房細動にて低用量 AMD 200mg/day が経口投与された。
【臨床経過】 AMD 投与開始時(Day0)における臓器障害はなかったが、Day10 肝酵素値上昇を認め、
心不全による体液貯留に対して Day11 トルバプタン(TLV)7.5 mg/day が投与開始された。Day12 に
意識障害を伴い劇症肝炎と腎機能障害を呈したが、甲状腺機能の亢進は認めなかった。AMD は中止さ
れたが TLV は継続された。劇症肝炎と腎障害に対して1回目の PE +オンライン血液透析濾過(OHDF)
が施行され、肝機能・腎機能の改善を認めた。Day14 に 2 回目の PE+OHDF が施行され、尿量増加の
ため Day16 に TLV を中止、腎機能は正常域となり、Day55 に肝機能は正常域に回復した。
【AMD および DEA 血中濃度】 初回 PE+OHDF 前→後 AMD(ng/mL)167 → 208 、DEA(ng/mL)
151 → 149 であった。2 回目 PE+OHDF 後 AMD 94ng/mL、DEA 111ng/mL 、Day56 AMD 50ng/mL
未満、DEA 57ng/mL であった。
【考察】 劇症肝炎発症時の AMD 血中濃度は定常状態到達前であったが、薬剤性肝障害の被疑薬として
疑われた。1 回目 PE+OHDF 後の AMD 血中濃度上昇は、AMD の組織から血中への再分布と考えられ
た。2 回の PE+OHDF 施行は分布容積の大きな AMD と DEA の血中濃度への影響は少なく、肝機能が
改善することで AMD および DEA の消失を促進したと考えられた。
98
E‒23
フランスにおけるアロマテラピー使用例と臨床研究について
~補完代替医療の実践を目指す病院薬剤師の取り組み~
1
2
国際医療福祉大学熱海病院 薬剤部, 同 薬学部
1
1,2
1
○坂田妹子 , 鈴木高弘 , 松坂昌宏
【目的】 近年、インターネット等をはじめとする高度情報化時代の影響があり、代替医療を求める患者
が我が国でも急増している。この代替医療とは、中国医学(中薬療法,鍼灸,指圧,気功)、インド医
学、免疫療法(リンパ球療法など)、健康食品・サプリメント(抗酸化食品群,免疫賦活食品,各種予防・
補助食品など)、ハーブ療法、アロマテラピー、ビタミン療法、食事療法、精神・心理療法、温泉療法、
酸素療法などが含まれる。国際医療福祉大学熱海病院(以下、当院)においても、既に代替医療を実践
している患者や、実践を希望する患者を受け入れるケースがあるが、知識不足のため対応に苦慮するこ
とをしばしば経験する。そこで当院薬剤部では、このような問題点を解決するために、既存の「おくす
り相談外来(薬剤師外来)」を拡充して、健康食品・サプリメントやアロマテラピーを中心に、患者に
対して適切なアドバイスができるよう準備を進めることとした。今回は、アロマテラピーが医療行為の
一つとして認められているフランスを訪問し、医療従事者がどのようにアロマテラピーと関わっている
か調査を行ったので報告する。
【方法】 フランスへ滞在中に、主に2つの施設を視察した。1施設目は、カトルシュマン薬局(グラー
ス:フランシス・アジミナグロウ薬学博士)を訪問し、植物とエッセンシャルオイルの品質分析、新製
品開発の研究所を見学した。2施設目は、ポンピドー財団(ニース大学付属病院:ロバート先生)を訪
問し、認知症に対するメディカル・アロマテラピーの使用例と実績調査、臨床研究が行われている現場
を見学した。
【結果・考察】 以上の調査に基づき、本邦においてもアロマテラピーを医療へ応用することは有用であ
ると考える。今後は、薬剤師という立場を通じて、西洋医学と代替医療を含めた伝統医学が融合する統
合医療の実現を目指して支援体制を強化していく。さらには、当院においても、精神神経疾患患者を対
象に、アロマテラピーの効用について臨床研究に着手していきたい。
E‒24
定期的な検査が必要とされた医薬品の使用実態調査
愛知医科大学病院 薬剤部
1
1
1
1
1
1
柴田祐一 、福田裕子 、前仲亮宏 、松平厚蔵 、野々垣知行 、林予志美 、
1
1
川澄紀代 、松浦克彦
1
99
一 般 講 演
【目的】 チアマゾール、クロピドグレル、チクロピジンの 3 剤はいずれも無顆粒球症、肝機能障害など
の重大な副作用が発現することが報告されていることから投与開始後 2 ヵ月間は 2 週間に 1 回骨髄機能、
肝機能検査を定期的に実施することが添付文書において規定されている。近年、医薬品の不適切な使用
により副作用救済基金の承認が得られない患者が問題となっている。そこで当院でこれらの薬剤を服用
している患者における検査の実施状況および副作用の発現状況について調査を行った。
【方法】 平成 25 年 7 月 1 日から平成 26 年 6 月 30 日に各薬剤の服用を開始し、2 ヵ月間以上服用を継
続している患者を対象にチアマゾールに関しては、骨髄機能(赤血球、白血球、好中球、ヘモグロビ
ン、血小板)、クロピドグレルとチクロピジンに関しては、骨髄機能及び肝機能検査(AST、ALT、γ
-GPT、ALP、総ビリルビン、乳酸脱水素酵素)の実施状況を調査した。
【結果】
調査対象期間中にチアマゾールを開始した症例は 70 例、同様にクロピドグレルでは 474 例、
チクロピジンでは 31 例であった。2 ヶ月以上服用が継続し定期的な検査が実施されたのはチアマゾー
ルが 58 例中 10 例(17%)、クロピドグレルが 303 例中 8 例(2.6%)、チクロピジンが 10 例中 1 例(10%)
に過ぎなかった。
【考察】 本調査によってチアマゾール、クロピドグレル、チクロピジンが適正に使用されていない症例
が多数あることが明らかになった。PMDA の報告では定期的な検査を実施していない事例だけでなく、
白血球・好中球の減少傾向や自覚症状が認められていたにも関わらず投与が継続された事例も報告され
ている。副作用が出現時には、早期発見に努め重篤化を回避する必要がある。以上より、これらの医薬
品の副作用の早期発見および適正使用のために調剤や薬剤管理指導などにおいて薬剤師が医師に対して
検査実施の提案を行っていくことが必要と考えられた。
E‒25
血液透析患者の腎性貧血に対する C.E.R.A. の有用性について
~ rHuEPO からの切換え投与が病院経営に及ぼす影響をふまえて~
1
早徳病院薬局
1
1
1
○古田和也 , 西岡恵子 , 河合永晴 【目的】 新規エリスロポエチン製剤であるエポエチン ベータ ペゴル(C.E.R.A.)は、持続型赤血球造
血刺激因子製剤である。本研究は、エポエチン ベータ(rHuEPO)からエポエチン ベータ ペゴルへ投
与変更した血液透析患者を対象に、エポエチン ベータ ペゴルの腎性貧血に対する費用対効果とともに、
投与変更に伴う薬剤費の変動が病院経営に及ぼす影響を検討した。
【方法】 1. C.E.R.A. の費用対効果について --- 対象は、2011 年 9 月に rHuEPO から C.E.R.A. へ投与変更
した 53 症例とした。症例は、rHuEPO 投与により血清 Hb 値が 10g/dL 以上に維持されていた 21 症例
を Hb 良好群と、10g/dL 未満であった 32 症例を Hb 不良群とに分け、投与変更前 6 ヵ月間と変更後 6 ヵ
月間にわたり、血清 Hb 値や薬剤費(薬価にて算出)を調査した。 2. C.E.R.A. の病院経営に及ぼす
影響について --- 対象は、2011 年 9 月の時点でエリスロポエチン製剤の投与を受けたすべての患者 132
症例とした。病院経営に及ぼす影響の指標として、薬剤費比率(%)
(= 全薬剤購入費 / 医療収入 ×
100)と全薬剤購入費に対するエリスロポエチン製剤購入費の割合について調査した。なお、薬剤購入
費は、納入価にて算出した。
【結果】 投与変更後も平均血清ヘモグロビン値は、9.8g/dL から 10.0g/dL と維持され、1 ヵ月当りの平
均薬剤費(薬価ベース)にも差を認めなかったことより、C.E.R.A. の費用対効果は、rHuEPO と比較し
て同等であった。一方、病院経営の指標である薬剤費比率(納入価ベース)は投与変更後に、12.1%/
月から 14.2%/ 月へ有意に増加した。
【考察】 透析医療におけるエリスロポエチン製剤の有用性を検討する場合、費用対効果と伴に病院経営
も考慮に入れた評価が必要である。
E‒26
ラタノプロスト/チモロール酸塩配合点眼液の有用性の検討
1
2
3
国民健康保険坂下病院 薬剤部, 同眼科, 名城大・薬
1
1
1
1,3
1
2
○窪田 真 ,清水幸一 ,保母香純 ,岡本輝美 ,荻野 晃 ,木下慎介
一 般 講 演
【目的】 緑内障の薬物治療において、点眼液1剤で眼圧コントロールが不十分な場合 2 剤、3 剤と点眼
本数や点眼回数が増加してくる。その結果、患者負担が増すことにより、点眼アドヒアランスが不良と
なることがある。少ない点眼液での治療を行うことは、患者のアドヒアランス向上、QOL の改善に有
効と考えられる。
今回我々は、眼圧コントロールを目的に使用される複数の点眼液を単剤化することを試みたので報告す
る
【方法】 タフルプロスト点眼液及びドルゾラミド塩酸塩 / チモロールマレイン酸塩配合点眼液の併用治
療を行っている原発開放隅角緑内障患者及び高眼圧症患者 7 例 7 眼を対象とした。治療に用いる点眼液
をラタノプロスト / チモロールマレイン酸塩配合点眼液単独へ変更して、その後 7 ヶ月間眼圧を測定し
て観察を行い、単剤での治療が可能となるかを検討した。
【結果】 ラタノプロスト / チモロール酸塩配合点眼液単剤での治療へ切り替えた後、7 ヶ月間単剤で治
療継続が可能であった症例は 7 例中 5 例(71%)だった。対象患者全員に点眼状況を聞き取り調査した
ところ、7 名とも点眼の必要性を理解しておりアドヒアランスは良好であった。
【考察】 タフルプロスト点眼液及びドルゾラミド塩酸塩 / チモロールマレイン酸塩配合点眼液の 2 剤併
用治療からラタノプロスト / チモロールマレイン酸塩配合点眼液の単独治療へ変更しても同等の眼圧コ
ントロールが得られる可能性が示された。
100
E‒27
せん妄を改善し、離脱症状なく、トリアゾラム長期内服を中止した1例
1
2
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部, 静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科
3
4
静岡県立静岡がんセンター 精神腫瘍科, 静岡県立静岡がんセンター 看護部
5
静岡県立静岡がんセンター 緩和ケアサポートチーム
1,5
1,5
2,5
3,5
4,5
○久保さやか ,佐藤 哲 ,木村 陽 ,松本晃明 ,横山智子 ,
4,5
1
新開由紀 ,篠 道弘
【患者背景】 50 歳代男性、腎細胞癌、PS3。今回、吐血および下肢浮腫のため入院した。多発関節痛と
せん妄のコントロール目的で緩和ケアサポートチームが介入した。
【経過】 本症例では、睡眠障害を認め、トリアゾラム 0.25 ㎎を 4 年以上内服していた。自宅では夜間
に徘徊がみられており、入院後も夜間にパジャマをゴミ箱に入れ、廊下まで出てくるなどの夜間せん妄
が認められた。血液検査結果では、感染症や低血糖などの代謝性障害、高 Ca 血症などの電解質異常は
認められなかったため、長期内服していたトリアゾラムがせん妄の原因と考えられた。そこで、せん妄
による QOL の低下を改善するために、トリアゾラムを中止する方針とした。その際に、超短時間型ベ
ンゾジアゼピン系睡眠薬の急な中止による離脱症状を防ぐため、長時間型抗不安薬ロフラゼプ酸を眠前
に開始した。また、せん妄を改善するため、非定型抗精神病薬クエチアピンを併用した。日中の眠気と
夜間のせん妄の状況を評価し、投与量を調節した。また、睡眠補助のためにラメルテオン 8 ㎎とミアン
セリン 10 ㎎を追加し、ミアンセリン 20 ㎎への増量で睡眠は確保され、退院となった。
【まとめ】 長時間型抗不安薬や抗精神病薬を併用し、長期内服していたトリアゾラムの中止による離脱
症状なく、せん妄を改善できた。
E‒28
新規経口抗凝固薬 apixaban の忍容性の検討
2
豊橋ハートセンター薬局, 岐阜ハートセンター薬局
1
2
1
2
2
2
2
○芦川直也 ,岩田晃佳 ,佐合裕子 ,上村裕美 ,宮村大佑 ,中嶋佳子 ,石黒英行
1
101
一 般 講 演
【目的】 apixaban は本邦において上市された 3 番目の新規経口抗凝固薬(NOAC)であり、高齢、腎
機能低下例において warfarin と比較して安全性の高いことが ARISTOTLE 試験で示されている。しか
し、国内における忍容性についての報告は少なく、Ccr25mL/min 未満の症例においては検討がなされ
ていない。そこで、本研究では低腎機能例を含めた当院における apixaban 投与症例の有害事象発現状
況を調査し、忍容性について検討することとした。
【方法】 2013 年 10 月より 2014 年 7 月までに当院において apixaban の投与を開始した症例を対象とし
て、診療録等を retrospective に調査した。追跡期間の中央値は 78 日であった。出血性有害事象におけ
る重大な出血の定義は、Hb2.0g/dL 以上の低下、2 単位以上の輸血施行もしくは頭蓋内等の致死的部位
における出血とした。
【結果】 調査対象 162 例において、有害事象は 22 例(13.6%)で発生し、内訳は出血 8 例(4.9%)、肝
障害 8 例(4.9%)等であり、14 例(8.6%)において投与を中止した。出血例については、1 例(0.6%)
が重大な出血に該当し、出血リスク指標である HAS-BLED score が非出血例と比較して有意に高値で
あった(p=0.045)ものの、年齢・Ccr の有意差はみられなかった。肝障害については全例 Grade1(CTCAE
v4.0)であった。
【考察】 追跡期間が短期のため出血のリスク指標を明確にすることはできなかったが、HAS-BLED
score の高値は apixaban の出血リスクと関連していることが示唆された。しかし、他の NOAC におい
て一貫していた年齢・腎機能と出血の関連性がみられなかったことから、apixaban が他の新規抗凝固
薬と比較して高齢・低腎機能例における高い忍容性が予測されるため、今後も投与例を追跡し再検討す
る予定である。
E‒29
抗結核薬による高尿酸血症出現患者へのベンズブロマロンの使用状況
1
2
大垣市民病院薬剤部, 同呼吸器科
1
1
1
2
○田中孝治 ,元山 茂 ,森 博美 ,安部 崇
【目的】 抗結核薬のなかで、高尿酸血症の原因薬剤としてピラジナミド(以下、PZAとする)がある。
その発現率は特に高く、50 ~ 90%だと言われている。PZA投与により、尿酸値が上昇し関節痛が発
現するかどうか、ベンズブロマロン(以下、BBMとする)の投与有無により副作用予防ができたかど
うかを明らかにするため、PZAが投与された患者で観察研究を行ったので報告する。
【方法】 2008 年 8 月~ 2014 年 6 月において当院で入院していたPZA服用結核患者(102 名)を対象とし、
retrospective に検討した。当院では尿酸値が 12mg/dL を超えた症例でBBMを投与するかどうかを主
治医判断で決めている。102 例をBBM投与群(27 名)とBBM非投与群(75 名)の 2 群に分けて検
討した。
【結果】 BBM投与群 27 例では、いずれも最高尿酸値が 12mg/dL を超えており、BBM投与により
尿酸値が低下し、正常値になった。27 例いずれもPZA投与中に関節痛はみられなかった。また、B
BM非投与群では 44 例で尿酸値異常がみられたが、関節痛はみられなかった。その内、7 例で最高尿
酸値 12mg/dL を超え、最高尿酸値 10 ~ 12mg/dL が 19 例、8 ~ 10mg/dL 未満が 11 例、7 ~ 8mg/dL
未満が 7 例であった。残るBBM非投与群 31 例で最高尿酸値の標準値を超えての上昇、関節痛はいず
れもみられなかった。
【考察】 BBM非投与群で尿酸値異常の症例ではPZA投与終了に伴い、尿酸値は低下する。BBM投
与群では尿酸値が下がるため、尿酸値を下げる目的ではBBM投与は有用であると考える。ただ、今回
の調査では痛風による関節痛は1例も起こっておらず、初期強化短期化学療法などにおけるPZAによ
る関節痛防止目的でのBBM投与については医療経済の面で不要であると思われる。また、PZAによ
る高尿酸血症の副作用出現率については、7mg/dL 以上が 69.6%、8 ㎎ /dL 以上が 62.7%、10mg/dL 以
上が 52.0%であり、カットオフ値にもよるが、一般的な出現頻度と同程度であると思われる。
E‒30
リツキシマブによるインフュージョンリアクション発症状況の検討
2
3
4
名古屋市立大学・薬, 同病院 薬剤部, 同大学院・医, 同大学院・薬
1
1
2
2
2
2
3
○松村治穂 ,宮野百合香 ,近藤勝弘 ,黒田純子 ,江崎哲夫 ,木村和哲 ,飯田真介 ,
1,4
1,4
中村克徳 ,松永民秀 1
一 般 講 演
【背景】 B 細胞性非ホジキンリンパ腫に高い効果を持つリツキシマブ(リツキサン®)は、抗ヒト
CD20 ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体であり、その製剤は分子標的治療薬のひと
つとしてがん化学療法などに使用されている。リツキシマブは、主に初回投与時にインフュージョンリ
アクション(IR)と呼ばれる副作用が現れることがあり、その多くは抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛薬およ
び副腎皮質ステロイドで予防・治療が可能であるが、まれに呼吸器や心臓などに重い障害を引き起こす
ことが報告されている。
【目的】 本研究では、リツキシマブの安全で適正な使用法を検討するため、対象患者の臨床検査値およ
び併用薬剤を解析し、IR の頻度を調査することを目的とした。
【方法】 リツキシマブ投与を受けている名古屋市立大学病院(名市大病院)受診患者 104 名(男性 57
名、女性 47 名)についてカルテ情報の調査を行った。調査期間は、2013 年 4 月から 2014 年 8 月まで
とした。リツキシマブ投与を受けた患者について、IR を発生した群および発症しなかった群に分類し、
リツキシマブによる IR のリスクとなる因子を検討した。リツキシマブ投与を受けた患者の IR 発症は
カルテの記載事項を基に判断した。本研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科ヒト遺伝子解析研究倫
理審査委員会の承認を得ている。
【結果】 名市大病院でリツキシマブ投与を受けた患者のうち、発熱・悪寒・シバリング・掻痒感などの
典型的な IR 症状を発症した患者は 21 名(20.2%)であった。リツキシマブによる IR 頻度は、添付文
書情報の 90%と比較して低頻度であった。
【考察】 本研究では、リツキシマブ投与を受けた患者において、IR を発症した患者の頻度は添付文書
情報と比較し、低頻度であることが明らかになった。この原因は、今のところ不明であるが、適切な予
防投与やリツキシマブ投与速度の選択が影響していると考えられる。
102
E‒31
C 型慢性肝炎に対する新旧 3 剤併用療法の有効性と安全性
1
2
三重県立総合医療センター 薬剤部, 同消化器内科
1
2
○森 尚義 ,森 谷勲
【目的】 第 1 世代プロテアーゼ阻害剤 Telaprevir(TVR)の登場により、Genotype 1 の C 型慢性肝炎
の治療成績は大きく向上したが、有害事象として、皮膚障害と腎機能障害が指摘されている。一方、第
2 世代プロテアーゼ阻害剤 Simeprevir(SMV)は、
日本肝臓学会編「C 型肝炎治療ガイドライン」
(第 3 版:
2014 年 9 月)において、IFN 適格例に対して唯一推奨されており、有害事象が少ない薬剤として評価
されている。そこで、新旧(TVR、SMV)2 剤の、IFN と Ribavirin との併用における有効性と安全性
について検討を行った。
【方法】 2011 年 2 月から 2014 年 8 月までに 3 剤併用療法を開始した Genotype 1 の C 型慢性肝炎患者
27 例(男性 12 例、女性 15 例)を対象に、有効性と関連マーカー(WBC、Neu、Plt、Hb、Cre、Bil)
の推移を調査した。
【結果】 TVR が 12 例、SMV が 17 例(PEG-IFN α-2a 11 例、2b 6 例、TVR 非奏効例 2 例を含む)に
投与された。重篤な皮膚障害により 1 例が TVR の投与中止に至った。治療終了時点で、TVR 群は 11
例の SVR を得たが、終了直後に 2 例が再燃した。SMV 群は治療継続中の症例を含めて 15 例が陰性化
した。TVR 群の投与前 CRE が 0.72 mg/mL(0.50‒0.98)、eGFR が 80.1 mL/min(60‒102)であった
のに対し、治療開始 7 日後の CRE は 0.96 mg/mL(0.71­‒1.54)、eGFR は 59.1 mL/min(40‒82)と全
例で腎機能の低下を認めた。SMV 群は 8 例に Bil の異常値を認めたが、経過観察中に回復した。
【考察】 SMV を含む 3 剤併用療法の有効性と高い安全性が示された。2014 年 9 月に Daclatasvir と
Asunaprevir が I FN 不応例に対して発売となり、いずれは初回治療への適応拡大が予想されるが、有
効性と安全性は確立されておらず、薬剤耐性ウイルスの問題も解決していない。本検討により、SMV
を含む 3 剤併用療法は Genotype 1 の C 型慢性肝炎に対する治療効果が高く、忍容性に優れていること
が示唆された。また、TVR は Genotype 2 への適応拡大が予定されており、投与にあたっては厳密な腎
機能の観察が必要であると考える。
E‒32
薬剤師によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の適正化に向けた取り組み
愛知医科大学病院 薬剤部
1
1
1
1
1
○一栁知里 ,野々垣知行 ,林予志美 ,川澄紀代 ,松浦克彦
1
1)中川善文ら.Helicobacter research.540-545.17 .2013
103
一 般 講 演
【目的】 Helicobacter pylori(以下、HP)の除菌率向上のために高いアドヒアランスを維持する必要
がある。愛知医科大学病院(以下、当院)では HP 除菌率の向上及び HP 除菌薬の適正使用推進を目的に、
薬剤師が外来患者に対して服薬指導を実施してきた。今回、薬剤師による HP 除菌療法への貢献につい
て検討した。
【方法】 2014 年 3 月から 5 月までに HP 除菌薬が処方された患者を対象とし、対象症例の HP 除菌状況
について調査した。また、服薬指導では HP 除菌薬の服用方法の説明及び服薬歴のチェックを行った。
【結果】 対象期間中に HP 除菌薬を処方された症例は 138 例で、除菌判定不能・未判定症例は 20 例であっ
た。一次除菌を施行した症例は 91 例で除菌成功は 70 例(76.9%)、二次除菌を施行した症例は 27 例で
除菌成功は 26 例(96.3%)であった。
また、服用薬のチェックでは同種同効薬の重複が 20 例(13.0%)に認められた。重複が見つかった
同種同効薬の内訳は H2 ブロッカー(以下、H2B)が 9 例、プロトンポンプインヒビター(以下、PPI)
