何が女性を「幸せ」にするのか?

REPORT
何が女性を「幸せ」にするのか?
―当研究所「女性の幸せに関する意識調査」より―
橋本 千春
生活設計研究部
研究員
はじめに
女性の意識、働き方は、時代や社会とともに変化している。
1985 年の男女雇用機会均等法施行を機に男性と同等に働くという道が大きく開かれ
た。女性の4年制大学進学率は、同年には 13.7%だったが、2010 年には 45.2%まで上
昇し、高学歴化も進んでいる(注1)。また、育児・介護休業法やパート労働法等、女性
が仕事と家庭を両立させるための法律や制度の整備も進められてきた。
そうした中、いまだ課題は残っているものの、
「仕事か家庭か」の二者択一であった女
性の生き方が、
「仕事も家庭も」を実現できるように、さらには男性も女性と共に仕事生
活と家庭生活を両立できるように、
「ワーク・ライフ・バランス」や「イクメンプロジェ
クト」といった行政や企業の取り組みも進められている。
結婚をする・しない、子どもを産む・産まない、結婚・出産後も仕事を続ける・続け
ない、フルタイムかパートタイムか等、生き方・働き方の選択肢は増えたが、長引く不
況や昨年3月に発生した東日本大震災による先行きの不安も相まって、
「 自分らしい生き
方を選ぶ」というより、
「どのように生きることが幸せなのか」という迷いを感じている
女性も多いのではないだろうか。
当研究所では、2011 年8月に全国の 20 代~50 代の 2,579 名の女性を対象に、
「 幸せ度」
と、家族、恋愛・結婚、出産・育児、仕事、健康等への意識についてアンケート調査を
行った。本稿では結果の概要を報告するとともに、女性の「幸せ」に関する意識と、女
性を「幸せ」にするものは何かを考えたい。
(注1)文部科学省「学校基本調査」より
Ⅰ 女性の「現在の幸せ度」の概観
本調査では、
「現在のあなたの幸せ度は 10 点満点で表すと何点ですか。
(最高に幸せを
10 点とします)」という質問で、回答者が現在の幸せ度を 10 点満点で主観的に自己評価
したものを「幸せ度」としている。ここでは、現在の幸せ度の概観を紹介する。
回答者全体の現在の幸せ度の平均は 6.94 点であった。点数の分布をグラフにすると図
表1の通り、8点の 21.5%を頂点に山形を描いている。「幸せ度」について、平均点以
1
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
上の7点~10 点と回答した女性は 64.3%であり、多くの女性が「自分は幸せである」と
感じていると考えられる。
図表1
25 20 代~50 代女性の「現在の幸せ度」(10 点満点)の点数分布
(%)
21.5 18.3 20 12.7 15 現 在の幸せ度 全 体 平均 6 .94点
12.6 11.8 9.3 10 ”幸せ度”7~10点と
回答した女性の割合
6 4 .3%
5 4.5 4.3 2.7 2.2 2点
1点
0 10点
9点
8点
7点
6点
5点
4点
3点
年代別にみると、幸せ度平均点は、20 代の 6.72 点が最も低く、30 代の 7.24 点をピー
クに 40 代、50 代と低下していく。また、幸せ度を8~10 点、5~7点、1~4点と回
答した人をそれぞれ「幸せ」「ふつう」「不満」の3グループに分けて年代別にみると、
20 代は、
「幸せ」グループの割合が 41.8%と全年代の中で最も低く、
「不満」グループの
割合が 17.5%と最も高くなっている。さらに、30 代~50 代を比較すると、「不満」グル
ープは 12%台でほぼ同じ割合だが、
「幸せ」グループが 30 代の 52.5%から年代が上がる
につれ減少し、その分、5~7点の「ふつう」グループの割合が増えていく。
20 代から 50 代へと歳をとりながら、恋愛、仕事、結婚、出産、育児、子の独立など、
人生における様々な出来事を経験し、また心身の健康状態も変化していく。そのなかで、
何が女性の「幸せ度」を上げているのか、年代により幸せ度が変化する要因を探るため
に「幸せ」グループと「不満」グループを比較しつつ、女性の生活やライフイベントと
ともにみていくこととする。
図表2
「現在の幸せ度」の平均点と点数の分布
7.5
7.0
【 「 幸せ度」点数の分布】
【 「 幸せ度」平均点】
(点)
「幸せ」
7.24
6.92
6.72
20代
(n=548)
6.83
30代
(n=699)
40代
(n=688)
6.5
20代
30代
(n=699)
(n=548)
40代
(n=688)
50代
(n=644)
50代
(n=644)
2
「ふつう」
41.8 52.5 45.9 42.7 生活福祉研究
「不満」
40.7 34.6 41.4 (%)
17.5 12.9 12.6 44.4 12.9 通巻 80 号
February 2012
Ⅱ 女性の「幸せ度」を上げるもの、下げるもの
1.「幸せ」と家族
(1)親との関係
人が生まれて最初に出会う人と社会は、親(家族)である。基本的な生活習慣や、行
儀作法、言葉遣い、人との付き合い方など、生きていくために必要なことを最初に教え
るのは親であり、親との関係や教育方針は子の生き方、考え方に大きな影響を及ぼす。
現在の幸せ度が高い人と低い人を比較すると、
「幸せ」グループと「不満」グループの
親との関係に違いが見られた。父母との関係について「とても良い」
「まあ良い」と回答
した人の割合は、「幸せ」グループでは父 68.0%、母 76.2%であったのに対し、「不満」
グループでは父 45.7%、母 51.5%と、20 ポイント以上の差が見られた。
また、父母との関係が良好な理由については、父母とも「親が私のことを大切にして
くれるから」が最も多く、金銭面の支援や家事・育児の手助け等、実利的なことを理由
に挙げる人は少なかった。
「親に大切にされている」という実感が、自分を大切にするこ
とや自己肯定感、ひいては大人になってからの幸せ度につながっているのではないだろ
うか。
図表3
現在の幸せ度と親との関係
【 実父との関係】
「幸せ」
(n=896)
「不満」
(n=256) 38.6
16.8
29.4
28.9
22.7
34.0
とても良い
図表4
(%)
4.7
4.7
「幸せ」
(n=1,049)
「不満」
(n=313) 10.9 9.4
まあ良い
【 実母との関係】
普通
