Untitled - 社労士事務所 HRMオフィス

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目次
1.セクハラは労務リスク ............................................................................................. 3
2.問われる使用者責任 ................................................................................................ 3
3.セクハラとは?(イエローカード、レッドカード) ................................................ 4
4.セクハラの特徴 ....................................................................................................... 6
5.最近のセクハラ判例 ................................................................................................ 7
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1.セクハラは労務リスク
会社は、さまざまな労務リスクに曝されています。これは、人を雇用する以上、避
けて通れない問題と言えるでしょう。
そして、リスクへの対処を誤ると、訴訟、賠償・罰金、風評被害など、有形・無形
の損害を会社にもたらします。
「発生要因」から労務リスクを分類すると、次の3つになります。
①コンプライアンスリスク:法令違反、配慮義務違反がもたらすリスク
②安全・健康リスク:メンタルヘルス障害も含む従業員の安全・健康障害がもたらす
リスク
③情報漏洩リスク
また、そのリスクがもたらす「結果」から分類すると、次の3つになります。
①経費発生リスク:損害賠償、罰金・過料、訴訟費用などの直接的な支出と、従業員
が働けなくなってしまうことによる損失など
②訴訟、行政処分リスク
③風評被害リスク
セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)は、さまざまな労務リスクのひとつです。
上記の「発生要因」でいえば、①のコンプライアンスリスクと言えますが、②の安全・
健康リスクの要素もあります。また、そのもたらす「結果」の面では、①~③のすべ
てが起こり得ます。
特に、会社側に重要な問題だという認識がなく、予防体制をとっていなかったり、
問題が発生しても軽く考えて、対応を誤った場合、傷口がさらに広がり、取り返しの
つかないことになります。
たとえば、セクハラに関して、こんな風に思っていませんか?
「当事者の問題。会社が関知するところではない」
「被害者の主観に左右されるのはおかしい」
「誘いを断ろうと思えば断れるはずだ」
もしこんな認識が少しでもあれば、直ちに改めましょう。それが、会社を守り、自
身を守る第一歩なのです。
2.問われる使用者責任
セクハラについて、
「当事者の問題。会社が関知するところではない」という認識は
改めるべきと述べました。それは次の2つの点からです。
①会社の安全配慮義務
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②男女雇用機会均等法が定める会社の義務
①会社の安全配慮義務
会社の安全配慮義務は、労働契約に付随して、使用者が当然に追う義務とされてい
ます。
使用者が配慮すべきことのひとつに、快適な就業環境をつくり、維持することがあ
りますが、この中には、セクハラによって就業環境が害されないようにすることも入
るのです。
つまり、セクハラ防止は、使用者が当然に負うべき配慮義務なのです。
したがって、セクハラが起こった場合、会社は配慮義務違反を問われ、その結果と
して、損害賠償を求められることが多いのです。
②男女雇用機会均等法
2007年4月1日から施行されている改正男女雇用機会均等法によって、会社に
はセクハラ対策が「措置義務」として課されるようになりました。改正前は「配慮義
務」でしたから、義務のレベルが上がっているのです。
均等法に基づいて定められたセクハラ指針では、「事業主が講ずべき措置」として、
次の4つを上げています。
(1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
(2)相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(4)(1)~(3)までの措置に併せて実施すべき措置
3.セクハラとは?(イエローカード、レッドカード)
セクハラとは、
「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する従業員の対
応により当該従業員がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により
当該従業員の就業環境が害される」こと(男女雇用機会均等法第11条)です。
セクハラには「対価型」と「環境型」があります。
「対価型セクシュアルハラスメント」とは、従業員の意に反する性的な言動に対す
る従業員の対応(拒否や抵抗等)により、その従業員が解雇、降格、減給等(労働契
約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等)の
不利益を受けることです。
「環境型セクシュアルハラスメント」とは、従業員の意に反する性的な言動により
従業員の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等
その従業員が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
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厚生労働省パンフレット「悩んでいませんか?職場のセクシュアルハラスメント」
より
どのような行為がセクハラになるのか、旧日経連の具体例が分かりやすいので、ご
紹介します。
(1)レッドカード
①雇用上の利益や不利益の与奪を条件に性的誘いをかけるなどをする
②性的な嗜好などによって人事管理の差別的取扱いをする
