学級規模と教員一人当たり生徒数 ■■OECD 加盟国では、初等教育段階の平均学級規模は一クラス 21 人超だが、他の G20 加盟国では、概して学級規模がもっと大きい。 インディケータ D2 ■■2000 年から 2011 年には、初等教育の学級規模が縮小傾向にあるが、2000 年に学級規 模が比較的大きかった国(例えば、韓国、トルコ)では特にその傾向が顕著である。 ■■OECD 加盟国の平均では、一クラス当たり生徒数は初等教育より前期中等教育の方が 2 人以上多い。 図 D2.1. 初等教育段階の平均学級規模(2000 年、2011 年) 一クラス当たり生徒数 40 2011年 2000年 30 20 10 ギリシャ ルクセンブルグ ロシア エストニア オーストリア スロバキア共和国 ポーランド アイスランド イタリア スロベニア フィンランド チェコ共和国 メキシコ アメリカ合衆国 ポルトガル デンマーク ハンガリー ドイツ 3 ベルギー ︵フランス語圏︶ スペイン オーストラリア 2 フランス アイルランド イギリス 1 ブラジル インドネシア アルゼンチン 韓国 トルコ イスラエル 日本 中国 チリ 0 1. 調査年は 2011 年ではなく 2010 年。 2. 国公立教育機関のみ。 3. 調査年は 2000 年ではなく 2001 年。 左から順に、2011 年の初等教育における平均学級規模が大きい国。 資料:OECD。アルゼンチン、中国、インドネシアはユネスコ統計研究所(世界教育指標プログラム)。2011 年のデータは 表 D2.1。2000 年のデータはホームページの表 D2.4。付録 3 の注を参照(www.oecd.org/edu/eag.htm) 。 StatLink:http://dx.doi.org/10.1787/888932851668 ⹅ 政策との関連 学級規模と教員一人当たり生徒数は、教育をめぐる議論の中でもよく取り上げられる テーマであり、また、生徒が受ける総授業時間数(インディケータ D1 参照) 、教員の平 均勤務時間(インディケータ D4 参照)、さらには教員の勤務時間のうち授業とその他の 業務に充てられる時間の配分とともに、各国の教員数を決定する要因である。また、学 級規模と教員一人当たり生徒数は、教員の給与(インディケータ D3 参照)及び教員の 年齢構成(インディケータ D5 参照)とも相まって、教育機関に対する消費的支出の水 準にも少なからず影響する(インディケータ B6 及びインディケータ B7 参照)。 学級規模が小さい方が、教員は生徒一人ひとりのニーズに応えることができ、生徒を 授業に集中させるのに要する時間を減らすことができるので有益であると一般に理解 されている。だが、規模が小さい学級の方が特定の生徒グループ(例えば、社会経済 394 的背景が恵まれない生徒)には効果的であることを示す研究結果はある(Finn, 1998; Krueger, 2002; Piketty, T. and M. Valdenaire, 2006)ものの、全般的には、学級規模の 違いが生徒の成績に影響を及ぼすという証拠は不十分である。 「国際教員指導環境調査 (Teaching and Learning International Survey, TALIS) 」の結果からも、学級規模と授 業や学習に充てられる時間との直接的な強い関連性は示されていない(コラム D2.1) 。 それよりも、正の関連があることを裏付ける研究結果が多いのは、学級規模が小さいこ とと、教員の勤務条件や成果の側面(授業の革新を可能にする高い柔軟性が確保される、 インディケータ 教員の意欲や働きがいが向上する、など)との関係である(Hattie, 2009; OECD, 2009) 。 教員一人当たり生徒数は、教育資源がどのように配分されているかを示す指標である。 教員一人当たり生徒数を少なくしようとすれば、教員給与の上昇、教員養成への投資、 教育機器・用具への投資拡大、あるいは、有資格の教員よりも給与の低い場合の多い教 育助手及びその他の準専門的職員などの増加、といった問題が生じることが多い。ま た、特殊教育の必要な生徒を普通学級に統合するケースが増える中で、専門職員の採用 増と支援サービスの拡充により、教員一人当たり生徒数を減らすための教育資源の利用 が制約を受ける可能性もある。 ⹅ その他のハイライト ■■データのある OECD 加盟 30 か国中 27 か国では、初等教育よりも中等教育の方が教員 一人当たり生徒数は少なくなるが、学級規模は大きくなる。教員一人当たり生徒数 が、初等教育から中等教育に進むと減少するのは、教育段階が上がると年間授業時間 が増える傾向があることを反映している。 ■■OECD 加盟国の平均では、中等教育段階の教員一人当たり生徒数は、私立教育機関の 方が国公立教育機関よりもやや少ない。メキシコはその顕著な例で、中等教育段階の 国公立教育機関の教員一人当たりの生徒数は、私立教育機関より 17 人近く多い。