交通事故相談ニュース 36号 (2016年3月1日) 9 万円以上の裁判例が相次いで出されている。いずれの行 最近の高額慰謝料認定事例 為も反社会性が非常に強いと評価できる事案であるが、 増額幅について今後の裁判例の動向が注目される。 1 死亡慰謝料基準 (1)飲酒の影響で前方注視、運転操作が困難な状態 で、指定最高速度40km/h の道路を100∼120km/h の速 青本では、死亡慰謝料(近親者固有 度で自車を対向車線に進出させ、対向車の自営業の父と 慰謝料分を含む。 )について三分説を 専業主婦の母を死亡させたという事案について、死亡し とり、 「一家の支柱2700∼3100万円」 、 た夫婦の本人慰謝料各3200万円、子供4人の慰謝料各400 「一家の支柱に準ずる場合2400∼2700 万円、総額8000万円を認めた(東京地判平24.3.27 交民 万円」 、 「その他2000∼2500万円」とし 45.2.422) 。両親を同時に失うという特殊性から、家族の一 ている。青本では、赤い本基準と異 人が死亡した場合を念頭に置く三分説とは異なり、両親 なり、慰謝料を一定の幅で示してい の慰謝料に差をつけるべきではないという発想であろう。 る。赤い本2016年版下巻97頁以下で (2)無免許・飲酒運転で事故をおこし、逃走中被害 近時の裁判例を分析しているが、死 者を2.9km にわたって引きずる中で死亡させた事案につ 亡慰謝料は、概ねこの範囲に分布し いて、通常の交通事犯の範疇を超えて殺人罪に該当する ているものと認められる。 として30歳会社員の本人慰謝料3500万円、妻子の慰謝料 各250万円、総額4000万円を認めた(大阪地判平25.3.25 2 慰謝料増額事由 自保1907.57) 。過失から徐々に故意が生じたものであり、 平成10年過ぎころから、加害者が悪質な事案(事故態 引きずり行為のどの時点で致命傷を負ったかは定かでは 様の悪質性、事故後の救護義務・報告義務違反、事故態 ないとしているが、過失が前提の慰謝料基準とは異なる 様について虚偽の主張をするなど)では、死亡慰謝料を 次元の事案である。 大幅に増額する裁判例が目に付くようになった。他方こ (3)車上荒らしが発覚してパトカーの追跡から逃げる のような傾向に対して、日本交通法学会では、いくら事 べく2台を一気に追い越そうとして対向車線を80km/h で 故が悪質だからといって、その他の基準金額の2倍以上 走行したところ、加害車を避けようと急制動の措置をと になってしまうと、結局二人死亡した場合と同じ金額を り転倒したバイクに搭乗していた33歳会社員が死亡した 一人の死者に見積もってしまうことになり、バランスを 事案について、本人慰謝料3200万円、妻の慰謝料400万円、 欠くのではないかとの指摘もあった( 「青本及び赤い本に 父母の慰謝料各250万円、総額4100万円を認めた(東京地 おける慰謝料基準と課題」高野真人 交通法研究33.31) 。 判平25.12.17 交民46.6.1592) 。 事故前の行為の反社会性、事故の悪質性を特に重視し 3 近時の高額認定例 たものであろう。 その後も、死亡慰謝料について4000万円に達するもの (東京弁護士会 園 高 明 ) は出ていなかったが、近時、交通専門部において、4000 弁護士 必携 (公財)日弁連交通事故相談センター 2016年版青本・赤い本の販売を開始しました 交通事故損害額算定基準 ※隔年発行 [青本]25 訂版 2,600 円(税込:発送代込) 交通事故損害額算定基準とその解説を 中心に、全国の参考となる裁判例を掲載 民事交通事故訴訟 [赤い本]損害賠償額算定基準 ※毎年発行 3,000 円(税込:発送代別) 東京地裁の実務に基づき賠償額の基準を 示し、参考になる判例を掲載 ※慰謝料基準一部改訂 〈問い合わせ〉TEL:03-3581-4724 〈問い合わせ〉TEL:03-3581-1782 ((公財)日弁連交通事故相談センター本部) ((公財)日弁連交通事故相談センター東京支部) 〈購入申込〉(公財)日弁連交通事故相談センターのホームページ(http://www.n-tacc.or.jp/)から申込用紙をダウンロードしていた だき、FAXでお申込ください。 (公財)日弁連交通事故相談センターは、本部及び38支部で「示談あっ旋」 (無料)を行っています。
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