InterSystems Caché を使用して、クレジットカードデータを安全に保存する

INTE RS YS TE MS
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INTERSYSTEMS CACHÉ を使用して
クレジットカードデータを安全に保存する
ANDREAS DIECKOW
( インターシステムズコーポレーション、主席プロダクトマネージャ)
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INTERSYSTEMS CACHÉ を使用して
クレジットカードデータを安全に保存する
要約
今日、クレジットカードでの購入や決済は、これまで以上に増加しています。
クレジットカード決済を行う業者やサービス提供者は、顧客の重要な情報を保護する義務が
ありますが、使用されているソフトウェアソリューションは、クレジットカード情報を保護する
「ベストプラクティス(最善慣行)」をサポートしていない場合もあります。この問題に対処する
ため、クレジットカード情報保護のためのセキュリティ基準が確立され、広く採用されていま
す。
PCI DSS(The Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカード国際情報セ
キュリティ基準)は、安全にクレジットカード情報を扱うためのガイドラインです。
この条項には、顧客情報をデータベースに保存する場合の勧告が含まれています。
このホワイトぺーパーでは、現在・将来において、PCI DSS のデータ保存に関するガイドライ
ンを遵守する上で、ソフトウェアベンダが InterSystems Caché® データベースを利用する
利点について、解説しています。
クレジットカード情報保護の使用例
データベース情報を安全に保護する最良な方法は、データを永続化しない(保存しない)こと
です。しかし、当然、クレジットカードデータを扱う企業は、カード所有者名、カード番号
(PAN)、有効期限などの情報を保存する必要があります。PCI DSS では、永続化は必要
最小限の所有者データに留めることを推奨しています。カード所有者の情報が保存される
場合、PCI DSS では(最低限)データベースおよび全てのジャーナル・ログにおいて、PAN
の読み取りができないようにすることを要求しています。
PAN を実際にどのように保護するのかは、場合によって異なります。一般的に、使用場面
は次の 2 種類に分けられます。クレジットカードが、単に本人確認のために使用される場合
と、商品やサービスの決済に使用される場合です。
クレジットカードを本人確認に使用する場合
アプリケーションが、クレジットカードを本人確認の ID として使用する場合(カードを使って航
空券の予約記録を確認するような場合)、有効で完全な文字で PAN を保存する必要は全く
ありません。PCI DSS に拠ると、PAN のバージョン保存には、ハッシュ化(ハッシュ関数に
よる暗号化)またはトランケーション(部分一致)のどちらかが使用可能で、認証目的では、
これで十分であると言われます。
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
ハッシュ化(ハッシュ関数による暗号化)
情報は、複雑なアルゴリズムよって変換され、変換もしくはハッシュ化された情報のみ
保存がされます。ハッシュ関数のアルゴリズムは一方向に対してのみ有効です。ハッ
シュ化された情報から、元の情報を一意的に特定することは不可能です。認証目的に
は、カード所有者が提供するハッシュ化された PAN データと保存されたハッシュ値を
比較することができます。

トランケーション(部分一致)
情報の一部だけを保存します。認証を目的とする場合、カード所有者から提供された
PAN は、同じ方法でその一部を取り出して、保存された値と比較します。一般的に、ト
ランケーションのセキュリティレベルは、ハッシュ化よりも低いとされています。
クレジットカードを決済で使用する場合
クレジットカード決済が可能なアプリケーションは、取引処理を行うために、有効な PAN に
アクセスする必要があります。PCI DSS では、PAN 情報を扱うことができる3つの方法があ
ります。

PAN に全く永続性を与えない(ディスク上に保存しない)方法
オンライン上で、業者からクレジットカードで購入し、“ゲスト”として決済するような場合
があります。カードの所有者は、完全な PAN を購入の都度、提示する必要があります。
アプリケーションは、メモリ上の PAN を使いますが、永続化はしません。(PCI DSS に
は、転送時における、PAN や他の取り扱いに注意を要する情報を保護するためのガ
イドラインがありますが、このホワイトペーパでは触れません)

トランケーション(部分一致)
情報の一部だけを保存します。カード所有者が不足分の情報を提供する必要があり
ます。その情報を基に、アプリケーションは、メモリ上で PAN を再生します。有効な
PAN は、ディスク上ではなく、メモリ上のみに存在します。

