第4章 先端技術情報例 A 新素材・新技術 5 5 4 4 01-a 01-a ▲ 京大、有機系エ 京都大学とNTT、パイオニア、日立製作所、三菱化学、ロームの5社は、有機系エレクト レクトロ二クス ロ二クス・デバイス技術による産業創出を目的とした「包括的産学融合アライアンス」の における産学連 成果について発表した(ニュース・リリース)。京都大学と5社は、2002年8月から、国 携の第1回成果 際融合創造センター(京大IIC)を核に、「有機系エレクトロニクス・デバイス」を包括 的テーマとした研究開発を進めてきた。このアライアンスでは、有機系エレクトロニク 発表を行う (発表資料要約)スの要素技術である分子設計や有機合成、高分子合成・複合化、特性評価とプロセス開 発、機能デバイス化について研究を行っている。テーマごとに、5社のすべてから選任さ れた研究者が京都大学の研究者に協力した。2003年4月上旬までに開催される学会で発 表を予定している成果のうち、今回は以下の4件について報告している。(1)「新規フ ラーレン誘導体の合成」(代表者:京大化学研究所助手 村田靖次郎氏)。(2)「チタ ニアナノチューブを用いる色素増感太陽電池の高効率化」(代表者:京都大学大学院工 学研究科講師 石田謙司氏)。(4)「電子材料接合界面の量子電磁相互作用の解析」( 代表者:京都大学大学院工学研究科講師 立花明知氏)。 2003/3/18 有機系エレク 電子デバイス NE トロニクス、 産業、ナノテ ONLINE デバイス技術、ク産業 チタニアナノ チューブ、フ ラーレン誘導 体、ナノギャ ップ電極 シンガポール大学電気工学科助教授でシンガポール国立データ記憶研究所ナノスピン電 子工学プログラムマネージャーのYihong Wu氏は2002年11月29日、東京都内で開催され た「ASIAN NANO 2002」の最終日に「Carbon Nanowalls and the Associated Nanostructures」と題して招待講演。この中で、「独自に開発したカーボンナノウォー ルのFED(Field Emission Display、電界放出ディスプレイ)用電極としての特性を評価 したところ、これまでに公表されているカーボンナノチューブより優れている」ことを 示すデータを発表した。ナノチューブよりも低い電界強度で電流を発生でき、真空度の 低い環境でも機能することから、「安価なFEDの製造に道を開く」(Wu氏)と本誌に話 した。 カーボンナノチューブ(CNT)を開発・製造するベルギーのベンチャー企業のnanocyl社 (本社Namur、http://www.nanocyl.com/)は、1年後までに数kg/日規模のパイロット プラントを立ち上げ、それに併せて価格を数百円/gと、従来の1/100程度にまで引き 下げることを、『日経ナノテクノロジー』による取材の中で明らかにした。また、「同 じプラントで、単層から多層まで多様なCNTを生産でき、長さをそろえるための裁断時 に化学修飾することで機能性も付与できることが、我々の強み」と、Business Development ManagerのFrederic Luizi氏は説明する。 シンガポール大 のWu氏、FED 用電極としてカ ーボンナノウォ ールはナノチュ ーブより優れる ことを示す ベルギーnanocy l社、カーボンナ ノチューブの価 格を1/100に カーボンナノ 電子デバイス Biz Tech 2002/12/3 ウォール、FE 産業、ナノテ D(Field Emi ク産業 ssion Display、 電界放出 ディ スプレイ) カーボンナノ 電子デバイス Biz Tech 2003/2/28 チューブ、 産業、ナノテ nanocyl社 ク産業 △ 2 ● 1 ○ 01-a NKK、カーボン JFEグループのNKKは17日、ナノテクノロジー(超微細技術)の代表的な材料であるカ ナノチューブを ーボンナノチューブをテープ状に合成することに成功したと発表した。プラズマ・ディ テープ状に合成 スプレー・パネル(PDP)に代わる表示装置として開発が進んでいる省電力型の薄型テ レビ向けのディスプレー材料などとして量産化をめざす。粉末状の従来製品に比べあら かじめテープ状になっているため加工しやすいのが特徴。任意の長さに合成でき、曲げ ることも可能という。アーク放電を使う製法で、放電の仕方など一定の条件下でカーボ ンナノチューブが薄いテープ状になることを発見した。これまで放電でカーボンナノチ ューブを作る場合、放電でできた煤(すす)の中に数ー20%程度含まれるカーボンナノ チューブを抽出し高純度化していた。新製法では当初からほぼ100%の純度が得られ、生 産性を高めることができる。 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 5 ナノテクノロ 電子デバイス Biz Tech 2002/12/17 ジー、カーボ 産業、家電産 ンナノチュー 業、ナノテク ブ、プラズマ 産業 ・ディスプレ ー・パネル (PDP) ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 01-a 4 第4章 先端技術情報例 − 55 − 5 5 7 4 4 4 01-a 01-a 01-a − 56 − GSIクレオスの GSIクレオスは、2002年1月にサンプル出荷を開始した新しいナノカーボン素材「カーボ 新ナノカーボン、 ンナノバレル」が、複合材料や、電気電子的特性を生かした用途で応用開発が進められ 複合材や電気特 ていることを明らかにした。この素材は直径および長さともに約50nmで、すでに2001 年から製造および販売を開始しているカップスタック状カーボンナノファイバー「カル 性の用途に ベール」の一部を短く抜き取ったような状態のもの。 シンガポール国 シンガポール国立データ記憶研究所(DSI=Data Storage Institute)ナノスピン電子工学 立データ記憶研、 プログラムマネージャーで、国立シンガポール大学電気工学科助教授のYihong Wu氏は 独自開発の“壁 、2000年9月に独自に開発した“壁状”の新しいナノカーボンである「カーボンナノウ 状”ナノカーボ ォール(Carbon nanowalls)」を設計通りに作製する研究を進めているが、2002年に入 ンで次々と成果 り、数々の新しい成果を出している。これまでに、様々な基板材料、原料ガス、触媒を 実験に用いて、設計した通りに壁を立てる条件が徐々に明らかになってきた。将来的に は、新しいデータ記憶技術にこの新物質を用いたい考えである。 GSIクレオス、 電子デバイス Biz Tech 2002/5/2 カーボンナノ 産業、ナノテ バレル、カー ク産業 ボンナノファ イバー 電子デバイス Biz Tech 2002/7/2 産業、コンピ ュータ産業、 ナノテク産業 シンガポール 国立データ記 憶研究所、カ ーボンナノウ ォール 米国のIBM社のT. J. Watson Research Center(ニューヨーク州Yorktown Heights)は 、カーボンナノチューブ(CNT)を使って作製した電界効果トランジスタ(FET)で、 従来のシリコン系で試作されている現行で最高レベルの性能を持つFETを、さらに上回 る性能を達成。CNTを使うFETの構造は、従来のMOSFET(金属酸化膜半導体FET)と 同様のもので、性能は相互コンダクタンスで比較した。学術誌「the journal of Applied Physics Letters」の2002年5月20日号に、この研究成果に関する論文(Shalom Wind 米IBM社、カー ボンナノチュー ブFETでシリコ ン系を上回る性 能を達成 カーボンナノ 電子デバイス Biz Tech 2002/5/21 チューブ、電 産業、ナノテ 界効果トラン ク産業 ジスタ(FET) 、MOSFET (金属酸化膜 半導体FET) 三井物産の100%子会社であるカーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート( CNRI,本社東京)は,東京大学大学院工学系研究科助教授の丸山茂夫氏と共同で,単層 カーボンナノチューブ(SWCNT)を高品質化する新製法を開発し,サンプル製造を開始 する。丸山氏の開発したACCVD(Alcohol Catalytic Chemical Vapor Deposition)法を 用いることで,非晶質カーボンや多層カーボンナノチューブ(MWCNT)といった不純 物がほとんど生成することなく,欠陥のない高品質のSWCNT(写真)を選択的に生成で きる。1g当たり2000円以下の製造コストを目標に,年産1tレベルの量産化も検討してい るという。丸山氏の開発したACCVD法は,触媒を利用した化学気相成長(CVD)法の一 種で,アルコールを原料に,固体触媒上の気相反応によってSWCNTを生成する。従来は ,原料にアセチレンなどが使われていたが,非晶質カーボンやMWCNTが同時に生成し てしまうという難点があった。それに対し,ACCVD法では,原料のアルコール分子に含 まれる酸素原子が,非晶質カーボンやMWCNTの生成を抑制し,SWCNTに欠陥が生じる ことも抑えることから,選択的に高品質なSWCNTを製造できると考えられている。また ,800℃以下と比較的低い温度で,しかも大気圧下もしくは減圧下の簡単な設備で製造で きるので,スケールアップが容易で,製造コストを低減しやすく,量産に向くと考えら れる。この新製法と同時に,CNRIは,SWCNTを電子デバイスに応用する研究も進めて おり,触媒金属を目的とする固体の上に固定する方法の開発や,反応条件の改良などに よって,SWCNTの性質を制御する手法の開発にめどをつけているという。同社と同じく 三井物産の100%子会社で,デバイス関連の研究開発会社であるデバイス・ナノテク・リ サーチ・インスティチュート(DNRI,本社東京,2003年1月16日付の記事参照)と,知 的財産戦略会社であるアイ・エヌ・アール・アイ(INRI,本社東京,2002年10月7日付 の記事参照)の2社と共同で,固体触媒上に成長したサンプルを利用する応用開発の研究 会を発足し,大学や公的研究機関などの参加を募る計画もある。 関連情報 本文 日機装がカーボ 日機装は、カーボンナノチューブの量産技術を確立し、価格が従来の1/100である100円 ンナノチューブ /gを切ることにめどをつけた。生産するのは、直径20nmの多層カーボンナノチューブ。 の量産化にめど、これによって、燃料電池などの電極材料に使ってエネルギー消費効率を高めるなどの用 価格を1/100以 途 を 期 待 さ れ て い る カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ は 、 そ の 実 用 化 へ 大 き く 前 進 す る 。 下に ▲ カーボンナノ 電子デバイス Biz Tech 2001/10/2 チューブ、日 産業、燃料電 機装 池産業、ナノ テク産業 △ 1 ● 2 ○ 01-a ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 3 カーボン・ナ 電子デバイス 日経ナノ 2003/2/25 三井物産系のC ノテク・リサ 産業、ナノテ テクノロ NRIと東大,単 ーチ・インス ク産業 層カーボンナノ ジー ティチュート、 チューブを高品 単層カーボン 質化する新製法 ナノチューブ を開発 (SWCNT)、 ACCVD(Alc oholCatalytic Chemical Va por Depositi on)法 ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 01-a ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 5 3 4 2 01-b 01-b ▲ − 57 − 三井物産系のC NRI、金属内包 フラーレン量産 法を開発 カーボン・ナ 電子デバイス NIKKEI ノテク・リサ 産業、ナノテ NET ーチ・インス ク産業 ティチュート (CNRI)、 金属内包フラ ーレン(メタ ロフラーレン) 2003/2/21 三井物産CNRIと 名大、ベンチャ ー創生に向けナ ノカーボン共同 研究へ カーボン・ナ 電子デバイス Biz Tech 2002/7/26 ノテク・リサ 産業、ナノテ ーチ・インス ク産業 ティチュート (CNRI)、 ナノカーボン 新エネルギー 電子デバイス Biz Tech 2002/9/9 ・産業技術総 産業、ナノテ 合開発機構 ク産業 (NEDO)、 ナノテクノロ ジープログラ ム(ナノマテ リアル・プロ セス技術)、 ナノカーボン 技術プロジェ クト △ 5 ● 4 ○ 01-b ◎ 三井物産の100%出資子会社で、ナノカーボン材料に関する技術の研究開発会社であるカ ーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート(CNRI、本社東京)は、金属内包フ ラーレン(メタロフラーレン)の新しい量産方法を開発した。従来法では収率が低く、 しかも50mgを合成するのに数カ月もの期間を必要としていたが、収率を高め、生産性も 従来法の約100倍にまで高めて約1日で合成できるようになる。 金属内包フラーレンは 、高温超電導、タンパク質やDNA(デオキシリボ核酸)など巨大生体分子のマーカー、 分子半導体デバイスなどへの応用が研究されている。この量産法の開発により、金属内 包フラーレンを従来よりも安価に供給できるようになり、これらの応用研究が加速する ことが期待される。 三井物産が100%出資する研究開発企業のカーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチ ュート(CNRI)は、名古屋大学大学院理学研究科教授の篠原久典氏の研究室と、ナノカ ーボンの開発で共同研究をスタートする。文部科学省は平成14年度の補正予算で名古屋 大学にベンチャー企業の創生を目指すインキュベーション施設の建設を許可。これに基 づいて最初に完成したオフィス棟は2002年7月から稼動を開始し、次に建設する実験棟 では早ければ2003年から研究開発がスタートする。この施設内で行われる研究の1つが 、篠原氏らによるナノカーボンの開発で、CNRIがパートナーとなる。 フロンティアカーボン(FCC,本社東京)は,2003年5月の連休明けに,現在,北九州 市に建設中のフラーレンの量産プラントを本格稼動させる。「量産化によって,価格は ,現状の1/10である数十円/gを目指す」(副社長で開発センター長の村山英樹氏)。同 社は,三菱商事の主催するナノテクノロジー投資ファンド「ナノテクパートナーズ一号 投資事業有限責任組合(NTP)」と三菱化学が2001年12月3日に設立したフラーレン製 造販売会社(2001年12月4日付の記事参照)。すでに2002年2月から,400kg/年レベル のパイロットプラントでフラーレンを生産している。村山氏は,2003年3月18日に,日 本化学会の第83年会(会期:3月18∼20日,場所:早稲田大学西早稲田キャンパス, http://www.chemistry.or.jp/nenkai/index.html)の中で開かれた特別企画「最初に企業 化するナノテクノロジーは何か」(2003年3月14日付の記事参照)の中で,「フラーレ ン実用化の最前線」と題して講演した。価格についての目標値は,その講演後の『日経 ナノテクノロジー』による取材の中で,村山氏が明らかにしたもの。また,この講演の 中で村山氏は,2003年4月に 40t/年レベルの量産プラントが完成し,試運転した後,5月 の連休明けに本格的に稼動し始めることを明らかにした。さらに,「計画が順調に進め ば,2005年には300t/年レベル,2007年には1500t/年レベルに,生産能力を増強していく 」(村山氏)という。同社設立時の発表では,40t/年レベルの生産ラインの数を増やし ていくことで,2003年春から夏ころまでに300t/年レベルにまで増強するとしていた。だ が,その後すぐに,増強時期を2005年に修正しており,いまのところ,その計画どおり 進む見込みだという。また,1500t/年レベルに増強する時期についての目標は同社設立時 と変わっていない。 東レなど11団体、経済産業省の関連団体である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「ナ NEDOの「ナノ ノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)」に平成14年度(2002年 カーボン技術プ 度)から新たに加わった「ナノカーボン技術プロジェクト」の委託先を決定したことを ロジェクト」の 、2002年9月9日に発表した。委託先は、財団法人・ファインセラミックスセンターおよ 委託研究に参加 び独立行政法人・産業技術総合研究所で、プロジェクトリーダーは、産総研の新炭素系 材料開発研究センターのセンター長である飯島澄男氏。併せて、同プロジェクトでの研 究に参加する予定の企業など11社・組織も発表した。企業は、東レ、日機装、NEC、富 士通、三菱重工業、三菱レイヨン、GSIクレオス、NOKの8社。また、財団法人・産業創 造研究所、長崎大学、山形大学も参加する予定。さらに、九州大学と千葉大学が、共同 研究先に選ばれている。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 1 フロンティア 電子デバイス 日経ナノ 2003/3/18 三菱系のFCC, フラーレンの量 カーボン、フ 産業、ナノテ テクノロ ラーレン 産開始で価格を ク産業 ジー 数十円/gへ ─ 03年5月に40t/ 年のプラント始 動。 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 1 01-b 第4章 先端技術情報例 3 5 3 2 2 2 01-c 01-c ▲ 01-c △ − 58 − 2002/12/17 分子を活用した 新デバイスおよ びその作製プロ セスの研究開発 ナノテクノロジーに大きな期待が寄せられる重要な応用分野の1つが、従来技術を飛躍的 に凌駕する高集積、高機能、高性能、そして低消費エネルギーである次世代IT(情報技 術)デバイスの研究開発だ。その実現に向けて、分子を扱う新技術が、大きなカギを握 ることになりそう。米国IBM社のAlmaden研究所が発表した一酸化炭素(CO)分子を用 いる新方式の高密度記憶媒体や、東京大学大学院理学系研究科教授である中村栄一氏ら の研究グループが発表したフラーレンC60を化学修飾したバドミントンの羽根の形状を した新型液晶分子などは、そうした事例の代表的なものと言える。 フラーレン系プ ソニーのマテリアル研究所 電子材料研究グループは、燃料電池向け固体電解質膜とし ロトン伝導膜の て開発しているフラーレン系プロトン伝導体の分子構造を改良した。プロトン伝導率を 分子構造を改良 はじめとする基本特性を高めることが目的。 ソニー 燃料電池 自動車製造業 Biz Tech 2002/4/30 固体電解質膜 フラーレン系 プロトン伝導 体 ナノテクノロ デバイス製造 Biz Boa ジー 次世代 業 rd IT(情報技術) デバイス 一酸化炭素 (CO)分子 を用いる新方 式の高密度記 憶媒体 フラーレンC 60新型液晶 分子 金属内包フラー レン量産法を開 発 三井物産系 のCNRI カーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート(CNRI、本社東京)は、金属内包 フラーレン(メタロフラーレン)の新しい量産方法を開発した。従来法では収率が低く 、しかも50mgを合成するのに数カ月もの期間を必要としていたが、収率を高め、生産性 も従来法の約100倍にまで高めて約1日で合成できるようになる。金属内包フラーレンは 、高温超電導、タンパク質やDNA(デオキシリボ核酸)など巨大生体分子のマーカー、 分子半導体デバイスなどへの応用が研究されている。この量産法の開発により、金属内 包フラーレンを従来よりも安価に供給できるようになり、これらの応用研究が加速する ことが期待される。 2002/11/19 名大と三菱商事、名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻助手の菅井俊樹氏と教授の篠原久典氏らは、 高純度・高品質 「パルスアーク放電法」と呼ぶカーボンナノチューブ(CNT)の新しい製法を開発し、2 の2層カーボン 層カーボンナノチューブ(DWCNT)を95%以上の高純度で精製することに成功した。 