「ビットの値段は無料になりたがる」って何ですか。

Ten Minutes Marketing
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教えて、ミニッツ先生・・・。
同僚らが「無料のオンラインゲームにはまっているんだけど、美しい画像のゲー
ムコンテンツを無料で利用できるのは驚きだね」「まさに、『ビットの値段は無料
になりたがる』だね」と話していました。そもそも・・・、
「ビットの値段
ビットの値段は
値段は無料になりたがる
無料になりたがる」
になりたがる」 って何ですか。
2009年11月に刊行された(日本放送出版協会)、クリス・アンダーソン氏の「フリー ~〈無料〉からお金
を生みだす新戦略」で注目された言葉なんだ。
「ビットの値段は無料になりたがる」とは、ビット
ビット(
ビット(ここではデジタル化
ここではデジタル化された情報
された情報。
情報。ビットの反対語
ビットの反対語はアト
反対語はアト
ム:物質)
フリー(
物質)はデジタル化
はデジタル化でコストがゼロに近
でコストがゼロに近くなるということを言っている。それが“フリー
くなる
フリー(無料)
無料)を生ん
でいる”と著者は主張しているんだ。
でいる
何故、「ビットは無料になりたがる」のでしょうか。
現在、光など高速
高速のネット
ビットファイルを手軽
高速のネット環境
のネット環境が整ってきたことで、デジタル形式であるビットファイルを
環境
ビットファイルを手軽に
手軽に送受信で
送受信
きる。ネットサービスの
ネットサービスの配布
ネットサービスの配布コストは
配布コストは無料
コストは無料に
無料に近づいているんだ。“クラウドコンピューティングの発達により、
づいている
配布システムの構築は容易”なんだ。製作コストも、広告などで利益を確保することで回収可能だね。これ
が、「
「無料経済」
無料経済」の背景なんだね。無料を取り入れることでビジネスを成功させた企業は古くからあるんだ。
背景
無料を取り入れて成功した事例を教えて下さい。
新しいゼラチン料理のレシピを無料で配布することで、ゼリーの需要を喚起した食品会社がある。ジレッ
ジレッ
トはT
トはT字型のカミソリを
字型のカミソリを無料
のカミソリを無料(
無料(及び格安)
格安)で配布することで
配布することで、
することで、替刃の
替刃の需要を
需要を喚起した。今でいえば、ブログ
喚起
などWeb
Web上
Web上の様々なコンテンツは基本的
なコンテンツは基本的に
基本的に無料で
無料で利用できる
利用できるよね。1984年発行の「ハッカーズ」にある
できる
ハッカー論理に、“「
「全ての情報
ての情報はフリーになるべきだ
情報はフリーになるべきだ」
はフリーになるべきだ」”がある。もとは、1959年のMITのコンピュータ・オ
タクから出た言葉であり、“「
「潤沢な
潤沢な情報は
情報は無料になりたがる
無料になりたがる。
になりたがる。希少な
希少な情報は
情報は高価になりたがる
高価になりたがる」
になりたがる」”からなん
だ。グーグルも
グーグルも、
グーグルも、無料でメールやシステムを
無料でメールやシステムを提供
でメールやシステムを提供し
提供し、成功した
成功した代表企業
した代表企業だね。
代表企業
何故、グーグルは無料でアプリケーションを配信できるのでしょうか。
最大の
グーグルではこれを「
最大の市場にリーチして
市場にリーチして、
にリーチして、大量の
大量の顧客をつかまえる
顧客をつかまえる。
をつかまえる。“グーグルではこれを
グーグルではこれを「最大化戦略」
最大化戦略」”と呼ぶ。最大
化戦略とは、分配
分配が
分配の
分配が最大になるようにする
最大になるようにするんだ。“分配
になるようにする
分配の限界費用はゼロなため
限界費用はゼロなため、
はゼロなため、どこにでもものを配
どこにでもものを配れ
る”。グーグルは一握りのコアプロダクトの広告料から大金を稼ぎ、検索結果の表示画面や提携したウェ
ブサイト上に広告を載せる。そのため、他の全てをフリーにできるんだ。つまり、無料経済におけるビジネ