が 7 例、抗菌薬が 4 例であり、同種同効薬の処方元の内訳としては、処方日が異なる自科処方が 8 例、
他科処方が 8 例、他院処方が 4 例であった。
【考察】 HP 除菌率は年々低下する傾向にあり、最近の一次除菌率は約 70%、二次除菌率は約 90%
1)
と報告 されていることから、当院の除菌率は一次及び二次除菌とも高率に維持されていた。また、
H2B、PPI 及び抗菌薬は種々の診療科で処方されやすい薬であることから多くの重複が認められたが、
未然に重複を回避することができた。以上の結果より、薬剤師による HP 除菌薬の服薬指導は治療効果
の向上及び適正使用に貢献していることが示された。
F‒01
職員ワクチン接種プログラムにおける接種率向上への取り組みとその効果
1
2
浜松医療センター薬剤科, 浜松医療センター ICT
1,2
2
2
1
○石井範正 ,葛原健太 ,矢野邦夫 ,渡邉進士 【目的】 医療従事者は、感染症患者や易感染患者が集まる施設で日々の業務を行っており、様々な病原
体に曝露する可能性があるとともに、患者に伝播させる感染源となる可能性がある。しかし、当院での
流行性ウイルス疾患におけるワクチン接種プログラムは任意で行われており、必ずしも接種率は高いと
は言えない。そこで、ワクチン接種者の増加を目的とした取り組みを行った。
【方法】 過去の抗体測定データを基に全職員の抗体保有状況を把握し、毎年実施している抗体測定の希
望調査前に個人宛てに現在の抗体保有状況の案内を配布し、抗体測定の促進の働きかけを行った。その
後、年度毎に行われるワクチン接種プログラム開始前に最新の抗体測定結果の情報を追加し、再度個人
宛てに各流行性ウイルス疾患におけるワクチン接種推奨の有無の案内を配布することで、抗体非獲得者
(基準値非到達者)および不明者へワクチン接種勧奨を行った。
【結果】 職員における流行性ウイルス疾患ワクチンの接種者は、取り組み前(平成 23 年度)と取り組
み後(平成 24、25 年度)で、麻疹で 29 人→ 124 人→ 163 人、風疹で 60 人→ 82 人→ 92 人、水痘で 7
人→ 14 人→ 17 人、ムンプスで 27 人→ 81 人→ 81 人と、全てのワクチンにおいて取り組み後のワクチ
ン接種者数の増加を認めた。
【考察】 接種推奨の有無の案内を行った結果としてワクチン接種者の増加につながっていることから、
医療従事者としてワクチン接種の必要性は理解していても、自分の抗体価がワクチンの接種を必要とし
ているかどうかの判断がつかなかったことが、ワクチン接種率の向上に至らなかった原因であったと考
えられる。
F‒02
高校生を対象とした緑茶うがいによる急性上気道炎の発症予防及び症状軽減効果の検討
1
2
3
静岡県大薬, 菊川市立総合病院, 市立御前崎総合病院
1
1
1
1
1
2
○野尻 桂 ,伊東未来 ,井出和希 ,豊泉樹一郎 ,松本圭司 ,松下久美 ,
3
1
鮫島庸一 ,山田 浩
一 般 講 演
【目的】 緑茶うがいによる急性上気道炎の発症予防並びに症状軽減効果を探索的に検討する。
【方法】 本人及び保護者から文書同意の得られた掛川・小笠地区の高校 1、2 年生 757 人を対象とし、
対象者を緑茶うがい群または水うがい群にランダムに割付けた。1 日 3 回(登校時、昼休み時、帰宅時)
うがいを行い、90 日間(2011 年 12 月 1 日- 2012 年 2 月 28 日)追跡調査した。試験期間中の急性上気
道炎の発症割合及び、鼻汁や咽頭痛などの上気道症状、発熱などの全身症状の経過等を比較した。緑茶
うがい群の緑茶は同一ロットの製品を使用し、水うがい群は水道水でうがいを行った。水うがい群の緑
茶うがいは禁止した。
【結果】 747 名(緑茶うがい群 384 名、水うがい群 363 名)による Full Analysis Set 解析では、急性上
気道炎発症者は全体で 264 名(42.8%)であり、緑茶・水うがい群間で差は見られなかった。(緑茶うが
い群 43.5%、水うがい群 42.1%、p=0.71)プロトコル不遵守者(水うがい群で緑茶うがいを行った者及
びうがい実施割合 75%未満)を除いた 527 名(緑茶うがい群 283 名、水うがい群 244 名)による Per
Protocol Set 解析では、急性上気道炎発症者は全体で 212 名(44.0%)であり、緑茶・水うがい群間で
差は見られなかった(緑茶うがい群 43.8%、水うがい群 44.4%、p=0.93)。症状別では、咽頭痛(平均
値;症状の重症度を AUC で算出)において軽減傾向が見られた(緑茶うがい群 7.2、水うがい群 11.3、
p=0.13)。
【考察】 急性上気道炎の発症は両群間で有意な差は見られなかった。また症状の比較では、緑茶うがい
群における咽頭痛の軽減傾向が示されるに留まり、アドヒアランスの低さや非盲検化等の試験デザイン
が影響しているものと考えらえた。
104
F‒03
当院における抗菌薬の使用状況と動向について
1
特定医療法人沖縄徳洲会 静岡徳洲会病院薬剤部
1
1
1
○又吉 樹 ,坂田志穂 ,根岸孝光
【目的】 当院では担当薬剤師が週に 1 回インフェクションコントロールチーム(以下 ICT)のカンファ
レンスに参加しており、抗菌薬の適正使用にむけて ICT カンファレンスにて抗 MRSA、カルバペネム系、
ニューキノロン系、他の特定抗菌薬の使用症例の報告および、同一抗菌薬の長期使用症例に関しての検
討を行っている。今回それに加え薬剤師の業務として抗菌薬の使用状況を把握するにあたって、2010
年度から 2013 年度の当院入院症例における抗菌薬の使用状況についての年度推移の調査をおこなった
のでその結果を報告する。
【方法】 調査期間は 2010 年 4 月から 2013 年 3 月までとし、当院採用の点滴抗菌薬を対象とし系統ごと
に使用量、件数、使用金額の集計し比較した。また使用量を比較するにあたり、抗菌薬使用量指標とし
て広く使われている、WHO の定める ATC/DDD システムによる 1 日投与量 DDD を使用した抗菌薬
使用密度(以下 AUD)との相関性および、当院のカルバペネム系抗菌薬の緑膿菌感受性率の年度推移
についても比較、調査を行った。
【結果】 今回、各種抗菌薬の AUD の変動については年度別に比較しても大きな変化はみられなかった。
薬価に関してはセフェム系第 1 世代、第 2 世代が 2010 年度から 2012 年度にかけて、グリコペプチド系
に関しては 2011 年度から 2012 年度にかけて減少しており、β ラクタマーゼ阻害薬配合剤に関しては
2010 年度から 2011 年度にかけて使用量が増加しているのにも関わらず総薬価に関しては大きな変動が
なかった。これは当院の採用薬が先発品から後発品に切り替わった為だと思われる。
【考察】 今回 2010 年から 2013 年の年間の集計を行った結果になるが、今後も継続的に使用の状況の蓄
積と評価をおこない、感染制御の取り組みとして抗菌薬適正使用へ向けた院内での働きかけや、国内外
のガイドラインの変化と当院における抗菌薬使用動向の分析、また得られた結果を日々の感染制御対策
へ還元していくことが重要であると思われる。また、今回の調査によって抗菌薬の適正使用に向けての
管理を行うことで将来的に感染制御だけではなく、二次的に病院経済に対しても有効に働く可能性があ
ると思われる。
F‒04
当院における緑膿菌の感受性とカルバペネム系抗菌薬の使用状況について
JA 三重厚生連松阪中央総合病院 薬剤部
1
1
1
1
○櫻井香織 ,鈴木美世利 ,谷口賢二 ,福永浩也
1
105
一 般 講 演
【目的】 当院では抗菌薬の使用量として年間の抗菌薬使用密度(以下 AUD)を算出しているが、AUD
のみの比較では低用量長期間使用と高用量短期間使用が同等に扱われるといった点も指摘されている。
そこでイミペネム / シラスタチン(以下 IPM/CS)、メロペネム(以下 MEPM)の AUD および用法・
用量の推移と緑膿菌に対するそれぞれの抗菌薬感受性率の関係について検討したので報告する。
【方法】 対象期間は 2011 年 4 月から 2013 年 3 月の 3 年間とし、IPM/CS、MEPM の AUD および入院
患者における IPM/CS、MEPM の平均投与日数、平均投与時間、投与回数、1 日用量について年度単
位で比較した。また入院患者から分離された緑膿菌に対する IPM/CS、MEPM の感受性率を年度単位
で比較した。
【結果】 AUD は 2011 年度、2012 年度、2013 年度の順に、IPM/CS は 0.39、0.25、0.42 であった。ま
た MEPM はそれぞれ 0.91、0.82、1.09 であった。平均投与日数、平均投与時間はいずれの抗菌薬にお
いても各年度に有意な差は認められなかった。IPM/CS の投与回数は 2011 年度、2012 年度と比較し
て 2013 年度は 1 日 4 回投与群が有意に増加し、MEPM の投与回数は 2011 年度と比較して 2012 年度、
2013 年度は 1 日 3 回投与群が有意に増加した。1 日用量はいずれの抗菌薬においても 2011 年度、2012
年度と比較して 2013 年度は増加したが有意な差は認められなかった。緑膿菌に対する感受性率は 2011
年度、2012 年度、2013 年度の順に、IPM/CS は 70.4%、88.2%、81.4% であった。また MEPM はそれ
ぞれ 73.1%、92.5%、83.2% であった。
【考察】 2011 年度と 2012 年度を比較すると IPM/CS、MEPM の AUD は減少し、緑膿菌に対する感受
性率は改善した。しかし 2011 年度と 2013 年度を比較すると 2013 年度はいずれの抗菌薬の AUD も増
加したが、有意な差はないものの感受性率は高かった。これは AUD 増加の要因として投与回数と 1 日
用量の増加が影響していると考えられ、PK-PD 理論に基づいた投与法は抗菌薬感受性に一定の効果が
あったと示唆された。
F‒05
クロストリジウム・ディフィシル感染症多発事例への介入と考察
1
2
3
4
高山赤十字病院 薬剤部, 同医療安全推進室, 同検査部, 同内科
1
2
3
4
4
1
○上田秀親 ,後藤泰代 ,橋渡彦典 ,細江敦典 ,西尾 優 ,吉岡史郎
【目的】 平成 25 年 10 月からの約 3 ヶ月の期間に当院において複数の病棟にわたり繰り返されたクロス
トリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の多発事例を経験した。この事例に対する経過とインフェク
ションコントロールチーム(ICT)の介入について報告する。
【経過】 平成 25 年 10 月 18 日から平成 26 年 1 月 4 日までに A 病棟にて、CDI 患者 13 名の発生を認め
た。平成 25 年 12 月 24 日に B 病棟において、CDI 患者 1 名を認め、その後、同室者を中心に新たに 3
名の CDI 症例の発生を認めた。平成 26 年 1 月 10 日から 1 月 21 日までに C 病棟においても同室の 2 名
の患者が CDI と診断され、その後新たに 3 名の CDI 患者の発生を認めた。10 月の感染防止委員会では
抗菌薬使用量が増加傾向にあることが報告されていた。ICT は発生要因について調査を行うとともに、
当該病棟をラウンドし患者配置や現場職員への接触感染予防に関する指導を行うなど CDI の収束に努
めた。薬剤師は患者の抗菌薬使用歴、抗菌薬投与時の予防的な整腸剤の有無、制酸剤の使用歴、CDI
への治療薬の使用状況について調査した。一方、内科・外科カンファレンス、医局会にて広域スペクト
ラムの抗菌薬の使用量が増えていることへの注意喚起と抗菌薬使用時の整腸剤併用を呼びかけ薬学的に
介入した。
【結果】 CDI 発症患者 22 例中、発症前の抗菌薬使用 22 例、発症前の整腸剤の使用 2 例、制酸剤の使
用 12 例であった。CDI の治療薬の使用はメトロニダゾール 20 例、塩酸バンコマイシン散 1 例、整腸
剤 21 例であった。患者の多くは易感染患者であり、排泄介助を要する患者も見られた。ICT の介入に
より平成 26 年 2 月以降は CDI の多発はみられていない状況にある。
【考察】 今回の CDI 多発事例の発生要因として抗菌薬により腸内の常在菌叢が乱れることで発症する
内因性発症の関連が高く、同室からの発症に関しては排泄介助を要する患者への処置時の交差感染も考
えられた。予防対策として診療科カンファレンスや医局会の場での注意喚起は有効と考えられた。今後
も月々の抗菌薬の使用動向を注意深く調査し、特に広域抗菌薬の使用量が増加した場合は CDI の発生
リスクについて院内周知するなど早期介入に努めたい。
F‒06
薬剤部における抗菌薬適正使用カンファレンスを開始して
1
済生会松阪総合病院薬剤部
1
1
1
1
1
1
○水本果歩 ,内藤 潤 ,中西伸樹 ,佐久間隆幸 ,三井聖子 ,中村昭宣 一 般 講 演
【目的】 当院では薬剤部全体として、抗菌薬の適正使用を目的に、2014 年 7 月より週に 3 回、抗菌薬
カンファレンスを開始した。カンファレンスでは全病棟の広域抗菌薬(カルバペネム系、ニューキノロ
ン系、ゾシン®)および抗 MRSA 薬の使用について、適正であるか検討し、必要に応じて薬剤部の意見
として、医師へ病棟担当より提言を行っている。今回、抗菌薬カンファレンスの有用性について検討を
行った。
【方法】 薬剤師 14 名に対し、抗菌薬カンファレンスに対するアンケートを行った。アンケートの内容は、
①抗菌薬治療に対する意識変化、②医師への提言について、③治療方針の変更の有無等についてとした。
また、広域抗菌薬の使用件数の変化について調査した。
【結果】 アンケート結果では、カンファレンス開始により、「抗菌薬に対する意識向上につながった」
が 100%、「医師に提言しやすくなった」が 64%、「医師との関係性に変化があった」が 43%であっ
た。また、2014 年 7 月および 8 月に広域抗菌薬を使用した 38 名の内、薬剤師が医師に提言した件数は
36 件であった。その内、治療に反映された件数は 28 件(開始 8 件、投与量 6 件、投与期間 5 件、deescalation4 件、その他 5 件)、反映されなかった件数は 8 件であった。また、延患者数に対する広域抗
菌薬の使用件数の減少も認められた。
【考察】 抗菌薬カンファレンスの開始に伴い、薬剤部全体の抗菌薬の適正使用に対する意識が向上した。
特に勤務経験の浅い薬剤師に与えた影響は大きく、医師に抗菌薬治療について提言しやすくなったとい
う意見が多かった。抗菌薬の選択に加え、喀痰、血液等培養の必要性とタイミングを訴えることも日時
行っており、医師へのコンサルテーションも増えてきている。ICT がタイムリーに病院全体に介入す
ることは、マンパワー的に難しく、病棟薬剤師を中心とした薬剤部のチームとして抗菌薬治療に関わる
ことは、個々の薬剤師のレベルアップと均填化とともに、抗菌薬の適正使用に有用であると考える。こ
の取り組みを継続し、定期的にアウトカムの評価をすることで、薬剤師職能のアピールを行っていきたい。
106
F‒07
抗がん剤混注監査システムの重量監査における適正誤差範囲の検討
1
磐田市立総合病院 薬剤部
1
1
1
1
○廣瀬和昭 ,後藤敏也 ,鈴木直哉 ,正木銀三 【目的】 抗がん剤の混注業務における確実な薬剤監査と混注量監査のため、磐田市立総合病院(以下、
当院)ではトーショー社『注射薬混注監査システム Add / Dis』を導入し、入院・外来にて使用する抗
がん剤全ての混注業務において利用している。本システムでは、バーコードにより薬剤の監査を行い、
電子天秤による秤量により混注量の重量監査を行っている。この重量監査における許容誤差は初期設定
では全薬剤 ±5% と設定されているが、秤量値の大小によりその意味合いは違ってくると考えられる。
許容誤差は任意に変更できることから、過去の重量監査データを収集することでより最適な許容誤差の
設定について検討を行った。
【方法】 2013 年 6 月 19 日から 2013 年 7 月 31 日までの期間における当院薬剤部で調製した入院・外来
での抗がん剤の混注監査履歴より、混注量の重量監査データを収集した。
また、収集結果より、許容誤差を ±3% に設定変更し、2013 年 8 月 1 日~ 8 月 31 日まで業務を行った
上で再度重量監査データを収集した。また、混注業務従事者を対象として、設定に関するアンケートを
実施した。
【結果】 ±5% 設定の調査期間における抗がん剤の重量監査データは全 608 件あり、その内混注量誤差
が ±3% 以内に収まっている監査データは 491 件(81.8%)であった。秤量値が 5g 以下の監査データで
は全 145 件のうち誤差 ±3% 以内のデータは 99 件(68.2%)、秤量値が 50g 以上の監査データでは全 41
件のうち誤差 ±3% 以内のデータは 40 件(97.6%)であった。
許容誤差の設定変更後(±3%)の監査データとアンケート結果は現在収集中であり、大会当日報告と
させていただく。
【考察】 秤量値が低用量の場合、秤量誤差が大きくなる傾向にある。その原因としては、シリンジの目
盛による秤量と重量秤量との誤差や針内部に残存する液量影響が大きくなるためと考える。そのため、
薬剤量による個別設定や、秤量値が小さい場合は 21G の針を使用するなど手技の検討が今後必要となる。
F‒08
医療従事者の抗がん剤暴露防止に対する取り組み
―閉鎖式調製・投与器具導入の試み―
1
2
公立陶生病院医療技術局薬剤部, 同化学療法センター
1,2
1,2
2
2
2
1
○小崎耕自 ,深津昌弘 ,村田智美 ,梶口智弘 ,木村智樹 ,鷹見繁宏
107
一 般 講 演
【目的】 一部揮発性の高い抗がん剤の調製・投与においては以前から閉鎖式薬物混合システム(Closed
System drug Transfer Device:CSTD)の使用が推奨されており、平成 24 年度の診療報酬改定で、こ
れらの薬剤の調製において CSTD を使用して調製した場合 150 点を算定できることになった。当院で
は薬剤師以外の医療従事者に対する暴露も考慮し、調製器具だけでなく輸液ラインを含めた閉鎖式シス
テムを導入することとなったため、その経緯と使用開始後の評価について報告する。
【方法】 外来化学療法室(現センター)において国内で CSTD を取り扱う 3 社の製品を比較検討した
結果、調製器具・輸液ラインともに BD 社の「PhaSeal システム」を平成 25 年 6 月より外来化学療法
室のみで試験導入した。その中で使用時の問題点を抽出、メーカーに改良を依頼し平成 26 年 4 月より
外来・入院を含め、シクロホスファミド、イホスファミド、ベンダムスチン塩酸塩の 3 剤の調製および
これらを含む全てのレジメンの投与において院内全部署での閉鎖式輸液ラインの使用を開始した。
【結果】 CSTD 使用の対象薬剤は年間約 300 件の調製・投与が実施されている。CSTD の導入にあた
り調製時間の延長が危惧されていたが、調製時にプライミングまでおこなうこと、器具の操作に不慣れ
な調製者もいることから若干の延長はみられたものの許容範囲内であった。また、投与現場においても
問題となるような事例は報告されておらず、調製・投与に関わるスタッフからは安心感があるなどの評
価が得られた。
【考察】 当院での CSTD 導入においては事前に各社のデバイスを比較評価し、さらに改良を加えたも
のを採用したことで特に問題なく導入でき、デバイスに対するスタッフの信頼も高い。現在のところ
CSTD を使用した場合の加算対象薬剤は上記の 3 剤のみであるが、医療従事者の健康に悪影響を及ぼす
可能性のあるハザーダス・ドラッグは多数あり、今後は他の薬剤での使用も検討していく必要があると
考えられる。
F‒09
静岡県立こども病院における「院内製剤:亜セレン酸内服液 50μg/mL」の使用状況
1
2
静岡県立こども病院薬剤室, 静岡県立こども病院 NST
1,2
1,2
1
2
○板倉美奈 ,井原摂子 ,平野桂子 ,渡邉誠司
【目的】 静岡県立こども病院(以下当院)では、長期 TPN や長期経腸栄養等で栄養摂取不良の患者に
対し、積極的にセレン欠乏症のチェックと「院内製剤:亜セレン酸内服液(セレンとして 50μg/mL)」
による補充を行ってきたが、2014 年 8 月よりセレンを多く含む薬価収載の経腸栄養剤(商品名:エネー
TM
ボ 配合経腸用液)が正式採用されることとなった。エネーボ採用後は院内製剤によるセレン補充の
必要性に変化が予想されることから、採用前の亜セレン酸内服液の使用状況をまとめることにした。
【方法】 当院において、2013 年 7 月 1 日から 2014 年 6 月 30 日までの間に亜セレン酸内服液を投与し
た患者を抽出し、亜セレン酸内服液の投与量、使用中の経腸栄養剤の名称等の栄養摂取状況、亜セレン
酸内服液投与後の血清セレン濃度を調査した。
【結果】 調査期間中、44 名に亜セレン酸内服液が投与されていた。投与量はセレンとして 0.5 ~ 5.5μ
g/kg/ 日であり、平均投与量は 2.0μg/kg/ 日だった。44 名のうちの 31 名について亜セレン酸内服液
服用後の血清セレン濃度が測定されており、セレン濃度 69μg/L 以下が 4 名、70 ~ 105μg/L が 12 名、
106μg/L 以上が 15 名だった。セレン濃度基準値上限の 174μg/L を超えた患者はいなかった。31 名が
摂取していた栄養は普通ミルク 1 名、MA-1 ミルク 2 名、ケトンミルク 1 名、エレンタール 1 名、エンシュ
アリキッド 8 名、ラコール 9 名、ミキサー食 2 名、食事 7 名だった。31 名のうち 1 名が週 1 回セレン
含有補助食品(テゾン)を摂取していた。セレン濃度 69μg/L 以下であった 4 名のうち 3 名は食物ア
レルギー対応の食事を摂取していた。亜セレン酸内服液の副作用は特に認められなかった。
【考察】 亜セレン酸内服液は有用なセレン補充方法であったが、今後経腸栄養剤がエネーボに切り替わ
る場合はセレンの過剰投与が予想される。亜セレン酸内服液とエネーボが適正使用されるよう適切な血
清セレン濃度のチェックを勧める予定である。
F‒10
薬剤師による NICU 入院患児の TPN 調製 ~ 365 日体制への取り組み~
2
3
名古屋第一赤十字病院 薬剤部, 同看護部 NICU 病棟, 同小児科
1
1
1
1
1
1
○花井美月 ,山田 総 ,野村浩夫 ,水野恵司 ,黒野康正 ,水谷年男 ,
1
2
2
1
三輪眞純 ,平岩美緒 ,大城 誠 ,森 一博
1
一 般 講 演
【目的】 NICU 入院患児の TPN は多剤混注が必要で、患児は免疫能が未熟なため、TPN の細菌汚染リ
スクが懸念される。また各薬剤の投与量が微量なため、調製には煩雑な手技を要する。当院では NICU
入院患児の TPN で 4 種類以上の薬剤をシリンジ内で混注する処方に対して、平日のみ薬剤部で無菌調
製を行ってきた。今回、感染対策の向上および薬剤業務分担を目的として 365 日体制を実施したので、
その取り組みと評価を報告する。
【方法】 平成 26 年 8 月 1 日から一ヶ月間において、薬剤部で無菌調製した 4 種類以上の薬剤を混注す
る TPN 件数およびシリンジ本数を調査した。また 8 月 23 日より一週間、看護師が調製した件数を調査し、
薬剤部における無菌調製実施率を算出した。アンケート調査は NICU の医師および看護師に対して自
由回答方式で行った。