45.6
19.2
(%)
3.1
30.6
32.3
あまり良くない
18.3
30.4
2.4
11.8 6.4
全く良くない
親との関係が良好な最大の理由(関係が「とても良い」「まあ良い」と答えた人)
(%) 36.9 40 33.9 父(n=1,137)
30 22.8 20 12.0 18.6 12.3 10 9.3 2.5 5.0 通巻 80 号
5.6 5.6 その他
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2.6 2.2 物を買ってくれ
たり金銭面で
支援してくれる
から
家事や育児を助
けてくれるから
3
7.0 8.9 性格や価値観が
合うから
お互いに干渉
しないから
親のことを尊敬
しているから
何でも言い合え
る関係だから
親が私のことを
大切にしてくれ
るから
0 14.7 母(n=1,567)
February 2012
(2)「幸せ」なとき
「普段の生活で『幸せ』を感じるのはどのようなときですか」と尋ねたところ、幸せ
度の高さと「家族」や「1人でいるとき」を選んだ割合に違いが見られた。
「幸せ」グル
ープでは「家族団らん」
「パートナーといるとき」を選んだ人の割合が1位、2位であっ
たが、「不満」グループでは「1人でのんびりしているとき」「美味しいものを食べてい
るとき」を選んだ人が多い。
「幸せ」と「不満」のグループ間では既婚者や子どものいる人の割合が違うため、
「パ
ートナー」も「子ども」もいる人に絞った比較も試みたが、その場合でも傾向は変わら
ず、「家族団らん」ではむしろ両者の差が広がった。
幸せ度の高い人は、家族やパートナーとの絆に幸せを感じている人の割合が多い結果
となった。
図表5
普段の生活で「幸せ」を感じるとき(3つ以内選択)
(%)
60 【 全体 】
56.6 45.5 36.3 32.9 40 20 幸せ(n=1,187)
38.0 29.1 29.5 18.8 9.8 12.9 不満(n=356)
22.2 21.6 18.9 16.3 12.8 12.8 13.8 11.5 0.0 幸せを感じると
きはない
ショッピングをし
ているとき
寝ているとき
趣味(インドア
系)の時間
友人等と
いるとき
44.8 35.3 34.7 29.1 29.0 40 子どもと
いるとき
【 夫あり子どもあり】
(%) 61.9 60 20 パートナー(夫・
恋人)
といるとき
1人でのんびり
しているとき
美味しいものを
食べているとき
家族団らん
のとき
0 18.0 「幸せ」(n=989)
「不満」(n=172)
35.0 26.7 15.8 11.6 12.1 14.5 10.6 15.1 12.5 11.0 11.6 0.0 通巻 80 号
4.7 幸せを感じる
ときはない
ショッピングを
しているとき
生活福祉研究
寝ているとき
趣味(インドア
系)の時間
4
友人等と
いるとき
子どもと
いるとき
夫といるとき
1人でのんびり
しているとき
美味しいものを
食べているとき
家族団らん
のとき
0 4.8 February 2012
2.「幸せ」と恋愛、結婚、子ども
(1)女らしさ、恋愛への意識
①性格・タイプ
本調査では、回答者自身の性格やタイプについて質問している。その中から女らしさ
や恋愛への意識についての4項目(「自分は『女らしい』と思う」「恋愛について積極的
に行動する」
「容姿に自信がある」
「ファッションや美容等に力を入れている」)について、
「幸せ」
「不満」グループを比べたところ、
「あてはまる」
「ややあてはまる」と回答した
人の割合はすべての項目で「幸せ」グループの方が高く、
「不満」グループでは、どの項
目も過半数が「あまりあてはまらない」「あてはまらない」と否定的な回答をしている。
図表6
女らしさ、恋愛への意識について
「あてはまる」
「ややあてはまる」
どちらともいえない
【 自分は女らしいと思う】
「幸せ」
(n=1,187)
「不満」
(n=356) 24.6 15.7 28.4 「不満」
(n=356) 31.2 15.7 19.1 「幸せ」
(n=1,187)
35.8 「不満」
(n=356) 55.9 【 恋愛について積極的に行動する】
「幸せ」
(n=1,187)
【 容姿に自信がある】
(%)
39.6 27.3 「あまりあてはまらない」
「あてはまらない」
17.1 (%)
34.5 48.4 7.6 21.3 71.1 【 ファッ ションや美容等に力を入れている】
(%)
「幸せ」
(n=1,187)
41.5 「不満」
(n=356) 65.2 32.4 20.5 30.7 24.2 (%)
36.9 55.3 ②女性に生まれてよかったこと
「『女性に生まれてよかった』と思うことは何ですか」という質問について、全体で見
ると「お洒落や化粧、美容を楽しめる」「子どもを産み育てることができる」「女同士で
いること、話すことが楽しい」を選んだ人が多かったが、幸せ度や夫、子どもの有無で
異なる傾向が見られた。
「幸せ」
「不満」グループ別で見ると、
「お洒落や化粧」
「子ども」を選んだ「幸せ」グ
ループの人の割合は「不満」グループより 10 ポイント以上高かった。一方、「女に生ま
れてよかったと思うことはない」と回答した人は「幸せ」グループでは 3.5%しかいな
かったが、「不満」グループでは 17.4%と2割近くいた。①の性格・タイプと同じく、
幸せ度の高い人の方が「女性であること」を肯定的に考えている傾向が見られた。
夫、子どもの有無で比べると、
「夫あり子どもあり」グループでは6割が「子どもを産
み育てることができる」を選んでいる。実際に自身で子どもを産み育てた人の多くが、
出産、子育てを「『女性に生まれてよかった』と思うこと」と認識していることがわかる。
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また、
「女に生まれてよかったと思うことはない」の割合は、未婚女性では 1 割なのが、
「夫あり子どもなし」
「夫あり子どもあり」の順で低くなっていく。
「結婚」や「子ども」
は「女性に生まれてよかった」と感じる要因になっているようだ。
図表7
「女性に生まれてよかった」と思うこと(3つ以内選択)
【「幸せ度」別】
(%)
60 40 20 43.5 47.7 32.0 43.5 54.7 0 0 20 40 子どもを産み育て