ナノチューブ新 今回合成されたDWCNTの寸法は、外径が2.0nm、内径が1.2nmでそろっている。また、 外層が絶縁性で内層が導電性というユニークな性質を示す。この研究は名大と三菱商事 製法 との共同プロジェクトの一環であり、両者は今回の製法に関する特許を共同で2002年10 月30日に出願した。三菱商事は、これまでナノカーボンの中でもフラーレンを中心にナ ノテクビジネスを展開してきたが、今後は積極的にCNT関連のビジネスも進める。同社 は、DWCNTは薄型ディスプレイの一種であるフィールド・エミッション・ディスプレイ (FED)、大規模集積回路(LSI)、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)など多方 面に利用できると期待している。このことから、2002年12月、関連会社と共同出資で米 国Arizona州にDWCNTに特化した量産技術と用途開拓を行う研究開発目的の子会社(パ イロットカンパニー)であるTailored Material Corporation(TMC)を設立する。そこで は名大で開発された「パルスアーク放電法」の改良研究も進められる予定である。 金属内包フラ 半導体デバイ Biz Tech 2003/2/21 ーレン(メタ ス製造業 ロフラーレン) パルスアーク 電子デバイス NIKKEI 放電法、2層 産業、ナノテ NET カーボンナノ ク産業 チューブ (DWCNT) ● 5 ○ 4 ◎ 01-b 薄膜製造装置大手のアルバックは、2002年春にカーボンナノチューブとグラファイト・ ナノ・ファイバーに代表されるナノカーボン用製造装置をラインアップした。これまで に、同社超高真空事業部の技術部と営業部は、装置ユーザーの候補となるメーカーや公 的研究機関との情報交換を通じ、ナノカーボン製造装置の用途としてどこが有望な分野 かの話し合いを進めてきた。その結果、数々の用途の中でも特にFED(Field Emission Display)用電極と、分子トランジスタなどのナノエレクトロニクスデバイス用配線材料 製造装置の開発に力を注ぐことを明らかにした。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 5 アルバック、 電子デバイス Biz Tech 2002/10/8 アルバック、ナ ナノカーボン 産業、ナノテ ノカーボン製造 用製造装置、 ク産業 装置の用途を次 FED(Field 世代電子部品に Emission Dis play)用電極、 分子トランジ スタ ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 01-b 調査研究報告書 No.117 01-c 2 5 − 59 − 2003/3/20 フラーレン使っ 東京大学大学院理学系研究科教授の中村栄一氏らのグループは、DNAに結合する性質を た遺伝子の長期 持つフラーレンを使って培養細胞へ遺伝子導入を行い、2週間以上にわたり遺伝子を発 発現 東京大学 現させることに成功した。 Biz Boa rd DNA,フラーレ 薬品製造業 ン,遺伝子 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究「超電導応用基盤技術研究 開発」プロジェクトで具体的な応用に結び付く成果が続々と上がってきた。 このプロジ ェクトは10年にわたって続けてきた基礎研究プロジェクトの後を受けて発足した。将来 の応用に必要な基盤技術として,!超電導バルク,"超電導線材,#超電導デバイス,$応 用基礎,の4分野を挙げている。 特に,線材開発とデバイス開発はエレクトロニクス産 業にとって重要な意味を持つととらえ,早急に関係企業の協力を得て共同研究体を発足 した。NECが超電導デバイスの核心となるジョセフソン接合の巧妙な製法を開発した。 線材については金属基板と超電導層の間に入る重要な中間層膜の開発にフジクラの開発 グループが成功した。新日本製鐵と同和鉱業が小規模ながら超電導バルクを生産してい ることは今後の応用開発にとって大変心強いことである。 超電導バルクの応用開発はこ れからだが,例えば,日立製作所が開発した水処理システム.九州電力は発電所用揚水池 のアオコの除去に使うことを計画している。 磁場特性に優れたY系線材を次世代品とし て開発を進めている。これが高温超電導線材の本命と考える。 デバイスを超高速デジタ ル回線に応用 ここでいうデバイスとは,単一磁束量子素子(SFQ素子)のことで,超高 速デジタル回路への応用を目的とする。 開花する超電導 技術「物質の材 料化」から応用 へ」超電導技術 の第一人者 田中 昭二氏 国際超電導産業 技術研究センタ ー 副理事長超 電導工学研究所 所長 ▲ 超電導バルク、 水処理システ 日経エレ 2002/4/8 超電導線材 ム 発電所用 クトロニ 超電導デバイ 揚水池のアオ クス ス 単一磁束 コの除去 量子素子(SF Q素子) 超 高速デジタル 回路 △ 3 ● 2 ○ 01-c 本文 A 新素材・新技術 難病治療へ、着 ナノテクを代表する新素材として用途開発が進むフラーレン。独特の性質を持つ新規の 実に進むフラー 炭素系骨格として、医薬応用が始まった。エイズ治療薬から抗がん剤、遺伝子導入用ベ クターまで用途は幅広い。 米ライス大学のリチャード・スモーリーと英サセックス大学 レン医薬米国 のハロルド・クロトーらがフラーレンの存在を突き止め、後にノーベル賞を受賞する論 文をまとめたのは1985年秋のこと。だが、世界中の研究者がフラーレンを研究できるよ うになったのは、90年に独マックスプランク研究所のウォルフガング・クレッチマーが 大量合成法を発案してからだ。それから10年余を経て、医薬やバイオ分野での実用化は 意外と近いところにありそうだ。 ・抗HIV薬で治験届提出いよいよ臨床へ ・光を当てる と活性酸素発生がん組織を狙い撃つ治療法に ・抗酸化剤転じて抗菌剤へ耐性菌ができに くい ・高性能のMRI造影剤遺伝子導入薬も実用近い。 ◎ 情報タイトル ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 3 ナノテク 薬品製造業 日経バイ 2002/08/号 フラーレン オビジネ エイズ治療薬 ス 抗がん剤 遺伝子 導入用ベクタ ー 高性能の MRI造影剤遺 伝子導入薬。 関連情報 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 01-c 第4章 先端技術情報例 01-d 2 1 ▲ パラジウム 自動車製造 (Pd)ナノ 粒子、高感度 水素ガスセン サー、燃料電 池 電気抵抗 チップ設計ソ エレクトロニ リューション、 クス産業 ナノメータ・ デザイン SoCデザイン ・プラットフ ォーム △ 1 − 60 − 日経ナノ 2002/6/25 テクノロ ジー MAGMA 2003/3/5 /マグマ ・デザイ ン・オー トメーシ ョン (株)プ レスリリ ースから ● 1 ○ 01-d チップ設計ソリューションのプロバイダである米国マグマ・デザイン・オートメーショ ン社(以下、「マグマ社」)(NASDAQ:LAVA)はNECマイクロシステム社が、日本で 初めてMagma Ties Certified Design Centerプログラムに参加したことを発表した。 NECマイクロシステム社は、数多くのチップ設計に成功を収めてきており、現在主要な システムメーカー向けの多種多様なシステムLSI設計を行っている。NECマイクロシステ ム社とマグマ社は、ナノメータ・デザインに対応したSoCデザイン・プラットフォーム を開発していきます。この競争の激しい市場では、設計者は発想を現実化させるために 最高速のパスを必要としている。このデザイン・プラットフォームは、セグメント仕様 の専門技術を用いた大量の製造過程を対象とした、「The Fastest Path from RTL to Silicon(TM)」用ツールに統合される高品質のライブラリとIPを提供します。この独自の コンセプトは、既にNECマイクロシステム社で素晴らしい結果を出し、目覚しい実績を あげいる。 関連記事・超電導プラスチック材料をベル研究所が発見、-235度で超電導に・米HPと米 MIT、250万ドル投じ量子コンピュータの 共同研究プロジェクトを開始・IBMが量子コ ンピュータを試作、超高速演算に道、実用化は20年後?・<米IBM、直径が数nmの「カ ーボン・ナノチューブ」使うトランジスタ 技術を開発・米モトローラ、米ゼロックス の有機電子材料研究に政府が 785万ドルの支援・「ムーアの法則を超える!」、米IBM が単一分子でコンピュータ論理回路 “NOTゲート”を実現・米Bell Labsの研究者が、 光通信などに応用可能なヒトデの“レンズ”を発見 本文 Pdナノ粒子で新 SI Diamond Technology社(http://www.sidiamond.com)は,子会社の1つである しい水素センサ Applied Nanotech Inc.(ANI)が粒径100nm未満のパラジウム(Pd)ナノ粒子を用いた ーを開発 米ベ 新しい原理の高感度水素ガスセンサーを開発したと発表した。シリコン(Si),ガラス ンチャーのANI ,プラスチックなどの基板上にナノ粒子を連続的に並べて長さ数mmのワイヤを形成し, そのワイヤが水素ガスを吸収すると電気抵抗が減少する原理を用いている。燃料電池な どに供給する水素ガスの濃度を管理する用途向けに商品開発を進める考えである。ワイ ヤの電気抵抗が水素ガスを吸収して減少するところに今回のポイントがある。ナノ粒子 は水素ガスを吸収していない時には粒子同士の接合が不十分で,高い電気抵抗を示す。 個々のナノ粒子が水素ガスを吸収して膨張するにつれ,隣同士の密着性が高まって通電 性が高まり,結果として電気抵抗が減少するのである。このセンサーは室温でも使用で き,混合ガス中に含まれる水素ガスの濃度を1∼100%の間で測定できる。酸化物を用い た従来の一般的な水素ガスセンサーは,数百℃まで加熱しないと正しい値の水素ガス濃 度を測定できないと言われるが,今回のセンサーは加熱が不要となった。 agma Ties Cert ified Design Ce nterプログラム に参加 NECマ イクロシステム 社 ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 5 有機超電導体 コンピュータ Biz Tech 2001/8/31 フラーレンから フラーレンの 部品 高温超電導体 超電導体 物流機器 米ベル研 有機電子機器 量子コンピュ ータ ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 01-c APIの問合せ先 Dr. Zvi Yaniv = P r e s i d e n t & C E O [email protected] Dr. Richard Fink = Vice President [email protected] 関連情報 ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 − 61 − 3 5 2 4 01-d 01-d ▲ 超高集積デバ 病院 イス 自己組 織化 DNA (デオキシリ ボ核酸) 生体分子の解 析システム) 科学技術振興 新材料開発 事業団(JST) 戦略的創造研 究推進事業 第二期科学技 術基本計画 DNA(デオキ バイオ産業 シリボ核酸) チップ SNP の解析用の チップや装置 △ 1 JSTの戦略創造 プログラム (H14)、新規 研究領域の7割 がナノテク関連 に 「ナノ組織体を 科学する」で69 件の発表講演-日本化学会秋 季年会 2002年 Biz Tech 2002/9/17 SNP解析コスト を半減する新方 式チップを開発 独ナノバイオベ ンチャー 社団法人・日本化学会は、第82秋季http://www.chemistry.or.jp/nenkai/index.html)が 大阪大学の豊中キャンパス(大阪府豊中市)で開催された。今回は「ナノ組織体を科学 する」と題したセッションを設けた。ナノスケールの要素デバイスを組み上げて超高集 積デバイスを作製する“ボトムアップ”技術で欠かせない自己組織化や、DNA(デオキ シリボ核酸)をはじめとする生体分子の解析システムなど、産業活性化につながるとし て実用化への期待が高い主要なナノテクノの応用分野で、化学研究者らは重要な役割を 担うことになる。そうしたことを反映し、今回のセッション「ナノ組織体を科学する」 は、「科学する」としながらも、単なる学術的な研究にとどまらず、応用を見据えた内 容の発表が目立った。 科学技術振興事業団(JST)は、これまでの基礎的研究事業を再編し、平成14年度( 2002年度)から新たに「戦略的創造研究推進事業」を開始。その中で「戦略創造プログ ラム」として実施する13の新規研究領域を決定した。それらの約7割に相当する9つの研 究領域がナノテクノロジーにかかわるものとなった。総合科学技術会議(2001年1月発 足、内閣府に設置、首相が議長を務める)が策定した平成13年度(2001年度)から5年 間にわたる「第二期科学技術基本計画」において「ナノテクノロジー・材料」が4重点研 究分野の1つに定められたことに加え、ナノテクが従来の科学技術分野を横断し、それら を融合させ得る基盤技術として期待されていることを、大きく反映したものと言える。 ドイツのナノバイオ関連のベンチャー企業であるFRIZ Biochem社(本社バイエルン州, http://www.frizbiochem.de/)は,SNP(一塩基多型)の解析コストを,従来方式の半分 程度にまで低減できる新方式のDNA(デオキシリボ核酸)チップおよび解析法を開発し た「2003年に商品化する計画で,そのためにチップ構造をさらに微細化するなどの改良 を加えていく」と,CFO(最高執行責任者)兼CTO(最高技術責任者)であるHarald Lossau氏は説明する。この新方式は,「EDDA(Electrically Detected Displacement Assay)」と呼ばれる。同社は,CEO(最高経営責任者)であるGerhard Hartwich氏を はじめ,Lossau氏も含めた合計4人のナノバイオ関連の研究者が1999年8月に設立。 DNAやSNPの解析用のチップや装置,システムなどを研究開発し,製品や解析サービス として事業化していく。欧州では,ドイツのミュンヘン大学のCeNS(2002年9月17日付 の記事参照)もそうであったように,大学や公的研究機関における基礎研究から,ナノ バイオ関連のベンチャー企業が立ち上がるケースが目立っている。 アルバックのマーケティング部門および技術管理などを担当するグループ会社のアルバ ック・コーポレートセンター(本社東京)など3社1大学が共同で,ナノスケールの金属 超微粒子を含有する導電性ペースト素材を利用して次世代機能性回路基板を開発し,事 業化するためのコンソーシアムを設立した。このコンソーシアムが目指すのは,アルバ ック・コーポレートセンターが開発した分散性に優れた金属ナノ粒子をペースト状にし た「ナノペースト」を,プリンターや美術印刷の技術を利用して描画もしくは印刷する ことで,回路配線を抵抗やコンデンサーなどの要素デバイスと同時に形成する技術の実 用化。大阪大学は,ナノペースト配線の半導体素子などへの接合技術,接合メカニズム ,それら固有の評価技術などの基礎研究を担当。また,これらの開発・事業化は,アト ムニクス研究所と大阪大学が共同で担当する。 導電性ナノ粒子 で次世代機能性 回路基板を開発 ・事業化 アル バック・ハリマ 化成・アトムニ クス研究所・ 大阪大学 Biz Tech 2002/6/25 日経ナノ 2002/9/19 テクノロ ジー ● 2 ○ 01-d 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 7 金属超微粒子 プリンター 日経ナノ 2002/10/24 導電性ペース 美術印刷 テクノロ ト素材 ジー 次世代機能性 回路基板 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 01-d 第4章 先端技術情報例 3 3 1 2 2 1 01-d 01-d 01-d ▲ − 62 − 早稲田大学COE 「分子ナノ工学 研究拠点」第1 回公開シンポジ ウム 早大 内閣府のナノテ ク・材料産業発 掘戦略検討会が スタート,複数 省庁の連携が必 要なプロジェク トを議論 文部科学省は、平成13年度の科学技術費補助金(通称、科研費)・中核的研究拠点( COE)を全国から6カ所選び、そのうちナノテクノロジー関係を早稲田大学理工学部とし た。早大では文科省の決定を受けて関係者間で具体的内容を詰めてきたが、このたび、 今後の方向性について初めて一般に公表した(2002年1月28日、『早稲田大学COE「分 子ナノ工学研究拠点」第1回公開シンポジウム』)。文科省のCOEに基づく政府予算は平 成13年度から平成17年度の5年間で、総額13億4000万円になる予定。当面の研究テーマ は、「ナノ構造配列を基盤とする分子ナノ工学の構築とマイクロシステムへの展開」と し、情報通信、ナノバイオ、環境/エネルギーなど多方面に適用できる基盤技術の研究開 発を進める。 内閣総理大臣を議長とする内閣府総合科学技術会議で,ナノテクノロジーと材料分野に 関して政府主導で進める新産業発掘戦略の内容を検討する「ナノテクノロジー・材料研 究開発推進プロジェクトチーム」の会合が2003年3月にスタートした。ここでは,複数 省庁の連携無しでは実現できない分野にフォーカスして話し合い,その結果を平成16年 度の科学技術に関する予算,人材などの資源配分方針に反映させる。各省庁が提案した テーマは次の通り。【ナノバイオニック産業】【ネットワーク・ナノデバイス産業】【 ナノ環境エネルギー産業】【革新的材料産業】【参考】内閣府総合科学技術関連トップ ページ http://www8.cao.go.jp/cstp/ナノテクノロジー・材料プロジェクト http://www8.cao.go.jp/cstp/project/nanotech/index.htm 原子間力顕微 先端材料 鏡(AFM) 電気的・磁気 的物性なども 分析 タンパ ク質などの生 体分子の観察 日経ナノ 2002/10/18 環境制御型AFM 米国のVeeco Instruments社(本社ニューヨーク州)の日本法人である日本ビーコ(本社 の新製品を発表 東京)は,環境制御型の原子間力顕微鏡(AFM)の新製品「EnviroScope」を発表した テクノロ 日本ビーコ ジー 。環境制御型AFMとは,観察時にサンプルを置く場所が密封容器になっており,その容 器内を真空にしたり,さまざまな気体もしくは液体で満たしたり,温度の昇降など,サ ンプル周囲の環境条件を変えながら観察できるタイプのAFM。ナノスケールで構造を制 御した先端材料などの形態の観察はもとより,電気的・磁気的物性なども分析できる。 タンパク質などの生体分子が通常,存在している環境に近い状態での観察もできる。 内閣府 総合科学技術会議事務局 ナ ノテクノロジー・材料分野担当 宍戸 吉田 〒100-8970 千代田区霞が関3 −1−1 中央合同庁舎第4号館7階 (Tel) 03-3581-9940(Fax) 03-35819969 中国では政府指導の下,国全体でナノテクの研究が精力的に行われている。ナノテク研 究体制のマップを作成した。これによれば,全国で50以上の大学,21の独立行政法人の 研究所,323の企業がこの分野に参加していることが明らかになった。国務院が政府プロ ジェクトの「中国納米科技」を統括。この下に,科学技術部,国家発展計画委員会,教 育部,中国科学院,中国国家自然科学基金委員会の5つの機関からなる国家納米科技協調 指導委員会 を組織。国家納米科技協調指導委員会の管轄下で,実際のナノテク研究は大 学,中国科学院,企業が行う。中国科学院は国務院の「直属事業単位」の1機関である。 中国科学院に属する研究所は,以前は完全な国立研究機関だったが,現在は徐々に民営 化を進めている。各研究所にはさらに下部組織があるが,そちらの多くは完全な民間企 業になりつつある。現在,ナノテク研究を進めている大学は全国で50校以上あるという 。