【結果】 対象期間において、薬剤部で無菌調製した処方は 159 件で、シリンジ本数は 322 本であった。
対象の一週間において、4 種類以上の薬剤を混注する TPN の無菌調製実施率は 83%であった。アンケー
ト調査では、感染対策の点および看護師が薬剤調製に従事する時間を看護業務にシフトできる点から、
薬剤部における無菌調製は有用であると評価された。
【考察】
4 種類以上の薬剤を混注する TPN は、一ヶ月間に 150 件以上処方されていた。365 日体制の
実施により、そのうち 8 割以上を薬剤部で無菌調製することができた。これらは、調製時の細菌汚染リ
スクの減少および専門性による薬剤業務分担の観点から、医療の質および安全性の向上につながったと
思われる。
108
F‒11
当院薬剤部における調剤過誤防止への取り組み
1
聖隷三方原病院 薬剤部
1
1
1
1
1
1
○泉みどり ,江藤公美 ,川合麻未 ,長浦宏之 ,奥村知香 ,柴山芳之
【目的】 調剤過誤防止の対策として実施している監査時における調剤ミスの記録が有効であるかを検討
した。
【方法】 ①記録を始めた 2011 年 9 月以降において、IA レポートの調剤過誤件数を集計し、比較した。
②調剤ミスの記録を基にミスの多いものについて薬品棚の位置の変更を行い、その前後で調剤ミスの記
録における過誤件数を比較した。
【結果】 ①調剤ミスの記録開始後、IA レポートにおける調剤過誤件数は、数量違い、入れ忘れ、規格
違いで減少し、その他では増加が見られた。
②調剤ミスの記録におけるアスパラカルシウム錠とアスパラカリウム錠の取り違いは、薬品棚の変更前
で 3 件、変更 8 ヶ月後に 1 件、さらに 6 ヶ月後に 1 件であった。
【考察】 調剤ミスの記録開始後、数量違い、入れ忘れ、規格違いにおいて IA レポートの減少がみられ
たことから、調剤ミスの記録はそれらの防止対策として有効であると考えられる。しかし、その他にお
いては IA レポートの減少がみられなかったことから、今回分類した 5 種類の調剤過誤以外の特殊な調
剤過誤の防止対策としては調剤ミスの記録は不十分であると考えられる。
また、記録を基に検討された薬品棚変更は名称類似薬の調剤ミスの減少に寄与するが、意識の薄れによ
り調剤ミスが再び発生する恐れがあると考えられる。そのため、記録を基に有効な対策を立てると同時
に薬剤部内の過誤に対する意識を高め続けていく必要がある。
F‒12
当院における新規経口抗凝固薬の処方状況
豊橋市民病院 薬局
1
1
1
1
○蒲 伴彦 ,隅田 徹 ,石川元章 ,石田隆浩
1
109
一 般 講 演
【目的】
非弁膜症性心房細動に伴う脳梗塞の発症予防にはワルファリンカリウム(WF)が使用され
てきたが、出血性合併症のため頻回な血液凝固能検査の実施、薬物相互作用に対する注意、食事制限、
服薬コンプライアンスなど、細かい用量調節が必要な管理の難しい薬剤の一つであった。2011 年よ
り、食事制限不要で薬物相互作用の少ない新規経口抗凝固薬(NOAC)が使用されるようになったが、
NOAC から WF へ変更される例も散見された。そこで、WF・NOAC の処方状況を検討し、服薬アド
ヒアランスの向上、処方上の注意点など薬剤業務に生かすために調査を行った。
【方法】 当院の 2013 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日の WF・NOAC の処方状況を薬局システムを利
用して、期間内に他剤へ変更した処方を抽出し、その変更理由を電子カルテより調査した。
【結果】 変更理由として WF から NOAC は、PT-INR の調節困難例が大半を占め、NOAC から WF は、
副作用、腎機能低下によるものであった。個々の NOAC では、ダビガトランは他剤への変更でなく、
減量して継続する症例が多く見られた。また、リバーロキサバンは出血により変更した症例があったが、
ダビガトランでは出血のため変更した症例はなく、APTT の延長を理由に出血前に変更している症例
がほとんどであった。期間内の新規導入では脳梗塞の予防としてダビガトランが選択される症例が最も
多く、特に循環器科の症例で多く選択されていた。
【考察】 WF は、PT-INR を測定することで、その効果・出血リスクの評価をできていたが、NOAC では、
PT-INR と効果・出血リスクに相関がないことが処方変更をしづらくさせる原因の一つになっていた。
そのため、WF によりコントロール不良となる例にのみ NOAC への変更がされたと考えられる。また、
NOAC の中でもダビガトランは、唯一、エビデンスが示されており、なおかつ、APTT により出血リ
スクを予測できるために使用頻度が高くなったと考えられる。
F‒13
ノビレチン及びノビレチン含有柑橘類果皮抽出物による芳香族炭化水素受容体
(AhR)の活性化
1
2
3
静岡県立大学薬学部, 東北大学大学院薬学研究科, 東北大学大学院工学研究科,
4
横浜薬科大学
1
1
1
1, 2
1
1
○勝又慶人 ,関本征史 ,榊 夏澄 ,阿部太紀 ,根本清光 ,出川雅邦 ,
1, 3, 4
1
大泉 康
,吉成浩一
【目的】 ポンカン果皮抽出物(PE)は、抗認知症作用を有するノビレチン(NOB)を多量に含み、健
康食品への応用が期待されている。我々は安全性評価の一環として、ラットに PE を連続投与したとこ
ろ、肝 CYP1A 酵素発現が誘導されることを見出している。肝 CYP1A 酵素の誘導は、発がん前駆物質
の代謝活性化や医薬品の体内動態に影響を与える可能性がある。また、CYP1A 誘導に関わる転写因子
である芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化は、様々な毒性との関連が報告されている。そこで本
研究では、ヒトにおける毒性発現や相互作用の可能性を、PE 及び NOB のヒト培養肝細胞株における
CYP1A 遺伝子発現と AhR 活性化を指標として評価した。
【方法】 ヒト肝がん細胞株 HepG2 から樹立した AhR 活性化検出用レポーター細胞株 HepG2-A10 を、
PE(7% NOB 含有)または NOB で処置し、AhR 転写活性化能を luciferase assay により、CYP1A
mRNA 量を定量的逆転写 PCR 法で測定した。
【結果】 HepG2-A10 における AhR 活性化は、PE により NOB 当量 1~10 µM で濃度依存的に上昇した。
NOB 単独では 1 ~ 100 µM で濃度依存的な上昇が認められ、その最大活性は PE 処置時の最大活性と
同程度であった。さらに、PE や NOB 処置により CYP1A 遺伝子の mRNA レベルも増加した。
【考察】 PE 及び NOB はヒト肝において AhR の活性化を介して CYP1A 遺伝子発現誘導を引き起こし、
これらを介した毒性や相互作用の発現が示唆された。また、PE と NOB 単独での作用は若干異なった
ことから、PE 中の他の成分も AhR 活性化に影響を与えている可能性が示された。現在、ヒト肝細胞
のモデルとして用いられている HepaRG 細胞を用いた解析を進めている。
F‒14
毒性試験公開データを用いた肝細胞肥大の毒性学的特徴の解析
1
静岡県立大学薬学部
1
1
1
1
○増田雅美 ,関本征史 ,根本清光 ,吉成浩一
一 般 講 演
【目的】 化学物質の暴露により肝細胞はしばしば肥大する。この化学物質による肝細胞肥大の多くは、
可逆的で、薬物代謝酵素誘導を伴うことから、生体の適応反応と考えられる。しかし、我が国における
化学物質の安全性評価では、肝細胞肥大は毒性とされ、NOAEL(最大無毒性量)および ADI(1 日許
容摂取量)の設定根拠となる例もある。これらのことから、肝細胞肥大の毒性学的意義を解明すること
は、化学物質の安全性評価において重要である。そこで本研究では、公開されている農薬毒性試験デー
タを利用した統計学的・情報学的解析により、肝細胞肥大の毒性学的特徴の解明を試みた。
【方法】 内閣府食品安全委員会で公開されている 226 の農薬評価書をダウンロードした。このうちラッ
ト 2 年間慢性毒性・発がん性併合試験について実験方法や毒性所見が明記されている 118 農薬の評価書
から毒性所見を抽出し、各所見が認められたか否かを 1(あり)または 0(なし)としてマイクロソフ
トエクセル上でデータを整理した。カイ二乗検定は JMP(ver.11.0)を用いて行った。
【結果】 118 の農薬評価書から全 757 毒性所見を抽出した。統計学的解析のために類似所見をグループ
化し、最終的に肝は 56、甲状腺は 26、血液学は 37、血液生化学は 48 所見となった。各所見には 7 桁のコー
ド番号を割り当てた。肝細胞肥大は 118 農薬中 45 農薬(38%、オス)で認められた。カイ二乗検定の結果、
肝絶対重量増加、肝相対重量増加、肝好酸性変異細胞巣、血中総タンパク増加、血中 γ- グルタミルト
ランスペプチターゼ増加などの所見と、肝細胞肥大の発現との間に有意(P < 0.001)な関連性が認め
られた。
【考察】 公開されている農薬評価書を用いて、肝細胞肥大と他の毒性所見との関連性を解析可能なデー
タベースを構築し、肝細胞肥大と関連する毒性所見を抽出できた。肝細胞肥大にはいくつかの種類(中
心性、びまん性など)が存在することから、肝細胞肥大の種類による毒性学的特徴の相違に関する解析
を進めている。本データベースを利用したさらなる解析は、肝細胞肥大の毒性学的特徴の解明に有用と
思われる。
110
F‒15
性ホルモンによる肝 CYP7A1 発現制御機構の解析
1
2
3
静岡県大薬, 農業生物資源研, 東北大院薬
1
1
1
2
1
1, 3
○栗田隆三 ,倉冨 雅 ,関本征史 ,小島美咲 ,諸田まどか ,阿部太紀 ,
1
1
1
根本清光 ,吉成浩一 ,出川雅邦 【目的】 Cholesterol 7α-hydroxylase(CYP7A1)は、コレステロールから胆汁酸への異化における律
速酵素として知られている。我々はこれまでに、マウスの肝臓において Cyp7a1 の mRNA レベルが雄
よりも雌で高値を示すことや、肝インターロイキン(IL)-1 量と Cyp7a1 の mRNA レベルとの間には正
の相関が見られることなどを報告してきた。そこで本研究では、Cyp7a1 の性差発現要因について解明
することを目的とし、性ホルモンや IL-1 による Cyp7a1 発現への影響を解析した。
【方法】 9 週齢時に精巣あるいは卵巣を摘出した雌雄 BALB/c マウスに対し、施術 1 週間後から
testosterone propionate(Test、
0.4 mg/kg/every other day)あるいは β-estradiol 3-benzoate(Est、0.5
mg/kg/day)をそれぞれ 1 週間皮下投与した。また、対照として 10 週齢の非去勢および去勢雌雄マウ
スにコーン油(0.2 mL/day)を 1 週間皮下投与した。最終投与 24 時間後に屠殺し、肝臓を採取した。
IL-1α および IL-1β 量を ELISA 法により、Cyp7a1 の mRNA レベルを定量的逆転写 PCR 法によりそ
れぞれ測定した。
【結果・考察】 非去勢マウスの肝臓における Cyp7a1 の mRNA レベルや IL-1α 量は、雄よりも雌で高
値を示した。雄でのこれらレベルは精巣摘出により有意に増加し、この増加は Test 投与により消失した。
一方、雌では卵巣摘出および術後の Est 投与による Cyp7a1 の肝 mRNA レベルの変動は認められなかっ
た。また、去勢した雌雄マウスに Test を投与すると、肝 IL-1α および IL-1β 量が低下した。これら
の結果より、アンドロゲンには肝 IL-1 量および Cyp7a1 遺伝子発現を低下させる作用があることが示唆
された。一方、IL-1 ノックアウトマウスにおいても、Cyp7a1 の肝 mRNA レベルに性差(雌>雄)が
報告されていることから、アンドロゲンは IL-1 の発現変動を介さずに Cyp7a1 の発現を抑制する可能
性が考えられる。現在、アンドロゲンによる CYP7A1 発現低下機構について解析を進めている。
F‒16
カドミウム慢性毒性におけるメタロチオネイン III の関与
1
愛知学院大学薬学部
1
1
1
1
○李 辰竜 ,古川洋光 ,徳本真紀 ,佐藤雅彦
111
一 般 講 演
【目的】 カドミウム(Cd)は有害環境汚染物質の一つで、イタイイタイ病の原因物質として知られて
いる。Cd の生物学的半減期は 15 〜 30 年と長いことから、慢性中毒が特に強く懸念されている。一方、
生体内防御因子であるメタロチオネイン(MT)には 4 種のアイソフォームがあり、そのうち MT-I お
よび MT-II は Cd の毒性軽減に深く関与しているが、MT-III と Cd 毒性との関係はほとんど明らかに
されていない。そこで本研究では、Cd 慢性毒性における MT-III の影響を検討した。
【方法】 5 週齢の雌性 129/Sv 系の野生型マウス、MT-I/II ノックアウトマウスおよび MT-III ノッ
クアウトマウスに 300 ppm の Cd を含む飼料を 65 週間自由摂取させた。腎毒性の指標として尿中
NAG(N-acetyl-β-D-glucosaminidase)および血清中の尿素窒素(BUN)量を測定した。また、肝毒
性 の 指 標 と し て 血 清 中 GPT(Glutamic pyruvic transaminase) お よ び GOT(Glutamic oxaloacetic
transaminase)活性を測定した。さらに、腎臓および肝臓の 5 µm 切片を作成して Hematoxylin-Eosin(HE)
染色を行い、病理組織学的な形態変化を観察した。MT-I、MT-II および MT-III の mRNA レベルをリ
アルタイム RT-PCR 法により測定した。
【結果および考察】 野生型マウスは 300 ppm の Cd 長期曝露によって有意な体重減少を示したが、
MT-I/II ノックアウトマウスは、Cd 曝露 18 週目までにすべて死亡した。一方、MT-III ノックアウト
マウスでは Cd 長期曝露による体重減少や死亡は認められなかった。血清パラメータ、尿サンプルおよ
び病理組織を用いた腎毒性並びに肝毒性を検討したところ、野生型マウスおよび MT-III ノックアウト
マウスに顕著な毒性発現は認められなかった。また、野生型マウスと MT-III ノックアウトマウスはと
もに Cd 長期曝露によって肝臓および腎臓中 MT-I 並びに MT-II の mRNA が顕著に上昇した。以上の
結果より、MT-III ノックアウトマウスは野生型マウスと同様に Cd 曝露によって MT-I と MT-II の発
現上昇を引き起こすことで、MT-I/II ノックアウトマウスとは異なる Cd 感受性を示すことが考えられ
る。
F‒17
ヘビードラッグ開発に向けた核酸代謝酵素の探索
1
2
3
岐阜大院工, 岐阜薬大, 岐阜大院連合創薬
1
1
2
1, 3
○山形直也 ,喜多村徳昭 ,佐冶木弘尚 ,北出幸夫
【目的】 水素の安定同位体である重水素(D)で標識化された化合物は反応機構の解明、生理活性物質
の構造解析、薬物の体内動態追跡など多岐に渡る分野で利用されている。既存薬の一部の水素を重水素
に置換した医薬品はヘビードラッグと呼ばれ、近年注目を集めている。重水素は水素の同位体であるた
め、重水素標識をしても酵素や受容体に対するバインディング等の化学的性質は変わらず、非標識体と
同一に認識される。一方、C-D 結合の強度は C-H 結合に比べて 6 ~ 10 倍ほど高いとされており、この
重水素効果により化合物の代謝が遅延するため、薬効の持続性や安定性の向上などが期待されている。
本研究ではヘビードラッグの開発を目指し、核酸代謝酵素ヒト Thymidylate synthase(Hs TS)に着目
5
10
した。本酵素は 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸(N ,N -Methylene-THF; MTHF)をメチル基の供与源
とし、UMP のメチル化により TMP を合成する酵素である。今回、重水素標識核酸 UMP-d2 を基質に
用いて酵素活性を測定することで、本酵素に対する重水素効果の影響を評価することとした。
【方法・結果】 まず、ヒト cDNA から Hs TS がコードされる DNA を PCR により増幅し、クロロホル
ム・エタノール沈殿により DNA を精製した。精製した Hs TS DNA とタンパク発現用プラスミドベク
ター(pQE30)を Sac Ⅰと Hind Ⅲで制限酵素処理し、続いて DNA リガーゼを利用してベクターに目
的 DNA を挿入した。コンピテントセル JM109 に目的 DNA を含む pQE30 を導入し、LB プレート培
地に植菌した。プレートに生じたコロニーからプラスミド
を抽出し、DNA シークエンシングによりベクターに挿入さ
れた DNA 配列を同定した。Hs TS DNA が導入された大腸
菌 JM109 株を使用して Hs TS の発現、タンパク質の精製を
行った。今後 UMP-d 2 を調製し、UMP と UMP-d 2 に対する
Hs TS の酵素活性を評価する予定である。
F‒18
アセトアルデヒド由来核酸アダクトの培養細胞からの検出
1
2
3
鈴鹿医療科大薬、 愛工大工、 大原薬品工業㈱
1
1
1
1
2
3
○平井一行 ,藤澤 豊 ,伊藤朱里 ,土谷崇裕 ,村上博哉 ,酒向孫市 ,
1
出屋敷喜宏 一 般 講 演
【目的】 飲酒等で摂取したアルコールは代謝され、アセトアルデヒド(AA)を生じる。AA は DNA と
付加体形成することで、発がん性や遺伝毒性に関与する事が知られている。私たちは DNA と同様に
RNA においても AA 付加体が形成されることを確認した。そこで、AA との反応性が高いグアニン塩
基に注目し、RNA における Cyclic 1,N2-propanoguanosine(CPr-Gua)の標準品の合成、および HepG2
細胞での生成を確認したことを報告してきた。今後、多くの試料を解析することが見込まれるため、グ
アノシンン・CPr-Gua 分析系の短時間化を検討した。また、血中の AA 付加体の動態学的解析を行う
ことを考え、HL-60 細胞での CPr-Gua 生成を検討した。
【方法】 CPr-Gua 分析系の短時間化の検討については、HPLC に Prominence LC-20A を、および MS
分析に AB Triple Quad5500 を使用し、移動相に 0.1% 酢酸水溶液とアセトニトリルを用いて、アセ
トニトリルのグラジエント溶出法により検討した。分析カラムには、粒子径およびサイズの異なる
TSKgel ODS-100V(3 μm, 3.0mm x 15cm および 2mm, 2.0μm x 10cm または 5cm)を用いた。
HL-60 細胞での CPr-Gua 生成の検討については、所定濃度の AA 存在下に HL-60 細胞を培養後、抽
出した total RNA を酵素的に分解し、脱リン酸化したものを試料として検討した。
【結果・考察】 分析時間の短縮化の検討については、グアノシンと CPr-Gua の定量を同一カラムで行
う場合には、サイズ 10 ㎝のカラムを用いる方法で分析時間を既報の 1/2 に短縮した。また、サイズ₅
㎝のカラムを用いる方法により、AA 付加体のみの定量に要する時間を既報の 1/3 に短縮した。
HL-60 細胞での CPr-Gua 生成の検討については、AA の添加濃度、暴露時間の増加に伴う Cpr-Gua
生成量の上昇傾向が確認された。
112
F‒19
大腸ムチンの硫酸化による大腸発癌抑制効果の検討
1
2
3
静岡県大・薬, 静岡県大・看護, 星薬科大・薬
1
1
1
2
1
1, 3
○西谷麻予 ,坪井康一郎 ,飛澤悠葵 ,金澤寛明 ,今井康之 ,川島博人
【目的】 我々はこれまでに硫酸基転移酵素 GlcNAc6ST-2 が大腸ムチンの硫酸化を担う責任酵素である
ことを見出している(Tobisawa et al., J. Biol. Chem. 2010)。大腸ムチンは多数の硫酸化糖鎖によって
修飾された糖タンパク質であり、大腸がんの原因の 1 つと考えられている腸内細菌の接触や侵入から大
腸粘膜を隔てている。今回我々は、大腸での腫瘍形成における大腸ムチンの硫酸化の意義を検討した。
【方法】 はじめに、硫酸基転移酵素(GlcNAc6ST-2)欠損マウスにアゾキシメタンを腹腔内注射した後
にデキストラン硫酸ナトリウムを含む飲水を与えて大腸炎を引き起こし、大腸がんを誘発させた。その
時のマウスの体重変化について野生型マウスと比較を行った。また、それぞれのマウスから大腸を摘出
後、パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色により組織の形態を観察するとともに、
生じたポリープの数を測定した。さらに、それぞれのマウスの糞便から腸内細菌のゲノム DNA を抽出
し、菌種特異的 16S rRNA プライマーを用いた定量的 PCR により、腸内細菌叢の変化を解析した。
【結果】 GlcNAc6ST-2 欠損マウスにおいて、短期間炎症を誘発した場合にはその体重変化に野生型マ
ウスとの差異はみられなかったが、長期間炎症を誘発した際に有意な体重減少が確認された。また、
GlcNAc6ST-2 欠損マウスでは発生したポリープの数が増加し、その大きさは野生型マウスのものと比
べて大きくなった。GlcNAc6ST-2 欠損マウスと野生型マウスの腸内細菌叢の解析の結果、大多数の菌
種には変化は認められなかったが、一部の菌種に有意差があるという結果が得られたため、現在その再
現性の確認を行っている。
【考察】 GlcNAc6ST-2 欠損マウスにおいて大腸発がんが強く起こった理由として、ムチン上の硫酸基
が減少することにより硫酸基と腸内細菌との相互作用が減少し、腸内細菌が大腸粘膜内へ侵入しやすく
なる可能性が考えられる。今後この可能性について追究することにより、大腸がんの治療に役立つ基盤
的な知見を得ることができると考えられる。
F‒20
強細胞毒性を示すレジオネラ宿主内増殖性欠損株のマウスを用いた病原性解析
静岡県大薬
1
1
1
1
1
1
○三宅正紀 ,丸川敬大 ,國安健太 ,杉山亜由美 ,吉田一平 ,今井康之 1
113
一 般 講 演
【目的】 我々は、これまでに、トランスポゾン挿入変異により、宿主細胞内増殖性を欠損したにもか
かわらず、野生株と同等の高い細胞毒性を示すレジオネラ(Legionella pneumophila, Lp )株(Toxh 変
異株)を複数分離している。本研究では、これら Toxh 変異株のうち、特に、マクロファージ(Mφ)
内のみの細胞内増殖性を欠損している(mil 変異)にもかかわらず、当該細胞へ高い細胞毒性を示す
GS147 株(mil-Toxh 変異株)について、マウス感染系を利用して、動物個体に対する病原性解析を行っ
た。
7
【方法】 A/J マウスに Lp 株を経気道的に感染させ(4×10 cfu/mouse, 24 時間)、肺臓器を摘出後、そ
の薄切り切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、鏡検観察した。また、肺ホモジナイズ上清
中の炎症性サイトカイン量を、ELISA キットにて測定した。Lp 株の病原性については、A/J マウスに
8
対して、8×10 cfu/mouse にて経気道的に感染させ(n=5)、感染マウスの生存率を指標に判定した。