一 クラス当たり生徒数については、初等・前期中等教育段階の場合、OECD 加盟国の平 均で、国公立教育機関の方が私立教育機関より多いが、その差は 1 人以下である。 ■■学級規模は各国内でかなりばらつきがある。ブラジル、アイスランド、マレーシア、 メキシコ、トルコでは、学級規模が最小の学級と最大の学級の差が 30 人にも達する。 この差が生じる理由としては、一部には、学校のある地域社会の規模の違いや、国公 立教育機関と私立教育機関との差異にあると考えられる(コラム D2.1)。 ⹅ 推移 2000 ~ 2011 年の間に、2000 年と 2011 年のデータがある国では、初等教育段階と前期中 等教育段階の平均学級規模はともに 1 人減少し、OECD 加盟国間の学級規模の差は縮 まっているようである。例えば、前期中等教育段階では、学級規模の範囲は、2000 年 にはアイスランドの 17.4 人から韓国の 38.5 人までであったが、2011 年にはエストニアの 16.7 人から韓国の 34.0 人までとなっている。学級規模が比較的小さかった国は拡大し、 デンマークとアイスランドはその傾向が最も顕著である。 395 D2 chapter D 学習環境と学校組織 ⹅ 結果と解説 初等教育・前期中等教育の平均学級規模 初等教育段階では、OECD 加盟国の平均学級規模は一クラス 21 人を上回るが、データのあるすべて の国を見ると、その数にはかなりばらつきがある。ルクセンブルグでは 16 人未満であるのに対し、チ D2 リ、中国では一クラス平均 30 人超である。データのある国の半数近く(オーストリア、チェコ共和国、 エストニア、フィンランド、ギリシャ、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグ、メキシコ、ポー ランド、ロシア、スロバキア共和国、スロベニア)では、平均学級規模が一クラス 20 人を下回る。 前期中等教育段階(普通プログラム)では、OECD 加盟国の平均学級規模は 23 人を上回る。データ のある国の中では、エストニア、アイスランド、ルクセンブルグ、ロシア、スロベニア、イギリスの 20 人未満から、韓国の 34 人、中国のほぼ 53 人までと開きがある(表 D2.1) 。 一クラスの平均生徒数(学級規模)は、初等教育より前期中等教育の方が多い。ブラジル、中国、ギ リシャ、インドネシア、日本、韓国、ルクセンブルグ、メキシコ、ポーランドでは前期中等教育の増 加分は 4 人を上回る。一方、イギリス、エストニアでは、初等教育より前期中等教育の方が一クラス 当たりの生徒数が少ない(エストニアの差はイギリスほど大きくない)(図 D2.2) 。 初等教育の平均学級規模は、2000 ~ 2011 年には、両年のデータがある国の平均でわずかに縮小した (2000 年の 22.6 人に対して 2011 年は 21.4 人) 。学級規模の縮小は、在学者数が減少した国で生じる可 能性が高いと考えられるが、それだけではなく、この間に学級規模の見直しを行った国があったこと も影響している( 『図表でみる教育 OECD インディケータ(2012 年版) 』のインディケータ B7 参照)。 比較可能なデータのある国では、2000 年に学級規模が比較的大きかった国(例えば韓国、トルコ) で学級規模が著しく縮小している(4 人超の縮小)。それに対し、2000 年に学級規模が最も小さかっ た、デンマーク、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグなどでは、学級規模は拡大するか横ばい 図 D2.2. 教育段階別平均学級規模(2011 年) 初等教育 一クラス当たり生徒数 60 前期中等教育 40 20 2 ベルギー ︵フランス語圏︶ アイルランド トルコ エストニア スロベニア ロシア イギリス アイスランド ルクセンブルグ スロバキア共和国 フィンランド デンマーク チェコ共和国 ハンガリー イタリア オーストリア ギリシャ ポーランド ポルトガル アメリカ合衆国 OECD各国平均 オーストラリア ドイツ スペイン フランス アルゼンチン 1 メキシコ イスラエル ブラジル チリ 日本 韓国 インドネシア 中国 0 1. 調査年は 2011 年ではなく 2010 年。 2. 国公立教育機関のみ。 左から順に、前期中等教育の平均学級規模が大きい国。 資料:OECD。アルゼンチン、中国、インドネシアはユネスコ統計研究所(世界教育指標プログラム)。表 D2.1。付録 3 の注を参照(www.oecd. org/edu/eag.htm)。 StatLink:http://dx.doi.org/10.1787/888932851687 396
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