ナノテクの研究を実施する中国科学院の研究所は21ある。これら全体を統括するのが 中国科学院納米科技中心である。 中国のナノテク 研究体制の全体 像が明らかに ─大学50以上, 独法研21,企業 323 分子ナノデバ コンピュータ 日経ナノ 2002/10/25 独自方式の分子 米国IBM社のアルマデン研究所(Almaden Research Center、カリフォルニア州San ナノ演算回路を Jose)の研究員であるAndreas Heinrich氏およびフェローのDon Eigler氏らの研究グル イス デジタ 製造 テクノロ 開発 米IBMア ープは、独自方式の分子ナノデバイスを作製し、デジタル演算回路として動作させるこ ル演算回路 ジー ルマデン研 現行の演算回 とに成功した。銅(Cu)で覆われた基板表面上に一酸化炭素分子(CO)を配列し、そ 路の約26万倍 れら分子の“ドミノ倒し”現象を利用して演算処理を実行する。倒れた状態を「1」、倒 消費電力も現 れていない状態を「0」として演算処理する。 集積度は、現行の演算回路の約26万倍と 行回路の10万 、けた違いに高い。消費電力も現行回路の10万分の1と極めて小さい。ただし現状では、 分の1 製造プロセスの生産性が低く、演算処理を繰り返せないといった課題があり、実用化は 簡単ではなさそうだ。 分子ナノ工学 報通信、ナノ Biz Tech 2002/1/29 の構築とマイ バイオ環境/ クロシステム エネルギー への展開 ナノバイオニ デバイス産業 日経ナノ 2003/3/20 ック、ナノデ 新材料産業 テクノロ バイス産業、 ジー ナノ環境エネ ルギー産業革 新的材料産業 △ 3 ● 2 ○ 01-d 関連情報 本文 情報タイトル ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 1 中国 ナノテク産業 日経ナノ 2002/10/24 化学研究所 テクノロ ジー ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 1 01-d ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 5 1 3 1 01-e 01-e ▲ − 63 − 林原生物化学研究所(本社岡山市)は、独自に量産技術を確立した「環状四糖」と呼ば れる外径が約1nmの環状グルコオリゴ糖で、ナノテクノロジー分野に進出する。ナノデ バイスのボトムアップ製造プロセスや、医薬品用途をはじめとするナノバイオ分野での 応用などを検討していく。「すでに10以上の大学や企業などと共同の研究開発に取り組 み始めている」と、開発センターのアシスタントディレクターである三輪尚克氏は説明 する。 コンピュータが社会に溶け込む世界。これを実現するには,コンピュータ・システムを 構成する個々の要素が小型化する必要がある。ここで言う要素には,大きく分けて現実 世界の物の情報を発信するトランスミッタと物の状態を感知するセンサー,および入力 情報に基づいて出力を制御するコンピュータ本体がある。これらを人間の目には止まら ないような小型にすれば,その存在を意識させずに社会に溶け込ませることができる。 現実世界に潜り込む粉状のIDタグ 今のところ最も小型化が進んでいるのが,トランスミ ッタの一種である「RF(radio frequency)タグ」注)だ。タグを取り付けた物にIDを割 り振るために用いられることから,「RF−IDタグ」とも呼ぶ。ID番号を保持するメモリ ーと無線機能を内蔵するICに,アンテナを取り付けたものがRFタグである。IDは専用の リーダーで読み取る。 数あるRFタグの中でも特に小さいのが,日立製作所が開発した「 ミューチップ」の0.4mm角。 日経バイ 2003/02/号 遺伝子発現解析 DNAコンピューターを使った遺伝子解析が始まる。この方法のメリットは、高精度で定 にDNAコンピュ 量的なデータが取れること。その秘密は、DNAコンピューター技術の基本であるデータ オビジネ の表現方法にある。その仕組みと遺伝子解析への応用例を紹介する。 ノバスジーン(本 ーターを使用 ス 社:東京都八王子市)は遺伝子発現解析をDNAコンピューターを使用して行う計画であ る。このDNAコンピューターは2002年1月28日にオリンパス光学工業株式会社が発表し たもの。DNA同士のハイブリダイゼーションなどの化学反応を演算に利用することで大 容量、超並列処理を可能とする、実用的な遺伝子解析用のDNAコンピューターを東京大 学大学院総合文化研究科の陶山明助教授、ノバスジーンの共同研究により、オリンパス 光学工業が世界で初めて開発した。 「DNAコンピューターは、従来のDNAマイクロアレ イを使った発現解析に比べ、定量性、汎用性、演算性の点で優れている」とDNAコンピ ューターの発明者である陶山助教授は語る。 直径1nmの環状 四糖でナノテク 分野に進出 林原生化研 北海道大学の電子科学研究所の付属組織として新設されたナノテクノロジー研究センタ ーは、「ナノ材料」「ナノデバイス」「ナノ理論」の3分野で構成しており、ナノ材料分 野を担当する教授は、センター長の下村政嗣氏が兼務。ナノ理論分野の教授には、独立 行政法人・産業技術総合研究所のナノテクノロジー研究部門の総括研究員である徳本洋 志氏が着任したばかり。そしてナノデバイス分野の教授には、文部科学省傘下の研究組 織である海洋科学技術センターの極限環境生物フロンティア研究システム深海微生物研 究領域の領域長である辻井薫氏が着任する。電子科学研究所の前身からの伝統である医 理工連携により、「ボトムアップと自己組織化が2大キーワード」(下村氏)とするナノ テク研究を推進するための体制を整えつつある。 ボトムアップと 自己組織化が2 大キーワード 北大ナノテク研 究センター センサー,コ コンピュータ 日経バイ 2003/01/号 超小型化するデ バイス ンピュータ 製造 ト 粉状のIDタグ, トランスミッ タ,RF−ID タグ DNAコンピュ 薬品製造業 ーター、遺伝 子解析 ハイ ブリダイゼー ション、遺伝 子解析 林原生物化学 医薬品製造業 Biz Tech 2002/11/8 研究所 環状グルコオ リゴ糖 ナノテクノロ ジー ナノデ バイスのボト ムアップ製造 プロセス ナノバイオ分 野での応用 △ 3 ● 2 ○ 01-d 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 5 ナノテクノロ 深海微生物 Biz Tech 2002/12/10 ジー研究セン 研究 ター ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 01-d 第4章 先端技術情報例 − 64 − 3 1 1 1 01-f 01-f 5 2 01-e ▲ DNA分子を化学 修飾せずにレー ザートラップで きる技術を開発 徳島大と豊橋 技科大 徳島大学薬学部教授の馬場嘉信氏らのグループと、豊橋技術科学大学工学部教授の水野 彰氏らのグループは共同で、DNA分子を化学修飾せずに、レーザートラップによって操 作する新技術を開発した。化学修飾せずに済むので、DNA分子そのものの物性を、より 正確に解析できるようになる。将来的には、ナノマシンの組み立てや分子操作などへの 利用も期待できるという。 特許出願件数、 ナノカーボンは ソニー、ナノデ バイスは日立が トップ カーボンナノチ 遠心分離機メーカーの巴工業は近く、米ナノデバイス社(カリフォルニア州)製のカー ューブ製造炉を ボンナノチューブ製造炉「EasyTube」の輸入販売を開始。量産に適した化学的 輸入販売巴工業 気相成長法(CVD)を用いた製造炉で、パソコン上で操作できるため初心者でも利用 できる。カーボンナノチューブはナノテクノロジー(超微細技術)の代表的な材料で、 次世代トランジスタや超薄型テレビなどへの応用が期待されている。 遠心分離機、 次世代トラン Biz Tech 2003/1/7 化学的気相成 ジスタ、超薄 長法(CVD) 型テレビ、 、製造、カー 家電製品産業 ボンナノチュ ーブ、次世代 トランジスタ、 超薄型テレビ フラーレンやカーボンナノチューブなどのナノカーボンではソニー、ナノスケールの構 造を持つ情報通信デバイスの作製技術などでは日立製作所。世界40カ国以上の特許情報 の提供サービスや調査・分析などを業務とする英国のダウエント・インフォメーション 社(Derwent Information、本社ロンドン)は、1985∼2000年に出願された特許の中か らナノテクノロジーに関連するものを抽出し、さらに具体的な技術分野ごとに分類して 企業別に出願件数を集計した。その中の技術分野「フラーレンとナノチューブ( Fullerenes and nanotubes)」では、日本の特許庁へ出願した件数のトップがソニー。 日経バイ 2002/08/号 生体分子でナノ 分子や原子を操作して望みのモノを作り上げるナノマシン。微細加工では困難な概念も 、生体分子を使えば実現しそう。ナノマシンの部品に使えそうな生体分子の研究は進ん マシン オビジネ でいる。分子レベルで物質を操作するナノマシンの実現をにらみ、基礎研究が積み重ね ス られている。 微細化のアプローチには壁生体分子を使えば可能になる。 これまでモノ作 りの技術は、mmからμmに微細化を果たしてきた。それならnmへの微細化も難なく実 現できそうに思えるが、技術的にもコスト的にも、nmに突入するところに大きな壁があ る。 そこで登場するのがたんぱく質やDNAなどの生体分子。生体分子は細胞の中で、定 められた役割を厳密に守っている。制限酵素はDNAを決まった場所で切断し、リボソー ムはmRNAを翻訳してアミノ酸をつなげる。 こうした生体分子が持つ働きだけを取り出 して、“部品”として使えばナノマシンが組み立てられるかもしれない。そんな発想か ら、ナノマシンとして使えそうな生体分子の機能を探り出す研究が進む。 Biz Tech 2002/1/15 ナノテクノロジーが脚光を浴び、たんぱく質などの分子を使ったマイクロマシンに関心 が高まっているが、これをどのように動かすか、その使い道などが問題になる。 Massachusetts工科大学では、Joseph Jacobson準教授らのチームが、分子の遺伝子に ナノサイズの金を植え込み、磁場をオン・オフすることで、分子が曲がったり伸びたり することを確認した。無線を使って分子に命令をするということができれば、酵素がた んぱく質を切断、あるいは接合したりするようマイクロマシンに指示することが可能に なる。 マイクロマシン の使い方ー分子 に行動を命令す る フラーレン、 情報通信デバ Biz Tech 2002/2/19 カーボンナノ イス産業 チューブ 情報通信デバ イス ナノマシン、 微細加工 生体分子 医学研究所 たんぱく質、 DNA、アミノ 酸 DNA分子、レ 超精密加工 ーザートラッ プ ナノマシ ン、分子操作 △ 1 ● 1 ○ 01-e 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 3 たんぱく質、 医学研究所 SmallBiz 2003/1/5 マイクロマシ ン 分子の遺 伝子、磁場、 たんぱく質、 切断、 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 01-e 調査研究報告書 No.117 − 65 − 1 1 1 4 01-f 02-a 1 2 01-f ナノカーボン製 造装置の用途を 次世代電子部品 に アルバック GSIクレオスの GSIクレオス(旧グンゼ産業)は、独自に開発したカップスタック状ナノカーボンファイ カップスタック バー「カルベール」を樹脂に練りこんだ複合材料を、千葉市の幕張メッセで開催中の「 状ナノカーボン、 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2002)」(主催:nano tech実行委 実用化へ 員会、会期:2002年3月6∼8日)に展示した。「今年(2002年)1月の発表以来、約100 社から問い合わせがあり、すでに十数社と契約を結んだ」(ナノテクノロジー開発プロ ジェクト プロジェクトマネージャーの柳澤隆氏)という。具体的な供給先や応用製品 は明かせないとしているが、例えば、半導体の製造工程で使う搬送用のトレーのような 帯電防止性が求められる用途や、歯車や軸受けのような摺動性に優れることを生かした 用途などに採用されるものと見られる。 薄膜製造装置、 薄膜製造 Biz Tech 2002/10/8 グラファイト デバイス用配 ・ナノ・ファ 線材料 イバー FED (Field Emiss ion Display) 用電極 分子 トランジスタ、 デバイス用配 線材料 GSIクレオス、 電子デバイス Biz Tech 2002/3/7 カップスタッ 産業、ナノテ ク状ナノカー ク産業 ボンファイバ ー「カルベー ル」 薄膜製造装置大手のアルバックは、カーボンナノチューブとグラファイト・ナノ・ファ イバーに代表されるナノカーボン用製造装置をラインアップした。これまでに、同社超 高真空事業部の技術部と営業部は、装置ユーザーの候補となるメーカーや公的研究機関 との情報交換を通じ、ナノカーボン製造装置の用途としてどこが有望な分野かの話し合 いを進めてきた。その結果、数々の用途の中でも特にFED(Field Emission Display)用 電極と、分子トランジスタなどのナノエレクトロニクスデバイス用配線材料製造装置の 開発に力を注ぐ計画。 東京インスツルメンツ(TII、本社東京)は、ナノ領域の形態を観察すると同時に、その 部分の物性を解析できる新装置を開発した。これは、原子間力顕微鏡(AFM)による形 態観察と、共焦点光学顕微鏡を用いたラマン分光分析データおよびそのイメージ画像と を組み合わせる分析装置。例えば、カーボンナノチューブ(CNT)のAFM画像を見なが ら、それが半導体であるか、金属的な導電性を持つかといった物性をラマン分光で解析 できる。ナノスケールの形態とラマン分光イメージを同時に計測できたのは、「世界で 初めて」。 ナノ領域の形態 と物性を同時に 計測できる新装 置を開発TII 原子間力顕微 物性を解析で Biz Tech 2003/1/15 鏡(AFM)、 きる新装置 共焦点光学顕 微鏡 ラマン 分光分析、カ ーボンナノチ ューブ (CNT)、 信州大学工学部教授の遠藤守信氏と昭和電工、北川工業、セイコーインスツルメンツ( SII)の4者は共同で、世界最小レベルの歯車を開発。この極小歯車は、エンジニアリン グプラスチック(以下エンプラ)の一種であるナイロン12に、遠藤氏と昭和電工が共同 開発して市販しているナノカーボンファイバー「VGCF」をコンパウンドした複合材料「 VCOMPO」を射出成形して作製する。加えるVGCFの直径は平均150nm程度で、添加率 は20∼40質量%。歯車の直径は0.2mm、隣接する歯同士の間隔は約0.025mm、歯数は6 枚、歯車の先にある軸の直径は0.09mm。これを、腕時計の秒針を駆動するユニットの歯 車機構に組み込み、実際に駆動する実験に成功した。 ナノカーボン複 合材で世界最小 級の実用歯車を 共同開発 信州 大とSII 産業革命超える 素材を原子や分子レベルで制御すると、全く新しい特性が現れる。それがナノテクだ。 材料革命へ、ナ 燃料電池やディスプレーに応用が期待される。 ナノテクの究極の目標は、原子や分子を ノを制す匠の技 自由に操って、全く新しいデバイスを作ることにある。この技術が確立されればエレク トロニクス、自動車などの産業は言うに及ばず、あらゆる分野で産業革命が起きる。そ のカギを握るのが、カーボンナノチューブとフラーレンという2つのナノカーボン素材。 ▲ 燃料電池、デ エレクトロニ 日経ビジ 2003/1/6 ィスプレー、 クス産業、自 ネス 新デバイス 動車産業 △ 3 ● 1 ○ 01-f 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 1 極小歯車、エ 超精密産業 Biz Tech 2002/2/6 ンジニアリン グプラスチッ ク ナイロン 12、ナノカー ボンファイバ ー ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 01-f 第4章 先端技術情報例 3 5 1 4 2 1 02-a 02-a 02-a ▲ − 66 − 2003/2/3 ウッドセラミッ ウッドセラミックスは、青森県工業試験場で開発された、木質材料と熱硬化性樹脂を原 料とした炭素材料である。木質材料は伝統的炭素材料であり熱硬化性樹脂は先端的炭素 クス 材料であることから、ウッドセラミックスは両者の中間的炭素材料である。製造法は、 木質材料に熱硬化性樹脂を含侵し、その後、焼成する行程となる。ウッドセラミックス の木質材料は廃材等を利用することも可能なことから、エコマテリアルの側面も合わせ 持つ。ウッドセラミックスの工業材料への利用は、電磁シールド材、ヒータ、ろ過材お よび耐蝕性材料等、幅広い分野で考えられている。現在、多方面での開発が行われてお り、様々な産業分野での活躍が期待させる。 NEC、ケナフ繊 NECは1月22日、ケナフ繊維を20%ポリ乳酸に混合し、熱変性温度と強度を向上させた 維を混合し熱耐 生分解性プラスチックの開発に成功したことを発表した。同社は、2年以内に同社の製品 性や強度を向上 に応用していく計画だ。 させたポリ乳酸 開発 JSR、LCD JSRは3日、液晶表示装置(LCD)向け光学フィルム工場を新設すると発表した。投 向け光学フィル 資額は30億円で9月に稼働する。これまで同社は原料樹脂だけを生産し、フィルム加工は ム工場新設 外部委託していた。LCD需要の拡大で同フィルム出荷が伸びており、自社生産で供給 能力を高める。新工場は同社の四日市工場(三重県四日市市)内に設ける。生産能力は 年500万平方メートル。外部委託も継続する方針で、JSRの同フィルム供給能力はほぼ 倍増するとみられる。 同フィルムは液晶画面の視野角を広げる位相差フィルムなどに 使われる。原料はJSRが独自開発した高機能樹脂「アートン」。LCD向け需要の拡 大に伴い、2004年1月までに生産量を3倍の年3000トンに高める増設工事を進めている。 JSRは16日、高機能タイヤ向けゴムを増産すると発表した。生産能力を11月までに現 在より年1万3000トン増の年3万8000トンとする計画。主力の四日市工場(三重県四日市 市)の増強に加え、ダウ・ヨーロッパ(スイス)に生産委託する。日欧で省燃費やぬれ た路面でも滑りにくい高機能タイヤの需要が伸びているのに対応する。増産するのはS ―SBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)と呼ばれる特殊ゴム。四日市工場の能 力増強投資には2億円程度を計画する。 ダウ・ヨーロッパへの生産委託では、今春以降 、年3000トンを調達。1万トンに拡大することも検討している。JSRは二酸化炭素の 排出量削減などで省燃費タイヤ向け需要が年率10%伸びるとみている。石畳の多い欧州 では滑りにくいタイヤ需要も見込め、主取引先のブリヂストンのほか、仏ミシュラン、 伊ピレリなどへの納入も目指す。 関連情報 本文 2002/12/30 クラレが耐熱性 クラレは電気・電子部品の材料などに使う新型の耐熱性樹脂の原料を増産する。2004年 樹脂原料を増産 夏をめどに約11億円を投じて鹿島事業所(茨城県神栖町)の設備を増強し、年産能力を 従来に比べ約三倍強の1700トンに引き上げる。耐熱性樹脂の生産拡大にあわせて原料の 確保を急ぐ。新型の耐熱性樹脂「ジェネスタ」は高機能樹脂の一つであるポリアミド樹 脂で、セ氏約350度の耐熱性を持つほか、水にぬれても材質がほとんど変化しないのが特 徴。クラレは西条事業所(愛媛県西条市)に年産能力3000トンのジェネスタの設備を持 つが、原料の調達が難しく、フル操業できない状態が続いている。耐熱性樹脂は携帯電 話端末の表面実装材料向けなどの需要が伸びている。クラレはジェネスタの生産体制を 整えることで、今後は自動車のエンジン部品向けなどの市場も開拓する。2005年には約 40億円の売り上げを目指す。 