【結果】 GS147 株では、野生株 AA100 と同様に、炎症による肺胞壁の肥厚、肺胞内への好中球の浸潤
が所々に見られた一方、Ⅳ型分泌装置構成因子 DotA 変異による細胞内増殖欠損株 LELA3118 では、
そのような所見は観察されなかった。また、感染マウス肺組織における TNF-α 及び IL-6 の産生量を
ELISA 法により調べたところ、AA100 株及び GS147 株 GS147 株感染時は、LELA3118 株感染時と比
8
較して、有意にそれら炎症性サイトカインの産生量が増加していた。さらに、上記 Lp 株を 8×10 cfu/
mouse にて、A/J マウスに感染させたところ、LELA3118 株感染では、感染後 2 週間においても、マ
ウス生存率が 100% であった一方、AA100 株及び GS147 株感染では、共に感染後 1 日で、全てのマウ
スが死亡した。
【考察】 GS147 株は、LELA3118 株と同様に Mφ 内増殖性を欠損しているにもかかわらず、LELA3118
株とは異なり、マウスに対して病原性を示すことがわかった。GS147 株の責任遺伝子は、機能未知タン
パク質をコードする遺伝子であることを既に明らかにしており、今後はその本質的な機能及び制御系を
追究する。
F‒21
低 pH 曝露による前立腺癌細胞死における Caspase-10 の関与
1
岐阜薬大
1
1
1
1
1
○平田紗希 、曽田 翠 、井口和弘 、臼井茂之 、北市清幸
【目的】 固形癌の内部環境は正常組織と異なり、低酸素、低グルコース、さらには低 pH の状態にある
とされ、そのような過酷条件下において癌細胞は治療抵抗性を獲得する。我々はこれまでに低 pH に耐
性な前立腺癌細胞を樹立し、治療抵抗性の前立腺癌細胞に対する新規創薬ターゲットの探索を行ってき
た。本研究では、低 pH 曝露により、細胞増殖抑制とアポトーシスが起こる LNCaP 細胞と低 pH 曝露
に対し、耐性である LNCaP-F10(F10)細胞を用い、アポトーシス関連因子の解析を行った。
【方法】 ヒト前立腺癌 LNCap 細胞および F10 細胞を通常 pH(pH 7.4)あるいは低 pH(pH 6.3)条件
下で培養し、Caspase family の発現変化を Real-time RT-PCR 法および Western blotting 法を用いて評
価した。
【結果】 LNCaP 細胞を低 pH に 24 時間曝露すると、Caspase family 10 種のうち、Caspase-10 mRNA
の発現が通常培養に比して著明かつ有意に上昇することが明らかになった。また、Caspase-10 の増加
はタンパクレベルでも確認された。一方、F10 細胞における Caspase-10 mRNA の上昇は低 pH に曝露
してもほとんど見られなかった。なお、LNCaP 細胞における低 pH 曝露による Caspase-10 mRNA 発
現上昇は pH 依存的かつ時間依存的であった。
【考察】 以上の結果より、Caspase-10 を介するアポトーシスシグナルの不活化が F10 細胞における低
pH 耐性に関与していることが示唆された。現在、我々は、Death Receptor リガンドによる Caspase-10
介在シグナルの活性化が F10 細胞の低 pH 耐性能に与える影響を検討しており、本会ではその結果も併
せて発表する。
F‒22
ドキソルビシン耐性化による消化器癌細胞の抗癌剤代謝・排泄能の亢進
1
岐阜薬大
1
1
1
1
1
1
1
五十里彰
○毛塚ちひろ ,松永俊之 ,鈴木綾香 ,鷹澤博明 ,米澤綾乃 ,遠藤智史 ,
一 般 講 演
【目的】 ドキソルビシン(DOX)は消化器癌や悪性リンパ腫、乳癌など多様な癌種の化学療法において
汎用されるアントラサイクリン系抗癌剤の一つである。しかしながら、本剤の継続的使用は心筋障害や
白血球減少等の重篤な副作用発現のみならず癌細胞の耐性化を誘導するため、奏効率の低下に繋がる。
今までに消化器癌の抗癌剤耐性獲得機序として、抗癌剤代謝酵素や輸送タンパク質の発現誘導やプロテ
アソーム機能の亢進が知られているが、それ以外の耐性化因子については不明である。プロスタグラン
ジン F 合成酵素として同定されたアルドケト還元酵素(AKR)1C3 は、白血病細胞や前立腺癌細胞の
増殖に関わることから、それら癌種のマーカー酵素として注目されつつある。我々は最近、ヒト大腸癌
HCT15 細胞のシスプラチン耐性化に伴って AKR1C3 が高発現することを見出した。そこで本研究では、
2 種の消化器癌細胞の DOX 耐性株を調製し、DOX 耐性化に伴う AKR1C3 発現量の変動とその抗癌剤
代謝・排泄能への影響を調べた。
【方法】 ヒト大腸癌 LoVo 細胞および胃癌 MKN45 細胞の DOX 耐性株(LoVo-R、MKN-R)は、培地
中に添加する抗癌剤濃度を段階的に増加させることによって作製した。AKR1C3 発現量の変動は RTPCR 法およびウエスタンブロット法を指標として調べ、DOX 代謝・排泄能は LC/MS および吸光度測
定法により評価した。
【結果および考察】 LoVo-R および MKN-R 中の AKR1C3 発現量は非耐性細胞に比して著明に高かった。
また、DOX 感受性は AKR1C3 過剰発現によって有意に低下し、本酵素の阻害剤トルフェナム酸の前処
理によって増大したことから、AKR1C3 は消化器癌細胞の DOX 耐性化に関わる主要因子であることが
示唆された。AKR1C3 精製酵素を用いた酵素反応において DOX の還元代謝が認められた。また、抗癌
剤耐性化に関わる ABC トランスポーターの発現量は、DOX 耐性化や AKR1C3 過剰発現によって増加
した。さらに、DOX 処理後の耐性細胞中の抗癌剤濃度は非耐性細胞よりも低かった。以上の結果より、
AKR1C3 による抗癌剤代謝と ABC トランスポーターを介した排泄能の亢進が消化器癌細胞の DOX 耐
性化の一因であると推察された。
114
F‒23
肺腺癌細胞におけるクローディン-2 発現に対するケルセチンの効果
1
2
岐阜薬大・生化学, 静岡県大・薬
1
2
1
1
1
1
○園木寛之 ,佐藤友成 ,下馬場俊 ,多賀小枝子 ,遠藤智史 ,松永俊之 ,
2
1
菅谷純子 ,五十里彰
【目的】 上皮細胞は細胞間に密着結合を形成し、電解質の透過性や細胞増殖などを制御する。密着結合
は膜貫通型タンパク質のクローディンや裏打ちタンパク質などによって構成される。これまでに当研究
室では、クローディン-2 がヒト正常肺組織に発現しておらず、肺腺癌組織に高発現することを報告して
いる。クローディン-2 の発現抑制により、細胞増殖能と移動能が阻害されるため、クローディン-2 は肺
腺癌の新たな治療標的になると考えられる。タマネギ等の野菜や果物に多く含まれるフラボノイドの一
種「ケルセチン」は強い抗酸化活性を示し、抗癌作用を有することが報告されている。本研究ではクロー
ディン-2 発現に対するケルセチンの効果を検討した。
【方法】 ヒト肺癌由来の A549 細胞を用いて、mRNA の発現をリアルタイム PCR 法で、タンパク質の
発現をウエスタンブロット法で解析した。
【結果】 A549 細胞をケルセチンで処理すると、時間依存的にクローディン-2 の発現量が低下した。ケ
ルセチンは PI3 キナーゼを阻害することが報告されているため、PI3 キナーゼ阻害剤の LY-294002 の効
果を調べたところ、クローディン-2 の発現量が低下した。レポーターアッセイにおいて、LY-294002 は
転写活性を抑制したが、ケルセチンは転写活性を増大した。この結果から、ケルセチンは PI3 キナーゼ
の阻害とは異なるメカニズムによってクローディン-2 の発現量を低下させると示唆された。
【考察】 ケルセチンは強い抗酸化能によって抗癌作用を発揮すると報告されているが、肺腺癌細胞では
クローディン-2 の発現低下を介した細胞増殖能と移動能の抑制効果が期待できるため、抗癌作用が増強
すると示唆される。
F‒24
脳形成に必須な分泌タンパク質リーリンの C-t site 切断プロテアーゼに関する解析
1名市大院・薬
1
1
1
1
○佐藤嘉高 ,小林大地 ,河野孝夫 ,服部光治
115
一 般 講 演
【目的】 リーリンは脳形成に必須な分泌タンパク質であり、高次機能発現においても重要な役割を果た
す。リーリンは N 末端領域、8 回の繰り返し構造リーリンリピート(RR)、C 末端領域(CTR)から成り、
RR3 の中(N-t site)、RR6 と RR7 の間(C-t site)の 2 カ所で特異的な切断を受けることが知られている。
CTR はリーリンシグナルの効率的な活性化に必要であり、RR3-RR8C と RR3-RR6 ではリーリン受容体
への結合能が異なることから、C-t site 切断はリーリンシグナルを制御していると考えられる。さらに、
双極性障害では C-t site の切断量が減少するという報告もある。しかし、リーリン切断を担うプロテアー
ゼやその制御機構はわかっていない。本研究では、C-t site 切断を担うプロテアーゼの同定を目的とした。
【方法】 当研究室では小脳顆粒細胞(CGN)培養上清にリーリン切断活性があることを見出している。
CGN 培養上清を限外ろ過フィルターにより濃縮し、これを用いてリーリンの C-t site を切断した。そ
の後 C 末端側分解産物を精製し、エドマン分解に供することで、C-t site 切断部位の同定を行った。
【結果および考察】 C-t site 切断が特定のアラニン残基とアスパラギン酸残基の間で起きることを見出
した。meprinα および meprinβ は多量体を形成する亜鉛メタロプロテアーゼであり、アラニン残基
とアスパラギン酸残基の間をよく切断することが報告されている。また、meprinα は分泌タンパク質
であり、meprinβ は膜タンパク質であるがプロセシングを受け分泌型となる。これらの性質は C-t site
切断プロテアーゼと一致していることから meprinα および meprinβ が C-t site 切断プロテアーゼの
有力な候補と考えられた。そして、meprinα および meprinβ は C-t site 切断活性を有することを見出
した。また、切断部位に変異を導入した変異体リーリンは、CGN から分泌されるプロテアーゼにも、
meprinα および meprinβ にも抵抗性を示した。さらに、meprinα の mRNA は小脳および CGN に発
現していた。よって、meprinα が小脳においてリーリンの C-t site 切断を担い、リーリンシグナルの
制御に関与している可能性が示唆された。
F‒25
抗シアロ糖鎖単クローン抗体の糖鎖認識性と利用法
1
2
静岡県立大薬・生化学, 会津大学短期大学部食物栄養学科
1
1
1
2
1
○上野史彦 ,都竹真帆 ,疋田智也 ,左 一八 ,鈴木 隆
【目的】 生体内シアロ糖鎖は様々な生体反応・病態現象において重要な役割を担っている。このような現
象にはシアロ糖鎖特異的に結合するタンパク質が関与している。しかしながらこれらの結合タンパク質によ
3
る糖鎖認識メカニズムは未だ十分に明らかになっていない。これまでに本研究室ではⅣ Neu5AcLc4Cer を
免疫原として、3 種類の Siaα 2-3 型糖鎖認識単クローン抗体(HYB4, D2, D4)を樹立してきた。本研
究はこれらの単クローン抗体を用いて、免疫学的・生化学的手法により、タンパク質-シアロ糖鎖間相
互作用のメカニズムを解明することを目的とした。
【方法】 種々の糖脂質をプラスチックプレートに固相化し ELISA を行い、各抗体の糖鎖に対する認識
性を比較した。細胞から抽出した総タンパク質、総脂質画分に対してそれぞれウエスタンブロットと
TLC 免疫染色を行い、各抗体の反応性を比較した。Flow cytometory による生細胞表面複合シアロ糖
鎖に対するそれぞれの抗体の反応性を検討した。
【結果】 ELISA の結果より、3 種類の Siaα 2-3 型糖鎖認識単クローン抗体(HYB4, D2, D4)は共通の
末端シアロ糖鎖を認識することが明らかとなった。また、ウエスタンブロットと TLC 免疫染色の結果
より、各抗体の細胞由来の糖タンパク・糖脂質に対する反応性の違いが明らかになった。生細胞表面複
合シアロ糖鎖に対する抗体の反応性が明らかとなった。以上のことから、本抗体を用いた Siaα 2-3 糖
鎖分子の特異的な検出法の可能性が示された。
【考察】 本研究により、これらの単クローン抗体は、糖脂質に対する反応性から共通の末端シアロ糖鎖
を認識することが明らかとなった。一方で、細胞から抽出した糖タンパク・糖脂質に対する反応性は各
抗体で異なり、生細胞表面上のシアロ糖鎖分子に対する抗体の反応性が異なることが示唆された。現在、
結晶構造解析によるシアロ糖鎖分子‒抗体間の相互作用の解明を進めている。
F‒26
海馬依存性記憶に関わるシアリダーゼアイソザイムの機能解析
静岡県大薬・生化学
○間々田奨,南 彰,榛葉すみか,播摩沙希、家野太輔 ,鈴木 隆
一 般 講 演
【目的】 シアリダーゼは糖脂質や糖タンパク質に結合したシアル酸を脱離させる加水分解酵素であり、
NEU1、NEU2、NEU3、NEU4 の 4 種のアイソザイムが存在する。当講座ではこれまでに、生体組織
におけるシアリダーゼの酵素活性を可視化することのできるプローブ(BTP-Neu5Ac)を開発した。
BTP-Neu5Ac を利用して海馬を染色したところ、海馬苔状線維の神経終末に比較的強いシアリダーゼ
活性が検出された。苔状線維終末が分布する領域にシアリダーゼ阻害剤を投与するとモリス水迷路で評
価した記憶能が障害されることから、シアリダーゼは海馬依存性記憶に関与すると考えられる。BTPNeu5Ac はシアリダーゼアイソザイムのうち特に NEU4 により分解される。また、免疫組織染色によっ
て苔状線維終末には NEU3 や NEU4 が比較的豊富に発現していることを見出した。そこで本研究では、
NEU3 や NEU4 に着目し、海馬依存性記憶におけるシアリダーゼアイソザイムの機能解明を試みた。
【方法】 浸透圧ポンプを利用して、Wistar 系雄性ラット(8 週齢)の第三脳室に NEU3 や NEU4 に対
する siRNA(NEU3siRNA, NEU4siRNA)やランダム配列の siRNA(NCsiRNA)を持続的(流速 1.0
μ L/ 時間)に投与した。投与開始 3 日後から、モリスの水迷路試験で海馬依存性記憶能を評価した。また、
情動行動の指標として、オープンフィールド試験で中央部滞在時間と移動距離を評価した。また、投与
開始 7 日後に海馬や扁桃体に発現している NEU3 や NEU4 の mRNA をリアルタイム RT-PCR 法で定
量した。
【結果・考察】 海馬依存性記憶能は、NCsiRNA 投与群と比較して NEU3siRNA や NEU4siRNA 投与
群で有意に減弱していた。また、オープンフィールド試験で評価した中央部滞在時間や移動距離は、
NEU4siRNA 投与によって有意に変化した。海馬や扁桃体における NEU3 や NEU4 の mRNA レベルは、
NCsiRNA 投与群と比較して NEU3siRNA や NEU4siRNA 投与群で有意に減少していることを確認した。
以上より、NEU3 や NEU4 は海馬依存性記憶に関与することが示唆された。また、NEU4 は情動行動
に関与することが示唆された。
116
F‒27
血中由来シアル酸分子種によるラット脳内糖鎖の修飾
1
2
静岡県大薬・生化学, 静岡県大看・機能形態学
1
1
1
1
2
1
○松田夕妃乃 ,南 彰 ,田口理紗 ,中島さや香 ,金澤寛明 ,鈴木 隆 【目的】 糖タンパク質や糖脂質の糖鎖を構成するシアル酸のうち、主要なものとして N -アセチルノイ
ラミン酸(Neu5Ac)と N -グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)の 2 種類が知られている。Neu5Ac は
脳内に比較的豊富に存在し、神経機能に重要な役割を担う。一方で、脳内に含まれる Neu5Gc 量は極め
て微量である。当研究室ではこれまでに、ラット脳内の様々な領域に含まれる Neu5Gc 量を測定したと
ころ、記憶形成の場である海馬に比較的多く含まれることを見出した。そこで本研究では免疫組織染色
法を用いて、Neu5Gc のより詳細なラット脳内分布を検討した。さらに、血中から脳内に移行したシア
ル酸分子種による糖タンパク質や糖脂質の糖鎖修飾について検討を行った。
【方法】 ラット脳冠状面切片を作製し、抗 GM3(Neu5Gc)抗体および抗 Neu5Gc 重合体抗体で免疫組
14
織染色を行った。また、 C-Neu5Ac および Neu5Gc(50MBq/ 匹)をラット尾静脈内に投与後、液体シ
ンチレーションカウンターを用いて脳ホモジネートから分離した脂質画分やタンパク質画分に含まれる
放射線量を測定した。
【結果】 抗 GM3(Neu5Gc)抗体および抗 Neu5Gc 重合体抗体を利用して免疫組織染色を行った結果、
両者ともに海馬においては歯状回顆粒細胞や CA3 錐体細胞、CA1 錐体細胞、小脳においてはプルキン
14
エ細胞が強く染色された。また、 C-Neu5Ac および Neu5Gc は投与後 1 時間以内に脳へ移行し、24 時
間以上脳内に留まった。投与 3 時間後の脳ホモジネートを脂質画分とタンパク質画分に分画したところ、
14
C-Neu5Ac および Neu5Gc は両画分から検出された。
【考察】 以上より、Neu5Gc は海馬や小脳において神経細胞に比較的豊富に発現すること、また、血中
の Neu5Gc は脳に移行し、糖脂質や糖タンパク質の糖鎖に混入することが示唆された。
F‒28
シアリダーゼは海馬 CA1 領域におけるシナプス可塑性を制御する
2
静岡県大薬・生化学, 広島国際大薬
1
1
2
2
1
○堀井雄樹 ,南 彰 ,大坪忠宗 ,池田 潔 ,鈴木 隆
1
117
一 般 講 演
【目的】 シアリダーゼは、糖タンパク質や糖脂質の糖鎖からシアル酸を脱離する加水分解酵素である。
モリス水迷路によって評価した記憶能はシアリダーゼ阻害剤によって減弱することから、シアリダーゼ
は海馬依存性記憶において重要な役割を担う。記憶の基礎過程であるシナプス伝達効率長期増強(longterm potentiation: LTP)を誘導する機構には、海馬苔状線維-­CA3 錐体細胞間 LTP のようにシナプス
前神経依存的に誘導されるものと、Schaffer 側枝-CA1 錐体細胞間 LTP のようにシナプス後神経依存
的に誘導されるものがある。当研究室ではこれまでに、シアリダーゼが海馬苔状線維-CA3 錐体細胞間
の LTP を制御していることを見出している。本研究では、Schaffer 側枝-CA1 錐体細胞間 LTP におけ
るシアリダーゼの役割を検討した。
【方法】 Wistar 系雄性ラット(3‒4 週齢)から 400µm 厚の海馬スライス標本を作製した。刺激電極
を Schaffer 側枝に、記録電極を CA1 錐体細胞層にそれぞれ刺入し、人工脳脊髄液(ACSF)やシアリ
ダーゼ阻害剤(2,3-dehydro-2-deoxy-N-acetylneuraminic acid: DANA, 300μM)あるいは Arthrobacter
ureafaciens 由来シアリダーゼ(AUSA, 11 mU/ml)含有 ACSF による灌流下で、電気刺激により誘
発した興奮性シナプス後電位(fEPSP)を記録した。また、LTP は θ バースト刺激(TBS: 100Hz, 5
pulse を 5 Hz で 5 回)で誘導した。
【結果】 灌流液を ACSF から DANA 含有 ACSF に切り替えても fEPSP の強度は変化しなかった。次に、
DANA 含有 ACSF 灌流下で TBS を行うと、ACSF 灌流下で TBS を行った場合と比較して LTP が有
意に減弱した。また、ACSF 灌流下で LTP を誘導した後に DANA 含有 ACSF で灌流すると fEPSP が
減弱した。この EPSP の減弱は、再び ACSF で灌流することによって回復した。
【考察】 以上より、シアリダーゼは Schaffer 側枝-CA1 錐体細胞間 LTP の誘導や維持に関与すること
が示唆される。
F‒29
希少シアル酸分子種発現による海馬依存性記憶の減弱
1
2
静岡県大薬・生化学, 広島国際大薬,
1
1
1
2
2
1
○田口理紗 ,南 彰 ,堀井雄樹 ,大坪忠宗 ,池田 潔 ,鈴木 隆 【目的】 シアル酸は、糖タンパク質や糖脂質の糖鎖を構成する酸性糖である。主なシアル酸分子種と
し て N -acetylneuraminic acid(Neu5Ac) と N -glycolylneuraminic acid(Neu5Gc) が 知 ら れ て い る。
Neu5Ac はホ乳動物の脳内に豊富に存在し、神経回路形成や神経伝達の調節に重要な役割を担う。一方、
Neu5Gc は Neu5Ac より CMP-Neu5Ac 水酸化酵素の作用を介して生成されるが、脳において CMAH
の発現は抑制されている。当研究室ではこれまでに、Neu5Gc は脳内に微量に存在すること、また脳
内では記憶形成の場である海馬に比較的多く存在していることを見出した。しかし、脳内における
Neu5Gc の作用については不明な点が多い。そこで本研究では、Neu5Gc が海馬依存性の記憶能に与え
る影響を検討した。
【方法】 Neu5Gc の生合成前駆体である N -glycolylmannosamine pentaacetate(ManNGcPA, 20mM)
または Neu5Gc(20mM)を海馬に投与して海馬における Neu5Gc 高発現ラットを作製した。コントロー
ルとして、人工脳脊髄液や N -acetylmannosamine pentaacetate(ManNAcPA, 20mM)、Neu5Ac(20
mM)を投与した。次に、モリス水迷路試験で Neu5Gc 高発現ラットの海馬依存性記憶能を評価した。
また、in vivo での電気生理学的手法を用いて貫通線維 - 海馬歯状回顆粒細胞間シナプスにおけるシナプ
ス可塑性を評価した。
【結果・考察】 ManNGcPA および Neu5Gc 投与後の脳内のシアル酸含量を高速液体クロマトグラフィー
により定量したところ、海馬における Neu5Gc 含量が顕著に増加した。この増加は少なくとも投与一
週間後まで持続した。一方、Neu5Ac 量は有意に変化しなかった。モリス水迷路試験を行った結果、
Neu5Gc 高発現ラットでは記憶能が有意に低下していた。また、シナプス伝達効率の長期増強(LTP)
が有意に減弱していた。以上より、海馬に発現した Neu5Gc は、LTP や海馬依存性記憶に影響を与え
ることが示唆された。
F‒30
ヒトレギュカルチン遺伝子の選択的スプライシングバリアントの機能的役割の解析
1
名城大・薬・生体機能分析学
1
1
1
1
1
1
○杉村祐貴子 ,西村光未 ,深谷知世 ,疋田清美 ,金田典雄 ,村田富保
一 般 講 演
【目的】 これまでに、レギュカルチン(RGN)が、核内おける DNA・RNA 合成量を抑制すること、
サイトカインによるアポトーシス誘導を抑制すること、細胞内のカルシウムシグナル伝達経路の活性化
を制御することが報告されている。今回、このような多機能性を有する RGN の遺伝子発現の調節機構
を解明することを目的として、RGN 遺伝子の選択的スプライシング機構について解析した。
【方法】 ヒトの各組織から単離した cDNA を鋳型にして PCR 法によって RGN 遺伝子の転写産物を増