ることができる
21.4 19.8 20.7 19.9 15.7 女同士でいること、
話すことが楽しい
21.5 17.6 21.9 19.4 22.0 14.6 生き方の自由度
が高い
17.1 21.9 20.1 23.3 17.0 16.1 17.7 14.0 全体
12.7 (n=2,579) 16.9 「幸せ」
(n=1,187)
9.8 9.0 9.6 17.4 7.8 3.5 レディースデー等
の特典が多い
13.1 17.8 家族を養う責任
が重くない
19.6 22.9 11.7 仕事の責任・
負担が重くない
働き方の選択肢(正
社員パート等)が多い
女に生まれてよかっ
たと思うことはない
60 (%)
38.8 47.1 52.0 お洒落や化粧、
美容を楽しめる
18.8 17.4 24.2 「不満」
(n=356)
【夫有無、子ども有無別】
14.2 15.3 14.3 8.5 15.3 10.1 5.7 7.9 10.9 61.8 31.8 夫あり
子どもあり
(n=1,325)
夫あり
子どもなし
(n=393)
未婚
(n=691)
③「女の幸せ」とは
「あなたにとって『女の幸せ』とは何だと思いますか」という質問に対する回答は、
「幸せな家庭をつくること」「子どもを産み育てること」「パートナー(夫・恋人)に愛
されること」の3つが多かった。夫、子どもの有無で比べると、夫と子どもの両方がい
る人は「幸せな家庭」と「子ども」と回答している割合が高い。夫がいて子どものいな
い人は「幸せな家庭」と回答している割合は高いが、
「子ども」の割合は未婚女性とほぼ
変わらない。
「子ども」については、自分自身で産み育てた経験がなければ「幸せ」とし
て考えることが難しいのかもしれない。
また、年代が上になるほど「パートナーに愛されること」を選んだ人の割合は減少し、
「自立していること」
「パートナーを愛すること」を選ぶ人の割合が上昇する。これは年
齢と様々な経験を重ねて、1人の女性として成熟・自立する人が増えるからであろうか。
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図表8
あなたにとって「女の幸せ」とは何だと思いますか(1つ選択)
【年代別】
【夫有無、子ども有無別】
(%)
40 30 20 10 0 0 29.6 28.0 25.4 36.5 10 20 8.0 10.4 13.7 7.3 3.3 5.7 6.5 10.4 20代(n=548)
30代(n=699)
40代(n=688)
50代(n=644)
27.0 20.8 29.7 子どもを産み
育てること
24.1 18.2 15.3 13.4 11.5 10.9 パートナー(恋人・
夫)に愛されること
11.7 「女の幸せ」はない
・わからない
6.4 11.5 15.9 自立していること
5.2 7.9 6.8 8.8 3.3 3.5 2.0 ファッション・化粧等
のお洒落や美容を
楽しめること
1.5 2.3 2.6 4.0 パートナー(恋人・
夫)を愛すること
(%)
40 37.1 幸せな家庭を
つくること
15.7 25.0 24.6 21.6 30 27.2 23.9 夫あり
子どもあり
(n=1,325)
2.1 4.6 8.5 夫あり
子どもなし
(n=393)
2.0 3.8 3.2 未婚
(n=691)
(2)パートナー(夫・恋人)の有無と現在の幸せ度
パートナーのいる人の割合は「幸せ」グループでは約9割だが、
「不満」グループでは
約5割であった。また、パートナーの有無別に現在の幸せ度の平均点をみると、
「夫あり」
のグループが 7.40 点と最も高く、
「夫なし(離死別)
・恋人あり」、
「夫なし(結婚経験な
し)
・恋人あり」のグループが続く。
「夫なし(結婚経験なし)
・恋人なし」のグループの
平均点が 5.37 点と最も低い。
「夫なし(離死別)・恋人なし」グループは、6.25 点と結婚経験のないグループより
高い幸せ度を示している。このグループをさらに子どもの有無で分けると、子どものい
るグループの幸せ度の平均点は 6.43 点であったが、子どものいないグループは 5.54 点
と「夫なし(結婚経験なし)
・恋人なし」グループと変わらなかった。子どもの有無が幸
せ度に影響していることがわかる。
いずれにせよ、パートナー、とりわけ夫がいるということが女性の幸せ度を上げる一
つの要因になっている。
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図表9
パートナー(夫・恋人)の有無と現在の幸せ度
【 パートナーの有無】
(点)
8.0
(%)
7.5
【 「 現在の幸せ度」平均点】
7.40
「幸せ」
(n=1,187)
78.7
11.210.1
6.93
6.76
7.0
6.25
6.5
6.0
5.37
5.5
5.0
「不満」
(n=356) 41.9
11.5
夫がいる
恋人あり
(n=275)
46.6
恋人がいる
夫あり
(n=1,718)
夫も恋人も
いない
恋人なし
(n=416)
恋人あり
(n=54)
夫なし
(結婚経験なし)
恋人なし
(n=116)
夫なし
(離死別)
(3)結婚について
①結婚についての意識
「女性はいずれは結婚すべきと思うか」という質問に対して、
「結婚すべき」
(「そう思
う」「まあそう思う」の合計)と回答した割合は全体では過半数の 56.2%であった。
既婚女性をみると、40 代以外で6割以上、最も少ない 40 代でも過半数の 55.5%が「結
婚すべき」と回答している。未婚女性では 20 代は 62.2%が「結婚すべき」と回答して
いるが、30 代で 46.3%、40 代、50 代では4人に1人程度まで減少する。
図表10
「女性はいずれは結婚すべき」と思うか ―「まあそう思う」「そう思う」人の割合
【 夫あり】
(%)
67.3
60 35.8 40 20 31.5 60.5
33.8 55.5
34.5 【 未婚】
62.7
41.0 (%)
60 40 26.7 21.0 21.7 30代
(n=509)
40代
(n=524)
50代
(n=520)
0 35.2 27.0 0 20代
(n=165)
そう思う
62.2
46.3
20代
(n=378)
13.8 4.5 30代
(n=160)
24.4