Biz Tech 2003/1/23 NIKKEI NET 耐熱性樹脂 携帯電話産業、NIKKEI 「ジェネスタ」 自動車産業 NET 炭素,シールド 材料,建材,半導 ,エコ,ろ過,ヒ 体,環境 ータ 生分解性プラ スチック 液晶表示装置 液晶産業 (LCD)、 高機能樹脂 「アートン」 △ 1 ● 1 ○ 02-a ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 1 S―SBR タイヤメーカ NIKKEI 2003/1/16 JSR、省燃費 (溶液重合ス ー NET タイヤ向け高機 チレン・ブタ 能ゴムを増産 ジエンゴム)、 ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 1 02-a ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 02-a 4 1 5 1 ▲ 02-a △ 用した締結構造全般を対象にして特許を申請中」(技術本部・名古屋研究所の林俊一・主幹研究員)と いう。 形状記憶ネジに用いたポリウレタン系のプラスチックは、ある一定の温度(ガラス転移温度)を 境に硬さが大きく変わる。この性質を利用して形状を“記憶”させる。 プラスチックは、内部構造を見 ると結晶構造になった部分を非晶質の部分でつなぎ合わせてできている。通常の状態では硬くなってい るが、ガラス転移温度以上に温めると、非晶質を構成する分子の運動が活発になって樹脂が柔らかくな る。この状態では容易に変形でき、冷やすと再び硬くなる。このポリウレタン系プラスチックは、他の プラスチックよりも硬い状態と柔らかい状態の変化幅が大きいため、形状記憶ができる。 この材料を使 って、射出成形でゴルフティーのような溝のないネジの原型をつくる。プラスチックはこの時点で最も 安定した分子配置になる。 次に、溝のない平滑な状態のネジを、ネジ山の型にはめて回転させる。型の 凹凸に合わせてプラスチックが変形し、ネジ山ができてくる。この段階で通常のネジの形ができ、ナッ トと組み合わせて締結することができるようになる。 こうして作ったネジをガラス転移温度以上に温め ると、非晶質部分の分子の運動が活発になり、柔らかくなる。常温のときよりも小さな力で変形できる 状態だ。 ネジ山は、非晶質部分に無理な力がかかった“不自然な”状態で固まったもので、加熱して柔 らかくなると、分子配置が最も安定した状態に戻ろうとする性質をもっている。この性質により最初の ゴルフティーのような原型に戻り、形状を“記憶”しているように見える。 こうした形状記憶のできる プラスチックはすでに知られていたが、これを射出成形で加工したうえで、ネジ山をつけるという量産 技術が確立できたことが、リサイクル性改善に応用できる大きな理由だ。 プラスチックのガラス転移温 度は用途に合わせて調整できる。今回のネジでは120℃に設定している。家電に使うプラスチックの素材 を傷めるほどの高温ではないが、炎天下の自動車内に置いても勝手に分解してしまわない温度に設定さ れた。ネジの販売を担当するディアプレックス(東京都渋谷区)の浦上紘一常務は「すでに安定した需 要がある材料で、ネジに使った場合の製造コストは形状記憶合金よりかなり安くできる」という。 ただ し、ネジの強度は形状記憶合金の方が有利だ。形状記憶プラスチックのネジの強度は「一般的な鉄製の ネジに比べて10分の1程度しかない」(三菱重工の林主幹研究員)。 高い強度が必要な場所には合金製 、その他の場所ではプラスチック製のネジを使うという、両者の長所を生かせる組み合わせが、形状記 憶素材活用の近道となりそうだ。 三菱重工は、形状記憶プラスチックを利用した解体性向上の研究を国 内外の電気・電子機器メーカーと進めている。 三井化学、米デ 三井化学は米化学大手デュポンと高機能樹脂の販売で提携した。耐熱性や対摩耗性が高 ュポンと高機能 いポリイミド樹脂「オーラム」の欧米での独占販売権をデュポンに与える。日本を含む 樹脂販売で提携 アジア地域への販売は引き続き三井が手がけ、5年後に同樹脂の販売額を現在の三倍の40 億―50億円に高める。三井はこれまでオーラムをアジア中心に販売しており、欧米には 十分な販売網がない。自社で整備するより、高機能樹脂の広範な販売網を持つデュポン に任せる方が効率的と判断した。ポリイミドは耐熱性が高く、電子機器や精密機械の部 品に使われることが多い。だが通常は熱を加えると柔らかくなる熱可塑性を持たないた め加工に手間がかかり、大量生産や複雑な形状の製品には向かなかった。 京都工繊大、コ 京都工芸繊維大学地域共同研究センター教授木村良晴氏とミューチュアルのグループは メから耐熱性ポ 、コメを原料としたD-乳酸の生産に利用できる乳酸菌の同定に成功した。このD-乳酸を リ乳酸生産へ 重合させたポリD-乳酸と市販されているポリL-乳酸を混合し、耐熱性の高い樹脂の作製 にも成功した。 形状記憶プラ 家電産業、コ 日経エコ 2002/09/号 温めるだけで製 三菱重工業が家電などのリサイクル性を改善する形状記憶プラスチックのネジを開発した。120℃以上に スチックネジ ンピュータ産 ロジー 品を一気に解体 熱するとネジ山がなくなり、ドライバーなしでも引き抜ける状態になる。ネジ以外の応用範囲も広く、 家電やパソコンの解体コストを大幅に低減できる可能性がある。 120℃以上に温めると、ネジ山が消えて 業、自動車産 特殊なネジで 平らになり、ドライバーなどを使わなくてもネジが簡単に抜ける。 三菱重工業は6月末、家電などの解 業 リサイクルを効 体性を向上するための新技術として、形状記憶プラスチックでつくったネジを開発した。 家電・パソコ 率化[形状記憶 ンメーカーは、製品のリサイクルコストを低減するための最優先課題として解体の効率化に取り組んで プラスチック] いる。 三菱重工では、「ネジ以外にも、リベットやツメのかみ合わせなど、形状記憶プラスチックを利 2003/3/25 Biz Tech 2003/3/12 ポリイミド樹 電子機器産業、NIKKEI 脂「オーラム」 精密機器産業 NET D-乳酸、ポリ 繊維産業 L-乳酸 ● 3 ○ 2 ◎ 02-a ドイツの大手樹脂メーカーであるCelanese社のエンジニアリングプラスチック(エンプ ラ)事業を担当するドイツTicona社は、繊維強化ポリアセタール・コポリマ樹脂の新グ レード「Celcon CF802」を開発したと発表した。 帯電性を下げたのが特徴で、成形し た状態での帯電減衰率は0.01秒、表面抵抗は1000オーム。自動車向けの燃料システムを はじめ、材料ハンドリング装置など帯電が問題になる部品に向く。新グレードは繊維の 樹脂の結合が強固なため,非強化グレードに近い機械的特性,流動特性を持つ。曲げ弾 性率は2790MPa,ノッチ付きシャルピー衝撃強度は4.5kJ/平方メートルである。同社の 5000時間におよぶ検討の結果,9種類の燃料に対し,新グレード材料は他のポリアセタ ール・ホモポリマやポリエステルなどよりも優れた耐性を示したという。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 3 ポリアセター 自動車産業、 Biz Tech 2002/2/20 ドイツTicona社 ル・コポリ 、帯電性を下げ 電子・電気 マ樹脂「Celc 産業 たポリアセター on CF802」 ル樹脂を開発 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 02-a 第4章 先端技術情報例 − 67 − 1 1 02-a 2003/2/17 日本ゼオン、L 特殊ゴム大手の日本ゼオンは液晶表示装置(LCD)に使う光学フィルムの生産能力を8 CD用フィルム 月までに倍増する。LCDの普及と画面の大型化に伴い、主要部材である同フィルムの の生産能力倍増 需要も毎年倍以上の伸びが見込めるという。2005年度には100億円の売り上げ規模を目 指す。増産する光学フィルムは液晶画面の視野角を広げる位相差フィルムが主な用途と なっている。吸湿性が低くゆがみにくい高機能樹脂を原料にする。画面の高精細化や大 型化に伴い、こうした高機能フィルムの需要が伸びている。 NIKKEI NET 液晶表示装置 液晶産業 (LCD) ▲ 東レ、ナノコン 東レは、エンジニアリングプラスチックにナノスケールの無機系添加材(フィラー)を ポジットの新製 均一に分散させて諸特性を高める「ナノコンポジット」の新製法を開発した。従来品に 法を開発 比べて機械的特性や耐熱性などを大幅に向上でき、それらの指標となる物性値である弾 性率は25%以上、荷重たわみ温度は30℃以上、高めることができた。現状では、代表的 なエンプラの一種であるナイロン6で試作しているが、ナイロン66にも対応できるという 。いずれも、自動車や電気・電子機器などの部品向けの需要を想定しており、2002年度 中の製品化を目指す。 △ ナノスケール 自動車産業、 Biz Tech 2002/2/8 の無機系添加 電子・電気 材(フィラー) 産業 、「ナノコン ポジット」 ● 1 ○ 1 ◎ − 68 − 02-a 接着できるフッ素樹脂「ネオフロンEFEP」をダイキン工業が開発した。例えば,ナイロ ン製チューブの内壁にネオフロンEFEPを接着することによって,耐薬品性に優れたチュ ーブを安価に製造できるという。 一般にフッ素樹脂は耐薬品性や耐候性,絶縁性などに 優れており,半導体分野ではウエーハの洗浄工程などで薬液や純水を流すチューブに多 用されている。ただ,フッ素樹脂は高価であるため,純水などを扱う用途ではチューブ を多層構造にして外側に安価なナイロンなどを使い,内側だけにフッ素樹脂を使うとい った手法が提案されている。その場合には,ナイロンとフッ素樹脂の接着強度を30N/cm 以上に高めることが必要だが,これまでのフッ素樹脂は接着強度が5N/cmと低かった。 このため,実際には接着されていない状態で使うことが多く,その場合にはチューブの 端面からナイロンとフッ素樹脂の隙間に液体が入り込んでしまうという問題があった。 今回のネオフロンEFEPはナイロンとの接着強度を従来比8倍の約40N/cmに高めることに よって,このような問題を解決した。ナイロンとネオフロンEFEPの接着は,互いの材料 を240∼250℃に加熱し,溶融状態で密着させながら成型する手法(共押出し)を使う。 この手法が使えないナイロン・エラストマなどの材料と接着する場合は,230∼250℃に 加熱しながら圧着する手法(ヒート・プレス)を使う。 このような接着を可能にしたの は,「200℃を境に反応性が急激に変化する官能基を導入したことにある」と,ダイキン 工業 化学事業部 第一研究開発部 チームリーダー主任研究員の藤田英二氏は言う。ベー スとなるフッ素樹脂骨格には融点を下げたETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン・ コポリマー)の変性品を使っており,その樹脂骨格に官能基を導入した。官能基は200℃ 以下では安定だが,200℃以上で激しい反応性を示し,ナイロンなどの分子と反応して接 着強度を高める。 ダイキン工業では,今回のネオフロンEFEPを2003年4月から本格的に 販売する。融点が165℃の「RP-4000系」と195℃の「RP-5000系」の2品種を投入する 。売上目標は2003年度が10億円,2005年が50億円である。このうち,半導体分野の占め る割合は「2003年度が10%,2005年が15%」(同社化学事業部 マテリアル・ソリュー ション部 樹脂用途開発担当部長の中西克己氏)と言う。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 1 接着できるフ 半導体産業 2003/3/25 接着できるフッ NE ッ素樹脂「ネ 素樹脂をダイキ ONLINE オフロンEFE ン工業が開発 P」 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 1 02-a 調査研究報告書 No.117 5 2 02-a ウッドセラミッ ウッドセラミックスは、青森県工業試験場で開発された、木質材料と熱硬化性樹脂を原 クス 料とした炭素材料である。木質材料は伝統的炭素材料であり熱硬化性樹脂は先端的炭素 材料であることから、ウッドセラミックスは両者の中間的炭素材料である。製造法は、 木質材料に熱硬化性樹脂を含侵し、その後、焼成する行程となる。ウッドセラミックス の木質材料は廃材等を利用することも可能なことから、エコマテリアルの側面も合わせ 持つ。ウッドセラミックスの工業材料への利用は、電磁シールド材、ヒータ、ろ過材お よび耐蝕性材料等、幅広い分野で考えられている。現在、多方面での開発が行われてお り、様々な産業分野での活躍が期待させる。 炭素,シールド 材料,建材,半 ,エコ,ろ過,ヒ 導体,環境 ータ 『日経ナノテクノロジー』編集部は、毎月1回、ここ約1カ月間に著名な学会誌に発表さ れた論文の中から、ナノテク研究者が注目すべきものをいくつか選び、紹介している。 今回は、ナノカーボンを使った新デバイスや新機能材料の研究事例にスポットを当てて みた。代表的な事例の1つとして注目されるのが、独立行政法人 物質・材料研究機構の 物質研究所で開発された世界初の「ナノ温度計」だ。このナノ温度計は、直径が約85nm のカーボンナノチューブの内部に、金属ガリウム(Ga)を封入したもの。1μm以下の微 小空間の温度を、30℃程度から1000℃程度の高温まで測定できる。 このほか、ポリマ ーの「poly 3-octylthiophene」に単層カーボンナノチューブを添加したフィルムを用い て作製した光電池では、ポリマーのみのフィルムを用いた場合に比べて、開放電圧が0.7 ∼0.9V、短絡電流は2ケタ以上高まったという報告があった。また、名古屋大学と韓国ソ ウル大学は共同で、金属ガドリニウム(Gd)を内包したフラーレン「C82」を、さらに 単層カーボンナノチューブに内包した“さやエンドウ”構造を作製。カドリニウム内方 C82の部分が量子ドットのような振る舞いをすることを確認している。 富士通研究所は,導電性ポリマーと感光性ポリマーの複合化した帯電防止材を開発した (ニュース・リリース)。露光によるパターン形成が可能で,20μm程度の解像度を実 現できる。各種LSIの実装工程,ディスプレイ,ハード・ディスクの製造工程,撮像素子 などのESD障害防止に向ける。従来はカーボン・ブラックや金属粉末の導電性充填材を 樹脂に混合した材料を使っていた。これらは光を通さないため,露光によるパターン形 成ができず,スクリーン印刷法による60∼70μm程度のパターン形成しかできなかった 。また充填剤を使う場合,充填剤の脱落によりクリーン・ルームを汚染する場合がある 。充填剤を使用しない界面活性剤系の材料では,湿度が低いと導電性が低くなって帯電 防止効果が低下し,逆に湿度が高いと金属を腐食するという問題があった。今回開発し た材料は,感光性ポリマーと導電性ポリマーを分子レベルで均一に複合化した。これに より露光によるパターン形成を可能にした。ポリマーを使うため,発塵がなく,また50 ℃80%RHという高湿度環境においても金属表面への腐食性がないといった特徴がある。 膜が透明であることから,表示デバイスの帯電防止コーティングといった用途にも使え るという。以上のような特徴を備えていることから,同社では,今回の材料を「世界最 小のパターン形成が可能でかつクリーン」な帯電防止材としている。 富士通研,「世 界最小」のパタ ーン形成が可能 というクリーン な帯電防止材を 開発(発表資料 要約) ナノ温度計も登 場、多彩になる ナノカーボンデ バイス ▲ ナノ温度計、 電子デバイス Biz Tech 2002/3/20 光電池、フラ 産業、ナノテ ーレン「C82」 ク産業 △ 5 ● 4 ○ 02-a 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 3 導電性ポリマ 半導体産業、 NE 2002/3/1 ーと感光性ポ 電子・電気機 ONLINE リマーの複合 器産業 化した帯電防 止材 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 02-a 第4章 先端技術情報例 − 69 − − 70 − 02-b 02-b 4 5 ▲ ガラス素材のプ ロトン導電膜、 Nafionより高温 で使え燃料電池 にも 銅酸化物超電導 体に関する基本 特許--SELが米 国で取得 半導体エネル 電子デバイス Biz Tech 2003/1/20 ギー研究所、 産業 超電導体デバ イス JR総研と超電導 工学研、世界最 強の高温超電導 磁石を開発 半導体エネルギー研究所は、銅酸化物超電導体を使うデバイスに関する特許を米国で取 得したことを明らかにした。高温超電導材料として開発されているY(イットリウム)系 やBi(ビスマス)系などの材料は銅酸化物を含んでいる。このため、これらすべての超 電導体デバイスが対象になるもよう。 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の生活環境系特別研究体は、社団法人ニュ ーガラスフォーラム(NGF)、姫路工業大学と共同で、これまでに産総研が開発してき た多孔質ガラスのナノ細孔中に導電性の有機分子を導入して、新しい無機−有機ハイブ リッド導電膜を開発することに成功した。さらに開発した膜が高温の水蒸気のもとで高 いプロトン導電性を示すことを解明した。この導電膜は、無機骨格の中に有機分子を導 入した構造で、熱や有機溶剤に耐え、また、導電パスが細孔として存在しているので高 いプロトン導電性が期待できる。燃料電池やセンサに応用することを見込む。今後、さ らに、細孔の配向を制御し、高い導電性を持った膜を開発する予定。 鉄道技術総合研究所と超電導工学研究所は、高温超電導バルク体を使って、高温超電導 磁石としては世界最高である17Tを超える磁場を捕捉することに成功した。強い磁場を利 用でき、材料プロセスや磁気分離、MRI(核磁気共鳴画像装置)、また新交通システム などへの応用につながる。高温バルク体は直径2.6cm、高さ1.5cmで、Y-Ba-Cu-O系と 呼ばれるもの。樹脂含浸技術と金属含浸技術によって材料の強度を上げたうえ、低温で の安定性を向上させることによって実現した。 財団法人・国際超電導産業技術研究センター超電導工学研究所(ISTEC-SRL)第三研究 部長の村上雅人氏らは岩手県工業技術センターと共同で、液体窒素の沸点温度である 77K(約-196℃)において14T(テスラ)の永久磁石になる性能を持つ高温超電導体の合 成に成功。ちなみに、現在実用化されている永久磁石の発生磁場は最大で約1Tなので、 今回の高温超電導体を用いた永久磁石の発生磁場はそれより1桁高い。この成果を、 2002年8月に米国で開催された超電導応用会議(Applied Superconductivity Conference )で発表した。村上氏らが開発を進めているのは、電流を流して磁場を発生させる電磁 石でなく、超電導体中にあらかじめ磁束を閉じ込めておく永久磁石タイプ。永久磁石と しての性質を保つには、材料を超電導臨界温度(Tc)以下まで冷却する必要がある。幸 いにも今回の試料のTcは95Kと高く、安価な液体窒素で超電導状態を保つことができる 。なお、今回は試料に14Tの外部磁場を印加して超電導電流が流れることを確認した段階 だが、これはこの試料が14Tの永久磁石になる素質を持つことを意味している。 ISTECほか、14 T以上の永久磁 石になる高温超 電導体を合成 無機−有機ハ 燃料電池産業、Biz Tech 2003/1/25 イブリッド導 電子デバイス 産業 電膜 高温超電導磁 電子デバイス Biz Tech 2003/1/31 石 産業、医療機 器産業、交通 システム産 △ 7 ● 4 ○ 02-b 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 7 高温超電導体 電子デバイス Biz Tech 2002/9/4 産業、医療機 器産業、交通 システム産業 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 02-b 調査研究報告書 No.117 ▲ − 71 − などに対する腐食対策としてSUS304ステンレス鋼製のピンを利用している。「へ」の字に似た 形状に加工したピン(直径1mm)をコマの連結穴に通し,への字形状のバネ力で固定する。細 長い連結穴は当然,穴開け加工時の直径誤差があり,その誤差をピンのごくわずかな塑性変形で 吸収する場合もある。コマを何回か脱着すると,塑性変形による歪みが残る。 