2016 年 1 月作成 ver.1.0 NICU 経管栄養児経口摂取・口腔衛生指導マニュアル このマニュアルは NICU 経管栄養児地域移行パスを使用して退院した乳児に対する経口 摂取・口腔衛生指導マニュアルである。退院時摂食嚥下リハビリテーションが導入されて いる場合には、担当医師(歯科医師)と訓練担当者の指導が優先する。 1.訓練を 1 段階上げられる条件:1 段階上げられるためには評価時に下のすべてが満たさ また、家族に実施する意思がない場合は強制しない。 (ア) 呼吸が穏やかで規則的である。咽頭に水分が貯留している音を聴取しない。 れる必要がある。 (イ) 心拍、酸素飽和度が安定している。 (ウ) 顔色が良好である (エ) 抱っこすることで、軽い屈曲姿勢を簡単に作り、維持できるような筋緊張を保て (オ) 抱っこの姿勢で両手が顔面の正中よりに保持できる。 る。 (カ) 安定した覚醒状態を保てる。 (キ) 吸啜中に咽頭に水分が貯留している音・むせ・顔色の変化・呼吸の乱れ・心拍の異常 な上昇・姿勢や筋緊張の異常な変化が見られない。 2.経口哺乳訓練・評価の手順 ① a 評価・訓練内容 評価・訓練時期 担当者 ・経管栄養の時間中授乳する姿勢で抱っこしてお母さんの乳 退院直後から経 看護師が 房(または温めた哺乳瓶の乳首)に赤ちゃんの鼻を触れさせ 口哺乳開始まで 家族を指 経口哺乳のための準備訓練 て、授乳のような環境で経管栄養を実施する。抱っこしてい 導する る間に赤ちゃんの表情や動きをお母さんが感じ、それに反応 することで母子のアタッチメントを促進する。 ・母子ともにリラックスできる姿勢作りをする。 ・抱っこの間に子どもの呼吸・顔色・覚醒度・緊張の状態を お母さんが観察できるように指導する ・赤ちゃんが乳首に口を近づける様子が出たら妨げない。僅 かでも口を開ける(開口反応)が確実に出たら医師に知らせ ① b る。 過敏の評価と脱感作 レット No1 参照)。 ・過敏を評価し、過敏がある場合は脱感作する(摂食パンフ ・1 日2-3回実施する。やり過ぎないように指導する。 退院直後から過 看護師が 敏が取れるまで 家族を指 導する 2016 年 1 月作成 ver.1.0 ・赤ちゃんに嫌がる様子があることはしない。嫌がるときは 控えめに行うか訓練を休むよう指導する。 ・口唇訓練を実施する(摂食パンフレット No2 参照)。 ② 口唇訓練 ・1 日 1-3 回程度を目安に、経管栄養開始前に実施する。 口唇・口腔の 過 看護師が 敏が取れたら開 家族 ・赤ちゃんが嫌がる様子があるときは嫌がらないものだけを 始し、経管栄養 を指導す 実施するよう指導する。 が終了するまで る ・看護師は訪問の度に口唇訓練方法が正しいかどうかをチェ 継続。 ックし、指導する。 ③ 口に乳首を入れる事の可否判断 ・指で口角を触れて探索反射を、指を口唇に当てて開口反応 探索反射、開口 を、指を口腔に入れて吸啜反射を確認する。 反応が確実な場 医師 ・1 段階上げられる条件が満たされたら、口にものを入れる 合 事を可能と判断する。一つでも満たされない場合は、摂食嚥 下リハビリを実施する機関に紹介し、専門的訓練を受けられ るようにする。 ④ おしゃぶり訓練 ・経管栄養中抱っこされた姿勢でおしゃぶり乳首を吸わせ おしゃぶり訓練 看護師が る。 可能と判断され 家族に指 ・おしゃぶり乳首を吸っている間、赤ちゃんの呼吸・顔色・ てから、全量経 導 覚醒度・緊張の状態を観察し、大きな変化がある場合や覚醒 口哺乳になるま が不十分な場合はおしゃぶり訓練を中止する。 で ・経管栄養時間中安定しておしゃぶり訓練をすることができ るようになったら医師に報告する。 ・赤ちゃんの口の大きさに合った乳首と評価用の哺乳瓶(容 量の小さいもの)を選んで購入し、評価の日にミルクと共に 外来に持参するよう母に伝える。 ⑤ 経口哺乳訓練可否の評価 ・赤ちゃんの呼吸・心拍・顔色・覚醒度・緊張の状態が良好 おしゃぶり訓練 ・ミルクを 10ml 作ってもらい、用意された哺乳瓶を使って できたら評価 で、開口反応・吸啜反射がある事を確認する。 経口哺乳させ、その間に 1 段階上げる条件すべてが満たされ ているかどうか確認する。同時に哺乳に要した時間も測定す ・すべての条件が満たされている場合は 5 分で哺乳できると る。 考えられる量を 1 回の経口摂取量(母乳の場合は 5 分間哺乳) が安定して実施 医師 2016 年 1 月作成 ver.1.0 と定めて経口哺乳訓練可能と判断する。