24.1
32.5 20 まあそう思う
19.6 2.4 40代
(n=112)
22.0 50代
(n=41)
次に、未婚の女性に「結婚したい(事実婚含む)と思うか」と尋ねたところ、全体の
66.0%が「そう思う」
「 まあそう思う」と回答した。特に 20 代では 75.1%、30 代では 66.3%
の女性が「結婚したい」と考えており、どの年代も「女性は結婚すべき」と考える人の
割合よりも高い。「『結婚すべき』とまでは思わないが、自分は結婚したいと思う」未婚
女性が多いようだ。
「結婚したい」と思う理由は、どの年代も「好きな人と暮らしたい」が最も多い。20
代、30 代では「自分の家庭を持ちたい」「子どもが欲しい」と回答する割合が高く、ま
た、30 代の約4割は「親を安心させたい」という理由を挙げている。40 代、50 代にな
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ると「経済的に安定したい」
「老後の安心を得たい」という経済状況や老後の生活への不
安を反映した理由の割合が高くなる傾向にある。
図表11
結婚(事実婚含む)したいと思うか ―「まあそう思う」「そう思う」人の割合(未婚)
(%)
75.1
66.0
60 まあそう思う
66.3
そう思う
26.5 26.6 48.2
28.8 40 29.3
26.8 20 48.7 39.4 37.5 19.5 21.4 9.8 0 全体
(n=691)
図表12
20代
(n=378)
40代
(n=112)
50代
(n=41)
結婚したいと思う理由(未婚。3つ以内選択)
20代(n=284)
(%) 65.5 52.8 51.9 60 30代(n=106)
40代(n=54)
50代(n=12)
52.8 47.2 47.2 48.1 41.7 41.7 39.6 41.7 41.7 29.6 30.2 29.6 29.6 25.9 25.0 23.6 22.2 24.6 17.9 25.0 16.7 11.6 11.1 13.7 15.1 11.6 6.6 0.0 0.0 40 20 人生・生活を
変えたい
寂しさから解
放されたい
老後の安心
を得たい
経済的に安
定したい
親を安心
させたい
子どもが
欲しい
自分の家庭
を持ちたい
好きな人と
暮らしたい
0 30代
(n=160)
②結婚してよかったか
「結婚してよかったと思うか」という質問に対して、配偶者のいる女性のほぼ8割
(79.7%)が「そう思う」
「まあそう思う」と回答している。結婚してよかったと思う理
由に「子どもを持てた」「家庭を持てた」を挙げている人はどの世代も5~7割に上る。
「好きな人と暮らせた」と回答したのは 20 代では 63.4%だが、年代が上がるにつれ減
少し、50 代では 38.9%となる。結婚生活に感じる「幸せ」は年月とともに夫から子ども
へとシフトしていくのだろうか。逆に、
「経済的に安定した」は、年代が上がるにつれ増
加している。
「幸せ」
「不満」グループで「結婚してよかったと思う」人の割合を比べると、
「幸せ」
グループでは 94.5%が「そう思う」「まあそう思う」と答えているのに対し、「不満」で
は「あまりそう思わない」「そう思わない」が 53%と過半数を占めており、対照的な結
果となっている。また、図表は割愛するが、結婚生活に不満を感じている人の不満の理
由は、幸せ度には関係なく「夫に不満がある」が8割以上と圧倒的に多かった。
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図表13
結婚してよかったと思うか(幸せ度別)
(%)
配偶者あり全体
(n=1,718)
40.5 「幸せ」(n=934)
「不満」(n=149)
60.8 4.0 そう思う
図表14
(%)
60 40 20 21.5 まあそう思う
12.0 20.8 どちらともいえない
3.7 0.6 4.3 0.5 33.7 21.5 4.6 32.2 あまりそう思わない
そう思わない
結婚してよかったと思う理由(3つ以内選択)
71.5 20代(n=145)
30代(n=443)
40代(n=398)
50代(n=383)
64.1 61.1 64.0 63.4 61.8 61.2 57.1 56.6 51.0 45.5 38.9 32.6 27.8 26.1 24.8 23.4 19.9 18.0 12.4 12.4 12.4 10.8 7.6 7.8 4.1 3.4 4.5 老後の安心
を得た
寂しさから
解放された
親を安心さ
せられた
経済的に
安定した
好きな人と
暮らせた
家庭を
持てた
子どもを
持てた
0 39.2 ③夫への思い
配偶者への満足度を尋ねたところ、配偶者のいる女性全体のおよそ7割(68.6%)が
「満足」
「まあ満足」と回答している。夫に満足している理由は「思いやりや愛情が感じ
られる」
「家事に協力的」
「一緒にいて楽しい」を挙げた人が多かった。
「思いやりや愛情」
「家事に協力的」には年代で大きな差は見られなかったが、手のかかる小さな子どもが
多いと思われる 20 代、30 代では約4人に1人が「育児・教育に協力的」と回答してい
る。「一緒にいて楽しい」は年代が上がるにつれ減少し、「経済力がある」を選ぶ割合は
年代が上がるにつれ増加していく。
また、
「幸せ」
「不満」グループ別に夫への満足度をみると、
「幸せ」グループでは 87.8%
が「満足」
「まあ満足」と回答しているのに対し、不満グループでは「あまり満足してい
ない」「満足していない」が 69.1%を占め、満足している人の割合はわずか 13.4%であ
った。
(2)で夫の存在が幸せ度に影響していると述べたが、夫の存在は幸せ度を高める
一方で、結婚生活や夫婦関係に不満を感じる場合には幸せ度を大きく下げてしまう原因
にもなるようだ。
10
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
図表15
夫への満足度(幸せ度別)
(%)
配偶者あり全体
(n=1,718)
19.4
「幸せ」(n=934)
2.0
「不満」(n=149)
満足
図表16
49.2
31.6
11.4
10.1
56.2
17.4
まあ満足
7.0
7.4 3.2 1.6
23.5
45.6
どちらともいえない
あまり満足していない
満足していない