ピンに形状記憶 合金を使うと,連結穴に差し込む前は直線状のピンが,挿入後に加熱すると形状記憶効果によっ て,いくらか湾曲したへの字に変わる。TiNi形状記憶合金は加熱すると,高温相のオーステナイ ト相になり,超弾性効果を発揮するように組成・熱処理を調整してある。今回は,歪みが8%ま で弾性域になるように調整してあり,弾性域内でのバネの弾性応力によって連結穴内で接触し, 弾性応力によって直径誤差を吸収し,一定の応力で固定する。連結穴の直径を変化させ,ピン直 径との差とコマの抜き力で結合力を調べたところ,結合力はあまり変わらなかった。現行のステ ンレス鋼の弾性域は歪みが0.5%程度と小さい。 TiNi形状記憶合金は,への字に単純に曲げ加 工すると曲げ部が相転移してしまうので「オーステナイト相を保つ加工・熱処理条件とスプリン グバックの見込みなどの解決が課題になった」(MHT開発本部TECプロジェクトの藤井浩司氏 )。 弾性域でバネとして働く形状記憶合金ピンを用いると,バンドの耐衝撃性や長期信頼性が 大幅に向上する。この結果,腕時計を洗濯機で洗えるようになる。最近は,汗などの汚れを除去 するため「月に1回程度は洗いたい」というニーズが出ている。シチズンは,腕時計を専用冶具 に固定して洗う衛生ニーズに答える腕時計の商品化を進めている。このバンドのピンに形状記憶 合金を採用する。コマもチタン製にすれば接触電位差が小さく,腐食に強い。 腕時計産業、 日経メカ 2002/02/号 形状記憶合金ピ シチズン時計は,腕時計の金属製バンドのコマ同士を結合するピンに,弾性領域の広いTiNi(チ シチズン時計 MHT開発本部 TECプロ ンで 部品同士 タンニッケル)形状記憶合金を採用,コマにかかる応力を弾性域内で一定にし,結合の信頼性を ジェクト FAX : 042−942−5836 電子・電気機 ニカル を固定弾性応力 向上させた。形状記憶効果の回復力を利用 腕時計の金属製バンドの「コマ」と呼ばれる部品同 器産業、精密 士を形状記憶合金ピンのバネの弾性応力で固定する。コマが多数並ぶ構成の金属製バンドでは, を利用し信頼性 機器産業 バンドの長さを調整するために端部の数個のコマ同士にアジャストピンを通し,バネとして働く を向上 ピンで固定している。ピンを抜くと,隣のコマが外れ,バンドの長さを調整できる。 現在は汗 △ TiNi(チタン ニッケル)形 状記憶合金、 シチズン ● 3 ○ 2 ◎ 02-d 米Lucent Technologiesの研究開発部門米Bell Labs(ベル研)の研究チームが、フラーレンから 比較的高温で電気抵抗がなくなる有機超電導体を作ることに成功した。この物質は117Kelvin( 華氏-249度、摂氏-156度)以下で超電導となり、2000年に記録された52Kelvinの(華氏-366度 、摂氏-221度)に比べ、倍以上高温になったという。これにより、冷却に液体ヘリウムではなく 、安価な液体窒素を使うことができる。同社が米国時間8月30日に明らかにしたもので、詳細を 米国の科学雑誌「Science」のWWWサイト「Science Express」に発表した。フラーレンとは 、サッカー・ボール状に炭素原子が結合した分子。炭素原子60個からなるC60などがある。その 形が、米国の建築家R. Buckminster Fullerが考案した、正20面体を同心の球面上に投影したドー ム構造(ジオデシック・ドーム)に似ていることから、「Bucky Ball」とも言われてる。ベル研 チームは1991年に、カリウムを混合したフラーレンの超伝導性を発見している。今回ベル研の 研究チームは、フラーレンの分子間にクロロホルムとブロモホルム(クロロホルムに似た化学分 子だが、塩素原子でなく臭素原子で構成する)の分子を入れて分子の間隔を広げた。ちょうどク ロロホルムとブロモホルムを押し込むことで、フラーレンの結晶を“引き伸ばした”格好である 。こうすることで、隣り合うフラーレンの間で、電子や分子が引き合う力を小さくすることがで きた。繊細な電子デバイス(電界効果トランジスタ)を作り、これを結晶に連結することで、フ ラーレンの結晶が摂氏-156度で超電導体とになったという。この温度と同じ、または高い温度で 超電導体になると知られているものに、酸化銅がある。酸化銅はすでに強力な磁石、マイクロ波 フィルタ、電力伝送システム用の超電導電線などで商業利用が進んでいる。「しかし、酸化銅超 電導体の物理的性質は異質であり、まだ解明されていない、また一般的に高価」とベル研は説明 する。これに対し「フラーレンの超電導体は、従来の超電導体と同じような振る舞いを示すため 、その物理的性質がよく理解されている。より低コストで利用できる可能性がある。これにより 、エネルギー損失のない有機電子機器や量子コンピュータなどを低価格で実現でき、期待が高ま る」(ベル研)。「我々の研究で、高温超電導体が酸化銅に限らないことを示した。今後研究を さらに進め、この新素材の超電導性の新たな驚きが発見されることと期待している」(研究チー ムリーダーのHendrik Schon氏)。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 5 有機超電導体、 電子デバイス Biz Tech 2001/8/31 米ベル研がフラ フラーレン 産業、コンピ ーレンから高温 ュータ産業 超電導体 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 02-b 第4章 先端技術情報例 ▲ 光触媒、 建築・建設業、日経ビジ 2003/1/6 住宅産業、自 ネス 動車産業 △ 1 ● 1 ○ 02-f ビルの外壁が自 動的にNOxを 除去 − 72 − 2002年9月6日にリニューアル開業した「丸ビル」は、地上37階、延べ床面積約16万m2の威容を 誇り、皇居と東京駅に並ぶ新しい名所として「世界都市東京の新しい顔」に定着した感が強い。 オープンから3カ月間で710万人もの来場者を集めた人気ぶりは、訪れたことのない読者でもニ ュースや新聞などで1度は目にしたことがあるだろう。 実はこの丸ビルは、「存在するだけで大 気中の有害物質であるNOx(窒素酸化物)を無害化して除去してくれる」魔法のビルなのだ。 NOxの除去量は、ポプラ並木200本分に相当するという。もちろん、外壁にポプラを200本植え ているわけではない。その秘密は、日本が世界のトップに立つ光触媒の技術を織り込んだ、一見 何の変哲もない外壁のタイルにある。 具体的に説明すると、酸化チタンに光を当てると防汚、 抗菌、脱臭などの作用を発揮することが知られており、これをタイルに取り込んでNOxの除去機 能を実現したものだ。タイルそのものが汚れにくく、水洗いした時に汚れを落としやすい点も売 り物の1つ。太陽光(紫外線)を使うので、NOxを除去するためのエネルギーコストはタダ、メ ンテナンスが不要なので維持費も心配ない。しかも、タイルが破損してしまわない限り、効果は 半永久的に持続する。 光触媒技術のタイルを外壁に使ったビルは、国内で既に約2000棟ある。 光触媒をガラスに使えば、汚れを落としやすい住宅用のガラスが出来上がり、雨天の時に曇りに くい自動車のサイドミラーにも応用できる。丸ビルのタイルを手がけたTOTOによると、光触媒 関連製品の国内市場規模は「約300億円で、この1∼2年は前年比20∼30%増の勢いで伸びている 」。 IM革命は、普通のタイルを「永遠に朽ちないポプラ」の機能を織り込んだ環境浄化タイル に一新する。 痛くない注射針が簡単にできたのではない。加工の研究を始めてから既に2年半が経過した。「 不可能を可能にする男」とマスコミに何度も書きたてられている岡野氏にしては、完成までに大 変な時間を費やしたことになる。それだけ加工が難しいのだ。プレスで板を丸めてパイプを作る だけなのだが、皮膚に刺さる部分は細く、それ以外の部分は注射液が流れやすいように太くなっ ているため、板を丸めて各部分を密着させ、液が漏れないようにするには神業に近い加工の精度 が必要になる。 それだけではない。「スーパーコンピューターの力を借りなければこの加工は 不可能だった」と岡野氏は言う。加工する板はプレスで丸めた後で、どの部分も材料が過不足な くぴったりくっつくように、あらかじめ金属の板をある形に切断しておく必要がある。その形を 決めるのがこれまた厄介なのだ。紙を丸めて円筒形を作るのなら簡単だが、加工の相手は伸び縮 みする金属。しかも、太い部分や細い部分で伸びる量が異なる。さらに、使う金属の種類によっ ても伸びが変化する。そうしたものを全部考えて、材料を切断する形を決めるのに、岡野氏は最 初、自宅のパソコンで計算しようと試みた。しかし、あまりにも加工の精度が高いので、パソコ ンでは計算のケタ数が足りない。そこで、知り合いを頼って大学のスパコンで計算してもらうこ とになった。 スパコンでの計算時間は約30分。現在のパソコンよりはるかに低い能力のコンピ ューターを積んで月面着陸を果たしたアポロ11号のことを考えると、たかだか、注射針の展開 図を決めるのに大変な計算をしていることになる。それほど、加工する材料と加工条件の関係は 難しい。 それを従業員がわずか5人の町工場で実現してしまうところに、日本の強さが垣間見ら れないだろうか。技術者がコンピューターを駆使して設計図面を描き、現場は図面通りに製品を 作る。技術者が上位にいて、現場がその指示に従うような仕組みは汎用品を大量に生産するのに は向いているかもしれない。しかし、こうした画期的な製品は作れない。むしろ逆に、材料と加 工に通じた現場を中心に、必要なら技術者の手を借りて最先端のコンピューターでも何でも使い こなす。このところ悪さばかり喧伝されてきた日本的システムの良さがここにある。技術者のプ ライドが高くて現場との距離が遠い欧米や中国などでは、実現がほとんど不可能な仕組みだろう 。 インテリジェントマテリアル(IM)革命が静かに進行し始めた。ナノメートル(ナノは10億 分の1)レベルの非常に小さな炭素の結晶が新しい半導体やフラット(平面)ディスプレーに応 用されて、新しい技術が開花しているナノテクノロジーなどが最も有名だが、燃料電池車を実現 するにも新しい機能材料が不可欠だ。 実は、岡野工業には現在、日本を代表する自動車メーカ ーの研究者、技術者が日参している。燃料電池車用の難しい部品の加工を共同で開発するためだ 。その中身を岡野氏は絶対に明かさないが、「おれがやろうとしている加工は欧米や中国なんか でできやしねえ。燃料電池車の実用化競争は絶対に日本が先頭を走る」と言い切る。そこには、 新しい機能材料がふんだんに使われている。どんなに優れた材料も思ったように加工できなけれ ば製品化できない。環境問題を解決するために材料革命が起きれば起きるほど、実は日本の技術 の出番なのだ。 ナノテクなど材 医療機器メーカーのテルモは、痛みをほとんど感じない注射針の研究に取り組んで、自分の考え 料革命の進行で た注射針を加工できる世界の第一人者、岡野工業の岡野雅行・代表社員岡野工業の門をたたいた のである。 その痛くない注射針は、厚生労働省の認可を受けてまもなく市場に登場する。太さ 加工法が変わる を3分の2にしても、針の中を流せる流量は今までと同じ。「糖尿病患者がインシュリンを打つ 。海外に負けな 際に使うと今までの針との差は歴然。多い人は1日に3∼4回打ちますが、ほとんど痛みを感じな い製品。日本の いし、あざや腫れができることもありません」と大谷内研究員は言う。注射針の世界市場はざっ 製造業の新たな と1000億円。細いだけでなく、プレスで作るのでコストも安く、テルモは現在数%にとどまっ 挑戦が始まった。 ている市場シェアを一気に半数以上まで高められると考える。 町工場がスパコンを使いこなす 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 1 痛くない注射 医療産業 日経ビジ 2003/1/6 針、岡野工業、 ネス 岡野雅行 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 02-d 調査研究報告書 No.117 4 7 ▲ 02-f △ 孔が大きいゼ 医薬品産業 オライ SmallBiz 2003/3/6 シリカ(酸化 電子デバイス Biz Tech 2002/7/30 ケイ素)多孔 産業 質膜、テラビ ット記録メデ ィア、低誘電 率層間絶縁膜 ● 7 ○ 4 財団法人ファインセラミックスセンター(JFCC、名古屋市)は、大きさが3nmとナノオ ーダーの微細な穴が垂直方向にそろって開いているシリカ(酸化ケイ素)多孔質膜を形 成する新手法を発見した。将来のテラビット記録メディアや低誘電率層間絶縁膜などに 適していると言われる六角形の微細な穴が蜂の巣状に開いたシリカ製のメソポーラス多 孔質体を作製する手法として、JFCCはポリシリケートを加熱・発泡させることで、垂直 配向膜をつくるメドをつけたもの。 触媒機能を持つ ガソリンやプラスチックスなどの製造には、触媒が欠かせない。なかでもゼオライトは ゼオライトの用 その代表格である。ゼオライトが触媒機能を果たすのは、その多孔質な表面の構造が寄 途拡大 与している。医薬品メーカーは、触媒機能を持つゼオライトを医薬品の精製や生産に使 いたいところだが、ゼオライトの孔が小さすぎるため(1ナノ以下)、薬の分子が孔に入 らないという問題があった。California大学の化学者たちは、従来と同じ多孔質のゼオラ イトでありながら、孔が大きいタイプのものを4種類開発した。 JFCC、3nmと 微細な蜂の巣状 垂直配向シリカ 膜の新合成法を 示唆 ◎ − 73 − 02-f ガラスなどの研磨加工を手がけるアトックは,水晶ブランクと呼ばれる水晶片を8μmま で薄く研磨する技術を開発し,量産を始める。nm単位で厚さを制御できるという。水晶 ブランクとは,水晶の結晶軸に対して決められた形状,寸法および角度に切断した圧電 材料である注1)。振動子に使った場合,薄くすればするほど高い周波数で発振する性質 がある。厚さを8μmにした場合,いわゆるATカット(厚みすべり振動モード)の水晶ブラ ンクの発振周波数(基本波)は,208.75MHzに達する。「水晶ブランクを25μm程度 (60MHz程度)まで研磨するのは一般に難しい。さらに薄くするためにエッチングを施し ても10μm程度(170MHz程度)までが限界だった」(ある水晶関連技術者)という。 アトックは,研磨剤と研磨機を改良することで8μmまで薄くできるようにした。具体的 には,回転するガラス基板の上に水晶板を真空吸着させ,その上からSiO2(二酸化ケイ素 )やCeO(酸化セリウム)などを調合した研磨剤をつけて約2時間にわたって研磨する。「エ ッチングに比べ厚さが均一なため,水晶ブランクの歩留まりが大幅に向上する」(同社 取締役副社長の水野徹氏)という。この技術を使えば,逓倍回路なしで高い周波数を得 られる。現状での水晶振動子を搭載する機器では,オーバートーンと呼ばれる周波数の 逓倍処理を何段も重ねて行うことが多い。「アトックの技術は,基本波の周波数を上げ るもので興味深い。周波数を3倍にする3次オーバートーンを行うと,雑音成分は9倍に増 えてしまう問題があるからだ」(水晶発振器向け回路設計を手掛けるアナセム代表取締 役の松浦義昭氏)という。課題はある。割れやすく,透明な水晶ブランクを薄くするた め,その取り扱いが難しくなるのだ。従来はメサ型と呼ぶ凹型の形状に仕上げることで ,この問題を回避してきた。「今回開発した水晶ブランクは,確かに薄く,凹型でもな い。しかし,経験から言えば,水晶をここまで薄くすると,水晶がしなるためかえって 割れにくい。水晶振動子のメーカーが組み立て工程を機械化してくれれば取り扱いは問 題ではなくなる」という。(大槻 智洋)厚さ(t)と周波数(f)との関係は,f(MHz)=1670/t( μm)切断方位がATカット(厚みすべり振動モード)の場合の水晶ブランクの厚さと周波数 の関係を示した。周波数は,水晶の外形寸法に応じて3.5MHz∼30MHzの範囲で変化する。 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 3 水晶ブランク、 電子デバイス Biz Tech 2002/4/26 逓倍せずに高周 水晶振動子 産業、水晶振 波を得られます 動子メーカ 」,アトックが 10μmの壁を破 る水晶研磨技術 を開発 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 02-f 第4章 先端技術情報例 ▲ 微細構造形成 半導体産業 方法,方解石 △ 5 SmallBiz 2003/3/5 ● 4 ○ 03-a 貝が殻を作る方 法を真似た単結 晶の微細構造形 成方法 ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 1 DNA(デオキ 環境対策分野,日経産業 2002/9/18 DNAフィルム シリボ核酸),電子デバイス 新聞 量産技術 環境浄化膜, 産業 ダイオキシン, 環境ホルモン − 74 − Lucent Technologies社のBell研究所では,物理学者のDavid A.Muller氏らの研究チーム が,貝類がどのように殻を作っていくかを研究した結果,室温で,クリーンルームにあ るような精密な装置も使わず,方解石(貝類の殻を作っている物質)の単結晶でできた 微細構造を形成させることに成功した.最初に微細構造のテンプレートとなるものを用 意し,この上に方解石の核と非結晶の炭酸カルシウムを乗せておくと,設計したパター ン通りに,方解石の単結晶がきれいに並ぶ微細構造ができる.これまでとは違うこの微 細構造形成方法は,シリコン上に銅でできた微細構造を安定的に作ることを求めている 半導体メーカーにとって今後の研究の参考になるとみられる. 東京工業大学の岡畑恵雄教授らは,DNA(デオキシリボ核酸)を使ったフィルムの量 産技術を開発した.ナノメートルサイズのすき間にダイオキシンなど有害化学物質を取 り込む機能があり,環境浄化膜として有望という.1年後をめどに実用化を目指す.フ ィルムは,サケの精巣から抽出したDNAを使う.5グラムのDNAが溶けた水200 ミリリットルと,界面活性剤を溶かした同量の水を混ぜ合わせた.DNAと界面活性剤 が結びついてできた沈殿物を乾かし,DNAの粉末を作った.この粉末を一辺15セン チ,厚さ0.1ミリの型に入れセ氏120度で加熱すると溶け,圧縮して透明なフィル ムに加工できる.DNAは化学物質を取り込む性質や,電気を通す性質があるので,浄 化膜や,膜を一方向に約3倍の長さに伸ばすと,DNAの方向がそろうので,膜の一方 向にだけ電気がよく流れる機能膜としても有望であるという.DNAはニ重らせん構造 で,直径は2ナノメートル.2本の鎖をつなぐ塩基と塩基の間に0.4ナノメートルの すき間があり,ダイオキシンや色素,環境ホルモンなど平らな分子を取り込む性質があ る.水中から環境ホルモンなどを除去する膜に応用できる.情報を書き込める色素を取 り込ませると,記録密度が現在の光ディスクの百−千倍の大容量のディスクになるとい う.サケの精巣は食用とされず,年間約1万トンが廃棄される.DNAはこれから年間 約千トン取れる. 関連情報 本文 ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 03-a ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 03-a 1 1 ▲ − 75 − 透明電極膜素 液晶産業 材,有機EL (エレクトロ ルミネッセン ス)ディス プレー 日経産業 2002/8/26 新聞 透明電極膜素材 出光興産はナノテクノロジーを駆使して独自関発した透明電極膜素材を増産する.液晶 表示装置(LCD)などに使う素材で,均一で安定した膜ができるのが特徴. 大判ガ ラスを使用する最新液晶工場や有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー向 けの需要増を見込んいる.ディスプレーの画面の電極膜は光を透過させるため透明であ る必要があり,薄膜トランジスタ(TFT)基板などにプラズマ現象を利用したスパッ タリングと呼ぶ手法で膜を形成する.膜の厚さは100ナノ(ナノは10億分の1)メ ートル程度となる.一般的な透明電極膜素材はインジウムとスズの酸化物だが,出光で はIZOというインジウムと亜鉛の酸化物でできた素材を開発し1999年から販売し ている.成膜中にできやすい数ナノメートル程度の大きさの異物がほとんど発生せず, ごみも付着しにくいため,LCDの歩留まりが飛躍的に向上する.