幅させ、塩基配列を解析した。また、ヒトの肝臓の正常組織及び癌組織からのタンパク質抽出液を用い
て、RGN のタンパク質発現をウエスタンブロット法により解析した。次いで、RGN の転写産物の発現
ベクターを作製し、ヒト癌細胞に過剰発現させ、細胞増殖を調べた。
【結果及び考察】 ヒトの RGN 遺伝子は 7 つのエキソンからなり、RGN の転写産物として全長 mRNA
以外にエキソン 4 欠失 mRNA とエキソン 4,5 欠失 mRNA が存在することが判明した。また、全長及
び選択的スプライシングバリアントの mRNA の発現には、組織特異的な選択的スプライシングが見ら
れた。さらには、肝細胞癌,尿路上皮癌,悪性髄膜腫,非小細胞肺癌からの癌細胞において、全長及び
選択的スプライシングバリアントの mRNA の発現が、正常組織の細胞に比べて,有意に低下していた。
そして、RGN の全長タンパク質及び選択的スプライシングバリアントのタンパク質の発現は、肝細胞
癌や腎明細胞癌からの癌細胞において、正常組織の細胞に比べて、有意に低下していた。RGN の全長
及び選択的スプライシングバリアントをヒト癌細胞に過剰発現させた場合、全長のみならず選択的スプ
ライシングバリアントにおいても細胞増殖抑制作用があることが判明した。以上のことから、癌の発症
や進展に選択的スプライシングを介した RGN 遺伝子の発現低下が関与することが示唆された。
118
F‒31
インフルエンザ A 型ウイルスのヘマグルチニンのスルファチド結合機構の解析
1
2
静岡県大薬・生化学, 立教大理
1
1
2
2
1
○大石健太 ,高橋忠伸 ,藤田 侑 ,常盤広明 ,鈴木 隆 【目的】 インフルエンザ A 型ウイルス(IAV)の表面糖タンパク質であるヘマグルチニン(HA)は、
ウイルスの感染受容体であるシアル酸を持たない硫酸化糖脂質スルファチドと結合する。IAV 感染細
胞表面へ運ばれた新生 HA はスルファチドと結合すると、子 IAV 粒子形成のシグナルが開始される。
すなわち、HA のスルファチド結合阻害剤は子 IAV 粒子形成を阻害する新薬になるものと期待される。
このような阻害剤を開発するために、HA のスルファチド結合機構の解明は重要である。本研究では、
HA とスルファチドの結合部位および結合機構の検討を行った。
【方法】 バキュロウイルス - タンパク質発現システムを用い、膜貫通領域を取り除いた分泌型 HA を作
製した。最新の計算化学を使用した HA のスルファチド結合部位の予測と、その予測データを基に実
際に遺伝子を変異させた HA を作製した。これらの HA を用い、スルファチドへの結合性を比較した。
【結果】 シアル酸およびスルファチドへの結合活性を有する HA の大量生産・精製系を確立した。シ
アル酸結合ポケット周辺を変異させた HA はシアル酸結合活性を失っていた。しかし、このような HA
は野生型 HA と同様にスルファチドに対する結合活性を有していた。スルファチド結合部位予測デー
タを基に遺伝子を変異させた HA では、現在までに作製できた HA において野生型 HA と同様にスルファ
チドに対する結合活性を有していた。
【考察】 現在のところ、計算化学によって予測したスルファチド結合部位を遺伝子変異させた HA に
おいてスルファチドに結合性を示さないものはなかった。今後まだ変異を導入できていない HA を試
験する予定である。また、予想されていない部位にスルファチド結合部位が存在することも考えられる。
シアル酸結合活性を失った HA がスルファチド結合活性を有していたことから、HA のスルファチド結
合部位はシアル酸結合ポケットと異なる部位であることが示唆される。
F‒32
2013 年に中国でヒトに感染した H7N9 型トリインフルエンザ A 型ウイルスのノイラ
ミニダーゼの性状解析
1
2
静岡県大薬・生化, 東大医科研・ウィスコンシン大獣医
1
1
1
2
1
○田中大夢 ,高橋忠伸 ,紅林佑希 ,河岡義裕 ,鈴木 隆
119
一 般 講 演
【目的】 H7N9 型トリインフルエンザ A 型ウイルスは 2013 年 3 月 31 日に WHO より、中国でのヒト
への感染の確認が公表された。現在のところ継続的なヒトからヒトへの感染は認められていないが、遺
伝子解析などの報告からパンデミックを起こす可能性が危惧されており、ウイルスの性状を調べるこ
とは公衆衛生上極めて重要である。本研究はインフルエンザ治療薬の標的となっているウイルスのス
パイク糖タンパク質であるノイラミニダーゼ(NA)に着目し、ヒトから分離された臨床株である A/
Anhui/1/2013(AH1)と A/Shanghai/1/2013(SH1)の NA の性状を解析した。
【方法】 AH1 と SH1 の NA を発現させた 293T 細胞を pH 4.0、5.0、6.0 で処理し、各 pH におけるシア
リダーゼ活性を測定した。さらに NA 阻害剤であるザナミビルに対する感受性を検討した。
【結果および考察】 AH1 と SH1 の NA のシアリダーゼ活性を比較すると、酸性領域において両 NA は
高い活性を示したが、中性領域においては活性に大きな違いがみられ、異なるシアリダーゼ活性を有し
ていた。また、AH1 と SH1 の NA のアミノ酸配列を比較すると 2 つの異なるアミノ酸残基が存在し、
そのうち 1 つはシアリダーゼ活性部位近傍にあることがわかった。さらにこれらのアミノ酸残基をもう
一方の残基に置換すると両者の NA の性状が入れ替わったことより、中性領域における AH1 と SH1 の
NA 間のシアリダーゼ活性の違いに活性部位近傍のアミノ酸残基が関与していることが判明した。AH1
と SH1 の NA の中性領域におけるシアリダーゼ活性はザナミビル存在下で阻害されたのに対し、酸性
領域ではシアリダーゼ活性の阻害がみられなかった。H7N9 型トリインフルエンザがヒトに感染した症
例数は SH1 に比べ AH1 の方が多く、両者の NA の性状の違いがトリからヒトへの感染性に影響する因
子の一つかもしれない。
F‒33
ヒト細胞上に発現した Neu5Gc はインフルエンザウイルスの感染を抑制する
1
2
3
静岡県大・薬, 広島国際大薬, JRA
1
1
2
2
3
1
○紅林佑希 ,高橋忠伸 ,大坪忠宗 ,池田 潔 ,山中隆史 ,鈴木 隆
【目的】 インフルエンザウイルスのレセプターとして知られるシアル酸には、N -アセチルノイラミン
酸(Neu5Ac)と N -グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)の 2 種類の分子種がある。ウイルスレセプター
の研究は主に Neu5Ac をターゲットに行われているが、当研究室ではこれまでに Neu5Ac と Neu5Gc
両方のシアル酸に結合できるウイルスの存在を明らかにしてきた。本研究では、これらのウイルスが
Neu5Gc をレセプターとして利用できるかどうかを検討した。
【方法】 Neu5Gc 生合成に必須な CMP-Neu5Gc 合成に関わる CMP-Neu5Ac 水酸化酵素(CMAH)を
欠損したヒト細胞に対して、サル CMAH 遺伝子を導入することで Neu5Gc 高発現ヒト細胞を作製した。
Neu5Gc 高発現ヒト細胞の Neu5Gc 量を、HPLC を用いて定量した。Neu5Gc 高発現ヒト細胞とその親
細胞株を用いて Neu5G 結合性を有するウイルスと Neu5Gc 結合性を示さないウイルスの感染性を比較
した。さらに、Neu5Gc 結合性を有するウイルスから遺伝子変異により Neu5Gc 結合能を欠損させたウ
イルスを作製し、両ウイルスの感染性を比較した。
【結果】 Neu5Gc 高発現ヒト細胞の Neu5Gc 量は親株に比べて約 11 倍に増加していた。Neu5Gc 高発
現により Neu5Gc 結合ウイルスの感染性の低下が見られた。Neu5Gc 非結合ウイルスでは、Neu5Gc
高発現による感染性の低下は見られなかった。遺伝子変異により Neu5Gc 結合能を欠損させることで
Neu5Gc 高発現による感染性の低下が見られなくなった。
【考察】 Neu5Gc 高発現により Neu5Gc に結合するインフルエンザウイルスの感染性は低下した。この
現象は Neu5Gc に結合できないウイルスでは見られないことから Neu5Gc への結合が感染性の低下を起
こしたことを示唆する。インフルエンザウイルスはレセプターに結合後、エンドサイトーシスを介して
細胞内へ侵入すると考えられている。Neu5Gc はウイルス感染において、ウイルスが結合した後の細胞
侵入の過程が起こらない偽レセプターとして機能していることが示唆される。
F‒34
新規糖尿病モデルマウスにおける β 細胞形質の解析
1
静岡県大・薬
1
1
1
1
1
○石渡千裕 ,金子雪子 ,佐藤太治 ,中山貴寛 ,石川智久
一 般 講 演
【目的】 2 型糖尿病においては、インスリン抵抗性により血糖値が上昇する結果、その代償期にインス
リン不足を補うために、β 細胞の過形成が引き起こされる。しかしながら、その具体的なメカニズム
については知られていない。我々は、インスリン受容体拮抗ペプチドである S961 を持続投与することで、
インスリン抵抗性を引き起こし、代償的に β 細胞が増殖する新規糖尿病モデルマウスを作成し、その
形質を解析した。
【方法】 C57BL/6J 雄性マウス(8 週齢)の後背部の皮下に、S961 溶液あるいは溶媒のみを充填した浸
透圧ポンプを埋込み、一週間にわたり持続投与した。術前および術後 1 日目から 7 日目までの体重およ
び血糖値を、毎日測定した。7 日目にインスリン負荷試験を行い、インスリン抵抗性の評価をした。7
日目あるいは 8 日目の体重・血糖値測定後、門脈血より血漿サンプルを作成し、血中インスリン量を測
定した。また膵全摘出し作成した凍結ブロックをサンプルとし、免疫染色を行った。さらに膵島をサン
プルとして RNA を抽出し、real-time PCR にて遺伝子発現を解析した。
【結果および考察】 S961 投与群の体重は溶媒投与群と比較して差は認められなかったものの、血糖値
は S961 投与群で術後1日目に有意に増加し、術後 7 日目には著しい血糖値の上昇を観察した。また、
インスリン負荷試験により、S961 投与群はインスリン抵抗性を生じていることが確認された。S961 投
与群は溶媒投与群と比較し、血漿インスリン値が有意に高値を示した。さらに、細胞周期促進因子であ
る Ccnd1 の発現は有意に増加した一方、抑制因子である Cdkn1b の発現は有意に減少した。すなわち、
S961 持続投与によるインスリン抵抗性の代償として細胞周期関連遺伝子の発現が変動した結果、β 細
胞が増殖し、血中へのインスリン分泌が増大していることが示唆された。さらに、β 細胞機能に関わ
る遺伝子の発現を検討した結果、
Glut2 の発現量が溶媒投与群と比較して減少していた。以上の結果から、
S961 投与群においては、Glut2 の発現減少に伴い、インスリン分泌機能も障害されている可能性が示さ
れた。このモデルは 2 型糖尿病代償期における β 細胞過形成の機序を解明するのに有用なモデルである。
120
G‒01
電子カルテ情報を用いた自動的スクリーニングによるHBV再活性化対策
1
2
3
4
5
沼津市立病院 薬剤部, 同検査科, 同医事課, 同呼吸器内科, 同消化器内科
1
1
2
2
3
4
○近藤昌子 ,真野 徹 ,川口詳司 ,工藤早苗 ,高橋由佳 ,下村 巌 ,
5
1
篠崎正美 ,野毛一郎
【目的】 免疫抑制・化学療法によりB型肝炎ウイルス(HBV)が再活性化した場合は、劇症化の頻度
や死亡率が高く、ガイドラインも作成されている。しかし医療者に周知されるまでには至っておらず、
十分な検査が行われていないのが現状である。当院ではHBV再活性化を未然に防止するために、多職
種チームを編成して、自動的にスクリーニングするシステムを構築したので報告する。
【方法】 添付文書にHBV注意の記載がある薬剤をスクリーニングの対象とした。その中で、ステロイ
ド薬については、累計投与量が多い場合のみ対象となるように基準値を設定した。対象となる薬剤につ
いて、日本肝臓学会の作成した「B型肝炎対策ガイドライン」に沿った警告を出すために、検査値の条
件とそれに対応する警告文を設定した。多職種で構成するB型肝炎再活性化防止委員会を組織して、該
当する医師に対して 1 回/月の頻度で、未検査患者リストの一覧を配布して注意を促した。電子カルテ
情報から自動的にスクリーニングするためのシステム構築については㈱SBS情報システムに依頼し
た。
【経過】 平成 26 年 7 月から運用開始して以下が明らかとなった。利点)自動的にスクリーニングする
ため、簡便で、作業者の拘束時間が短く、患者の見落としが無い。検査の必要性を医師に啓発すること
ができた。病院として組織的な対策を行うことで強制力が生まれた。欠点)主治医が転勤した場合や入
院と外来で異なる場合など、自動的にスクリーニングできないことがある。良性疾患に対するステロイ
ド単独療法の場合は、HBV再活性化を懸念した治療拒否がある。継続治療が不要な疾患では定期的な
血液検査が難しい。
【考察】 化学療法によるHBV再活性化には注意が必要だが、添付文書に記載していない抗悪性腫瘍剤
は多い。現在はスクリーニングしていない抗悪性腫瘍剤への対象拡大が課題である。また、ステロイド
薬と再活性化の基準が明確ではないため、累積投与量の設定とスクリーニング条件を再検討する必要が
ある。
G‒02
前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤タダラフィルの適正使用に対する事前調査
岐阜市民病院薬剤部
1
1
1
1
1
1
○馬淵温子 ,梅田 道 ,甲田明英 ,小林寛子 ,牧野哲平 ,青山 智 ,
1
1
水井貴詞 ,後藤千寿
1
121
一 般 講 演
【目的】 ザルティア錠®(一般名:タダラフィル)は、選択的ホスホジエステラーゼ 5 阻害作用を有す
る前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬である。硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセ
リン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)との併用が禁忌となっているため、ザルティア錠®を処方
する際には問診を詳細に実施することにより、診療履歴・薬歴等を十分把握することが重要である。
そこで、ザルティア錠®の危険性を予測するために、岐阜市民病院(以下当院)の前立腺肥大患者のう
ち硝酸剤又は NO 供与剤を使用している患者数を調査した。また、現在は硝酸剤又は NO 供与剤を使用
していないが、将来使用する可能性がある疾患(狭心症)を合併している患者数も調査した。
【方法】 2013 年 3 月 1 日〜 2014 年 2 月 28 日の期間に当院を受診した前立腺肥大の疾患を持つ患者の
人数を調査し、そのうち当院採用の硝酸剤又は NO 供与剤を使用している患者及び狭心症を合併してい
る患者の人数をそれぞれ調査した。
【結果】 前立腺肥大の疾患を持つ患者は 362 人であり、そのうち硝酸剤又は NO 供与剤を使用している
前立腺肥大患者は 38 人であった。また、狭心症を合併している患者は 60 人であった。
【考察】
前立腺肥大患者のうち硝酸剤又は NO 供与剤を使用している割合は 10.5%、また、硝酸剤又は
NO 供与剤を使用していない狭心症患者の割合は 16.6% であり、合計すると 27.1% とかなり多いことが
分かった。狭心症を合併している患者全員が禁忌に該当する訳ではないが、ザルティア錠®を処方する
際には循環器内科への受診履歴・薬歴等の患者問診を詳細にするように医師に情報提供する必要がある。
また、医薬品の採用品目は病院により異なっているため、自施設の泌尿器科医師と協力して、ザルティ
ア錠®処方時の問診票やチェックリスト等を作成する必要があると考えられる。
G‒03
大垣市民病院における病棟薬剤師によるプレアボイド報告の調査
1
大垣市民病院 薬剤部
1
1
1
1
1
1
1
○橋本茉緒 ,高田裕子 ,中島啓二 ,森 卓之 ,鈴木宣雄 ,大橋健吾 ,西川智子 ,
1
1
1
1
1
1
栗林未帆 ,森 光輝 ,篠田康孝 ,廣瀬達也 ,大月千祐 ,森 博美
【目的】 大垣市民病院薬剤部では、2013 年 4 月から病棟薬剤師のプレアボイド報告を積極的に収集し
集計する体制を構築した。今回我々は、2013 年度における病棟薬剤師によるプレアボイド報告から、
病棟業務の環境がプレアボイド件数とその内容にどのような影響を与えるかについて解析を行った。
【方法】 当院における 2013 年 4 月から 2014 年 3 月までの病棟薬剤師によるプレアボイド報告を解析し
た。病棟業務時間が 6 時間の薬剤師を A グループ、4 時間の薬剤師を B グループ、3 時間の薬剤師を C
グループ、2 時間の薬剤師を D グループとし、各病棟薬剤師の病棟業務時間数ごとのプレアボイド件数
やその内容を検討した。
【結果】 10 時間当たりの平均プレアボイド報告数は A グループで 0.42、B グループで 0.19、C グルー
プで 0.14、D グループで 0.12 となり、病棟業務時間数が多いほど増加した。また、薬剤管理指導件数
100 件あたりの平均プレアボイド報告数は A グループで 4.2、B グループで 3.3、C グループで 1.4、D グルー
プで 1.0 となり、病棟業務時間数が多いほど増加した。内容としては、病棟業務時間数が多いほど、重
複投与の回避や疾患に対する投与禁忌薬の使用回避などの重大なミスに対するプレアボイドが多かっ
た。
【考察】 薬剤師によるプレアボイドの中には重大な副作用の回避につながると考えられるものも多く存
在し、薬剤師が病棟業務に多くの時間を割くことで、より多くの患者を医薬品の不適切な使用から守る
ことが出来ると考えられる。今後はプレアボイド報告をさらに収集し、広く周知することで質と量の向
上に努めたい。
G‒04
当院における医薬品副作用報告の解析
1
聖隷三方原病院薬剤部
1
1
1
○加賀正基 ,北野谷美保 ,柴山芳之
一 般 講 演
【目的】 薬剤師の職務として医薬品の適正使用・副作用のモニタリングは、病棟薬剤業務実施加算が新
設された現在、特に重要性を増してきていると考えられる。当院では 2002 年より副作用報告用紙を用
いた副作用情報の管理を行っており、それをもとに副作用カードの作成・電子カルテへの登録を行って
いる。今回そのデータを分析し当院における副作用報告の傾向の解析を行った。
【方法】 調査期間は 2009 年 1 月~ 2013 年 12 月までの計 5 ヵ年とした。副作用報告用紙、およびデー
タベース(Excel 形式)より起因薬剤・副作用症状・グレード・発症までの期間、報告診療科、報告医
について集計・分析した。
【結果】 5 ヵ年における副作用報告件数は 751 件(薬剤数 964 剤、発行カード 671 枚)であった。報告
診療科として最も多かったのは整形外科で、5 ヵ年で 117 件の報告があった。次いで、総合診療内科(73
件)、呼吸器内科(62 件)であった。報告医としては実人数として 238 名、1人あたり最大 32 件の報
告がみられた(平均 3.1 件)。報告された副作用のうちグレード 1 は 27.2%、2 は 42.4%、3 は 16.7%、不
詳(自己申告等)が 13.5% となった。起因薬剤としては抗生物質が最も多く(34.4%), 次いで中枢神
経系用薬(25.3%), 循環器官用薬(8.8%)であった。副作用症状で最も多かったものは過敏症(皮膚:
46.1%, 全身性:11.1%)で、次いで肝障害(10.1%), 精神神経系(6.9%), 消化器障害(6.7%)であり、
腎障害は 1.8% と少なかった。皮膚過敏症の割合の高い抗生物質・NSAIDs では副作用症状発生期間が
短く(平均 4.77 日, 7.65 日)、肝障害の割合の高い循環器官用薬、代謝性医薬品は比較的長期であった(平
均 90.2 日, 34.4 日)。
【考察】 当院における副作用報告からも起因薬剤、副作用症状および発生期間に特徴があることが示唆
された。これより、副作用予防の指導および副作用発生時の原因薬剤の推察に応用できると考えられる。
一方で医師・薬剤師により副作用報告の基準が異なり、報告数に偏りが生じている可能性が示唆された。
今後この結果をもとに、副作用報告制度の周知を徹底していきたい。
122
G‒05
調剤過誤に対する当院の取り組み
~再発防止に繋げることへの難しさ~
1
2
鈴鹿回生病院 薬剤管理課, 同医療安全管理課
1
1
1
1
2
1
○堀部 緑 ,青 孝明 ,近藤智彦 ,山川恵子 ,寺田雄亮 ,木村匡男
【目的】 当院では、鑑査時に発見された調剤過誤について件数の把握は行っていたが、それを活用した
対策が行われていなかった。そこで今回、調剤過誤のデータをより詳細に収集・把握し、対策を行った
ので報告する。
【方法】 調剤過誤発生時に、調剤過誤の詳細を収集・把握できるマニュアルを作成した。緊急性のある
調剤過誤については、朝礼にて薬剤管理課内職員に周知させるとともに、月毎に集計したデータを当事
者に通知した。また、調剤過誤を注射薬、内服薬に分類し、各担当者に情報のフィードバックを行った。
今回、マニュアルの有用性を評価するために、マニュアル作成前後 1 年間における薬剤管理課内のヒヤ
リハット報告件数の比較を行った。さらに、今回作成したマニュアルについてアンケートを行った。
【結果】 マニュアル作成前後のヒヤリハット報告件数は、作成前 31 件 / 年、作成後 32 件 / 年と変化は
なかった。アンケート結果は、調剤過誤の詳細な情報を記入するのが面倒ではあるが、他の人の間違い
を共有できるなど、調剤過誤防止に対して有用であるとの回答が多かった。
【考察】 マニュアル作成前後でヒヤリハット報告件数は変わらなかったが、マニュアルを作成すること
で、「自分のよく間違える傾向が分かり、対策を立てやすくなった」、「同じ間違いを繰り返さないよう
になった」などの意見もあり、このマニュアルは有用であると考えられた。今後も継続してデータを収
集し、それを積極的に調剤過誤防止に活用することで、ヒヤリハット報告件数の減少、さらには医療の
質の向上に繋げていきたい。
G‒06
薬剤師および看護師を対象とした注射薬に関わる診療材料における
体験型安全対策研修会の実施
1
一宮市立市民病院薬剤局
1
1
1
1
1
○杉浦あゆみ ,桜田宏明 ,細川健一 ,山田直克 ,山村益己 123
一 般 講 演
【目的】 当院では薬剤師が病棟で注射薬を調製しているが、配合変化等に注意して調製した注射薬も、
患者へ投与する際に診療材料の誤使用や不具合によって薬効を低下させてしまうこともある。薬剤師の
病棟常駐が可能となった今、薬剤師もチーム医療の一員として注射薬の投与に関連した診療材料の使用
方法や材質および特性、注意点などを理解しておくことが必要である。そこで、薬剤師および看護師を
対象とした注射薬に関わる診療材料における体験型安全対策研修会を実施した。
【方法】 薬剤師および看護師を対象とし、月 1 回 1 時間程度、テルモ株式会社の協力を得て、薬剤局主
催の体験型研修会を全5回実施した。本研修会は、参加者全員が、診療材料を用いて事故につながりか
ねない事象を体験するもので、シリンジや輸液セットなどの汎用医療機器の添付文書に記載された注意
事項を体験しながら理解する研修プログラムとした。各回の研修終了後にアンケート形式で参加者の満