スでは“無料
無料で
無料で何かを提供
かを提供し
提供し、それによって多
それによって多くの人
くの人に関心(=
関心(=集
(=集める)
める)を持ってもらう。
ってもらう。そこでの関心
そこでの関心を
関心を利
益に結びつける”。また、フリーのビジネスモデルは
フリーのビジネスモデルは大
びつける
フリーのビジネスモデルは大きく4
きく4つに分
つに分けられるんだ。
けられる
[文中の“
‐1‐
” の部分は書籍の引用]
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4つのフリーのビジネスモデルを教えて下さい。
1つは「
「直接的内部補完補助」
直接的内部補完補助」で、「DVDを1枚買えば、2枚目はタダ」のように、消費者の気を引いて他
を購入させる。2つめは「
「三者間市場」
三者間市場」で、テレビのように無料で番組を流すかわりにスポンサーの広告を
流す。3つめは「
「フリーミアム」
「5%
フリーミアム」で、有料のプレミアム版に対する基本版が無料になる。デジタルには「
ルール」
5%の有料ユーザーが
「非貨
ルール」があり、“5
有料ユーザーが残
ユーザーが残りの95
りの95%
95%の無料ユーザーを
無料ユーザーを支
ユーザーを支えている”のだ。4つめは「
えている
幣市場」
評価や
幣市場」だ。これは対価を貨幣以外の評価
評価や関心などとするもの。ウィキペディアなどに書き込むのは、
関心
評判や関心が支えになっているからなんだ。“自分
自分のウェブサイトを
自分のウェブサイトを公開
のウェブサイトを公開すれば
公開すれば、
すれば、あなたの意図
あなたの意図に
意図に関係な
関係な
く、グーグルに情報
グーグルに情報を
えることになる
情報を与えることになる”んだね。
オンラインゲームも無料ですが、何故無料にできるのですか。
無料オンラインゲームの収益方法は5つある。①
①バーチャル製品
②
バーチャル製品の
製品の販売:ゲーム内通貨などの販売。②
販売
会費:会費で運営。③
③広告:08年のレーシングゲームの広告に、オバマの選挙広告があった。④
④不動産:
会費
広告
不動産
「セカンドライフ」では、架空空間の不動産ビジネスを展開。⑤
⑤商品:現実のぬいぐるみとバーチャル・ペッ
商品
トの組み合わせ。“アトム
アトム(
アトム(ぬいぐるみ)
ぬいぐるみ)にはお金
にはお金がかかるが、
がかかるが、ビット(
ビット(オンラインゲーム)
オンラインゲーム)はタダ。バーチャル
はタダ
の動物を追加するには、ぬいぐるみを購入する”ことだ。
ただ乗りする人が続出しませんか。
ただ乗りする人を「
「フリーライダー」
フリーライダーを心配
フリーライダー」と呼ぶが、“フリーライダーを
フリーライダーを心配する
心配する考
する考えは、
えは、インターネットの規模
インターネットの規模の
規模の
効果について
効果について全
について全く判断を
判断を誤っている”んだね。例えばPTAで、役員になる人がクラスに一人しかおらず、
っている
他の親が協力せずその人に「ただ乗り」すると、その人はキレて役員を辞める。親の10~20%が協力しな
いとPTAのシステムは崩壊する。“オンラインでは
オンラインでは参加者
オンラインでは参加者がはるかに
参加者がはるかに多
がはるかに多いので、
いので、全体の
全体の1%でも協力
でも協力すれ
協力すれ
ば、ほとんどのコミュニティはうまくやっていける”んだ。昔も「
「フリーランチ族
ほとんどのコミュニティはうまくやっていける
フリーランチ族」がいた。
[文中の“
【フリー① 直接的内部相補補助】
【フリー③ フリーミアム】
製造者
製品1
(有料)
製品2
(無料)
$$$
”の部分及び下図は書籍の引用]
基本製品
(無料)
製造者
プレミアム製品
(有料)
$$$
消費者
消費者
多くの消費者
【フリー② 三者間市場】
【フリー④ 非貨幣市場】
$$$
広告スペース
製造者
(有料)
コンテンツ
(無料)
製造者
注目、
評判
無料の
もの
$$$
製造者
製品
(有料)
消費者
消費者
‐2‐