③弾圧的に性的行為に誘ったり執拗に交際の働きかけをする
④相手の身体への一方的な接近や接触をはかる
⑤性的言動によって極度に不快な職場環境をつくる
⑥人格を傷つけかねない性的評言や性的風評をする
(2)イエローカード
①性別による差別的発言や蔑視的発言をする
②性的な言動によって正常な業務の遂行を妨害する
③性的な言動によって望ましくない職場環境をつくる
④性的に不快感をもよおすような話題づくりや状況づくりをする
⑤不必要に相手の個人領域やプライベートに侵犯する
(「セクハラ防止ハンドブック」日経連出版部より抜粋)
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4.セクハラの特徴
(1)主導権は被害者にある
「セクハラ判定の主導権は被害者にある」これがセクハラの特徴です。
よく、
「Aさんが多少、性的な冗談を言っても何も言われないのに、自分が同じこと
を言うと『セクハラだ』と言われる。差別だ」とぼやく人がいますが、セクハラに関
しては、このようなことも「あり」です。
つまり、その人がどう感じるか・どう受け止めるかが、言い方を変えると、その人
が精神的苦痛を感じるかどうかが、セクハラの判断基準のひとつになるのです。
また、どのような行為がセクハラになるか、事例を上げましたが、必ずしもこれに
限定されるわけではありません。
「平均的な女性従業員・男性従業員の感じ方」が基準
となるのです。
(2)地位が高い人ほどリスクが大きい
食事などに誘った本人は、
「都合が悪かったり、気が乗らなければ断ってくれていい」
と思っていても、誘われた方は、そのように受け止めていないことが多いものです。
そして、このようなことが、「対価型セクハラ」につながります。
特に、管理職など、地位の高い人ほど、そのリスクは高くなります。前述の通り、
セクハラは、相手の受け止め方がポイント。役職についている人は、十分注意しまし
ょう。もちろん、誘いを断った途端、厳しく当たり始めるなどという行為は、絶対に
してはいけません。
これに関連して、最近多いのが、「擬似恋愛型セクハラ」(3月15日・日本経済新
聞夕刊)です。これは「上司が部下の女性に恋愛感情を抱いて交際などを求める」行
為です。記事は、
「部下である女性は誘いを断りにくい。そこに気付かず『自分は男性
として好かれている』と勘違いする。セクハラへの認識の甘さゆえだが、代償は大き
い」と指摘しています。これも広い意味で対価型セクハラに該当すると言えるでしょ
う。
(3)女性も加害者になり得る
改正男女雇用機会均等法により、女性から男性に対するセクハラも法規制の対象と
なりました。女性もセクハラの加害者になり得ますので、注意しましょう。
(4)派遣社員に対するセクハラは派遣先が責任を負う
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労働者派遣法で、男女雇用機会均等法第11条(セクハラ)の規定は派遣先を事業
主をみなすと定められています。つまり、セクハラについては派遣先が使用者責任を
負うのです。もし派遣社員から「セクハラを受けた」という苦情の申し立てがあった
場合は、派遣先は適切な対応を取らなくてはなりません。
(5)メンタルヘルスなどの「二次被害」につながりやすい
セクハラを受けた被害者が、精神的苦痛を被り、その結果メンタルヘルス障害にな
るケースが少なくありません。この場合、メンタルヘルス障害に対する会社の責任も
問われてきます。
会社は、セクハラ防止に努めることはもちろんですが、おこってしまった場合は、
被害者のメンタル面のケアも十分に行う必要があります。
5.最近のセクハラ判例
(1)忘年会での行為もセクハラにあたる(平成19年3月13日・広島地裁)
忘年会での席上、男性社員が女性社員に抱きつきなどの行為をしたことが、セクハ
ラとして訴えられました。ただ、その席上、原告の女性社員の一部も、一緒に騒ぎ嬌
声を上げていたということです。
これについて、裁判所は次のような判断をし、会社および被告の男性社員に総額8
50万円支払うよう命じました。
①忘年会は勤務時間内に行われ、営業の慰労を兼ねたものであることから、業務の
一部、あるいは少なくとも業務に密接に関連したものと認められる。
②原告が被告に同調し騒ぎ立てたのは、宴会の雰囲気を壊してはならないという思
いや上司に当たる被告への遠慮からであったという側面も否定できない。ただし、
原告にもとの落ち度があったといえるから、過失相殺となる。
(2)行為自体は短時間でそれほど激しくなくても被害者の精神的苦痛は大きい(平
成19年12月21日・さいたま地裁)
営業の帰りの車で、助手席の女性にキスをしようとし、拒否したものの、その行為
が原因で心的外傷体験による心因反応が生じたとして、被害者の女性が訴えた事件で
す。その行為以前も、被告の男性は被害女性に対し、新婚生活のことを聞くなど性的
な言動を行っていました。
裁判所は、
「本件行為自体はごく短時間のことであり、行為態様もそれほど激しいも
のではないから、本件行為によって(中略)重篤な症状が出ることは、通常生ずべき
結果とはいえない」としつつも、
「本件行為に至る経緯、当該行為に対する一般的な感
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受性を前提とすれば、本件行為が原告に与えた精神的影響は大きく、一時的に原告の
精神状態に看過できない影響を及ぼすかもしれないことは一般に予見可能であったも
のと認めるべき」と認定、被告に対し232万円の支払を命じました。
現代のビジネス社会は、ストレスが増しています。
過度なストレスがかかると、人は、自分がメンタルヘルス障害となるか、他社への
攻撃、すなわちハラスメント行為に及びます。ハラスメントの代表例がセクハラです。
そして、ひとたびセクハラが起こると、被害者本人はもちろんですが、会社も多大
な損害を被るのです。そのために会社は前述のセクハラ対策をしっかり取る必要があ
りますが、最後はひとりひとりの自覚なのです。
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社労士事務所
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設立:2006 年 7 月 7 日
特定社会保険労務士
杉山
秀文
登録番号:第 13040544 号
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