スパッタリング装置 などの保守管理も楽になるという.現在,LCDメーカーは生産効率を上げるため液晶 ガラスサイズの大判化に取り組んでいる.出光は,大判ガラスへの電極膜が楽に作れる としてIZOを拡販する.LCDより薄膜化が必要な有磯ELディスプレーの電極とし てもIZOを売り込む計画.IZOの2001年度の販売実績は3億円で今年度は10 億円になる見込み.5年以内に年間販売額を30億円に引き上げる. 微細人工毛, ロボット産業 SmallBiz 2002/10/21 接着剤・接着装 天井のような ところで逆さになっても落ちないでいられるゲッコ-トカゲ(ヤモリの一 置が不要な微細 種)の足に 生えている微細な毛を真似て,2 000億分の1メートルという細い人工毛を ファン・デル 人工毛 ・ヴァールス オレゴン州のルイス&クラーク大学とカリフォルニアの3校が開発した.平滑に見える壁 力 でも何千という微小な毛があれば一本一本の毛と壁などの表面との間にファン・デル・ ヴァールス力と呼ばれる引力が作用して,接着材や吸着装置なしでもモノをくっつける ことができる. △ 3 ● 4 ○ 03-a 曲げられる超薄 千葉大学の山田哲弘・助教授らは,柔軟性がある分子が緊密に規則的に並んだ超薄膜の 膜 製造技術を開発した.折り曲げても割れが起きず,フッ素など有用な性質がある原子を 組み込めば,ハードディスク(HD)用の摩擦が少ない膜など高機能で高品質の各種薄 膜ができる.新技術では立体構造や電荷分布などを精密に設計した分子を使う.試作し た分子はペプチド型界面活性剤の一種.細長い形で,一方の端が水になじみやすく,も う一方の端が油になじみやすい.それらを結ぶ軸状部分からは,枝が伸びるように3つ のY字形突起が左右に出ていて,Y字突起と直交するように正の電荷を帯びた部分と, 負の電荷を帯びた部分が軸の中心をはさんで正反対の側に出ている.有機溶媒などに溶 かし,蒸発させると,分子の正の電荷を持つ部分と,別の分子の負の電荷を持つ部分が 引き合って結びつく.同時にY字形突起がファスナーのような役割を果たして分子同士 がかみ合うので,欠陥のないち密な単分子膜が多数できる.単分子膜は一方の面が油に なじみやすい性質,もう一方が水になじみやすい性質を持つので,同じ性質を持つ面同 士が引き合って,多層膜ができあがる.試作分子を溶かした有機溶媒を,はっ水性の紙 の上に垂らして乾燥すると直径約2.5センチ,厚さ約0.1ミリの膜ができた.膜は 薬などを包むオブラートと同じ程度の強度を持ち,折り曲げることも可能で柔軟性もあ った.単分子膜は厚さ4ナノ(ナノは10億分の1)メートル. 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 5 超薄膜製造技 電子デバイス 日経産業 2002/9/3 術,ペプチド 産業 新聞 型界面活性剤 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 03-a 第4章 先端技術情報例 − 76 − 1 03-b 03-b 1 03-b 1 1 ▲ 2002/10/ ナノサイズ部 医療製薬会社,日経産業 2002/8/26 品用金型製造 金型産業 新聞 装置,マイク ロウントオー エルフラーヘ ンテクニック ディジタル・ 電子産業 シルク印刷装 置,イスラエ ルPrintar Ltd. FED(フィー 電気・電子産 日経ビジ 2003/1/6 ルド・エミッ 業 ネス ション・ディ スプレー), スピント方式, 双葉電子 カーボンナノ ナノテク産業,SmallBiz 2002/9/23 チューブ生成 電気・電子産 機器,カーボ 業 ンナノチュー ブ,カーボン, ナノホーン △ 1 ● 1 ○ 03-b 1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)という微小なモリブデン製の電子銃が無 数に並ぶスピント方式を採用したFED(フィールド・エミッション・ディスプレー)を 実用段階まで作り込んだのは「世界でも双葉電子1社しかない」と田中ユニットリーダー は言い切る. 成功の決め手となったのは,日本でも2社しか残っていないVFD(蛍光表 示管)で培ってきた真空の技術だった.2.8mmの間に無数の電子が飛び交うFEDで数 千時間から5000時間超の間,真空状態を保つには,まさに材料と加工の技術を融合した IMのノウハウがものを言う.「双葉電子にはノウハウのない半導体関連の微細加工技術 は,設備を購入して使いこなしているうちに何とかなった.でも,真空の技術を蓄積し ていない会社は,IT(情報技術)関連の大手企業でも開発に苦労されている」と双葉電 子商品開発センターの片山実グループマネージャーは笑う. ナノサイズ部品 伊藤忠商事の産業機械販売子会社,伊藤忠プラマック(大阪府箕面市,伊時和夫社長) 用金型製造装置 はドイツの機械メーカー,マイクロウントオーエルフラーヘンテクニック(MOT,シ ュパイヤー市)からナノサイズ部品用金型製造装置国内販売権を取得した.金型の形状 を樹脂に転写する「エンボス」を利用したDNA(デオキシリボ核酸)チップの製造な どに使う.金属の母材をレーザー光で加工する従来の金型とは違い,MOTの装置はニ ッケルや銅など母材の表面を前処理し,電界溶液に浸し,凹凸が必要な部分にだけメッ キ加工することで金型を製造する.従来方式に比べ加工時間の短縮と低コスト化が可能 で,医療製薬会社などがこれまで外注していた金型製造を内製化できると見ている.価 格は1台あたり千5百万−2千万円で,このほど販売を始めた.初年度販売目標は50 台. ディジタル・シ プリント基板向けディジタル・シルク印刷装置 「LGP―809」は,インクジェット方式 ルク印刷装置 の採用により,従来のスクリーン印刷方式に比べてプロセスを簡素化することで生産コ 「LGP―809」 ストの大幅な削減を可能にした.750dpiの高解像度により微細なシンボルマークやテ キストが描画できるほか,高精度アラインメント・伸縮補正機能を搭載し,高精度の合 わせが可能.1枚単位での可変印刷ができるため基盤のロット管理が容易に行える. ・発売時期:2002年10月 ・価格:6000万円 ・製造元:イスラエルPrintar Ltd. FED(フィー ルド・エミッシ ョン・ディスプ レー) 3種類のカーボ 電気分解機器開発のエイアールブイ(愛知県新城市)は,豊橋技術科学大学の滝川浩史 ンナノチューブ 助教授と共同で1台で3種類のカーボンナノチューブを作ることができる機器を開発,販 売をはじめた.開発した機器は,素材や添加する触媒,アーク放電時の電流などを変え 生成装置 ることで,多層カーボンナノチューブ,単層カーボンナノチューブ,カーボン ナノホ ーンの3つを作り分けできる.アルゴンやヘリウムなど特殊なガスの中で生成する従来機 と違い,大気中でカーボンナノチューブを作れる.生成能力は大型機器の場合,6時間運 転で多層が20グラム,他の2種が各々10グラムできる.カーボンナノ チューブの大き さは,直径3-5ナノメートル,長さが15-30ナノメートル. ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル 本文 関連情報 △ 3 熱を伝えるプ 電子デバイス SmallBiz 2002/10/21 熱伝導率100倍 通常よりも100倍効率よく熱を伝えるプラスチックの製造技術を大阪市立工業研究所は, ラスチック のプラスチック 日本科学冶金(大阪府寝屋川市)と共同で開発した.プラスチック原料の粒に熱をよく 産業,電気メ ーカー 伝えるセラミックス粉末と低温で溶ける合金粉末を混ぜ,加熱して成型加工を行う.加 熱すると合金粉末が液状化し,プラスチック内部に編み目のように染みわたることでセ ラミックス粉末同士を合金で結んだ回路が自然にできる.熱伝導率は金属のチタン並み で,量産化が進めば金属部品の半分程度のコストに抑えることができる.プラスチック と同様に複雑な製品でも容易に成型できるため,発生した熱を外に逃がしたい電子部品 などに利用が広がる可能性がある.2003年をメドに日本科学冶金が実用化し,電機 メーカーなどに売り込む. ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 03-a ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 − 77 − 2 3 高機能性樹脂 コンピュータ 日経産業 2002/9/4 ポリカーボネ 産業,モバイ 新聞 ートの微細加 ル関連産業 工技術 ▲ 03-b 金型産業,半 日経産業 2002/9/3 導体産業,電 新聞 子デバイス産 業 △ ナノ加工機 ● 1 ○ 1 ポリカーボネー 横浜国立大学の友井正男教授らはCDの透明基板などに使う高機能性樹脂ポリカーボネ ト微細加工技術 ートの微細加工技術を開発した.これにより回路線幅が従来の約5分の1の細い配線を 持つプリント基板や,光信号を通す微細回路を安価で作れる.携帯端末の小型化や光を 使った演算チップの実現につながる成果.産学連携で3年後をメドに実用化を目指す. ポリカーボネートに半導体微細加工で使う感光剤のジアゾナフトキノンを30%混ぜて 有機溶媒に溶かし,乾燥して基板を作る.配線パターンを光で基板上に照射すると,そ の部分だけ感光剤が反応して中性だったのが酸性に変わる.その後,アルカリ性の現像 液エタノールアミンに基板を浸す.すると,液は酸性に変わった部分だけにしみ込み, ポリカーボネートを分解するので,回路パターンが基板に刻まれる.厚さ20マイクロ (マイクロは100万分の1)メートルのポリカーボネート基板を使って線幅10マイ クロメートルの回路を作った.現像処理時間は約5分で,その後セ氏約200度,30 分間熱処理する.技術はポリアリレートなど他の高機能性樹脂にも応用可能.微細配線 加工できるプラスチックの種類が大幅に増える.ポリカーボネートは透明樹脂なので, 次世代の超高速計算機として研究が進む光コンピューターへの応用も期待できる. ナノ加工機「N ソディックは1ナノ(ナノは10億分の1)メートル刻みで制御して材料を削るナノ加 ANO−100」工機「NANO−100」を9月から販売する.電子デバイスや半導体製造工程への応 用も可能だ.標準価格は1億千万円で2003年度に20台の販売を目指す.縦横高さ の3方向の直動軸の駆動源にはリニアモーターを使い,ち密な制御を実現.さらに2つ の回転軸をスピンドルモーターで駆動させ,研磨など多様な加工を施せる.半導体回路 原版(フォトマスク)の回路を刻む場合には一定の環境下であれば10ナノメートルの 誤差内で80ナノメートルの溝を掘ることができる.このほか,光通信機器やDVD( デジタル多用途ディスク)プレーヤーに組み込む微小なピックアップレンズ用金型の製 造や医療用超精密機器の微細駆動モーター部品などの加工に向く. ◎ 03-b 藤倉化成は,ナノテクノロジー(超微細技術)を活用して電気抵抗を従来の約半分に抑 えた導電性材料を開発した.ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの酸化銀と有 機銀化合物を組み合わせて,導電性を引き上げた.今後,用途開発を進め,タッチパネ ルの配線や導電性インク材料などに使用する.これまでは,エポキシ樹脂などの中に金 属の粒子を分散させて電流が流れるようにするタイプが主流だが,配線形成に必要な熱 処理の後に樹脂が残り,導電性を下げていた.このため,同社はグループ会社のフジク ラと共同で酸化銀を原料とした導電性材料を開発していた.樹脂を使わないメリットが あるが,この材料は粒子のすき間が多い構造になり,導電性が低かった.藤倉化成は, 導電性を引き上げることができる,ナノサイズの酸化銀と有機銀化合物の混合比率を編 み出し,新導電性材料を作った.従来100万分の6オームセンチメートルだけだった 抵抗を100万分の3オームセンチメートルに抑えられる.硬化温度をセ氏150度付 近と従来に比べて大幅に引き下げられ,生産コスト削減にも寄与するという.ナノレベ ルの粒子を原料とする新材料を使えば,プラスチックフィルム上の回路形成方法である スクリーン印刷法で配線幅を約20マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと 従来の約5分の1に縮小することも可能という. 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 5 新導電性材料 電気・電子産 日経産業 2002/8/26 ナノテクノロジ 業 新聞 ーを活用した 導電性材料 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 03-b 第4章 先端技術情報例 ▲ 財団法人・福 電子産業 井県産業支援 センター,ア イテック,超 短パルスUVレ ーザー,MEM S(マイクロエ レクトロメカ ニカルシステ ム),NEMS (ナノエレク トロメカニカ ルシステム) △ 5 Biz Tech 2002/11/29 紫外線フェムト 秒レーザーによ る数十ナノメー トルの極微細加 工技術 ● 4 ○ 03-b 財団法人・福井県産業支援センターの研究員である安丸尚樹氏(福井工業高等専門学校 機械工学科教授)および木内淳介氏(眼鏡フレーム部品などの表面処理加工を主な業務 とするアイテック=本社福井県鯖江市から派遣)の2人と,京都大学エネルギー理工学研 究所教授である宮崎健創氏らの共同研究チームは,ダイヤモンドライクカーボン(DLC )や窒化チタン(TiN)の硬質薄膜に,パルス長がフェムト(10の−15乗)秒レベルで ある波長が267nmの超短パルスUVレーザー光を照射し,その波長の1/10∼1/5である数 十nmレベルの極微細パターンを形成することに成功した.レーザー光の波長および偏光 状態を変化させることで,極微細パターンの形状およびサイズを制御することにも,世 界で初めて成功した.この新技術は,MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム )やNEMS(ナノエレクトロメカニカルシステム)向けの極微細加工や,パターンドメ ディア(極微細パターンに記録材料を配置して書き込み/読み取りの精度を高める記憶媒 体)などへの応用が期待される.また,ナノスケールの極微細構造を持つエレクトロニ クスデバイスや光デバイスを,インプリンティング(刻印)法で作製する場合のテンプ レート(鋳型)として,この新技術で加工した硬質薄膜を利用することも考えられる. 細胞培養で立体 東京都立大学の川上浩良・助教授と長岡昭二教授らは,細胞培養で立体的な組織を形成 的な組織形成 する新手法を開発した.細胞培養する高分子基板上にナノ(ナノは10億分の1)メー トルサイズの規則的なパターンを作った.移植用の組織や臓器を育てるなど再生医療の 基盤技術になる可能性がある.電子部品などに使われる高分子ポリイミド薄膜の表面を 加工.水になじむ領域と,水になじみにくい領域が横幅100ナノメートル程度の畝状 に交互に配列したナノパターンを作る.これに細胞培養液を入れると,培養液に含まれ る各種たんぱく質が,水になじみやすい帯状領域に規則正しく吸着する.この膜上で皮 膚細胞を培養したところ,2日間で600個程度の細胞が塊になり,大きさ60−80 マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのスフェロイドと呼ぶ粒状構造を形成 した.皮膚細胞の活性の指標となるコラーゲン生産量は,通常培養の場合より10倍多 く,活発に活動していることが分かった.スフェロイドは立体的な組織や臓器をつくる もとになるので,肝臓などを細胞から育てる再生医療の基礎技術になると期待している .血管細胞の培養実験ではナノパターンに沿って細胞が縦長の形状に変形,生体内に近 い状態に成長したことから,血管の育成にも使える可能性があるという.ポリイミド薄 膜の表面加工では,液晶フィルム製造工程で分子を規則的な向きに並べるラビング法を 応用する.木綿の布を巻いた棒を強く押しつけながらこすると,こうしたナノパターン の帯状構造が自然にできる.今後は,なぜこうした表面加工をすると,細胞増殖や組織 形成が通常と違ってくるのか,その仕組みを解明,効果的な培養法の開発に取り組む. 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 10 細胞培養で立 ナノテク産業 日経産業 2002/9/5 体的な組織を 新聞 形成する手法, ナノパターン ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 03-b 調査研究報告書 No.117 − 78 − 2 3 ▲ 03-c △ 形状を記憶す 電気・電子産 Small Biz 2002/9/23 る新合金,物 業 質・材料研究 機構 リングチュー 淡水プラント 日本工業 2003/2/7 ブ式海水淡水 事業 新聞 化装置,シン デレライト ● 3 ○ 2 − 79 − 低コスト形状記 物質・材料研究機構は,1回の加工処理で形状を記憶する新合金を開発した.従来法と違 憶合金 い,何度も変形・加熱を繰り返す必要がない.これによりコストが従来の1/10から1/100 に下げられるという.記憶させたい形に合金を加工し,セ氏800度程度で10分間加熱処 理 した後に合金を変形させ,再度セ氏200-300度に加熱すると,記憶した形状に戻る. 新合金の組成は,マンガン28%,シリコン6%,クロム5%,ニオブ0.53%,炭素 0.06%, 残りは鉄.ニオブと炭素を混ぜることで形状記憶性能が向上する.従来のニ ッケル・ チタン系記憶合金に比べ安価で,形状を保持できる力も320メガパスカルと従 来の2倍. リングチューブ 海水に高圧の高周波電圧をかけて食塩(NaCl)の結晶を凝集させ,特殊フィルターでこ 式海水淡水化装 しとる方法により,高効率で海水を淡水化する装置「リングチューブ式海水淡水化装置 置 」をシンデレライト(神奈川県相模原市)が開発した.従来方法に比べ,淡水が取れる比率 が3倍以上の約95%と高く,電気代やメンテナンスの手間が省けるなど低コストを実現. 結晶生成装置で,海水に25∼50キロヘルツ,数千ボルトの高周波電圧を数十秒かけ,分 散している食塩のナトリウムイオン(Na)と塩素イオン(Cl)を化合,微細な食塩結晶を 形成.さらに最大1マイクロ(1マイクロは100万分の1)メートルの粒子に成長,凝集させ て直径数マイクロメートルの塊にする. この塊を濾過(ろか)するリングチューブは,厚 さ1ミリのステンレスをドーナツ状(外径156ミリ,内径136ミリ)にして,これを800ミリ の厚みに重ね合わせ,ステンレス製多孔円筒内に入れた二重構造.リングを緩やかにひ ずませ,ひずみ方向が凹凸になるように何枚も組み合わせ,ナノ(1ナノは10億分の1)レ ベルのすき間をつくり出す. 食塩結晶を含む水を1平方センチあたり20キロ程度に加圧 し,リングチューブ外側から浸透させ,内部には淡水が,外側は塩分が濃縮された海水 が残る. 淡水の塩分濃度は0.067%程度,にがり成分の塩化マグネシウムなどミネラル が海水の半分ほどの濃さで含まれ,ほどよくミネラルを含んだ状態なる.また濃縮水は ,塩分濃度16%程度,ミネラル成分も残り天然塩に近い食塩が精製できる. ◎ 03-c 東京大学大学院情報理工学系研究科の下山勲教授の研究グループは,10×10×5μmのケ イ素(シリコン)製長方体数個を自発的に直線上に並べたり積み重ねるなどの自己組み 立て技術を疎水性と親水性の表面処理を組み合わせることによって確立のメドをつけた .MEMS(微小電気機械システム)を作製する際に特定の役割りの素子を組み込む後工 程などの,マイクロマシン作製の後工程向け加工法として実用化を目指す.下山教授は 「例えば,駆動回路素子であるドライバを液晶の多数の特定個所に配置する後加工法な どの用途を想定している」という. 