夫に満足している理由(年代別)(2つ以内選択)
20代(n=130)
(%) 44.6 46.2 41.7 41.6 40 38.5 24.8 26.6 18.5 24.4 20 30代(n=391)
40代(n=332)
50代(n=327)
29.4 25.4 25.4 25.3 19.6 22.3 18.5 20.5 17.9 19.9 20.5 19.0 17.1 17.7 15.6 16.8 15.0 10.8 4.6 性格や価値観
が合う
経済力がある
育児・教育に
協力的
会話や一緒に
行動する時間
を持ってくれる
一緒にいて
楽しい
家事に協力的
思いやりや愛情
が感じられる
0 14.2
(4)子どもについて
①子育ては楽しい
子どものいる女性に「あなたにとって育児は楽しい(楽しかった)ですか」と尋ねた
ところ、全体の7割が「楽しい」
「どちらかといえば楽しい」と答えた。就業形態別に比
べると、会社員等で「楽しい」とした割合が 75.5%と最も高く、次いで専業主婦の 71.6%、
派遣社員・パート等の 66.1%となった。
子育てが楽しい理由は、「子どもの成長が嬉しい」が最も多く、「子育てを通じて自分
自身も成長していると感じる」「子どもがいとおしくてたまらない」が続く。20 代では
53.2%が「子どもがいとおしくてたまらない」を挙げているが、これは年代が上がるご
とに減少し、50 代では 22.3%となる。逆に「子育てを通じた自分自身の成長」は、20
代では 36.4%だが、50 代では 53.1%まで上昇する。
また、数は少ないが子育ては「辛い」
「どちらかといえば辛い」と回答した人が最も多
く挙げた理由は「身体的・精神的な疲労」で、
「自分のやりたいことが制約される」
「夫・
家族の協力がなく孤独」と続く。「身体的・精神的な疲労」と答えた割合は専業主婦が
67.6%と突出しているが、これは家庭にいることで育児の責任や負担が自身に集中して
しまうことが原因かもしれない。
本調査では「子育てをスムーズに行うためには何が必要か」という質問もしているが、
これについては後ほど子育てと仕事の項で述べたい。
11
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
図表17
子育ては楽しい(楽しかった)か
(%)
全体 (n=1453)
23.5
会社員等 (n=167)
24.0
派遣社員・パート
等 (n=381)
22.0
専業主婦 (n=803)
22.9
楽しい
図表18
21.8
44.1
19.2
48.7
どちらともいえない
1.5
7.2 0.0
17.4
51.5
どちらかといえば楽しい
8.6
19.5
46.9
11.8
0.3
7.0
2.2
どちらかといえば辛い
辛い
子育てが楽しい(楽しかった)理由(「楽しい」「どちらかといえば楽しい」と回答した人。
2つ以内選択)
20代(n=77)
(%) 83.1 84.0 79.7 77.7 80 53.1 53.2 51.0 33.5 36.4 38.0 29.4 22.3 60 40 20 40代(n=310)
14.4 13.9 7.8 13.5 3.9 7.2 2.9 7.2 50代(n=373)
6.5 4.9 4.2 4.0 1.3 2.3 1.6 3.2 ひとりの人間
を思うように
育てられる
夫や家族の協
力があり負担
を感じない
子育てを通じ
夫婦の愛情
が深まった
子育て仲間
との交流が
楽しい
子どもがいと
おしくてたま
らない
図表19
子育てを通じ
自分も成長
子どもの成長
が嬉しい
0 30代(n=263)
子育てが辛い(辛かった)理由(「辛い」
「どちらかといえば辛い」と回答した人。2つ以内
選択)
(%)
60
67.6
50.0
45.7
会社員等(n=12)
52.2
50.0
44.6
40
専業主婦(n=74)
41.7
33.3
23.9
28.4
20
15.2 16.2
30.4
16.2
8.3
0.0
8.7 6.8
8.3
2.2 4.1
0.0 2.2 0.0
8.3 4.3
2.7
その他
夫婦2人の時間
がとれない
仕事との両立
が難しい
子どもの健康
状態が不安
子どもの将来の
教育等が不安
経済的な負担
夫・家族の協力
がなく孤独
自分のやり
たいことが
制約される
身体的・
精神
的な疲労
0
派遣社員・パート等(n=46)
②子どもが欲しいか
子どものいない 20 代から 40 代の女性に子どもが欲しいか質問したところ、夫のいる
人全体の 62.2%、未婚女性全体では 65.8%が「欲しい」「できれば欲しい」と回答して
おり、多くの女性が子どもを欲しいと考えている。子どもが欲しい理由は、
「好きな人の
子どもが欲しい」「子育てを通じて自分自身も成長できる」「家に子どもがいると幸せ」
12
生活福祉研究
通巻 80 号
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等が多く、「子どもを持つのは当然」といった義務的な理由を挙げる人は少なかった。
図表20
子どもが欲しいか
【 夫あり子どもなし】
全体 (n=299)
(%)
40.1 20代 (n= 70)
22.1 17.4 67.1 30代 (n=159)
8.4 15.7 39.0 25.2 12.6 12.0 7.1 4.3 5.7 9.4 13.8 【 夫な し(結婚経験なし)】
全体 (n=600)
(%)
35.0 20代 (n=378)
40.5 30代 (n=160)
13.2 31.9 できれば欲しい
8.7 13.1 どちらともいえない
11.5 7.4 8.8 8.2 13.8 あまり欲しくない
欲しくない
子どもが欲しい理由(2つ以内選択)
(%) 47.052.3
全体(n=585)
41.8
46.2
36.4 29.7
30.1
31.8
29.3
20代(n=327)
30代(n=208)
31.2
27.2
21.2
10.1
9.8
10.6
9.6 9.8 8.2
9.1 8.3 10.1
4.8 5.5 3.8
子どもを持つ
のは当然
夫婦の愛情が
深まる
将来の社会を担
う存在だから
年老いた時に
頼りにできる
子どもが好き
家に子どもが
いると幸せ
子育てを通じ自
分も成長できる
好きな人の子ど
もが欲しい
50
40
30
20
10
0
14.0 30.7 32.5 欲しい