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「フリーランチ族」とは何でしょうか。
昔のアメリカの居酒屋で流行った手法に「
「フリーランチ」
フリーランチ」がある。昼客が来ない酒場のアイデアで、お酒一
杯の値段でランチが食べ放題になる。「
「フリーランチ族
食べまくった人
フリーランチ族」とは、その仕組みを利用して食
べまくった人々の
ことで、
ことで、採算が
採算が取れず「
れず「フリーランチ」
フリーランチ」が中止になった
中止になった。“「
になった 「ただより高
ただより高いものはない(
いものはない(There's no free lunch)
lunch)
」という諺
という諺の語源”になった。しかし、Webでは、問題になるどころか少数の貢献者にとっては報酬となるん
語源
だ。大勢の顧客が、サイトに貢献する人の強力な動機づけになるためなんだ。大量
大量の
大量の「フリーライダー」
フリーライダー」こ
そが、
そが、ウィキペディアの編集者
ウィキペディアの編集者になることの
編集者になることの最大
になることの最大の
最大の魅力のひとつ
魅力のひとつなんだね。
のひとつ
全ての産業がフリーになりませんよね。
本著では、フリーのルールを挙げている。“1
1.デジタルのものは、
デジタルのものは、遅かれ早
かれ早かれ無料
かれ無料になる
無料になる。/
になる。/2
。/2.アトム
も無料になりたがるが
無料になりたがるが、
になりたがるが、力強い
力強い足取りではない
足取りではない。/
りではない。/3
。/3.フリーは止
フリーは止まらない。/
まらない。/4
。/4.フリーからもお金儲
フリーからもお金儲けは
金儲けは
できる。/
できる。/5
。/5.市場を
市場を再評価する
再評価する。/
する。/6
。/6.ゼロにする。/
ゼロにする。/7
。/7.遅かれ早
かれ早かれフリーと競
かれフリーと競い合うことになる。/
うことになる。/8
。/8.
ムダを受
ムダを受け入れよう。/
れよう。/9
。/9.フリーは別
フリーは別のものの価値
のものの価値を
価値を高める。/
める。/10
。/10.
10.希少なものではなく
希少なものではなく、
なものではなく、潤沢なものを
潤沢なものを
管理しよう
管理しよう”。
しよう
この中で1と2のルールから、確実
確実に
確実に無料になるものはデジタルへと
無料になるものはデジタルへと変換
になるものはデジタルへと変換できる
変換できるものである。しかし、3と7
できる
はデジタルに
デジタルに変換
どの産業
デジタルに変換できない
変換できない「
できない「アトム」
アトム」であっても、
であっても、無料経済の
無料経済の影響を
影響を受ける。つまり、“どの
ける
どの産業もいずれ
産業もいずれ無
もいずれ無
料との競争
との競争になる
競争になる”んだ。
になる
無料経済では利益を確保する手段が、見えにくくなるということですか。
その通り。ライバルが、本来とは違った形で利益を確保する方法を考え出せば、あなたの会社がどのよう
な業種であっても、“「
「無料との
無料との競争
との競争」
競争」に巻き込まれる”んだね。
まれる
利益確保の手段は、業界や企業ごとによって異なる。フリーを
フリーを利用
フリーを利用して
利用して、
して、利益を
利益を確保する
確保する手段
する手段を
手段を発見した
発見した
企業が
企業が、次の時代の
時代の勝者となる
勝者となるんだ。
となる
[文中の“
” の部分は書籍の引用]
最近の「ビットの値段は無料になりたがる」の論点
現在Web上では「安かろう(=無料)、悪かろう」が当てはまらない世界がある。製造流
通の費用がゼロ近くなる市場では、ルールが変わる。サンプル配布ビジネスは、100個
の製品のうち5個を無料で配るが、フリーミアムでは、95人が無料で使い、5人からしか
お金を取らない。無料で使用する人が増えた方が評判が広まり安くなる。良い評判獲得
をできるかどうかが「無料経済」の要になる。本書のメッセージは、「フリー周辺で稼ぐこと
がビジネスの未来であり、フリーによって得た評判や注目を、どのように金銭に変えるか