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 10 自己組織化, マイクロマシ Biz Tech 2003/3/27 自己組織化を応 用した自動マイ 自己組み立て ン関連産業 技術,MEMS クロマシンを組 (微小電気機 み立て技術 械システム) ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 03-b 第4章 先端技術情報例 1 1 ▲ 03-d △ マグネシウム 合金向け射出 成形機,日本 製鋼所 モバイル関連 BizBoard 2002/8/1 産業,自動車 / BizTec 産業,電気産 h 業 カーボンナノ 電子デバイス BizBoard 2002/9/6 チューブ,ヒ 産業 / NE ートスプレッ Online ダ,インテル 社 ● 3 ○ 2 マグネシウム合 金向け射出成形 機「JLM280-M G2」 カーボンナノチ ューブを使うヒ ート・スプレッ ダの国際特許 ◎ 03-d − 80 − 日本製鋼所のマグネシウム事業部は,射出成形速さを従来機より30%速い5m/sと高速化 し,成形サイクルを短くしたマグネシウム合金向け射出成形機「JLM280-MG2」(型締 め力2750kN=280t)を発売した.シリンダ素材に熱伝導率,耐熱性の高い新しく開発し た鋼種を採用することで,原料のマグネシウム合金を適正温度に素早く加熱できる.ま た成形型の開閉速さを従来機(型締め力220t)に比べて約70%速くした結果,成形サイ クルの短縮が可能になり,生産性が向上した.消費電力も15%低減した. 米インテル社はカーボンナノチューブを使うヒートスプレッダに関する特許を国際出願 した.指定国は日米欧を含む90カ国と多く,インテル社は重要な特許出願であるとみな している.ヒート・スプレッダは電子デバイスの放熱を大面積のヒートシンクに熱伝達 する板状の材料で,ヒートシンクと電子デバイスの間に挟んで使う. カーボンナノチュ ーブを使ったヒート・スプレッダは,従来の銅(合金),アルミ合金,マグネシウム合 金などの材質(熱伝導率80∼400W/(m・K))に比べ熱伝導率が500∼1000W/(m・K )と高いのが特徴である.しかも,密度が立方cmあたり2.2gと小さく軽い. カーボンナ ノチューブを1000本ほど束にした直径約10μmの繊維を縦横に配置したコンパウンドを 成形する.カーボンナノチューブを縦横に配置するのは,熱伝導に等方性を持たせるた めである.ヒート・スプレッダは圧縮成形や射出成形を使って成形する. 平方センチあ たり20キロ程度に加圧し,リングチューブ外側から浸透させ,内部には淡水が,外側は 塩分が濃縮された海水が残る. 淡水の塩分濃度は0.067%程度,にがり成分の塩化マグ ネシウムなどミネラルが海水の半分ほどの濃さで含まれ,ほどよくミネラルを含んだ状 態なる.また濃縮水は,塩分濃度16%程度,ミネラル成分も残り天然塩に近い食塩が精製 できる. 京都大学の村上正紀教授らは,半導体チップを段階的に加熱することで銅配線の結晶構 造が変化,電気抵抗が下がることを突き止め,この実用化を図る.銅配線中には,数十 ナノメートルサイズの微細な結晶構造があり,電気抵抗の主原因が電子がこの結晶の境 界面でぶつかることであることを発見した.半導体チップをセ氏250-300度で加熱すると ,ひずみで結晶が大きくなる.結晶サイズが10倍大きくなると電気抵抗が半分になると いう.これにより,30%程度処理速度が向上し,発熱量や消費電力も下がる.課題とし て,現段階では結晶サイズを10倍にするのに数時間以上かかるため,数分程度に時間を 短縮することである. 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 5 京都大学村上 電子デバイス Small Biz 2002/9/23 銅配線の結晶巨 大化による半導 正紀教授,半 産業 体チップの処理 導体チップの 速度の向上 結晶を巨大化 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 03-c 調査研究報告書 No.117 04-b 2 3 ▲ ショックコー 自動車 ン,アルミボン ネット,衝撃吸 収,欧州NCAP, 衝撃分散 − 81 − Bluetooth搭載 のマイクロロボ ット「ムッシュ 「-P」 セイコーエプソン(本社:長野県諏訪市)は2003年3月10日,手のひらにのるサイズの 超小型ロボット「ムッシュII-P」を開発したと発表した.同社は1991年に初代「ムッシ ュ」の開発を始めて以来,マイクロロボットの研究を続けてきた.初代ムッシュは1993 年に5万円で発売.なお,ムッシュII-Pは試作機であり,現時点で発売の予定はない.初 代ムッシュとムッシュII-Pの違いは,初代が時計用超小型モーターで動作していたのに対 し,II-Pは超薄型超音波モーターとし左右の車輪を別々に動かすことを可能にしたこと. また,Bluetoothモジュールを内蔵し,遠隔操作が行えるようにした点も新しい.電源は 1.4Vの空気亜鉛電池を利用し,最大走行時間は5時間.重さは12.5g.体積は7.8立方cm .1立方cmだった初代ムッシュに比べると大型化している. 日本における計算科学の普及と推進を支援する財団法人・高度情報科学技術研究機構の 東京事業所(RIST東京)は,地球全体の大気,海洋,内部の変動を計算するために開発 されたCPU(中央演算処理装置)を5120個搭載する“世界最速”レベルのスーパーコン ピューター「地球シミュレータ」を用いて,2002年秋にカーボンナノチューブ(CNT) など,ナノテクノロジー用素材の物性をシミュレーションする研究に着手した.信州大 学教授の遠藤守信氏,名古屋大学教授の篠原久典氏らナノカーボン研究の世界的権威13 人が中心となって「カーボンナノチューブ・シミュレーション研究会」を組織.今後, 地球シミュレータをナノテク素材のシミュレーションに積極的に活用し,実験と併せて 様々な形状の新しいナノテク素材の開発に生かす. 世界最速レベル のスパコンによ るナノテク素材 の物性解析 日経メカ 2003/08/号 マツダ,アルミ マツダは,歩行者との衝突の際に頭部を保護できるアルミニウム合金製のフード「ショ ニカル ニウム合金製の ックコーンアルミボンネット」を開発,2003年4月に発売した車種に採用した.今後, フード「ショク アルミ合金製のフードを搭載する車種に順次採用していく方針だ. 円すい形状のくぼみ コーンアルミボ で衝撃分散 ショックコーンアルミボンネットは,外板と内板から構成するフード部分 の内板に「ショックコーン」と呼ぶ円すい状のくぼみを一様に配置したもの.従来のフ ンネット」を ードでは,構造上,頭部が衝突する位置により衝撃吸収にバラつきが生じやすいという 開発 難点があった. ショックコーンアルミボンネットでは,円すい状のくぼみが並んだ構 造を採用したことで,頭部が衝突した際には,内板全体がたわんで衝撃を吸収,フード のどの部分に頭部が衝突しても均一に衝撃を吸収できる。これにより,欧州NCAP(新 車アセスメント)の歩行者頭部保護試験に準じた試験結果では,従来のアルミ合金製フ ードに比べて頭部への衝撃を半分に減らすことができた。また,衝撃値が低いばかりで なく,フードのどこに当たっても衝撃値のバラつきが少ないのも特徴だ. 従来のフー ドの構造では,歩行者の頭部が衝突した際の衝撃値を抑えるためには,フードの変形量 を大きく取らなければならないため,フードとエンジンの間隔が約90mm必要だった。 これに対し新型フードでは60mmと,同じ衝撃値ならば,従来のアルミフードと比べて 30mm縮小できるという。 (以下、「日経メカニカル5月号」に掲載) ムッシュII-P, 玩具メーカー,日経メカ 2003/3/11 ムッシュ,セ ロボット産業 ニカル Design & イコーエプソ Manufac ン turing △ 1 ● 1 ○ 03-e 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 10 地球シミュレ ナノテク産業 BizBoard 2002/11/19 ータ,カーボ / BizTec ンナノチュー h ブ・シミュレ ーション研究 会,財団法人 ・高度情報科 学技術研究機 構 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 4 03-d 第4章 先端技術情報例 2 2 05-a − 82 − 3 3 ▲ 05-a △ 2003/1/14 自己血糖測定 健康機器,自己 Biz Tech 2002/3/20 装置,酵素電極, 血糖測定装置 バイオセンサー ニプロなど、糖 尿病患者向け血 糖バイオセンサ ーを販売 ニプロとキッセイ薬品工業は,糖尿病患者向けの自己血糖測定装置「フリースタイル」 の日本発売を開始した.「フリースタイル」は米国のTheraSense社が開発した酵素電極 を利用したバイオセンサーで,0.3μリットルの血液からグルコース濃度を測定できるの が特徴だ.従来製品に比べ約10分の1の採血量ですむので,患者の苦痛が小さい. デジカメに使われるCCD(電荷結合素子)を使うバイオセンサーが開発された.測定結 果を累積する仕組みで,雑音を抑えて信号を増幅できる.従来のISFET(イオンセンシテ ィブ電界効果トランジスター)型に比べて,感度は最高100倍になる.環境ホルモンや残 留農薬など,微量化合物の精密な測定に向けて製品化も進む. 堀場製作所とその子会社 であるバイオ・アプライド・システムズ,豊橋技術科学大学が01年末開発,発表したも のである.これは,生物学的な反応を電荷結合素子(CCD)を使って電気信号として取 り出すものであり,ノイズを抑え信号を積算増幅する. 電子をためたり出したりを制御 できるCCDの性質を利用し複数回の測定結果を積算して信号を増幅できるのがこのセン サーの最大の特徴だ.通常センサーが溶媒や外部環境から拾い上げる雑音を一緒に増幅 してしまうと感度は向上しないが,ランダムな波形の雑音部分は積算しても打ち消し合 って信号ほどは増幅されない.従って信号/雑音比が向上する. 残留農薬などのセンサ ー視野に CCDバイオセンサーは経済産業省のプロジェクト研究で開発が進められてきた .積算の仕組みはプロジェクトのグループが発明したものではないが,バイオセンサー のプラットフォームとして利用を考案し実現したのはこのグループが初めて.特許実施 権は堀場製作所が持つ. 地雷除去、官民 政府は国際貢献の一環として、建設機械メーカーなどと対人地雷の探知・除去技術を開 発する。日本の先端技術を活用し、来年度中にも新型実用機を完成させて復興中のアフ で最新型機 ガニスタンに投入する。現地で除去作業を進めている政府機関や非政府組織(NGO) に供与し、安全性の高い効率的な地雷除去を進める。経済産業省が6億円を補助し、情報 技術(IT)を使った効率的な地雷探知システムや、アームの先に特殊なカッターを装 備し、地面を掘り起こしながら一帯の地雷を完全に除去する重機などを官民共同で開発 する。コマツや山梨日立建機、川崎重工業などを中核とし、センサー会社、IT会社も 参加する見込み。 CCD,バイオセ CCDバイオセ 日経バイ 2002/03/号 新型バイオセン ンサー,ISFET, ンサー オビジネ サーが登場 イオンセンシ ス CCDで感度が ティブ電界効 100倍アップ 果トランジス ター,残留農薬, 環境ホルモン, 積算増幅 対人地雷,探知 非政府組織, NIKKEI ・除去,地雷除 NGO,地雷探知 NET 去,地雷探知シ システム ステム ● 5 ○ 4 ◎ 04-c A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル 本文 関連情報 △ 3 北陸先端科学 消火剤,消火器 BizTech 2001/8/29 北陸先端大/富山 北陸先端科学技術大学院大学教授の民谷栄一氏らは、富山県消防本部、微生物製剤を扱 技術大学院大 消防署/ゲイト、 う株式会社ゲイトとの共同研究により、バイオテクノロジーを利用した環境に優しく安 学,微生物製剤 微生物を利用し 全な消火剤を開発した。この成果は京都市で8月27∼28日に開催された第41回東近畿支 ,消火剤 た安全な消火剤 部消防研究会で8月27日に発表された。 を開発 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 04-b 調査研究報告書 No.117 − 83 − 2 2 05-a 2 05-a 05-a 蛋白質固定化 センサ 3 3 5 Biz Tech 2002/10/1 2002/5/15 バイオセンサ バイオセンサ Biz Tech ー,Drugminin ー,新薬の開発 g,色素法,電気 生理法,薬効果 ナノ金属錯体, 基礎科学,応用 Biz Tech 2002/3/28 物性,分子設計, 技術 IT,バイオセン サー,分子デバ イス 2002/10/30 燃料電池,バイ ノートパソコ Biz Tech オセンサー,バ ン,バイオセン イオエレクト サー ロン研究会 ▲ △ 3 ● 2 ○ 05-a 九州大学大学院工学研究院助手村田正治氏,福島県立医科大学教授錫谷達夫氏,関西電 力,関西総合環境センターのグループは,蛋白質を固定化した新規センサー用素子の開 発に成功した.成果は,10月2日から北九州市で開催される第51回高分子討論会で発表 する. 松下電器、バイ オセンサー用い た新薬効果の評 価技術 ナノ金属錯体が 分子デバイスの カギに──日本 化学会 松下電器産業は2002年5月15日,同社が開発したバイオセンサーを使って,新薬の効果 を評価する技術「Drugmining」を開発したと発表した.新薬の候補となる物質を細胞に 投与することで発生する電気信号の変化をセンサーで測定して,薬としての効果を測定 する仕組み.色素法や電気生理法など,従来の技術よりも短時間で薬効果を評価できる 点が特徴.この技術により新薬の開発期間が短縮できるという.2004年の春をメドに実 用化を目指す.Drugminingでは,新薬候補物質を投与した細胞の細胞膜と,バイオセン サーの電極間で発生する電気信号の変化を,物質投与前と比較し,統計データとして算 出する.ガラス電極を細胞内に刺し込んで薬効果を測定する従来の電気生理法とは異な り,センサー上に細胞を置くだけで薬効を測定できるのが特徴で,1日に約10万回の測定 も可能だという.さらに,細胞にガラス電極を刺し込むことで細胞が変性するといった 問題も回避できるとしている.着色した細胞の色の変化で薬効果を見る従来の色素法と 比べても,色素沈着によって細胞に毒性を与えたり,色素と新薬候補物質が同色で測定 不可能になるといった事態を防げるという.(岡本 守弘) 社団法人・日本化学会は,2002年3月26∼29日に東京・新宿区の早稲田大学・西早稲田 キャンパスで開催中の「第81春季年会」で,特別企画セッション「ナノ金属錯体の化学 」を27日に開いた.物性や分子設計などにかかわる基礎科学的な領域から,ナノスケー ルのIT(情報通信技術)デバイスやその作製プロセス,新タイプのバイオセンサーとい った分子デバイスなどへの応用技術まで,幅広い内容の講演があり,多くの参加者が高 い関心を示した.同セッションは200人程度を収容できる会場で開かれたが,立ち見も含 めて常時250人以上もの参加者が訪れ,入り口の周りには会場に入りきれない人があふれ ていた. 細菌の水素使い 財団法人の地球環境産業技術研究機構(京都府木津町)と関西電力,東京大学などは, 燃料電池開発へ、生物の機能や仕組みを利用した次世代のエネルギー・環境機器の共同開発に乗り出す. 産学連携で研究 ノートパソコンの24時間使用を可能にする燃料電池や化学物質を検出するバイオセンサ 会 ーなどを目指す.機器の性能向上に生物の機能を活用する研究を産学が連携して進める のは珍しい.同機構が中心となってバイオエレクトロン研究会を設けた.関電,東レ, シャープ,堀場製作所のほか,東京大や京都大学が参加する.企業は10社前後に増える 見通し.来年以降,複数の研究プロジェクトを立ち上げる. 九州大など、蛋 白質センサー用 素子の開発に成 功 オロチン酸誘導 技術シーズコード S000005141 技術名称 オロチン酸誘導体及びオロチン酸含有組成 体及びオロチン 物ならびに機能薄膜 研究者 川原孝春(株)クラレ岡山工場樹脂生産部 生産2課 酸含有組成物な 栗原 和枝 東北大学反応化学研究所 国武 豊喜 九州大学工学部応用物質化学 らびに機能薄膜 科 研究実施機関 科学技術振興事業団 創造科学技術推進事業 技術概要 水面単 分子膜を利用する分子認識系を開発した.まず,水素結合を用いる特異的な相互作用に よりオロチン酸等の各種の生理活性物質の官能基を結合部位とする単分子膜を作製し, 次いでUV・IRスペクトル,電気的測定等により基質の結合様式,選択性などの分子認識 特性を評価した.単分子膜系では,水素結合形成を競争的に阻害すると考えれる水が存 在しながらも,なお効率よく結合が起こっており,これは従来の常識を覆すものである .本技術の開発により機能性薄膜を広範囲な分野のセンサなどとして利用出来る.オロ チン酸誘導体の機能薄膜の特性を解明し,基質選択性の高いセンサ,基質の輸送,抽出 の担体等として利用する道を拓いた. 科学技術振興事業団 技術展開部 技術展開課 Tel: 03-5214-7515 Fax: 03-5214-7517 E-mail: [email protected] 関連情報 本文 情報タイトル ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 3 オロチン酸誘 センサ J-STORE 2001/11/21 導体,水面単分 技術シー 子膜,分子認識 ズDB 系,機能薄膜,セ ンサ ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 05-a ◆ A 新素材・新技術 第4章 先端技術情報例 2 3 ▲ 05-a △ バイオセンサ バイオセンサ 日本工業 2003/2/28 ー,DNA,ゲノ ー,製薬,分析 新聞 ム,表面プラズ 装置 モン共鳴,抗原 ・抗体反応 バイオセンサ バイオセンサ 日本工業 2003/2/28 ー,DNA,ゲノ ー,製薬 新聞 ム,表面プラズ モン共鳴,抗原 ・抗体反応 ● 3 ○ 2 − 84 − 東洋紡が光バイ 東洋紡と分析装置製造の米ベンチャー企業,GWC(ウィスコンシン州)が提携開発した光 オセンサー事業 を使ったバイオセンサーは,特定の受容体と結合することで活性するタンパク質や,抗 に参入 原・抗体反応を複数同時に探索できるため,新薬の候補となる化学物質を絞り込む「ス クリーニング」の効率化を図れる. 東洋紡は,国内販売の動向を見極めながら,将来的 には海外への装置輸出やバイオセンサーを使った生体分子間の相互作用解析の受託事業 についても検討し,バイオ関連事業を拡大する. 表面プラズモン共鳴(SPR)】金や銀 などの化学的に安定した金属薄膜の表面に光を特定の角度で入射することで,金属薄膜 の電子が集団的に共鳴して光を吸収する現象.表面にのせた物質の化学反応による質量 変化を入射角の変動から解析できる. 分子量の小さい物質でもリアルタイムで測定でき る.変化が目に見える蛍光物質や放射線同位体といったマーカーをつける必要がなく, 生きた細胞内の動きを遺伝子レベルで分析できる手法として注目を集めている. このた めゲノムを活用した創薬を目指す製薬会社や研究機関でSPRによる分析装置の導入が 相次ぎ,2003年度の国内市場規模は25億∼30億円規模になると推定されている. 東洋紡の光バイ 東洋紡は,分析装置製造の米ベンチャー企業,GWC(ウィスコンシン州)と提携,光を使 ったバイオセンサー事業に参入する.タンパク質やDNA(デオキシリボ核酸)など複数の オセンサー 生体分子間の相互作用を同時に測定できるバイオセンサーを開発,8月をめどに発売する 計画だ.創薬のターゲットとなる生体分子の作用を効率良く解析でき,ゲノム(全遺伝情 報)を活用した創薬に取り組む国内の製薬会社や,研究機関を中心に売り込む. GWCと 共同開発したバイオセンサー「MultiSPRinter(マルチスプリンター)」は, 金属薄膜の表面に対象物をのせて光を照射し,その屈折率変化から,対象物の質量変動 を解析する表面プラズモン共鳴(SPR)と呼ばれる技術を応用した. タンパク質やDN Aの結合,抗原・抗体反応による質量変化を,ナノ(1ナノは10億分の1)グラムレベルで 測定でき,分子量が小さい物質の解析を可能にする. 対象物となるタンパク質やDNA ,抗体などを固定化する96個の穴があいた1センチ4方のチップに光を照射し,屈折率変 化を反射光強度の変化としてCCD(電荷結合素子)カメラを使って解析することで96サン プルを同時に測定できる. CCDカメラによる画像解析で測定するため,低コストであ る. ◎ 05-a 東芝は19日,独自の光センシング技術により既存センサーの100∼500倍の高感度測定を 可能にしたバイオセンサーを開発したと発表した.