図表21
30.8 ③子どもと「幸せ」
子どもは、女性の幸せにどのように影響を及ぼしているだろうか。
結婚している女性を子どもの有無で比べると、子どもがいない既婚女性全体の現在の
幸せ度平均は 7.47 点、子どもがいる既婚女性では 7.38 点と、子どもがいる方が若干幸
せ度が低い。ただし、年代別に見てみると、20 代、30 代では子どもがいる方が幸せ度が
高い。さらに、末子の状況で比べてみると、末子が未就学児の女性の幸せ度の平均が 7.89
点と際だって高く、その後、小学生で 7.36 点、中学生で 7.09 点、高校生以上となると
6.99 点と低くなっていく。子どもが成長していくにつれ、教育や子ども同士の人間関係、
反抗期、進学・就職等、子どもに関する様々な問題にぶつかることが、母親の幸せ度を
下げているものと思われる。
とはいえ、前に述べたようにほとんどの女性は子育てを楽しいものと感じている。ま
た、①でみたように、年齢が上がるにつれ「子育てを通じた自分自身の成長」を子育て
13
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
が楽しい理由に挙げる人が増えるのは、子育てに関わる問題を乗り越えることに幸せや
喜びを見出している人が多いことの表れではないだろうか。子どもの存在は時として幸
せ度を下げることがあるが、幼い子どもは女性の幸せ度を大幅に上げ、子育てを通じて
自分自身の成長を実感する。
「子育ては大変だけれど楽しい」というのが女性の本音かも
しれない。
図表22
既婚者の現在の幸せ度
【 子どもなし】
(点)
8.50
8.00
7.57
7.47
7.50
7.55
7.44
7.50
7.00
7.00
6.50
6.50
図表23
20代
(n=70)
8.06
8.00
7.11
全体
(n=393)
【 子どもあり】
(点)
8.50
30代
40代
(n=159) (n=117)
7.38
全体
20代
(n=1,325) (n=95)
50代
(n=47)
7.92
30代
(n=350)
7.12
7.06
40代
(n=407)
50代
(n=473)
既婚者の現在の幸せ度(末子の年別)
(点)
8.50
7.89
8.00
7.36
7.50
7.09
6.99
6.99
中学生
(n=98)
高校以上の
学生(n=212)
社会人
(n=202)
7.00
6.50
未就学
(n=428)
小学生
(n=227)
3.「幸せ」と職業・収入
(1)収入・就労形態と幸せ度
働く女性の自分自身の就労による年収と幸せ度を就労形態別に比べると図表 24 のよ
うになった。
派遣社員・パート等では、年収 200 万円未満の幸せ度平均点は 6.65 点だが、年収 200
~500 万円未満になると、6.21 点まで低下している。年収 200 万円未満の層は配偶者控
除の範囲内で働いている既婚女性が多く、自身の就労による収入の多寡は幸せ度にあま
り影響していないようである。
会社員等では、年収 500~1,000 万円未満までは年収の増加とともに幸せ度も上昇して
いる(注2)。
(注2)年収 1,000 万円以上の人の幸せ度は低くなっているが、該当者数が7名と少なく、幸せ度の
低い人は夫や結婚生活に不満があったり、健康に不安を抱えているなど、仕事や収入以外の幸せ度
14
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
を下げる要因が働いていた。
図表24
自分自身の就労の年収による幸せ度
(点)
8.00
7.24
6.65
7.00
7.00
6.81
6.86
6.41
6.00
6.29
6.21
会社員等(n=453)
派遣社員・パート等(n=628)
5.00
200万円未満
200~500万円未満
500~1,000万円未満
1,000万円以上
一方、世帯年収と幸せ度をみると、収入の増加イコール幸せ度の上昇という関係が認
められた。
女性にとっては、自分自身の収入よりも、夫等の家族の収入を含んだ世帯収入が幸せ
度の上昇に寄与しているようである。
図表25
世帯収入と幸せ度
(点)
8.00
7.32
6.33
7.43
7.20
7.01
7.00
7.80
7.73
7.56
7.28
7.10
6.75
会社員等(n=391)
6.00
派遣社員・パート等(n=561)
6.06
専業主婦(n=834)
5.00
400万円未満
400~800万円未満
800~1,000万円未満
1,000万円以上
(2)仕事かプライベートか
1.(2)で述べたように、「今の生活で『幸せ』を感じるのはいつか」という質問に
対して「家族団らんのとき」
「1人でのんびりしているとき」
「パートナーと過ごすとき」
といったプライベートな時間を挙げた人が多かった。働く女性で「仕事をしているとき」
「仕事の成果が出たとき」と答えた人の割合は、それぞれ 3.5%、6.4%と非常に低い。
働く女性に仕事とプライベート、どちらが大事かと尋ねたところ、「仕事」「どちらか
といえば仕事」と回答した“仕事派”は 12.2%と、「プライベート」「どちらかといえば
プライベート」と回答した“プライベート派”の 57%を大きく下回った。働いていても、
「幸せ」を感じるのはプライベートな時間であり、仕事よりもプライベートが大切とい
う女性の意識が表れている。
また、雇用されて働く女性に対する「どこまで昇進したいか」という質問では「昇進
を希望しない」人の割合が約7割となった。総合職、一般職等すべての職種を含む会社
員全体では 57.2%、総合職に限っても 37.3%が「昇進を希望しない」と回答している。
15
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
本調査では昇進を希望しない理由については尋ねていないので推察となるが、これも仕
事よりプライベートを重視する意識の表れではないだろうか。
図表26
仕事とプライベート、どちらが大事か
(%)
働く女性全体
(n=1,334) 1.5 10.7 未婚 (n=489) 1.4 11.0 夫あり子どもなし
6.9 (n=189) 1.1 夫あり子どもあり
(n=526) 1.5 37.4 26.2 29.1 11.2 仕事
図表27
30.8 34.8 26.6 38.1 24.9 32.9 どちらかと