足度調査を行った。
【結果】 アンケート調査の結果、回答率 100% のうち、「満足」「やや満足」と回答した参加者は第5回
を除いて、薬剤師、看護師ともに 80% 以上であり、“体験型だったので分かりやすかった” という内容
のコメントが数多く寄せられた。また、来年度以降に同様の研修会が開催される際の参加意向を確認し
たところ、薬剤師では全ての回で 90% 以上の参加意向が認められた。
【考察】 第 5 回研修会を除いて 80% 近くの満足度が得られており、総合的に有意義な研修が行えたと
考えられる。また、参加者から寄せられたコメントより、体験型の研修は参加者の理解を助けるのに非
常に有効であったと考えられる。しかし、職種間で知識量の差が大きい診療材料もあるため、研修内容
によって合同研修の適否、内容吟味が必要であることが分かった。今後も同様の研修を実施していくこ
とは、スタッフの診療材料に関する知識の向上と、安全対策において非常に有効であると考えられる。
G‒07
診療報酬改定に伴う向精神薬外来処方整理の流れについて
1
医療法人社団 進正会服部病院 薬局
○松井美由紀 【目的】 平成 26 年度診療報酬改定では、「1回の処方において、3 種類以上の抗不安薬、3 種類以上の
睡眠薬、4 種類以上の抗うつ薬又は抗精神病薬を投与した場合(以下「向精神薬多剤投与」という。)、
精神科継続外来支援・指導料は算定できないこととし、処方せん料、薬剤料については減算する。」となっ
た。当院では、本年 3 月下旬に、当院医局及び事務長に対して、向精神薬多剤投与による副作用リスク
等患者への不利益と、減算による病院の減収を示し、医局及び事務長の同意が得られ、薬剤師主導で処
方整理を行ったので経過を報告する。
【方法】 平成 26 年 4 月~ 9 月までに受診した外来患者を対象とし、向精神薬多剤投与該当者のカルテ
に抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の薬剤名及び種類数を記し、処方提案を記載して翌月外来
受診時までに医師へ確認。外来診察の際、患者へ処方薬整理の旨を伝えてもらうこととした。なお、本
調査は向精神薬多剤投与に係る報告書に基づき実施した。
【結果】 向精神薬多剤投与となった患者数は、4 月 104 名、5 月 73 名、6 月 49 名、7 月 43 名、8 月 24
名と順調に減少した。薬剤師の職能を活かし、向精神薬の適正使用につなげることが可能であった。抗
不安薬、睡眠薬減薬に関してクレームは皆無であった。抗精神病薬に関しては、急激な減量により症状
悪化が懸念される為本期間では目標到達には至らなかった。抗うつ薬に関しては、同効薬併用例を整理
することで減薬につながった。
【考察】 診療報酬改定は、漫然投与している薬剤を見直す良い機会となった。薬剤師が処方介入するこ
とにより、向精神薬多剤投与の減量に大いに貢献できた。各医師に減点数を具体的に提示することによ
り(処方せん 1 枚あたりマイナス 380 円)、コスト意識を持たせることができた。今後の課題として、
入院中から退院時処方を意識した処方介入を行い薬物療法及び適正使用に積極的に関わることが責務で
ある。
G‒08
市販データベースソフトを利用したDI業務サポートシステムの構築と業務の効率化
~薬事委員会業務を中心に~
1
半田市立半田病院 薬剤科
1
1
1
1
○横田 学 ,田中尚美 ,野田直人 ,村上照幸 一 般 講 演
【目的】 当院ではDI業務を円滑かつ効率よく行うために MS-ACCESS を利用してDI業務サポート
システムを構築した。今回、システムを改良し、薬事委員会のデータ作成の効率化を図ったので報告する。
【方法】 1)開催までの準備 システムに申請区分、薬品名、申請医、申請理由、販売メーカー、薬価、
納入価、納入業者、採用中止薬品などのデータを入力。次に、カルテから抽出した薬品使用量のデータ
を取り込む。以上により、委員会当日に使用するパワーポイント用データの出力、委員会開催時に配布
する申請区分別の審議薬品リスト、納入業者別薬品リスト、議事録作成用のハンドアウトが作成できる。
2)開催後の処理 システムに審議結果を入力。以上より、議事録のプレデータ、薬剤科用の審議結果
速報、DIニュース用のプレデータが作成できるので、議事録、審議結果速報にコメント等を書き足し
PDFに出力。審議結果速報は薬剤科のホームページにて閲覧可能。採用となった薬品については粉砕・
簡易懸濁の可否、溶解後の安定性などのデータを追加し、薬剤科ホームページにアップする。
【結果】 システムの活用により、データ作成にかかる時間を大幅に削減できた。特に、審議結果の議事
録、審議結果速報の作成は 1 時間ほどで終わるので、当日中には結果が閲覧可能となった。粉砕・簡易
懸濁の可否についてもワンクリックでホームページの更新ができるようになっており、メンテナンスが
容易となった。
124
G‒09
実務実習における問題点の抽出 ―薬剤管理課スタッフ対象アンケートより―
1
2
社会医療法人峰和会鈴鹿回生病院 薬剤管理課、 同医療安全管理課
1
2
1
○片桐左希子 、寺田雄亮 、木村匡男
【目的】 実務実習を継続的に受け入れるために、実務実習指導薬剤師は薬剤管理課内スタッフ(以下、
スタッフと略)の理解と協力を得る必要がある。今回、スタッフが抱えている問題点(日常業務への影
響、指導担当薬剤師の負担、学生とのコミュニケーション等)を実務実習指導薬剤師が把握する目的で
アンケート調査を行なった。
【方法】 平成 24 年度 2 期、3 期、平成 25 年度 2 期、3 期の各実習終了後にスタッフ(内訳:薬剤師 16
名、補助員 4 名)を対象に記名式アンケートを行った。質問項目は平成 23 年度愛知県実務実習合同報
告会で報告されたアンケートを参考にした。「実習生を受け入れた感想・複数名を受け入れた感想」、「学
生の取り組み姿勢」、「学生の成長」の項目は五段階で数値化した。「業務との両立」、「体調管理」、「実
習カリキュラム」、「ハラスメント」の項目は自由記載とし問題点の抽出を行った。
【結果】 「複数名を受け入れた感想」の項目において学生数が 1 名から 4 名へ増加するに伴い 3.41、3.00、
2.53、2.22 へ低下した。抽出された問題点は「チーム医療の参加時期が 1 週目では時期尚早」、「学生の
帰宅時間が遅く学生に疲労が見られる」、「薬剤管理指導件数の減少」、「プロダクト・症例スライド作成
の完成度」、「学生の態度への注意方法」等であった。ハラスメントの報告は無かった。
【考察】 今回の結果から得られた問題点を実習開始前にスタッフに公開し、チーム医療導入講義の設置、
終了時刻を決めることによる時間外実習の回避、薬剤管理指導業務を他の薬剤師へ分担、プロダクト等
作成締め切りの早期設定、コーチング研修受講等対策を行った。今後も継続して対策と調査を行い、多
人数受入れ時にもスタッフ・学生共に有意義な実習を行えるよう対応していきたい。
G‒10
三重大学医学部附属病院における精神科神経科病棟実習での取り組みと今後の課題
2
三重大学医学部附属病院薬剤部、 鈴鹿医療科学大学薬学部
1
1
2
1
1
1
佐々木典子 、池村健治 、三輪高市 、村木優一 、岩本卓也 、奥田真弘
1
125
一 般 講 演
【目的】 近年、精神科薬物療法における薬学的管理の必要性が認識され、精神科薬物療法を担う薬剤師
の養成が喫緊の課題となっている。三重大学医学部附属病院(当院)では、2014 年度第Ⅰ期実務実習
において初めて精神科神経科病棟の実習を導入した。精神科の患者と病棟並びに精神科薬物療法に対す
る薬学生の理解度と実習の成果をアンケート調査により把握するとともに、今後の実習構築における課
題の抽出を図った。
【方法】 2014 年度第Ⅰ期実務実習生 10 名を対象とした。実習プログラムは、精神科実習前後の精神科
領域に関する small group discussion、精神科専門薬剤師による薬物療法の講義、病棟実習で構成した。
病棟実習では、1 組 2 〜 3 名の実習生が 2 名の統合失調症患者に対して 1 患者あたり 30 分程度の服薬
指導及び副作用管理を経験した。実習前後には、精神科疾患患者及び精神科病棟に対する印象、精神科
薬物療法の知識等について、予め列挙した項目から 3 個まで選択させる形式、または自由記載によるア
ンケート調査を行い、集計並びに解析を行った。
【結果・考察】 実習前に精神科疾患患者に関わったことがある実習生は 2 名であった。精神科疾患患者
への応対に不安を挙げた実習生は、実習前の 8 名から実習後は 3 名まで減少した。精神科疾患患者と病
棟に対する印象を選択肢の中から選ばせたところ、学生がネガティブな選択肢を選んだ割合は、精神科
疾患患者については実習前 87.5% と実習後 87.0% で変化がなかったが、精神科病棟については実習前の
84.2% から実習後は 32.0% まで顕著に減少し、実習を経験することで精神科病棟に対する印象が顕著に
改善したものと考えられた。一方で、精神科薬物療法で用いられる薬剤に関する理解度は、実習前後で
10 名中 6 名に変化がみられず成果は限定的であった。以上より、当院の精神科神経科病棟における実
習の導入は、精神科病棟に対する学生の印象に一定の改善効果をもたらしたが、実習の成果を高めるに
は、薬物療法に関する情報収集や患者面談にかかる時間確保など、プログラムの充実を図る必要性が明
らかになった。
G‒11
地域薬剤師会との在宅訪問薬剤指導依頼・運用方法の構築
~入院から在宅への移行 1 例を通じて~
1
2
3
総合病院 中津川市民病院 薬剤部, 同 看護部, 同 循環器内科,
4
5
ハロー薬局 加子母店, 岐阜県薬剤師会
1
4
5
1
2
1
3
花田伸子 ,西野義彦 ,曽我望武 ,幸脇正明 ,大山孝子 ,小木曽正輝 ,林 和徳
【はじめに】 当地域薬剤師会(恵中薬剤師会)では、在宅患者訪問薬剤管理指導を推し進めるため、在
宅医療推進委員会を立ち上げ、研修会開催などに取り組んでいる。今回、一症例を通じ、退院決定直後
からの受け入れ薬局との連携により、円滑な在宅移行と指導依頼・情報提供などの運用方法が構築でき
たので報告する。
【症例・患者背景】 56 歳女性。肺高血圧症末期。軽度発達障害があり、認知症の母親と二人暮らし。
大学病院からの転院後しばらく当院で入院治療を行っていた。入院中の内服管理は、お薬カレンダーを
病棟薬剤師がセットすることにより自己管理できるレベルであった。これ以上、入院による治療の効果
が認められないため、在宅での療養をすることとなった。しかし、お薬カレンダーへのセットは剤数や
用法が多く、自己でのセットは厳しいと判断、在宅訪問薬剤指導を依頼することとなった。当時、病院
側には在宅患者訪問薬剤管理指導依頼実績はほとんど無く、受け入れ薬局の体制も十分でなかったため、
今後同じような症例がある場合のルール作りを並行して行った。
【結果・考察】 薬局薬剤師が 1 週間に 1 回の訪問時に薬のセットを行う事で、自宅での療養が可能となっ
た。また、訪問時に、バイタル、体重などの計測を行い、医師に報告することで次回診察時に適切に投
与量の調節が行えた。このような実績から、医師、退院調整看護師の理解を得られ、当院の在宅患者訪
問薬剤管理指導依頼手順の構築ができた。また、在宅医療研修会を通じ、顔のみえる関係作りができる
ようになったことは、今後のさらなる連携強化に大いに役立つと考える。今後は、かかりつけ薬局が在
宅医療へ対応できる体制作りに薬剤師会とともに取り組みたい。
G‒12
病院採用薬変更に伴う門前薬局における後発医薬品調剤率の変化および患者の反応に
ついて
1
2
3
杏林堂薬局 労災病院前店、 薬局フォーリア 将監店、 浜松労災病院 薬剤部
1
1
1
2
3
1
○富田淑美 、岡田まり子 、城戸口有美 、松野恒夫 、菅野和彦 、前嶋克幸
一 般 講 演
【目的】 年々増加する国民医療費の削減は、人口減少・少子高齢化および生産年齢人口・労働力人口の
減少が急速に進展している我が国において重大な課題である。医療費の中で、薬剤費は後発医薬品を使
用することにより効能・使用量を変えずに縮小できることから、現在、病院・薬局では後発医薬品の使
用促進が求められている。これまで診療報酬改定を経て、薬局の調剤報酬においても後発医薬品の普及
策が実施されてきたが、実際の処方箋調剤における後発医薬品の調剤率は薬局の努力のみでなく、その
処方薬と処方医・患者の意志に依存する。今後の後発医薬品の普及を目的とし、本研究では病院採用薬
と後発医薬品の調剤率の関係を分析するとともに、その変更が及ぼす患者への影響を評価することとし
た。
【方法】 平成 26 年度診療報酬改定によって新たに導入された後発医薬品指数は DPC 対象病院の経営
に大きく影響を与える。当薬局は浜松労災病院の門前薬局である。浜松労災病院では、平成 26 年 8 月
31 日までに 3 月 27 日を第 1 回として 4 回に渡り、計 54 品目の採用薬を後発医薬品へ変更した。これ
に伴う当薬局を含む門前薬局の後発医薬品調剤率の変化を追跡した。また、変更の過程における患者の
反応を調べるために、当薬局の新規来局患者を対象とした患者アンケート、門前薬局スタッフを対象と
したアンケートを実施した。
【結果・考察】 浜松労災病院の 54 品目の採用薬が後発医薬品へ切り替わったことに伴い、当薬局にて
平成 26 年に 3 月(1 か月)で 43.29% であった後発医薬品調剤率(新指標)は 8 月の 61.34% に上昇し、
採用薬の後発医薬品への大幅な変更は門前薬局の後発医薬品調剤率を劇的に上昇させた。また、調剤薬
の変更時に患者の理解を得ることは一番重要な課題である。当薬局の新規患者では、処方箋通りの薬剤
を使った調剤を希望する患者が多いことが患者アンケートから判明した。患者が後発医薬品の使用に不
安を訴えて疑義照会で先発医薬品に変更した事例、門前薬局スタッフを対象としたアンケートの結果も
合わせて報告する。
126
G‒13
ヒストン脱アセチル化酵素 HDAC9 が相互作用するハンチントン病関連因子 HAP1
の領域の解析
1
名市大・薬
1
1
1
1
○山口桃子 ,市岡香貴 ,今川正良 ,長田茂宏
【目的】 histone deacetylases(HDACs)はヒストンの脱アセチル化によりクロマチンの構造変換を引
き起こし、標的遺伝子の転写を抑制する。また、HDACs はヒストン以外のタンパク質を基質とするこ
とも報告されている。当研究室では、アミノ酸配列の類似性からクラス IIa に分類される HDAC9 と相
互作用する因子として、huntingtin associated protein 1(HAP1)を同定し、昨年度の本合同大会で発
表した。本研究では、HDAC9 と HAP1 の相互作用様式の詳細を明らかにするために、HDAC9 が相互
作用する HAP1 の領域の同定を行った。
【方法】 Flag タグ融合 HAP1 部分欠損体を作製し、HeLa 細胞における細胞内局在を調べた。続い
て、Myc タグ融合 HDAC9 とともに HeLa 細胞に導入し、免疫沈降法および免疫染色法により、相互
作用および細胞内局在変化を解析した。また、大腸菌により発現させた GST 融合 HAP1 部分欠損体と
HeLa 細胞に発現させた Myc-HDAC9 を用いて、GST-pulldown 法による相互作用解析を行った。
【結果・考察】 免疫沈降法を用いた解析により、HDAC9 は HAP1 の中央領域および C 末端領域と相
互作用することが明らかとなった。HeLa 細胞に導入した HAP1 は細胞質に存在し、封入体を形成する。
HDAC9 と HAP1 を共発現させると、単独では主に核に局在する HDAC9 が細胞質にも存在し、その
一部は封入体において HAP1 と共局在する。HAP1 の中央領域も細胞質に存在し、封入体を形成した。
HDAC9 を HAP1 の中央領域と共発現させたとき、HAP1 の全長と共発現させたときと同様の HDAC9
の細胞内局在変化が観察された。また、HDAC9 は大腸菌により発現させた HAP1 とも相互作用した。
このことから、HDAC9 または HDAC9 を含む複合体は HAP1 と直接相互作用することが示された。以
上から、HAP1 の中央領域が HDAC9 との相互作用において重要であると考えられた。今後は、HAP1
中央領域との結合を介して、HDAC9 が HAP1 のアセチル化状態に与える影響、および HAP1 の機能
に対する HDAC9 の関与を解析する。
G‒14
肝細胞肥大と薬物代謝酵素誘導の関連性の解析
2
東北大薬, 静岡県大薬
1,2
1
1,2
○中島宏之 ,松沢 厚 ,吉成浩一 1
127
一 般 講 演
【目的】 肝臓は様々な化学物質に曝露されやすい臓器の 1 つであり、肝臓への化学物質の曝露により肝
細胞肥大とそれに伴う肝肥大がしばしば認められる。肝細胞肥大は、多くの場合化学物質の曝露を中止
することで消失することから、肝臓の異物曝露に対する適応反応と考えられている。そのため詳しく解
析されておらず、肝細胞肥大の発現機序や毒性学的意義は不明である。しかし近年、肝肥大と肝がんと
の関連性も示唆されていることから、化学物質の安全性評価において肝細胞肥大の毒性学的理解が必要
となっている。これまでに肝細胞肥大は薬物代謝酵素誘導に伴い起こることが示唆されている。薬物代
謝酵素誘導には異物応答性の転写因子である AHR、CAR、PXR および PPARα が中心的に働いている。
以上のことから、肝細胞肥大の発現は、上記転写因子を介している可能性が考えられた。そこで本研究
では、肝細胞肥大の発現機序を明らかにする一環として、肝細胞肥大を起こす化学物質のこれら転写因
子に対する作用を評価した。
【方法】 ラットの AHR、CAR、PXR および PPARα のレポーターアッセイ系を構築し、ラットで小
葉中心性肝細胞肥大を起こす化学物質と起こさない化学物質の評価を行った。統計学的・情報科学的解
析は、Prism および R を用いて行った。
【結果】 肝細胞肥大を起こす化学物質のほとんどは、評価したいずれかの転写因子を活性化させた。カ
イ二乗検定の結果から、単独の転写因子の活性化作用と肝細胞肥大との有意な関連性は認められなかっ
た。しかし、分類モデルである決定木を用いて解析したところ、肝細胞肥大の発現を上記転写因子の活
性化作用に基づき感度よく説明することができた。
【考察】 本研究の結果から、薬物代謝酵素誘導と小葉中心性肝細胞肥大との関連性が強く示唆された。
G‒15
心筋細胞肥大におけるヒストンアセチル化修飾を介したエピジェネティックな
制御機構の解析
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1, 2
2
2
2
○船本雅文 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,
1, 3
森本達也
【目的】 我々は、ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を持つ p300 が心筋特異的転写因子 GATA4 を
アセチル化し、心筋細胞肥大を引き起こすことを見出した。近年、p300 によるヒストンの新規アセチ
ル化修飾部位として報告された H3K122 はテールドメインに存在する H3K9 や H3K14 とは異なり、ヒ
ストンの球状ドメインに位置しており、H3K122 のアセチル化はヒストン -DNA の結合を減弱させるこ
とで遺伝子の転写を活性化する。このように、ヒストンの翻訳後修飾は遺伝子の発現調節に深く関与し
ているが、心筋細胞肥大反応での役割についての詳細は不明である。そこで、本研究では p300 による
ヒストンテール・球状ドメインのアセチル化を介したエピジェネティックな転写制御起機構を検討した。
【方法 & 結果】
ラット初代培養心筋細胞にフェニレフリン(PE)刺激を与えるとテールドメインの
H3K9、H3K14 だけでなく球状ドメインの H3K122 のアセチル化が増加していた。これらの変化は p300
特異的 HAT 阻害剤であるクルクミン処理によって、有意に抑制された。次に、クロマチン免疫沈降法
で ANF や BNP の GATA エレメントを含むプロモーター上の H3K9 や H3K122 のアセチル化を検討し
たところ、PE 刺激 4 時間後に有意に増加していた。また、心臓特異的 p300 過剰発現マウスの心臓で
は、野生型マウスと比較して心肥大を生じる。この p300 過剰発現マウスの心臓では、H3K9、H3K14、
H3K122 のアセチル化が著明に亢進していた。最後に、in vivo クロマチン免疫沈降法により p300 過剰
発現マウスの心臓では、野生型と比べて肥大反応因子プロモーター上の H3K9 や H3K122 のアセチル化
が有意に亢進していた。
【考察】 心筋細胞肥大時には肥大反応因子のプロモーター上で p300 によるエピジェネティックなヒス
トンアセチル化制御が行われていることが示唆された。今後、心不全病態モデルにおいてヒストンアセ
チル化制御を詳細に解明していくことで、心不全治療ターゲットの同定や治療薬の開発に繋がることが
期待される。
G‒16
天然物クルクミンは用量依存的に心筋梗塞後の心不全を改善させる
1
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1, 2
2
2
2
○宗野匠吾 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,
1, 3
森本達也 一 般 講 演
【目的】 当研究室では心肥大は心不全のリスクファクターであること、心不全の進展にはヒストンアセ
チルトランスフェラーゼ(HAT)活性をもつ p300 が重要な役割を果たし、p300 特異的 HAT 活性阻害
作用を持つクルクミンが心筋梗塞後の心不全の進展を抑制することを見出した。しかしながらクルクミ
ンの最適投与量については明らかになっていない。そこで、本研究の目的は、心機能改善効果を示すク
ルクミンの用量設定試験を行うことである。
【方法】 心筋梗塞による心機能低下モデルラットを作成するために雄性 SD ラットの左室前下行枝を結
紮し、コントロール群、クルクミン低・中・高用量(0.5、5、50mg/kg)投与群の 4 群にランダムに分け、
術後 1 週間後から 6 週間連日経口投与を行った。クルクミンの治療効果は心エコー検査や組織学的検査
にて評価をした。
【結果】 クルクミン投与前、全ての群において左室心機能や血圧に差はなかった。薬物投与 6 週後にお
いて、心筋梗塞手術により左室機能の指標である左室駆出率(FS)は低下するが(15.5%)、クルクミン
中用量(19.6%)、高用量(25.2%、p<0.05)で用量依存的に改善した。また心筋梗塞により増加した左
室 / 体重比や左室後壁厚の肥大はクルクミン中用量で減少傾向を示し、クルクミン高用量群で有意に減
少した(p<0.05)。また、個々の心筋細胞径、心筋細胞面積や血管周囲における線維化は心筋梗塞によ
り増悪するが、クルクミン投与により用量依存的に低減し、高用量群で有意であった(p<0.05)。
【考察】 心筋梗塞後の心不全の進展に対するクルクミンの治療効果は 5 ~ 50mg/kg の用量でみられ、
最適投与量もこの範囲内に含まれることが示唆された。今後、臨床的に心不全に対してクルクミンを用
いるために、さらなる検討を行い、副作用の発現がなく、心機能改善効果を示す最適な投与量を設定す
ることが求められる。
128
G‒17
柑橘系由来天然物オーラプテンの心肥大抑制メカニズムの解明
1
2
3
4