暗号化
PAN は、複雑なアルゴリズムによって、暗号鍵を使い、暗号文か、もしくは単純文字
列に変換されますが、暗号文だけが保存されます。ハッシュ化と異なり、暗号化は双
方向で変換することができます。暗号鍵を使うことで、アプリケーションは PAN を(メモ
リ上で)判読し、クレジットカード処理を行うことが可能です。
PCI DSS は、定期的に「強力な」暗号化・再暗号化された情報を使うことを要求しています。
また、暗号化鍵は、ユーザアカントあるいは、ユーザアカウントに関連するところへの保存は、
禁止されています。
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Caché による安全なデータの保存方法
Caché は、アプリケーションに強力で一貫性のある高性能のセキュリティ構造を提供し、国
際セキュリティ認証(Common Criteria)を受けています。
現在のリリース(Caché 2010)で、アプリケーションがどのように安全に PAN などのデータを
保存するのか、以下に記します。

ハッシュ化
Caché は、いくつかのハッシュ関数(Secure Hash Algorithms:SHA-1 など)に対するビ
ルトインアクセスを提供しています。

トランケーション
完全にサポートし、Caché が稼働しているアプリケーションの一部として実装されてい
ます。

データベースの暗号化
Caché は 、 次 世 代 標 準 暗 号 化 方 式 と し て 規 格 化 さ れ た 新 暗 号 規 格 ( Advanced
Encryption Standad: AES)を実装しています。
データベースの暗号化では、データベース全体が一つの暗号鍵で暗号化されます。鍵
へのアクセスは、システムによって管理されているため、ユーザアカウント(プロセスな
ど)はデータベース暗号鍵を持ちません。
インデックスを含む全ての情報は、暗号化されて保存され、データベースは保護され
ています。

データ要素の暗号化
開発者は、暗号化スイートを使って、個々の情報片を暗号化することが可能です。
PAN のような取り扱いに注意が必要な情報の保存には、データ要素の暗号化が好ま
れます。なぜなら、それによって、(正しい規定に従って)データベースにアクセスを中
断することなく、データ要素の再暗号化が可能になるからです。

監査
Caché は、堅牢で、不正アクセス監査システムを提供し、セキュリティモデルへの全て
の変更を監査します。アプリケーションの開発者は、アプリケーションコードにおいて、
監査システムの呼び出しをすることで、同じ監査データベースの使用が可能です。
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Caché のセキュリティモデルに追加された機能強化について
PCI DSS は広く採用されているので、この基準に準拠するアプリケーションを、より簡単に
設計するためのいくつかの変更点が、Caché に追加されています。この機能強化は、
Caché 2011 より利用可能です。主な強化点は、データ要素の暗号化で使用される鍵管理
に関するものです。
マネージドキ―(鍵管理)
この機能強化では、データ要素の暗号化に使われる暗号鍵の要素は、データベース暗号鍵
と同じ保護されたメモリに保存されることで、システムによって安全が保持されています。ア
プリケーションは、一意の鍵 ID でそれぞれの暗号鍵を参照します。これにより、鍵の要素自
身への、ダイレクトアクセスをなくします。
このデータ要素の暗号化という新しい方法を利用する場合、開発者の手間が省けるように、
鍵 ID は、結果として生成された暗号文に埋め込まれています。これにより、復元処理にお
いて、自動的にデータを暗号化している鍵を特定することが可能です。新しいマネージドキ
―システムは、データベース暗号鍵に加え、いくつかの鍵をサポートしています。これにより、
アプリケーション開発者は、簡単に、必要な要素をリアルタイムで再暗号化することができ、
導入されたアプリケーションの性能には、仮想的に何の影響も及ぼしません。
まとめ
PCI DSS は、安全にクレジットカード情報を扱う必要のある世界各国の販売業者やサービ
ス提供者によって採用されています。アプリケーションプロバイダは、ソリューションが、確実
にこの基準に準拠している必要があります。InterSystems Caché を使うと、PCI DSS に準
拠したアプリケーションが構築可能です。Caché 2011 での機能強化により、開発に係るこ
の負荷をより軽くすることが可能になります。
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InterSystems Ensemble と InterSystems Caché は、米国インターシステムズ社の登録商標です。 InterSystems DeepSee と InterSystems HealthShare は米国インターシステムズ社の商標です。