を創造的に考える」ということになる。
今のフリーを見ると、人間は貨幣だけではなく、「評判」「注目」を求めている。元来、
我々は便利で機能的なモノを欲しかったのではなくて、「評判」や「注目」が欲しかった。
工業社会での評判や注目はカネやモノの所有で測定されたので、積極的にモノをつくり、
カネを貯め、モノを所有した。ネットの登場と無料化により、カネやモノとつながらない
「評価」「注目」が単独で取り沙汰されているのである。
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「フリー ~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」
/クリス・アンダーソン[著]、小林 弘人[監修]、高橋 則明[翻訳]
<著者紹介>
<目次>
クリス・アンダーソン
(Chris Anderson)
『ワイアード』誌編集長。
「ロングテール」という言葉を2004
年に同誌上ではじめて世に知らし
め、06年に刊行した同名の著書
「ロングテール」は世界的ベストセ
ラーとなる。07年に米『タイム』誌の
「世界でもっとも影響力のある100
人」に選出。
ジョージ・ワシントン大学物理学の
学位を取得。ロス・アラモス研究所
の調査員、「ネイチャー」誌と「サイ
エンス」誌に6年間勤務。その後、
英「エコノミスト」誌の編集者。2001
年から現職。
<2009年11月現在>
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
第12章
第13章
第14章
第15章
第16章
フリーの誕生
「フリー」入門
フリーの歴史
フリーの心理学
安すぎて気にならない
「情報はフリーになりたがる」
フリーと競争する
非収益化
新しいメディアのビジネスモデル
無料経済はどのくらいの規模な
のか?
ゼロの経済学
非貨幣経済
(ときには)ムダもいい
フリー・ワールド
潤沢さを想像する
「お金を払わなければ価値の
あるものは手に入らない」
日本放送出版協会/
2009年11月25日発刊/
1,890円[税込]/350頁
<内容紹介>
世界的ベストセラー「ロングテール」の著者が描く21世紀の経済モデル。〈フリーミアム〉という新しい
ビジネスモデルを提唱し、ビット世界の無料経済に正面から取り組んだワイアード誌編集長が放つ最
新作。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。なぜ、一番人気のあるコンテンツを有料にしてはいけな
いのか。なぜ、ビット経済では95パーセントをタダにしてもビジネスが可能なのか。
あなたがどの業界にいようとも、〈無料〉との競争が待っている。それは可能性の問題ではなく、時
間の問題だ。そのときあなたは、創造的にも破壊的にもなり得る。このフリーという過激な価格を味方
につけることができるだろうか。
=出版社紹介文を編集=
こんな本もある
「ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」
(クリス・アンダーソン著、篠森ゆりこ 翻訳 早川書房)
「シェア ~<共有>からビジネスを生みだす新戦略」
(レイチェル・ボッツマン著、ルー・ロジャース著、関美和翻訳 日本放送出版協会)
「メッシュ すべてのビジネスは〈シェア〉になる」
(リサ・ガンスキー著、実川元子翻訳 徳間書店)
「フリー 完全活用本」
(創藝舎著 三笠書房)
「ゼロのちから-成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11」
(ナンシー・ルブリン著、関美和翻訳 英治出版)
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E-mail:[email protected]
URL:http://www.mapscom.co.jp
TEL:03-5226-0111/FAX:03-5226-0113
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