微量のサンプルから短時間で目的の 物質を検出できる利点を生かして,医療や環境,食品分野での用途開発を進め,2004年 の実用化を目指す. 開発したセンサーは,血液中のタンパクを調べるプロテインセンサ ーと,ブドウ糖の濃度を測定するグルコースセンサーの2種類.プロテインセンサーは臨 床検査などで広く採用されている酵素免疫測定法との比較で20分の1以下のサンプル量で 測定時間を10分の1以下に短縮,グルコースセンサーは既存センサーに比べて測定感度を 最大500倍に高められるなどの効果が期待できる. これらのバイオセンサーは,1検体ご とに使用するセンサーチップと,センサーチップからの信号を検出する測定部で構成. 検体に対するセンシング膜の状態を光で検出する方式を採用して高感度測定を可能にし た. 今後は医療分野に加えて,そばや卵などのアレルギー因子の含有検査や環境ホルモ ンなど大気・水質の環境測定で利用できるセンサーの開発も進める. 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 3 光センシング バイオセンサ JIJweb / 2003/3/20 東芝が測定感度 技術,バイオセ ー,医療分野, 日本工業 を最大500倍に ンサー,プロテ 環境測定 高めたバイオ 新聞 インセンサー, センサー グルコースセ ンサー, ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 05-a 調査研究報告書 No.117 2 3 2 05-b 06-e 3 3 5 ▲ − 85 − 05-a △ コメの品質,整 米穀,穀粒判別 SmallBiz 2003/2/2 粒,着色粒,コメ 器,コメの品質 の等級,穀粒判 別器 味覚センサー 味覚センサー SmallBiz 2003/2/3 植物ホルモン, バイオセンサ Biz Tech 2003/3/25 サイトカイニ ー ン,合成酵素, バイオセンサ ー C60,誘導体,機 電子デバイス, Biz Tech 2002/6/3 能性膜,成膜技 光学部品,バイ 術 オセンター ● 5 ○ 2 米国Massachusetts大学Lowell校ナノ科学技術研究所教授のLong Y. Chiang氏と Massachusetts工科大学(MIT)教授で同大学の材料科学技術センター所長である Michael F. Rubner氏は, フラーレンの代表格であるC60の誘導体(fullerene derivative )を用いて様々な種類の機能性膜を共同で開発することで合意したことを明らかにした . Chiang氏は新しいC60誘導体の開発を,Rubner氏はそれらを用いた成膜技術の開発 を受け持つ.両氏は今後,電子デバイス,光学部品,バイオセンサーなど多岐にわたる 機能性膜の開発を進める. コメの品質を簡 測定器の開発を手がけるケツト科学研究所(東京都大田区)は,コメの品質を簡単に測 単に測定できる 定できるシステムを開発した.コメ粒の画像を読み取るスキャナー,専用の画像解析ソ システム フトを組み込んだコンピュータ,結果を表示するディスプレーで構成される.粒の長さ や幅,虫や細菌による被害の有無,成熟状態などを測定して,「整粒」「着色粒」など 最高21の区分に分別することができる.約1100個のコメ粒の検査にかかる時間は24秒程 度.水分比率などこのシステムでは測定できない要因も加味したうえで,コメの等級を 決める.「穀粒判別器RN-310」として発売予定. 甘味・苦みを見 埼玉大学の勝部昭明教授と部品メーカーのウチヤ・サーモスタット(東京都葛飾区)は 分ける高感度セ ,甘味と苦みを正確に見分ける高感度のセンサーを開発した.開発したセンサーは,約 ンサー 8mm四方のシリコン基板に直径0.8mmのへこみを4つ設け,ここにスズなどの金属酸化 物や窒化ケイ素などの薄膜が積層されている.味を構成する様々な化学物質が各薄膜で 反応して生じる電気変化を検出,そのパターンで味覚を識別できる.センサーの検出部 をさらに増やし,電気信号のパターン検出を精密化すれば,人間の舌に限りなく近い味 覚センサーになろう.現在,品メーカーは,で味見する抜き打ち検査をしており,械に よる常時監視に切り替えることができる.ウチヤ・サーモスタットは,アドライヤー用 サーモスタットでは世界一のシェア. 理研、高感度バ 理化学研究所植物科学研究センター代謝機能研究グループチームリーダー榊原均氏のグ イオセンサー開 ループは,同グループが単離した植物ホルモンであるサイトカイニンの合成酵素と受容 発に着手 体を利用して,高感度なバイオセンサーの開発に着手していることを明らかにした. 米国の2大学、 C60誘導体を用 いた機能性膜の 共同開発をスタ ート ◎ 05-a 当社は,独自の光センシング技術を用い,従来センサーの100∼500倍の高感度で の測定を可能にしたバイオセンサーを開発しました.今回開発したのは、血液中のタン パクを調べるプロテインセンサー,ブドウ糖の濃度を調べるグルコースセンサーですが ,これらのセンサーに使用するバイオセンサーチップは,センシング膜の種類を変える ことで様々な検体分析のプラットフォームとして応用することが可能です.今後,医療 ,環境,食品など幅広い分野で使用可能なバイオセンサーとしての適用の検討を進め, 2004年の実用化を目指していきます. また,センサーの小型化が容易なため,医療 機関だけでなく,一般家庭などでの検査,分析ツールとしても対応が可能です.センサ ーチップについては,測定する対象物に応じてセンシング膜の種類を変えることができ るため,これをプラットフォームとして様々な検体の分析に応用していくことも可能で す.当社では,血液中のタンパクを調べるプロテインチップ,ブドウ糖濃度を調べるグ ルコースセンサーチップに続いて,対応可能なコンテンツを拡大し,食品における,そ ば,たまごなどのアレルギー因子(アレルゲン)の含有の検査や,環境ホルモンなどの 大気,水質等の環境測定などの分野での活用を目指し,開発を進めていきます. 関連情報 本文 A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 情報タイトル △ 3 光センシング バイオセンサ 東芝 2003/3/19 光センシング技 技術,バイオ ー,医療機器 ニュース 術を用いた高感 センサー,プロ リリース 度バイオセンサ テインセンサ ーの開発につい ー,グルコース てプロテインセ センサー, ンサー等、様々 な検体分析のプ ラットフォーム として応用可能 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 05-a 第4章 先端技術情報例 2 2 08-b 08-b − 86 − 5 3 ▲ 非破壊検査, 赤外線検査, 三次元,検査 環境 企業,公共, 建築技術 2003/10/ コンクリート 構造物,非破 壊検査,精度 向上,信頼性 保証 洋上風力発電,企業,公共, 建築技術 2003/12/ モノパイル式,洋上風力発電, 専用船 経済性,施工 性 エバネセント 企業,高速, 建築技術 2003/10/ 波,通信周波 無線LAN, 数 限定範囲 △ 5 ● 2 ○ 08-b 赤外線サーモグ ラフィによるコ ンクリート構造 物の非破壊検査 住友大阪セメントは,大阪大学と共同でコンクリート構造物を対象とした赤外線非破壊 検査技術を開発した.この技術は,大阪大学・阪上隆英助教授が提案した「ロックイン 赤外線サーモグラフィ法」と赤外線検査環境の適・不適を判断する「赤外線検査環境の 評価技術」で構成されている.ロックイン赤外線サーモグラフィ法では構造物を加熱, または冷却した後に,連続的に表面温度を測定し,温度の時間変化の違いをロックイン 処理と呼ばれる処理を施すことにより,位相の遅れとして把握する.位相の遅れの程度 は欠陥の深さによるため,コンクリート構造物の内部にある欠陥の形状を三次元的に把 握することができる.この結果,精度の悪かった深さ5cm程度の深さまでの欠陥や深 度を精度よく定量的に検出することが可能になった.また,同技術に関連し,赤外線非 破壊検査環境を評価し,検査結果の精度を検証するための「対比試験片」と「内部温度 測定法」を開発した.対比試験片は,赤外線検査を行うコンクリート構造物の表面に設 置し,構造物と熱的に同化させた状態で同時に測定する.対比試験片を欠陥として検出 することができれば検査環境は好適,できなければ不適と判定できる,検査環境の判定 用ツールである.この判定ツールにより『好適』と判断された環境下で得られた検査結 果は,その信頼性を保証できる. 洋上風力発電の 五洋建設は,建設現場の自然条件や風車仕様などにあわせて,経済的に洋上風車を建設 建設システムを する「洋上風力発電建設システム」を確立した.外洋(オフショア)での大規模建設に 確立 マッチしたシステムで,風力発電の発展につながる海洋建設技術である.同システムは ,モノパイル式の基礎構造をもつ国内最大級の風力発電機(定格出力2,000kW級 )を,水深15m程度の海域に建設することを想定して,風車部品の海上運搬から大口 径の鋼管杭打設,風車据付作業を一つの専用船で行う,経済性,施工性に優れたシステ ムである. 既存の鉄骨躯体 ココモ・エムビー・コミュニケーションズ,昭和電線電纜,日立製作所は,「エバネセ を利用し高速無 ント波」と呼ばれる周波数により,限定範囲内だけ通信可能な手法を開発した.壁一枚 線LANを行う で電波が弱まるため,電磁シールドが必要ない.また,既存の鉄骨ビル,鉄道車体など にエバネセント波を流し,建物内部全体,電車内全体をLANのアンテナとして使用可能 である.この開発をベースに,三菱地所,日建設計,メイツー電子工業,北菱産業を交 えたコンソーシアムを立ち上げ,既存ビルへの適用を図る.通常の通信周波数はGHz帯 を使用するが,今回の開発では,ラジオなどに広く使われているHF・VHF帯である0.5∼ 54MHzの周波数帯を使用しているので,医療機器,電化製品などへの影響がなく,従来 の無線LAN(50Mbps)を超える通信速度をもつ.建物内の障害物や人に通信が遮られず に建物内の広い範囲で安定した通信ができ,かつ限定された範囲内のみに周波を送るこ とができるため,建物の1フロア,または1部屋など限定範囲内での通信が可能である. 複合断熱パネル ジーシールドは,複合断熱パネル(GSパネル)を使い,これをコンクリート躯体の外 を使用した外断 側に施工する「GS外断熱工法(GP-G工法)」を開発した.この工法は、耐アルカリ 熱工法 ガラス繊維強化セメント(GRC)による表面材と押出発泡ポリスチレン(カネライト フォーム)による断熱材を一体成形した複合断熱パネル(GSパネル)を使い,これを コンクリート躯体の外側に施工する工法のことで,省エネルギーと結露防止による建物 の老朽化防止の面で優れた断熱法である.GS外断熱工法(GP-G工法)の特長は,① 省エネルギーに有利,②建物本体に優しい,③工事に優しい,④地球に優しい,⑤改修 工事では外壁のリフレッシュ可能,などである. 関連情報 本文 情報タイトル ◎ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 3 GRC,外断熱 企業,外断熱,建築技術 2003/11/ 省エネ,結露 防止,老朽化 防止 ■ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 08-a ◆ A 新素材・新技術 調査研究報告書 No.117 09-a 2 2 08-b 3 5 ▲ − 87 − 個人,企業, 建築技術 2003/09/ 公共,風況予 測,発電量予 測,建築設計, 環境評価 2003/3/25 産学連携,技術 技術移転,イン NE 移転,MOT,イ ターンシップ ONLINE ンターンシッ プ 風況予測,10 mメッシュ, 力学統計,局 所化 細骨材,表面 企業,コンク 建築技術 2003/09/ 水率,水浸式 リート,品質 確保,プラン ト △ 7 ● 2 ○ 08-b 経産省,MOTの 育成体制などを 審議する産学連 携小委員会を設 置へ 全国の任意地点 で使える高精度 風況予測システ ム 細骨材の表面水 率まで計測し正 確に練混ぜ量を 算出 経済産業省は,産業構造審議会 産業技術分科会の中に「産学連携小委員会」を2003年3月27日 に設置し,大学と産業界の間をつなぐ体制の強化について議論を始める。テーマは主に2つある 。技術移転を支えるMOT(Management of Technology)と呼ばれる人材の育成と,産業界の 要望を取り込んだ大学の技術移転システムである。 同小委員会はこれまでにも数回,設置さ れた実績がある。例えば前回は2002年4月に「経済活性化に向けた今後の産学連携のあり方につ いて」という報告書をまとめており,各省庁や大学,企業などの産学連携実務者を中心に配布さ れた。これは,その後の技術移転政策に大きな影響を与えたといわれている。 今回の小委員 会は第1回を2003年3月27日に開催した後,同4月と5月に2回ずつ開催し,5月末に「中間取りま とめ」を作成する。急いでいるのは,今回の議論の結果を同6月ころに予定される来年度政府予 算の概算要求に盛り込むためとみられる。 今回重点を置くMOTは,技術シーズを事業につな げる技術経営を担えるマネジメント人材である。日本のMOTは米国などに比べて少なすぎると いわれており,養成体制の強化法を練る。企業と大学・大学院などのインターンシップによる育 成体制などを議論する見通し。もう一つのポイントである大学の技術移転システムは,2004年4 月に予定されている国立大学の法人化をにらんだもの。法人化以降のTLO(技術移転機構)の体 制などについて議論する。 小委員会のメンバーはまだ正式には固まっていないが,会長には 東海大学 医学部教授の黒川清氏が就任する予定。委員には大学側から6人,企業側から6人が予 定されている。 東京大学橋梁研究室・石原孟助教授らは,日本のあらゆる地点での風を10m四方のメ ッシュで高精度に予測できるシステム「MASCOT」を開発した.パソコン上の簡易な操 作で予測できるため,従来の実測調査にかかる期間とコストを短縮できる.局所的な風 を予測するには,地形の影響を考慮することが重要となり,工学的には10m程度のスケ ールでの予測が必要となる.従来は気象学からの「ネスティング」と呼ばれる広範囲か ら順次計算領域を狭める手法を採用していたが,計算時間上の制約から数百m程度の予 測が限界である.これに対し同システムでは「力学統計的局所化」により,天気予報と 同様に,風速・風向,気温,湿度などを気象モデルで2km四方のメッシュ計算を行う. その計算結果を1年分の風速・風向の時系列データに統計処理を行い,地域風況を求め る.同システムはこの工程で2kmメッシュの解析を10mメッシュに変換し,微細な地形 の影響を考慮した局所風況を作成する.このシステムの適用範囲として,風速・風向な どの風教予測,発電用風車の発電量予測,日変化・月変化の局所風教の再現などの風況 精査を行うものとして利用でき,それぞれ「Basic」「Energy」「Atlas」として3つの システムが開発されている.また,その高い予測精度により,建築設計分野への展開を 想定し,今後さらに開発を行う. 大林組は,コンクリートの品質のばらつきを少なくできる細骨材水浸式計量システムを ,徳山ダム洪水吐き建設工事の現場プラントに導入した.細骨材の表面水量を正確に計 量でき、安定した品質のコンクリートを製造できる.同システムは,最骨材を飽和含水 状態で計測する新しい発想となっている.最骨材を水に浸した状態で容積と質量を測定 し,細骨材と水の密度差を利用してそれぞれの質量を算出する.また、最骨材の表面水 率を正確に求めることができる.従来のマイクロ波方式などの間接的な手法ではなく, 水浸式計量の原理に基づき直接的に細骨材の表面水を精度よく計量できるため,練混ぜ 水量の補正誤差を低減でき,目標の品質を確保できる.同工事では現場プラントの実験 機第1号として世界で初めて導入した. 三次元地盤環境 大成建設は,半導体製造工場などのナノテク施設において,自動車や鉄道などによる微 振動予測解析シ 振動をも解析する高精度な設計ツールである,三次元地盤環境振動予測解析システムを ステムを開発 開発した.半導体製造工場などのナノテクノロジー施設は,ごく小さな振動が機器機能 の低下や製品の歩留まり低下の原因になることがあり,防振設計が必要となっている. 近年,道路や鉄道の近傍あるいは軟弱な地盤に建設するケースも多く,振動対策が急務 となってきている.同システムは,このようなニーズに対応するもので,環境振動の予 測・解析による設計技術の高度化のみならず,ナノテク施設以外にも事務所ビルや住宅 などの一般の建物での居住環境の評価・振動対策にも適用できる. 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 7 環境振動,予 企業,半導体,建築技術 2003/10/ ナノテク,振 測,解析 動対策 ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 08-b 第4章 先端技術情報例 09-b 3 1 ▲ 2003/3/18 NE ONLINE IP電話,音声品 IP電話,インタ Biz Tech 2003/3/26 質評価システ ーネット ム アジレントテ 教育 クノロジー大 学助成プログ ラム △ 1 ● 2 ○ 09-b アジレント、IP 電話向け音質評 価システムの導 入支援 − 88 − ネットワーク関連の測定機器などを開発・製造するアジレント・テクノロジーは3月26日 ,IP電話向け音声品質評価システムの導入を支援するサービス「VoIPネットワーク音声 品質測定トータル・ソリューション・サービス」を発表した.IP電話サービスを提供す る通信事業者やインターネット接続事業者,IP電話の導入を進めるシステム・インテグ レータや企業ユーザーなどに提供する.サービス開始は3月31日で,価格は個別見積もり となる. アジレント・テクノロジーと横河アナリティカルシステムズは,「2003年度アジレント ・テクノロジー大学助成プログラム」の助成先を決定した(ニュース・リリース)。同プロ グラムは,米Agilent Technologies Inc.が,学生の教育レベルを向上させるために必要 となる計測器や分析機器などを寄贈するもので,世界規模で実施している.半導体関連 を含む情報,通信,ライフ・サイエンスなどに関連する4年制大学または大学院を対象に 募集し,教育テーマや教育姿勢,必要な機器などのレポートをもとに選出している. 2003年度の大学助成プログラムでは,世界で106件(国内は10件)の応募から,17件( 総額約1億5000万円相当)の助成先を決定した.国内では,電気通信大学情報通信工学 科の本城教授が選ばれた.同校には,「E4440APSAシリーズ スペクトラム・アナライ ザ3Hz-26.5GHz」と「E4438CESGシリーズ ベクトル・シグナル・ジェネレータ」(合 わせて約1400万円相当)の計測器が寄贈される. アジレント・テクノロジー(本社:東京都八王子市)は,理工系分野の教育活動を行う 非営利団体を支援する「ひらめき工房アジレント 助成プログラム」を発表した.科学技 術分野への社会貢献活動の一環で,今回が4回目.支援の対象となるのは,環境問題を含 む理科・科学,算数・数学の分野で子供たちのために地域に根ざした教育活動を続けて いる非営利団体.支援の内容は,最高100万円の助成金,または最高200万円相当のアジ レント製品などを提供する.支援先は最大10数件.募集期間は3月20日まで.このプロ グラムでは,これまで3年間に36件の非営利団体を支援した. アジレント、子 供たちへの理数 系教育活動を支 援 アジレント,大 学助成プログラ ムの助成先を決 定,国内は電通 大(発表資料要約) 関連情報 本文 情報タイトル ◎ A 新素材・新技術 ■ 普及予測 技術キーワード 市場キーワード 情報源 日付 △ 1 ひらめき工房 教育,社会貢献 Biz Tech 2003/2/7 アジレント助 成プログラム ◆ 分類記号 丁目 ★ ▲ 2 09-b 調査研究報告書 No.117
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