静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1, 2
3
2
2
○鈴木美帆 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,村上明 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 4
長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 心不全はあらゆる心疾患の最終像であり、その発症過程には心筋細胞肥大や心筋エネルギー代
謝異常が関与している。これまでの研究で、我々はハッサク等の柑橘系果皮抽出物に含有しているオー
ラプテンが、初代培養心筋細胞や心筋梗塞モデルラットにおいて心筋細胞肥大反応を抑制し、心機能を
改善させることを見出したが、心筋細胞におけるオーラプテンの作用メカニズムは明らかになっていな
い。近年オーラプテンは核内受容体 PPAR のリガンドとして作用することが報告された。本研究では
オーラプテンが PPAR を介して心肥大抑制作用を示しているのかどうか検討することを目的とした。
【方法】
フェニレフリン(PE)刺激により心筋細胞が肥大する系に PPARα 阻害剤 MK886、PPARγ
阻害剤 GW9662 処理やオーラプテン処理を行い、β-MHC 抗体による免疫染色、細胞面積を測定する
ことによりオーラプテンの肥大抑制作用に対する各阻害剤の影響を調べた。またオーラプテン処理によ
る PPAR 下流遺伝子の活性化を初代培養心筋細胞から抽出した mRNA を定量化することで検討した。
【結果】 オーラプテン処理(10 μM)は PE 誘導性心筋細胞肥大を抑制するが、GW9662 処理を加えて
も変化がなかったのに対して MK886 処理を加えた場合ではオーラプテンによる肥大抑制効果がみられ
なかった。また心筋細胞へのオーラプテン処理は用量依存的(0.2-10 μM)に PPARα 下流遺伝子であ
る脂質代謝関連酵素 mCPT1、MCAD の mRNA レベルを亢進させ、MK886 処理はこれらの亢進を抑
制した。GW9662 処理を加えた場合では抑制がみられなかった。
【考察】 オーラプテンは心筋細胞では PPARγ ではなく PPARα の活性化を介して心筋細胞肥大を抑
制し、脂質代謝機能関連因子の発現を亢進させることで、心筋エネルギー代謝異常や心機能を改善させ
ることが考えられる。以上のことから、天然物由来のオーラプテンが新たな心不全治療薬となる可能性
が示唆された。
G‒18
転写因子 GATA4 のホモ 2 量体化形成におけるアセチル化の意義について
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
〇羽鹿成人 ,砂川陽一 ,依光奈津美 ,刀坂泰史 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
1
129
一 般 講 演
【目的】 心筋細胞の肥大や心不全の発症には、転写因子 GATA4 が重要な役割を担っている。GATA4
は同じ GATA ファミリーに属する GATA6 とヘテロ 2 量体を形成することで転写活性を調節している。
ヘテロ 2 量体化に必要なアミノ酸配列は相同性が高いことから、GATA4 はヘテロ 2 量体だけでなくホ
モ 2 量体も形成することで、転写活性を調節していると考えられる。そこで本研究では、GATA4 がホ
モ 2 量体を形成するかどうか、さらに GATA4 の翻訳後修飾によってホモ 2 量体形成が変化するかど
うか検討した。
【方法】 FLAG タグを付加した GATA4 と HA タグを付加した GATA4 または GATA6 を発現させた
HEK293T 細胞から核タンパクを抽出し、免疫沈降 - ウェスタンブロット(IP-WB)法にて GATA4 の
2 量体化を検討した。GATA4 の翻訳後修飾による 2 量体形成の変化を調べるために、ヒストンアセ
チルトランスフェラーゼ(HAT)活性を持つ p300 を HEK293T 細胞に共発現させ、IP-WB 法を行っ
た。p300 の HAT 活性によるホモ 2 量体形成への影響を調べるために、GATA4 のアセチル化部位を
アラニンに置換した変異体(GATA4 m456A)及び p300 のアセチル化活性欠失変異体(p300WY)を
HEK293T 細胞に共発現させ、IP-WB 法を行った。
【結果】 IP-WB 法により GATA4 は細胞内でヘテロ 2 量体だけでなく、ホモ 2 量体も形成していた。
また p300 を共発現させると GATA4 のアセチル化だけでなく、GATA4 のホモ 2 量体形成やヘテロ 2
量体形成も亢進した。しかし GATA4 m456A や p300WY を発現させるとホモ 2 量体形成は抑制された。
【考察】 GATA4 のアセチル化によってホモ 2 量体形成が亢進したことから、肥大反応因子の転写には
GATA4 のアセチル化だけでなく、GATA4 のホモ 2 量体形成も関与しており、GATA4 の 2 量体化が
心不全治療のターゲットになる可能性が示唆された。
G‒19
転写因子 GATA4 ホモ 2 量体化部位の同定および解析
1
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
〇依光奈津美 ,砂川陽一 ,羽鹿成人 ,刀坂泰史 ,鈴木秀敏 ,
2
2
2
1, 3
和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 心筋特異的転写因子 GATA4 は心筋細胞肥大反応や心不全の発症・進展に寄与している。同
じ GATA ファミリーに属する GATA1 のホモ 2 量体形成には Zinc Finger(ZF)ドメインが必要であり、
ホモ 2 量体化によって転写が調節されている。ZF ドメインは GATA ファミリー内で高度に保存され
ていることから GATA4 も GATA1 と同様にホモ 2 量体を形成し、転写活性を調節していると考えら
れる。そこで、本研究の目的は
GATA4 のホモ 2 量体化はどの部位で起こっているのか検討することとした。
【方法】
35S メチオニン標識 GATA4 と GST タグを付加した GATA4 の野生型及び一部ドメインを欠
失させた変異体(Deletion mutant:欠失変異体)を作成し、GST Pull-Down を行うことで GATA4 の
2 量体化に必須なドメインを同定した。次に同様の欠失変異体を用いて GATA 配列を持つ ET-1 プロー
ブと DNA Pull-Down を行うことで、DNA 結合に必須なドメインを同定した。そして GATA4 のアセ
チル化部位に含まれる 4 つのリジンをアラニンに置換した GATA4 変異体(m456A)で同様に 2 量体
化形成や DNA 結合能を検討した。
【結果】 GST Pull-Down によって、GATA4 のアセチル化部位を含む 308 ~ 326 番目の配列が 2 量体化
に必須であることを見出した。また、DNA Pull-Down により C 末端側の GATA4 の ZF ドメインとア
セチル化部位が含まれる 256 ~ 326 番目の配列が DNA 結合能に必須であることを見出した。GATA4
m456A 変異体では野生型 GATA4 と比較して 2 量体化能が減少していた。
【考察】 以上の結果から、GATA4 の 2 量体化や DNA 結合にはアセチル化部位を含む配列が必須であ
ること、特にアセチル化を受けるリジン残基が重要であることが示され、GATA4 依存的な肥大反応遺
伝子の転写に GATA4 ホモ 2 量体形成が関与する可能性が示唆された。
G‒20
TBL1/HDAC3 複合体による心肥大抑制メカニズムの解析
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
1
○小山内崇人 ,刀坂泰史 ,永井陽介 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
1
一 般 講 演
【目的】 心肥大は心不全のリスクファクターの 1 つであり、心不全の新たな治療標的として研究が
進んでいる。我々は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を持つ p300 と心筋特異的転写因子
GATA4 が心不全発症に重要な役割を果たしている事を見出した。また GATA4 結合タンパク質とし
て Transducin beta like1(TBL1)を同定し、TBL1 が p300/GATA4 による心肥大反応遺伝子の転写
活性を抑制することを示した。TBL1 複合体にはヒストン脱アセチル化酵素 HDAC3 が含まれており、
TBL1 の心肥大抑制メカニズムにおいて重要な役割を担っているのではないかと考え検討を行った。
【方法】 HEK293T 細胞にて TBL1 を過剰発現させ、免疫沈降-ウェスタンブロットを行い GATA4 と
HDAC3 の結合量の変化を検討した。HEK293T 細胞またはラット初代培養心筋細胞にて TBL1 を過剰
発現させ、HDAC3 選択的阻害剤を添加し、レポーターアッセイにより心肥大反応遺伝子の転写活性を
測定した。同様にして免疫染色を行い、細胞面積を測定することで心筋細胞肥大に対する効果を検討し
た。
【結果】 TBL1 を過剰発現させることで GATA4 と HDAC3 の結合量が増加し、TBL1 が GATA4 と
HDAC3 のアダプタータンパクとして機能していることが示唆された。肥大刺激によって誘導された心
肥大反応遺伝子の転写活性亢進を TBL1 の過剰発現は抑制したが、HDAC3 選択的阻害剤を加えること
で TBL1 による転写活性抑制が有意に消失した。細胞面積においても、TBL1 の過剰発現により心筋細
胞肥大の抑制がみられたが、HDAC3 阻害剤の添加によって TBL1 による心筋細胞肥大抑制効果は消失
した。
【 考 察 】 以 上 よ り、TBL1 に よ る p300/GATA4 転 写 経 路 の 抑 制 メ カ ニ ズ ム に は TBL1 複 合 体 中 の
HDAC3 が重要な役割を果たしていることが示唆された。TBL1 の心肥大抑制メカニズムをより詳細に
調べることで、心不全に対する新たな治療が確立されることが期待される。
130
G‒21
心肥大反応における新規 GATA4 結合タンパク質 TBLR1 の機能解析
1
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
○廣田 翔 ,刀坂泰史 ,並木雅俊 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 我々はヒストンアセチル化酵素(HAT) 活性を持つ p300 と心筋特異的転写因子である
GATA4 が心不全発症に重要な役割を果たしていることを見出した。p300/GATA4 経路を中心とした
転写調節機構を詳しく解析したところ、NCoR/SMRT 複合体の構成タンパクである TBL1 と TBLR1
を同定した。これまでに当研究室では、TBL1 が心肥大抑制効果を持つことを示したが、TBLR1 の機
能は不明である。そこで本研究の目的は、TBLR1 の p300/GATA4 経路に対する役割を検討すること
である。
【方法】 大腸菌により作成した p300 と、GATA4 及びその 3 つのミュータントを用いて GST pulldown assay を行い、TBLR1 と p300 との結合及び GATA4 との結合部位を検討した。また HEK293T
細胞に p300, GATA4, TBLR1 の発現ベクターをトランスフェクションし、心肥大反応遺伝子について
レポーターアッセイを行った。最後に初代培養心筋細胞を用いて同様にレポーターアッセイを行った。
【結果】 GST pull-down assay にて TBLR1 と p300 および GATA4 の結合、さらに GATA4 と TBLR1
との結合部位を検討した結果、TBLR1 と p300 との結合及び、GATA4 の C 末端側の Zinc Finger ドメ
インとの結合を確認した。次に TBLR1 の p300/GATA4 依存的転写反応における機能をレポーターアッ
セイにて検討した結果、HEK293T 細胞において、TBLR1 過剰発現により p300/GATA4 経路依存的な
転写活性が抑制された。また初代培養心筋細胞においてフェニレフリン刺激によって誘導された心肥大
反応遺伝子の転写活性を TBLR1 を過剰発現させることにより抑制した。
【考察】 TBLR1 は TBL1 同様に p300/GATA4 経路を介して心筋細胞肥大反応を抑制することが示唆
された。今後さらなる詳細な検討を行い、NCoR/SMRT 複合体と p300/GATA4 経路との関連性を明ら
かにすることで新たな心不全治療薬の開発へとつながる可能性が考えられる。
G‒22
新規 GATA4 結合タンパク質 PRMT1 による心筋細胞肥大反応の抑制
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1, 2
1
2
2
○天野七菜 ,刀坂泰史 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
1
131
一 般 講 演
【目的】 我々は心筋細胞肥大反応における核内情報伝達経路を詳細に検討し、転写コアクチベーターで
ある p300 と心筋特異的転写因子である GATA4 が中心的役割を果たしていることを見出した。さらに、
GATA4 結合タンパク質の網羅的解析により同定した protein arginine methyl transferase 5(PRMT5)
が心筋細胞肥大に対し抑制的に働くことを明らかにした。そこで本研究では、PRMT ファミリーに属
する PRMT1 に着目して、p300/GATA4 経路においての役割について検討した。
【方法】
大腸菌により作成した GATA4 と 7 つに断片化した p300 を用いて GST pull-down assay を行い、
PRMT1 と GATA4 との結合及び p300 との結合部位について検討した。HEK293T 細胞に GATA4、
p300、PRMT1 の発現ベクターをトランスフェクションし、心肥大反応遺伝子についてレポーターアッ
セイを行った。さらに、フェニレフリン(PE)刺激を行った初代培養心筋細胞を用いて同様にレポーター
アッセイを行った。最後に、PRMT1 阻害剤 AMI-1 で処理した初代培養心筋細胞に対し免疫染色をし、
心筋細胞面積を検討した。
【結果】 GST pull-down assay にて GATA4 および p300 断片と PRMT1 との結合を検討した結果、
PRMT1 と GATA4 の 結 合 お よ び PRMT1 と p300(aa1-450、aa1665-2159) の 結 合 を 確 認 し た。 次
に p300/GATA4 依存的転写反応における PRMT1 の機能をレポーターアッセイにて検討した結果、
HEK293T 細胞および初代培養心筋細胞において、PRMT1 過剰発現により心肥大反応遺伝子の転写活
性は抑制された。また、AMI-1 で心筋細胞を処理することで、細胞面積が容量依存的に増加した。
【考察】 以上の結果から、PRMT1 は p300 および GATA4 に結合し、p300/GATA4 経路を抑制するこ
とで、心筋細胞肥大反応に抑制的に働く因子であることが示唆された。今後、さらに詳細な検討を行う
ことで、PRMT1 が新たな心不全治療薬の標的となる可能性が示唆された。
G‒23
新規 GATA4 結合タンパク質 WDR5 による p300/GATA4 経路への影響
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
○永井陽介 ,刀坂泰史 ,天野七菜 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 我々は心肥大反応における心筋細胞核内共通経路を解析したところ、ヒストンアセチルトラ
ンスフェラーゼ活性をもつ p300 による GATA4 のアセチル化が重要な役割をもつことを見出した。さ
らに、新規 GARA4 結合タンパクとして WD repeat-containing protein 5(WDR5)を同定した。WDR5
はヒストンメチルトランスフェラーゼの一つである mixed lineage leukemia(MLL)に結合することで
MLL の活性を制御し、さまざまな転写反応を制御しているが、p300 や GATA4 との相互作用について
はわかっていない。そこで本研究では WDR5 が p300/GATA4 転写経路においてどのように影響して
いるかの検討を行った。
【方法】 GST-pull-down assay にて GATA4 と放射標識した WDR5 との結合を検証した。HEK293T 細
胞において p300, GATA4, および WDR5 の発現ベクターをトランスフェクションし、p300/GATA4 お
よび WDR5 を過剰発現させ、レポーターアッセイにより心肥大反応遺伝子であるナトリウム利尿ペプ
チド(ANF)およびエンドセリン 1(ET-1)転写活性を測定した。
【結果】 GST pull-down assay にて GATA4 と WDR5 との結合を検討した結果、GATA4 と WDR5 と
の結合を確認した。次に p300/GATA4 誘導性の転写反応における WDR5 の機能をレポーターアッセ
イにて検討した結果、p300/GATA4 によって亢進した ANF および ET-1 の転写活性は WDR5 を過剰
発現させることで抑制された。
【考察】 本研究により WDR5 は GATA4 と結合し、また過剰発現系において p300/GATA4 経路を介
して心筋細胞肥大反応を抑制することが示唆された。今後さらなる詳細な検討を行い、WDR5 の心肥
大抑制メカニズムを明らかにすることで新たな心不全治療薬の開発へとつながる可能性が考えられる。
G‒24
柑橘類果皮成分 Nobiletin は心臓でのエネルギー代謝を改善し、心筋梗塞後の心肥大・
心収縮力低下を抑制する。
1
2
3
4
静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院
1
1
1
1, 2
3
1
〇稗田蛍火舞 ,五十井愛美 ,小川原慎太郎 ,砂川陽一 ,村上 明 ,浅川倫宏 ,
1, 2
2
2
2
1
1, 4
刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,菅 敏幸 ,森本達也
一 般 講 演
【目的】 心不全は生命予後が極めて不良な疾患であり、発症の前段階で生じる心筋細胞肥大を抑制する
ことが、心不全の予防・治療につながると期待されている。我々は様々な生理活性を有しており機能性
物質として注目されている柑橘類果皮成分の Nobiletin が新たな心不全治療薬物となる可能性を見出し
たが、その作用機序は明らかになっていない。本研究ではノビレチンが心不全へ至る過程においてどの
ような作用を有するのか検討することを目的とした。
【方法】 中程度の心筋梗塞を有する雄性 SD rat を 3 群に分け、Vehicle 及び Nobiletin(1、20 mg/
kg/)を 6 週間連日経口投与を行い、心臓超音波検査や、組織学的検査、ミトコンドリア・脂質代謝関
連因子の mRNA の定量を行った。次に初代培養心筋細胞に Nobiletin 処理を行い mRNA 量の定量する
ことで Nobiletin が直接心筋細胞に作用しているのか検討した。
【結果】 心筋梗塞によって肥大した左室後壁厚や個々の心筋細胞は Nobiletin 投与で用量依存的に改善
した。心筋梗塞では左室収縮能の低下に加えて心筋内でミトコンドリア機能の指標である PGC1-α や
MFN2 や脂肪酸代謝の指標である CPT1、MCAD の mRNA レベルの低下がみられたが、Nobiletin 処
理はこれらを用量依存的に有意に改善させた。培養心筋細胞への Nobiletin 処理でもこれらのミトコン
ドリア・脂質関連因子の mRNA レベルの上昇がみられた。
【考察】 Nobiletin は直接心筋へ作用することで心筋梗塞後のミトコンドリア・脂質代謝機能の低下を
改善させ、心不全発症を防いでいることが示唆された。今後、Nobiletin の作用メカニズムの解析を進
めることで Nobiletin を用いた新たな心不全治療薬の可能性が示された。
132
G‒25
心筋組織を用いたプロテオミクス解析による新規 Nobiletin 標的因子の探索および解析
1
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農
1
1
1
1, 2
3
1
〇五十井愛美 ,稗田蛍火舞 ,小川原慎太郎 ,砂川陽一 ,村上 明 ,浅川倫宏 ,
1, 2
2
2
2
1
1
刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,菅 敏幸 ,森本達也
【目的】 心不全は虚血性心疾患、高血圧性心疾患等のあらゆる心疾患の最終像であり、この問題を解決
することは社会的・臨床的にも期待されている。我々は、柑橘類果皮成分 Nobiletin が心筋細胞肥大を
抑制し、更に心筋梗塞モデルラットにおいて心機能を改善することを見出した。しかし、心筋細胞内に
おける Nobiletin の標的蛋白は未だ明らかでない。そこで本研究では、Nobiletin 結合蛋白質を同定し、
Nobiletin の心機能改善機構を解明することを目的とした。
【 方 法 】 SD ラ ッ ト 心 臓 組 織 か ら 抽 出 し た 蛋 白 質 に Biotin 標 識 Nobiletin を 混 和、Streptavidin
Sepharose で回収することで Nobiletin 結合蛋白質を精製した。これを LC/LC-MS/MS 解析することで
Nobiletin 結合因子を同定した。次にこの結合因子のリコンビナント蛋白を作成、Biotin 標識 Nobiletin
の Pulldown assay を行うことで Nobiletin との直接結合を検討した。また、ラット初代培養心筋細胞に
対し心筋細胞肥大を誘導するフェニレフリンや Nobiletin 処理を加え、抗 Nobiletin Binding Protein 1
(NBP1)抗体を用いて蛍光免疫染色を行い、心筋細胞内における Nobiletin 結合因子の分布について検
討を行った。
【結果】 LC/LC-MS/MS 解析の結果、新たな Nobiletin 結合蛋白質として NBP1 を同定した。Pulldown
assay の結果、Biotin 標識 Nobiletin は NBP1 と結合し、Nobiletin を過剰量加えることでその結合は消
失した。更に蛍光免疫染色の結果、NBP1 は心筋細胞核周辺に局在しており、Nobiletin 処理では局在
は変化しないがフェニレフリン刺激で NBP1 は一部が核外へと移行することが示された。
【考察】 今回新たな Nobiletin 結合蛋白質として NBP1 を同定し、この結合因子が心筋細胞内において
細胞核周辺に局在することを示した。このことから、Nobiletin は直接 NBP1 と結合することで心筋細
胞に作用していることが示唆された。
G‒26
新規 Nobiletin 標的因子の心筋細胞での機能解析