いえば仕事
19.6 41.3 どちらとも
いえない
13.1 どちらかといえば
プライベート
プライベート
どこまで昇進したいか
(%)
会社員(総合職) (n=51)
会社員等 (n=491)
37.3 17.6 57.2 派遣社員・パート等 (n=696)
昇進は希望しない
33.3 11.8 19.6 4.5 14.1 5.6 2.9 77.4 係長相当職まで
18.7 課長~部長相当職
役員以上
(3)子育てと仕事
①理想の働き方
結婚、出産、子育てというライフイベントは、女性にとって就業を継続するかどうか
の分岐点となる。そこで、自分自身の実際の働き方とは無関係に、
「ライフステージに応
じた女性の理想の働き方はどのようなものか」を尋ねた。
育児休業や育児中の短時間勤務等、出産や子育てと仕事を両立させるための制度の整
備は進んでいるが、末子が未就学の間は回答者の3分の2(67.4%)が、専業主婦が理
想だと回答した。子どもの成長に合わせて、専業主婦を選ぶ割合は減少するが、末子が
小・中学生の間は短期間勤務を選ぶ人が最多(48.5%)だった。
(2)の「仕事かプライ
ベートか」では“プライベート派”が圧倒的に多数であったように、
「女性の理想の働き
方」への回答からも「仕事よりプライベート、家庭や子育てを優先する」という女性が
多いことがわかる。
しかし、実際に子どもがいる会社員等に絞ってみると、異なった傾向が見られた。末
子が未就学の時期の理想を「専業主婦」と答えた人の割合は 36.6%と、回答者全体より
30 ポイントも少なかった。また、末子が小学校に入学したところで「専業主婦」を選ぶ
16
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
人の割合は 3.7%まで下がる。さらに子どもが高校生以上になれば7割以上の人が正社
員として働くことを理想としている。
図表28
女性のライフステージに応じた理想の働き方
【 回答者全体】
結婚まで
89.1
結婚から出産まで
末子が未就学
末子が幼稚園等
( %)
1.7 0.6
6.8 1.7
58.9
7.2
19.5
9.8
末子が小・中学生
12.4
20.5
4.7
44.4
25.8
48.5
39.0
子育て終了以降
40.3
38.0 29.0 15.2
7.2 3.4
10.6
8.6 3.8
11.9
13.4
【 会社員・子どもあり】
結婚まで
末子が未就学
末子が幼稚園等
29.8 36.6 32.9
末子が小・中学生
42.9 75.8
子育て終了以降
77.6
正社員
短時間勤務
4.3 1.9 17.4 5.6 3.7 29.2 6.2 1.9 13.0 7.5 2.5 10.6 7.5 59.0
末子が高校生
5.4
6.2 6.2 7.5 0.0 80.1
27.3
2.6
0.0 0.0 (%)
8.1 0.0 91.9
結婚から出産まで
2.1
3.7 2.2
67.4
38.5
末子が高校生
6.2
専業主婦
専門職・自営
1.2 1.9 1.9 1.9 その他
②働いていない理由とこれからの就労について
専業主婦に、働いていない理由と、これから働きたいかどうかを尋ねた。
現在、働いていない最大の理由を答えてもらったところ、「家事・育児のため」「働き
たいが家事・育児と両立できる仕事が見つからない」という家事や育児を理由としてい
る人の割合が、20 代で 64.9%、30 代で 65.4%、40 代で 40.7%に上った。
..
40 代以上になると、「自分の収入がなくても生活できるから」という専業主婦を選択
している人の割合が増える(40 代で 22.2%、50 代で 33.4%)。一方、子育てが一段落し
て、仕事に復帰したくても「働きたいが仕事が見つからない」(50 代 20.5%)という厳
しい現実に直面している人も少なくない。
また、今後働きたいかという質問については、
「いずれは働きたい」という漠然とした
考えの人も含めると 20~30 代では9割以上、40 代では8割以上、50 代でも6割近くが
就労を希望している。「すぐにでも働きたい」、「(家事・育児など)現在の問題が解決す
れば働きたい」という積極的に働く意向を示している専業主婦も若い年代ほど多い。
働いていない理由と併せて考えると、
「今は家事や育児に追われているが、働けるなら
働きたい」と考えている専業主婦が多いことがわかる。また、①で述べたように、子ど
ものいる会社員等では、末子が未就学の間は「専業主婦」が理想だと考える人の割合が
17
生活福祉研究
通巻 80 号
February 2012
相対的に低い。実際に働きながら子育てを経験している女性は、子育てだけでなく、働
くことも重視しているとも言える。
「育児との両立が可能である」と考える人が増えれば、
「理想の働き方」は変わってく
るのかもしれない。
図表29
(%)
60 現在働いていない最大の理由(専業主婦)
55.0 20代(n=111)
30代(n=312)
40代(n=275)
50代(n=302)
44.6 33.4 40 21.1 20 3.3 14.4 12.2 20.5 10.9 1.8 4.5 14.9 14.6 2.7 5.8 2.7 2.6 4.0 9.9 7.7 8.6 4.0 6.0 その他
仕事をしたく
ないから
健康上の理由
働きたいが仕事
が見つからない
働きたいが家事・育
児と両立できる仕
事が見つからない
図表30
20.8 19.6 9.9 4.3 自分の収入がなく
ても生活できる
家事・
育児のため
0 22.2 今後、働きたいか(専業主婦)
(%)
20代 (n=111)
30代 (n=312)
11.5
40代 (n=275)
9.1
50代 (n=302)
5.3
26.1 27.9 15.3
36.4 24.4 11.6 すぐにでも
働きたい
16.0 34.3 29.2 4.6 36.1 現在の問題が
解決すれば
働きたい
希望に合う仕事
が見つかれば
働きたい
5.4 25.2 13.8 9.0 16.4 42.4 いずれは
働きたい
とくに働く
気はない
③仕事と育児の両立のために必要なもの
「スムーズな子育てを行うために必要なものは何ですか」という質問に対する既婚女
性の回答を専業主婦、会社員等、派遣社員・パート等と、子どもの有無で比較した。
まず、仕事や子どもの有無を問わず、