一つでも満たされな い場合は、摂食嚥下リハビリを実施する機関に紹介し、専門 的訓練を受けられるようにする。 な回数に設定する。1 回の経口哺乳量が 20ml 以下の場合は ・訓練は経管栄養の回数だけ可能であるが、家族の実施可能 注入量を減らす必要はない。30ml 以上の場合は注入量から 差し引く(母乳の場合は体重の経過を見て注入量を調節す る)。 ⑥ 経口哺乳訓練 ・パスで経口摂取訓練の可否、1 回量(母乳の場合は時間)、 経口哺乳訓練可 看護師が 回数をチェックし経口哺乳訓練の指導をする。 能と判断された 家族に指 ・訓練は経管栄養の前に行うが、赤ちゃんの呼吸・顔色・覚 ら開始 導 醒度・緊張の状態が良好なときのみにするよう指導する。 ・訓練の前には口唇訓練を行う。 ・姿勢は抱っこを基本とする。哺乳に要した時間を測定し, 受診前には平均的に要した時間、1 日に実施できた回数をパ スに記入する。哺乳中にむせたり,喉がごろごろ鳴ったり、 呼吸・顔色・覚醒度・緊張の状態が悪化した場合は哺乳を中 止する。 ・経口摂取の後げっぷを出してから経管栄養を始める。げっ ぷが出ないときは、嘔吐を防ぐ姿勢で経管栄養の準備をする よう指導する。 ・赤ちゃんの呼吸・顔色・覚醒度・緊張の状態が良好でない ときは口唇訓練、おしゃぶり訓練、抱っこでの経管栄養とす る。 ⑦ 経口哺乳開始後の評価 パスで哺乳に要した時間をチェックし、哺乳時間を 10 分→ 価し、指示する ・1 段階上げる条件すべてが満たされていることを確認し、 定期受診時に評 15 分と延長しつつその時間内に哺乳できると予測される量 に経口哺乳量を増やす(母乳の場合は時間を 5 分→10 分→15 分と延長する)。1 項目でも満たされていなかったら、経口哺 乳量を減量または経口哺乳を中止して、摂食嚥下リハビリテ ーションを実施する機関に紹介する。 ・訓練回数と注入量の調整は⑤を参照して実施する。 ・1 歳または歯の生え始めのどちらかに至っても栄養の全量 を経口摂取できない場合は、経口哺乳訓練を継続しつつ摂食 医師 2016 年 1 月作成 ver.1.0 ⑧ a 摂食嚥下リハビリテーション介入後の経口摂取訓練と経管栄養継続 嚥下リハビリテーションを実施する機関に紹介する。 ・訓練機関が発行する訓練手帳を参照して経口摂取訓練を自 摂食嚥下リハ介 ・経口摂取訓練と経管栄養の両者が円滑に行えるよう 1 日の で 宅で問題なく実施できるよう援助・指導する。 入後パス終了ま 看護師が 家族に指 導 ⑧ b 摂食嚥下リハビリテーション介入後の経管栄養管理 プランを工夫して指導する。問題があれば、パスに記入する。 ・子どもの発育状態を見て経管栄養量を調整し、指示する。 定期受診時に評 ・呼吸・心拍・顔色・覚醒度・緊張の状態が悪化しないかど 医師 価し、指示する うかを確認し、悪化している場合はパスの特記事項に記入 し、経口摂取訓練を中止・減量して速やかに摂食嚥下リハビ リテーション機関を受診するよう伝える。 (ア) 摂食嚥下リーフレットを No2 を参考として口腔衛生指導を開始する(看護師)。歯 2.口腔衛生 が生えたら事務局から送られたデータベースに登録された歯科を家族に提示し、 (イ) 口の中をチェックし、歯科に指導されたとおりの口腔衛生が実施されているか確 受診するよう伝える(医師)。 認する(看護師)。パスにて定期的に歯科を受診していることを確認し、受診がない 場合は受診するよう指導する(医師)。 2016 年 1 月作成 ver.1.0 図1経口摂取・口腔衛生指導の流れ NICU退院時 過敏なし ( 退 院 病 院 ) 医 師 が 判 断 乳首可 哺乳可 哺乳不可 • 経口哺乳のための準備訓練 • 過敏の評価と脱感作 NICU 看護師 が指導 • 経口哺乳のための準備訓練 • 口唇訓練 訪 問 看 護 師 が 指 導 • 口唇訓練 • おしゃぶり訓練 • 口唇訓練 • 経口哺乳訓練(量を徐々に増やす) • 経口摂取のための準備訓練 • 口唇訓練 • 摂食嚥下リハに紹介 家族の希望で 医師が実施 発行元:東京療育ネットワーク 事務局:東京都立小児総合医療センター医事課医療連携室 e-mail:[email protected] website:http://tokyo-ryouiku-network.jp/
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