1
2
3
4
静岡県大薬, 京都医療センター, 京都大農, 静岡県立総合病院
1
1
1
1, 2
3
1
〇小川原慎太郎 ,稗田蛍火舞 ,五十井愛美 ,砂川陽一 ,村上 明 ,浅川倫宏 ,
1, 2
2
2
2
2
2, 4
刀坂泰史 ,和田啓道 ,島津 章 ,長谷川浩二 ,菅 敏幸 ,森本達也 133
一 般 講 演
【目的】 心不全の発症の危険因子として心筋細胞肥大が挙げられ、この問題を解決することは心不全治
療において極めて重要である。我々は、柑橘類果皮成分 Nobiletin が心筋細胞肥大反応を抑制すること、
新たな心不全の治療薬となる可能性を見出した。しかし Nobiletin が何に作用することで心肥大抑制作
用を示すのか、詳細なメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究の目的は新規 Nobiletin 標的
因子である Nobiletin Binding Protein 1(NBP1)の心筋細胞における機能を解析し、Nobiletin の心肥
大抑制メカニズムを検討することである。
【方法】 NBP1 の心筋細胞での機能を調べるため、心筋細胞に NBP1 をノックダウン又は過剰発現さ
せ、心肥大反応を促進させるフェニレフリン(PE)、Nobiletin 処理を行い β-MHC 抗体で免疫染色し、
心筋細胞の面積を測定することで心筋細胞肥大を評価した。次に心筋細胞で心肥大反応遺伝子 ANF や
ET-1 プロモーターのレポーターアッセイを行うことで NBP1 による影響を調べた。
【結果】 NBP1 を心筋細胞に過剰発現させると PE 刺激で誘導される ANF や ET1 プロモーター活性は
容量依存的に有意に抑制された。PE 刺激で増加した心筋細胞面積は NBP1 の過剰発現で有意に低下し
た。Nobiletin 処理は PE 誘導性心筋細胞肥大を抑制するが、NBP1 をノックダウンさせた心筋細胞では
PE 刺激による心筋細胞肥大は誘発されたが、Nobiletin による肥大抑制作用が認められなかった。
【考察】 我々が新たに見出した Nobiletin 標的因子である NBP1 は心筋細胞肥大抑制作用を持つことが
判明した。また、ノックダウンの結果から Nobiletin の心筋細胞肥大抑制には NBP1 の活性が必要であ
ることが示唆された。以上の結果から Nobiletin が NBP1 の活性化を介して心肥大反応を抑制している
ことが示唆された。
G‒27
加齢に伴う心臓における p300/GATA4 経路の変化
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
○野村幸弘 ,刀坂泰史 ,永井陽介 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 加齢に伴い生じる様々な疾患があるが、心疾患はその中で最も人を衰弱させるものの一つであ
る。現在、日本では超高齢化社会を迎えているため、加齢に伴う心疾患患者数はますます増加していく
ものと考えられる。加齢に伴って起こる拡張性心不全は、収縮性心不全とは対照的に、通常の収縮機能
をを保持したまま心肥大を経て、心不全へと至る。しかし、加齢に伴う拡張性心不全に対する研究はほ
とんど進んでいない。そこで本研究では、心臓の質的な指標として心肥大に着目し、加齢マウスを用い
て検討した。
【方法】
C57BL/6 マウスの 2 ヶ月齢、17 ヶ月齢において、血圧、脈拍数、心重量を測定した。次に、
心臓組織切片の染色を行い、心筋細胞径と血管周囲の線維化を測定した。さらにマウス心臓から抽出し
た mRNA を逆転写により cDNA 合成し、リアルタイム PCR を行い、心肥大反応遺伝子である脳性ナ
トリウム利尿ペプチド(BNP)の mRNA 発現量を測定した。
【結果】 2 ヶ月齢と比較して、17 ヶ月齢では心肥大の指標である心重量 / 脛骨長比と心筋細胞径が有意
に増加していた。更に、2 ヶ月齢と比較して、17 ヶ月齢では BNP は有意に増加していた。このことか
ら 17 ヶ月齢において加齢性心肥大が起きていることが示唆された。また、拡張期血圧は 2 ヶ月齢と比
較して、17 ヶ月齢では有意に低下していたが、脈圧は有意な差は無かった。血管周囲の線維化は 2 ヶ
月齢と比較して、17 ヶ月齢では有意に増加していた。
【考察】 以上の結果より、加齢により心肥大と心臓の線維化が起こっていることが示唆された。さらに
心肥大の原因として心筋細胞肥大が起こっていることが示唆されたことから、転写因子 GATA4 を介
した転写反応が変化している可能性が考えられ、今後の研究により、加齢性心肥大と GATA4 転写経
路の関連性を明らかにしていきたい。
G‒28
心肥大反応抑制分子 RACK1 と GATA4 の結合部位の同定
1
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1
1, 2
1, 2
2
2
○田中寿樹 ,鈴木秀敏 ,刀坂泰史 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
一 般 講 演
【目的】 我々は心筋細胞核内情報伝達経路を詳細に検討したところ、ヒストンアセチル化酵素(HAT)
活性を持つ p300 が転写因子である GATA4 をアセチル化し、心筋細胞肥大反応を亢進させることを
見出した。さらに p300/GATA4 経路の制御機構解明のため、プロテオミクス解析を行い、GATA4 結
合因子として転写制御因子 Receptor for activated protein kinase C1(RACK1)を同定した。これまで
の検討から、RACK1 は GATA4 と in vitro において直接結合すること、またラット初代培養心筋細胞
においても結合し、心肥大誘導因子であるフェニレフリン(PE)刺激により RACK1 と GATA4 が解
離することを見出した。GATA4 複合体の制御機構には RACK1 と GATA4 の結合が重要である可能
性が考えられ、RACK1 と GATA4 の詳細な結合部位を解明することが重要である。本研究の目的は、
RACK1 と GATA4 の結合部位について検討を行うことである。
【方法】 大腸菌により作成した GST-RACK1 及びその各 domain を欠失させた deletion mutant を用い
た GST pull-down 法により、GATA4 の RACK1 に対する結合部位について検討を行った。また、同
様 に 作 成 し た GST-GATA4 と そ の deletion mutant を 用 い た GST pull-down 法 に よ り、RACK1 の
GATA4 に対する結合部位について検討を行った。
【 結 果 】 GATA4 は N 末 端 側 に Transactivation domain(TAD)1 及 び TAD2 そ し て C 末 端 側 に
TAD3 を、さらに 2 つの Zinc finger(ZF)domain を持ち、また RACK1 は 7 つの WD40 domain を持つ。
GST pull-down 法により RACK1 と GATA4 の結合が確認でき、さらにそれぞれに対する結合部位を同
定した。
【考察】 以上の結果より、RACK1 と GATA4 の結合部位の詳細が解明された。解明された結合部位は
RACK1 による GATA4 制御機構において重要な役割を担う可能性を持ち、それぞれの結合部位の機能
をさら解析することで、心肥大の制御機構の解明が期待できる。
134
G‒29
RACK1 による p300/GATA4 経路を介した心肥大反応抑制機構の解析
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1, 2
1
2
2
○鈴木秀敏 ,砂川陽一 ,刀坂泰史 ,田中寿樹 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 我々は心筋細胞核内情報伝達経路を検討し、ヒストンアセチル化酵素活性を持つ p300 が転写
因子 GATA4 をアセチル化し、心筋細胞肥大反応において重要な役割を担うことを見出した。さらに
GATA4 複合体解析により GATA4 結合因子として転写制御因子 Receptor for activated protein kinase
C1(RACK1)を同定した。これまでの検討から、ラット初代培養心筋細胞において RACK1 は心肥大
誘導因子であるフェニレフリン(PE)刺激による心肥大反応遺伝子の転写活性亢進及び心筋細胞肥大を
抑制することを見出した。本研究では RACK1 の心筋細胞肥大抑制機構についてより詳細な検討を行っ
た。
【方法】 HEK293T 細胞にて GATA4, p300 及び RACK1 を発現させ、免疫沈降(IP)- ウェスタンブロッ
ト(WB)法により GATA4 のアセチル化の変化や GATA4 と p300 の結合、クロマチン免疫沈降(ChIP)
法により GATA4 の DNA 結合能を解析した。ラット初代培養心筋細胞に対してレンチウイルスを用い
RACK1 を過剰発現し、同様に GATA4 のアセチル化との DNA 結合能を検討した。さらに心肥大時に
おける挙動を解明するために培養心筋細胞に対して PE 刺激を行い、IP-WB 法により心肥大反応時に
おける RACK1 の翻訳後修飾変化ならびに GATA4 との結合変化を検討した。
【結果】 HEK293T 細胞において、RACK1 は、p300 と GATA4 の結合を阻害し、p300 による GATA4
のアセチル化及び DNA 結合能を抑制した。さらに培養心筋細胞において RACK1 は PE 刺激による
GATA4 のアセチル化及び DNA 結合を抑制した。また、PE 刺激は RACK1 のチロシン残基のリン酸
化を亢進させ、RACK1 と GATA4 の結合を減少させた。
【考察】 以上より、RACK1 による心肥大抑制機構には p300 と GATA4 の結合及び GATA4 アセチル
化阻害が重要な役割を担い、またその働きには RACK1 のチロシン残基のリン酸化が重要である可能性
が示された。
G‒30
心肥大反応遺伝子転写抑制における PRMT5 のもつメチル化活性の影響
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
○中田淳也 ,刀坂泰史 ,北條祐也 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
1
135
一 般 講 演
【目的】 我々は心肥大核内情報伝達機構として p300/GATA4 経路に注目し、p300 のもつヒストンアセ
チル化(HAT)活性が心肥大に重要であることを見出した。さらに新規 GATA4 結合タンパク質とし
て Protein arginine methyltransferase 5(PRMT5)を同定し、PRMT5 が p300/GATA4 経路により亢
進する心肥大反応遺伝子の転写活性を抑制することを明らかにしたが、その詳細はいまだ明らかになっ
ていない。そこで本研究は PRMT5 による p300/GATA4 経路および心肥大反応の抑制機構を解析する
ことを目的とした。
【方法】 GATA4, p300, 野生型 PRMT5 またはメチル化酵素活性部位を欠損させた ΔPRMT5 の発現ベ
クターを HEK293T 細胞にトランスフェクションし、心肥大反応遺伝子の転写活性をレポーターアッ
セイにて検討した。さらに免疫沈降 - ウェスタンブロット法にて p300 と PRMT5 の結合及び p300 のメ
チル化について検討した。さらに HEK293T 細胞からヒストンを抽出し、ヒストン H3 の 9 番目のリジ
ン(H3K9)のアセチル化について検討した。HAT 活性を評価するため、HEK293T 細胞から抽出した
p300 を用いて HAT assay を行なった。
【結果】 p300 と GATA4 の共発現により心肥大反応遺伝子の転写活性は顕著に亢進し、野生型 PRMT5
の過剰発現により転写活性の亢進が抑制されたが、ΔPRMT5 過剰発現ではこの抑制がみられなかった。
p300 のメチル化を検討した結果、野生型 PRMT5 の過剰発現により p300 のメチル化が亢進したが、Δ
PRMT5 過剰発現では p300 のメチル化はみられなかった。野生型 PRMT5 と ΔPRMT5 はともに p300
との結合がみられた。続いて p300 の HAT 活性について検討した結果、p300 により亢進した H3K9 の
アセチル化を PRMT5 は有意に抑制し、さらに p300 の HAT 活性は PRMT5 共発現により抑制されて
いた。
【考察】 以上の結果より、新規 GATA4 結合タンパク質 PRMT5 のもつメチル化酵素活性が p300 をメ
チル化させることでその HAT 活性を減少させ、心肥大反応遺伝子の転写を抑制することが示唆された。
G‒31
PRMT5 による p300 のメチル化とその機能解析
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
1
2
○北條祐也 ,刀坂泰史 ,中田淳也 ,砂川陽一 ,鈴木秀敏 ,和田啓道 ,
2
2
1, 3
島津 章 ,長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 心筋細胞肥大反応において、核内転写経路である p300/GATA4 経路が中心的役割を果たし
ていることがわかっている。そこで、この経路に重要であると考えられる GATA4 複合体を網羅的に
解析し、73 個の結合タンパク質を同定した。これらのうち、我々は PRMT5(Protein Arginin Methyl
transferase5)に着目した。PRMT5 は p300/GATA4 経路により亢進する心肥大反応遺伝子の転写活性
を抑制することを明らかにしたが、その詳細なメカニズムはいまだ明らかになっていない。
【方法】 全長 p300 を 8 つの断片に分けた pGEX プラスミドベクターを作製し、大腸菌に形質転換しタ
35
ンパク質を発現させた。これらの p300 断片と PRMT5 を S に標識したものとの結合を GST-pull-down
14
assay にて検討した。次に、p300 断片と PRMT5、メチル基供与体である[Methyl- C]SAM と反応させ、
in vitro methyl transferase assay を行いメチル化部位の同定を行った。
【結果】 GST-pull-down assay により p300 mutants と PRMT5 の結合部位を検討した結果、PRMT5 は
p300 の aa1-450, aa1514-1922, aa1877-2160 の断片と結合することがわかった。続いてこの結合部位を用
いて、in vitro methyltransferase assay を行った結果より、PRMT5 は p300 の aa1-450 断片をメチル
化することが明らかとなった。他の p300 断片ではメチル化は見られなかった。さらに aa1-450 断片中
の R200, R202, R237 をリジン(K)に変異させた mutant を作成し、同様に GST-pull-down assay と in
vitro methyltransferase assay を行った結果、すべての mutant との結合が確認されたが、200 番目の
アルギニン残基を K に変異させた mutant では PRMT5 によるメチル化が消失した。
【考察】 上記により、PRMT5 は p300 のいくつかの部位と結合し、その中でも R200 をメチル化するこ
とが明らかになった。今後、PRMT5 による p300 制御の詳細なメカニズムを明らかにしていく。
G‒32
MEP50 による p300/GATA4 転写経路調節機構
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
2
2
○宮崎雄輔 ,刀坂泰史 ,櫻井涼賀 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
1
一 般 講 演
【目的】 心肥大は心不全の前段階と考えられており、心肥大の細胞内分子機構を解明することは極めて
重要である。我々は核内情報伝達機構の 1 つである p300/GATA4 経路が心筋細胞肥大において中心的
役割を果たすことを見出し、GATA4 結合タンパク質として新たに Methylosome protein 50(MEP50)
と Protein arginine methyltransferase(PRMT5)を同定した。これまでの研究から PRMT5 が p300/
GATA4 経路を抑制することを明らかにしている。MEP50 は PRMT5 の活性制御因子であり、協調的
に機能していることが推測されるが、詳細は不明である。本研究では MEP50 による p300/GATA4 経
路の転写調節機構について検討した。
【方法】 まず、GST pull-down assay を行い GATA4 および p300 と MEP50 の直接結合を検討した。続
いて HEK293T 細胞に発現ベクターを遺伝子導入し、心肥大反応遺伝子の転写活性をレポーターアッセ
イにより検討した。また MEP50 をノックダウンし、同様にレポーターアッセイを行った。最後に、免
疫沈降とウエスタンブロット法にて p300 と MEP50, PRMT5 の結合を検討した。
【結果】 GST pull-down assay の結果、MEP50 は GATA4 および p300 と直接結合した。次にレポーター
アッセイにて p300/GATA4 依存性転写反応における MEP50 の機能を検討した結果、MEP50 過剰発現
により心肥大反応遺伝子の転写活性は抑制され、MEP50 のノックダウンにより亢進した。PRMT5 と
p300 の結合し、メチル化することが示唆されている。そこで最後に HEK293T 細胞において、MEP50
を過剰発現し、PRMT5 と p300 の結合量を検討した結果、MEP50 の過剰発現により p300 と PRMT5
の結合が亢進した。
【考察】 以上の結果より、MEP50 は p300/GATA4 転写経路を抑制しており、この分子機構として
p300 と PRMT5 の結合を仲介することが示唆された。今後 PRMT5/MEP50 複合体の機能解析を詳細
に行うことで心肥大転写反応の分子機構が明らかにされることが期待される。
136
G‒33
心肥大誘導時における MEP50 の効果の検討
1
2
3
静岡県大院薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
2
2
○櫻井涼賀 ,刀坂泰史 ,宮崎雄輔 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
【目的】 心不全は様々な心疾患の最終像であり、心肥大はそのリスクファクターである。当研究室では
心肥大の転写反応において p300/GATA4 経路が重要な役割を担っていることを見出した。そこで、新
規 GATA4 結合タンパク質として Methylosome protein 50(MEP50)を同定した。しかし、生体内に
おける MEP50 の働きは未だ不明である。そこで、我々は心肥大誘導時の心臓において、MEP50 がど
のような役割を担っているかを検討した。
【方法】 まず、ラット初代培養心筋細胞において、フェニレフリン(PE)刺激を施し、タンパク発現
量をウエスタンブロット(WB)によって調べた。次に、C57BL6/J マウスに大動脈縮窄(TAC)術を行
い、2 週間後に心臓を摘出して、心体重比を測定した後、心臓からタンパク質を抽出し、WB によって
PRMT5 と MEP50 の発現量を調べた。最後に、培養心筋細胞に PE 刺激を施し心筋細胞肥大を誘導し
た in vitro モデルにおいて、MEP50 をトランスフェクションし、レポーターアッセイにより、心肥大
転写因子の転写活性を測定した。
【結果】 培養心筋細胞を PE 刺激 24 時間後および 48 時間後において MEP50 のタンパク質発現量は増
加した。さらに、TAC 手術によって心体重比の増加が確認されたマウス心臓においても MEP50 のタ
ンパク質発現量は増加した。また転写反応における MEP50 の機能を検討した結果、ANF や ET-1 の心
肥大転写因子の転写活性は PE 刺激によって亢進したが、この亢進は MEP50 の過剰発現により有意に
抑制された。
【考察】 心肥大誘導下における心臓では、MEP50 の発現量は増加し、また MEP50 は心肥大転写因子
の転写活性を抑制した。このことから、MEP50 は心肥大反応に対して負のフィードバックをかけてい
るのではないかと考えられる。今後更に MEP50 の機能を解析していくことで、心肥大転写経路が詳細
に明らかになり、心不全治療に貢献できることが期待される。
G‒34
PRMT5 心臓特異的過剰発現マウスにおける加齢性心肥大への影響
2
3
静岡県大薬, 京都医療センター, 静岡県立総合病院
1
1, 2
1
1, 2
2
2
○若林弘樹 ,刀坂泰史 ,櫻井涼賀 ,砂川陽一 ,和田啓道 ,島津 章 ,
2
1, 3
長谷川浩二 ,森本達也
1
137
一 般 講 演
【目的】 近年、加齢により心肥大が起こることが報告されており、加齢性心肥大と心不全との関連
について研究が行われている。我々は心肥大の核内情報伝達機構の 1 つである p300/GATA4 経路
が中心的役割を果たすことを発見し、核内転写因子 GATA4 に結合する新規分子 Protein arginine
methyltransferase(PRMT5)が、p300/GATA4 経路を介した心肥大転写反応制御に働くということを
明らかにしている。本研究では心臓特異的 PRMT5 過剰発現マウス(PRMT5-TG)を作製し、心機能へ
の影響を検討した。
【方法】 alpha-MHC promoter の下流に PRMT5 を導入したベクターを作成し、PRMT5-TG マウスを
作製した。心臓特異的なタンパク質発現を western blotting(WB)で確認した。PRMT5-TG マウスを
6 カ月齢にてサクリファイスし、心臓体重比を測定した。ヘマトキシリン・エオジン染色にて心臓の
組織学的評価を行った。更に、real-time PCR で心筋細胞肥大マーカー(ANF、BNP、beta-MHC)の
mRNA 相対的発現量を対照群と比較した。
【結果】 WB の結果、PRMT5 が心臓特異的に発現していることを確認した。また野生型マウス(WT)
と比較して PRMT5-TG マウスでは血圧や脈拍数には変化がみられなかった。6 カ月齢にて PRMT5-TG
群の心体重比が対照群と比較して有意に増加した。組織染色の結果、PRMT5-TG 群の心筋細胞径が対
照群と比較して有意に増加した。心肥大マーカー(ANF、BNP、beta-MHC)の mRNA 相対的発現量
が対照群に比べ、増加の傾向がみられた。
【考察】 以上の結果から PRMT5-TG マウス 6 ヶ月齢において心肥大が生じていることが示唆された。
加齢性心肥大において PRMT5 が関与していることが考えられ、今後より詳細に加齢性心肥大における
PRMT5 の機能解析を進めることで、加齢性心肥大の予防や心不全治療の開発に寄与することが考えら
れる。