「夫の協力」を挙げる割合が最も高かった。また、
親などの「家族の協力」を挙げた人が子どものいる女性では3割程度、いない女性では
2割いる。実際に子育てを経験している人も、経験していない人も子育ては1人ではで
きないと感じている。
子育てを経験している女性の中でも、働き方によって「スムーズな子育てに必要なも
の」として挙げる項目は異なっている。
専業主婦や派遣社員・パート等の女性が「夫の協力」の次に挙げたものは、
「子育ての
ための経済的なゆとり」で、それぞれ 45.2%、42.5%だった。また、
「子育てのための時
18
生活福祉研究
通巻 80 号
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間的なゆとり」を挙げる人も会社員等の女性より多かった。
会社員等では「保育所・幼稚園の整備」を 40.7%の人が選んでいる。さらに、「育児
休業等の制度を利用しやすい職場環境」(28.1%)、「職場の支援制度の充実」(24.6%)、
「上司や同僚等の理解と協力」
(19.8%)も目立った。子育て中の従業員のための支援制
度は近年充実されつつあるが、その制度を利用できる職場環境が重要なことがわかる。
図表31
スムーズな子育てのために必要なもの(夫のいる女性。3つ以内選択)
子どもあり
会社員等
派遣社員・パート等
専業主婦
会社員等
派遣社員・パート等
専業主婦
(n=167)
(n=381)
(n=803)
(n=81)
(n=118)
(n=195)
夫の協力
夫の協力
夫の協力
夫の協力
夫の協力
夫の協力
61.7%
70.3%
73.0%
70.4%
80.5%
69.3%
保育所等の整備
経済的なゆとり
経済的なゆとり
職場の支援制度
経済的なゆとり
経済的なゆとり
40.7%
42.5%
45.2%
40.7%
37.3%
34.9%
家族の協力
家族の協力
時間的なゆとり
保育所等の整備
職場の支援制度
保育所等の整備
35.3%
31.8%
33.4%
33.3%
26.3%
22.1%
時間的なゆとり
家族の協力
家族の協力
保育所等の整備
家族の協力
29.7%
32.1%
23.5%
23.7%
22.1%
職場の支援制度
保育所等の整備
保育所等の整備
経済的なゆとり
家族の協力
職場の支援制度
24.6%
22.8%
23.2%
22.2%
22.0%
21.0%
1位
2位
3位
4位
5位
子どもなし
育休等を利用
しやすい職場環境
28.1%
おわりに
以上、
「女性の幸せに関する意識調査」から、家族や結婚、子育て、仕事等の生活やラ
イフイベントに関する女性の意識を、「幸せ度」とクロスさせながらみてきた。
調査結果からは、多くの女性が家庭や子ども、人生を共に生きるパートナーである夫
や恋人に「幸せ」を感じており、また、働く女性の大半は仕事よりプライベートを重視
し、仕事での昇進を望む女性は少ないことがわかった。
1989 年に合計特殊出生率が当時の過去最低の 1.57 を記録し、社会に衝撃を与えた。
この「1.57 ショック」以降、少子化が国を挙げて解決すべき社会問題として認識され、
仕事と子育ての両立を支援する法制度の整備や、企業の取り組みが続けられている。ま
た、近年はダイバーシティ・マネジメントの一環として女性従業員の能力開発や管理職
への登用に積極的な企業も増えている。しかし、現状は少子化に歯止めはかからず、未
婚率も上昇している。管理職・役員等への登用も厚生労働省の「平成 21 年度雇用均等基
本調査」によると、課長相当職の女性がいる企業は 22.0%、部長相当職では 10.5%に過
ぎず十分進んでいるとは言えない。
「すべての女性が働くべき」「すべての女性が『家庭も仕事も』」という社会が望まし
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生活福祉研究
通巻 80 号
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いものではなく、「働く意欲のある人が自分の能力に応じ、生き生きと働ける」「子育て
や介護等がバリアにならず暮らしていける、働いていける」社会が望ましいと考えるが、
調査の結果からは、年代に関わらず「仕事も家庭も」というより「仕事よりは家庭を(選
びたい、又は選ばざるを得ない)」という女性の意識が垣間見えた。
「『幸せ』のために、最も必要なもの」を「健康」「子ども」「お金」「仕事での成功」
等の項目から一つだけ選んでもらったところ、最も多い回答は「良きパートナー(恋人・
夫)」であった。
今後、女性を「幸せ」にする「良きパートナー」たる男性の「幸せ」や生活、結婚、
子育て、生き方についての意識調査も実施する予定である。女性と男性、両者の調査を
併せて分析をすることで、少子化や雇用・仕事に関する諸問題を改善するヒントが得ら
れるものと考えている。
【調査の概要】
(1)調査対象:全国の 20 歳以上 59 歳未満の女性(㈱マクロミル登録モニター)
(2)調査方法:WEB アンケート調査
(3)調査時期:2011 年8月 30 日~31 日
(4)回 収 数:2,579 人
(5)サンプルの属性
上段:サンプル数(人)、下段:割合(%)
20~
24 歳
25~
29 歳
30~
34 歳
35~
39 歳
40~
44 歳
45~
49 歳
50~
54 歳
55~
59 歳
237
141
83
77
62
50
26
15
691
9.2
5.5
3.2
3.0
2.4
1.9
1.0
0.6
26.8
22
143
223
286
285
239
239
281
1,718
0.9
5.5
8.6
11.1
11.1
9.3
9.3
10.9
66.6
0
5
11
19
22
30
42
41
170
0.0
0.2
0.4
0.7
0.9
1.2
1.6
1.6
6.6
計
結婚経験なし
配偶者あり
配偶者なし
(結婚経験あり)
259
289
317
382
369
319
307
337
2,579
10.0
11.2
12.3
14.8
14.3
12.4
11.9
13.1
100.0
計
(注)サンプルは女性の5歳階級別人口比で収集しており、その他の属性等によるサンプル
数の補正は行っていない。
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