2015 第 2 回クリエイターセミナー コンテンツクリエイターとしての歩み 講師:株式会社 ムームー 代表取締役社長 森川 幸人 氏 平成 27 年 5 月 19 日(火)に、いばらきクリエイターズネットワーク(ICN)会員を対象に、 グラフィック・クリエイターの森川幸人さんをお招きし、第 2 回クリエイターセミナーを開催 しました。 【実施概要】 □日 時:平成 27 年 5 月 19 日(火)17:00~18:30 □場 所:いばらきクリエイターズハウス(ICH) <つくば市松代> □参加者:19 名 □テーマ:コンテンツクリエイターとしての歩み 【講師プロフィール】 森川 幸人 氏(株式会社ムームー ・ ・ ・ ・ 代表取締役社長) グラフィック・クリエイター。1959 年岐阜県生まれ。 1983 年筑波大学芸術専門学群卒業。 1995 年株式会社ムームー設立 同代表取締役。 主な仕事は CG 制作、ゲームソフト、iPhone アプリ開発 ・ 2004 年「くまうた」で文化庁メディア芸術祭 審査員推薦賞、 2011 年「ヌカカの結婚」で第一回ダ・ヴィンチ電子書籍大賞 大賞受賞。 ・ 代表作は、 「アインシュタイン」 、 「ウゴウゴ・ルーガ」 (テレビ CG) 「ジャンピング・フラッシュ」 「アストロノーカ」 「くまうた」(ゲームソフト) 「マッチ箱の脳」 「テロメアの帽子」 「ヌカカの結婚」(著書) 「ヌカカの結婚」 「アニマル・レスキュー」「ねこがきた」など(iPhone アプリ) 森川さんは筑波大学出身。これまで「エディトリアル・デザイン」「イラスト」「CG 制 作」「ゲームソフト制作」「iPhone アプリ開発」と、幅広い分野の実績があります。今回のセ ミナーでは、森川さんがこれまで歩んできたコンテンツクリエイターとしての歩みやクリエイ トに対する考え方などをお話しいただきました。 大学卒業からこれまで、就職することなくフリーランスでここまで活動してきた森川さん。 語り口はとてもユニークで柔らかく、若手クリエイターたちは、どんどん話に引き込まれてい きました。ここでは、森川さんの講演内容と質疑応答の内容をいくつかご紹介します。 ページ 1 【クリエイターとしての歩み】 森川さんは、これまで取り組んだ分野の変遷を、以下のように表現しました。 「挫折」「飽き」と表現されていますが、既存の「出来上がった」分野の決まり事やこだわ りに対して違和感を覚えたり、手慣れてしまったタイミングで、森川さんは新たなことをスタ ートさせてきました。新しいことを求めてキョロキョロするタイミングと、世の中に新たなデ バイス(簡易に CG・アニメーション製作ができる PC、プレイステーション®、iPhone)が出 るのが、偶然かどうか、シンクロしていたのです。 質疑応答では、「新しい分野の仕事の声がかかるのがなぜか」「なぜ芸術系のバックグラウ ンドを持つ森川さんが人工知能(AI)という高度な工学的数学の知識が必要なゲームが作れる のか」という質問が出ました。森川さんの答えは、 「面白そう」「やりたい」と言っていて、話が来たらとにかく 「出来ます」と言ってしまうこと。 やりたいことがはっきりしているので、手法はあとで勉強すればいい、慎重になりすぎない こと、といったことがポイントとして挙がりました。 ちなみに森川さんは人口知能(AI)の知識を得るのに、半年ほどゲーム制作を止めて AI の 勉強ばかりしていたとのことです。その成果はゲーム制作に留まらず、人口知能(AI)の本 「マッチ箱の脳」の出版にもつながり、その分野ではかなりの評判を呼びました。ゲーム業界 よりも人工知能を研究している分野からの評価は高かったと回想しています。 ページ 2 【クリエイトに対する考え方】 森川さんは、3K(K…かわいい K…かんたん(ゆるい)K…かわってる)コンテンツを作風と したクリエイト活動を行っています。そして、クリエイターとしての信条として、以下の 7 つ を挙げました。 (1)好奇心に忠実であろう。 (2)飽きる気持ちに忠実であろう。 飽きることは、クリエイターからパワーを奪う。「せっかくここまでやったから」 「世の中から求められているから」では続けないようにする。 (3)なるべく自分を許さないようにしよう。 クリエイターとしてよいものを作ることを追及することが大切。仕事に慣れてくると それを怠りがち。スポーツの世界でいう「スーパーリカバリー」が起こらなくなる。 (4)嫉妬する気持ちはさっさと認めよう。 嫉妬した時に、そのことをはっきり認めないと、歪んだ方向(自分の運のなさを僻 む、相手を妬むなど)にエネルギーが流れる。ライバルがいいものを作った時、「い いですね」でなく「嫉妬しました」と言っている。 (5)人のモノは絶対に盗まない。 コピーが出回る世の中でも、せめてクリエイターくらいは、人のモノを盗まないこと を信条に持っておくべき。 (6)明日(夢)のために生きないようにしよう。 フリーのクリエイターは、自分の才能や作品に対する自負や恍惚を持つ一方、先々の ことや自分の才能自体についての不安も抱えている。今持っている好奇心、今やりた いことにフォーカスを当てていくと何とかなる。サンプルは森川氏自身。 (7)死んだらいくらでも休める。 今でも徹夜する。クリエイターである以上、覚悟が必要。 この他、森川さんがこれまで制作してきた作品を、創作過程で考えてきたことや影響を与え た人・本・作品の紹介を挟みながら鑑賞しました。電子書籍作品では、科学と絵本と擬人化が 合わさった作品を発表していますが、影響を受けた本の一覧を見ると、確かな知識に裏打ちさ れた森川ワールドの奥深さを感じさせました。 ちなみに、森川さんが手がけた「ヌカカの結婚」「テルメアの帽子」「カルシノの贈り物」 の 3 作品は電子書籍大賞を受賞しています。 ページ 3 森川さんは、若手クリエイターが抱えている恍惚と不安を自らもずっと抱え続けてきて、そ れでも今もクリエイターとして生きている姿を見せるために今回のセミナーの講師を務めたと お話しされました。フリーランスのクリエイターの大先輩の話は、若手クリエイターの決意と 自覚を再認識する機会になったと思います。 最後は集まった若手クリエイターと交流会を開き、締めくくりました。 ページ 4
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